説明

塗工白板紙の製造方法および塗工白板紙

【課題】
顔料塗工層を設ける塗工白板紙において、原紙のチリや黒点を殆ど隠蔽して目立たなくするとともに、白色ムラを抑制した塗工白板紙の製造方法および塗工白板紙を提供する。
【解決手段】
少なくとも2層以上抄き合わされた原紙の片面または両面に顔料と接着剤を主成分とする顔料塗工層を設ける塗工白板紙の製造方法において、該顔料塗工層をカーテン塗工方式により塗設し、かつ該顔料塗工層の不透明度が50%以上であることを特徴とする塗工白板紙の製造方法であり、またその製造方法で製造された塗工白板紙である。該原紙が塗工する面の表面層とその直下層の白色度差が12%より大きいとより好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、古紙を配合した原紙に顔料塗工層を設ける塗工白板紙に関し、古紙由来のチリ、黒点を隠蔽し、白色ムラを抑え白紙面感が良化した塗工白板紙の製造方法およびその塗工白板紙に関するものである。
【背景技術】
【0002】
白板紙は通常、白ボールとマニラボールに分類され、マニラボールは更に高級白板紙と特殊白板紙に分類される。さらに白ボールとマニラボールには、塗工タイプと非塗工タイプがある。白板紙は、通常2〜9層の多層構造からなる厚紙で、環境面や包材のコストダウンの観点から、古紙パルプが多く使用されている。例えば、白ボールでは、表層には、晒パルプまたは脱墨、漂白された白色度の高い古紙パルプを、また中層、裏層には白色度の低い古紙パルプを使用している。年々古紙パルプの配合比率が上昇し、グレードの低い白板紙ではほぼ100%配合するほどになっている。こうした状況の中、古紙配合率増加に伴う原紙の問題として、白色ムラの発現、チリ、黒点等の欠陥の増加がある。チリ等の欠陥は、脱墨技術や除塵装置の進歩により大幅に改善されてきているが、まだ完全に除去できるまでは至っていない。現状脱墨や除塵処理を強化すればするほど、歩留が悪化し、経済的に不利になることから、一定のレベル以上には脱墨、除塵処理は実施されないでいる。こうした中、白板紙は食料品や医薬品、化粧品などの容器として使用されることが多く、特に塗工白板紙においては、視覚化の面から外観性や印刷適性等の向上に対する要求度が高まっている。
【0003】
古紙の利用は環境問題の観点からも、今後増える一方であることから、古紙多配合の紙を使用しながら、効率よくチリを目立たなくし、白色度や印刷適性を向上させる技術として、表面に塗被する塗工量を多くしたり、隠蔽性の高い二酸化チタンやプラスチックピグメント等の有機顔料を多量に配合したりする方法が開示されている。(特許文献1、2を参照)しかし、こうした顔料は高価であり、塗料物性が大幅に変わる為、多量に使用することは難しい。また、原紙の白色ムラを目立たなくさせる方法として、多層抄における表層、表下層の白色度の差を規定した提案がなされている。(特許文献3を参照)
【0004】
【特許文献1】特開平6−166991号公報
【特許文献2】特開2003−306892号公報
【特許文献3】特開2005−298998号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
古紙パルプはインキを脱墨し、チリ等を除去した上で、塗工原紙に供されるが、微量のインキが付着した繊維やチリを完全に取り除くことは難しく、また、古紙原料の多くは機械パルプ由来のものであり、パルプ漂白を行なっても、白色度の向上には限界がある。白板紙においては古紙パルプの使用比率が高く、使用される古紙の種類、状態により条件が一定しないこともあり、原紙表面にチリ、黒点が現れやすく、原紙白色ムラが目立ちやすい。このような原紙上に顔料塗工層を設ける場合、ブレード塗工方式では、平坦化塗工であるために塗工表面の平滑性は高いものの顔料塗工層が原紙の凹凸に沿って不均一となり、白色ムラが際立ってしまう。ストリークやスクラッチ等の塗工欠点も生じ易い。