説明

場所打ち杭の先端支持力確認方法

【課題】比較的小さな載荷荷重で、支持力を大幅に過小評価することなく、場所打ち杭先端の荷重−沈下関係を確認することが可能な場所打ち杭の先端支持力確認方法を提供する。
【解決手段】地盤Gを掘削して形成した掘削孔1の内部に、この掘削孔1の孔底1aに下端を接触させて荷重伝達部材10を設置するとともに、荷重伝達部材10との間にフリクションカット11を施した状態で、実際の場所打ち杭と略同等の比重を有する埋め戻し材12(12b)により掘削孔1の少なくとも一部を埋め戻し、荷重伝達部材10を通じて孔底1aに荷重Nを載荷して載荷荷重と沈下の関係を求めるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、場所打ち杭の先端支持力を確認する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、場所打ちコンクリート杭(場所打ち杭)は、地盤を掘削して形成した掘削孔内に鉄筋篭を挿入するとともにコンクリートを打設して構築されるものであり、必要な支持力に合わせて底部側(先端側)を拡幅(拡底)するなどして大口径杭を比較的容易に構築できるため、高支持力を必要とする超高層ビルなどの基礎として広く用いられている。
【0003】
このような場所打ちコンクリート杭を構築する際には、図6に示すように、掘削孔1の形成とともに地盤Gの応力が解放されるため、たとえ締まった良好な地盤Gであっても、特に掘削孔1の孔底1a付近の地盤(先端地盤G1)に少なからず緩みが生じる。そして、このような緩みを生じた先端地盤G1は、図7に示すように、掘削孔1内にコンクリート2を打設するとともに再度締め固められてある程度緩みの回復(上載圧効果)が期待できるが、基準や指針では場所打ちコンクリート杭Aの長期許容先端支持力度が他の杭工法よりも小さく抑えられている。
【0004】
一方、地盤が良好な場合、載荷試験によって支持力を確認すれば、基準や指針で規定された以上の支持力を採用することも可能である。このような載荷試験は、実際の杭と同じ諸元の杭を用いて行われるのが一般的であり、杭頭を載荷する押込み試験と、杭先端に杭とほぼ同型のジャッキを設置し、杭先端を載荷する先端載荷試験とが用いられている。
【0005】
押込み試験は、実際に用いる場所打ちコンクリート杭、または実際に用いる杭と同様に施工した試験杭に対して、杭頭部に直接荷重を載荷し、杭の沈下量を計測するものである。そして、載荷荷重と沈下の関係から杭の許容支持力を求めて評価を行う。このような押込み試験は、実際の杭を実際に近い条件で載荷するため、最も正確な載荷荷重−沈下関係を得ることができ、最も望ましい載荷試験方法である。この反面、先端径が数m以上の大口径場所打ち杭の支持力を評価するためには、数千〜1万トン以上の載荷荷重を必要とし、載荷装置や反力装置の問題やコストが莫大になることから事実上試験を行うことが不可能であるという問題がある。
【0006】
先端載荷試験は、図8に示すように、地盤Gに掘削孔1を形成した段階で、孔底1aに載荷ジャッキ6を設置するとともに掘削孔1内に鉄筋篭の挿入、コンクリート2の打設を行って場所打ちコンクリート杭Aを構築し、載荷ジャッキ6により場所打ちコンクリート杭Aの自重と周面摩擦力で反力を確保しつつ、直接孔底1aに荷重Nを載荷し試験を行う方法である。しかしながら、この先端載荷試験においても、反力が杭の自重と周面摩擦力であることから、この値を超えて載荷することが困難であり、やはり大荷重には十分に対応できない。さらに、周面摩擦力が逆向きに作用するため、杭底面付近の地盤の拘束圧が減少し、支持力が小さめに評価されることや、拡底杭には適用できないことなどの問題があった。
【0007】
これに対し、小さな載荷荷重で場所打ち杭の支持力を評価する方法として、例えば図9に示すように、掘削孔1に対して小径の載荷用ロッド4を用い、この載荷用ロッド4の下端(先端)に設けた小さな載荷板5により孔底1aで載荷する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。これは、載荷用ロッド4及び載荷板5を介して孔底1aに所定の荷重Nを載荷し、載荷用ロッド4の沈下量をダイヤルゲージなどで計測して、載荷荷重と沈下の関係を求め、これを載荷荷重度(載荷荷重/載荷板面積)と沈下比(沈下量/載荷板直径)の関係で表して、大口径の杭の先端荷重−沈下関係を与える方法である。
