説明

堆肥製造方法および装置

【課題】送風機に掛かる電力コストを低減させることができ、かつCH4およびN2Oの排出量も低減できる新たな堆肥製造技術を提供する。
【解決手段】堆肥材料に通気することを含む堆肥の製造方法。通気は、堆肥材料の温度に応じて決定した、単位量の堆肥材料に対する通気量で行い、かつ堆肥材料の温度は連続的または断続的に測定し、得られた測定温度に基づいて前記単位量の堆肥材料に対する通気量を連続的または断続的に決定する。堆肥材料発酵槽、発酵槽に設けられた堆肥材料への通気手段、堆肥材料の温度を計測するための温度計、温度計で計測された温度に基づいて通気装置の風量を決定する手段、および風量決定手段が決めた風量で通気手段の風量を制御する手段を含む堆肥製造装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、堆肥製造方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
堆肥化は、家畜排せつ物等を好気性微生物の働きにより、分解・安定化させ有機質肥料を製造する技術である。しかしながら堆肥の製造過程では、二酸化炭素(CO2)と比較して296倍の温室効果を有する一酸化二窒素(N2O)や23倍のメタン(CH4)といった強力な温室効果ガスが発生している。
【0003】
非特許文献1には、日本の農業起源温室効果ガス排出は、総排出量の3%程度であり、そのうち、家畜起源のCH4とN2Oは、家畜の飼養時に消化管から発生するCH4と、排せつ物の取り扱いから発生するCH4とN2Oであることが記載されている。反すう家畜(牛、めん羊、山羊など)を主体に709.5万トン二酸化炭素等量(CO2eq)、家畜排せつ物管理から726.1万トンCO2eqの温室効果ガスの排出が算定されている。非特許文献1は、家畜排せつ物処理起源の温室効果ガス発生の特徴、日本の主な家畜排せつ物処理、ガスクロマトグラフィーやフーリエ変換赤外分光法による温室効果ガス(CH4、N2O)の濃度測定法、家畜排せつ物の各処理システム発生係数の把握と堆積型堆肥化処理施設、強制通気型堆肥化処理施設、汚水浄化処理施設とスラリー貯留からの温室効果ガス発生評価について解説している。
【0004】
特許文献1には、堆肥化におけるN2O発生の抑制方法が開示されている。この方法は、汚泥を、電気浸透脱水機で脱水した後、発酵槽で汚泥を発酵して堆肥を製造する際、下部に設けた下部空気供給部に加えて上部に設けた上部空気供給部から送風を行い、N2O生成を抑制するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010-208932号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】ぶんせき:No.2, Page.79-83 (2010.02.05)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
非特許文献1で紹介されている強制通気型堆肥化処理施設を初めとして、一般的な堆肥化施設では堆肥中の好気性微生物を活性化させるために堆肥の底面から送風機から空気を送ることで微生物を活性化させ、堆肥化の促進を図っている。しかしながら堆肥化施設のランニングコストの約90%は送風機の電気料金であり、送風機1台あたりの月額料金は約2〜3万円に上っている。通常堆肥化施設では送風機を数台使用するので電気料金に掛かるウェートは大きくなる。
【0008】
特許文献1に記載の方法は、発酵槽で汚泥を発酵して堆肥を製造する際、上部に設けた上部空気供給部からも送風を行い、空気の供給量を増やしてN2O生成を抑制するものである。しかし、下部に設けた下部空気供給部からも空気は供給され、それに加えて上部空気供給部からも送風を行うものであり、空気供給にかかるエネルギーコストの削減は難しい。
【0009】
CH4とN2Oが温室効果ガスであり、その低減が望まれているところであるが、具体的でかつ効果的な提案はそれまでに成されていないのが実情である。
【0010】
そこで、本発明は、送風機に掛かる電力コストを低減させることができ、かつCH4およびN2Oの排出量も低減できる新たな堆肥製造技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は以下の通りである。
[1]
堆肥材料に通気することを含む堆肥の製造方法であって、
前記通気は、堆肥材料の温度に応じて決定した、単位量の堆肥材料に対する通気量で行い、かつ
