説明

塗布型塗装用の塗装前処理剤及び塗布型塗装方法

【課題】塗装前処理を施した金属基材表面に対して塗布型塗装によって塗膜を形成したときに、塗膜を密着性、耐塩水性、及び耐衝撃性に優れたものとすることが可能な塗布型塗装用の塗装前処理剤と、塗布型塗装方法とを提供する。
【解決手段】ジルコニウム、チタン、及びハフニウムからなる群から選ばれる1種又は2種以上の金属元素(A)、フッ素(B)、アミノ基含有シランカップリング剤、その加水分解物、及びその重合物の1種又は2種以上のカップリング剤(C)、並びにアリルアミン及びポリアリルアミンの少なくとも1種からなる成分(D)を含んでおり、前記成分(D)に対する前記カップリング剤(C)の質量比(C/D)が1以上である塗布型塗装用の塗装前処理剤。この塗装前処理剤を用いて金属基材の化成処理を行う化成処理工程と、化成処理後の金属基材に塗布型塗装を行う塗布型塗装工程とを含む塗布型塗装方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗布型塗装用の塗装前処理剤及びこれを用いた塗布型塗装方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属基材の表面に対して、電着塗装を施したり、水性塗装、溶剤塗装、粉体塗装等の塗布型塗装を施したりする場合、耐食性や塗膜密着性等の性能を向上させる目的で、当該塗装前の金属基材の表面に化成皮膜を化学的に形成する化成処理が施される。
従来、この化成処理に用いる化成処理剤として、クロメート系化成処理剤及びリン酸亜鉛系化成処理剤が広く用いられている。しかし、クロメート系化成処理剤は、クロムを含むため環境に負荷を与えるおそれがあり、リン酸亜鉛系化成処理剤は、リン酸イオンを含むため河川や海洋の富栄養化のおそれがある。
そのため、これらクロメート系化成処理剤及びリン酸亜鉛系化成処理剤に代わる化成処理剤として、ジルコニウム、チタン及びハフニウムの少なくとも1種を含む化成処理剤が注目されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、ジルコニウム、チタン及びハフニウムからなる群より選ばれる少なくとも一種、フッ素、並びに、アミノ基含有シランカップリング剤からなる化成処理剤が記載されている。
特許文献2には、ジルコニウム、チタン及びハフニウムからなる群より選ばれる少なくとも一種、フッ素、並びに水溶性樹脂からなり、水溶性樹脂がポリビニルアミン樹脂及び/又はポリアリルアミンである化成処理剤が記載されている。
特許文献3には、ジルコニウム、チタン及びハフニウムからなる群より選ばれる少なくとも一種、フッ素、密着性付与剤、並びに、化成反応促進剤からなる化成処理剤であって、前記密着性付与剤が、特定の金属イオン(A)、アルカリ土類金属イオン(B)、周期律表第三属金属イオン(C)、銅イオン(D)、ケイ素含有化合物(E)、ポリアリルアミン樹脂等の水溶性樹脂(F)、アミノ基含有水溶性エポキシ樹脂(G)、及びシランカップリング剤等(H)の少なくとも一種である化成処理剤が記載されている。また、シランカップリング剤として、アミノ基を有するアミノシランカップリング剤が挙げられている。
【0004】
なお、塗装の役割は、主として美観と保護である。製品・部品の用途に応じて、適切な塗装系が採用されている。例えば、自動車ボディのように高度な耐食性を要求する製品には、防錆プライマーとして、電着塗装が採用されている。電着塗装は、防錆・密着を主機能とした、いわゆる防錆プライマーとして採用されることが一般的である。エポキシ樹脂等に代表される密着性・腐食物質遮断性にすぐれた塗膜設計がなされている。
一方、塗布型塗装は、多くの製品に採用されており、多くの種類の塗料が使用されているが、中には、電着塗料に代表される防錆プライマーと比較して、密着性や腐食因子遮断性に劣るものがある。すなわち、上塗り塗料には、耐候性の観点からエポキシ樹脂の採用は稀であり、密着性に劣る場合がある。また、製品によっては、30μmを超える厚膜塗装がされる場合があり、応力による塗膜剥離が問題となる場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−218070号公報
【特許文献2】特許第4276530号公報
【特許文献3】特開2004−218075号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1〜3には、化成皮膜面上に、密着性、耐塩水性、及び耐衝撃性に優れた塗布型塗膜を形成することが可能な、塗布型塗装用の化成処理剤に関する検討が充分になされていない。
