塗工液、積層多孔質フィルム及び積層多孔質フィルムの製造方法

【課題】塗工液、積層多孔質フィルム及び積層多孔質フィルムの製造方法を提供する。
【解決手段】バインダー樹脂、フィラー及び媒体を含み、前記フィラーは、比表面積7m2/g以上80m2/g以下のフィラー(a)と、比表面積2m2/g以上7m2/g以下のフィラー(b)とを、フィラー(a):フィラー(b)の重量比5:95〜40:60で含む混合物である。本発明の積層多孔性フィルムは、耐熱層が、基材多孔質フィルムの片面又は両面に積層された積層多孔質フィルムであり、前記耐熱層は、前記塗工液から媒体を除去して形成された層である。本発明の製造方法は、フィラー及びバインダー樹脂を含む耐熱層が基材多孔質フィルムの片面又は両面に積層された積層多孔質フィルムの製造方法であり、前記塗工液から媒体を除去して耐熱層を形成する工程を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水電解液二次電池用セパレータとして好適な積層多孔質フィルムの製造に用いられる塗工液、該塗工液を使用して製造される積層多孔質フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
非水電解液二次電池、特にリチウム二次電池は、エネルギー密度が高いのでパーソナルコンピュータ、携帯電話、携帯情報端末などに用いる電池として広く使用されている。
【0003】
これらのリチウム二次電池に代表される非水電解液二次電池は、エネルギー密度が高く、電池の破損あるいは電池を用いている機器の破損等により内部短絡または外部短絡が生じた場合には、大電流が流れて発熱することがある。そのため、非水電解液二次電池には一定以上の発熱を防止し、高い安全性を確保することが求められている。
安全性の確保手段として、異常発熱の際に、セパレータにより、正−負極間のイオンの通過を遮断して、さらなる発熱を防止するシャットダウン機能を持たせる方法が一般的である。シャットダウン機能をセパレータに持たせる方法としては、異常発熱時に溶融する材質からなる多孔質フィルムをセパレータとして用いる方法が挙げられる。該セパレータを用いた電池は、異常発熱時に多孔質フィルムが溶融および無孔化することにより、イオンの通過を遮断し、さらなる発熱を抑制することができる。
【0004】
このようなシャットダウン機能を有するセパレータとしては例えば、ポリオレフィン製の多孔質フィルムが用いられる。該ポリオレフィン製の多孔質フィルムからなるセパレータは、電池の異常発熱時には、約80〜180℃で溶融および無孔化することでイオンの通過を遮断(シャットダウン)することにより、さらなる発熱を抑制する。しかしながら、場合によっては、前記多孔質フィルムからなるセパレータは、収縮や破膜等により、正極と負極が直接接触して、短絡を起こすおそれがある。ポリオレフィン製の多孔質フィルムからなるセパレータは、形状安定性が不十分であり、短絡による異常発熱を抑制できない場合がある。
【0005】
高温での形状安定性に優れた非水電解液二次電池用セパレータがいくつか提案されている。その一つとして、フィラーを含む耐熱層と、基材としてのポリオレフィンを主体とする多孔質フィルム(以下、「基材多孔質フィルム」と称す場合がある。)とが積層された積層多孔質フィルムからなる非水電解液二次電池用セパレータが提案されている(例えば、特許文献1参照)。かかるセパレータにおいては積層多孔質フィルム表面からのフィラーの脱落の抑制が課題の一つである。
セパレータからフィラーが脱落すると、期待されるセパレータとしての物性が発現しないことや、電池を組み立てる際に脱落した粉(フィラー)により装置が汚染されるなどの不具合が生じる。
【0006】
上述のフィラーの脱落を抑制する方法として、フィラーの表面を修飾する方法(例えば、特許文献2参照)、フィラーを結着させるバインダー樹脂の化学構造に特徴を持たせる方法(例えば、特許文献3参照)及び、フィラーを固定する繊維の平均繊維径とフィラーの粒径とを所定の関係に制御する方法(例えば、特許文献4)が提案されている。
しかしながら、これらの方法によるフィラー脱落の抑制は十分とは言い難く、更なる改善が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−227972号公報
【特許文献2】特開2007−311151号公報
【特許文献3】国際公開第2009/123168号パンフレット
【特許文献4】特開2006−331760号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、高温での形状安定性およびイオン透過性が高く、かつフィラー脱落をより抑制したセパレータの形成に適した塗工液、及び該塗工液から形成される層を有するセパレータを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、以下を提供する。
<1> バインダー樹脂、フィラー及び媒体を含み、
前記フィラーが、比表面積7m2/g以上80m2/g以下のフィラー(a)と、比表面積2m2/g以上7m2/g以下のフィラー(b)とを、フィラー(a):フィラー(b)の重量比5:95〜40:60で含む混合物である塗工液。
<2> 前記フィラー(a)の比表面積が7m2/g以上40m2/g以下である<1>の塗工液。
<3> 前記バインダー樹脂の重量を1としたときの前記フィラーの重量比が20以上100以下である<1>または<2>の塗工液。
<4> 前記フィラー(b)の形状が、一次粒子の複数個が集合し、かつ固着した形態の連結粒子を主成分として含む<1>から<3>のいずれかの塗工液。
