説明

塗布具

【課題】液状の薬剤を使用した場合でも患者の患部への刺激を低減することができる構造の液剤塗布具を提供すること。
【解決手段】開口部を有する液剤容器と、合成繊維を束ねて柱状に成形された柱状刷毛部材と、を有し、前記柱状刷毛部材が、前記液剤容器の開口部に設置され、前記柱状刷毛部材のうち前記液剤容器の外部にある先端部分が、柱軸長手方向に対して垂直横方向に広がる扇状であり、前記柱状刷毛部材の扇状の先端部分の厚みが、前記柱状刷毛部材の先端に近づくに従って、柱軸長手方向に対して垂直縦方向に小さくなる塗布具。
本発明に係る液剤塗布具は扇状の先端部分を有することから、患部への刺激を低減させて液状の爪白癬薬等を患部に塗布することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水虫薬等を体の表面に塗布するための塗布具に関し、詳しくは液状の爪白癬薬を患部に塗布するための塗布具に関する。
【背景技術】
【0002】
足の爪等に白癬菌が入ると爪白癬と呼ばれる症状を引き起こすことがある。爪白癬は水虫の中でも末期症状に属するものであり、症状が進行すると爪が腐り剥がれる等、日常生活に支障が生じることになる。
爪白癬を治療する薬剤はこれまでに開発されていて、薬局等により市販されているため比較的容易に入手することができる。そして患部に前記薬剤を塗布することにより普段の日常生活の中で爪白癬の症状を緩和することが可能となっている。
しかし爪が剥がれた皮膚の上に前記薬剤を塗布したり、爪の間等に前記薬剤を塗布したりする際には、爪白癬の症状の進行度によっては耐えがたい痛みを感じる患者も存在するのが実情である。
【0003】
市販されている薬剤のうち、クリーム状の薬剤を使用する場合には患部に対してクリーム状の薬剤を指等により擦り込む必要がある。
しかし指等により直接患部を刺激したのでは患部の痛みを緩和することが困難である。
また患部に対して噴霧するスプレー状の薬剤を使用する場合には、スプレー状の薬剤の噴射圧により患部が刺激されるため、患部の痛みを緩和することがやはり困難である。
【0004】
また薬剤容器の先端を患部に押し当てることにより、薬剤容器の内部に設けられた弁機構が動作して前記薬剤容器の内部の薬剤が排出される、いわゆるワンプッシュ式の容器入り薬剤も市販されている。
しかしこのワンプッシュ式の容器入り薬剤も力を加えて先端部を患部に押し当てる必要があり、やはり患部の痛みを緩和することが困難である。
【0005】
また刷毛を使用して液状の薬剤を患部に塗布することも可能ではあるが、刷毛を使用する場合には液状の薬剤容器のキャップを外し、液状の薬剤に刷毛を浸し、さらに刷毛により液状の薬剤を患部に塗布する一連の動作が必要となる。この一連の動作に手間が掛る問題がある。
【0006】
上記の実情に鑑み、薬剤を患部に塗布する手間を軽減することを目的として、薬剤塗布具も開発されている(特許文献1)。
前記薬剤塗布具は、薬剤を入れる容器の開口部に保水性に富む塗布部を設置してなるものである。
しかし前記薬剤塗布具は前記塗布部の形状が半球状であり、爪の間に薬剤を塗布する目的に適さない問題がある。
【0007】
この一方、刷毛を備えた薬剤塗布具も市販されている。
しかし従来の薬剤塗布具は前記薬剤塗布具の刷毛を下に向けると液垂れを起こすことがある。
また前記薬剤塗布具の刷毛を下に向けると液状の薬剤が前記刷毛の先端に移動し、液滴が生じるが、この液滴が患部以外の場所に落下することを防止するために患者は前記刷毛の先端を患部に押し当てる必要がある。
前記刷毛の先端を患部に直接押し当てると患部を刺激することから従来の薬剤塗布具では患部の痛みを緩和することが困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000−116793号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、液状の薬剤を使用した場合でも患者の患部への刺激を低減することができる構造の塗布具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために本発明者らが鋭意検討した結果、液剤容器および柱状刷毛部材を有する塗布具であって、合成繊維を束ねて柱状に成形された柱状刷毛部が前記液剤容器の開口部に設置され、前記柱状刷毛部の先端部分が柱軸長手方向に対して垂直横方向に広がる扇状であり、前記柱状刷毛部の先端に近づくに従って柱軸長手方向に対して垂直縦方向の厚みが小さくなる塗布具が本発明の目的に適うことを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、
[1]開口部を有する液剤容器と、
合成繊維を束ねて柱状に成形された柱状刷毛部材と、
を有し、
前記柱状刷毛部材が、前記液剤容器の開口部に設置され、
前記柱状刷毛部材のうち前記液剤容器の外部にある先端部分が、柱軸長手方向に対して垂直横方向に広がる扇状であり、
前記柱状刷毛部材の扇状の先端部分の厚みが、前記柱状刷毛部材の先端に近づくに従って、柱軸長手方向に対して垂直縦方向に小さくなることを特徴とする、塗布具を提供するものである。
【0012】
また、本発明の一つは、
[2]前記柱状刷毛部材の扇状の先端部分の最大横幅が、前記柱状刷毛部材の柱軸長手方向に対して水平である面による断面を基準として、前記柱状刷毛部材の柱状部分の最大形の1.1〜2.0倍の範囲である、上記[1]に記載の塗布具を提供するものである。
【0013】
また、本発明の一つは、
[3]前記柱状刷毛部材が、繊維径7〜50μmの範囲の合成繊維を、0.15〜0.65の密度の範囲に束ねて成形されている、上記[1]または[2]に記載の塗布具を提供するものである。
【0014】
また、本発明の一つは、
[4]前記柱状刷毛部材に使用する合成繊維が、ポリエステル繊維、ナイロン繊維およびアクリル繊維からなる群より選ばれる少なくとも一つである、上記[1]〜[3]のいずれかに記載の塗布具を提供するものである。
