説明

堰堤および堰堤の施工方法

【課題】硬化材(内部材)の投入や転圧に際して作業の邪魔になるような部材を省略して、部品点数の増加を抑え、かつ、作業を簡素にすることができる堰堤および該堰堤の施工方向を提供する。
【解決手段】堰堤1000を形成する上流壁面材100は、上流基礎コンクリート10に設置された底面通し材20に設置された最下段ハーフLP(ライナプレート)30と、これに連結された最下段フルLP50および支持フルLP60を有し、支持フルLP60を形成する波鋼板61の上流側の面に支持用接続板64が固定され、支持用接続板64に支持柱材80の上端が接続された、支持フルLP60を下流側に所定の角度で傾斜させた状態で、支持柱材80の上端の下端が上流基礎コンクリート10に固定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は堰堤および堰堤の施工方法、特に、土砂、倒木あるいは水等の流出を防止する砂防堰堤、土留擁壁、枠ダム等の土木構造物(本発明において「堰堤」と称す)およびその施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一対の外壁材と、該外壁材の内側にコンクリート等の硬化材を充填して構築される堰堤(土木構造物)において、少ない部材点数で施工を容易かつ正確に行うことができる発明が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4060135号公報(第4−7頁、図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された土木構造物は、鋼矢板を互いに接合した上流側の外壁材と、コンクリートブロックパネルを互いに接合した下流側の外壁材と、両者の内側に充填した硬化材(本発明において「内部材」と称している)とを有するものである。
上流側の外壁材は、アンカー金物を底辺、上流側に位置する支柱および下流側に位置するサポート材を斜辺とする、複数の三角形枠によって支持され、アンカー金物は基礎コンクリートに固定され、複数の支柱に跨って水平方向(長手方向に同じ)の腹起こし材が固定されている。そして、鋼矢板の下端は、基礎コンクリートに固定され溝形断面材の溝内に挿入され、鋼矢板の下流側の側面には腹起こし材に接合されている。
【0005】
すなわち、特許文献1に開示された土木構造物は、鋼矢板の下流側の面に腹起こし材が接合され、鋼矢板の下流側(硬化材を充填する範囲に同じ)には下流側に向かって突出した、腹起こし材を支持する三角形枠が立設されているため、以下のような問題がある。
(あ)腹起こし材と、これを支持する三角形枠を形成するアンカー金物、支柱およびサポート材と、が必要になるため、部品点数が増して施工が煩雑になるから、資材コストおよび施工コストが上昇する。
(い)また、硬化材を充填する範囲に三角形枠が立設されているため、鋼矢板に近い範囲への硬化材の投入(押し込み)や投入された硬化材の転圧の際、三角形枠(特に、サポート材)が邪魔になるから、これを避けて作業する必要がある。そのため、作業が繁雑になったり、作業機械(特に、大型作業機械)の使用が困難になったりするから、作業工数が増して施工コストが上昇したり、作業が遅延して工期が長引いたりする。
【0006】
本発明は、このような問題を解決するものであって、硬化材(内部材)の投入や転圧に際して作業の邪魔になるような部材を省略して、部品点数の増加を抑え、かつ、作業を簡素にすることができる堰堤および該堰堤の施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明に係る堰堤は、所定の間隔を空けて上流側に設置された上流基礎コンクリートおよび下流側に設置された下流基礎コンクリートと、
前記上流基礎コンクリートに固定された底面通し材と、
矩形状の面材と該面材の4辺にそれぞれ固定されたフランジとを具備する所定高さのフルサイズパネルと、矩形状の面材と該面材の4辺にそれぞれ固定されたフランジとを具備する前記所定高さの半分の高さのハーフサイズパネルとが連結されて前記底面通し材に設置され、下流側に傾斜している上流壁面材と、
矩形状の前記所定高さのコンクリートパネルが連結されて前記下流基礎コンクリートに設置され、上流側に傾斜している下流壁面材と、
前記上流基礎コンクリートに固定された底面通し材と、
前記上流壁面材と前記下流壁面材との間に充填されている内部材と、
を有し、
前記下流壁面材の最下部が、長手連結金具を介して連結された前記コンクリートパネルである最下段コンクリートパネルから形成され、該最下段コンクリートパネルの上流側の面に、略L字状の基礎固定金具の傾斜部が固定され、該基礎固定金具の水平部が前記下流基礎コンクリートに設置され、
前記上流壁面材の最下部が、長手方向で交互に前記底面通し材に配置された前記ハーフサイズパネルである最下段ハーフサイズパネルと前記フルサイズパネルである最下段フルサイズパネルとから形成され、
前記最下段ハーフサイズパネルの上流側の面に、上流側に突出した底面接続板が固定され、該底面接続板が前記底面通し材に底面固定ボルトによって設置され、
前記最下段ハーフサイズパネルの側辺に固定されたフランジと前記最下段フルサイズパネルの側辺に固定されたフランジの下範囲とが、側辺連結ボルトによって連結され、
前記最下段フルサイズパネルのうち所定枚数毎に配置された最下段フルサイズパネルの上流側の面に、上流側に突出した支持用接続板が固定され、該支持用接続板に接続された支持柱材が前記上流基礎コンクリートに着脱自在に設置され、
前記支持用接続板に前記支持柱材が接続された状態において、前記最下段フルサイズパネルの下範囲および前記最下段ハーフサイズパネルと前記最下段コンクリートパネルの下範囲との間に、1回または2回以上に分けて前記内部材が充填されたことを特徴とする。
【0008】
(2)また、前記最下段ハーフサイズパネルの上に、前記フルサイズパネルである二段目フルサイズパネルが配置され、
前記最下段フルサイズパネルの側辺に固定されたフランジの上範囲と前記二段目フルサイズパネルの側辺に固定されたフランジの下範囲とが、側辺連結ボルトによって連結され、
前記最下段ハーフサイズパネルの上辺に固定されたフランジと前記二段目フルサイズパネルの下辺に固定されたフランジとが、上下辺連結ボルトおよびアンカー筋によって連結され、
前記アンカー筋が、雄ネジが形成された屈曲部と、該屈曲部に連なった直線部と、該直線部に設置された受圧板と、前記雄ネジに螺合するナットとを具備し、前記雄ネジに螺合したナットが、前記最下段ハーフサイズパネルの上辺に固定されたフランジと前記二段目フルサイズパネルの下辺に固定されたフランジとを挟圧した状態において、前記直線部が下流側を向き、
前記二段目フルサイズパネルの上範囲および前記最下段フルサイズパネルの上範囲と前記最下段コンクリートパネルの上範囲との間に、1回または2回以上に分けて前記内部材が充填されたことを特徴とする。
【0009】
(3)また、前記内部材が充填された後、前記支持柱材と前記支持用接続板とが切り離され、かつ、前記支持柱材が前記上流基礎コンクリートから取り外されたことを特徴とする。
【0010】
(4)また、上下に配置された前記フルサイズパネルにおいて、上に配置されたフルサイズパネルの下辺に固定されたフランジと、下に配置されたフルサイズパネルの下辺に固定されたフランジとが、上下辺連結ボルトおよびアンカー筋によって連結され、
前記アンカー筋が、雄ネジが形成された屈曲部と、該屈曲部に連なった直線部と、該直線部に設置された受圧板と、前記雄ネジに螺合するナットとを具備し、前記雄ネジに螺合したナットが、前記下に配置されたフルサイズパネルの上辺に固定されたフランジと前記上に配置されたフルサイズパネルの下辺に固定されたフランジとを挟圧した状態において、前記直線部が下流側に向かっていることを特徴とする。
【0011】
(5)また、所定の間隔を空けて上流側に設置された上流基礎コンクリートおよび下流側に設置された下流基礎コンクリートと、
前記上流基礎コンクリートに固定された上流底面通し材と、
前記下流基礎コンクリートに固定された下流底面通し材と、
矩形状の面材と該面材の4辺にそれぞれ固定されたフランジとを具備する所定高さのフルサイズパネルと、矩形状の面材と該面材の4辺にそれぞれ固定されたフランジとを具備する前記所定高さの半分の高さのハーフサイズパネルとが連結されて前記上流底面通し材に設置され、下流側に傾斜している上流壁面材と、
前記フルサイズパネルと、前記ハーフサイズパネルとが連結されて前記下流底面通し材に設置され、上流側に傾斜している下流壁面材と、
前記上流壁面材と前記下流壁面材との間に充填されている内部材と、
を有し、
前記上流壁面材の最下部が、長手方向で交互に前記上流底面通し材に配置された前記ハーフサイズパネルである最下段ハーフサイズパネルと前記フルサイズパネルである最下段フルサイズパネルとから形成され、
前記最下段ハーフサイズパネルの上流側の面に、上流側に突出した底面接続板が固定され、該底面接続板が前記上流底面通し材に底面固定ボルトによって設置され、
前記最下段ハーフサイズパネルの側辺に固定されたフランジと前記最下段フルサイズパネルの側辺に固定されたフランジの下範囲とが、側辺連結ボルトによって連結され、
前記最下段フルサイズパネルのうち所定枚数毎に配置された最下段フルサイズパネルの上流側の面に、上流側に突出した支持用接続板が固定され、該支持用接続板に接続された支持柱材が前記上流基礎コンクリートに着脱自在に設置され、
前記下流壁面材の最下部が、長手方向で交互に前記下流底面通し材に配置された前記ハーフサイズパネルである最下段ハーフサイズパネルと前記フルサイズパネルである最下段フルサイズパネルとから形成され、
前記最下段ハーフサイズパネルの下流側の面に、下流側に突出した底面接続板が固定され、該底面接続板が前記下流底面通し材に底面固定ボルトによって設置され、
前記最下段ハーフサイズパネルの側辺に固定されたフランジと前記最下段フルサイズパネルの側辺に固定されたフランジの下範囲とが、側辺連結ボルトによって連結され、
前記最下段フルサイズパネルのうち所定枚数毎に配置された最下段フルサイズパネルの下流側の面に、下流側に突出した支持用接続板が固定され、該支持用接続板が前記下流基礎コンクリートに着脱自在に設置され、
前記上流壁面材および前記下流壁面材におけるそれぞれの前記支持用接続板に前記支持柱材が接続された状態において、前記上流壁面材の最下段フルサイズパネルの下範囲および最下段ハーフサイズパネルと前記下流壁面材の最下段フルサイズパネルの下範囲および最下段ハーフサイズパネルとの間に、1回または2回以上に分けて前記内部材が充填されたことを特徴とする。
【0012】