またロール塗工方式は、ロール特有のパターンを発生し易く、エアナイフ塗工方式では、エアナイフ特有のパターンが発生し易い傾向にある。このことから本発明においては、原紙のチリや黒点を殆ど隠蔽して目立たなくするとともに、白色ムラを抑制した塗工白板紙を製造する方法および塗工白板紙を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、原紙と塗工後の白色ムラ、チリ、黒点の関係を鋭意研究した結果、古紙パルプ多配合で白色ムラが目立ち、またチリの多い白板紙原紙に対して、輪郭塗工を特徴とするカーテンコーターを用いて顔料塗工層を設け、その塗工層が特定の不透明度を有することにより、チリ、黒点を隠蔽し、白色ムラを抑制できることを見出した。すなわち、少なくとも2層以上抄き合わされた原紙の片面または両面に顔料と接着剤を主成分とする顔料塗工層を設ける塗工白板紙の製造方法において、該顔料塗工層をカーテン塗工方式により塗設し、かつ該顔料塗工層の不透明度が50%以上であることを特徴とする塗工白板紙の製造方法およびその塗工白板紙である。また、前記原紙の塗工する面の表面層とその直下層の白色度差が12%より大きい原紙であれば好ましい。また前記顔料塗工層の片面当りの塗工量が1〜25g/mであれば好ましい。さらに、前記顔料塗工層を形成するために塗設される顔料塗被液の塗工時のB型粘度が30〜2000mPa・sおよび表面張力40mN/m以下であればより好ましい。
【0007】
従来白板紙の原紙米坪は150g/m以上であり、1台の抄紙機で原紙を作り上げるのは容易ではなく、通常何台かの抄紙機を並べて、原紙の抄き合わせを行う。このとき、古紙パルプ含有率の高い原料を用いると、原紙の抄きムラ、地合ムラが生じ易く、同時に白色ムラも生じている。特にこうした原紙を抄き合わせる事により更に白色ムラが助長され、顕著に現われてくる。例えば、中層に脱墨しない古紙パルプを使用した白板紙において、表層の米坪は20〜60g/m程度で、隠蔽性が低いうえに、通常の板紙マシンで得られる各層の原紙地合いは、円網、距離の短い長網および短網のコンビネーションといったマシン構造のため、洋紙系の長網マシンに比べると劣ることが多く、そのために、表層はパルプ量の少ない(透明性の高い)部分と、パルプ量の多い(透明性の低い)部分の差が比較的大きく、この層が以下の層と抄合わされると表下層の表面部が、表層のパルプ量の少ない(透明性の高い)部分より透けて映り、このときの表層と表下層のシート表面の白色度差が大きい場合には、表下層表面が透けて映る部分が白色ムラとなる。このことは、裏面および裏下層のある多層抄きされた白板紙原紙についても表層および表下層と同様なことが言える。
【0008】
このような原紙の白色ムラは実用上問題でなり、特に表面層とその直下層の白色度の差が12%より大きいと顕在化してくる。この白色ムラは、予め直下層の白色度を高めて、表面層の白色度に近づけたり、または表面層の白色度を低下させてその直下層の白色度に近づけたりする方法で改善が得られるが、コスト面、使用パルプの選択、量の確保等の制約が発生するために、安定的に実施するには困難である。このことから、表面層とその直下層の白色度の差が大きいと、表面層に顔料塗工層を設けても白色ムラが改善されず、例えば二酸化チタン等の隠蔽性の高い顔料を多量に使用せざるを得ない。しかし、そうした顔料は高価であるため、多量の使用は経済上困難である。そこで、原紙の隠蔽性という観点から、特に古紙配合率が高い白板紙原紙に対してカーテンコーターによる塗工方式を用いて、顔料塗工層を設け、かつ顔料塗工層の不透明度を50%以上にすることが有効であることを見出した。ここでカーテン塗工方式が有効な塗工方式であることについては、当塗工方式が前計量型の塗工装置であり、塗工時に塗工液の掻き落としがないために、塗工液がウェブの表面形状に沿った極めて均一な、所謂輪郭塗工層を形成し、例え原紙に多少の凹凸が存在しても、塗工層が均一であるため、塗工ムラの発生が抑制されるものと考える。