説明

塑性変形可能な硬質ポリウレタンフォームと接着剤と被覆材料とからなる複合部品

本発明は、熱成形可能なポリウレタンフォームを導入し、これをライニング材料に接着させることからなる複合部品の製造方法であって、用いる接着剤が水溶液と接触して硬化する湿気硬化型ポリウレタン接着剤触媒であるものに関する。本発明はまた、このような方法で得られる複合部品とその複合部品の車両中での、特に天井内張りとしての利用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形可能な硬質ポリウレタンフォームを導入し、それをライニング材料に接着させることからなる複合部品の製造方法であって、用いる接着剤が触媒水溶液と接触して硬化する湿気硬化型ポリウレタン接着剤である製造方法に関する。本発明はまた、このような方法で得られる複合部品とその複合部品の車両中での、特に天井内張りとしての利用に関する。
【背景技術】
【0002】
塑性変形可能な硬質ポリウレタンフォーム(以下、熱成形可能な硬質ポリウレタンフォームとも呼ぶ)とその自動車の内装としての利用は既知であり、例えば、“Kunststoffhandbuch, Volume 7, Polyurethane”, Carl Hanser Verlag, 3rd edition 1993, section 6.5.4.1に記載されている。本用途では、内装材の製造のために、この塑性変形可能な硬質ポリウレタンフォームが、その形成工程中でまたは形成後に、金型内で塑性変形されてライニング材料と張り合わされる。用いるライニング材料は、例えばガラス繊維マットなどの強化材及び/又は不織布などの装飾材料である。塑性変形中またはその後で、これらのライニング材料が、接着剤で通常ポリウレタン系接着剤で硬質ポリウレタンフォームに接着させられる。この大きな利点は、ライニング材料との積層が、塑性変形とともに一工程で行うことができることである。この種の塑性変形可能な硬質ポリウレタンフォームと、これらの熱成形可能な硬質ポリウレタンフォームのライニング材料との積層方法は、例えばEP437787やDE4333795に記載されている。
【0003】
通常、ポリウレタ系の接着剤が硬質ポリウレタンフォームとライニング材料との接着的結合に用いられる。特に湿気硬化型一成分系接着剤が、特に好ましい。その場合、未圧縮の硬質発泡体にこれらの接着剤を塗布し、この発泡体に水を噴霧して、ライニング材料と貼り合わせ、この積層物を金型中で高温で圧縮する。
【0004】
用いる湿気硬化型一成分系接着剤は、好ましくは触媒を含有するイソシアネート末端ポリウレタンプレポリマーである。例えばEP464483に記載のように、この種の湿気硬化型一成分系接着剤は、スズ系触媒または第三級アミン系触媒を含む。このような接着剤の一つの欠点は、貯蔵安定性が悪く、しばしば加工寿命が短いことである。また、有機スズ化合物は毒性的に有害である。
【0005】
WO2004/033519には、ビスマス系触媒を含む湿気硬化型ポリウレタン組成物が記載されている。ビスマス化合物は有機スズ化合物より毒性が低いが、ビスマス触媒の湿気硬化型塑性物も貯蔵安定性が低く加工寿命が短い。また、アミン系触媒やスズ系触媒、ビスマス系触媒を使用すると、閉鎖空間中に、例えば自動車の客室中に悪臭となる物質を発生させることとなる。
【0006】
自動車内部に設けられ、通常天井領域の装備品(天井内張りと呼ばれる)として用いられる塑性変形可能な硬質ポリウレタンフォームに求められる要件は、多岐にわたる。これらには一定の剛性が求められ、臭気となるいかなる有害物質も放出してはならない。天井内張りの特に重要な機能は、その音響効果への寄与である。特に重要な仕事は、空気騒音の低下である。これらの天井内張り特性の品質は、用いる塑性変形可能な硬質ポリウレタンフォームの特性と用いる接着剤とに極めて多く依存している。空気騒音をよく吸収するためには、空気透過性の優れた天井内張りが望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の目的は、熱成形可能な硬質ポリウレタンフォームとライニング材料と接着剤とからなる複合部品の製造方法であって、この接着剤が毒物学的に有害な触媒をほとんどあるいはまったく使用せずに硬化され、長期の保管及び加工寿命を有し、臭気発生レベルが低く最終製品の部品の悪臭の低下に寄与するものである製造方法を提供する。本発明のもう一つの目的は、すばらしい音響型特性をもち、客車中で悪臭問題を引き起こすことのない自動車用の装備品、特に天井内張りを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の目的は、熱成形可能なポリウレタンフォームを導入し、それをライニング材料に接着させることからなる複合部品の製造方法であって、用いる接着剤が、触媒水溶液と接触して硬化する湿気硬化型ポリウレタン接着剤である製造方法により達成された。
