説明

塗布器具

【課題】容器から起立する中空柄の上部から容器の注出口内へ導液管を垂下した構成において注出口への挿入により導液管のダメージを与えることのない塗布具を提供する。
【解決手段】周壁6の上端から注出筒部材16を起立した容器2と、注出筒部材の下部外面から起立する中空柄32と、この中空柄の上端部内に嵌合して注出筒部材の上部内に挿入された導液管36と、上記中空柄の上部外面に付設され、導液管内部と通ずる塗布部44を有するヘッド部材40とを具備し、注出筒部材16の上部外周又はこの上部付近の中空柄部分の内周を、中空柄32を下限領域まで押し下げたときに相互に圧接する第1、第2当接部30,34とし、その圧接により注出筒部材16の上部が内方へ押し込まれ、この上部と導液管36とが液密にシールし、中空柄32が下限領域に達するまでは、導液管36の下部が注出筒部材16内に遊嵌される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗布器具、特に口腔内や鼻腔内などに薬剤を塗布することに適した塗布器具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、口腔内に薬剤を塗布する塗布器具として、容器体の口頸部内に嵌合された中栓に基部部を固定され、中栓の先面側に付着したノズル筒を通って先方へ導液管を突出した構造が知れている。この導液管の先部には塗布体が付設されている(特許文献1の図5参照)。またノズル筒の外側にはノズル筒の抜止め用のスリーブが嵌合され、スリーブの基端は、上記口頸部の外面に螺着されている。この構成において、容器内を可動底が移動する繰出し機構を内蔵することも知られている(同文献の図12参照)。この塗布器具において、容器内を可動底が移動する繰出し機構を内蔵することも知れれている(同文献の図12参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−192581号
【特許文献2】特開2004−026274
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の塗布器具は、導液管がその先部に付設した塗布体を支えているため、あまり導液管を細くかつ長くすることができない。しかしながら、塗布箇所の位置よってはノズルからの突出箇所を長くしたい場合がある。また薬剤などは比較的高価な場合が多いので、内容液の使い残しはできるだけ少なくしたいという要請がある。そのためには導液管の内径はできるだけ細い方がよい。
【0005】
しかしながら出願人が鋭意研究したところによると、導液管を細くしていくと、スリーブを容器体の口頸部外面に螺合させるときに、その回転力がノズル筒を介して導液管に伝達し、導液管が捻れてしまう可能性がある。これでは導液管の強度を損ねたり、液の円滑な流出が妨げられるおそれがある。
【0006】
本発明の第1の目的は、容器の栓筒部材から起立した挿入管の上部内と栓筒部材内とで導液管の両端側を固定した基本構成とすることで、導液管を細くすることができるようにし、内容液の使い残しを少なくできる塗布器具を提供することである。
【0007】
本発明の第2の目的は、上記基本構成において、挿入管を螺合するときの導液管の締付け力を調整して導液管が捻れ難いように設けた塗布器具を提供することである。
【0008】
本手段の第3の目的は、器具の組立時に予め中栓を組み付けた挿入管を容器体側に一度に取り付けることができるとともに導液管の挿通テストを組立前に行うことが可能な塗布器具を提供することである。
【0009】
本発明の第4の目的は、先の2つの目的の前提として、液体の使い残しを少なくすることができる塗布器具を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
まず第1の手段から第8の手段に共通する基本構成を説明する。
【0011】
その基本構成は、縦筒形の容器2から、口腔等の塗布箇所への挿入に適した細身であって先部に塗布体40を付した挿入管32を起立し、かつ挿入管内に、容器2と塗布体40とを連通する導液管36を、挿入管の両端部側で固定して挿通するとともに、容器2の周壁6内に可動底8を設けており、
