説明

塗布システム、液滴接触角計測方法

【課題】ウェブ上の液滴接触角を製造工程のなかで測定する塗布システムを提供する。
【解決手段】塗工部20でハードコート剤を塗布し、乾燥部30で熱風乾燥したウェブ11の搬送中に、その一部を切離部40により切り離し試験サンプル71を得る。滴下試験部60は、滴下装置61によりこの試験サンプル71に液滴を滴下し、カメラ63で液滴を撮影し、液滴65を撮影した画像から、計測装置69により液滴65の接触角75を算出、計測する。計測装置69は、計測した接触角75に応じて、乾燥部30の乾燥条件を制御するための制御信号を乾燥部30に出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェブの液滴接触角をインラインにて計測できる塗布システム、および液滴接触角計測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイに用いられる反射防止フィルムなどでは、防汚性などを高めるためのハードコート処理が行われる。特許文献1、特許文献2には、このようなハードコート処理の例について記載されている。
【0003】
特許文献1は、ハードコート層として有機ケイ素化合物やその加水分解物をロール塗布等の方法により塗布することが記載されている。
また、特許文献2は、ハードコート層として、有機シリル化合物等をダイコーター等でフィルム上に塗布することが記載されている。
【0004】
ハードコート層を形成したフィルムは、撥水性が高まり、水汚れや油汚れをはじくようになり防汚性が向上する。このような防汚性の評価は、一般的に、フィルム上の液滴の接触角を計測することにより行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−152563号公報
【特許文献1】特開2006−30740号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来、上記のような接触角の計測は、フィルムの製造後にオフラインで行われていた。そのため、例えばハードコート層の乾燥条件や塗工条件などに異常が発生して、ハードコート層に品質不良を有するフィルムが製造された場合、製造後にオフラインで接触角測定を行ってからでないと不良を発見することができず、全ての製造済みフィルムを破棄しなければならない等の問題があった。
【0007】
本発明は、前述した問題点に鑑みてなされたもので、ウェブ上の液滴接触角をインラインにて計測できる塗布システム等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した目的を達するための第1の発明は、ウェブに塗布液の塗布を行う塗工部と、前記塗工部で塗布液の塗布を行ったウェブを乾燥させる乾燥部と、前記乾燥部で乾燥を行ったウェブの搬送中に、その一部を試験サンプルとして切り離す切離部と、滴下装置により前記試験サンプルに液滴を滴下し、撮像装置により前記試験サンプル上の前記液滴を撮影し、撮影された画像から、計測装置により前記液滴の前記試験サンプルに対する接触角を計測する滴下試験部と、を有することを特徴とする塗布システムである。
【0009】
本発明により、塗工部および乾燥部を経たウェブの一部を、搬送中に切離部により切り離し、試験サンプルを得る。この試験サンプルに対し、滴下試験部により、水等の液滴を滴下し、滴下した液滴を撮影し、撮影した画像から接触角を計測することで、インラインで接触角を計測することが可能になる。これにより、ウェブの乾燥条件などの適否を処理中に判定可能とし、品質不良による製品のロスを低減することができる。
【0010】
前記乾燥部は、計測した前記接触角に応じて、乾燥条件を制御することが好ましい。
これにより、インラインで計測した接触角に応じて、乾燥部における熱風温度等の乾燥条件を適宜制御して、防汚性の良好な製品を製造することが可能になる。
【0011】
また、前記滴下装置は、前記試験サンプルと同速度で同方向に移動することが望ましい。
これにより、搬送中の試験サンプルへ滴下する液滴の乱れを低減し、接触角を正確に計測することが可能である。
【0012】
また、前記試験サンプルの搬送経路において、前記切離部と前記滴下試験部との間にアキュムレータが設けられることが望ましい。
これにより、ウェブの搬送速度と独立して試験サンプルの搬送速度を制御することができるので、製品の生産性を低下させることなく、試験サンプルの搬送速度を下げ、試験サンプルへ滴下する液滴の乱れを低減し、接触角を正確に計測することが可能になる。
【0013】