【特許文献1】特開2001−64954号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、実際の杭先端は、図10(a)に示すように、上から杭自重を受けることにより掘削時の緩みが幾分回復するとともに、杭先端周りの地盤Gに杭長に応じた上載圧が作用している。これに対し、図8に示した方法では、図10(b)に示すように、載荷板5の周りには地盤Gがないため、上載圧の効果はなく、且つ杭打設による緩みの回復も期待できない。このため、地表近くに基礎がある「浅い基礎」の状態となり、「深い基礎」である杭先端の破壊形態とは異なったものとなって、支持力を大幅に過小評価する可能性が大きいという問題があった。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑み、比較的小さな載荷荷重で、支持力を大幅に過小評価することなく、場所打ち杭先端の荷重−沈下関係を確認することが可能な場所打ち杭の先端支持力確認方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達するために、この発明は以下の手段を提供している。
【0011】
本発明の場所打ち杭の先端支持力確認方法は、場所打ち杭の先端支持力を確認する方法であって、地盤を掘削して形成した掘削孔の内部に、該掘削孔の孔底に下端を接触させて荷重伝達部材を設置するとともに、該荷重伝達部材との間にフリクションカットを施した状態で、実際の場所打ち杭と略同等の比重を有する埋め戻し材により前記掘削孔の少なくとも一部を埋め戻し、前記荷重伝達部材を通じて前記孔底に荷重を載荷して載荷荷重と沈下の関係を求めるようにしたことを特徴とする。
【0012】
この発明においては、掘削孔の孔底よりも下端の直径が小さい荷重伝達部材で荷重を載荷するようにした場合においても、荷重伝達部材の外側の先端地盤が埋め戻し材によって実際の場所打ち杭を構築した場合と同様に押圧され、実際の杭と同様に中央側の先端地盤とともにこの荷重伝達部材の外側の先端地盤の緩みをある程度回復させて試験を行うことが可能になる。特に、場所打ち杭が拡底杭である場合においても、荷重伝達部材の外側の先端地盤の緩みを埋め戻し材によってある程度回復させて試験を行うことが可能になる。これにより、実際に近い状態の載荷荷重と沈下の関係(載荷荷重と沈下量の関係や載荷荷重度(荷重/載荷板面積)と沈下比(沈下量/載荷径)の関係)を得ることができ、この載荷荷重度と沈下比の関係から許容支持力を求めることが可能になる。すなわち、通常の孔底で行う小口径載荷のように実際の杭を構築した場合の支持力に対し大幅に小さい支持力が結果として得られることを解消することが可能になる。
【0013】
さらに、掘削による緩み域は杭中心部で最も大きいため、孔底の中央部に荷重伝達部材で直接荷重を載荷することは、安全側の支持力を求めて評価することになる。
【0014】
また、本発明の場所打ち杭の先端支持力確認方法においては、前記掘削孔の孔底から前記荷重伝達部材の下端の直径以上の深度範囲は、周辺地盤と同等あるいはそれ以下の強度を有する埋め戻し材で埋め戻すことが望ましい。
【0015】
この発明においては、掘削孔の孔底から荷重伝達部材の下端の直径以上の深度範囲を周辺地盤と同等あるいはそれ以下の強度を有する埋め戻し材で埋め戻して試験を行うことによって、より正確に支持力を求めることが可能になる。すなわち、一般に、場所打ち杭の支持力は、杭の先端(掘削孔の孔底)を挟んで上に杭の先端径(孔底径)分、下に先端径(孔底径)分の深度範囲における地盤の平均N値で表されるが、この深度範囲を周辺地盤と同等あるいはそれ以下の強度を有する埋め戻し材で埋め戻して試験を行うことにより、支持力が過大評価されることを防止でき、より正確に支持力を求めることが可能になる。
【0016】
さらに、本発明の場所打ち杭の先端支持力確認方法においては、前記荷重伝達部材が、載荷用ロッドと、該載荷用ロッドの下端に一体に設けた載荷板とを備えて構成されていることがより望ましい。
【0017】