<5> 前記フィラー(b)の形状が、一次粒子の複数個が集合し、かつ固着した形態の非球状の連結粒子を主成分として含む<1>から<4>のいずれかの塗工液。
<6> 前記フィラーが、無機フィラーである<1>から<5>のいずれかの塗工液。
<7> 前記無機フィラーが、アルミナである<6>の塗工液。
<8> 前記バインダー樹脂が、水溶性高分子である<1>から<7>のいずれかの塗工液。
<9> 前記水溶性高分子が、カルボキシアルキルセルロース、アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、澱粉、ポリビニルアルコール及びアルギン酸ナトリウムからなる群から選ばれる少なくとも1種である<8>の塗工液。
<10> フィラー及びバインダー樹脂を含む耐熱層が、基材多孔質フィルムの片面又は両面に積層された積層多孔質フィルムであって、前記耐熱層が、<1>から<9>のいずれかの塗工液から媒体を除去して形成された耐熱層である積層多孔質フィルム。
<11> 前記基材多孔質フィルムが、ポリオレフィンを主成分とする多孔質フィルムである<10>の積層多孔質フィルム。
<12> フィラー及びバインダー樹脂を含む耐熱層が基材多孔質フィルムの片面又は両面に積層された積層多孔質フィルムの製造方法であって、<1>から<9>のいずれかに記載の塗工液から媒体を除去して耐熱層を形成する工程を含む方法。
<13> 塗工液を基材多孔質フィルムに直接塗工する工程をさらに含む<12>の方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、フィラー脱落が抑制され、加熱時の形状維持性の高い耐熱層を有し、イオン透過性に優れた非水電解液二次電池用セパレータとして好適な積層多孔質フィルムが提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】非球状連結粒子の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<塗工液>
本発明は、バインダー樹脂、フィラー及び媒体を含み、前記フィラーが、比表面積7m2/g以上80m2/g以下のフィラー(a)と、比表面積2m2/g以上7m2/g以下のフィラー(b)とを、フィラー(a):フィラー(b)の重量比5:95〜40:60で含む混合物である塗工液に関する。
【0013】
本発明の塗工液は、基材多孔質フィルム(以下、「A層」と称す。)とフィラー及びバインダー樹脂を含む耐熱層(以下、「B層」と称す。)とが積層された積層多孔質フィルムにおけるB層の形成に好適に用いることができる。前記積層多孔質フィルムは、セパレータ、特に非水電解液二次電池用セパレータとして好適に使用される。本発明の塗工液は、媒体中にフィラーが分散していることから、塗工スラリーということができる。
塗工液から形成される耐熱層(B層)は、塗工液に含まれるフィラーがバインダー樹脂で結着された層であり、基材多孔質フィルム(A層)が無孔化する温度における耐熱性を有しており、積層多孔質フィルムに形状維持性の機能を付与する。B層は塗工液から媒体を除去して製造することができる。
また、基材多孔質フィルムは、高温になると溶融して無孔化する性質を持つことができ、積層多孔質フィルムをセパレータとして使用したときには、電池の異常発熱時に、溶融して無孔化することにより、積層多孔質フィルムにシャットダウンの機能を付与する。A層の詳細については後述する。
【0014】
以下、塗工液の構成物質につき、詳細に説明する。
【0015】
<バインダー樹脂>
塗工液に含まれるバインダー樹脂は、フィラーにおける粒子同士、およびフィラーと基材多孔質フィルムを結着させる性能を持ち、電池の電解液に対して溶解し難く、またその電池の使用時に電気化学的に安定である樹脂が好ましい。
バインダー樹脂としては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリフッ化ビニリデンやポリテトラフルオロエチレンなどの含フッ素樹脂、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン共重合体やエチレン−テトラフルオロエチレン共重合体などの含フッ素ゴム、スチレン−ブタジエン共重合体およびその水素化物、メタクリル酸エステル共重合体、アクリロニトリル−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、エチレンプロピレンラバー、ポリ酢酸ビニルなどのゴム類、ポリフェニレンエーテル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルアミド、ポリエステルなどの融点やガラス転移温度が180℃以上の樹脂、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、セルロースエーテル、アルギン酸ナトリウム、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリメタクリル酸等のバインダー樹脂が挙げられる。
バインダー樹脂は、塗工液中に分散してもよいが、塗工液の均一性を高め、より少量でフィラーを結合できる点で、塗工液に溶解できるバインダー樹脂が好ましい。
