説明

塗布体付き滴下容器

【課題】使用する少量の内容液を定量的に確実に注出し、塗布体で塗りながら広げることができ、ワンタッチで蓋部の開閉が可能で、操作が容易な塗布体付き塗布容器を提供する。
【解決手段】内容液を収容し復元可能にスクイズ性を有する容器本体12と、容器本体12の注出口14に取り付けられた注出部材18を有する。注出部材18に形成され内容物を定量で滴下する滴下ノズル38と、注出部材18の滴下ノズル38の近傍に取り付けられ滴下ノズル38から滴下された内容液を塗布するための塗布体である刷毛28を備える。注出部材18は、注出口14を閉鎖し滴下ノズル38が設けられている板部22と、板部22に連続し注出口14の側面に嵌合する筒部24を有するキャップ本体19と、ヒンジ46を介して開閉可能な蓋部42とから成る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、液体の薬剤を収容し、収容している薬剤を注出して目的の場所に塗布する塗布体付き滴下容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、かゆみ止め等の液体の薬剤は、皮膚に塗布する刷毛等の塗布体が取り付けられた塗布体付き滴下容器に収容されているものがある。このような塗布体付き滴下容器は、内容液が塗布体から滲み出てくるものや塗布体の近傍から塗布体に注出されるものがある。しかし、どの程度の量の内容液を注出したのかわかりにくいものであった。また、容器本体の胴部をスクイズすることによって細口のノズルから内容液が滴下される容器もあり、このような容器は一滴の液量がほぼ一定であるため定量注出が可能である。しかし、滴下した内容液を塗りひろげることができなかった。そこで、注出した内容液の注出量を定量し、なおかつ塗布体で塗りひろげる塗布体付き滴下容器は、以下のように種々のものが提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1に開示されている計量カップと該計量カップ装着容器には、底壁中央部に弁孔を穿設したカップ本体と、このカップ本体の底壁上へ載置固定させた弁付き台が設けられている。弁付き台には弾性連結片付きの弁体が設けられ、この弁体がカップ本体の弁孔を弾性閉鎖させて吐出弁が形成される。弁体には、弁孔内へ遊挿させる棒状物が設けられ、棒状物を押し上げると吐出弁が開くものである。カップ本体の底壁の外側面には、弁孔の周縁に保護筒が設けられ、保護筒の周囲には擦付材が設けられている。この計量カップの内容液を取り出すときは、棒状物を押し上げて吐出弁を弾性に抗して開弁し、内容液を流出させ、擦付材で塗りひろげるものである。
【0004】
特許文献2に開示されているサイドノック式容器は、中空状の容器本体と、一端側がこの容器本体外に突出し他端側がこの容器本体に支持された塗布部材と、容器本体の側面に変位自在に組み付けられたサイドボタンと、サイドボタンの変位操作に応じて内容物を塗布部材に送給するバルブ機構とを備えたものである。このサイドノック式容器から内容液を取り出すときは、サイドボタンを押して離す操作により、自動的に一定量の内容液が塗布部材に送給され、塗布部材により対象物に塗りひろげるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−99322号公報
【特許文献2】特開平11−206453号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記背景技術の特許文献1に開示された計量カップと該計量カップ装着容器は、カップ本体が一定の大きさの計量カップとなり、液状洗剤などの一回の使用量が数十ミリリットル程度の一定量が必要な用途に適したものであり、かゆみどめ等の使用量が少量である薬液には適用できないものであった。
【0007】
特許文献2に開示されたサイドノック式容器は、使用料が少量の薬液に適したものであるが、正確な注出量にコントロールすることができないものであった。
【0008】
