説明

塗布方法および塗布装置

【課題】 塗布液による閉図形に対して太りや断線を生ずることなく、閉図形を正確に形成することが可能な塗布方法および塗布装置を提供する。
【解決手段】 ダム剤吐出ノズル14の高さ位置を通常より低い位置に配置した状態で、ダム剤吐出ノズル14からダム剤の吐出を開始するとともに、ダム剤吐出ノズル14の移動を開始する吐出開始工程と、ダム剤吐出ノズル14から吐出されたダム剤が基板100の表面に着床した後にダム剤吐出ノズル14の高さ位置を上昇させる上昇工程と、ダム剤吐出ノズル14を矩形に対応させて移動させる塗布工程と、ダム剤吐出ノズル14からのダム剤の吐出を停止するとともに、ダム剤吐出ノズル14の高さ位置をさらに上方に上昇させる液切り工程とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、基板に対して塗布液吐出ノズルから塗布液を吐出することにより、基板の表面に塗布液による閉図形を形成する塗布方法および塗布装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、有機EL表示装置用ガラス基板の製造時には、発光層をフィル剤で封止する封止工程が実行される。この封止工程においては、ダム剤により矩形状のダム部を形成した後、そのダム部の内部にフィル剤を塗布するようにしている。
【0003】
図11は、この封止工程を模式的に示す説明図である。なお、図11においては、ガラス基板100については、各パーツ部分に対応する領域のみを示している。
【0004】
封止工程を実行するときには、最初に、図11(a)に示すように、ガラス基板100に対してダム剤101を塗布する。このダム剤101は、高い粘性を有する液体であり、硬化することにより接着作用を奏する。このダム剤101の塗布は、ガラス基板100と対向配置されたダム剤吐出ノズルよりガラス基板100に向けてダム剤101を吐出することにより行われる。そして、ガラス基板100とダム剤吐出ノズルとを相対的に移動させることにより、ダム剤101により矩形状のダム部を形成する。
【0005】
次に、図11(b)に示すように、矩形状のダム部内にフィル剤102を塗布する。このフィル剤102は、ダム剤101に比べて粘性が低い液体である。このフィル剤102の塗布は、ガラス基板100におけるダム部の中央部と対向配置されたフィル剤吐出ノズルより、ガラス基板100に向けてフィル剤102を吐出することにより行われる。
【0006】
次に、図11(c)に示すように、発光層104が予め形成された透光性の基板103を、フィル剤102が塗布されたガラス基板100と対向配置し、基板103の下面とガラス基板100上にダム剤101により形成されたダム部とを当接させる。
【0007】
しかる後、図11(d)に示すように、ガラス基板100および基板103を上下反転させるとともに、ダム剤101を硬化させてガラス基板100と基板103とを接着する。このダム剤101の硬化は、ダム剤101が紫外線硬化性材料であるときには、紫外線照射により実行され、ダム剤101が熱可塑性材料であるときには、加熱により実行される。
【0008】
この封止工程におけるダム剤101の塗布を行う場合には、例えば、円形の開口部を有するダム剤吐出ノズルからガラス基板100に対してダム剤101を吐出しながら、このダム剤吐出ノズルをダム部を形成するために矩形状に移動させて、ダム剤101により閉図形(矩形)を形成するようにしている。
【0009】
特許文献1には、シリンジに連通する各種のノズルを備えた塗布装置により基板に対して接着剤を塗布する塗布装置が開示されている。
【0010】
また、特許文献2には、半導体装置に対してダイ・ボンディングを行うときに、描画開始時に塗布線幅が細くなる問題を回避するため、シリンジにかかるエア圧が設定値を超えた時点で、ノズル部からペーストを吐出して描画動作を開始するようにした半導体装置の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特許第3676473号公報
【特許文献2】特開2009−26851号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