塗工液に溶解できるバインダー樹脂は、塗工液における媒体の種類に依存するが、バインダー樹脂の中でも、水溶性高分子は、溶媒として水を主体とした溶媒を用いることができるため、プロセスや環境負荷の点で好ましい。水溶性高分子は、カルボキシアルキルセルロース、アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、澱粉、ポリビニルアルコール及びアルギン酸ナトリウムからなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、特にセルロースエーテルが好ましい。
セルロースエーテルとして具体的には、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、カルボキシエチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、シアンエチルセルロース、オキシエチルセルロース等が挙げられ、化学的な安定性に優れたCMC、HECが特に好ましく、特にCMCが好ましい。カルボキシアルキルセルロースとしては、カルボキシアルキルセルロースの金属塩であってもよい。カルボキシメチルセルロース(CMC)は、カルボキシメチルセルロースナトリウムを含む。
【0016】
<フィラー>
フィラーとしては、無機フィラーまたは有機フィラーを用いることができる。有機フィラーとして具体的には、スチレン、ビニルケトン、アクリロニトリル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレート、アクリル酸メチル等の単独あるいは2種類以上の共重合体;ポリテトラフルオロエチレン、4フッ化エチレン−6フッ化プロピレン共重合体、4フッ化エチレン−エチレン共重合体、ポリビニリデンフルオライド等のフッ素系樹脂;メラミン樹脂;尿素樹脂;ポリエチレン;ポリプロピレン;ポリメタクリレート等の有機物からなるフィラーが挙げられ、無機フィラーとして具体的には、炭酸カルシウム、タルク、クレー、カオリン、シリカ、ハイドロタルサイト、珪藻土、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、アルミナ、マイカ、ゼオライト、ガラス等の無機物からなるフィラーが挙げられる。なお、これらのフィラーは、単独あるいは2種以上を混合して用いることができる。
フィラーとしては、これらの中でも耐熱性および化学的安定性の観点から、無機フィラーが好ましく、無機酸化物フィラーがより好ましく、アルミナフィラーが特に好ましい。
アルミナには、α−アルミナ、β−アルミナ、γ−アルミナ、θ−アルミナ等の多くの結晶形が存在するが、いずれも好適に使用することができる。この中でも、α−アルミナが熱的・化学的安定性が特に高いため、最も好ましい。
これらのフィラーの材料は、それぞれ単独で用いることができる。2種以上の材料を混合して用いることもできる。
【0017】
塗工液に含まれるフィラーは、比表面積7m2/g以上80m2/g以下のフィラー(a)と、比表面積2m2/g以上7m2/g以下のフィラー(b)とから実質的になることが好ましく、フィラー(a):フィラー(b)の重量比が、5:95〜40:60である。該フィラー(a)の比表面積は、塗工液を用いることにより得られる積層多孔質フィルムの表面が、より平滑になる点で40m2/g以下であることが好ましい。
【0018】
上記2種類のフィラーのうち、比表面積の小さいフィラー(b)は、塗工液を用いて、上記耐熱層を形成した場合に、耐熱層の主骨格となる。
フィラー(a)は比表面積が大きいため、バインダー樹脂の付着量が多く、耐熱層中において、フィラーとの結着点が多くなり、フィラー間の結着性を向上させる効果がある。
【0019】
また、後述するように、フィラー(a)は、積層多孔質フィルムを製造する際にバインダー樹脂が基材多孔質フィルムの細孔内へ過剰に入り込むことを抑制する作用も有する。
また、フィラー(b)によって形成される耐熱層の主骨格となる構造が有する空隙部分をフィラー(a)が閉塞することなしに、空隙率が高く、イオン透過性が優れた耐熱層が得られるという点で、フィラー(a)の比表面積は、8m2/g以上12m2/g以下であることが好ましく、フィラー(b)の比表面積は、3m2/g以上6m2/g以下であることが好ましく、フィラー(a):フィラー(b)の重量比が、10:90〜30:70であることが好ましい。
【0020】
また、フィラー(a)及びフィラー(b)の材料は、互いに同じであってもよいし、互いに異なっていてもよい。
【0021】
フィラーは、フィラー材料の製造方法や塗工液作製の際の分散条件によって、球形、長円形、短形等の形状や、特定の形状を有さない不定形など、様々なものが存在するがいずれも使用できる。
ここで、イオン透過性の向上の観点から、フィラー(b)が、一次粒子が複数個集合し、かつ固着した形態の連結粒子を主成分として含むことが好ましい。ここで、「主成分として含む」とは、フィラー(b)全体の70重量%以上、好ましくは90重量%以上(100重量%を含む。)が連結粒子であることを意味する。
特に、フィラー(b)が、非球状の連結粒子(以下、単に「非球状連結粒子」と記載する場合がある。)を主成分として含むことがより好ましい。ここで、「非球状連結粒子」とは、図1に示すように直鎖状または分鎖を有する直鎖状乃至は瓢箪形状を意味し、球状または略球状は含まない。フィラー(b)が非球状連結粒子であると、耐熱層においてフィラーが密に充填され難くなるため、より空隙率が高く、イオン透過性に優れた耐熱層が形成できる。
非球状連結粒子は、平均で2個以上、さらには4個以上30個以下の一次粒子を含むことが好ましい。非球状連結粒子の平均の一次粒子の個数は、走査型電子顕微鏡(SEM)にて、5個の非球状連結粒子を任意に抽出して、それぞれにつき一次粒子の個数をカウントし、その平均値とする。