上記容器2には、上記周壁6に下半部を嵌着した継手筒17と継手筒内方を塞ぐ中栓18とで形成する栓筒部材16を設け、かつ上記挿入管32の下方管部32aを大内径に形成して、この下方管部32aを上記継手筒17の上半部に螺合させるとともに、上記中栓18に開口した筒孔27内に上記導液管36を液密に嵌合させてなる塗布器具である。
【0012】
この基本構成では、容器と塗布体とを挿入管でつないでいるから、容器と塗布体とを導液管でつなぐ従来技術よりは、挿入管の長さを無理なく長くすることができる。また挿入管の両端部を固定したから、導液管を細くしても導液管が切れるなどの心配がない。
【0013】
「導液管」は、液体の移動を妨げない範囲で出来るだけ細い形状に設ける。それにより内容液の使い残しを少なくするためである。例えば内径を1mm程度とすることができる。管を細長く形成するためには、金属製(又は硬質樹脂製の)のパイプとすることができる。さらに金属製とすることで変形しない、セットが安定するという利点もある。
【0014】
「挿入管」は、塗布体の支持管、口腔又は鼻腔内への挿入手段、導液管の保護筒としての機能を有する。
【0015】
「栓筒部材」は、周壁と挿入管との継手筒、及び導液管の下端を液密に支持する中栓としての構成及び機能を有する。中栓は継手筒に比べて上部を小径であり、細い導液管を抱持する。栓筒部材は、継手筒と中栓とを一体に成形することもできるが、図示例のように別体とすることが有利である。形成し易いだけでなく、継手筒を剛性材料で、中栓を柔軟材料で形成することでそれぞれの機能に適したものとすることができるからである。
【0016】
第1の手段は、上記基本構成を有し、かつ
上記中栓18の外周及びこの上部付近の挿入管部分の内周を、挿入管32を下限領域まで押し下げたときに相互に圧接する第1、第2当接部29,34とし、
これら第1、第2当接部の圧接により中栓18が内方へ押し込まれ、この上部内面と導液管36の外面とが液密にシールするとともに、上記挿入管32が下限領域に達するまでは、導液管36の下部が中栓18内に遊嵌されるように構成している。
【0017】
本発明の塗布器具は、前述のように容器と塗布体とをつなぐ挿入管の内部に導液管を設けたから、導液管を細くして内容液の使い残しを少なくすることができる。しかしその反面、導液管が脆弱となるので、挿入管を栓筒部材の下部へ螺合するときには、導液管が捩れてしまうおそれがある。そこで本手段では、栓筒部材の上部と挿入管部分とに、第1、第2当接部を形成し、挿入管が下限領域に到達したときに栓筒部材の上部を内方変形させることが出来るようにしている(図1から図6参照)。導液管は、挿入管を下限領域に押し下げる前の段階で、図5に示す如く導液管の外面と栓筒部材の上部との間に多少の遊び(ΔA)を設けるとよい。
【0018】
「下限領域」は、上下に多少巾のある領域という意味で使用している。図示例のように挿入管を栓筒部材に螺合するときには、その螺旋の一ピッチ分程度又はそれ以下とすることができる(図5のΔY参照)。下限領域内で挿入管が下降することで第1、第2当接部が圧接し合い、栓筒部材の上部が内方へ押し込まれる。
【0019】
「第1、第2当接部」は、相互に圧接することで、挿入管の押下げ力を栓筒部材の上部を内方へ押し込む力に変換する。第1当接部は、栓筒部材の上部のうち外方へ張り出す大外径部分として形成することができる。第1当接部の外径は、図5に示すように第2当接部の内径に比べてΔR大きく、この径差ΔRは少なくとも導液管と栓筒部材の上部との遊びΔAよりも大きい。
【0020】
第2の手段は、第1の手段を有し、かつ
上記第1、第2当接部29,34をそれぞれ導液管36で囲むように周設することで、上記中栓18が導液管36を全周に亘って均等な力で抱持するようにしたことを特徴としている。
【0021】
導液管は細いので例えば左右方向から挟むと管孔が狭まる(場合によっては塞がる)可能性がある。そこで本手段では、導液管を全周に亘って均等に抱持するようにしている。そのためには第1当接部及び第2当接部をそれぞれ環状当接部に形成することが好適である。
【0022】
第3の手段は、第2の手段を有し、かつ
