説明

堆肥化装置および堆肥化方法

【課題】発酵条件の厳しい寒冷地や発酵条件の変化する環境下で有機系廃棄物を堆肥化する際に、有機系廃棄物の発酵段階に応じた送風制御や温度制御を行い、常に最適な発酵環境を提供して、低コストで効率の良い堆肥化が実現できるようにする。
【解決手段】堆肥化装置10は、発酵槽内に堆積させた糞尿等の有機系廃棄物を発酵させて堆肥化する際に、発酵段階検出センサ11を用いて発酵段階を検出し、発酵段階毎に必要となる空気量を有機系廃棄物に供給するように、制御盤12が送風機13を制御する。また、制御盤12は、送風機13が吸気する空気の温度を吸気温度センサ14で検出し、その吸気温度が一定温度以下になると、空気加熱ヒータ15によって加熱してから供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、堆肥化装置およびその堆肥化方法に関し、特に、家畜等から生じる糞尿等の有機系廃棄物を好気性微生物により堆肥化する堆肥化装置および堆肥化方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、家畜等から生じる糞尿等の有機系廃棄物を処理して堆肥化する場合に、有機系廃棄物の含水率を65%前後に調整した後、発酵槽に投入し、好気性発酵を促す空気(酸素)を発酵槽の底部から堆積した有機系廃棄物に供給し、かつ、有機系廃棄物を間欠的に切り返すことにより、投入した有機系廃棄物を投入側から取出側へ順次送出し、堆肥化するようにした堆肥化装置が知られている。
【0003】
この堆肥化装置では、発酵槽に投入された有機系廃棄物を間欠的に切り返しつつ、発酵槽の一端側の初期発酵領域から他端側の末期発酵領域へ有機系廃棄物を移動させることによって、各領域の有機系廃棄物が発酵進行過程に準じていると看做し、領域毎に供給する空気量を調節して発酵効率を向上させ、短時間で発酵不足の無い堆肥を形成するものであった(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特許第3443055号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような堆肥化装置にあっては、発酵槽における有機系廃棄物の投入口から取出口に至る各領域を発酵進行過程に分け、空気の供給量を調節可能としているが、供給する空気の温度や投入する有機系廃棄物の温度が季節(夏季、冬季)や使用地域(温暖な地域、寒冷地)によって異なると、発酵の進行速度も異なってくるため、発酵槽の領域と発酵進行過程とが対応しなくなり、適切な空気の供給量が確保できなくなるという課題が考えられる。
【0006】
また、上述した堆肥化装置では、投入する有機系廃棄物の種類や投入量などに応じて、発酵領域を増減したり、空気噴出管路部及び空気噴出パイプの本数の増減も自由であるとするが、何を基準として発酵領域を増減したり、空気噴出管路部及び空気噴出パイプの本数を増減するのかについては記載がなく、発酵段階にある有機系廃棄物に常に適切な空気供給量が確保できるかは不明であり、特に、発酵条件の厳しい寒冷地や発酵条件が変化する環境下でも短時間で発酵不足の無い堆肥が形成できるかは疑問である。仮に、発酵領域の増減や空気噴出管路部及び空気噴出パイプの本数の増減ができたとしても、多大なコストを要するという別の課題が考えられる。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、発酵条件の厳しい寒冷地や発酵条件の変化する環境下で有機系廃棄物を堆肥化する場合でも、有機系廃棄物の発酵段階に応じた送風制御や温度制御を行うことによって、常に最適な発酵環境が提供可能となり、低コストで効率の良い堆肥化が実現できる堆肥化装置および堆肥化方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項1にかかる発明は、有機系廃棄物を堆積して発酵させる発酵槽と、該発酵槽に配置された送気管を通して前記有機系廃棄物に空気を供給する送風機と、前記有機系廃棄物の発酵段階を検出する発酵段階検出手段と、前記送風機の送風量を制御する制御手段とを備え、前記制御手段が前記発酵段階検出手段により検出した有機系廃棄物の発酵段階に応じて前記送風機の送風量を制御し、効率的に有機系廃棄物を発酵させることを特徴とする。