さらに、顔料塗工層の不透明度を50%以上にすることにより、隠蔽性の向上および白色ムラの抑制を図ることができるのである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によって、古紙を配合した原紙にカーテン塗工で顔料塗工層を設け、該顔料塗工層が特定の不透明度を有することにより、古紙由来のチリ、黒点を隠蔽し、白色ムラを抑えた塗工白板紙を得ることができるのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明で使用される原紙のパルプ構成は特に限定されない。例えば、晒ないしは未晒の化学パルプ、機械パルプ、さらには脱墨ないしは未脱墨パルプの古紙パルプ等の一種または二種以上を適宜混合して使用される。その他、原紙には必要に応じて、サイズ剤、紙力剤、薬品安定剤、濾水剤、填料、染料等を適宜添加することもできる。なお、原紙の米坪は通常150〜650g/m程度である。
【0011】
原紙には、通常填料が内添され、かかる填料としては特に限定されるものではないが、例えば、クレー、焼成クレー、ケイソウ土、タルク、カオリン、焼成カオリン、デラミカオリン、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ケイ素、非晶質シリカ、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛等の無機填料、尿素−ホルマリン樹脂、ポリスチレン樹脂、フェノール樹脂、微小中空粒子などの有機填料、さらには古紙やブローク等に含まれている填料を、単独もしくは適宜2種類以上を組み合わせて使用される。上記填料の配合割合は、パルプ100質量部に対して5〜20質量部が好ましい。なお、填料の配合割合が多くなると、紙の層間強度が低くなるので、紙質との調和を図ることが必要である。
【0012】
また、原紙を得るための抄紙機としては、長網式抄紙機、短網式抄紙機、円網式抄紙機、オントップフォーマー、ギャップフォーマー等の抄紙機が使用でき、2層以上を抄き合せて原紙抄造を行う。
【0013】
顔料塗工層の形成には、顔料と接着剤を主成分とする顔料塗被液が塗工され、その塗被液に含有する顔料は特別なものである必要はないが、従来の公知公用のものとして、例えば、クレー、カオリン、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、二酸化チタン、硫酸バリウム、酸化亜鉛、サチンホワイト、硫酸カルシウム、タルク、プラスチックピグメント、有機中空微粒子等の塗被紙製造分野で使用される顔料である。また、使用される接着剤としては、例えば、澱粉、カゼイン、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ポリアクリル酸等の水溶性高分子やスチレン−ブタジエン共重合体ラテックス、スチレン−アクリル酸系共重合体ラテックス等の天然系または合成系の接着剤の1種又は2種以上が適宜使用できる。
【0014】
塗被液における顔料と接着剤との配合比率は、所望の顔料塗工層が得られる範囲で調整される。通常は、固形分対比で顔料100質量部に対し、接着剤5〜50質量部、より好ましくは5〜30質量部の範囲で選ばれる。塗被組成物中には、必要に応じて、消泡剤、着色剤、離型剤、流動変性剤等の各種助剤を配合することができる。
【0015】
本発明における顔料塗工層を形成するための顔料塗被液が、カーテンコーターで塗工される際の塗料性状としては、塗布液の流下途中でカーテン膜の割れ等により塗工欠陥の発生を防止する観点から、B型粘度が30〜2000mPa・s、表面張力が40mN/m以下であることが好ましい。
【0016】
古紙由来のチリ、黒点や白色ムラが発現した原紙表面を十分に隠蔽し白色ムラを抑制するために、顔料塗被液をカーテン塗工方式により顔料塗工層を形成すると共に、その塗工層の不透明度が50%以上であることが必須である。ここで、顔料塗工層の不透明度は、透明PETフィルム(厚さ75μm、不透明度5%以下)に塗布し、その時の塗工フィルムの不透明度をJIS P−8149:2000に準じて測定することにより求めることができる。因みに顔料塗工層の不透明度が50%未満である塗工量の場合は白色ムラへの効果が認められず、50%以上であってもカーテン塗工以外の塗工方式では効果が得られない。
