説明

堆肥化装置および堆肥化方法

【課題】堆肥化の際に問題となる悪臭の放散を回避するためには、堆肥化装置の悪臭漏出防止が必要であり、それとともに、換気量を少なくして、換気により排気される臭気を脱臭する脱臭装置の小型化も必要となる。換気装置および脱臭装置の大型化は、省エネルギーに反するだけでなく、堆肥化の効率自体も低下させることとなる。
【解決手段】所定高さを有する三方の壁と扉手段を有する屋根部によって囲まれる空間の中に堆肥原料を堆積させ、前記堆肥原料が堆積された高さに応じて前記屋根部を上下に可動させ、前記囲いの中を所定の換気回数で換気しながら前記堆肥原料の堆肥化発酵を行う堆肥化方法によって悪臭漏出防止と換気により排気される臭気風量を少なくする堆肥化方法および装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、悪臭対策のため、換気対象容積を可変化し最適化を行い、堆肥化の発酵槽を密閉化し、悪臭ガス量の削減を行う通気型堆肥舎等の堆肥化装置に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
堆肥化とは、動物の排泄物や、生ゴミといった廃棄有機物を土壌に還元可能なまでに分解(以後「堆肥化発酵」若しくは単に「発酵」ともいう。)させることをいう。このためには、微生物を利用した方法がもっぱら用いられる。基本的には、好気性微生物によって、炭水化物は二酸化炭素と水に、脂肪とタンパク質は二酸化炭素と水とアンモニアに分解させる。好気性微生物を利用する場合は、酸素を必要とする。つまり、堆肥化を進める堆肥化施設は、酸素を供給し、二酸化炭素を排出する通気機能が必要となる。なお、堆肥舎等およびその付帯設備を含めた堆肥化施設を堆肥化装置と呼ぶ。
【0003】
ところで、堆肥化装置において大きな問題の1つは、悪臭対策である。堆肥原料は生フン若しくはそれを乾燥したものであるため、悪臭を発している。そのため、施設内の空気を換気する際に、悪臭が放出されるからである。
【0004】
堆肥化装置の悪臭対策は、悪臭発生源(発酵槽)からの悪臭漏出防止である。しかし、完全に密閉してしまうと、堆肥化に必要な通気性が確保できなくなる。したがって、堆肥化装置から悪臭が放出されないようにした上で、発酵槽内の上部空間の適切な換気、その換気空気(悪臭ガス)の脱臭といった手段が必要となる。
【0005】
換気は、堆肥化で発生した水蒸気等を外部に排出するために必要であり、牛フンでは1時間あたり発酵槽の堆肥原料を除く空間容積を1回の単位として8回以上が目安とされている。この換気量が確保できなければ、水蒸気が堆肥原料に戻り、堆肥化が阻害される。水蒸気の戻りは、堆肥中の酸素不足および堆肥の温度低下に繋がるため、好気性微生物の活動を阻害することになるからである。
【0006】
一方、換気量が増えるほど、脱臭しなければならない悪臭ガス量が増えて脱臭装置が大きくなる。また、換気量の増加は、外気取り込み量が増加することでもあるため、悪臭ガスの温湿度が外気の温湿度に影響をうけやすくなり、後段における脱臭プロセスの負担増に繋がる。そこで、堆肥原料上の空間である換気室の容積を小さくし、換気量を低減できる技術が求められている。
【0007】
従来、堆肥化装置(堆肥舎等)を密閉構造とする場合は、ショベルローダ等による切返し作業時等に邪魔にならないよう、前面はカーテン等の密閉が可能な構造とし、バケットや堆肥原料が当たらない程度の高さまで天井を高くした空間とした上で、換気手段を設けるのが一般的であった。
【0008】
さらに、換気装置や脱臭装置の大型化を回避するために、特許文献1では、建屋内の空間容積を調整可能とし、外気導入口および排出口を除いて密閉化する堆肥化方法が開示されている。
【0009】
図11にこの装置を示す。堆肥化装置100は壁面102および天井103を有する構造物104で周囲を覆われており、堆肥化室105は、天井から吊り下げられた合成樹脂製シート等の可撓性で気体不透過性の材料から作製された上部が密閉され、また下部が開放された袋状密閉部材106によって覆われている。
【0010】