【0022】
なお、フィラー(b)としての上記非球状連結粒子は、加熱処理によって一部溶融して固着した形態であることが好ましい。このような形態であると、塗工液を製造するときの分散過程においても、非球状連結粒子から一次粒子がはずれることが回避される。
【0023】
耐熱層におけるイオン透過性をより高め、かつフィラー脱落をより抑制するために、塗工液、さらには該塗工液から形成されるB層において、バインダー樹脂に対するフィラーの重量比(バインダー樹脂の重量を1としたときのフィラーの重量比)は、20以上100以下であることが好ましい。
【0024】
フィラーの含有量は、得られる耐熱層において、フィラー同士の接触により形成される空隙がバインダー樹脂などの他の構成物質により閉塞されることをより抑制し、イオン透過性を良好に保つために、塗工液中の全固形分(フィラーおよびバインダー樹脂)を100体積%とした時に、60体積%以上であることが好ましく、70体積%以上であることがより好ましく、80体積%以上であることがさらにより好ましい。
【0025】
<媒体>
媒体(溶媒、分散媒)は、フィラーやバインダー樹脂を溶解あるいは分散することができ、分散媒としての性質を持つ。媒体は単独媒体であっても混合媒体であっても特に限定されない。
非水電解液二次電池用セパレータとして一般的に用いられるポリオレフィン多孔質フィルムをA層として用いた場合は、媒体としては、水、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール類、アセトン、トルエン、キシレン、ヘキサン、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミドおよびN,N−ジメチルホルムアミドなどが挙げられ、これらを単独、または相溶する範囲で複数混合して媒体として用いることができる。
媒体は、水のみであってもよいが、乾燥除去速度が速くなり、上述の水溶性ポリマーの十分な溶解性を有する点で、水と有機極性溶媒との混合溶媒であることが好ましい。なお、有機溶媒のみの場合には、乾燥速度が速くなりすぎてレベリングが不足したり、バインダー樹脂に上述の水溶性ポリマーを使用した場合には溶解性が不足したりするおそれがある。
混合溶媒に用いられる有機極性溶媒としては、水と任意の割合で相溶し、適度な極性を有するアルコールが好適であり、その中でもメタノール、エタノール、イソプロパノールが用いられる。水と有機極性溶媒の割合は、レベリング性や使用するバインダー樹脂の種類を考慮して選択され、通常、水を50重量%以上含む。
【0026】
また、該塗工液は、必要に応じてフィラーとバインダー樹脂以外の成分を、本発明の目的を著しく損なわない範囲で含んでいてもよい。そのような成分として、例えば、分散剤、可塑剤、pH調製剤などが挙げられる。
【0027】
<塗工液の製造方法>
上記フィラーおよびバインダー樹脂を媒体に分散あるいは溶解して塗工液を得る方法としては、均質な塗工液を得るに必要な方法であれば、特に限定されない。
例えば、機械攪拌法、超音波分散法、高圧分散法、メディア分散法などを挙げることができる。
混合順序も、沈殿物が発生するなど特段の問題がない限り、フィラーやバインダー樹脂やその他の成分を一度に溶媒に添加して混合してもよいし、それぞれを溶媒に分散した後に混合してもよい。
【0028】
<積層多孔質フィルム>
次に、積層多孔質フィルムについて説明する。
積層多孔質フィルムは、フィラー及びバインダー樹脂を含む耐熱層(B層)が、基材多孔質フィルム(A層)の片面又は両面に積層された積層多孔質フィルムである。B層は、上述の塗工液から媒体を除去して形成された耐熱層である。
【0029】
積層多孔質フィルムにおいて、B層は、シャットダウンが生じる高温における耐熱性を有しており、積層多孔質フィルムに形状安定性の機能を付与する。また、A層は、電池の異常発熱時に、溶融して無孔化することにより、セパレータにシャットダウンの機能を付与する。
【0030】
B層を製造するにあたり、バインダー樹脂が水溶性高分子である場合には、A層の上に塗工液を塗工した際に、該塗工液がA層の細孔(空隙)内に入り込み、スラリー中の水溶性高分子が析出する効果、いわゆる「アンカー効果」により、B層とA層が接着する。この時、スラリー中の水溶性高分子がA層の細孔(空隙)内に過剰に入り込んだ状態で析出すると、得られた非水電解液二次電池用セパレータのシャットダウン性や透過性(イオン透過性)が損なわれてしまう場合がある。
塗工液における媒体が、水と、有機極性溶媒を含む混合溶液であることが好ましく、これにより、塗工液をA層上に塗工した際の塗工むら、塗工液のはじき等の発生をより抑制でき、形成されるB層の膜欠陥の発生をより抑制することができる。従って、B層の均質性により優れ、シャットダウン性や、透過性(イオン透過性)により優れた非水電解液二次電池用セパレータを得ることができる。
【0031】
以下、基材多孔質フィルム(A層)、耐熱層(B層)、並びに積層多孔質フィルムについての物性、製造方法について詳細に説明する。
【0032】
<基材多孔質フィルム(A層)>
A層は、その内部に連結した細孔を有する構造を持ち、一方の面から他方の面に気体や液体が透過可能である。
【0033】
基材多孔質フィルムとしては、ポリオレフィンフィルムや、ポリエチレンテレフタレート(PET)、セルロースからなる不織布等が挙げられるが、一般的に、電池の異常発熱により溶融して無孔化(シャットダウン機能)するという点で、特にポリオレフィンを主成分とする多孔質フィルム(多孔質ポリオレフィンフィルム)であることが好ましい。
