説明

塗布型シリカ系被膜形成用組成物、この塗布型シリカ系被膜形成用組成物を用いたシリカ系被膜、及びそれを用いた半導体装置

【課題】 シリカ系被膜樹脂が、高濃度でも保管安定性に優れ、得られるシリカ系被膜の機械強度が高く、基材との密着力が確保し易いシリカ系被膜形成用組成物を提供する。
【解決手段】 (A)下記一般式(1)及び(2)にて表されるアルコキシシラン、
【化1】


【化2】


[R、Rは炭素数1〜3の有機基を示し、同一でも異なっていてもよい。]
(B)非プロトン性有機溶媒、(C)炭素数3〜6の一価のアルコール、(D)酸触媒とを、必須成分とし、前記(C)成分の添加質量が、前記(A)成分の加水分解・重縮合反応を経て得られるシリカ樹脂質量の2〜3倍である、塗布型シリカ系被膜形成用組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルコキシシランのゾル−ゲル法による塗布型シリカ系被膜形成用組成物、この塗布型シリカ系被膜形成用組成物を用いたシリカ系被膜及びそれを用いた半導体装置に関するものである。より詳しくは、微細スペースへの埋め込み性に優れ、下地基板の段差を平坦化するのに十分な厚膜形成が可能で、半導体基板、ガラス基板等の基板と良好な密着性を有し、ストリエーションの発生がなく、且つ溶液安定性に優れる塗布型シリカ系被膜形成用組成物、この塗布型シリカ系被膜形成用組成物を用いたシリカ系被膜及びそれを用いた半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シリカ系被膜は、絶縁性・耐熱性・透明性・耐磨耗性等に優れていることから、様々な分野で適用されている。例えば、半導体デバイスにおいては、絶縁性・耐熱性の点から、配線間の絶縁膜用途や素子分離膜として適用されており、液晶デバイスにおいては、絶縁性・耐熱性・透明性の点から、素子の保護膜として適用されている。
【0003】
これらのシリカ系被膜を得る方法としては、一般的に気層成長法と塗布法が知られている。半導体分野では、気層成長法が広く適応されているが、特殊な装置が必要であること、近年の処理基材の大型化に伴う装置コストの増大等の課題がある。更に、近年の半導体デバイスは高集積化・高機能化のため、配線間・素子間の微細化が進行しており、従来の気層成長法では、微細スペース部への埋め込みが困難となってきている。
これらの課題に対し、比較的簡便な装置で成膜でき、気層成長法よりも微細スペースへの埋め込みに優位性がある塗布法が見直されている。塗布法でシリカ系被膜を得る代表的な方法としては、アルコキシシランのゾル−ゲル法で作製した塗布液を基材へスピンコートするものが挙げられる(特許文献1参照)。
【0004】
ところで、最先端の基材においては、微細スペース(20nm)で、深さ800nmのような、非常にアスペクト比が高い箇所と、幅広スペース(1000nm)で、アスペクト比が低い箇所を、同一面内に有しているような凹凸基材がある。そのため、埋め込み性に優位性がある塗布法には、このようなアスペクト比が大きく異なる段差を、同一面内に有する基板に対して、一回の塗布で基材全体を平坦化できることが要求されている。基材全体の平坦化は、プロセス工程数の低減やフォトリソ工程等に有利となる。
【0005】
前述した、アスペクト比が大きく異なる段差を有する基材を、一回の塗布で平坦化するには、凹凸の高さよりも厚くシリカ系被膜を形成することが有効な方法である。とりわけ、幅広スペースの段差を平坦化するためには、その深さよりも厚い膜厚が必要となる。塗布法で十分な膜厚を得る方法としては、塗布液中に含まれるシリカ系被膜樹脂濃度を高くすることが有効である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭55−34258号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、ゾル−ゲル法を用いた塗布液中のシリカ系被膜樹脂濃度を高くすると、塗布液の保管安定性が低下することが一般的に知られている。
安定性低下の一例としては、スピンコート成膜において、同一回転数にも関わらず、シリカ系被膜の膜厚が塗布液合成後からの経日に伴って、大きく変化するような場合である。このような現象を誘発する塗布液では、工業的に使用することは困難である。
【0008】
一方、シリカ系被膜樹脂濃度を高くしながら、保管安定性を向上させる方法としては、塗布液中でのシリカ系樹脂の反応性を抑制することが有効な方法である。このような手法としては、ゾル−ゲル法の加水分解に用いる水量を少なくすることや、シリカ系被膜樹脂の末端の一部に、フェニル基等の比較的嵩高い有機基を導入することが有効と考えられる。
但し、加水分解に用いる水量を少なくすると、ゾル−ゲル反応が十分に進行せずシリカ系被膜が得られにくくなる。又、フェニル基等の比較的嵩高い有機基の導入は、シリカ骨格の密度の低下を招くため、得られるシリカ系被膜の機械強度が低下することや、基板との密着力低下が懸念される等、デバイス作製プロセス上やデバイス特性で問題が発生する可能性が高くなる。
【0009】
本発明では、シリカ系被膜樹脂が、高濃度でも保管安定性に優れ、得られるシリカ系被膜の機械強度が高く、基材との密着力が確保し易いシリカ系被膜形成用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、以下のものに関する。
(1)(A)下記一般式(1)及び(2)にて表されるアルコキシシラン、
【0011】
【化1】

【0012】
【化2】

[R、Rは炭素数1〜3の有機基を示し、同一でも異なっていてもよい。]
【0013】
(B)非プロトン性有機溶媒
(C)炭素数3〜6の一価のアルコール
(D)酸触媒
とを、必須成分とし、前記(C)成分の添加質量が、前記(A)成分の加水分解・重縮合反応を経て得られるシリカ樹脂質量の2〜3倍である、塗布型シリカ系被膜形成用組成物。
(2)項(1)において、(A)成分中に占める一般式(1)、(2)のモル比率(1)/(2)が、0.3〜1.7の範囲である、塗布型シリカ系被膜形成用組成物。
(3)項(1)又は(2)に記載の塗布型シリカ系被膜形成用組成物を用いて形成される、シリカ系被膜。
(4)項(3)に記載のシリカ系被膜が、層間絶縁層として用いられる半導体装置。
【0014】
