説明

塗工新聞用紙

【課題】 本発明は、浸透乾燥性インキを用いたオフセット印刷時のセットオフ不良やコスレ汚れ、パイリングなどの印刷トラブルを発生することのない優れた印刷作業性を有し、かつ優れたカラー印刷適性を有するオフセット印刷用塗工新聞用紙を提供するものである。
【解決手段】 原紙の少なくとも一方の面に、針状および/又は柱状の軽質炭酸カルシウムを含有する塗被液を有してなるオフセット印刷用塗工新聞用紙において、該軽質炭酸カルシウムは、粒子径1.0μm以下の累積体積が20%以下である消石灰粒子を原料とし、レーザー回折法による粒度分布曲線の50体積%粒子径(D50)が0.2〜0.7μmであることを特徴とするオフセット印刷用塗工新聞用紙。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オフセット印刷用塗工新聞用紙に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、オフセット型輪転印刷機が使用される新聞印刷においては、カラー化、高速化が急速に進んでおり、印刷媒体となる新聞用紙に関して、より優れたカラー印刷適性や印刷作業性を有する新聞用紙が求められている。
加えて新聞広告をはじめとしたカラー画像には、より高い再現性が要求されるようになっている。刷版の製造工程や原画の鮮明さの進歩も顕著であるものの通常の新聞用紙にカラー印刷を施しても色の鮮明さ、裏抜け(印刷後不透明度)は通常の印刷用塗工紙等に比べ著しく劣るものであり、特に印刷光沢により示されるような見た目に訴える力に欠けるものであった。
【0003】
この新聞用紙のカラー画像の再現性を向上させるために、その画像を再現する網点(ドット)を極小化する高精細印刷に関する技術開発が進められている。しかし、表面性の粗悪な印刷用紙で高精細印刷を行うと、その極小化した網点が印刷用紙に反映されず(素抜け)、画像の再現性に問題が生じる欠点があった。
【0004】
また、原紙に顔料とバインダーからなる塗被液を乾燥質量として、およそ8g/m以上を塗被、乾燥せしめてなる塗被紙は、表面性がよく高品位印刷に適しているが、塗工紙印刷では、ヒートセット装置を有した印刷輪転機と酸化重合乾燥性のインキを用いており、オフセット型輪転印刷機と浸透乾燥性インキを用いる新聞印刷とは乾燥システムが異なるため、これらの塗被紙を新聞輪転機で印刷するとセットオフ不良やコスレ汚れといった印面品質や印刷作業性に関わるトラブルを引き起こす可能性があり、事実上使用できないのが現状である。
【0005】
以上のような状況から、カラー印刷適性、印刷作業性を有する新聞用紙の開発が望まれており、各種顔料を接着剤とともに、原紙表面に塗工する方法が提案されている。
【0006】
例えば、特許文献1では、吸油量が80cc/100g以上の平板状顔料を含む塗被液を片面当たり0.1〜1.0g/m塗被するオフセット印刷用紙を提案しているが、顔料の吸油量が高いと、湿潤状態での表面強度が弱くなる傾向があり、印刷機のブランケットへの顔料パイリングの問題を引き起こすおそれがある。また、インキ中のビヒクル成分を急速に吸収するため紙面上のインキタックの急激な上昇を招き、印刷機ロールに高タックインキが付着して紙面を汚すおそれもある。
【0007】
特許文献2では、一次粒子径が0.1〜2.0μmの立方状の炭酸カルシウム二次凝集体を含む顔料を使用する方法、特許文献3では、針状顔料を含み、かつ平均吸油量が65cc/100g以上の顔料を塗工した新聞印刷用紙を提案しているが、これら顔料を含有した塗被液は、塗工層中のラテックス部数を増やす必要がある。しかし、ラテックス部数を増やすと、インキセット性が低下するためコスレ汚れなどの印刷トラブルを起こすおそれがある。
【0008】
特許文献4では、針状又は紡錘状の軽質炭酸カルシウムとプラスチックピグメントを含有した塗被液を片面当たり4.0g/m以上塗工したオフセット印刷用紙を提案しているが、インキが顔料に多く吸収されてしまうため、印刷後インキ濃度、印刷後光沢が発現しにくくなるおそれがあり、通常よりもインキ量を増やす必要があるため、乾燥仕切れていないインキによる引きずり汚れなどを引き起こすことが懸念される。
【0009】
特許文献5では、体積基準平均一次粒子径(D50)が0.4〜1.1μm、体積基準平均一次粒子径(D50)と体積基準10%一次粒子径(D10)との比(D50/D10)が2.00以下、体積基準90%一次粒子径(D90)と体積基準10%一次粒子径(D10)との比(D90/D10)が5.00以下である炭酸カルシウムを含有した塗被液を塗布するコールドオフセット印刷用新聞用紙を提案している。しかし、炭酸カルシウムとして軽質炭酸カルシウムを使用した場合に、軽質炭酸カルシウムの原料である消石灰粒子が微細な粒子を多く含んでいると、不均一な紡錘状軽質炭酸カルシウム一次粒子が得られることになり、印刷表面強度や印刷後光沢が低下するおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2009−155788号公報
【特許文献2】特開2008−150714号公報
【特許文献3】特開平2−169798号公報
【特許文献4】特開2011−122289号公報