一般的な塗布装置とは異なり、閉図形を形成する塗布装置においては、塗布の開始位置と塗布の終了位置を重畳させる必要がある。ところで、塗布開始時に塗布液の基板の表面への着床タイミングにずれが生じて、書き出し(塗布開始)部分で塗布液の液溜まりが発生したり、書き出し位置が不安定となるという問題が生ずる。また、同様に、塗布終了時の塗布液の液切れの状態によっては、書き終わり(塗布終了)時点で塗布液の液溜まりが発生することがある。このため、閉図形を形成する塗布工程において、書き出しと書き終わりの繋ぎ部分(重畳部分)で塗布液の線幅の局所的な太りや、塗布液の断線等が生ずる場合がある。
【0013】
この発明は上記課題を解決するためになされたものであり、塗布液による閉図形に対して太りや断線を生ずることなく、閉図形を正確に形成することが可能な塗布方法および塗布装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
請求項1に記載の発明は、基板に対して塗布液吐出ノズルから塗布液を吐出することにより、基板の表面に塗布液による閉図形を形成する塗布方法において、前記塗布液吐出ノズルを、当該塗布液吐出ノズルの下面と前記基板の表面との離間距離が、前記塗布液吐出ノズルの移動方向における当該ノズルの塗布液吐出用の開口部の寸法によって決定される通常塗布距離より小さくなる高さ位置に配置した状態で、前記塗布液吐出ノズルから塗布液の吐出を開始するとともに、前記塗布液吐出ノズルの前記閉図形に沿った移動を開始する吐出開始工程と、前記塗布液吐出ノズルから吐出された塗布液が前記基板の表面に着床した後に、前記塗布液吐出ノズルを、当該塗布液吐出ノズルの下面と前記基板の表面との離間距離が前記通常塗布距離となる高さ位置まで上昇させる上昇工程と、前記塗布液吐出ノズルを、当該塗布液吐出ノズルの下面と前記基板の表面との離間距離が前記通常塗布距離となる高さ位置に維持した状態で、前記塗布液吐出ノズルの前記閉図形に沿った移動を継続させる塗布工程と、前記塗布液吐出ノズルが、当該塗布液吐出ノズルから吐出された塗布液が前記基板の表面に着床した位置付近に到達した後に、前記塗布液吐出ノズルからの塗布液の吐出を停止するとともに、前記塗布液吐出ノズルを、当該塗布液吐出ノズルの下面と前記基板の表面との離間距離が前記通常塗布距離である高さ位置から上方に上昇させる液切り工程とを備えたことを特徴とする。
【0015】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記閉図形は矩形であり、前記吐出開始工程においては、前記矩形の辺領域から前記塗布液吐出ノズルの移動を開始する。
【0016】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、前記通常塗布距離は、前記塗布液吐出ノズルの移動方向における当該ノズルの前記塗布液吐出用の開口部の寸法に相当する距離である。
【0017】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の発明において、前記開口部は円形であり、前記通常塗布距離は前記開口部の直径に相当する距離である。
【0018】
請求項5に記載の発明は、請求項1から請求項4のいずれかに記載の発明において、前記吐出開始工程においては、前記塗布工程よりも、前記塗布液吐出ノズルから吐出する塗布液の吐出量を多量にする。
【0019】
請求項6に記載の発明は、請求項1から請求項5のいずれかに記載の発明において、前記塗布液は、ガラス基板の製造時の封止工程において使用されるダム剤である。
【0020】
請求項7に記載の発明は、基板に対して、封止工程において使用されるダム剤を塗布するための塗布装置であって、前記基板を載置するステージと、ダム部を形成するためのダム剤を吐出する吐出口を備えたダム剤吐出ノズルと、前記ダム剤吐出ノズルと前記ステージとを、第1の方向と、この第1の方向と直交する第2の方向に相対的に移動させるダム剤吐出ノズル移動機構と、前記ダム剤吐出ノズルを昇降させるダム剤吐出ノズル昇降機構と、前記ダム剤吐出ノズルと、前記ダム剤吐出ノズル移動機構と、前記ダム剤吐出ノズル昇降機構とを制御することにより、前記ダム剤吐出ノズルを、当該ダム剤吐出ノズルの下面と前記ステージに載置された基板の表面との離間距離が、前記ダム剤吐出ノズルの移動方向における当該ノズルの塗布液吐出用の開口部の寸法によって決定される通常塗布距離より小さくなる高さ位置に配置した状態で、前記ダム剤吐出ノズルから塗布液の吐出を開始するとともに、前記ダム剤吐出ノズルの前記閉図形に沿った移動を開始し、前記ダム剤吐出ノズルから吐出された塗布液が前記ステージに載置された基板の表面に着床した後に、前記ダム剤吐出ノズルを、当該ダム剤吐出ノズルの下面と前記ステージに載置された基板の表面との離間距離が前記通常塗布距離となる高さ位置まで上昇させ、前記ダム剤吐出ノズルを、当該ダム剤吐出ノズルの下面と前記ステージに載置された基板の表面との離間距離が前記通常塗布距離となる高さ位置に維持した状態で、前記ダム剤吐出ノズルの前記閉図形に沿った移動を継続させ、前記ダム剤吐出ノズルが、当該ダム剤吐出ノズルから吐出された塗布液が前記ステージに載置された基板の表面に着床した位置付近に到達した後に、前記ダム剤吐出ノズルからの塗布液の吐出を停止するとともに、前記ダム剤吐出ノズルを、当該ダム剤吐出ノズルの下面と前記ステージに載置された基板の表面との離間距離が前記通常塗布距離である高さ位置から上方に上昇させる制御部とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
請求項1および請求項7に記載の発明によれば、基板の表面に塗布液による閉図形を形成する場合において、閉図形に対して塗布液の太りや断線を生ずることなく、閉図形を正確に形成することが可能となる。
【0022】
請求項2に記載の発明によれば、矩形状の辺領域において塗布液を重畳することにより、塗布液の太りや断線を生ずることなく、塗布液による矩形を形成することが可能となる。
【0023】
請求項3および請求項4に記載の発明によれば、矩形の各辺の塗布幅を一定に維持した状態で、塗布液による矩形を形成することが可能となる。
【0024】
請求項5に記載の発明によれば、塗布液の吐出開始時における基板に対する塗布液の着床タイミングを容易に制御することができ、塗布開始時における塗布状態を一定に維持することが可能となる。
【0025】
請求項6に記載の発明によれば、ガラス基板の製造時の封止工程において使用されるダム剤を正確に塗布することにより、ガラス基板を適正に製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】この発明に係る塗布装置の斜視図である。
【図2】ダム剤吐出ノズル14によるダム剤101の塗布状態と、フィル剤吐出ノズル24によるフィル剤102の塗布状態を模式的に示す説明図である。
【図3】この発明に係る塗布装置の制御系を示すブロック図である。
【図4】ガラス基板100の表面におけるダム剤101とフィル剤102の吐出状態を示す説明図である。
【図5】ダム剤吐出ノズル14の概要図である。
【図6】ダム剤吐出ノズル昇降機構を第1支持部材13およびダム剤吐出ノズル14とともに示す斜視図である。
【図7】ダム剤吐出ノズル14によるダム剤101の吐出動作を模式的に示す説明図である。
【図8】ダム剤吐出ノズル14からガラス基板100の表面にダム剤101が吐出される様子を模式的に示す説明図である。
【図9】ダム剤101が矩形状に塗布される様子を模式的に示す説明図である。
【図10】繋ぎ部分におけるダム剤101の断面を示す説明図である。
【図11】封止工程を模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、この発明に係る塗布装置の斜視図である。
【0028】
この塗布装置は、有機EL表示装置用ガラス基板や液晶表示装置用ガラス基板等のガラス基板100に対して、ダム剤101とフィル剤102とを塗布するためのものであり、ガラス基板100を載置するための、基台31上に固定されたステージ32と、ダム部を形成するためのダム剤101を吐出する吐出口を備えた複数のダム剤吐出ノズル14と、フィル部を形成するためのフィル剤102を吐出するスリットを備えたフィル剤吐出ノズル24とを備える。
【0029】
また、この塗布装置は、基台31上に配設された一対のガイドレール33に沿って第1の方向に往復移動可能な第1ガントリー11および第2ガントリー21を備える。第1ガントリー11には、第1の方向と直交する第2の方向に向けて一対のガイドレール12が配設されている。そして、ダム剤吐出ノズル14を支持する第1支持部材13が、これらのガイドレール12に沿って、第2の方向に往復移動可能となっている。ここで、ダム剤吐出ノズル14は、後述するダム剤吐出ノズル昇降機構により、第1支持部材13に対して昇降可能に支持されている。このため、ダム剤吐出ノズル14の下面とステージ32に載置されたガラス基板100の表面との離間距離は、変更可能となっている。
【0030】
