説明

場所打ち杭の施工方法

【課題】この発明は、先行削孔と杭打設を1工程で行うことができ、また、転石等の障害物があっても施工できる場所打ち杭の施工方法に関する。
【解決手段】この発明の場所打ち杭の施工方法は、アウタービット51をその先端に具備するケーシングパイプ52と、インナービット61をその先端に具備するインナーロッド62と、削孔水Wとによって地盤1に掘削穴2を形成しながら廃土すると共に、ケーシングパイプ52を地盤1中に挿入し、掘削穴2形成後、ケーシングパイプ52を該掘削穴2内部に残留させた状態でインナーロッド62を引抜き、ケーシングパイプ52内部に挿入された注入管7から該ケーシングパイプ52内に所定量固化充填材3を注入した後、該固化充填材3が注入された区間と略同様の区間だけ、ケーシングパイプ52を引抜いて地盤1中の土と固化充填材3とを置換するようにしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、先行削孔と杭打設とを1工程で行うことができ、また、転石等の障害物があっても施工することのできる場所打ち杭の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建造物を施工する前に当該箇所の地盤の調査を、スウェーデン式サウディング法や、ボーリング調査等によって地耐力を調査し、その調査によって盛土や軟弱地盤で建物の不同沈下等が懸念される場合には、地盤の基礎補強を行う。そして、基礎補強の方法としては、地表面に固化材を添加し、バックホー等で攪拌し軟弱地盤を硬化させる表層改良、また、例えば直径500mm程度の攪拌翼を用い、スラリー状の固化材を地盤に添加しながら攪拌を行い、円柱状の改良体を造成する柱状改良が挙げられる。さらに、既製の鋼管を回転圧入及び打撃にて地盤に挿入させ、支持層まで到達させる鋼管杭を使用する方法や、既製のRC(鉄筋コンクリート)杭やPC(プレストレスコンクリート)杭を圧入、打撃(振動)等にて地盤に挿入させる方法等も挙げられる。
【0003】
しかし、上述の表層改良においては、施工可能な改良厚は表層の約1m未満であり、補強がそれ以上に及ぶ場合には施工が困難になる。そして、施工中の雨等の天候にも左右されやすく、また、強い粘性土地盤では固化材との攪拌が困難になるという問題がある。上述の柱状改良においては、改良体強度が比較的軟らかく、地盤中に転石等の障害物があると施工が困難になる。また、強い粘性土地盤では固化材との攪拌が困難になるという問題がある。上述の鋼管杭を使用する方法においては、杭の溶接継手等で施工手間がかかると共に、支持層が非常に深い場合は杭長が長くなり施工費用がかかる。上述のRC杭やPC杭を使用する方法においては、地盤中に転石等の障害物があるとプレボーリングが必要となるため施工手間を要する。そして、これらの杭を圧入、打撃(振動)等する際に該杭に力がかかりすぎると、これらの杭が破損する等の問題がある。そのため、これらの問題を解決するための、以下のような場所打ち杭の施工方法が考案されている。
【0004】
そして、場所打ち杭100の施工方法としては、図15に示すように、(a)オーガ101にて所定の位置まで掘り下げる工程、(b)鋼管パイプコンクリート型枠102を杭打機械103にて立て込む工程、(c)鋼管パイプコンクリート型枠102に回転,振動,圧入等を加え所定の位置まで埋設その後鋼管パイプコンクリート型枠102の中に必要に応じた鉄筋を入れコンクリート104を打設する工程、(d)コンクーリート104打設直後に先端キャップ105を切り離し鋼管パイプコンクリート型枠102に回転振動を与えながら上部に引揚げる工程、(e)鋼管パイプコンクリート型枠102を完全に引抜きコンクリート104を硬化させる工程、からなるものである(例えば、特許文献1)。
【0005】
【特許文献1】実開2000−297430号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、図15に示すような従来の方法では、予め鋼管パイプコンクリート型枠102を立て込む場所に、オーガ101によって先行削孔をする必要があり、施工手間がかかる。また、スクリューオーガ101を使用した際には、地盤中に転石等があった場合に、掘削が困難であるという問題がある。さらに、鋼管キャップに掘削用の羽根を装備している場合には、該羽根が転石等の障害物と接触した際に、鋼管パイプコンクリート型枠102自体が曲がる等の問題が生じる可能性がある。
