説明

塗工原紙用表面処理剤

【課題】塗工紙の軽量化のために、軽量嵩高な原紙を用いても、比重の高い無機顔料を主成分とする塗料を単に塗布しただけでは塗料の浸透のため塗布量が多くなって、塗工紙の高光沢性を維持しつつ、軽量を実現するために、原紙内部への塗料の浸透を抑制する方法としては、比較的安価な材料を用いることで、印刷用軽量原紙表面に塗料の浸透を効果的に抑制し、塗工層の塗膜を効率良く形成させることにより、軽量で高光沢性な塗工紙が得られる、塗工原紙用の表面処理剤を提供する。
【解決手段】特定の粘度挙動を示し且つ特定の法線応力を有する澱粉(a)を含有する、塗工原紙用表面処理剤。また、前記表面処理剤を特定塗工量処理した塗工用原紙。更に、前記塗工用原紙上に顔料と結着剤を主成分とする塗料の塗工層を設けた、特定密度以下の塗工紙。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗工原紙用表面処理剤、及びそれを用いた塗工原紙、並びに塗工紙に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、印刷用紙においても輸送及び郵送コストの削減などのため軽量化に対する要求が非常に高くなってきている。しかし、単純に軽量化すなわち印刷用紙の坪量を下げると紙の厚さが低下し、冊子のボリューム感が損なわれるため好ましくない。求められている軽量化とは紙重量を低下させる一方で、塗工紙の高光沢性を維持しつつ、紙厚は低下させないことを意味している。一方、印刷物のビジュアル化やカラー化が進み、非塗工印刷用紙に比較し、紙表面に平滑な塗工層をインキ受理層とする印刷用塗工紙の需要も年々増加している。炭酸カルシウムやカオリンなどの無機顔料を主成分とする塗工層は、パルプを主原料とする塗工原紙に比較して比重が重く、塗工紙の軽量のためには塗工量を出来るだけ少なくする必要がある。しかし、原紙を低密度化した場合、細孔が多くなるので、塗工時に、塗料の原紙内部への浸透性が上がり、低塗工量で均一に原紙表面を被覆することが難しくなる。そこで、原紙の細孔量を減らすために塗工前に原紙をカレンダー処理すれば、塗料の原紙内部への浸透性が下がるが、紙厚が低下するため低密度紙は得られない。このように、塗工紙の軽量化のために、軽量嵩高な原紙を用いても、比重の高い無機顔料を主成分とする塗料を単に塗布しただけでは塗料の浸透のため塗布量が多くなって、塗工紙の高光沢性を維持しつつ、軽量を実現することは難しい。
【0003】
また、原紙内部への塗料の浸透を抑制する方法としては、原紙と、塗料の溶媒である水との濡れ性を下げるために原紙にサイズ処理を施す方法が考えられる。例えば、特許文献1には、カチオン性を有するポリアクリルアミドと、疎水性置換基を有するモノマーを含有するアニオン性共重合体とを含む処理剤が記載されている。また、剥離紙用基材にシリコーン等の離型剤の浸透を抑制するため、膨潤性雲母類と結着剤を含有する水溶液を塗布する方法が開示されている(特許文献2参照)。また、特定量の膨潤性雲母類を印刷用軽量嵩高原紙表面に塗布することで、親水性塗料の浸透を効果的に抑制できることが提案されている(特許文献3参照)。一方、特定の物性を有するカルボキシメチルセルロースのナトリウム塩からなる浸透抑制剤により、嵩高な紙のような親水性かつ多孔性表層部を有する支持体の内部への親水性塗料の浸透が抑制され、少ない塗布量で有効な塗工層が提案されている(特許文献4参照)。
【0004】
また、特許文献5、6には、未加工デンプンを原料とした、カチオン化デンプン、両性化デンプン、カチオン化架橋デンプンから選ばれるデンプンを紙用塗工剤として用いることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−012981号公報
【特許文献2】特開平6−200500号公報
【特許文献3】特開2005−89871号公報
【特許文献4】特開2004−300624号公報
【特許文献5】特開2006−161216号公報
【特許文献6】特開2006−283235号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のように、細孔量の多い低密度原紙にこのような処理を施してもその効果は小さいものであった。また、塗工用でんぷん、ポリビニルアルコール(PVA)などの水溶性高分子を主成分とする表面処理剤を紙表面に塗工し、紙表面に塗膜を形成させ、その後に塗工される塗料の浸透を抑制する方法も考えられるが、紙表面に有効な浸透抑制塗膜を形成させることが難しかった。また、特許文献2で用いる剥離紙用塗料はトルエンとシリコーンが主体であるため疎水性であり、炭酸カルシウムやカオリンといった顔料及び結着剤を水で高濃度分散した親水性である印刷用塗料とは塗料物性が著しく異なるため、一般的な塗工紙などの問題を解決するには至らない。また、特許文献3は、膨潤性雲母類が非常に高価であるため、汎用印刷用紙の製造には利用できないという欠点があった。従って、比較的安価な材料を用いることで、印刷用軽量原紙表面に塗料の浸透を効果的に抑制し、塗工層の塗膜を効率良く形成させることは非常に困難であった。また、特許文献4では、特定の物性を有するカルボキシメチルセルロースナトリウム塩からなる処理剤により塗料の浸透が抑制され、通気抵抗度に有効性は認められるものの、光沢度の改善等についての効果は少ないものであった。また、特許文献5、6では、紙の剛度向上、粘着性の低減などを目的としており、塗工紙における光沢の向上や軽量化については言及されていない。