【0017】
ここで、カーテン塗工による顔料塗工層以外の塗工層として、上塗り層、若しくは下塗り層を設けても良いが、特にカーテン塗工を施す前に下塗り塗工層を設けると、カーテン塗工の特徴である輪郭塗工をさらに際立たせる効果があり好ましい。この下塗り層は、一般の塗被紙製造分野で使用される塗工装置が使用でき、例えば、ブレードコーター、エアーナイフコーター、プレーンロッドコーター、ロールコーター、リバースロールコーター、バーコーター、ダイスロットコーター、グラビアコーター、チャンプレックスコーター、2ロールサイズプレスコーター、ゲートロールサイズプレスコーター等の塗工装置が、オンマシンあるいはオフマシンで使用できる。
【0018】
塗被液の塗工量としては、片面当り乾燥質量で1〜25g/m、より好ましくは3〜15g/mの範囲である。なお、顔料塗工層を例えば原紙の片面あたり2層以上設ける場合には、カーテンコーター塗工層と他の塗工方式による塗工層の総合計の乾燥塗工量が片面当り1〜25g/mとなる範囲内で、所望する白色ムラの抑制等を考慮し、各層の塗工量を配分すればよい。因みに、1g/m未満では塗工の安定性や原紙被覆性面で不十分であり、25g/mを超えると塗工層の割れを生じて起す虞がある。
【0019】
このようにして得られた塗工白板紙は、通常カレンダーに通紙して加圧平滑化処理が施された後、巻取製品として仕上げられる。この場合のカレンダー装置についても特に限定されるものではなく、グロスあるいはマットカレンダーとして、例えばスーパーカレンダー、グロスカレンダー、ソフトコンパクトカレンダー等の金属ロールと弾性ロールより構成される各種カレンダーが、オンマシンまたはオフマシン仕様で、任意に選択、使用される。
【実施例】
【0020】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明は、それらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例および比較例中の「部」および「%」は特に断らない限り、それぞれ固形分換算した「質量部」および「質量%」を示す。
【0021】
実施例1
(原紙の抄造)
LBKP70%、NBKP20%、脱墨古紙10%の割合で配合したパルプを使用して白色度79.7%、米坪40g/mの表層、LBKP40%、脱墨古紙60%の割合で配合したパルプを使用して白色度66.7%、米坪40g/mの表下層、脱墨しない雑誌古紙のパルプを使用して米坪150g/mの中層および脱墨しない新聞古紙50%、雑誌古紙25%、段ボール古紙25%の割合で配合したパルプを使用して米坪50g/mの裏層を、それぞれ抄造し抄合わせ、プレス、乾燥処理を行い米坪280g/mの塗工白板紙原紙を得た。
【0022】
(顔料塗被液1の調製)
顔料として、No1カオリン(商品名:UW−90、BASF社製)50%、軽質炭酸カルシウム(商品名:TP−123CS、奥多摩工業社製)50%を使用し、分散剤として、顔料に対しポリアクリル酸ソーダ0.2%を添加して、コーレス分散機を用いて固形分濃度が68%の顔料スラリーを調製した。そして、顔料スラリー中の顔料100部に対して、酸化澱粉(商品名:エースA、王子コーンスターチ社製)3部、ガラス転移温度が8℃のスチレン−ブタジエン共重合体ラテックス(商品名:L−1825、旭化成社製)20部(各固形分換算)をそれぞれ添加し、さらに水を加えて固形分濃度が60%、B型粘度が900mPa・sの顔料塗被液1を調製した。
【0023】
(塗工白板紙の作成)