【0009】
また、請求項2にかかる発明は、請求項1に記載の堆肥化装置において、前記送風機が吸気する空気の温度を検出する吸気温度検出手段と、前記送風機から供給される空気を加熱する空気加熱手段とをさらに備え、前記制御手段は、吸気温度検出手段で検出された空気の温度が前記発酵段階検出手段で検出した発酵段階に必要な温度以下となった場合に、前記空気加熱手段を制御して送風機から供給される空気を加熱し、各発酵段階に必要な温度の空気を供給することを特徴とする。
【0010】
また、請求項3にかかる発明は、請求項2に記載の堆肥化装置において、前記発酵段階検出手段は、前記有機系廃棄物が発酵して堆肥化する際に発する発酵熱を検出する堆肥温度センサであって、前記有機系廃棄物が発酵を開始して発酵熱によって堆肥温度が上昇し始める初期立上り段階と、発酵がさらに進んで堆肥温度が急激に上昇する立上り段階と、発酵が活性化して継続的に堆肥の熟成が進み堆肥温度の上昇が頭打ちになる活性化段階の少なくとも3つの発酵段階を堆肥温度で判別し、前記堆肥温度センサで検出した堆肥温度による発酵段階に応じた送風量と空気温度が得られるように前記制御手段で制御することを特徴とする。
【0011】
また、請求項4にかかる発明は、請求項2に記載の堆肥化装置において、前記発酵段階検出手段は、前記有機系廃棄物の発酵が活性化し、継続的に堆肥の熟成が進むに連れて変化する酸素消費量に応じた酸素濃度の変化を検出する酸素濃度検出センサであって、前記酸素濃度レベルを複数段階に分けて、前記酸素濃度検出センサで検出した酸素濃度による発酵段階に応じた送風量と空気温度が得られるように前記制御手段が制御することを特徴とする。
【0012】
また、請求項5にかかる発明は、発酵槽内に堆積した有機系廃棄物の発酵段階を検出する発酵段階検出ステップと、発酵段階に応じた必要な量の空気を前記有機系廃棄物に供給する空気供給ステップとを含み、前記空気供給ステップでは、有機系廃棄物の発酵段階に応じて送風量を制御することを特徴とする。
【0013】
また、請求項6にかかる発明は、請求項5に記載の堆肥化方法において、前記有機系廃棄物に送風する空気の吸気温度を検出する吸気温度検出ステップと、吸気した空気を前記有機系廃棄物に送風する前に加熱する空気加熱ステップとをさらに含み、検出された吸気温度が発酵段階に必要な空気温度を下回っている場合に、前記有機系廃棄物へ送風する前に空気を加熱し、各発酵段階に必要な温度の空気を供給することを特徴とする。
【0014】
また、請求項7にかかる発明は、請求項6に記載の堆肥化方法において、前記発酵段階検出ステップは、前記有機系廃棄物が発酵して堆肥化する際に発する発酵熱を検出することによって発酵段階を判別するもので、前記有機系廃棄物が発酵を開始して発酵熱によって堆肥温度が上昇し始める初期立上り段階と、発酵がさらに進んで堆肥温度が急激に上昇する立上り段階と、発酵が活性化して継続的に堆肥の熟成が進み堆肥温度の上昇が頭打ちになる活性化段階の少なくとも3つの発酵段階を堆肥温度によって判別し、発酵段階に応じた送風量と空気温度が得られるように制御することを特徴とする。
【0015】
また、請求項8にかかる発明は、請求項6に記載の堆肥化方法において、前記発酵段階検出ステップは、前記有機系廃棄物の発酵が活性化し、継続的に堆肥の熟成が進むに連れて変化する酸素消費量に応じた酸素濃度の変化を検出することによって発酵段階を判別するもので、前記酸素濃度レベルを複数段階に分けて発酵段階を酸素濃度によって判別し、発酵段階に応じた送風量と空気温度が得られるように制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1にかかる堆肥化装置は、制御手段が発酵段階検出手段により検出した有機系廃棄物の発酵段階に応じて送風機の送風量を制御するので、発酵条件の変化する環境下であっても、有機系廃棄物の各発酵段階に必要な空気を適切に供給することができる。このため、効率の良い堆肥化が可能になると共に、発酵段階に応じて送風機の送風量を制御することから送風機の省電力化を図ることができ、均質な堆肥を低コストにて提供できるという効果を奏する。
【0017】