【特許文献5】特開2007−186408号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、浸透乾燥性インキを用いたオフセット印刷時のセットオフ不良やコスレ汚れ、パイリングなどの印刷トラブルを発生することのない優れた印刷作業性を有し、かつ優れたカラー印刷適性を有するオフセット印刷用塗工新聞用紙を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者等は、オフセット印刷用塗工新聞用紙の塗被液の顔料について研究を重ねた結果、微細粒子の少ない消石灰を原料とし、特定の形状と粒径を有する軽質炭酸カルシウムを顔料に含有させることが重要な技術要素であることを見出した。
【0013】
本発明は、以下の構成を有している。
[1]原紙の少なくとも一方の面に、針状および/又は柱状の軽質炭酸カルシウムを含有する塗被液を有してなるオフセット印刷用塗工新聞用紙において、該軽質炭酸カルシウムは、粒子径1.0μm以下の累積体積が20%以下である消石灰粒子を原料とし、レーザー回折法による粒度分布曲線の50体積%粒子径(D50)が0.2〜0.7μmであることを特徴とするオフセット印刷用塗工新聞用紙。
[2]軽質炭酸カルシウムは、生石灰に対するモル比が2.5以下の範囲で消和水を添加し混合することにより消石灰を得る工程(A)、該消石灰と水とを混合することにより消石灰を得る工程(B)、および該消石灰に二酸化炭素含有ガスを吹き込み炭酸化する工程(C)を経て製造されることを特徴とする請求項[1]に記載のオフセット印刷用塗工新聞用紙。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、オフセット印刷時のセットオフ不良やコスレ汚れ、パイリングなどの印刷トラブルを発生することのない優れた印刷作業性を有し、かつ優れたカラー印刷適性を有するオフセット印刷用塗工新聞用紙を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<塗被液>
本発明のオフセット印刷用塗工新聞用紙において、塗被液は顔料と接着剤を主成分とし、その他必要に応じて助剤を添加する。
【0016】
<顔料>
(軽質炭酸カルシウム)
本発明に使用する軽質炭酸カルシウムは針状および/又は柱状の形状を有し、粒子径1.0μm以下の累積体積が20%以下である消石灰粒子を原料とし、レーザー回折法による前記軽質炭酸カルシウムの粒度分布曲線の50体積%の粒子径(D50)が0.2〜0.7μmであることにより、印刷表面強度、インキセット性に優れ、オフセット印刷時のパイリング、コスレ汚れを解消し、優れた印刷作業性及び優れたカラー印刷適性を有するオフセット印刷用塗工新聞用紙を提供することが可能となる。
【0017】
軽質炭酸カルシウムの形状は針状、立方状、紡錘状、柱状等があるが、本発明の効果である印刷表面強度、インキセット性、適度な摩擦係数すべて満足する効果を得るには、針状又は柱状である必要がある。その理由としては、針状および柱状という形状の特質から、塗被層表面および塗被層中において配向ムラが生じ難く、平滑な塗被層が形成されることが考えられる。
【0018】
本発明に使用する軽質炭酸カルシウムのD50は0.2〜0.7μmであり、好ましくは0.3〜0.6μmであり、さらに好ましくは0.35〜0.55μmである。D50が0.2μm未満では、接着強度が低下するため、接着剤の含有量を増やす必要が生じ、それに伴いインキセット性が低下するためコスレ汚れなどの印刷トラブルを引き起こすおそれがある。D50が0.7μmを超えると、顔料中の軽質炭酸カルシウムが局在化するため、摩擦係数が悪化し、コスレ汚れが発生し易くなるためである。
【0019】
本発明に使用する軽質炭酸カルシウムの粒度分布曲線の90体積%の粒子径(D90)と10体積%の粒子径(D10)の比(D90/D10)は特に制約されるものではないが、D90/D10は8以下であり、より好ましくは6以下であり、さらに好ましくは5.5以下である。D90/D10が8を超えると、粒度分布が不均一となり、印刷表面強度の低下、摩擦係数が悪化し、コスレ汚れが発生し易くなるおそれがあるためである。
【0020】
軽質炭酸カルシウムの配合量は特に制約されるものではないが、塗被液に含まれる全顔料の50重量%以上、より好ましくは70重量%以上、さらに好ましくは90重量%以上である。本発明の軽質炭酸カルシウムは表面平滑性、インキ乾燥性、印刷表面強度、滑り性に優れるため、一般によく使用されるカオリンの配合量を減じることができる。
【0021】
軽質炭酸カルシウムを得る方法は特に限定しないが、分散、粉砕、分級のし易さから消石灰に炭酸ガスを吹き込んで反応させる「液−ガス法」が好ましい。特に、生石灰に対するモル比が2.5以下の範囲で消和水を添加し混合することにより消石灰を得る工程(A)、該消石灰と水とを混合することにより消石灰を得る工程(B)、および該消石灰に二酸化炭素含有ガスを吹き込み炭酸化する工程(C)を経て製造されることを特徴とする軽質炭酸カルシウムであれば、所望の粒子形状、粒子径、粒度分布が得られ易い。
【0022】
前記(A)、(B)、(C)の各工程について詳述する。