上記原紙の表層に、顔料塗被液1に界面活性剤(商品名:オルフィンWE−003、日信化学株式会社製)を0.2%添加し、固形分濃度30%に希釈した後、カーテンコーターを用いて、片面当たり乾燥質量で7g/mとなるように塗被、乾燥した後、金属ロール表面温度が150℃、2ニップのソフトキャレンダーに通紙して塗工白板紙を得た。この時カーテン塗工における顔料塗被液のB型粘度が60mPa・s、表面張力が30mN/mであった。
【0024】
実施例2
LBKP25%、脱墨古紙75%の割合で配合したパルプを使用して白色度61.9%、米坪40g/mの表下層とした以外は実施例1と同様にして行い米坪280g/mの塗工白板紙原紙を得た。
【0025】
上記の原紙に、実施例1の顔料塗被液1に界面活性剤(商品名:オルフィンWE−003、前出)を0.2%添加し、固形分濃度40%に希釈した後、カーテンコーターを用いて、片面当たり乾燥質量で10g/mとなるように塗被、乾燥した以外は実施例1と同様にして行い塗工白板紙を得た。このときの顔料塗被液のB型粘度が200mPa・s、表面張力が30mN/mであった。
【0026】
実施例3
LBKP10%、脱墨古紙90%の割合で配合したパルプを使用して白色度56.1%、米坪40g/mの表下層とした以外は実施例1と同様にして米坪280g/mの塗工白板紙原紙を得た。
【0027】
上記の原紙に、実施例1の顔料塗被液1に界面活性剤(商品名:オルフィンWE−003、前出)を0.2%添加し、固形分濃度55%に希釈した後、カーテンコーターを用いて、片面当たり乾燥質量で14g/mとなるように塗被、乾燥した以外は実施例1と同様にして行い塗工白板紙を得た。このときの顔料塗被液のB型粘度が400mPa・s、表面張力が30mN/mであった。
【0028】
実施例4
(顔料塗被液2の調製)
顔料として、No1カオリン(商品名:UW−90、前出)50%、軽質炭酸カルシウム(商品名:TP−123CS、前出)30%、二酸化チタン(商品名:KA100、チタン工業社製)20%を使用し、分散剤として、顔料に対しポリアクリル酸ソーダ0.2%を添加して、コーレス分散機を用いて固形分濃度が68%の顔料スラリーを調製した。そして、顔料スラリー中の顔料100部に対して、リン酸エステル化澱粉(商品名:PN500、三和澱粉社製)3部、ガラス転移温度が8℃のスチレン−ブタジエン共重合体ラテックス(商品名:L−1825、前出)20部(各固形分換算)をそれぞれ添加し、さらに水を加えて固形分濃度が60%、B型粘度が1000mPa・sの顔料塗被液2を調製した。
【0029】
顔料塗被液2に界面活性剤(商品名:オルフィンWE−003、前出)を0.2%添加し、固形分濃度30%に希釈した後、カーテンコーターを用いて、片面当たり乾燥質量で8g/mとなるように、実施例1の原紙に塗被、乾燥した後、金属ロール表面温度が150℃、2ニップのソフトキャレンダーに通紙して塗工白板紙を得た。この時カーテン塗工における顔料塗被液のB型粘度は60mPa・s、表面張力は30mN/mであった。
【0030】
実施例5
(顔料塗被液3の調製〉
顔料として、No1カオリン(商品名:UW−90、前出)20%、軽質炭酸カルシウム(商品名:TP−123CS、前出)30%、二酸化チタン(商品名:KA100、前出)50%を使用し、分散剤として、顔料に対しポリアクリル酸ソーダ0.2%を添加して、コーレス分散機を用いて固形分濃度が60%の顔料スラリーを調製した。そして、顔料スラリー中の顔料100部に対して、酸化澱粉(商品名:エースA、前出)3部、ガラス転移温度が8℃のスチレン−ブタジエン共重合体ラテックス(商品名:L−1825、前出)20部(各固形分換算)をそれぞれ添加し、さらに水を加えて固形分濃度が50%、B型粘度が1500mPa・sの顔料塗被液3を調製した。
【0031】
顔料塗被液3に界面活性剤(商品名:オルフィンWE−003、前出)を0.2%添加し、固形分濃度20%に希釈した後、カーテンコーターを用いて、片面当たり乾燥質量で2g/mとなるように、実施例1の原紙に塗被、乾燥した後、金属ロール表面温度が150℃、2ニップのソフトキャレンダーに通紙して塗工白板紙を得た。この時カーテン塗工における顔料塗被液のB型粘度が150mPa・s、表面張力が25mN/mであった。