上記中栓18は、上記導液管36を囲む弾性シール筒部22の上端から、上外方への拡開筒部28を突出するとともに、この拡開筒部28の上端外周を第1当接部29とし、この第1当接部29が挿入管32の内面に存する第2当接部34と当接可能とし、この当接により弾性シール筒部22を内方押込みできるように、弾性シール筒部22に比べて拡開筒部28を肉厚としている。
【0023】
本手段では、導液管を囲む弾性シール筒部から上端大径の拡開筒部を突出し、この拡開筒部の外周部を第1当接部とした構造を提案している。「拡開筒部」は、第1当接部が第2当接部に当ったときの反力を弾性シール筒部に伝達し、弾性シール筒を内方変形させるためのものである。そのために、拡開筒部の剛性を弾性シール筒部よりも大として、容易に変形しないようにしている。拡開筒部の剛性を高めるためには、図示例のように拡開筒部を弾性シール筒部よりも肉厚にすることが最も簡単な方法である。
【0024】
第4の手段は、上記基本構成を有し、かつ
上記中栓18は、継手筒17内面への嵌合用の脚筒19と、この脚筒19の上部と連続して上記導液管を液密に嵌挿することが可能に形成した直筒形のシール筒部23と、このシール筒の回りに囲成した環状突部26とを有し、
かつ上記挿入管32の内面には、上記環状突部26と嵌合する嵌合溝35を周設し、
かつ中栓18と挿入管32とは、上記挿入管32を容器2の継手筒17に螺合する前の段階で、中栓18は環状突部26と嵌合溝35との嵌合により挿入管32側に装着するとともに、この装着状態でシール筒部23内に予め導液管36が液密に嵌合可能に形成されている。
【0025】
本手段では、容器の一部である中栓を予め挿入管の内面側に装着しており(図10参照)、この挿入管を継手筒の上半部外面に螺合させることで、中栓が継手筒の上半部内面に嵌合するように構成している(図7参照)。このことにより、中栓及び挿入管を容器に組み付けるときに、2パーツの組み付けを一度に済ますことができる。本手段に関連する技術としては例えば特許文献2に示すいわゆる移行中栓が存在する。しかし、本手段には、さらに中栓付き挿入管を継手筒の上半部外面に螺合する作業の前からシール筒内に導液管が液密に嵌着されているという特徴がある。これにより中栓及び挿入管を容器に組み付ける前に予め導液管の導通テストを行うことが可能であるという利点が生ずる。これに関しては実施形態の欄で詳しく述べる。
【0026】
第5の手段は、第4の手段を有し、かつ
さらに挿入管32が継手筒17上半部へ螺着させるときに中栓18と挿入管32との摩擦力が中栓18の脚筒19と継手筒17との摩擦力よりも大きくなるように設計している。
【0027】
本手段では、螺合途中での中栓と挿入管との摩擦力Fが中栓と継手筒との摩擦力Fより大きくなるように設計している。従って導液管に対して中栓が相対的に回動することがなく、中栓との摩擦で導液管が捻れて損傷することがない。
【0028】
第6の手段は、第4の手段又は第5の手段を有し、かつ
大径の下方管部32aからテーパ状肩部32bを介して細長い上方管部32cを起立するとともに、これら下方管部32a及びテーパ状肩部32b内に中栓を配置し、
下方管部32aの内面上端側に下向き段部35aを形成し、この下向き段部から一定距離を離して横リブ35bを周設するとともに、これら下向き段部35aと横リブ35bとの間の筒壁部分で嵌合溝35を形成している。
【0029】
本手段では、挿入管の下向き段部と横リブとの間の嵌合溝内に、中栓の環状突部を嵌合させることを提案している。この構成によれば横リブを超えて環状突部を嵌合溝内に嵌着させることが容易である。
【0030】
第7の手段は、基本構成を有し、かつ
栓筒部材16は、脚筒19の上端から内向きフランジ20を介してシール筒部22、23を起立してなる中栓18を、継手筒17の上端部内に、その上端部内面に脚筒を嵌合させることで取り付けてなり、
上記可動底8は、外周部を除く部分を、その栓筒部材16の内表面に応じた形に隆起させることで、上限位置まで達したときに容器2内の内容積が実質的になくなるように形成し、かつ容器2の周壁6下部に、下蓋10の蓋板外周から起立する外筒10cを回動可能に形成し、かつこの外筒の回転操作により押上げ用筒14が上昇して可動底8を押し上げる繰上げ手段を講じている。
