説明

塗布ノズル

【課題】 吐出口かの幅方向において均一な圧力で塗料を吐出する塗布ノズルを提供する。
【解決手段】 本体部2の上に蓋部3を合せることでこれらの間に塗料導入孔17につながるマニホールド7とこのマニホールド7につながるノズル通路10が形成され、前記塗料導入孔17、マニホールド7及びノズル通路10の中心線は平面視で塗布ノズルの軸線Xと一致し、前記本体部2及び蓋部材3は前記軸線Xに対して左右対称に形成され、前記ノズル通路10の先端部は吐出口21とされ、この吐出口21を形成する本体部2及び蓋部3の周面のうち中央部分は前記軸線に直交する平面6aとされ、この平面に連続する外側部分は凸曲面6bとされ、前記マニホールド7とノズル通路10との境界部は前記本体部の吐出口21を有する周面の輪郭と相似に形成され、前記ノズル通路10に隣接するマニホールドの吐出口側周縁の前記境界部には曲壁11が形成され、前記曲壁11に連なるようにマニホールドの底面に向けて垂直壁12が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば水系エマルション塗料、エポキシ系塗料、水系塗料、有機溶剤系塗料などを塗布する塗布ノズルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より粘性材等を一定の塗布幅を保持しつつ、一定の厚みで塗布する為の塗布ノズルが様々に提案されてきた。
例えば、特許文献1に開示される塗布ノズル100は、図7に示すように、本体部と蓋部と合せて全体が略扇形状の厚板状をなしている。本体部は略扇形状の要に近い要部分は厚く、他の先端部分が薄い略L字状をしている。一方蓋部は本体部の先端部分の薄い部分を補う形状とになっており、ノズル通路101および内部空間102が本体部と蓋部とで区画されている。
【0003】
すなわち、ノズル通路101は蓋部の合わせ面側に扇台形状の浅い溝状の凹部を形成して作られ、内部空間102は本体部および蓋部の両合わせ面側をともに比較的深い略扇状の凹部を形成することにより作られている。ノズル通路101と内部空間102とは連通し、内部空間102には導入口103が開口し、その反対側の端面に導出口104が開口している。
【0004】
特許文献1に開示される塗布ノズルでは、導入通路103から送り込まれた塗料等の液体が、一度、内部空間102に貯留され、内部空間に連通するノズル通路の導入口内へと、塗料等が押し出される。導入通路から送られた塗料が内部空間に入る時、塗料は比較的大きな流速をもつが、内部が広がった内部空間に入ることにより、塗料の流速が減じ、遅い流れとなり、内部空間内の各部での流速変化が小さくなる。
【0005】
そしてノズル通路の導入口のどの部分もほぼ等しい流速で塗料が供給される構成とし、更にノズル通路の収斂方向の深さを通路全体でほぼ等しくし、またノズル通路の間隙は内部空間の広さに比較して極めて狭く構成し、ノズル通路での塗料等の通過抵抗を高くしている。これにより内部空間からノズル通路の導入口に押し込まれる塗料圧が、導入口のどの部分でもさらに均一化し、導入口内へ送り込まれた塗料が、所定の深さを持ったノズル通路を経て、導出口の放射方向に等しく噴出することにより導出口のどの部分においても均等量の塗料が均等圧力で連続的に噴出され、また、ノズル通路が扇台形状に形成され、導入口及び導出口が弧状に形成されているので、噴出塗料が、幅を広げながら導出口から噴出され、物体上に塗布された塗料は、その塗布幅が導出口の幅より広く、しかも塗布膜全体の膜厚が、常に均一にノズル通路の弧方向の長さより幅広く塗料を塗布できるというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−179243号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に開示される塗布ノズルでは、内部空間の内壁に沿って偏向される塗料圧が幅方向の両端で集約され、内部空間の両端で塗料圧が高まる為、ノズル通路の幅方向の両端における塗料吐出量が増加し、所謂テールが発生し、外観品質が低下する不具合がある。特に、被塗物の塗布部位の幅が広い場合は、幅方向の端縁同士を重ねて塗布することと成るため、上記不具合はより顕著となる。