(6)前記フルサイズパネルは、断面波状の波鋼板からなる面材と、該面材の側縁の折り曲げ加工によって形成された側辺フランジと、該側辺フランジの端面および前記面材の端面に跨がって接合された上辺フランジおよび下辺フランジと、を有するフルサイズライナープレートであり、
前記ハーフサイズパネルは、前記フルサイズライナープレートの高さを半分にしたハーフサイズライナープレートであることを特徴とする。
【0013】
(7)さらに、本発明に係る堰堤の施工方法は、上流壁面材と、下流壁面材と、前記上流壁面材と前記下流壁面材との間に設置された内部材と、を有する堰堤の施工方法であって、
所定の間隔を空けて上流側に上流基礎コンクリートを、下流側に下流基礎コンクリートをそれぞれ設置する工程と、
前記上流基礎コンクリートの上に底面通し材を載置する工程と、
矩形状の面材と該面材の4辺にそれぞれ固定されたフランジとを具備し、所定高さの半分の高さで所定長さである最下段ハーフサイズパネルを、長手方向で前記所定長さを空けて前記底面通し材の上に載置し、該最下段ハーフサイズパネルの上流側の面に固定された底面接続板と前記底面通し材とを底面接続ボルトによって接続する工程と、
前記底面通し材に形成されたボルト孔を貫通し、前記上流基礎コンクリートに基礎アンカーボルトを打設して、該基礎アンカーボルトを仮締めする工程と、
矩形状の面材と該面材の4辺にそれぞれ固定されたフランジとを具備し、所定高さで所定長さである最下段フルサイズパネルを、前記底面通し材の上で前記最下段ハーフサイズパネル同士の間に載置して、前記最下段フルサイズパネルの側辺に固定されたフランジの下範囲と前記最下段ハーフサイズパネルの側辺に固定されたフランジとを側辺連結ボルトによって連結する工程と、
前記最下段フルサイズパネルのうち所定枚数毎に配置された最下段フルサイズパネルの上流側の面に固定された支持用接続板に、支持柱材を接続し、
該支持柱材に形成された支持柱材ボルト孔を貫通し、前記上流基礎コンクリートに支持柱接合ボルトを打設して、該支持柱接合ボルトを仮締めする工程と、
前記底面通し材が所定の位置に配置され、前記最下段フルサイズパネルが下流側に所定角度だけ傾斜した状態で、前記基礎アンカーボルトおよび前記支持柱接合ボルトを本締めする工程と、
前記下流基礎コンクリートの上に、矩形状の前記所定高さの最下段コンクリートパネルを載置して、該最下段コンクリートパネル同士を長手連結金具を介して連結すると共に、該最下段コンクリートパネルの上流側の面に固定された略L字状の基礎固定金具を、前記下流基礎コンクリートに設置する工程と、
前記最下段フルサイズパネルの下範囲および前記最下段ハーフサイズパネルと前記最下段コンクリートパネルの下範囲との間に、1回または2回以上に分けて内部材を充填する工程と、を有することを特徴とする。
【0014】
(8)前記最下段フルサイズパネルは、断面波状の波鋼板からなる面材と、該面材の側縁の折り曲げ加工によって形成された側辺フランジと、該側辺フランジの端面および前記面材の端面に跨がって接合された上辺フランジおよび下辺フランジと、を有する最下段フルサイズライナープレートであり、
前記最下段ハーフサイズパネルは、前記最下段フルサイズライナープレートの高さを半分にした最下段ハーフサイズライナープレートであることを特徴とする。
【0015】
(9)また、前記最下段ハーフサイズパネルの上に、前記最下段フルサイズパネルと同一高さである二段目フルサイズパネルを配置し、
前記最下段フルサイズパネルの側辺に固定されたフランジの上範囲と前記二段目フルサイズパネルの側辺に固定されたフランジの下範囲とを側辺連結ボルトによって接続すると共に、前記最下段ハーフサイズパネルの上辺に固定されたフランジと前記二段目フルサイズパネルの下辺に固定されたフランジとを上下辺連結ボルトおよびアンカー筋によって接続する工程と、
前記最下段フルサイズパネルの上範囲および前記二段目フルサイズパネルの下範囲と前記最下段コンクリートパネルの上範囲との間に、1回または2回以上に分けて前記内部材を充填する工程と、
を有し、
前記アンカー筋が、雄ネジが形成された屈曲部と、該屈曲部に連なった直線部と、該直線部に設置された受圧板と、前記雄ネジに螺合するナットとを具備し、前記雄ネジに螺合したナットが、前記最下段ハーフサイズパネルの上辺に固定されたフランジと前記二段目フルサイズパネルの下辺に固定されたフランジとを挟圧した状態において、前記直線部が下流側に向かっていることを特徴する。
【0016】
(10)前記2段目フルサイズパネルは、断面波状の波鋼板からなる面材と、該面材の側縁の折り曲げ加工によって形成された側辺フランジと、該側辺フランジの端面および前記面材の端面に跨がって接合された上辺フランジおよび下辺フランジと、を有する2段目フルサイズライナープレートであることを特徴とする。
【0017】
(11)また、前記内部材を充填する工程の後、前記支持柱材と前記支持用接続板とを切り離し、前記支持柱材を前記上流基礎コンクリートから撤去する工程を有することを特徴とする。
【0018】
(12)また、前記最下段フルサイズパネルと同じ高さである下側フルサイズパネルの上に、前記最下段フルサイズパネルと同じ高さである上側フルサイズパネルを配置し、
前記下側フルサイズパネルの上辺に固定されたフランジと前記下側フルサイズパネルの下辺に固定されたフランジとを上下辺連結ボルトおよびアンカー筋によって接続する工程と、を有し、
前記アンカー筋が、雄ネジが形成された屈曲部と、該屈曲部に連なった直線部と、該直線部に設置された受圧板と、前記雄ネジに螺合するナットとを具備し、前記雄ネジに螺合したナットが、前記下側フルサイズパネルの上辺に固定されたフランジと前記上側フルサイズパネルの下辺に固定されたフランジとを挟圧した状態において、前記直線部が下流側に向かっていることを特徴とする。
【0019】
(13)また、上流壁面材と、下流壁面材と、前記上流壁面材と前記下流壁面材との間に設置された内部材と、を有する堰堤の施工方法であって、
所定の間隔を空けて上流側に上流基礎コンクリートを、下流側に下流基礎コンクリートをそれぞれ設置する工程と、
前記上流基礎コンクリートの上に上流底面通し材を載置する工程と、
矩形状の面材と該面材の4辺にそれぞれ固定されたフランジとを具備し、所定高さの半分の高さで所定長さである最下段ハーフサイズパネルを、長手方向で前記所定長さを空けて前記上流底面通し材の上に載置し、該最下段ハーフサイズパネルの上流側の面に固定された底面接続板と前記上流底面通し材とを底面接続ボルトによって接続する工程と、
前記上流底面通し材に形成されたボルト孔を貫通し、前記上流基礎コンクリートに基礎アンカーボルトを打設して、該基礎アンカーボルトを仮締めする工程と、
矩形状の面材と該面材の4辺にそれぞれ固定されたフランジとを具備し、所定高さで所定長さである最下段フルサイズパネルを、前記上流底面通し材の上で前記最下段ハーフサイズパネル同士の間に載置して、前記最下段フルサイズパネルの側辺に固定されたフランジの下範囲と前記最下段ハーフサイズパネルの側辺に固定されたフランジとを側辺連結ボルトによって連結する工程と、
前記最下段フルサイズパネルのうち所定枚数毎に配置された最下段フルサイズパネルの上流側の面に固定された支持用接続板に、支持柱材を接続し、
該支持柱材に形成された支持柱材ボルト孔を貫通し、前記上流基礎コンクリートに支持柱接合ボルトを打設して、該支持柱接合ボルトを仮締めする工程と、
前記上流底面通し材が所定の位置に配置され、前記最下段フルサイズパネルが下流側に所定角度だけ傾斜した状態で、前記基礎アンカーボルトおよび前記支持柱接合ボルトを本締めする工程と、
前記下流基礎コンクリートの上に下流底面通し材を載置する工程と、
前記最下段ハーフサイズパネルを、長手方向で前記所定長さを空けて前記下流底面通し材の上に載置し、該最下段ハーフサイズパネルの上流側の面に固定された底面接続板と前記下流底面通し材とを底面接続ボルトによって接続する工程と、
前記下流底面通し材に形成されたボルト孔を貫通し、前記下流基礎コンクリートに基礎アンカーボルトを打設して、該基礎アンカーボルトを仮締めする工程と、
前記最下段フルサイズパネルを、前記下流底面通し材の上で前記最下段ハーフサイズパネル同士の間に載置して、前記最下段フルサイズパネルの側辺に固定されたフランジの下範囲と前記最下段ハーフサイズパネルの側辺に固定されたフランジとを側辺連結ボルトによって連結する工程と、
前記最下段フルサイズパネルのうち所定枚数毎に配置された最下段フルサイズパネルの上流側の面に固定された支持用接続板に、支持柱材を接続し、
該支持柱材に形成された支持柱材ボルト孔を貫通し、前記上流基礎コンクリートに支持柱接合ボルトを打設して、該支持柱接合ボルトを仮締めする工程と、
前記下流底面通し材が所定の位置に配置され、前記最下段フルサイズパネルが上流側に所定角度だけ傾斜した状態で、前記基礎アンカーボルトおよび前記支持柱接合ボルトを本締めする工程と、
前記上流壁面材の最下段フルサイズパネルの下範囲および前記最下段ハーフサイズパネルと前記下流壁面材の最下段フルサイズパネルの下範囲および前記最下段ハーフサイズパネルとの間に、1回または2回以上に分けて内部材を充填する工程と、を有することを特徴とする。
【0020】
(14)前記最下段フルサイズパネルは、断面波状の波鋼板からなる面材と、該面材の側縁の折り曲げ加工によって形成された側辺フランジと、該側辺フランジの端面および前記面材の端面に跨がって接合された上辺フランジおよび下辺フランジと、を有する最下段フルサイズライナープレートであり、
前記最下段ハーフサイズパネルは、前記最下段フルサイズライナープレートの高さを半分にした最下段ハーフサイズライナープレートであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る堰堤は以上の構成であるから、以下の効果を奏する。
(i)本発明に係る堰堤は、その上流壁面がフルサイズパネルとハーフサイズパネルとから形成され、上流壁面材の最下段を形成する最下段フルサイズパネルと最下段ハーフサイズパネルとは、それぞれの側辺に固定されたフランジ同士が側辺連結ボルトによって連結され、最下段ハーフサイズパネルは、その上流側の面に固定された底面接続板を介して、上流基礎コンクリートに固定された底面通し材に設置され、また、最下段フルサイズパネルは所定枚数毎に、その上流側の面に固定された支持用接続板が上流基礎コンクリートに設置された支持柱材によって支持されている。
【0022】
したがって、最下段フルサイズパネルと最下段ハーフサイズパネル、あるいはフルサイズパネル同士は、それぞれの辺に固定されたフランジ同士を当接してボルトによって連結することができるから、十分な剛性が確保でき、連結作業が容易であると共に、相互の位置関係が正確になる。このとき、長手方向の位置を保証するための、例えば、腹起こし材等および腹起こし材等を支持する複数の三角形枠等が不要になるから、部品点数の増加が抑えられ、施工が簡素になるため、資材コストおよび施工コストが安価になる。