【0015】
また、本発明の一つは、
[5]前記柱状刷毛部材が、
集束された複数の合成繊維に接着剤が含浸されて柱状に成形された合成繊維束を、研削してなり、
前記接着剤が、前記合成繊維束の外周部に多く偏在し、
前記合成繊維束の先端部が、前記合成繊維束の少なくとも一端の外周部を全周に亘って研削してほぐされ、
前記合成繊維束の先端部の一部もしくは全部の合成繊維が、使用の際の接触応力により動く、請上記[1]〜[4]のいずれかに記載の塗布具を提供するものである。
【0016】
また、本発明の一つは、
[6]前記液剤容器と前記柱状刷毛部材との間に、筒状本体と底部とを有する有底筒状保持具を有し、
前記有底筒状保持具が、前記液剤容器の開口部に挿入され、
前記有底筒状保持具の底部が、少なくとも一つの細孔を有し、
前記柱状刷毛部材が、前記有底筒状保持具の筒状本体内部に挿入されている、上記[1]〜[5]のいずれかに記載の塗布具を提供するものである。
【0017】
また、本発明の一つは、
[7]前記有底筒状保持具が、内部に支持部材を有し、
前記支持部材が、前記有底筒状保持具の内部に挿入された前記柱状刷毛部材を支持する、上記[6]に記載の塗布具を提供するものである。
【0018】
また、本発明の一つは、
[8]前記有底筒状保持具の内部に隙間なく挿入された前記柱状刷毛部材の端面と、前記有底筒状保持具の底部との間に空間が設けられている、上記[6]または[7]に記載の塗布具を提供するものである。
【0019】
また、本発明の一つは、
[9]前記塗布具が、蓋部材を有し、
前記蓋部材が、前記液剤容器に対し密閉して固定した、上記[1]〜[8]のいずれかに記載の塗布具を提供するものである。
【0020】
また、本発明の一つは、
[10]揮発性液剤が、前記液剤容器に収納された、上記[1]〜[9]のいずれかに記載の塗布具を提供するものである。
【発明の効果】
【0021】
本発明に使用する前記柱状刷毛部材のうち前記液剤容器の外部にある先端部分は扇状であり、前記柱状刷毛部材の扇状の先端部分の厚みが、前記柱状刷毛部材の先端に近づくに従って小さくなる。
このため前記柱状刷毛部材の扇状の先端部を利用して爪と皮膚の間に液状の薬剤を塗布したり、前記柱状刷毛部材の扇状の角の部分を利用して患部に液状の薬剤を塗布したりすることが可能であり、本発明の塗布具を簡単に使用することができることから、特に液状の爪白癬薬を患部に塗布する際に有用である。
さらに柱状刷毛部材に使用される合成繊維は繊維径が細いため、柱状刷毛部材の先端部は非常に柔らかく患者の患部を刺激することが少ない。このため液状の薬剤の塗布時に患者の患部の痛みを緩和することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は実施例1に使用する液剤容器を説明するための模式正面図である
【図2】図2は実施例1に使用する液剤容器の模式断面図である。
【図3】図3は実施例1に使用する液剤容器を上から見下ろした状態を例示した模式平面図である。
【図4】図4は実施例1に使用する柱状刷毛部材を説明するための模式正面図である。
【図5】図5は実施例1に使用する柱状刷毛部材を説明するための模式斜視図である。
【図6】図6は柱状刷毛部材を先端方向から観察した状態を例示した模式平面図である。
【図7】図7は柱状刷毛部材の変形例を例示した模式斜視図である。
【図8】図8は実施例1に使用する蓋部材を説明するための模式正面図である。
【図9】図9は実施例1に使用する蓋部材を例示した模式断面図である。
【図10】図10は蓋部材を上から見下ろした状態を例示した模式平面図である。
【図11】図11は蓋部材を下から見上げた状態を例示した模式底面図である。
【図12】図12は実施例1に係る塗布具の全体像を例示した模式正面図である。
【図13】図13は実施例1に係る塗布具を例示した模式断面図である。
【図14】図14は実施例1に係る塗布具を上から見下ろした状態を例示した模式平面図である。
【図15】図15は実施例2に使用した液剤容器18の模式断面図である。
【図16】図16は実施例2に使用する液剤容器を上から見下ろした状態を例示した模式平面図である。
【図17】図17は実施例2に使用する有底筒状保持具を説明するための模式正面図である。
【図18】図18は有底筒状保持具の模式断面図である。
【図19】図19は有底筒状保持具を上から見下ろした状態を例示した模式平面図である。
【図20】図20は有底筒状保持具を下から見上げた状態を例示した模式底面図である。
【図21】図21は実施例2に係る塗布具の全体像を例示した模式正面図である。
【図22】図22は実施例2に係る塗布具を例示した模式断面図である。
【図23】図23は実施例2に係る塗布具を上から見下ろした状態を例示した模式平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に図面を参照しつつ、実施例に基づいて本発明を詳細に説明する。なお本発明は下記の実施例により何ら限定されるものではない。
【実施例1】
【0024】
実施例1に係る塗布具100は、液剤容器および柱状刷毛部材を少なくとも有するものであるが、最初に実施例1に使用する液剤容器について説明する。
図1は実施例1に使用する液剤容器を説明するための模式正面図であり、図2は図1に例示した液剤容器の模式断面図であり、図3は図1に例示した液剤容器を上から見下ろした状態を例示した模式平面図である。
【0025】
本発明に使用する液剤容器10は、液剤容器本体11および液剤容器首部12を備えている。前記液剤容器本体11の形状については、内部に液状の薬剤を入れて保持することができる形状であれば特に限定はない。
前記液剤容器10の内部に液状の薬剤を入れて机等の平面に前記液剤容器10を置いたときに前記液剤容器10が容易に倒れない様に、前記液容器本体11の底面は水平面に安定して接することのできる形状であることが好ましい。
