説明

塗布容器

【課題】広範囲の塗布を効率よく良好に行うことができる塗布容器を提供する。
【解決手段】口部20を有する容器本体10と、口部20に装着された塗布部材14とを備え、容器本体10に収容された塗布液を塗布部材14に含浸させて、塗布部材14を被塗布面に接触させることにより、塗布液を塗布することができる塗布容器1であって、塗布部材14は、低密度ポリエチレンからなり、平均気孔径が50〜180μmで、嵩密度が0.15〜0.25g/cmで、直径が23mm以上である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、収容された塗布液を被塗布面に塗布する塗布容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の塗布容器として、薬剤や化粧品などの塗布液を収容する容器本体の口部に塗布部材を装着し、この塗布部材に塗布液を含浸させて人体などに接触させることにより、塗布液を塗布する構成が知られている。塗布部材としては、ポリウレタン製のスポンジが一般的に用いられるが、その他の材質として、例えば特許文献1には、ポリエチレンなどの合成樹脂粉末を焼結して形成された硬質多孔質体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭56−135451号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、ポリウレタン製のスポンジを塗布部材として用いた場合には、塗布液の含浸により塗布部材が膨潤して大きく湾曲し、塗布部材の周縁部まで塗布液を行き渡らせることができず、均一な塗布が困難であるという問題があった。特に、広範囲の塗布作業を容易にするために大面積の塗布部材を用いる場合には、膨潤による塗布部材の変形も大きくなるため、上述した問題がより顕著となっていた。
【0005】
一方、特許文献1に開示された硬質多孔質体を用いた場合には、塗布液の放出性が悪く十分な塗布量が得られず、この場合も、塗布部材を大型化した場合に問題が顕在化していた。
【0006】
そこで、本発明は、広範囲の塗布を効率よく良好に行うことができる塗布容器の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の前記目的は、口部を有する容器本体と、前記口部に装着された塗布部材とを備え、前記容器本体に収容された塗布液を前記塗布部材に含浸させて、前記塗布部材を被塗布面に接触させることにより、塗布液を塗布することができる塗布容器であって、前記塗布部材は、低密度ポリエチレンからなり、平均気孔径が50〜180μmで、嵩密度が0.15〜0.25g/cmで、直径が23mm以上である塗布容器により達成される。
【0008】
この塗布容器において、前記塗布部材は、厚みが0.5〜3.5mmであることが好ましい。
【0009】
また、前記塗布部材は、連続気泡発泡体からなることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、広範囲の塗布を効率よく良好に行うことができる塗布容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態に係る塗布容器を一部断面で示す側面図である。
【図2】図1に示す塗布容器における口部の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る塗布容器を一部断面で示す側面図である。塗布容器1は、塗布液を収容する容器本体10を備えており、容器本体10は、円形の開口端部12に口部20が取り付けられている。
【0013】
口部20は、同心状に配置された内筒21及び外筒22と、後述する塗布部材14が配置される受座23とを有しており、内筒21及び外筒22は、受座23により先端側が覆われて一体化されている。受座23は、中央に吐出口24を有している。
【0014】
受座23の裏面側にはリング状の係止片25が設けられており、係止片25と内筒21との間に保持筒26が挟持されている。保持筒26の基端部には、らせん状に形成されたばね材27の一端側が固定されており、ばね材27の他端側には弁体28が取り付けられている。弁体28には押圧片29が設けられており、ばね材27の付勢力により、押圧片29が吐出口24から突出した状態で弁体28の肩部が受座23に当接し、吐出口24が閉止される一方、押圧片29の押圧により弁体28と受座23との間に隙間が形成されて、押圧片29の切欠部29aと吐出口24との間を経て塗布液が流出可能なように、構成されている。
