説明

報知装置

【課題】状況の変化を簡便に報知する報知装置を提供する。
【解決手段】報知装置10は、ガス送出手段1と、第1のチューブ3と、第2のチューブ5と、圧力センサー2と、報知手段50と、を備える。ガス送出手段1は、定常的に一定量のガスを送出し続ける。可撓性を有する第1のチューブ3は、ガス送出手段1の送出口に接続されてガスの流路を形成する。弾性を有する第2のチューブ5は、第1のチューブ3の先でガスの流路を形成する。圧力センサー2は、ガスの流路内の気圧を測定して出力する。報知手段50は、第2のチューブ5の狭窄による流路内のガスの気圧上昇を、圧力センサー2の出力に基づいて検出して報知する。患者が第2のチューブ5を噛むと、状況の変化を報知することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の技術分野は後述する基礎出願のそれと同様である。
【背景技術】
【0002】
本発明の背景技術は後述する基礎出願のそれと同様である。
[先行技術文献]
【0003】
本発明の先行技術文献は後述する基礎出願のそれらと同様である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は後述する基礎出願のそれらと同様であり、本発明は特に、状況の変化を簡便に報知することができる報知装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の報知装置は、定常的に一定量のガスを送出し続けるガス送出手段と、ガス送出手段の送出口に接続されてガスの流路を形成する可撓性を有する第1のチューブと、第1のチューブの先でガスの流路を形成する弾性を有する第2のチューブと、ガスの流路内の気圧を測定して出力する圧力センサーと、第2のチューブの狭窄による流路内のガスの気圧上昇を、圧力センサーの出力に基づいて検出して報知する報知手段と、を備える。
【0006】
この態様によると、流路内の気圧の変化に基づき状況の変化を簡便に報知することができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、流路内の気圧の変化に基づき状況の変化を簡便に報知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】基礎出願のナースコールスイッチの構成図である。
【図2】基礎出願のナースコールスイッチを使用者に装着した図である。
【図3】図3(A)は、実施の形態1に係る報知装置の構成図である。図3(B)は、第2のチューブのM−M断面図である。図3(C)は、第1のチューブのN−N断面図である。
【図4】実施の形態1に係る報知装置に含まれる報知手段の機能ブロックを説明する概略図である。
【図5】実施の形態1に係る報知手段の制御を示すフローチャートである。
【図6】第2のチューブの開放端領域の変形例を示す一部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明を説明するために、まず本発明の基礎となる特願2010−157378(以下基礎出願という)の記載内容を説明し、その後、本発明の実施の形態を説明する。なお、基礎出願に関する記述の中([本発明の実施の形態]の前までの部分)において「本発明」というときは「基礎出願の発明」と読み替えるものとする。
[基礎出願の技術分野]
【0010】
本発明は、脊椎損傷患者など押しボタン式のナースコールが使えない人のためのナースコールのスイッチに関するものであり、ガスを流したチューブを噛むことで操作するものである。
[基礎出願の背景技術]
【0011】
従来、押しボタン式のナースコールが使えない人のためのナースコールのスイッチには、センサーに息を吹きかけて操作するものや、センサーに身体の一部を接触または近接して操作するもの、口にくわえて操作するものがあった。
[基礎出願の先行技術文献]
[特許文献]
【0012】
[特許文献1]特開平5−084265号公報
[特許文献2]特開2002−135435号公報
[特許文献3]特開昭59−205281号公報
[基礎出願の発明の開示]
[基礎出願の発明が解決しようとする課題]
【0013】
しかしながら、従来のものは使用者とセンサーとの位置が近いと過敏、遠いと不応になる(応答しない)ため、センサーの位置調整に手間がかかったり、位置のずれで誤作動や不作動を起こしたりした。
【0014】
