説明

堰式流量計を用いた現場自動揚水試験装置

【課題】 地盤の掘削施工を行う現場の排水計画を立案するために実施される揚水試験に使用される、堰式流量計を用いた現場自動揚水試験装置を提供する。
【解決手段】 現場の地盤中に設けられた揚水井戸の揚水管を通じて揚水される地下水の流量を流量計測手段により計測し、その計測値を記録表示手段へ入力する現場自動揚水試験装置において、前記流量計測手段は、揚水される地下水の受水槽に堰が設けられ、同堰へ溢流する水位を計測する差動トランス型のフロート式水位計が設置された構成であり、前記フロート式水位計の計測値がリアルタイムに前記記録表示手段へ入力される。

【考案の詳細な説明】
【0001】
【考案の属する技術分野】
この考案は、地盤の掘削施工(根切り)を行う現場の排水計画を立案するために実施される揚水試験に使用される自動揚水試験装置の技術分野に属し、更に言えば、堰式流量計を用いた現場自動揚水試験装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
現場揚水試験は、地下水が存在する現場で地盤の掘削施工を行う場合の排水計画を立案する際に非常に重要な試験の一つである。通常の現場透水試験は、単孔式のケーシングを用いて水位の回復状況などから透水係数を求めているが、実際に掘削した際に湧出する水量までは推定できない。掘削時に排水量が少なかったり逆に豊富に存在したりすることが往々にしてあり、揚水試験の重要性が高いことが理解されている。しかし、現場揚水試験は、揚水井戸や観測用井戸を多数設置するため、その井戸の数に応じた測定人員が必要とされる。また、測定した結果を数値表にまとめ、定数(透水量係数や貯留係数など)を算出するのにも多くの人員や労力が必要とされ、これが揚水試験のコスト高に反映している。
【0003】
そこで従来、現場揚水試験を自動化し、少人員、少労力で実施できる自動揚水試験装置がいくつか提案されている。
【0004】
一例として、図4には従来の現場自動揚水試験装置を示している。この現場自動揚水試験装置は、地盤E中に設けられた1本の揚水井戸1、及び複数本の観測用井戸10…に、それぞれ水位計9、9’…が設置され、該水位計9、9’…により計測した水位の計測値が、観測室Kにある記録収録器11にそれぞれ送られ(集められ)入力される。また、揚水井戸1の揚水管1aに電磁流量計Pを設置し、該電磁流量計Pにより計測した流量の計測値は、やはり観測室Kにある記録収録器11へ送り入力される。前記の記録収録器11に接続された、記録表示手段となるノートパソコン4等の端末装置により前記水位の計測値、及び流量の計測値などの各データを計算して水理定数を求め、適切な排水計画を立案する構成である。図4中の符号a〜dは、それぞれの機器を記録収録器11と接続したコードである。符号2’は観測井戸10内の地下水である。
【0005】
【本考案が解決しようとする課題】
図4に例示した従来の現場自動揚水試験装置は、電磁流量計を用いた自動揚水試験装置であるため、実用性に大きな問題がある。
【0006】
即ち、電磁流量計Pを用いる場合、その流量計測の精度を保つためには、揚水管1aの太さに適正な電磁流量計を使用するか、或いは電磁流量計に適正な太さの揚水管を使用しなければならない。しかし、現場の揚水試験では、予め揚水井戸が用意され、既設の揚水管を前提として揚水試験を行わなければならないことが多く、既設の揚水管の径が様々であるため、必然的に何種類もの太さの揚水管に合わせた電磁流量計を用意しなければならず、到底この要請には対応しきれないため、実用的でない。更には、揚水量の大小に応じた適度な容量の流量計を用いなければならない。そのため、極端に少ない流量に大容量の流量計を用いると計測誤差が大きくなり、精度の高い揚水試験が遂行されない虞れがある。
【0007】
本考案の目的は、既設の様々な太さの揚水管に対応して支障なく実施することができ、実用的で、目視観測も容易な、低コストの堰式流量計を用いた現場自動揚水試験装置を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するための手段として、請求項1に記載した考案に係る堰式流量計を用いた現場自動揚水試験装置は、 現場の地盤中に設けられた揚水井戸の揚水管を通じて揚水される地下水の流量を流量計測手段により計測し、その計測値を記録表示手段へ入力する現場自動揚水試験装置において、 前記流量計測手段は、揚水される地下水の受水槽に堰が設けられ、同堰へ溢流する水位を計測する差動トランス型のフロート式水位計が設置された構成であり、前記フロート式水位計の計測値がリアルタイムに前記記録表示手段へ入力されることを特徴とする。
【0009】
請求項2記載の考案は、請求項1に記載した堰式流量計を用いた現場自動揚水試験装置において、 受水槽に設けられる堰は、三角堰であることを特徴とする。
【0010】
【考案の実施形態及び実施例】
本考案に係る堰式流量計を用いた現場自動揚水試験装置の実施形態及び実施例を、図1〜図3に基いて以下に説明する。
【0011】
本考案に係る堰式流量計を用いた現場自動揚水試験装置は、図1に全体系統を示したように、現場の地盤E中に設けられた揚水井戸1の揚水管1aを通じて、水中ポンプ8により揚水される地下水2の流量は堰式流量計3により計測し、その計測値をリアルタイムに記録表示手段4へ入力する。
【0012】