前記堆肥材料の温度は連続的または断続的に測定し、得られた測定温度に基づいて前記単位量の堆肥材料に対する通気量を連続的または断続的に決定する、前記製造方法。
[2]
前記単位量の堆肥材料に対する通気量は、堆肥材料の乾燥重量と温度に応じて予め定めた係数の積として算出される、[1]に記載の製造方法。
[3]
温度に応じて予め定めた係数は、70℃以下の温度域で、かつ温度が上昇している間は、温度の関数であり、70℃を超える温度では定数であり、70℃以下の温度域で、かつ温度が下降している間は定数である、[1]または[2]に記載の製造方法。
[4]
堆肥材料の温度は、通気している堆肥材料の中心部付近で測定する、[1]〜[3]のいずれかに記載の製造方法。
[5]
堆肥材料は含水率が40〜80%である、[1]〜[4]のいずれかに記載の製造方法。
[6]
堆肥材料に対する通気は、堆肥材料に均一に空気が供給されるように実施する、[1]〜[5]のいずれかに記載の製造方法。
[7]
堆肥材料に対する通気は、切り返しを所定の間隔で行いながら行う、[1]〜[6]のいずれかに記載の製造方法。
[8]
堆肥材料発酵槽、
前記発酵槽に設けられた堆肥材料への通気手段、
堆肥材料の温度を計測するための温度計、および
温度計で計測された温度に基づいて通気装置の風量を決定する手段、
前記風量決定手段が決めた風量で前記通気手段の風量を制御する手段、を含む
堆肥製造装置。
[9]
前記風量決定手段および風量制御手段がインバーター制御装置であり、インバーター制御装置はインバーターを介して通気手段を制御する、[8]に記載の製造装置。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、堆肥材料への送風量を、堆肥材料の発酵状況に応じた適切な送風量に制御し、それによって、無駄な通気を抑えて電力コストを低減し、さらに併せて、堆肥の発酵状況に応じて適量の通気量を送ることで温室効果ガスの排出抑制効果も得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】一般的な強制通気式の堆肥化(送風機を使用した堆肥化)における温度推移、並びに酸素消費および供給速度を示す。
【図2】本発明の堆肥製造方法における堆肥材料の温度変化の一例を示す。
【図3】実施例の堆肥製造方法における、堆肥化期間の温度変化を示す。
【図4】実施例の堆肥製造方法における、係数Aの通気量情報からインバーター制御装置およびインバーターにて出力した通気量のシミュレーション値を示す。
【図5】実施例の堆肥製造方法における、送風機の積算消費電力量の経時変化を示す。
【図6】実施例の堆肥製造方法における、一酸化二窒素(N2O)の経時変化を示す。
【図7】実施例の堆肥製造方法における、メタン(CH4)の経時変化を示す。
【図8】本発明の堆肥製造装置の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<堆肥製造方法>
本発明は、堆肥材料に通気することを含む堆肥の製造方法に関する。本発明の製造方法においては、前記通気は、堆肥材料の温度に応じて決定した、単位量の堆肥材料に対する通気量で行う。さらに、前記堆肥材料の温度は連続的または断続的に測定し、得られた測定温度に基づいて前記単位量の堆肥材料に対する通気量を連続的または断続的に決定する。
【0015】
本発明の堆肥製造方法では、堆肥材料に対する通気量を、単位量の堆肥材料に対する通気量として、堆肥材料の温度に応じて決定する。単位量の堆肥材料に対する通気量fは、具体的には、堆肥材料の乾燥重量Wsと温度に応じて予め定めた係数Aの積を堆肥材料の体積Vで除した値として算出される。
【0016】
一般的な強制通気式の堆肥化(送風機を使用した堆肥化)では、図1に示した様な温度推移ならびに酸素消費・供給速度を示す。堆肥化は好気性微生物による生分解反応のため、その温度状況や必要な空気量(酸素量)は常に変化する。通常は、堆肥温度が上昇する際に多量の空気(酸素)を消費し、温度が60℃以上に上昇した後は、堆肥化で使用される空気量(酸素量)は減少し始め、70℃を超えると必要な空気量(酸素量)は著しく減少する。しかしながら現場の堆肥舎では、送風機で供給する空気量(酸素量)は酸素不足にならないよう通常過大な通気量を常に送り続けているのが現状である。
【0017】
