説明

塗工ライナー及びそれを用いた段ボールシート

【課題】本発明は、塗工ライナー及びそのライナーを用いた段ボールシートに関する。特に、水性グラビア印刷の網点再現性、均一性に優れ、加工適性にも優れた美粧段ボール用のライナーとして用いることが出来るものである。
【解決手段】少なくとも2層以上の多層抄きで構成される原紙の片面に顔料と接着剤とを含有する塗工層を設けてなる塗工ライナーにおいて、該塗工層中の顔料として焼成カオリン及びタルクを含有し、且つ塗工後にカレンダーで平滑化処理し、該塗工面の王研式平滑度が50〜1000秒の範囲であることを特徴とする塗工ライナー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗工ライナー及びそれを用いた段ボールシートに関する。特に、水性グラビア印刷の網点再現性、均一性に優れ、加工適性にも優れた美粧段ボール用のライナーとして用いることが出来るものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、ライナーは2〜9層程度の多層抄きされた厚紙で、2層の場合は裏層、3層以上の場合は中層にコスト及び省資源を目的として、脱墨されない古紙パルプが使用される。ライナーは中芯原紙と組み合わせて段ボールシートに加工され、各種包装箱等に使用されるが、近年段ボール箱の機能が、商品を保管・輸送などの流通過程で受ける物理的な力から守るだけでなく、商品が詰められたまま展示、あるいはセリ等に見られるように商品の顔としての機能を付加するために多色印刷が多く行われようになった。通常のクラフト色以外に、見栄えのある目立つ多色印刷が行われる美粧ライナーと呼ばれるライナーは、表層に晒パルプや上白古紙パルプを配合したり、白色顔料塗料を塗工し、表面の白色度を高めるたりすることによって製造されていた。また、表層のみの対策はコストがかかることから、表下層(表層の直下の層)にもある程度白色度のあるパルプを用いて、中層の色を隠蔽する作用を持たせることもある。この様な白色度の高い外観を持ったものは、白紙面だけでなく、これに印刷した場合、印刷面が美麗かつ鮮やかに見える効果を与える。このため、この種のライナーを使用して、カラー印刷を施した段ボ−ル箱は、人の目を引く効果が高く、更に、内容物を忠実に表するために、内容物の優良性を強く訴えることが出来る優れた面がある。近年、量販店を中心に、店頭に段ボ−ル箱に製品を詰めたまま販売するということがよく見受けられるようになって来ており、この点からも印刷面が美麗で鮮やかなライナーが求められている。
【0003】
このため、ライナー表面の白色度と色相を所定の範囲に調整することにより、白紙外観、印刷外観も深みのある落ち着いた視覚効果を与えるライナーが開示されている。(特許文献1参照)また、顔料とバインダーを主成分として含有する塗工層により、白色度と色相及び光沢を特定範囲に調整することにより白紙面では落ち着いた視覚効果を与えるとともに、印刷の文字が読み易く、さらにカラー印刷するとインキ発色性、印刷光沢が良好で印刷面が鮮明な美粧ライナーが開示されている(特許文献2参照)。しかしながら、これらの開示はいずれもライナーとしての色相を規定しているだけで、グラビア印刷における網点再現性を十分満足させる提案になっていない。ライナーの表層に顔料とバインダーを含む塗被層を設け、耐油度(キット数)を12級以上としたライナーが開示されている(特許文献3参照)。このライナーは耐油度レベルが高すぎ、優れた水性のグラビア印刷の網点再現性は得られない。
【0004】
さらに、白紙光沢および印刷光沢に優れた塗工ライナーを得るために、塗被層面の平滑度特性として、加圧型平滑度計で加圧条件5kgf/cmで測定したときの平滑度が3.0μm以下で、20kgf/cmで測定した平滑度との比が0.3〜0.8である塗工ライナーが提案されている(特許文献4参照)。この提案は、フレキソ印刷においてモトリングの発生の無いことを目的としており、水性グラビア印刷において、規定の平滑性では塗被層のインキ転移性が劣り、網点再現性として不十分なレベルでしか得られない。
【0005】
顔料塗工層にアルキルケテンダイマーを主成分とするゼータ電位が−5mV〜5mVのサイズ剤を、顔料100質量部対比、アルキルケテンダイマー成分で0.2〜0.8質量部配合することにより、グラビアの網点再現性とオフセット印刷時の耐水性改善、印刷加工適性、表面加工適性の優れた塗工紙が提案されている(特許文献5参照)。この提案では、水性のグラビア印刷については、何も示唆されておらず、また、使用する顔料によっては上記の配合部数であっても塗料粘度が上昇する恐れがあり、安定的に生産するのが困難である。