【0031】
本手段の第1の特徴は、中栓を、継手筒の上端部内に、換言すれば容器の最も高い位置に配置したことである。本手段の第2の特徴は、可動底の形状を栓筒部材の内表面に対応させるように設計したことである。これらの特徴により内容液の使い残しをさらに少なくすることができる。
【0032】
第8の手段は、第7の手段を有し、かつ
上記周壁6の下部である非回動側と、下蓋又は下蓋とともに回動する回動側との一方に等角的に配置した第1係合突部7を、他方に第1係合突部を乗り越える第2係合突部13とをそれぞれ設け、下蓋の外筒10cを手に回転させたときに、乗り越えの感触が手に残るように構成している。
【0033】
本手段は、容器の構造のうち外筒に連なる回動部分と周壁を含む非回転部分とに強制的に乗り越え可能な第1、第2係合突部を設けることで、一定角度を回転させたときにクリック感を生ずるように構成している。なお、このクリック機能に伴い、外筒を通常操作とは逆方向に回転することで、塗布部に過剰に送り込んだ内容液を容器側へ吸い戻すことが可能に構成することもできる。そのためには押上げ用筒の上部を可動底の適所に引き下げ可能に係止させればよい。具体的な構成については実施形態の欄で説明する。
【発明の効果】
【0034】
第1の手段、第4の手段、及び第7の手段に係る発明によれば、挿入管32の上端部及び下端部内に導液管36を固定したから、導液管を細くすることができ、更に容器内に可動底を設けたから、内容液の使い残しを少なくできる。
【0035】
第1の手段に係る発明によれば、挿入管が下限領域に達するまでは導液管36の下部が栓筒部材16の上部に遊嵌されているので、中栓18内への導液管36の螺合により導液管36が損傷することがない。
【0036】
第2の手段に係る発明によれば、中栓18が導液管36を全周に亘って均等な力で抱持するようにしたから、導液管36の管孔が塞がってしまうことを防止できる。
【0037】
第3の手段に係る発明によれば、弾性シール筒部22に比べて拡開筒部28の肉厚としたから、弾性シール筒部22をより確実に導液管36外面にシールさせることができる。
【0038】
第4の手段に係る発明によれば、中栓及び挿入管を一度に容器側の継手筒に取り付けることができて便利であるとともに、中栓を挿入管にセットした状態で導液管の挿通状態を試験することができ、有用性が高まりかつ最終組付け時の工程数を減らすことができる。
【0039】
第5の手段に係る発明によれば、挿入管を継手筒に螺着させるときの挿入管32と中栓18との摩擦力が中栓と継手筒との摩擦力よりも大きくなるようにしたから、捩れ力が中栓から導液管36へ伝わることを防止できる。
【0040】
第6の手段に係る発明によれば、下向き段部35aと横リブ35bとの間に嵌合溝35を形成したから、下方管部32a及び状肩部32b内への中栓18の装着が容易である。
【0041】
第7の手段に係る発明によれば、可動底8の形状を栓筒部材の内面に対応させたから、内容液の使い残しをより少なくすることができる。
【0042】
第8の手段に係る発明によれば、外筒10cの回転により等間隔的にクリック感を生ずるようにしたから、内容液の定量塗布が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る塗布器具の全体縦断面図である。
【図2】図1塗布器具の要部拡大断面図である
【図3】図1塗布器具のIII−III方向横断面図である。
【図4】図1塗布器具の主要部材の断面図である。
【図5】図1塗布器具の組立時の作用説明図である。
【図6】図1塗布器具の使用時の作用説明図である。
【図7】本発明の第2の実施形態に係る塗布器具の全体縦断面図である。
【図8】図7の塗布器具の要部拡大図である。
【図9】図7の塗布器具の挿入管内に中栓を装着する作業の説明図である。
【図10】図7の塗布器具の挿入管内に中栓を装着した状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下図面に従って本発明の塗布器具の実施形態を説明する。この塗布器具は、容器2と、挿入管32と、導液管36と、塗布体40とで構成している。