同様に、第2ガントリー21には、第1の方向と直交する第2の方向に向けて一対のガイドレール22が配設されている。そして、フィル剤吐出ノズル24を支持する第2支持部材23が、これらのガイドレール22に沿って、第2の方向に往復移動可能となっている。ここで、フィル剤吐出ノズル24は、第2支持部材23に対して昇降可能に支持されている。このため、フィル剤吐出ノズル24の下面とステージ32に載置されたガラス基板100の表面との離間距離も、変更可能となっている。
【0031】
この塗布装置においては、第1、第2ガントリー11、21を、各々、第1の方向に移動させるとともに、第1、第2支持部材13、23を、各々、第2の方向に移動させることにより、ダム剤吐出ノズル14とフィル剤吐出ノズル23とを、互いに直交する第1の方向および第2の方向に往復移動させる構成となっている。
【0032】
なお、このときの第1ガントリー11の第1の方向への移動速度と第1支持部材13の第2の方向への移動速度、すなわち、ダム剤吐出ノズル14の互いに直交する方向への移動速度は、いずれも、毎秒10mm以上200mm以下となっている。この速度は、高速である方が塗布の効率を向上させることができるが、これを過度に高速とすると、ダム剤101を連続して塗布することが困難となる。ダム剤吐出ノズル14の互いに直交する方向への移動速度を、毎秒10mm以上200mm以下とすることにより、ダム剤101をとぎれさせることなく、良好な形状のダム部を形成することが可能となる。
【0033】
また、このときの第2ガントリー21の第1の方向への移動速度と第2支持部材23の第2の方向への移動速度、すなわち、フィル剤吐出ノズル24の互いに直交する方向への移動速度は、いずれも、毎秒10mm以上200mm以下となっている。この速度は、高速である方が塗布の効率を向上させることができるが、これを過度に高速とすると、フィル剤102の膜厚を所定値に維持することが困難となる。フィル剤吐出ノズル24の互いに直交する方向への移動速度を、毎秒10mm以上200mm以下とすることにより、フィル剤102をその膜厚を管理しながら塗布することが可能となる。
【0034】
なお、上述した実施形態においては、説明の便宜上、ダム剤吐出ノズル14およびフィル剤吐出ノズル24を、各々、2個のみ図示しているが、これらのダム剤吐出ノズル14およびフィル剤吐出ノズル24は、塗布の効率を向上させるため、さらに多数個配設される。
【0035】
図2は、ダム剤吐出ノズル14によるダム剤101の塗布状態と、フィル剤吐出ノズル24によるフィル剤102の塗布状態を模式的に示す説明図である。
【0036】
ダム剤吐出ノズル14は、後述するように、ダム部を形成するためのダム剤101を吐出する円形の吐出口15を備える。一方、フィル剤吐出ノズル24は、フィル部を形成するためのフィル剤102を吐出するスリット25を備える。このスリット25は、第2支持部材23の往復移動方向である第2の方向(図2における紙面に垂直な方向)を長手方向とする形状を有する。
【0037】
ダム剤吐出ノズル14とステージ32に載置されたガラス基板100の表面との離間距離D1は、後述するように、ダム剤吐出ノズル14の円形の吐出口15の直径Aに相当する距離、すなわち、吐出口15の直径Aと略同一となる距離となるように設定される。一方、フィル剤吐出ノズル24とステージ32に載置されたガラス基板100の表面との離間距離D2は、スリット25による塗布に適切な値に設定される。
【0038】
図3は、この発明に係る塗布装置の制御系を示すブロック図である。
【0039】
この発明に係る塗布装置は、装置の制御に必要な動作プログラムが格納されたROM41と、制御時にデータ等が一時的にストアされるRAM42と、論理演算を実行するCPU43とからなる制御部40を備える。この制御部40は、ダム剤吐出ノズル14の吐出動作を制御するダム剤吐出ノズル駆動部51と、フィル剤吐出ノズル24の吐出動作を制御するフィル剤吐出ノズル駆動部52とに接続されている。また、この制御部40は、第1ガントリー11を第1の方向に往復移動させるための第1ガントリー用モータ53と、第2ガントリー21を第1の方向に往復移動させる第2ガントリー用モータ54と、第1支持部材13を第2の方向に往復移動させる複数の第1支持部材用モータ55と、第2支持部材23を第2の方向に往復移動させる複数の第2支持部材用モータ56と、ダム剤吐出ノズル14を昇降させるダム剤吐出ノズル昇降モータ57と、フィル剤吐出ノズル24を昇降させるフィル剤吐出ノズル昇降モータ58と接続されている。
【0040】
