説明

塗工剤及びそれを用いた反射防止フィルム

【課題】本発明は、下層との密着性に優れた低屈折率層用塗工剤およびそれを用いた耐擦傷性に優れた反射防止フィルムを提供することを目的とする。
【解決手段】反射防止フィルムの低屈折率層を形成するための塗工剤において、該塗工剤がラジカル重合性化合物と、塗工剤の固形分中に0.5〜9.0重量%のエチレン性不飽和基を有する酸性リン酸エステルとを含有していることを特徴とする。更に、その塗工剤を用いた耐擦傷性に優れた反射防止フィルムを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LCDやPDP等のディスプレイの表面に用いられる反射防止フィルムに関
する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置(LCD)やプラズマディスプレイ(PDP)などのディスプレイにおいて、外光の反射によるコントラスト低下や像の映り込みを防止するために、一般的に反射防止フィルムがディスプレイの最表面に配置されている。そのためにディスプレイの表面を拭き掃除した際などに傷つかないように反射防止フィルムが耐擦傷性に優れていることが要求性能の一つとして挙げられている。
【0003】
反射防止フィルムの耐擦傷性の改善方法としては最外層の表面硬度を高くする方法が一般的である。しかし、最外層の表面硬度を高くするためには使用する塗工剤が制約されるため他の要求性能が犠牲になることが多く、全ての要求を十分に満たすような反射防止フィルムを作製することが困難であった。
【0004】
また、最外層とその隣接する下層との密着性を改良することで耐擦傷性を向上させる方法が提案されている。例えば、特許文献1には最外層である低屈折率層の下層として0.001〜0.030μmの中心線平均粗さ(Ra)を有する密着層を配して、密着性を改良し、耐擦傷性を向上させることが記載されている。また、特許文献2には、予め高屈折率層にコロナ処理などの物理処理を施した後、低屈折率層を形成することにより低屈折率層と高屈折率層との密着性を改良し、耐擦傷性を向上させることが記載されている。
【0005】
特許文献3には多官能(メタ)アクリレート100重量部、ウレタン(メタ)アクリレート5〜100重量部、及び、リン酸基含有(メタ)アクリレート10〜50重量部を含有するハードコート組成物を硬化させてなるハードコート層を用いることで、金属化合物膜の積層体などの反射防止層の密着性が改良され、耐擦傷性を向上することが記載されている。
【0006】
しかしながら、特許文献1−3は、いずれも低屈折率層の下層に処理を施すことまたは特定のものを用いることによって低屈折率層との密着性を改良して耐擦傷性を向上させるものであり、低屈折率層に用いる塗工剤を改良することで下層との密着性を改良して耐擦傷性を向上させたものはこれまでに提案されていなかった。
【0007】
【特許文献1】特開2002−311204号公報
【特許文献2】特開2002−361769号公報
【特許文献3】特開2003−335983号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、下層との密着性に優れた低屈折率層用塗工剤およびそれを用いた耐擦傷性に優れた反射防止フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち本発明は、
(1)反射防止フィルムの低屈折率層を形成するための塗工剤において、該塗工剤がラジカル重合性化合物と、塗工剤の固形分中に0.5〜9.0重量%のエチレン性不飽和基を有する酸性リン酸エステルとを含有していることを特徴とする塗工剤。
(2)塗工剤が、更に、無機微粒子を含有していることを特徴とする請求項1記載の塗工剤。
(3)ラジカル重合性化合物がアクリル系の紫外線硬化性モノマーであることを特徴とする請求項1又は2記載の塗工剤。
(4)透明基材フィルム/ハードコート層/中屈折率層/低屈折率層、透明基材フィルム/ハードコート層/高屈折率層/低屈折率層、透明基材フィルム/ハードコート層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層、透明基材フィルム/ハードコート層/低屈折率層のいずれかの構成を有する反射防止フィルムであって、低屈折率層が請求項1乃至3のいずれかに記載の塗工剤からなるものであることを特徴とする反射防止フィルム。
(5)低屈折率層の下層が表面処理されていることを特徴とする請求項4記載の反射防止フィルムである。
【発明の効果】
【0010】