【0032】
比較例1
実施例1の原紙に、顔料塗被液1を固形分濃度40%に希釈した後、エアーナイフコーターを用いて、片面当たり乾燥質量で7g/mとなるように塗被、乾燥した以外は実施例1と同様にして行い塗工白板紙を得た。このときの顔料塗被液のB型粘度が200mPa・sであった。
【0033】
比較例2
実施例1の原紙に、顔料塗被液1を固形分濃度60%のまま、ロッドコーターを用いて、片面当たり乾燥質量で7g/mとなるように塗被、乾燥した以外は実施例1と同様にして行い塗工白板紙を得た。
【0034】
比較例3
実施例1の原紙に、顔料塗被液1を固形分濃度60%のまま、ブレードコーターを用いて、片面当たり乾燥質量で7g/mとなるように塗被、乾燥した以外は実施例1と同様にして行い塗工白板紙を得た。
【0035】
比較例4
比較例1において、顔料塗被液2に置き換え、片面当たり乾燥質量で10g/mとなるように塗被、乾燥した以外は、比較例1と同様にして行い塗工白板紙を得た。
【0036】
上記で使用した顔料塗被液のB型粘度および表面張力は、下記の評価方法で行った。
(B型粘度)
B型粘度計(型式:BM、東京計器社製)で60rpmの条件で測定し、顔料塗被液の粘度とした。
【0037】
(表面張力)
ウィルヘルミープレート型表面張力計(型式:CBVP−Z、協和界面科学社製)で測定して、顔料塗被液の表面張力とした。
【0038】
(白色ムラおよび隠蔽性の評価)
各実施例、比較例で使用した塗工原紙、および得られた塗工白板紙について、上方からの目視による官能評価を行った。結果を表1に示す。
【0039】
[白色ムラの評価基準]
◎:白色ムラの発生が認められない。
○:軽度の白色ムラの発生が認められる。
△:明確な白色ムラの発生が認められ、実用上問題であるレベル。
×:極度の白色ムラの発生が認められ、実用に適さないレベル。
【0040】
[チリ・黒点の隠蔽性評価基準]
◎:全く目立たない。
○:軽度のチリ・黒点が認められる。
△:明確なチリ・黒点が認められ、実用上問題であるレベル。
×:極度のチリ・黒点が認められ、実用に適さないレベル。
【0041】
【表1】

【0042】
表1の本願発明による実施例1〜5に見られるように、カーテン塗工を行い、かつ不透明度50%以上の顔料塗工層を設けることで、白色ムラの発生が抑えられ、隠蔽性が良好な結果が得られ、一方、比較例1〜4に見られる他の塗工方法では、隠蔽性、白色ムラは改善されていないのは明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2層以上抄き合わされた原紙の片面または両面に顔料と接着剤を主成分とする顔料塗工層を設ける塗工白板紙の製造方法において、該顔料塗工層をカーテン塗工方式により塗設し、かつ該顔料塗工層の不透明度が50%以上であることを特徴とする塗工白板紙の製造方法。
【請求項2】
前記原紙の塗工する面の表面層とその直下層の白色度差が12%より大きい原紙である請求項1に記載の塗工白板紙の製造方法。
【請求項3】
前記顔料塗工層の片面当たりの乾燥塗工量が1〜25g/mである請求項1または2に記載の塗工白板紙の製造方法。
【請求項4】
前記顔料塗工層を形成するために塗設される顔料塗被液の塗工時におけるB型粘度が30〜2000mPa・sおよび表面張力が40mN/m以下である請求項1〜3のいずれか一項に記載の塗工白板紙の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれ一項に記載の製造方法で製造された塗工白板紙。

【公開番号】特開2009−41131(P2009−41131A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−206186(P2007−206186)
【出願日】平成19年8月8日(2007.8.8)
【出願人】(000122298)王子製紙株式会社 (2,055)
【Fターム(参考)】