すなわち、特許文献1では、その表3に示す通り、各種基板を化成処理した後に溶剤塗装(実施例36〜40)、水性塗装(実施例41〜45)、及び粉体塗装(46〜50)を施している。しかしながら、これら実施例36〜50の総てにおいて、同一の化成処理剤が用いられているため、如何なる化成処理剤が塗布型塗装用として適切かに関する検討が充分になされていない。
また、特許文献2,3には、化成処理剤によって形成された化成皮膜面に対して電着塗装を行った実施例しかなく、この化成皮膜面に対して水性塗装、溶剤塗装、粉体塗装のような塗布型塗装を行った実施例が存在しない。従って、特許文献2,3には、化成皮膜面上に、密着性、耐塩水性、及び耐衝撃性に優れた塗布型塗膜を形成することが可能な、塗布型塗装用の化成処理剤に関する検討が充分になされていない。
【0007】
また、特許文献1〜3では、前記アミノ基含有シランカップリング剤と(ポリ)アリルアミンとの含有割合と塗装性能との関係に関する検討も充分になされていない。
すなわち、特許文献1には、化成処理剤中にアミノ基含有シランカップリング剤を含有させることの記載はあるが、更に(ポリ)アリルアミンを含有させることの記載はない。
反対に特許文献2には、化成処理剤中に(ポリ)アリルアミンを含有させることの記載はあるが、更にアミノ基含有シランカップリング剤を含有させることの記載はない。
特許文献3では、密着性付与剤を化成処理剤の必須成分としているものの、この密着性付与剤として前記成分(A)〜(H)の少なくとも一種が配合されていれば足りるとしており(特許文献1の請求項1)、ポリアリルアミン樹脂(F)及びアミノシランカップリング剤(H)のそれぞれを化成処理剤の必須成分とはしていない。そのため、特許文献3では、化成処理剤中におけるアミノシランカップリング剤(H)のポリアリルアミン樹脂(F)に対する質量比(H/F))が、塗装の各種性能(密着性、耐塩水性、耐衝撃性等)に与える影響についても触れていない。
【0008】
本発明は、前記に鑑みてなされたものであり、塗装前処理(化成処理)を施した金属基材表面に対して塗布型塗装によって膜厚30μm以上の塗膜を形成したときに、塗膜の密着性、耐塩水性、及び耐衝撃性に優れたものとすることが可能な塗布型塗装用の塗装前処理剤と、密着性、耐塩水性、及び耐衝撃性に優れた塗膜を得ることが可能な塗布型塗装方法とを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、ジルコニウム等の金属元素、フッ素、所定のカップリング剤、及び(ポリ)アリルアミンを含有する塗布型塗装用の塗装前処理剤であって、上記(ポリ)アリルアミンに対するカップリング剤の含有割合を所定の範囲内にすることにより、その目的を達成し得ることを見出した。
本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
【0010】
すなわち、本発明は、以下の[1]〜[8]を提供するものである。
[1]ジルコニウム、チタン、及びハフニウムからなる群から選ばれる1種又は2種以上の金属元素(A)、フッ素(B)、アミノ基含有シランカップリング剤、その加水分解物、及び前記アミノ基含有シランカップリング剤の重合物から選ばれる1種又は2種以上のカップリング剤(C)、並びにアリルアミン及び/又はポリアリルアミンからなる成分(D)を含んでおり、前記成分(D)に対する前記カップリング剤(C)の質量比(C/D)が1以上である前処理剤。
[2]前記金属元素(A)の含有量が30〜200質量ppmであり、前記カップリング剤(C)の含有量が100〜300質量ppmであり、前記成分(D)の含有量が50〜200質量ppmである前記[1]に記載の前処理剤。
[3]更に、アルミニウム、亜鉛、マグネシウム及びバリウムからなる群から選ばれる1種又は2種以上の金属元素(E)を含む前記[1]又は[2]に記載の前処理剤。
[4]前記金属元素(A)の質量に対する前記カップリング剤(C)及び前記成分(D)の合計質量の質量比((C+D)/A)が0.5〜8である前記[1]又は[2]に記載の前処理剤。
[5]アミノ基含有エポキシ化合物を含有しない前記[1]〜[4]のいずれかに記載の前処理剤。
[6]前記[1]〜[5]のいずれかに記載の塗装前処理剤を用いて金属基材の化成処理を行う化成処理工程と、前記化成処理後の金属基材に塗布型塗装を行う塗布型塗装工程とを含む塗装方法。
[7]前記塗布型塗装が、水性塗装又は粉体塗装である[6]に記載の塗装方法。
[8]前記金属基材が鉄系基材である請求項[6]又は[7]に記載の塗装方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、化成処理を施した金属基材表面に対して塗布型塗装によって塗膜を形成したときに、塗膜を密着性、耐塩水性、及び耐衝撃性に優れたものとすることが可能な塗布型塗装用の塗装前処理剤と、密着性、耐塩水性、及び耐衝撃性に優れた塗膜を得ることが可能な塗布型塗装方法とを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、実施の形態により本発明を詳細に説明する。
