説明

塗工紙

【課題】低米坪でありながら優れた白紙光沢度および印刷光沢度を有する塗工紙を提供する。
【解決手段】基紙と、基紙上に形成される下塗り塗工層と、下塗り塗工層上に設けられる上塗り塗工層とを有する塗工紙であって、JIS P 8124に準拠して測定した坪量が60g/m2以下であり、下塗り塗工層および上塗り塗工層の総塗工量が両面で10〜20g/m2であり、下塗り塗工層は、顔料および接着剤を主成分とし、下塗り塗工層に含まれる顔料は、平均粒子径0.3〜1.6μmの粒子から成る顔料を全顔料に対し90質量%以上含有したものであり、下塗り塗工層に含まれる接着剤は、水溶性高分子を接着剤全体に対し40〜100質量%含むことを特徴とする、塗工紙である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗工紙に関し、より特定的には、低米坪であり、且つ優れた白紙光沢度および印刷光沢度を有する塗工紙に関する。
【背景技術】
【0002】
塗工紙は、塗工液の塗工量や塗工層表面の平坦化処理の度合い、要求品質に応じて、アート紙(A1グレード)、塗工紙(A2グレード)、軽量塗工紙(A3グレード)、微塗工紙に大別して分類される。一般的に、A1グレードの塗工紙は、高級美術書や、雑誌の表紙、口絵、カレンダー、ポスター、ラベル、煙草包装用などの、高精細な印刷を要求されるものに使用されている。A2グレードの塗工紙は、カタログ、パンフレット等の見栄えが必要とされる商業印刷等に使用されている。A3グレードの塗工紙および微塗工紙は、チラシ等の商業印刷等に利用されている。
【0003】
そして、近年は、より安価な塗工紙に対する要求が高くなっている。より安価な紙とは、従来と同程度の品質でありながら、単位面積あたりの重量(坪量)が少ない紙である。例えば、坪量が60g/m2以下の塗工紙において、坪量を小さくする方法としては、塗工紙のうち基紙部分の坪量を低減させる方法がある。しかしながら、基紙部分の坪量を低減すると、塗工紙の剛性が低下して見栄えが低下する問題がある。
【0004】
このような問題を鑑みて、例えばルンケル比が高く剛性に優れたパルプを用いて塗工紙の剛性を向上させる方法(特許文献1を参照)、原紙に水溶性高分子を塗工して紙腰を向上させる方法(特許文献2を参照)、潰れやすい有機顔料を塗工層に含有させ、平坦化処理における線圧を調整する方法(特許文献3を参照)などが開発されている。
【0005】
塗工紙の坪量を小さくする方法としては、塗工紙のうち塗工層部分の重量(塗工液の塗工量)を低減させる方法が考えられる。例えば、A2グレードの塗工紙の塗工層を、より塗工量が少なく安価なA3グレードの塗工層に置き換える方法が考えられる。しかし、A3グレードの塗工紙の塗工量は、両面で15〜20g/m2程度が一般的であるため、A2グレードの塗工量20〜40g/m2程度に比べて少なく、平滑性や白紙光沢度等の品質が低下しやすくなるという問題がある。
【0006】
そこで、塗工量を増加させずに、光沢性および平坦性を向上させる方法として、塗工層を2層に分けて設ける方法が開発されている。例えば、基紙に近い下塗り塗工層として、粒子径が大きく粗い顔料を用いて原紙の粗さを改善し、上塗り塗工層として粒子径が小さく細かい顔料を用いて塗工紙表面の平坦性および光沢性を向上する方法(特許文献4を参照)がある。
【0007】
また、塗工層を2層に分けて塗工量を低減する方法としては、下塗りの塗工層を低塗工量にし、かつ上塗り塗工層の塗工量を多くして塗工紙の平坦性および平滑性を向上させる方法も考えられる。但し、このような方法を用いる場合に、塗料濃度が高いと、塗料を薄く均一に塗工することが難しく、塗工ムラが発生する問題がある。特にブレード塗工で塗工する場合は塗工層に非塗工部分が発生する問題がある。また、塗工層を均一に設けることができるフィルム転写型ロールコーターを用いて塗工を行う場合は、塗料の塗布量を低減できず厚塗りになり、塗工量そのものを低減することができない。したがって、上記のように下塗りの塗工層を低塗工量にし、かつ上塗り塗工層の塗工量を多くする場合、下塗り塗工層の塗料濃度を低下させる必要がある。
【0008】
一方で塗料濃度を低減すると、塗料中の水が原紙に先に吸収され、顔料が塗着しないか、顔料が塗着したとしても基紙に水やバインダーが吸収されているため、顔料を基紙に接着できず、顔料が脱落する問題がある。このような問題を解決するために、塗料に保水剤を添加して、容易に基紙に水が吸収されないよう調整する方法が考えられる。
【0009】
しかしながら、塗工量を低減するために塗料濃度を低減させた場合、保水剤による保水性向上が得られにくく、充分に保水性が向上できない。保水剤を多く含有させると、塗料粘度が急激に向上して塗工性が悪化し、塗工ムラが発生する問題がある。このため、比較的低濃度の塗料、例えば濃度10〜50質量%、特に15〜30質量%と低濃度の塗料においては、充分な保水性を得ることができず、低塗工量で均一な塗工層を設けることができなかった。すなわち、平坦性や光沢度等について十分な品質を得ることができなかった。
【0010】
したがって、下塗り塗工層を低塗工量にするためには、例えば顔料の割合を減らして接着剤を主成分とする塗工層を設ける方法がある(特許文献5を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2003−049386号公報