【0009】
この場合、用いるライニング材料は、熱成形可能な硬質ポリウレタンフォームをライニングするのに用いられる通常の材料であることが好ましい。これらの材料としては、ガラス繊維マットや、軟質発泡層、織布や編布、不織布などの織物、またこれら既存のライニング材料の組み合わせがあげられる。
【0010】
熱成形可能な硬質ポリウレタンフォームとして、いずれの既存の熱成形可能な硬質ポリウレタンフォームを用いることもできる。この種の硬質ポリウレタンフォームは、例えばEP437787やDE4333795、DE102004062540に記載されている。これらは、好ましくは開放気孔であり、好ましくは臭気形成につながる物質を放出しない。ある一つの好ましい実施様態においては、本発明の熱成形可能な硬質ポリウレタンフォームは、a)有機ポリイソシアネートと、b)b1)ヒドロキシル価が150〜650であり、第一級ヒドロキシル基の比率が70%を超える2〜4官能性ポリオキシアルキレンポリオールとb2)ヒドロキシル価が25〜40で、第一級ヒドロキシル基の比率が70%を超える2〜3官能性ポリオキシアルキレンポリオールとからなるポリエーテルオールと、必要ならc)鎖延長剤及び/又は架橋剤、d)発泡剤、e)触媒、また、必要ならf)助剤や添加物とを、混合して反応混合物とし、この反応混合物を反応させて製造される。
【0011】
本発明の熱成形可能な硬質ポリウレタンフォームは、好ましくは金型温度が80〜160℃で、より好ましくは100〜150℃で塑性変形可能である。用いる成分a)〜f)は、ポリウレタン化学では既知の既存の成分である。ポリオキシアルキレンポリオールb1)は、好ましくは少なくとも30重量%の、より好ましくは少なくとも50重量%のエチレンオキシドを含む。ポリオキシアルキレンポリオールb2)は、好ましくは少なくとも50重量%の、より好ましくは少なくとも80重量%のプロピレンオキシドを含む。
【0012】
上記のポリオキシアルキレンポリオールb1)とb2)に加えて、他のポリエーテルオールやポリエステルオールなどの他のポリヒドロキシ化合物、またはポリチオールまたはポリアミンなどの他のイソシアネート反応性化合物を使用することもできる。成分b)の総重量に対する化合物b1)とb2)の重量比率は、好ましくは少なくとも50重量%であり、より好ましくは少なくとも70重量%、特に少なくとも80重量%である。ポリオキシアルキレンポリオールb1)とb2)の比は、好ましくは0.8:1〜1.5:1である。
【0013】
熱成形可能な硬質ポリウレタンフォーム製造用の鎖延長剤及び/又は架橋剤c)として、ジプロピレングリコール及び/又はトリプロピレングリコールを用いることが好ましい。
【0014】
本発明の湿気硬化型ポリウレタン接着剤は、イソシアネート基を有するプレポリマーを含む混合物であり、またはイソシアネート基を有するプレポリマーそのもの、あるいは少なくとも50重量%の、好ましくは少なくとも重量80%、特に少なくとも95重量%のイソシアネート基を有するプレポリマーの混合物である。また、本発明の湿気硬化型ポリウレタン接着剤は、ポリウレタン化学でよく使用される表面活性物質、ジグリコールビスクロロホルメートまたは正リン酸などの阻害剤、可塑剤、砂やカオリン、チョーク、硫酸バリウム、二酸化ケイ素などの無機充填剤、酸化安定剤、染顔料、例えば加水分解や光、熱または変色に対する安定剤、有機及び/又は無機充填剤、乳化剤、難燃剤、老化防止剤、接着促進剤、強化剤、また触媒などの他の添加物を含んでいてもよい。本発明の湿気硬化型ポリウレタン接着剤の、25℃でDIN53018により求めた粘度は、好ましくは500〜5000mPasの範囲にあり、より好ましくは1000〜3000mPasにある。
【0015】
本発明においては、イソシアネート基を有するプレポリマーは、ポリイソシアネートと、少なくとも二個のイソシアネート反応性基をもつ比較的高分子量の化合物と、必要に応じて一個のイソシアネート反応性基をもつ化合物と、さらに必要に応じて、鎖延長剤及び/又は架橋剤との反応生成物であり、その中でポリイソシアネートが過剰に使用されているものと理解される。