A層が多孔質ポリオレフィンフィルムである場合におけるポリオレフィン成分の割合は、A層全体の50体積%以上であることを必須とし、90体積%以上であることが好ましく、95体積%以上であることがより好ましい。
【0034】
多孔質ポリオレフィンフィルムのポリオレフィン成分には、重量平均分子量が5×105〜15×106の高分子量成分が含まれていることが好ましい。A層が多孔質ポリオレフィンフィルムである場合において、ポリオレフィン成分として重量平均分子量100万以上のポリオレフィン成分が含まれると、A層、さらにはA層を含む積層多孔質フィルム全体の強度が高くなるため好ましい。
【0035】
ポリオレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセンなどを重合した高分子量の単独重合体又は共重合体が挙げられる。これらの中でもエチレンを主体とする重量平均分子量100万以上の高分子量ポリエチレンが好ましい。
【0036】
A層の孔径は、イオン透過性および電池のセパレータとした際の正極や負極への粒子が入り込みを防止できる点で、3μm以下が好ましく、1μm以下がさらに好ましい。
【0037】
A層の透気度は、通常、ガーレ値で30〜500秒/100ccの範囲であり、好ましくは、50〜300秒/100ccの範囲である。
A層が、上記範囲の透気度を有すると、セパレータとして用いた際に、十分なイオン透過性を得ることができる。
【0038】
A層の膜厚は、積層多孔質フィルムの耐熱層の膜厚を勘案して適宜決定される。
特にA層を基材として用い、A層の片面あるいは両面に塗工液を塗工してB層を形成する場合においては、A層の膜厚は、4〜40μmが好ましく、7〜30μmがより好ましい。
【0039】
A層の空隙率は20〜80体積%が好ましく、さらに好ましくは30〜70体積%である。このような範囲であると、イオン透過性に優れ、非水電解液二次電池用セパレータとして用いた際に、優れた特性を示す。該空隙率が20体積%未満では電解液の保持量が少なくなる場合があり、80体積%を超えるとシャットダウンが生じる高温における無孔化が不十分となる、すなわち電池が異常発熱したときに電流が遮断できなくなるおそれがある。
【0040】
A層の目付としては、積層多孔質フィルムの強度、膜厚、ハンドリング性及び重量、さらには、電池のセパレータとして用いた場合の電池の重量エネルギー密度や体積エネルギー密度を高くすることができる点で、通常、4〜15g/m2であり、5〜12g/m2が好ましい。
【0041】
A層の製造方法は、特に限定されるものではなく、例えば特開平7−29563号公報に記載されたように、熱可塑性樹脂に可塑剤を加えてフィルム成形した後、該可塑剤を適当な溶媒で除去する方法や、特開平7−304110号公報に記載されたように、公知の方法により製造した熱可塑性樹脂からなるフィルムを用い、該フィルムの構造的に弱い非晶部分を選択的に延伸して微細孔を形成する方法が挙げられる。例えば、A層が、超高分子量ポリエチレンおよび重量平均分子量1万以下の低分子量ポリオレフィンを含むポリオレフィン樹脂から形成される場合には、製造コストの観点から、以下に示すような方法により製造することが好ましい。
すなわち、(1)超高分子量ポリエチレン100重量部と、重量平均分子量1万以下の低分子量ポリオレフィン5〜200重量部と、炭酸カルシウム等の無機充填剤100〜400重量部とを混練してポリオレフィン樹脂組成物を得る工程
(2)前記ポリオレフィン樹脂組成物を用いてシートを成形する工程
(3)工程(2)で得られたシート中から無機充填材を除去する工程
(4)工程(3)で得られたシートを延伸してA層を得る工程
を含む方法により得ることができる。
また、A層は、市販品であってもよく、上記記載の特性を有することが好ましい。
【0042】
<耐熱層(B層)>
B層は、バインダー樹脂とフィラーを含む耐熱層であり、フィラー、バインダー樹脂および媒体を含む本発明の塗工液から媒体を除去することによって形成される。
B層の形成方法を具体的に例示すると、塗工液をA層の上に直接塗工し媒体を除去する方法;
塗工液を適当な支持体の上に塗工し、媒体を除去して形成したB層をA層と圧着させた後に支持体を剥がす方法;
塗工液を適当な支持体の上に塗工し次いでA層と圧着させ支持体から剥がした後に媒体を除去する方法;
塗工液中にA層を浸漬し、ディップコーディングを行った後に媒体を除去する方法;
等が挙げられる。なお、支持体としては、樹脂製のフィルム、金属製のベルト、ドラム等を用いることができる。
また、A層の両面にB層を積層する場合においては、片面にB層を形成させた後に他面にB層を積層する逐次積層方法や、A層の両面に同時にB層を形成させる同時積層方法が挙げられる。
上記B層の形成方法の中でも、塗工液をA層の上に直接塗工し媒体を除去する方法が簡便でかつ塗工量の制御が容易であるため好ましい。
【0043】
塗工液をA層に塗工する方法は、均一にウェットコーティングできる方法であれば特に制限はなく、従来公知の方法を採用することができる。例えば、キャピラリーコート法、スピンコート法、スリットダイコート法、スプレーコート法、ロールコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、バーコーター法、グラビアコーター法、ダイコーター法などを採用することができる。形成されるB層の厚さは塗工量、バインダー樹脂の塗工液中の濃度、フィラーのバインダー樹脂に対する比を調節することによって制御することができる。
【0044】