【特許文献2】特開平11−061690号公報
【特許文献3】特開平09−119090号公報
【特許文献4】特開2002−69894号公報
【特許文献5】特開平11−189995号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、上記特許文献1乃至3に係る手法をA3グレードの塗工紙に適用した場合、充分な白紙光沢度および紙腰を両立することができなかった。
【0013】
また、上記特許文献4のように塗工層を2層に分けて設けた場合であっても、下塗り塗工層として粗い顔料を用いた場合、下塗り塗工後の表面が粗くなり、上塗り塗工層を設けたとしても充分に平滑性および光沢度の高い塗工紙を得ることができなかった。
【0014】
また、上記特許文献5のように下塗り塗工層の主成分を接着剤に変更すると、顔料による平坦性向上効果が得られにくく、光沢性が低下する問題があった。
【0015】
以上に示した通り、従来の技術では、求められる米坪量の低さ(安さ)と、平坦性や光沢度等の品質とを両立した塗工紙を得ることが困難であった。
【0016】
本発明は上記の課題を鑑みて成されたものであり、低米坪でありながら優れた白紙光沢度および印刷光沢度を有する塗工紙を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記の課題を解決するため、本願は以下の構成を採用した。すなわち、第1の発明は、基紙と、基紙上に形成される顔料および接着剤を主成分とする下塗り塗工層と、下塗り塗工層上に設けられる上塗り塗工層とを有し、JIS P 8124に準拠して測定した坪量が60g/m2以下であり、下塗り塗工層および上塗り塗工層の総塗工量が両面で10〜20g/m2の塗工紙であって、下塗り塗工層は、顔料および接着剤を主成分とし、下塗り塗工層に含まれる顔料は、平均粒子径0.3〜1.6μmの粒子から成る顔料を全顔料に対し90質量%以上含有したものであり、下塗り塗工層に含まれる接着剤は、水溶性高分子を接着剤全体に対し40〜100質量%含むことを特徴とする、塗工紙である。
【0018】
第2の発明は、第1の発明において、上塗り塗工層は顔料および接着剤を主成分とし、上塗り塗工層に含まれる接着剤の主成分は、ラテックスであり、ラテックス中のアクリロニトリル成分の含有割合は、5質量%未満であることを特徴とする。
【0019】
第3の発明は、第1または第2の発明において、水溶性高分子は、酸化澱粉および尿素リン酸エステル化澱粉の少なくとも何れか1つであることを特徴とする。
【0020】
第4の発明は、第1から第3の発明の何れかにおいて、下塗り塗工層は、顔料および接着剤を含む塗工液が基紙にフィルム転写型ロールコーターで塗工されて成り、塗工液中の固形分濃度が10〜50質量%、特に15〜30質量%であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
第1の発明によれば、低米坪でありながら優れた白紙光沢度および印刷光沢度を有する塗工紙を得ることができる。具体的には、第1の発明においては、下塗り塗工層として粒子径が比較的小さい顔料を用いることを特徴とする。粒子径の小さい顔料は粒子径が大きい顔料に比べて比表面積が大きいため、粒子同士の隙間に水を溜め込みやすく、保水性に優れるため、塗工時に水やバインダーが基紙に先に吸収されることがない。但し、一般に粒子径が小さい顔料を基紙に直接塗布すると、顔料が基紙に沈み込み、目止め効果が得られない問題がある。このため第1の発明においては、下塗り塗工層の主成分接着剤のうち40〜100質量%、好ましくは60〜100質量%を水溶性高分子とすることで、顔料の沈み込みを防止することを特徴とし、もって下塗り塗工層を形成することができるものである。
【0022】
仮に、水溶性高分子の割合が40質量%未満であると、顔料が基紙に沈み込みやすくなり、下塗り塗工層が接着剤のみとなってしまう問題がある。この場合、下塗り塗工後の平坦性を向上できないため、平坦性および光沢性に優れた塗工紙が得られない。一方、第1の発明は、自ら保水性を有する平均粒子径0.3〜1.6μmの顔料、および、上記顔料を塗工層表面に留めやすくする機能を有する水溶性高分子化合物を接着剤のうち40〜100質量%、特に60〜100質量%と他の接着剤よりも多く含有する下塗り塗工層を有しているため、少なくとも2層塗工を行った塗工紙であり、かつ坪量が60g/m2以下で塗工量が両面で10〜20g/m2程度と低塗工量の塗工紙でありながら、充分に高い平滑性および光沢度を得ることができるものである。加えて、顔料を含む下塗り塗料の保水性が高いため、下塗り塗工液が基紙内部にまで浸透せず、目止め性の高い下塗り塗工層を形成でき、ひいては、上塗り塗工液も下塗り塗工層に浸透し難く、上塗り塗工層の目止め性も向上できる。このため、塗工量が両面で10〜20g/m2程度と低塗工量の塗工紙でありながら、印刷インキの浸透を抑制でき、高い印刷光沢を得ることができる。また、塗工量が10〜20g/m2と少ないため、基紙の坪量を多くすることができ、紙腰も向上できる。
【0023】