【0026】
また前記液剤容器本体11は略円柱形状であり、上部が曲面により前記液剤容器首部12と連続的に成形されている。
【0027】
また前記液剤容器本体11の底部13は前記液剤容器本体11の内部に向かって略球面を形成している。
前記液剤容器本体11の底部13の形状を前記液剤容器本体11の内部に向かって前記略球面とすることにより、液状の薬剤の揮発成分が蒸発することにより前記液剤容器10の内圧が高まった場合でも前記液剤容器本体11の底部13が外部に向かって膨張することを防止することができる。
これにより前記液剤容器本体11の底部13が外部に向かって膨張して前記液剤容器10が不安定となり、机等に立てておいた前記液剤容器10が転倒することを防止することが可能である。
【0028】
前記液剤容器10は液剤容器首部12を備えている。
前記液剤容器首部12の端部には円形の開口部14が設けられている。この円形の開口部14を通して前記液剤容器10の内部に液状の薬剤を注入することができる。
また前記液剤容器首部12の外面には螺子山15が設けられている。この螺子山15を用いて後述する蓋部材により前記液剤容器10の内部を密閉することができる。
また前記液剤容器首部12の内面に、後述する柱状刷毛部材を支えるための突起部17が設けられている。
【0029】
実施例1に使用する液剤容器10の素材については、内部に液状の薬剤を入れて保持することができる素材であれば特に限定はないが、一例を挙げるとすれば、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン類、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等の芳香族ポリエステル類等の有機材料、ガラス、セラミック等の無機材料等が挙げられる。
前記素材は軽量であること、衝撃に強いこと等から有機材料であることが好ましい。
前記素材は一種もしくは二種以上を使用することができる。
【0030】
次に実施例1に使用する柱状刷毛部材について説明する。
図4は実施例1に使用する柱状刷毛部材を説明するための模式正面図であり、図5は実施例1に使用する柱状刷毛部材を説明するための模式斜視図であり、図6は図4に例示した柱状刷毛部材を先端方向から観察した状態を例示した模式平面図である。
【0031】
実施例1に使用する柱状刷毛部材30は、繊維径18μmで、繊度3.3dtexのポリエステルからなる合成繊維を複数束ねて、密度0 .42(気孔率58%)の柱状に成形して得られたものである。
なお本発明において密度とは、柱状刷毛部材30の柱軸長手方向に対して垂直に切断した断面を基準にして、単位断面積当たりに占める合成繊維およびそれを接着する接着剤の割合を意味する。
【0032】
本実施例に使用した柱状刷毛部材30の体積は490mmである。前記柱状刷毛部材30の体積は、400〜600mmの範囲であれば好ましい。
前記柱状刷毛部材30の体積は、毛細管現象により浸透し前記柱状刷毛部材30に保持される液剤の容量、液剤の粘度等にも依存するが、本発明に使用する液剤の粘度が低ければ前記柱状刷毛部材30の体積を大きくすることが好ましい。逆に本発明に使用する液剤の粘度が高ければ前記柱状刷毛部材30の体積を小さくすることが好ましい。
前記柱状刷毛部材30の体積を小さくし過ぎると液剤の吐出性が悪くなり、前記柱状刷毛部材30の体積を大きくし過ぎると液垂れが生じやすくなる場合がある。
【0033】
前記柱状刷毛部材30は、柱状刷毛部材本体31、柱状刷毛部材首部32および柱状刷毛部材先端部分33を備える。
前記柱状刷毛部材本体31および柱状刷毛部材首部32は外面が接着剤により固化されていて、前記柱状刷毛部材30の内部に含まれる微細なポリエステルからなる合成繊維が一体化されている。
また前記柱状刷毛部材本体31および柱状刷毛部材首部32の内部には前記合成繊維の間に液状の薬剤を通す空隙があるため、前記柱状刷毛部材本体31の端面を液状の薬剤に浸すと、毛細管現象により前記合成繊維の他端から前記液状の薬剤が滲み出してくる構造となっている。
【0034】
前記柱状刷毛部材本体31を形成する方法としては、例えば次の方法が挙げられる。
まず複数のポリエステル繊維を集束して柱軸長手方向に引き揃え、加熱した金型を通すことにより所要の径を有した柱状のポリエステル合成繊維束を得る。
【0035】
その柱状の合成繊維束を、形状が崩れないように注意して溶剤により希釈した接着剤に浸漬させる。溶剤を乾燥し、接着剤を硬化させ、所要の長さに切断し前記柱状刷毛部材本体31を得ることができる。
前記合成繊維束を接着させるための樹脂としては、不飽和ポリエステル、尿素ホルマリン、フェノール、エポキシ、メラミン、ポリウレタンなどの熱硬化性樹脂や、ポリ酢酸ビニル、ポリオレフィン、低融点ポリエステルなどの熱可塑性樹脂が挙げられる。
その際、塗布性能、樹脂特性および塗布具適応性、生産性などの面からポリウレタン樹脂が好ましい。
【0036】
前記ポリウレタン樹脂としては、例えば、ポリイソシアネートとポリオールよりなるもの等を挙げることができる。
前記ポリイソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートなどで代表されるジイソシアネート化合物、
ジオール又はジアミンとジイソシアネートから誘導されるジイソシアネート化合物、
1分子のトリメチロールプロパンと3分子のトルイレンジイソシアネートから生成されトリイソシアネート及びそれらの誘導体、
さらにこれらのイソシアネート基をフェノール、クレゾールなどのブロック剤でマスクしたブロックイソシアネート等を挙げることができる。
またポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール等の一つの分子中に二個以上の水酸基を有する化合物等が挙げられる。