生石灰は、石灰石を焼成したものであればよく、焼成装置に関しては、ベッケンバッハ炉、メルツ炉、ロータリーキルン、カーハーディー炉、コマ式炉、カルマチック炉、流動焼成炉、混合焼き立炉など、石灰石を転化する装置であれば特に限定はない。焼成温度および焼成時間は適宜調整可能であるが、石灰石を低温かつ長時間で生石灰を生成させた方が、高温かつ短時間で生成させた生石灰よりも針状形状の軽質炭酸カルシウムが得られやすい。また、生石灰中の二酸化炭素含有率が低い方が、針状形状の軽質炭酸カルシウムが得られやすく、石灰石の焼け残り成分としてJIS R 9011:2006に規定されている炭酸バリウム逆滴定法による二酸化炭素含有率が1.5%以下であることが好ましい。より好ましいのは二酸化炭素含有率が1.0%以下である。
軽質炭酸カルシウムは塗被液用顔料として利用するため、原料としてなるべく白色度の高い石灰石を用いるのがよい。特に、Fe、Mnなどの着色成分が問題となる場合があるので、なるべく着色成分含有量が少ない石灰石を用いることに留意する必要がある。
【0023】
消石灰の製造方法としては、生石灰すなわち酸化カルシウムに理論水和量の2倍前後の水を加えて消和を行う乾式消和法を用いる方が好ましい。乾式消和において、添加する消和水量は、生石灰に対するモル比で2.5以下であるのが好ましい。消和水量が、生石灰モル比で2.5を超えると、生石灰に消和水を添加した際に水が局在化するため、微細な消石灰が多く生成し、得られる軽質炭酸カルシウムの形状が紡錘状になり、紙に塗被すると平滑性、光沢発現性などの品質が低下する。
【0024】
上述のように、原料となる消石灰粒子が微細な粒子を多く含むと、生産される軽質炭酸カルシウムの品質は低下する。このため本発明者らは、レーザー回折法により消石灰粒子の体積粒度分布を測定することとした。体積粒度分布における粒径が1.0μm以下の微細な消石灰粒子の累積体積が20%を超えると、それを原料として用いた時に紡錘状の軽質炭酸カルシウムが生成される。この生成物である軽質炭酸カルシウムには、粗粒の粒子が混在し、粒径も不均一であるため、塗工用顔料に用いた場合には品質が劣る。従って、粒径が1.0μm以下の消石灰粒子の累積体積は20%以下とするのが好ましい。1.0μm以下の消石灰粒子の累積体積は、15%以下であることがより好ましく、10%以下であることがさらに好ましい。また、消石灰粒子の粒度分布をシャープにすることで、炭酸化反応が均一になり、軽質炭酸カルシウムの粒子径をより均一にすることができる。
【0025】
微細な粒子の混入の少ない粒径の均一な消石灰を生成するためには、生石灰と消和水とを混合する混合機が、混合物あるいは反応物を浮遊拡散効果で3次元的に流動・攪拌できる構造を有していることが好ましい。具体的には、混合容器自体が回転するミキサおよび容器と攪拌羽根との隙間が少ないミキサが挙げられる。これらのミキサを用いることで、攪拌時にデッドスペースが生じず、常に混合物が流動するため、生石灰に消和水を添加した際に水が局在化せず、生成した消石灰の凝集を防止することができ、微細粒子および粗大粒子の少ない均一な消石灰粒子を得ることができる。混合機内の浮遊拡散効果が低いと、生石灰に消和水を添加した際に水が局在化するおそれがあるため、微細な消石灰が多く生成し、得られる軽質炭酸カルシウムの形状が紡錘状になり、紙に塗被すると平滑性、光沢発現性などの品質が低下する場合がある。
【0026】
浮遊拡散効果を高めるためには、混合機での混合が攪拌羽根回転によって行なわれる場合は、該攪拌羽根回転の周速を0.5m/s以上とする必要がある。該攪拌羽根回転の周速は0.8m/s以上であることが好まく、1.5m/s以上にすることがさらに好ましい。また、混合機での混合が容器回転によって行なわれる場合は、該容器回転の周速が0.2m/s以上である必要がある。該容器回転の周速は0.4m/s以上であることが好ましい。さらに、分散混合用のせん断用攪拌羽根を設けることで、せん断効果を向上させ、微細粒子および粗大粒子の少ないより均一な消石灰粒子を得ることができる。
【0027】
連続方式に好適な混合機としては、混合機内の反応物を循環させるために送り機構と戻り機構を有した拡散用攪拌羽根を用い、さらにスキ型ショベル羽根、鋸歯状ショベル羽根などの特殊攪拌羽根を用いることで、より浮遊拡散効果が得られるので好ましい。攪拌羽根周速を2.0m/s以上とすることで、生石灰と水とを均一に混合でき、消石灰粒子の凝集を防止することができる。また、混合機を1機だけではなく、2機以上用いてもよい。混合機を2機以上用いることで、個々の混合機の攪拌周速、滞留時間を変えることができ、粗大粒子が少ないより好適な消石灰を得ることができる。
【0028】
生石灰の平均の大きさが5mm以下の場合、生石灰に添加する消和水温度は、低温であると消和反応が急激に進行し、得られる消石灰粒子の粒度分布の幅が広くなる。そのため、分級、粉砕工程を設ける場合に、作業に対する負荷が大きくなり、分級、粉砕設備にかかるコストが増大する。従って、消加水温度は40℃以上とするのが好ましく、60℃以上とするのがさらに好ましい。
生石灰の平均の大きさが5mmを超える場合は、生石灰に添加する消和水温度は、特に限定はなく、20℃前後の常温のものを用いても構わない。
【0029】
生石灰と消和水とを均一に混合するため、消和水の添加口は、1箇所ではなく、2箇所以上設けることが好ましい。また、消和水の添加方法としては、ノズル方式だけでなく、消和水を広範囲に噴霧できるスプレー方式を用いることも可能である。特に、粉末状生石灰や消和反応途中のものは、スプレー方式を用いることで、消和水の局在化を防止できるので好ましい。
