説明

塗布処理装置及び塗布処理方法

【課題】ノズル内の流路における異物の付着を防止し、被処理基板に対する塗布液の塗布
の際に、ノズル吐出口から処理液を均一に吐出する。
【解決手段】吐出口16aから塗布液を吐出するノズル16と、前記ノズル16の待機期間において前記ノズル16内の流路が前記塗布液から前記塗布液の溶剤Tに置換された状態で保持するメンテナンス手段26とを具備し、前記メンテナンス手段26は、前記ノズル16に前記溶剤Tを供給する溶剤供給手段33,34と、前記ノズル16の吐出口16aとの間に所定の間隙を形成する液保持板28の液保持面28aと、この液保持面28aを洗浄する液保持面洗浄手段51とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被処理基板に対して塗布液を塗布する塗布処理装置、及び塗布処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、FPD(フラットパネルディスプレイ)の製造においては、いわゆるフォトリソグラフィ工程により回路パターンを形成することが行われている。
このフォトリソグラフィ工程では、ガラス基板等の被処理基板に所定の膜を成膜した後、塗布液であるフォトレジスト(以下、レジストと呼ぶ)が塗布されレジスト膜(感光膜)が形成される。そして、回路パターンに対応して前記レジスト膜が露光され、これが現像処理され、パターン形成される。
【0003】
このようなフォトリソグラフィ工程において、被処理基板にレジスト液を塗布してレジスト膜を形成する方法として、スリット状のノズル吐出口からレジスト液を帯状に吐出し、レジストを基板上に塗布する方法がある。
この方法を用いた従来のレジスト塗布処理装置について、図11を用いて簡単に説明する。 図11に示すレジスト塗布処理装置200は、基板Gを載置するステージ201と、このステージ201の上方に配設されるレジスト供給ノズル202と、このノズル202を移動させるノズル移動手段203とを具備している。
レジスト供給ノズル202には、基板の幅方向に延びる微小隙間を有するスリット状の吐出口202aが設けられ、レジスト液供給源204から供給されたレジスト液Rを吐出口202aから吐出するようになされている。
【0004】
ところで、スリット状の吐出口202aは、微小な隙間により形成されているため、ノズル待機時においてノズル先端のメンテナンス処理を施さなければ、レジスト液の乾燥等により目詰まりが生じる。このため、レジスト塗布処理装置200は、図11に示すようにノズル先端を洗浄するためのノズルメンテナンス手段208を具備している。
このノズルメンテナンス手段208は、例えば、ノズル吐出口202aに洗浄液(シンナー)を吹きつけてノズル先端を洗浄するノズル洗浄部208aと、待機時において吐出口202aが乾燥しないように吐出口202aを溶剤の蒸気雰囲気下で保持するためのノズルバス208bとを有する。更に、基板Gへの塗布処理前において、回転自在な円柱形状のプライミングローラの表面にレジスト液Rを吐出し、ノズル先端に付着したレジスト液Rを均一化(プライミング処理)するプライミング処理部208cを有している。
【0005】
この構成において、基板Gへのレジスト塗布処理時にあっては、ノズル202をノズル移動手段203によって水平移動させながら、スリット状の吐出口202aからレジスト液Rを基板の表面全体に帯状に吐出することにより、レジスト液Rの塗布処理がなされる。
また、ノズル202の待機時にあっては、前記ノズルメンテナンス手段208によるノズルのメンテナンス処理が行われる。このメンテナンス処理では、先ずノズル202がノズル移動手段203によってノズル洗浄部208aに移動される。そして、ノズル洗浄部208aにおいてノズル先端に対する洗浄処理が施され、次いで、図12に示すようにノズルバス208bにおいてノズル吐出口202aが乾燥しないようにノズル202が保持される。
また、次の基板Gへの塗布処理を行う前には、ノズル202はプライミング処理部208cに移動され、プライミングローラへのレジスト液吐出が行われることによって、ノズル先端のプライミング処理が施される。
