説明

堆積物の掻寄装置

【課題】駆動用スプロケットの下流側のチェーンの弛みを高精度に検知する。
【解決手段】槽1内を周回するチェーン2にフライト9をチェーン2の周回方向に沿って複数取り付け、このチェーン2の一部を第一スプロケット3及び第二スプロケット4によって槽1の底に沿うように張設し、第一スプロケット3の上方かつ水平方向において離間する位置に配置した駆動スプロケット5によって、チェーン2を第一スプロケット3に向けて送り出す。チェーン2は、駆動スプロケット5とこれの周回方向下流側の第一スプロケット3との間で弛み、当該弛み部分はガイドレール10によってフライト9を介して支持し案内される。チェーン2の弛み量が増加すると、フライト9のガイドレール10に対する接地地点が第一スプロケット3から離れる側に移動し、これを検知手段50で検知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、槽の底に堆積した堆積物を掻き寄せる堆積物の掻寄装置に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
従来、沈殿池等の槽の底に堆積した堆積物を掻き寄せる掻寄装置として、槽の底面と水面との間に張設された無端チェーンに板状のフライト(掻寄羽根)を複数取り付け、このフライトを槽の底面に沿うように周回軌道を周回させ、槽の底に堆積した堆積物を掻き寄せる、いわゆるチェーンフライト式の掻寄装置が知られている。
【0003】
このようなチェーンフライト式の掻寄装置では、チェーンの周回軌道における駆動用スプロケットの下流側でチェーンが所定以上に弛むと、チェーンとスプロケットとが正常に噛合しなくなりチェーンの破断等の原因となる場合がある。そのため、以下の特許文献1に記載の検知装置では、駆動スプロケットホイールと、この駆動スプロケットホイールの下流側に設けられた従動スプロケットホイールとの間であってチェーンの下方に、回転自在のレバーを設け、チェーンが弛んで所定量垂下すると、チェーンがレバーの先端を押してレバーを回転させ、回転したレバーが警報装置のスイッチを作動させるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭55−49733号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載の検知装置においては、チェーンの弛み量として連続した二つのフライト間でチェーンが垂下した量が測定されるため、その測定量は小さく、誤検知が生じるおそれがある。
【0006】
本発明は、このような課題を解決するために成されたものであり、駆動用スプロケットの下流側のチェーンの弛みを高精度に検知することができる堆積物の掻寄装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る堆積物の掻寄装置は、槽の底に堆積した堆積物を掻き寄せる掻寄羽根と、槽内を周回し、その一部が槽の底に沿うように第一従動用スプロケット及び第二従動用スプロケットによって張設され、掻寄羽根が周回方向に沿って複数取り付けられた無端チェーンと、第一従動用スプロケットの上方かつ水平方向において離間する位置に配置され、無端チェーンを第一従動用スプロケットに向けて送り出す駆動用スプロケットと、駆動用スプロケットと第一従動用スプロケットとの間で弛んだ無端チェーンを、掻寄羽根を介して水平方向に支持し案内するガイドレールと、掻寄羽根のガイドレールに対する接地地点を検知する検知手段とを備える。
【0008】
本発明によれば、槽内を周回する無端チェーンに掻寄羽根が周回方向に沿って複数取り付けられ、この無端チェーンの一部が第一従動用スプロケット及び第二従動用スプロケットによって槽の底に沿うように張設され、第一従動用スプロケットの上方かつ水平方向において離間する位置に配置された駆動用スプロケットによって、無端チェーンが第一従動用スプロケットに向けて送り出される。従って、無端チェーンは駆動用スプロケットと第一従動用スプロケットとの間で、すなわち駆動用スプロケットの周回方向下流側で弛み、ガイドレールによって掻寄羽根を介して支持され水平方向に案内される。そして、検知手段によって、掻寄羽根のガイドレールに対する接地地点が検知されるため、無端チェーンの弛み量が増加して掻寄羽根のガイドレールに対する接地地点が第一従動用スプロケットから離れる側に移動すると、この接地地点に基づいて無端チェーンの弛みが検知可能となる。このように、駆動用スプロケットと第一従動用スプロケットとの間における無端チェーンの弛み量に応じた掻寄羽根のガイドレールに対する接地地点を検知し、この接地地点に基づいて無端チェーンの弛みが検知可能となるので、フライト間の弛みを検出する上記特許文献1に記載の検知装置に比してその検出する弛み量が大きくなり、駆動用スプロケットの下流側のチェーンの弛みを高精度に検知することができる。