本発明では、シリカ樹脂の末端の一部がフェニル基ではなく、メチル基であってもシリカ樹脂高濃度時の保管安定性に優れる。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、上記構成により、厚膜のシリカ系被膜を得る際の塗布液の保管安定性が高く、機械強度及び基材との密着力に優れる塗布型シリカ系被膜を得ることが可能となる。
保管安定性が高い理由としては、(A)成分より得られるシリカ樹脂の末端の一部がメチル基であること、且つ(C)成分のアルコールが、塗布液中のシリカ樹脂の反応性を抑制するためと考えられる。
一方、機械強度及び基材との密着力に優れるシリカ系被膜が得られる理由は、(A)成分より得られるシリカ樹脂の末端の一部が、メチル基であるため、有機基の立体的空間が小さく、シリカ骨格の低密度化が進行しにくいこと、及び基材と相互作用するシラノール基の立体的な妨害を小さくできることによると考えられる。
そして、本発明のシリカ系被膜は、微細スペースへの埋め込み性にも優れるため、様々なアスペクト比を同一面内に有する基板全体を、平坦化することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
本発明は、(A)成分として、先に述べた一般式(1)及び(2)にて表される化合物を、必須成分とする。
<一般式(1):テトラアルコキシシラン>
一般式(1)にて表されるテトラアルコキシシランとしては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラ−iso−プロポキシシラン等が挙げられ、中でも反応性や反応副生成物の点から、テトラエトキシシランを用いるのが好ましい。
アルコキシキ基の炭素数は、1〜3であり、4以上になると、アルコキシシランの加水分解・重縮合性が低下する傾向であるため、あまり好ましくない。
【0017】
<一般式(2):メチルトリアルコキシシラン>
一般式(2)にて表されるメチルトリアルコキシシランとしては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリ−n−プロポキシシラン、メチルトリ−iso−プロポキシシラン等が挙げられ、中でも反応性や反応副生成物の点から、メチルトリエトキシシランを用いるのが好ましい。
アルコキシキ基の炭素数は、1〜3であり、4以上になると、アルコキシシランの加水分解・重縮合性の低下する傾向であるため、あまり好ましくない。
【0018】
<化合物の混合比>
一般式(1)、(2)の化合物の混合比は、(1)/(2)のモル比率が、0.3〜1.7の範囲となることが好ましい((1)、(2)のモル比率の合計は1となる)。
更には、(1)/(2)のモル比率が0.3〜1.2の範囲であるように組成を決定することが特に好ましい。(1)/(2)の値が大きいほど、得られるシリカ系被膜の機械強度は高くなるが、保管安定性は低下する傾向となる。機械強度は10GPa以上あることが好ましい。
【0019】
<非プロトン性有機溶媒>
本発明は、(B)成分として、非プロトン性有機溶媒を必須成分とする。反応の均一化、反応速度の制御性、及び得られるシリカ系被膜の膜質向上(電気特性の向上等)に効果が期待できるためである。
非プロトン性溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチル−n−プロピルケトン、メチル−iso−プロピルケトン、メチル−n−ブチルケトン、メチル−iso−ブチルケトン、メチル−n−ペンチルケトン、メチル−n−ヘキシルケトン、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、ジ−iso−ブチルケトン、トリメチルノナノン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、メチルシクロヘキサノン、2,4−ペンタンジオン、アセトニルアセトン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン等のケトン系溶媒;ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル、メチル−n−プロピルエーテル、ジ−iso−プロピルエーテル、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメチルジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルモノ−n−プロピルエーテル、ジエチレングリコールメチルモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールジ−n−プロピルエーテル、ジエチレングリコールジ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールメチルモノ−n−ヘキシルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールメチルエチルエーテル、トリエチレングリコールメチルモノ−n−ブチルエーテル、トリエチレングリコールジ−n−ブチルエーテル、トリエチレングリコールメチルモノ−n−ヘキシルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル、テトラジエチレングリコールメチルエチルエーテル、テトラエチレングリコールメチルモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールジ−n−ブチルエーテル、テトラエチレングリコールメチルモノ−n−ヘキシルエーテル、テトラエチレングリコールジ−n−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールジブチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルモノ−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールジ−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールジ−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルモノ−n−ヘキシルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールジエチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルモノ−n−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールジ−n−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルモノ−n−ヘキシルエーテル、テトラプロピレングリコールジメチルエーテル、テトラプロピレングリコールジエチルエーテル、テトラジプロピレングリコールメチルエチルエーテル、テトラプロピレングリコールメチルモノ−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールジ−n−ブチルエーテル、テトラプロピレングリコールメチルモノ−n−ヘキシルエーテル、テトラプロピレングリコールジ−n−ブチルエーテル等のエーテル系溶媒;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸i−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸i−ブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸n−ペンチル、酢酸sec−ペンチル、酢酸3−メトキシブチル、酢酸メチルペンチル、酢酸2−エチルブチル、酢酸2−エチルヘキシル、酢酸ベンジル、酢酸シクロヘキシル、酢酸メチルシクロヘキシル、酢酸ノニル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、酢酸ジエチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジ酢酸グリコール、酢酸メトキシトリグリコール、プロピオン酸エチル、プロピオン酸n−ブチル、プロピオン酸i−アミル、シュウ酸ジエチル、シュウ酸ジ−n−ブチル等のエステル系溶媒;エチレングリコールメチルエーテルプロピオネート、エチレングリコールエチルエーテルプロピオネート、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコール−n−ブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールプロピルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールエチルエーテルアセテート等のエーテルアセテート系溶媒;アセトニトリル、N―メチルピロリジノン、N―エチルピロリジノン、N―プロピルピロリジノン、N―ブチルピロリジノン、N―ヘキシルピロリジノン、N―シクロヘキシルピロリジノン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルスルホキシド等が挙げられる。これらは、1種類を単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0020】
<非プロトン性有機溶媒の配合割合>
非プロトン性有機溶媒の配合割合は、一般式(1)、(2)の加水分解・重縮合反応は、シロキサン樹脂濃度が、3〜40質量%となるような量で行うことが好ましい。この溶媒の配合割合が3質量%未満では、反応が進行しにくい傾向があり、40質量%を超えると、実質的に溶媒が存在しない状況下での反応となり、局所反応による悪影響が懸念される。
【0021】
<炭素数3〜6の一価のアルコール>
本発明は、(C)成分として、炭素数3〜6の一価のアルコールを必須成分とする。アルコール添加の主な狙いは、塗布液の保管安定性を向上させることにある。このため、アルコールの添加タイミングは、一般式(1)、(2)の加水分解・重縮合反応終了後が、好ましい。
【0022】
本発明で用いる一価のアルコールは、炭素数が、3〜6のものである。炭素数1〜2の一価のアルコールは沸点が低く、揮発性が高いため、スピンコート法等で塗布した際に得られる膜にムラ(ストリエーション)が発生し易く、本発明の一つの効果である平坦性に悪影響を及ぼす。一方、炭素数7以上の一価のアルコールでは、沸点が高くなり、揮発性が低いために、やはりスピンコート法等で塗布した際に得られる膜にムラが発生し易くなる。以上のような理由から、ムラが発生せずに保管安定性を向上させる炭素数3〜6の一価のアルコールを、本発明に用いる。
【0023】
ところで、一般式(1)、(2)の加水分解・重縮合反応の副生成物としてアルコールが生成する。本発明ではエトキシ基のアルコキシシランを推奨していることから、エタノールが副生成物として生成するが、この場合、生成したエタノールを留去等で除去した後、炭素数3〜6の一価のアルコールを所定量添加する。
【0024】
一価のアルコールの添加量は、一般式(1)、(2)の加水分解・重縮合反応を経て得られるシリカ樹脂質量の、2〜3倍とする。アルコール添加量がシリカ樹脂質量の2倍未満では、保管安定性向上に効果が発揮されにくい。一方、アルコール添加量がシリカ樹脂重量の3倍を超えて多いと、アルコール添加のために留去すべき溶媒量が多くなり、シロキサン溶液のゲル化を誘発する恐れや、得られるシリカ系被膜の電気特性が悪化する傾向等がある。
【0025】
炭素数3〜6の一価のアルコールとしては、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、2−ブタノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、2−メチル−1−ブタノール、3−メチル−1−ブタノール、2−メチル−2−ブタノール、3−メチル−2−ブタノール、2,2−ジメチル−1−プロパノール、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、3−ヘキサノール等が挙げられる。これらは、1種類を単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0026】
<酸触媒>