バッチ方式の好適な消和水の添加方法としては、消和水の添加は一括で行うのではなく、分割添加又は連続的に5〜30分程度の時間をかけて添加する方が好ましい。連続方式の好適な消和水の添加方法としては、生石灰をミキサの一方の端に供給し、これを混合・攪拌しつつ他方の端に移動させるまでの間にミキサ上に複数の消和水供給口を設け、さらにミキサ出口に近い供給口は、スプレー方式とするのがよい。
【0030】
生石灰と消和水を混合する時間としては、特に制限はないが、規定量の消和水を添加した後、1分以上、好ましくは3分以上、より好ましくは5分以上、混合機内で攪拌するのがよい。生産性を考慮すると混合時間は8〜15分程度が好ましい。
【0031】
このようにして得られた消石灰をそのまま炭酸化反応に供することもできるが、粗大粒子を除去すれば、炭酸化反応が均一になり、軽質炭酸カルシウムの粒径をより均一にすることができるようになる。消石灰粒子の粒径は、150μm以下とするのが好ましく、75μm以下とするのがより好ましく、50μm以下とするのがさらに好ましい。
【0032】
粗大消石灰粒子を除去する方法としては、遠心分離式の分級機、振動スクリーン、スクリーン分級機などが挙げられる。分級機などで篩い分けされた粗大消石灰粒子は、粉砕機で粉砕し、分級工程へ戻す分級・粉砕閉回路とすることも可能である。分級・粉砕工程は、乾式又は湿式のどちらの方式を用いてもよい。粉砕機での消石灰粒子の過粉砕は、得られる軽質炭酸カルシウムが紡錘状になり、品質低下の要因となるため、防止する必要がある。
【0033】
炭酸化に供する消石灰スラリーの固形分濃度は、5質量%未満とすると、生産効率が低下し、40質量%を超えると微細な軽質炭酸カルシウムが生成されて、粘度も上昇して、操業性が劣る。従って、消石灰スラリーの固形分濃度は5〜40質量%であることが好ましい。消石灰スラリーの固形分濃度のより好ましい下限は8質量%であり、より好ましい上限は20質量%である。
【0034】
また、炭酸化開始時の消石灰スラリー温度は、生成物である軽質炭酸カルシウムの結晶形状に影響を及ぼすため、調整する必要がある。炭酸化開始温度が20℃未満であると、炭酸ガス又は炭酸ガス含有ガスを吹き込んだ際、微細な針状結晶が凝集したものになり、一方、50℃を超えると針状と紡錘状のものが混在して、均一な粒径の炭酸カルシウム粒子が形成されず、塗工紙品質が発現しないおそれがある。従って、針状粒子を得るためには、炭酸化開始温度は20〜50℃であることが望ましい。
【0035】
炭酸ガス又は炭酸ガス含有ガスの吹き込み量は、特に制限はないが、結晶形状の点から、反応開始前の消石灰1kg当たり100%炭酸ガス(1気圧、20℃換算)を10L/分以下とするのが好ましく、5L/分以下とすることがより好ましい。10L/分を超えると紡錘状あるいは凝集状の炭酸カルシウム粒子が形成され、塗工紙品質が発現しないおそれがある。生産性の点からは、1.5L/分以上とするのが好ましい。
【0036】
炭酸化反応はバッチ式でも連続式でもどちらでもよく、炭酸化反応槽も炭酸ガスを吹き込むことができればよい。バッチ式の反応槽として、円筒型又は円筒で下部のみ円錐になっている円筒コーン型などの反応槽を用いて、炭酸ガスを反応槽下部から吹き込むのが効率の点から好ましい。さらに、半回分式反応槽の下部の円錐に多数の穴をあけることで、炭酸ガスが微細な気泡となり、これらの微細な泡が消石灰スラリーと接触するので、効率的かつ均一に反応させることができる。
【0037】
また、反応槽に攪拌機を備え、攪拌しながら炭酸化を行うことにより、炭酸ガスが微細になり、消石灰スラリーとの接触が良くなり、反応が均一かつ効率的に行われる。攪拌機の攪拌周速としては、2.0m/s以上であるのが好ましく、さらに好ましいのは2.5m/s以上である。攪拌機としては、一軸又は二軸型のタンク用攪拌機、コーレスミキサ、高速攪拌式ディスパーザーなどを用いることができる。さらに反応槽中に邪魔板を設置することで、消石灰スラリーのせん断力を高めることができる。
【0038】
炭酸化反応前の消石灰スラリーに種晶を添加してもよい。種晶としてアラゴナイト系針状軽質炭酸カルシウムを予め添加しておくことで、類似の針状結晶が効率よく生成される。種晶の添加率は、水酸化カルシウム:アラゴナイト系針状軽質炭酸カルシウム=99.7:0.3〜95:5となるようにするのが好ましい。
【0039】
炭酸化反応の炭酸ガス含有ガスの好適なものとしては、二酸化炭素を含有する混合ガス、例えば、石灰石焼成排ガス、パルプ製造プラントの石灰焼成排ガス、セメント製造キルン排ガス、発電ボイラー排ガス、ゴミ焼却排ガスなどが挙げられる。炭酸ガス含有ガスとして上記排ガスを用いる場合、排ガス中の石灰石、石灰、硫黄酸化物、未燃カーボン等のダストをバグフィルター、電気集塵機、乾式スクラバー、湿式スクラバーもしくはこれらの組合せを用いることによって排ガスを浄化することが好ましい。
【0040】
炭酸カルシウムスラリーを塗被液用顔料として用いるためには、脱水して脱水組成物とする脱水工程と、該脱水工程により得られる脱水組成物に水分を加えてスラリー状の分散組成物とする分散工程と、所望の粒径に調整する粉砕工程を備えてもよい。
【0041】