【0006】
グラビア印刷における網点の欠落が少なく、且つ白紙光沢及び印刷光沢に優れる塗工ライナーとして、顔料と接着剤を主成分とする水性組成物をライナー原紙に塗工する際のその水性組成物中の顔料組成として(a)焼成カオリンが20〜70重量部、(b)構造化カオリンおよび/またはデラミネーテッドカオリンが15〜77重量部、および(c)有機ピグメントが3〜20重量部含有せしめられ、かつ(a)+(b)+(c)の合計が70重量部以上である塗工ライナーが開示されている(特許文献6参照)。しかしながら、この提案は、有機ピグメントがインキ中の溶剤を吸収し膨潤するとの記載があることから、油性のグラビアを対象としており、水性と油性では、その求める品質に大きな差があり、水性のグラビア印刷に対して、優れた効果を発揮しない。
【0007】
オフセット及びグラビア印刷に共用可能で、いずれの印刷適性にも優れた塗工白板紙として、2層の塗被層を有し、下塗り層の顔料として、焼成クレー、構造化カオリンおよびデラミネーテッドクレーから選ばれる少なくとも1種の顔料を全顔料あたり固形分対比で30〜70質量%含有し、接着剤としてガラス転移温度が−50〜−5℃の重合体ラテックスを使用し、上塗り層の接着剤としてガラス転移温度が0℃以上のラテックスを使用することが提案されている。これは、両印刷方式に対応するため、下塗り層にクッション性を持たせてグラビア印刷時の版との密着性を促進させ、上塗り層にオフセットのパイリングを防ぐこと機能を持たせることを特徴としている(特許文献7参照)。しかしながら、水性のグラビア印刷についての記載は一切なく、水性グラビア印刷においては、油性と比較して塗工層にインキが吸収しがたく、この提案では、水性グラビア印刷に対して優れた品質が得られない。
【0008】
【特許文献1】特開2001−146697号公報
【特許文献2】特開2002−317395号公報
【特許文献3】特開2007−154360号公報
【特許文献4】特開2000−314095号公報
【特許文献5】特開平11−269798号公報
【特許文献6】特開平11−279989号公報
【特許文献7】特開2002−363887号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、水性グラビア印刷に対して優れた網点再現性、均一性を有し、加工適性にも優れた塗工ライナーおよびそれを用いた段ボールシートを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、少なくとも2層以上の多層抄きで構成される原紙の片面に顔料と接着剤とを含有する塗工層を設けてなる塗工ライナーにおいて、該塗工層中の顔料として焼成カオリン及びタルクを含有し、且つ塗工後にカレンダーで平滑化処理し、該塗工面の王研式平滑度が50〜1000秒の範囲である塗工ライナーである。
前記塗工層中の焼成カオリンの含有量が顔料100質量部に対して、30〜95質量部であることが好ましい。
前記塗工層中のタルクの含有量が顔料100質量部に対して5〜50質量部であることが好ましい。
前記塗工層中の接着剤の含有量が顔料100質量部に対して10〜50質量部であることが好ましい。
前記塗工ライナーを用いた段ボールシートであることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、水性グラビア印刷の網点再現性、均一性に優れ、加工適性にも優れた塗工ライナーおよびそれを用いた段ボールを提供することが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
一般に、水性グラビア印刷は、印刷面の吸水性度合いによりインキの浸み込みが異なり、インキの発色性、印刷均一性および網点再現性に大いに影響する。このため吸水性およびインキのビヒクルを抑制するために適正な顔料を含む塗工層を設けることにある。水性グラビア印刷の吸水性の特性を満足させる検討を重ねた結果、塗工層に焼成カオリンとタルクを含有させ、その塗工層をカレンダー処理して、特定の表面平滑度に調整することにより、極めて発色性の優れ、印刷均一性および網点再現性のある印刷効果が得られることを見出した。
【0013】
