塗布方法および塗布装置
【課題】インクジェットヘッドのノズルから塗布液を吐出して塗布液の塗膜を形成しつつ、塗布液の塗膜の表面をより平滑にすることができる塗布方法および塗布装置を提供する。
【解決手段】インクジェットヘッドに設けられる複数のノズルから塗布液の液滴を基板Wに吐出させ、基板Wの周縁部における膜厚に比べて基板Wの中央部における膜厚が厚い塗布液の塗膜Fを形成する工程と、基板Wを回転させて基板Wの中央部から周縁部に向けて塗膜F内の塗布液を移動させる工程と、を備える塗布方法である。塗膜F内の塗布液を移動させる工程では、塗膜Fを形成している基板W上の塗布液は基板Wの中央部から周縁部に向かって移動するので、基板の中央部と基板の周縁部との間で塗膜の膜厚の差が減少し、塗膜の膜厚を略均一にすることができる。同時に、塗膜F内の塗布液が動くことによって、塗膜Fの表面をより平滑にすることができる。
【解決手段】インクジェットヘッドに設けられる複数のノズルから塗布液の液滴を基板Wに吐出させ、基板Wの周縁部における膜厚に比べて基板Wの中央部における膜厚が厚い塗布液の塗膜Fを形成する工程と、基板Wを回転させて基板Wの中央部から周縁部に向けて塗膜F内の塗布液を移動させる工程と、を備える塗布方法である。塗膜F内の塗布液を移動させる工程では、塗膜Fを形成している基板W上の塗布液は基板Wの中央部から周縁部に向かって移動するので、基板の中央部と基板の周縁部との間で塗膜の膜厚の差が減少し、塗膜の膜厚を略均一にすることができる。同時に、塗膜F内の塗布液が動くことによって、塗膜Fの表面をより平滑にすることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体ウエハ、フォトマスク用のガラス基板、液晶表示装置用のガラス基板、光ディスク用の基板など(以下、単に基板と称する)に対して、SOG(Spin On Glass,シリカ系被膜形成材とも呼ばれる) 液、レジスト感光剤、ポリイミド樹脂などの塗布液を塗布する塗布方法および塗布装置に係り、特に、塗布液の塗膜を基板に精度良く形成する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の方法として、いわゆるスピンコート法が用いられている。スピンコート法は、基板の中央部に塗布液を供給し、基板を回転させて塗布液に遠心力を作用させ、塗布液を基板の周縁部に広げることによって、塗布液の塗膜を基板に形成する手法である。塗布液を塗り広げる際、基板に供給した塗布液の一部は基板から振り切られて捨てられる。このため、塗布液の利用効率が低く、塗布液の消費量が多くなる。
【0003】
スピンコート法のほかには、インクジェット方式による方法がある。この方法は、インクジェットヘッドのノズルから塗布液の微小な液滴を基板に一様に吐出することによって、基板に塗膜を形成する。この方法によれば、基板を回転させて塗布液を塗り広げることなく塗膜を形成できるので、塗布液の消費量を低減することができる。(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−66391号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような構成を有する従来例の場合には、次のような問題がある。
すなわち、インクジェット方式では、液滴の集合によって塗膜が形成されるため、塗膜の表面を平滑にすることが困難であるという不都合がある。
【0006】
この発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、インクジェットヘッドのノズルから塗布液を吐出して塗布液の塗膜を形成しつつ、塗布液の塗膜の表面をより平滑にすることができる塗布方法および塗布装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、発明者は、インクジェット方式によって塗布液の塗膜を形成した後に、基板を回転させることを検討したところ、これによれば、却って塗膜の膜厚が基板全体にわたってばらついてしまうという新たな不都合を知見した。具体的には、塗膜の膜厚が基板の中央部に比べて基板の周縁部において厚くなってしまう傾向があることを知見した。
【0008】
このような知見に基づくこの発明は、次のような構成をとる。
すなわち、本発明は、インクジェットヘッドに設けられる複数のノズルから塗布液の液滴を基板に吐出させ、基板の周縁部における膜厚に比べて基板の中央部における膜厚が厚い塗布液の塗膜を形成する工程と、基板を回転させて基板の中央部から周縁部に向けて塗膜内の塗布液を移動させる工程と、を備える塗布方法である。
【0009】
[作用・効果]本発明に係る塗布方法によれば、塗膜を形成する工程では、インクジェットヘッドのノズルから塗布液の液滴を基板に吐出させて、基板上に塗膜を形成する。形成された塗膜の膜厚は、基板の周縁部において比較的に薄く、基板の中央部において比較的に厚い。なお、ノズルはインクジェット方式により塗布液の微小な液滴を吐出するので、基板上の位置に応じて塗布液の吐出量をきめ細かく調整することができる。よって、上述したように基板上の位置の応じて塗膜の膜厚を精度よく変えることができる。
【0010】
塗膜内の塗布液を移動させる工程では、基板を回転させ、塗膜に遠心力を作用させる。塗膜を形成している基板上の塗布液は、基板の中央部から周縁部に向かって移動する。これにより、基板の中央部と基板の周縁部との間で塗膜の膜厚の差が減少し、基板面内における塗膜の膜厚を略均一にすることができる。同時に、塗膜内の塗布液が動くことによって、塗膜の表面をより平滑にすることができる。
【0011】
上述した発明において、塗膜を形成する工程は、基板の周縁部から中央部に向かって膜厚が増大している塗膜を形成することが好ましい。「膜厚が増大している」とは、徐々に膜厚が増大している場合、段階的に膜厚が増大している場合、あるいは、一定の割合で膜厚が増大している場合のいずれをも含む意味である。このように、基板の周縁部と中央部との間にわたって中央部ほど膜厚が大きくなるように膜厚が変化しているので、塗膜内の塗布液を移動させる工程によって、塗膜の膜厚をより一層均一にさせることができる。
【0012】
上述した発明において、塗膜を形成する工程は、基板を区画する複数の同心円状の領域の間で膜厚が異なり、かつ、外周側の領域から内周側の領域にかけて段階的に膜厚が厚くなっている塗膜を形成することが好ましい。これによれば、各領域においては、一様な膜厚の塗膜を形成すればよいので、塗膜を容易に形成することができる。
【0013】
上述した発明において、塗膜を形成する工程は、少なくとも基板を回転させることによってインクジェットヘッドと基板を相対的に移動させつつノズルから基板に液滴を吐出させ、塗膜を形成する工程における基板の回転速度は、塗膜内の塗布液を移動させる工程における基板の回転速度に比べて小さいことが好ましい。比較的低い回転速度で基板を回転させながら塗膜を形成するので、塗膜を精度よく形成することができる。また、塗膜内の塗布液を移動させる工程では、比較的高い回転速度で基板を回転させるので、塗膜の膜厚の均一性を好適に高めることができる。
【0014】
上述した発明において、塗膜を形成する工程は、インクジェットヘッドを静止させるとともに基板を回転させつつ各ノズルから液滴を吐出させる工程と、インクジェットヘッドを基板の径方向に移動させる工程と、を有し、液滴を吐出させる工程およびインクジェットヘッドを移動させる工程を交互に繰り返すことによって塗膜を形成することが好ましい。液滴を吐出させる工程では、基板の径方向に対する各ノズルの位置は変わらない。よって、各ノズルから吐出させる塗布液の吐出量の制御を簡素化することができる。また、インクジェットヘッドを移動させる工程を有しているので、インクジェットヘッドが基板に比べて小さい場合であっても、塗布液の塗膜を基板の全面に好適に形成することができる。
【0015】
上述した発明において、塗膜を形成する工程は、基板の中央部と周縁部との間にわたってインクジェットヘッドを配置し、基板を回転させつつノズルから基板に液滴を吐出させることが好ましい。これによれば、基板を1回転させるだけで、塗膜の形成を完了することができる。
【0016】
上述した発明において、塗膜を形成する工程は、基板を回転させずにインクジェットヘッドを平行移動させつつノズルから基板に液滴を吐出させることが好ましい。これによれば、基板を静止させた状態でインクジェットヘッドのみを回転移動ではなく平行移動させる。このため、インクジェットヘッドを回転移動させる場合に比べて、基板に対する各ノズルの移動量(変位量)を一様にすることができる。よって、単位面積当たりの塗布液の吐出量を容易に調整することができ、塗膜の膜厚を容易に調整することができる。
【0017】
上述した発明において、塗膜を形成する工程の前に、基板に塗布液の溶剤を供給する工程を備えていることが好ましい。予め基板に溶剤が供給されているので、基板上に吐出された塗布液は拡散し易くなる。よって、塗膜内の塗布液を移動させる工程では、塗膜を形成している塗布液が移動し易くなり、塗膜の膜厚の均一性を好適に高めることができる。
【0018】
上述した発明において、塗膜を形成する工程の後であって、塗膜内の塗布液を移動させる工程の前に、基板を静止させた状態に保つ工程を備えていることが好ましい。基板を静止させた状態に保つ工程では、基板上で隣接している液滴同士が一層なじみ、一層滑らかに連なることが期待できる。よって、塗膜内の塗布液を移動させる工程では、塗膜の表面をより一層平滑にすることができる。
【0019】
また、本発明は、基板に塗布液を塗布する塗布装置であって、基板を回転可能に保持する回転保持部と、塗布液の液滴を吐出可能な複数のノズルを有するインクジェットヘッドと、前記インクジェットヘッドと基板を相対的に移動させる相対移動機構と、前記相対移動機構を制御して基板と前記インクジェットヘッドを相対的に移動させつつ、前記ノズルを制御して前記ノズルから液滴を基板に吐出させて、基板の周縁部における膜厚に比べて基板の中央部における膜厚が厚い塗布液の塗膜を形成し、その後、前記回転保持部を制御して基板を回転させて、基板の中央部から周縁部に向けて塗膜内の塗布液を移動させる制御部と、を備えている塗布装置である。
【0020】