すなわち、第1の発明は、下塗り塗工層に用いる顔料よりも上塗り塗工層に用いる顔料の方を細かくするという上述の特許文献4とは逆の発想により得られるものである。すなわち、第1の発明は、下塗り塗工層に用いる顔料よりも、上塗り塗工層に用いる顔料の方を細かくするものではなく、下塗り塗工層に用いる顔料としては比較的粒径が細かいものを用い、上塗り塗工層の顔料に用いる顔料としては比較的粒径が粗いものとすることで、平坦性および光沢度を容易に向上させるものである。さらには、下塗り塗工層に用いる顔料よりも、上塗り塗工層に用いる顔料の粒子としてより粗い粒子を用いる(より平均粒子径が大きい粒子を用いる)ことで、さらに平坦性および光沢度を向上させることができる。
【0024】
第2の発明によれば、特に光沢度および平坦性に優れた塗工紙を得ることができる。第2の発明において示した通り、上述の上塗り塗工層としては、接着剤の主成分としてラテックスを含有することが好ましい。上塗り塗工層に、親油性のラテックスを主成分とする接着剤を用い、かつ、下塗り塗工層に、親水性の澱粉を主成分とする接着剤を用いることで、上塗り塗工層と下塗り塗工層の親和性を低減できる。これにより、上塗り塗工層の顔料や接着剤が下塗り塗工層に沈み込みにくくなる。すなわち、塗工後〜乾燥の間に発生するレべリング(塗料が流動性を持って基紙上を移動し、塗工面が均一にならされる現象)が発生する時間をより長くすることができる。そのため、特に光沢度および平坦性に優れた塗工紙が得られ、好ましい。このような構成により、特に第1の発明のごとく、塗工量を10〜20g/m2程度と少なくした塗工紙においても、十分に高い平坦性および光沢性を得ることができる。
【0025】
また、第2の発明においては、平坦性を付与できる顔料を主成分とする顔料塗工層が下塗り塗工層として予め設けられているため、当該下塗り塗工層上において形成されたレベリング後の上塗り塗工層も高い平坦性を有しており、特に平坦性および光沢度が高い塗工紙を得ることができる。一方、従来のように下塗り塗工層において接着剤を主成分とする顔料塗工層を設けた場合は、下塗り塗工層の平滑性に劣るため上塗り塗工層においても平坦性および光沢性が向上しにくくなるため好ましくない。また、顔料および接着剤を主成分とする下塗り塗工層であっても、接着剤としてラテックスを主体として用いた場合、上塗り塗工層の接着剤であるラテックスとの親和性が高くなり、上塗り塗工層の塗料が基紙に浸透しやすくなって平坦性および光沢性が向上しにくくなるため好ましくない。
【0026】
特に、上塗り塗工層中のラテックス中のアクリロニトリル含有割合を5質量%未満とすることで、より水溶性高分子との親和性を低減することができるため、さらに光沢性および平滑性に優れた塗工紙を得ることができる。
【0027】
第3の発明によれば、下塗り塗工層に含まれる顔料を層中に留めやすくして、光沢度および平滑度に優れた塗工紙を得ることができる。第3の発明において示した通り下塗り塗工層の水溶性高分子は、酸化澱粉および/または尿素リン酸エステル化澱粉であることが好ましい。本発明においては、下塗り塗工層に平均粒子径が0.3〜1.6μmと小さい粒子を90質量部以上含むため、基紙にこれら顔料粒子が沈み込まないよう、分子量が大きい水溶性高分子を下塗り塗工層に含ませることが好ましい。一般に未変性の澱粉は、分子量が大きく、顔料粒子を充分に保持できるため好ましいが、腐食しやすいため取り扱いが難しい。そこで通常は酸による分解、官能基または高分子差鎖の導入、架橋剤による架橋等により変性した変性澱粉を用いる。しかし、変性澱粉は変性時に分子鎖が切れて分子量が低下するため、変性澱粉の中でも微細顔料を塗工層中に留めやすい分子量や分子構造を有する変性澱粉を用いることが好ましい。これら分子量や分子構造による、微細顔料の留めやすさについて詳細は不明だが、発明者らが検討した結果、酸化澱粉および尿素リン酸エステル化澱粉の何れかを使用、または併用すると、より微細顔料を下塗り塗工層中に留めやすく、光沢度および平滑度に優れた塗工紙が得られやすいことを見出した。
【0028】
第4の発明によれば、低米坪でありながら優れた白紙光沢度および印刷光沢度を有する塗工紙を製造する際に転写不良の発生を抑制することができる。第4の発明に示した通り、下塗り塗工層をより低塗工量で且つ均一に設けるためには、フィルム転写型ロールコーターを用いることが好ましい。一般にフィルム転写型ロールコーターは塗工液を一度、ロールに塗工して塗膜化してから紙に転写するため、塗工液中の固形分の濃度が薄い場合は保水性不足による転写不良が発生しやすい。しかしながら本発明においては、平均粒子径が0.3〜1.6μmと保水性の高い顔料を用い、かつ接着剤のうち保水性の高い水溶性高分子を40〜100質量%、好ましくは60〜100質量%併用しているため、例えば塗工液中の固形分の濃度が10〜50質量%、さらには15〜30質量%と比較的低くても、転写不良の発生を防止できる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本願発明の実施形態に係る塗工紙は、基紙に少なくとも2層の塗工層を設けて成る塗工紙である。より具体的には、本発明の実施形態に係る塗工紙は、基紙、基紙上に形成される下塗り塗工層、および下塗り塗工層上に設けられる上塗り塗工層から構成される。
【0030】
(基紙)
本発明に係る塗工紙の基紙の原料としては、一般に製紙用途で使用される化学パルプや機械パルプ、脱墨古紙パルプを用いることができる。また、本発明に係る塗工紙の基紙の原料としては、一般に製紙用途で使用される填料を用いることができる。