なお、本発明において、「塗布型塗装」とは、水性塗装、溶剤塗装、粉体塗装等に代表されるものであり、刷毛塗り、ローラー塗り、浸漬、吹き付け等による塗装を意味し、電着塗装を含まない。また、「塗布型塗料」とは、塗布型塗装に用いられる塗料を意味する。
【0013】
[塗布型塗装用の塗装前処理剤]
本発明の塗布型塗装用の塗装前処理剤は、ジルコニウム、チタン、及びハフニウムからなる群から選ばれる1種又は2種以上の金属元素(A)、フッ素(B)、アミノ基含有シランカップリング剤、その加水分解物、及びその重合物の1種又は2種以上のカップリング剤(C)、並びにアリルアミン及び/又はポリアリルアミンからなる成分(D)を含んでおり、上記成分(D)に対する前記カップリング剤(C)の質量比(C/D)が1以上であるものである。
上記の塗布型塗装用の塗装前処理剤を用いて金属基材表面に前処理(化成処理)を施すことにより、この化成処理面に対して塗布型塗装を施したときに、塗布型塗装によって得られた塗膜を密着性、耐塩水性、及び耐衝撃性に優れたものとすることができる。
特に、この前処理剤は、膜厚が30μm以上の厚膜塗装を行う場合の前処理剤として好適である。すなわち、化成処理面に形成する塗布型塗装によって得られる塗膜が厚膜であると、塗膜に応力がかかってしまうため、塗膜剥離が起こりやすいと考えられ、結果的に密着性が低下すると考えられる。ところが、本発明の塗布型塗装用の塗装前処理剤は、アリルアミン及び/又はポリアリルアミンからなる成分(D)が化成皮膜に柔軟性を付与すると考えられ、結果的に塗膜の密着性、耐衝撃性および上塗り美観を向上させる。
【0014】
<金属元素(A)>
本発明の塗布型塗装用の塗装前処理剤は、ジルコニウム、チタン、及びハフニウムからなる群から選ばれる1種又は2種以上の金属元素(A)を含む。これら金属元素(A)は化成皮膜形成成分であり、金属基材に当該金属元素(A)を含む化成皮膜が形成されることにより、金属基材の耐食性や耐磨耗性を向上させ、更に、この化成皮膜上に形成される塗膜との密着性を高めることができる。
上記ジルコニウムの供給源としては特に限定されず、例えば、K2ZrF6等のアルカリ金属フルオロジルコネート;(NH42ZrF6等のフルオロジルコネート;H2ZrF6等のフルオロジルコネート酸等の可溶性フルオロジルコネート等;フッ化ジルコニウム;酸化ジルコニウム等を挙げることができる。
【0015】
上記チタンの供給源としては特に限定されず、例えば、アルカリ金属フルオロチタネート、(NH42TiF6等のフルオロチタネート;H2TiF6等のフルオロチタネート酸等の可溶性フルオロチタネート等;フッ化チタン;酸化チタン等を挙げることができる。
上記ハフニウムの供給源としては特に限定されず、例えば、HHfF等のフルオロハフネート酸;フッ化ハフニウム等を挙げることができる。
上記金属元素(A)の供給源としては、皮膜形成能が高いことからZrF62-、TiF62-、HfF62-からなる群より選ばれる1種又は2種以上を有する化合物が好ましい。
【0016】
塗布型塗装用の塗装前処理剤中における前記金属元素(A)の含有量は、30〜200質量ppmの範囲であることが好ましい。上記下限以上であると上記性能(金属基材の耐食性、耐磨耗性及び塗膜との密着性)が充分なものとなり、上記上限以下であると、化成皮膜に柔軟性が付与され、化成皮膜上に形成される塗膜の密着性が向上する。上記金属元素(A)の含有量は、より好ましくは35〜165質量ppmであり、更に好ましくは40〜120質量ppmであり、特に好ましくは45〜110質量ppmである。
【0017】
<フッ素(B)>
上記塗布型塗装用の塗装前処理剤に含まれるフッ素(B)は、金属基材のエッチング剤としての役割を果たすものである。上記フッ素(B)の供給源としては特に限定されず、例えば、フッ素を有する金属元素(A)の化合物やフッ素化合物が挙げられる。フッ素を有する金属元素(A)の化合物の具体例としては、K2ZrF6等のアルカリ金属フルオロジルコネート;(NH42ZrF6等のフルオロジルコネート;H2ZrF6等のフルオロジルコネート酸等の可溶性フルオロジルコネート等;フッ化ジルコニウム;アルカリ金属フルオロチタネート、(NH42TiF6等のフルオロチタネート;H2TiF6等のフルオロチタネート酸等の可溶性フルオロチタネート等;フッ化チタン;HHfF等のフルオロハフネート酸;フッ化ハフニウム等のハフニウム化合物を挙げることができる。フッ素化合物の具体例としては、フッ化水素酸、フッ化アンモニウム、フッ化ホウ素酸、フッ化水素アンモニウム、フッ化ナトリウム、フッ化水素ナトリウム等のフッ化物を挙げることができる。また、錯フッ化物としては、例えば、ヘキサフルオロケイ酸塩が挙げられ、その具体例としてケイフッ化水素酸、ケイフッ化水素酸亜鉛、ケイフッ化水素酸マンガン、ケイフッ化水素酸マグネシウム、ケイフッ化水素酸ニッケル、ケイフッ化水素酸鉄、ケイフッ化水素酸カルシウム等を挙げることができる。