【0007】
本発明の課題は、高光沢性な塗工紙、更には軽量で高光沢性な塗工紙が得られる、塗工原紙用の表面処理剤を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、25℃における5重量%の水溶液の粘度が2000〜12000mPa・sであり、25℃における剪断速度1000(1/秒)における粘度が300mPa・sでの法線応力が0〜2400Paである澱粉(a)を含有する塗工原紙用表面処理剤に関する。
【0009】
また、本発明は、上記本発明の塗工原紙用表面処理剤を、パルプを主原料とする紙の少なくとも片面に、片面当たり、乾燥重量で0.01〜3.0g/m2で処理した塗工原紙に関する。
【0010】
また、本発明は、上記本発明の塗工原紙の前記塗工原紙用表面処理剤による処理面に、顔料と結着剤を主成分とする塗料の塗工層を設けてなる、密度が1.5g/cm3以下である塗工紙に関する。
【0011】
また、本発明は、上記本発明の塗工原紙用表面処理剤と水とを含有する表面処理剤組成物を、パルプを主原料とする紙の少なくとも片面に処理して塗工原紙を得る工程(I)と、該工程(I)で得られた塗工原紙の前記塗工原紙用表面処理剤組成物による処理面に、前記表面処理剤組成物とは異なる、顔料と結着剤を主成分とする塗料の塗工層を設ける工程(II)と、を有する、密度が1.5g/cm3以下である塗工紙の製造方法に関する。
【0012】
本発明の表面処理剤を原紙表面に塗工・乾燥したとき、上記課題が解決される理由は明らかではないが、特定の粘度挙動を示し且つ特定の法線応力を有する澱粉(a)が原紙表面に存在することにより、顔料と結着剤を主成分とする塗料を塗工した際、塗料が凝集し、無機顔料を主成分とした塗料の紙内部への浸透を抑制しているためと推定される。
【0013】
また、本発明に係る澱粉(a)は、3次元的な編目構造を有する高分子であり、これが紙表面に存在することにより、顔料と結着剤を主成分とする塗料が施された際、瞬時に塗料中の水分を吸収することによって未塗工原紙と塗工顔料の界面にゲル膜が形成され、塗料が高粘度となり非流動化することにより無機顔料を主成分とした塗料の紙内部への浸透を抑制しているため、塗工層の厚さが増加することで、カレンダー処理で塗工層の表面がより平坦化され、得られる塗工紙の光沢が向上すると推定される。
【0014】
また、澱粉(a)が、紙表面に施された際、多孔性表層部を有する紙の細孔部の穴埋めをすることによって原紙内部への塗料の浸透を抑制しているためとも推定される。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、原紙内部への塗料の浸透を抑制することができ、現行の抄紙機や塗工機を利用して、少ない塗布量で有効な塗工層が得られ、軽量で、高光沢性の塗工紙を効率良く製造することができる、塗工原紙用の表面処理剤が得られる。本発明の塗工原紙用の表面処理剤で処理した塗工原紙から製造した塗工紙は、軽量で高い光沢性を有する。
【0016】
また、同量の塗工層を施す場合、高光沢性の塗工紙が得られることから、塗工層を施した後のカレンダー工程において、カレンダー線圧を低くすることができる。また塗工紙のパルプや染料等を低減することができ、低密化のみならず、省資源、省エネルギー化にもつながる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の塗工原紙用表面処理剤は、25℃における5重量%の水溶液の粘度が2000〜12000mPa・sであり、25℃における剪断速度1000(1/秒)における粘度が300mPa・sでの法線応力が0〜2400Paである澱粉(a)を含有する。本発明の澱粉(a)を以下に説明する。
【0018】
〔澱粉(a)〕
本発明で使用する澱粉(a)は、原紙への浸透抑制及び塗工紙の光沢性向上の観点から、25℃における5重量%水溶液の粘度が2000〜12000mPa・sであり、好ましくは2200〜10500mPa・s、より好ましくは2400〜10000mPa・s、さらに好ましくは2600〜9500mPa・sであり、さらにより好ましくは2700〜9000mPa・sである。なお、この粘度は、後述の実施例に記載の方法により測定される。本発明では、25℃における5重量%水溶液の粘度が2000mPa・s以上の澱粉(a)を使用することで、軽量で高光沢性の塗工紙が得られる塗工原紙用の表面処理剤を提供することができる。また、この粘度の上限は、効果が飽和すること、塗工性が困難になることなどの理由から、12000mPa・s以下としたものである。
【0019】
澱粉(a)が両性化澱粉の場合は、原紙への浸透抑制及び塗工紙の光沢性向上の観点から、25℃における2重量%水溶液の粘度が200〜5000mPa・sであり、好ましくは250〜4000mPa・s、より好ましくは250〜3000mPa・s、さらに好ましくは250〜2000mPa・sであり、さらにより好ましくは280〜1000mPa・sである。また、同様の観点から、25℃における4重量%水溶液の粘度は、好ましくは800〜8000mPa・s、より好ましくは1000〜7000mPa・s、更に好ましくは1200〜6000mPa・s、さらにより好ましくは1200〜5000mPa・sであり、さらにより好ましくは1200〜3000mPa・sである。なお、この粘度は、後述の実施例に記載の方法により測定される。本発明では、25℃における2重量%水溶液の粘度が200mPa・s以上の両性化澱粉を使用することで、軽量で高光沢性の塗工紙が得られる塗工原紙用の表面処理剤を提供することができる。また、この粘度の上限は、効果が飽和すること、塗工性が困難になることなどの理由から、5000mPa・s以下としたものである。
