説明

堤防の嵩上げ方法

【課題】本発明は、洪水時における堤防の嵩上げ方法の技術に属する。
【解決手段】堤防上に沿って設けたブロック契合受け部とブロックからなり、堤防の決壊が危惧されるときにブロックをブロック契合受け部に契合して堤防を嵩上げする方法において、ブロックは略台形で一方の壁面下部に前方に突出する縁部を有し、ブロック契合受け部はコ状で底部の辺が外方に伸びその先端で上方に突出し、ブロックの縁部がコ状の内部に挿入可能とされたブロックとブロック受け部からなる堤防の嵩上げ方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洪水時における堤防の嵩上げ方法の技術に属する。
【背景技術】
【0002】
水害時などに河川、湖沼などの氾濫を防ぐために麻袋等の丈夫な袋に土砂等の充填物を入れた土嚢を積み上げ堤防を嵩上げして決壊を防止することが古来より行われている。特開2002-69964、特開2001-81752には吸水性の高分子を充填した袋を用意し、給水することでその体積重量を増大し土嚢として利用する提案がなされている。また特開2006-283505、特開2002-30669には上下に開口する枠体を多数前後左右に配列し内部に土嚢もしくは土壌を充填して堤防の嵩上げに使用する方法が提案されている。
いずれの方法も土壌の存在を必要とし、都市化の進んだ地域では決壊のおそれのある緊急時に必要な量の土壌を入手することは不可能となった。
【0003】
【特許文献1】特開2002-69964
【特許文献2】特開2001-81752
【特許文献3】特開2006-283505
【特許文献4】特開2002-30669
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、土壌が入手し得ない地域においても堤防の嵩上げが可能となる方法の提案にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本第1の発明は、堤防上に沿って設けたブロックとブロック受け部からなり、ブロックは略台形で一つの台形の辺部を構成する壁面下部は前方に突出する縁部を有し、ブロック受け部は逆コ状で底部の辺が外方に伸びその先端で上方に突出した形状を有し、前記ブロックの縁部が逆コ状の内部に挿入可能とされ、堤防の決壊が危惧されるときにブロックをブロック受け部に嵌め込んで堤防を嵩上げする方法である。
本第2の発明は、堤防上に沿って設けたU字溝と蓋からなり、当該蓋の一端がU字溝と並行する小溝に嵌合され、堤防の決壊が危惧されるときに、蓋が小溝を基点として直角に立ち上がるよう形成されたU字溝と蓋からなる堤防の嵩上げ方法である。
本第3の発明は、本第2の発明におけるU字溝内に耐密性の袋を内蔵させ、堤防の決壊が危惧されるとき前記耐密性の袋内に圧縮空気を吹き込むことで耐密性の袋を膨張、立ち上がらせるU字溝の蓋と耐密性の袋からなる堤防の嵩上げ方法である。
本第4の発明は、堤防上に略台形で側面の開方面端部に外方に突出する縁部を有するブロックを積層して配置し、堤防の決壊が危惧される時、前記積層しておいたブロックを順次積み重ねることで堤防を嵩上げする堤防の嵩上げ方法である。堤防を嵩上げするためのブロックを、堤防に予め用意しておくため略台形のブロックとし普段はU字溝として使用できるようにした。
【発明の効果】
【0006】
本第1の発明は、堤防上に予めブロック受け部を設けておき、別途ブロックを用意することで土壌の入手不可能な地域においても緊急時の堤防の嵩上げが可能となる。
本第2の発明は、常時はU字溝の蓋として使用し、その一端をU字溝に平行な小溝内に嵌合させ、そのU字溝の蓋を小溝内で垂直に立てられるようにしてあるため土壌の入手不可能な地域においても緊急時の堤防の嵩上げが可能となる。
本第3の発明は、第2の発明を構成するU字構内に耐密性の袋を内蔵させ、圧縮空気にて膨張させ立ち上がらせるため、U字溝の蓋と合わせた強固な堤防の嵩上げが可能となる。
本第4の発明は、堤防上に予め堤防嵩上げ用のブロックをU字溝として用意しておくため緊急時の堤防の嵩上げがその場で可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本第1の発明を図によって、より詳細に説明する。
図1は、本発明によって嵩上げされた堤防の概念図である。
図2は、堤防に設けたブロック受け部の概念図である。
図3は、ブロックの概念図である。
【0008】
図2に示すブロック受け部は、堤防に沿って設けられ、その下部及び周囲に必要に応じて砕石、コンクリート等により基礎が打たれる。図に示すブロック受け部の形状は、逆コ状の縁部挿入部を有し、底部が延伸され、その端部で上方に立ち上がるブロック配置部となっている。縁部挿入部には、後述するブロックの縁部が挿入され、延伸されたブロック配置部と共にブロックが動かないよう固定される。