本発明においては、エチレン性不飽和基を有する酸性リン酸エステルを含有している塗工剤を低屈折率層に用いることで、低屈折率層と該低屈折率層に隣接する下層との密着性が向上し、その結果耐擦傷性に優れた反射防止フィルムを得ることができる。
低屈折率層と下層との密着性が向上することは、エチレン性不飽和基を有する酸性リン酸エステルが低屈折率層中に共有結合で組み込まれるために低屈折率層自体の硬度が向上し、しかも、エチレン性不飽和基を有する酸性リン酸エステル内の水酸基と下層とが水素結合を形成するためと考えられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の低屈折率層を形成する塗工剤に用いるラジカル重合性化合物は、紫外線硬化及び電子線硬化などの電離放射線硬化性化合物または熱硬化性化合物を用いることができる。中でも電離放射線硬化性化合物は熱硬化性化合物に比べて短時間かつ低い温度で硬化させることができるので好ましい。塗工剤に用いる電離放射線硬化性化合物として例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂等を生成する有機系化合物から適宜選択することができる。例えば、アクリル樹脂を生成するアクリル系の紫外線硬化性モノマーとしては、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートや、ポリエステルポリオールとアクリル酸との反応によって得られるポリエステルアクリレート、有機ポリイソシアネートとヒドロキシアクリレート化合物との反応によって得られるウレタンアクリレート、ビスフェノール型エポキシ樹脂とアクリレートまたはヒドロキシアクリレートとの反応によって得られるエポキシアクリレートなどがある。また、ラジカル重合性化合物のみで低屈折率を得ることができるものとして、例えばアクリロイル基を有するポリシロキサン化合物、アクリル基及びフッ素原子を有する化合物である含フッ素アクリレート等を挙げることができる。
【0012】
本発明の反射防止フィルムにおける低屈折率層用塗工剤は、エチレン性不飽和基を有する酸性リン酸エステルを含有していることが必要である。酸性リン酸エステルがエチレン性不飽和基を有することでラジカル重合性があり、ラジカル重合性化合物と共重合することができる。エチレン性不飽和基を有する酸性リン酸エステルの含有量は、ラジカル重合性化合物、エチレン性不飽和基を有する酸性リン酸エステル及び無機微粒子からなる固形分中に0.5〜9重量%であることが好ましく、2〜8重量%、さらに、5〜7重量%であることがより好ましい。含有量が0.5重量%より少ないと十分な密着性が得られず、また9重量%より多いと添加量に対する耐擦傷性性能の向上効果が顕著でなく、コストアップとなるため好ましくない。
【0013】
また、エチレン性不飽和基を有する酸性リン酸エステルは特に限定されないが、例えば、エチル(メタ)アクリレートアシッドホスフェート、モノ(2−(メタ)アクリロイロキシエチル)アシッドホスフェート、ジ(2−(メタ)アクリロイロキシエチル)アシッドホスフェート)、3−クロロ−2−アシッドホスホキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレングリコール(メタ)アクリレートアシッドホスフェート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートホスフェート、2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイロキシプロピルアシッドホスフェート、2−(メタ)アクリロイロキシエチルカプロエートホスフェート、2−(メタ)アクリロイロキシエチルフェニールアシッドホスフェート等が挙げられる。特に、モノ(2−(メタ)アクリロイロキシエチル)アシッドホスフェート、ジ(2−(メタ)アクリロイロキシエチル)アシッドホスフェート)、2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイロキシプロピルアシッドホスフェートがより好ましい。
【0014】
また塗工剤には無機微粒子を配合できる。無機微粒子は低屈折率層を所定の屈折率に調整するためや層の硬度を硬くするために用いる。無機微粒子としては、例えば、多孔質シリカ、中空シリカ、アモルファスシリカ、フッ化マグネシウム等が挙げられ、これらを適宜所定の量を配合することが好ましい。
本発明で使用する塗工剤は、通常、上述したラジカル重合性化合物、エチレン性不飽和基を有する酸性リン酸エステル及び必要に応じて無機微粒子を溶剤中に溶解もしくは分散させた溶液として使用する。さらに前記塗工剤には高分子化合物、重合開始剤、架橋剤、分散剤、表面調整剤(レベリング剤)、撥水剤等を適宜配合することができる。