なお、金属元素(A)の供給源がフッ素を含んでいる場合、金属元素(A)からフッ素が供給されるため、別途フッ素の供給源を用いなくてもよい。
【0018】
塗装前処理剤中における上記フッ素(B)の含有量は、30〜800質量ppmの範囲内であることが好ましい。フッ素(B)の含有量が上記下限値以上であると、金属基材を充分にエッチングすることができ、上記上限値以下であると、金属基材をエッチングし過ぎる事が防止される。フッ素(B)の含有量は、より好ましくは50〜300質量ppmであり、更に好ましくは50〜200質量ppmであり、特に好ましくは50〜100質量ppmである。
【0019】
<カップリング剤(C)>
上記塗布型塗装用の塗装前処理剤に含まれるカップリング剤(C)は、アミノ基含有シランカップリング剤、その加水分解物、及び上記アミノ基含有シランカップリング剤の重合物から選ばれる1種又は2種以上である。
上記アミノ基含有シランカップリング剤は、分子中に少なくとも1つのアミノ基を有し、かつ、シロキサン結合を有する化合物である。上記アミノ基含有シランカップリング剤、その加水分解物及びその重合物からなる群より選ばれる少なくとも一種が、化成皮膜と塗膜の双方に作用することにより、両者の密着性が向上すると共に、ブリスター抑制効果に優れたものとなる。
このような効果は、加水分解してシラノールを生成する基が加水分解され金属基材の表面と水素結合的に吸着すること、及び、アミノ基の作用により化成皮膜と金属基材の密着性が高まるために生じると推測される。上述したように化成皮膜に含まれるアミノ基含有シランカップリング剤、その加水分解物及びその重合物からなる群より選ばれる少なくとも一種が、金属基材及び塗膜の両方に働きかけることによって、相互の密着性を向上させる作用を有すると考えられる。
【0020】
上記アミノ基含有シランカップリング剤としては特に限定されず、例えば、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N,N−ビス〔3−(トリメトキシシリル)プロピル〕エチレンジアミン等の公知のシランカップリング剤等を挙げることができる。市販されているアミノ基含有シランカップリング剤であるKBM−602、KBM−603、KBE−603、KBM−903、KBE−9103、KBM−573(以上、信越化学工業株式会社製)、XS1003(チッソ株式会社製)等も使用することができる。
【0021】
上記アミノ基含有シランカップリング剤の加水分解物は、従来公知の方法、例えば、上記アミノ基含有シランカップリング剤をイオン交換水に溶解し、任意の酸で酸性に調整する方法等により製造することができる。上記アミノ基含有シランカップリング剤の加水分解物としては、KBP−90(信越化学工業株式会社製:有効成分32%)等の市販の製品を使用することもできる。
【0022】
前記アミノ基含有シランカップリング剤の重合物は、従来公知の方法、例えば、上記アミノ基含有シランカップリング剤を二種類以上、水溶液中で反応させる方法等により製造することができる。
【0023】
上記塗装前処理剤中におけるカップリング剤(C)の含有量は、固形分濃度で100〜300質量ppmの範囲内であることが好ましい。上記下限値以上であると、塗膜密着性及びブリスター抑制効果に優れる。上記上限値以下であると、カップリング剤の使用量が少なくて済み経済的であり、また、金属元素(A)の化成皮膜の形成を阻害が抑制されるため耐食性が向上する。上記カップリング剤(C)の含有量は、より好ましくは150〜250質量ppmである
【0024】
<成分(D)>
上記塗布型塗装用の塗装前処理剤は、アリルアミン及び/又はポリアリルアミンからなる成分(D)を含むことが必要である。好ましくは、ポリアリルアミンである。
この成分(D)を含む塗装前処理剤は、塗膜の密着性及び耐衝撃性に優れる。その理由は、この成分(D)が、金属基材及び塗膜に吸着して塗膜の密着性を向上させる機能と、化成皮膜に柔軟性を付与して塗膜の密着性及び耐衝撃性を向上させる機能とを有するためであると考えられる。成分(D)は塩基性であるため、一般的にアニオン樹脂で分散しているアニオン型水性塗料との密着性に効果がある。
【0025】
上記ポリアリルアミン樹脂としては特に限定されず、例えば、PAA−01、PAA−03、PAA−05、PAA−08、PAA−15、PAA−15C、PAA−25、PAA−HCL−01、PAA−HCL−03、PAA−HCL−05、PAA−HCL−3L、PAA−HCL−10L、PAA−SA、PAA−D11−HCL、PAA−D41−HCL、PAA−D19−HCL、PAA−D19A、PAA−1112CL、PAA−1112、PAA−U5000、PAA−AC5050A(いずれも日東紡株式会社製)等の市販のポリアリルアミン樹脂を使用することができる。