また、最下段ハーフサイズパネルおよび最下段フルサイズパネルの下流側、すなわち、内部材が充填される範囲に、充填作業を邪魔するような部材(例えば、腹起こし材を支持する複数の三角形枠等)がなくなるから、内部材(例えば、ソイルセメント等の硬化材等)を充填する範囲に邪魔になる物がなくなるため、作業が容易になると共に、作業機械(特に、大型作業機械)の使用が可能になり、作業工数が減少して施工コストの圧縮や、工期の短縮が可能になる。
【0023】
(ii)また、最下段ハーフサイズパネルと二段目フルサイズパネルとの連結、また、上下に配置されたフルサイズパネル同士の連結が、それぞれ上下辺連結ボルトおよびアンカー筋によるものであって、アンカー筋の直線部が下流側に向かっているから、アンカー筋が内部材に埋設された際、直線部に設置された受圧板は、内部材に包持され、アンカー筋を上流側に向かって引き抜こうとする力に対抗する。
したがって、アンカー筋(特に、受圧板)がジベルとして機能するから、最下段ハーフサイズパネルや二段目フルサイズパネル等に上流側に向かう力が作用しても、最下段ハーフサイズパネルや二段目フルサイズパネル等の変形(撓み)が防止される。
(iii)また、内部材が充填され硬化した後、支持柱材が回収されるから、再使用可能となり、資材コストがさらに安価になる。
【0024】
(iv)さらに、下流壁面材も上流壁面材と同様に、フルサイズパネルとハーフサイズパネルとによって形成することができるから、この場合、コンクリートパネルが不要になる。したがって、施工に要する資材の種類の減小によって、資材管理が容易になる。また、フルサイズパネルおよびハーフサイズパネルは強度(特に、高強度化)や外観を選定する自由度が高いから、設計の自由度が増し、災害防止に対する信頼性向上や外観の環境への順応性向上を図ることができる。
なお、本発明において、フルサイズパネルおよびハーフサイズパネルの面材の形態を限定するものではなく、平面状の平鋼板や、断面波状の波鋼板あるいは、平鋼板に所定幅の凸条(または凹条)を設けたものであってもよい。
【0025】
さらに、本発明に係る堰堤の施工方法は、以上の構成であるから、以下の効果を奏する。
(v)その上流壁面がフルサイズパネルとハーフサイズパネルとから形成され、上流壁面材の最下段を形成する最下段ハーフサイズパネルを、その上流側の面に固定された底面接続板に底面通し材を接合する工程と、底面通し材を上流基礎コンクリートに固定する工程と、上流壁面材の最下段を形成する最下段フルサイズパネルと最下段ハーフサイズパネルとを、それぞれの側辺に固定されたフランジにおいて連結する工程と、所定枚数毎の最下段フルサイズパネルの上流側の面に固定された支持用接続板を支持柱材に接合し、支持柱材を上流基礎コンクリートに固定する工程と、内部材を充填する工程と、を有す。
【0026】
したがって、最下段フルサイズパネルと最下段ハーフサイズパネルは、それぞれの辺にフランジが固定されているから、十分な剛性が確保でき、連結作業が容易であると共に、相互の位置関係が正確になる。このとき、長手方向の位置を保証するための、例えば、腹起こし材等および腹起こし材等を支持する複数の三角形枠等が不要になるから、部品点数の増加が抑えられ、施工が簡素になるため、資材コストおよび施工コストが安価になる。
また、最下段ハーフサイズパネルおよび最下段フルサイズパネルの下流側、すなわち、内部材が充填される範囲に、充填作業を邪魔するような部材(例えば、腹起こし材を支持する複数の三角形枠等)がなくなるから、内部材(例えば、ソイルセメント等の硬化材等)を充填する範囲に邪魔になる物がなくなるため、作業が容易になると共に、作業機械(特に、大型作業機械)の使用が可能になり、作業工数が減少して施工コストの圧縮や、工期の短縮が可能になる。
【0027】
(vi)また、最下段ハーフサイズパネルと二段目フルサイズパネルと、また、上下に配置されたフルサイズパネル同士を、それぞれ上下辺連結ボルトおよびアンカー筋によって連結し、アンカー筋の直線部を下流側に向けているから、アンカー筋が内部材に埋設された際、直線部に設置された受圧板は、内部材に包持され、アンカー筋を上流側に向かって引き抜こうとする力に対抗する。
したがって、アンカー筋(特に、受圧板)がジベルとして機能するから、最下段ハーフサイズパネルや二段目フルサイズパネル等に上流側に向かう力が作用しても、最下段ハーフサイズパネルや二段目フルサイズパネル等の変形(撓み)が防止される。
(vii)また、内部材を充填した後、支持柱材と支持用接続板とを回収するから、再使用可能となり、資材コストがさらに安価になる。
【0028】
(viii)さらに、下流壁面材も上流壁面材と同様に、フルサイズパネルとハーフサイズパネルとによって形成することができるから、この場合、コンクリートパネルの施工が不要になる。したがって、下流壁面材と上流壁面材との施工手順、資材あるいは施工機械が共通になるから、施工管理が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施の形態1に係る堰堤を説明する全体を示す側面視の断面図。
【図2】図1に示す堰堤の構成部材(上流側壁面材)を示す正面図。
【図3】図1に示す堰堤の構成部材(標準フルLP)を示す側面図と正面図。
【図4】図1に示す堰堤の構成部材(標準フルLP)を示す平面視の断面図。
【図5】図1に示す堰堤の構成部材(最下段フルLP)を示す側面図と正面図。
【図6】図1に示す堰堤の構成部材(支持フルLP)を示す側面図と正面図。
【図7】図1に示す堰堤の構成部材(最上段ハーフLP)を示す側面図と正面図。
【図8】図1に示す堰堤の構成部材(最下段ハーフLP)を示す側面図と正面図。
【図9】本発明の実施の形態2に係る堰堤の施工方法を説明する底面通し材を設置する工程を示す平面図。
【図10】図9に示す工程に続く最下段ハーフLPを設置する工程を示す平面図と側面図。
【図11】図10に示す工程に続く最下段フルLPを設置する工程を示す平面図と側面図。
【図12】図11に示す工程に続く支持フルLPを設置する工程を示す平面図と側面図。
【図13】本発明の実施の形態2に係る堰堤の施工方法を説明する下流壁面材を示す正面図。
【図14】図13に示す堰堤の施工方法における構成部材(上下連結金具およびアンカー金具)を拡大して示す側面図と背面図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
[実施の形態1:堰堤]
図1〜図8は本発明の実施の形態1に係る堰堤を説明するものであって、図1は全体を示す側面視の断面図、図2は全体を示す正面図(上流側から見ている)、図3は構成部材(標準フルライナープレート)を示す側面図と正面図、図4は構成部材(標準フルライナープレート)を示す平面視の断面図、図5は構成部材(最下段フルライナープレート)を示す側面図と正面図、図6は構成部材(支持フルライナープレート)を示す側面図と正面図、図7は構成部材(最上段ハーフライナープレート)を示す側面図と正面図、図8は構成部材(最下段ハーフライナープレート)を示す側面図と正面図である。
なお、各図は模式的に示すものであって、本発明は図示された形態に限定されるものではない。また、ボルト孔等については、位置を示すのみであって、該位置に符号を付す場合がある。
【0031】
(堰堤)
図1および図2において、堰堤1000は、上流壁面材100と、上流壁面材100と所定の間隔を空けて設置された下流壁面材200と、上流壁面材100と下流壁面材200との間に充填された内部材300と、内部材300の上に設置された保護コンクリート400と、を有している。
【0032】
(上流壁面材)
図2において、上流壁面材100は、上流基礎コンクリート10の上に長手方向で交互に配置された最下段ハーフサイズライナープレート(ハーフサイズパネルに相当する。以下、「最下段ハーフLP」と称す)30a、30b・・・と、最下段フルサイズライナープレート(フルサイズパネルに相当する。以下、「最下段フルLP」と称す)50a、50bと、支持フルサイズライナープレート(フルサイズパネルに相当する。以下、「支持フルLP」と称す)60a、60bとから最下段が形成されている。
なお、最下段の幅は限定されるものではなく、原則かかる配置パターンの繰返しによって拡大されるものである。また、符号に付した添え字「a、b・・・」は説明の便宜であって、共通する内容の説明においては添え字「a、b・・・」の記載を省略する(以下の各図においても同様)。
そして、かかる最下段の上に、標準フルLP40が配置され、最上段は、長手方向で交互に配置された最上段ハーフサイズライナープレート(ハーフサイズパネルに相当する。以下、「最上段ハーフLP」と称す)70と標準フルLP40とから形成されている。なお、上流基礎コンクリート10から最上段までの標準フルLP40の積上げ数量は3枚に限定限定するものではなく、何れであってもよい。
【0033】
(標準フルLP)
図3および図4において、標準フルLP40は、所定の長さ(例えば、500mm)およびハーフLPの倍の高さ(例えば、1000mm)の矩形状の波鋼板41と、波鋼板41の4辺にそれぞれ固定された上辺フランジ42a、側辺フランジ42b、下辺フランジ42cおよび側辺フランジ42d(以下、それぞれ又はまとめて「フランジ42」と称す場合がある)とを有する一面が開口した函状であって、上辺フランジ42a、側辺フランジ42b、下辺フランジ42cおよび側辺フランジ42dには、貫通した上辺ボルト孔43a、側辺ボルト孔43b、下辺ボルト孔43cおよび側辺ボルト孔43d(以下、それぞれ又はまとめて「ボルト孔43」と称す場合がある)が設けられている。
【0034】
このとき、上辺フランジ42a、側辺フランジ42b、下辺フランジ42cおよび側辺フランジ42dは直方体または立方体の4側面に相当し、隣接するフランジ同士は直角で、対向するフランジ同士は平行である。
また、側辺フランジ42bおよび側辺フランジ42dは、波鋼板41と一体的に形成したものであるが、波鋼板41の側辺に溶接等によって固定したものであってもよい。
なお、図4における下辺ボルト孔43cはアンカー筋(図示しない)を係止するためのものであって、上辺フランジ42aおよび下辺フランジ42cに設けられているが、下辺ボルト孔43cの配置や形状等は限定するものではなく、側辺フランジ42b、42dに設けてもよく、あるいは、全く設けなくてもよい(アンカー筋を係止するための貫通孔については、標準フルLPにおいても同様である)。