A層上に塗工した塗工液からの媒体の除去は、乾燥による方法が一般的であるがこれに限定されない。
なお、塗工液をA層の上に塗工した場合、媒体の乾燥温度は、A層の透気度を低下させない温度、即ち、シャットダウンが生じる温度以下であることが好ましい。
【0045】
B層の厚みは、通常0.1μm以上10μm以下であり、好ましくは2μm以上6μm以下の範囲である。B層の厚みが厚すぎると、非水電解液二次電池を製造した場合に、該電池の負荷特性が低下するおそれがあり、薄すぎると、該電池の発熱が生じたときにポリオレフィン多孔膜の熱収縮に抗しきれずセパレータが収縮するおそれがある。
なお、B層がA層の両面に形成される場合には、B層の厚みは両面の合計厚みとする。
【0046】
B層は、多孔質の膜であり、その孔径は、孔を球形に近似したときの球の直径として3μm以下が好ましく、1μm以下がさらに好ましい。孔径の平均の大きさが3μmを超える場合には、正極や負極の主成分である炭素粉やその小片が脱落したときに、短絡しやすいなどの問題が生じるおそれがある。
また、B層の空隙率は30〜90体積%が好ましく、より好ましくは40〜85体積%である。
【0047】
<積層多孔質フィルム>
本発明の塗工液を用いれば、塗工時に、A層が受ける負荷が極めて小さくなるため、A層の特性を損なうことなく、耐熱性の高いB層を積層することができる。そのため、本発明の塗工液は、フィルム構造が脆弱で、塗工が困難な高い空隙率の基材多孔質フィルムへの塗工に、特に有用であり、得られる積層多孔質フィルムは、基材多孔質フィルムの高いイオン透過性と耐熱層の高い安全性を同時に達成することが可能となる。
【0048】
本発明の積層多孔質フィルムは、フィラーの脱落量が少ないという効果を有する。ここで、フィラーの脱落量が少ないとは、テープを用いたピール試験での剥離強度(ピール強度)が高いことや、他の物体に擦りつけた際に剥がれ落ちる耐熱層の量が少ないことを意味する。特に積層多孔質フィルムを非水電解液二次電池用セパレータとして用いる場合には、該フィルムをロール上に走行させるプロセスが多いため、他の物体に擦りつけた際に剥がれ落ちる耐熱層の量が少ないことが重要である。
【0049】
積層多孔質フィルム全体(A層+B層)の厚みは、通常、5〜80μmであり、好ましくは、5〜50μmであり、特に好ましくは6〜35μmである。積層多孔質フィルム全体の厚みが5μm未満では破膜しやすくなる。また、厚みが厚すぎると、非水電解液二次電池のセパレータとして用いたときに電池の電気容量が小さくなる傾向にある。
【0050】
また、積層多孔質フィルム全体の空隙率は、通常、30〜85体積%であり、好ましくは35〜80体積%である。
また、積層多孔質フィルムの透気度は、ガーレ値で50〜2000秒/100ccが好ましく、50〜1000秒/100ccがより好ましい。
このような範囲の透気度であると、積層多孔質フィルムをセパレータとして用いて非水電解液二次電池を製造した場合、十分なイオン透過性を示し、電池として高い負荷特性が得られる。
【0051】
シャットダウンが生じる高温における、積層多孔質フィルムの加熱形状維持率としてはMD方向又はTD方向のうちの小さい方の値が、好ましくは95%以上であり、より好ましくは97%以上である。ここで、MD方向とは、シート成形時の長尺方向、TD方向とはシート成形時の幅方向のことをいう。なお、シャットダウンが生じる高温とは80〜180℃の温度であり、通常は130〜150℃程度である。
【0052】
なお、積層多孔質フィルムは、基材多孔質フィルム(A層)と耐熱層(B層)以外の、例えば、接着膜、保護膜等の多孔膜を本発明の目的を著しく損なわない範囲で含んでもよい。
【0053】
本発明の積層多孔質フィルムは、電池のセパレータ、特にリチウム二次電池などの非水電解液二次電池のセパレータとして好適に使用することができる。
【0054】
本発明の積層多孔質フィルムを非水電解液二次電池用セパレータとして用いて非水電解液二次電池を製造すると、高い負荷特性を有し、しかも電池が発熱した場合でもセパレータはシャットダウン機能を発揮し、セパレータの収縮による正極と負極の接触が避けられ、安全性の高い非水電解液二次電池が得られる。
【実施例】
【0055】
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0056】
なお、実施例及び比較例において積層多孔質フィルムの物性等は以下の方法で測定した。
(1)厚み測定(単位:μm):
フィルムの厚みは、株式会社ミツトヨ製の高精度デジタル測長機で測定した。
(2)目付(単位:g/m2):
フィルムを一辺の長さ10cmの正方形に切り、重量W(g)を測定した。
目付(g/m2)=W/(0.1×0.1)で算出した。耐熱層(B層)の目付は、積層多孔質フィルムの目付から基材多孔質フィルム(A層)の目付を差し引いた上で算出した。
(3)空隙率:
フィルムを一辺の長さ10cmの正方形に切り取り、重量:W(g)と厚み:D(cm)を測定した。サンプル中の材質の重量を計算で割り出し、それぞれの材質の重量:Wi(g)を真比重で割り、それぞれの材質の体積を算出して、次式より空隙率(体積%)を求めた。各材料の目付は製膜に使用した量、比率より算出した。
空隙率(体積%)=100−[{(W1/真比重1)+(W2/真比重2)+・・+(Wn/真比重n)}/(100×D)]×100
(4)透気度:JIS P8117 に準拠して、株式会社東洋精機製作所製のデジタルタイマー式ガーレ式デンソメータで測定した。
(5)加熱形状維持率:
フィルムを8cm×8cmに切り出し、その中に6cm×6cmの四角を書き入れたフィルムを紙に挟んで、150℃に加熱したオーブンに入れた。1時間後、オーブンからフィルムを取り出し、書き入れた四角の辺の寸法を測定し、加熱形状維持率を計算した。計算方法は以下の通りである。
MD方向の加熱前の書き入れ線長さ:L1
TD方向の加熱前の書き入れ線長さ:L2
MD方向の加熱後の書き入れ線長さ:L3
TD方向の加熱後の書き入れ線長さ:L4
MD加熱形状維持率(%)=(L3/L1)×100
TD加熱形状維持率(%)=(L4/L2)×100
(6)フィラーの脱落量:
摩擦運動試験機を用いた表面擦り試験で測定した。摩擦運動試験機の擦り部分にサヴィーナミニマックス(KBセーレン株式会社製)を1枚付け、サヴィーナミニマックスと上記積層多孔質フィルムのB層側を1000gの加重をかけて接触させ、45rpmの速度で1往復擦り、試験前の積層多孔質フィルムの単位面積(m2)当たりの重量から、擦った部分の積層多孔質フィルムの単位面積(m2)当たりの重量を引くことによって求めた。
(7)表面平滑性測定:
共焦点顕微鏡PLμ2300を用いて測定した。凹凸の指標である自乗平均面粗さrmsの値をもって、表面平滑性を表した。
【0057】
<基材多孔質フィルム(A層)の製造>
超高分子量ポリエチレン粉末(340M、三井化学株式会社製)を70重量%、重量平均分子量1000のポリエチレンワックス(FNP−0115、日本精鑞株式会社製)30重量%、この超高分子量ポリエチレンとポリエチレンワックスの100重量部に対して、酸化防止剤(Irg1010、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製)0.4重量部、酸化防止剤(P168、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製)0.1重量部、ステアリン酸ナトリウム1.3重量部を加え、さらに全体積に対して38体積%となるように平均粒径0.1μmの炭酸カルシウム(丸尾カルシウム株式会社製)を加え、これらを粉末のままヘンシェルミキサーで混合した後、二軸混練機で溶融混練してポリオレフィン樹脂組成物とした。該ポリオレフィン樹脂組成物を表面温度が150℃の一対のロールにて圧延しシートを作製した。このシートを塩酸水溶液(塩酸4mol/L、非イオン系界面活性剤0.5重量%)に浸漬させることで炭酸カルシウムを除去し、続いて105℃で6倍に延伸して次の基材多孔質フィルムA1、A2及びA3を得た。
<A1>
膜厚:19.2μm
目付:7.1g/m2
透気度:82秒/100cc
<A2>
膜厚:14.9μm
目付:6.7g/m2
透気度:115秒/100cc
<A3>
膜厚:15.3μm
目付:6.7g/m2
透気度:91秒/100cc
【0058】
<バインダー樹脂およびフィラー>
B層形成に使用したバインダー樹脂、フィラーは次の通りである。
<バインダー樹脂>
カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC):第一工業製薬株式会社 セロゲン3H
<フィラー>
フィラー(a1)
材質:アルミナ
平均粒径:0.15μm
比表面積:10.3m2/g
粒子形状:非球状連結粒子
フィラー(a2)
材質:アルミナ
平均粒径:0.10μm
比表面積:14.5m2/g
粒子形状:非連結粒子
フィラー(a3)
材質:アルミナ
平均粒径:0.024μm
比表面積:70m2/g
粒子形状:非連結粒子
フィラー(b1)
材質:アルミナ
平均粒径:0.54μm
比表面積:4.3m2/g
粒子形状:非球状連結粒子
フィラー(b2)
材質:アルミナ
平均粒径:0.42μm
比表面積:4.8m2/g
粒子形状:非連結粒子
【0059】
実施例1
(1)塗工液の製造
実施例1の塗工液を以下の手順で作製した。
まず、水−エタノール混合溶媒(水:エタノール=70:30(重量比))に溶解させて、CMC濃度0.7重量%(対[CMC+溶媒])のCMC溶液を得た。
次いで、CMC100重量部のCMC溶液に対して、フィラー(a1)1050重量部と、フィラー(b1)2450重量部とを添加し、撹拌混合した。さらにAPV社ゴーリンホモジナイザー(15MR−8TA型)に60MPaの圧力をかけて混合液を通し、フィラーを分散させた。圧力をかけて液を通す操作を3回実施し、塗工液1を作製した。表1に上記方法により得られた塗工液の組成を示す。
(2)積層多孔質フィルムの製造及び評価
基材多孔質フィルム(A1)の片方の面にグラビアコーターを用いて上記塗工液を塗工、乾燥することでB層を形成した。次いで、A層(A1)のもう一方の面に、同様にB層を積層することで、A層の両面にB層がされた積層多孔質フィルムを得た。なお、B層の厚みは、両面に設けられたB層の合計厚みである。表2に上記方法により得られた積層多孔質フィルムの物性を示す。
【0060】
実施例2
(1)塗工液の製造
実施例2の塗工液を以下の手順で作製した。
まず、水とイソプロパノール(IPA)と混合溶媒(水:IPA=84:16(重量比))に溶解させて、CMC濃度0.74重量%(対[CMC+溶媒])のCMC溶液を得た。
次いで、CMC100重量部のCMC溶液に対して、フィラー(a2)400重量部と、フィラー(b1)3600重量部とを添加し、撹拌混合した。さらにAPV社ゴーリンホモジナイザー(15MR−8TA型)に60MPaの圧力をかけて混合液を通し、フィラーを分散させた。圧力をかけて液を通す操作を3回実施し、塗工液2を作製した。表1に上記方法により得られた塗工液の組成を示す。
(2)積層多孔質フィルムの製造及び評価