【0020】
澱粉(a)の5重量%水溶液の粘度は、後述するカチオン化剤やアニオン化剤の導入量や架橋剤による架橋の程度を制御することにより、所望の範囲に設計することができる。一般に架橋の程度が高くなると澱粉の粘度は低くなる傾向にあり、架橋の程度が低くなると当該粘度は高くなる傾向にある。
【0021】
本発明の澱粉(a)の25℃における剪断速度1000(1/秒)における粘度300mPa・sでの法線応力は、表面処理剤の曳糸性低減及び塗工紙の光沢性向上の観点から、0〜2400Paであり、好ましくは10〜2200Paであり、より好ましくは50〜2000Pa、さらに好ましくは100〜2000Paである。
【0022】
線状高分子又はその溶液は、ずり応力を加えると、ずり方向と法線方向に力が働く。この法線方向に働く力は法線応力と呼ばれ、線状高分子のような分子間の絡み合いが強いものでは法線応力が大きくなる。一方、本発明の澱粉(a)のような分子内に架橋等を有する水溶性高分子は分子間の絡み合いが少ないため、法線応力としては、低い値を示すと考えられる。ここで、25℃における剪断速度1000(1/秒)における粘度300mPa・sでの法線応力は、実施例に記載の方法により測定される。なお、この法線応力の測定は、澱粉(a)の水溶液の剪断速度1000(1/秒)における粘度が300mPa・sとなる澱粉の濃度で行われる。
【0023】
澱粉(a)の当該法線応力は、後述するカチオン化剤やアニオン化剤の導入量や架橋剤による架橋の程度を制御することにより、所望の範囲に設計することができる。一般に架橋の程度が高くなると澱粉(a)の当該法線応力は低くなる傾向にあり、架橋の程度が低くなると当該法線応力は高くなる傾向にある。
【0024】
本発明で使用する澱粉(a)は、前述の粘度及び法線応力を満足するものであれば特に限定されないが、具体例としては、例えば、アセチル澱粉、尿素リン酸澱粉、リン酸澱粉、ヒドロキシアルキル澱粉、カルボキシメチル澱粉、カチオン化澱粉、両性化澱粉及び架橋澱粉が挙げられる。前記架橋澱粉としては、リン酸架橋澱粉、アジピン酸架橋澱粉、カチオン化架橋澱粉、エピクロロヒドリン架橋澱粉、ホルムアルデヒド架橋澱粉等が挙げられる。
【0025】
これらの中でも、原紙への浸透抑制及び塗工紙の光沢性向上の観点から、両性化澱粉、リン酸架橋澱粉、アジピン酸架橋澱粉、カチオン化架橋澱粉から選ばれる澱粉がより好ましく、両性化澱粉、リン酸架橋澱粉、アジピン酸架橋澱粉から選ばれる澱粉がさらに好ましい。従って、本発明の好適な塗工原紙用表面処理剤として、
(1)25℃における5重量%の水溶液の粘度が2000〜12000mPa・sであり、25℃における剪断速度1000(1/秒)における粘度が300mPa・sでの法線応力が0〜2400Paである両性化澱粉(a1)を含有する塗工原紙用表面処理剤、
(1’)25℃における5重量%の水溶液の粘度が2000〜12000mPa・sであり、25℃における4重量%水溶液の粘度が800〜8000mPa・sであり、、25℃における剪断速度1000(1/秒)における粘度が300mPa・sでの法線応力が0〜2400Paである両性化澱粉(a1)を含有する塗工原紙用表面処理剤、
(2)25℃における5重量%の水溶液の粘度が2000〜12000mPa・sであり、25℃における剪断速度1000(1/秒)における粘度が300mPa・sでの法線応力が0〜2400Paであるリン酸架橋澱粉(a2)を含有する塗工原紙用表面処理剤、
(3)25℃における5重量%の水溶液の粘度が2000〜12000mPa・sであり、25℃における剪断速度1000(1/秒)における粘度が300mPa・sでの法線応力が0〜2400Paであるアジピン酸澱粉(a3)を含有する塗工原紙用表面処理剤、
が挙げられる。
【0026】
本発明で使用する澱粉(a)は、公知の方法で製造されたものである。澱粉(a)の原料としては、コーン澱粉、タピオカ澱粉、馬鈴薯澱粉、サツマイモ澱粉、小麦澱粉、米澱粉、これらの澱粉に公知の方法によって置換基を導入したアセチル化澱粉、ヒドロキシエチル化澱粉、ヒドロキシルプロピル化澱粉が挙げられる。これらの出発の原料澱粉は、曳糸性低減の観点からそれに含まれるアミロペクチン含有量が40重量%以上であることが好ましく、50重量%以上であることがより好ましく、60重量%以上であることが更に好ましく、70重量%以上であることがさらにより好ましい。
【0027】
澱粉(a)は、例えば、前述の原料澱粉にカチオン性基及び/又はアニオン性基の導入化剤や架橋剤等を反応させることで製造することができる。
【0028】
カチオン性基の導入化剤としては、ジエチルアミノエチルクロライドなどの三級アミン導入剤、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、2,3−エポキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライドなどの四級アンモニウム塩導入剤が挙げられる。これらのカチオン化剤は単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0029】