【0007】
この発明は上記のような種々の課題を解決することを目的としてなされたものであって、先行削孔と杭打設とを1工程で行うことができ、また、強い粘性土地盤、支持層が深い地盤、さらには地盤中に転石等の障害物があっても簡便、且つ、経済的に施工することのできる場所打ち杭の施工方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1記載の場所打ち杭の施工方法は、地盤に形成された掘削穴に固化充填材を打設して、現場において該地盤中に杭を施工する場所打ち杭の施工方法であって、アウタービットをその先端に具備する円筒状のケーシングパイプと、該ケーシングパイプ内部に供給される削孔水とによって前記地盤に略垂直方向に前記掘削穴を形成しながら廃土すると共に、前記ケーシングパイプを前記地盤中に挿入し、前記掘削穴形成後、前記ケーシングパイプ内部に挿入された注入管から該ケーシングパイプ内に所定量前記固化充填材を注入した後、該固化充填材が注入された区間と略同様の区間だけ前記ケーシングパイプを引抜いて、前記地盤中の土と前記固化充填材とを置換することを特徴としている。
【0009】
請求項2記載の場所打ち杭の施工方法は、前記ケーシングパイプに回転力、及び、打撃力を作用させながら前記地盤を掘削することを特徴としている。
【0010】
請求項3記載の場所打ち杭の施工方法は、地盤に形成された掘削穴に固化充填材を打設して、現場において該地盤中に杭を施工する場所打ち杭の施工方法であって、アウタービットをその先端に具備する円筒状のケーシングパイプと、該ケーシングパイプの先端内部に挿入されるインナービットをその先端に具備するインナーロッドと、該インナーロッド内部に供給される削孔水とによって前記地盤に略垂直方向に前記掘削穴を形成しながら廃土すると共に、前記ケーシングパイプを前記地盤中に挿入し、前記掘削穴形成後、前記ケーシングパイプを該掘削穴内部に残留させた状態で前記インナーロッドを前記ケーシングパイプ内部から引抜き、前記ケーシングパイプ内部に挿入された注入管から該ケーシングパイプ内に所定量前記固化充填材を注入した後、該固化充填材が注入された区間と略同様の区間だけ前記ケーシングパイプを引抜いて、前記地盤中の土と前記固化充填材とを置換することを特徴としている。
【0011】
請求項4記載の場所打ち杭の施工方法は、前記ケーシングパイプ、及び、前記インナーロッドに回転力、及び、打撃力を作用させながら前記地盤を掘削することを特徴としている。
【0012】
請求項5記載の場所打ち杭の施工方法は、前記場所打ち杭の直径が300mm以下であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
請求項1記載の場所打ち杭の施工方法によれば、アウタービットをその先端に具備する円筒状のケーシングパイプと、該ケーシングパイプ内部に供給される削孔水とによって、地盤を掘削している。そのため、地盤中に転石等の障害物があったとしても該障害物を貫通して地盤を掘削することができ、また、ケーシングパイプが曲がる等の問題が生じにくい。さらに削孔水を使用しているので、該削孔水にて地盤を掘削することができると共に、該削孔水にて地盤を軟化させながら掘削することができ、効率的に掘削穴を形成することができる。また、上述のようにアウタービットにより地盤を掘削しながら、その掘削後の土を削孔水にて地上に廃土することもできる。そして、ケーシングパイプそのもので地盤を掘削すると共に、掘削と同時に該ケーシングパイプを地盤中に挿入することができるので、先行削孔と杭打設とを1工程で行うことができる。そして、掘削穴に固化充填材を所定量注入した後、該掘削穴に挿入されているケーシングパイプを該固化充填材が注入された区間と略同様の区間だけ引抜いているので、掘削穴の内壁面が崩落することなく固化充填材を該掘削穴に注入することができる。さらに、地盤の土と固化充填材とを混合して場所打ち杭を形成するのではなく、地盤の土と固化充填材とを置換するようにして場所打ち杭を形成するので、地盤の土とセメントミルク等の固化充填材とを混合した場合に比べ杭自体の強度が増すため小口径の杭でも大きな荷重に耐えることができる。そして、強い粘性土地盤であっても対応することができる。また、支持層が深い場合にも既製の鋼管杭を使用した場合と比較して、施工費用を抑えることができる。従って、簡便、且つ、経済的であって、確実に地盤の基礎補強をすることができる。