[作用・効果]本発明に係る塗布装置によれば、制御部は、先ず、相対移動機構とノズルを制御して、基板全体に塗布液の塗膜を形成する。形成される塗膜の膜厚は、基板の周縁部において比較的に薄く、基板の中央部において比較的に厚い。続いて、制御部は、回転保持部を制御して基板を回転させ、塗膜に遠心力を作用させる。塗膜内に含まれている基板上の塗布液は、基板の中央部から周縁部に向かって移動する。これにより、基板の中央部と基板の周縁部との間で塗膜の膜厚の差が減少し、塗膜の膜厚を基板全体にわたって略均一にすることができる。また、塗膜内の塗布液の移動により、塗膜の表面をならすことができ、塗膜の表面をより平滑にすることができる。
【0021】
なお、本明細書は、次のような塗布方法および塗布装置に係る発明も開示している。
【0022】
(1)上述した塗布方法において、塗膜を形成する工程は、基板の中央部に比べて基板の周縁部においては、ノズルから吐出させる液滴の大きさを大きくする塗布方法。
【0023】
(2)上述した塗布方法において、塗膜を形成する工程は、基板の中央部に比べて基板の周縁部においては、ノズルから液滴を吐出させる周波数を大きくする塗布方法。
【0024】
液滴の大きさ、または、吐出周波数を変えることで塗布液の吐出量をきめ細かく調整することができ、これにより塗膜の膜厚を精度良く調整することができる。したがって、前記(1)および前記(2)に記載の発明によれば、基板の周縁部における膜厚に比べて基板の中央部における膜厚が厚い塗布液の塗膜を好適に整形することができる。
【0025】
(3)上述した塗布装置において、前記制御部は、前記ノズルから吐出させる液滴の大きさ、及び、前記ノズルから液滴を吐出させる周波数の少なくともいずれかを調整する塗布装置。
【0026】
前記(3)に記載の発明によれば、制御部は、基板の位置に応じて塗布液の吐出量及び塗膜の膜厚を好適に調整することができる。
【0027】
(4)上述した塗布装置において、前記回転保持部は、前記相対移動機構を兼ねるとともに、前記相対移動機構は、さらに、前記インクジェットヘッドを基板の径方向に移動させるヘッド移動機構を含み、前記制御部は、前記回転保持部および前記ヘッド移動機構を制御して、基板を回転させ、前記インクジェットヘッドを基板の径方向に移動させることによって、基板と前記インクジェットヘッドを相対移動させる塗布装置。
【0028】
前記(4)に記載の発明によれば、基板に対してインクジェットヘッドを周方向に移動させることができ、また、基板に対してインクジェットヘッドを径方向に移動させることができる。各移動によって、または、これらの移動の組み合わせによって、基板上の任意の位置に任意の方向でインクジェットヘッドを相対的に移動させることができる。また、インクジェットヘッドが基板に比べて小さい場合であっても、インクジェットを基板上の任意の位置に移動させることができる。
【0029】
(5)上述した塗布装置において、前記インクジェットヘッドは、基板の中央部から周縁部にわたって配置可能であり、前記回転保持部は、前記相対移動機構を兼ね、前記制御部は、前記インクジェットヘッドを基板の中央部から周縁部にわたって配置させた状態で前記回転保持部を制御して基板を回転させることによって、基板と前記インクジェットヘッドを相対移動させる塗布装置。
【0030】
前記(5)に記載の発明によれば、基板を1回転させるだけで、塗膜の形成を完了することができる。
【0031】
(6)上述した塗布装置において、前記相対移動機構は、前記インクジェットヘッドを平行移動させるヘッド移動機構であり、前記制御部は、前記ヘッド移動機構を制御して静止する基板に対してインクジェットヘッドを移動させることによって、基板と前記インクジェットヘッドを相対的に移動させる塗布装置。
【0032】
前記(6)に記載の発明によれば、制御部は基板を回転させずにインクジェットヘッドのみを平行移動させる。このため、インクジェットヘッドを回転移動させる場合に比べて、基板に対する各ノズルの移動量(変位量)を一様にすることができる。よって、単位面積当たりの塗布液の吐出量を容易に調整することができ、塗膜の膜厚を容易に調整することができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明に係る塗布方法によれば、塗膜を形成する工程では、インクジェットヘッドのノズルから塗布液の液滴を基板に吐出させて、基板上に塗膜を形成する。この際、塗膜の膜厚が基板の周縁部において比較的に薄く、基板の中央部において比較的に厚くなるような塗膜を敢えて形成しておく。塗膜内の塗布液を移動させる工程では、基板を回転させ、塗膜に遠心力を作用させる。塗膜を形成している基板上の塗布液は、基板の中央部から周縁部に向かって移動する。これにより、基板の中央部と基板の周縁部との間で塗膜の膜厚の差が減少し、基板面内における塗膜の膜厚を最終的に略均一にすることができる。同時に、塗膜内の塗布液が動くことによって、塗膜の表面をより平滑にすることができる。
【0034】
また、本発明に係る塗布装置によれば、制御部は、相対移動機構を制御して基板とインクジェットヘッドを相対移動させつつ、ノズルを制御してノズルから液滴を基板に吐出させて基板の周縁部における膜厚に比べて基板の中央部における膜厚が厚い塗布液の塗膜を基板に形成する。その後、制御部は、回転保持部を制御して基板を回転させて塗膜内の塗布液を基板の中央部から周縁部に向かって移動させる。よって、上述した方法を好適に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】実施例1に係る塗布装置の概略構成を示す図である。
【図2】インクジェットヘッドの下面を示す図である。
【図3】実施例1に係る塗布装置の平面図である。
【図4】実施例1に係る塗布装置の動作を示すフローチャートである。
【図5】(a)、(b)、(c)はそれぞれ、基板の各領域に塗膜を形成している様子を模式的に示す図である。
【図6】基板に形成された塗膜を示す図であり、(a)は領域Aに塗膜を形成した状態を示し、(b)は領域A、Bに塗膜を形成した状態を示し、(c)は領域A乃至Cに塗膜を形成した状態を示す。
【図7】(a)は、塗膜内のレジストが移動する様子を模式的に示す断面図であり、(b)はステップS3の終了時における塗膜を模式的に示す断面図である。
【図8】実施例2に係る塗布装置の平面図である。
【図9】実施例2に係る塗布装置の動作を示すフローチャートである。
【図10】基板に塗膜を形成している様子を模式的に示す図である。
【図11】ステップT2の終了時における塗膜を模式的に示す断面図である。
【図12】変形実施例に係る塗膜を模式的に示す断面図である。
【図13】変形実施例に係る塗布装置(方法)において、基板に塗膜を形成している様子を模式的に示す図である。
【実施例1】
【0036】
以下、図面を参照してこの発明の実施例1を説明する。
図1は、実施例1に係る塗布装置の概略構成を示す図である。なお、本実施例では、塗布液としてレジスト感光剤(以下、適宜「レジスト」という)を塗布する塗布装置及び塗布方法を例に採って説明する。
【0037】
塗布装置は、基板Wを回転可能に保持する回転保持部1を備えている。回転保持部1は、スピンチャック3とモータ5を含む。スピンチャック3は、基板Wの下面中央を吸着することにより基板Wを略水平姿勢で保持する。スピンチャック3の下部中央にはモータ5の出力軸5aの先端が連結されている。モータ5が出力軸5aを回転駆動することにより、スピンチャック3及び基板Wは回転軸Ra周りに一体に回転する。回転軸Raは基板Wの略中心を通る。
【0038】
なお、回転保持部1は、上記の例に限られない。たとえば、スピンチャック3を、基板Wの端縁を保持する複数のピンが設けられた回転板に変更してもよい。
【0039】
スピンチャック3の周囲には、飛散防止カップ7が配備されている。飛散防止カップ7は、基板Wの外周から周囲に飛散するレジストや溶剤等を下方へ案内するとともに回収する。
【0040】
本装置は、基板Wにレジストを供給するインクジェットヘッド11を備えている。インクジェットヘッド11は、配管13を介してレジスト供給源15に連通接続されている。
【0041】
図2を参照する。図2は、インクジェットヘッド11の下面を示す図である。インクジェットヘッド11の下面には、複数個(例えば、数十個から数百個)のインクジェット方式のノズル12が形成されている。なお、インクジェットヘッド11の長手方向の長さLは、基板Wの半径よりも短い。
【0042】
ノズル12は、千鳥配列で2列に並ぶように配置されている。ここで、ノズル12が並ぶ方向を適宜「列方向DN」という。列方向DNに隣接するノズル12間のピッチPは、例えば、0.1[mm]から0.2[mm]である。各ノズル12から吐出する液滴は、例えば数[pl]から数十[pl]である。各ノズル12が液滴を吐出する周波数(以下、「吐出周波数」という)は、例えば最大で数十[kHz]である。すなわち、各ノズル12が1秒間に液滴を吐出可能な回数は、例えば最大数万回である。
【0043】
各ノズル12には、アクチュエータとして例えばピエゾ素子(不図示)がそれぞれ設けられている。ピエゾ素子に印加する電圧の大きさを可変することによって、ノズル12が吐出する液滴の大きさを調整することができる。また、ピエゾ素子に印加する電圧のパルス間隔を可変することで、ノズル12の吐出周波数を調整することができる。
【0044】
図1に示すように、本装置は、インクジェットヘッド11を移動可能に支持するヘッド移動機構21を備えている。ヘッド移動機構21は、基板Wの上方の位置(図1に示すインクジェットヘッド11の位置)と基板Wの上方から外れた位置(以下、「退避位置」という)との間でインクジェットヘッド11を進退移動する。なお、図1では、図示の便宜上、インクジェットヘッド11の下面と基板Wの上面との離隔距離が比較的に大きいが、インクジェットヘッド11は基板W上面に近接していることが好ましい。
【0045】