前記堰式流量計3は、図2A、Bに構造を詳示したように、揚水管1aから揚水される地下水2の受水槽5に、先ず受水部を仕切り水面の揺れを防止するための潜り堰板12が設けられ、続いて受水槽5の底から水密的に立ち上がる堰板6が設けられ、該堰板6に三角堰6aが形成されている。前記受水槽5としては、通常多くの現場に用意されているノッチタンクを利用してもよい。前記の三角堰6aへ溢流する水位Hを計測する差動トランス型のフロート式水位計7が、前記潜り堰12の下流側面に設置されている。前記フロート式水位計7は、後述するようにフロート7bの上下の変位(水位の変化)を電流値の大きさで把握するもので、その計測値がリアルタイムに前記記録表示手段4へ入力される。
【0013】
前記差動トランス型のフロート式水位計7は、図3に詳示したように、芯棒(鋼棒)7a、及び該芯棒7aに通され可動状態に取付けられた球状のフロート7b、並びに前記潜り堰板12に設置するための支持部7cとで構成されている。
前記球状のフロート7bは、内部が空洞となっており、水に浮く浮きの役割を果たし、前記三角堰6aへ溢流する水位Hの変化と共に芯棒7aに沿って変位する。その結果全体の電気抵抗値が変化し、芯棒7a内に流れる電流値の変化を水位の変化として計測する仕組みである。本実施例では、芯棒7aが鉛直方向を向くように、潜り堰板12の下流側面に支持部7cを固定し設置しているが、これに限らず、例えば潜り堰板12と堰板6との間にある受水槽5の内側面などに設置してもよい。支持部7cには計測値の発信部等が内蔵されている。
【0014】
本考案に係る堰式流量計を用いた現場自動揚水試験装置の働きを図1を用いて以下に説明する。
【0015】
現場の地盤E中に設けられた1本の揚水井戸1、及び複数本の観測用井戸10…にそれぞれ水位計9、9’…が設置され、該水位計9、9’…により計測した水位の計測値が、観測室Kにある記録収録器11にそれぞれ送られ(集められ)
入力される。また、揚水井戸1の揚水管1aの排水口13の下に設置した堰式流量計3のフロート式水位計7により計測した水位の計測値も、やはり観測室Kにある記録収録器11へ送り入力される。前記の記録収録器11に接続された記録表示手段となるノートパソコン4等の端末装置により、前記フロート式水位計の計測値のデータを、下記した公知の三角堰の流量Qを求める公式[数1]へ当てはめて換算し流量をリアルタイムに求める。
【0016】
【数1】
Q=0.00084H5/2 Q:m3 /分 H:cm 前記水位Hから求められる流量Qのデータ、及び前記水位計9、9’…の水位の計測値のデータなどを演算して水理定数を求め、適切な排水計画を立案することができる。図1中の符号a〜eは、それぞれの機器を記録収録器11と接続したコードである。符号2’は観測井戸10内の地下水である。
【0017】
【本考案が奏する効果】
本考案に係る堰式流量計を用いた現場自動揚水試験装置によれば、流量計測手段を、既存のノッチタンク等を受水槽として利用し、これに差動トランス型のフロート式水位計を設置する構成で実施できるので、既設の様々な太さの揚水管に対応して各現場で極めて容易に実施することができ、実用的であると共に低コストである。また、目視観測も容易なことから大きな計測ミスをすることもない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本考案に係る堰式流量計を用いた現場自動揚水試験装置の実施例を示した系統図である。
【図2】Aは本考案に用いられる堰式流量計を示した斜視図であり、Bは本考案に用いられる堰式流量計を示した縦断面図である。
【図3】本考案に用いられるフロート式水位計を示した正面図である。
【図4】従来の現場自動揚水試験装置の実施例を示した系統図である。
【符号の説明】
E 現場の地盤
1 揚水井戸
1a 揚水管
2 揚水される地下水
3 流量計測手段(堰式流量計)
4 記録表示手段
5 受水槽
6a 堰
H 溢流する水位
7 フロート式水位計

【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】現場の地盤中に設けられた揚水井戸の揚水管を通じて揚水される地下水の流量を流量計測手段により計測し、その計測値を記録表示手段へ入力する現場自動揚水試験装置において、前記流量計測手段は、揚水される地下水の受水槽に堰が設けられ、同堰へ溢流する水位を計測する差動トランス型のフロート式水位計が設置された構成であり、前記フロート式水位計の計測値がリアルタイムに前記記録表示手段へ入力されることを特徴とする、堰式流量計を用いた現場自動揚水試験装置。
【請求項2】受水槽に設けられる堰は、三角堰であることを特徴とする、請求項1に記載した堰式流量計を用いた現場自動揚水試験装置。

【図1】
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【図3】
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【図2】
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【図4】
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【登録番号】第3054000号
【登録日】平成10年(1998)9月2日
【発行日】平成10年(1998)11月17日
【考案の名称】堰式流量計を用いた現場自動揚水試験装置
【国際特許分類】
【評価書の請求】未請求
【出願番号】実願平10−3187
【出願日】平成10年(1998)5月12日
【出願人】(000151368)株式会社東京ソイルリサーチ (5)