【0016】
イソシアネート基を有するプレポリマーの製造に使用できるポリイソシアネートは、
すべての先行技術の脂肪族、環状脂肪族あるいは芳香族の二官能性または多官能性イソシアネートであり、またこれらのいずれか所望の混合物である。芳香族二官能性または多官能性イソシアネートの使用が好ましい。例としては、4,4’−、2,4’−、および2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート、モノマー状のジフェニルメタンジイソシアネートとジフェニルメタンジイソシアネートの高級多環同族体(重合型のMDI)の混合物、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)、2,4,6−トルエントリイソシアネート、2,4−および2,6−トルエンジイソシアネート(TDI)、またはこれらの混合物があげられる。
【0017】
2,4−トルエンジイソシアネートと、2,6−トルエンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートとジフェニルメタンジイソシアネートの高級多環同族体(重合型のMDI)、これらのイソシアネートの混合物の使用が特に好ましく、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートと4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートの混合物をポリイソシアネート(a)として使用することがさらに好ましい。
【0018】
少なくとも二個のイソシアネート反応性基を有する比較的高分子量のイソシアネート反応性化合物として、イソシアネート基に対して反応性の少なくとも二個の基をもつ化合物のすべてを、イソシアネート基を有するプレポリマーの製造に使用することができる。これらの化合物の分子量は少なくとも400g/molである。ポリエステルオール、ポリエーテルオール、または例えばポリエステルをアルコキシ化して得られるポリエーテル−ポリエステルオールの使用が好ましい。
【0019】
ポリエーテルオールは、既知のプロセスで製造可能であり、例えば一種以上の、アルキレン基中に2〜4個の炭素原子を有するアルキレンオキシドから、アルカリ金属水酸化物またはアルカリ金属アルコキシドを触媒とし、少なくとも一種の、2〜5個の、好ましくは2〜4個、より好ましくは2〜3個、特に2個の反応性の水素原子を結合状態で有する開始剤分子を添加して行うアニオン重合で、あるいは五塩化アンチモンまたは三フッ化ホウ素エーテラートなどのルイス酸を用いるカチオン重合で製造できる。さらに触媒として、DMC触媒とよばれる多金属シアン化物化合物を使用することもできる。好適なアルキレンオキシドの例としては、テトラヒドロフラン、1,3−プロピレンオキシド、1,2−及び/又は2,3−ブチレンオキシドがあげられ、エチレンオキシドと1,2−プロピレンオキシドがより好ましい。これらのアルキレンオキシドは、単独で用いてもよいし、交互に連続して、あるいは混合物として用いてもよい。1,2−プロピレンオキシド、エチレンオキシド、または1,2−プロピレンオキシドとエチレンオキシドの混合物の使用が好ましい。
【0020】
可能な開始剤分子としては、水、またはエチレングリコールや1,2−または1,3−プロパンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、グリセロール、トリメチロールプロパンなどの二価及び三価アルコールが好ましい。
【0021】
好ましいポリエーテルポリオールの、より好ましくはポリオキシプロピレンポリオールまたはポリオキシプロピレン−ポリオキシエチレンポリオールの、官能価は2〜5であり、より好ましくは2〜3であり、分子量は400〜9000、好ましくは1000〜6000、より好ましくは1500〜5000、特に2000〜4000g/molである。ポリエーテルポリオールとして、重量平均分子量が1500〜2500g/molのポリプロピレングリコールを使用することが特に好ましい。
【0022】