【0045】
容器2は、容器体4と、下蓋10と、回転筒12と、押上げ用筒14と、栓筒部材16とで構成している。これら各部材は合成樹脂材で形成することができる。
【0046】
上記容器体4は、略直筒形(図示例では円筒形)の周壁6と、この周壁内部を上昇可能な可動底8とで形成している。可動底8は、後述の栓筒部材の下面と対応して中央部が隆起した形状とし、可動底8が上限位置に達したときに可動底8と栓筒部材との間の液体を残らず導液管側へ送り出すことができるようにすることが望ましい。また可動底8は軟材質で形成するとよい。
【0047】
上記下蓋10は、蓋板10aの外周及び内周から長い外筒10c及び短い内筒10bをそれぞれ起立している。外筒10cは操作筒として周壁6の下部外面に嵌合されている。
【0048】
上記回転筒12は、内筒10bの外面から起立しており、内筒に対して廻り止めすることで、下蓋と連動して回転可能としている。回転筒の外面にはネジ溝が形成されている。回転筒の下部には通気孔を穿設している。なお、図3に示すように周壁6の下端部内周面には等角的に複数の第1係合突部7を、回転筒12の下端部外周面に第1係合突部を乗り越え可能な第2係合突部13をそれぞれ形成している。こうすることで外筒を回転させるときにクリック感を生ずる。従って一定数のクリック感が生ずるように外筒を回転させることで、所定量の内容液を塗布することができる。
【0049】
上記押上げ用筒14は、周壁6及び回転筒12のうち各下端部を除く部分の間に嵌挿されており、筒壁の上端は可動底8の下面に当接している。押上げ用筒14の内面は上記回転筒12と螺合されており、また、押上げ用筒14の外面と周壁6の内面とには回り止め用のリブが形成されている。これにより下蓋の外筒10cを回すと、押上げ用筒14がネジ機構により上昇するようになっている。図示例では、押下げ用筒14の上端部を可動底8の外周部下端に係止させている。従って外筒10cを注出操作時とは逆方向に回転させると、塗布部44に送った内容液を容器2内に吸い戻すことができる(バックサックション)。例えば下蓋を1回クリックすべきところを誤まって2回クリックした場合に下蓋を逆回転させることで、正しい塗布量を塗布面に塗布することができる。
【0050】
上記栓筒部材16は、別体である継手筒17と中栓18とで形成としている。
【0051】
この継手筒17は、周壁と挿入管との継手であり、その筒壁下半部は周壁6上部内に液密に嵌合されている。
【0052】
また中栓18は、継手筒17の内面と導液管36外面との間の空隙を液密に塞ぐ機能を有する筒形の中栓である。この機能を果すために、中栓18は、図5に示す如く継手筒17内面への嵌合用の脚筒19の上端から、内向きフランジ20を介して弾性シール筒部22を起立している。また、この弾性シール筒部22の上端から斜め上外方へ拡開筒部28を突出している。弾性シール筒部22は、弾性的に縮径可能な肉厚に形成しており、この縮径により弾性シール筒部内面で導液管36の外面をシール可能に設けている。弾性シール筒部の形状は円筒形とすることが望ましい。そうすることで、全周に亘って均等な縮小が可能となり、均一なシール力が発揮されるからである。また図示例では、図4に示す如く弾性シール筒部22の下端部外面に凹溝24を周設しており、弾性シール筒部の変形を容易としている。また、弾性シール筒部22の内面には小さなシール突条25を周設してシール性を高めるようにしてもよい。上記拡開筒部28は、弾性シール筒部22よりも肉厚としており、拡開筒部28の上端外周面を第1当接部29に形成している。もっとも第1当接部の形状は適宜変更することができ、例えば直筒状の筒壁外面に当接用リブを周設しても構わない。
【0053】
挿入管32は、全体として筒形であり、大径の下方管部32aの上端からテーパ状の肩部32bを介して細長い上方管部32cを起立しており、この上方管部の上端部を小内径の口筒部33に形成している。上記テーパ状の肩部32bの内面には、第2当接部34を環状に周設している。図示の第2当接部34は、肩部の内周面を浅くカットしてなる、下向きの段差として形成している。しかしながら、前記第1当接部を内方へ押込み可能であればどのような形状でもよい。