また、従来のものはセンサーを固定するアームが必要で、これがケアの邪魔になったり、これにケアする人が接触して誤作動したりした。
【0015】
さらに、従来のものはセンサーや電子回路が人の近傍に設置されるため、医療機器使用者では電気ショックやノイズ障害の可能性があったり、汚れた場合に洗浄や交換が容易に行えなかったりした。
[基礎出願の課題を解決するための手段]
【0016】
この問題を解決するための基礎出願の請求項1の発明は、人が噛むためのチューブと、このチューブを人の口元に装着するための器具と、このチューブにガスを流すための装置と、このチューブが噛まれることで上昇する内圧およびチューブの脱落やガス流量の減少で低下する内圧を測定するためのセンサーと、このセンサーからの圧信号を処理するための電子回路を設けたことを特徴とするナースコールのスイッチである。
【0017】
チューブの一方の端からガスを流し、この下流端側を使用者の口元に装着する。使用者がチューブを噛むとチューブが閉塞して上流側の内圧が上昇するため、これを上流側に設けたセンサーで捉えてナースコールをオンする。チューブの脱落やガス流量が減少した場合は、上流側の内圧が低下するため、これを故障と認識する。
[基礎出願の発明の効果]
【0018】
本発明では、噛むためのチューブを耳掛けなどで使用者の口元に装着することができるため、設置に手間がかからない。また、位置がずれ難く不作動や誤作動が起こることも少ない。さらに、ケアの邪魔になるアームがなく、ケアする人がチューブに接触した程度では誤作動しない。
【0019】
本発明では、使用者の近傍にチューブだけが存在し、センサーや電子回路は使用者から離れたところに設置できる。したがって、医療機器を装着した使用者でも、電気ショックやノイズ混入の危険なく使うことができる。また、使用者に接して汚れやすい部分は洗浄や交換が容易にできる。
[基礎出願の発明を実施するための形態]
【0020】
図1は本発明によるナースコールのスイッチの構成図である。空気を流すための小型ポンプ1に圧力トランスデューサ2と延長用のチューブ3を並列に接続する。延長用のチューブ3の先にはコネクタ4を介して噛むためのチューブ5を接続し、これに耳掛け6を装着する。
【0021】
噛むためのチューブ5の端が開放され空気が流れているときに圧力トランスデューサ2から得られる圧力を、通常状態の圧力として電子回路7で記憶する。
【0022】
噛むためのチューブ5が噛まれて閉塞すると、内部に空気が充填され圧力が上昇するため、これを電子回路7で捉えてナースコールをオンする。
【0023】
延長用のチューブ3または噛むためのチューブ5が脱落したり小型ポンプ1の吐出流量が低下したりした場合は、圧力が先述の通常状態よりも低下するため、これを電子回路7で異常状態と認識しナースコールをオンする。
【0024】
延長用のチューブ3は、小型ポンプ1や圧力トランスデューサ2、電子回路がナースコール使用者から十分離れた位置に設置できる長さにする。
【0025】
噛むためのチューブ5は、気管内吸引用の使い捨てチューブを使用することで、容易に交換でき清潔に保つことができる。
[基礎出願の産業上の利用可能性]
【0026】
本発明は、ケアにかかる負担の軽減、異常の早期発見、清潔維持に役立ち、医療機器装着者への電気ショックやノイズの問題もないため、医療、福祉施設での利用が可能である。
【0027】
以上、本発明について実施例をもとに説明した。実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0028】
[基礎出願の特許請求の範囲]
[1]
人が噛むためのチューブと、
このチューブを人の口元に装着するための器具と、
このチューブにガスを流すための装置と、
このチューブが噛まれることで上昇する内圧およびチューブの脱落やガス流量の減少で低下する内圧を測定するためのセンサーと、
このセンサーからの圧信号を処理するための電子回路を設けたことを特徴とするナースコールのスイッチ。
【0029】
[本発明の実施の形態]
以下、基礎出願の内容を利用した本発明の実施の形態を示す。
【0030】
(実施の形態1)
本実施の形態の報知装置10に関し、図1および図2に示した基礎出願のナースコールスイッチと異なる部分を中心に説明する。本実施の形態の報知装置10は、噛むためのチューブ5の内径の一部を、延長用のチューブ3の内径よりも小さくした点が、基礎出願のナースコールスイッチと異なる。なお、本明細書中で報知装置とは、ナースコールスイッチを含む概念であり、チューブの内圧の変化の幅が所定の基準値を超えたことを状況の変化として検出する装置全般をいう。後述のとおり、報知の対象は人に限られず、機械等であってもよい。
