説明

塗工装置

【課題】ウエブの継ぎ目における、塗工の終了と開始を、迅速に行うことができる塗工装置を提供する。
【解決手段】ウエブWに塗工液を塗工するダイ12と塗工液を供給するポンプ28とダイ12の塗工液入口24とポンプ28との間に接続された供給配管30を有し、塗工液入口24又は、供給配管30の途中であって、塗工液入口24の近傍に給液バルブ32を設け、塗工液を供給するポンプ28の運転の開始と同期して給液バルブ32を開状態に制御し、ポンプ28の運転終了と同期して給液バルブ32の閉状態に制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長尺状のウエブに塗工液を塗工する塗工装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、フィルム、布帛、紙、金属箔、金属メッシュなどの長尺状のウエブに塗工液を塗工する塗工装置としては、吐出型の塗工装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この塗工装置は、ウエブがバックアップロール上を搬送され、このウエブにダイから塗工液を吐出して塗工する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−179156号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような塗工装置において、ウエブの繋ぎ目が近づいてくると、ダイに塗工液を圧送するポンプを停止させ、ウエブに対する塗工が終了した後に、ダイの退避動作を行う必要がある。ポンプを停止させた後、ウエブに対する塗工を終了させるには、ポンプからダイに向かう給液配管の内圧が0まで下がる時間が必要であり、また、その間は、ウエブに塗工される塗工液が無駄であり、さらに、走行するウエブも無駄である。
【0006】
そのため、従来、その時間を短縮のために、ポンプを逆転運転して塗工液を吸引する方法が用いられているが、この方法では、逆転運転による気泡の混入、次の塗工開始時においてポンプからダイに向かって再び塗工液を圧送する時間が必要であるという問題点がある。
【0007】
そこで、本発明は上記問題点に鑑み、塗工の終了と開始を迅速に行うことができる塗工装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、長尺状のウエブに塗工液を塗工する塗工ヘッドと、前記塗工ヘッドに前記塗工液を供給するポンプと、前記塗工ヘッドの塗工液入口と前記ポンプとの間に接続された給液配管と、前記塗工液入口、又は、前記配管の途中であって前記塗工液入口の近傍に設けられた給液バルブと、前記ポンプの運転開始と同期して前記給液バルブを開状態に制御し、前記ポンプの運転終了と同期して前記給液バルブを閉状態に制御する制御手段と、を有したことを特徴とする塗工装置である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、塗工の終了と再開を迅速に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施例を示す塗工装置の構成図である。
【図2】変更例1の塗工装置の説明図である。
【図3】変更例2の塗工装置の説明図である。
【図4】変更例3の塗工装置の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施例の塗工装置10について図1に基づいて説明する。
【0012】
本実施例の塗工装置10は、長尺状のウエブW(例えば、リチウムイオン電池の電極部材である金属箔)に塗工液を塗工するものであり、塗工ヘッドとしてはダイ12を用いている。
【0013】
(1)塗工装置10の構成
図1に示すように、本実施例の塗工装置10において、バックアップロール14によってウエブWが下から上に搬送され、このバックアップロール14の側方にダイ12が配置されている。ダイ12は、上部ヘッド16と、この上部ヘッド16の下面に取り付けられた下部ヘッド18とから構成され、先端にいくほど先細りとなっている。ダイ12の幅方向の寸法は、ウエブWより幅広に構成されている。下部ヘッド18には、液溜め部20が設けられ、液溜め部20から、ダイ12の先端部に向かってスリット22が設けられている。すなわち、上部ヘッド16と下部ヘッド18との間にスリット22が設けられ、このスリット22の先端部が塗工液の吐出口となる。液溜め部20の下部であって、かつ、幅方向の中心には塗工液入口24が開口している。
【0014】
塗工装置10は、塗工液を貯留しているタンク26と、タンク26に貯留されている塗工液をダイ12の液溜め部20に圧送するポンプ28を有している。ポンプ28とダイ12の塗工液入口24の間には、塗工液を圧送するための給液配管30が配されている。
【0015】
給液配管30の途中であって、塗工液入口24の近傍には、給液バルブ32が設けられている。この給液バルブ32は、アクチュエータにより開閉する。給液バルブ32が設けられている位置は、塗工液入口24に直接取り付けられているか、又は、給液配管30上であって、塗工液入口24からの距離Lが0cm〜30cmの範囲に取り付けられている。本明細書では、この給液バルブ32が取り付けられている位置を「塗工液入口24の近傍」という。なお、給液配管30の途中からタンク26に塗工液を循環させるための循環系配管25が設けられている。この循環系配管25に塗工液を循環させる場合は2方弁23を閉状態から開状態にする。
【0016】
ダイ12を水平方向に移動させて、ダイ12をウエブWから退避、又は、ダイ12をウエブWに近づけてニップさせる移動装置38が設けられている。
【0017】
(2)塗工装置10の電気的構成
次に、塗工装置10の電気的構成について図1に基づいて説明する。
【0018】
コンピュータよりなる制御部34にはバックアップロール14を回転させる走行モータ36と、ポンプ28のポンプモータと、給液バルブ32のアクチュエータ、移動装置38の移動モータとがそれぞれ接続されている。なお、制御部34は、循環系の2方弁23も制御できる。
【0019】
(3)塗工装置10の動作状態
まず、塗工装置10が、ウエブWに塗工を最初に開始するときの動作について説明する。
【0020】
制御部34は、バックアップロール14を走行モータ36によって回転させてウエブWを所定の走行速度で走行させる。次に、制御部34は、ポンプ28を回転させて給液配管30に塗工液を圧送した後に、給液バルブ32を開状態とし、ダイ12の液溜め部20に塗工液を供給する。すると、液溜め部20内部にある塗工液がスリット22を通り、吐出口から吐出され、ウエブWの表面に均一な厚さで塗工される。