また、袋状密閉部材106は上部が構造物104に取り付けられた昇降装置107によって吊り下げられており、下部は構造物104の壁面に取り付けられた固定部材108に取付けられている。このような構成を有する堆肥化装置100では、切り返しや堆肥原料111の搬入などの際には、袋状密閉部材106を上げておき、これらの作業が終了したら再び袋状密閉部材106を下げる。袋状密閉部材106を下げれば、堆肥原料111が載置されている部分の容量は小さくなり、換気装置や脱臭装置も大型のものでなくてもよい。
【0011】
また、特許文献1には、発酵して温度の上がった堆肥原料111から湧き出る湯気が屋根部分で結露し、水滴が堆肥原料111に落下することを防止するために、屋根部分に傾斜をつけたり、水分を回収するための樋を形成することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2005−239483号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
近年は大規模化の進んだ生産者も多くいるため、処理しなければならない家畜の排泄物の量も多くなっている。これらを一括して堆肥化処理すると、当然多量の堆肥原料を扱う必要がある。その規模は、堆肥の切返しを行う際には、ショベルローダといった重機で行わなければならないほどの量である。従って、堆肥化装置も、ショベルローダが十分に活動できる程度の天井の高さが必要とされ、大きな空間を有することとなる。この空間を全て密閉するのは、上記に述べたとおり、換気装置の大型化を招く。
【0014】
特許文献1は、ショベルローダなどの重機で作業が必要な際には天井を高く設定し、そうでない時には天井を所定の高さまで下げる技術である。重機などで作業しない場合には、発酵槽に相当する部分の容積を小さくするため、ある程度の省エネルギー化は可能である。
【0015】
しかし、堆肥は堆肥化が進むにつれて、体積は減少すると共に、悪臭も減る。また、堆肥化原料の搬入も常に一定量である保証はなく、多い場合もあれば少ない場合もある。このような状況下であっても、常に所定の高さまでしか天井の高さを変更できないとすると、搬入した堆肥化原料の量若しくは発酵の進行に係らず、換気量が変わらないことになる。
【0016】
これは、少ない堆肥に対して換気量が多すぎる場合が生じ、堆肥の低温化による堆肥化阻害するという課題を生じさせる。また、臭気ガスの低温化が、脱臭装置側で利用する脱臭用微生物の生育環境を悪化させるという課題も生じさせる。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は上記課題に鑑みて想到されたものであり、処理すべき堆肥原料の量に応じて、堆肥化装置内の空間を変化させることができる堆肥化装置および方法を提供するものである。
【0018】
より具体的には、本発明の堆肥化方法は、
所定高さを有する三方の壁と扉手段を有する屋根部によって囲まれる空間の中に堆肥原料を堆積させ、前記堆肥原料が堆積された高さに応じて前記屋根部を上下に可動させ、前記囲いの中を所定の換気回数で換気しながら前記堆肥原料の堆肥化発酵を行う堆肥化方法である。
【0019】
また、内部に堆肥原料を堆積させる所定高さの縦壁と扉手段を有する屋根部によって形成される発酵槽と、
前記発酵槽の中を換気する換気手段と、
前記屋根部を上下に可動する屋根上下手段を備え、
前記屋根上下手段により前記堆肥原料の堆積された高さに応じて前記屋根部を上下に可動し、
前記換気手段により前記発酵槽の中を所定の換気回数で換気し、前記堆肥原料の堆肥化発酵を行う堆肥化装置である。
【発明の効果】
【0020】
本発明の堆肥化方法および堆肥化装置では、堆積させた堆肥原料の高さに応じて屋根を上下に可動させるため、堆肥原料の表面と屋根部との間の空間を所定の間隔に保持することができるので、堆肥原料の量に応じて適切な換気ができると共に、換気装置や脱臭装置の大型化や、不要なエネルギーの消費を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の堆肥化装置の構成を示す斜視図。
【図2】本発明の堆肥化装置の平面図。