本発明では、堆肥材料の温度は連続的または断続的に測定し、得られた測定温度に基づいて、単位量の堆肥材料に対する通気量を連続的または断続的に決定する。その際、温度に応じて予め定めた係数Aを用いる。係数Aは、実験的に求めることができる係数であり、温度に応じて変化する(温度の関数である)が堆肥材料の種類によらずほぼ定まる係数である。
【0018】
温度に応じて予め定めた係数Aは、より具体的には、70℃以下の温度域で、かつ温度が上昇している間は、温度の関数である。また、70℃を超える温度では定数であり、70℃以下の温度域で、かつ温度が下降している間は定数である。また、20℃以下の温度域でも係数Aは、定数である。温度に応じて予め定めた係数Aとしては、例えば、以下の表1に示す関数および定数を用いることができる。この関数は、堆肥化過程で観測される微生物による酸素の消費量の変遷を、表1に示した温度域において、材料の含水率ごとに複数の測定結果から最小二乗法を適用することで算出される。但し、表1に示す関数および定数は一例であり、堆肥製造装置の構造、特に送風装置の構造や能力等に応じて、実験的に求めて、適宜設定することができる。
【0019】
【表1】

【0020】
堆肥材料の乾燥重量Wsは、湿潤重量Wに含水率M.W.(%)を掛けた値として得られる。堆肥材料の体積Vは、堆肥化の原料として用いられる堆肥材料の総体積である。
【0021】
堆肥材料の温度は、通気している堆肥材料の中心部付近で測定することができる。あるいは、堆肥材料の温度は、圧送通気式堆肥化の場合には堆肥表面上付近、吸引通気式の場合には堆肥底面の吸引口付近の比較的温度が高く検出される箇所で測定することもできる。また、堆肥材料の総体積が多い場合には、堆肥材料の温度測定は、水平および/または垂直方向の複数の箇所で行い、複数の箇所の測定温度を、例えば、平均した値から係数Aを決定することもできる。
【0022】
堆肥材料は、特に制限はなく、例えば、牛ふん、豚ふん、鶏ふん、馬ふんなどの家畜排せつ物、下水汚泥などの有機性汚泥および食品廃棄物などやそれらに水分調整材として使用されるおがくずや剪定枝、稲わらなどの副資材を含んだ材料、またはそれらを混合した材料などを挙げることができる。さらに、堆肥材料は、含水率が40%〜80%程度まで可能ではあるが、50〜70%程度であることが適当である。一般にも、良好に発酵が進むためには、堆肥材料は含水率が50〜70%程度であることが適当であり、従って、本発明でも、堆肥材料は含水率が50〜70%程度であることが適当である。堆肥材料は含水率の上限は特に制限はないが、例えば、80%以下である。
【0023】
堆肥材料に対する通気は、堆肥材料に均一に空気が供給されるように実施する。堆肥材料に空気が均一に供給されることで、堆肥材料中の発酵も均一に進み、堆肥材料の温度の分布も比較的均一になり、制御が容易になる。堆肥材料への空気の均一供給は、例えば、堆肥材料を比較少量の区画に分けて連続的に移動させながら堆肥化を行うなどの方法も採用できる。あるいは、複数の空気の供給を設けた堆肥化装置で堆肥化を行うことでも堆肥材料への空気の均一供給は可能になる。
【0024】
堆肥材料の切り返しは、所定の間隔で行いながら行うことができる。切り返しとは、天地返しとも呼ばれ、発酵中の堆肥材料を混合するか、あるいは新たな堆肥材料を一部追加するなどの操作である。堆肥材料の温度は、発酵の進行に伴って上昇して70℃以上になり、ある期間70℃以上の温度を維持した後に下降するのが一般的である。切り返しは、堆肥材料の温度が、下降傾向を示し、例えば、30〜60℃の範囲になった時点で行うことが好ましい。下降傾向を示すのは発酵が勢いを失いつつあることを示すものであり、そのタイミングで切り返しを実施することで、再度、発酵を活性化させ、堆肥化を増進させることができる。切り返し後に堆肥材料の温度は、上昇に転じるので、その際には、係数Aとしては、温度上昇時の係数を用いる。堆肥材料の温度変化の例を図2に示す。
【0025】
堆肥材料に通気をして堆肥化を進行させ、切り返しを施しても高温まで温度が上昇しない状態になったら、堆肥化を終了させる。本発明の方法で製造された堆肥は、例えば、有機質肥料、土壌改良材、水分調整材、家畜敷料、脱臭材、バイオ燃料などに利用できる。
【0026】
<堆肥製造装置>
本発明は、堆肥製造装置を包含する。本発明の堆肥製造装置は、堆肥材料発酵槽、前記発酵槽に設けられた堆肥材料への通気手段、堆肥材料の温度を計測するための温度計、温度計で計測された温度に基づいて通気装置の風量を決定する手段、および前記風量決定手段が決めた風量で前記通気手段の風量を制御する手段を含む。本発明の堆肥製造装置の一例を図8に示す。