この発明においては、載荷用ロッドの下端に設けた載荷板によって掘削孔の孔底に荷重を載荷することにより、載荷能力の範囲内で直径を極力大きくして載荷板を形成することがより正確な荷重−沈下関係を得るうえで望ましい。小さな載荷板では緩みの大きい杭中心部のみの載荷となり、沈下をやや過大評価する傾向となる。
【0018】
また、本発明の場所打ち杭の先端支持力確認方法においては、前記載荷用ロッドが二重管ロッドとされ、前記載荷板が内管の下端に一体に設けられていてもよい。
【0019】
この発明においては、載荷用ロッドを二重管ロッドにすることで、載荷板に載荷荷重を伝達する内管と埋め戻し材とのフリクションカットを外管によって確実に施すことができ、所定の載荷荷重を確実に先端地盤(孔底)に載荷することが可能になる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の場所打ち杭の先端支持力確認方法によれば、掘削孔の孔底よりも下端の直径が小さい荷重伝達部材で荷重を載荷するようにした場合においても、荷重伝達部材の外側の先端地盤の緩みをある程度回復させて試験を行うことが可能になり、載荷荷重と沈下の関係から安全側で且つ大幅に過小評価することなく杭の支持力を求めることが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図1及び図2を参照し、本発明の一実施形態に係る場所打ち杭の先端支持力確認方法について説明する。本実施形態は、高層ビルなどの建築物の基礎として多用されている場所打ちコンクリート杭(場所打ち杭)の先端支持力を確認する方法に関し、特に先端径が数mの大口径杭の先端荷重(載荷荷重)と沈下の関係を小さな載荷荷重で求め、この載荷荷重と沈下の関係から安全側で且つ大幅に過小評価することなく先端支持力を求めることが可能な場所打ち杭の先端支持力確認方法に関するものである。
【0022】
本実施形態の場所打ちコンクリート杭の先端支持力確認方法では、はじめに、図1(図6参照)に示すように、実際の場所打ち杭と同じ施工方法で地盤Gを掘削し実際の場所打ち杭と同形同大の掘削孔1を形成する。なお、本実施形態では、実際の場所打ち杭が底部側(先端側)を拡幅した拡底杭(大口径杭)であるものとし、これに応じて、掘削孔1は、上部側に杭軸O1方向の全長にわたって同径の杭軸部8を備え、底部側に杭軸O1方向の上方から下方に向かうに従い漸次拡径する拡底部8を備えて形成される。
【0023】
そして、本実施形態では、例えば鋼管などの載荷用ロッド10aの下端に円形状で平板状の金属製の載荷板10bを一体に設けてなる荷重伝達部材10を、孔底1aに載荷板10bの下面(載荷面)が接触するように掘削孔1の内部に挿入して設置する。また、このとき、荷重伝達部材10は、載荷板10bが載荷用ロッド10aよりも大径で形成され、その軸線O2を杭軸O1と同軸上に配して設置される。これにより、載荷板10bが孔底1aの中央部に設置される。また、本実施形態では、荷重伝達部材10の外面、すなわち載荷用ロッド10aや載荷板10bの外面に、後述する埋め戻し材12(12a、12b)との摩擦を小さくするための被覆材が貼設(あるいは塗布剤が塗布)され、これにより、荷重伝達部材10はフリクションカット11を施して形成されている。
【0024】
そして、上記のように荷重伝達部材10を所定位置に設置した段階で、掘削孔1の孔底1aから載荷板10bの直径DPL以上(荷重伝達部材10の下端の直径DPL以上)の深度範囲Lに、周辺地盤Gと同等あるいはそれ以下の強度を有する例えば砂利や混合処理土などの埋め戻し材12a(12)を充填して、掘削孔1の底部側を埋め戻す。
【0025】
さらに、埋め戻し材12aにより掘削孔1の底部側を埋め戻した段階で、この埋め戻し材12aの上方に、実際の場所打ち杭と略同等の比重を有するコンクリート等の埋め戻し材12b(12)を充填して、掘削孔1の残空間(上部側)を埋め戻す。
【0026】
また、荷重伝達部材10の設置と、埋め戻し材12(12a、12b)による掘削孔1の埋め戻しを行うとともに、荷重伝達部材10に所定の載荷荷重Nを載荷するための図示せぬ載荷装置を地上に設置し、先端支持力確認試験の準備が完了する。なお、載荷装置は、場所打ち杭の先端支持力を確認する際に用いられる従来の載荷装置と同様のものとされ、例えば、反力杭、反力桁と、所定の載荷荷重Nを載荷する載荷ジャッキと、載荷用ロッド10aの沈下量を計測する変位計などの計測手段とを備えている。