【0014】
請求項2記載の場所打ち杭の施工方法によれば、上述の効果に加えて、前記ケーシングパイプに回転力、及び、打撃力を作用させながら前記地盤を掘削している。そのため、地盤中に転石等のより強固な障害物があったとしても容易に掘削穴を形成することができ、さらに、地盤に掘削穴を形成するために要する時間も短縮することができる。
【0015】
請求項3記載の場所打ち杭の施工方法によれば、アウタービットをその先端に具備する円筒状のケーシングパイプと、該ケーシングパイプの先端内部に挿入されるインナービットをその先端に具備するインナーロッドと、該インナーロッド内部に供給される削孔水とによって、地盤を掘削している。そのため、地盤中により強固な転石等の障害物があったとしても該障害物を貫通して地盤を掘削することができ、また、ケーシングパイプが曲がる等の問題が生じにくい。さらに削孔水を使用しているので、該削孔水にて地盤を掘削することができると共に、該削孔水にて地盤を軟化させながら掘削することができ、効率的に掘削穴を形成することができる。また、上述のようにアウタービットとインナービットにより地盤を掘削しながら、その掘削後の土を削孔水にて地上に廃土することもできる。そして、ケーシングパイプそのもので地盤を掘削し、掘削穴形成後にインナーロッドを引抜くことができ、また、掘削と同時に該ケーシングパイプを地盤中に挿入することができるので、先行削孔と杭打設とを1工程で行うことができる。また、掘削穴に固化充填材を所定量注入した後、該掘削穴に挿入されているケーシングパイプを該固化充填材が注入された区間と略同様の区間だけ引抜いているので、掘削穴の内壁面が崩落することなく固化充填材を該掘削穴に注入することができる。さらに、地盤の土と固化充填材とを混合して場所打ち杭を形成するのではなく、地盤の土と固化充填材とを置換するようにして場所打ち杭を形成するので、地盤の土とセメントミルク等の固化充填材とを混合した場合に比べ杭自体の強度が増すため小口径の杭でも大きな荷重に耐えることができる。そして、強い粘性土地盤であっても対応することができる。また、支持層が深い場合にも既製の鋼管杭を使用した場合と比較して、施工費用を抑えることができる。従って、簡便、且つ、経済的であって、確実に地盤の基礎補強をすることができる。
【0016】
請求項4記載の場所打ち杭の施工方法によれば、上述の効果に加えて、前記ケーシングパイプ、及び、前記インナーロッドに回転力、及び、打撃力を作用させながら前記地盤を掘削している。そのため、地盤中に転石等のより一層強固な障害物があったとしても容易に掘削穴を形成することができ、さらに、地盤に掘削穴を形成するために要する時間もさらに短縮することができる。
【0017】
請求項5記載の場所打ち杭の施工方法によれば、上述の効果に加えて、前記場所打ち杭の直径が300mm以下であるので、戸建住宅の住宅の基礎補強に適しており、また、使用される重機も小型のものを使用することができるので、比較的狭い通路等にも侵入することができる。さらに、既述の通りこれらの杭は、地盤中の土と固化充填材とを置換するようにして形成されているので、地盤の土と固化充填材とを混合して杭を形成する場合と比較して、杭自体の強度が高くなり小口径であっても大きな荷重に耐えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