【図3】本発明の堆肥化装置の側面図。
【図4】本発明の堆肥化装置の断面図。
【図5】本発明の堆肥化装置の屋根部が下がったところを示す断面図。
【図6】本発明の堆肥化装置を複数併設した様子を示す斜視図。
【図7】本発明の実施形態2に係る堆肥化装置の断面図。
【図8】実施形態2の堆肥化装置の屋根部が下がったところを示す断面図。
【図9】本発明の実施形態3に係る堆肥化装置の斜視図。
【図10】本発明の実施形態3に係る堆肥化装置の断面図。
【図11】従来の堆肥化装置を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(実施の形態1)
図1(a)に本発明の堆肥化装置1の構成を示す斜視図を示し、図1(b)には、屋根部14の正面図を示す。また、図2には堆肥化装置1の平面図を示し、図3には堆肥化装置1の側面図を示す。本発明の堆肥化装置1は、床10の周囲に平面視コの字型に設置された縦壁12(12b、12s)と、縦壁12の内壁面に沿って上下に可動できる屋根部14と、縦壁12が設置されていない面に設けられる入口部16と、縦壁12のいずれかの外面に沿って配置された換気装置20および脱臭装置22からなる。また、床10下には通気用通路24が形成されており、通気用通路24に空気を供給するブロア26が縦壁12の外側に設けられる。すなわち、本発明の堆肥化装置1は、通気型堆肥舎に分類される。
【0023】
床10および縦壁12は、コンクリート等の建築材で構成することができる。堆肥原料は家畜等の排泄物が主であり、様々な微生物が含まれるため、セルロースが主たる成分となる木材等は好ましくない。
【0024】
床10は略長方形で形成され、長辺若しくは短辺のうち、1辺を入口部16とする。ここから堆肥原料を搬入し、処理済みの堆肥を取り出す。入口部16以外の3辺にはそれぞれ縦壁12を形成する。なお、縦壁12を境界として、床10側が堆肥化装置1の内側であり、床10側と反対側が堆肥化装置1の外側である。
【0025】
床10には、通気用通路24が形成されている(図2参照)。なお、図2では、屋根部14は省略してある。通気用通路24は、堆積させた堆肥に空気を供給するためのものである。通気用通路24は、堆肥の搬入搬出の際にショベルローダが通過しても、損傷を受けないように、床10面から掘り下げた溝内に形成するのが好ましい(図3参照)。通気は、堆肥原料の単位体積(m)当たり、0.05〜0.1m/分程度供給するのが好ましいとされ、堆肥化装置1の容量に応じて配設することができる。通気用通路24は、縦壁12の下をくぐり、堆肥化装置1の外側に配置されたブロア26まで延設される(図2参照)。
【0026】
縦壁12は内側に堆積させた堆肥原料を支えるため、内側から外側に向かう応力に耐えることができる強度が付与される。特に、未発酵の堆肥原料は、水分量が多いため、密度が高く、積み上げた際には、かなりの重量になる。なお、入口部16と対向する縦壁12を後壁12bと呼び、その他の対向する2辺に形成された縦壁12は側壁12sと呼ぶ。入口部16から後壁12b方向は堆肥化装置1の前後方向であり、側壁12sの法線方向が堆肥化装置1の左右方向である。また床10面の法線方向が堆肥化装置1の上下方向である。
【0027】
図1(b)を参照して、屋根部14は、棟14tと軒14sからなる切妻屋根の形状をしており、軒14sおよび屋根部14の後端は、側壁12sおよび後壁12bより堆肥化装置1の内側になるように形成されている。縦壁12に沿って上下に移動できるためである。また、棟14tから軒14sにかけては傾斜面が形成される。屋根部14の内面14iには水蒸気があたり、凝集して水滴17aができる。この水滴17aを堆肥原料に落とさないために、水滴17aを軒14sに流すためである。
【0028】
従って、軒14sに流れやすいように、屋根部14の内面14iには溝(図示せず)が形成されていてもよい。軒14sには屋根部14の内面14iを伝ってきた水滴17aを回収するための樋15(15a)が形成されている。この樋15は屋根部14の内面14iの水滴17aを回収するため、内樋15aと呼ぶ。なお、屋根部14の形状はこの形状に限定されるものではなく、寄棟屋根やその他の形状の屋根であっても良い。また、棟14tから軒14sにかけての形状も本実施例では、直線であるが、そり形状であったり、逆にむくり(ドーム型)形状であってもよい。