【0027】
堆肥材料発酵槽は、単一の部屋からなる発酵槽であってもよいし、複数の部屋(区画)からなる発酵槽であってもよい。発酵槽には、堆肥材料への通気手段が設けられる。堆肥材料への通気手段は、例えば、送風機および送風機に連結した通気管を含むことができる。通気管は、発酵槽の下部に単一または複数設けることができる。通気管は、堆肥材料全体に均一に通気することができる構造であることが好ましく、そのような構造とは、例えば、塩化ビニル製直管に複数個の穴を加工し、単一または複数本設置した構造またはコルゲート管などの有効管を単一または複数本設置した構造などである。発酵槽および通気手段は、既存のものをそのまま利用することもできる。
【0028】
堆肥材料の温度を計測するための温度計は、計測した温度を電気信号により、通気装置の風量を決定する手段に伝達できるものであればよく、例えば、熱電対や測温抵抗体、赤外線放射温度計などを挙げることができる。なお、電気信号の変換には電気信号変換器などを用いることができる。温度計は、複数設けることもできる。また、温度計は、堆肥材料の所定の位置に設置できるように固定式であっても可動式であってもよい。
【0029】
風量決定手段および風量制御手段は、例えば、インバーター制御装置であることができ、インバーター制御装置はインバーターを介して通気手段を制御することができる。この場合、温度計で計測された温度に基づく、通気手段に含まれる送風機への電圧出力は、インバーター制御装置およびインバーターで行われる。温度計が計測した温度の電気信号がインバーター制御装置の入出力端子台に電圧入力される。その入力値に応じて、インバーターへ適切な周波数に可変するようにインバーター制御装置からインバーターへ電気信号が出力される。インバーターが出力する周波数が決定されることにより、その周波数に応じた電力がインバーターから送風機へ出力される。この一連の動作により、堆肥の発酵状況に応じた適切な風量を堆肥材料へ供給できる。なお、インバーター制御装置においては風量決定のために、予め、堆肥材料の乾燥重量Ws、係数Aおよび堆肥材料の体積Vが入力され、温度の電気信号に基づいて通気量fが計算される。また、通気量fに対応した周波数は送風機の規格・特性から決定することができる。これらの周波数を与える出力信号値をインバーター制御装置に入力しておくことで、温度計で計測された温度に基づく風量決定が可能となる。なお、インバーター制御装置からのインバーターへの出力電圧値は、インバーターの制御回路端子台にステップ状に入力され、主回路端子台からその入力値に応じた電力がステップ状に通気装置へ出力される。これらインバーター制御装置およびインバーターを用いることで、通気装置の制御が可能となり、常に最適な風量で堆肥材料に空気を供給することができ、電気消費量を抑制することができると共に、CH4およびN2Oの排出量も低減できる。
【実施例】
【0030】
以下本発明を実施例に基づいてさらに説明する。但し、これら実施例は、例示であって本発明の範囲を制限するものではない。
【0031】
図8に示す本発明の堆肥製造装置を用いて、以下の堆肥化実験行った。1槽約53立方メートルの体積を有する発酵槽に乳牛ふんおよび麦桿の混合物を約40立方メートル投入し、堆肥材料の底面から圧送通気で堆肥化を実施した。投入した堆肥材料の初期含水率は約80%であり、試験期間は2〜3月の冬期間という極めて堆肥化が難しい環境状況下で実施した。堆肥化は、一方が本堆肥製造システムを導入したもの、もう一方は通気量を一定とした従来の方法によるものであり、同時に堆肥化を行った。その堆肥化期間には温度計測器で堆肥温度を、エネルギモニタで送風機の消費電力量ならびに光音響式マルチガスモニタで堆肥表面上から温室効果ガスである一酸化二窒素(N2O)およびメタン(CH4)を計測した。
【0032】
堆肥化期間における温度変化を図3に示した。堆肥化期間の温度変化は、本堆肥製造システムを導入した試験区では、従来の慣行区と比較して、温度の上昇が速く、かつ温度が高く維持されている。これは、本堆肥製造システムの導入により、堆肥化が促進されていることを意味する。
【0033】