【0009】
ここで、無端チェーンの一部が、槽内に形成される水面に沿うように駆動用スプロケットと第一従動用スプロケットとの間に配置された第三従動用スプロケットを備える構成であると、駆動用スプロケットと第三従動用スプロケットとの間で水面に浮上するスカムを掻き寄せて排出することができる。
【0010】
また、検知手段は、回転可能に支持されたストライカーと、ストライカーが回動することにより上下動するリンク棒とを有し、ストライカーが、掻寄羽根のガイドレールに対する接地地点において掻寄羽根に接触し、無端チェーンの弛み量に応じて接地地点が移動することに伴い回動することによって無端チェーンの弛み量を検知することを特徴とするものであっても良い。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、駆動用スプロケットの下流側のチェーンの弛みを高精度に検知することができる堆積物の掻寄装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第一実施形態に係る掻寄装置を示す概略側面図である。
【図2】図1のII-II矢視図である。
【図3】図1に示す掻寄装置の動作を説明する拡大図である。
【図4】本発明の第二実施形態に係る掻寄装置を示す概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しつつ本発明の堆積物の掻寄装置の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0014】
図1は本発明の第一実施形態に係る掻寄装置を示す概略側面図、図2は図1のII-II矢視図であり、この掻寄装置100は、例えば下水処理場の沈殿槽等の内部に設けられるものである。
【0015】
図1に示すように、掻寄装置100は、槽1の内部を周回する一対の本体チェーン(無端チェーン)2,2を備えており、この一対の本体チェーン2,2は、槽1の幅方向(紙面垂直方向)に離間して設けられている。槽1の下部一方側(紙面右側)には、幅方向に離間し軸で連結された一対の第一スプロケット(第一従動用スプロケット)3,3が設けられており、下部他方側(紙面左側)には、幅方向に離間し軸で連結された一対の第二スプロケット(第二従動用スプロケット)4,4が設けられている。そして、本体チェーン2は、槽1の底に沿うように第一スプロケット3及び第二スプロケット4に掛け渡されて張設されている。
【0016】
槽1の上部他方側、すなわち第一スプロケット3の上方かつ水平方向において離間する位置(第二スプロケット4の上方)には、幅方向に離間し軸で連結された一対の駆動用スプロケット5,5が設けられている。また、槽1の上部略中央部、すなわち駆動用スプロケット5と第一スプロケット3との間であって駆動用スプロケット5の水平方向に離間する位置には、幅方向に離間し軸で連結された一対の第三スプロケット(第三従動用スプロケット)6,6が設けられている。そして、第一スプロケット3及び第二スプロケット4に掛け渡された本体チェーン2は、さらに駆動用スプロケット5及び第三スプロケット6に掛け渡され、駆動用スプロケット5と第三スプロケット6との間の部分は、槽1内に形成されている水面に沿うようにされている。
【0017】
槽1の側壁上面であって一方の駆動用スプロケット5の上方には、モーター7が設置されており、このモーター7は駆動チェーン8を介して駆動用スプロケット5を駆動可能としている。そして、モーター7により駆動された駆動用スプロケット5は、本体チェーン2を駆動用スプロケット5から第三スプロケット6に向けて送り出し、本体チェーン2は、駆動用スプロケット5、第三スプロケット6、第一スプロケット3、第二スプロケット4を巡り駆動用スプロケット5に戻る周回軌道を移動する。
【0018】