更に、第1の発明の塗布システムは、計測した前記接触角に応じて、前記試験サンプルを切り離した前記ウェブを良品と不良品に分別して巻き取る製品巻取部を有することが望ましい。
これにより、接触角に応じて、良品と不良品を自動的に分別して巻き取ることが可能になり、製品の製造後に不良箇所を確認し、これを切り取るなどの手間が省ける。
【0014】
第2の発明は、塗工部により、ウェブに塗布液の塗布を行うステップと、乾燥部により、前記塗工部で塗布液の塗布を行ったウェブを乾燥させるステップと、切離部により、前記乾燥部で乾燥を行ったウェブの搬送中に、その一部を試験サンプルとして切り離すステップと、滴下試験部が、滴下装置により前記試験サンプルに液滴を滴下し、撮像装置により前記試験サンプル上の前記液滴を撮影し、撮影された画像から、計測装置により前記液滴の前記試験サンプルに対する接触角を計測するステップと、を有することを特徴とする液滴接触角計測方法である。
【0015】
第2の発明の液滴接触角計測方法では、前記乾燥部が、計測した前記接触角に応じて、乾燥条件を制御するステップを有することが望ましい。
また、前記滴下装置は、前記試験サンプルと同速度で同方向に移動することが望ましい。
更に、前記試験サンプルの搬送経路において、前記切離部と前記滴下試験部との間にアキュムレータが設けられることが望ましい。
加えて、第2の発明の液滴接触角計測方法では、製品巻取部により、計測した前記接触角に応じて、前記試験サンプルを切り離した前記ウェブを良品と不良品に分別して巻き取るステップを有することが望ましい。
【0016】
第2の発明の液滴接触角計測方法は、第1の発明の塗布システムにおける液滴接触角計測方法である。
【発明の効果】
【0017】
本発明により、ウェブ上の液滴接触角をインラインにて計測できる塗布システム等を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】塗布システム1の概略構成図
【図2】切離部40の構成を説明する図
【図3】滴下試験部60の構成を説明する図
【図4】滴下装置61の詳細を説明する図
【図5】接触角75について説明する図
【図6】塗布システム1の処理の流れを示すフローチャート
【図7】アキュムレータ50の構成を説明する図
【図8】製品巻取部80の構成を説明する図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しながら詳細に説明する。
【0020】
図1は、本発明の実施形態にかかる塗布システム1の概略構成図である。図に示すように、塗布システム1は、ウェブ巻出部10、塗工部20、乾燥部30、切離部40、滴下試験部60、試験サンプル巻取部70、製品巻取部80、および各部にウェブ11を搬送するための搬送ローラ15等により構成される。
【0021】
ウェブ巻出部10は、ロール状の処理前のウェブ11を巻き出す。巻き出されたウェブ11は塗工部20に搬送される。
ウェブ11は、例えば、液晶ディスプレイの反射防止フィルムなどに用いるPET(Polyethylene terephthalate)フィルムやTAC(Triacetylcellulose)フィルム等であるが、これに限ることはない。
【0022】
塗工部20は、ウェブ11に塗布する塗布液を満たすタンク、ガイドローラ、塗布ローラ等で構成されるローラコーターであり、ガイドローラで搬送されるウェブ11に対し、タンク中の塗布液を塗布ローラにより塗布する。この塗布液は、例えば、シリコン系樹脂やフッ素系樹脂などのハードコート剤である。
塗工部20によりハードコート剤の塗布が行われたウェブ11は、乾燥部30に搬送される。
【0023】
なお、塗工部20としては、ローラコーターに限ることはなく、塗布液を長尺のウェブ11に連続的に塗布できるものであればよい。例えば、ダイコーターなどでもよい。
【0024】
乾燥部30は、不図示のヒーターやファン等を有し、乾燥部30中を搬送ローラ31により移動するウェブ11に熱風33を吹き付けてウェブ11を乾燥させる。熱風33の温度や風量は、乾燥部30に設けた制御部により制御する。
乾燥部30で乾燥されたウェブ11は、切離部40に搬送される。
【0025】
切離部40は、乾燥後のウェブ11の搬送中に、該ウェブ11の一部を試験サンプル71として切り離す。これにより、ウェブ11は試験サンプル71と製品81に切り分けられる。切離部40の詳細については後述する。
【0026】
切離部40で切り離された試験サンプル71は、滴下試験部60に搬送される。滴下試験部60では、試験サンプル71上に液滴を滴下して、試験サンプル71上の液滴の接触角を計測する。滴下試験部60の詳細については後述する。