【0029】
さらにまた、屋根部14の軒14sは後端から前端に向かって傾斜を有している(図1(a)参照)。樋15に溜まった水を一方に回収するためである。樋15の前端には、樋15を流れてきた水を回収するためのホース(図示せず)が連結される。なお、軒14sは、前端から後端に傾斜させ、樋15を伝ってきた水は後壁12b側から回収するようにしてもよい。
【0030】
また、屋根部14の軒14sには、雨が降った際に、屋根部14の外面14oを伝って流れる雨水17bを回収する樋15も設けられる。この樋15は、外樋15bと呼ぶ。外樋15bからの水も軒14sの前端若しくは後端から回収してよい。また、縦壁12の上端には、屋根部14にわずかにかかる庇12hを設けてもよい。雨が屋根部14と縦壁12の隙間から入らないためである。
【0031】
屋根部14は、縦壁12に対して上下に移動可能に支持されるので、屋根部14を床10側から伸縮自在な柱を有する支持装置30aか、若しくは縦壁12の上端から屋根部14を高さ調整可能に吊るす懸架装置30bが設けられる。これらは、いずれを用いてもよく、また屋根部14の前方と後方で支持装置30aと懸架装置30bを組み合わせて用いてもよい。支持装置30aと懸架装置30bを総称して屋根上下手段30と呼ぶ。
【0032】
図4には、堆肥原料8が搬入され堆積された堆肥化装置1を屋根部14の棟14tに沿って切った断面図を示す。屋根部14の内側には、所定長の支柱32pの先端に圧力センサ33aが設置された位置検出器32が設置される。圧力センサ33aは、堆肥原料8を堆積させ、屋根部14を屋根上下手段30で降下させる際、堆肥原料8の表面に突き当たるとその圧力を検出して信号を出すように調整される。また、支柱32pには、温度センサ33bを設けていても良い。堆肥の発酵程度は温度で把握することができるからである。圧力センサ33aおよび温度センサ33bをセンサ手段33と呼ぶ。
【0033】
図4では、位置検出器32を3箇所に設置した場合を示すが、設置する数はこれに限定されるものではない。また、屋根部14が後端から前端に向かって傾斜を有している場合は、圧力センサ33aの先端は、ほぼ同一平面となるように、各支柱32pの長さを調整するのが好ましい。
【0034】
また、屋根部14の後端側には、排気口34が設けられる。換気装置20およびそれに続く脱臭装置22は、伸縮自在のホース21を介して排気口34に連結される。
【0035】
屋根部14の前端には、高さが調節可能なカーテン若しくはシャッターが設けられる。入口部16を覆うためである。カーテン若しくはシャッターは、入口部16を覆う扉手段36と呼ぶ。扉手段36は、屋根部14の高さによらず、床10との間にわずかに隙間が開くように設定される。換気のための吸気口34iを形成するからである。従って、扉手段36は吸気口34iを有するといっても良い。なお、吸気口34iを有する扉手段36と排気口34と換気装置20と脱臭装置22とこれらを連結するパイプ類が換気手段を構成する。
【0036】
従って、本発明の堆肥化装置1では、床10と縦壁12と屋根部14と扉手段36によって囲まれる空間内で堆肥原料8を堆肥化させる。従って、この空間を発酵槽と呼んでもよい。
【0037】
次に、本発明の堆肥化装置1を用いた堆肥化方法について説明する。堆肥化装置1に堆肥原料8を搬入する再には、屋根部14は十分に高い位置に設定しておく。もちろん、入口部16は開放状態でよい。堆肥原料8は、ショベルローダによって後壁12b側から入口部16に向かって堆積原料8の頂上面8fができるだけ水平になるように堆積させる。最も効率の良い堆積方法であるし、また、堆肥原料8と屋根部14の間の空間13を均一にするためである。入口部16近辺の堆肥原料8aは、45度〜60度程度の傾斜面をつけて堆積させる。
【0038】