この発明における場所打ち杭の施工方法の最良の実施形態について、以下に説明する。本発明に係る場所打ち杭の施工方法は、図14(b)に示すように、地盤1に形成された掘削穴2に固化充填材3を打設して、現場において該地盤1中に杭を施工する場所打ち杭4の施工方法であって、図5に示すように、アウタービット51をその先端に具備する円筒状のケーシングパイプ52と、該ケーシングパイプ52の先端内部に挿入されるインナービット61をその先端に具備するインナーロッド62と、前記インナーロッド62内部に供給される削孔水Wとによって前記地盤1に略垂直方向に前記掘削穴2を形成しながら廃土すると共に、前記ケーシングパイプ52を地盤1中に挿入し、前記掘削穴2形成後、図6に示すように、前記ケーシングパイプ52を該掘削穴2内部に残留させた状態で前記インナーロッド62を前記ケーシングパイプ52内部から引抜き、図8、図9、図10に示すように、前記ケーシングパイプ52内部に挿入された注入管7から該ケーシングパイプ52内に所定量前記固化充填材3を注入した後、該固化充填材3が注入された区間と略同様の区間だけ前記ケーシングパイプ52を引抜いて、前記地盤1中の土と前記固化充填材3とを置換するようにしている。また、上述のように、インナーロッド62を使用せず、図7に示すように、アウタービット51と、該アウタービット51内部に供給される削孔水Wとによって掘削穴2を形成してもよい。
【0019】
前記場所打ち杭4は、予め作成された鋼管杭やRC(鉄筋コンクリート)杭やPC(プレストレスコンクリート)杭を地盤1中に挿入する既製杭工法とは異なり、施工現場において、地盤1に掘削穴2を形成し、該掘削穴2に固化充填材3を注入することで地盤1中に作成される杭4をいう。さらに、本発明における場所打ち杭4とは、地盤1中の土と固化充填材3とを混合攪拌し地盤1中に杭を形成する柱状改良工法とは異なり、掘削穴2が形成された地盤1中の土を完全に廃土し、地盤1中に杭4を形成するものである。すなわち、地盤1中の土と固化充填材3とを置換するようにして地盤1中に杭4を形成するのである。そして、建造物を施工する当該箇所に複数の場所打ち杭4をその地盤1中に形成することで該地盤1を補強し、その上方に該建造物を施工する。また、戸建の住宅等に使用される場合には、小型の重機8を使用することができ、比較的狭い通路も通ることができるため、場所打ち杭4の直径が約300mm以下であることが好ましく、200mm以下であることがより好ましい。しかし、場所打ち杭4の直径が約300mmより大きいものであっても本発明の場所打ち杭4の施工方法を使用することができると共に、同様の効果を発揮することができるのは勿論である。そして、本実施形態に使用される固化充填材3は、骨材を使用しないセメントミルクや、例えば1mm程度の細骨材を使用したモルタル等を好適に使用することができるが、骨材の大きさはこれらのものに限定されることなく目的に応じて適宜変更することができる。
【0020】
前記アウタービット51は、図3に示すように、その先端部分51aには地盤1を掘削するためのビット51bが形成されている。また、アウタービット51におけるビット51bが形成された側と反対側の外周面には螺子溝51cが形成されており、後述のケーシングパイプ52における先端部分52aの内周面に形成された螺子溝52bと螺合させることができる。また、アウタービット51の全体、若しくは、先端部分51aは、例えばタングステン等の硬質の金属から形成されると共に、該アウタービット51を形成する際に、ダイヤモンド粒を鋳込む等しているので、図14に示すように、地盤1中の転石等の障害物Iも容易に貫通することができる。また、本実施形態において使用されるアウタービット51の全体形状は略円筒状の本体部分の先端部分51aにビット51bを具備し、その反対側には螺子溝51cを具備している。しかし、アウタービット51の形状は少なくとも後述のインナーロッド62をその内部に挿入することができるものであればよく、また、ビット51bの形状等も本実施形態のものに限定されるものではない。
【0021】