尚、このようなメンテナンス処理を行う装置構成については特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−236092号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記したように、ノズル待機期間におけるノズル202のメンテナンス処理にあっては、ノズル202は、その先端部(吐出口202a)がノズル洗浄部208aによって洗浄され、図12に示すようにノズルバス208bにおいてノズル吐出口202aが乾燥しないようにノズル202が保持される。
ここで、同一ロット内で連続的に処理される基板間の待機期間であれば、次の基板Gの塗布処理までに長時間空くことがないため、ノズル202内の流路202bには塗布液であるレジスト液が充填されたままである。
【0008】
一方、異なるロット間での待機期間では、長時間の待機となることもあり、ノズル202内の流路202bは、レジストの乾燥付着防止、流路洗浄等の目的により、レジスト液Rから溶剤T(シンナー)に置換されている。
しかしながら、ノズル流路202bが溶剤Tに置換された状態で長時間放置されると、待機中の時間経過に伴い、ノズル先端(吐出口202a)まで充填されていた溶剤Tの蒸発が進行し、図13に示すように溶剤Tに溶け出したレジスト成分が溶剤Tの界面T1付近において析出し、流路202b内において異物Dとなって固着するという課題があった。
また、そのように流路202bに異物Dが付着したままであると、吐出口202aからのレジスト吐出状態が不均一となり、基板Gへのレジスト液Rの塗布処理において塗布膜に塗布ムラが生じる虞があった。
また、流路202b内を傷つけることなく異物Dを除去するには、ノズル202を分解して洗浄する必要があり、手間と時間を要するという課題があった。
また、流路202b内を溶剤Tに置換後、吐出口202a付近の乾燥を防止するために溶剤Tを吐出する、いわゆるダミーディスペンスを行う方法があるが、多量の溶剤Tを吐出し廃棄する必要があるため、コストがかさばるという課題があった。
【0009】
本発明は、上記のような従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、被処理基板に塗布液を塗布する塗布処理において、ノズル内の流路における異物の付着を防止し、被処理基板に対する塗布液の塗布の際に、スリット状のノズル吐出口から塗布液を均一に吐出することのできる塗布処理装置及び塗布処理方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記した課題を解決するために、本発明に係る塗布処理装置は、基板の幅方向に長いスリット状の吐出口から塗布液を吐出するノズルと、前記ノズルの待機期間において前記ノズル内の流路が前記塗布液から前記塗布液の溶剤に置換された状態で保持されるメンテナンス手段とを具備し、前記ノズルの吐出口から前記基板に塗布液を吐出し塗布膜を形成する塗布処理装置であって、前記メンテナンス手段は、前記ノズルに前記溶剤を供給し、ノズルの流路内を溶剤で置換する溶剤供給手段と、液保持面を有し、前記液保持面と前記ノズルの吐出口との間に所定の間隙を形成し、前記ノズルから吐出された溶剤を前記隙間に保持し、前記溶剤のノズルに対する界面をノズル外面に形成する液保持手段と、この液保持手段の液保持面を洗浄する液保持面洗浄手段とを有することを特徴とする。
【0011】
このように構成することにより、溶剤に溶け出した塗布液の成分が、溶剤の蒸発により界面付近で析出したとしても、析出した異物が流路内へ付着するのを防止することができる。
即ち、流路内を清浄な状態とし、被処理基板に対する塗布液の塗布の際に、スリット状のノズル吐出口から塗布液を均一に吐出することができる。
また、溶剤から析出した塗布液成分からなる異物は、ノズル外面に付着するため、ノズルを分解することなく、その除去作業を容易に行うことができる。
【0012】
また、このように構成することにより、液保持手段の液保持面を使用した後に、液保持面洗浄手段を用いて液保持面を洗浄することが可能であり、液保持面が清浄な状態で使用することが可能である。