この発明は、上記背景技術の問題点に鑑みてなされたものであり、使用する少量の内容液を定量的に確実に注出し、塗布体で塗りながら広げることができ、ワンタッチで蓋部の開閉が可能で操作が容易な塗布体付き塗布容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、内容液を収容し復元可能にスクイズ性を有する容器本体と、前記容器本体の注出口に取り付けられた注出部材と、前記注出部材に形成され内容物を定量で滴下する滴下ノズルと、前記注出部材の前記滴下ノズルの近傍に取り付けられ前記滴下ノズルから滴下された内容液を塗布するための塗布体が設けられている塗布体付き塗布容器である。
【0010】
前記注出部材は、前記注出口を閉鎖し前記滴下ノズルが設けられている板部と前記板部に連続し前記注出口の側面に嵌合する筒部が設けられたキャップ本体と、前記キャップ本体の一部にヒンジを介して連結され前記ヒンジを回転軸として開閉可能な蓋部とからなるヒンジキャップである。
【0011】
前記ヒンジは、前記キャップ本体外周部よりも外方に突出し、前記キャップ本体と前記蓋部の前記ヒンジ近傍の互いに対向する側縁部には、前記蓋部が180°以上開いた状態で互いに係合する一対の係止突起が設けられ、前記蓋部は、天面部から側面部にかけて、前記ヒンジ近傍の表面が切り欠かれた切欠部が形成され、前記切欠部により、前記蓋部が前記キャップ本体の筒部に当接することがなく、前記蓋部が180°以上開いて固定可能である。
【0012】
また、前記塗布体は前記容器本体の外側へ突出し、前記塗布体は、刷毛、発泡体、フェルト、ヘラ等である。
【発明の効果】
【0013】
この発明の塗布体付き容器は、簡単な構造であり、部品点数が少なく製造が容易であり、確実に使用する内容液を定量的に注出し、塗布体で塗りながら広げることができる。しかも、ワンタッチで蓋部の開閉が可能であり、蓋部が180°以上開いた状態で固定可能であり、塗布する操作が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】この発明の一実施形態の塗布体付き容器の部分拡大縦断面図である。
【図2】この実施形態の塗布体付き容器の使用状態を示す部分拡大縦断面図である。
【図3】この実施形態の塗布体付き容器の斜視図である。
【図4】この実施形態の塗布体付き容器の使用状態を示す斜視図である。
【図5】この実施形態の塗布体付き容器の薬剤を滴下する状態を示す斜視図である。
【図6】この実施形態の塗布体付き容器の薬剤をのばす状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、この発明の実施形態について図面に基づいて説明する。図1〜図6はこの発明の一実施形態を示すもので、この実施形態の塗布体付き容器10は、内容液を収容し復元可能にスクイズ性を有する合成樹脂製の有底筒状の容器本体12が設けられている。容器本体12の上端部は、円筒形の注出口14が、一体に形成されている。注出口14の外周面には、後述する注出部材18が螺合される雄ねじ16が形成されている。
【0016】
注出口14には、注出部材18が取り付けられている。注出部材18は、注出口14に取り付けられるキャップ本体19と、キャップ本体19にヒンジ46を介して連結されヒンジ46を回転軸として開閉可能な蓋部42とからなるヒンジキャップである。
【0017】
キャップ本体19は、注出口14を閉鎖する板部22が設けられ、板部22の周縁は、注出口14の外周面側に延出し、板部22の周縁部には注出口14の外周面に嵌合する筒部24が一体に形成されている。板部22の上面22aには、周縁部に後述する蓋部42の側面部48が嵌合する段部23が一周して設けられている。板部22の下面22bには、注出口14内に嵌合する円筒状のシール筒20が一体に形成されている。筒部24の内周面には、注出口14の雄ねじ16に螺合する雌ネジ26が形成されている。
【0018】
板部22のシール筒20の内側には、板部22の直径方向に沿って、塗布体である刷毛28と、注出孔36が並んで設けられている。刷毛28は、板部22の上面22aからほぼ直角に外側に突出して設けられている。刷毛28は、固定部材30によって複数本の毛32が円柱状に束ねられ、板部22に設けられた植毛穴34に固定されている。植毛穴34は、板部22の下面22b側に有底の円筒状にくぼんで形成されている。各毛32の先端は、先が細くなっている。注出孔36は、板部22を上面22aと下面22bに貫通して形成され、注出孔36の周囲には、上面22aからほぼ直角に外側に突出する滴下ノズル38が設けられている。滴下ノズル38先端部の外径は、内容液である後述する薬剤64が滴下する際の一滴の容量を定めるものであり、外径が大きいと表面張力による濡れ面積が広くなり、一滴の容量が大きくなる。薬剤64の使用量に合わせて滴下ノズル38の外径が調整されている。