脱水工程は、濾過、遠心分離、加圧脱水、圧搾などの操作により、固形分濃度70%程度まで脱水を行うことができる。好適な脱水装置としては、フィルタープレス、ベルトプレスなどがある。脱水工程後の脱水ケーキの固形分濃度が低い場合は、乾燥工程を付加して所望の固形分濃度まで上げることができる。乾燥機としては、ロータリードライヤー、ディスクドライヤー気流乾燥機、流動乾燥機などがある。また、脱水工程と乾燥工程が一体となった乾燥機能付きフィルタープレスを用いることもできる。
【0042】
なお、軽質炭酸カルシウムを本発明範囲の粒径とするために脱水工程後に分散工程および粉砕工程を設けることが好ましいが、分散処理後の平均粒子が所望の平均粒径の範囲にある場合、粉砕を行わずに、そのまま塗工用顔料として使用してもよい。
【0043】
消石灰の製造方法としては、乾式消和法の他に、理論水和量を大きく超える量の水の存在下で消和を行い、消石灰スラリーの状態で得られる湿式消和法を用いることもできる。湿式消和法で製造された消石灰粒子の粒径は1μm以下の微細な粒子が多く、粗大な粒子も混在するため、本発明の軽質炭酸カルシウム粒子を得るためには、粗大消石灰粒子および微細消石灰粒子を除去する必要がある。
【0044】
粗大消石灰粒子を除去する方法としては、振動スクリーン、スクリーン分級機などが挙げられる。振動スクリーンなどを通過した微細消石灰粒子を含む消石灰スラリーは、遠心分離機、サイクロン型分級機など用いて、微細消石灰粒子を除去することができる。
【0045】
(併用可能な顔料)
本発明に使用する顔料としては、本発明で規定する軽質炭酸カルシウム以外に、重質炭酸カルシウム、カオリン、タルク、シリカ、サチンホワイト、ホワイトカーボン、水酸化アルミニウム、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、二酸化チタン、プラスチックピグメント等の無機系あるいは有機系顔料の中から、1種類又は2種類以上を適宜選択して使用することができる。
【0046】
(接着剤)
本発明に使用する接着剤としては、スチレン−ブタジエン系、スチレン−アクリル系、エチレン−酢酸ビニル系、ブタジエン−メチルメタクリレート系、酢酸ビニル−ブチルアクリレート系等の各種共重合体、あるいはポリビニルアルコール、無水マレイン酸系共重合体、アクリル酸−メチルメタクリレート系の合成接着剤、カゼイン、大豆蛋白、合成蛋白などの蛋白質類、酸化澱粉、カチオン化澱粉、デキストリンなどの澱粉類、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースなどのセルロース誘導体など、通常の塗工紙用接着剤の中から、1種類又は2種類以上を適宣選択して使用することができる。
【0047】
本発明に使用する接着剤の配合量は特に制約されるものではないが、塗被液に含まれる顔料100重量%に対して、10〜120重量%、より好ましくは20〜100重量%、さらに好ましくは20〜80重量%である。接着剤の配合量が顔料100重量%に対して、10重量%未満では十分な接着力が得られないおそれがある。120重量%を超えると、インキ吸収性が低下し、セットオフ不良が発生するおそれがある。
【0048】
(助剤)
本発明に使用する助剤としては、分散剤、消泡剤、防腐剤、粘性改良剤、着色剤、潤滑剤、耐水化剤等の中から、1種類又は2種類以上を適宜選択して使用することができる。
【0049】
(原紙)
本発明に使用する原紙としては、特に限定するものではないが、原料パルプとして化学パルプ(NBKP、LBKP等)、機械パルプ(GP、CGP、RGP、TMP等)、古紙パルプ(DIP等)の1種類以上が適宣混合され、紙料の調製が行われる。紙料中に必要に応じてホワイトカーボン、クレー、無定形シリカ、タルク、酸化チタン、炭酸カルシウム等の填料を添加し、さらに必要に応じて紙力増強剤、歩留り向上剤、強化ロジンサイズ剤、エマルジョンサイズ剤などの内添サイズ剤、耐水化剤、紫外線防止剤などの一般に公知公用の抄紙用薬品が添加された酸性紙又は中性紙であればよく、原紙の坪量は、一般的には30〜50g/m2程度、抄紙機は特に限定されることはなく、例えば、長網式抄紙機、ツインワイヤー式抄紙機、円網式抄紙機、短網式抄紙機等の抄紙機を使用することができる。
【0050】
(塗被および仕上げ)
オフセット印刷用塗工新聞用紙用塗被組成物は、固形分濃度を30〜50質量%程度に調製し、前記原紙上に乾燥重量で片面当たり0.5〜3.0g/m、より好ましくは0.5〜2.0g/m、さらに好ましくは0.7〜1.4g/mになるように塗被、乾燥する。塗被層を形成する装置としては、ブレードコーター、ロールコーター、エアーナイフコーター、ロッドコーター、カーテンコーター、スプレーコーター等の従来公知の塗被装置の中から適宜選択して使用することができるが、ブレードメタリングサイズプレス、ロッドメタリングサイズプレス、ゲートロールコーターなどのフィルム転写型塗工装置が好ましく用いられる。フィルム転写型塗工装置は低濃度で塗工液が浸透しにくく、表面処理剤を効果的に紙表面にとどめることが可能である。これらの塗工機はオンマシンでもオフマシンでも良いが、生産性などを考慮するとオンマシンでの塗工が好ましい。また、湿潤塗被層を乾燥する方法としては、特に限定するものではなく、蒸気乾燥、ガスヒーター乾燥、電気ヒーター乾燥、赤外線ヒーター乾燥等の各種方式が採用できる。