【0008】
また、ノズル通路の幅方向の中央部で且つノズル通路の後方のノズル通路と対向する位置に導入通路が形成されているため、ノズル通路の幅方向の中央部に大きな塗料等の圧力が掛かり、ノズル通路の幅方向の中央部の塗料の流速が他に比べ若干早くなり、単位時間当たりの塗料等の吐出が多くなる。即ち単位時間当たりの塗料等の吐出量にノズル通路の幅方向で斑が発生する。
【0009】
塗布ノズルによる被塗布物への塗布は、塗布部位上を一定速度で塗布ノズルを移動させることにより行なわれる。このため被塗布物上に被着された塗料等の表面は、ノズル通路の幅方向の中央部の吐出量が若干多くなるため魚鱗状となり外観品質を低下させる不具合がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため本発明は、本体部の上に蓋部を合せることでこれらの間に塗料導入孔につながるマニホールドとこのマニホールドにつながるノズル通路が形成される塗布ノズルであって、前記塗料導入孔、マニホールド及びノズル通路の中心線は平面視で塗布ノズルの軸線と一致し、前記本体部及び蓋部材は塗料吐出方向の前記軸線に対して左右対称に形成され、前記ノズル通路の先端部は吐出口とされ、この吐出口を形成する本体部及び蓋部の周面のうち中央部分は前記軸線に直交する平面とされ、この平面に連続する外側部分は凸曲面とされ、前記マニホールドとノズル通路との境界部は前記本体部の吐出口を有する周面の輪郭と相似に形成され、前記ノズル通路に隣接するマニホールドの吐出口側周縁の前記境界部には曲壁が形成され、前記曲壁に連なるようにマニホールドの底面に向けて垂直壁が形成された構成とした。
【0011】
本発明に係る塗布ノズルにおいては、前記塗料導入孔の基端側には前記塗料導入孔より大径の塗料供給管路が接続されることが、脈動や乱流を解消して安定して塗料を供給する上で好ましい。
【0012】
また、本発明に係る塗布ノズルにおいては、前記塗料導入孔と前記マニホールドの底面とを面一に形成することが、塗料導入孔からマニホールドへスムーズに塗料が流れ込む上で好ましい。
【0013】
また、本発明に係る塗布ノズルにおいては、ノズル通路を画成する本体部に形成される凹部は、前記軸線部分が最も深く穿設され、前記軸線から離れる程浅く穿設されたものとすることが、テール発生防止のために好ましい。
【0014】
また、本発明に係る塗布ノズルにおいては、前記マニホールドの底面と側面の間は、曲面を介して連続させることが、マニホールド内での塗料の乱れを防止する上でこのましい。
【発明の効果】
【0015】
従来の塗布ノズルにあっては、塗料が当たるマニホールド(内部空間)の周壁が全て曲面のため、塗料は中央部分に集まる傾向があるが、本発明に係る塗布ノズルによれば、マニホールド内に供給された塗料はマニホールドの垂直壁の直線状部に当たり、次いで左右及び上方に流れを変え塗料圧がマニホールド内で均一化され、吐出口の幅方向において均等に塗布される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る塗布ノズルを構成する本体部の平面図
【図2】図1の蓋体をつけた状態のA方向矢視図
【図3】図1のB方向矢視図
【図4】本発明に係る塗布ノズルの軸線に沿った断面図
【図5】図4の一部拡大図
【図6】図2の要部拡大図
【図7】従来の塗布ノズルを説明した図1と同様の図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に本発明の実施の態様を詳細に説明する。
本発明の塗布ノズル1は本体部2と蓋部3より構成される。本体部2及び蓋部3は平面視(図1)で略扇形をなし、略扇形の要部4の後面は側面視(図4)で塗布ノズル1の軸線Xに対して垂直な平面4aに形成され、この平面4aの中央部に塗料供給管路5が形成されている。
【0018】
平面視で略扇形をなす本体部2の周面6は中央部を前記軸線Xに対して垂直な平面6aに形成され、この平面6aの両端には外側に膨らむ円弧状曲面6bが連続して形成されている。
【0019】