前記ケーシングパイプ52は、図3に示すように、長尺に形成された円筒状の鋼性の部材である。そして、ケーシングパイプ52の先端部分52aの内周面には、上述したアウタービット51と螺合するための螺子溝52bが形成されている。また、本実施形態においては、アウタービット51の外周面と、ケーシングパイプ52の内周面とに螺子溝51c、52bが形成されこれらを螺合するようにしているが、アウタービット51の内周面と、ケーシングパイプ52の外周面とに螺子溝51c、52bが形成されていてもよく、さらにその他の方法でも、地盤1を掘削中にケーシングパイプ52からアウタービット51が脱落しないような連結方法であればよい。また、ケーシングパイプ52は例えば1m程度に形成されているので、適宜連結部材(不図示)等を用いて、複数のケーシングパイプ52を連結して使用することができる。そして、ケーシングパイプ52におけるアウタービット51が取付けられた側と反対側、すなわち、ケーシングパイプ52の地上側は、図1に示すような重機8と連結されている。
【0022】
前記インナービット61は、図4に示すように、その先端部分61aには地盤1を掘削するためのビット61bが形成されている。また、インナービット61におけるビット61bが形成された側と反対側の外周面には螺子溝61cが形成されており、後述のインナーロッド62の先端部分62aの内周面に形成された螺子溝62bと螺合させることができる。また、インナービット61の全体、若しくは、先端部分61aは、例えばタングステン等の硬質の金属から形成されると共に、該インナービット61を形成する際に、ダイヤモンド粒を鋳込む等しているので、地盤1中の転石等の障害物Iも容易に貫通することができるのである。
【0023】
また、本実施形態において使用されるインナービット61の全体形状は略円筒状の本体部分の先端部分61aにビットを具備し、その反対側には螺子溝61cを具備している。そして、インナービット61には図5に示すように、その内部を通じ、後述の削孔水W等を通すための流路9が形成されている。また前記流路9は、図4、及び、図5に示すように、インナービット61の上部からその内部を通じ、先端、及び、側部のそれぞれに形成された開口部10まで通じるように形成されており、該開口部10から削孔水W等を噴射することができるようになっている。しかし、インナービット61の形状は少なくとも削孔水Wを通すための流路9が形成されているものであればよく、また、ビットの形状等も本実施形態のものに限定されるものではない。
【0024】
前記インナーロッド62は、図4に示すように、長尺に形成された円筒状の鋼性の部材である。そして、インナーロッド62の先端部分62aの内周面には、上述したインナービット61と螺合するための螺子溝62bが形成されている。また、本実施形態においては、インナービット61の外周面と、インナーロッド62の内周面とに螺子溝61c、62bが形成されこれらを螺合するようにしているが、インナービット61の内周面と、インナーロッド62の外周面とに螺子溝61c、62bが形成されていてもよく、さらにその他の方法でも、地盤1を掘削中にインナーロッド62からインナービット61が脱落しないような連結方法であればよい。また、インナーロッド62は例えば1m程度に形成されているので、適宜連結部材(不図示)等を用いて、複数のインナーロッド62を連結して使用する。そして、インナーロッド62におけるインナービット61が取付けられた側と反対側、すなわち、インナーロッド62の地上側は、図1に示すような重機8と連結されている。
【0025】
上述のように形成されるケーシングパイプ52、及び、インナーロッド62を使用した場所打ち杭4の施工方法について以下に示す。
【0026】
〔掘削工程〕
まず、図1に示すように、重機8に既述のケーシングパイプ52、及び、インナーロッド62を装着し、建造物を施工する当該箇所の地盤1に略垂直方向に掘削穴2を形成する。その際には、図2に示すように、インナーロッド62の先端に装着されたインナービット61がケーシングパイプ52の先端に装着されたアウタービット51よりも若干突出するように重機8に装着されているが、アウタービット51が突出するようにしてもよい。そして、地盤1に掘削穴2を形成する際には、ケーシングパイプ52、及び、インナーロッド62の双方に回転力、及び、打撃力を作用させることで、これらの回転力、及び、打撃力が先端に装着された、アウタービット51、及び、インナービット61に伝達され、効率的に地盤1を掘削する。そのため、重機8としては、比較的狭い通路にも侵入することができる小型のロータリーパーカッションドリル等を好適に使用することができるが、その他にも汎用のボーリングマシン等も使用することができる。