さらに、実施の形態1におけるフルサイズパネルは、面材に波鋼板41を有する標準フルLP40等であるが、本発明におけるフルサイズパネル等は、面材を波鋼板に限定するものではなく、平鋼板や、平鋼板に凸条が形成されたものであってもよい。
【0035】
(最下段フルLP)
図5において、最下段フルLP50は、標準フルLP40と略同じ形状であって、矩形状の波鋼板51と、波鋼板51の4辺にそれぞれ固定された上辺フランジ52a、側辺フランジ52b、下辺フランジ52cおよび側辺フランジ52d(以下、それぞれ又はまとめて「フランジ52」と称す場合がある)とを有する一面が開口した函状であって、上辺フランジ52aと側辺フランジ52b、および上辺フランジ52aと側辺フランジ52dとは互いに直角で、それぞれ直方体または立方体の3側面に相当するものの、下辺フランジ52cは上辺フランジ52aに対して所定の角度傾斜している。
そして、上辺フランジ52a、側辺フランジ52b、下辺フランジ52cおよび側辺フランジ52dには、貫通した上辺ボルト孔53a、側辺ボルト孔53b、下辺ボルト孔53cおよび側辺ボルト孔53d(以下、それぞれ又はまとめて「ボルト孔53」と称す場合がある)が設けられている。
【0036】
(支持フルLP)
図6において、支持フルLP60は、最下段フルLP50の波鋼板51の外面(函状体の外の面)に突出する支持用接続板64が固定されたものであり、支持用接続板64には支持柱接合ボルト84が貫通するボルト孔65が形成されている。
すなわち、矩形状の波鋼板61と、波鋼板61の4辺にそれぞれ固定された上辺フランジ62a、側辺フランジ62b、下辺フランジ62cおよび側辺フランジ62d(以下、それぞれ又はまとめて「フランジ62」と称す場合がある)とを有する一面が開口した函状であって、上辺フランジ62aと側辺フランジ62b、および上辺フランジ62aと側辺フランジ62dとは互いに直角で、それぞれ直方体または立方体の3側面に相当するものの、下辺フランジ62cは上辺フランジ62aに対して所定の角度傾斜している。
そして、上辺フランジ62a、側辺フランジ62b、下辺フランジ62cおよび側辺フランジ62dには、貫通した上辺ボルト孔63a、側辺ボルト孔63b、下辺ボルト孔63cおよび側辺ボルト孔63d(以下、それぞれ又はまとめて「ボルト孔63」と称す場合がある)が設けられている。
【0037】
(最上段ハーフLP)
図7において、最上段ハーフLP70は、標準フルLP40の高さを半分にしたものに相当し、所定の長さ(例えば、500mm)および前記所定の高さの半分の高さ(例えば、500mm)の矩形状の波鋼板71と、波鋼板71の4辺にそれぞれ固定された上辺フランジ72a、側辺フランジ72b、下辺フランジ72cおよび側辺フランジ72dとを有する一面が開口した函状であって、上辺フランジ72a、側辺フランジ72b、下辺フランジ72cおよび側辺フランジ72dには、貫通した上辺ボルト孔73a、側辺ボルト孔73b、下辺ボルト孔73cおよび側辺ボルト孔73d(以下、それぞれ又はまとめて「ボルト孔73」と称す場合がある)が設けられている。
このとき、上辺フランジ72a、側辺フランジ72b、下辺フランジ72cおよび側辺フランジ72dは直方体または立方体の4側面に相当し、隣接するフランジ同士は直角である。
【0038】
(最下段ハーフLP)
図8において、最下段ハーフLP30は、最上段ハーフLP70と略同じ形状であって、矩形状の波鋼板31と、波鋼板31の4辺にそれぞれ固定された上辺フランジ32a、側辺フランジ32b、下辺フランジ32cおよび側辺フランジ32d(以下、それぞれ又はまとめて「フランジ32」と称す場合がある)とを有する一面が開口した函状であって、上辺フランジ32aと側辺フランジ32b、および上辺フランジ32aと側辺フランジ32dとは互いに直角で、それぞれ直方体または立方体の3側面に相当するものの、下辺フランジ32cは上辺フランジ32aに対して所定の角度傾斜している。
そして、最下段ハーフLP30の波鋼板31の外面に、突出した底面接続板34が固定されている。底面接続板34の下縁は下辺フランジ32cに平行で、底面固定用のボルト孔35が形成されている。
また、上辺フランジ32a、側辺フランジ32bおよび側辺フランジ32dには、貫通した上辺ボルト孔33a、側辺ボルト孔33bおよび側辺ボルト孔33d(以下、それぞれ又はまとめて「ボルト孔33」と称す場合がある)が設けられている。
なお、また上辺フランジ32a、側辺フランジ32bおよび側辺フランジ32dに、上流アンカー筋310を取り付けるための貫通穴を形成してもよい。
【0039】
[実施の形態2:堰堤の施工方法]
図9〜図13は本発明の実施の形態2に係る堰堤の施工方法を説明するものであって、図9は底面通し材を設置する工程を示す平面図、図10は最下段ハーフLPを設置する工程を示す平面図と側面図、図11は最下段フルLPを設置する工程を示す平面図と側面図、図12は支持フルLPを設置する工程を示す平面図と側面図、図13は下流壁面材を示す正面図(上流側から見ている)である。なお、実施の形態1と同じ部分にはこれと同じ符号を付し、一部の説明を省略する。
【0040】
(堰堤の施工方法)
次に、堰堤1000の施工方法について説明する。堰堤1000の施工方法は、上流壁面材100を構築する工程と、下流壁面材200を構築する工程と、構築された上流壁面材100と下流壁面材200との間に内部材300を充填する工程と、内部材300の上に保護コンクリート400を設置する工程とを有する。なお、内部材300を充填する工程は、上流壁面材100および下流壁面材200を構築する進みに合わせ、複数回に分けて実施されるものである。以下、各工程について詳細に説明する。
【0041】
(上流壁面材の構築)
上流壁面材100の最下段は、所定の位置に上流基礎コンクリート10を設置する工程(S11)と、上流基礎コンクリート10の上に底面通し材20を載置する工程(S12)と、底面通し材20の上に所定間隔を開けて最下段ハーフLP30を設置する工程(S13)と、最下段ハーフLP30同士の間のうち1つ飛ばしに、最下段フルLP50を設置する工程(S14)と、最下段ハーフLP30同士の間のうち1つ飛ばしに、支持フルLP60を設置する工程(S15)とによって構築する。
次に、下流壁面材200の最下段を構築して、構築された上流壁面材100の最下段と下流壁面材200の最下段との間に、内部材300を1回または2回以上に分けて充填する(これについては別途詳細に説明する)。
【0042】
そして、最下段を形成する最下段ハーフLP30の上に、標準フルLP40を積み重ねて接合し、また、最下段を形成する最下段フルLP50および支持フルLP60上に標準フルLP40を積み重ねて接合し、さらに、これらの上に所定の高さになるまで、標準フルLP40を順次積み重ねて接合する工程(S16)によって中段部を構築する(これについては別途詳細に説明する)。
【0043】
さらに、下流壁面材200の中段部を構築して、構築された上流壁面材100の中段部と下流壁面材200の中段部との間に、内部材300を1回または2回以上に分けて充填する(これについては別途詳細に説明する)。その後、中段部を形成する標準フルLP40の上の最上段を形成する標準フルLP40と最上段ハーフLP70を積み重ねて接合する工程(S17)によって、最上段を構築し、その上に、堤冠材90を設置する工程(S18)を実施する。
なお、最下段フルLP50を設置する工程(S14)と、支持フルLP60を設置する工程(S15)とは、何れを先に実行してもよい。以下、それぞれの工程について詳細に説明する。
【0044】
(S11:上流基礎コンクリートの設置)
まず、堰堤1000の設置位置に上流基礎コンクリート10を設置する。このとき、上流基礎コンクリート10の上面は水平であって、基礎基準面よりわずかに低い位置になっている。
【0045】
(S12:底面通し材の仮固定)
図9において、上流基礎コンクリート10の上に断面略L字の底面通し材20を載置する。底面通し材20は、所定長さ(例えば、1995mm)の底面通し単位材20a、20b・・・から形成されている。このとき、底面通し単位材20aと底面通し単位材20bとは、底面通し材連結板25に形成されたボルト孔26a、26bと、底面通し単位材20a、20bの端部近くに形成されたボルト孔24a、24bを貫通する接続ボルト27a、27bおよび接続ナット28a、28bによって連結されている。
なお、底面通し単位材20a、20b・・・の長さや、相互の連結要領は限定するものではない。以下、連結された状態の底面通し材20について説明する。
底面通し材20には、上流基礎コンクリート10に固定するためのアンカーボルト13が貫通するボルト孔21が形成され、ボルト孔21を貫通したアンカーボルト13を上流基礎コンクリート10に打設し、アンカーボルト13にアンカーナット14を仮締めする(本発明において、アンカーボルト13を仮締めすると表現する)。
さらに、最下段ハーフLP30を底面通し材20に設置するための底面通し材接続板22が、所定間隔(例えば、1000mm)で固定され、底面通し材接続板22にはボルト孔23が形成されている。
【0046】
(S13:最下段ハーフLPの設置)
図10において、底面通し材20の上に、所定長さ(例えば、500mm)の間隔を空けて、飛び飛びの最下段ハーフLP30を載置する。このとき、最下段ハーフLP30に固定された底面接続板34が上流側になるようにする。そこで、最下段ハーフLP30に固定された底面接続板34に形成されたボルト孔35と、底面通し材20に固定され底面通し材接続板22に形成されたボルト孔23に、底面接続ボルト36を通し、これに底面接続ナット37を螺合して最下段ハーフLP30を底面通し材20に設置する。
そこで、底面通し材20(最下段ハーフLP30に同じ)が正確な位置になっているか否か確認して(正確な位置に配置して)、底面通し材20を上流基礎コンクリート10の正確な位置に固定する。すなわち、正確な位置において、ボルト孔21を通して上流基礎コンクリート10にボルト孔を穿孔し、該ボルト孔にアンカーボルト13を固定し、アンカーナット14を螺合する。よって、最下段ハーフLP30は下流側に所定角度だけ傾斜した姿勢で上流基礎コンクリート10に設置される。
【0047】
(S14:最下段フルLPの設置)
図11において、次に、最下段フルLP50を最下段ハーフLP30同士の間で、かかる間を一つ飛ばしにして(最下段ハーフLP30aと最下段ハーフLP30bとの間、最下段ハーフLP30cと最下段ハーフLP30dとの間等(図2参照))、底面通し材20の上に載置する。そして、最下段フルLP50の側辺フランジ52b、52dの下範囲と最下段ハーフLP30の側辺フランジ32b、32dとを、前者に形成されたボルト孔53と後者に形成されたボルト孔33とに側辺連結ボルト56を通し、側辺連結ナット57を螺合して両者を連結する。