したがって、側壁12s側から見た堆肥原料8の断面は、1つの側辺が上辺および底辺に対して直角な台形となる。言い換えると、1つの側辺が上下辺に対して直角となる台形を底面とする四角柱を横に倒した形状で、堆肥原料8は堆肥化装置1に収納されている。
【0039】
この状態で、屋根部14を降下させる。屋根部14が降下して位置検出器32が堆肥原料8の頂上面8fに当接したことを検出したら、屋根部14の降下を停止させる。これは、図示しない制御装置によって人の判断を介さずに自動で停止させてもよいし、位置検出器32の当接信号に基づいて人手で停止させてもよい。自動で降下させるようにしておけば、堆肥の体積が減少した際も、自動的に追従して屋根部14は降下するので、便利である。そして、入口部16を扉手段36で閉じる。屋根部14と堆肥原料8の頂上面8fとの間は、例えば、1cm〜20cmに設定してよい。
【0040】
次にブロア26を駆動させて、通気用通路24から空気を送る。通気は既述しているが、堆肥原料8の単位体積(m)当たり、0.05〜0.1m/分程度供給するのが好ましい。そして、次に換気装置20を駆動させて、換気を行う。換気は換気装置20によって、屋根部14の排気口34から堆肥化装置1の内部の空気を吸引することで行う。吸引された分の空気は扉手段36の吸気口34iから供給される。
【0041】
換気量は、多すぎると、堆肥原料8の温度を冷やすこととなり、発酵を阻害することに繋がる。また、少なすぎると、発酵によって生じた水蒸気を外部に排出できず、やはり発酵の阻害を生じさせる。さらに、発酵温度によっても異なる。発酵が盛んに行われている場合は、発生する水蒸気も多いので、十分な換気が必要である。しかし、発酵開始時や、また発酵が終了に近づくと、堆肥原料8の温度は下がるため、換気量は減らしても良い。換気量の制御は換気装置20の吸引量を変化させることで行う。従って、換気装置20は、インバータ制御できるものが望ましい。
【0042】
換気量の目安としては、発酵が盛んに行われている場合(堆肥温度が約60℃)で、1時間につき、堆肥化装置1内の堆肥原料8以外の容積分の約10倍(約10回分)の空気と、通気されている空気分の空気が流れるように設定するのが望ましい。
【0043】
脱臭装置22は、換気装置20の排気側と連結パイプ20pで連結される。従って、換気装置20の処理量は脱臭装置22の処理量でもある。脱臭装置22は、薬品を用いた方法や、微生物を利用した方法などどちらでも利用可能である。
【0044】
発酵が進むと、堆肥原料8は堆積が減少する。水分が少なくなるのと、より低分子の有機物に分解が進むからである。この場合は、図4の屋根部14の位置から、堆肥原料8の頂上面8fは下方に下がる。その際は、再び屋根部14を下げ、位置検出器32が頂上面8fに当接するまで屋根部14を下げる(図5参照)。このようにすることで、屋根部14と頂上面8fの距離13hは、常に一定に保持することができる。なお、圧力センサ33aの当接圧力が減少した時点で、堆肥原料8の堆積が減少したことを検出できるので、屋根部14の降下は、圧力センサ33aからの信号を受信した、図示しない制御部が制御して行うようにしてもよい。
【0045】
図6には、本発明の堆肥化装置1を複数併設した状態を示す。通気型堆肥化装置は、堆肥原料に通気を行うため、堆積させた好気性微生物の活動は比較的満遍なく行われる。しかし、堆積させた堆肥原料の表面より内部の方が温度が上昇しやすく、発酵の進み具合も中心部の方が早い。そこで、切返し若しくは鋤き返しといった作業が必要となる。本発明の堆肥化装置1を複数台併設し、堆肥化装置1aから1dに向かって、所定期間(例えば1週間毎)に堆肥原料を移し変えることで、鋤き返しと新しい堆肥原料の搬入を周期的に行うことができる。
【0046】
より具体的には、まず、堆肥化装置1dの堆肥化原料を1次発酵完了の堆肥として搬出する(40)。なお、1次発酵とは、易分解性低分子の有機物が分解された状態をいう。例えば、セルロース等の難分解性高分子の有機物を分解するには、さらに数週間の時間をかければよい。
【0047】