本体チェーン2には、図1及び図2に示すように周回軌道の外方(図1における図示上側の軌道では上方、図示下側の軌道では下方)に向けて突出するアタッチメント21が周回方向に沿って複数設けられており(図3参照)、幅方向に延在する断面コ字状のフライト(掻寄羽根)9のその両端部が、アタッチメント21,21に各々連結されている。このフライト9の両端部はアタッチメント21より幅方向外側(図2では右側)に各々さらに張り出しており、この張り出し部に樹脂製のシュー91が取り付けられている。そして、フライト9は、本体チェーン2の周回に伴い槽1の底及び水面に沿って移動し、槽1の底に堆積した堆積物を掻き寄せて槽1の底に設けられた収集ピット1Aに収集すると共に、水面に浮上したスカムを掻き寄せて第三スプロケット6近傍の収集樋(不図示)に収集する。
【0019】
第一スプロケット3の幅方向外側近傍には、第二スプロケット4に向けて延在する一対のガイドレール10,10が設けられている。このガイドレール10は、第三スプロケット6と第一スプロケット3との間で、第一スプロケット3側で弛んだ本体チェーン2を、フライト9を介して水平方向に支持し案内するためのものであり、第三スプロケット6と第一スプロケット3との間で第一スプロケット3側に位置するシュー91を載置する。
【0020】
また、掻寄装置100には検知手段50が備えられており、この検知手段50はストライカー11、リンク棒12、センサ13及び錘14によって構成されている。
【0021】
ストライカー11は、図2に示すように断面L字状の細長い板であり、その第一スプロケット3側の部分がガイドレール10と本体チェーン2との間に位置すると共に、その端部がガイドレール10の上面よりも下方に位置し、図1に示すようにこれより後側の部分が斜め上方に位置するように傾斜して設けられている。このストライカー11は、その支点Mで槽1の幅方向を軸心方向に回転可能に支持されており、ガイドレール10に接地したフライト9と接触している。そして、本体チェーン2の弛み量が大きくなり、フライト9のガイドレール10に対する接地地点が第一スプロケット3から離れる側に移動すると、ストライカー11が図1において時計回りに回動する。
【0022】
リンク棒12は、ストライカー11の第二スプロケット4側の端部に接続されると共に槽1の側壁上面に設置されたセンサ13まで延びており、ストライカー11の回動に伴って上下動する。センサ13は、リンク棒12の上下動を検知する。リンク棒12の下端部には、ストライカー11のバランスを維持するための錘14が取り付けられている。
【0023】
なお、駆動用スプロケット5の近傍からは、第三スプロケット6に向けて延在する一対のリターンレール15,15が設けられている。このリターンレール15は、駆動用スプロケット5と第三スプロケット6との間で、フライト9を介して本体チェーン2を支持し水平方向に案内するためのものである。
【0024】
図3は、図1に示す掻寄装置の動作を説明する拡大図である。図3(a)は本体チェーン2の弛み量が適正な状態を示し、図3(b)は本体チェーン2の弛み量が所定以上である状態を示す。
【0025】
このような掻寄装置100では、モーター7によって駆動用スプロケット5が駆動され、本体チェーン2が駆動用スプロケット5、第三スプロケット6、第一スプロケット3、第二スプロケット4を巡り駆動用スプロケット5に戻る周回軌道を周回し、この周回に伴いフライト9が槽1の底及び水面に沿って移動して槽1の底に堆積した堆積物及び水面に浮上したスカムを掻き寄せて収集する。この間、図3(a)に示すように、本体チェーン2は、第三スプロケット6と第一スプロケット3との間で、すなわち駆動用スプロケット5の周回方向下流側で弛み、ガイドレール10によってフライト9を介して支持され水平方向に案内される。また、ストライカー11はガイドレール10に接地したフライト9と接触した状態にある。
【0026】
図3(b)に示すように、本体チェーン2の弛み量が大きくなると、その弛み量に応じてフライト9のガイドレール10に対する接地地点が第一スプロケット3から離れる側に移動し、この移動に伴いストライカー11とガイドレール10に接地したフライト9との接触位置も第一スプロケット3から離れる側に移動し、ストライカー11が図示時計回りに回動する。ストライカー11が回動すると、リンク棒12が上方に移動してセンサ13に検知され、その移動量よりフライト9のガイドレール10に対する接地地点が分かるので、本体チェーン2の弛みを検知できる。
【0027】