【0037】
これらの樹脂は、合成繊維束を接着するに際し、溶液にして用いられる。
溶液とする際に用いられる溶媒としては、回収再利用が容易で、蒸発速度の速いものが好適である。
具体的には、メチレンクロライド、メタノール、アセトン、酢酸エチルなどを主体とし、フェノール、クレゾール、ジメチルフォルムアマイド、ジメチルアセトアミドなどが併用される。
また、樹脂溶液としては、含浸条件などに左右されるが、樹脂の濃度が4〜30重量%であるものが好ましい。
より好ましくは2〜30質量%のもの、特に好ましくは2〜20質量%のもので、粘度が50cps以下のものであればさらに好ましい。
【0038】
本発明の塗布具においては、前記樹脂を用いて、合成繊維束を接着させて前記柱状刷毛部材30とすることが好ましい。
その際、前記柱状刷毛部材30の外周部の硬度を、中心部の硬度よりも高くさせることができる。つまり、樹脂を外周部に多く(当然、中心部に少なく)偏在させることにより外周部を硬く、中心部を柔らかくすることができる。
具体的には、合成繊維束に含浸させた樹脂溶液中の溶媒の除去を制御すること等によって実施するものである。
【0039】
外周部に多く樹脂を偏在させて合成繊維束を接着する手段としては、適当な長さに切断した合成繊維束を樹脂溶液に一定時間浸漬したり、樹脂溶液をスプレーする方法も考えられる。
また樹脂溶液に含まれる樹脂濃度を変化させることによっても外周部に多く樹脂を偏在させることができる。
【0040】
また前記柱状刷毛部材本体31および柱状刷毛部材首部32を形成する方法の変形例として、例えば、使用する合成繊維の軟化点以上の温度に加熱された金型内部に、加熱された金型の温度よりも低い軟化点の熱可塑性樹脂を塗布しておき、前記金型により微細なポリエステルからなる合成繊維の束をプレスすることによっても前記柱状刷毛部材本体31および柱状刷毛部材首部32を形成することができる。
【0041】
また前記柱状刷毛部材本体31および柱状刷毛部材首部32に該当する部分に合成樹脂フィルムを貼着することによっても前記柱状刷毛部材本体31および柱状刷毛部材首部32を形成することができる。
【0042】
また使用する合成繊維の融点以上の温度に加熱された金型に前記合成繊維を引き通すことにより、加熱されたポリエステルからなる合成繊維のうち、前記金型と接する部分にある前記合成繊維は溶融する。
これにより徴細なポリエステルからなる合成繊維の束の外面部分だけを固化することができ、前記柱状刷毛部材本体31を一体化することもできる。
【0043】
次に合成繊維束の外周部に接着剤が偏在して固化した合成繊維束の端部の外周部を全周に亘って研削することにより、前記合成繊維束の先端部を容易に解れる構造にすることができる。
【0044】
実施例1に使用する前記柱状刷毛部材30の柱状刷毛部材先端部分33の形状は扇状となっている。
ここで扇状とは、柱軸長手方向に対して垂直横方向に広がる形状をいう。具体的には前記柱状刷毛部材30の柱軸長手方向に対して水平である面による断面を基準として、前記柱状刷毛部材先端部分33の最大横幅が、前記柱状刷毛部材本体31の最大形よりも大きく、前記柱状刷毛部材先端部分33の先端34の厚みが、前記柱状刷毛部材本体31の最大形よりも小さい形状をいう。
ここで前記柱状刷毛部材先端部分33の先端34の厚みは、柱軸長手方向に対して垂直縦方向の長さを基準とするものである。
なお前記垂直横方向と前記垂直縦方向は、それぞれ柱軸長手方向に対して垂直な面上において互いに直交する方向のことを意味する。
【0045】
前記柱状刷毛部材30の扇状の柱状刷毛部材先端部分33の最大横幅は、前記柱状刷毛部材30の柱軸長手方向に対して水平である面による断面を基準として、前記柱状刷毛部材本体31の最大形の1.1〜2.0倍の範囲であることが好ましい。
前記扇状の柱状刷毛部材先端部分33の形状が上記の範囲の場合には、実施例1に係る塗布具が取り扱い易くなる。
【0046】
前記柱状刷毛部材30の扇状の柱状刷毛部材先端部分33の厚みが、前記柱状刷毛部材30の先端34に近づくに従って小さくなる様に、前記柱状刷毛部材30が形成されている。
前記扇状の柱状刷毛部材先端部分33の厚みを、前記柱状刷毛部材30の先端34に近づくに従って小さくするためには、例えば、前記柱状刷毛部材本体31の一端に、刃物や砥石などの一般的な加工手段により柱状刷毛部材首部32を形成し、また先端に近づくに従って厚みを薄く研削加工する。その後、先端部の接着剤で固定された合成繊維束を二次加工によりほぐし、繊維をばらばらにして刷毛状にするとともに、その形を扇状に整形すればよい。
研削加工後の形状を変えることや、二次加工のほぐし具合を変えることにより、柱状刷毛部材用首部の扇状の横幅など、その形を自由に変えることができる。
また前記扇状の柱状刷毛部材先端部分33はほぐされているため、前記合成繊維束の先端部の一部もしくは全部の合成繊維は、使用の際の患部との接触応力により自由に動くことができる。
【0047】
図5の模式斜視図に例示される様に、実施例1に使用した前記柱状刷毛部材30の先端34は帯状の所定面積を有する面状になっている。
また図6の模式平面図に示す一点破線a−aは前記柱状刷毛部材30の先端34の中心線を示すものである。
【0048】
図7は図5に例示した前記柱状刷毛部材30の変形例を例示した模式斜視図である。
図7に例示する通り、前記柱状刷毛部材30の先端34は線状であってもよい。この場合には、図6の模式平面図の一点破線a−aに示される前記柱状刷毛部材30の先端34の中心線の位置に、図7に示す前記柱状刷毛部材30の先端34aが線状に形成される。
【0049】
なお実施例1の場合では、前記柱状刷毛部材30の扇状の柱状刷毛部材先端部分33は、図6に示す一点破線a−aの左右両側から、前記扇状の柱状刷毛部材先端部分33の厚みが、前記柱状刷毛部材30の先端34に近づくに従って小さくなる様に一点破線a−aを基準に左右対称的に形成されているが、一方の側から他方の側へ一方向に前記柱状刷毛部材30の柱状刷毛部材先端部分33を切断して形成した形状等も適宜採用することができる。