【0013】
或いは、本発明に係る塗布処理方法は、ノズルから塗布液を基板に供給して基板に塗布液を塗布する工程と、基板に塗布液を塗布する工程の後、所定期間、基板に塗布液を塗布しない場合には、前記ノズル内に塗布液の溶剤を供給して前記ノズル内を塗布液から溶剤に置換し、前記ノズルを液保持面に近接させて溶剤を吐出して前記ノズルの外面と前記液保持面との間に溶剤を保持する工程と、前記ノズルが液保持手段の液保持面から離れた後、溶剤が付着した前記液保持面を、液保持面洗浄手段が洗浄する工程と、を有することを特徴とする。
【0014】
このような方法によれば、溶剤に溶け出した塗布液の成分が、溶剤の蒸発により界面付近で析出したとしても、析出した異物が流路内へ付着するのを防止することができる。
即ち、流路内を清浄な状態とし、被処理基板に対する塗布液の塗布の際に、スリット状のノズル吐出口から塗布液を均一に吐出することができる。
また、溶剤から析出した塗布液成分からなる異物は、ノズル外面に付着するため、ノズルを分解することなく、その除去作業を容易に行うことができる。
【0015】
また、このような方法によれば、液保持手段の液保持面を使用した後に、液保持面洗浄手段を用いて液保持面を洗浄することが可能であり、液保持面が清浄な状態で使用することが可能である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、被処理基板に塗布液を塗布する塗布装置において、ノズル内の流路における異物の付着を防止し、被処理基板に対する塗布液の塗布の際に、ノズル吐出口から塗布液を均一に吐出することのできる塗布処理装置及び塗布処理方法を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、本発明にかかる一実施形態の全体概略構成を示す平面図である。
【図2】図2は、本発明にかかる一実施形態の全体概略構成を示す側面図である。
【図3】図3は、図1のA−A矢視断面図である。
【図4】図4は、本発明にかかる塗布処理装置が具備する待機部の断面図である。
【図5】図5は、図4のB−B矢視断面図である。
【図6】図6は、図4の待機部が有するノズルバスの一部拡大断面図である。
【図7】図7は、本発明にかかる液保持面洗浄手段の第1の実施形態の断面図である。
【図8】図8は、本発明にかかる塗布処理装置の動作の流れを示すフロー図である。
【図9】図9は、本発明にかかる液保持面洗浄手段の第2の実施形態の断面図である。
【図10】図10は、本発明にかかる液保持面洗浄手段の第3の実施形態の断面図である。
【図11】図11は、従来の塗布処理ユニットの概略構成を説明するための斜視図である。
【図12】図12は、従来の塗布処理ユニットが具備するノズルバスの断面図である。
【図13】図13は、図12のノズルバスに配置されたノズルの先端部の状態を示す一部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の塗布処理装置及び塗布処理方法にかかる一実施形態を、図面に基づき説明する。尚、この実施形態にあっては、塗布処理装置を、被処理基板であるガラス基板を浮上搬送しながら、前記基板に対し塗布液であるレジスト液の塗布処理を行うレジスト塗布処理ユニットに適用した場合を例にとって説明する。
【0019】
図1、図2に示すように、このレジスト塗布処理ユニット1は、ガラス基板Gを枚様式に一枚ずつ浮上搬送するための浮上搬送部2Aと、前記浮上搬送部2Aから基板Gを受け取り、コロ搬送するコロ搬送部2Bとを備え、基板Gが、いわゆる平流し搬送されるように構成されている。
【0020】
前記浮上搬送部2Aにおいては、基板搬送方向であるX方向に延長された浮上ステージ3が設けられている。浮上ステージ3の上面には、図示するように多数のガス噴出口3aとガス吸気口3bとがX方向とY方向に一定間隔で交互に設けられ、ガス噴出口3aからの不活性ガスの噴出量と、ガス吸気口3bからの吸気量との圧力負荷を一定とすることによって、ガラス基板Gを浮上させている。