【0031】
図3に示した本実施の形態の報知装置10は、定常的に一定量のガスを送出し続けるガス送出手段(小型ポンプ1)と、ガス送出手段の送出口12に接続されてガスの流路を形成する可撓性を有する第1のチューブ3(延長用のチューブ)と、第1のチューブの先でガスの流路を形成する弾性を有する第2のチューブ5(噛むためのチューブ)と、ガスの流路内の気圧を測定して出力する圧力センサー(圧力トランスデューサ2)と、第2のチューブの狭窄による流路内のガスの気圧上昇を、圧力センサーの出力に基づいて検出して報知する報知手段50と、を備える。「ガスの流路」とは、ガス送出手段から送出されたガスが流れる経路をいう。
【0032】
ガス送出手段は、送出口12を有する小型ポンプ1である。送出口12からは、「定常的に一定量」のガスが送出される。これには、小型ポンプ1の特性によりガスの送出量が経時的に変化する場合や、ガスの流路の内部において気圧が電源の周波数に同期して脈動する場合など、実質的に定常的で一定量のガスが送出されると考えられる場合も含まれる。小型ポンプ1としては、連続して長時間(たとえば数ヶ月)連続的に稼働可能なポンプを使用することが好ましい。このような小型ポンプ1として、電磁駆動される市販の水槽用のポンプを使用することができる。小型ポンプ1によるガスの流量は適宜調節可能であるが、検出感度と消費電力のバランスの観点から1.0〜3.0L/分であることが好ましく、1.5〜2.5L/分であることがより好ましい。本実施の形態では、流量は2.0L/分である。本実施の形態では、小型ポンプ1により送出されるガスは空気であるが、酸素や窒素など、人体に悪影響のないガスも使用可能である。なお、ガス送出手段として、小型ポンプ1に代えて、病院のガスタンクや可搬ガスボンベを使用してもよい。これらの場合には、送出口12は病院内の配管口(アウトレット)であってもよい。
【0033】
一方の端部においてガス送出手段の送出口12に接続された第1のチューブ3と、第1のチューブの他方の端部に接続された第2のチューブ5と、第1のチューブ3と第2のチューブ5とを接続部26にて接続するためのコネクタ4とは、漏れのないガス流路形成部40を形成する。ガス流路形成部40には、第2のチューブ5を患者の口元に保持するための後述する耳掛け6が取り付けられている。第2のチューブ5は、コネクタ4に対してワンタッチで着脱可能である。ガス流路形成部40の内部の空間(内腔)は、ガスの流路を形成する。また、第1のチューブ3は、可撓性を有するチューブであり、自由に引き回し可能である。第2のチューブ5は、弾性を有するチューブであり、噛むことにより狭窄され、噛むことが止められた場合に元の形状に戻る。なお、可撓性と弾性を兼ね備えていれば、第1のチューブ3と第2のチューブ5とが一体的に形成されていてもよい。この場合には、コネクタ4は設けられない。
【0034】
図3(B)に示すように、第2のチューブ5の内径(直径)は2rである。図3(C)に示すように、第1のチューブ3の内径は2rである。第2のチューブ5の内径2rは、第1のチューブ3の内径2rよりも小さい。その結果、流路の出口側にある第2のチューブ5内のガスの流れが制限されて定常状態における第1のチューブ3内の気圧が高まる。従って、第2のチューブ5がコネクタ4から外れたときには気圧が大きく低下し、第2のチューブ5が外れたことを容易に検出できる。
【0035】
第1のチューブ3は、流路を狭めることなく自由に引き回しが出来るように可撓性を有する。第1のチューブ3の材料として、ナイロンエラストマー、PFA、FEP、PVDF、シリコーンゴム、PVC、LDPE、HDPE、ポリウレタン、PP、ナイロン、PCなどを使用することができる。本実施の形態では、第1のチューブ3は、シリコーンゴム製のラボランシリコンチューブ(アズワン株式会社製)である。本実施の形態では、第1のチューブ3の内径は、直径5mm(外径9mm)であり、長さは3mである。
【0036】
第2のチューブ5は、患者が軽く噛むだけでガスの流路が閉ざされる程度の弾性を持つ必要がある。第2のチューブ5の材料として、第1のチューブ3と同様の材料を使用することができる。本実施の形態では、第2のチューブ5の材料は、シリコーンゴム製のナーヴィサクションカテーテル12f(コヴィディエンジャパン株式会社製)である。本実施の形態では、第2のチューブ5の内径は、直径2.5mmであり、長さは0.46mである。