【0054】
導液管36は、上記口筒部33内へ上部を嵌着させて、この口筒部から弾性シール筒部22内へ垂下している。また導液管36の上端部は口筒部より上方へ突出している。
【0055】
塗布体40は、図1に示す如く上記口筒部33外面に嵌着した基部42と、この基部に付設した塗布部44とを有する。塗布部44は上記導液管36と連通している。図示例では塗布部を覆うキャップ46を塗布部の根元部分に嵌合している。塗布部は刷毛などで形成することができる。
【0056】
上記構成において、下蓋10の外筒10cを回転させると図6に示す如く押上げ用筒14が上昇して可動底8を押し上げ、可動底と栓筒部材との間の液体が導液管を経て塗布部44に含浸される。そこでキャップを取って、被塗布面に塗布部を当接すればよい。
【0057】
この容器の組立工程において、挿入管32の下方管部32aを継手筒17の上半部分に螺合するときに、図5に示すように第2当接部34が第1当接部29に当接するまでは、導液管36は挿入管32とともに回転しながらスムーズに弾性シール筒部22内へ挿入されていく。何故なら導液管36の外面と弾性シール筒部22の内面との間に遊びΔAがあるからである。従って導液管36が捻られることがない。さらに挿入管32及び導液管36を下降させていくと、第2当接部34が第1当接部29に当接することで、拡開筒部28を介して弾性シール筒部22が内方へ押し込まれる。これにより弾性シール筒部22の内面が導液管36の外面に密着され、シールする。
【0058】
図7から図10は、本発明の第2の実施形態を示している。本実施形態は、第1の実施形態の構成のうち中栓及び中栓の回りの構造を変更したものである。第1実施形態と共通する構成については同一の符号を用いることで解説を省略する。
【0059】
本実施形態の中栓18は、図10に示す如く継手筒17へ螺合する前の挿入管32に組み付け、塗布器具の組立時に中栓18及び挿入管32を一度に継手筒17側へ取り付けることが可能に構成している。図10は、塗布体と通液菅と導液管と中栓とが一体となったモジュール部品の下半部を示している。当該部品の上部は図7と同じなので省略する。
【0060】
まずこのような構成とした理由について説明する。例えば金属製の導液管36を中栓18の筒孔27内に差し込もうとしたときには、導液管の先端部が中栓の樹脂肌を削って管孔が詰まってしまう可能性がある。そうした製品不良を防ぐためには導液管が通じているか否かの試験(通動試験)を行う必要がある。本実施形態のような中栓付きの挿入管の先部に塗布体を付設した構造のものは、一つの部品としてモジュール化され、製造メーカーからユーザーへ流通する可能性がある。従って中栓18及び導液管36を挿入管にセットした段階で通動試験を行うことができれば有利である。
【0061】
この中栓18は、継手筒内面への嵌合用の脚筒19を有し、この内向きフランジ20の内周からシール突条25付きのシール筒部23を起立している。このシール筒部内には、導液管36の下端部を液密に嵌合している。第1実施形態の弾性シール筒部と名称を区別している理由は、本実施形態では内方押し込みによりシール筒部が弾性的に縮径するという機能を必要としていないからである。もっともシール筒23が弾性を有するものであっても構わない。このシール筒23の筒孔27の上部は、上方に拡開するように形成し、導液管36の挿入を容易としている。また脚筒の上端から側外方へ鍔部を突出して、この鍔部の外周から直筒形の環状突部26を起立している。図示例では、この環状突部26の下面内周部及び脚筒19の外面上部に亘って、肉厚の大外径部30を周設している。この大外径部30は、図8に示すように大外径部の下面に継手筒17の上端面が突き当たり、かつ大外径部の外周面に横リブが当接するように形成している。
【0062】