図4には、係数Aの通気量情報からインバーター制御装置およびインバーターにて出力した通気量のシミュレーション値を示した。なお、本実施例においては、インバーターのトリップ等の防止のため、ステップ状に出力した。慣行区では、従来の方法どおり、一定の通気量が施されているが、本堆肥製造システムの導入区では、通気量が変動している。これは、発酵状況に応じて係数Aが算出され、その通気量情報に基づいて、インバーター制御装置およびインバーターにて送風機が制御されているからである。また、本堆肥製造システムの実証試験から、省エネ化および温室効果ガスの排出量削減について、以下の3点の結果が得られている。
【0034】
1点目は、送風機の省電力使用量の削減である。図5に示したように、本堆肥製造システムも導入した場合、従来の慣行区と比較して、消費電力量を最大で約90%まで削減可能であった。これは同時に電力製造に係る二酸化炭素(CO2)排出量も最大で約90%削減可能であることを意味する。
【0035】
2点目は、温室効果ガスである一酸化二窒素(N2O)の削減である。図6に示したように、本堆肥製造システム導入区では、慣行区と比較して堆肥化期間におけるN2Oの総排出量が約50%削減可能であった。
【0036】
3点目は、温室効果ガスであるメタン(CH4)の削減である。図7に示したように、本堆肥製造システム導入区では、慣行区と比較して堆肥化期間におけるCH4の総排出量が約80%削減可能であった。
【0037】
以上3点の結果から、本発明の堆肥製造技術は、省エネ化ならびに電力消費に伴うCO2の排出を削減することが可能であることが分かる。加えて、極めて強力な温室効果ガスであるN2OやCH4を削減できることも分かる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、省エネと温室効果ガス排出抑制の両方を同時に満足できる堆肥製造技術であり、堆肥製造に関する種々の分野に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
堆肥材料に通気することを含む堆肥の製造方法であって、
前記通気は、堆肥材料の温度に応じて決定した、単位量の堆肥材料に対する通気量で行い、かつ
前記堆肥材料の温度は連続的または断続的に測定し、得られた測定温度に基づいて前記単位量の堆肥材料に対する通気量を連続的または断続的に決定する、前記製造方法。
【請求項2】
前記単位量の堆肥材料に対する通気量は、堆肥材料の乾燥重量と温度に応じて予め定めた係数の積として算出される、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
温度に応じて予め定めた係数は、70℃以下の温度域で、かつ温度が上昇している間は、温度の関数であり、70℃を超える温度では定数であり、70℃以下の温度域で、かつ温度が下降している間は定数である、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
堆肥材料の温度は、通気している堆肥材料の中心部付近で測定する、請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
堆肥材料は含水率が40〜80%である、請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
堆肥材料に対する通気は、堆肥材料に均一に空気が供給されるように実施する、請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法。
【請求項7】
堆肥材料に対する通気は、切り返しを所定の間隔で行いながら行う、請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法。
【請求項8】
堆肥材料発酵槽、
前記発酵槽に設けられた堆肥材料への通気手段、
堆肥材料の温度を計測するための温度計、および
温度計で計測された温度に基づいて通気装置の風量を決定する手段、
前記風量決定手段が決めた風量で前記通気手段の風量を制御する手段、を含む
堆肥製造装置。
【請求項9】
前記風量決定手段および風量制御手段がインバーター制御装置であり、インバーター制御装置はインバーターを介して通気手段を制御する、請求項8に記載の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−229136(P2012−229136A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−97769(P2011−97769)
【出願日】平成23年4月26日(2011.4.26)
【出願人】(504300088)国立大学法人帯広畜産大学 (96)
【Fターム(参考)】