次に、堆肥化装置1cの堆肥原料を堆肥化装置1dに(41)、堆肥化装置1bの堆肥原料を堆肥化装置1cに(42)、堆肥化装置1aの堆肥原料を堆肥化装置1bに(43)、順次移動させる。移動の際、および新たな堆肥化装置に搬入され堆積される際に、鋤き返しが行われる。そして、新たな堆肥原料(生フン)が堆肥化装置1aに搬入し(44)、新たな発酵工程が開始される。なお、伸縮自在のホース21a、21b、21c、21dは、図示はしていないが、連通ダクトで連通し、その連通ダクトと1つの換気装置20を連通する構成としても良い。
【0048】
本発明の堆肥化装置1では、堆肥を発酵させる間、堆肥化装置1内を換気し、換気した空気は脱臭装置22を介して放出するため、悪臭を垂れ流し状態にしない。このように、換気は行うものの、悪臭をそのまま放出しない状態を略密閉化すると呼ぶ。本発明の堆肥化装置は、略密閉化されている。
【0049】
また、本発明の堆肥化装置1では、位置検出器32が屋根部14の内側に配置されているので、搬入する堆肥原料8の分量が変化しても、頂上面8fが平らに近くなるように堆積させれば、堆肥原料8と屋根部14の間の空間を一定にすることができるため、発酵にほどよい換気を行うことができる。また、堆肥原料8が発酵によって堆積減少を起こしたときでも、その減少に応じて屋根部14の高さを低くすることができるので、やはり堆肥原料8と屋根部14の間隔は一定に保持することができる。従って、エネルギーを不要に多く消費することなく、また堆肥化も効率よく進める事ができる。
【0050】
また、屋根部14には、傾斜を設けたので、堆肥から生じた水蒸気が凝集した水滴は軒14sに流れ、軒14sに設けた内樋15aで回収されるので、堆肥上に落下して、発酵を阻害することはない。
【0051】
(実施の形態2)
図7に本実施の形態に係る堆肥化装置2の概略図を示す。本実施の形態では、屋根部14の内側に設けた位置検出器32が実施の形態1と異なる。また、実施の形態1で説明した部分と同じ部分の説明は省略する。本実施の形態では、位置検出器32は、先端に圧力センサ33aおよび温度センサ33bが取り付けられているだけでなく、支柱32pが伸縮自在になっている。すなわち、支柱32pは、外筒32oと内筒32iからなり、内筒32iが外筒32oに収納されることで、支柱32pの長さを可変させることができる。
【0052】
また、外筒32oと内筒32iの間には、長さセンサ33cが設けられている。したがって、屋根部14が降下してきて、圧力センサ33aが堆肥原料8の頂上面8fに当接すると、そこからは支柱32p自体が短縮するように構成される。さらに、この時長さセンサ33cによって屋根部14と、堆肥原料8の頂上面8fの高さ13hを計測することができる。なお、長さセンサ33cは、圧力センサ33a、温度センサ33bと共に、センサ手段33に含まれる。
【0053】
このような構成にすると、屋根部14と堆肥原料8の間の空間13の大きさを自由に変更することができる。実施の形態1でも説明したように、換気量は発酵の程度によっても変更すべき量である。しかし、換気装置20の吸気量を制御するのは、容易でない場合もある。すなわち、換気装置20および脱臭装置22は常に一定の処理運転を行うように設計される場合である。
【0054】
本発明の堆肥化装置2は換気装置20や脱臭装置22がそのような一定運転をする場合であっても、発酵に最適な換気を行うことができる。
【0055】
本実施の形態2の堆肥化装置2を用いた堆肥化方法について説明する。堆肥原料8を搬入し、側面断面で略直角台形状に堆積させる点までは実施の形態1と同じである。次に、屋根部14を降下させ、発酵初期の屋根高さ38aに設定し、換気装置20および脱臭装置22を稼動させる。この時の屋根高さとは、堆肥原料の頂上面と屋根部14との間の距離(高さ13h)をいう。
【0056】
発酵初期の屋根高さ38aは、発酵が盛んに行われている時の屋根高さ38bより高く設定する。すると、換気装置20が排出する空気の量は常に一定であっても、堆肥化装置2内の堆肥以外の空間の1時間あたりの換気回数は減ることになる。1回当たりに排出する体積が増えるからである。また、この時、堆肥原料8の表面を通過する風速を調整することにもなる。
【0057】