また、請求項2にかかる堆肥化装置は、さらに吸気温度検出手段で検出された吸気温度が当該発酵段階に必要な温度以下になった場合に、空気加熱手段を制御して送風機から有機系廃棄物に供給する空気を加熱することで、常に発酵段階に適した温度の空気を供給することができる。このため、発酵条件の厳しい寒冷地であっても、発酵段階に応じた温度の空気を供給することができ、発酵の進行を抑制することなく、効率の良い堆肥化が可能になるという効果を奏する。
【0018】
また、請求項3にかかる堆肥化装置は、発酵段階検出手段として有機系廃棄物が発酵し堆肥化する際に発する発酵熱を検出する堆肥温度センサを用い、少なくとも3つの発酵段階を判別して、その発酵段階に応じた送風量と空気温度が得られるように制御することができる。特に、1次発酵のように有機系廃棄物の発酵が立上ってから活性化するまでの堆肥温度変化の大きい期間は、発酵熱による堆肥温度で容易に発酵段階が判別できると共に、好気性微生物により酸素を使って有機系廃棄物の発酵が進み発酵熱が発生するので、堆肥温度と空気(酸素)の必要量とが密接な関係にあることを利用し、堆肥温度から必要な送風量を割り出すことができる。供給される空気の温度は、冬季の寒冷地の空気をそのまま供給すると、発酵の初期立上り段階で温度が下がり、好気性微生物による発酵が進まなくなる恐れがあるため、一定の温度(例えば、15℃前後)まで加熱して供給するようにする。その後の立上り段階や活性化段階では、好気性微生物が繁殖して発酵が進み、発酵熱が発生するため、堆肥温度の変化状況にそれ程影響が出なければ空気の加熱は不要となる。このように、堆肥温度センサによって有機系廃棄物の発酵段階を検出し、発酵段階に応じた送風量と空気温度になるよう制御するので、発酵条件の厳しい寒冷地や発酵条件の変化する環境下であっても効率の良い堆肥化が可能となり、均質な堆肥を低コストにて提供できるという効果を奏する。
【0019】
また、請求項4にかかる堆肥化装置は、発酵段階検出手段として有機系廃棄物の発酵が活性化し、継続的に堆肥の熟成が進むに連れて変化する酸素消費量に応じた酸素濃度の変化を検出する酸素濃度検出センサを用い、複数段階に分けた酸素濃度のどのレベルを検出したかによって必要な送風量と空気温度が得られるよう制御することで、発酵段階に応じた適切な発酵環境を整えることができる。特に、2次発酵のように有機系廃棄物の発酵が活性化し、継続的に堆肥の熟成が進む期間は、堆肥の熟成に伴って発酵に必要な酸素量が減少してくるので、酸素濃度を検出することで必要な送風量を割り出すことができる。供給される空気の温度は、請求項3の場合と同様に堆肥温度の変化状況にそれ程影響が出なければ空気の加熱は不要となる。このように、酸素濃度検出センサによって有機系廃棄物の表面付近の酸素濃度を検出し、酸素濃度に対応する発酵段階に応じた送風量と空気温度になるよう制御するので、発酵条件の厳しい寒冷地や発酵条件の変化する環境下であっても効率の良い堆肥化が可能となり、均質な堆肥を低コストにて提供できるという効果を奏する。
【0020】
また、請求項5にかかる堆肥化方法は、発酵槽内に堆積した有機系廃棄物の発酵段階を検出し、発酵段階に応じた必要な量の空気を有機系廃棄物に供給するので、発酵条件の変化する環境下であっても、有機系廃棄物の各発酵段階に必要な空気を適切に供給することができる。このため、効率の良い堆肥化が可能になると共に、発酵段階に応じた必要な量の空気を送風することから省電力化が図れ、均質な堆肥を低コストにて提供できるという効果を奏する。
【0021】
また、請求項6にかかる堆肥化方法は、さらに有機系廃棄物に送風する空気の吸気温度を検出し、検出された吸気温度が発酵段階に必要な空気温度を下回っていると、有機系廃棄物に送風する前に加熱して、各発酵段階に必要な温度の空気を供給することができる。このため、発酵条件の厳しい寒冷地であっても、発酵段階に応じた温度の空気を供給することができ、発酵の進行を抑制することなく、効率の良い堆肥化が可能になるという効果を奏する。
【0022】