【0019】
筒部24には、刷毛28に近い部分に、周囲よりもわずかにくぼむ凹部40が設けられている。凹部40は、外筒部24の途中の高さから板部22に連続し、外筒部24と板部22の間に形成されている段部23の、凹部40に対向する部分には、後述する蓋部42が係止される雌フック44が設けられている。
【0020】
筒部24には、凹部40と反対側に、蓋部42がヒンジ46を介して取り付けられている。蓋部42は、閉蓋状態で筒部24に連続する筒状の側面部48と、側面部48の上端部を閉鎖する円形の天面部50が設けられている。天面部50の周縁部は緩やかな球面状に面取りされ、ヒンジ46の近傍には、球面状の角部が平面的に切り取られた切欠部52が形成されている。ヒンジ46は、筒部24および蓋部42の側面部48からわずかに外側に突出した形状に形成され、ヒンジ46の幅方向の中心部は空間が設けられている。蓋部42の切欠部52の、ヒンジ46の空間に対向する部分には、側面部48の延長線上に突出する係止突起53が形成されている。
【0021】
蓋部42の側面部48には、ヒンジ46と反対側に、側面部48から外周方向へ突出する鍔58が設けられている。側面部48の内周面の、鍔58に対向する部分には、キャップ本体19の雌フック44に係合する雄フック60が設けられている。雌フック44と雄フック60は、蓋部42の閉蓋状態で係合されるように位置している。さらに、蓋部42の裏面には、閉蓋状態で滴下ノズル38に入れて密閉する突起状の栓62が設けられている。
【0022】
キャップ本体19の筒部24の、ヒンジ46の中心部の空間に対向する部分には、筒部24外周部の一部を切除した係止用凹部54が形成されている。係止用凹部54の内側には、蓋部42の係止突起53が係止される係止突起56が設けられている。係止突起56は、係止用凹部54の板部22上面22aから離れた下端部に、上方に向かって突出して形成され、係止突起56は係止用凹部54の内側面との間に隙間を有して形成されている。
【0023】
次に、この実施形態の塗布体付き容器10の使用方法について説明する。先ず、内容液である薬剤64を製造する製薬メーカー等で、容器本体12に薬剤64を注入し、薬剤64を入れた容器本体12の注出口14に、注出部材18を螺合させて閉鎖する。薬剤64は、例えば水虫薬やかゆみどめである。
【0024】
そして、薬剤64の使用者が、塗布体付き容器10から薬剤64を取り出すとき、蓋部42に設けられている鍔58を上方に押し上げて雄フック60、雌フック44の係合を解除し、ヒンジ46を回転軸として蓋部42を回動させる。このとき、蓋部42にはヒンジ46の近傍に切欠部52が形成されているため、キャップ本体19の筒部24と蓋部42とが当接することが無く、蓋部42は開く角度が180°を超えてもさらに回動を続ける。そして、ヒンジ46の中心部の空間に設けられた蓋部42の係止突起53と、筒部24の係止突起56が当接して、弾性変形した後で復元し互いに係合し、図2、図4〜図6に示すように蓋部42が大きく開かれた状態で固定される。このとき、蓋部42は板部22よりも容器本体12に近づく下方に位置している。
【0025】
そして、図5に示すように容器本体12を倒立させて、滴下ノズル38が下に位置するように保持し、容器本体12の胴部を押してスクイズする。薬剤64は、キャップ本体19の板部22の注出孔36から押し出されて滴下ノズル38先端部の周縁に表面張力で滴下せずにたまる。そしてたまる量が一定以上となったとき、滴下ノズル38から薬剤64が対象部位66に滴下する。対象部位66は、例えば人の皮膚である。
【0026】
次に容器本体12を刷毛28が滴下ノズル38よりも下に位置するように傾斜させて保持し、容器本体12を水平方向に移動させて刷毛28の先端で対象物66表面に薬剤64をのばして適した状態にする。使い終わったら、容器本体12を元の正立状態に戻し、蓋部42を押し上げて、係止突起53と係止突起56の係合を解除し、閉じ方向に回動し、板部22を覆うように閉じる。このとき、蓋部42の雄フック60がキャップ本体19の雌フック44に係止され、閉じ状態で固定される。このとき、蓋部42の栓62が滴下ノズル38に差し込まれ、薬剤64を液密に収容する。