【0051】
本発明のオフセット印刷用塗工新聞用紙の製造に関しては、塗料組成物の塗工層を形成後に、各種キャレンダー装置にて平滑化処理が施されるが、かかるキャレンダー装置としては、スーパーキャレンダー、ソフトキャレンダー、グロスキャレンダー、コンパクトキャレンダー、マットスーパーキャレンダー、マットキャレンダーなどに一般に使用されているキャレンダー装置が適宣使用される。キャレンダー仕上げ条件としては、剛性ロールの温度キャレンダー圧力、ニップ数、ロール速度キャレンダー前水分などが要求される品質に応じて適宣選択される。使用するキャレンダー装置の材質は、剛性ロールでは、金属もしくは、その表面に硬質クロムメッキなどで鏡面処理したロールである。また弾性ロールはウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、フェノール樹脂ポリアクリレート樹脂などの樹脂ロール、コットン、ナイロン、アラミド樹脂などを形成したロールが適宣使用される。なお、キャレンダーによる仕上げ後の塗工紙の調湿、加湿のための水塗り装置、静電加湿装置、蒸気加湿装置などを適宣組み合わせて使用することも可能である。
【0052】
本発明のオフセット印刷用塗工新聞用紙の白色度は高いほうが、印刷発色コントラストを得られるためカラー印刷では特に高いほうが良いが、高すぎると裏面の印刷が透けて見えやすくなるため、印刷品質の低下が起こってしまう。具体的には白色度53〜78%が好ましく、55〜70%がより好ましい。また印刷後不透明度は高ければ高いほど良く、88%以上が好ましく、90%以上がさらに好ましい。印刷後不透明度が低いと両面に印刷を行う新聞用紙の場合、裏面の印刷品質を低下させてしまうため好ましくない。
【0053】
以下に、具体例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらによって制約を受けるものではない。また、例中の部および%は特に限らない限り、それぞれ質量部および質量%を示す。
【0054】
(実施例1)
(オフセット印刷用塗工新聞用紙原紙の製造)
針葉樹漂白クラフトパルプ(NBKP)10部、サーモメカニカルパルプ(TMP)26部、チラシを含む新聞脱墨パルプ(DIP)64部の割合で混合して離解し、リファイナーで叩解処理したパルプスラリーに、カチオン化澱粉(商品名:P3Y、PIRAAB STARCH Co.Ltd製)を0.5%、中性ロジンサイズ剤(商品名:N815、荒川科学株式会社製)を0.8%、填料としてタルク(商品名:ミストロン、日本ミストロン株式会社製)を2%、ホワイトカーボン(自製品)を4%、これら全てを対絶乾パルプ質量%の割合で添加し、硫酸バンドで抄紙pHを6.5に調整後、得られた紙料をギャップフォーマー抄紙機で抄紙し、米坪42.0g/mのオフセット印刷用塗工新聞用紙原紙を得た。
【0055】
(軽質炭酸カルシウム(A)の調製)
混合機としてチョッパー羽根を取外し、全てをショベル羽根にした連続式プロシェアミキサWA150型(大平洋機工社製)を用いて、混合機の一端から工業用生石灰(CO含有率0.3%)を4kg/min投入し、他端から消石灰が排出されるまでの滞留時間を8分とし、ショベル羽根周速3.0m/s、30℃の消和水を2.58kg/minをノズル方式で2箇所から添加した。得られた消石灰をカットポイント35μmで分級した後、35℃の水と混合し10%消石灰スラリー10kgを調製した。攪拌周速5.0m/s、炭酸/空気混合ガス(ガス濃度20%)を16L/minの流量でpH=7〜8になるまで炭酸化し、軽質炭酸カルシウムスラリーを得た。
前記炭酸カルシウムスラリーをフィルタープレス・ドライヤーロールフィット(株式会社宇野澤組鐵工所製)により脱水・操作を行い、固形分濃度73%のケーキを得た。次いで、インテンシブミキサを用いて軽質炭酸カルシウムに対し1.0%ポリアクリル酸ソーダ分散剤(商品名:アロンT−50、東亜合成社製)を加えて分散し、軽質炭酸カルシウムスラリーを調製した。さらに、上記軽質炭酸カルシウムスラリーを、解砕メディアとして直径1.0〜1.4mmのガラスビーズを用いてサンドグラインダーで湿式粉砕処理を60分間行い、固形分濃度71%の顔料評価用軽質炭酸カルシウムスラリーを調製した。
【0056】
(オフセット印刷用塗工新聞用紙塗被液の調製)
カオリン(商品名:MGJ、BASF社製)30部、上記軽質炭酸カルシウム(A)70部(固形分換算)に対して、接着剤として酸化澱粉(商品名;エースY、王子コーンスターチ社製)50部、スチレン−ブタジエン共重合ラテックス(商品名;OJ3000H、JSR社製)6部(いずれも固形分換算)を加え、固形分濃度40%の塗料を調製した。
【0057】
(オフセット印刷用塗工新聞用紙の作成)
上記原紙両面に、ゲートロールコーターを用いて、乾燥後重量が片面当たり0.95g/mになるように上記塗被液を塗被、乾燥後、ソフトニップカレンダーを通すことによってオフセット印刷用塗工新聞用紙を得た。
【0058】
(実施例2)
実施例1の顔料としてカオリン(商品名:MGJ、BASF社製)10部、軽質炭酸カルシウム(A)90部(固形分換算)と顔料配合部数を変更した以外は、実施例1と同様にしてオフセット印刷用塗工新聞用紙を得た。
【0059】
(実施例3)