【0009】
図3に示すように、ブロックは、略台形でその一側面の底部に横に張り出す縁部が設けられ、ブロック受け部の縁部挿入部に挿入され、ブロック受け部に配置可能となっている。
【0010】
図1は、ブロックをブロック受け部に配置した状態を示しているが、図に示すように必要な嵩上げ量が得られるようにブロックを重ね合わせるようになっている。図ではブロックの2段重ねであるがさらに上方に重ねることも可能である。
【0011】
以下第2の発明に付き図を用いて説明する。図4は正常時及び堤防が決壊する危惧のある非常時、それぞれの場合の状態を示している。
図4aは、堤防上にU字溝を設け、上に蓋をした状態を示している。蓋はその一端がU字溝の脇に設けた小溝内に嵌合されている。図4bは、U字溝の蓋が非常時、その小溝内で立ち上がることができることを示している。
【0012】
以下第3の発明に付き図を用いて説明する。本発明は前記第2の発明を基礎とするものである。U字構内に耐密性の袋が備え空気の圧入により膨張できるようにしたものである。図5aは、正常時、U字構内に上記耐密性の袋が備えられた状態を示し、図5bは、非常時、上記袋が図では記載されていない圧縮空気の圧入により膨張し、第2の発明に於けるU字溝の蓋と共に水が堤防を越えることのないよう堤防の嵩上げが成される状態を示している。
【0013】
以下第4の発明に付き図を用いて説明する。
図6は、堤防上に略台形のブロックを積層して常時はU字溝として使用している状態を示している。U字溝の底面及び側面には必要に応じて基礎が打たれることは第1の発明と同様である。
図ではU字溝としてブロックが3層に積層されている。ブロックの開放端には外方に突き出す縁部が両側に設けられている。
【0014】
ブロックを用いた嵩上げ方法は典型的には、図7に示すように、その縁部を用いて第1番目のブロックと第2番目のブロックが固定される。第2段目と第3段目のブロックはその張り合わされる底部を用いて固定される。固定方法は例えばボルトナットにて実施できる。図示しないが、ブロックをU字溝の横に積み上げることでもよい。基礎を打った場所に積み上げることが好ましい。
第1の発明および第2の発明に於けるブロックはコンクリート製が強度耐久性の点から好ましい。ブロックは人手で移動可能とすることが好ましく、連続した発泡性のコンクリート製とするか、小型化することが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本第1の発明の、本発明によって嵩上げされた堤防の概念図である。
【図2】本第1の発明における堤防に設けたブロック受け部の概念図である。
【図3】本第1の発明におけるブロックの概念図である。
【図4】本第2の発明を示す概念図である。
【図5】本題3の発明を示す概念図である。
【図6】本第4の発明のブロックを積層したU字溝を示している。
【図7】本第4の発明の嵩上げされた堤防の概念図である。
【符号の説明】
【0016】
1 ブロック受け部
11 縁部挿入部
12 ブロック配置部
2 ブロック
21 縁部
3 U字溝
31 U字溝の蓋
32 U字溝の蓋の一端が嵌合する小溝
4 耐密性袋
41 膨張した耐密性袋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
堤防上に沿って設けたブロックとブロック受け部からなり、ブロックは略台形で一つの台形の辺部を構成する壁面下部は前方に突出する縁部を有し、ブロック受け部は逆コ状で底部の辺が外方に伸びその先端で上方に突出した形状を有し、前記ブロックの縁部が逆コ状の内部に挿入可能とされ、堤防の決壊が危惧されるときにブロックをブロック受け部に嵌め込んで堤防を嵩上げする方法。
【請求項2】
堤防上に沿って設けたU字溝と蓋からなり、当該蓋の一端がU字溝と並行する小溝に嵌合され、堤防の決壊が危惧されるときに、蓋が小溝を基点として直角に立ち上がるよう形成されたU字溝と蓋からなる堤防の嵩上げ方法。
【請求項3】
請求項2記載のU字溝内に耐密性の袋を内蔵させ、堤防の決壊が危惧されるとき前記耐密性の袋内に圧縮空気を吹き込むことで耐密性の袋を膨張、立ち上がらせるU字溝の蓋と耐密性の袋からなる堤防の嵩上げ方法。
【請求項4】
堤防上に略台形で側面の開方面端部に外方に突出する縁部を有するブロックを積層してU字溝となるように配置し、堤防の決壊が危惧される時、前記積層しておいたブロックを順次積み重ねることで堤防を嵩上げする堤防の嵩上げ方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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