尚、この実施形態では、ガスの噴出及び吸気により基板Gを浮上させるようにしたが、それに限定されず、ガス噴出のみの構成によって基板浮上させるようにしてもよい。
【0021】
また、コロ搬送部2Bにおいては、ステージ3の後段に、コロ駆動部40によって回転駆動される複数本のコロ軸41が並列に設けられている。各コロ軸41には、複数の搬送コロ42が取り付けられ、これら搬送コロ42の回転によって基板Gを搬送する構成となされている。
【0022】
浮上搬送部2Aにおける浮上ステージ3の幅方向(Y方向)の左右側方には、X方向に平行に延びる一対のガイドレール5が設けられている。この一対のガイドレール5には、ガラス基板Gの四隅の縁部を下方から吸着保持してガイドレール5上を移動する4つの基板キャリア6が設けられている。これら基板キャリア6により浮上ステージ3上に浮上したガラス基板Gを搬送方向(X方向)に沿って移動される。
尚、浮上搬送部2Aからコロ搬送部2Bへの基板引き渡しを円滑に行うために、ガイドレール5は、浮上ステージ3の左右側方だけでなく、コロ搬送部2Bの側方にまで延設されている。
【0023】
各基板キャリア6は、図3(図1のA−A矢視断面)に示すように、ガイドレール5に沿って移動可能に設けられたスライド部材6aと、基板Gの下面に対し吸引・開放動作により吸着可能な吸着部材6bと、吸着部材6bを昇降移動させる昇降駆動部6cとを有する。
尚、吸着部材6bには、吸引ポンプ(図示せず)が接続され、基板Gとの接触領域の空気を吸引して真空状態に近づけることにより、基板Gに吸着するようになされている。
また、前記スライド部材6aと昇降駆動部6cと前記吸引ポンプとは、それぞれコンピュータからなる制御部50によって、その駆動が制御される。
【0024】
また、図1、図2に示すように、浮上搬送部2Aの浮上ステージ3上には、ガラス基板Gにレジスト液を吐出するノズル16が設けられている。ノズル16は、Y方向に向けて例えば長い略直方体形状に形成され、ガラス基板GのY方向の幅よりも長く形成されている。図2、図3に示すようにノズル16の下端部には、浮上ステージ3の幅方向に長いスリット状の吐出口16aが形成されている。
【0025】
また、このノズル16には、レジスト供給部30から送出ポンプ31及び切換バルブ32を介してレジスト液が供給される。
一方、ノズル16のメンテナンス時(待機時)においては、溶剤供給部33から送出ポンプ34及び切換バルブ32を介してレジスト液の溶剤(シンナー)が供給されるようになされている。即ち、溶剤供給部33及び送出ポンプ34により溶剤供給手段が構成される。
【0026】
また、図1と図3に示すようにノズル16の両側には、X方向に延びる一対のガイドレール10が設けられている。このガイドレール10に沿ってスライド移動可能な一対のスライド部材17が設けられ、図3に示すように各スライド部材17の上に垂直にシャフト18が立設されている。前記シャフト18には、このシャフト18に沿って昇降移動可能な昇降駆動部19が設けられ、Y方向に対向する一対の昇降駆動部19の間にノズル16を保持する直棒状のノズルアーム11が架設されている。
かかる構成によりノズル16は、昇降移動可能、且つガイドレール10に沿ってX方向に移動可能となされている。
【0027】
また、ステージ3上方において、ノズル16よりも上流側には、ノズル16のメンテナンス手段として、ノズル先端(吐出口16a)を洗浄し、ノズル16を所定時間待機させる待機部14と、塗布処理前においてノズル先端に付着したレジスト液を均一化するためのプライミング処理部20とが設けられている。
待機部14は、ノズル16の吐出口16aに付着した余分なレジスト液を洗浄し除去するノズル洗浄部24と、待機時において吐出口16aが乾燥しないように吐出口16aを溶剤(シンナー)の蒸気雰囲気下で保持するためのノズルバス26とを有している。
また、プライミング処理部20は、基板幅方向(Y方向)に細長い上部開口21aを有する箱状のケーシング21と、ケーシング21内においてモータ等の回転駆動部22により軸周りに回転可能に設けられた円筒または円柱形状のプライミングローラ23とを備えている。図1に示すようにプライミングローラ23の上部は、ケーシング21の上部開口21aから突出した状態に設けられている。