本体部2には平面視で略扇形のマニホールド7(内部空間)が形成されている。マニホールド7の要部8は軸線Xに対して垂直な平面に形成され、垂直な平面の下端は図5に示すように底面との間で曲面8aに形成され、また平面視で略扇形をなすマニホールド7の周面9は、前記本体部2の周面6と相似に形成されている。
【0020】
また、前記本体部2の周面6とマニホールド7の周面9の間は、略扇形の中央10aを深くそして両側10bに向けて浅く穿設され、蓋部3を重ねた状態でノズル通路10が形成され、このノズル通路10の先端部に吐出口21が形成される。
【0021】
また、前記ノズル通路10の境界部となるマニホールド7の周面9にはその全幅に亘って曲壁11とこれに連なる垂直壁12が形成されている。曲壁11、垂直壁12とも中央部は軸線Xに対して垂直な平面11a、12aであり、その両側には外側に膨らむ円弧状曲面11b、12bに形成されている。
【0022】
曲壁11は垂直壁12に比して短く形成され、曲壁11には垂直方向に立ち上り部11cが形成されている。また垂直壁12の下端はマニホールド7の底面16に曲面13を介して連続している。
【0023】
そして平面視で略扇形をなすマニホールド7の側面は垂直面14に形成され、垂直面14の下端は底面16に曲面15を介して連続している。
【0024】
また本体部2の要部4には前記マニホールド7の底面16と面一に前記供給管路5に向けて塗料導入孔17が開設されている。この塗料導入孔17は前記供給管路5に比して小径に形成され、前記供給管路5に対して軸心を偏倚した位置に開設されている。
【0025】
また、前記本体部2の上面には蓋部3と係合するための左右一対のピン体18が立設され、更に左右二対の螺子穴19が螺設されている。
【0026】
また平面視で略扇形の本体部2の側面22は側面視で垂直面に形成され、
蓋部3は平面視で前記本体部2と同一の略扇形で側面視で平板状に形成され、前記本体部2に形成されたピン体18を挿通するピン孔18aと、螺子穴19に対応する螺子挿通孔20が開設されている。
【0027】
そして前記塗料導入孔17と前記マニホールド7と前記ノズル通路10の中心線は平面視で前記軸線Xに一致し、前記本体部2の周面6と前記蓋部3の周面は前記軸線Xに対して左右対称に形成される。
【0028】
このような構成の基に本発明の塗布ノズル1を使用する場合は、不図示の自動機またはロボットアームの先端に塗布ノズル1を取り付け、前記供給管路5に塗料供給パイプ23を接続し、不図示の塗料等供給源より塗料を塗布ノズル1に所定圧で圧送し、一定速度で塗布ノズル1を移動しながら、ワークの被塗布面に塗料等を塗布する。
【0029】
この時、前記したように塗料導入孔17を供給管路5に比して小径に形成したことにより、塗料供給源から塗布ノズル1の供給管路5の間で仮に脈動や乱流が発生してもこれを確実に解消し、塗料導入孔17内には整流となった塗料が供給される。
【0030】
また、塗料導入孔17とマニホールド7の底面16が面一に形成されているため、塗料導入孔17から供給される塗料等は、略整流を保った状態で垂直壁12の垂直な平面12aに衝突し、一部は垂直壁12の平面12aからマニホールド7周縁の垂直壁12の円弧状平面12bに沿ってマニホールド7の幅方向に偏向し、一部は垂直壁12の平面12aに沿って上方に向けて偏向し、更に一部は上方の曲壁11の平面11aから円弧状曲面11bに沿ってマニホールド7の幅方向に偏向し、一部は更に上方に向けて偏向し、曲壁11の立ち上り部11cから蓋部3の内面3aに沿って平面視で扇形の要部8に向けて偏向し、これにより塗料圧がマニホールド7内で略均一化し、静圧化する。また小径の塗料塗料導入孔17から大容積のマニホールド7に塗料が供給される為、流速が低下し、マニホールド7内の塗料の静圧化がより促進される。
【0031】
ここで前記マニホールド7の周面の垂直壁12及び曲壁11の中央部が直線状平面12a、11aに形成されているため、塗料導入孔17から供給される塗料等はマニホールド7の直線状平面12aに衝突した後、幅方向に確実に偏向される。
【0032】
従来例のように、塗料導入孔から供給される塗料等が衝突するマニホールドの周面が曲線状であると、衝突後マニホールドの幅方向に偏向せず、そのまま上昇流となって曲壁から直上の蓋部の内面に到達し、ノズル通路の幅方向の中央部の塗料の流速が他に比べ若干早くなり、単位時間当たりの塗料等の吐出が多くなる為ノズル通路の幅方向で斑が発生し、被塗布物上に被着された塗料等の表面が魚鱗状となり外観品質を低下させる不具合が発生する。