【0037】
第2のチューブ5には、耳掛け6が調整自在に取り付けられている。ここでは、基礎出願の2つの耳掛け6を区別して、第2のチューブ5の開放端22側からそれぞれ耳掛け6aおよび耳掛け6bと呼ぶ。耳掛け6aおよび耳掛け6bがそれぞれ取付部14aおよび取付部14bにおいて取り付けられた第2のチューブ5は、報知装置10に用いるための交換部材20を形成する。耳掛け6aおよび耳掛け6bは、弾性を有し、リング状に形成された部材である。「調整自在」とは、患者の頭部の幅、患者の口元における第2のチューブ5のたわみ具合、耳掛け6aおよび耳掛け6bの弾性などに応じて、第2のチューブ5の長さ方向に沿って取付部14aと取付部14bとをスライドさせることにより、耳掛け6aおよび耳掛け6bの取付位置を自在に調節できるとともに、リング状に形成された耳掛け6aおよび耳掛け6bの周長も自在に調節できることをいう。
【0038】
耳掛け6aおよび耳掛け6bは、長時間掛けても耳に負担がかからない程度の適度な弾性および周長を有する。このような材料として、たとえば長さが約15cmの場合にxgの重りを吊り下げると、約5.0xcm伸長する程度の弾性を有する市販のゴム紐を使用することができる。また、耳掛け6aおよび耳掛け6bを耳掛け式ヘッドフォンのようなフック状の部材とし、耳の裏側に掛けてもよい。この場合、耳掛け6aおよび耳掛け6bを樹脂製または金属製の部材としてもよい。また、耳掛け6にかえて、首に固定することにより第2のチューブ5を患者の口元に保持する部材を用いてもよい。
【0039】
耳掛け6aおよび耳掛け6bを図2に示すように左右の耳に掛けることにより、交換部材20を患者の頭部に保持させる。図2では、図3に示した第2のチューブ5の開放端22を患者の頭部の右側に配置し、耳掛け6aを右耳に、耳掛け6bを左耳にそれぞれ掛け、交換部材20の一部を患者の口元に保持させている。
【0040】
交換部材20は、患者の顔の表面や口内に常時接触する部材であるため、衛生上の観点から使い捨ての部材、または洗浄か再滅菌可能な部材であることが好ましい。交換部材20は、滅菌消毒されたうえで、1つずつ袋に入れられて保管され、使用時に本体に装着されてもよい。この場合、「本体」とは、後述の箱体30内に含まれた各構成に、コネクタ4と第1のチューブ3とを加えた部分をいう。
【0041】
箱体30には、ガス送出手段である小型ポンプ1に加え、小型ポンプ1の付近でガス流路形成部40の流路内の気圧を測定して出力する圧力センサーと、第2のチューブ5の狭窄による流路内のガスの気圧上昇を、圧力センサーの出力に基づいて検出し、気圧上昇の変化量が所定値を超えた場合や、第1のチューブ3または前記第2のチューブ5が外れ流路内のガスが漏れて気圧が低下した場合に報知を行う報知手段50と、が収納されている。また、箱体30には、報知装置10の主電源である電源スイッチ19とセットスイッチ111とが取り付けられている。
【0042】
圧力センサーは、圧力トランスデューサ2である。報知手段50は、電子回路7と、第1報知部109と、第2報知部110と、セットスイッチ111とを含む。報知手段50として、たとえば、病院の内外で使用され、ナースコール端子に接続されるナースコールスイッチ、音や光で警報を発する装置、および携帯電話を含む無線受信器に報知情報を伝送できる送受信装置が想定される。第1報知部109および第2報知部110は、所定の場合に、報知音、報知振動、または報知ランプ等による出力を行う。セットスイッチ111は、後述するサンプリングパルス発生部104にサンプリングパルスを発生させるためのスイッチである。
【0043】
図4において、破線80内の各部は、電子回路7と共働するソフトウエアで構成されているマイクロコンピュータの機能ブロックである。AD変換部101は、アナログ値である圧力トランスデューサ2の出力電圧Vtに基づき、デジタル値を出力する。小型ポンプ1は電磁駆動されているため、小型ポンプ1より送出される空気の空気圧は、電源の周波数に同期して脈動している。この出力電圧Vtを入力するAD変換部101は、脈動周期より短い周期でAD変換を行うことにより、デジタル値を継続的に出力する。
【0044】