また、請求項7にかかる堆肥化方法は、発酵段階検出ステップが有機系廃棄物が発酵して堆肥化する際に発する発酵熱を検出することで発酵段階を判別するもので、発酵段階に応じた送風量と空気温度が得られるように制御することができる。特に、1次発酵のように有機系廃棄物の発酵が立上ってから活性化するまでの堆肥温度変化の大きい期間は、発酵熱による堆肥温度で容易に発酵段階を判別することができ、好気性微生物により酸素を使って有機系廃棄物の発酵が進んで発酵熱が発生するので、堆肥温度と空気(酸素)の必要量とが密接な関係にあることを利用し、堆肥温度から必要な送風量を割り出すことができる。供給される空気の温度は、冬季の寒冷地の空気をそのまま供給すると発酵の初期立上り段階では温度が下がってしまい、発酵が進まなくなる恐れがあるため、一定の温度(例えば、15℃前後)まで加熱して供給するようにする。その後の立上り段階や活性化段階では、好気性微生物が繁殖して発酵が進み、発酵熱が発生するため、堆肥温度の変化状況にそれ程影響が出なければ空気を加熱する必要がなくなる。このように、堆肥温度を検出することで有機系廃棄物の発酵段階を検出し、発酵段階に応じた送風量と空気温度になるよう制御するので、発酵条件の厳しい寒冷地や発酵条件の変化する環境下であっても効率の良い堆肥化が可能となり、均質な堆肥を低コストにて提供できるという効果を奏する。
【0023】
また、請求項8にかかる堆肥化方法は、発酵段階検出ステップが有機系廃棄物の発酵が活性化し、継続的に堆肥の熟成が進むに連れて変化する酸素消費量に応じた酸素濃度の変化を検出することで発酵段階を判別するもので、検出した酸素濃度レベルによる発酵段階に応じた送風量と空気温度が得られるように制御することができる。特に、2次発酵のように有機系廃棄物の発酵が活性化し、継続的に堆肥の熟成が進む期間は、堆肥温度の変化は少ないが、堆肥の熟成に伴って発酵に必要な酸素量が減少してくるので、酸素濃度を検出することで必要な送風量を割り出すことができる。供給される空気の温度は、請求項6の場合と同様に堆肥温度の変化状況にそれ程影響が出なければ空気を加熱する必要がなくなる。このように、有機系廃棄物の表面付近の酸素濃度を検出して、酸素濃度に対応する発酵段階に応じた送風量と空気温度になるよう制御するので、発酵条件の厳しい寒冷地や発酵条件の変化する環境下であっても効率の良い堆肥化が可能となり、均質な堆肥を低コストにて提供できるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下に、本発明にかかる堆肥化装置および堆肥化方法の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0025】
図1は、本発明にかかる堆肥化装置の特徴的な構成要素を説明するブロック図であり、
後述する実施の形態1および実施の形態2に共通の概念ブロック図である。図1に示すように、本発明の堆肥化装置10は、不図示の発酵槽内に堆積させた糞尿等の有機系廃棄物を発酵させて堆肥化する際に、その発酵段階を検出する発酵段階検出手段としての発酵段階検出センサ11、堆肥化装置10全体の動作を制御する制御手段としての制御盤12、有機系廃棄物に対して不図示の通気管等を介して空気を供給する送風機13、その送風機13が吸気する空気の温度を検出する吸気温度検出手段としての吸気温度センサ14、および特定の発酵段階で吸気温度が低すぎる場合に送風機13から供給される空気を加熱する空気加熱手段としての空気加熱ヒータ15などで構成されている。
【0026】
発酵段階検出センサ11は、複数の段階に分けられた有機系廃棄物の発酵過程が今どの段階にあるのかを検出するためのセンサであり、実施の形態1では、熱電対などを利用して計測された堆肥温度に基づいて発酵段階を検出する堆肥温度センサ111が用いられ、実施の形態2では、発酵槽に堆積した有機系廃棄物の表面付近の酸素濃度を計測することで発酵段階を検出する酸素濃度センサ112が用いられている。
【0027】
制御盤12は、発酵段階検出センサ11で検出された発酵段階に応じて必要な空気量を有機系廃棄物に供給すべく送風機13を制御している。また、寒冷地などでは、送風機13がそのまま外気を吸気して有機系廃棄物に供給すると、発酵の初期立上り時に必要な温度が得られなくなるので、吸気温度センサ14と空気加熱ヒータ15が使用される。まず、制御盤12は、吸気温度センサ14で検出された吸気温度が発酵の初期立上りに必要な温度(約15℃)以下の場合、発酵段階検出センサ11で検出された発酵段階と照会し、空気温度が低すぎる場合は空気加熱ヒータ15で発酵段階に適した温度まで加熱してから供給するように制御する。
【0028】
(実施の形態1)