アニオン性基の導入化剤としては、プロパンサルトン、ブタンサルトン、モノクロル酢酸、クロロスルホン酸、無水マレイン酸、無水コハク酸や、オルトリン酸(正燐酸)、ピロリン酸、トリポリリン酸、ヘキサメタリン酸等の無機リン酸類のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩や、尿素とリン酸第一ナトリウムや、リン酸第二ナトリウムとを組み合わせたもの等が挙げられる。これらのアニオン化剤は単独、又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0030】
前記リン酸類のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩を構成するアルカリ金属としては、例えば、ナトリウム、カリウムが挙げられ、アルカリ土類金属としては、例えば、カルシウム、マグネシウムが挙げられる。前記のリン酸類のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩からなるアニオン化剤としては、好ましくは、トリポリリン酸ナトリウム、尿素とリン酸第一ナトリウムや、リン酸第二ナトリウムとを組み合わせたものが挙げられる。
【0031】
架橋剤としては、オキシ塩化リン、無水リン酸、トリメタリン酸塩、ヘキサメタリン酸塩などのリン系架橋剤、無水アジピン酸等のジカルボン酸架橋剤、エピクロロヒドリン、ホルムアルデヒド等が挙げられる。リン系架橋剤の塩としては、前記アニオン化剤のリン酸類と同様のアルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩が挙げられる。架橋剤の添加量は、原料澱粉の種類、架橋剤の種類等に応じて適宜選定されるが、原料澱粉100重量%に対して、0.001〜5重量%、更に0.001〜1重量%で使用することが好ましい。
【0032】
なお、澱粉(a)が両性化澱粉の場合、粘度及び法線応力の制御のしやすさの観点から、原料澱粉をカチオン化剤によりカチオン化した後、尿素とリン酸第一ナトリウムや、リン酸第二ナトリウムを添加し、これを加熱して両性化澱粉を得ることが好ましい。
【0033】
澱粉(a)が両性化澱粉の場合、その窒素含量(N%)は、原紙への浸透抑制及び塗工紙の光沢性向上の観点から、0.01〜0.8が好ましく、より好ましくは0.05〜0.6、更に好ましくは0.1〜0.5である。ここで、両性化澱粉の窒素含量(N%)は、ケルダール法により、詳細には、実施例に記載の方法により測定される。
【0034】
<塗工原紙用表面処理剤>
本発明の塗工原紙用表面処理剤の好適な態様は、本発明に係る澱粉(a)と、水とを含有する液体組成物であり、該液体組成物中の澱粉(a)の含有量は、塗工紙の光沢性向上の観点から、0.1〜30重量%、好ましくは0.3〜20重量%、より好ましくは0.5〜10重量%、更に好ましくは1〜8重量%である。該液体組成物は、水溶液あるいは水分散体が好ましい。
【0035】
本発明の表面処理剤を塗工原紙の表面に処理する方法としては特に限定はなく、あらかじめ作製された原紙や塗工原紙の表面に施される。
【0036】
本発明の表面処理剤の対象となる紙は、パルプを主原料とするものであって、密度が0.30〜1.00g/cm3のものが好ましく、より好ましくは0.35〜0.85g/cm3である。密度が0.30g/cm3以上のものは、紙力低下を抑制できるため、塗工時に断紙する頻度が低減され安定操業できる。また、密度が1.00g/cm3以下の紙は、本発明の表面処理剤が適正に原紙表面に処理されるため、適度な透気抵抗度となり、オフセット印刷時のブリスター耐性が良好となり、印刷用塗工紙としての用途の制約がない。
【0037】
原紙に用いるパルプとしては、植物性繊維である木材や草本の繊維を原料とするいずれのパルプも使用できる。すなわち、晒化学パルプ(NBKP、LBKP等)や機械パルプ(TMP、CTMP、GP、RGP等及びその漂白処理をしたパルプ)、高収率パルプ(SCP、CGP等及びその漂白処理をしたパルプ)並びに、古紙パルプ及び脱墨古紙パルプ(DIP)及びその漂白処理をしたパルプ(BDIP)等の回収パルプを使用することができる。
【0038】
また、必要に応じて填料、紙力増強剤、サイズ剤、歩留り向上剤、濾水性向上剤、嵩高剤等の製紙用補助薬品を加えてもよい。サイズ剤としてアルキルケテンダイマー系サイズ剤、アルケニル無水コハク酸系サイズ剤、中性ロジンサイズ剤等が挙げられる。填料として炭酸カルシウム等が挙げられる。
【0039】
また、作業性の観点から、表面処理剤を公知の方法で減粘することが好ましい。減粘方法としては、pHの調整、無機金属塩の添加等が挙げられるが、無機金属塩の添加が好ましい。
【0040】
本発明における表面処理剤の塗布量としては、原紙片面あたり乾燥重量として0.01〜3.0g/m2が好ましく、より好ましくは、0.03〜2.0g/m2、更に好ましくは0.05〜1.0g/m2である。0.01g/m2以上であると塗料浸透抑制効果が発現され、3.0g/m2以下であると両面合計の塗布量が6g/m2以下となることから紙の軽量化が達成される。
【0041】