【0027】
そして、前述のようにケーシングパイプ52、及び、インナーロッド62によって地盤1を掘削する際には、図5に示すように、地上からインナーロッド62内に削孔水Wを注入する。そして、地上から注入された削孔水Wは、図5に示す矢印A方向であるインナーロッド62の先端方向に進行し、その後、インナービット61内部に形成された流路9を矢印B方向に通ってインナービット61の先端、及び、側部に形成された開口部10から噴射される。そして、前述のようにインナービット61から噴射された削孔水Wはその圧力で地盤1を掘削、若しくは、地盤1を軟らかくし、インナービット61、及び、アウタービット51による掘削効率を向上させる。
【0028】
また、インナービット61の開口部10から噴出された削孔水Wは、その後、図5に示すように、インナービット61とアウタービット51の隙間を矢印C方向へ通り抜け、さらに、インナーロッド62とケーシングパイプ52との隙間を矢印D方向へ通り抜け、その後地上へ排出される。その際には、インナービット61、アウタービット51、及び、削孔水Wによって掘削された地盤1の土が、該削孔水Wと共に地上に廃土されるのである。そして、上述のようにして、地盤1が掘削され掘削穴2が形成された後には、掘削穴2、ケーシングパイプ52、及び、インナーロッド62の内部は削孔水Wで満たされ、地盤1中の土と削孔水Wとが置換された状態になっている。
【0029】
また、上述のように、インナービット61を具備するインナーロッド62を使用せず、アウタービット51を具備するケーシングパイプ52のみで掘削を行う場合には、図7に示すように、地上からケーシングパイプ52内に削孔水Wが注入され、該削孔水Wはケーシングパイプ52の先端方向であるS方向に進行した後、アウタービット51の先端部から噴射される。そして、前述のようにアウタービット51から噴射された削孔水Wはその圧力で地盤1を掘削、若しくは、地盤1を軟らかくし、アウタービット51による掘削効率を向上させる。また、この際にはケーシングパイプ52に回転力、及び、打撃力を作用させている。
【0030】
そして、アウタービット51の先端から噴射された削孔水Wは、その後、図7に示すように、アウタービット51、及び、ケーシングパイプ52と、掘削穴2の内周面2aの隙間を矢印T方向へ通り抜けその後地上に排出される。その際には、アウタービット51、及び、削孔水Wとによって掘削された地盤1の土が、該削孔水Wと共に地上に廃土されるのである。そして、上述のようにして、地盤1が掘削され掘削穴2が形成された後には、掘削穴2、ケーシングパイプ52の内部は削孔水Wで満たされ、地盤1中の土と削孔水Wとが置換された状態になっている。
【0031】
また、掘削穴2内部の削孔水Wは、後述では、該削孔水Wと固化充填材3とが置換される方法を示すが、掘削穴2内部の削孔水W、及び、掘削穴2に残留した掘削土を、削孔完了後、コンプレッサー等で地上に排出するようにしてもよいし、また、注入管7に地上から空気を圧入して地上に排出するようにしてもよい。以上のようにして、地盤1に略垂直方向に掘削穴2が形成されるのである。
【0032】
〔引抜き工程〕
そして、上述のようにして掘削穴2を形成した後、図6に示す矢印G方向へ、ケーシングパイプ52を該掘削穴2内部に残留させた状態で、前記インナーロッド62を前記ケーシングパイプ52内部から引抜く。また、既述のようにインナービット61を具備するインナーロッド62を使用しない場合には本工程を行う必要はない。
【0033】
〔固化充填材注入工程〕
次いで、ケーシングパイプ52内部に、図8に示すように、地上から掘削穴2内部に固化充填材3を注入するための注入管7を挿入する。その際には、掘削穴2の底部から固化充填材3を注入することができるように、注入管7の先端部が掘削穴2の底部付近にまで到達するように該注入管7を挿入することが好ましい。そして、掘削穴2に固化充填材3を注入する際には、ケーシングパイプ52内に所定量だけ固化充填材3を注入した後、該固化充填材3が注入された区間と略同様の区間だけケーシングパイプ52を引抜く。すなわち、図9に示すように、掘削穴2内部にケーシングパイプ52を残留させた状態で該ケーシングパイプ52内部に所定量、注入管7によって地上から固化充填材3を注入する。