少なくとも二個のイソシアネート基反応性の基をもつ比較的高分子量の化合物に加えて、一個のみのイソシアネート反応性基を有する化合物を用いることができる。これらは、好ましくは単官能性開始剤分子、例えばエチレングリコールモノメチルエーテルから出発して、上述のポリエーテルオールと同様にして得られるポリエーテルモノオールである。ポリエーテルモノオールの分子量は100〜1000g/molであることが好ましい。ポリエーテルモノオールを使用する場合、ポリエーテルモノオールとポリエーテルポリオールの重量比は、1:30〜4:1であることが好ましい。
【0023】
イソシアネート基を有するプレポリマーの製造に、必要に応じて鎖延長剤及び/又は架橋剤を使用することもできる。これらの鎖延長剤及び/又は架橋剤は、上記ポリオールの添加の前に、添加中に、あるいは添加後に添加できる。用いる鎖延長剤及び/又は架橋剤は、分子量が好ましくは400g/mol未満、より好ましくは60〜350g/molである物質であり、鎖延長剤は二個のイソシアネート反応性水素原子を有し、架橋剤は3個のイソシアネート反応性水素原子を有する。これらの化合物は、単独でも用いても混合物の形で用いてもよい。鎖延長剤を用いる場合は、1,3−および1,2−プロパンジオールや、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,3−ブタンジオールが特に好ましい。
【0024】
鎖延長剤、架橋剤、またはこれらの混合物を使用する場合、ポリイソシアネートと比較的高分子量のイソシアネート反応性化合物と鎖延長剤及び/又は架橋剤の重量に対して、1〜60%の重量量で、好ましくは1.5〜50重量%、特に2〜40重量%の量で使用することが好ましい。
【0025】
上記のイソシアネートプレポリマーは、上述のポリイソシアネートを過剰で、例えば30〜100℃の温度で、好ましくは約80℃で、少なくとも二個のイソシアネート反応性基を有する比較的高分子量の化合物と、また必要に応じて一個のイソシアネート反応性基を有する化合物と、また必要に応じて鎖延長剤及び/又は架橋剤と反応させて得ることができる。ポリイソシアネートと、少なくとも二個のイソシアネート反応性基を有する比較的高分子量の化合物と、必要なら一個のイソシアネート反応性基を有する化合物と、また必要なら鎖延長剤及び/又は架橋剤は、相互に、イソシアネート基とイソシアネート反応性基の比が1.5:1〜15:1で、好ましくは1.8:1〜8:1で混合される。少なくとも二個のイソシアネート反応性基を有する比較的高分子量の化合物と、必要なら一個のイソシアネート反応性基を有する化合物と、また必要なら鎖延長剤及び/又は架橋剤を相互に、得られるプレポリマーのNCO含量が、得られるイソシアネートプレポリマーの総重量に対して重量比で5〜30%の範囲、特に10〜25%に範囲となるような比率で混合してこのポリイソシアネートプレポリマーを製造することが特に好ましい。次いで、好ましくは薄膜蒸留により揮発性イソシアネートを分離することが好ましい。この場合、このイソシアネートプレポリマーの粘度は、25℃で100〜5000mPasであることが好ましい。トルエンジイソシアネート系の本発明のイソシアネートプレポリマーの粘度は、通常500〜3000mPasであり、ジフェニルメタンジイソシアネート系の本発明のイソシアネートプレポリマーの粘度は、通常600〜3000mPasである。いずれの場合も25℃の粘度である。これらのイソシアネートプレポリマーの平均イソシアネート官能価は、好ましくは2.0〜2.9であり、より好ましくは2.1〜2.6である。
【0026】
この湿気硬化型ポリウレタン接着剤は触媒を含んでいてもよい。これらの触媒としては、例えば、2,3−ジメチル−3,4,5,6−テトラヒドロ−ピリミジンなどのアミジンや、トリエチルアミンやトリブチルアミン、ジメチルベンジルアミン、N−メチル−、N−エチル−、N−シクロヘキシルモルホリン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルブタンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルヘキサンジアミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、テトラメチルジアミノエチルエーテル、ビス(ジメチルアミノ−プロピル)尿素、ジメチルピペラジン、1,2−ジメチルイミダゾール、1−アザビシクロ[3.3.0]オクタンなどの第三級アミンがあげられ、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンや、トリエタノールアミンやトリイソプロパノールアミン、N−メチル−およびN−エチル−ジエタノールアミン、ジメチルエタノールアミンなどのアルカノールアミン化合物が好ましい。