基材多孔質フィルム(A2)の片方の面にグラビアコーターを用いて上記塗工液を塗工、乾燥することでB層を形成した。次いで、A層(A2)のもう一方の面に、同様にB層を積層することで、A層の両面にB層が積層された積層多孔質フィルムを得た。なお、B層の厚みは、両面に設けられたB層の合計厚みである。表2に上記方法により得られた積層多孔質フィルムの物性を示す。
【0061】
実施例3(1)塗工液の製造
実施例3の塗工液を以下の手順で作製した。
まず、水−エタノール混合溶媒(水:エタノール=70:30(重量比))に溶解させて、CMC濃度0.6重量%(対[CMC+溶媒])のCMC溶液を得た。
次いで、CMC100重量部のCMC溶液に対して、フィラー(a3)500重量部と、フィラー(b2)3000重量部とを添加し、撹拌混合した。さらにAPV社ゴーリンホモジナイザー(15MR−8TA型)に60MPaの圧力をかけて混合液を通し、フィラーを分散させた。圧力をかけて液を通す操作を3回実施し、塗工液3を作製した。表1に上記方法により得られた塗工液の組成を示す。
(2)積層多孔質フィルムの製造及び評価
塗工液3を基材多孔質フィルム(A3)上に塗工した以外は実施例1と同様な操作で積層多孔質フィルムを得た。得られた積層多孔質フィルムの物性を表2に示す。
【0062】
比較例1
(1)塗工液の製造
フィラーとして、フィラー(b1)を3500重量部使用した以外は実施例1の塗工液の作製方法と同様にして塗工液4を得た。
(2)積層多孔質フィルムの製造及び評価
塗工液4を基材多孔質フィルム(A1)上に塗工した以外は実施例1と同様な操作で積層多孔質フィルムを得た。得られた積層多孔質フィルムの物性を表2に示す。
【0063】
【表1】

【0064】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明によれば、フィラーの脱落が抑制され、加熱時の形状維持性の高い耐熱層を有し、イオン透過性に優れた非水電解液二次電池用セパレータとして好適な積層多孔質フィルムを提供することができる。
従って、高温での寸法安定性、イオン透過性に優れ、積層された多孔質層が脱落しづらく、かつ平滑性に優れた非水電解液二次電池用セパレータとして好適な積層多孔質フィルムが提供される。該積層多孔質フィルムをセパレータとして用いた非水電解液二次電池は、電池が発熱してもセパレータが正極と負極が直接接触することを防止し、かつ高出力かつ高容量の非水電解液二次電池を、安定的に製造することができるので、本発明は工業的に極めて有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バインダー樹脂、フィラー及び媒体を含み、
前記フィラーが、比表面積7m2/g以上80m2/g以下のフィラー(a)と、比表面積2m2/g以上7m2/g以下のフィラー(b)とを、フィラー(a):フィラー(b)の重量比5:95〜40:60で含む混合物である塗工液。
【請求項2】
前記フィラー(a)の比表面積が7m2/g以上40m2/g以下である請求項1記載の塗工液。
【請求項3】
前記バインダー樹脂の重量を1としたときの前記フィラーの重量比が20以上100以下である請求項1または2に記載の塗工液。
【請求項4】
前記フィラー(b)が、一次粒子の複数個が集合し、かつ固着した形態の連結粒子を主成分として含む請求項1から3のいずれかに記載の塗工液。
【請求項5】
前記フィラー(b)が、一次粒子の複数個が集合し、かつ固着した形態の非球状の連結粒子を主成分として含む請求項1から4のいずれかに記載の塗工液。
【請求項6】
前記フィラーが、無機フィラーである請求項1から5のいずれかに記載の塗工液。
【請求項7】
前記無機フィラーが、アルミナである請求項6記載の塗工液。
【請求項8】
前記バインダー樹脂が、水溶性高分子である請求項1から7のいずれかに記載の塗工液。
【請求項9】
前記水溶性高分子が、カルボキシアルキルセルロース、アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、澱粉、ポリビニルアルコール及びアルギン酸ナトリウムからなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項8記載の塗工液。
【請求項10】
フィラー及びバインダー樹脂を含む耐熱層が、基材多孔質フィルムの片面又は両面に積層された積層多孔質フィルムであって、前記耐熱層が、請求項1から9のいずれかに記載の塗工液から媒体を除去して形成された耐熱層である積層多孔質フィルム。
【請求項11】
前記基材多孔質フィルムが、ポリオレフィンを主成分とする多孔質フィルムである請求項10記載の積層多孔質フィルム。
【請求項12】
フィラー及びバインダー樹脂を含む耐熱層が基材多孔質フィルムの片面又は両面に積層された積層多孔質フィルムの製造方法であって、請求項1から9のいずれかに記載の塗工液から媒体を除去して耐熱層を形成する工程を含む方法。
【請求項13】
塗工液を基材多孔質フィルムに直接塗工する工程をさらに含む請求項12記載の方法。

【図1】
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【公開番号】特開2013−64116(P2013−64116A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−185674(P2012−185674)
【出願日】平成24年8月24日(2012.8.24)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】