焼成カオリンとタルクを塗工層に含有すると水性グラビアの網点再現性が向上する理由は必ずしも明らかではないが、焼成カオリンは、天然に産するカオリンをキルンなどで約800℃程度の高温処理することにより、カオリンの結晶構造中に存在する結晶水を放出させたもので、結晶構造が崩壊して非晶質な構造となり、不透明性、多孔質でインキ吸収性に優れた性質を持っている。このことから、焼成カオリンのもつ空隙性によって、顔料中にインキを取り込み、またインキ中の溶剤が均一に吸収されて、インキの発色性と均一性が得られ、網点の再現性も得られるものと考える。ただし、焼成カオリンは、一般の顔料と比べると、硬く、塗工層に含有した場合、塗工層面の摩擦抵抗を高めてしまう。一方、一般的に製紙用のタルクは、扁平顔料で被覆性に優れ、インキの受容性にも優れた性質を持ち、セディグラフによって測定した平均粒径が1〜5μm、クロライト含有率は0〜90%であるが、中でもクロライト含有率5〜50%のタルクの使用は、顔料の分散性と加工時の汚れを軽減させる効果のバランスがとれているため、より好ましい。さらに、タルクが塗工層に存在すると摩擦抵抗を低減させる性質を有し、塗工層表面が滑りやすくなる。このように焼成カオリンとタルクが共存することで、焼成カオリンの多孔性による水性グラビアインキの吸水性とタルクの優れたインキ受容性を有し、塗工層表面の摩擦抵抗性をバランスよく調整される。しかしながら、焼成カオリンはその嵩高性、タルクは扁平性と粒子径が大きいために、いずれの顔料とも塗工後の平滑性は良くないので、塗工後にカレンダー処理を行い、塗工層表面を平滑化させることが必須である。このカレンダー処理により、グラビア版との密着性を向上させ、優れた水性グラビア印刷の網点再現性を発現できる。
【0014】
優れた水性グラビア印刷の網点再現性を発現するには、カレンダー処理後の塗工層表面の王研式平滑度が50〜1000秒の範囲が必要である。平滑度が50秒未満であると、水性グラビアの網点再現性に劣り、逆に1000秒を超えると、グラビア版との密着性は優れるが、カレンダー処理条件が強すぎて、ライナーの通気性が損なわれ、水分バランスが崩れてカールが発生したり、段ボールシートを作成する際、ライナーと中芯を加熱、加圧接着する工程で、接着不良を起こしたりする虞が生じる。
【0015】
ここで、塗工層中の焼成カオリンの含有量は、顔料100質量部当たり30〜95質量部が好ましく、より好ましくは60〜90質量部である。タルクの含有量としては、顔料100質量部当たり5〜50質量部が好ましい。クロライト含有率により、さらに好ましくは15〜40質量部である。タルクを含有した塗工層は上述の通り、表面を滑りやすくする性質があるので、段ボールシート加工時や製函加工時にライナー表面同士や機械との接触時に発生する汚れを低減する働きがあり、加工適性にも優れた性質を発現する。
【0016】
本発明において、焼成カオリンとタルクを含有する塗料の塗工層は、単層であっても、複層であっても差し支えないが、全体の塗工量は2〜10g/m2が好ましい。塗工量がこの範囲であると、経済性にすぐれ、且つ網点再現性の優れたライナーが得られる。より好ましい塗工量としては、3〜7g/m2ある。
【0017】
ライナー原紙表層に塗工する塗料の顔料で焼成カオリンとタルク以外の顔料としては、製紙分野で通常使用されている顔料、例えば、クレー、構造化カオリン、エンジニアードカオリン、水酸化アルミニウム、二酸化チタン、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化亜鉛、サチンホワイト、硫酸カルシウム等の一種または二種以上を使用することができる。なお、焼成カオリンおよび、タルクを除く顔料は、水性グラビアインキの吸収性の観点から、本発明の所望する効果を阻害しない範囲で使用するのが望ましいが、プラスチックピグメント等の有機顔料はインキ吸収性が劣るので好ましくない。
【0018】
さらに、ライナー原紙表層に塗工する塗料に、保水剤を添加すると塗工適性が向上するので好ましい。添加する保水剤としては、製紙分野で一般にCMCと呼ばれているカルボキシメチルセルロースのナトリウム塩、ヒドロキシエチルセルロース、合成保水剤と呼ばれている多価カルボン剤アクリル系共重合体やメタクリル酸とアクリル酸エステルの共重合体等が挙げられる。その中でもカルボキシメチルセルロースのナトリウム塩は塗工面が
均一に塗工されやすく、特にエーテル化度0.60〜1.00、重合度600〜1200
の範囲のものが取り扱い性に良好な点で好ましい。