さらに可能な触媒は、有機金属化合物であり、好ましくは有機カルボン酸のスズ(II)塩、例えば酢酸スズ(II)やオクタン酸スズ(II)、エチルヘキサン酸スズ(II)、ラウリン酸スズ(II)などの有機スズ化合物;ジブチル錫ジアセテートやジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫マレエート、ジオクチル錫ジアセテートなどの有機カルボン酸のジブチル錫(IV)塩;ネオデカン酸ビスマス(III)や2−エチルヘキサン酸ビスマス、オクタン酸ビスマスなどのカルボン酸ビスマス、またはこれらの混合物である。これらの有機金属化合物は単独で用いてもよいし、塩基性アミンと組み合わせて用いてもよい。
【0027】
イソシアネート基を有するプレポリマーの重量に対して2重量%未満の量で、より好ましくは1重量%未満の量で触媒又は触媒混合物を使用することが好ましく、特に触媒または触媒混合物を使用しないことが好ましい。
【0028】
本発明の複合部品の製造において、熱成形可能な硬質ポリウレタンフォームの1m2当り20〜300gの、より好ましくは50〜200gの湿気硬化型ポリウレタン接着剤を使用することが好ましい。
【0029】
この湿気硬化型ポリウレタン接着剤は、触媒水溶液と接触して硬化する。この触媒水溶液には、アルカリ金属ケイ酸塩水溶液、金属カルボキシレート水溶液、アミン系触媒水溶液、およびこれらの混合物が含まれる。特に、湿気硬化型ポリウレタン接着剤が触媒を含む場合、この触媒水溶液は非常に少量の触媒を含むか、まったく含まなくてもよく、この場合に水のみからなっていてもよい。しかし、この実施様態はあまり好ましくない。
【0030】
使用可能なアルカリ金属水溶液は、既知の市販の、一般式M2O・SiO2の、通常「水ガラス」とよばれるアルカリ金属ケイ酸塩の水溶液であり、式中のMはアルカリ金属で、M2O:SiO2比率は変動可能である。用いるアルカリ金属がナトリウムであることが好ましい。異なるアルカリ金属ケイ酸塩の混合物の使用も可能であり、その例としては、ケイ酸ナトリウムとケイ酸カリウムの混合物で、Na2O:K2O比率が好ましくは99.5:0.5〜25:75であるものがあげられる。このM2O:SiO2のモル比率は、通常の範囲で変動可能であり、通常4〜0.2であり、好ましくは1.5〜3である。好ましいケイ酸ナトリウムを使用する場合、Na2O:SiO2の重量比は、例えば1:1.6〜1:4内で変動し、好ましくは1:2〜1:3.5で、特に1:2〜1:3.3で変動する。
【0031】
アルカリ金属ケイ酸塩の水溶液中での濃度は、粘度または望ましい水分率などの特定の要件に応じて決定できるが、水溶液中のアルカリ金属ケイ酸塩濃度は、通常は0.01〜80重量%であり、好ましくは0.1〜80重量%、より好ましくは10〜50重量%、特に15〜35重量%である。なお、飽和していないアルカリ金属ケイ酸塩溶液を使用することが好ましい。このような溶液は、飽和アルカリ金属ケイ酸塩溶液に水を加えて得られる。
【0032】
金属カルボキシレートの水溶液として、一般式(RCOO)xMeで表される触媒活性な金属カルボン酸塩の水溶液を使用することができる。式中、Rは、1〜30個の炭素原子をもつ脂肪族、脂環式または芳香族炭化水素であり、好ましくは1〜15個の炭素原子をもつ脂肪族炭化水素、特に1〜10個の炭素原子をもつ脂肪族炭化水素である。Xは、2〜6の整数であり、金属の酸化状態に相当する。Meは、触媒活性な金属残基、例えばスズ、亜鉛またはビスマスであり、好ましくは酸化状態がII、III、VIまたはVである。例えば、酢酸スズ(II)、オクタン酸スズ(II)、エチルヘキサン酸スズ(II)、ラウリン酸(II)、またジブチル錫ジアセテートやジブチル錫ジラウレート、−ジブチル錫マレエート、ジオクチル錫ジアセテートなどの有機カルボン酸のジアルキルスズ(IV)塩、ネオデカン酸ビスマス(III)、2−エチルヘキサン酸ビスマス、オクタン酸ビスマス、またはこれらの混合物を、カルボン酸金属として使用できる。
【0033】
アミン系触媒の水溶液として使用可能なのは、例えば、1,3,5−トリス(3−ジメチルアミノプロピル)ヘキサヒドロ−s−トリアジン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、1,4−エチレンピペリジン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデス−7−エン、1−ジメチルアミノ−2−アミノ−2−メチルプロパン、2−(2−ジメチルアミノエトキシエチル)−2−アザノルボルナン、2−(2−ヒドロキシエトキシエチル)−2−アザノルボルナン、2−(2−ヒドロキシエチル)−2−アザノルボルナン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノエチル)フェノール、2−ジメチルアミノエチル3−ジメチルアミノプロピルエーテル、2−エチル−2−アザノルボルナン、2−メチル−1,4−ジアザビシクロオクタン、2−メチル−2−アザノルボルナン、3−ジメチルアミノイソプロピルジイソプロパノールアミン、ビス(2−エチル−2−アザノルボルニル)エーテル、ビス(ジメチル(アミノ−n−プロピル)メチルアミン、ビス(ジメチルアミノ−エチル)エーテル、ビス(ジメチルアミノプロピル)−2−ヒドロキシエチルアミン、ビス(ジメチルアミノプロピル)−2−ヒドロキシプロピルアミン、ビス(N,N−ジメチル−3−アミノプロピル)アミン、シクロヘキシルモルホリン、シクロヘキシルピペラジン、ジ(2−ヒドロキシエチル)−シクロヘキシルアミン、ジエタノールアミン、ジメチルアミノメチル−メトキシエチルメチルアミン、ジメチルアミノプロピルアミン、ジメチルベンジルアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、ジメチルドデシルアミン、ジメチルエタノールアミン、ヘキサメチルトリエチレンテトラミン、ヘキサメチルトリプロピルテトラミン、メチルヒドロキシエチルピペラジン、N,N,N,N,N−ペンタメチルジエチレントリアミン、N,N,N,N−テトラメチル−1,3−ブタンジアミン、N,N,N,N−テトラメチル−1,3−プロパンジアミン、N,N,N,N−テトラメチル−4,4’−ジアミノシクロヘキシルメタン、N,N,N,N−テトラメチルエチレンジアミン;N,N,N,N−テトラメチル−n−ヘキシルジアミン、N,N−ジメチルアミノエチルN−メチル−N−ヒドロキシエチルアミノエチルエーテル、N,N−ビス−(3−アミノプロピル)エチレンジアミン、N,N−ビス−(3−ジメチルアミノプロピル)アミノ−2−プロパノールアミン、N,N−ジメチルアミノエトキシエタノール、N,N−ジメチルアミノエチルモルホリン、N,N−ジメチルアミノエチル−N−メチルエタノールアミン、N,N−ジメチルピペラジン、ビス(N−モルホリノエチル)エーテル、N−セチル−N,N−ジメチルアミン、N−ココモルホリン、N−エチルモルホリン、N−ホルミル−N,N−ジメチルブチレンジアミン、N−ヒドロキシアルキル−四級アンモニウムカルボキシレート、N−メトキシエチルモルホリン、N−メチル−ジシクロヘキシルアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−メチルイミダゾール、N−メチルモルホリン、N−メチル−N−(2−ジメチルアミノ)エチルピペラジン、β−ジメチルアミノ−N,N−ジメチル−プロピオンアミド、トリエタノールアミン、トリエチルアミンの水溶液、または少なくとも2種のこれらのアミン系触媒を含む水溶液である。ビス(ジメチルアミノエチル)エーテル、ジメチルアミノプロピルアミン、ジメチルベンジルアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、ジメチルエタノールアミン、ビス(N−モルホリノエチル)エーテル、N−メチルジエタノールアミン、N−メチルイミダゾール、トリエタノールアミン、カリウムアセテート及び/又はトリエチルアミンを含む水溶液を触媒水溶液として使用することが好ましい。
【0034】
この触媒水溶液が金属触媒またはアミン系触媒を含む場合、これらは、触媒水溶液中に、触媒水溶液の総重量に対して、合計濃度として0〜25重量%で、より好ましくは0.01〜25重量%、特に好ましくは0.05〜5重量%、特に0.1〜1重量%で含まれていることが好ましい。これは、例えば温度とポリウレタン接着剤中にすでに存在する触媒が、ポリウレタン接着剤の十分な反応性を保証するなら、本発明の触媒水溶液が触媒を含まなくてもよいことを意味する。
【0035】
触媒水溶液の湿気硬化型ポリウレタン接着剤に対する重量比は、通常1:2〜5:1であり、好ましくは1:1〜2:1である。これは、接着される熱成形可能な硬質ポリウレタンフォームの表面積の1m2あたりの塗布量の10〜150gに相当する。