【0021】
次に、ウエブWの繋ぎ目39が近づき通過するときに、塗工装置10の塗工を一旦終了させ、その後に再び塗工を開始する動作について説明する。塗工を一旦終了する理由は、ウエブWの繋ぎ目39は、両面接着テープで次のウエブWと繋がれているためウエブWの厚みが厚くなり、バックアップロール14とダイ12との間を通過するときに、ダイ12を退避させる必要があるからである。
【0022】
制御部34は、給液バルブ32を閉状態とすると共に、同時にポンプ28の運転を停止させる。これによって、給液配管30には、塗工液が残されたまま、給液バルブ32の位置で塗工液の供給は停止される。一方、液溜め部20とスリット22に残った塗工液は、バックアップロール14によって搬送されるウエブWに塗工されて、塗工が終了する。制御部34は、塗工が終了すると移動装置38によって、ダイ12をウエブWから退避させる。この場合に、給液バルブ32が塗工液入口24の近傍に設けられているため、ウエブWに塗工される塗工液は、液溜め部20とスリット22の容積を合計した分だけであって、その容積は小さく、塗工が終了する時間を短縮できる。例えば、従来の塗工装置では、塗工が終了するまでの時間が5秒〜8秒であったが、本実施例では、2秒〜4秒に短縮される。
【0023】
次に、ウエブ36の繋ぎ目39が通過し、制御部34が、再び塗工液の塗工を開始する場合に、ダイ12を移動装置38によってバックアップロール14の位置まで移動させてウエブWにニップを行う。
【0024】
次に、制御部34は、給液バルブ32を開状態とすると同時に、ポンプ28を運転する。この場合に、給液配管30内部には塗工液が満たされ、圧力が下がっていないため、液溜め部20とスリット22を通過して、ただちにウエブWに対し塗工を開始できる。従来の塗工装置では、塗工開始後からウエブWの塗工部分が波打ち、かすれなどがない安定した塗工状態になるまで3秒〜10秒要していたが、本実施例では、0秒〜2秒に短縮される。
【0025】
(4)効果
本実施例の塗工装置10によれば、ウエブWの繋ぎ目39の通過時において、塗工を停止及び塗工を再開するまでの時間を短縮できる。すなわち、本実施例では、給液バルブ32をダイ12の塗工液入口24の近傍に設けることによって、塗工停止及び再開時における塗工液の圧力変動領域を小さくすることができ、短時間で塗工停止及び再開を行うことができる。
【変更例】
【0026】
本発明のいくつかの実施例を説明したが、これらの実施例は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施例は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の主旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施例やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0027】
以下、上記実施例の変更例を例示する。
【0028】
(1)変更例1
上記実施例では、塗工ヘッドとしてダイ12を用いたが、これに代えて、図2に示すように、ドクターエッジ40を有する塗工ヘッド42に適用してもよい。この場合にも、塗工ヘッド42の塗工液入口24の近傍に給液バルブ32を設ける。
【0029】
(2)変更例2
上記実施例では、ダイ12をバックアップロール14の側方に設けてウエブWに塗工を行ったが、これに代えて、図3に示すように、バックレス型の塗工、すなわち、第1の案内ロール44と第2の案内ロール46との間にウエブWを架け渡し、その中央でダイ12によって塗工液を塗工してもよい。この場合にも、ダイ12の塗工液入口24の近傍に給液バルブ32を設ける
(3)変更例3
上記実施例では、ダイ12によってウエブWに塗工液を直接塗工したが、これに代えて、図4に示すように、ダイ12によって塗工ロール48に塗工液を塗工し、バックアップロール50に搬送されているウエブWに塗工液を塗工するリバース型の塗工装置10に適用してもよい。この場合にも、ダイ12の塗工液入口24の近傍に給液バルブ32を設ける。
【0030】
(4)変更例4
上記実施例では、ウエブWの繋ぎ目39を回避するために塗工を停止及び再開させたが、これに代えて、間欠塗工における塗工の停止及び再開をさせる場合も本実施例を適用してもよい。
【符号の説明】
【0031】
10 塗工装置
12 ダイ
14 バックアップロール
20 液溜め部
22 スリット
24 塗工液入口
26 タンク
28 ポンプ
30 給液配管
32 給液バルブ
34 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺状のウエブに塗工液を塗工する塗工ヘッドと、
前記塗工ヘッドに前記塗工液を供給するポンプと、
前記塗工ヘッドの塗工液入口と前記ポンプとの間に接続された給液配管と、
前記塗工液入口、又は、前記給液配管の途中であって前記塗工液入口の近傍に設けられた給液バルブと、
前記ポンプの運転開始と同期して前記給液バルブを開状態に制御し、前記ポンプの運転終了と同期して前記給液バルブを閉状態に制御する制御手段と、
を有したことを特徴とする塗工装置。
【請求項2】
前記給液バルブは、前記塗工液入口からの給液配管の長さが0cm〜30cm以内に設けられている、
ことを特徴とする請求項1に記載の塗工装置。
【請求項3】
前記塗工ヘッドが、ダイ、又は、ドクターエッジを有した塗工ヘッドである、
ことを特徴とする請求項1に記載の塗工装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記ポンプの運転開始と同時に前記給液バルブを開状態に制御し、前記ポンプの運転終了と同時に前記給液バルブを閉状態に制御する、
ことを特徴とする請求項1に記載の塗工装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−75978(P2012−75978A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−220884(P2010−220884)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000240341)株式会社ヒラノテクシード (58)
【Fターム(参考)】