以上のような構成を有する塗布装置において、ガラス基板100に対してダム剤101とフィル剤102の塗布を実行するときには、ステージ32上にガラス基板100を位置決めして載置するとともに、ダム剤吐出ノズル昇降モータ57およびフィル剤吐出ノズル昇降モータ58の駆動により、ダム剤吐出ノズル14とガラス基板100の表面との離間距離、および、フィル剤吐出ノズル24とガラス基板100の表面との離間距離を所定の値に設定する。しかる後、第1ガントリー11を第1の方向に移動させるとともに、第1支持部材13を第2の方向に移動させながら、ダム剤吐出ノズル14からダム剤101を吐出することにより、ガラス基板100上に矩形状のダム部を形成する。
【0041】
図4は、ガラス基板100の表面におけるダム剤101とフィル剤102の吐出状態を示す説明図である。図4(a)に示すガラス基板100上のダム剤101による矩形状の領域は、ダム部を示している。
【0042】
一列分のダム部が形成されれば、さらに、第1ガントリー11を第1の方向に移動させるとともに、第1支持部材13を第2の方向に移動させながら、ダム剤吐出ノズル14からダム剤101を吐出することにより、ガラス基板100上に次の列のダム部を形成する。
【0043】
また、ダム部の形成と並行して、ダム部の内部へのフィル部の塗布を実行する。この場合には、第2支持部材23を第2の方向に移動させることにより、フィル剤吐出ノズル24が、先にダム剤101により形成された矩形状のダム部の内側と対向する位置に配置される。そして、第2ガントリー21を第1の方向に移動させながらフィル剤吐出ノズル24からフィル剤を吐出することにより、ガラス基板100上のダム剤101による矩形状のダム部の領域内にフィル剤の薄膜を形成する。
【0044】
ここで、フィル剤吐出ノズル24の第2の方向と平行な方向のサイズが、ガラス基板100上に形成されたダム部の内部の一辺のサイズと一致している場合には、第2ガントリー21の移動によりフィル剤吐出ノズル24を第1の方向に移動させるだけで、フィル剤102の塗布作業が完了する。この場合には、図4(b)に示すように、ダム剤101によるダム部の内部全域に、フィル剤102による薄膜が形成されることになる。この場合においては、第2支持部23を第2の方向に往復移動させる第2支持部材用モータ56等のフィル剤吐出ノズル移動機構を省略してもよい。
【0045】
一方、フィル剤吐出ノズル24の第2の方向と平行な方向のサイズが、ガラス基板100上に形成されたダム部の内部の一辺のサイズより小さな場合には、第2支持部材23を第2の方向に移動させた後に、再度上記の動作を繰り返すことにより、ダム剤101によるダム部の内部全域にフィル剤102の薄膜を形成する。
【0046】
以上のように、この実施形態に係る塗布装置によれば、ダム剤101とフィル剤102とを、並行して効率的に塗布することが可能となる。
【0047】
ところで、このような塗布装置においては、ダム剤吐出ノズル14により閉図形である矩形状にダム剤101を塗布する塗布工程において、上述したように、書き出しと書き終わりのダム剤101が重畳する繋ぎ部分でダム剤101の線幅の局所的な太りや、ダム剤101の断線等が生ずる場合がある。このため、この発明に係る塗布装置においては、ダム剤吐出ノズル14の高さ位置等を適切に制御することにより、ダム剤101により矩形状のダム部を形成するときに、太りや断線を生ずることなく矩形を正確に形成するようにしている。
【0048】
以下、この発明に係る塗布方法について説明する。最初に、この塗布方法に使用するダム剤吐出ノズル14の構成について説明する。図5は、ダム剤吐出ノズル14の概要図である。
【0049】
このダム剤吐出ノズル14は、その内部にダム剤101を貯留する貯留部61と、貯留部61にダム剤101を供給するための供給部62と、ダム剤101を吐出する上述した円形の吐出口15が形成された吐出部63とを有する。貯留部61内には、スクリュー部65が配設されている。このスクリュー部65は、モータ64の駆動により回転する。このモータ64は、図3に示す制御部40により、ダム剤吐出ノズル駆動部51を介して制御され、正逆方向に回転する。そして、このモータ64の駆動によるスクリュー部65の回転動作により、ダム剤吐出ノズル14からダム剤101が吐出される。
【0050】
次に、ダム剤吐出ノズル14を昇降する第1支持部材13に付設されたダム剤吐出ノズル昇降機構の構成について説明する。図6は、ダム剤吐出ノズル昇降機構を第1支持部材13およびダム剤吐出ノズル14とともに示す斜視図である。