【0027】
この実施形態の塗布体付き容器10によれば、簡単な構造であり、部品点数が少なく製造が容易であり、確実に薬剤64を定量的に注出し、刷毛28で塗りながら対象物66に広げることができる。薬剤64を取り出すとき、容器本体12を倒立させてスクイズして滴下するだけで少量ずつ取り出すことができ、一滴の液量が滴下ノズル38先端部の外径を調整して任意の量に設定されているため、滴下した回数を数えて定量注出することができる。このように定量注出した薬剤64を刷毛28で塗りながら対象物66に塗り広げることが出来、適切な使用状態にすることができる。また、注出部材18はヒンジキャップなので、ワンタッチで蓋部42の開閉が可能であり、蓋部42が180°以上開いた状態で、キャップ本体19の筒部24に固定可能であり、薬剤64を滴下して塗布する操作の際に、蓋部42が邪魔にならず、操作が容易である。使用しないときは、蓋部42を閉じるだけで液密に閉鎖され、簡単で確実に薬剤64を収容することができる。スクリューキャップのように回転させることがないので、滴下ノズル38をセンターにする必要がなく、刷毛28とのレイアウトを自由に取ることができる。
【0028】
なお、この発明の塗布体付き容器は、前記実施の形態に限定されるものではなく、各部材の形状等変更可能であり、例えば筒部の係止突起と蓋部の係止突起の形状は、互いに確実に係合し一定の力がかかると解除するものであればよい。刷毛の取付方法や、刷毛の位置や数等も、自由に変更可能である。また塗布体は、刷毛、発泡体、フェルト、ヘラ等以外でもよく、薬剤の粘度や使用量にあわせて自由に変更可能である。
【符号の説明】
【0029】
10 塗布体付き容器
12 容器本体
14 注出口
16 雄ねじ
18 注出部材
19 キャップ本体
20 シール筒
22 板部
24 筒部
26 雌ネジ
28 刷毛
36 注出孔
38 滴下ノズル
42 蓋部
46 ヒンジ
50 天面部50
52 切欠部
53,56 係止突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容液を収容し復元可能にスクイズ性を有する容器本体と、前記容器本体の注出口に取り付けられた注出部材と、前記注出部材に形成され内容物を定量で滴下する滴下ノズルと、前記注出部材の前記滴下ノズルの近傍に取り付けられ前記滴下ノズルから滴下された内容液を塗布するための塗布体が設けられていることを特徴とする塗布体付き塗布容器。
【請求項2】
前記注出部材は、前記注出口を閉鎖し前記滴下ノズルが設けられている板部と前記板部に連続し前記注出口の側面に嵌合する筒部が設けられたキャップ本体と、前記キャップ本体の一部にヒンジを介して連結され前記ヒンジを回転軸として開閉可能な蓋部とからなるヒンジキャップである請求項1記載の塗布体付き塗布容器。
【請求項3】
前記ヒンジは、前記キャップ本体外周部よりも外方に突出し、前記キャップ本体と前記蓋部の前記ヒンジ近傍の互いに対向する側縁部には、前記蓋部が180°以上開いた状態で互いに係合する一対の係止突起が設けられ、前記蓋部には、天面部から側面部にかけて、前記ヒンジ近傍の表面が切り欠かれた切欠部が形成され、前記切欠部により、前記蓋部が前記キャップ本体の筒部に当接することがなく、前記蓋部が180°以上開いて固定される請求項1又は2記載の塗布体付き塗布容器。
【請求項4】
前記塗布体は前記容器本体の外側へ突出し、前記塗布体は、刷毛、発泡体、フェルトまたはヘラである請求項1記載の塗布体付き塗布容器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−71744(P2013−71744A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−211208(P2011−211208)
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(000104526)キタノ製作株式会社 (20)
【Fターム(参考)】