実施例1の顔料として、上記軽質炭酸カルシウム(A)100部(固形分換算)と顔料配合部数を変更した以外は、実施例1と同様にしてオフセット印刷用塗工新聞用紙を得た。
【0060】
(実施例4)
実施例1の顔料として下記方法で調製した軽質炭酸カルシウム(B)を用いた以外は実施例1と同様にしてオフセット印刷用塗工新聞用紙を得た。
【0061】
(軽質炭酸カルシウム(B)の調製)
混合機としてチョッパー羽根を取外し、全てをショベル羽根にした連続式プロシェアミキサWA150型(大平洋機工社製)を用いて、混合機の一端から工業用生石灰(CO含有率0.3%)を4kg/min投入し、他端から消石灰が排出されるまでの滞留時間を8分とし、ショベル羽根周速3.0m/s、30℃の消和水を2.58kg/minをノズル方式で2箇所から添加した。得られた消石灰をカットポイント100μmで分級し、45℃の水と混合し、10%消石灰スラリー10kgを調製した。攪拌周速5.0m/s、炭酸/空気混合ガス(ガス濃度20%)を16L/minの流量でpH=7〜8になるまで炭酸化し、軽質炭酸カルシウムスラリーを得た。
前記炭酸カルシウムスラリーをフィルタープレス・ドライヤーロールフィット(株式会社宇野澤組鐵工所製)により脱水・操作を行い、固形分濃度73%のケーキを得た。次いで、インテンシブミキサを用いて軽質炭酸カルシウムに対し1.0%ポリアクリル酸ソーダ分散剤(商品名:アロンT−50、東亜合成社製)を加えて分散し、軽質炭酸カルシウムスラリーを調製した。さらに、上記軽質炭酸カルシウムスラリーを、解砕メディアとして直径1.0〜1.4mmのガラスビーズを用いてサンドグラインダーで湿式粉砕処理を60分間行い、固形分濃度71%の顔料評価用軽質炭酸カルシウムスラリーを調製した。
【0062】
(実施例5)
実施例1の顔料として下記方法で調製した軽質炭酸カルシウム(C)を用いた以外は実施例1と同様にしてオフセット印刷用塗工新聞用紙を得た。
【0063】
(軽質炭酸カルシウム(C)の調製)
攪拌機付容器に60℃の消和水9kgを仕込み、攪拌しながら工業用生石灰(CO含有率0.3%)を1kg添加して、120分間消和した。得られた消石灰を200メッシュ(75μm)の篩で分級した後、遠心分離機を用いて、微粒スラリーと粗粒スラリーに分離した。分離した粗粒消石灰スラリーを40℃まで冷却し、12%の消石灰スラリー10kgを調製した。次に、消石灰スラリーに種結晶として針状軽質炭酸カルシウム(商品名:TP123CS、奥多摩工業社製)を固形分換算で消石灰:針状軽質炭酸カルシウム=99:1となる比率で添加した。攪拌周速5.0m/s、炭酸ガス(ガス濃度100%)を12L/minの流量でpH=7〜8となるまで炭酸化させ、軽質炭酸カルシウムを得た。
前記炭酸カルシウムスラリーをフィルタープレス・ドライヤーロールフィット(株式会社宇野澤組鐵工所製)により脱水・操作を行い、固形分濃度73%のケーキを得た。次いで、インテンシブミキサを用いて軽質炭酸カルシウムに対し1.0%ポリアクリル酸ソーダ分散剤(商品名:アロンT−50、東亜合成社製)を加えて分散し、軽質炭酸カルシウムスラリーを調製した。さらに、上記軽質炭酸カルシウムスラリーを、解砕メディアとして直径1.0〜1.4mmのガラスビーズを用いてサンドグラインダーで湿式粉砕処理を60分間行い、固形分濃度71%の顔料評価用軽質炭酸カルシウムスラリーを調製した。
【0064】
(比較例1)
実施例1の顔料として下記方法で調製した軽質炭酸カルシウム(D)を用いた以外は実施例1と同様にしてオフセット印刷用塗工新聞用紙を得た。
【0065】
(軽質炭酸カルシウム(D)の調製)
攪拌機付容器に60℃の消和水9kgを仕込み、攪拌しながら工業用生石灰(CO含有率0.3%)を1kg添加して、120分間消和した。得られた消石灰スラリーを分級せず、解砕メディアである直径1.0〜1.4mmのガラスビーズを充填してサンドグラインダーで湿式粉砕処理を10分間行い、12%の消石灰スラリー10kgを調製した。次に、消石灰スラリーに種結晶として針状軽質炭酸カルシウム(商品名:TP123CS、奥多摩工業社製)を固形分換算で消石灰:針状軽質炭酸カルシウム=99:1となる比率で添加した。攪拌周速5.0m/s、炭酸ガス(ガス濃度100%)を12L/minの流量でpH=7〜8となるまで炭酸化させ、軽質炭酸カルシウムを得た。
前記炭酸カルシウムスラリーをフィルタープレス・ドライヤーロールフィット(株式会社宇野澤組鐵工所製)により脱水・操作を行い、固形分濃度73%のケーキを得た。次いで、インテンシブミキサを用いて軽質炭酸カルシウムに対し1.0%ポリアクリル酸ソーダ分散剤(商品名:アロンT−50、東亜合成社製)を加えて分散し、軽質炭酸カルシウムスラリーを調製した。さらに、上記軽質炭酸カルシウムスラリーを、解砕メディアとして直径1.0〜1.4mmのガラスビーズを用いてサンドグラインダーで湿式粉砕処理を60分間行い、固形分濃度71%の顔料評価用軽質炭酸カルシウムスラリーを調製した。
【0066】
(比較例2)
実施例1のオフセット印刷用塗工新聞用紙塗被液の調製において、軽質炭酸カルシウム(A)を紡錘状軽質炭酸カルシウム(商品名;コーラルブライトFD、矢橋工業株式会社製)70部に置換した以外は実施例1と同様にしてオフセット印刷用塗工新聞用紙を得た。
【0067】
(比較例3)