本発明は、(D)成分として、酸触媒を必須成分とする。加水分解・重縮合反応に用いられる触媒としては、例えば、酸触媒、アルカリ触媒、金属キレート化合物等が挙げられるが、溶液安定性等の点より酸触媒を用いることが好ましい。
酸触媒としては、例えば、有機酸及び無機酸等が挙げられる。有機酸としては、例えば、蟻酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、マロン酸、コハク酸、酒石酸、リンゴ酸、乳酸、クエン酸、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、シュウ酸、アジピン酸、セバシン酸、酪酸、オレイン酸、ステアリン酸、リノール酸、リノレイン酸、サリチル酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、p−アミノ安息香酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルフォン酸、トリフルオロエタンスルフォン酸等が挙げられる。無機酸としては、例えば、塩酸、燐酸、硝酸、ホウ酸、硫酸、フッ酸等が挙げられる。これらは1種類を単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0027】
<酸触媒の使用量>
酸触媒の使用量(モル比率)は、一般式(1)のモル比率をA、一般式(2)のモル比率をBとした時に、〔(4A+3B)/3000〕〜〔(4A+3B)/10〕の範囲が好ましく、〔(4A+3B)/3000〕〜〔(4A+3B)/100〕の範囲が更に好ましい。この範囲外であると、反応が十分に進行しないか、又は、反応が進行しすぎてゲル化してしまう可能性が、徐々に高くなる。
【0028】
<加水分解・重縮合反応の使用する水量>
上記一般式(1)、(2)の化合物を、加水分解・重縮合反応させる際に用いる水の量(モル比率)は、一般式(1)のモル比率をA、一般式(2)のモル比率をBとした時に、〔(4A+3B)/2〕〜〔(4A+3B)×2〕の範囲が好ましく、〔(4A+3B)/2〕〜〔(4A+3B)×1〕の範囲が更に好ましい。この範囲外であると、反応が十分に進行しにくい、又は、反応が進行しすぎてゲル化してしまう可能性が、徐々に高くなる。
【0029】
<重量平均分子量>
加水分解・重縮合反応して得られる塗布型シリカ系被膜形成用組成物(シロキサン樹脂)は、溶媒への溶解性、機械特性、成形性等の観点から、重量平均分子量(Mw)が、500〜20,000であることが好ましく、1,000〜10,000であるとより好ましい。この重量平均分子量が500未満では、シリカ系被膜の成膜性が徐々に劣る傾向にあり、この重量平均分子量が20,000を超えると、溶媒との相溶性が徐々に低下する傾向にある。
尚、本明細書において、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、「GPC」と言う。)により測定され且つ標準ポリスチレンの検量線を使用して換算されたものである。
【0030】
<重量平均分子量の測定>
重量平均分子量(Mw)は、例えば、以下の条件によるGPCにより測定することができる。
(条件)
試料:シリカ系被膜形成用組成物 10μL
標準ポリスチレン:東ソー株式会社製標準ポリスチレン(分子量;190,000、17,900、9,100、2,980、578、474、370、266)
検出器:株式会社日立製作所製、RI−モニター、商品名「L−3000」
インテグレーター:株式会社日立製作所製、GPCインテグレーター、商品名「D−2200」
ポンプ:株式会社日立製作所製、商品名「L−6000」
デガス装置:昭和電工株式会社製、商品名「Shodex DEGAS」
カラム:日立化成工業株式会社製、商品名「GL−R440」、「GL−R430」、「GL−R420」をこの順番で連結して使用
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
測定温度:23℃
流速:1.75mL/分
測定時間:45分
【0031】
<塗布液中のシロキサン樹脂の濃度>
深さ:800nmの凹凸を平坦化できる膜厚を得るために、少なくとも膜厚:1μmが必要であるが、このような膜厚を得るためには、塗布液中に含まれるシリカ系被膜樹脂の濃度は、15〜25質量%の範囲が好ましい。シリカ系樹脂濃度が15質量%より低い場合では、膜厚:1μmを得ることができず、深さ:800nmの凹凸を平坦化することは困難となる。一方、シリカ系樹脂濃度が25質量%より大きい場合では、本発明の効果をもってしても保管安定性が悪化する傾向となる。
【0032】
<添加剤>
本発明における塗布型シリカ系被膜形成用組成物には、オニウム塩化合物を含有させてもよい。オニウム塩化合物は、シリカ被膜形成時の硬化促進剤としての役割がある。オニウム塩化合物としては、例えば、アンモニウムハイドロオキシド、アンモニウムフルオライド、アンモニウムクロライド、アンモニウムブロマイド、ヨウ化アンモニウム、燐酸アンモニウム塩、硝酸アンモニウム塩、ホウ酸アンモニウム塩、硫酸アンモニウム塩、蟻酸アンモニウム塩、マレイン酸アンモニウム塩、フマル酸アンモニウム塩、フタル酸アンモニウム塩、マロン酸アンモニウム塩、コハク酸アンモニウム塩、酒石酸アンモニウム塩、リンゴ酸アンモニウム塩、乳酸アンモニウム塩、クエン酸アンモニウム塩、酢酸アンモニウム塩、プロピオン酸アンモニウム塩、ブタン酸アンモニウム塩、ペンタン酸アンモニウム塩、ヘキサン酸アンモニウム塩、ヘプタン酸アンモニウム塩、オクタン酸アンモニウム塩、ノナン酸アンモニウム塩、デカン酸アンモニウム塩、シュウ酸アンモニウム塩、アジピン酸アンモニウム塩、セバシン酸アンモニウム塩、酪酸アンモニウム塩、オレイン酸アンモニウム塩、ステアリン酸アンモニウム塩、リノール酸アンモニウム塩、リノレイン酸アンモニウム塩、サリチル酸アンモニウム塩、ベンゼンスルホン酸アンモニウム塩、安息香酸アンモニウム塩、p−アミノ安息香酸アンモニウム塩、p−トルエンスルホン酸アンモニウム塩、メタンスルホン酸アンモニウム塩、トリフルオロメタンスルフォン酸アンモニウム塩、トリフルオロエタンスルフォン酸アンモニウム塩、等のアンモニウム塩化合物等が挙げられる。
【0033】