【0019】
本発明の塗料中の接着剤としては、特に限定するものではなく、一般の塗被紙製造分野
で使用されている公知の接着剤が適宜使用される。例えば、スチレン−ブタジエン共重合
体ラテックス、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体ラテックス、スチレンーメチルメタクリレートーブタジエン共重合体ラテックス等の共役ジエン系共重合体ラテックス、アクリル酸エステルおよび/またはメタクリル酸エステルの重合体または共重合体ラテックス等のアクリル系重合体ラテックス、エチレン−酢酸ビニル重合体ラテックス等のビニル系重合体ラテックス、あるいはこれらの各種重合体ラテックスをカルボキシル基等の官能基含有単量体で変性した重合体または共重合体ラテックス等の水分散性接着剤、ポリビニルアルコール、オレフィン−無水マレイン酸樹脂等の合成樹脂系接着剤、酸化澱粉、陽性澱粉、エステル化澱粉、デキストリン等の澱粉類が例示される。これら水分散性および/または水溶性接着剤から1種または2種以上を適宜選択して使用できる。接着剤は、顔料100質量部に対して、10〜50質量部の使用が好ましい。さらに好ましくは15〜40質量部である。因みに、接着剤の含有量が10質量部未満であれば塗工層の強度が保てない。50質量部を超えると塗工層中における顔料の比率が小さくなるため、水性グラビアインキの吸収性が劣り、網点の再現性にも悪い影響を及ぼす。
【0020】
網点再現性、印刷均一性の仕上がりに関しての効果を阻害しない範囲において、本発明使用される塗料中に、表面サイズ剤、防滑剤、染料等の添加剤を併用してもよい。
【0021】
本発明の塗料をライナー原紙に塗工するに当たっては、塗被紙製造に一般に使用される塗工装置が使用でき、例えば、ブレードコーター、エアーナイフコーター、ロールコーター、リバースロールコーター、バーコーター、カーテンコーター、ダイスロットコーター、グラビアコーター、チャンプレックスコーター、2ロールサイズプレスコーター、ゲートロールサイズプレスコーター、フィルムメタリングサイズプレスコーター等の塗工装置を使用して、オンマシン方式またはオフマシン方式でライナー原紙の表面に、単層または多層で塗工される。塗工時の顔料組成物の固形分濃度は、10〜75質量%の範囲で選ぶことができるが、塗工量が2〜10g/m2の範囲に留まるよう、また、塗工するコーターを考慮し、適宜調整することが好ましい。
【0022】
本発明で塗工された塗工ライナーは、弾性ロールにコットンロールを用いたスーパーカレンダーや弾性ロールに合成樹脂ロールを用いたソフトニップ等のカレンダー装置により平滑化処理を行うことが必要である。ソフトニップカレンダーは合成樹脂ロール表面の耐熱温度がコットンロールに比べて高く設定することが可能で、対となる金属ロールの温度を高温(50〜150℃)で処理することが出来、同一の平滑性を目標とした場合、スーパーカレンダーに比べて処理線圧を低く設定できるので好ましい態様である。採用するカレンダーによって、処理条件は左右されるが、王研式平滑度で50〜1000秒の範囲となるよう、線圧として概ね10〜400kN/m、より好ましくは10〜200kN/mの範囲で処理される。
【0023】
本発明で使用されるライナー原紙を構成するパルプとしては特に限定するものではなく、例えば木材パルプである針葉樹未晒クラフトパルプ、広葉樹未晒クラフトパルプ等の未晒クラフトパルプ、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)等の晒クラフトパルプ、サーモメカニカルパルプ、グランドウッドパルプ、リファイニンググランドウッドパルプ等の機械パルプ、麻、竹、ワラ、バガス等の非木材パルプ及び雑誌古紙、チラシ古紙、新聞古紙、オフィス古紙、情報用紙古紙、段ボール古紙、紙器古紙等の古紙パルプ等、公知の種々のパルプを一種、又は二種以上を適宜混合して使用される。これらのパルプを使用する際には、フリーネスを200〜500mlに調整することが望ましい。
【0024】
内添薬品も必要に応じてパルプスラリー中に添加でき、例えば、硫酸バンド、ロジン等のサイズ剤、ポリアミド、澱粉等の紙力増強剤、濾水歩留まり向上剤、ポリアミドポリアミンエピクロヒドリン等の耐水化剤、染料等が使用される。例示したパルプ、内添薬品を使用し、多層に抄き合わせできる公知の長網フォーマ、円網フォーマを組み合わせた抄紙機により、二層以上に抄き合わされた原紙が使用される。抄き合わされる際の各層間に澱粉等の接着剤を噴霧、または塗布することにより、各層間の強度を強めることも可能である。