上記挿入管32の内面には下方管部32aとテーパ状肩部32bとの境目付近に位置して下向き段部35aを周設するとともに、この下向き段部から一定間隔を存して横リブ35bを周設している。そしてこれら下向き段部35aと横リブ35bとの間に嵌合溝35を形成する。この嵌合溝35の上下巾は環状突部26の上下巾と同じとし、嵌合溝35内に環状突部26を強固に嵌着することができるように形成する。そして嵌合溝35内に環状突部を嵌着した状態での嵌合溝及び環状突部の摩擦面間の摩擦力が、継手筒上半内面を脚筒が下降するときの継手筒及び脚筒の摩擦面間の摩擦力より大きくなるように、環状突部及び脚部の外径及び各摩擦面の摩擦係数を設計する。
【0063】
上記構成において、容器を組み立てる際には、図9に矢示する如く中栓を挿入管32内に挿入する。そうすると図10に示すように導液管36はシール筒部23の筒孔27内に液密に挿入され、また環状突部26は、上記横リブ35bを乗り越えて、嵌合溝35内に嵌着する。この状態で中栓18付きの挿入管32を継手筒17に螺合すると、中栓18の脚筒19は継手筒内面を回転しながら下降することになる。このとき脚筒19の外面と継手筒17内面との間には摩擦力が生ずるが、この摩擦力に対して挿入管32の嵌合溝35と環状突部26との摩擦力が対抗する。その結果として、中栓18は、挿入管32及び導液管に対して相対的に回転しないので、中栓から導液管36へ捻れの力が伝達することはない。従って導液管36が捻れによるダメージを受けるおそれを低減することができる。
【0064】
こうして塗布体及び導液管を備えた挿入管に中栓を組み込んだ後に、これを一つのモジュール部品として通動試験を行うことができる。そして内容液を容器に充填した後に既に試験を行ったモジュール部品を装着すれば、塗布器具として完成するので、製造工程を減らすことができる。
【符号の説明】
【0065】
2…容器 4…容器体 6…周壁 7…第1係合突部
8…可動底 10…下蓋 10a…蓋板 10c…外筒
10b…内筒 12…回転筒 13…第2係合突部 14…押上げ用筒
16…栓筒部材 17…継手筒 18…中栓 19…脚筒
20…内向きフランジ 22…弾性シール筒部 23…シール筒部
24…凹溝 25…シール突条 26…環状突部 27…筒孔
28…拡開筒部 29…第1当接部 30…大外径部
32…挿入管 32a…下方管部 32b…肩部 32c…上方管部
33…口筒部 34…第2当接部 35…嵌合溝 35a…下向き段部
35b…横リブ 36…導液管 40…塗布体
42…基部 44…塗布部 46…キャップ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦筒形の容器2から、口腔等の塗布箇所への挿入に適した細身であって先部に塗布体40を付した挿入管32を起立し、かつ挿入管内に、容器2と塗布体40とを連通する導液管36を、挿入管の両端部側で固定して挿通するとともに、容器2の周壁6内に可動底8を設けており、
上記容器2には、上記周壁6に下半部を嵌着した継手筒17と継手筒内方を塞ぐ中栓18とで形成する栓筒部材16を設け、かつ上記挿入管32の下方管部32aを大内径に形成して、この下方管部32aを上記継手筒17の上半部に螺合させるとともに、上記中栓18に開口した筒孔27内に上記導液管36を液密に嵌合させてなる塗布器具であって、
上記中栓18の外周及びこの上部付近の挿入管部分の内周を、挿入管32を下限領域まで押し下げたときに相互に圧接する第1、第2当接部29,34とし、
これら第1、第2当接部の圧接により中栓18が内方へ押し込まれ、この上部内面と導液管36の外面とが液密にシールするとともに、上記挿入管32が下限領域に達するまでは、導液管36の下部が中栓18内に遊嵌されるように構成したことを特徴とする、塗布器具。
【請求項2】
上記第1、第2当接部29,34をそれぞれ導液管36で囲むように周設することで、上記中栓18が導液管36を全周に亘って均等な力で抱持するようにしたことを特徴とする、請求項1記載の塗布器具。
【請求項3】
上記中栓18は、上記導液管36を囲む弾性シール筒部22の上端から、上外方への拡開筒部28を突出するとともに、この拡開筒部28の上端外周を第1当接部29とし、この第1当接部29が挿入管32の内面に存する第2当接部34と当接可能とし、この当接により弾性シール筒部22を内方押込みできるように、弾性シール筒部22に比べて拡開筒部28を肉厚としたことを特徴とする、請求項2記載の塗布器具。
【請求項4】