【0028】
前記のようにノズル16は、昇降移動可能、且つガイドレール10に沿ってX方向に移動可能となされており、ガラス基板Gにレジスト液を吐出する吐出位置と、それより上流側にあるプライミング処理部20及び待機部14との間を移動することができる。
即ち、ノズル待機時において、ノズル16は待機部14に移動されて、そこでノズル洗浄等が行われ、塗布処理前にはプライミング処理部20に移動されて、プライミング処理が施されるように構成されている。
【0029】
前記待機部14について、更に詳しく説明する。
図4の断面図に示すようにノズル洗浄部24は、ノズル洗浄ヘッド25を備える。
ノズル洗浄ヘッド25は、ノズル吐出口16a近傍に向けてシンナー等の洗浄液を吐出するシンナー吐出ノズル25aと、洗浄使用後のシンナーを吸引回収するシンナー排出管25bと、ノズル吐出口16a近傍に向けて窒素ガス等の所定のガスを噴射するガス噴射ノズル25cとを有する。
このノズル洗浄ヘッド25は、ヘッドスキャン機構(図示せず)によって、基板幅方向(Y方向)にスキャン移動し、これによりノズル吐出口16aの一端から他端まで洗浄可能となされている。
【0030】
また、ノズルバス26は、基板幅方向(Y方向)に細長い上部開口27aを有する箱状のケーシング27を有し、このケーシング27内に所定量の溶剤T(シンナー)が貯留されている。ケーシング27の側部には排出管27bが設けられ、貯留された溶剤Tが所定の容量を越えないようになされている。
図4に示すように、ノズル待機時には、ノズル先端部(吐出口16a)が前記上部開口27aからケーシング27内に挿入された状態で保持される。
【0031】
また、図4、図5(図4のB−B矢視断面)に示すように、ケーシング27内において、貯留されている溶剤Tの上方には、ノズルの吐出口16aとの間に所定の間隙を形成する液保持手段、例えば基板幅方向に延びる長方形板状の液保持板28(板部材)が、例えば棒状の支持部材36に下方から支持されて設けられている。この液保持板28の上面には面一の液保持面28aが形成され、この液保持面28aは耐薬品性(耐レジスト性、耐溶剤性)、低摩擦係数を有する材質、例えばフッ素樹脂とか、ステンレス合金等からなる。
【0032】
また、この液保持板28は、ロット間の待機期間において用いられるが、その待機期間では、制御部50の制御により、ノズル16内の流路16bが、レジスト液から溶剤T(シンナー)に置換される。更に、ノズル吐出口16aから液保持板28(液保持面28a)上に所定量の溶剤Taが吐出されるようになされている。
これにより、図6(ノズル先端部の拡大図)に示すように、ノズル16と液保持板28との間には、溶剤Taが、その表面張力により形状維持された状態で保持される。そして、溶剤Taにおけるノズル16との界面T1が、ノズル16の流路16b内ではなく、ノズル16の外面に形成される。
【0033】
次に、本発明の主要部である、液保持面28aを洗浄するための洗浄手段、例えば液保持面洗浄手段51の第1の実施形態を説明する。図7に示すように、液保持面洗浄手段51は、液保持面28aに洗浄液である処理液、例えば溶剤T(シンナー)を供給するための洗浄ノズル55と、ノズル55を液保持面28aに沿って移動させる洗浄ノズル移動手段56とを有する。洗浄ノズル移動手段56は、洗浄ノズル55を液保持面28aに沿ってX、Y方向に移動させることができる。なお、液保持面洗浄手段51は、制御部50により制御される。
【0034】
続いて、このように構成されたレジスト塗布処理ユニット1において、基板Gへのレジスト液の塗布から待機時におけるノズルのプライミング処理を含む一連の流れについて、更に図8を用いて説明する。
レジスト塗布処理ユニット1において、浮上ステージ3上に新たにガラス基板Gが搬入されると、基板Gはステージ3上に形成された不活性ガスの気流によって下方から支持され、基板キャリア6により保持される(図8のステップS1)。
そして、制御部50の制御により基板キャリア6が駆動され、基板搬送方向に搬送開始される(図8のステップS2)。
【0035】