滴下試験部60を通過した試験サンプル71は、試験サンプル巻取部70によってロール状に巻き取られる。
【0027】
一方、切離部40で試験サンプル71が切り離されたウェブ11は、製品81として製品巻取部80に搬送される。製品巻取部80は、ロール状に製品81を巻き取る。
【0028】
次に、図2を用いて上記の切離部40について説明する。図2に示すように、切離部40は、搬送ローラ43、カッタ41等で構成される。
【0029】
カッタ41は、搬送ローラ43に対しウェブ11の搬送方向の上流側で、ウェブ11の幅方向の端部にあたる位置に設置されるスリットカッタである。カッタ41は、ウェブ11の搬送中に、該ウェブ11の幅方向の端部を試験サンプル71として搬送方向に連続的に切り離す。
切り離された試験サンプル71は、搬送ローラ43等を介して滴下試験部60に搬送され、ウェブ11の試験サンプル71以外の部分は製品81として製品巻取部80に搬送される。
【0030】
次に、図3を用いて上記の滴下試験部60について説明する。図3に示すように、滴下試験部60は、滴下装置61、カメラ63、計測装置69等で構成される。
滴下装置61、カメラ63等は、滴下時の風、振動等による外乱を防ぐため、チャンバ67内に設置され、チャンバ67内を図の矢印aに示す方向に搬送される試験サンプル71に対し、滴下試験を行う。試験サンプル71は、チャンバ67内で滴下試験が実施された後、チャンバ67から送り出されて、試験サンプル巻取部70に巻き取られる。
なお、風、振動等の外乱の恐れがない場合は、上記のチャンバ67を省略することも可能である。
【0031】
滴下装置61は、図4に詳細を示すように、純水、エタノール等の滴下液が入ったシリンジ64と、滴下液の滴下を行うエアシリンダ62で構成される。
滴下装置61は、試験サンプル71の搬送方向に沿ってチャンバ67内に設けられた移動レール66に取付けられ、不図示のモーター等により、移動レール66を試験サンプル71の搬送方向と同方向(図3、4の矢印A)に移動可能である。
【0032】
なお、滴下装置61のシリンジ64の先端は、試験サンプル71から液滴65の径の10倍〜20倍程度の高さ(例えば1cm程度)にあることが望ましい。これより高いと、液滴65の落下速度が大きくなり液滴65が乱れる可能性が高くなり、これより低いと、試験サンプル71がシリンジ64の先端に接触する等の恐れが考えられるためである。
【0033】
滴下装置61は、試験サンプル71と同速度で同方向に移動レール66を移動しながら、エアシリンダ62でシリンジ64内の液を押圧して試験サンプル71に向けて(図4の矢印B)液滴65を滴下する。
滴下を終えると、滴下装置61は移動レール66を上記と逆方向に移動して元の位置に戻り、所定の間隔で、再び液滴65の滴下を同様にして行う。
【0034】
カメラ63は、チャンバ67内の試験サンプル71の搬送経路の側方に設置される高速度の撮影装置である。また、不図示の光源が、試験サンプル71を挟んでカメラ63に向かい合うように設置され、カメラ63に向かって投光する。カメラ63により液滴65を撮影した画像では、液滴65の部分が影となり、周囲に対して低輝度となる。
【0035】
カメラ63は、試験サンプル71表面の液滴65を好適に撮影できるようにその位置と焦点を予め定め、滴下装置61の移動や液滴65の滴下に応じた所定のタイミングに合わせて露光し、シャッタを切るようにすればよい。
例えば、水を滴下する場合は、滴下後1秒程度の液滴65を撮影できるように、カメラ63の位置や焦点、撮影のタイミング等を定めればよい。これらは、塗布システム1による処理の初期に滴下試験部60に搬送される、未塗工の試験サンプル71への液滴65の滴下、撮影を行うことにより調整することもできる。
【0036】
計測装置69は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)などの制御部、記憶部等を有する汎用のコンピュータであり、カメラ63や乾燥部30などと接続されている。
【0037】
計測装置69は、カメラ63で撮影した液滴65の画像を取得して、該画像に対する画像処理を行って液滴65の試験サンプル71に対する接触角を算出、計測し、該接触角に応じて、熱風33の温度を制御するための制御信号を乾燥部30の制御部に出力する。乾燥部30は、これに応じてヒーターにより熱風33の温度を制御する。
なお、接触角を算出するための画像処理プログラム等は、計測装置69の記憶部などに予め記憶されている。
【0038】
図5は、液滴65の接触角75について示す図である。
計測装置69の制御部は、カメラ63から取得した液滴65の画像から、液滴65が試験サンプル71と接する底辺の端を始点とする液滴65表面方向の接線が試験サンプル71の表面となす角を、接触角75として算出する。