【0033】
しかしながら、本発明のように塗料導入孔から供給される塗料等が衝突するマニホールド7の周面の直線状の平面とすることで、衝突後マニホールドの幅方向に偏向するので、均一な塗布が可能になる。
【0034】
更に、図6に示すように、本体部2の周面6とマニホールド7の周面9間に形成されるノズル通路10と蓋部3によって形成される吐出口21を略扇形の中央の幅Wを広く、そして両側に向けて狭く形成した為、前記構成による効果と相まってテールの発生をより確実に防止することができる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明に係る塗布ノズルは、自動車用シーラー材などの高粘性材、自動車の外表面に適用する液状防錆材などの低粘性材、水幕化またはシャワー状化するための水への適用、エアーブローなど気体への適用などが可能である。
【符号の説明】
【0036】
1…塗布ノズル、2…本体部、3…蓋部、4…要部、4a…垂直な平面、5…塗料供給管路、6…本体部の周面、6a…垂直な平面、6b…円弧状曲面、7…マニホールド、8…マニホールドの要部、8a…曲面、9…マニホールドの周面、10…ノズル通路、10a…ノズル通路の中央、10b…ノズル通路両脇、11…マニホールドの周面を構成する曲壁、11a…垂直な平面、12…垂直壁、12a…垂直な平面、13…曲面、14…垂直面、15…曲面、16…マニホールドの底面、17…塗料導入孔、18…ピン体、18a…ピン孔、19…螺子孔、20…螺子挿通孔、21…吐出口、22…側壁、23…塗料供給パイプ、W…吐出口の幅、X…塗布ノズルの軸線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体部の上に蓋部を合せることでこれらの間に塗料導入孔につながるマニホールドとこのマニホールドにつながるノズル通路が形成される塗布ノズルであって、
前記塗料導入孔、マニホールド及びノズル通路の中心線は平面視で塗布ノズルの軸線と一致し、前記本体部及び蓋部材は塗料吐出方向の前記軸線に対して左右対称に形成され、
前記ノズル通路の先端部は吐出口とされ、この吐出口を形成する本体部及び蓋部の周面のうち中央部分は前記軸線に直交する平面とされ、この平面に連続する外側部分は凸曲面とされ、
前記マニホールドとノズル通路との境界部は前記本体部の吐出口を有する周面の輪郭と相似に形成され、
前記ノズル通路に隣接するマニホールドの吐出口側周縁には曲壁が形成され、前記曲壁に連なるようにマニホールドの底面に向けて垂直壁が形成されていることを特徴とする塗布ノズル。
【請求項2】
請求項1に記載の塗布ノズルにおいて、前記塗料導入孔の基端側には前記塗料導入孔より大径の塗料供給管路が接続されていることを特徴とする塗布ノズル。
【請求項3】
請求項1及び請求項2に記載の塗布ノズルにおいて、前記塗料導入孔と前記マニホールドの底面とは面一に形成されていることを特徴とする塗布ノズル。
【請求項4】
請求項1から請求項3の何れかに記載の塗布ノズルにおいて、前記ノズル通路を画成する本体部に形成される凹部は、前記軸線部分が最も深く穿設され、前記軸線から離れる程浅く穿設されていることを特徴とする塗布ノズル。
【請求項5】
請求項1から請求項4の何れかに記載の塗布ノズルにおいて、前記マニホールドの底面と側面の間は、曲面を介して連続していることを特徴とする塗布ノズル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−147841(P2011−147841A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−8974(P2010−8974)
【出願日】平成22年1月19日(2010.1.19)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【出願人】(501141769)株式会社industria (29)
【Fターム(参考)】