また、レジストノズル16の吐出口16aから塗布液であるレジスト液が吐出され、ノズル16の下方を通過する基板Gに対し塗布処理が施される(図8のステップS3)。
基板G上へのレジスト液の塗布処理が終了すると、ノズル16からのレジスト液の吐出が停止され、塗布処理が完了した基板Gは、浮上搬送部2Aからコロ搬送部2Bに引き渡され、コロ搬送によって後段の処理部へ搬出される(図8のステップS4)。
【0036】
待機期間になると、制御部50は、ノズル16をレール10に沿って待機部14の上方へと移動させる(図8のステップS5)。
そして、先ず待機部14のノズル洗浄部24において、ノズル16の先端部に対しノズル洗浄ヘッド25がスキャンされ、洗浄液を用いた洗浄処理が行われる(図8のステップS6)。
【0037】
次いで、ノズル16はノズルバス26に移動され、ノズル先端部がケーシング27の上部開口27aからケーシング27内に挿入された状態で保持される(図8のステップS7)。
ここで、ロット内の全ての基板Gに対する塗布処理が完了していない場合(図8のステップS8)、ノズル16はそのまま所定時間保持され、その間、吐出口16aは、乾燥しないように溶剤Tの蒸気に曝される(図8のステップS9)。
【0038】
ノズルバス26における所定時間の待機後、ノズル16はプライミング処理部20の上方に移動される。そして、吐出口16aから所定量のレジスト液がプライミングローラ23の表面に吐出されると共に、プライミングローラ23が所定方向に回転することによってノズル先端のプライミング処理が施される(図8のステップS10)。
また、プライミング処理が施されたノズル16は、基板Gに対するレジスト液の塗布処理位置まで移動され、次の基板Gに対する塗布処理が行われる(図8のステップS3)。
【0039】
一方、ステップS8において、ロット内の全ての基板Gに対する塗布処理が完了した場合、制御部50は切換バルブ32の切換制御を行い、ノズル16に対し溶剤供給部33から溶剤T(シンナー)を供給する。これにより、ノズル16内の流路16bは、レジスト液から溶剤Tに置換され、溶剤Tが充填された状態となされる(図8のステップS11)。また、更に、ノズル吐出口16aから液保持板28に対し、所定量の溶剤Taが吐出される(図8のステップS12)。これにより、図6に示すように吐出口16aと液保持板28(液保持面28a)との間には、溶剤Taが、その表面張力により形状維持した状態となされ、その状態で所定時間保持される(図8のステップS13)。
また、その状態において、溶剤Taにおけるノズル16との界面T1は、ノズル16の外面に形成される。このため、溶剤Taに溶け出したレジスト成分が、溶剤Taの蒸発により界面T1付近で析出しても、析出した異物Dが流路16b内に付着することを防止できる。
【0040】
また、レジスト塗布処理ユニット1において新たに塗布処理を行うロットがある場合(図8のステップS14)、ノズル16はプライミング処理部20の上方に移動される。
そして、制御部50は切換バルブ32の切換制御を行い、ノズル16に対しレジスト供給部30からレジスト液を供給する。これにより、ノズル16内の流路16bは、溶剤Tから再びレジスト液に置換される(図8のステップS15)。
そして、吐出口16aから所定量のレジスト液がプライミングローラ23の表面に吐出されると共に、プライミングローラ23が所定方向に回転することによってプライミング処理が施される(図8のステップS10)。
また、プライミング処理が施されたノズル16は、基板Gに対するレジスト液の塗布処理位置まで移動され、次のロットの基板Gに対する塗布処理が行われることとなる(図8のステップS3)。
【0041】
このようにして、次のロットの基板Gに対する塗布処理が開始され、次に液保持板28にノズル16から溶剤が供給されるまでの間(図8のS3〜S12)に、洗浄液である処理液または溶剤が洗浄ノズル55から液保持面28aに供給される。このときに、洗浄ノズル55を、液保持面28aに沿って移動させつつ、液保持面28aに洗浄液を供給することにより、液保持面28aをまんべんなく洗浄することが可能である。
【0042】