また、上記アンモニウム塩化合物のアンモニウム部位が、メチルアンモニウム、ジメチルアンモニウム、トリメチルアンモニウム、テトラメチルアンモニウム、エチルアンモニウム、ジエチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、プロピルアンモニウム、ジプロピルアンモニウム、トリプロピルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム、ブチルアンモニウム、ジブチルアンモニウム、トリブチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、エタノールアンモニウム、ジエタノールアンモニウム、トリエタノールアンモニウム等に置換されたアンモニウム塩化合物等も挙げられる。
【0034】
上記したアンモニウム塩以外のオニウム塩として、例えば、ホスホニウム塩、アルソニウム塩、スチボニウム塩、オキソニウム塩、スルホニウム塩、セレノニウム塩、スタンノニウム塩、ヨードニウム塩等が挙げられるが、組成物の安定性の見地からアンモニウム塩であることが好ましく、4級アンモニウム塩であることがより好ましい。
【0035】
上記アンモニウム塩としては、例えば、テトラメチルアンモニウムオキサイド、テトラメチルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムブロマイド、テトラメチルアンモニウムフロライド、テトラブチルアンモニウムオキサイド、テトラブチルアンモニウムクロライド、テトラブチルアンモニウムブロマイド、テトラブチルアンモニウムフロライド、テトラメチルアンモニウム硝酸塩、テトラメチルアンモニウム酢酸塩、テトラメチルアンモニウムプロピオン酸塩、テトラメチルアンモニウムマレイン酸塩、テトラメチルアンモニウム硫酸塩等が挙げられ、シリカ系被膜の電気特性の見地から、テトラメチルアンモニウム硝酸塩、テトラメチルアンモニウム酢酸塩、テトラメチルアンモニウムプロピオン酸塩、テトラメチルアンモニウムマレイン酸塩、テトラメチルアンモニウム硫酸塩等のアンモニウム塩が特に好ましい。
これらは1種類を単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0036】
<オニウム塩の配合割合>
これらオニウム塩の配合割合は、(A)成分の加水分解・重縮合後に得られるシロキサン樹脂の総量に対して、0.001〜5質量%であることが好ましく、0.01〜2質量%であることがより好ましく、0.1〜1質量%であることが更に好ましい。この配合割合が0.001質量%未満では、実質的な効果が得られにくい傾向があり、5質量%を超えると、徐々に組成物の安定性、成膜性等が劣る傾向がある。
また、オニウム塩は、必要に応じて水や溶媒によって溶解或いは希釈して所望の濃度になるよう添加することができる。
更に、添加する時期は、特に限定されないが、例えば、(A)成分の加水分解を行う時点、加水分解中、反応終了時、溶媒留去前後等がある。オニウム塩を水溶液とした場合、そのpHが1.5〜10であると好ましく、2〜8であるとより好ましく、3〜6であると特に好ましい。pHが、1.5〜10の範囲外では、組成物の安定性、成膜性等が劣る傾向がある。
【0037】
<シリカ系被膜の形成>
塗布型シリカ系被膜形成用組成物を用いて、基板上にシリカ系被膜を形成する方法について、成膜性及び膜均一性に優れるスピンコート法を例にとって、以下説明する。但し、シリカ系被膜の形成方法は、スピンコート法に限定されるものではない。
【0038】
(被膜形成)
先ず、塗布型シリカ系被膜形成用組成物を、シリコンウエハ等の基板上に好ましくは500〜5000回転/分、より好ましくは500〜3000回転/分でスピン塗布して、被膜を形成する。この回転数が500回転/分未満では、徐々に膜均一性が悪化する傾向があり、5000回転/分を超えると、徐々に成膜性が悪化する恐れがある。
本発明にて述べる塗布型シリカ系被膜形成用組成物は、0.1〜1.5μmの膜厚に好ましく用いることができる。
シリカ系被膜の膜厚を調整するためには、例えば、(A)成分の加水分解・重縮合反応より得られるシロキサン樹脂の濃度を調整してもよい。また、スピン塗布法を用いる場合、回転数と塗布回数を調整することにより膜厚を調整することもできる。
【0039】
(乾燥・硬化)
次いで、好ましくは100〜300℃、より好ましくは150〜250℃のホットプレート等にて塗布膜中の有機溶媒を乾燥させる。この乾燥温度が低いと、有機溶媒の乾燥が十分に行われない傾向がある。
最終硬化は、有機溶媒が除去された塗布膜を、350〜700℃の加熱温度で焼成して行う。
最終硬化の加熱温度は、350℃未満では十分な硬化が達成されない傾向があり、700℃を超えると、残存してほしい有機基の分解が生じる恐れがある。
最終硬化の際の加熱時間は、2〜60分が好ましく、2〜30分であるとより好ましい。この加熱時間が60分を超えると、入熱量が過度に増大して、徐々に配線金属の劣化が生じる恐れがある。また、加熱装置としては、石英チューブ炉その他の炉、ホットプレート、ラピッドサーマルアニール(RTA)、UV照射アニール、EB照射アニール等の加熱処理装置を用いることが好ましい。
最終硬化は、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガスの雰囲気下で行うことが好ましく、この場合、酸素濃度が1000ppm以下であることが好ましい。
また、上記のようにして形成されたシリカ系被膜を用いた電子部品としては、半導体素子、多層配線板等のシリカ系被膜を有する電子デバイス、液晶用部品等が挙げられる。シリカ系被膜は、半導体素子において、表面保護膜(パッシベーション膜)、バッファーコート膜、層間絶縁膜等として使用することができる。
【0040】
(溶液の保管安定性)
本明細書にて述べる保管安定性とは、膜厚:800nmとなるような回転数でスピンコートした際に、合成直後の膜厚と、室温(25℃)で30日間保管後の膜厚の変化率が、5%以下であることを基準として判断する。すなわち、この膜厚変化率が5%以下であれば、保管安定性に優れると定義する。
【実施例】
【0041】
以下、本発明に係る具体的な実施例について説明するが、本発明はこれらに制限されるものではない。
【0042】
〔実施例1〕