【0031】
(下塗り塗工層)
以上のような原料をもとに製造された基紙の両面に、顔料および接着剤を主成分とする下塗り塗工層を設ける。下塗り塗工層は、顔料および接着剤を主成分として含有する。下塗り塗工層に含まれる顔料は、平均粒子径0.3〜1.6μm、好ましくは0.3〜0.8μmの粒子が90質量%以上を占めるものである。下塗り塗工層に含まれる接着剤は、水溶性高分子を40〜100質量%、好ましくは60〜100質量%を含有するものである。下塗り塗工層は、上記の顔料および接着剤を含有する下塗り塗工液を基紙に塗工することによって設けられる。
【0032】
基紙に下塗り塗工液を塗布する際、当該塗工液の保水性が小さいと、基紙に塗工液中の水が早く吸収されすぎて、顔料および接着剤が紙面上で流動性を失いやすく、均一に塗布しにくいだけでなく、塗工後〜乾燥の間に発生するレべリングが充分に発生せず、塗工ムラとなりやすくなる。このため、下塗り塗工液が水を容易に放出しないよう、当該塗工液に保水剤を含有させたり、基紙にサイズ剤を含有させたり等して水の吸収を抑制する必要がある。
【0033】
しかしながら、下塗り塗工液に保水剤を含有させると塗工液粘度が向上して塗工ムラが発生したり、サイズ剤を基紙に含有させたりすると異物が発生する問題がある。特に本発明に係る塗工紙のごとく、A3グレードであっても高い光沢性を付与するためには、塗工後のレベリングを最大限に活用する必要がある。すなわち、発明者らは鋭意検討した結果、平均粒子径0.3〜1.6μm、好ましくは0.3〜0.8μmの小粒子径の顔料を用い、かつ水溶性高分子を40〜100質量%、好ましくは60〜100質量%含有する接着剤を用いることで、塗工液の保水性を特に向上させることができ、下塗り塗工後のレベリングを充分に実施できるため、上塗り塗工後においては平滑性および光沢性に特に優れた塗工紙を得ることができた。一方、平均粒子径0.3〜1.6μmの小粒子径の顔料を用いなかった場合や、接着剤のうち水溶性高分子の割合が40質量%未満である場合、充分な白紙光沢度および印刷光沢度が得られない。
【0034】
一般に塗工液の保水性は保水剤の添加により調整するが、保水剤は塗工液濃度が50〜70質量%と高い場合に効果が得られるものである。本発明のごとく低塗工量で下塗り塗工液塗布する場合、塗工液濃度を20質量%以下にまで薄めると、下塗り塗工液の保水性を向上させにくい。その一方で、保水性を向上させるために保水剤を塗工液に大量に含有させると、塗工液の粘度が増加して塗工ムラが発生しやすくなる。その点、発明者らは鋭意検討した結果、下塗り塗工層の構成を上述のとおりとすることによって、塗工液濃度を10〜50質量%、さらには15〜30質量%と低く、かつ保水剤の含有量を0.01質量%以下にまで低減、または無配合にしても、充分に高い保水性を有する下塗り塗工液を得ることができた。
【0035】
(下塗り塗工層に用いる顔料)
下塗り塗工層で用いる顔料としては特に限定されず、一般に製紙用途で用いる顔料を使用することができる。例えば、下塗り塗工層で用いる顔料としては、クレーや炭酸カルシウム等を用いることができる。
【0036】
下塗り塗工層に含まれる顔料は、平均粒子径が0.3〜1.6μm、好ましくは0.3〜0.8μmの比較的粒子径の小さな顔料粒子が90質量%以上を占めるものとする。一般に、粒子が小さいほど粒子間に水を溜め込みやすいため、下塗り塗工液の保水性は高くなる。したがって、下塗り塗工層に含まれる顔料を上記のような構成とすると、後述する下塗り塗工液濃度を10〜50質量%、さらには15〜30質量%と低くしても保水性を高いまま維持しやすく、低濃度であっても高保水性の下塗り塗工液が得られやすいため好ましい。一方、顔料中において細かい粒子の含有率が多くなりすぎ、例えば、平均粒子径が0.2μmを下回ると、印刷後乾燥時に基紙中の水分が抜けにくくなるため、ブリスター欠陥等が発生する問題がある。また、粒子の平均粒子径が1.6μmを超過すると、保水性が得られにくくなり下塗り塗工液の転写不良が発生する問題がある。
【0037】
(下塗り塗工層に用いる接着剤)
下塗り塗工層に用いる接着剤としては、従来一般に製紙用途で使用している接着剤を用いることができる。例えば、下塗り塗工層に用いる接着剤としては、酸化澱粉、陽性化澱粉、エステル化澱粉、ヒドロキシエチル澱粉等の澱粉類;カゼイン、大豆蛋白等の蛋白質類;ポリビニルアルコール、オレフィン−無水マレイン酸樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、ウレタン樹脂等の合成樹脂系接着剤;酸化澱粉、陽性化澱粉、エステル化澱粉、デキストリン等の澱粉類;カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体;メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体ラテックス、スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス等の共役ジエン系ラテックス、アクリル酸エステル及び/又はメタクリル酸エステルの重合体ラテックスもしくは共重合体ラテックス等のアクリル系ラテックス、エチレン−酢酸ビニル重合体ラテックス等のビニル系ラテックス、あるいはこれらの各種共重合体ラテックスをカルボキシル基等の官能基含有単量体で変性したアルカリ部分溶解性又は非溶解性のラテックス等のラテックス類が例示され、これらの中から1種又は2種以上を適宜選択して併用することができる。