図3を参照してヘッド移動機構21の構成を説明する。図3は、塗布装置の平面図である。ヘッド移動機構21は、レール部22と自走台23とアーム部24とを備えている。レール部22は、飛散防止カップ7の側方に、水平1軸方向に延びるように配置されている。レール部22には自走台23が摺動可能に取り付けられている。自走台23の上部にはアーム部24の基端が連結されている。アーム24は、基端からレールと略直交する方向に延びており、その先端にインクジェットヘッド11が支持されている。自走台23を駆動すると、自走台23がレール部22に沿って移動する。インクジェットヘッド11は、水平1軸方向に前後移動し、退避位置(図3に実線で示すインクジェットヘッド11の位置)と、基板Wの上方の位置(図3に点線で示すインクジェットヘッド11の位置)との間で移動する。
【0046】
本実施例では、インクジェットヘッド11が回転軸Ra上の位置を通るようにヘッド移動機構21が構成されている。すなわち、インクジェットヘッド11は、基板Wの径方向DRに移動可能である。なお、基板Wの径方向DRは、基板Wの回転軸Raと直交する方向であり、基板Wの半径方向と略一致する。また、インクジェットヘッド11は、ノズル12の列方向DNが基板Wの径方向DR(すなわち、インクジェットヘッド11の移動方向)と一致するようにアーム24に支持されている。なお、ヘッド移動機構21は、この発明における相対移動機構を構成している。また、上述した回転保持部1も、この発明における相対移動機構を兼ねている。
【0047】
図1を参照する。本装置は、基板Wに塗布液(レジスト)の溶剤を供給する溶剤供給部31を備えている。溶剤供給部31は、配管33及び開閉弁34を介して溶剤供給源35に連通接続されている。そして、開閉弁34を開放すると、溶剤供給部31は基板Wに溶剤を連続的に供給する(一定の流量で溶剤を吐出する)。また、開閉弁34を閉止すると、溶剤供給部31は基板Wへの溶剤の供給を停止する。
【0048】
溶剤としては、塗布液がレジストである場合、PGMEA、乳化エチル、IPAなどが例示される。溶剤供給部31は、図示省略の溶剤供給部移動機構によって、基板Wの上方の位置と基板Wの上方から外れた退避位置(図1に実線で示す溶剤供給部31の位置)との間で進退移動可能である。
【0049】
また、本装置は、上述した各構成を統括的に操作する制御部41を備えている。具体的には、制御部41は、モータ5を制御して基板Wの回転数(回転速度)を調整し、ヘッド移動機構21を制御してインクジェットヘッド11を移動させる。また、制御部41は、モータ5及びヘッド移動機構21の各制御と連動して各ノズル12を制御し、レジストの吐出量を調整する。吐出量の調整は、例えば、各ノズル12のピエゾ素子に印加する電圧の大きさ及び/又はパルス間隔を可変して、液滴の大きさ及び/又は吐出周波数を調整することによって行われる。さらに、制御部41は、図示省略の溶剤供給部移動機構を制御して溶剤供給部31を移動させ、開閉弁34を制御して溶剤の供給・停止を切り替える。
【0050】
制御部41は、基板Wを処理するための処理条件が予め設定されている処理レシピ等を有している。処理条件としては、後述する基板Wの回転速度である第1、第2速度に関する情報や、基板W内の位置/領域に応じたレジストの吐出量に関する情報などが例示される。ここで、レジストの吐出量に関する情報は、例えば、液滴の大きさ、吐出周波数などに関する情報を含んでいてもよい。制御部41は、各種処理を実行する中央演算処理装置(CPU)や、演算処理の作業領域となるRAM(Random-Access Memory)や、各種情報を記憶する固定ディスク等の記憶媒体等によって実現されている。
【0051】
次に、実施例1に係る塗布装置の動作(塗布方法)について説明する。図4は、塗布装置の動作を示すフローチャートである。なお、基板Wは、外部から塗布装置に搬送され、既にスピンチャック3に保持されているものとする。
【0052】
<ステップS1> 溶剤の供給(基板に塗布液の溶剤を供給する工程)
制御部41は、図示省略の溶剤供給部移動機構を制御して溶剤供給部31を退避位置から基板Wの上方の位置に移動させる。続いて、開閉弁34を開放させて溶剤供給部31から溶剤を基板W上に供給させるとともに、モータ5を制御して基板Wを回転させる。溶剤は基板W上の全面に広がり、溶剤の一部は基板Wから振り切られて、基板W外に捨てられる。捨てられた溶剤は飛散防止カップ7によって回収される。これにより、基板W上の全面に溶剤の塗膜が形成される。所定時間が経過すると、開閉弁34を閉止させて、溶剤供給部31を退避位置に移動し、基板Wの回転を停止する。
【0053】
<ステップS2> 塗膜の形成(塗膜を形成する工程)
本ステップS2は、基板Wの上面を仮想的な3つの領域A、B、Cに分け、領域A、B、C毎に塗膜をそれぞれ形成する。領域A乃至Cはそれぞれ回転軸Raを中心とする同心円状の領域である。領域Aは最も内周側の円形の領域であり、領域Cは最も外周側の円環状の領域であり、領域Bは領域Aと領域Cとの間に挟まれる円環状の領域である。なお、この発明における中央部は、領域Aに含まれ、この発明における周縁部は領域Cに含まれる。以下では、各領域A、B、Cに塗膜を形成する工程をステップS2a、S2b、S2cとして、これらステップS2a〜ステップS2cについて順に説明する。
【0054】
<ステップS2a> 領域Aの塗膜の形成
制御部41は、ヘッド移動機構21を制御して、インクジェットヘッド11を基板Wの回転軸Ra上に移動させ、その位置でインクジェットヘッド11を静止させる。続いて、制御部41は、処理レシピを参照して、モータ5を制御して基板Wを一定の第1速度で回転させるとともに、各ノズル12を制御して各ノズル12からレジストの液滴を基板Wに吐出させる。この際、制御部41は、レジストの吐出量についても処理レシピに基づいて調整する。なお、基板Wの第1速度は、低速であることが好ましく、例えば、60[rpm]等が例示される。
【0055】
インクジェットヘッド11は基板Wに対して相対的に周方向に等速で回転移動する。インクジェットヘッド11と対向した基板Wの範囲には、ノズル12から吐出されたレジストの液滴が着弾し、塗膜(具体的にはレジスト膜)が形成される。
【0056】
図5を参照する。図5(a)、(b)、(c)はそれぞれ、基板Wの各領域A、B、Cに塗膜を形成している様子を模式的に示す図である。 図5(a)は、本ステップS2aの実行中の状態を示している。なお、図5では、領域A、B、Cに形成された塗膜を、それぞれ符号Fa、Fb、Fcで示す(後述する図6においても同じ)。
【0057】
基板Wが1回転すると、制御部41は基板Wの回転を停止させ、制御部41はノズル12からの液滴の吐出を停止させる。
【0058】
図6を参照する。図6は、基板Wに形成された塗膜を模式的に示す平面図および断面図であり、(a)は領域Aのみに塗膜を形成した状態を示し、(b)は領域A、Bに塗膜を形成した状態を示し、(c)は領域A乃至Cに塗膜を形成した状態を示す。なお、各(a)、(b)、(c)では上段に平面図を示し、下段に断面図を示す。また、図6では、基板W上をコーティングしている溶剤を符号Gで示している(後述する図7、11、12においても同じ)。
【0059】
ステップS2aの終了時には、図6(a)に示すように、領域Aのみに、塗膜Faが形成されている。また、図示するように、塗膜Faの表面(上面)には、基板Wに着弾した後の液滴の形状に応じて凹凸が残り、塗膜Faの表面は滑らかになっていない。
【0060】
<ステップS2b> 領域Bの塗膜の形成
制御部41は、ヘッド移動機構21を制御して、インクジェットヘッド11をその長さLに相当する距離だけ径方向DR外方に移動させる。図5(b)に示すように、インクジェットヘッド11は、上述した塗膜形成済みの領域Aの外周と隣接する位置で静止する。続いて、制御部41は基板Wを第1速度で回転させるとともに、各ノズル12からレジストの液滴を基板Wに吐出させる。これにより、領域Aの外側の領域Bに塗膜Fbが形成される。
【0061】
この領域Bに塗膜Fbを形成する際、制御部41は、処理レシピに基づいて、塗膜Fbの膜厚が塗膜Faの膜厚に比べて薄くなるように、レジストの吐出量を調整する。言い換えれば、制御部41は、領域Aに比べて領域Bでは単位面積当たりのレジストの吐出量を小さくさせる。レジストの吐出量を低下させる具体的な手法としては、ノズル12から吐出させる液滴の大きさを小さくすること、及び/又は、ノズル12の吐出周波数を低下させること等が例示される。
【0062】
基板Wが1回転すると、制御部41は基板Wの回転を停止させ、ノズル12からの液滴の吐出を停止させる。
【0063】
この結果、図6(b)に示すように、領域Bには、塗膜Faに比べて膜厚が小さい塗膜Fbが形成される。
【0064】
<ステップS2c> 領域Cの塗膜の形成
ステップS2a、S2bと同様に、インクジェットヘッド11を基板Wの径方向DRに移動させる動作と、インクジェットヘッド11を所定位置で静止させるとともに基板Wを回転させつつ各ノズル12から液滴を吐出させる動作を交互に繰り返す。これにより、図5(c)に示すように、インクジェットヘッド11は領域Cに配置され、塗膜Fcが領域Cに形成される。
【0065】
この領域Cに塗膜Fcを形成する際、制御部41は、処理レシピに基づいて、塗膜Fcの膜厚が塗膜Fbの膜厚に比べて薄くなるように、レジストの吐出量を調整する。
【0066】
基板Wが1回転すると、制御部41は基板Wの回転を停止させ、制御部41はノズル12による液滴の吐出を停止させる。さらに、制御部41は、インクジェットヘッド11を退避位置に移動させる。
【0067】
この結果、図6(c)に示すように、領域Cには、領域A、Bにおける塗膜Fa、Fbに比べて膜厚が小さい塗膜Fcが形成される。基板Wの全体は、塗膜Fa、Fb、Fcによって覆われる(以下では、特に塗膜Fa、Fb、Fcを区別しないときは、単に「塗膜F」という)。塗膜Fの膜厚は、図6(c)に示すように、基板Wの周縁部から中央部にかけて段階的に厚くなっている。
【0068】
<ステップS3> 基板Wの回転(塗膜内の塗布液を移動させる工程)
制御部41は、モータ5を制御して、第1速度よりも大きな第2速度で基板Wを回転させる。第2速度としては、高速であることが好ましく、例えば、3000[rpm]等が例示される。塗膜Fには遠心力が作用し、塗膜Fを形成している基板W上のレジストは、径方向DR外方に移動する。
【0069】
図7(a)は、塗膜F内のレジストが移動する様子を模式的に示す断面図であり、図7(b)はステップS3の終了時における塗膜Fの状態を模式的に示す断面図である。