以上のように、本発明に係る実施の形態によれば、ノズル16を用いた塗布処理が実施されない、ロット間の待機期間において、ノズル内の流路16bがレジスト液から溶剤Tに置換されると共に、液保持面28aに供給された溶剤Taにおけるノズル16との界面T1が、ノズル16の外面に形成される状態で保持される。
これにより、溶剤Taに溶け出したレジスト成分が、溶剤Taの蒸発により界面T1付近で析出したとしても、析出した異物Dの流路16b内への付着を防止することができる。
即ち、流路16b内を清浄な状態とし、基板Gに対するレジスト液の塗布の際に、スリット状のノズル吐出口16aからレジスト液を均一に吐出することができる。
また、液保持面28aを洗浄する液保持面洗浄手段51である、洗浄ノズル55と、洗浄ノズル移動手段56とを設けたので、塗布処理が実施されないロット間の待機期間に、使用済みの液保持面28aを洗浄することが可能であり、次に液保持面28aを使用する際に、液保持面28aが清浄された状態で使用することができる。
【0043】
次に、本発明の主要部である液保持面洗浄手段51の第2の実施形態を説明する。図9に示すように、液保持面洗浄手段51は、自転しつつ液保持面28aを物理的に洗浄する洗浄ブラシ60と、洗浄ブラシ60と液保持面28aとに洗浄液である処理液、例えば溶剤T(シンナー)を供給する洗浄液供給口61と、洗浄ブラシ60と洗浄液供給口61とを液保持面28aに対して相対的に移動させる洗浄ブラシ移動手段62とを有する。洗浄ブラシ60により、液保持面28aの全面を洗浄することが可能である。
【0044】
次に、第2の実施形態における、液保持面洗浄手段51の動作に関して説明する。本実施形態でも、第1の実施形態で液保持面28aが洗浄されるのと同じタイミング(図8のS3〜S12)で、液保持面28aと洗浄ブラシ60に洗浄液が供給され、洗浄ブラシ60を回転させつつ、洗浄ブラシ60を液保持面28aに対して相対的に移動させながら、液保持面28aの全面を洗浄する。このように、液保持面28aを洗浄する液保持面洗浄手段51である、洗浄ブラシ60と、洗浄液供給口61と、洗浄ブラシ移動手段62とを設けたので、塗布処理が実施されないロット間の待機期間に、使用済みの液保持面28aを洗浄することが可能であり、次に液保持面28aを使用する際に、液保持面28aが清浄された状態で使用することができる。
【0045】
次に、本発明の主要部である液保持面洗浄手段51の第3の実施形態を説明する。図10に示すように、液保持面洗浄手段51は、液保持面28aの周囲に配置され、溶剤Tを貯留する容器70と、液保持板28を昇降する液保持板昇降手段71と、液保持面28a上の溶剤Tを液切りする液切り手段である例えばエアナイフ72とを有する。液保持板昇降手段71によって液保持板28を下降させることにより、容器70内の溶剤Tに液保持面28aを浸漬させることが可能である。また、エアナイフ72は、液保持面28aに対して相対的に水平移動可能であり、エアナイフ72から気体を供給しつつエアナイフ72を液保持面28aに対して移動させることにより、液保持面28a上の余分な溶剤Tを液切りすることができる。
【0046】
次に、第3の実施形態における液保持面洗浄手段51の動作に関して説明する。本実施形態でも、第1の実施形態で液保持面28aが洗浄されるのと同じタイミング(図8のS3〜S12)で、液保持板28を下降させ、液保持面28aを溶剤Tに浸漬させて、液保持面28aを洗浄することが可能である。その後、液保持板28を上昇させ、エアナイフ72から気体を供給しつつ液保持面28aに対して移動させて、液保持面28a上の余分な溶剤Tを液切りする。このように、液保持面28aを洗浄する液保持面洗浄手段51である、容器70と、液保持面昇降手段71と、エアナイフ72とを設けたので、塗布処理が実施されないロット間の待機期間に、使用済みの液保持面28aを洗浄することが可能であり、次に液保持面28aを使用する際に、液保持面28aが清浄された状態で使用することができる。
【0047】