表面処理剤の塗布は通常の製紙用塗工装置を用いて行うことができ、特に限定されるものではないが、塗工装置としては2ロールサイズプレスコーターや、ゲートロールコーター、ブレードメタリングサイズプレスコーター、ロッドメタリングサイズプレスコーター、シムサイザー等のフィルム転写型ロールコーターや、カーテンコーター、ダイコーター、グラビアコーター、キスコーター、ロッド(バー)コーター、エアーナイフコーター、ブレードコーター、ロールコーター、スプレーなどが挙げられるが、2ロールサイズプレスコーター、ゲートロールコーター、ロッドメタリングサイズプレスコーター等の塗工装置による塗布法が表面処理剤を紙表面に多く留めることができるので、より好ましく使用される。
【0042】
表面処理剤を紙表面に施す方法は限定されるものではないが、一般的な方法として、本発明に係る澱粉(a)を含有する溶液又は分散液が用いられる。この場合の溶媒もしくは分散媒としては、水、有機溶剤が用いられるが、特に水が望ましい。
【0043】
溶液又は分散液とする場合、澱粉(a)は、溶解や分散を短時間で行う観点から、粉砕等の方法により澱粉(a)の平均粒径が1mm以下、好ましくは300μm以下、より好ましくは50μm以下とし、溶媒や分散媒と混合して溶液や分散体として用いられる。本発明に係る澱粉(a)を溶液又は分散体として得た場合は、そのままあるいは希釈して用いられる。
【0044】
本発明は、澱粉(a)を含有する紙の表面処理剤に関するものであり、更に本発明の表面処理剤を紙表面に塗工した塗工原紙上に、顔料と接着剤を主成分とする塗料の塗工層を設けた塗工紙に関するものである。すなわち、本発明による塗工原紙の本発明の表面処理剤による処理面に、顔料と結着剤を主成分とする塗料の塗工層を設けてなる、密度が1.5g/cm3以下である塗工紙に関するものである。このような塗工紙は、例えば、本発明の塗工原紙用表面処理剤と水とを含有する表面処理剤組成物を、パルプを主原料とする紙の少なくとも片面に処理して塗工原紙を得る工程(I)と、該工程(I)で得られた塗工原紙の前記表面処理剤組成物による処理面に、前記表面処理剤組成物とは異なる、顔料と結着剤を主成分とする塗料の塗工層を設ける工程(II)と、を有する製造方法により得ることができる。
【0045】
前記の製造工程を経ることにより塗工紙の光沢を向上させることができ、結果としてより軽量な塗工紙を製造することが可能となる。したがって、本発明は、本発明の塗工原紙用表面処理剤と水とを含有する表面処理剤組成物を、パルプを主原料とする紙の少なくとも片面に処理して塗工原紙を得る工程(I)と、該工程(I)で得られた塗工原紙の前記表面処理剤組成物による処理面に、前記表面処理剤組成物とは異なる、顔料と結着剤を主成分とする塗料の塗工層を設ける工程(II)と、を有する塗工紙の光沢向上方法に関する。
【0046】
工程(I)における表面処理剤組成物の処理は、前記のように行うことができる。40℃以上の表面処理剤組成物を、パルプを主原料とする紙、すなわち未塗工原紙に塗工することが好ましい。この温度は、塗工に供する表面処理剤組成物の温度(液温)であり、作業性向上の観点から、50℃以上、更に60℃以上が好ましい。
【0047】
塗工層を形成する塗料として用いられる顔料及び接着剤としては、通常の塗工紙用に用いられるものを使用することができ、顔料としては、カオリン、クレー、炭酸カルシウム、二酸化チタンなどの無機顔料、プラスチックピグメントなどの有機顔料を使用することができる。また接着剤としては、塗工紙用に従来から用いられている、スチレン・ブタジエン系、スチレン・アクリル系、エチレン・酢酸ビニル系、ブタジエン・メチルメタクリレート系、酢酸ビニル・ブチルアクリレート系等の各種共重合体ラテックス、酸化澱粉、陽性澱粉、燐酸エステル化澱粉、尿素燐酸エステル化澱粉、ヒドロキシエチルエーテル化澱粉などのエーテル化澱粉、デキストリンなどの澱粉類などが使用できる。これらの接着剤は顔料100重量%当たり5〜50重量%、より好ましくは10〜30重量%程度の範囲で使用される。必要に応じて分散剤、増粘剤、保水剤、消泡剤、耐水化剤等の通常使用される各種助剤が使用される。
【0048】
塗料の塗布は通常の製紙用塗工装置を用いて行うことができ、特に限定されるものではないが、塗工装置としては2ロールサイズプレスコーターや、ゲートロールコーター、ブレードメタリングサイズプレスコーター、ロッドメタリングサイズプレスコーター、シムサイザー等のフィルム転写型ロールコーターや、カーテンコーター、ダイコーター、グラビアコーター、キスコーター、ロッド(バー)コーター、エアーナイフコーター、ブレードコーター、ロールコーター、スプレーなどが挙げられ、顔料スラリーを、ブレードコーターを用いて塗工するのが好ましい。
【0049】
塗工層の厚さは特に限定されず、塗工紙の用途、品質等により設定されるが、光沢の高い紙を得る観点から、塗工液(塗料)の塗工量(固形分換算)は、片面あたり6g/m2以上が好ましく、6〜25g/m2がより好ましく、更に好ましくは7〜20g/m2である。
【0050】
乾燥方法としては、蒸気加熱ヒーター、熱風加熱ヒーター、赤外線ヒーター、ガスヒーター、シリンダードライヤー等の通常の方法が用いられる。また、必要に応じて、スーパーカレンダー、ソフトカレンダーなどの平滑化処理を行う。
【0051】
本発明の効果をより発揮させるためには、塗工紙の密度は、1.5g/cm3以下が好ましく、より好ましくは0.40〜1.40g/cm3である。
【0052】
本発明の塗工紙は、各種の紙に適用できる。例えば、書籍用紙や雑誌などに用いられる塗工紙、カタログ、ポスターに用いられる塗工紙といった印刷用紙、あるいは、インクジェット用紙、あるいは包装用紙など、酸性、中性又はアルカリ性抄紙した紙を挙げることができる。