【0070】
図7(a)に示すように、塗膜F内のレジストは基板Wの中央部から周縁部に向かって移動する。具体的には、塗膜Faからはレジストが流出し、塗膜Fcにはレジストが流入する。また、レジストの一部は、基板Wの周縁から振り切られて基板W外に捨てられる。
【0071】
これにより、塗膜Faの膜厚は減少する一方、塗膜Fcの膜厚は増加する。ステップS2で説明したとおり、予め、基板Wの周縁部から中央部にかけて膜厚が段階的に厚くなるような塗膜Fを形成しているので、塗膜Fの膜厚のばらつきは緩和され、塗膜Fの膜厚は基板W面内において略均一になる。
【0072】
また、塗膜F内のレジストが動くことにより、塗膜Fの表面はならされ、滑らかに整えられていく。
【0073】
所定時間が経過すると、制御部41はモータ5を制御して基板Wの回転を停止する。
【0074】
この結果、ステップS3の終了時には、図7(b)に示すように、膜厚が略均一であるとともに、表面が平滑化された塗膜Fが得られる。
【0075】
このように、実施例1に係る塗布装置によれば、ステップS2(塗膜の形成)では、基板Wの周縁部に比べて中央部の方が膜厚の厚い塗膜Fを敢えて形成する。このため、ステップS3(基板Wの回転)において塗膜F内のレジストを基板Wの中央部から周縁部に向けて移動させると、塗膜Fの表面をより平滑にすることができるとともに塗膜Fの膜厚を基板W全体にわたって略均一にすることができる。
【0076】
また、ステップS2では、基板Wの周縁部と中央部との間にわたり、中央部に向かって膜厚が増大している塗膜Fを形成するので、ステップS3(基板Wの回転)の終了時には、膜厚の均一性が一層高い塗膜Fを得ることができる。
【0077】
また、ステップS2a乃至S2cを通じて、インクジェットヘッド11を静止させるとともに基板Wを回転させつつ各ノズル12から液滴を吐出させる動作と、インクジェットヘッド11を基板Wの径方向DRに移動させる動作とを、交互に3回繰り返す。これにより、同心円状の領域A乃至Cに個別に塗膜Fa乃至Fcを形成することができる。
【0078】
また、ステップS2では、領域A、B、Cごとに塗膜Fの膜厚を異ならせ、各領域A、B、C内ではそれぞれ同じ膜厚の塗膜Fa、Fb、Fcを形成する。よって、塗膜Fを簡略に形成することができる。また、制御部41は、各ステップS2a乃至S2bにおいてノズル12をそれぞれ一様に制御すればよいので、制御部41による制御を簡略化することができる。
【0079】
また、ステップS2aにおいては、基板Wの径方向DRにおける各ノズル12の位置は変わらないので、塗膜Faを容易に形成することができる。同様に、ステップS2b、3においても、基板Wの径方向DRにおける各ノズル12の位置は変わらないので、塗膜Fb、Fcをそれぞれ容易に形成することができる。また、制御部41によるノズル12の制御を簡略化することができる。
【0080】
また、ノズル12はインクジェット方式であるので、基板Wの位置又は領域に応じて、レジストの吐出量をきめ細かく精度よく調整することができる。よって、上述したような基板Wの周縁部と中央部との間で膜厚が異なる塗膜Fを好適に形成することができる。
【0081】
また、ステップS2では、第2速度よりも低い第1速度で基板Wを回転させるので、ノズル12から基板W上の各位置に精度よく液滴を着弾させることができる。よって、塗膜Fを信頼性良く形成することができる。
【0082】
また、ステップS3では、第1速度よりも大きい第2速度で基板Wを回転させるので、塗膜Fに対して好適に遠心力を作用させることができる。この結果、塗膜Fの膜厚の均一性を一層高めることができる。
【0083】
また、ステップS2の前に、基板Wにレジストの溶剤を供給する工程(ステップS1)を備えているので、基板W上に吐出されたレジストが広がりやすくなる。これにより、塗膜Fの平滑化を促進することができる。また、ステップS3を行うときに塗膜F内のレジストが移動し易くなり、塗膜Fの膜厚の均一性を好適に高めることができる。
【実施例2】
【0084】
次に、図面を参照してこの発明の実施例2を説明する。
本実施例2においても、塗布液としてレジストを塗布する塗布装置を例に採って説明する。実施例2の構成のうち、主にインクジェットヘッドに関連する構成が実施例1と異なっているため、インクジェットヘッドを中心に実施例2の構成を説明する。なお、その他の回転保持部1、溶剤供給部31等の構成は、実施例1と略同様である。実施例1と同じ構成については同符号を付す。
【0085】
図8は、実施例2に係る塗布装置の平面図である。実施例2は、実施例1のインクジェットヘッド11よりも長いインクジェットヘッド51を備えている。インクジェットヘッド51の長手方向の長さLは、少なくとも基板Wの半径と同程度である。インクジェットヘッド51の下面には、多数のノズル12が形成されている。
【0086】
本装置は、インクジェットヘッド51を移動可能に支持するヘッド移動機構61を備えている。ヘッド移動機構61は、回転台62とアーム部63を備えている。回転台62はアーム部63の基端を支持するとともに、回転台62を通る略鉛直な回転軸Rb回りにアーム部63を回転可能である。アーム部63は、インクジェットヘッド51を支持している。回転台62を駆動すると、インクジェットヘッド51は、水平方向に旋回移動(回転移動)し、基板Wの上方の位置と基板Wの上方から外れた退避位置(図8に点線で示すインクジェットヘッド51の位置)との間で移動する。
【0087】
本実施例において、ヘッド移動機構61は、インクジェットヘッド51が基板Wの中央部と周縁部との間にわたるような処理位置(図8に実線で示すインクジェットヘッド51の位置)に、インクジェットヘッド51を配置可能に構成されている。インクジェットヘッド51が処理位置にあるとき、ノズル12は、基板Wの回転軸Raと周縁部との間にわたって径方向DRに沿って並んでいる。なお、このヘッド移動機構61は、この発明における相対移動機構を構成しておらず、実施例2では、回転保持部1のみが、この発明における相対移動機構として働く。
【0088】
次に、実施例2に係る塗布装置の動作(塗布方法)について説明する。図9は、実施例2に係る塗布装置の動作を示すフローチャートである。なお、基板Wは、外部から塗布装置に搬送され、既にスピンチャック3に保持されているものとする。また、実施例1と同種の処理については簡略に説明する。
【0089】
<ステップT1> 溶剤の供給(基板に塗布液の溶剤を供給する工程)
制御部41は、溶剤供給部31を退避位置から基板Wの上方の位置に移動させる。続いて、溶剤供給部31から溶剤を基板W上に供給させるとともに、基板Wを回転させる。これにより、基板Wの上面が溶剤によってコーティングされる。
【0090】
<ステップT2> 塗膜の形成(塗膜を形成する工程)
制御部41は、ヘッド移動機構61を制御して、インクジェットヘッド51を退避位置から処理位置に回転移動させ、処理位置でインクジェットヘッド51を静止させる。続いて、制御部41は、基板Wを第1速度で回転させるとともに、各ノズル12を制御して各ノズル12からレジストの液滴を基板Wに吐出させる。
【0091】
インクジェットヘッド51は基板Wに対して相対的に周方向に等速で回転移動する。インクジェットヘッド51と対向した基板Wの範囲には、ノズル12から吐出されたレジストの液滴が着弾し、塗膜F(具体的にはレジスト膜)が形成される。
【0092】
図10を参照する。図10は基板Wに塗膜を形成している様子を模式的に示す図である。図10から明らかなように、基板Wを1回転させるだけで、基板Wの全面に塗膜Fを形成することができる。
【0093】
また、この際、制御部41は、処理レシピに基づいて、基板Wの周縁部から中央部に向かって塗膜Fの膜厚が徐々に増大するように、各ノズル12のレジストの吐出量を調整する。言い換えれば、制御部41は、基板Wの周縁部から中央部に向かって単位面積当たりのレジストの吐出量を徐々に大きくさせる。
【0094】
基板Wが1回転すると、制御部41は、ノズル12による液滴の吐出を停止させ、インクジェットヘッド51を退避位置に移動させ、基板Wの回転を停止させる。
【0095】
図11を参照する。図11は、本ステップT2の終了時における基板W上の塗膜Fを模式的に示す断面図である。図示するように、塗膜Fは、基板Wの周縁部から中央部までの範囲にわたって膜厚が徐々に厚くなっている。
【0096】
<ステップT3> 基板Wの静止(基板を静止させた状態に保つ工程)
制御部41は、所定時間の間、基板Wを回転させずに静止した状態に保つ。時間の経過に伴って着弾後の液滴同士がなじむ(各液滴がそれぞれ拡散する)。すなわち、ステップT2の終了時に塗膜Fの表面に凹凸が存在していても、ステップT3の期間中にそれら凹凸はゆっくりと均されていく。
【0097】
<ステップT4> 基板Wの回転(塗膜内の塗布液を移動させる工程)
制御部41は、第1速度よりも大きな第2速度で基板Wを回転させる。塗膜Fには遠心力が作用し、塗膜Fを形成している基板W上のレジストが径方向DR外方に移動する。これにより、基板Wの中央部における塗膜Fの膜厚は減少する一方、基板Wの周縁部における塗膜Fの膜厚は増加する。ステップT2で説明したとおり、予め、基板Wの周縁部から中央部にかけて膜厚が徐々に厚くなるような塗膜Fを形成しているので、塗膜F内のレジストの移動によって塗膜Fの膜厚のばらつきが緩和されていく。
【0098】
所定時間が経過すると、制御部41は基板Wの回転を停止する。この結果、ステップT4の終了時には、膜厚が略均一になった塗膜Fが得られる。また、塗膜F内のレジストが移動したことによって、塗膜Fの表面は滑らかに整えられている。
【0099】
このように、実施例2に係る塗布装置によっても、実施例1と同様に、塗膜Fの表面の平滑化および塗膜Fの膜厚の均一化を一挙に達成することができる。
【0100】
また、実施例2に係る塗布装置によれば、インクジェットヘッド51は、少なくとも基板Wの半径と同程度の長さを有するので、基板Wの中央部と周縁部との間にわたってインクジェットヘッド51を配置することができる。よって、ステップT2(塗膜の形成)では、基板Wを1回転させるだけで、塗膜Fの形成を完了することができる。
【0101】