そして、図10に示すように、所定区間だけケーシングパイプ52を矢印H方向へ引抜くのである。こうすることで、ケーシングパイプ52によって保護されていた掘削穴2の内周面2aが、今度は固化充填材3によって保護される。すなわち、モルタルやセメントミルク等の固化充填材3の比重が大きいため、固化充填材3が掘削穴2の内周面2aに及ぼす圧力によって掘削穴2の内周面2aが保護されるので、該掘削穴2の内周面2aが崩落等することがない。また、上述のような方法でなくとも、先に所定区間だけケーシングパイプ52を引抜いておいてから、所定量、注入管7によって地上から固化充填材3を注入するようにしてもよい。
【0034】
そして、注入管7から掘削穴2内部に固化充填材3を注入する際には、該掘削穴2内部は削孔水Wで満たされているが、該固化充填材3を注入することで比重の大きい固化充填材3が掘削穴2の底部から削孔水Wと置換される。また、前述のようにして固化充填材3と置換された削孔水Wは、地上から排出されるのである。そして、掘削穴2内部に固化充填材3を注入し続け、前述のように地上から排出される削孔水Wが、固化充填材3となる時点まで注入作業を行う。こうすることで、完全にケーシングパイプ52が引抜かれた状態で、削孔水Wで満たされた掘削穴2内部を固化充填材3で満たすことができる。すなわち、地盤1の土と固化充填材3とを置換するようにして場所打ち杭4を施工することができる。以上のようにして、掘削穴2内部に固化充填材3が注入されるのである。また、本工程はインナービット61を具備するインナーロッド62の使用の有無に変わらず同様の作業が行われる。
【0035】
以上のようにして、掘削穴2内部に注入された固化充填材3は所定時間、養生させることにより、固化充填材3が硬化し場所打ち杭4が形成される。
【0036】
また、掘削穴2内部に固化充填材3を注入する際に、ケーシングパイプ52の上部に蓋をして、若しくは、パッカーを使用する等して、固化充填材3を掘削穴2に加圧注入することで、図11に示すように、固化充填材3の比重が大きいことに加えて、掘削穴2の内周面2a方向である矢印Xの方向に圧力が作用するため、内周面2aにおける地盤1の隙間に該固化充填材3が侵入し、杭4の耐力をより向上させることができる。また、前述のように加圧注入を行うことで固化充填材3が内周面2aに及ぼす圧力が増すので、施工中に内周面2aが崩落することがないという利点もある。
【0037】
また、掘削穴2に固化充填材3を注入後、該固化充填材3が硬化する前に、図12に示すように、地上から鉄筋籠、角パイプ、管パイプ、さらには、H鋼等の芯材11を挿入してもよく、これにより、杭4の耐力をより向上することができる。そして、芯材11は、図12(a)に示すように、地上から掘削穴2の底部に至る長さのものを使用してもよいが、図12(b)に示すように、例えば地上から1〜2mm程度の長さのものを使用してもよい。
【0038】
そして、掘削穴2に固化充填材3を注入後、該固化充填材3が硬化する前に、図13(a)に示すように、地上から略円筒形の保護部材12を挿入してもよい。これにより、杭4の位置を明示することができると共に、杭頭部の保護できるという利点がある。また、地盤のレベルよりも杭4を突出するように形成する場合には、図13(b)に示すように、保護部材12を地盤のレベルから突出するように挿入してから、該保護部材12内部に固化充填材3を注入することでこれらを形成することができる。また、保護部材12は、本実施形態のように略円筒形でなくとも角柱であってもよく、さらには、鉄筋籠であってもよく、その形状は目的に応じて適宜変更することができる。
【0039】
以上のような、場所打ち杭4の施工方法によれば、先行削孔と杭打設とを1工程で行うことができ、また、強い粘性土地盤、支持層が深い地盤、さらには、図14(a)に示すように、地盤中に転石等の障害物Iあっても、図14(b)に示すように、該障害物Iを貫通するようにして場所打ち杭4を施工することができるのである。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明に係る場所打ち杭4の施工方法は、建造物施工のための基礎補強だけでなく、法面等の傾斜面の補強、地滑りの抑止杭としても使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本実施形態に係る重機による掘削を示す図