【0038】
この中でも水溶性高分子、特に酸化澱粉および/または尿素リン酸エステル化澱粉を用いることが好ましい。これらは0.3〜1.6μm、好ましくは0.3〜0.8μmの顔料粒子を留めて基紙に浸透させにくく、下塗り塗工後の平坦性を充分に向上できるため好ましい。また、このような構成により、後述する下塗り塗工液濃度が10〜50質量%、さらには15〜30質量%と低くしても保水性を高いまま維持しやすく、低濃度でありながら高保水性を有する下塗り塗工液を調製しやすい。
【0039】
また、接着剤に占める水溶性高分子の割合は、40〜100質量%、好ましくは60〜100質量%である。なお、接着剤に占める水溶性高分子の割合が40質量%を下回る場合、充分な保水性が得られなくなるため、下塗り塗工液濃度を10〜50質量%、さらには15〜30質量%に低減した際に、下塗り塗工液の転写不良が発生し易くなるおそれがある。
顔料に対する接着剤の割合は、顔料100質量部に対して25〜900質量部が好ましく、100〜900質量部と顔料よりも接着剤が多くなることがより好ましい。特に、水溶性高分子が顔料より多くなると、保水性の向上効果が高い一方、上塗り塗工層を基紙に浸透させない目止め効果が高くなり、印刷インキが塗工層に浸透しなくなり、特に高い印刷光沢を得ることができる。加えて、顔料を含有しているため、平坦性に優れた下塗り塗工層を得ることができる。
【0040】
(下塗り塗工層の塗工量)
下塗り塗工層の塗工量は特に限定されないが、完成後の塗工紙の剛性を出すためには基紙の坪量を多くし、かつ光沢性を向上させるためには上塗り塗工層を多くすることが好ましいため、塗工紙全体の坪量を低減するためには下塗り塗工層の塗工量は少ない方が好ましい。つまり本発明においては、下塗り塗工層の塗工量は、両面あたり0.1〜5.0g/m2程度とすることが好ましい。
【0041】
(下塗り塗工層の塗工方法)
上記下塗り塗工液を塗布する方法は特に限定されないが、下塗り塗工層を上述のとおり両面あたり0.1〜0.5g/m2程度設けるためには、均一に塗工層を設けることができるフィルム転写方式の塗工装置を用いることが好ましい。このような塗工装置としては、例えばゲートロールコーター、ロッドメタリングサイズプレスなどを用いることができる。
【0042】
(下塗り塗工液濃度および保水度)
上述のとおり下塗り塗工層の塗工量を0.1〜0.5g/m2程度とするためには、下塗り塗工液の濃度を例えば10〜50質量%、さらには15〜30重量%程度まで希釈することが好ましい。下塗り塗工層の濃度をこのような濃度とすることで、比較的少ない塗工量で均一な下塗り塗工層を得ることができる。一方、下塗り塗工液の濃度が50質量%を超過すると、下塗り塗工層の塗着量が多くなり過ぎる。したがって、塗工紙全体の坪量を維持するべく、上塗り塗工層を低減すると、光沢性が低下してしまう。あるいは、塗工紙全体の坪量を維持するべく、予め基紙の坪量を低減すると、塗工紙の紙腰が低下しやすいため好ましくない。
【0043】
また、下塗り塗工液濃度が10質量%を下回ると、基紙に下塗り塗工液中の水や接着剤が吸収されやすくなり、顔料が脱落しやすく、光沢性および面感に劣りやすいため好ましくない。このような基紙への水や接着剤の吸収を防止するため、下塗り塗工液の保水度は、塗工液の濃度20質量%において150g/m2以下、さらには100g/m2以下とすることが好ましい。一方、下塗り塗工液の保水度が150g/m2を上回ると、基紙に下塗り塗工液中の水や接着剤が吸収されやすく塗工ムラや顔料の脱落が発生しやすくなる。また、下塗り塗工液の保水度が30g/m2を下回ると塗工後の乾燥が遅くなるため、ドライヤーに下塗り塗工液が付着して塗工層表面が荒れる問題が発生しやすい。
【0044】
本発明においては上述のとおり、濃度および保水度を上記範囲内とすることで、下塗り塗工層を両面あたり0.1〜5.0g/m2塗工することができる。しかしながら、従来の保水剤は、一般的な下塗り塗工液濃度(50〜70質量%)程度であれば保水性を調整可能であるものの、下塗り塗工液の濃度が比較的低い場合、特に濃度10〜50質量%、特に15〜30質量%と低い場合では、保水性向上効果が少なく、充分な保水性が得られない場合があった。
【0045】
低濃度の下塗り塗工液の保水性を向上させるためには保水剤を大量に含有させる必要があるが、例えば保水剤を0.3質量%以上まで含有させると、保水性向上効果は見られるものの、粘度が急激に向上し、塗工時に塗工ムラが発生しやすくなる問題があった。このため、単に保水剤を添加しただけでは、下塗り塗工液濃度を10〜50質量%として塗工量を低減する場合に、保水度を150g/m2以下、特に100g/m2以下とすることができなかった。
【0046】