【0048】
(S15:支持フルLPの設置)
図12において、さらに、最下段フルLP50と同様に、支持フルLP60を最下段ハーフLP30同士の間で、最下段フルLP50が設置されていない間(最下段ハーフLP30bと最下段ハーフLP30cとの間等(図2参照))に配置し、底面通し材20の上に載置する。このとき、支持用接続板64が上流側になるようにする。
そして、支持フルLP60の側辺フランジ62b、62dの下範囲と最下段ハーフLP30の側辺フランジ32b、32dとを、前者に形成されたボルト孔63と後者に形成されたボルト孔33とに側辺連結ボルト66を通し、側辺連結ナット67を螺合して両者を連結する。
さらに、支持フルLP60の上流側に突出した支持用接続板64に支持柱材80を接続し、支持フルLP60を下流側に所定の角度だけ傾斜するように、支持柱材80を上流基礎コンクリート10に固定する。
【0049】
(支持柱材の固定)
支持柱材80の上端寄りにはボルト孔81が形成され、下端には支持柱材フランジ82が固定されている。支持柱材フランジ82は支持柱材80に対して所定の角度だけ傾斜し、支持柱材フランジ82にはアンカーボルト18が貫通する支持柱材ボルト孔83が形成されている。
そして、支持用接続板64に形成されたボルト孔65と支持柱材80に形成されたボルト孔81に支持柱接合ボルト84を挿入して、これに支持柱接合ナット85を螺合することによって支持用接続板64と支持柱材80とを接合する。さらに、支持フルLP60が下流側に所定の角度だけ傾斜した状態で、支持柱材80の支持柱材フランジ82を上流基礎コンクリート10に当接し、そのときの支持柱材ボルト孔83に合わせてボルト孔を穿孔し、該ボルト孔にアンカーボルト18を固定し、アンカーボルト18にアンカーナット19を仮締めする(本発明において、アンカーボルト18を仮締めすると表現する)。
【0050】
そして、 底面通し材20が所定の位置に配置され、支持フルLP60等が下流側に所定角度だけ傾斜した状態であることを確認して、アンカーボルト18に螺合したアンカーナット19およびアンカーボルト13に螺合したアンカーナット14を本締めする(本発明において、アンカーボルト18を本締めすると表現する)。
そうすると、支持フルLP60に最下段ハーフLP30が連結され、最下段ハーフLP30に最下段フルLP50が連結されているから、支持フルLP60、最下段ハーフLP30および最下段フルLP50から形成された堰堤1000の最下段は、下流側に所定の角度だけ傾斜している。また、かかる最下段は上流基礎コンクリート10に固定された支持柱材80によって支持されているから、その姿勢が維持され、傾斜角度が容易に変動(転倒)することがない。
【0051】
(下流壁面材)
図13において、下流壁面材200は、下流基礎コンクリート210の上に煉瓦積みされた標準フルサイズコンクリートパネル(以下、「標準フルCP」と称す)240等から形成されている。なお、長手方向の端部における出入りを無くすために、標準ハーフサイズコンクリートパネル(以下、「標準ハーフCP」と称す、図示しない)等を組み込んでいる。
【0052】
(下流壁面材の構築)
下流壁面材200は、まず、所定位置に下流基礎コンクリート210を設置する工程(S21)から始まる。
そして、下流基礎コンクリート210の上の最下段フルサイズコンクリートパネル(以下、「最下段フルCP」と称す)220および最下段ハーフサイズコンクリートパネル(以下、「最下段ハーフCP」と称す)230を設置する工程(S22)によって、最下段を構築する。なお、最下段ハーフCP230を必要としない場合がある。
次に、構築された上流壁面材100の最下段と下流壁面材200の最下段の範囲に、内部材300を1回または2回以上に分けて充填する(これについては別途詳細に説明する)。そして、最下段フルCP220および最下段ハーフCP230(最下段ハーフCP230が無い場合がある)の上に標準フルサイズコンクリートパネル(以下、「標準フルCP」と称す)240および標準ハーフサイズコンクリートパネル(以下、「標準ハーフCP」と称す)、無い場合がある、図示しない)を積み重ねる工程(S23)によって、中段部を構築する。
【0053】
そして、構築された上流壁面材100の中段部と下流壁面材200の中段部に挟まれた範囲に、内部材300を1回または2回以上に分けて充填する(これについては別途詳細に説明する)。
さらに、中段部を形成する標準フルCP240および標準ハーフCP(標準ハーフCPが無い場合がある)の上に、最上段フルサイズコンクリートパネル(以下、「最上段フルCP」と称す)260および最上段ハーフサイズコンクリートパネル(以下、「最上段ハーフCP」と称す)270を積み重ねる工程(S24)によって、最上段を構築する。なお、最上段ハーフCP270が無い場合がある。
【0054】
(最下段フルCP)
最下段フルCP220は、略矩形状板(直方体)であって、上流側に配置される上流面221と、上流面221に垂直な上辺側の段付き面である上面222aと、上流面221に垂直な側辺側の平面ある側面222b、222dと、上流面221に対して所定の角度だけ傾斜した平面である下面222c、を有している。
そして、上流面221の下面222cに近い位置に固定された基礎固定金具280によって、下流基礎コンクリート210に固定されている。
【0055】
(基礎固定金具)
基礎固定金具280は、断面L字状を形成する傾斜部281aおよび水平部281bと、両者を所定の角度で固定するブラケット部281cと、を有し、傾斜部281aには下流アンカー筋320を係止させるための係止孔283aが形成されている。
そして、傾斜部281aは固定ボルト282aによって最下段フルCP220の上流面221に固定され、水平部281bには、固定孔283bが形成されている。
そして、最下段フルCP220が正規の位置に配置されているか確認し、正規の位置において、固定孔283bに合わせて下流基礎コンクリート210にボルト孔を形成する。そして、そこに基礎固定ボルト282bを固定し、これに基礎固定ナット284bを螺合することによって最下段フルCP220は下流基礎コンクリート210に固定される。なお、基礎固定金具280の形状や大きさ、およびその数量は限定するものではない。
さらに、上流面221の側面222b、222dに近い位置に長手連結金具287の一方側が長手連結ボルト288によって固定され、長手連結金具287の他方側が長手連結ボルト288によって隣接する最下段フルCP220に固定されている。すなわち、長手連結金具287によって最下段フルCP220は長手方向で相互に連結されている。なお、長手連結金具287の数量や、長手連結ボルト288の数量は限定するものではない。
【0056】
(最下段ハーフCP)
図1および図13において、最下段ハーフCP230は、最下段フルCP220の長さを半分にしたものに同じである。すなわち、略矩形状板(直方体)であって、上流側に配置される上流面231と、上流面231に垂直な上辺側の段付き面である上面232aと、上流面231に垂直な側辺側の平面である側面232b、232dと、上流面231に対して所定の角度だけ傾斜した平面である下面232c、を有している。
そして、最下段フルCP220と同様に基礎固定金具280によって下流基礎コンクリート210に固定され、長手連結金具287によって隣接する最下段フルCP220に連結されている(S22)。
【0057】
(標準フルCP)
図1および図13において、標準フルCP240は、略矩形状板(直方体)であって、上流側に配置される上流面241と、上流面241に垂直な上辺側および下辺側の段付き面である上面242aおよび下面242cと、上流面231に垂直な側辺側の平面である側面242b、242dと、を有している。
また、上流側の面には、上面242aおよび下面242cに沿って、それぞれ上下連結金具290を形成する上辺連結金具291Uおよび下辺連結金具291Lが設置され、上面242aと下面242cとの略中間に、アンカー金具330が設置されている。
そして、標準フルCP240は最下段フルCP220および最下段ハーフCP230に上下連結金具290によって連結されている。
【0058】
(上下連結金具)
図14において、上下連結金具290は、標準フルCP240の上辺に沿って設置される上辺連結金具291Uと、下辺に沿って設置される下辺連結金具291Lとから形成される。なお、上辺連結金具291Uおよび下辺連結金具291Lは、標準フルCP240以外のCPにも設置されている。
すなわち、最下段フルCP220に設置された上辺連結金具291Uと、その上方に配置された標準フルCP240に設置された下辺連結金具291Lとは、上下連結ボルト294および上下連結ナット295によって連結される。
なお、上辺連結金具291Uと下辺連結金具291Lとは面対称の構成であるから、共通する内容については添え字「上辺、下辺」および「U,L」の記載を省略する。
連結金具291は、断面L字状を形成する傾斜部291aおよび水平部291bと、両者を所定の角度で固定するブラケット部291cと、を有している。
そして、傾斜部291aは固定ボルト292(固定用アンカーボルトおよびこれに螺合するナットを総称する)によって最下段フルCP220の上流面221等に固定されている。
そして、水平部291bには上下連結用孔293が形成されているから、上辺連結金具291Uと下辺連結金具291Lとのそれぞれの水平部291b同士を当接して、それぞれの上下連結用孔293に上下連結ボルト294を挿入して、上下連結ナット295を螺合することによって、上辺連結金具291Uと下辺連結金具291Lとは連結される。
なお、下辺連結金具291Lのブラケット部291cには、下流アンカー筋320を係止させるための係止孔296が形成されている。
なお、上下連結金具290の形状や大きさは限定するものではなく、上下連結ボルト294の数量等も限定するものではない。
【0059】
(アンカー金具)
図14において、アンカー金具330は、傾斜部331aおよび鉛直部331cを有する略T字状であって、傾斜部331aが固定ボルト332(固定用アンカーボルトおよびこれに螺合するナットを総称する)によって上流面221に固定されている。また、鉛直部331cには上流アンカー筋320が係止する係止孔333が形成されている。
【0060】
(標準ハーフCP)
図1および図13において、標準ハーフCP(図示しない)は、標準フルCP240の長さを半分にしたものに同じである。すなわち、略矩形状板(直方体)であって、上流側に配置される上流面と、上流面に垂直な上辺側および下辺側の段付き面である上面および下面と、上流面に垂直な側辺側の平面である側面と、を有している。