【0050】
前記柱状刷毛部材30に使用する合成繊維として、実施例1の場合にはポリエステルの合成繊維を使用したが、前記ポリエステルと共に、または前記ポリエステルに代えてナイロン繊維、アクリル繊維等の合成繊維を使用することもできる。
前記合成繊維は一種もしくは二種以上を使用することができる。
【0051】
本発明に使用する合成繊維は、繊維径7〜50μmの範囲のものが好ましく、10〜30μmの範囲であればより好ましい。
この繊維径の範囲であれば、得られる前記柱状刷毛部材30の扇状の柱状刷毛部材先端部分33が柔らかいため、柱状刷毛部材先端部分33を患者の患部に接触させた場合でも刺激が少なく、痛みを軽減することができる。
繊維径が7μm未満の場合は、柱状刷毛部材の先端部は柔らかいが、極細であるため製造することが難しく、コスト増につながる。
繊維径が50μmより太い場合は、柱状刷毛部材の先端部が硬くなりすぎ、患部を刺激しやすくなる。
【0052】
また本発明に使用する合成繊維およびそれを接着する接着剤の密度は、0.15〜0.65(気孔率85%〜35%)の範囲であれば好ましく、0.25〜0.50(気孔率75%〜50%)の範囲であればより好ましい。
前記合成繊維の密度が0.15より小さい場合は、構造体の部分が少ないため、柱状刷毛部材本体の強度を維持するのが難しくなる。加えて形状を維持しにくく、また壊れやすくなる。
前記合成繊維の密度が0.65より大きい場合は、薬剤の流路(空隙)が少なくなり、薬剤が通りにくく、円滑な薬剤の塗布に支障をきたす。特に塗布する薬剤の量が少なくなりやすい。また、柱状刷毛部材の先端部が硬くなるので、患部を刺激しやすくなる。
【0053】
前記柱状刷毛部材30を前記液剤容器10の開口部14に挿入することにより、実施例1に係る塗布具100を得ることができる。
先に説明した図2に示される通り、前記液剤容器10の液剤容器首部12の内面に柱状刷毛部材30を支えるための突起部17が設けられている。
前記突起部17の形状は環状であり、前記液剤容器首部12の内面に沿って設置されている。前記突起部17を設けることにより、前記柱状刷毛部材30を前記液剤容器10の開口部14に挿入したときに、前記柱状刷毛部材30が前記液剤容器10の内部に落下することを防ぐことができる
【0054】
前記液剤容器10の内部には液状の薬剤を収納することができる。本発明に使用する前記液状の薬剤は爪白癬薬であることが好ましい。
実施例1に係る塗布具100を前記柱状刷毛部材30側を下にして保持すると、前記液剤容器10の内部に入れられた液状の薬剤は、前記柱状刷毛部材30の端面に達する。
前記柱状刷毛部材30の端面に達した液状の薬剤は前記柱状刷毛部材30の毛細管現象により前記柱状刷毛部材30の端面とは反対側の先端部分33に到達する。これにより実施例1に係る塗布具100を用いて患部に液剤を塗布することができる。
【0055】
また前記柱状刷毛部材30の外面は前記液剤容器10の開口部14の内面に密着していて、前記柱状刷毛部材30の外面と前記液剤容器10の開口部14の内面との間に隙間はない。
このため前記柱状刷毛部材30の外面と前記液剤容器10の開口部14の内面との隙間から前記液剤容器10内部の液状の薬剤が漏れることを防止することができる。
【0056】
次に実施例1に係る塗布具100は、蓋部材を備えるものであってもよい。
図8は実施例1に使用する蓋部材を説明するための模式正面図であり、図9は実施例1に使用する蓋部材を例示した模式断面図であり、図10は図8に示した蓋部材を上から見下ろした状態を例示した模式平面図であり、図11は図8に示した蓋部材を下から見上げた状態を例示した模式底面図である。
【0057】
前記蓋部材40は、一端に開口部43を有する有蓋円筒形状となっている。前記蓋部材40の外面には縦方向に複数の線状溝41が平行に設けられていて、前記蓋部材40を指で回すときに滑らない構造になっている。
また前記蓋部材40の内部には螺子溝42が設けられている。この前記蓋部材40の内部の螺子溝42と、図1により先に説明した前記液剤容器10の液剤容器首部12の外面に設けられた螺子山15とを組み合わせて互いに反対方向に回転させることにより、前記蓋部材40と前記液剤容器10とを互いに密閉して固定することができる。
前記蓋部材40と前記液剤容器10とを互いに密閉して固定することにより、前記液剤容器10の内部に入れて保持している液状の薬剤が蒸発して乾固することを防止することができる。
【0058】
なお実施例1の場合は螺子構造により前記蓋部材40と前記液剤容器10とを互いに密閉して固定する場合について説明したが、本発明に使用する前記蓋部材40と前記液剤容器10との固定手段に限定はなく、両者を密閉して固定することができるものを適宜選択して使用することができる。
【0059】
図12は実施例1に係る塗布具100の全体像を例示した模式正面図であり、図13は実施例1に係る塗布具100を例示した模式断面図であり、図14は図12に示した実施例1に係る塗布具100を上から見下ろした状態を例示した模式平面図である。
図12に示される通り、前記蓋部材40と前記液剤容器10とを互いに密閉して固定することができる。
【0060】
図13に示される様に、前記柱状刷毛部材30は前記蓋部材40の内部に収納されている。
図12〜図14に例示する様に、実施例1の塗布具100はその内部に液状の薬剤を密閉して保存することができる。また携帯にも優れる形状を有するため日常生活の中で患者自身が適宜患部に液状の薬剤を塗布することができる。
【実施例2】
【0061】
実施例2に係る塗布具110は、液剤容器、有底筒状保持具および柱状刷毛部材を少なくとも有するものであるが、最初に実施例2に使用する液剤容器について説明する。