そして、温度センサ33bによって測定される発酵温度が上昇すれば、それに従って、屋根部14を低くする。図8には、発酵が進んだ場合の屋根部14を示す。堆肥原料8も発酵によって体積が減少している。発酵が進んだ場合の屋根高さ38bは、発酵初期の屋根高さ38aより低くなる。
【0058】
また、屋根高さと頂上面8fの間の距離(高さ13h)を制御すると、堆肥原料8の表面を通過する風速を変化させることにもなる。そこで、外気温が低くなって、堆肥原料8の温度が十分に高くならない場合には、屋根部14を上昇させ、堆肥原料8の表面の風速を調整してもよい。
【0059】
具体的には、図示しない制御部が、温度センサ33bおよび圧力センサ33aで、堆肥原料8の頂上面8fの体積減少による降下分および温度上昇を検出し、長さセンサ33cによって、屋根高さと頂上面8fの距離(高さ13h)を制御する。このようにすることで、換気装置20の排気量が一定であっても、発酵の温度に応じて、屋根高さ38を調節することで、換気量を調整することができる。なお、本発明の堆肥化装置2も、実施の形態1の図6同様に、複数個を並設することができる。
【0060】
(実施の形態3)
図9に本実施の形態の堆肥化装置3の構成を示し、図10には、側面からの断面図を示す。本実施の形態の堆肥化装置3では、屋根部14が後壁12bの近傍の側壁12sの上端部分を枢軸14rとして揺動可能に枢支されている。従って、屋根部14を上下させる屋根上下手段30は、屋根部14の前端部にだけ設けられている。扉手段36は、屋根部14の前端にヒンジ構造で揺動可能に枢支された前扉36cである。
【0061】
前扉36cは、プラスチックのような軽量材で構成された板状であって、屋根部14とは、ヒンジ36zによって連結されている(図10参照)。前扉36cの高さ36chは、入口部16の前面を覆う高さはなく、堆肥化装置3に堆肥原料8を搬入して、屋根部14を傾斜させた際に、入口部16が隠れる程度の高さがあればよい。
【0062】
また、前扉36cの下端には、ローラ37が設けられる。屋根部14の傾斜を大きくした際に、前扉36cが前方向に移動しやすくするためである。このようにすることで、前扉36cは、屋根部14と一体的に形成することができ、扉手段36を簡素化することができる。
【0063】
また、位置検出器32に設けられる、センサ手段(圧力センサ33a、温度センサ33bおよび長さセンサ33c)は実施の形態1若しくは2のいずれかもしくは両方を備えていてもよい。
【0064】
また、屋根部14の前端が上下するため、屋根部14は必ず後壁12bから入口部16に向かって傾斜する。したがって、屋根部14の内面14iに生じる水滴は、必ず屋根部14の前端に向かって流れるので、内樋15aは、屋根部14の前端に設けられる。排気口34は、屋根部14若しくは後壁12bの上部に設けることができる。屋根部14の後端は上下に動かないからである。
【0065】
本実施の形態3の堆肥化装置3を用いた堆肥化方法は、実施の形態1若しくは2と同じである。すなわち、堆肥原料8を搬入してから堆積させ、位置検出器32の出力に応じて、屋根部14を降下させる(傾斜させる)。この際、屋根部14の後端は降下しないので、換気量の調整は、実施の形態1や2と比較すると、細かい調整は困難になる。しかし、屋根上下手段30や、扉手段36が簡便になるという効果がある。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、通気型堆肥化装置に好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0067】
1、2、3、 堆肥化装置
8 堆肥原料
8f 頂上面
10 床
12 縦壁(12b 後壁、12s 側壁)
14 屋根部(14t 棟、14s 軒、14i 内面、14o 外面)
13 空間
15 樋(15a 内樋、15b 外樋)
16 入口部
17a 水滴、17b 雨水
20 換気装置、20p 連結パイプ
21 ホース
22 脱臭装置
24 通気用通路
26 ブロア
30 屋根上下手段(30a 支持装置、30b 懸架装置)
32 位置検出器、32p 支柱、32o 外筒、32i 内筒