【0025】
ライナー原紙表面の白色度については、40〜80%が好ましい。原紙の白色度が高ければ高いほど、塗工後の目視白さが向上し、グラビア印刷の有り無しの部分のコントラストが大きくなるので印刷仕上がりが向上する。原紙の白色度を上げるには、使用するパルプを白くする必要があり、経済的な負担が増える。印刷仕上がりと経済性のバランスを考慮すると、原紙白色度は50〜70%の範囲がより好ましい。なお、塗工する原紙の表層には、塗料の染み込みを抑えるため、サイズ剤を添加することが望ましい。上記原紙に塗工された後の塗工ライナーの白色度としては、印刷仕上がりの観点から50〜85%であることが好ましい。
【0026】
上記の本発明により得られた塗工ライナーは、少なくとも一方の最外面に備えた段ボール用ライナーとして用いることができ、本発明の段ボールシートが提供される。段ボールシートとしては、中芯の片面にのみライナーが貼合された片面段ボールシート、中芯の両面にライナーが貼合された両面段ボールシート、中芯/ライナーの積層体が複数段設けられた複数段の段ボールシートがあるが、本発明はいずれの段ボールシートにも適用可能である。
【0027】
ライナーと共に段ボールを構成する波状部材の中芯としては特に制限はなく、一般の段ボールに使用されているものが使用できる。原料パルプとしては、セミケミカルパルプ、ケミグラウンドパルプ、段ボール古紙パルプ、雑誌古紙パルプ、合成繊維等が使用でき、中でも、資源保護の観点から、段ボール古紙パルプや雑誌古紙パルプ等の古紙パルプを多く用いることが好ましい。中芯は積層紙であっても良く、さらには層間に合成樹脂接着剤層を有する積層紙であっても良い。
【0028】
本発明の段ボールは、従来公知の段ボールの製造方法をそのまま適用でき、例えば、中
芯とライナーとを、接着性物質を介して貼合するコルゲーター処理を経て製造することができる。接着性物質としては、澱粉糊や合成樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエステル、エチレン−不飽和カルボン酸共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、ポリ酢酸ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリアクリル酸エステル系共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体等)等が挙げられる。
【0029】
段ボールシートの具体的な接着方法としては、(1)中芯又はライナーの表面に、押出ラミネートや合成樹脂エマルジョンの塗布等により接着剤層を形成してから、これらを重ね合わせ、加圧及び加熱して接着する方法、(2)中芯/ライナー間に合成樹脂フィルムを介在させ、これを加圧及び加熱して接着する方法、(3)中芯/ライナー間に合成樹脂のエマルジョンや溶液等の接着剤を介在させ、これを加圧及び加熱して接着する方法等が挙げられる。なお、(2)の方法においては、あらかじめ成形された合成樹脂フィルムを繰り出し、中芯/ライナー間に供給することもできるし、合成樹脂フィルムを溶融押出成形しながら、中芯/ライナー間に供給することもできる。
【0030】
上記コルゲーター処理を1回実施することで、片面段ボールが製造され、複数回繰り返し実施することで、両面段ボールや複数段の段ボールが製造される。両面段ボールは、例えば、中芯とライナーとを加熱加圧ロールで貼合し片面段ボールとするシングルフェーサ(SF)と、SFで得られた片面段ボールの中芯側に更にライナーを重ね、加圧しながら熱盤上を走行させ貼合するダブルフェーサ(DF)とを有するコルゲーターを用いて製造することができる。加熱加圧条件は特に制限はないが、例えば、SFの加熱温度150〜200℃、線圧20〜40kN/m、加圧時間0.01〜0.20秒、DFの加熱温度150〜200℃、線圧0.1〜1.0kN/m、加圧時間2〜7秒等が好ましい。
【実施例】
【0031】
以下に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、勿論、本発明はそれらの範囲に限定されるものでない。なお、例中の「部」、「%」は特に断わらない限り、質量部、
質量%を示す。
【0032】
実施例1