また、ステップT2(塗膜の形成)の後であってステップT4(基板Wの回転)の前に行われるステップT3(基板Wを静止)を有しているので、基板W上で隣接する着弾後の液滴同士が一層なじみ、一層滑らかに連なることが期待できる。よって、ステップT4を実行したときに、塗膜Fの表面を容易に平滑にさせることができる。
【0102】
この発明は、上記実施形態に限られることはなく、下記のように変形実施することができる。
【0103】
(1)上述した実施例1では、ステップS2において、図6(c)に示すように基板Wの周縁部から中央部にかけて膜厚が段階的に厚くなっている塗膜Fを形成した。また、実施例2では、ステップT2において、図11に示すように基板Wの周縁部から中央部までの範囲にわたって膜厚が徐々に厚くなっている塗膜Fを形成した。しかしながら、塗膜Fはこれらに限られない。たとえば、基板Wの周縁部から中央部に向かって膜厚が増大する割合が一定の塗膜であってもよいし、基板Wの周縁部から中央部に向かって膜厚が増大する割合が変化する塗膜であってもよい。
【0104】
また、基板Wの中央部の膜厚が周縁部の膜厚に比べて大きい塗膜であれば、中央部から周縁部にわたる範囲において膜厚が変化していなくてもよい(膜厚が一定であってもよい)。図12を参照する。図12は、変形実施例に係る塗膜Fの断面図の一例を示す。図示するように、塗膜Fは、基板Wの中央部の膜厚のみが大きく、中央部以外の範囲(周縁部を含む)では膜厚が一定である(変化していない)。このような塗膜Fであっても、基板Wの中央部の膜厚が周縁部の膜厚に比べて大きいので、実施例1、2と同様に、ステップS3(T4)の終了時に略均一な膜厚の塗膜Fを得ることができる。
【0105】
また、図12に示す塗膜Fとは反対に、基板Wの周縁部の膜厚のみが小さく、周縁部以外の範囲(中央部を含む)では膜厚が一定である(変化していない)ような塗膜Fであってもよい。
【0106】
(2)上述した各実施例1、2では、ステップS2(T2)において、基板Wを回転させることによって基板Wとインクジェットヘッド11、51を相対的に移動させていたが、これに限られない。例えば、基板Wを回転させずに(静止させつつ)、インクジェットヘッド11、51を移動させることに、基板Wとインクジェットヘッド11、51を相対的に移動してもよい。
【0107】
図13を参照する。図13は、変形実施例に係る塗布装置(方法)において、基板Wに塗膜を形成している様子を模式的に示す図である。この変形例では、インクジェットヘッド71は、図示省略のヘッド移動機構によって、水平な2軸方向にそれぞれ移動可能である。図13では、水平な2軸方向をそれぞれ「X」軸および「Y」軸で示す。そして、インクジェットヘッド71を基板Wの全面にわたって平行移動させつつ、ノズル12から基板Wにレジストの液滴を吐出させることによって、基板Wに塗膜Fを形成してもよい。なお、この変形例では、不図示のヘッド移動機構が、この発明における相対移動機構に相当する。
【0108】
このような変形実施例によれば、実施例1、2のようにインクジェットヘッド11、51を基板Wに対して相対的に回転移動させる場合に比べて、基板Wに対する各ノズル12の移動量(変位量)を一様にすることができる。よって、単位面積当たりのレジストの吐出量を容易に調整することができ、塗膜Fの膜厚を容易に調整することができる。
【0109】
(3)上述した実施例2では、単一のインクジェットヘッド51を処理位置に配置してステップT2を実行したが、これに限られない。例えば、複数のインクジェットヘッドを基板Wの中央部と周縁部との間にわたって配置した状態で、ステップT2を実行するように構成してもよい。装置構成としては、長尺のインクジェットヘッド51の代えて、長手方向の長さLが基板Wの半径より短い複数個のインクジェットヘッドを備えるように変更してもよい。
【0110】
(4)上述した実施例1では、領域A、B、Cに塗膜Fをそれぞれ形成するとき(ステップS2)、基板Wの回転速度は一律に第1速度であったが、これに限られない。領域A乃至Cに塗膜Fを形成するときに、それぞれ異なる回転速度で基板Wを回転させてもよい。
【0111】
(5)上述した実施例1では、領域A、B、Cの順番で塗膜Fを形成したが、これに限られない。すなわち、塗膜Fを形成する各領域A乃至Cの順番は、任意に変更してもよい。
【0112】
(6)上述した各実施例では、塗布液としてレジストを例示したが、これに限られない。例えば、SOG液、低誘電膜材料、ポリイミド樹脂などの塗布液に変更してもよい。
【0113】
(7)上述した各実施例および各変形実施例の各構成を適宜に組み合わせるように変更してもよい。
【符号の説明】
【0114】
1 …回転保持部
11、51、71 …インクジェットヘッド
12 …ノズル
21、61 …ヘッド移動機構
31 …溶媒ノズル
41 …制御部
A、B、C …領域
F(Fa、Fb、Fc) …塗膜
Ra …回転軸
DR …径方向
L …インクジェットヘッドの長手方向の長さ
W …基板
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体ウエハ、フォトマスク用のガラス基板、液晶表示装置用のガラス基板、光ディスク用の基板など(以下、単に基板と称する)に対して、SOG(Spin On Glass,シリカ系被膜形成材とも呼ばれる) 液、レジスト感光剤、ポリイミド樹脂などの塗布液を塗布する塗布方法および塗布装置に係り、特に、塗布液の塗膜を基板に精度良く形成する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の方法として、いわゆるスピンコート法が用いられている。スピンコート法は、基板の中央部に塗布液を供給し、基板を回転させて塗布液に遠心力を作用させ、塗布液を基板の周縁部に広げることによって、塗布液の塗膜を基板に形成する手法である。塗布液を塗り広げる際、基板に供給した塗布液の一部は基板から振り切られて捨てられる。このため、塗布液の利用効率が低く、塗布液の消費量が多くなる。
【0003】
スピンコート法のほかには、インクジェット方式による方法がある。この方法は、インクジェットヘッドのノズルから塗布液の微小な液滴を基板に一様に吐出することによって、基板に塗膜を形成する。この方法によれば、基板を回転させて塗布液を塗り広げることなく塗膜を形成できるので、塗布液の消費量を低減することができる。(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−66391号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような構成を有する従来例の場合には、次のような問題がある。
すなわち、インクジェット方式では、液滴の集合によって塗膜が形成されるため、塗膜の表面を平滑にすることが困難であるという不都合がある。
【0006】
この発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、インクジェットヘッドのノズルから塗布液を吐出して塗布液の塗膜を形成しつつ、塗布液の塗膜の表面をより平滑にすることができる塗布方法および塗布装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、発明者は、インクジェット方式によって塗布液の塗膜を形成した後に、基板を回転させることを検討したところ、これによれば、却って塗膜の膜厚が基板全体にわたってばらついてしまうという新たな不都合を知見した。具体的には、塗膜の膜厚が基板の中央部に比べて基板の周縁部において厚くなってしまう傾向があることを知見した。
【0008】
このような知見に基づくこの発明は、次のような構成をとる。
すなわち、本発明は、インクジェットヘッドに設けられる複数のノズルから塗布液の液滴を基板に吐出させ、基板の周縁部における膜厚に比べて基板の中央部における膜厚が厚い塗布液の塗膜を形成する工程と、基板を回転させて基板の中央部から周縁部に向けて塗膜内の塗布液を移動させる工程と、を備える塗布方法である。
【0009】
[作用・効果]本発明に係る塗布方法によれば、塗膜を形成する工程では、インクジェットヘッドのノズルから塗布液の液滴を基板に吐出させて、基板上に塗膜を形成する。形成された塗膜の膜厚は、基板の周縁部において比較的に薄く、基板の中央部において比較的に厚い。なお、ノズルはインクジェット方式により塗布液の微小な液滴を吐出するので、基板上の位置に応じて塗布液の吐出量をきめ細かく調整することができる。よって、上述したように基板上の位置の応じて塗膜の膜厚を精度よく変えることができる。
【0010】
塗膜内の塗布液を移動させる工程では、基板を回転させ、塗膜に遠心力を作用させる。塗膜を形成している基板上の塗布液は、基板の中央部から周縁部に向かって移動する。これにより、基板の中央部と基板の周縁部との間で塗膜の膜厚の差が減少し、基板面内における塗膜の膜厚を略均一にすることができる。同時に、塗膜内の塗布液が動くことによって、塗膜の表面をより平滑にすることができる。
【0011】
上述した発明において、塗膜を形成する工程は、基板の周縁部から中央部に向かって膜厚が増大している塗膜を形成することが好ましい。「膜厚が増大している」とは、徐々に膜厚が増大している場合、段階的に膜厚が増大している場合、あるいは、一定の割合で膜厚が増大している場合のいずれをも含む意味である。このように、基板の周縁部と中央部との間にわたって中央部ほど膜厚が大きくなるように膜厚が変化しているので、塗膜内の塗布液を移動させる工程によって、塗膜の膜厚をより一層均一にさせることができる。
【0012】
上述した発明において、塗膜を形成する工程は、基板を区画する複数の同心円状の領域の間で膜厚が異なり、かつ、外周側の領域から内周側の領域にかけて段階的に膜厚が厚くなっている塗膜を形成することが好ましい。これによれば、各領域においては、一様な膜厚の塗膜を形成すればよいので、塗膜を容易に形成することができる。
【0013】
上述した発明において、塗膜を形成する工程は、少なくとも基板を回転させることによってインクジェットヘッドと基板を相対的に移動させつつノズルから基板に液滴を吐出させ、塗膜を形成する工程における基板の回転速度は、塗膜内の塗布液を移動させる工程における基板の回転速度に比べて小さいことが好ましい。比較的低い回転速度で基板を回転させながら塗膜を形成するので、塗膜を精度よく形成することができる。また、塗膜内の塗布液を移動させる工程では、比較的高い回転速度で基板を回転させるので、塗膜の膜厚の均一性を好適に高めることができる。