【0015】
内筒21は、外周方向に沿って外筒22との間に等間隔に配置された補強片30によって補強されており、内周面に形成されたねじ部21aを介して、容器本体10の開口端部12に螺合されている。
【0016】
受座23は、吐出口24を中心とする環状の隆起部231を表面側に備えている。隆起部231は、吐出口24から頂部231aに向けて椀状に滑らかに湾曲して内部に貯留部232を形成しており、頂部231aの外側には、径方向外方に向けて傾斜する傾斜面231bを有している。また、隆起部231は、図2に平面図で示すように、吐出口24を中心として放射状に延びる案内溝231cが形成されている。
【0017】
受座23の表面における隆起部231の外側には、環状の堰部233が隆起部231と同心状に設けられており、隆起部231と堰部233との間に保持溝234が形成されている。堰部233の高さは隆起部231の高さよりも低く、堰部233の頂部は、隆起部231の傾斜面231bの略延長上に位置している。
【0018】
また、塗布容器1は、受座23の表面側に、円板状の塗布部材14が装着されている。塗布部材14は、外筒22の外周面に形成されたねじ部22aに着脱自在に螺合されるキャップ18により、不使用時に被覆される。本実施形態においては、塗布部材14の直径を、容器本体10の開口端部12の外径よりも大きくしており、塗布部材14の面積を大きくして広範囲の塗布を容易にしている。
【0019】
塗布部材14は、後述するように弾性材料からなり、受座23の表面側に載置された状態で、係止リング16を受座23の外周縁に嵌合することにより、周縁部が係止リング16と受座23との間に挟持される。この状態で、塗布部材14の裏面は、押圧片29、隆起部231及び堰部233の頂部とそれぞれ接している。隆起部231の頂部231aと塗布部材14との当接位置は、径方向中央部付近が好ましく、例えば半径10mm程度の円上に頂部231aが位置するように、隆起部231を設けることが好ましい。また、塗布部材14の周縁部における固定位置は、少なくとも隆起部231の頂部231aよりも低いことが好ましい。
【0020】
塗布部材14は、本実施形態においては、塗布液の吸放出性に優れ、強度及び肌触りが良好である低密度ポリエチレンからなる。低密度ポリエチレンは、高圧法低密度ポリエチレンまたは直鎖状低密度ポリエチレンのいずれであってもよく、密度は通常0.910〜0.930g/cmである。
【0021】
本発明者らは、低密度ポリエチレンからなる種々の塗布部材14について検討した結果、塗布部材14の表面全体で良好な塗布を行うためには、平均気孔径及び嵩密度が重要なパラメータになることを、実験により見出した。
【0022】
すなわち、塗布部材14の平均気孔径は、大きすぎると含浸された塗布液の保持性が低下して液ダレが生じやすくなる一方、小さすぎると塗布液の浸透性や放出性が低下することから、50〜180μmが好ましく、55〜160μmがより好ましく、90〜150μmが更に好ましい。本明細書における平均気孔径は、水銀圧入式ポロシメータにより測定した値である。また、塗布部材14の嵩密度(塗布部材の重量をみかけ体積で除した値)は、大きすぎると浸透性や放出性が低下する一方、小さすぎると塗布液の保持性が低下することから、0.15〜0.25g/cmが好ましく、0.17〜0.22g/cmがより好ましく、0.19〜0.21g/cmが更に好ましい。
【0023】
更に、塗布部材14は、ASTM D 1940−62Tに準拠して測定した連続気泡率が70%以上の連続気泡発泡体からなることが好ましく、これによって、塗布液の吸放出性及び保持性をより良好にすることができる。低密度ポリエチレンからなる連続気泡発泡体の好適な例として、具体的には、株式会社イノアックコーポレーション製の「MAPS」を挙げることができる。
【0024】
塗布部材14の厚みについては、大きすぎると膨潤による変形が大きくなりやすく塗布液の放出性も低下する一方、小さすぎると肌触りが悪化することから、0.5〜3.5mmが好ましく、1.5〜2.5mmがより好ましく、1.7〜2.0mmが更に好ましい。
【0025】