【0027】
そして、上記のように先端支持力確認試験の準備が完了した段階で、載荷装置によって荷重伝達部材10を通じて孔底1aに荷重Nを静的に載荷し、荷重伝達部材10の沈下量を計測手段で計測して、図2に示すように、載荷荷重と沈下の関係(載荷荷重度(荷重/載荷板面積)と沈下比(沈下量/載荷板径)の関係)を求める。このように求めた載荷荷重と沈下の関係から、例えば沈下比が0.1のときの載荷荷重度(載荷板径(杭径)に対し10%の沈下量で沈下したときの載荷荷重)を求め、この載荷荷重度を基準支持力度qとして評価し、さらに基準支持力度qから長期許容支持力度qを算出して評価を行う。なお、荷重伝達部材10に対する荷重Nは、静的載荷に限らず、急速載荷など状況に合わせて適宜選択的に載荷すればよい。
【0028】
そして、本実施形態の場所打ち杭の先端支持力確認方法においては、従来と同様に掘削孔1の孔底1aの直径よりも小さな直径DPLの載荷板10bで荷重Nを載荷するようにした場合においても、実際の場所打ち杭と略同等の比重を有する埋め戻し材12b(12)を充填して掘削孔1を埋め戻し、且つ埋め戻し材12と荷重伝達部材10とがフリクションカット11で縁切りされているため、この埋め戻し材12b(12)の自重によって載荷板10b(荷重伝達部材10)の外側の先端地盤G1が実際の場所打ち杭を構築した場合と同様に押圧され、ある程度載荷板10bの外側の先端地盤G1の緩みを回復させることが可能になる。特に、本実施形態のように場所打ち杭が拡底杭である場合においても、載荷板10bの外側(拡底部7や杭軸部8)に埋め戻し材12を充填することが可能であるため、この埋め戻し材12によって確実に先端地盤G1の緩みを回復させることが可能になる。
【0029】
このように埋め戻し材12を設けることで、且つ本実施形態のように実際の場所打ち杭と同じ施工方法で地盤Gを掘削し掘削孔1を形成することで、先端地盤G1の緩みやスライムの堆積状況を実際の場所打ち杭を構築した場合に近づけて再現することができる。このため、このような状態で荷重伝達部材10に所定の荷重Nを載荷して試験を行うことにより、従来の試験方法と比較し、載荷荷重と沈下の関係がより正確に得られ、この載荷荷重と沈下の関係から支持力(基準支持力度qや長期許容支持力度q)を求めることが可能になる。
【0030】
また、このとき、荷重伝達部材10がその軸線O2を杭軸O1と同軸上に配して設置され、載荷板10bが孔底1aの中央部に設置されていることで、孔底1aの中央部に荷重伝達部材10の自重及び荷重伝達部材10からの荷重Nが載荷される。このため、掘削孔1の形成時の拘束圧の減少とそれに伴うせん断歪みの発生により緩みが大きい(剛性低下が大きい)杭中心部の先端地盤G1に対して直接荷重伝達部材10の自重と荷重伝達部材10から荷重Nを載荷し、剛性低下が大きい中心部の先端地盤G1に沈下剛性を与えて試験を行うことになる。これにより、従来のように実際の場所打ち杭を構築した場合の支持力に対し大幅に小さい支持力が結果として得られることを解消しつつ安全側の支持力を求めて評価することが可能になる。なお、荷重伝達部材10の自重により孔底1aの中央部に載荷される荷重度が、埋め戻し材12の自重によって載荷板10bの外側に載荷される荷重度よりも小さい場合には、試験前に荷重伝達部材10にプレロードを行って、両者の荷重度を等しくしておくことが望ましい。
【0031】
さらに、本実施形態においては、掘削孔1の孔底1aから載荷板10bの直径DPL以上の深度範囲Lを周辺地盤Gと同等あるいはそれ以下の強度を有する埋め戻し材12a(12)で埋め戻している。そして、一般に、場所打ち杭の支持力は、杭の先端(掘削孔1の孔底1a)を挟んで上に杭の先端径(孔底径)分、下に先端径(孔底径)分の深度範囲における地盤Gの平均N値で表されるが、本実施形態のようにこの深度範囲Lを周辺地盤Gと同等あるいはそれ以下の強度を有する埋め戻し材12aで埋め戻して試験を行うことで、載荷荷重と沈下の関係を正確に得ることが可能になり、支持力が過大評価されることなく、正確に支持力を求めることが可能になる。
【0032】