【0014】
上述した発明において、塗膜を形成する工程は、インクジェットヘッドを静止させるとともに基板を回転させつつ各ノズルから液滴を吐出させる工程と、インクジェットヘッドを基板の径方向に移動させる工程と、を有し、液滴を吐出させる工程およびインクジェットヘッドを移動させる工程を交互に繰り返すことによって塗膜を形成することが好ましい。液滴を吐出させる工程では、基板の径方向に対する各ノズルの位置は変わらない。よって、各ノズルから吐出させる塗布液の吐出量の制御を簡素化することができる。また、インクジェットヘッドを移動させる工程を有しているので、インクジェットヘッドが基板に比べて小さい場合であっても、塗布液の塗膜を基板の全面に好適に形成することができる。
【0015】
上述した発明において、塗膜を形成する工程は、基板の中央部と周縁部との間にわたってインクジェットヘッドを配置し、基板を回転させつつノズルから基板に液滴を吐出させることが好ましい。これによれば、基板を1回転させるだけで、塗膜の形成を完了することができる。
【0016】
上述した発明において、塗膜を形成する工程は、基板を回転させずにインクジェットヘッドを平行移動させつつノズルから基板に液滴を吐出させることが好ましい。これによれば、基板を静止させた状態でインクジェットヘッドのみを回転移動ではなく平行移動させる。このため、インクジェットヘッドを回転移動させる場合に比べて、基板に対する各ノズルの移動量(変位量)を一様にすることができる。よって、単位面積当たりの塗布液の吐出量を容易に調整することができ、塗膜の膜厚を容易に調整することができる。
【0017】
上述した発明において、塗膜を形成する工程の前に、基板に塗布液の溶剤を供給する工程を備えていることが好ましい。予め基板に溶剤が供給されているので、基板上に吐出された塗布液は拡散し易くなる。よって、塗膜内の塗布液を移動させる工程では、塗膜を形成している塗布液が移動し易くなり、塗膜の膜厚の均一性を好適に高めることができる。
【0018】
上述した発明において、塗膜を形成する工程の後であって、塗膜内の塗布液を移動させる工程の前に、基板を静止させた状態に保つ工程を備えていることが好ましい。基板を静止させた状態に保つ工程では、基板上で隣接している液滴同士が一層なじみ、一層滑らかに連なることが期待できる。よって、塗膜内の塗布液を移動させる工程では、塗膜の表面をより一層平滑にすることができる。
【0019】
また、本発明は、基板に塗布液を塗布する塗布装置であって、基板を回転可能に保持する回転保持部と、塗布液の液滴を吐出可能な複数のノズルを有するインクジェットヘッドと、前記インクジェットヘッドと基板を相対的に移動させる相対移動機構と、前記相対移動機構を制御して基板と前記インクジェットヘッドを相対的に移動させつつ、前記ノズルを制御して前記ノズルから液滴を基板に吐出させて、基板の周縁部における膜厚に比べて基板の中央部における膜厚が厚い塗布液の塗膜を形成し、その後、前記回転保持部を制御して基板を回転させて、基板の中央部から周縁部に向けて塗膜内の塗布液を移動させる制御部と、を備えている塗布装置である。
【0020】
[作用・効果]本発明に係る塗布装置によれば、制御部は、先ず、相対移動機構とノズルを制御して、基板全体に塗布液の塗膜を形成する。形成される塗膜の膜厚は、基板の周縁部において比較的に薄く、基板の中央部において比較的に厚い。続いて、制御部は、回転保持部を制御して基板を回転させ、塗膜に遠心力を作用させる。塗膜内に含まれている基板上の塗布液は、基板の中央部から周縁部に向かって移動する。これにより、基板の中央部と基板の周縁部との間で塗膜の膜厚の差が減少し、塗膜の膜厚を基板全体にわたって略均一にすることができる。また、塗膜内の塗布液の移動により、塗膜の表面をならすことができ、塗膜の表面をより平滑にすることができる。
【0021】
なお、本明細書は、次のような塗布方法および塗布装置に係る発明も開示している。
【0022】
(1)上述した塗布方法において、塗膜を形成する工程は、基板の中央部に比べて基板の周縁部においては、ノズルから吐出させる液滴の大きさを大きくする塗布方法。
【0023】
(2)上述した塗布方法において、塗膜を形成する工程は、基板の中央部に比べて基板の周縁部においては、ノズルから液滴を吐出させる周波数を大きくする塗布方法。
【0024】
液滴の大きさ、または、吐出周波数を変えることで塗布液の吐出量をきめ細かく調整することができ、これにより塗膜の膜厚を精度良く調整することができる。したがって、前記(1)および前記(2)に記載の発明によれば、基板の周縁部における膜厚に比べて基板の中央部における膜厚が厚い塗布液の塗膜を好適に整形することができる。
【0025】
(3)上述した塗布装置において、前記制御部は、前記ノズルから吐出させる液滴の大きさ、及び、前記ノズルから液滴を吐出させる周波数の少なくともいずれかを調整する塗布装置。
【0026】
前記(3)に記載の発明によれば、制御部は、基板の位置に応じて塗布液の吐出量及び塗膜の膜厚を好適に調整することができる。
【0027】
(4)上述した塗布装置において、前記回転保持部は、前記相対移動機構を兼ねるとともに、前記相対移動機構は、さらに、前記インクジェットヘッドを基板の径方向に移動させるヘッド移動機構を含み、前記制御部は、前記回転保持部および前記ヘッド移動機構を制御して、基板を回転させ、前記インクジェットヘッドを基板の径方向に移動させることによって、基板と前記インクジェットヘッドを相対移動させる塗布装置。
【0028】
前記(4)に記載の発明によれば、基板に対してインクジェットヘッドを周方向に移動させることができ、また、基板に対してインクジェットヘッドを径方向に移動させることができる。各移動によって、または、これらの移動の組み合わせによって、基板上の任意の位置に任意の方向でインクジェットヘッドを相対的に移動させることができる。また、インクジェットヘッドが基板に比べて小さい場合であっても、インクジェットを基板上の任意の位置に移動させることができる。
【0029】
(5)上述した塗布装置において、前記インクジェットヘッドは、基板の中央部から周縁部にわたって配置可能であり、前記回転保持部は、前記相対移動機構を兼ね、前記制御部は、前記インクジェットヘッドを基板の中央部から周縁部にわたって配置させた状態で前記回転保持部を制御して基板を回転させることによって、基板と前記インクジェットヘッドを相対移動させる塗布装置。
【0030】
前記(5)に記載の発明によれば、基板を1回転させるだけで、塗膜の形成を完了することができる。
【0031】
(6)上述した塗布装置において、前記相対移動機構は、前記インクジェットヘッドを平行移動させるヘッド移動機構であり、前記制御部は、前記ヘッド移動機構を制御して静止する基板に対してインクジェットヘッドを移動させることによって、基板と前記インクジェットヘッドを相対的に移動させる塗布装置。
【0032】
前記(6)に記載の発明によれば、制御部は基板を回転させずにインクジェットヘッドのみを平行移動させる。このため、インクジェットヘッドを回転移動させる場合に比べて、基板に対する各ノズルの移動量(変位量)を一様にすることができる。よって、単位面積当たりの塗布液の吐出量を容易に調整することができ、塗膜の膜厚を容易に調整することができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明に係る塗布方法によれば、塗膜を形成する工程では、インクジェットヘッドのノズルから塗布液の液滴を基板に吐出させて、基板上に塗膜を形成する。この際、塗膜の膜厚が基板の周縁部において比較的に薄く、基板の中央部において比較的に厚くなるような塗膜を敢えて形成しておく。塗膜内の塗布液を移動させる工程では、基板を回転させ、塗膜に遠心力を作用させる。塗膜を形成している基板上の塗布液は、基板の中央部から周縁部に向かって移動する。これにより、基板の中央部と基板の周縁部との間で塗膜の膜厚の差が減少し、基板面内における塗膜の膜厚を最終的に略均一にすることができる。同時に、塗膜内の塗布液が動くことによって、塗膜の表面をより平滑にすることができる。
【0034】
また、本発明に係る塗布装置によれば、制御部は、相対移動機構を制御して基板とインクジェットヘッドを相対移動させつつ、ノズルを制御してノズルから液滴を基板に吐出させて基板の周縁部における膜厚に比べて基板の中央部における膜厚が厚い塗布液の塗膜を基板に形成する。その後、制御部は、回転保持部を制御して基板を回転させて塗膜内の塗布液を基板の中央部から周縁部に向かって移動させる。よって、上述した方法を好適に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】実施例1に係る塗布装置の概略構成を示す図である。
【図2】インクジェットヘッドの下面を示す図である。
【図3】実施例1に係る塗布装置の平面図である。
【図4】実施例1に係る塗布装置の動作を示すフローチャートである。
【図5】(a)、(b)、(c)はそれぞれ、基板の各領域に塗膜を形成している様子を模式的に示す図である。
【図6】基板に形成された塗膜を示す図であり、(a)は領域Aに塗膜を形成した状態を示し、(b)は領域A、Bに塗膜を形成した状態を示し、(c)は領域A乃至Cに塗膜を形成した状態を示す。
【図7】(a)は、塗膜内のレジストが移動する様子を模式的に示す断面図であり、(b)はステップS3の終了時における塗膜を模式的に示す断面図である。
【図8】実施例2に係る塗布装置の平面図である。
【図9】実施例2に係る塗布装置の動作を示すフローチャートである。
【図10】基板に塗膜を形成している様子を模式的に示す図である。
【図11】ステップT2の終了時における塗膜を模式的に示す断面図である。
【図12】変形実施例に係る塗膜を模式的に示す断面図である。
【図13】変形実施例に係る塗布装置(方法)において、基板に塗膜を形成している様子を模式的に示す図である。
【実施例1】
【0036】
以下、図面を参照してこの発明の実施例1を説明する。