【0026】
塗装前処理剤中における前記成分(D)の含有量は、固形分濃度で50〜200質量ppmの範囲が好ましい。上記下限以上であると、塗膜の密着性及び耐衝撃性に優れたものとなり、上記上限以下であると、成分(D)の使用量が少なくて済み経済的であり、また、化成皮膜中に過剰に取込まれることがなく、良好な塗膜密着性を付与できる。上記成分(D)の含有量は、より好ましくは100〜150質量ppmである。
【0027】
<金属元素(E)>
上記塗装前処理剤は、鉄、亜鉛、アルミニウム、マグネシウム、バリウム、銅、マンガン、スズ、及びストロンチウムからなる群から選ばれる1種又は2種以上の金属元素(E)を含んでいてもよい。この金属元素(E)を含むことにより、耐食性及び/又は塗膜の塗装性が向上する。特に、バリウム及びアルミニウムを含むことにより、耐食性が向上する。
【0028】
上記金属元素の供給源としては特に限定されず、例えば、金属元素(E)の硝酸塩、硫酸塩、塩化物塩、酢酸塩等を挙げることができる。特に、硝酸塩が好ましい。
【0029】
上記塗装前処理剤中における金属元素(E)の含有量は、10〜500質量ppmが好ましい。上記下限以上であると上記性能が充分なものとなり、上記上限以下であると、金属元素(E)の使用量が少なくて済み経済的であり、また、皮膜中に適切量取込まれる。上記金属元素(E)の含有量は、より好ましくは20〜300質量ppmであり、更に好ましくは30〜150質量ppmである。
【0030】
<質量比(C/D)>
上記塗装前処理剤中における、上記成分(D)に対する上記カップリング剤(C)の質量比(C/D)は、1以上である。この質量比(C/D)が1未満であると、化成皮膜上に形成される塗膜の密着性及び耐塩水性が悪いものとなる。また、この質量比(C/D)は4.5以下であることが好ましい。4.5以下であると、相対的にカップリング剤(C)が多くなり過ぎず、塗膜との密着性及び耐衝撃性に優れるものとなる。この質量比(C/D)は、好ましくは1よりも大きく4.5以下である。
【0031】
<質量比((C+D)/A)>
上記塗装前処理剤中における、上記金属元素(A)に対する前記カップリング剤(C)及び成分(D)の合計の質量比((C+D)/A)は、好ましくは0.5〜8.0である。この質量比((C+D)/A)が上記下限値以上であると、化成皮膜が柔軟性に優れるものとなり、塗膜の密着性及び耐衝撃性が良好なものとなる。また、この質量比((C+D)/A)が上記上限値以下であると、化成皮膜中の金属元素(A)が多くなり、耐食性が良好なものとなる。この質量比((C+D)/A)は、より好ましくは1.0〜7.8であり、更に好ましくは2.0〜7.5であり、特に好ましくは3.0〜7.3である。
【0032】
<塗装前処理剤のpH>
本発明の塗布型塗装用の塗装前処理剤は、好ましくはpH1.5〜6.5での範囲内である。下限値以上であると、エッチング過剰となることが防止され、良好に化成皮膜が形成される。上限値以下であると、エッチングが充分となり、良好な皮膜が得られる。このpHは、より好ましくは2〜5.5であり、更に好ましくは2.5〜5である。pHを調整するために、硝酸、硫酸等の酸性化合物、及び、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア等の塩基性化合物を使用することができる。
【0033】
[塗装前処理剤の製造方法]
本発明の塗装前処理剤は、工業用水等の水に対して、上記金属元素(A)の供給源、フッ素(B)の供給源、カップリング剤(C)、成分(D)、及び必要に応じて上記金属元素(E)の供給源や他の成分を添加し、混合することによって製造することができる。
その場合、水に対して各成分を同時に添加・混合してもよく、1種類又は複数種ずつ順番に添加・混合してもよい。順番に添加・混合する場合には、その順番には特に制限はない。
【0034】
[塗装方法]
本発明の塗布型塗装方法は、前述の塗布型塗装用の塗装前処理剤を用いて金属基材の化成処理を行う化成処理工程と、上記化成処理後の金属基材に塗布型塗装を行う塗布型塗装工程とを含むものである。
【0035】
<金属基材>
金属基材としては、亜鉛系基材、鉄系基材、アルミニウム系基材等を挙げることができる。ここで、亜鉛系、鉄系、及びアルミニウム系基材とは、基材が亜鉛及び/又はその合金からなる亜鉛系基材、基材が鉄及び/又はその合金からなる鉄系基材、基材がアルミニウム及び/又はその合金からなるアルミニウム基材、を意味する。本発明の塗布型塗装方法は、亜鉛系基材、鉄系基材、及びアルミニウム系基材のうちの複数の金属基材に対しても適用することができる。