したがって、本実施形態の場所打ち杭の先端支持力確認方法によれば、掘削孔1の孔底1aよりも直径が小さい荷重伝達部材10(載荷板10b)で比較的小さな荷重Nを載荷するようにした場合においても、荷重伝達部材10の外側の先端地盤G1の緩みをある程度回復させ、実際の場所打ち杭を構築した場合を再現して試験を行うことが可能になり、載荷荷重と沈下の関係から安全側で且つ大幅に過小評価することなく杭の支持力を求めることが可能になる。
【0033】
また、このように載荷荷重と沈下の関係が比較的正確に得られることによって、設計荷重作用時の沈下の算定精度が向上するため、例えば高層棟と低層棟など沈下量が異なる建築物を接合する必要がある場合に、その接合時期の予測精度を向上させることも可能になる。
【0034】
なお、本発明の場所打ち杭の先端支持力確認方法は、杭先端(孔底1a)以深の地盤Gに杭先端径(孔底1a径)の3倍以上連続した支持層がある場合に適用できる。
【0035】
以上、本発明に係る場所打ち杭の先端支持力確認方法の実施形態について説明したが、本発明は上記の一実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、本実施形態では、実際の場所打ち杭が拡底杭(大口径杭)であるものとしたが、本発明は、拡底部8を備えぬ場所打ち杭の先端支持力を確認する際に適用してもよい。また、本実施形態では、実際の場所打ち杭と同じ施工方法で地盤Gを掘削し実際の場所打ち杭と同形同大の掘削孔1を形成するものとしたが、本発明は、実際の場所打ち杭に対して、例えば小さな口径の掘削孔1を形成し、この掘削孔1を用いて先端支持力を確認する場合に適用してもよい。
【0036】
さらに、本実施形態では、掘削孔1の孔底1aから荷重伝達部材10の下端の直径DPL以上の深度範囲Lに、周辺地盤Gと同等あるいはそれ以下の強度を有する埋め戻し材12a(12)を充填して掘削孔1の底部側を埋め戻すことにより、支持力が過大評価されることがないようにしたが、杭の先端支持力は、杭先端(孔底1a)以深の地盤(先端地盤G1)の性状でほぼ支配的に決まるという研究結果もあるため、事前検討によって杭先端以浅(孔底1aよりも上部)の影響が少ないと判断された場合には、例えば図3に示すように、荷重伝達部材10を掘削孔1の内部に設置した段階で掘削孔1の底部側と上部側の全てに(拡底部7と杭軸部8の全てに)、実際の場所打ち杭と略同等の比重を有するコンクリート等の埋め戻し材12b(12)を充填して、掘削孔1を埋め戻すようにしてもよい。
【0037】
また、本実施形態では、荷重伝達部材10が、鋼管などの載荷用ロッド10aの下端に円形状で平板状の金属製の載荷板10bを一体に設けて構成されているものとしたが、載荷用ロッド10aや載荷板10bは、特にその素材を金属製に限定する必要はなく、埋め戻し材12との付着を切るフリクションカットの処理を施していれば、例えばコンクリートを用いて形成されてもよい。
【0038】
さらに、荷重伝達部材10は、例えば図4に示すように、載荷板10bを備えず、載荷用ロッド10aのみで構成されてもよく、この場合には、掘削孔1の孔底1aから、この孔底1aに接触する載荷用ロッド10aの下端の直径DPL以上の深度範囲Lを周辺地盤Gと同等あるいはそれ以下の強度を有する埋め戻し材12a(12)で埋め戻すことで、本実施形態と同様に、載荷荷重と沈下の関係を正確に得ることが可能になり、支持力が過大評価されることなく、正確に支持力を求めることが可能である。
【0039】
また、例えば図5に示すように、載荷用ロッド10aを二重管ロッドとし、載荷板10bを載荷用ロッド10aの内管10cの下端に一体に設けて荷重伝達部材10を構成してもよい。この場合には、載荷用ロッド10aを二重管ロッドにすることで、載荷板10bに載荷荷重Nを伝達する内管10cと埋め戻し材12とのフリクションカットを外管10dによって確実に施すことができ、本実施形態のように載荷用ロッド10aの外面に埋め戻し材12との摩擦を小さくするための被覆材を貼設(あるいは塗布剤を塗布)することなく、所定の載荷荷重Nを確実に先端地盤G1(孔底1a)に載荷することが可能になる。