表層のパルプとして、NBKP15%、ケント古紙85%で米坪を30g/m、表下層、として、ケント古紙100%、中層、裏下層のパルプとして、新聞古紙60%、雑誌古紙40%、裏層のパルプとして、段ボール古紙100%で米坪をそれぞれ35g/mを使用して5層に抄き合わせ、米坪170g/m2のライナー原紙を得た。なお、表層には、紙力剤(商品名:ポリストロンP−1222、荒川化学工業社製)1.3%、硫酸バンド3%、サイズ剤(商品名:サイズパインSPN−815、荒川化学工業社製)2.5%を添加した。また、表下層、中層、裏下層、裏層には、紙力剤(商品名:ポリストロンP−1222、前出)0.1%添加した。
【0033】
焼成カオリン(商品名:アンシレックス93、BASF社製)70部、タルク(商品名:ミクロタッチ、日本ミストロン社製)30部、接着剤(商品名:B−1535、旭化成社製)を28部、合成保水剤(商品名:SN−924、サンノプコ社製)0.4部(いずれも固形分換算)からなる塗料を、濃度40%となるよう調製した。調製した塗料を上記の170g/m2のライナー原紙にバーコーターで乾燥質量が6g/m2(固形分)となるように塗工、乾燥後、弾性ロールと金属ロールで構成されたカレンダーを用いて、2Nip、金属ロールの温度を70℃、線圧がそれぞれ25kN/m、30kN/mのカレンダー条件でカレンダー処理をして塗工ライナーを得た。
【0034】
実施例2
実施例1において、焼成カオリン(商品名:アンシレックス93、前出)50部、タルク(商品名:ミクロタッチ、前出)25部、重質炭酸カルシウム(商品名:FMT90、ファイマテック社製)25部、カレンダー条件を3Nip、金属ロールの温度を70℃、および線圧を全て20kN/mとした以外は実施例1と同様な方法で塗工ライナーを得た。
【0035】
実施例3
実施例1において、裏層のパルプを新聞古紙60%、雑誌古紙40%とし、カレンダーを1ニップ、金属ロールの温度を70℃、および線圧を50kN/mとした以外は実施例1と同様な方法で塗工ライナーを得た。
【0036】
実施例4
実施例1において、焼成カオリン(商品名:アンシレックス93、前出)20部、タルク(商品名:ミクロタッチ、前出)60部、重炭(商品名:FMT90、ファイマテック社製)5部、二酸化チタン(商品名:KA−100、COSMO CHEMICAL社製)5部、カオリン(商品名:コンツァー1500、イメリス社製)10部、カレンダー条件を2Nip、金属ロールの温度を50℃、および線圧を全て50kN/mとした以外は、実施例1と同様な方法で塗工ライナーを得た。
【0037】
実施例5
実施例1において、表層にケント古紙80%、LBKP20%、表下層のパルプを段ボール古紙50%、新聞古紙50%とし、塗料としては、焼成カオリン(商品名:アンシレックス、前出)90部、タルク(商品名:ミクロタッチ、前出)10部、接着剤(商品名:B−1535、前出)29部、カルボキシメチルセルロース(商品名:BSH、第一工業製薬社製)0.8部(いずれも固形分換算)からなる塗料を、濃度30%となるよう調製した。調製した塗料を実施例1のライナー原紙にバーコーターで5.0g/m2となるように塗工、乾燥後、1Nip、金属ロールの温度を50℃、および線圧を50kN/mの条件でカレンダー処理をして塗工ライナーを得た。
【0038】
比較例1
実施例1において、焼成カオリン(商品名:アンシレックス93、前出)100部とした以外は、実施例1と同様にして塗工ライナーを得た。
【0039】
比較例2
実施例1において、タルク(商品名:ミクロタッチ、前出)100部とした以外は、実施例1と同様にして塗工ライナーを得た。
【0040】
比較例3
実施例1で使用したライナー原紙に表面サイズ剤(商品名PM385、荒川化学工業社製)のみを0.2g/m塗布し、実施例1の条件でカレンダー処理した塗工ライナーを得た。
【0041】
比較例4
実施例1において、カオリン(商品名:コンツァー1500、前出)80部、二酸化チタン(商品名:KA−100、前出)20部とした以外は、実施例1と同様にして塗工ライナーを得た。
【0042】
比較例5
実施例1において、カレンダー処理をしないで塗工ライナーを得た。
【0043】
上記で得られた塗工ライナーについて、下記の評価方法で評価を行い、その結果を表1に示した。なお、本発明における印刷ライナーの測定及び評価については特に記載のない限り、23℃、50%RHの環境下で行った。
【0044】
(白色度)