AD変換部101により出力されたデジタル値は、デジタルローパスフィルタ102に入力される。デジタルローパスフィルタ102は、入力されたデジタル値の高域変動(脈動)部分を除去し、除去後の安定な圧力データPtを出力する。なお、デジタルローパスフィルタ102に代えて、アナログ用のローパスフィルタを用いることにより、AD変換部101によりAD変換される前の出力電圧Vtの高域変動(脈動)部分を除去してもよい。
【0045】
デジタルローパスフィルタ102により出力された圧力データPtは、基準値設定部103に入力される。患者の押込操作によりセットスイッチ111が閉じた場合、または電源スイッチ19を入れてから15秒後に、サンプリングパルス発生部104は、基準値Pdの設定に用いるサンプリングパルスを発生する。基準値設定部103は、サンプリングパルスに同期して、安定した圧力データPtを基準値Pdとして設定して記憶する。なお、後述するように、小型ポンプ1の出力特性の経時変化により内圧が低下した場合や、外れた第1のチューブ3および第2のチューブ5を元どおり接続した場合にも、セットスイッチ111を押すことにより基準値Pdを再設定可能である。
【0046】
許容上限値設定部105は、設定された基準値Pdに基づき、許容上限値Udを設定する。許容上限値Udは、基準値Pdに所定値αを加算した値である(Ud=Pd+α)。許容上限値Udは、小型ポンプ1の通常の稼働状態における内圧では到達せず、第1のチューブ3に取り付けられた第2のチューブ5を患者が噛むことなどにより、第2のチューブ5が狭窄されて流路を閉ざし気圧が上昇した場合に初めて上回る高い内圧値に設定されている。
【0047】
許容下限値設定部106は、設定された基準値Pdに基づき、許容下限値Ldを設定する。許容下限値Ldは、基準値Pdから所定値βを減算した値である(Ld=Pd−β)。許容下限値Ldは、小型ポンプ1の通常の稼働状態における内圧では到達せず、第1のチューブ3や第2のチューブ5が報知装置10から外れることにより流路内の気圧が低下した場合に初めて下回る低い内圧値に設定されている。
【0048】
小型ポンプ1の通常の稼働状態でも、第1のチューブ3および第2のチューブ5が若干狭窄すること等により、内圧値は上昇することがあるため、通常の稼働状態では、内圧値の下降幅に比べ内圧値の上昇幅が大きい。したがって、所定値αは所定値βよりも大きな値に設定されている。
【0049】
気圧上昇検出部107は、報知装置10の稼動時に、圧力データPtと許容上限値Udとを継続的に比較する。気圧上昇検出部107は、第1のチューブ3が噛まれて閉塞状態になり圧力データPtが許容上限値Udを上回った場合、検出出力を第1報知部109へ出力する。
【0050】
第1報知部109は、気圧上昇検出部107による検出出力が入力された場合、報知音、報知振動、または報知ランプ等による出力を行う。これにより、たとえば患者が介護者や看護士等の助けを求めることができる。この場合、報知装置10は、ナースコール用のシステムとして病院内で好適に使用することができる。また、本実施の形態の報知装置10を家庭内で使用することもできる。この場合、第1報知部109を、たとえば無線または有線の送受信部とすることにより、患者は、より離れた場所にいる介護者や看護士等の助けを求めることができる。
【0051】
気圧低下検出部108は、報知装置10の稼動時に、圧力データPtと許容下限値Ldとを継続的に比較する。気圧低下検出部108は、流路内のガスが漏れて気圧が低下し圧力データPtが許容下限値Ldを下回った場合、検出出力を第2報知部110へ出力する。
【0052】
第2報知部110は、気圧低下検出部108による検出出力が入力された場合、第1報知部109と同様に、報知音、報知振動、または報知ランプ等による出力を行う。これにより、第1のチューブ3または前記第2のチューブ5が外れて報知装置10が正常にセットされていないことを、介護者や看護士等に報知することができる。
【0053】
図5に示すように、電源スイッチ19を入れてから15秒間経過するまで、電子回路7を待機させる(S1のN)。15秒経過後(S1のY)、基準値設定部103は、安定した値の圧力データPtを取得し、サンプリングパルスに同期して、基準値Pdを設定する(S2)。許容上限値設定部105は、基準値Pdに所定値αを加算し、許容上限値Udを設定する。また、許容下限値設定部106は、基準値Pdから所定値βを減算し、許容下限値Ldを設定する(S2)。
【0054】