本実施の形態1の特徴は、有機系廃棄物の1次発酵における発酵過程を堆肥温度によって初期立上り段階、立上り段階、活性化段階の少なくとも3つに分割し、それぞれの発酵段階に必要な発酵条件(供給する空気量と空気温度)を定義して、各発酵段階に必要な空気量の調整は送風機の稼動時間と停止時間の割合を変えて間欠運転を行うことで送風機の無駄な運転を無くすと共に、発酵が進んで堆肥温度が一定温度以上になると空気の加熱を中止するようにして、電気使用量を極力削減するようにしたものである。
【0029】
図2は、本発明の実施の形態1にかかる堆肥化装置の概略構成図である。図2における制御盤12、送風機13、吸気温度センサ14、および、空気加熱ヒータ15は、図1と同様であるので、構成説明を省略する。
【0030】
実施の形態1の特徴的な構成要素である図2の堆肥温度センサ111は、図1の発酵段階検出センサ11の一例であって、発酵槽20内に堆積された有機系廃棄物21が発酵して堆肥化する際に発生する熱によって変化する堆肥温度を検出して、発酵段階を検出するようにしたものである。
【0031】
また、図2に示すように、送風機13から送風管24を介して発酵槽20内の有機系廃棄物21に供給する空気は、途中の空気加熱ヒータ15、圧力計セット部22、および風量調節バルブ23を経由した後、発酵槽20のコンクリート製の底壁の凹溝(図示せず)に配置されたヘッダー管(図示せず)にまず供給され、そのヘッダー管からさらに所定間隔で櫛歯状に延在する複数の送気管(図示せず)に分岐して供給され、その送気管に設けられた複数の噴出口(図示せず)から有機系廃棄物に空気が供給される。なお、この噴出口は、堆積した有機系廃棄物によって目詰まりしないように木材チップ(図示しない)等で覆ってある。
【0032】
次に、実施の形態1の動作を説明する。図3は、実施の形態1における有機系廃棄物の1次発酵過程を示す線図であり、横軸は発酵に要する日数(1日〜7日)、縦軸は有機系廃棄物に供給される送風量と堆肥温度が示されている。
【0033】
具体的には、例えば、Lo℃(吸気温度)が0℃の場合に、ヒータ稼動期間を決めるL℃(堆肥温度)を15℃とし、初期立上り段階から立上り段階に移行するS℃(堆肥温度)を40℃とし、立上り段階から活性化段階に移行するH℃(堆肥温度)を80℃に予め設定しておくものとする(標準値)。
【0034】
このように、堆肥化装置の使用者が予め基準となる温度と、運転パターンを設定するだけで(標準値の場合は設定不要)、図3に示すように、堆肥温度に基づいて分けられる発酵段階応じた運転パターンで送風機から空気が有機系廃棄物に供給されると共に、吸気温度が低い場合、堆肥温度が一定温度以上にならない期間は、電気加熱ヒータ15を稼動させることによって、発酵の初期立上り時に必要な温度の空気を供給することができる。
【0035】
図3に示すように、初期立上り段階は、発酵槽に投入した有機系廃棄物が発酵を開始し、発酵熱によって堆肥温度がS℃(約40℃)に上昇するまでの期間をいう(第1段階)。この段階では、好気性微生物の活動がまだそれ程活発化していないため、空気量は少なくて良いが(稼動4分で停止20分の間欠運転パターンL)、吸気温度がLo℃(約0℃)の空気をそのまま供給すると発酵が進まなくなる恐れがあるため、L℃(約15℃)以上になるように空気加熱ヒータで空気を加熱してから供給する。空気加熱ヒータ15の稼動は、初期立上り段階のうち堆肥温度がL℃(約15℃)になるまでの期間継続される。
【0036】
続いて、立上り段階は、発酵がさらに進んで堆肥温度がS℃(約40℃)からH℃(約80℃)に急激に上昇するまでの期間をいう(第2段階)。この段階では、好気性微生物の活動が活発化してくるため、空気量はある程度必要になってくるが(稼動7分で停止20分の間欠運転パターンH)、堆肥温度が40℃以上と高いので供給される空気温度が必ずしもL℃(約15℃)以上でなくても良く、空気加熱ヒータ15は稼動させない。
【0037】
さらに、活性化段階は、発酵が活性化して堆肥温度がH℃(約80度)を超えてから温度上昇が頭打ちとなり、継続的に堆肥の熟成化が進む期間をいう(第3段階)。この段階では、好気性微生物の活動が最も活発化するため、空気量は多く必要となるが(ここでは連続運転パターンとしたが、稼動時間の割合を多くした間欠運転パターンであっても良い)、堆肥温度が非常に高いので供給される空気温度がL℃(約15℃)以上である必要はなく、空気加熱ヒータ15は稼動させない。