【0036】
上記亜鉛系基材としては特に限定されず、例えば、亜鉛めっき鋼板、亜鉛−ニッケルめっき鋼板、亜鉛−鉄めっき鋼板、亜鉛−クロムめっき鋼板、亜鉛−アルミニウムめっき鋼板、亜鉛−チタンめっき鋼板、亜鉛−マグネシウムめっき鋼板、亜鉛−マンガンめっき鋼板等の亜鉛系の電気めっき、溶融めっき、蒸着めっき鋼板等の亜鉛又は亜鉛系合金めっき鋼板等を挙げることができる。上記鉄系基材としては特に限定されず、例えば、冷延鋼板、熱延鋼板等を挙げることができる。上記アルミニウム系基材としては特に限定されず、例えば、5000番系アルミニウム合金、6000番系アルミニウム合金等を挙げることができる。
本発明の塗布型塗装方法における金属基材は、従来ジルコニウム等からなる化成処理剤での前処理が不適であった鉄系基材に対しても、充分な塗膜密着性を付与することができる点で好ましく、このため、特に、少なくとも一部に鉄系基材を含む被塗物の化成処理にも使用することができる点で優れた性質を有するものである。
【0037】
<化成処理工程>
本工程では、前述の塗布型塗装用の塗装前処理剤を用いて、金属基材の化成処理を行う。化成処理条件としては、前処理剤として本発明に係る塗布型塗装用の塗装前処理剤を用いること以外には特に制限はなく、通常の化成処理条件を採用することができる。
化成処理温度は、好ましくは20〜70℃であり、より好ましくは30〜50℃である。化成処理時間は、好ましくは5〜1200秒であり、より好ましくは30〜120秒である。化成処理方法としては特に限定されず、例えば、浸漬法、スプレー法、ロールコート法等を挙げることができる。
【0038】
上記化成処理工程の前に、金属基材に対して、脱脂処理及び脱脂後水洗処理工程を行うことが好ましい。
上記脱脂処理工程は、金属基材表面に付着している油分や汚れを除去するために行われるものであり、無リン・無窒素脱脂洗浄液等の脱脂剤により、通常30〜55℃において数分間程度の浸漬処理がなされる。所望により、脱脂処理の前に、予備脱脂処理を行うことも可能である。
上記脱脂後水洗処理工程は、脱脂処理後の脱脂剤を水洗するために、例えば、大量の水洗水によって1回又はそれ以上スプレー処理により行われるものである。
また、上記化成処理工程の後に、化成後水洗処理工程を行うことが好ましい。
上記化成後水洗処理工程は、その後の各種塗装後の密着性、耐食性等に悪影響を及ぼさないようにするために、1回又はそれ以上により行われるものである。この場合、最終の水洗は、純水で行われることが適当である。この化成後水洗処理工程は、例えば、スプレー水洗又は浸漬水洗のどちらでもよく、これらの方法を組み合わせてもよい。
【0039】
本発明の塗布型塗装方法における前処理工程は、前述の前処理剤を使用するのでリン酸亜鉛系化成処理剤を用いたときに必要とされるような表面調整処理を行う必要はない。そのため、より少ない工程で金属基材の化成処理を行うことが可能となる。
上記化成後水洗処理の後で乾燥工程を行わなくてもよい。乾燥工程を行わず化成皮膜がウェットな状態のまま、次工程である塗布型塗装工程を行っても得られる塗膜の性能に多大な影響を与えない。なお、乾燥工程を行う場合は、冷風乾燥、熱風乾燥等を行うことが好ましい。熱風乾燥を行う場合、有機分の分解を防ぐためにも、300℃以下が好ましい。
【0040】
<塗布型塗装工程>
本工程では、上記化成処理工程後の金属基材に対して、塗布型塗装を行う。塗布型塗装としては電着塗装を除く、従来公知のあらゆる塗装を用いることができ、例えば、スプレー塗装、静電スプレー塗装、回転霧化式静電塗装、粉体塗装、ディップ塗装、ロールコータ式塗装、ローラー塗装、ハケ塗装等を挙げることができる。
【0041】
また、本工程では、複数の塗膜層が形成されるように塗装を行ってもよい。
【0042】
本工程において得られる塗膜の膜厚は特に限定されない。
しかしながら、塗膜の膜厚が厚くなると、一般的に、応力の影響を受けやすく、塗膜剥離が生じると考えられる。しかしながら、前述の前処理剤を用いることで、化成皮膜が柔軟性に優れるものとなり、応力の影響が緩和され、化成皮膜と金属基材及び化成皮膜と塗膜の密着性及び耐衝撃性が向上し、塗膜剥離を抑制できると考えられる。したがって、上記膜厚が、例えば、乾燥膜厚で30〜120μmの場合にカップリング剤(C)および成分(D)の効果が高く、50〜120μmであるとさらにこの効果が高い。
【0043】
本工程に用いる塗料は、特に限定されない。上記塗料としては、例えば、溶剤型塗料、水性塗料及び粉体塗料を挙げることができる。
上記溶剤型塗料としては、具体的には、溶剤型アクリル樹脂系塗料、溶剤型ポリエステル樹脂系塗料、溶剤型ウレタン樹脂系塗料、溶剤型アルキッド樹脂系塗料等が挙げられ、各種塗料に用いる硬化剤はメラミン樹脂、イソシアネート樹脂、ブロックイソシアネート樹脂、カルボジイミド樹脂等を挙げることができる。