図15は実施例2に使用した液剤容器18の模式断面図であり、図16は実施例2に使用する液剤容器18を上から見下ろした状態を例示した模式平面図である。
実施例2の場合は、実施例1に使用した前記液剤容器10に代えて液剤容器18が使用されている。
実施例2に使用した液剤容器18は、実施例1に使用した前記液剤容器10の液剤容器首部12の内面に設置された突起部17が省略されている。前記突起部17が省略された以外は、前記液剤容器18は実施例1に使用した液剤容器10と同様である。
【0062】
実施例2に係る塗布具110は、実施例1に係る塗布具100と比較して前記液剤容器18と前記柱状刷毛部材30との間に有底筒状保持具20が設置されている点が異なる。
図17は実施例2に使用する有底筒状保持具を説明するための模式正面図であり、図18は図17に例示した有底筒状保持具の模式断面図であり、図19は図17に例示した有底筒状保持具を上から見下ろした状態を例示した模式平面図であり、図20は図17に例示した有底筒状保持具を下から見上げた状態を例示した模式底面図である。
【0063】
実施例2に使用する有底筒状保持具20は、有底筒状保持具本体21および環状鍔部22を備えている。
前記有底筒状保持具本体21は筒状の形状を有するものであるが、前記筒状の形状は、実施例1に使用した柱状刷毛部材30を挿入することができる様に、前記柱状刷毛部材30の外周形状に合わせて適宜変更することができる。
実施例2に使用する有底筒状保持具20の素材については、実施例1に使用した液剤容器10の場合と同様である。
【0064】
また図18の模式断面図に例示される様に、前記有底筒状保持具20は底部23を有していて、前記底部23と筒状の有底筒状保持具本体21とは互いに隙間なく接合されている。
前記底部23の中心には細孔24が設けられている。この細孔24を通じて、前記液剤容器10の内部に入れられた液状の薬剤が、有底筒状保持具20内部に移動できる構造となっている。
【0065】
前記細孔24の位置、数、形状および大きさは、使用する液状の薬剤の粘度等の性質に応じて適宜設定することができる。
実施例2に使用した前記細孔24の形状は円形であるが、前記細孔24の形状はこれに限定されることはなく、例えば、円形以外に、楕円形、多角形、平行四辺形等、目的、用途に応じて適宜選択することができる。
また前記細孔24の大きさは、前記底部23に平行な面を基準として、最大形が0.5〜5mmの範囲であれば好ましい。この範囲であれば液状の薬剤の円滑な移動と、液状の薬剤が柱状刷毛部材から垂れることが無くなることから好ましい。前記最大形は0.5〜2mmの範囲であればより好ましく、0.8〜1.2mmの範囲であればさらに好ましい。
【0066】
一方、有底筒状保持具本体21の外面には環状鍔部22が外部に突き出る様に設けられている。前記環状鍔部22の底面の形状は、先に説明した前記液剤容器18の開口部14の端面16の形状と略一致していて、前記有底筒状保持具20を前記液剤容器18内部に挿入したときに、前記有底筒状保持具20が前記液剤容器18内部に落下することを防ぐことができる。
また前記有底筒状保持具20を前記液剤容器18に挿入したときに、前記環状鍔部22の底面と前記液剤容器18の開口部14の端面16とが互いに隙間なく密着するため、前記有底筒状保持具20と前記液剤容器18との隙間から液状の薬剤が漏れることを防ぐことができる。
【0067】
前記有底筒状保持具本体21の外面のうち最も大きい部分は、前記液剤容器18の液剤容器首部12の内面とほぼ同じ形状を有する。このため、前記有底筒状保持具20を前記薬剤容器首部22の内面に隙間なく設置することができる。
【0068】
また前記有底筒状保持具本体21の内面には柱状刷毛部材を支持するための支持部材35が前記細孔24を中心として等間隔かつ対称的に設けられている。
前記支持部材35を設けることにより、前記有底筒状保持具本体21の内部に後述する柱状刷毛部材を挿入したときに、前記柱状刷毛部材を前記有底筒状保持具本体21に固定することができる。
【0069】
また前記柱状刷毛部材30の端面と、前記有底筒状保持具本体21の底部23との間に空間を設けることができる。
前記空間を設けることにより、前記柱状刷毛部材30を上向きにして塗布具110を机等の平面上に静置したときに液状の薬剤が前記柱状刷毛部材30の毛細管現象により吸い上げられることがなく、前記液剤容器18の内部にある液状の薬剤の蒸発をより遅延させることが可能となる。
前記柱状刷毛部材30の端面と、前記有底筒状保持具本体21の底部23との間に空間を設ける構造に限定はないが、例えば、前記底部23に突起部を設置することにより前記有底筒状保持具本体21の底部23に直接前記柱状刷毛部材30の端面が接触することを防止することができ、前記空間を設けることができる。
【0070】
実施例2に係る塗布具110の場合も実施例1の場合と同様、前記液剤容器18の内部に液状の薬剤を収納することができる。前記液状の薬剤は爪白癬薬であることが好ましい。
【0071】
次に実施例2に係る塗布具110は、実施例1の場合と同様に蓋部材を備えるものであってもよい。
実施例2に使用した蓋部材40は実施例1に使用した蓋部材40と同様である。
【0072】
実施例1の場合と同様、実施例2に使用する前記蓋部材40と前記液剤容器18との固定手段に限定はなく、両者を密閉して固定することができるものを適宜選択して使用することができる。
【0073】
図21は実施例2に係る塗布具110の全体像を例示した模式正面図であり、図22は実施例2に係る塗布具100を例示した模式断面図であり、図23は図21に示した実施例2に係る塗布具110を上から見下ろした状態を例示した模式平面図である。
図21に示される通り、前記蓋部材40と前記液剤容器18とを互いに密閉して固定することができる。
【0074】
図22に示される様に、前記柱状刷毛部材30は前記蓋部材40の内部に収納されている。