【0036】
本発明の複合部品の製造において、第一に投入するのは、通常熱成形可能な硬質ポリウレタンフォームである。次いで、この発泡体の片面または好ましくは両面に、湿気硬化型ポリウレタン接着剤を塗布し、アルカリ金属ケイ酸塩溶液を噴霧する。次いで、このライニング材料を貼り付け、この複合物を金型中高温で、好ましくは60〜180℃で、より好ましくは100〜150℃で成型し、この湿気硬化型ポリウレタン接着剤を硬化させる。好ましい比率が守られれば、この加工により、熱成形可能な硬質ポリウレタンフォームの解放気孔性を損なうことなく、湿気硬化型ポリウレタン接着剤の発泡成形が行われる。
【0037】
本発明はまた、本発明の方法で得られる複合部品を提供する。
【0038】
本発明の複合部品は、好ましくは陸上、水上、また大気中の車両内の装備品として、より好ましくは自動車の装備品、特に天井内張りとして使用される。
【0039】
本発明の方法は、既存の生産ラインで実施可能である。この湿気硬化型ポリウレタン接着剤中に触媒をほとんどあるいはまったく含まないため、この湿気硬化型ポリウレタンプレポリマー接着剤は、長期の貯蔵安定性を有し、室温またはやや高温で長期の加工寿命を有する。
【0040】
驚くべきことに、本発明の方法が、好ましくも、熱成形された硬質ポリウレタンフォームの剛化をもたらすことが明らかとなった。また、本発明の方法により離型が速まり、製造設備のよりコスト効率的な利用が可能となる。
【0041】
以下、本発明を実施例により説明する。
【0042】
出発原料
ポリオール1:プロピレングリコールから製造したポリエーテルポリオール(OHN:30mg−KOH/g)で、主に第一級OH基をもつもの(組成:80%プロピレンオキシド、20%エチレンオキシド)
ポリオール2:メチルポリエチレングリコール(OHN:113mg−KOH/g)
イソシアネート:高分子状ジイソシアナトジフェニルメタン(PMDI)
触媒1:有機スズエステル
触媒2:ケイ酸ナトリウム、M2O:SiO2比率:SiO2:Na2O=3.3:1
阻害剤1:ジグリコールビスクロロホルメート(DIBIS)
阻害剤2:オルトリン酸、85%
【実施例】
【0043】
ポリウレタン接着剤の調製:
70重量部のPMDIと0.01重量部の阻害剤1を攪拌槽に投入し、この初期混合物を撹拌下80℃で加熱した。ここに、29.6重量部の、ポリオール1とポリオール2の混合物(重量比1:2)を添加した。添加終了後、さらに120分間攪拌し、25℃に冷却し、排出した。得られたポリウレタンプレポリマーのNCO含量と粘度は、それぞれ21%と500mPasであった。次いで、0.02重量部の阻害剤1と0.03重量部の阻害剤2を添加した。
【0044】
ポリウレタン接着剤からの発泡体の調整
91.8重量部の上記ポリウレタン接着剤と8.2重量部の触媒2水溶液(50%強度)を相互に混合して反応混合物を反応させて、ポリウレタンフォームを得た。このようにして、連続気泡で大きな気泡が発泡体が得られた。
【0045】
比較例:
ポリウレタン接着剤の調整
実施例の方法を繰り返した。なお、0.2部の触媒1をさらに加えた。
【0046】
ポリウレタン接着剤からの発泡体の調整
91.8重量部の比較例のポリウレタン接着剤を8.2重量部の水と混合して反応混合物を反応させ、ポリウレタンフォームを得た。このようにして、連続気泡で粗大な気泡の発泡体が得られた。
【0047】
実施例と比較例のポリウレタンフォーム調整用の反応混合物の反応性と、実施例と比較例のポリウレタン接着剤の粘度と水浴上で55℃で二時間攪拌した後の粘度上昇を表1にまとめて示した。
【0048】
【表1】

【0049】
この表は、実施例の発泡体が、所望の開放された大きな気泡構造をもち、反応速度が速いことを示している。開始時間と硬化時間の延長と上昇時間の短縮の組み合わせの結果、
加工特性の改善とサイクルタイムの短縮が得られる。また、本発明のポリウレタン接着剤は、塗布前の条件下で極めて優れた安定性(ロール安定性とよぶ)を示した。なお、これは、水浴上で55℃で二時間の攪拌でシミュレーションした。
【0050】
この湿気硬化型ポリウレタン接着剤により、また本発明の触媒(実施例)と比較例の触媒を用いて、天井内張りを生産する。この層構成は次のとおりである。
【0051】
1.不織布、190g/m2、フィティサ(1.1mm)
2.マットグラス繊維、100±10g/m2、オーウェンスコーニングベトロテックス