【0053】
さらに具体的には、例えばA0アート紙、A1アート紙、A2コート紙、A3コート紙、中質コート紙、微塗工紙などに好適である。
【実施例】
【0054】
以下、配合量を示す「部」及び「%」はすべて「固形分重量部」及び「固形分重量%」を示す。
【0055】
実施例A1、A2及び比較例A1〜A5
〔澱粉水溶液の粘度の測定方法〕
粘度測定は、B型粘度計(型式:BM、メーカー:東機産業株式会社)を用いて、以下に示す方法で行った。2重量%、4重量%又は5重量%濃度の澱粉水溶液(調製方法は後述の通り)を粘度ビーカーに加え、25℃の水浴に1時間以上浸漬させた。澱粉水溶液の温度が25℃に達したことを温度計で確認後、澱粉水溶液の粘度に応じたローターを選び、粘度計に取り付けた。所定の位置まで澱粉水溶液の入った粘度ビーカーを移動させ、ローターを試料中に15分間漬け、ローターの温度を25℃に合わせた。粘度は、ローターを回転数60rpmで1分間回転させ、停止させた時の指示値を読み取り、換算式により求めた。
【0056】
〔窒素含量の測定方法〕
窒素含量の測定は、ケルダール法を実施できる装置(KJEL-AUTO DTP-3S、メーカー:三田村理研工業株式会社)にて、以下に示す方法で行った。
(1)滴定溶液の調製
ホウ酸30gをイオン交換水に溶解し、イオン交換水で1000mlに希釈した(以下
A液とする)。メチルレッド200mgを無水アルコール100mlに溶解し、湯せんに
よって完全に溶解させた後ろ過を行い、ろ液を得た(以下B液とする)。メチレンブルー100mgを無水アルコール100mlに溶解し、湯せんによって完全に溶解させた後ろ過を行い、ろ液を得た(以下C液とする)。前記B液及びC液を1:1で混合し、D液を得た。前記A液とD液を100:1の比率で混合し滴定用試薬E液を得た。25mlのE液を滴定瓶に加え、滴定瓶を装置の所定の位置に設置した。
(2)窒素含有量の測定
試料1g、硫酸10mL、及びケルタブC錠(分解促進剤)1錠を、ケルダール用チューブへ入れて測定試料とした。別に硫酸10mL、及びケルタブC錠(分解促進剤)1錠を、ケルダール用チューブへ入れてブランクとした。以下の操作は、前記測定試料、及びブランクと共に行った。前記ケルダールチューブを、420℃に設置加熱した分解装置に設置して3時間加熱放置した。分解装置からケルダールチューブを取り出して、室温まで放冷後、10mLのイオン交換水を加えて希釈した。30重量%の水酸化ナトリウム溶液を、前記希釈溶液に加え、アルカリ性とした。次いで、前記アルカリ性溶液に水蒸気を吹き込み、得られた留出液を、前記滴定瓶(25mlのE液含有)の中に留出させた。前記留出液を100/N硫酸で滴定した。消費された硫酸は、以下の数式を用いて、試料物の窒素含量に換算した。
窒素含量(重量%)=[14.007×滴定物質の規定度×(V−Vo)]/試料重量(mg)×100
V:試料の滴定量(ml)
V0:ブランクの滴定量(ml)
【0057】
〔法線応力の測定方法〕
澱粉水溶液の法線応力は、以下に示す方法で測定を行った。なお澱粉水溶液は、2重量%〜18重量%となるように、対象となる化合物とイオン交換水を所定量加えて、下記澱粉水溶液の調製方法に準じて調製した。調製した水溶液を25℃にて粘弾性測定装置(Anton Paar社製、Physica MCR300)を用いて、直径50mm、ギャップ0.052mm、コーンアングル0.02radのコーンプレートを使用し、剪断速度の変化を0.01〜1000(1/秒)に設定し、法線応力と粘度の測定を行なった。各水溶液濃度での、剪断速度1000(1/秒)における法線応力と粘度の値を読み取り、粘度と法線応力の近似式を作成し、得られた近似式から粘度300mPa・sでの法線応力を算出し、剪断速度1000(1/秒)での法線応力値とした。
【0058】
実施例、比較例で用いた澱粉を以下に示した。
・両性化澱粉(1):NT110M(原料はコーン澱粉)、日本食品化工(株)製
・両性化澱粉(2):KH−1000(原料はコーン澱粉)、王子コーンスターチ(株)製
・カチオン化澱粉(1):cato308(原料澱粉はタピオカ澱粉)、日本エヌエスシー(株)製
・比較両性化澱粉(1):cato315(原料澱粉はタピオカ澱粉)、日本エヌエスシー(株)製
・比較両性化澱粉(2):cato3210(原料澱粉はタピオカ澱粉)、日本エヌエスシー(株)製
・酸化澱粉(1):エースA、王子コーンスターチ(株)製
【0059】
*澱粉の水溶液(表面処理剤)の調製方法
500mlのビーカーにイオン交換水343g及び、澱粉7gを加えて、攪拌しながら90℃まで昇温し、さらに、当該温度で1時間攪拌を行い澱粉の水溶液を得た。ついで、5℃/分の速度で前記水溶液を冷却し、2重量%の澱粉の水溶液(表面処理、及び粘度測定に用いる水溶液)を得た。また、澱粉の水溶液濃度が4重量%及び5重量%になるように、澱粉の量を調整した以外は、前記に準じた操作を行い、4重量%及び5重量%の澱粉水溶液(粘度の測定に用いる水溶液)を得た。
【0060】
〔原紙の製造方法〕
(1)原紙
<パルプ原料>
パルプ原料としては、LBKP(広葉樹晒パルプ)を、25℃で叩解機にて離解、叩解して2.2重量%のLBKPスラリーとしたヴァージンパルプを用いた。このもののカナダ標準濾水度(JIS P 8121)は450mlであった。
【0061】
<抄紙方法>