図21〜図23に例示される様に、実施例2の塗布具110もその内部に液状の薬剤を密閉して保存することができる。また携帯にも優れる形状を有するため日常生活の中で患者自身が適宜患部に液状の薬剤を塗布することができる。
【0075】
実施例2に係る塗布具110を前記柱状刷毛部材30側を下にして保持すると、前記液剤容器18の内部に入れられた液状の薬剤は、前記有底筒状保持具20の底部23に設けられた細孔24を通じて前記有底筒状保持具20の内部に浸入し、前記柱状刷毛部材30の端面に達する。
前記有底筒状保持具20の底部23に設けられた細孔24により、前記液剤容器18から前記有底筒状保持具20に移動する液状の薬剤の量が制限される。このため前記液剤容器18の開口部14側を傾けたり、下に向けたりしても多量の液状の薬剤が前記柱状刷毛部材30に一度に移動することを制限することができる。
【0076】
前記柱状刷毛部材30の端面に達した液状の薬剤は前記柱状刷毛部材30の毛細管現象により前記柱状刷毛部材30の端面とは反対側の先端部分33に到達する。これにより実施例2に係る塗布具110を用いて患部に液剤を塗布することが可能となる。
前記有底筒状保持具20の内部には合成繊維を束ねて柱状に成形された柱状刷毛部材30が挿入されている。
前記有底筒状保持具20の内面と前記柱状刷毛部材30の外面とは密着していて隙間がない。このため前記有底筒状保持具20の内面と前記柱状刷毛部材30の外面との隙間から液漏れが生じることを防止することができる。
これにより、実施例2に係る塗布具110の前記柱状刷毛部材30に液状の薬剤を供給しつつ、前記柱状刷毛部材30の先端から液状の薬剤が垂れることを防止することができる。
【0077】
従来の薬剤塗布具は薬剤容器から液垂れ、液剤の蒸発等を起し易い。これに対し実施例2に係る塗布具110は、前記有底筒状保持具20の内部に合成繊維を束ねて柱状に成形された柱状刷毛部材30が隙間なく挿入されている。
このため実施例2に係る塗布具110の前記柱状刷毛部材30を下に向けても前記塗布具110内部の液剤による液垂れがなく、前記柱状刷毛部材30により液剤を患部に薄く塗り広げることができる。
この様に実施例2に係る塗布具110を使用することにより、例えば、爪白癬薬等の液剤を爪と皮膚との間に塗布する場合でも爪と皮膚との間から液剤が溢れ落ちることがない。このため液剤を簡単に患部に塗布することができる。
【0078】
さらに実施例2に係る塗布具110は液剤の液垂れ等が生じにくいから、前記塗布具110を点眼剤用の容器と間違えて、目に爪白癬薬等の液剤を点眼しようとしても容易には点眼することができない。
このため液剤の誤用による事故を防止することができる。
【0079】
加えて前記塗布具110は前記液剤容器18から外部へ通じる、目視により確認できる孔が存在せず、液剤容器18内部の液状の薬剤が蒸発することを軽減することができる。
さらに前記有底筒状保持具20の内部に支持部材35を設けることにより、前記有底筒状保持具20の底部23と前記柱状刷毛部材30の端面との間に空間を設けることも可能である。前記柱状刷毛部材30を上にして前記有底筒状保持具20を立てたときには前記有底筒状保持具20内部の液状の薬剤が前記柱状刷毛部材30に直接接することを前記空間を設けることにより防止することができる。
これにより液状の薬剤が蒸発することを従来の薬剤塗布具と比較して軽減することができる。
【0080】
また従来の薬剤塗布具の場合、外気温の影響により前記薬剤塗布具の内圧が高くなる場合がある。内圧が高いまま患部に従来の薬剤塗布具から薬剤を噴出させた場合には患部への刺激が大きくなる。
これに対し実施例2に係る塗布具110は、外気温の影響を受けにくいことから外気温が高くなっても液垂れを生じにくい。このため外気温が変化した場合でも患部への刺激を小さい状態に保つことができる。
【0081】
[実施例2に係る塗布具110の性能評価]
実施例2に係る塗布具110を使用して、平成15年6月3日付厚生労働省医薬局審査管理課長通知「新有効成分含有医薬品の安定性試験ガイドライン(医薬審発0603001)」に記載の項目「2.2.7.3.半透過性の容器に包装された製剤」に準拠した低相対湿度条件下(40℃プラスマイナス2℃/25%RH以下)、3ヵ月間の試験を実施し、液状の薬剤の充填量の違いによる本発明に係る塗布具110からの質量減少に与える影響及び液漏れを評価した。
【0082】
(1)試験について
実施例2に係る塗布具110に対し液状の薬剤の充填量を変えて液剤容器18に充填し、柱状刷毛部材30および有底筒状保持具20を装着した後、液剤容器18に対し蓋部材40をトルクメーターを用いて約60N・cmの力で密栓したものを検体とした。
次に、各検体を横転した状態で、40℃プラスマイナス2℃/25%RH以下の条件に、一定期間(試験開始時、試験開始後7日、14日、21日、28日、2ヶ月及び3ヶ月)保存した検体の蒸散率(%)を測定し、質量減少を確認した。なお、充填量は3、5および8mLとした。
【0083】
(2)試験材料及び試験方法
(2−1)試験材料
2−1−1)液状の薬剤
検体としてアルコール60%含有液を使用した。
2−1−2)塗布具110
液剤容器18 :HDPE(重量2.6g)
有底筒状保持具20 :PP
蓋部材40 :PP
柱状刷毛部材30 :ポリエステル
【0084】
(3)試験方法
(3−1)検体の調製
液剤容器18に液状の薬剤を3mL、5mLおよび8mL充填した後、柱状刷毛部材30および有底筒状保持具20を装着し、液剤容器18に対し蓋部材40をトルクメーターを用いて約60N・cmの力で密栓したものを検体とした。
【0085】
(4)試験内容
[充填量の違いによる質量減少への影響]
前記(3−1)により調製した検体につき、下記に示した保存条件及び測定時期において、検体1個当たりの質量を精密に量り、蒸散率(%)を求め、質量減少を確認した。