【0015】
本発明の塗工剤は、例えば、「透明基材フィルム/ハードコート層/中屈折率層/低屈折率層」(構成1)、「透明基材フィルム/ハードコート層/高屈折率層/低屈折率層」(構成2)、「透明基材フィルム/ハードコート層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層」(構成3)、「透明基材フィルム/ハードコート層/低屈折率層」(構成4)などの構成を有する反射防止フィルム(ハードコート層に防眩性を付与したものでもよい)の低屈折率層に用いられる。ただし、本発明における反射防止フィルムの積層構成については、上に記載したものに特に限定されるものではない。したがって、本発明でいう下層とは、構成1の場合は中屈折率層、構成2及び構成3の場合は高屈折率層、構成4の場合はハードコート層のことを意味している。なお、上記反射防止フィルムに用いる透明基材フィルムとしては、透明性のあるフィルムであればいずれのフィルムでもよい。
【0016】
なお、本発明の反射防止フィルムにおける低屈折率層の屈折率は1.35〜1.45の範囲である。中屈折率層及び高屈折率層の屈折率は1.58〜1.93の範囲である。また層構成の各層の膜厚は60〜120nmが好ましく、ハードコート層の膜厚は5〜10μmが好ましい。
【0017】
一方、下層としてのハードコート層、中屈折率層、高屈折率層用塗工剤に用いるラジカル重合性化合物としては、低屈折率層と同様なラジカル重合性化合物を用いることができる。
【0018】
さらに、下層に用いる塗工剤は無機微粒子を含有させるのが好ましい。無機微粒子は所定の屈折率に調整するため、層の硬度を硬くするため、または導電層を付与するためなどに用いる。無機微粒子としては、例えば、ZrO、TiO、CeO、SiO、Ti、Ti、ZnO、導電性を有するITO(スズ含有酸化インジウム)やATO(アンチモン含有酸化スズ)、Sb等の金属酸化物微粒子が挙げられ、これらを適宜組み合わせて配合することができる。
【0019】
下層に無機微粒子を含有させることは、下層の膜厚及び無機微粒子の粒径にもよるが、下層表面に凹凸が形成され、低屈折率層との密着性が改良されるので好ましい。さらに、下層の表面に無機微粒子が存在すると、低屈折率層中のエチレン性不飽和基を有する酸性リン酸エステルに基づく水酸基との水素結合が形成され密着性が向上するので好ましい。
本発明で使用する下層の塗工剤は、通常、上述したラジカル重合性化合物及び必要に応じて無機微粒子を溶剤中に溶解もしくは分散させた溶液として使用する。さらに、前記塗工剤には高分子化合物、重合開始剤、分散剤、表面調整剤(レベリング剤)等を適宜配合することができる。
【0020】
さらに、本発明の反射防止フィルムの製造にあたって、透明基材フィルム表面のみならず、低屈折率層の下層、すなわち、ハードコート層、中屈折率層または高屈折率層の表面に予め表面処理を施すことが好ましい。表面処理を施すことによって塗工剤の濡れ性や密着性をさらに向上させることができる。表面処理方法として、コロナ処理、グロー放電処理、UV処理、EB処理、プラズマ処理、エキシマレーザー処理、またはアルカリ処理などがあり、コストと効果の面からコロナ処理、プラズマ処理、エキシマレーザー処理が好ましい。
【0021】
各層の塗工方法は特に限定されるものではなく、ロールコーター法、バーコーター法、ダイコーター法、グラビアコーター法等の薄膜の幅広フィルムにおける公知の方法で塗工することができる。
【実施例】
【0022】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明はこれに限定されない。
【0023】
実施例においては「透明基材フィルム/ハードコート層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層」の層構成で行った。
【0024】
透明基材フィルムは、厚さ80μmのトリアセチルセルロースを用いた。
【0025】
<ハードコート層用塗工剤の調整>
ハードコート層用塗工剤は、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートとの混合物300重量部、光重合開始剤9.0重量部、光増感剤6.0重量部を、685重量部のイソプロピルアルコール及びエタノールの混合溶剤に溶解したものである。
【0026】
<中屈折率層用塗工剤の調整>