水性塗料としては、具体的には、塗料の溶媒が溶剤から水に変わること以外、溶剤型塗料と同じであり、水に分散又は溶解した樹脂及び硬化剤とを含有する熱硬化型水性塗料等を挙げることができる。
粉体塗料としては、具体的には、アクリル樹脂系粉体塗料、エポキシポリエステル樹脂系粉体塗料、ポリエステル樹脂系粉体塗料、エポキシ樹脂系粉体塗料等を挙げることができる。
特に硬化時に脱離物が多いメラミン樹脂等を硬化剤として含んでいる塗料を本工程に用いる場合には、塗膜に応力がかかり、塗膜剥離が生じやすいと考えられるが、本発明の塗布型塗装方法においては、化成処理工程において前述の前処理剤を用いるので、化成皮膜が柔軟性に優れるものとなり、塗膜の密着性及び耐衝撃性が良好なものとなり、塗膜剥離を抑制できると考えられる。
一方、本工程に用いる上記塗料は、得られる塗膜の平滑性 が要求されるため、一般にシリコン添加剤等の可塑成分が含有されている。可塑成分は化成皮膜と塗膜の界面に存在するため、化成皮膜と塗膜の密着性が低下し、塗膜剥離が生じやすいと考えられる。本発明の前処理剤は、塩基性度の高い成分(D)を含んでいるため、塗料中のアニオン性樹脂またはカルボン酸樹脂と酸−塩基相互作用により密着性が向上し、塗膜剥離を抑制できると考えられる。
【実施例】
【0044】
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明する。また、実施例中、「部」は特に断りのない限り「質量部」を意味し、「%」は特に断りのない限り「質量%」を意味する。
【0045】
実施例1
<金属基材>
市販の冷間圧延鋼板(SPCC−SD、日本テストパネル株式会社製、70mm×150mm×0.8mm)を金属基材として、下記の条件で塗装前処理を施した。
【0046】
<塗装前処理>
(1)脱脂処理
2質量%「サーフクリーナーEC92」(日本ペイント株式会社製脱脂剤)で40℃、2分間浸漬処理した。
(2)脱脂後水洗処理
水道水で30秒間スプレー処理した。
【0047】
(3)化成処理
10Lの工業用水に対し、化成皮膜形成成分である金属元素(A)及びフッ素(B)の供給源としてジルコンフッ化水素酸(H2ZrF6)を用い、フッ素(B)の供給源として更に酸性フッ化アンモニウム(森田化学工業株式会社製)を用い、カップリング剤(C)としてKBM−603(N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン:信越化学工業株式会社製)を用い、成分(D)としてPAA−15C(ポリアリルアミン樹脂:重量平均分子量15000:日東紡株式会社製)を用い、表1に示す組成を有する塗布型塗装用の塗装前処理剤を調製した。
pHは、硝酸又は水酸化ナトリウムを用いて4.0に調整した。調整した塗装前処理剤の温度を40℃に調整し、各金属基材を90秒間浸漬処理した。カップリング剤(C)及び成分(D)の濃度は、固形分換算で示している。
【0048】
(4)化成処理後水洗処理
水道水で30秒間スプレー処理した。更にイオン交換水で30秒間スプレー処理した。
(5)乾燥処理
水洗処理後、40℃、3分間水切り乾燥を行い、次の塗装工程を行った。
【0049】
<塗装>
水性塗料Aとして、熱硬化型水性ポリエステル系塗料「商品名:オーデエコ130 Z975」(日本ペイント株式会社製)を乾燥膜厚が所定膜厚になるようにスプレー塗装し、160℃で20分間焼付け硬化処理した。なお、塗膜の膜厚の測定結果を表1に示す。
【0050】
<評価試験>
(1)一次密着性試験
23℃、湿度50%の条件下で24時間以上試験片を放置した後の塗膜の密着性をJIS D0202 4.15に準拠して、1mm×1mmのゴバン目試験により評価した。評価は以下の基準で行った。
5点:剥離なし(最良)
4点:碁盤目剥離は無いが沿線剥離が一部起こる
3点:碁盤目剥離は無いが全ての沿線部の剥離が起こる
2点:碁盤目剥離が1〜5個
1点:碁盤目剥離が6〜100個
評価結果は、表1に示す。
【0051】
(2)塩温水試験(SDT)
得られた試験板に、素地まで達する2本の縦平行カット線(長さXmm、2本の線間の距離Ymm)を入れた後、5%NaCl水溶液中において50℃で840時間浸漬した。その後、カット部をテープ剥離し、剥離した塗膜の面積(Zmm2)を測定した。次いで、2本の縦平行カット内の面積(X×Ymm2)に対する剥離した塗膜の面積(Zmm2)の面積率(Z/(X×Y)×100%)を算出し、以下の基準で塗膜の剥離性を評価した。
5点:面積率5%以下
4点:面積率5%超かつ20%以下
3点:面積率20%超かつ30%以下
2点:面積率30%超かつ40%以下
1点:面積率40%超
評価結果は、表1に示す。