図1は、実施例1に係る塗布装置の概略構成を示す図である。なお、本実施例では、塗布液としてレジスト感光剤(以下、適宜「レジスト」という)を塗布する塗布装置及び塗布方法を例に採って説明する。
【0037】
塗布装置は、基板Wを回転可能に保持する回転保持部1を備えている。回転保持部1は、スピンチャック3とモータ5を含む。スピンチャック3は、基板Wの下面中央を吸着することにより基板Wを略水平姿勢で保持する。スピンチャック3の下部中央にはモータ5の出力軸5aの先端が連結されている。モータ5が出力軸5aを回転駆動することにより、スピンチャック3及び基板Wは回転軸Ra周りに一体に回転する。回転軸Raは基板Wの略中心を通る。
【0038】
なお、回転保持部1は、上記の例に限られない。たとえば、スピンチャック3を、基板Wの端縁を保持する複数のピンが設けられた回転板に変更してもよい。
【0039】
スピンチャック3の周囲には、飛散防止カップ7が配備されている。飛散防止カップ7は、基板Wの外周から周囲に飛散するレジストや溶剤等を下方へ案内するとともに回収する。
【0040】
本装置は、基板Wにレジストを供給するインクジェットヘッド11を備えている。インクジェットヘッド11は、配管13を介してレジスト供給源15に連通接続されている。
【0041】
図2を参照する。図2は、インクジェットヘッド11の下面を示す図である。インクジェットヘッド11の下面には、複数個(例えば、数十個から数百個)のインクジェット方式のノズル12が形成されている。なお、インクジェットヘッド11の長手方向の長さLは、基板Wの半径よりも短い。
【0042】
ノズル12は、千鳥配列で2列に並ぶように配置されている。ここで、ノズル12が並ぶ方向を適宜「列方向DN」という。列方向DNに隣接するノズル12間のピッチPは、例えば、0.1[mm]から0.2[mm]である。各ノズル12から吐出する液滴は、例えば数[pl]から数十[pl]である。各ノズル12が液滴を吐出する周波数(以下、「吐出周波数」という)は、例えば最大で数十[kHz]である。すなわち、各ノズル12が1秒間に液滴を吐出可能な回数は、例えば最大数万回である。
【0043】
各ノズル12には、アクチュエータとして例えばピエゾ素子(不図示)がそれぞれ設けられている。ピエゾ素子に印加する電圧の大きさを可変することによって、ノズル12が吐出する液滴の大きさを調整することができる。また、ピエゾ素子に印加する電圧のパルス間隔を可変することで、ノズル12の吐出周波数を調整することができる。
【0044】
図1に示すように、本装置は、インクジェットヘッド11を移動可能に支持するヘッド移動機構21を備えている。ヘッド移動機構21は、基板Wの上方の位置(図1に示すインクジェットヘッド11の位置)と基板Wの上方から外れた位置(以下、「退避位置」という)との間でインクジェットヘッド11を進退移動する。なお、図1では、図示の便宜上、インクジェットヘッド11の下面と基板Wの上面との離隔距離が比較的に大きいが、インクジェットヘッド11は基板W上面に近接していることが好ましい。
【0045】
図3を参照してヘッド移動機構21の構成を説明する。図3は、塗布装置の平面図である。ヘッド移動機構21は、レール部22と自走台23とアーム部24とを備えている。レール部22は、飛散防止カップ7の側方に、水平1軸方向に延びるように配置されている。レール部22には自走台23が摺動可能に取り付けられている。自走台23の上部にはアーム部24の基端が連結されている。アーム24は、基端からレールと略直交する方向に延びており、その先端にインクジェットヘッド11が支持されている。自走台23を駆動すると、自走台23がレール部22に沿って移動する。インクジェットヘッド11は、水平1軸方向に前後移動し、退避位置(図3に実線で示すインクジェットヘッド11の位置)と、基板Wの上方の位置(図3に点線で示すインクジェットヘッド11の位置)との間で移動する。
【0046】
本実施例では、インクジェットヘッド11が回転軸Ra上の位置を通るようにヘッド移動機構21が構成されている。すなわち、インクジェットヘッド11は、基板Wの径方向DRに移動可能である。なお、基板Wの径方向DRは、基板Wの回転軸Raと直交する方向であり、基板Wの半径方向と略一致する。また、インクジェットヘッド11は、ノズル12の列方向DNが基板Wの径方向DR(すなわち、インクジェットヘッド11の移動方向)と一致するようにアーム24に支持されている。なお、ヘッド移動機構21は、この発明における相対移動機構を構成している。また、上述した回転保持部1も、この発明における相対移動機構を兼ねている。
【0047】
図1を参照する。本装置は、基板Wに塗布液(レジスト)の溶剤を供給する溶剤供給部31を備えている。溶剤供給部31は、配管33及び開閉弁34を介して溶剤供給源35に連通接続されている。そして、開閉弁34を開放すると、溶剤供給部31は基板Wに溶剤を連続的に供給する(一定の流量で溶剤を吐出する)。また、開閉弁34を閉止すると、溶剤供給部31は基板Wへの溶剤の供給を停止する。
【0048】
溶剤としては、塗布液がレジストである場合、PGMEA、乳化エチル、IPAなどが例示される。溶剤供給部31は、図示省略の溶剤供給部移動機構によって、基板Wの上方の位置と基板Wの上方から外れた退避位置(図1に実線で示す溶剤供給部31の位置)との間で進退移動可能である。
【0049】
また、本装置は、上述した各構成を統括的に操作する制御部41を備えている。具体的には、制御部41は、モータ5を制御して基板Wの回転数(回転速度)を調整し、ヘッド移動機構21を制御してインクジェットヘッド11を移動させる。また、制御部41は、モータ5及びヘッド移動機構21の各制御と連動して各ノズル12を制御し、レジストの吐出量を調整する。吐出量の調整は、例えば、各ノズル12のピエゾ素子に印加する電圧の大きさ及び/又はパルス間隔を可変して、液滴の大きさ及び/又は吐出周波数を調整することによって行われる。さらに、制御部41は、図示省略の溶剤供給部移動機構を制御して溶剤供給部31を移動させ、開閉弁34を制御して溶剤の供給・停止を切り替える。
【0050】
制御部41は、基板Wを処理するための処理条件が予め設定されている処理レシピ等を有している。処理条件としては、後述する基板Wの回転速度である第1、第2速度に関する情報や、基板W内の位置/領域に応じたレジストの吐出量に関する情報などが例示される。ここで、レジストの吐出量に関する情報は、例えば、液滴の大きさ、吐出周波数などに関する情報を含んでいてもよい。制御部41は、各種処理を実行する中央演算処理装置(CPU)や、演算処理の作業領域となるRAM(Random-Access Memory)や、各種情報を記憶する固定ディスク等の記憶媒体等によって実現されている。
【0051】
次に、実施例1に係る塗布装置の動作(塗布方法)について説明する。図4は、塗布装置の動作を示すフローチャートである。なお、基板Wは、外部から塗布装置に搬送され、既にスピンチャック3に保持されているものとする。
【0052】
<ステップS1> 溶剤の供給(基板に塗布液の溶剤を供給する工程)
制御部41は、図示省略の溶剤供給部移動機構を制御して溶剤供給部31を退避位置から基板Wの上方の位置に移動させる。続いて、開閉弁34を開放させて溶剤供給部31から溶剤を基板W上に供給させるとともに、モータ5を制御して基板Wを回転させる。溶剤は基板W上の全面に広がり、溶剤の一部は基板Wから振り切られて、基板W外に捨てられる。捨てられた溶剤は飛散防止カップ7によって回収される。これにより、基板W上の全面に溶剤の塗膜が形成される。所定時間が経過すると、開閉弁34を閉止させて、溶剤供給部31を退避位置に移動し、基板Wの回転を停止する。
【0053】
<ステップS2> 塗膜の形成(塗膜を形成する工程)
本ステップS2は、基板Wの上面を仮想的な3つの領域A、B、Cに分け、領域A、B、C毎に塗膜をそれぞれ形成する。領域A乃至Cはそれぞれ回転軸Raを中心とする同心円状の領域である。領域Aは最も内周側の円形の領域であり、領域Cは最も外周側の円環状の領域であり、領域Bは領域Aと領域Cとの間に挟まれる円環状の領域である。なお、この発明における中央部は、領域Aに含まれ、この発明における周縁部は領域Cに含まれる。以下では、各領域A、B、Cに塗膜を形成する工程をステップS2a、S2b、S2cとして、これらステップS2a〜ステップS2cについて順に説明する。
【0054】
<ステップS2a> 領域Aの塗膜の形成
制御部41は、ヘッド移動機構21を制御して、インクジェットヘッド11を基板Wの回転軸Ra上に移動させ、その位置でインクジェットヘッド11を静止させる。続いて、制御部41は、処理レシピを参照して、モータ5を制御して基板Wを一定の第1速度で回転させるとともに、各ノズル12を制御して各ノズル12からレジストの液滴を基板Wに吐出させる。この際、制御部41は、レジストの吐出量についても処理レシピに基づいて調整する。なお、基板Wの第1速度は、低速であることが好ましく、例えば、60[rpm]等が例示される。
【0055】
インクジェットヘッド11は基板Wに対して相対的に周方向に等速で回転移動する。インクジェットヘッド11と対向した基板Wの範囲には、ノズル12から吐出されたレジストの液滴が着弾し、塗膜(具体的にはレジスト膜)が形成される。
【0056】
図5を参照する。図5(a)、(b)、(c)はそれぞれ、基板Wの各領域A、B、Cに塗膜を形成している様子を模式的に示す図である。 図5(a)は、本ステップS2aの実行中の状態を示している。なお、図5では、領域A、B、Cに形成された塗膜を、それぞれ符号Fa、Fb、Fcで示す(後述する図6においても同じ)。
【0057】
基板Wが1回転すると、制御部41は基板Wの回転を停止させ、制御部41はノズル12からの液滴の吐出を停止させる。
【0058】
図6を参照する。図6は、基板Wに形成された塗膜を模式的に示す平面図および断面図であり、(a)は領域Aのみに塗膜を形成した状態を示し、(b)は領域A、Bに塗膜を形成した状態を示し、(c)は領域A乃至Cに塗膜を形成した状態を示す。なお、各(a)、(b)、(c)では上段に平面図を示し、下段に断面図を示す。また、図6では、基板W上をコーティングしている溶剤を符号Gで示している(後述する図7、11、12においても同じ)。