発明者らは鋭意検討した結果、平均粒子径が0.3〜1.6μm、好ましくは0.3〜0.8μmの顔料を全顔料の90質量%以上含有した顔料、および接着剤中の水溶性高分子の割合を40〜100質量%、好ましくは60〜100質量%、特に顔料に対する水溶性高分子の割合を100〜900質量部と顔料よりも多く含有した下塗り塗工液に用いることで、下塗り塗工液に添加する保水剤の含有量を0.01質量%以下と少なくしても、上記濃度および保水度を有する下塗り塗工液を調整することができた。すなわち、下塗り塗工層の塗工量を従来に比して低減しつつ平坦性や光沢性に優れた塗工紙を好適に得ることができた。加えて、上記水溶性高分子として酸化澱粉を用いると、特に保水性に優れた下塗り塗工液を得ることができ好ましい。
【0047】
(保水剤)
下塗り塗工液に用いる保水剤としては、従来一般に製紙用途で使用している保水剤を用いることができる。しかしながら、本発明においては保水剤を用いることなく、高い保水性を付与させることができる。
【0048】
(プレカレンダー)
ところで、下塗り塗工層の平坦性が比較的低い場合、上塗り塗工層を塗工した後に発生するレベリングを充分に達成したとしても、レベリングにより得られた上塗り塗工層表面の平坦性も低くなり、結果として高い平坦性および光沢性を有する塗工紙が得られない場合がある。そこで、本発明においては、上述の下塗り塗工層を基紙に設けた後、上塗り塗工層を設ける前に、カレンダー等による平坦化処理(プレカレンダー)を行うことが、より好ましい。このような処理によれば、上塗りおよび下塗り塗工液の塗工量を、より低減しつつ、高い平滑性および光沢性を付与できるようにすることができる。プレカレンダーの処理条件は、圧力20〜200kN/m、温度50〜100℃とすることが好ましい。
【0049】
(上塗り塗工層)
上述基紙の両面下塗り塗工層上に、顔料および接着剤を主成分とする上塗り塗工層を設ける。具体的には、下塗り塗工層上に顔料および接着剤を主成分とする上塗り塗工液を塗布、乾燥させることにより上塗り塗工層を設ける。上述の通り下塗り塗工層には、平均粒子径0.3〜1.6μm、好ましくは0.3〜0.8μmの粒子を90質量%以上含む顔料、および40〜100質量%、好ましくは60〜100質量%が水溶性高分子から成る接着剤が含まれているため、低塗工量で、かつ均一な下塗り塗工層が設けられている。このため、上塗り塗工層の塗工量を低減し、上塗り塗工層および下塗り塗工層の合計塗工量を10〜20g/m2程度とA3グレードの塗工紙並みに低減したとしても、塗工量20〜40g/m2程度のA2グレードのコート紙と同程度の光沢性や平滑性を得ることができる。なお、上塗り塗工層は1層に限定するものではなく、総塗工量が10〜20g/m2であれば何層設けても良い。
【0050】
(上塗り塗工層の顔料)
上塗り塗工層に用いる顔料としては、特に限定がなく、従来一般的に製紙用途で使用されているものを用いることができ、例えば下塗り塗工層に記載のものを例示することができる。上塗り塗工層に用いる顔料は、下塗り塗工層に用いる顔料よりも粗いことが好ましく、例えば平均粒子径で0.5〜2.0μm、好ましくは0.9〜2.0μm程度であり、かつ下塗り塗工層の顔料よりも大きい顔料を用いると、特に高い白紙光沢度および印刷光沢度が得られるため好ましい。
【0051】
(上塗り塗工層の接着剤)
上塗り塗工層に用いる接着剤としては、特に限定がなく、従来一般的に製紙用途で使用されているものを用いることができる。例えば、上塗り塗工層に用いる接着剤としては下塗り塗工層に記載のものや、ラテックスなどを例示することができる。
【0052】
この中でも、顔料との接着性が良好なラテックスを接着剤に用いることが好ましく、アクリロニトリル成分の含有割合が5質量%未満のラテックスを用いることが好ましい。アクリロニトリルは下塗り塗工層に含有される水溶性高分子との親和性が高いため、アクリロニトリル含有量を5質量%未満にまで低減した場合、アクリロニトリル含有量を5質量%以上とした場合に比べ、上塗り塗工層を塗工する際のレべリング時間を長くとることができ、光沢度および平坦性を特に向上させることができる。
【0053】
なお、仮に、下塗り塗工層の接着剤としてラテックスを主成分とする接着剤を用いた場合、上塗り塗工層のラテックスと下塗り塗工層のラテックスの親和性が高いため、上塗り塗工層のラテックスや顔料が下塗り塗工層に浸透しやすくなり、レベリングが充分に行われず、上塗り塗工層の平坦性や光沢性が低下しやすくなるため好ましくない。一方、本発明のごとく、下塗り塗工層に水溶性高分子を主成分とする接着剤を用い、かつ上塗り塗工層としてアクリロニトリルを5質量%以下のラテックスを含有した塗工層を設けた場合、上塗り塗工層中のラテックスが基紙にまで浸透しにくくなり、上述のごとくレべリングを達成した後に上塗り塗工層中で成膜が可能となるため、より平滑性および光沢性に優れた塗工紙を得ることができる。このような各塗工層の構成により、塗工量が10〜20g/m2程度と低塗工量の塗工紙でありながら、塗工量が20〜40g/m2のA2コート紙と同程度の平滑性および光沢性を得ることができる。
【0054】
上述のラテックスに加えて、上塗り塗工層に含まれる接着剤の原料として水溶性高分子を併用することが好ましい。具体的には、水溶性高分子として尿素リン酸エステル化澱粉を併用することが好ましい。上述のように下塗り塗工層に含む水溶性高分子として酸化澱粉を用いた場合、酸化澱粉と尿素リン酸エステル化澱粉との相溶性が低いため、下塗り塗工層への上塗り塗工液の過剰な浸透を防ぐことができ、特に平滑性および光沢度に優れた塗工紙が得られやすい。