【0039】
接触角75は試験サンプル71の表面の撥水性あるいは濡れ性を表わし、接触角75が大きいほど撥水性が高く(濡れ性が小さく)、水性汚れ、油性汚れをはじき、防汚性が高い。
例えば、接触角75が110〜115°程度の値であれば、十分な防汚性があると判定できる。
【0040】
次に、塗布システム1における処理の流れについて、図6を参照して説明する。
【0041】
塗布システム1の処理を開始する(S101)と、塗布システム1では、塗工部20によるウェブ11へのハードコート剤の塗布と、乾燥部30による該ウェブ11の乾燥が行われる。
【0042】
また、切離部40により乾燥後のウェブ11から切り分けられた試験サンプル71について、滴下試験部60にて滴下試験が行われ、試験サンプル71上に滴下された液滴65がカメラ63で撮影される(S102)。
【0043】
計測装置69は、液滴65を撮影した画像をカメラ63から取得し、画像処理等により試験サンプル71に対する液滴65の接触角75を算出し、計測する(S103)。
【0044】
次に、計測装置69は、接触角75が適切か否かを判定する(S104)。本実施形態では、接触角75が所定の範囲にあるか否かを判定する。この範囲は予め定めて計測装置69の記憶部等に記憶させておき、ここでは、110°以上とする。
【0045】
接触角75が適切であると判定される場合(S104;Yes)、そのまま塗布システム1の処理を継続する。
【0046】
一方、接触角75が適切でないと判定される場合(S104;No)、乾燥部30における乾燥条件の調整を行う(S105)。
本実施形態では、接触角75が110°を下回る場合に、塗布したハードコート剤が十分に乾燥されておらず、ウェブ11(製品81)の撥水性が低いと判定し、計測装置69から乾燥部30に制御信号を送り、乾燥部30の熱風33の温度が上昇するように制御する。これにより塗布したハードコート剤の乾燥が促進され、前記の接触角75が上昇する。すなわち、ウェブ11の撥水性が高まり防汚性が向上する。
【0047】
なお、S104では、この他、前記の範囲を例えば110°以上115°未満などと定めておき、上記の制御に加え、更に、接触角75の値が115°以上となった場合に乾燥部30の熱風33の温度が下降するように制御することもできる。この場合には熱風生成のためのエネルギーが削減される利点がある。
【0048】
このようにして、接触角75に応じて乾燥部30の乾燥条件を制御しながら、製品81の生産を終了するまで(S106;No)、ウェブ11へのハードコート剤の塗布と乾燥を行って製品81の生産を行い、生産の終了に伴い塗布システム1の処理を終了する(S106;Yes)。
【0049】
以上説明したように、本実施形態の塗布システム1では、塗工部20および乾燥部30を経たウェブ11の一部を、搬送中に切離部40により切り離し、試験サンプル71を得る。この試験サンプル71に対し、滴下試験部60により、水等の液滴65を滴下し、滴下した液滴65を撮影し、撮影した画像から接触角75を計測する。これにより、試験サンプル71上の液滴65の接触角75をインラインで計測することが可能になり、ウェブ11の乾燥条件などの適否を処理中に判定可能になる。
従って、接触角75が小さい場合に乾燥部30の熱風33の温度を上昇させるなど、接触角75に応じて、防汚性の良好な製品81が製造可能なように塗布システム1を適宜制御することが可能になり、品質不良による製品81のロスを低減することができる。
【0050】
なお、本実施形態では、接触角75に応じて、乾燥部30の熱風33の温度を制御したが、制御する乾燥条件はこれに限ることはない。例えば、前記のS105で熱風33の温度を上昇させる代わりに、乾燥部30内でのウェブ11の搬送速度を低下させたり、熱風33の風量を多くすることも可能である。
更には、接触角75に応じて塗工部20における塗工条件を制御することも可能である。例えば、前記のS104で、接触角75が予め定める所定の範囲を下回った場合、ハードコート剤の塗布抜けがあると判定し、コーターローラの速度を落とすなどしてウェブ11への単位面積当たり塗布量を増やすように、計測装置69から塗工部20に制御信号を送るようにしてもよい。
【0051】
また、本実施形態では、滴下試験部60において、滴下装置61を試験サンプル71と同速度で同方向に移動させつつ、液滴65の滴下を行うので、試験サンプル71上の滴下地点から見た場合、液滴65が垂直に落下する。従って、搬送中の試験サンプル71へ滴下する液滴65の乱れを低減し、接触角75を正確に計測することが可能になる。