以上の構成を有する塗布容器1によれば、キャップ18を外して、塗布部材14の表面を皮膚などの被塗布面に押し当てることにより、塗布部材14を介して弁体28が押圧され、容器本体10に収容された塗布液が、押圧片29の切欠部29aと吐出口24との隙間から流出し、貯留部232に貯留される。塗布部材14は、主として中央部から塗布液が含浸されていくが、裏面が隆起部233により支持された状態で係止リング16により周縁部において固定されているので、大面積の塗布部材14を使用した場合でも、膨潤によって周縁部における受座23との隙間が拡がるのを防止することができる。この結果、貯留部232に供給された塗布液を、塗布部材14の周縁部まで確実に行き渡らせることができ、塗布部材14の表面全体を用いた塗布を効率よく行うことができる。このような効果は、塗布部材14の直径が23mm以上の場合において顕著であり、特に28mm以上の直径が好ましく、36mm以上の直径がより好ましい。塗布部材14の直径の上限は、実用的には45mm程度である。
【0026】
本実施形態においては、隆起部231に案内溝231cが形成されているので、貯留部232に供給された塗布液を、塗布部材14の周縁部に容易に導くことができる。更に、隆起部231の内側が椀状に滑らかに湾曲しているので、これによっても、貯留部232の塗布液が、隆起部231を超えて径方向外方へ流出しやすくなっている。
【0027】
また、本実施形態においては、隆起部231の外側に堰部233を設けているので、塗布部材14の周縁部に案内された塗布液は、隆起部231と堰部233との間の保持溝234に保持される。この結果、塗布部材14の周縁部における塗布液の含浸がより促されると共に、塗布部材14の外周縁からの液ダレを確実に防止することができる。
【0028】
また、本実施形態においては、上述したように、良好な使用感が得られると共に、膨潤による変形が小さく、塗布液の吸放出性及び保持性が良好な塗布部材14を使用しているので、塗布部材14を大きくしても、塗布部材14の表面全体から適正な量の塗布液を供給することができ、広範囲の塗布を効率よく良好に行うことができる。
【0029】
以上、本発明の一実施形態について詳述したが、本発明の具体的な態様は上記実施形態に限定されない。例えば、受座23の構成は本実施形態のものに限定されず、表面が平面状に形成された受座23などであってもよい。その他、容器本体の口部に塗布部材が装着された従来の塗布容器において、塗布部材を本実施形態のものに取り替えて使用することもできる。塗布部材の形状や大きさは、使用目的などに応じて適宜変更できる。
【実施例】
【0030】
実施例及び比較例に基づいて、本発明を更に詳細に説明する。但し、本発明が、以下の実施例に限定されるものではない。
【0031】
図1に示す塗布容器を使用し、塗布部材の材質、厚さ、平均気孔径および嵩密度を種々変更して、塗布液の放出性、保持性、使用感及び強度を調べた。この結果を、表1に示す。塗布部材は、直径が44mmの円板状のものを使用した。また、低密度ポリエチレンとしては、株式会社イノアックコーポレーション製の「MAPS」を使用した。
【0032】
【表1】

【符号の説明】
【0033】
1 塗布容器
10 容器本体
14 塗布部材
20 口部
23 受座
231 隆起部
232 貯留部
233 堰部
234 保持溝
24 吐出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
口部を有する容器本体と、前記口部に装着された塗布部材とを備え、前記容器本体に収容された塗布液を前記塗布部材に含浸させて、前記塗布部材を被塗布面に接触させることにより、塗布液を塗布することができる塗布容器であって、
前記塗布部材は、低密度ポリエチレンからなり、平均気孔径が50〜180μmで、嵩密度が0.15〜0.25g/cmで、直径が23mm以上である塗布容器。
【請求項2】
前記塗布部材は、厚みが0.5〜3.5mmである請求項1に記載の塗布容器。
【請求項3】
前記塗布部材は、連続気泡発泡体からなる請求項1又は2に記載の塗布容器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2012−148276(P2012−148276A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−23298(P2012−23298)
【出願日】平成24年2月6日(2012.2.6)
【分割の表示】特願2005−315345(P2005−315345)の分割
【原出願日】平成17年9月30日(2005.9.30)
【出願人】(000186588)小林製薬株式会社 (518)
【Fターム(参考)】