【0038】
なお、実施の形態1では、図2に示すように、堆肥温度センサ111が図中に1つだけ描かれているが、1つに限定する趣旨ではなく、複数のセンサを有機系廃棄物21の様々な場所に配置し、有機系廃棄物21の全体の温度分布を検出し、それに基づいて制御を行うようにしても良い。ここでは、事前に(あるいは、一定期間毎に)複数のセンサを用いて有機系廃棄物21の温度分布を検出し、その中から制御対象(発酵槽内の有機系廃棄物)を代表する堆肥温度センサのみを残し、通常使用時はその測定値を基準として制御対象を簡易に制御することを行っている。また、制御対象が複数ある場合でも、相互に関連していて、測定値が予測可能な場合は、基準となるセンサの測定値から他の制御対象の測定値を予測して制御することも可能となる。このような制御方法は、それ程厳密な制御が要求されない対象を制御する際に、低コストで迅速に制御することが可能なため、非常に有用である。また、実施の形態1での、L、S、Hの温度設定、間欠運転パターンの設定、送風量の設定等は、実験等によって、コストメリットが得られるような値に設置すればよい。
【0039】
(実施の形態2)
本実施の形態2の特徴は、有機系廃棄物の2次発酵における発酵過程を有機系廃棄物の表面付近の酸素濃度を検出することによって、複数の発酵段階に分け、それぞれの発酵段階に応じた必要な空気量を適正に供給すると共に、供給する空気温度が設定値よりも低い場合は電気加熱ヒータを稼動させることによって、発酵の阻害要因をできるだけ除去するようにしたものである。
【0040】
図4は、本発明の実施の形態2にかかる堆肥化装置の概略構成図であり、2次発酵槽に移された有機系廃棄物21の発酵が熟成段階を迎え、ここで堆肥化される。図4における制御盤12、送風機13、吸気温度センサ14、空気加熱ヒータ15、圧力計セット部22、風量調節バルブ23、および、送風管24は、図1および図2と略同様であるので、構成説明を省略する。なお、図4に示す2次発酵を行う発酵槽20は、投入側あるいは取出側から見た図であり、直線式攪拌機械70を回転させながら取出側から投入側(図の奥行き方向)に走行させることで、発酵槽20内の有機系廃棄物21を攪拌しながら投入側から取出側に少しずつ移動させるものである。
【0041】
実施の形態2の特徴的な構成要素である図4の酸素濃度検出センサ112は、図1の発酵段階検出センサ11の一例であって、発酵槽20内に堆積された有機系廃棄物21が発酵して堆肥化する過程で酸素が消費されるので、発酵が活発に行われている付近では酸素濃度が低下する傾向にある。このため、酸素濃度を検出することで発酵状態が判ると共に、必要な空気量も判明するため、これに基づいて発酵段階を検出することが可能となる。
【0042】
図5は、図4に示す2次発酵用の発酵槽全体を横方向から見た図である。図5に示すように、2次発酵用の発酵槽20は、1次発酵が終わった有機系廃棄物を投入側から投入し、直線式攪拌機械70を回転させながら取出側から投入側に走行させることで、発酵槽20内の有機系廃棄物を攪拌して空気の通りを良くし、均質な発酵が行えるようにすると共に、発酵槽20の右側に少しずつ移動させるため、右側に行くほど発酵の熟成度が上がり、堆肥化された有機系廃棄物21を右側の取出側から取り出すことができる。
【0043】
ここでは、図5に示すように、4台の送風機(1)131〜送風機(4)134が発酵槽20の投入側から取出側に順番に配置されていて、それぞれの発酵状態に応じた空気量を個別に供給できるようになっている。
【0044】
次に、実施の形態2の動作を説明する。図6は、実施の形態2における有機系廃棄物の2次発酵過程を示す線図であり、横軸は発酵に要する日数(1日〜25日)、縦軸は有機系廃棄物に供給される送風量と堆肥温度と酸素濃度とが示されている。この図6は、1次発酵が終了して投入された有機系廃棄物を日数の経過と共に行われる発酵制御の状態を追跡したと考えることもできるが、2次発酵用の発酵槽20は、図5に示すように構成されていて、発酵段階に応じて順次右方向に移動させるので、図6の時間軸を図5の発酵槽20の位置関係にそのまま置き換えて考えることもできる。
【0045】