そして、標準ハーフCPは、標準フルCP240と同様に、最下段フルCP220および最下段ハーフCP230と上下連結金具290によって連結され、標準フルCP240とは長手連結金具287によって連結されている(いずれも、図示しない)。
なお、標準フルCP240および標準ハーフCPを積上げる数量は限定するものではなく、前記最下段の上に積み上げたと同様に、順次積み上げ、上下方向および長手方向が連結されるものである。
【0061】
(最上段フルCP)
図1および図13において、最上段フルCP260は、標準フルCP240と略同じ大きさの略矩形状板(直方体)であって、上流側に配置される上流面261と、上流面261に対して所定の角度だけ傾斜した平面である上面262aと、上流面261に垂直な側辺側の平面である側面262b、262dと、上流面261に対して垂直な段付面である下面262c、を有している。
最上段フルCP260は、標準フルCP240と同様に、下方の標準フルCP240(または標準ハーフCP)の上面242aの上に積み上げられ、上下連結金具290によって連結され、隣接する最上段フルCP260同士は、長手連結金具287によって連結される。
【0062】
(最上段ハーフCP)
図1および図13において、最上段ハーフCP270は、最上段ハーフCP260の長さを半分にしたものであって、上流側に配置される上流面271と、上流面271に対して所定の角度だけ傾斜した平面である上面272aと、上流面271に垂直な側辺側の平面である側面272b、272dと、上流面271に対して垂直な段付面である下面272c、を有している。
最上段ハーフCP270は、最上段フルCP260と同様に、下方の標準フルCP240(または標準ハーフCP)の上面242aの上に積み上げられ、上下連結金具290によって連結され、隣接する最上段フルCP260とは、長手連結金具287によって連結される。
【0063】
(S16の1:中段部の構築その1)
次に、内部材300の充填要領について説明する。内部材300を充填するには、最下段を形成する最下段ハーフLP30の上に、標準フルLP40を接合し、該標準フルLP40の側辺フランジ42bの下方範囲を、既に立設されている最下段フルLP50または支持フルLP60の側辺フランジ52b、62bの上範囲に接合する。
このとき、最下段ハーフLP30の上辺フランジ32aに形成されたボルト孔33aと、標準フルLP40の下辺フランジ42cに形成されたボルト孔43dとの位相は一致し、その一部に上下接合ボルト(図示しない)が挿入され、これに螺合する上下連結ナット(図示しない)を締め付けることによって、最下段ハーフLP30の上辺フランジ32aと標準フルLP40の下辺フランジ42cとを接合している。
また、最下段フルLP50の側辺フランジ52b(または52d)の上寄り範囲と、標準フルLP40の側辺フランジ42d(または42b)を当接し、それぞれに形成された側辺ボルト孔53b(または53d)と側辺ボルト孔43b(または43d)に長手連結ボルト(図示しない)を挿入して、これに長手連結ナット(図示しない)を螺合することによって、最下段フルLP50の側辺フランジ52b(または52d)の上寄り範囲と標準フルLP40の側辺フランジ42d(または42b)とを連結する。
【0064】
図1において、まず、上流壁面材100の少なくとも最下段(最下段フルLP50の上辺フランジ52aの高さ)が構築された状態で、構築されている上流壁面材100の最下段を形成する最下段ハーフLP30の上辺フランジ32aのレベル(正確には、上辺フランジ32aよりもわずかに低い位置)まで、上流壁面材100と下流壁面材200との間に2回に分けて内部材(例えば、ソイルセメント等)300a、300bを充填する。
【0065】
このとき、上流壁面材100は上流側において支持柱材80によって支持され、下流側、すなわち、内部材300a、300bが充填される範囲に、腹起し材等の支持部材がないため、内部材300aの充填作業が容易、迅速になる。また、大型機械による充填作業も可能になるため、これによって充填作業がさらに迅速になる。
なお、 内部材300bは、上下接合ボルトが設置されていないボルト孔33a、43dの近傍には充填されていないから、この限られた範囲で 内部材300bの表面は凹陥している。
【0066】
(S16の2:アンカー筋の設置)
次に、内部材300bが固化した後、最下段ハーフLP30の上辺フランジ32aおよび標準フルLP40の下辺フランジ42cのそれぞれ上下接合ボルトが設置されていないボルト孔33a、43dに、上流アンカー筋310を設置する。
また、基礎固定金具280に形成された係止孔283aに下流アンカー筋320を設置する。
【0067】
(上流アンカー筋)
上流アンカー筋310は、直線状の直線部311と、直線部311の一方の端部に形成された雄ねじ部312と、雄ねじ部312に受圧板ナット313によって設置された受圧板314と、直線部311の他方の端部に略ヘ字状に形成された固定部315と、固定部315に形成された固定ねじ部316と、固定ねじ部316に螺合する固定ナット317と、を有している。直線部311と固定部315とがなす角度は、最下段フルLP50の上辺フランジ52aと下辺フランジ52cとがなす角度に同じである(図1参照)。
したがって、上流アンカー筋310は略水平で、長手方向に略垂直である(下流を向いている)。
【0068】
(下流アンカー筋)
下流アンカー筋320は、直線状の直線部321と、直線部321の一方の端部に形成された雄ねじ部322と、雄ねじ部322に受圧板ナット323によって設置された受圧板324と、直線部321の他方の端部に形成された略L字状ないし略J字状の係止部325とを有している(図1参照)。
したがって、係止部325が基礎固定金具280に形成された係止孔283aに係止し、受圧板324が内部材300bの上面に支持される。
【0069】
(S16の2:中段部の構築その2)
次に、最下段フルLP50および支持フルLP60および標準フルLP40の上に標準フルLP40を積み重ねて、前記S16の1と同様に、接合する。
一方、下流側では、最下段フルCP220および最下段ハーフCP230(最下段ハーフCP230がない場合がある)の上に標準フルCP240および標準ハーフCP(図示しない、標準ハーフCPがない場合がある)を連結する。そして、最下段を形成する最下段フルLP50の上辺フランジ52aのレベル(正確には、上辺フランジ32aよりもわずかに低い位置)まで、上流壁面材100と下流壁面材200との間に2回に分けて内部材(例えば、ソイルセメント等)300c、300dを充填する。
さらに、内部材300dが固化した後、基礎固定金具280の係止孔283aに下流アンカー筋320を係止させる。
【0070】
(S17:最上段の構築並びに内部材の充填)
引き続き、前記要領に準じる作業を所定の回数繰返し、やがて、上流側では中段部の標準フルLP40の上の最上段となる標準フルLP40および最上段ハーフLP70を連結し(S17)、その上に堤冠材90を設置して上流壁面材100を完成させ(S18)、下流側では標準フルCP240および標準ハーフCP(図示しない、標準ハーフCPがない場合がある)の上に、最上段フルCP260および最上段ハーフCP270(最上段ハーフCP270がない場合がある)を連結して下流壁面材200を完成させ(S24)、完成した上流壁面材100の最上部と下流壁面材200の最上部との間に、内部材300j、300kを充填する。
【0071】
以上は、それぞれ中間部を形成する標準フルCP240および標準フルLP40が1段の場合を示しているが、本発明はこれに限定するものではなく、それぞれ2段以上であってもよい。
また、以上は、内部材300を最下段ハーフLP30の上辺フランジ32aの高さ(正確には、上辺フランジ32aよりもわずかに低い位置)まで、2回に分けて充填し、最下段フルCP220の上面222aまでは4回に分けて充填しているが、本発明はこれに限定するものではなく、何れの回数であってもよいし、充填タイミング毎に、充填する内部材300の厚さを相異(例えば、内部材300aの厚さと、内部材300bの厚さとが相異)させてもよい。
【0072】
さらに、本発明は、上流壁面材100および下流壁面材200の完成度合い(構築途中の上辺フランジ42aや上面242aの高さ)と内部材300の充填高さとは前記した要領に限定するものではない。例えば、上流壁面材100の中段部や最上段および下流壁面材200の中段部や最上段が完成した後、内部材300aの充填を開始してもよい。
また、上流壁面材100と下流壁面材200との構築ペースを同期させる必要はなく、一方が他方に先行して、高くなってもよい。
また、堰堤1000は、上流基礎コンクリート10の上面および下流基礎コンクリート210の上面が長さ方向の全長に渡って同一面を形成するものに限定するものではなく、堰堤1000が設置されて地形に応じて、例えば、谷間に設置される場合には、長手方向の中央範囲に比較して脇の範囲の上面が上方に位置してもよい。このとき、中央範囲における中段部に脇の範囲の最下段が接続されることになる。
さらに、上流アンカー筋310は、上辺フランジ32aと下辺フランジ42cとの接合に寄与しているが、本発明はこれに限定するものではなく、下辺フランジ42cへの設置に替えて、側辺フランジ42b、42dに係止させてもよい。
【0073】
[その他の実施の形態]
以上説明した堰堤1000は、標準フルLP40等によって形成された上流壁面材100と、標準フルCP240等によって形成された下流壁面材200とを有しているが、本発明はこれに限定するものではなく、下流壁面材を標準フルLP40等によって形成してもよい。すなわち、下流壁面材200に替えて上流壁面材100を下流基礎コンクリート210に設置する。このとき、例えば、上流壁面材100は上流側に傾斜し、支持柱材80は支持フルLP60等の下流側に配置される等、前記「上流、上流側」を「下流、下流側」と読み替える。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明は以上の構成であるから、内部材の充填が容易になり施工コストの低減を図ることができるから、各種地形に応じた形状およびサイズに応じた堰堤、および該堰堤の施工方法として広く利用することができる。
【符号の説明】
【0075】
10 上流基礎コンクリート
13 アンカーボルト
14 アンカーナット
18 アンカーボルト
19 アンカーナット
20 底面通し材
20a 底面通し単位材
20b 底面通し単位材
21 ボルト孔
22 底面通し材接続板
23 ボルト孔