【0055】
(塗工量)
上塗り塗工層の塗工量(固形分量)は、両面合計で、好ましくは10.0〜14.0g/m2であり、上塗り塗工層と下塗り塗工層の合計塗工量が10〜20g/m2程度あれば、充分に光沢性および平滑性に優れた塗工紙が得られる。
【0056】
以上に示した通り、本発明においては、顔料および接着剤を主成分とする塗工層を少なくとも2層設けた塗工紙であり、下塗り塗工層に顔料として平均粒子径0.3〜1.6μm、好ましくは0.3〜0.8μmの粒子を90質量%以上含有し、かつ接着剤のうち40〜100質量%、好ましくは60〜100質量%が酸化澱粉および/または尿素リン酸エステル化澱粉であり、さらに上塗り塗工層として、接着剤の主成分がラテックスであり、ラテックス中のアクリロニトリル成分の含有割合を5%未満にすることで、塗工量が10〜20g/m2と低くても、塗工量20〜40g/m2と高い塗工量を有する塗工紙と同程度の平滑性および光沢性を有する塗工紙を得ることができる。
【0057】
また、上述の構成とすることで、例えば下塗り塗工層の塗工液の濃度を10〜50質量%、特に15〜30質量%にしても、濃度20質量%における保水度を150g/m2以下、特に100g/m2以下に調整できるため、フィルム転写型ロールコーターを用いて片面あたり塗工量0.1〜5.0g/m2と比較的低塗工量で塗工することができるものである。
【0058】
(坪量)
本発明においては、上述のとおりの構成とすることで、例えば坪量が60g/m2以下と軽量な塗工紙であっても、高い剛性を獲得することができ、見栄えに優れた塗工紙を得ることができる。
【0059】
<実施例>
次に、本発明の塗工紙を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0060】
まず、原料パルプとして、NBKPを20質量%およびLBKPを80質量%混合して100質量%とし、このパルプ100質量%(絶乾量)に対して、各々固形分で、填料(紡錘型軽質炭酸カルシウム、品番:TP−121―6S、奥多摩工業社製)、および、内添サイズ剤(品番:AK−720H、ハリマ化成(株)製)0.02質量%、カチオン化澱粉(品番:アミロファックスT−2600、アベベジャパン(株)製)1.0質量%、及び歩留向上剤(品番:NP442、日産エカケミカルス(株)製)0.02質量%を添加してパルプスラリーを得た。尚、NBKPのフリーネスは500ml、LBKPのフリーネスは400mlに調整した。
【0061】
次に、ギャップフォーマからなるワイヤーパート、オープンドローのないストレートスルー型のプレスパート、シングルデッキドライヤーからなるプレドライヤーパートを経て基紙を製造した。
【0062】
基紙の両面に、表1の各実施例および比較例に示す顔料、接着剤および保水剤を含む下塗り塗工液を、両面合計で4.0g/m2となるよう表1に記載の塗工機で下塗り塗工した。なお、表1はこの下塗り塗工後、アフタードライヤーパートで乾燥し、プレカレンダーパートで、ニップ圧20kN/mで平坦化処理を行った。なお、塗工液は表1に記載の濃度になるよう、水を加えて調整した。
【0063】
【表1】

【0064】
顔料として微粒クレー(品番:アマゾンプラス、カダム社製、平均粒子径0.3μm)70質量部、および重質炭酸カルシウム30質量部の合計100質量部に対して、表1に記載の水溶性高分子を当該顔料100質量部に対して5質量部および表1に記載のアクリロニトリル含有量のラテックス10質量部を混合した上塗り塗工液を調製した。この上塗り塗工液を、両面合計して固形分換算で16g/m2となるようブレードコーターを用いて基紙に塗工した。その後、上塗り塗工層を乾燥した後にソフトカレンダーを用い、ニップ圧30kN/m、ロール温度80℃で2ニップの平坦化処理を行い、塗工紙を得た。なお、実施例19〜21は、ラテックス中のアクリロニトリル成分の割合を表1に記載のとおり変更した以外は、実施例1と同じラテックスを用いた。
【0065】
上記各実施例および比較例において、塗工液の調製に用いた顔料、接着剤および保水剤は次の通りである。
(顔料)
・炭酸カルシウム
重質炭酸カルシウム、品番:ハイドロカーブ90、備北粉化工業社製、平均粒子径1.3μm。
軽質炭酸カルシウム、品番:FMT−97、ファイマテック社製、平均粒子径0.6μm。
・クレー
デラミクレー、品番:カピムCC、イメリス社製、平均粒子径3.2μm。
【0066】
(接着剤)
・水溶性高分子
酸化澱粉 品番:オキセル、三晶社製
リン酸澱粉(尿素リン酸エステル化澱粉) 品番:スターコート14、日本食品加工社製
HES(ヒドロキシエチル化澱粉) 品番:コートマスターK96F、三晶社製
・ラテックス
スチレン−ブタジエンラテックス 品番:XQ−83302、ダウ・ケミカル社製
・保水剤
アニオン系合成ポリマー 品番:ソマレックス−270K、ソマール社製
【0067】
なお、ここでいう顔料の平均粒子径は、レーザー粒度分布測定装置(レーザー解析式粒度分布測定装置「SALD−2200型」島津製作所社製)にて粒度分布を測定し、全粒子の体積に対する累積体積が50%になるときの粒子径(d50)として求めた。クレーは、表1に記載の平均粒子径になるよう、湿式粉砕機(品名:プラネタリーミル、セイシン企業製)を用いて粉砕した。