ヴァージンパルプスラリーを抄紙後のパルプシートのパルプ坪量が80g/m2±1g/m2になるように量り取り、角型タッピ抄紙機にて80メッシュワイヤー(面積625cm2)で抄紙し、パルプシートを得た。抄紙後のシートは、3.5kg/cm2で5分間プレス機にてプレスし、鏡面ドライヤーを用い105℃で2分間乾燥した。乾燥されたパルプシートを23℃、湿度50%の条件で1日間調湿し、表面処理に供する原紙とした。原紙嵩密度は0.574g/cm3であった。
【0062】
〔表面処理剤による処理方法〕
表1中に示す澱粉の2重量%水溶液(表面処理剤)をバーコーターにてガラス板上に塗り広げ、キャスティング皮膜をガラス板上に形成した。尚、この時の表面処理剤、及びガラス板は予め40℃に温めておいたものを使用した。次いで上記で得られた未塗工原紙(幅12cm×長さ12cm)をキャスティング皮膜上にのせ、100g/m2のろ紙一枚でカバーし、ロール(直径200mm、幅200mm、線圧230g/cm)を転がし、表面処理剤をガラス板上から原紙表面に転写した。次いで鏡面ドライヤーを用い105℃で2分間乾燥した。これらの一連の操作は間髪をいれずすみやかに操作した。乾燥されたパルプシートを23℃、湿度50%の条件で1日間調湿し、塗工用原紙とした。
【0063】
〔塗工紙の製造方法〕
上記で得られた塗工用原紙(表面処理紙)の片面(表面処理剤による処理面)に、塗料を、ブレード式の塗工機(フレキシブルトレーリングブレードコーター、塗工速度25m/分、塗工圧0.7kg/cm2、熊谷理機工業(株)製)にて塗工し、105℃、2分間鏡面ドライヤーを用い乾燥した。
【0064】
ここで、塗料は、炭酸カルシウム(FMT97、ファイマテック株式会社製)50gと微粒カオリン(アマゾンプラス、カデム(株)製)50gを配合し、分散剤としてポリアクリル酸ソーダ(ポイズ535M、花王(株)製)0.2g、及び2Nの苛性ソーダ0.2gを添加して分散し、接着剤として顔料100gに対してSBRラテックス(LX−430、製紙用アクリル酸変性SBRラテックス、日本ゼオン(株)製)11g、変性デンプン(リン酸変性澱粉、王子コンスターチ(株)製)3.5gを混合して調製した、有効分濃度が65%の塗料である。
【0065】
更に、テストスーパーカレンダー(熊谷理機工業(株)製)にて線圧200kg/cm、(圧力49MPa)、処理速度10m/分、ロール温度50℃、2ニップ処理することにより塗工紙を得た。
【0066】
〔塗工紙の評価方法〕
<表面処理剤の処理量>
表面処理前の原紙重量と、表面処理剤を表面処理直後(ドライヤー乾燥前)の原紙重量からそれぞれの坪量を算出した後、(表面処理剤を表面処理直後の原紙の坪量−表面処理前の原紙の坪量)×(表面処理剤中の澱粉濃度)の値から、表面処理剤の塗工量(g/m2)を算出した(測定枚数3の平均値)。表面処理剤による処理を行わないものは、処理量を0g/m2とした。
【0067】
<塗料の塗工量>
塗工紙の製造で得られた塗工紙を幅12.0cm×長さ10.0cmにカットしたサンプルと、表面処理剤の処理で得られた塗工原紙(表面処理紙)(幅12.0cm×長さ12.0cm)を、それぞれ23℃、湿度50%の条件で1日間調湿し、それぞれ坪量を算出した後、(塗工紙の坪量−表面処理紙の坪量)の値から塗工量(g/m2)を算出した(測定枚数3の平均値)。
【0068】
<白紙光沢度>
JIS P8142に従って光沢度計(GMX−203型、75°型、(株)村上色彩技術研究所製)を用い、塗工面の白紙光沢度を測定し、その平均値を求めた(測定ヶ所数6/1枚、測定枚数3枚、18点の平均値)。白紙光沢度が大きいほど、光沢性が高く、また白紙光沢度の値4%の差は有意差として十分に認識されるものである。なお、比較例1は、表面処理剤による処理を行わずに得た塗工紙(処理量0g/m2)について白紙光沢度を測定した。
【0069】
<嵩密度>
JIS P8118により、緊度を測定し、嵩密度とした(測定枚数3の平均値)。嵩密度が小さいほど、軽量であり、また嵩密度の0.02g/cm3の差は有意差として十分に認識されるものである。
【0070】
【表1】

【0071】
表1から、手抄き紙に本発明の表面処理を施した実施例A1及びA2は、表面処理をしない、あるいは本発明とは異なる表面処理を施した比較例A1〜A5と比べて、非常に高い光沢度を示すことがわかる。これは、顔料含有塗料の塗工量やカレンダー条件が同一条件である場合、実施例では塗料の浸透が抑制された結果、比較例に比べ光沢度の向上に寄与する有効塗工層が多くなっているためであると思われる。
【0072】
実施例B1〜B5及び比較例B1〜B5、並びに実施例C1〜C4及び比較例C1〜C5
【0073】
〔澱粉水溶液の粘度の測定方法〕
粘度測定は、B型粘度計(型式:BM、メーカー:東機産業株式会社)を用いて、以下に示す方法で行った。5重量%濃度の澱粉水溶液(調製方法は後述の通り)を粘度ビーカーに加え、25℃の水浴に1時間以上浸漬させた。澱粉水溶液の温度が25℃に達したことを温度計で確認後、澱粉水溶液の粘度に応じたローターを選び、粘度計に取り付けた。所定の位置まで澱粉水溶液の入った粘度ビーカーを移動させ、ローターを試料中に15分間漬け、ローターの温度を25℃に合わせた。粘度は、ローターを回転数60rpmで1分間回転させ、停止させた時の指示値を読み取り、換算式により求めた。
【0074】
法線応力の測定方法は上記実施例A1等と同様に行った。
【0075】
実施例、比較例で用いた澱粉を以下に示した。