ここで蒸散率は次の式により算出した。
蒸散率(%)=[(液状の薬剤を充填した試験前の塗布具110の質量−液状の薬剤を充填した試験後の塗布具110の質量)/(液状の薬剤を充填した試験前の塗布具110の質量−液状の薬剤を充填していない試験前の塗布具110の質量)]×100
【0086】
[液漏れ確認]
前記検体につき、下記に示した保存条件および測定時期において、目視にて液漏れを確認した。
(保存条件)
・40℃プラスマイナス2℃/25%RH以下
・横転した状態で保存
(測定時期)
・試験開始時、試験開始後試験開始後7日、14日、21日、28日、2ヶ月および3ヶ月
試験開始時を含め7点実施した。
【0087】
(5)試験結果
(5−1)充填量の違いによる質量減少への影響
すべての容器において、充填量が減ることにより、充填量あたりの質量減少の割合が大きくなることが認められた。安定性試験ガイドラインに記載の明確な品質の変化(5%の水分の損失)は認められなかった。
(5−2)液漏れの確認
横転した状態において、液漏れは確認されなかった。
結果を表1に示す。
【0088】
【表1】

表1に示される通り、エタノール、プロパノール等のアルコール類を50重量%以上含有する揮発性液剤を含む場合であっても、本発明に係る塗布具は液漏れを生じない。
塗布具から液漏れが生じる場合には、前記塗布具を入れている衣服のポケット、かばん等の内部に薬剤の臭い、しみが付く問題があるが、本発明に係る塗布具はこの様な問題がなく、日常の携行性にも優れる。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明の塗布具は、液状の薬剤の垂れ等が少なく使用しやすい。また内部の液状の薬剤が蒸発しにくい。また爪白癬を発症している患者の患部に対する刺激が少ないため、特に爪白癬用の薬剤を塗布するための容器として広く使用することができる。
【符号の説明】
【0090】
10、18 液剤容器
11 液剤容器本体
12 液剤容器首部
13、23 底部
14、43 開口部
16 端面
17 突起部
20 有底筒状保持具
21 有底筒状保持具本体
22 環状鍔部
24 細孔
25 螺子山
35 支持部材
30 柱状刷毛部材
31 柱状刷毛部材本体
32 柱状刷毛部材首部
33 柱状刷毛部材先端部分
34 先端
40 蓋部材
41 線状溝
42 螺子溝
100 実施例1に係る塗布具
110 実施例2に係る塗布具
一点破線a−a 柱状刷毛部材の先端の中心線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を有する液剤容器と、
合成繊維を束ねて柱状に成形された柱状刷毛部材と、
を有し、
前記柱状刷毛部材が、前記液剤容器の開口部に設置され、
前記柱状刷毛部材のうち前記液剤容器の外部にある先端部分が、柱軸長手方向に対して垂直横方向に広がる扇状であり、
前記柱状刷毛部材の扇状の先端部分の厚みが、前記柱状刷毛部材の先端に近づくに従って、柱軸長手方向に対して垂直縦方向に小さくなることを特徴とする、塗布具。
【請求項2】
前記柱状刷毛部材の扇状の先端部分の最大横幅が、前記柱状刷毛部材の柱軸長手方向に対して水平である面による断面を基準として、前記柱状刷毛部材の柱状部分の最大形の1.1〜2.0倍の範囲である、請求項1に記載の塗布具。
【請求項3】
前記柱状刷毛部材が、繊維径7〜50μmの範囲の合成繊維を、0.15〜0.65の密度の範囲に束ねて成形されている、請求項1または2に記載の塗布具。
【請求項4】
前記柱状刷毛部材に使用する合成繊維が、ポリエステル繊維、ナイロン繊維およびアクリル繊維からなる群より選ばれる少なくとも一つである、請求項1〜3のいずれかに記載の塗布具。
【請求項5】
前記柱状刷毛部材が、
集束された複数の合成繊維に接着剤が含浸されて柱状に成形された合成繊維束を、研削してなり、
前記接着剤が、前記合成繊維束の外周部に多く偏在し、
前記合成繊維束の先端部が、前記合成繊維束の少なくとも一端の外周部を全周に亘って研削してほぐされ、
前記合成繊維束の先端部の一部もしくは全部の合成繊維が、使用の際の接触応力により動く、請求項1〜4のいずれかに記載の塗布具。
【請求項6】
前記液剤容器と前記柱状刷毛部材との間に、筒状本体と底部とを有する有底筒状保持具を有し、
前記有底筒状保持具が、前記液剤容器の開口部に挿入され、
前記有底筒状保持具の底部が、少なくとも一つの細孔を有し、
前記柱状刷毛部材が、前記有底筒状保持具の筒状本体内部に挿入されている、請求項1〜5のいずれかに記載の塗布具。
【請求項7】
前記有底筒状保持具が、内部に支持部材を有し、
前記支持部材が、前記有底筒状保持具の内部に挿入された前記柱状刷毛部材を支持する、請求項6に記載の塗布具。
【請求項8】
前記有底筒状保持具の内部に隙間なく挿入された前記柱状刷毛部材の端面と、前記有底筒状保持具の底部との間に空間が設けられている、請求項6または7に記載の塗布具。
【請求項9】
前記塗布具が、蓋部材を有し、
前記蓋部材が、前記液剤容器に対し密閉して固定した、請求項1〜8のいずれかに記載の塗布具。
【請求項10】
揮発性液剤が、前記液剤容器に収納された、請求項1〜9のいずれかに記載の塗布具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2013−13634(P2013−13634A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−149605(P2011−149605)
【出願日】平成23年7月5日(2011.7.5)
【出願人】(000124269)科研製薬株式会社 (18)
【出願人】(000005511)ぺんてる株式会社 (899)
【出願人】(000103600)オーベクス株式会社 (12)
【出願人】(591039540)前田産業株式会社 (9)
【Fターム(参考)】