【0068】
また、保水度およびB型粘度は次のとおり測定した。
(1)塗工液の保水度
AA−GWR保水度計(SMT社製)を用い、B型粘度150cps、23℃に温度調整した塗工液を、圧力2.0kg/cm2、接触時間30秒にて測定した。値が小さい程保水性がよいことを示す。
(2)塗工液のB型粘度
30℃に温度調整した塗工液を、60rpmにて測定した。B型粘度が200cpsを超過すると塗工ムラが発生して塗工できないため、B型粘度が200cps以下となるよう、塗料濃度を調整した。
比較例4および5においては、塗料濃度を低減してB型粘度を200cps以下に調整したが、水溶性高分子の割合が低いため保水性が悪い(保水度が高い)値となった。
【0069】
<評価結果>
上記各実施例および比較例において得られた塗工紙の下記(a)〜(b)の評価項目に係る物性について、以下の方法に基づいて調べた。なお、詳細な評価結果は表1に示す。
【0070】
(a)坪量
JIS P 8124:1998「紙及び板紙−坪量測定方法」に準拠して測定した。
【0071】
(b)白紙光沢度
JIS P 8142:2005「紙及び板紙−75度鏡面光沢度の測定方法」に準拠して測定した。白紙光沢度が55%以上であれば光沢性に優れ、55%を下回ると光沢性に劣るものである。
【0072】
(c)印刷光沢度
次の条件で塗工紙に印刷を行って印刷試験体を作製した。
・印刷機:RI‐3型、(株)明製作所製
・インキ:WebRexNouverHIMARKプロセス(藍)、大日精化社製
・インキ量:上段ロールに0.3ml、下段ロールに0.2ml
・試験方法:上段、下段ロールでそれぞれインキを各3分間練り(2分間練った後、ロールを反転させてさらに1分間練る)、回転速度30rpmで2色同時印刷を行った。
前記印刷試験体について、JIS P 8142:2005「紙及び板紙−75度鏡面光沢度の測定方法」に準拠して測定した。印刷光沢度が70%以上であれば光沢性に優れ、70%を下回ると光沢性に劣るものである。
【0073】
(d)ブリスター
上記の印刷試験体を、流れ方向2cm、幅方向10cmに調製し、23℃、50%RH条件下で24時間調湿したのち、一定温度に調整したオイルバス(シリコンオイル)に4秒間浸けた。この試験を3回行い、ブリスター(紙層の破壊)が発生した温度のうち、最も低い温度をブリスター発生温度とした。オイルバスの温度は、160℃から10℃刻みで昇温させ、その温度においてブリスターが発生した場合に、ブリスター発生温度とした。ブリスター発生温度が180℃以上であり耐ブリスター性を有するものを○、ブリスター発生温度が180℃未満であり、耐ブリスターに劣るものを×と評価した。
【0074】
実施例の塗工紙はいずれも、請求項1の構成を満たすため、上記各評価項目において良好な結果が得られた。すなわち、各実施例に係る塗工紙は、本願課題を解決できるものである。
【0075】
これに対して、比較例の塗工紙はいずれも、請求項1の構成を満たさないため、何れかの評価項目において良好な結果が得ることができず、本願課題を必ずしも解決できないものである。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明に係る塗工紙は、低米坪であり、且つ優れた白紙光沢度および印刷光沢度を有する塗工紙などとして有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基紙と、
前記基紙上に形成され、顔料および接着剤を主成分とする下塗り塗工層と、
前記下塗り塗工層上に設けられる上塗り塗工層とを有し、
JIS P 8124に準拠して測定した坪量が60g/m2以下であり、
前記下塗り塗工層および前記上塗り塗工層の総塗工量が両面で10〜20g/m2の塗工紙であって、
前記下塗り塗工層に含まれる前記顔料は、平均粒子径0.3〜1.6μmの粒子から成る顔料を全顔料に対し90質量%以上含有したものであり、
前記下塗り塗工層に含まれる前記接着剤は、水溶性高分子を接着剤全体に対し40〜100質量%含むことを特徴とする、塗工紙。
【請求項2】
前記上塗り塗工層は顔料および接着剤を主成分とし、
前記上塗り塗工層に含まれる前記接着剤の主成分は、ラテックスであり、
前記ラテックス中のアクリロニトリル成分の含有割合は、5質量%未満であることを特徴とする、請求項1に記載の塗工紙。
【請求項3】
前記水溶性高分子は、酸化澱粉および尿素リン酸エステル化澱粉の少なくとも何れか1つであることを特徴とする、請求項1または2に記載の塗工紙。
【請求項4】
前記下塗り塗工層は、前記顔料および前記接着剤を含む塗工液が前記基紙にフィルム転写型ロールコーターで塗工されて成り、
前記塗工液中の固形分濃度が10〜50質量%であることを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載の塗工紙。

【公開番号】特開2012−67427(P2012−67427A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−215691(P2010−215691)
【出願日】平成22年9月27日(2010.9.27)
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)
【Fターム(参考)】