・リン酸架橋澱粉(1):MATSUTANI HANA、松谷化学工業(株)製
・リン酸架橋澱粉(2):C☆CREAMTEX 75728(原料はタピオカ澱粉)、東海澱粉(株)製
・リン酸架橋澱粉(3):C☆CREAMTEX 75720(原料はタピオカ澱粉)、東海澱粉(株)製
・比較リン酸架橋澱粉(1):C☆CREAMTEX 75705(原料はタピオカ澱粉)、東海澱粉(株)製
・酸化澱粉(1):エースA、王子コーンスターチ(株)製
・カチオン化澱粉(1):cato304(原料澱粉はタピオカ澱粉)、日本エヌエスシー(株)製
・リン酸化澱粉(1):スプレット#250 日本食品化工(株)製
【0076】
実施例、比較例で用いた他の澱粉を以下に示した。
・アジピン酸架橋澱粉(1):C☆POLARTEX 06719(原料はワキシーコーン澱粉)、東海澱粉(株)製
・アジピン酸架橋澱粉(2):クレアラム CH2020(原料はワキシーコーン澱粉)、東海澱粉(株)製
・比較アジピン酸架橋澱粉(1):C☆POLARTEX 06716(原料はワキシーコーン澱粉)、東海澱粉(株)製
・比較アジピン酸架橋澱粉(2):C☆POLARTEX 06748(原料はワキシーコーン澱粉)、東海澱粉(株)製
・酸化澱粉(1):エースA(原料澱粉はコーン澱粉)、王子コーンスターチ(株)製
・カチオン化澱粉(1):cato304(原料澱粉はタピオカ澱粉)、日本エヌエスシー(株)製
【0077】
*澱粉の水溶液(表面処理剤)の調製方法
500mlのビーカーに澱粉懸濁水の濃度が2重量%になるように、イオン交換水、及び澱粉を加えて、攪拌しながら90℃まで昇温し、さらに、当該温度で1時間攪拌を行い澱粉の水溶液を得た。次いで、5℃/分の速度で前記水溶液を冷却し、2重量%の澱粉の水溶液(表面処理に用いる水溶液)を得た。また、澱粉の水溶液濃度が5重量%になるように、澱粉の量を調整した以外は、前記に準じた操作を行い、5重量%の澱粉水溶液(粘度の測定に用いる水溶液)を得た。
【0078】
原紙の製造は上記実施例A1等と同様に行った。
【0079】
表2、3中に示す澱粉を用いて、上記実施例A1等と同様に表面処理剤で処理し、塗工用原紙とした。
【0080】
上記で得られた塗工用原紙(表面処理紙)より上記実施例A1等と同様に塗工紙を製造した。但し、塗料は、炭酸カルシウム(FMT97、ファイマテック株式会社製)50gと微粒カオリン(アマゾンプラス、カデム(株)製)50gを配合し、分散剤としてポリアクリル酸ソーダ(ポイズ535M、花王(株)製)0.2g、及び2Nの苛性ソーダ0.2gを添加して分散し、接着剤として顔料100gに対してラテックス(NP200B、JSR(株)製)11g、変性デンプン(リン酸変性澱粉、王子コーンスターチ(株)製)3.5gを混合して調製した、有効分濃度が65%の塗料である。
【0081】
更に、テストスーパーカレンダー(熊谷理機工業(株)製)にて線圧200kg/cm、(圧力49MPa)、処理速度10m/分、ロール温度70℃、2ニップ処理することにより塗工紙を得た。
【0082】
表面処理剤の処理量、塗料の塗工量及び白紙光沢度について、塗工紙を上記実施例A1等と同様に評価した。
【0083】
【表2】

【0084】
【表3】

【0085】
表2及び3から、手抄き紙に本発明の表面処理を施した実施例B1〜B5及び実施例C1〜C4は、表面処理をしない、あるいは本発明とは異なる表面処理を施した比較例B1〜B5及び比較例C1〜C4と比べて、非常に高い光沢度を示すことがわかる。これは、顔料含有塗料の塗工量やカレンダー条件が同一条件である場合、実施例では塗料の浸透が抑制された結果、比較例に比べ光沢度の向上に寄与する有効塗工層が多くなっているためであると思われる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
25℃における5重量%の水溶液の粘度が2000〜12000mPa・sであり、25℃における剪断速度1000(1/秒)における粘度が300mPa・sでの法線応力が0〜2400Paである澱粉(a)を含有する塗工原紙用表面処理剤。
【請求項2】
澱粉(a)の含有量が0.1〜30重量%である、請求項1記載の塗工原紙用表面処理剤。
【請求項3】
請求項1又は2記載の塗工原紙用表面処理剤を、パルプを主原料とする紙の少なくとも片面に、片面当たり、乾燥重量で0.01〜3.0g/m2で処理した塗工原紙。
【請求項4】
請求項3記載の塗工原紙の前記塗工原紙用表面処理剤による処理面に、顔料と結着剤を主成分とする塗料の塗工層を設けてなる、密度が1.5g/cm3以下である塗工紙。
【請求項5】
請求項1又は2記載の塗工原紙用表面処理剤と水とを含有する表面処理剤組成物を、パルプを主原料とする紙の少なくとも片面に処理して塗工原紙を得る工程(I)と、該工程(I)で得られた塗工原紙の前記塗工原紙用表面処理剤組成物による処理面に、前記表面処理剤組成物とは異なる、顔料と結着剤を主成分とする塗料の塗工層を設ける工程(II)と、を有する、密度が1.5g/cm3以下である塗工紙の製造方法。

【公開番号】特開2010−265572(P2010−265572A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−284852(P2009−284852)
【出願日】平成21年12月16日(2009.12.16)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】