これにより、載荷荷重と沈下の関係をより正確に得ることが可能になり、この載荷荷重と沈下の関係から正確に支持力を求めることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の一実施形態に係る場所打ち杭の先端支持力確認方法において、掘削孔の内部に荷重伝達部材を設置するとともに埋め戻し材を充填した状態を示す図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る場所打ち杭の先端支持力確認方法よって得られる載荷荷重と沈下の関係の一例を示す図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る場所打ち杭の先端支持力確認方法において、掘削孔の底部側と上部側の全体に実際の杭と同等の比重を有する埋め戻し材を充填した状態を示す図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る場所打ち杭の先端支持力確認方法において、載荷板を備えることなく構成した荷重伝達部材を用いた一例を示す図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る場所打ち杭の先端支持力確認方法において、載荷用ロッドに二重管ロッドを適用して構成した荷重伝達部材を用いた一例を示す図である。
【図6】地盤に掘削孔を形成した状態を示す図である。
【図7】掘削孔の内部にコンクリートを充填して形成した拡底杭を示す図である。
【図8】孔底に載荷ジャッキを設置して行う従来の杭先端載荷試験方法を示す図である。
【図9】掘削孔の内部に載荷用ロッドを設置して行う従来の杭先端載荷試験方法を示す図である。
【図10】実際の杭先端周りと従来の試験方法の載荷板周りの上載圧効果の違いを示す図である。
【符号の説明】
【0041】
1 掘削孔
1a 孔底
2 コンクリート
4 載荷用ロッド
5 載荷板
6 載荷ジャッキ
7 拡底部
8 杭軸部
10 荷重伝達部材
10a 載荷用ロッド
10b 載荷板
10c 内管
10d 外管
11 フリクションカット
12 埋め戻し材
12a 埋め戻し材
12b 埋め戻し材
A 場所打ち杭
PL 荷重伝達部材の下端の直径
G 地盤
G1 先端地盤
L 深度範囲
N 載荷荷重
O1 杭軸
O2 荷重伝達部材の軸線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
場所打ち杭の先端支持力を確認する方法であって、
地盤を掘削して形成した掘削孔の内部に、該掘削孔の孔底に下端を接触させて荷重伝達部材を設置するとともに、該荷重伝達部材との間にフリクションカットを施した状態で、実際の場所打ち杭と略同等の比重を有する埋め戻し材により前記掘削孔の少なくとも一部を埋め戻し、前記荷重伝達部材を通じて前記孔底に荷重を載荷して載荷荷重と沈下の関係を求めるようにしたことを特徴とする場所打ち杭の先端支持力確認方法。
【請求項2】
請求項1記載の場所打ち杭の先端支持力確認方法において、
前記掘削孔の孔底から前記荷重伝達部材の下端の直径以上の深度範囲は、周辺地盤と同等あるいはそれ以下の強度を有する埋め戻し材で埋め戻すようにしたことを特徴とする場所打ち杭の先端支持力確認方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の場所打ち杭の先端支持力確認方法において、
前記荷重伝達部材が、載荷用ロッドと、該載荷用ロッドの下端に一体に設けた載荷板とを備えて構成されていることを特徴とする場所打ち杭の先端支持力確認方法。
【請求項4】
請求項3記載の場所打ち杭の先端支持力確認方法において、
前記載荷用ロッドが二重管ロッドとされ、前記載荷板が内管の下端に一体に設けられていることを特徴とする場所打ち杭の先端支持力確認方法。




【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2009−108491(P2009−108491A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−279151(P2007−279151)
【出願日】平成19年10月26日(2007.10.26)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【Fターム(参考)】