【0051】
このダム剤吐出ノズル昇降機構は、支持部76に付設された一対のガイド部材71に沿って昇降可能な昇降板72を備える。図3に示すダム剤吐出ノズル昇降モータ57は、支持部76に固定されている。そして、この昇降板72には、ダム剤吐出ノズル昇降モータ57により回転するネジ74と螺合するナット75が配設されている。このため、昇降板72は、ダム剤吐出ノズル昇降モータ57の駆動により昇降する。そして、ダム剤吐出ノズル14は、この昇降板72に固定されている。
【0052】
次に、このダム剤吐出ノズル14を使用した塗布動作について説明する。図7は、ダム剤吐出ノズル14によるダム剤101の吐出動作を模式的に示す説明図である。また、図8は、ダム剤吐出ノズル14からガラス基板100の表面にダム剤101が吐出される様子を模式的に示す説明図である。さらに、図9は、ダム剤101が矩形状に塗布される様子を模式的に示す説明図である。なお、図7(a)はダム剤吐出ノズル14によるダム剤101の吐出動作を横方向から模式的に示しており、図7(b)は、ガラス基板100上に塗布されたダム剤101を平面視した状態を模式的に示している。
【0053】
図7乃至図9における符号a、b、c、d、e、fは、各図に共通の工程を示している。また、図7における符号D1は、ダム剤101の塗布を開始するときと塗布を終了するとき以外の、通常の塗布状態におけるダム剤吐出ノズル14の下面とガラス基板100の表面との離間距離である通常塗布距離を示している。また、図7における符号D3は、通常塗布距離D1よりも小さい、塗布開始時のダム剤吐出ノズル14の下面とガラス基板100の表面との離間距離を示している。
【0054】
ここで、上記通常塗布距離D1は、ダム剤吐出ノズル14の移動方向における当該ノズル14のダム剤101の吐出用の円形の吐出口15(図5参照)の寸法に相当する距離であり、より具体的には、ダム剤吐出ノズル14の円形の吐出口15の直径Aに相当する距離、すなわち、吐出口15の直径Aと略同一となる距離である。これにより、矩形の各辺の塗布幅を一定に維持した状態で、塗布液による矩形を形成することが可能となる。なお、説明の便宜上、図7および図8においては、通常塗布距離D1を、ダム剤吐出ノズル14の吐出口15の直径Aよりも大きく図示している。
【0055】
ダム剤101の塗布を開始するときには、図9に示すように、閉図形である矩形の辺領域の中央部付近から塗布を行う。塗布開始前に、図7および図8に示すように、符号aで示す高位置に配置されたダム剤吐出ノズル14を、符号bで示すガラス基板100の表面に近接した位置まで下降させる。これによって、図7に示すように、ダム剤吐出ノズル14の下面とガラス基板100の表面との離間距離は、通常塗布距離D1より小さい距離D3となる。この離間距離は、例えば、200μm以下の距離である。そして、この状態においてダム剤吐出ノズル14からダム剤101の吐出を開始する。
【0056】
吐出開始時には、図5に示すモータ64の回転を制御することにより、ダム剤101の吐出量を、ダム剤101の塗布を開始するときと塗布を終了するとき以外の、通常の塗布状態におけるダム剤吐出ノズル14から吐出されるダム剤101の吐出量より多量にする。そして、ダム剤吐出ノズル14の矩形に沿った移動を開始する。
【0057】
このときには、ダム剤吐出ノズル14の下面とガラス基板100の表面との離間距離が十分小さい距離D3となっていることと、ダム剤101の吐出量が多量に設定されていることから、ダム剤吐出ノズル14から吐出されたダム剤101は、図8において符号cで示すように、ガラス基板100の表面にすぐに着床する。このため、ダム剤101のガラス基板100への着床位置を正確に制御することが可能となる。
【0058】
ダム剤吐出ノズル14から吐出されたダム剤101がガラス基板100の表面に着床した後、図5に示すモータ64の回転を制御することにより、ダム剤101の吐出量を減少させ、通常の塗布状態における吐出量とする。また、ダム剤吐出ノズル14を、ダム剤吐出ノズル14の下面とガラス基板100の表面との離間距離が上述した通常塗布距離D1となるように上昇させる。このときにも、ダム剤吐出ノズル14の矩形に沿った移動は継続している。そして、図7および図8において符号dで示すように、ダム剤吐出ノズル14の下面とガラス基板100の表面との離間距離を通常塗布距離D1に維持したままで、ダム剤吐出ノズル14をガラス基板100の表面に沿って矩形状に移動させることにより、図9に示すように、ダム剤101による矩形を形成する。