一般式(1)で表わされるアルコキシシランとしてテトラエトキシシラン:21.4gと、一般式(2)で表わされるアルコキシシランとしてメチルトリエトキシシラン:36.8gとを、非プロトン性有機溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート:24.2gに溶解させた溶液中に、酸触媒としてマレイン酸:0.2gを溶解させた水:16.7gを攪拌下で、10分間かけて滴下した。
滴下終了後、2時間反応させた後、2.4質量%のテトラメチルアンモニウム硝酸塩水溶液:0.8gを添加して、0.5時間攪拌しポリシロキサン溶液:100gを得た。
次いで、ロータリーエバポレータを用いて減圧下、温浴中で生成エタノール、低沸点物を留去した。その際の留去量は、エタノールの理論生成量:47.3g以上とした。
その後、炭素数3〜6の一価のアルコールとして1−プロパノール:47.3gと、全量が100gとなるように、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートとを添加し、100gの塗布型シリカ系被膜形成用組成物を作製した。
【0043】
〔実施例2〕
テトラエトキシシラン:21.4gと、メチルトリエトキシシラン:36.8gとを、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート:24.2gに溶解させた溶液中に、マレイン酸:0.2gを溶解させた水:16.7gを攪拌下で、10分間かけて滴下した。
滴下終了後、2時間反応させた後、2.4質量%のテトラメチルアンモニウム硝酸塩水溶液:0.8gを添加して、0.5時間攪拌しポリシロキサン溶液:100gを得た。
次いで、ロータリーエバポレータを用いて減圧下、温浴中で生成エタノール、低沸点物を留去した。その際の留去量は、エタノールの理論生成量:47.3g以上とした。
その後、1−ブタノール:47.3gと、全量が100gとなるように、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートとを添加し、100gの塗布型シリカ系被膜形成用組成物を作製した。
【0044】
〔実施例3〕
テトラエトキシシラン:21.4gと、メチルトリエトキシシラン:36.8gとを、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート:24.2gに溶解させた溶液中に、マレイン酸:0.2gを溶解させた水:16.7gを攪拌下で、10分間かけて滴下した。
滴下終了後、2時間反応させた後、2.4質量%のテトラメチルアンモニウム硝酸塩水溶液:0.8gを添加して、0.5時間攪拌しポリシロキサン溶液:100gを得た。
次いで、ロータリーエバポレータを用いて減圧下、温浴中で生成エタノール、低沸点物を留去した。その際の留去量は、エタノールの理論生成量:47.3g以上とした。
その後、1−ペンタノール:47.3gと、全量が100gとなるように、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートとを添加し、100gの塗布型シリカ系被膜形成用組成物を作製した。
【0045】
〔実施例4〕
テトラエトキシシラン:21.4gと、メチルトリエトキシシラン:36.8gとを、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート:24.2gに溶解させた溶液中に、マレイン酸:0.2gを溶解させた水:16.7gを攪拌下で、10分間かけて滴下した。
滴下終了後、2時間反応させた後、2.4質量%のテトラメチルアンモニウム硝酸塩水溶液:0.8gを添加して、0.5時間攪拌しポリシロキサン溶液:100gを得た。
次いで、ロータリーエバポレータを用いて減圧下、温浴中で生成エタノール、低沸点物を留去した。その際の留去量は、エタノールの理論生成量:47.3g以上とした。
その後、1−ヘキサノール:47.3gと、全量が100gとなるように、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートとを添加し、100gの塗布型シリカ系被膜形成用組成物を作製した。
【0046】
〔実施例5〕
テトラエトキシシラン:16.7gと、メチルトリエトキシシラン:40.3gとを、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート:25.7gに溶解させた溶液中に、マレイン酸:0.19gを溶解させた水:16.2gを攪拌下で、10分間かけて滴下した。
滴下終了後、2時間反応させた後、2.4質量%のテトラメチルアンモニウム硝酸塩水溶液:0.8gを添加して、0.5時間攪拌しポリシロキサン溶液:100gを得た。
次いで、ロータリーエバポレータを用いて減圧下、温浴中で生成エタノール、低沸点物を留去した。その際の留去量は、エタノールの理論生成量:46.0g以上とした。
その後、1−ヘキサノール:46.0gと、全量が100gとなるように、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートとを添加し、100gの塗布型シリカ系被膜形成用組成物を作製した。
【0047】
〔実施例6〕
テトラエトキシシラン:29.1gと、メチルトリエトキシシラン:30.8gとを、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート:21.6gに溶解させた溶液中に、マレイン酸:0.2gを溶解させた水:17.5gを攪拌下で、10分間かけて滴下した。
滴下終了後、2時間反応させた後、2.4質量%のテトラメチルアンモニウム硝酸塩水溶液:0.8gを添加して、0.5時間攪拌しポリシロキサン溶液:100gを得た。
次いで、ロータリーエバポレータを用いて減圧下、温浴中で生成エタノール、低沸点物を留去した。その際の留去量は、エタノールの理論生成量:49.6g以上とした。
その後、1−ヘキサノール:49.6gと、全量が100gとなるように、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートとを添加し、100gの塗布型シリカ系被膜形成用組成物を作製した。
【0048】
〔実施例7〕