3.水、25g/m2
4.接着剤、100g/m2
5.発泡体、RG20エラストフレックスE3943/120、10.6mm
6.接着剤、100g/m2
7.水、25g/m2
8.マットグラス繊維、100±10g/m2、オーウェンスコーニングベトロテックス
9.裏面がLDPEであるPET不織布(45g/m2のPET繊維+15g/m2のLD PE)、フィティサ(0.25mm)
【0052】
この材料を、130℃の金型中で圧縮成形にかけて、厚みを12mmとし、得られた天井内張りの剛性を、ASTM−D790−J949に準じて測定した。表2に、得られた天井内張りの機械的性質を示す。
【0053】
【表2】

【0054】
実施例の完全な天井内張りの剛性(9.6N/mm2)と貯蔵弾性率(5881kPa)は、比較例の天井内張りより大きい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱成形可能な硬質ポリウレタンフォームとライニング材料から複合部品を製造する方法であって、熱成形可能なポリウレタンフォームを導入し、これをライニング材料に接着させることからなり、用いる接着剤が触媒水溶液と接触して硬化する湿気硬化型ポリウレタン接着剤である方法。
【請求項2】
上記触媒水溶液がアルカリ金属ケイ酸塩水溶液である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
用いるアルカリ金属ケイ酸塩がケイ酸ナトリウムである請求項2に記載の方法。
【請求項4】
上記アルカリ金属ケイ酸水塩溶液が0.1〜80重量%のアルカリ金属ケイ酸塩を含む請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
用いる触媒水溶液が金属カルボキシレート及び/又はアミン系触媒の水溶液である請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
上記金属カルボキシレート及び/又はアミン系触媒の触媒水溶液中の濃度が0.1〜25重量%である請求項1に記載の方法。
【請求項7】
上記触媒水溶液が、10〜150g/m2−熱成形可能な硬質ポリウレタンフォームの量で塗布される請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
上記湿気硬化型ポリウレタン接着剤が、湿気硬化型ポリウレタン接着剤の総重量に対して少なくとも80重量%の、化学量論的に過剰の芳香族イソシアネートを、少なくとも二個のイソシアネート反応性基を有する比較的高分子量の化合物と、必要なら一個のみのイソシアネート反応性基をもつ化合物と、さらに必要なら鎖延長剤及び/又は架橋剤とを混合させて得られるイソシアネート末端プレポリマーを含む請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
上記イソシアネート末端プレポリマーのNCO含量が5〜30重量%である請求項8に記載の方法。
【請求項10】
上記接着剤の硬化に、アルカリ金属ケイ酸塩水溶液以外の触媒が使われない請求項2〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
上記湿気硬化型ポリウレタン接着剤が、20〜300g/m2−熱成形可能な硬質ポリウレタンフォームの量で使用される請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
上記熱成形可能なポリウレタンフォームと上記ライニング材料と上記湿気硬化型ポリウレタン接着剤が、金型温度が60〜180℃である金型中で貼り付けられる請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法で得られる複合部品。
【請求項14】
請求項13に記載の複合部品の車両中での利用。

【公表番号】特表2012−528743(P2012−528743A)
【公表日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−513603(P2012−513603)
【出願日】平成22年6月2日(2010.6.2)
【国際出願番号】PCT/EP2010/057675
【国際公開番号】WO2010/139708
【国際公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】