中屈折率層用塗工剤は、ITO微粒子230重量部、分散剤30重量部、イソプロピルアルコール670重量部をダイノミルで分散し、遠心分離機により粗大粒子を除去、平均粒子径50nmのITO微粒子を含む分散液を得た。これにウレタンアクリレート107.5重量部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート37.5重量部そして光重合開始剤3.8重量部を加え、イソプロピルアルコール及びエタノールの混合溶剤で固形分の濃度が5重量%濃度としたものである。
【0027】
<高屈折率層用塗工剤の調整>
高屈折率層用塗工剤は、酸化チタン250重量部、分散剤50重量部、イソプロピルアルコール700重量部をダイノミルで分散し、遠心分離機により粗大粒子を除去、平均粒子径40nmの酸化チタンを含む分散液を得た。これにウレタンアクリレート32.5重量部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート30.0重量部そして光重合開始剤3.2重量部を加え、イソプロピルアルコール及びエタノールの混合溶剤で固形分の濃度が5重量%濃度にしたものである。
【0028】
<低屈折率層用塗工剤原液>
(1)ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート100重量部、中空シリカ粒子130重量部及び重合開始剤に、イソプロピルアルコール、ブチルセロソルブ、メチルイソブチルケトン、及びイソプロピルグリコール(8:1:2:1の重量混合比)の混合溶剤を加えたものである。
(2)市販のポリシロキサン系低屈折率層用塗工剤、すなわちアクリロイル基を有するポリシロキサン化合物100重量部、中空シリカ粒子110重量部及び重合開始剤に、イソプロピルアルコール、メチルイソブチルケトン、1−メトキシー2−プロパノール、メチルアルコール、及びジアセトンアルコール(35:5:5:1:1の重量混合比)の混合溶剤を加えたものである。
(3)市販のフッ素系低屈折率層用塗工剤、すなわち含フッ素アクリレート45重量部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート25重量部、シリカ微粒子25重量部及び重合開始剤に、メチルエチルケトン、及びメチルイソブチルケトン(1:15の重量混合比)の混合溶剤を加えたものである。
【0029】
<耐擦傷性試験>
本発明において、以下の方法で測定し反射防止フィルムの耐擦傷性の評価をした。
耐擦傷性の評価は、新東科学株式会社製往復摩耗試験機「HEIDON トライポギア TYPE:30」を用いて行なった。ステージに固定した反射防止フィルムの表面に、スチールウールを取付けた摩耗ヘッドを荷重100gf/cmで押し付けた状態で表面を擦る方向に10往復させることにより行い、10往復させた後に反射防止フィルム表面にできた傷の数を求め、それを3回繰り返した際の平均値で評価した。
【0030】
実施例1、比較例1
トリアセチルセルロースフィルムの上に、グラビアコーターを用いてハードコート層用塗工剤を塗工し、80℃で乾燥後、紫外線を照射して厚さ6μmのハードコート層を形成した。次に、ハードコート層上にグラビアコーターを用いて中屈折率層用塗工剤を塗工し、80℃で乾燥後、紫外線を照射し、厚さ75nmの中屈折率層を形成した。次に、中屈折率層上に、グラビアコーターを用いて高屈折率層用塗工剤を塗工し、80℃で乾燥後、紫外線を照射し、厚さ95nmの高屈折率層を形成した後、表面をコロナ処理した。さらに、高屈折率層上に、グラビアコーターを用いて低屈折率層用塗工剤原液(1)にモノ(1−(メタ)アクリロイロキシエチル)アシッドホスフェートを添加して表1に示すように固形分中の含有量が0〜9重量%になるようにするとともに、全固形分濃度を5重量%になるようにした低屈折率層用塗工剤を塗工し、80℃で乾燥後、紫外線を照射し、厚さ100nmの低屈折率層を形成した反射防止フィルムを得た。結果を表1及び図1に示す。
【0031】
【表1】

【0032】
表1及び図1よりエチレン性不飽和基を有する酸性リン酸エステルを含有していない比較例1にかかる低屈折率層用塗工剤を使用した反射防止フィルムの傷の本数が12本であるのに対して、エチレン性不飽和基を有する酸性リン酸エステルを含有している実施例1にかかる反射防止フィルムの傷の本数が下回っていたことから、エチレン性不飽和基を有する酸性リン酸エステルを塗工剤に含有させることによる効果は明らかであった。特に、5〜7重量%を含有させた場合に顕著な効果がみられた。
【0033】
実施例2〜8、比較例2〜4
表2に示す各種低屈折率層塗工剤原液に各種酸性リン酸エステルを固形分中に7重量%含有させた低屈折率層用塗工剤を使用した以外は実施例1と同様にして反射防止フィルムを得た。結果を同じく表2に示す。