まず、図5に示すように、酸素濃度検出センサ112は、送風機(1)131が配置された有機系廃棄物21の表面の直上付近に配置されており、1次発酵が終わったばかりの有機系廃棄物21の酸素濃度を検出することができる。2次発酵における酸素の消費傾向は、図6に示すように、2次発酵が継続して行われ、発酵が熟成段階に入ってくると、好気性微生物の活動が徐々に低下し始め、それに伴って酸素の消費量も少しずつ低下していくと共に、発酵温度(堆肥温度)も低下する傾向にある。その結果、酸素濃度曲線に見られるように、熟成が進むに連れて酸素濃度が上昇することになる。
【0046】
図6に示す、4つの発酵段階において各送風機の運転パターンを設定するにあたって、事前に酸素濃度検出センサ112を少なくとも4ヶ所(各送風機から供給される有機系廃棄物の直上付近)に配置し、検出された各酸素濃度に基づいて必要な空気量を計算し、各送風機の稼動時間と停止時間とを組み合わせた間欠運転パターンを作成するようにする。例えば、送風機(1)の間欠運転パターンは、送風機を9分稼動させて51分停止させ、送風機(2)は、送風機を7分稼動させて53分停止させ、送風機(3)は、送風機を6分稼動させて54分停止させ、送風機(4)は、送風機を4分稼動させて56分停止させる。このような必要空気量の段階的な減少傾向は、発酵が熟成段階に入って発酵が落ち着いてきた傾向と一致する。
【0047】
また、送風機による吸気温度は、ここではL℃(約15℃)を設定吸気温度とし、図4の吸気温度センサ14の検出値が設定吸気温度を下回ると、空気加熱ヒータ15で15℃以上に加熱してから供給するよう制御盤12によって制御される。吸気温度が15℃以上であれば、空気加熱ヒータ15を使わずにそのまま供給することになる。
【0048】
このように、実施の形態2によれば、発酵槽内の有機系廃棄物の発酵過程を複数の発酵段階に分け、各発酵段階を酸素濃度に基づいて検出し、各発酵段階に必要な空気量と空気温度条件が満たされるように自動制御が行われるため、手間がかからず、それぞれの発酵段階に適した条件に基づいて無駄のない発酵処理が可能となり、送風機やヒータなどに要する電気使用量を大幅に削減することができる。例えば、前記の場合では、段階的間欠運転は、約1/6〜1/14程度の電気使用量で済み、平均しても約1/8程度で済むため、仮に連続運転した場合と比較すると大幅な電気使用量の削減を実現することができる。
【0049】
さらに、空気加熱ヒータ15の使用状況についても、設定吸気温度を設定し、その設定吸気温度以下になった場合にのみヒータを使用するため、仮にヒータを連続使用した場合と比べると図6の場合は電気ヒータに要する電気使用量を1/2以下に抑えることができる。
【0050】
なお、実施の形態2では、図5に示すように、酸素濃度検出センサ112が図中に1つだけ描かれているが、1つに限定する趣旨ではなく、複数のセンサを常時配置し、その酸素濃度検出値に基づいて、各送風機の間欠運転パターンを選択しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0051】
以上のように、本発明にかかる堆肥化装置および堆肥化方法は、有機系廃棄物のリサイクルに有用であり、特に、糞尿等の有機系廃棄物のリサイクルに適している。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明にかかる堆肥化装置の特徴的な構成要素を説明するブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態1にかかる堆肥化装置の概略構成図である。
【図3】実施の形態1における有機系廃棄物の1次発酵過程を示す線図である。
【図4】本発明の実施の形態2にかかる堆肥化装置の概略構成図である。
【図5】図4に示す2次発酵用の発酵槽全体を横方向から見た図である。
【図6】実施の形態2における有機系廃棄物の2次発酵過程を示す線図である。
【符号の説明】
【0053】
10 堆肥化装置
11 発酵段階検出センサ
12 制御盤
13 送風機
14 吸気温度センサ
15 空気加熱ヒータ
20 発酵槽
21 有機系廃棄物
22 圧力計セット部
23 風量調節バルブ
24 送風管
70 直線式攪拌機械
111 堆肥温度センサ
112 酸素濃度検出センサ
131 送風機(1)
132 送風機(2)
133 送風機(3)
134 送風機(4)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機系廃棄物を堆積して発酵させる発酵槽と、