24 ボルト孔
25 底面通し材連結板
26 ボルト孔
27 接続ボルト
28 接続ナット
30 最下段ハーフサイズライナープレート(最下段ハーフLP)
31 波鋼板
32a 上辺フランジ
32b 側辺フランジ
32c 下辺フランジ
32d 側辺フランジ
33 ボルト孔
34 底面接続板
35 ボルト孔
36 底面接続ボルト
37 底面接続ナット
40 標準フルサイズライナープレート(標準フルLP)
41 波鋼板
42a 上辺フランジ
42b 側辺フランジ
42c 下辺フランジ
42d 側辺フランジ
43 ボルト孔
49 貫通孔
50 最下段フルサイズライナープレート(最下段フルLP)
51 波鋼板
52a 上辺フランジ
52b 側辺フランジ
52c 下辺フランジ
52d 側辺フランジ
53 ボルト孔
56 側辺連結ボルト
57 側辺連結ナット
60 支持フルサイズライナープレート(支持フルLP)
61 波鋼板
62a 上辺フランジ
62b 側辺フランジ
62c 下辺フランジ
62d 側辺フランジ
63 ボルト孔
64 支持用接続板
65 ボルト孔
66 側辺連結ボルト
67 側辺連結ナット
70 最上段ハーフサイズライナープレート(最上段ハーフLP
71 波鋼板
72a 上辺フランジ
72b 側辺フランジ
72c 下辺フランジ
72d 側辺フランジ
73 ボルト孔
80 支持柱材
81 ボルト孔
82 支持柱材フランジ
83 支持柱材ボルト孔
84 支持柱接合ボルト
85 支持柱接合ナット
90 堤冠材
100 上流壁面材
200 下流壁面材
210 下流基礎コンクリート
220 最下段フルサイズコンクリートパネル(最下段フルCP)
221 上流面
222a 上面
222b 側面
222c 下面
222d 側面
230 最下段ハーフサイズコンクリートパネル(最下段ハーフCP)
231 上流面
232a 上面
232b 側面
232c 下面
232d 側面
240 標準フルサイズコンクリートパネル(標準フルCP)
241 上流面
242a 上面
242b 側面
242c 下面
242d 側面
243 長手連結金具
260 最上段フルサイズコンクリートパネル(最上段フルCP)
261 上流面
262a 上面
262b 側面
262c 下面
262d 側面
270 最上段ハーフサイズコンクリートパネル(最上段ハーフCP)
271 上流面
272a 上面
272b 側面
272c 下面
272d 側面
280 基礎固定金具
281a 傾斜部
281b 水平部
281c ブラケット部
282a 固定ボルト
282b 基礎固定ボルト
283a 係止孔
283b 固定孔
284b 基礎固定ナット
287 長手連結金具
288 長手連結ボルト
281a 傾斜部
281b 水平部
281c ブラケット部
282a 固定ボルト
282b 基礎固定ボルト
283a 係止孔
283b 固定孔
284b 基礎固定ナット
287 長手連結金具
288 長手連結ボルト
290 上下連結金具
291L 下辺連結金具
291U 上辺連結金具
291a 傾斜部
291b 水平部
291c ブラケット部
292 固定ボルト
293 上下連結用孔
294 上下連結ボルト
295 上下連結ナット
296 係止孔
300 内部材
310 上流アンカー筋
311 直線部
312 雄ねじ部
313 受圧板ナット
314 受圧板
315 固定部
316 雄ねじ部
317 固定ナット
320 下流アンカー筋
321 直線部
322 雄ねじ部
323 受圧板ナット
324 受圧板
325 係止部
330 アンカー金具
331a 傾斜部
331c 鉛直部
332 固定ボルト
333 係止孔
400 保護コンクリート
1000 堰堤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の間隔を空けて上流側に設置された上流基礎コンクリートおよび下流側に設置された下流基礎コンクリートと、
前記上流基礎コンクリートに固定された底面通し材と、
矩形状の面材と該面材の4辺にそれぞれ固定されたフランジとを具備する所定高さのフルサイズパネルと、矩形状の面材と該面材の4辺にそれぞれ固定されたフランジとを具備する前記所定高さの半分の高さのハーフサイズパネルとが連結されて前記底面通し材に設置され、下流側に傾斜している上流壁面材と、
矩形状の前記所定高さのコンクリートパネルが連結されて前記下流基礎コンクリートに設置され、上流側に傾斜している下流壁面材と、
前記上流基礎コンクリートに固定された底面通し材と、
前記上流壁面材と前記下流壁面材との間に充填されている内部材と、
を有し、
前記下流壁面材の最下部が、長手連結金具を介して連結された前記コンクリートパネルである最下段コンクリートパネルから形成され、該最下段コンクリートパネルの上流側の面に、略L字状の基礎固定金具の傾斜部が固定され、該基礎固定金具の水平部が前記下流基礎コンクリートに設置され、
前記上流壁面材の最下部が、長手方向で交互に前記底面通し材に配置された前記ハーフサイズパネルである最下段ハーフサイズパネルと前記フルサイズパネルである最下段フルサイズパネルとから形成され、
前記最下段ハーフサイズパネルの上流側の面に、上流側に突出した底面接続板が固定され、該底面接続板が前記底面通し材に底面固定ボルトによって設置され、
前記最下段ハーフサイズパネルの側辺に固定されたフランジと前記最下段フルサイズパネルの側辺に固定されたフランジの下範囲とが、側辺連結ボルトによって連結され、
前記最下段フルサイズパネルのうち所定枚数毎に配置された最下段フルサイズパネルの上流側の面に、上流側に突出した支持用接続板が固定され、該支持用接続板に接続された支持柱材が前記上流基礎コンクリートに着脱自在に設置され、
前記支持用接続板に前記支持柱材が接続された状態において、前記最下段フルサイズパネルの下範囲および前記最下段ハーフサイズパネルと前記最下段コンクリートパネルの下範囲との間に、1回または2回以上に分けて前記内部材が充填されたことを特徴とする堰堤。
【請求項2】
前記最下段ハーフサイズパネルの上に、前記フルサイズパネルである二段目フルサイズパネルが配置され、
前記最下段フルサイズパネルの側辺に固定されたフランジの上範囲と前記二段目フルサイズパネルの側辺に固定されたフランジの下範囲とが、側辺連結ボルトによって連結され、
前記最下段ハーフサイズパネルの上辺に固定されたフランジと前記二段目フルサイズパネルの下辺に固定されたフランジとが、上下辺連結ボルトおよびアンカー筋によって連結され、
前記アンカー筋が、雄ネジが形成された屈曲部と、該屈曲部に連なった直線部と、該直線部に設置された受圧板と、前記雄ネジに螺合するナットとを具備し、前記雄ネジに螺合したナットが、前記最下段ハーフサイズパネルの上辺に固定されたフランジと前記二段目フルサイズパネルの下辺に固定されたフランジとを挟圧した状態において、前記直線部が下流側を向き、
前記二段目フルサイズパネルの上範囲および前記最下段フルサイズパネルの上範囲と前記最下段コンクリートパネルの上範囲との間に、1回または2回以上に分けて前記内部材が充填されたことを特徴とする請求項1記載の堰堤。
【請求項3】
前記内部材が充填された後、前記支持柱材と前記支持用接続板とが切り離され、かつ、前記支持柱材が前記上流基礎コンクリートから取り外されたことを特徴とする請求項1または2記載の堰堤。
【請求項4】
上下に配置された前記フルサイズパネルにおいて、上に配置されたフルサイズパネルの下辺に固定されたフランジと、下に配置されたフルサイズパネルの上辺に固定されたフランジとが、上下辺連結ボルトおよびアンカー筋によって連結され、
前記アンカー筋が、雄ネジが形成された屈曲部と、該屈曲部に連なった直線部と、該直線部に設置された受圧板と、前記雄ネジに螺合するナットとを具備し、前記雄ネジに螺合したナットが、前記下に配置されたフルサイズパネルの上辺に固定されたフランジと前記上に配置されたフルサイズパネルの下辺に固定されたフランジとを挟圧した状態において、前記直線部が下流側に向かっていることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の堰堤。
【請求項5】
所定の間隔を空けて上流側に設置された上流基礎コンクリートおよび下流側に設置された下流基礎コンクリートと、
前記上流基礎コンクリートに固定された上流底面通し材と、
前記下流基礎コンクリートに固定された下流底面通し材と、
矩形状の面材と該面材の4辺にそれぞれ固定されたフランジとを具備する所定高さのフルサイズパネルと、矩形状の面材と該面材の4辺にそれぞれ固定されたフランジとを具備する前記所定高さの半分の高さのハーフサイズパネルとが連結されて前記上流底面通し材に設置され、下流側に傾斜している上流壁面材と、
前記フルサイズパネルと、前記ハーフサイズパネルとが連結されて前記下流底面通し材に設置され、上流側に傾斜している下流壁面材と、
前記上流壁面材と前記下流壁面材との間に充填されている内部材と、
を有し、
前記上流壁面材の最下部が、長手方向で交互に前記上流底面通し材に配置された前記ハーフサイズパネルである最下段ハーフサイズパネルと前記フルサイズパネルである最下段フルサイズパネルとから形成され、
前記最下段ハーフサイズパネルの上流側の面に、上流側に突出した底面接続板が固定され、該底面接続板が前記上流底面通し材に底面固定ボルトによって設置され、
前記最下段ハーフサイズパネルの側辺に固定されたフランジと前記最下段フルサイズパネルの側辺に固定されたフランジの下範囲とが、側辺連結ボルトによって連結され、
前記最下段フルサイズパネルのうち所定枚数毎に配置された最下段フルサイズパネルの上流側の面に、上流側に突出した支持用接続板が固定され、該支持用接続板が前記上流基礎コンクリートに着脱自在に設置され、
前記下流壁面材の最下部が、長手方向で交互に前記下流底面通し材に配置された前記ハーフサイズパネルである最下段ハーフサイズパネルと前記フルサイズパネルである最下段フルサイズパネルとから形成され、
前記最下段ハーフサイズパネルの下流側の面に、下流側に突出した底面接続板が固定され、該底面接続板が前記下流底面通し材に底面固定ボルトによって設置され、
前記最下段ハーフサイズパネルの側辺に固定されたフランジと前記最下段フルサイズパネルの側辺に固定されたフランジの下範囲とが、側辺連結ボルトによって連結され、
前記最下段フルサイズパネルのうち所定枚数毎に配置された最下段フルサイズパネルの下流側の面に、下流側に突出した支持用接続板が固定され、該支持用接続板に接続された支持柱材が前記下流基礎コンクリートに着脱自在に設置され、