【0034】
【表2】

【0035】
実施例2〜4と比較例1〜3を比較すると、エチレン性不飽和基を有する酸性リン酸エステルを含有させてない比較例1〜3にかかる低屈折率層用塗工剤を使用した反射防止フィルムの傷の本数に対して、エチレン性不飽和基を有する酸性リン酸エステルを含有させた実施例2〜4にかかる低屈折率層用塗工剤を使用した反射防止フィルムの傷の本数が減少していたことから、各種低屈折率層用塗工剤原液にエチレン性不飽和基を有する酸性リン酸エステルを塗工剤に含有させることによる効果は明らかであった。
【0036】
低屈折率層用塗工剤(1)を用いた実施例2、5〜8と比較例1を比較すると、エチレン性不飽和基を有する酸性リン酸エステルを含有させた実施例2、5〜8にかかる低屈折率層用塗工剤を使用した反射防止フィルムは、エチレン性不飽和基を有する酸性リン酸エステルを含有させてない比較例1にかかる低屈折率層用塗工剤を使用した反射防止フィルムより耐擦傷性が向上した。
また、同じ低屈折率層用塗工剤原液(1)を用いているのにも関わらず、エチレン性不飽和基を有さない酸性リン酸エステルを含有させた比較例4にかかる低屈折率層用塗工剤を使用した反射防止フィルムは、エチレン性不飽和基を有する酸性リン酸エステルを含有させてない比較例1にかかる低屈折率層用塗工剤を使用した反射防止フィルムよりも、耐擦傷性が悪くなった。これはモノメチルホスフェートとジメチルホスフェートの混合物にラジカル重合性を有していないので硬化系に入りこむことができず、硬度が低下したためであると考えられる。
【0037】
また、低屈折率層用塗工剤原液(3)を用いた実施例4と比較例3を比較すると、エチレン性不飽和基を有する酸性リン酸エステルを含有させない比較例3にかかる低屈折率層用塗工剤を使用した反射防止フィルムの傷の本数は数えることができないほどの多数であったが、エチレン性不飽和基を有する酸性リン酸エステルを含有させた実施例4にかかる低屈折率層用塗工剤を使用した反射防止フィルムの傷の本数は24本となり、低屈折率層用塗工剤原液(3)にエチレン性不飽和基を有する酸性リン酸エステルを含有させることにより大幅に耐擦傷性は向上した。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明によれば、反射防止フィルムにおいて、低屈折率層の塗工剤にエチレン性不飽和基を有する酸性リン酸エステル含有させていることにより密着性を改良することで耐擦傷性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】低屈折率層用塗工剤(1)に酸性リン酸エステルを各種含有量に調整した低屈折率層用塗工剤を用いて形成した反射防止フィルムの傷の本数を示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反射防止フィルムの低屈折率層を形成するための塗工剤において、該塗工剤がラジカル重合性化合物と、塗工剤の固形分中に0.5〜9.0重量%のエチレン性不飽和基を有する酸性リン酸エステルとを含有していることを特徴とする塗工剤。
【請求項2】
塗工剤が無機微粒子を含有していることを特徴とする請求項1記載の塗工剤。
【請求項3】
ラジカル重合性化合物がアクリル系の紫外線硬化性モノマーであることを特徴とする請求項1又は2記載の塗工剤。
【請求項4】
透明基材フィルム/ハードコート層/中屈折率層/低屈折率層、透明基材フィルム/ハードコート層/高屈折率層/低屈折率層、透明基材フィルム/ハードコート層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層、透明基材フィルム/ハードコート層/低屈折率層のいずれかの構成を有する反射防止フィルムであって、低屈折率層が請求項1乃至3のいずれかに記載の塗工剤からなるものであることを特徴とする反射防止フィルム。
【請求項5】
低屈折率層の下層が表面処理されていることを特徴とする請求項4記載の反射防止フィルム。

【図1】
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【公開番号】特開2008−115213(P2008−115213A)
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−297335(P2006−297335)
【出願日】平成18年11月1日(2006.11.1)
【出願人】(000206473)大倉工業株式会社 (124)
【Fターム(参考)】