白色度は分光白色度測色計(スガ試験機社製)を用い、JIS P 8148に準じて求めた。
【0045】
(平滑度)
JAPAN TAPPI No.5−2:2000に準じ、王研式平滑度計(ASAHI−SEIKO社製)を使用した。
【0046】
(グラビア印刷における網点再現性、均一性)
印刷局式グラビア印刷試験機(JAPAN TAPPI紙パルプ試験方法No24に準拠)で、インキは水性グラビア用インキ(商品名:DICセーフWHプロセス墨、DIC社製)を用い、グラビア印刷を行った後、網点の欠落の度合い、および均一性を目視評価した。
(網点再現性の評価)
◎:網点の欠落が全くない。
○:網点の形状が明らかに認められるが、一部欠損がある。
△:網点の形状が明らかに認められるが、欠損部が全体の半分以上ある。
×:網点の形状が認められない。
(均一性評価)
◎:インキの塗工面への転写が均一で、吸収ムラもない。
○:階調部分によっては、やや吸収ムラが認められる。
△:転写性がやや不均一で、吸収ムラも若干認められる。
×:転写不良で、吸収ムラも悪い。
【0047】
(加工時汚れ評価)
得られた塗工ライナーおよび非塗工ライナーをコルゲーターで中芯(商品名:S120、王子板紙社製)と裏ライナー(商品名:SF210、王子板紙社製)を使用して貼合し、Aフルート形態で段ボールシートを作成した。その後、製函工程を経て段ボールケースを作成した。貼合、製函工程における汚れは下記の基準で官能評価を行った。
○:ライナー表面に異物付着による汚れが全く見られない。
△:ライナー表面に異物付着による汚れがわずかに見られるが、実用上問題ないレ
ベルである。
×:ライナー表面に異物付着による汚れが著しくみられ、実用上問題があるレベル
である。
【0048】
【表1】

【0049】
表1から明らかなように、実施例1〜5は塗工層中に焼成カオリンとタルクを含有し、カレンダー処理で平滑化を行うことにより、グラビア印刷の網点再現性、印刷均一性に優れ、加工時の汚れ発生も見られない。実施例4は焼成カオリン量がやや少ないため、網点再現性、均一性が若干劣るものの、加工時に汚れが見られない。これに対して、比較例1は塗工層中にタルクが配合されていないため、加工時汚れが著しく発生している。また、比較例2は焼成カオリンが塗工層中に配合されていないため、グラビア印刷の網点再現性、均一性が劣っている。比較例3は顔料塗工層を設けていないため、網点再現性、均一性ともに劣っている。比較例4は焼成カオリン、タルクいずれも含んでいないため、グラビア印刷の均一性に劣り、比較例5はカレンダー処理をしていないため平滑度が低く、グラビア印刷版との密着性に劣り、網点再現性が劣る結果となっている。
以上の通り、本発明により水性グラビア印刷の網点再現性が良好で、印刷均一性に優れ、段ボールシート、段ボール箱の加工工程時に汚れによるトラブルの発生のない塗工ライナーおよびそれを用いた段ボールシートを提供することが可能となった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2層以上の多層抄きで構成される原紙の片面に顔料と接着剤とを含有する塗工層を設けてなる塗工ライナーにおいて、該塗工層中の顔料として焼成カオリン及びタルクを含有し、且つ塗工後にカレンダーで平滑化処理し、該塗工面の王研式平滑度が50〜1000秒の範囲であることを特徴とする塗工ライナー。
【請求項2】
前記塗工層中の焼成カオリンの含有量が顔料100質量部に対して30〜95質量部である請求項1記載の塗工ライナー。
【請求項3】
前記塗工層中のタルクの含有量が顔料100質量部に対して5〜50質量部である請求項1または2項記載の塗工ライナー。
【請求項4】
前記塗工層中の接着剤の含有量が顔料100質量部に対して10〜50質量部である請求項1〜3のいずれか1項記載の塗工ライナー。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項記載の塗工ライナーを用いた段ボールシート。

【公開番号】特開2010−65349(P2010−65349A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−233571(P2008−233571)
【出願日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【出願人】(000122298)王子製紙株式会社 (2,055)
【Fターム(参考)】