テトラエトキシシラン:35.3gと、メチルトリエトキシシラン:26.1gとを、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート:19.5gに溶解させた溶液中に、マレイン酸:0.2gを溶解させた水:18.1gを攪拌下で、10分間かけて滴下した。
滴下終了後、2時間反応させた後、2.4質量%のテトラメチルアンモニウム硝酸塩水溶液:0.8gを添加して、0.5時間攪拌しポリシロキサン溶液:100gを得た。
次いで、ロータリーエバポレータを用いて減圧下、温浴中で生成エタノール、低沸点物を留去した。その際の留去量は、エタノールの理論生成量:51.4g以上とした。
その後、1−ヘキサノール:51.4gと、全量が100gとなるように、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートとを添加し、100gの塗布型シリカ系被膜形成用組成物を作製した。
【0049】
〔比較例1〕
テトラエトキシシラン:21.4gと、メチルトリエトキシシラン:36.8gとを、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート:24.2gに溶解させた溶液中に、マレイン酸:0.2gを溶解させた水:16.7gを攪拌下で、10分間かけて滴下した。
滴下終了後、2時間反応させた後、2.4質量%のテトラメチルアンモニウム硝酸塩水溶液:0.8gを添加して、0.5時間攪拌しポリシロキサン溶液:100gを得た。
次いで、ロータリーエバポレータを用いて減圧下、温浴中で生成エタノール、低沸点物を留去した。その際の留去量は、エタノールの理論生成量:47.3g以上とした。
その後、全量が100gとなるように、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートとを添加し、100gの塗布型シリカ系被膜形成用組成物を作製した。
【0050】
〔比較例2〕
テトラエトキシシラン:21.4gと、メチルトリエトキシシラン:36.8gとを、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート:24.2gに溶解させた溶液中に、マレイン酸:0.2gを溶解させた水:16.7gを攪拌下で、10分間かけて滴下した。
滴下終了後、2時間反応させた後、2.4質量%のテトラメチルアンモニウム硝酸塩水溶液:0.8gを添加して、0.5時間攪拌しポリシロキサン溶液:100gを得た。
次いで、ロータリーエバポレータを用いて減圧下、温浴中で生成エタノール、低沸点物を留去した。その際の留去量は、エタノールの理論生成量:47.3g以上とした。
その後、1−ヘキサノール:23.7gと、全量が100gとなるように、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートとを添加し、100gの塗布型シリカ系被膜形成用組成物を作製した。
【0051】
〔比較例3〕
テトラエトキシシラン:21.4gと、メチルトリエトキシシラン:36.8gとを、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート:24.2gに溶解させた溶液中に、マレイン酸:0.2gを溶解させた水:16.7gを攪拌下で、10分間かけて滴下した。
滴下終了後、2時間反応させた後、2.4質量%のテトラメチルアンモニウム硝酸塩水溶液:0.8gを添加して、0.5時間攪拌しポリシロキサン溶液:100gを得た。
次いで、ロータリーエバポレータを用いて減圧下、温浴中で生成エタノール、低沸点物を留去した。その際の留去量は、エタノールの理論生成量:47.3g以上とした。
その後、エタノール:47.3gと、全量が100gとなるように、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートとを添加し、100gの塗布型シリカ系被膜形成用組成物を作製した。
【0052】
〔比較例4〕
テトラエトキシシラン:21.4gと、メチルトリエトキシシラン:36.8gとを、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート:24.2gに溶解させた溶液中に、マレイン酸:0.2gを溶解させた水:16.7gを攪拌下で、10分間かけて滴下した。
滴下終了後、2時間反応させた後、2.4質量%のテトラメチルアンモニウム硝酸塩水溶液:0.8gを添加して、0.5時間攪拌しポリシロキサン溶液:100gを得た。
次いで、ロータリーエバポレータを用いて減圧下、温浴中で生成エタノール、低沸点物を留去した。その際の留去量は、エタノールの理論生成量:47.3g以上とした。
その後、1−オクタノール:47.3gと、全量が100gとなるように、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートとを添加し、100gの塗布型シリカ系被膜形成用組成物を作製した。
【0053】
〔参考例1〕
テトラエトキシシラン:10.5gと、メチルトリエトキシシラン:45.1gとを、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート:27.8gに溶解させた溶液中に、マレイン酸:0.19gを溶解させた水:15.6gを攪拌下で、10分間かけて滴下した。
滴下終了後、2時間反応させた後、2.4質量%のテトラメチルアンモニウム硝酸塩水溶液:0.8gを添加して、0.5時間攪拌しポリシロキサン溶液:100gを得た。
次いで、ロータリーエバポレータを用いて減圧下、温浴中で生成エタノール、低沸点物を留去した。その際の留去量は、エタノールの理論生成量:44.2g以上とした。
その後、1−ヘキサノール:44.2gと、全量が100gとなるように、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートとを添加し、100gの塗布型シリカ系被膜形成用組成物を作製した。
【0054】
〔参考例2〕
テトラエトキシシラン:32.0gと、メチルトリエトキシシラン:55.1gとを、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート:36.3gに溶解させた溶液中に、マレイン酸:0.3gを溶解させた水:25.0gを攪拌下で、10分間かけて滴下した。