33 センサ手段(33a 圧力センサ、33b 温度センサ、33c 長さセンサ)
34 排気口、34i吸気口
36 扉手段、36c 前扉、36z ヒンジ、36ch 高さ
37 ローラ
38 屋根高さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定高さを有する三方の壁と扉手段を有する屋根部によって囲まれる空間の中に堆肥原料を堆積させ、
前記堆肥原料が堆積された高さに応じて前記屋根部を上下に可動させ、
前記囲いの中を所定の換気回数で換気しながら前記堆肥原料の堆肥化発酵を行う堆肥化方法。
【請求項2】
前記屋根部と前記堆肥原料の間隔を所定範囲内にする請求項1記載の堆肥化方法。
【請求項3】
前記堆肥原料の単位容積当たりの換気量および前記堆肥原料表面の風速が所定範囲内となるように、前記屋根部を上下に可動する請求項1記載の堆肥化方法。
【請求項4】
前記屋根部を傾斜させて、前記屋根部の内面に結露する結露水を集水する請求項1乃至3のいずれかに記載の堆肥化方法。
【請求項5】
内部に堆肥原料を堆積させる所定高さの縦壁と扉手段を有する屋根部によって形成される発酵槽と、
前記発酵槽の中を換気する換気手段と、
前記屋根部を上下に可動する屋根上下手段を備え、
前記屋根上下手段により前記堆肥原料の堆積された高さに応じて前記屋根部を上下に可動し、
前記換気手段により前記発酵槽の中を所定の換気回数で換気し、前記堆肥原料の堆肥化発酵を行う堆肥化装置。
【請求項6】
前記屋根上下手段により前記堆積高さに応じて前記屋根部を上下に可動させ
前記屋根部と前記堆肥原料の間隔を所定範囲内にする請求項5記載の堆肥化装置。
【請求項7】
前記堆肥原料の単位容積当たりの換気量および前記堆肥原料表面の風速が所定範囲内となるように、
前記屋根上下手段により前記屋根部を上下に可動させる請求項5記載の堆肥化装置。
【請求項8】
前記屋根部を傾斜させ、前記屋根部の傾斜下端に、前記屋根部の内面に結露する
結露水を集水する集水樋を備えた請求項5乃至7のいずれかに記載の堆肥化装置。
【請求項9】
前記扉手段と前記屋根部を一体化した請求項5乃至8のいずれかに記載の堆肥化装置。
【請求項10】
前記囲いの床下に送風手段を備えた請求項5乃至9のいずれかに記載の堆肥化装置。
【請求項11】
前記換気手段は前記発酵槽の中の空気を排気する排気口を有する請求項5乃至10のいずれかに記載の堆肥化装置。
【請求項12】
前記排気口を前記縦壁の後壁上部に備えた請求項11に記載の堆肥化装置。
【請求項13】
前記排気口を前記屋根部の最高部付近に備えた請求項11または12に記載の堆肥化装置。
【請求項14】
三方の縦壁と、前記縦壁の上部を覆い、扉手段を有する屋根部とからなり、内部に堆肥原料を収容する発酵槽と、
前記発酵槽内の空気を排気するための排気口と、
前記屋根部を前記排気口の上方から前記発酵槽の前面に向かって傾斜させ、前記囲い内に収容された堆肥原料の高さに応じて前記屋根部を上下に可動する屋根上下手段を備え、
前記屋根部の傾斜下端に、前記屋根部の内面に結露する結露水を集水する集水樋を備えた堆肥原料の堆肥化を行う堆肥化装置。
【請求項15】
前記屋根部と前記堆肥原料の高さ方向の間隔を一定にした請求項14記載の堆肥化装置。
【請求項16】
前記発酵槽の中を略密閉化し、前記発酵槽の中の排気を脱臭する脱臭装置を備えた
請求項5乃至15のいずれかに記載の堆肥化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−28485(P2013−28485A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−165289(P2011−165289)
【出願日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(501203344)独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 (827)
【出願人】(591261336)パナソニック環境エンジニアリング株式会社 (29)
【Fターム(参考)】