このように、駆動用スプロケット5と第一スプロケット3との間における本体チェーン2の弛み量に応じたフライト9のガイドレール10に対する接地地点を検知し、この接地地点に基づいて本体チェーン2の弛みが検知可能となるため、フライト間の弛みを検出する特許文献1に記載の検知装置に比してその検出する弛み量が大きくなり、駆動用スプロケット5の下流側の本体チェーン2の弛みを高精度に検知することができる。
【0028】
また、掻寄装置100は、本体チェーン2の一部が槽1内に形成される水面に沿うように駆動用スプロケット5と第一スプロケット3との間に配置された第三スプロケット6を備えているため、駆動用スプロケット5と第三スプロケット6との間で水面に浮上するスカムを掻き寄せて排出することができる。
【0029】
次に、本発明の第二実施形態に係る掻寄装置について説明する。
【0030】
図4は、本発明の第二実施形態に係る掻寄装置を示す概略側面図である。
【0031】
この掻寄装置200が、図1に示す第一実施形態に係る掻寄装置100と異なる点は、第三スプロケット6を無くし、本体チェーン2を4点支持から3点支持に変更した点である。これに伴い、駆動用スプロケット5は槽1の上部略中央部に移動し、リターンレール15,15は無くされている。
【0032】
このような掻寄装置200が第一実施形態に係る掻寄装置100と同様に、駆動用スプロケット5の下流側の本体チェーン2の弛みを高精度に検知することができることは言うまでもない。
【0033】
なお、本発明は上記実施形態に限定されない。例えば、本実施形態においては、センサ13はストライカー11が回動しリンク棒12が上下動するとその上下動を検知できるようになっているが、センサ13を設けず単にリンク棒12の上下動を見ることで弛み量を検知しても良い。また、ストライカー11が回動するとその回動により警報ブザーのスイッチが押され、警報ブザーが鳴るような構成にしても良い。
【符号の説明】
【0034】
1…槽、2…本体チェーン(無端チェーン)、3…第一スプロケット(第一従動用スプロケット)、4…第二スプロケット(第二従動用スプロケット)、5…駆動用スプロケット、6…第三スプロケット(第三従動用スプロケット)、9…フライト(掻寄羽根)、10…ガイドレール、50…検知手段、100,200…掻寄装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
槽の底に堆積した堆積物を掻き寄せる掻寄羽根と、
前記槽内を周回し、その一部が前記槽の底に沿うように第一従動用スプロケット及び第二従動用スプロケットによって張設され、前記掻寄羽根が周回方向に沿って複数取り付けられた無端チェーンと、
前記第一従動用スプロケットの上方かつ水平方向において離間する位置に配置され、前記無端チェーンを前記第一従動用スプロケットに向けて送り出す駆動用スプロケットと、
前記駆動用スプロケットと前記第一従動用スプロケットとの間で弛んだ前記無端チェーンを、前記掻寄羽根を介して水平方向に支持し案内するガイドレールと、
前記掻寄羽根の前記ガイドレールに対する接地地点を検知する検知手段と、
を備える堆積物の掻寄装置。
【請求項2】
前記無端チェーンの一部が前記槽内に形成される水面に沿うように前記駆動用スプロケットと前記第一従動用スプロケットとの間に配置された第三従動用スプロケットを備える請求項1に記載の堆積物の掻寄装置。
【請求項3】
前記検知手段は、
回転可能に支持されたストライカーと、
前記ストライカーが回動することにより上下動するリンク棒とを有し、
前記ストライカーが、前記掻寄羽根の前記ガイドレールに対する接地地点において前記掻寄羽根に接触し、前記無端チェーンの弛み量に応じて前記接地地点が移動することに伴い回動することによって前記無端チェーンの弛み量を検知することを特徴とする請求項1又は2に記載の堆積物の掻寄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−81447(P2012−81447A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−231605(P2010−231605)
【出願日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【出願人】(507036050)住友重機械エンバイロメント株式会社 (88)
【Fターム(参考)】