実施例1のオフセット印刷用塗工新聞用紙塗被液の調製において、軽質炭酸カルシウム(A)を柱状軽質炭酸カルシウム(商品名;TP123CS、奥多摩工業株式会社製)70部に置換した以外は実施例1と同様にしてオフセット印刷用塗工新聞用紙を得た。
【0068】
(比較例4)
実施例1のオフセット印刷用塗工新聞用紙塗被液の調製において、軽質炭酸カルシウム(A)を立方状軽質炭酸カルシウム(商品名;ブリリアントS15、白石工業株式会社製)70部に置換した以外は実施例1と同様にしてオフセット印刷用塗工新聞用紙を得た。
【0069】
各実施例および比較例で得られたオフセット印刷用塗工新聞用紙を下記方法で物性評価し、その結果を表1に示した。
【0070】
(粒径測定)
レーザー回折法(日機装社製マイクロトラックHRAX−100)による粒度分布を測定した。累積体積が10%、50%、90%に相当する粒径をD10、D50、D90として、50体積%(D50)の粒子径を平均粒子径とし、さらに90体積%(D90)と10体積%(D10)の比(D90/D10)を求めた。
参考までに、X線透過式粒度分布測定装置(マイクロメリテックス社製セディグラフ5100)による粒度分布も測定した。累積体積が10%、50%、90%に相当する粒径をd10、d50、d90として求めたが、本発明例と比較例のd10が小さく、測定範囲外であった。
【0071】
(白色度)
本発明におけるオフセット印刷用塗工新聞用紙の白色度は、JIS P 8148:2001に準じて、分光白色度測定計(SC−10WT:スガ試験機社製)を用いて測定した。
【0072】
(動摩擦係数)
JIS P 8147に準拠して、表裏−縦縦での測定で、引張速度は200mm/minで測定した。
【0073】
(インキセット)
RI印刷試験機(石川島産業機械製)にてオフセット輪転機用新聞印刷インキ(NEWS WEBMASTER/プロセス黒G2、サカタインクス社製)を0.5cc練った後、印刷を行い、3分後に白紙と印刷面を重ねて、再度RI印刷機にニップし、白紙に転写したインキ濃度を目視評価した。
◎:白紙にほとんど転写せず、インキセットが早い。
○:白紙に少し転写があり、インキセットがやや遅いが、実用上問題ないレベル。
△:白紙に転写があり、インキセットが遅く、実用上許容できないレベル。
×:白紙の多くの転写があり、劣る。
【0074】
(パイリング)
RI印刷試験機(石川島産業機械製)にてタック値13のインキを0.6cc練り印刷を行い、ブランケットに残ったインキをコート紙に転写して白抜け部分を目視評価した。
◎:パイリングが発生しせず、良好。
○:パイリングが少し発生するが、実用上問題ないレベル。
△:パイリングが発生し、実用上許容できないレベル。
×:パイリングが多く発生し、劣る。
【0075】
(コスレ汚れ)
RI印刷試験機(石川島産業機械製)でオフセット輪転機用新聞印刷インキ(NEWS WEBMASTER/プロセス黒G2、サカタインクス社製)を0.5cc練った後、印刷を行い、3時間後印刷物表面を未印刷のコピー用紙(白紙)で擦り、コピー用紙のコスレ汚れの状況を目視評価した。
◎:コスレ汚れが認められず、良好。
○:コスレ汚れが僅かに認められるが、実用上問題ないレベル。
△:コスレ汚れが認められ、実用上許容できないレベル。
×:コスレ汚れが明確に認められ、劣る。
【0076】
(印刷光沢)
RI印刷試験機(石川島産業機械製)でオフセット輪転機用新聞印刷インキ(NEWS WEBMASTER/プロセス黒G2、サカタインクス社製)を0.7cc練った後、印刷を行い、印刷光沢を目視評価した。
◎:印刷光沢が高く、良好。
○:印刷光沢はあるが、個人差などにより十分とは言えない場合あり。
△:印刷光沢が低く、光沢感としては不十分。
×:印刷光沢がほとんどなく、劣る。
【0077】
【表1】

【0078】
表1より、本発明の軽質炭酸カルシウムを顔料として用いた実施例1〜5のオフセット印刷用塗工新聞用紙は、印刷適性および印刷作業性に優れる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原紙の少なくとも一方の面に、針状および/又は柱状の軽質炭酸カルシウムを含有する塗被液を有してなるオフセット印刷用塗工新聞用紙において、該軽質炭酸カルシウムは、粒子径1.0μm以下の累積体積が20%以下である消石灰粒子を原料とし、レーザー回折法による粒度分布曲線の50体積%粒子径(D50)が0.2〜0.7μmであることを特徴とするオフセット印刷用塗工新聞用紙。
【請求項2】
軽質炭酸カルシウムは、生石灰に対するモル比が2.5以下の範囲で消和水を添加し混合することにより消石灰を得る工程(A)、該消石灰と水とを混合することにより消石灰を得る工程(B)、および該消石灰に二酸化炭素含有ガスを吹き込み炭酸化する工程(C)を経て製造されることを特徴とする請求項1記載のオフセット印刷用塗工新聞用紙。

【公開番号】特開2013−96028(P2013−96028A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−239104(P2011−239104)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(000122298)王子ホールディングス株式会社 (2,055)
【Fターム(参考)】