滴下終了後、2時間反応させた後、2.4質量%のテトラメチルアンモニウム硝酸塩水溶液:1.3gを添加して、0.5時間攪拌しポリシロキサン溶液:150gを得た。
次いで、ロータリーエバポレータを用いて減圧下、温浴中で生成エタノール、低沸点物を留去した。その際の留去量は、エタノールの理論生成量:71.0g以上とした。
その後、1−ヘキサノール:71.0gと、全量が100gとなるように、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートとを添加し、100gの塗布型シリカ系被膜形成用組成物を作製した。
【0055】
〔膜厚測定〕
シリカ系被膜の膜厚は、ガートナー社製のエリプソメータL116B(商品名)で測定された膜厚であり、具体的には被膜上にHe−Neレーザー照射し、照射により生じた位相差から求められる膜厚を用いた。
【0056】
〔弾性率測定〕
ナノインデンターSA2(DCM,MTS社製、商品名)を用いて(温度:23℃±2℃、周波数:75Hz、弾性率の測定範囲:層間絶縁膜厚の1/10以下で、押し込み深さで変動しない範囲)シリカ系被膜の弾性率を測定した。
【0057】
前述した実施例1〜7の膜厚変化率(保管安定性)、機械強度、膜ムラ発生の有無の結果を、下記表1に示す。
【0058】
【表1】

【0059】
実施例1〜4においては、TEOS/MTESのモル比を0.50に固定し、炭素数3〜6の一価のアルコールの種類を変更した際の、膜厚変化率、得られるシリカ被膜の機械強度、膜ムラの発生の有無を評価した。
結果、膜厚変化率は、5%以内であり保管安定性が高いことが分かった。又、得られるシリカ系被膜の機械強度も10GPa以上と高く、膜ムラの発生も見られなかった。
実施例4〜7においては、TEOS/MTESのモル比を変動させ、一価のアルコールにヘキサノールを用いた際の、膜厚変化率、得られるシリカ被膜の機械強度、膜ムラの発生の有無を評価した。
結果、膜厚変化率は、5%以内であり保管安定性が高いことが分かった。又、得られるシリカ系被膜の機械強度も10GPa以上と高く、膜ムラの発生も見られなかった。
【0060】
前述した比較例1〜6の膜厚変化率(保管安定性)、機械強度、膜ムラ発生の有無の結果を、下記表2に示す。
【0061】
【表2】

【0062】
比較例1においては、TEOS/MTESのモル比を0.5とし、一価のアルコールを添加しない場合の、膜厚変化率、得られるシリカ被膜の機械強度、膜ムラの発生の有無を評価した。
結果、膜厚変化率は、73.3%と大きく変化し、保管安定性が低いことが分かった。一方、得られるシリカ系被膜の機械強度は10GPa以上と高く、膜ムラの発生も見られなかった。
【0063】
比較例2においては、TEOS/MTESのモル比を0.5とし、一価のアルコールとしてヘキサノールを添加したが、その添加量を、対シリカ樹脂の質量の1.19倍とした際の、膜厚変化率、得られるシリカ被膜の機械強度、膜ムラの発生の有無を評価した。
結果、膜厚変化率は、16.8%と大きく変化し、保管安定性が低いことが分かった。一方、得られるシリカ系被膜の機械強度は10GPa以上と高く、膜ムラの発生も見られなかった。
【0064】
比較例3においては、TEOS/MTESのモル比を0.5とし、炭素数2の一価のアルコールであるエタノールを添加した際の、膜厚変化率、得られるシリカ被膜の機械強度、膜ムラの発生の有無を評価した。
結果、膜厚変化率は、5%以内であり、保管安定性が高く、得られるシリカ系被膜の機械強度も10GPa以上と高いことが分かった。但し、ストリエーションと呼ばれる膜ムラの発生が見られた。
【0065】
比較例4においては、TEOS/MTESのモル比を0.5とし、炭素数8の一価のアルコールであるオクタノールを添加した際の、膜厚変化率、得られるシリカ被膜の機械強度、膜ムラの発生の有無を評価した。
結果、膜厚変化率は、5%以内であり、保管安定性が高く、得られるシリカ系被膜の機械強度も10GPa以上と高いことが分かった。但し、ストリエーションとは異なる膜ムラの発生が見られた。
【0066】
参考例1においては、TEOS/MTESのモル比を0.2とし、一価のアルコールとしてヘキサノールを添加した際の、膜厚変化率、得られるシリカ被膜の機械強度、膜ムラの発生の有無を評価した。
結果、膜厚変化率は、5%以内であり、保管安定性が高く、得られるシリカ系被膜に塗布ムラの発生も見られなかった。一方、得られるシリカ系被膜の機械強度は、10GPa以下と強度の低下が見られた。
【0067】
参考例2においては、TEOS/MTESのモル比を0.5とし、一価のアルコールとしてヘキサノールを添加し、塗布液中のシロキサン樹脂濃度を30%とした際の、膜厚変化率、得られるシリカ被膜の機械強度、膜ムラの発生の有無を評価した。
結果、膜厚変化率は、20.2%と大きく変化し、保管安定性が低いことが分かった。一方、得られるシリカ系被膜の機械強度は10GPa以上と高く、膜ムラの発生も見られなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記一般式(1)及び(2)にて表されるアルコキシシラン、
【化1】

【化2】

[R、Rは炭素数1〜3の有機基を示し、同一でも異なっていてもよい。]
(B)非プロトン性有機溶媒
(C)炭素数3〜6の一価のアルコール
(D)酸触媒
とを、必須成分とし、前記(C)成分の添加質量が、前記(A)成分の加水分解・重縮合反応を経て得られるシリカ樹脂質量の2〜3倍である、塗布型シリカ系被膜形成用組成物。
【請求項2】
請求項1において、(A)成分中に占める一般式(1)、(2)のモル比率(1)/(2)が、0.3〜1.7の範囲である、塗布型シリカ系被膜形成用組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の塗布型シリカ系被膜形成用組成物を用いて形成される、シリカ系被膜。
【請求項4】
請求項3に記載のシリカ系被膜が、層間絶縁層として用いられる半導体装置。

【公開番号】特開2011−79987(P2011−79987A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−234204(P2009−234204)
【出願日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】