【0059】
そして、図9に示すように、ダム剤吐出ノズル14が矩形に沿って移動し、ダム剤吐出ノズル14から吐出されたダム剤101がガラス基板100の表面に着床した位置まで復帰した後、図5に示すモータ64の回転を制御することにより、ダム剤101の吐出を停止する。このときには、モータ64をダム剤101の吐出時とは逆方向に回転させることにより、ダム剤101を一時的に吸引(サックバック)するようにしてもよい。
【0060】
しかる後、図7および図8において符号fで示すように、ダム剤吐出ノズル14を、ダム剤吐出ノズル14の下面とガラス基板100の表面との離間距離が通常塗布距離D1である高さ位置から、さらに上方に上昇させる。これにより、図8において符号eで示すように、ダム剤吐出ノズル14からの吐出が停止されダム剤吐出ノズル14とガラス基板100の表面との間に延伸していたダム剤101が、図8において符号fで示すように、切断されて液切りされる。
【0061】
図10は、書き出しと書き終わりのダム剤101が重畳する繋ぎ部分におけるダム剤101の断面を示す説明図である。
【0062】
図7(b)に示すように、ダム剤101による矩形状図形の書き出し時に、ダム剤吐出ノズル14から吐出されたダム剤101がガラス基板100の表面に着床した後、ダム剤吐出ノズル14を上昇させた場合には、ガラス基板100の表面に塗布されたダム剤101の軌跡は、図7(b)において符号101cで示すように、着床位置から徐々に太くなる。一方、ダム剤101による矩形状図形の書き終わり時に、ダム剤吐出ノズル14からダム剤101の吐出を停止した後、ダム剤吐出ノズル14を上昇させた場合には、ガラス基板100の表面に塗布されたダム剤101の軌跡は、図7(b)において符号101eで示すように、着床位置から徐々に細くなる。
【0063】
このため、図10に示すように、この書き出し時におけるダム剤の軌跡101cと書き終わり時におけるダム剤の軌跡101eとを重畳させることにより、これらのダム剤101の軌跡が互いに補完され、重畳部分のダム剤101の幅を、通常の塗布幅と近似した幅とすることが可能となる。
【0064】
なお、上述した実施形態においては、ダム剤101を閉図形としての矩形状に塗布している。ここで、この明細書で述べる矩形状とは、その角部の角度が90度変更されている場合のみならず、その角部がわずかな距離だけアール状となった略矩形形状を含む概念である。但し、この発明の閉図形は、矩形に限定されるものではない。
【0065】
また、上述した実施形態においては、ダム剤吐出ノズル14におけるダム剤101吐出用の吐出口15として、その形状が円形のものを使用しているが、吐出口として円形以外の形状を有するものを使用してもよい。
【0066】
さらに、上述した実施形態においては、基板として有機EL表示装置用ガラス基板や液晶表示装置用ガラス基板等のガラス基板100を使用しているが、アクリル基板等のその他の透光性を有する基板や、その他の各種の基板を使用してもよい。
【符号の説明】
【0067】
11 第1ガントリー
12 ガイドレール
13 第1支持部材
14 ダム剤吐出ノズル
15 吐出口
21 第2ガントリー
22 ガイドレール
23 第2支持部材
24 フィル剤吐出ノズル
25 スリット
31 基台
32 ステージ
33 ガイドレール
40 制御部
51 ダム剤吐出ノズル駆動部
52 フィル剤吐出ノズル駆動部
53 第1ガントリー用モータ
54 第2ガントリー用モータ
55 第1支持部材用モータ
56 第2支持部材用モータ
57 ダム剤吐出ノズル昇降モータ
58 フィル剤吐出ノズル昇降モータ
61 貯留部
62 供給部
63 吐出部
64 モータ
65 スクリュー部
71 ガイド部材
72 昇降板
74 ネジ
75 ナット
76 支持部
100 ガラス基板
101 ダム剤
102 フィル剤


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に対して塗布液吐出ノズルから塗布液を吐出することにより、基板の表面に塗布液による閉図形を形成する塗布方法において、
前記塗布液吐出ノズルを、当該塗布液吐出ノズルの下面と前記基板の表面との離間距離が、前記塗布液吐出ノズルの移動方向における当該ノズルの塗布液吐出用の開口部の寸法によって決定される通常塗布距離より小さくなる高さ位置に配置した状態で、前記塗布液吐出ノズルから塗布液の吐出を開始するとともに、前記塗布液吐出ノズルの前記閉図形に沿った移動を開始する吐出開始工程と、