なお、上述した液保持面洗浄手段51は、第1〜3の実施形態に限定されるものではなく、液保持板28を洗浄できる構成や方法であれば良いことは、言うまでもない。また、当業者であれば、特許請求の範囲に記載された思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。また、上述した実施の形態は、FPDの基板にレジスト液を塗布する例であったが、本発明は、基板がFPDの基板以外の半導体ウェハ、フォトマスク用のマスクレチクルなどの他の基板である場合にも適用できるし、レジスト液以外の液を基板に塗布する場合にも適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、例えばFPD基板等にレジスト膜を形成する際に有用である。
【符号の説明】
【0049】
1 レジスト塗布処理ユニット(塗布処理装置)
16 ノズル
16a 吐出口
16b 流路
26 ノズルバス(メンテナンス手段)
28 液保持板
28a 液保持面
33 溶剤供給部(溶剤供給手段)
34 送出ポンプ(溶剤供給手段)
51 液保持面洗浄手段
55 洗浄ノズル
56 洗浄ノズル移動手段
60 洗浄ブラシ
61 洗浄液供給口
62 洗浄ブラシ移動手段
70 容器
71 液保持板昇降手段
72 エアナイフ
G ガラス基板(被処理基板)
T、Ta 溶剤
T1 溶剤の界面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の幅方向に長いスリット状の吐出口から塗布液を吐出するノズルと、前記ノズルの待機期間において前記ノズル内の流路が前記塗布液から前記塗布液の溶剤に置換された状態で保持されるメンテナンス手段とを具備し、前記ノズルの吐出口から前記基板に塗布液を吐出し塗布膜を形成する塗布処理装置であって、
前記メンテナンス手段は、
前記ノズルに前記溶剤を供給し、ノズルの流路内を溶剤で置換する溶剤供給手段と、
液保持面を有し、前記液保持面と前記ノズルの吐出口との間に所定の間隙を形成し、前記ノズルから吐出された溶剤を前記隙間に保持し、前記溶剤のノズルに対する界面をノズル外面に形成する液保持手段と、
この液保持手段の液保持面を洗浄する液保持面洗浄手段と
を有することを特徴とする塗布処理装置。
【請求項2】
前記液保持面洗浄手段は、
前記液保持面に処理液を供給するための洗浄ノズルと、
この洗浄ノズルを前記液保持面に対して相対的に移動させる洗浄ノズル移動手段と
を有することを特徴とする請求項1に記載の塗布処理装置。
【請求項3】
前記液保持面洗浄手段は、
前記液保持面を洗浄する洗浄ブラシと、
この洗浄ブラシに処理液を供給する処理液供給口と、
前記洗浄ブラシおよび前記処理液供給口を前記液保持面に対して相対的に移動させる洗浄ブラシ移動手段と
を有することを特徴とする請求項1に記載の塗布処理装置。
【請求項4】
前記液保持面洗浄手段は、
前記液保持面の周囲に配置され、前記溶剤を貯留する容器と、
この容器に対して前記液保持面を相対的に昇降させて前記容器に貯留された前記溶剤に前記液保持面を浸漬させる液保持面昇降手段と
を有することを特徴とする請求項1に記載の塗布処理装置。
【請求項5】
基板に塗布液を塗布する塗布処理方法であって、
ノズルから塗布液を基板に供給して基板に塗布液を塗布する工程と、
基板に塗布液を塗布する工程の後、所定期間、基板に塗布液を塗布しない場合には、前記ノズル内に塗布液の溶剤を供給して前記ノズル内を塗布液から溶剤に置換し、前記ノズルを液保持面に近接させて溶剤を吐出して前記ノズルの外面と前記液保持面との間に溶剤を保持する工程と、
前記ノズルが液保持手段の液保持面から離れた後、溶剤が付着した前記液保持面を、液保持面洗浄手段が洗浄する工程と、
を有することを特徴とする塗布処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−130834(P2012−130834A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−283085(P2010−283085)
【出願日】平成22年12月20日(2010.12.20)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】