【0052】
なお、本実施形態では、滴下試験部60において、カメラ63を固定して適切なタイミングで液滴65の撮影を行うようにしたが、カメラ63(および光源)を、滴下装置61の移動に合わせ移動させつつ所定の間隔で連続してシャッタを切って液滴65を撮影し、その連続画像の中から接触角75の計測に最適な時点(例えば滴下後1秒程度)のコマを抽出して接触角75の測定を行うこともできる。
【0053】
例えば、液滴65を撮影した連続画像の各コマから、液滴65が最初に試験サンプル71に接触したコマを画像処理によって抽出し、該コマから1秒後のコマより、接触角75の算出を行えばよい。
これにより、液滴65をカメラ63の撮影範囲に確実に捉えつつ、液滴65の滴下状態を連続写真として撮影することが可能になり、カメラ63の位置や撮影のタイミング等の調整が必要ないか、あるいはその負担が軽減される利点がある。一方、前記のようにカメラ63を固定する場合、液滴65を撮影した画像にブレがない等の利点がある。
【0054】
また、本実施形態では、接触角75の値が適切な値でない場合に、乾燥条件の調整を行ったが、この他、接触角75が低下すれば熱風33の温度を上昇させる制御を行うことなどもできる。これにより、接触角75を良好な値に維持することが可能である。
【0055】
加えて、本実施形態では、切離部40と滴下試験部60の間の試験サンプル71の搬送経路にアキュムレータ50を設けることが好適である。
アキュムレータ50は、滴下試験部60における試験サンプル71の搬送速度をウェブ11の搬送速度と独立して制御するためのものであり、これにより、ウェブ11の搬送速度を維持しつつ、滴下試験部60における試験サンプル71の搬送速度を下げることができ、生産性を損なうことなく、接触角75の計測をより正確に行うことができるようになる。
【0056】
このアキュムレータ50は、例えば、図7(a)に示すように、固定ローラ51と可動ローラ53で構成される。
切離部40からは、試験サンプル71が、ウェブ11の搬送速度と同じ搬送速度でアキュムレータ50に向かって(図中C方向)送り込まれ、一方、アキュムレータ50からは、試験サンプル71が滴下試験部60に向かって(図中E方向)送り出される。この速度は、滴下試験部60における試験サンプル71の搬送速度と同じとなる。
【0057】
アキュムレータ50では、該アキュムレータ50に送り込まれる試験サンプル71の搬送速度(ウェブ11の搬送速度)に対して、該アキュムレータ50から送り出される試験サンプル71の搬送速度(滴下試験部60における試験サンプル71の搬送速度)が小さい場合に、図7(b)に示すように可動ローラ53を図中D方向に下降させ、アキュムレータ50内のパス長を長くして試験サンプル71を滞留させ、搬送速度の差を緩衝することが可能である。これにより、滴下試験部60における試験サンプル71の搬送速度を、ウェブ11の搬送速度とは独立に、より低く保つことが可能になる。
なお、滴下試験を行わないタイミングで、アキュムレータ50から送り出される試験サンプル71の搬送速度を上昇させると、前記の試験サンプル71の滞留は解消される。
【0058】
また、本実施形態では、生産した製品81は、巻取ロール等の製品巻取部80で巻き取っておき、接触角75が適切でなかった箇所(接触角75の計測結果から得ることができる)については後程切断等し、正規品を得ることができる。
ただし、これに代えて、製品巻取部80において、接触角75が適切な場合(製品81が良品の場合)と、接触角75が適切でない場合(製品81が不良品の場合)とで、製品81を別々のロールに分別して巻き取ることも可能である。
【0059】
図8はこの場合の製品巻取部80について説明する図である。
図に示すように、この製品巻取部80は、支持台82、支持台82に中央部が軸支されるアーム84、アーム84の両端に設けられた巻取ロール85a、85b、およびカッタ83により構成される。
【0060】
製品巻取部80は、接触角75が適切である場合には、図8(a)に示すように巻取ロール85aにて製品81を巻き取るが、計測装置69により接触角75が適切でないと判定されると、図8(b)に示すようにカッタ83で製品81を切断した後、アーム84を図中矢印Fで示すように回転させ、図8(c)に示すように、巻取ロール85aと巻取ロール85bの位置を入れ替える。そして、図8(d)に示すように、接触角75が適切でないと判定される間、製品81はこの巻取ロール85bで巻き取る。
【0061】