前記塗布液吐出ノズルから吐出された塗布液が前記基板の表面に着床した後に、前記塗布液吐出ノズルを、当該塗布液吐出ノズルの下面と前記基板の表面との離間距離が前記通常塗布距離となる高さ位置まで上昇させる上昇工程と、
前記塗布液吐出ノズルを、当該塗布液吐出ノズルの下面と前記基板の表面との離間距離が前記通常塗布距離となる高さ位置に維持した状態で、前記塗布液吐出ノズルの前記閉図形に沿った移動を継続させる塗布工程と、
前記塗布液吐出ノズルが、当該塗布液吐出ノズルから吐出された塗布液が前記基板の表面に着床した位置付近に到達した後に、前記塗布液吐出ノズルからの塗布液の吐出を停止するとともに、前記塗布液吐出ノズルを、当該塗布液吐出ノズルの下面と前記基板の表面との離間距離が前記通常塗布距離である高さ位置から上方に上昇させる液切り工程と、
を備えたことを特徴とする塗布方法。
【請求項2】
請求項1に記載の塗布方法において、
前記閉図形は矩形であり、前記吐出開始工程においては、前記矩形の辺領域から前記塗布液吐出ノズルの移動を開始する塗布方法。
【請求項3】
請求項2に記載の塗布方法において、
前記通常塗布距離は、前記塗布液吐出ノズルの移動方向における当該ノズルの前記塗布液吐出用の開口部の寸法に相当する距離である塗布方法。
【請求項4】
請求項3に記載の塗布方法において、
前記開口部は円形であり、前記通常塗布距離は前記開口部の直径に相当する距離である塗布方法。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載の塗布方法において、
前記吐出開始工程においては、前記塗布工程よりも、前記塗布液吐出ノズルから吐出する塗布液の吐出量を多量にする塗布方法。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載の塗布方法において、
前記塗布液は、ガラス基板の製造時の封止工程において使用されるダム剤である塗布方法。
【請求項7】
基板に対して、封止工程において使用されるダム剤を塗布するための塗布装置であって、
前記基板を載置するステージと、
ダム部を形成するためのダム剤を吐出する吐出口を備えたダム剤吐出ノズルと、
前記ダム剤吐出ノズルと前記ステージとを、第1の方向と、この第1の方向と直交する第2の方向に相対的に移動させるダム剤吐出ノズル移動機構と、
前記ダム剤吐出ノズルを昇降させるダム剤吐出ノズル昇降機構と、
前記ダム剤吐出ノズルと、前記ダム剤吐出ノズル移動機構と、前記ダム剤吐出ノズル昇降機構とを制御することにより、
前記ダム剤吐出ノズルを、当該ダム剤吐出ノズルの下面と前記ステージに載置された基板の表面との離間距離が、前記ダム剤吐出ノズルの移動方向における当該ノズルの塗布液吐出用の開口部の寸法によって決定される通常塗布距離より小さくなる高さ位置に配置した状態で、前記ダム剤吐出ノズルから塗布液の吐出を開始するとともに、前記ダム剤吐出ノズルの前記閉図形に沿った移動を開始し、
前記ダム剤吐出ノズルから吐出された塗布液が前記ステージに載置された基板の表面に着床した後に、前記ダム剤吐出ノズルを、当該ダム剤吐出ノズルの下面と前記ステージに載置された基板の表面との離間距離が前記通常塗布距離となる高さ位置まで上昇させ、
前記ダム剤吐出ノズルを、当該ダム剤吐出ノズルの下面と前記ステージに載置された基板の表面との離間距離が前記通常塗布距離となる高さ位置に維持した状態で、前記ダム剤吐出ノズルの前記閉図形に沿った移動を継続させ、
前記ダム剤吐出ノズルが、当該ダム剤吐出ノズルから吐出された塗布液が前記ステージに載置された基板の表面に着床した位置付近に到達した後に、前記ダム剤吐出ノズルからの塗布液の吐出を停止するとともに、前記ダム剤吐出ノズルを、当該ダム剤吐出ノズルの下面と前記ステージに載置された基板の表面との離間距離が前記通常塗布距離である高さ位置から上方に上昇させる制御部と、
を備えたことを特徴とする塗布装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−59751(P2013−59751A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−201545(P2011−201545)
【出願日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】