気圧上昇検出部107は、デジタルローパスフィルタ102により出力された圧力データPtを、許容上限値Udと比較する(S3)。圧力データPtが許容上限値Udを上回った場合(S3のY)、第1報知部109が作動する(S5)。圧力データPtが許容上限値Udを上回っていない場合(S3のN)、気圧低下検出部108は、圧力データPtと許容下限値Ltとを比較する(S4)。圧力データPtが許容下限値Ldを下回った場合(S4のY)、第2報知部110が作動する(S6)。圧力データPtが許容下限値Ldを下回っていない場合(S4のN)、気圧上昇検出部107が圧力データPtと許容上限値Udとの比較を継続する(S3)。
【0055】
第2報知部110が作動している状態(S6)で、第1のチューブ3および第2のチューブ5が元通り接続されるか小型ポンプ1の稼働が正常に戻ることにより、圧力データPtが許容下限値Ldを上回った場合(S7のY)、第2報知部110の作動が停止する(S9)。圧力データPtが許容下限値Ltを上回っていない場合でも(S7のN)、セットスイッチ111が閉じられた場合には(S8のY)、サンプリングパルス発生部104により発生したサンプリングパルスに基づき、基準値設定部103が基準値Pdを、許容上限値設定部105が許容上限値Udを、許容下限値設定部106が許容下限値Ldを、それぞれ再設定する(S10)。その後、気圧低下検出部108は、圧力データPtを、再設定された許容下限値Ldと比較する(S7)。圧力データPtが許容下限値Ldを上回っておらず(S7のN)、セットスイッチ111が閉じられない場合(S8のN)、気圧低下検出部108は、圧力データPtと許容下限値Ldとの比較を継続する(S7)。
【0056】
本実施の形態の報知装置10によれば、内圧の変化に基づき状況の変化を簡便に報知することができる。また、位置ずれすることなく簡便な方法で報知装置10を患者に保持させることができる。また、2r>2rとすることにより流路内のガス圧を高め、第2のチューブ5がコネクタ4から外れる等ガスが漏れたことを、容易に検出することができる。また、報知装置10の部材のうち患者と接触する部材である交換部材20の交換が容易な報知装置10を提供することができる。これにより、報知装置10に用いる交換部材20として、常に清潔な部材を使用することができる。また、小型ポンプ1、圧力センサーである圧力トランスデューサ2、および報知手段50を1つの箱体30に収容することにより、コンパクトで携帯性および操作性に優れた報知装置10を構成することができる。
【0057】
なお、本実施の形態では、医療用途、特に患者が報知装置10の使用者である場合を想定して説明した。しかし、報知装置10は、医療用途以外に使用されてもよい。たとえば、第2のチューブ5が壁、床、または機械自身に対して、耳掛け6aおよび耳掛け6bまたはそれ以外の保持方法により保持され、工作機械の作動限界にて狭窄するよう構成することにより、報知装置10を工作機械の自動停止装置として使用することもできる。
【0058】
また、第2のチューブ5の一部で内径を小さくすることによって、各チューブの内径を2r>2rとする場合と同様の効果を得てもよい。たとえば、2rよりも小さな穴の開いたアダプタを、第2のチューブ5の開放端22の周辺に装着することにより、第2のチューブ5の内径を開放端22にて小さくしてもよい。
【0059】
また、患者の第2のチューブ5の噛み方(噛んでいる時間の長さ、噛む頻度、内圧の変化速度など)により複数の情報を取得することで、患者の意思を表示したり、コンピュータの入力をしてもよい。また、第2のチューブ5の使用状態を予測し、交換時期を判断してもよい。
【0060】
また、小型ポンプ1の出力特性の経時変化により内圧が低下したことや、第1のチューブ3および第2のチューブ5が外れたことを報知する必要がない場合には、許容下限値Ldは設定されなくてもよい。この場合、報知装置10には、許容下限値設定部106、気圧低下検出部108、および第2報知部110が設けられていなくてもよい。
【0061】
また、用いる小型ポンプ1によっては、起動後所定時間(たとえば1時間程度)は高出力で駆動され、その後出力が低下し、さらにその後、低下後の出力で安定的に駆動される場合がある。このように経時的に出力が変化する小型ポンプ1を有する報知装置10を長時間使用する場合には、あらかじめ所定値αを相対的に小さくし、所定値βを相対的に大きくすることにより、許容上限値Udと許容下限値Ldとを定めてもよい。
【0062】