【0052】
(3)耐衝撃試験
JIS K5600−5−3に準じ、塗装面の裏側より衝撃変形試験機(商品名「デュポン・衝撃試験機」、(株)東洋精機製作所製)を用いて、0.5インチ径、質量0.5kgのおもりを高さ30cmより落下させ、次の判定基準に従い塗膜の剥離状態を目視観察した。
判定基準
5点:剥離なし(最良)
4点:剥離は無いが、リング状のワレが生じる
3点:衝撃部周囲の塗膜浮きが生じる
2点:衝撃部周囲の塗膜剥離が生じる
1点:衝撃部全面の塗膜剥離が生じる(最悪)
評価結果は、表1に示す。
【0053】
実施例2〜17、比較例1〜5、及び参考例1〜3
表1に示す組成を有する塗装前処理剤を調製したこと以外は実施例1と同様の操作を行った。その結果を表1に示す。
なお、金属元素(E)としてのアルミニウム、亜鉛、マグネシウム、及びバリウムは、それぞれ、硝酸アルミニウム、硝酸亜鉛、硝酸マグネシウム、及び硝酸バリウムとして添加している。
【0054】
また、表1中の記号は、次のことを意味する。
KBE−903:γ−アミノプロピルトリエトキシシラン(信越化学工業株式会社製)
KBM−903:γ−アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製)
PAA−25C:ポリアリルアミン樹脂(重量平均分子量25000、日東紡株式会社製)
水性塗料A:日本ペイント株式会社製熱硬化型水性ポリエステル系塗料「商品名:オーデエコ130 Z975」
水性塗料B:日本ペイント株式会社製ポリエステル樹脂系水性塗料「商品名:オーデエコ130 Z637」
水性塗料C:日本ペイント株式会社製ポリエステル樹脂系水性塗料「商品名:オーデエコ130 Z13」
粉体塗料D:日本ペイント株式会社製ポリエステル樹脂粉体塗料「商品名:ビリューシア PCM−1500」
【0055】
【表1】

【0056】
表1に示すとおり、実施例1〜17は、一次密着性、耐塩水性及び耐衝撃性のいずれにも優れていた。
これに対し、成分(D)を含まない比較例1と、カップリング剤(C)を含まない比較例2は、一次密着性及び耐塩水性が悪かった。
また、C/Dが本発明の範囲(1以上)よりも小さい値となっている比較例3〜5も、一次密着性及び耐塩水性が悪かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジルコニウム、チタン、及びハフニウムからなる群から選ばれる1種又は2種以上の金属元素(A)、
フッ素(B)、
アミノ基含有シランカップリング剤、前記アミノ基含有シランカップリング剤の加水分解物、及び前記アミノ基含有シランカップリング剤の重合物からなる群から選ばれる1種又は2種以上のカップリング剤(C)、並びに
アリルアミン及び/又はポリアリルアミンからなる成分(D)
を含んでおり、
前記成分(D)に対する前記カップリング剤(C)の質量比(C/D)が1以上である塗布型塗装用の塗装前処理剤。
【請求項2】
前記金属元素(A)の含有量が30〜200質量ppmであり、前記カップリング剤(C)の含有量が固形分濃度で100〜300質量ppmであり、前記成分(D)の含有量が固形分濃度で50〜200質量ppmである請求項1に記載の塗布型塗装用の塗装前処理剤。
【請求項3】
更に、アルミニウム、亜鉛、マグネシウム及びバリウムからなる群から選ばれる1種又は2種以上の金属元素(E)を含む請求項1又は2に記載の塗布型塗装用の塗装前処理剤。
【請求項4】
前記金属元素(A)の質量に対する前記カップリング剤(C)及び前記成分(D)の合計質量の質量比((C+D)/A)が0.5〜8である請求項1〜3のいずれか1項に記載の塗布型塗装用の塗装前処理剤。
【請求項5】
アミノ基含有エポキシ化合物を含有しない請求項1〜4のいずれか1項に記載の塗布型塗装用の塗装前処理剤。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の塗装前処理剤を用いて金属基材の化成処理を行う化成処理工程と、前記化成処理後の金属基材に塗布型塗装を行う塗布型塗装工程とを含む塗布型塗装方法。
【請求項7】
前記塗布型塗装が、水性塗装又は粉体塗装である請求項6に記載の塗布型塗装方法。
【請求項8】
前記金属基材が鉄系基材である請求項6又は7に記載の塗布型塗装方法。
【請求項9】
前記塗布型塗装の膜厚が30μm以上である請求項6〜8のいずれか1項に記載の塗布型塗装方法。

【公開番号】特開2013−87312(P2013−87312A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−227215(P2011−227215)
【出願日】平成23年10月14日(2011.10.14)
【出願人】(000230054)日本ペイント株式会社 (626)
【Fターム(参考)】