該発酵槽に配置された送気管を通して前記有機系廃棄物に空気を供給する送風機と、
前記有機系廃棄物の発酵段階を検出する発酵段階検出手段と、
前記送風機の送風量を制御する制御手段と
を備え、
前記制御手段が前記発酵段階検出手段により検出した有機系廃棄物の発酵段階に応じて前記送風機の送風量を制御し、効率的に有機系廃棄物を発酵させることを特徴とする堆肥化装置。
【請求項2】
前記送風機が吸気する空気の温度を検出する吸気温度検出手段と、
前記送風機から供給される空気を加熱する空気加熱手段と
をさらに備え、
前記制御手段は、吸気温度検出手段で検出された空気の温度が前記発酵段階検出手段で検出した発酵段階に必要な温度以下となった場合に、前記空気加熱手段を制御して送風機から供給される空気を加熱し、各発酵段階に必要な温度の空気を供給することを特徴とする請求項1に記載の堆肥化装置。
【請求項3】
前記発酵段階検出手段は、前記有機系廃棄物が発酵して堆肥化する際に発する発酵熱を検出する堆肥温度センサであって、
前記有機系廃棄物が発酵を開始して発酵熱によって堆肥温度が上昇し始める初期立上り段階と、発酵がさらに進んで堆肥温度が急激に上昇する立上り段階と、発酵が活性化して継続的に堆肥の熟成が進み堆肥温度の上昇が頭打ちになる活性化段階の少なくとも3つの発酵段階を堆肥温度で判別し、前記堆肥温度センサで検出した堆肥温度による発酵段階に応じた送風量と空気温度が得られるように前記制御手段で制御することを特徴とする請求項2に記載の堆肥化装置。
【請求項4】
前記発酵段階検出手段は、前記有機系廃棄物の発酵が活性化し、継続的に堆肥の熟成が進むに連れて変化する酸素消費量に応じた酸素濃度の変化を検出する酸素濃度検出センサであって、
前記酸素濃度レベルを複数段階に分けて、前記酸素濃度検出センサで検出した酸素濃度による発酵段階に応じた送風量と空気温度が得られるように前記制御手段が制御することを特徴とする請求項2に記載の堆肥化装置。
【請求項5】
発酵槽内に堆積した有機系廃棄物の発酵段階を検出する発酵段階検出ステップと、
発酵段階に応じた必要な量の空気を前記有機系廃棄物に供給する空気供給ステップと
を含み、
前記空気供給ステップでは、有機系廃棄物の発酵段階に応じて送風量を制御することを特徴とする堆肥化方法。
【請求項6】
前記有機系廃棄物に送風する空気の吸気温度を検出する吸気温度検出ステップと、
吸気した空気を前記有機系廃棄物に送風する前に加熱する空気加熱ステップと
をさらに含み、
検出された吸気温度が発酵段階に必要な空気温度を下回っている場合に、前記有機系廃棄物へ送風する前に空気を加熱し、各発酵段階に必要な温度の空気を供給することを特徴とする請求項5に記載の堆肥化方法。
【請求項7】
前記発酵段階検出ステップは、前記有機系廃棄物が発酵して堆肥化する際に発する発酵熱を検出することによって発酵段階を判別するもので、
前記有機系廃棄物が発酵を開始して発酵熱によって堆肥温度が上昇し始める初期立上り段階と、発酵がさらに進んで堆肥温度が急激に上昇する立上り段階と、発酵が活性化して継続的に堆肥の熟成が進み堆肥温度の上昇が頭打ちになる活性化段階の少なくとも3つの発酵段階を堆肥温度によって判別し、発酵段階に応じた送風量と空気温度が得られるように制御することを特徴とする請求項6に記載の堆肥化方法。
【請求項8】
前記発酵段階検出ステップは、前記有機系廃棄物の発酵が活性化し、継続的に堆肥の熟成が進むに連れて変化する酸素消費量に応じた酸素濃度の変化を検出することによって発酵段階を判別するもので、
前記酸素濃度レベルを複数段階に分けて発酵段階を酸素濃度によって判別し、発酵段階に応じた送風量と空気温度が得られるように制御することを特徴とする請求項6に記載の堆肥化方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−335630(P2006−335630A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−165992(P2005−165992)
【出願日】平成17年6月6日(2005.6.6)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【Fターム(参考)】