この間巻取ロール85aに巻き取られた製品81は自動あるいは手動で取り外しておき、再び接触角75が適切であると判定された場合には、前記と同様に、製品81を切断し、アーム84を回転させて巻取ロール85bと巻取ロール85aの位置を入れ替え、再び巻取ロール85aで製品81の巻き取りを行う。
【0062】
このようにして、接触角75が適切な場合と、接触角75が適切でない場合とで、製品81を分別して巻き取ることができる。図8の例では、巻取ロール85aに巻き取られた製品81を正規品として取り扱うことができるので、製品81の生産後に、接触角75が適切でない箇所を確認したうえで当該箇所を切断して正規品とするなどの手間が省ける。
【0063】
以上、添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、本願で開示した技術的思想の範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0064】
1………塗布システム
10………ウェブ巻出部
11………ウェブ
20………塗工部
30………乾燥部
33………熱風
40………切離部
50………アキュムレータ
60………滴下試験部
61………滴下装置
63………カメラ
65………液滴
69………計測装置
70………試験サンプル巻取部
71………試験サンプル
75………接触角
80………製品巻取部
81………製品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェブに塗布液の塗布を行う塗工部と、
前記塗工部で塗布液の塗布を行ったウェブを乾燥させる乾燥部と、
前記乾燥部で乾燥を行ったウェブの搬送中に、その一部を試験サンプルとして切り離す切離部と、
滴下装置により前記試験サンプルに液滴を滴下し、撮像装置により前記試験サンプル上の前記液滴を撮影し、撮影された画像から、計測装置により前記液滴の前記試験サンプルに対する接触角を計測する滴下試験部と、
を有することを特徴とする塗布システム。
【請求項2】
前記乾燥部が、計測した前記接触角に応じて、乾燥条件を制御することを特徴とする請求項1に記載の塗布システム。
【請求項3】
前記滴下装置は、前記試験サンプルと同速度で同方向に移動することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の塗布システム。
【請求項4】
前記試験サンプルの搬送経路において、前記切離部と前記滴下試験部との間にアキュムレータが設けられることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の塗布システム。
【請求項5】
計測した前記接触角に応じて、前記試験サンプルを切り離した前記ウェブを良品と不良品に分別して巻き取る製品巻取部を有することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の塗布システム。
【請求項6】
塗工部により、ウェブに塗布液の塗布を行うステップと、
乾燥部により、前記塗工部で塗布液の塗布を行ったウェブを乾燥させるステップと、
切離部により、前記乾燥部で乾燥を行ったウェブの搬送中に、その一部を試験サンプルとして切り離すステップと、
滴下試験部が、滴下装置により前記試験サンプルに液滴を滴下し、撮像装置により前記試験サンプル上の前記液滴を撮影し、撮影された画像から、計測装置により前記液滴の前記試験サンプルに対する接触角を計測するステップと、
を有することを特徴とする液滴接触角計測方法。
【請求項7】
前記乾燥部が、計測した前記接触角に応じて、乾燥条件を制御するステップを有することを特徴とする請求項6に記載の液滴接触角計測方法。
【請求項8】
前記滴下装置は、前記試験サンプルと同速度で同方向に移動することを特徴とする請求項6または請求項7に記載の液滴接触角計測方法。
【請求項9】
前記試験サンプルの搬送経路において、前記切離部と前記滴下試験部との間にアキュムレータが設けられることを特徴とする請求項6乃至請求項8のいずれかに記載の液滴接触角計測方法。
【請求項10】
製品巻取部により、計測した前記接触角に応じて、前記試験サンプルを切り離した前記ウェブを良品と不良品に分別して巻き取るステップを有することを特徴とする請求項6乃至請求項9のいずれかに記載の液滴接触角計測方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−103217(P2013−103217A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−251170(P2011−251170)
【出願日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】