また、本実施の形態では、セットスイッチ111がオンになることを契機としてサンプリングパルス発生部104によりサンプリングパルスが発生する報知装置10を示した。しかし、セットスイッチ111は、設けられていなくてもよい。この場合、報知装置10の電源スイッチ19を入れて所定時間経過後に、サンプリングパルス発生部104が自動的にサンプリングパルスを発生するようにしてもよい。
【0063】
(実施の形態2)
実施の形態2では、基準値Pdの再設定のしかたが、実施の形態1の報知装置10の制御とは異なる。本実施の形態では、図5のS2にかえて、所定時間ごとに基準値Pd、許容上限値Ud、および許容下限値Ldの再設定を行う。所定時間は任意に設定できるが、たとえば1〜2時間であってもよい。
【0064】
本実施の形態の報知装置10によれば、実施の形態1の効果に加えて、小型ポンプ1の出力状況や、第1のチューブ3および第2のチューブ5の時間とともに変化する曲がり具合等の状況に応じて、より適切に基準値Pd、許容上限値Ud、および許容下限値Ldを設定することができる。
【0065】
(変形例)
図6に示すように、第2のチューブ5の開放端22領域には、穴28が開けられている。
【0066】
本変形例の第2のチューブ5を有する交換部材20を実施の形態1および2の報知装置10に使用すれば、開放端22が偶発的に手や布団などによって押さえられたとしても、穴28から空気が流出するため、第1のチューブ3および第2のチューブ5の内圧は変化しない。これにより、報知装置10による誤作動の可能性を低下させることができる。
【0067】
本発明は、上述の各実施の形態に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて各種の設計変更等の変形を加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施の形態も本発明の範囲に含まれうるものである。
【符号の説明】
【0068】
1 小型ポンプ、2 圧力トランスデューサ、3 第1のチューブ、4 コネクタ、5 第2のチューブ、6 耳掛け、7 電子回路、8 使用者、10 報知装置、12 送出口、14a、14b 取付部、19 電源スイッチ、20 交換部材、22 開放端、26 接続部、28 穴、30 箱体、40 ガス流路形成部、50 報知手段、101 AD変換部、102 デジタルローパスフィルタ、103 基準値設定部、104 サンプリングパルス発生部、105 許容上限値設定部、106 許容下限値設定部、107 気圧上昇検出部、108 気圧低下検出部、109 第1報知部、110 第2報知部、111 セットスイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
定常的に一定量のガスを送出し続けるガス送出手段と、
前記ガス送出手段の送出口に接続されてガスの流路を形成する可撓性を有する第1のチューブと、
前記第1のチューブの先でガスの流路を形成する弾性を有する第2のチューブと、
ガスの流路内の気圧を測定して出力する圧力センサーと、
前記第2のチューブの狭窄による流路内のガスの気圧上昇を、前記圧力センサーの出力に基づいて検出して報知する報知手段と、を備える報知装置。
【請求項2】
前記第2のチューブの内径の少なくとも一部は、前記第1のチューブの内径よりも小さい請求項1に記載の報知装置。
【請求項3】
前記報知手段は、前記第1のチューブまたは前記第2のチューブが外れ流路内のガスが漏れて気圧が低下したことを、前記圧力センサーの出力に基づいて検出して報知する請求項1または2に記載の報知装置。
【請求項4】
前記第2のチューブを口元に保持するための耳掛けを、前記第2のチューブに調整自在に取り付けて成る請求項1〜3のいずれかに記載の報知装置。
【請求項5】
前記ガス送出手段と、前記圧力センサーと、前記報知手段とは、同一箱体内に収納されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の報知装置。

【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−35052(P2012−35052A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−39659(P2011−39659)
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【出願人】(506111240)学校法人 愛知医科大学 (6)