前記上流壁面材および前記下流壁面材におけるそれぞれの前記支持用接続板に前記支持柱材が接続された状態において、前記上流壁面材の最下段フルサイズパネルの下範囲および最下段ハーフサイズパネルと前記下流壁面材の最下段フルサイズパネルの下範囲および最下段ハーフサイズパネルとの間に、1回または2回以上に分けて前記内部材が充填されたことを特徴とする堰堤。
【請求項6】
前記フルサイズパネルは、断面波状の波鋼板からなる面材と、該面材の側縁の折り曲げ加工によって形成された側辺フランジと、該側辺フランジの端面および前記面材の端面に跨がって接合された上辺フランジおよび下辺フランジと、を有するフルサイズライナープレートであり、
前記ハーフサイズパネルは、前記フルサイズライナープレートの高さを半分にしたハーフサイズライナープレートであることを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の堰堤。
【請求項7】
上流壁面材と、下流壁面材と、前記上流壁面材と前記下流壁面材との間に設置された内部材と、を有する堰堤の施工方法であって、
所定の間隔を空けて上流側に上流基礎コンクリートを、下流側に下流基礎コンクリートをそれぞれ設置する工程と、
前記上流基礎コンクリートの上に底面通し材を載置する工程と、
矩形状の面材と該面材の4辺にそれぞれ固定されたフランジとを具備し、所定高さの半分の高さで所定長さである最下段ハーフサイズパネルを、長手方向で前記所定長さを空けて前記底面通し材の上に載置し、該最下段ハーフサイズパネルの上流側の面に固定された底面接続板と前記底面通し材とを底面接続ボルトによって接続する工程と、
前記底面通し材に形成されたボルト孔を貫通し、前記上流基礎コンクリートに基礎アンカーボルトを打設して、該基礎アンカーボルトを仮締めする工程と、
矩形状の面材と該面材の4辺にそれぞれ固定されたフランジとを具備し、所定高さで所定長さである最下段フルサイズパネルを、前記底面通し材の上で前記最下段ハーフサイズパネル同士の間に載置して、前記最下段フルサイズパネルの側辺に固定されたフランジの下範囲と前記最下段ハーフサイズパネルの側辺に固定されたフランジとを側辺連結ボルトによって連結する工程と、
前記最下段フルサイズパネルのうち所定枚数毎に配置された最下段フルサイズパネルの上流側の面に固定された支持用接続板に、支持柱材を接続し、
該支持柱材に形成された支持柱材ボルト孔を貫通し、前記上流基礎コンクリートに支持柱接合ボルトを打設して、該支持柱接合ボルトを仮締めする工程と、
前記底面通し材が所定の位置に配置され、前記最下段フルサイズパネルが下流側に所定角度だけ傾斜した状態で、前記基礎アンカーボルトおよび前記支持柱接合ボルトを本締めする工程と、
前記下流基礎コンクリートの上に、矩形状の前記所定高さの最下段コンクリートパネルを載置して、該最下段コンクリートパネル同士を長手連結金具を介して連結すると共に、該最下段コンクリートパネルの上流側の面に固定された略L字状の基礎固定金具を、前記下流基礎コンクリートに設置する工程と、
前記最下段フルサイズパネルの下範囲および前記最下段ハーフサイズパネルと前記最下段コンクリートパネルの下範囲との間に、1回または2回以上に分けて内部材を充填する工程と、を有することを特徴とする堰堤の施工方法。
【請求項8】
前記最下段フルサイズパネルは、断面波状の波鋼板からなる面材と、該面材の側縁の折り曲げ加工によって形成された側辺フランジと、該側辺フランジの端面および前記面材の端面に跨がって接合された上辺フランジおよび下辺フランジと、を有する最下段フルサイズライナープレートであり、
前記最下段ハーフサイズパネルは、前記最下段フルサイズライナープレートの高さを半分にした最下段ハーフサイズライナープレートであることを特徴とする請求項7記載の堰堤の施工方法。
【請求項9】
前記最下段ハーフサイズパネルの上に、前記最下段フルサイズパネルと同一高さである二段目フルサイズパネルを配置し、
前記最下段フルサイズパネルの側辺に固定されたフランジの上範囲と前記二段目フルサイズパネルの側辺に固定されたフランジの下範囲とを側辺連結ボルトによって接続すると共に、前記最下段ハーフサイズパネルの上辺に固定されたフランジと前記二段目フルサイズパネルの下辺に固定されたフランジとを上下辺連結ボルトおよびアンカー筋によって接続する工程と、
前記最下段フルサイズパネルの上範囲および前記二段目フルサイズパネルの下範囲と前記最下段コンクリートパネルの上範囲との間に、1回または2回以上に分けて前記内部材を充填する工程と、
を有し、
前記アンカー筋が、雄ネジが形成された屈曲部と、該屈曲部に連なった直線部と、該直線部に設置された受圧板と、前記雄ネジに螺合するナットとを具備し、前記雄ネジに螺合したナットが、前記最下段ハーフサイズパネルの上辺に固定されたフランジと前記二段目フルサイズパネルの下辺に固定されたフランジとを挟圧した状態において、前記直線部が下流側に向かっていることを特徴する請求項6記載の堰堤の施工方法。
【請求項10】
前記2段目フルサイズパネルは、断面波状の波鋼板からなる面材と、該面材の側縁の折り曲げ加工によって形成された側辺フランジと、該側辺フランジの端面および前記面材の端面に跨がって接合された上辺フランジおよび下辺フランジと、を有する2段目フルサイズライナープレートであることを特徴とする請求項9記載の堰堤の施工方法。
【請求項11】
前記内部材を充填する工程の後、前記支持柱材と前記支持用接続板とを切り離し、前記支持柱材を前記上流基礎コンクリートから撤去する工程を有することを特徴とする請求項7乃至10の何れかに記載の堰堤の施工方法。
【請求項12】
前記最下段フルサイズパネルと同じ高さである下側フルサイズパネルの上に、前記最下段フルサイズパネルと同じ高さである上側フルサイズパネルを配置し、
前記下側フルサイズパネルの上辺に固定されたフランジと前記下側フルサイズパネルの下辺に固定されたフランジとを上下辺連結ボルトおよびアンカー筋によって接続する工程と、を有し、
前記アンカー筋が、雄ネジが形成された屈曲部と、該屈曲部に連なった直線部と、該直線部に設置された受圧板と、前記雄ネジに螺合するナットとを具備し、前記雄ネジに螺合したナットが、前記下側フルサイズパネルの上辺に固定されたフランジと前記上側フルサイズパネルの下辺に固定されたフランジとを挟圧した状態において、前記直線部が下流側に向かっていることを特徴とする請求項7乃至9の何れかに記載の堰堤の施工方法。
【請求項13】
上流壁面材と、下流壁面材と、前記上流壁面材と前記下流壁面材との間に設置された内部材と、を有する堰堤の施工方法であって、
所定の間隔を空けて上流側に上流基礎コンクリートを、下流側に下流基礎コンクリートをそれぞれ設置する工程と、
前記上流基礎コンクリートの上に上流底面通し材を載置する工程と、
矩形状の面材と該面材の4辺にそれぞれ固定されたフランジとを具備し、所定高さの半分の高さで所定長さである最下段ハーフサイズパネルを、長手方向で前記所定長さを空けて前記上流底面通し材の上に載置し、該最下段ハーフサイズパネルの上流側の面に固定された底面接続板と前記上流底面通し材とを底面接続ボルトによって接続する工程と、
前記上流底面通し材に形成されたボルト孔を貫通し、前記上流基礎コンクリートに基礎アンカーボルトを打設して、該基礎アンカーボルトを仮締めする工程と、
矩形状の面材と該面材の4辺にそれぞれ固定されたフランジとを具備し、所定高さで所定長さである最下段フルサイズパネルを、前記上流底面通し材の上で前記最下段ハーフサイズパネル同士の間に載置して、前記最下段フルサイズパネルの側辺に固定されたフランジの下範囲と前記最下段ハーフサイズパネルの側辺に固定されたフランジとを側辺連結ボルトによって連結する工程と、
前記最下段フルサイズパネルのうち所定枚数毎に配置された最下段フルサイズパネルの上流側の面に固定された支持用接続板に、支持柱材を接続し、
該支持柱材に形成された支持柱材ボルト孔を貫通し、前記上流基礎コンクリートに支持柱接合ボルトを打設して、該支持柱接合ボルトを仮締めする工程と、
前記上流底面通し材が所定の位置に配置され、前記最下段フルサイズパネルが下流側に所定角度だけ傾斜した状態で、前記基礎アンカーボルトおよび前記支持柱接合ボルトを本締めする工程と、
前記下流基礎コンクリートの上に下流底面通し材を載置する工程と、
前記最下段ハーフサイズパネルを、長手方向で前記所定長さを空けて前記下流底面通し材の上に載置し、該最下段ハーフサイズパネルの上流側の面に固定された底面接続板と前記下流底面通し材とを底面接続ボルトによって接続する工程と、
前記下流底面通し材に形成されたボルト孔を貫通し、前記下流基礎コンクリートに基礎アンカーボルトを打設して、該基礎アンカーボルトを仮締めする工程と、
前記最下段フルサイズパネルを、前記下流底面通し材の上で前記最下段ハーフサイズパネル同士の間に載置して、前記最下段フルサイズパネルの側辺に固定されたフランジの下範囲と前記最下段ハーフサイズパネルの側辺に固定されたフランジとを側辺連結ボルトによって連結する工程と、
前記最下段フルサイズパネルのうち所定枚数毎に配置された最下段フルサイズパネルの上流側の面に固定された支持用接続板に、支持柱材を接続し、
該支持柱材に形成された支持柱材ボルト孔を貫通し、前記上流基礎コンクリートに支持柱接合ボルトを打設して、該支持柱接合ボルトを仮締めする工程と、
前記下流底面通し材が所定の位置に配置され、前記最下段フルサイズパネルが上流側に所定角度だけ傾斜した状態で、前記基礎アンカーボルトおよび前記支持柱接合ボルトを本締めする工程と、
前記上流壁面材の最下段フルサイズパネルの下範囲および前記最下段ハーフサイズパネルと前記下流壁面材の最下段フルサイズパネルの下範囲および前記最下段ハーフサイズパネルとの間に、1回または2回以上に分けて内部材を充填する工程と、を有することを特徴とする堰堤の施工方法。
【請求項14】
前記最下段フルサイズパネルは、断面波状の波鋼板からなる面材と、該面材の側縁の折り曲げ加工によって形成された側辺フランジと、該側辺フランジの端面および前記面材の端面に跨がって接合された上辺フランジおよび下辺フランジと、を有する最下段フルサイズライナープレートであり、
前記最下段ハーフサイズパネルは、前記最下段フルサイズライナープレートの高さを半分にした最下段ハーフサイズライナープレートであることを特徴とする請求項11乃至13の何れかに記載の堰堤の施工方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2012−92583(P2012−92583A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−241319(P2010−241319)
【出願日】平成22年10月27日(2010.10.27)
【出願人】(000231110)JFE建材株式会社 (150)
【Fターム(参考)】