【図2】本実施形態に係るインナービットとアウタービットの使用例の斜視図
【図3】本実施形態に係るアウタービット、及び、ケーシングパイプを示す図
【図4】本実施形態に係るインナービット、及び、インナーロッドを示す図
【図5】地盤を掘削する状態を示す図
【図6】掘削穴にケーシングパイプを残留させたままインナーロッドを引抜く状態を示す図
【図7】インナービットを使用せず地盤を掘削する状態を示す図
【図8】掘削穴に残留させたケーシングパイプ内部に注入管を挿入した状態を示す図
【図9】ケーシングパイプ内部に固化充填材を注入する状態を示す図
【図10】図9の状態からケーシングパイプを引抜いた状態を示す図
【図11】固化充填材を加圧注入した場合における杭の状態を示す図
【図12】杭に芯材を挿入した状態を示す図
【図13】杭に保護部材を挿入した状態を示す図
【図14】地盤の土と固化充填材とを置換して場所打ち杭が形成された状態を示す図
【図15】従来技術を示す図
【符号の説明】
【0042】
1 地盤
2 掘削穴
3 固化充填材
4 場所打ち杭(杭)
51 アウタービット
52 ケーシングパイプ
61 インナービット
62 インナーロッド
7 注入管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤に形成された掘削穴に固化充填材を打設して、現場において該地盤中に杭を施工する場所打ち杭の施工方法であって、
アウタービットをその先端に具備する円筒状のケーシングパイプと、該ケーシングパイプ内部に供給される削孔水とによって前記地盤に略垂直方向に前記掘削穴を形成しながら廃土すると共に、前記ケーシングパイプを前記地盤中に挿入し、
前記掘削穴形成後、前記ケーシングパイプ内部に挿入された注入管から該ケーシングパイプ内に所定量前記固化充填材を注入した後、該固化充填材が注入された区間と略同様の区間だけ前記ケーシングパイプを引抜いて、
前記地盤中の土と前記固化充填材とを置換することを特徴とする場所打ち杭の施工方法。
【請求項2】
前記ケーシングパイプに回転力、及び、打撃力を作用させながら前記地盤を掘削することを特徴とする請求項1記載の場所打ち杭の施工方法。
【請求項3】
地盤に形成された掘削穴に固化充填材を打設して、現場において該地盤中に杭を施工する場所打ち杭の施工方法であって、
アウタービットをその先端に具備する円筒状のケーシングパイプと、該ケーシングパイプの先端内部に挿入されるインナービットをその先端に具備するインナーロッドと、該インナーロッド内部に供給される削孔水とによって前記地盤に略垂直方向に前記掘削穴を形成しながら廃土すると共に、前記ケーシングパイプを前記地盤中に挿入し、
前記掘削穴形成後、前記ケーシングパイプを該掘削穴内部に残留させた状態で前記インナーロッドを前記ケーシングパイプ内部から引抜き、
前記ケーシングパイプ内部に挿入された注入管から該ケーシングパイプ内に所定量前記固化充填材を注入した後、該固化充填材が注入された区間と略同様の区間だけ前記ケーシングパイプを引抜いて、
前記地盤中の土と前記固化充填材とを置換することを特徴とする場所打ち杭の施工方法。
【請求項4】
前記ケーシングパイプ、及び、前記インナーロッドに回転力、及び、打撃力を作用させながら前記地盤を掘削することを特徴とする請求項3記載の場所打ち杭の施工方法。
【請求項5】
前記場所打ち杭の直径が300mm以下であることを特徴とする請求項1乃至4記載の場所打ち杭の施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2008−297864(P2008−297864A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−147821(P2007−147821)
【出願日】平成19年6月4日(2007.6.4)
【出願人】(000198787)積水ハウス株式会社 (748)
【Fターム(参考)】