縦筒形の容器2から、口腔等の塗布箇所への挿入に適した細身であって先部に塗布体40を付した挿入管32を起立し、かつ挿入管内に、容器2と塗布体40とを連通する導液管36を、挿入管の両端部側で固定して挿通するとともに、容器2の周壁6内に可動底8を設けており、
上記容器2には、上記周壁6に下半部を嵌着した継手筒17と継手筒内方を塞ぐ中栓18とで形成する栓筒部材16を設け、かつ上記挿入管32の下方管部32aを大内径に形成して、この下方管部32aを上記継手筒17の上半部に螺合させるとともに、上記中栓18に開口した筒孔27内に上記導液管36を液密に嵌合させてなる塗布器具であって、
上記中栓18は、継手筒17内面への嵌合用の脚筒19と、この脚筒19の上部と連続して上記導液管を液密に嵌挿することが可能に形成した直筒形のシール筒部23と、このシール筒の回りに囲成した環状突部26とを有し、
かつ上記挿入管32の内面には、上記環状突部26と嵌合する嵌合溝35を周設し、
かつ中栓18と挿入管32とは、上記挿入管32を容器2の継手筒17に螺合する前の段階で、中栓18は環状突部26と嵌合溝35との嵌合により挿入管32側に装着するとともに、この装着状態でシール筒部23内に予め導液管36が液密に嵌合可能に形成されていることを特徴とする、塗布器具。
【請求項5】
さらに挿入管32が継手筒17上半部へ螺着させるときに中栓18と挿入管32との摩擦力が中栓18の脚筒19と継手筒17との摩擦力よりも大きくなるように設計したことを特徴とする、請求項4記載の塗布器具。
【請求項6】
大径の下方管部32aからテーパ状肩部32bを介して細長い上方管部32cを起立するとともに、これら下方管部32a及びテーパ状肩部32b内に中栓を配置し、
下方管部32aの内面上端側に下向き段部35aを形成し、この下向き段部から一定距離を離して横リブ35bを周設するとともに、これら下向き段部35aと横リブ35bとの間の筒壁部分で嵌合溝35を形成したことを特徴とする、請求項4又は請求項5記載の塗布器具。
【請求項7】
縦筒形の容器2から、口腔等の塗布箇所への挿入に適した細身であって先部に塗布体40を付した挿入管32を起立し、かつ挿入管内に、容器2と塗布体40とを連通する導液管36を、挿入管の両端部側で固定して挿通するとともに、容器2の周壁6内に可動底8を設けており、
上記容器2には、上記周壁6に下半部を嵌着した継手筒17と継手筒内方を塞ぐ中栓18とで形成する栓筒部材16を設け、かつ上記挿入管32の下方管部32aを大内径に形成して、この下方管部32aを上記継手筒17の上半部に螺合させるとともに、上記中栓18に開口した筒孔27内に上記導液管36を液密に嵌合させてなる塗布器具であって、
栓筒部材16は、脚筒19の上端から内向きフランジ20を介してシール筒部22、23を起立してなる中栓18を、継手筒17の上端部内に、その上端部内面に脚筒を嵌合させることで取り付けてなり、
上記可動底8は、外周部を除く部分を、その栓筒部材16の内表面に応じた形に隆起させることで、上限位置まで達したときに容器2内の内容積が実質的になくなるように形成し、かつ容器2の周壁6下部に、下蓋10の蓋板外周から起立する外筒10cを回動可能に形成し、かつこの外筒の回転操作により押上げ用筒14が上昇して可動底8を押し上げる繰上げ手段を講じたことを特徴とする、塗布器具。
【請求項8】
上記周壁6の下部である非回動側と、下蓋又は下蓋とともに回動する回動側との一方に等角的に配置した第1係合突部7を、他方に第1係合突部を乗り越える第2係合突部13とをそれぞれ設け、下蓋の外筒10cを手に回転させたときに、乗り越えの感触が手に残るように構成したことを特徴とする、請求項7記載の塗布器具。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−200864(P2010−200864A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−47382(P2009−47382)
【出願日】平成21年2月27日(2009.2.27)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】