【0059】
ステップS2aの終了時には、図6(a)に示すように、領域Aのみに、塗膜Faが形成されている。また、図示するように、塗膜Faの表面(上面)には、基板Wに着弾した後の液滴の形状に応じて凹凸が残り、塗膜Faの表面は滑らかになっていない。
【0060】
<ステップS2b> 領域Bの塗膜の形成
制御部41は、ヘッド移動機構21を制御して、インクジェットヘッド11をその長さLに相当する距離だけ径方向DR外方に移動させる。図5(b)に示すように、インクジェットヘッド11は、上述した塗膜形成済みの領域Aの外周と隣接する位置で静止する。続いて、制御部41は基板Wを第1速度で回転させるとともに、各ノズル12からレジストの液滴を基板Wに吐出させる。これにより、領域Aの外側の領域Bに塗膜Fbが形成される。
【0061】
この領域Bに塗膜Fbを形成する際、制御部41は、処理レシピに基づいて、塗膜Fbの膜厚が塗膜Faの膜厚に比べて薄くなるように、レジストの吐出量を調整する。言い換えれば、制御部41は、領域Aに比べて領域Bでは単位面積当たりのレジストの吐出量を小さくさせる。レジストの吐出量を低下させる具体的な手法としては、ノズル12から吐出させる液滴の大きさを小さくすること、及び/又は、ノズル12の吐出周波数を低下させること等が例示される。
【0062】
基板Wが1回転すると、制御部41は基板Wの回転を停止させ、ノズル12からの液滴の吐出を停止させる。
【0063】
この結果、図6(b)に示すように、領域Bには、塗膜Faに比べて膜厚が小さい塗膜Fbが形成される。
【0064】
<ステップS2c> 領域Cの塗膜の形成
ステップS2a、S2bと同様に、インクジェットヘッド11を基板Wの径方向DRに移動させる動作と、インクジェットヘッド11を所定位置で静止させるとともに基板Wを回転させつつ各ノズル12から液滴を吐出させる動作を交互に繰り返す。これにより、図5(c)に示すように、インクジェットヘッド11は領域Cに配置され、塗膜Fcが領域Cに形成される。
【0065】
この領域Cに塗膜Fcを形成する際、制御部41は、処理レシピに基づいて、塗膜Fcの膜厚が塗膜Fbの膜厚に比べて薄くなるように、レジストの吐出量を調整する。
【0066】
基板Wが1回転すると、制御部41は基板Wの回転を停止させ、制御部41はノズル12による液滴の吐出を停止させる。さらに、制御部41は、インクジェットヘッド11を退避位置に移動させる。
【0067】
この結果、図6(c)に示すように、領域Cには、領域A、Bにおける塗膜Fa、Fbに比べて膜厚が小さい塗膜Fcが形成される。基板Wの全体は、塗膜Fa、Fb、Fcによって覆われる(以下では、特に塗膜Fa、Fb、Fcを区別しないときは、単に「塗膜F」という)。塗膜Fの膜厚は、図6(c)に示すように、基板Wの周縁部から中央部にかけて段階的に厚くなっている。
【0068】
<ステップS3> 基板Wの回転(塗膜内の塗布液を移動させる工程)
制御部41は、モータ5を制御して、第1速度よりも大きな第2速度で基板Wを回転させる。第2速度としては、高速であることが好ましく、例えば、3000[rpm]等が例示される。塗膜Fには遠心力が作用し、塗膜Fを形成している基板W上のレジストは、径方向DR外方に移動する。
【0069】
図7(a)は、塗膜F内のレジストが移動する様子を模式的に示す断面図であり、図7(b)はステップS3の終了時における塗膜Fの状態を模式的に示す断面図である。
【0070】
図7(a)に示すように、塗膜F内のレジストは基板Wの中央部から周縁部に向かって移動する。具体的には、塗膜Faからはレジストが流出し、塗膜Fcにはレジストが流入する。また、レジストの一部は、基板Wの周縁から振り切られて基板W外に捨てられる。
【0071】
これにより、塗膜Faの膜厚は減少する一方、塗膜Fcの膜厚は増加する。ステップS2で説明したとおり、予め、基板Wの周縁部から中央部にかけて膜厚が段階的に厚くなるような塗膜Fを形成しているので、塗膜Fの膜厚のばらつきは緩和され、塗膜Fの膜厚は基板W面内において略均一になる。
【0072】
また、塗膜F内のレジストが動くことにより、塗膜Fの表面はならされ、滑らかに整えられていく。
【0073】
所定時間が経過すると、制御部41はモータ5を制御して基板Wの回転を停止する。
【0074】
この結果、ステップS3の終了時には、図7(b)に示すように、膜厚が略均一であるとともに、表面が平滑化された塗膜Fが得られる。
【0075】
このように、実施例1に係る塗布装置によれば、ステップS2(塗膜の形成)では、基板Wの周縁部に比べて中央部の方が膜厚の厚い塗膜Fを敢えて形成する。このため、ステップS3(基板Wの回転)において塗膜F内のレジストを基板Wの中央部から周縁部に向けて移動させると、塗膜Fの表面をより平滑にすることができるとともに塗膜Fの膜厚を基板W全体にわたって略均一にすることができる。
【0076】
また、ステップS2では、基板Wの周縁部と中央部との間にわたり、中央部に向かって膜厚が増大している塗膜Fを形成するので、ステップS3(基板Wの回転)の終了時には、膜厚の均一性が一層高い塗膜Fを得ることができる。
【0077】
また、ステップS2a乃至S2cを通じて、インクジェットヘッド11を静止させるとともに基板Wを回転させつつ各ノズル12から液滴を吐出させる動作と、インクジェットヘッド11を基板Wの径方向DRに移動させる動作とを、交互に3回繰り返す。これにより、同心円状の領域A乃至Cに個別に塗膜Fa乃至Fcを形成することができる。
【0078】
また、ステップS2では、領域A、B、Cごとに塗膜Fの膜厚を異ならせ、各領域A、B、C内ではそれぞれ同じ膜厚の塗膜Fa、Fb、Fcを形成する。よって、塗膜Fを簡略に形成することができる。また、制御部41は、各ステップS2a乃至S2bにおいてノズル12をそれぞれ一様に制御すればよいので、制御部41による制御を簡略化することができる。
【0079】
また、ステップS2aにおいては、基板Wの径方向DRにおける各ノズル12の位置は変わらないので、塗膜Faを容易に形成することができる。同様に、ステップS2b、3においても、基板Wの径方向DRにおける各ノズル12の位置は変わらないので、塗膜Fb、Fcをそれぞれ容易に形成することができる。また、制御部41によるノズル12の制御を簡略化することができる。
【0080】
また、ノズル12はインクジェット方式であるので、基板Wの位置又は領域に応じて、レジストの吐出量をきめ細かく精度よく調整することができる。よって、上述したような基板Wの周縁部と中央部との間で膜厚が異なる塗膜Fを好適に形成することができる。
【0081】
また、ステップS2では、第2速度よりも低い第1速度で基板Wを回転させるので、ノズル12から基板W上の各位置に精度よく液滴を着弾させることができる。よって、塗膜Fを信頼性良く形成することができる。
【0082】
また、ステップS3では、第1速度よりも大きい第2速度で基板Wを回転させるので、塗膜Fに対して好適に遠心力を作用させることができる。この結果、塗膜Fの膜厚の均一性を一層高めることができる。
【0083】
また、ステップS2の前に、基板Wにレジストの溶剤を供給する工程(ステップS1)を備えているので、基板W上に吐出されたレジストが広がりやすくなる。これにより、塗膜Fの平滑化を促進することができる。また、ステップS3を行うときに塗膜F内のレジストが移動し易くなり、塗膜Fの膜厚の均一性を好適に高めることができる。
【実施例2】
【0084】
次に、図面を参照してこの発明の実施例2を説明する。
本実施例2においても、塗布液としてレジストを塗布する塗布装置を例に採って説明する。実施例2の構成のうち、主にインクジェットヘッドに関連する構成が実施例1と異なっているため、インクジェットヘッドを中心に実施例2の構成を説明する。なお、その他の回転保持部1、溶剤供給部31等の構成は、実施例1と略同様である。実施例1と同じ構成については同符号を付す。
【0085】
図8は、実施例2に係る塗布装置の平面図である。実施例2は、実施例1のインクジェットヘッド11よりも長いインクジェットヘッド51を備えている。インクジェットヘッド51の長手方向の長さLは、少なくとも基板Wの半径と同程度である。インクジェットヘッド51の下面には、多数のノズル12が形成されている。
【0086】
本装置は、インクジェットヘッド51を移動可能に支持するヘッド移動機構61を備えている。ヘッド移動機構61は、回転台62とアーム部63を備えている。回転台62はアーム部63の基端を支持するとともに、回転台62を通る略鉛直な回転軸Rb回りにアーム部63を回転可能である。アーム部63は、インクジェットヘッド51を支持している。回転台62を駆動すると、インクジェットヘッド51は、水平方向に旋回移動(回転移動)し、基板Wの上方の位置と基板Wの上方から外れた退避位置(図8に点線で示すインクジェットヘッド51の位置)との間で移動する。
【0087】
本実施例において、ヘッド移動機構61は、インクジェットヘッド51が基板Wの中央部と周縁部との間にわたるような処理位置(図8に実線で示すインクジェットヘッド51の位置)に、インクジェットヘッド51を配置可能に構成されている。インクジェットヘッド51が処理位置にあるとき、ノズル12は、基板Wの回転軸Raと周縁部との間にわたって径方向DRに沿って並んでいる。なお、このヘッド移動機構61は、この発明における相対移動機構を構成しておらず、実施例2では、回転保持部1のみが、この発明における相対移動機構として働く。
【0088】
次に、実施例2に係る塗布装置の動作(塗布方法)について説明する。図9は、実施例2に係る塗布装置の動作を示すフローチャートである。なお、基板Wは、外部から塗布装置に搬送され、既にスピンチャック3に保持されているものとする。また、実施例1と同種の処理については簡略に説明する。
【0089】
<ステップT1> 溶剤の供給(基板に塗布液の溶剤を供給する工程)
制御部41は、溶剤供給部31を退避位置から基板Wの上方の位置に移動させる。続いて、溶剤供給部31から溶剤を基板W上に供給させるとともに、基板Wを回転させる。これにより、基板Wの上面が溶剤によってコーティングされる。
【0090】
<ステップT2> 塗膜の形成(塗膜を形成する工程)
制御部41は、ヘッド移動機構61を制御して、インクジェットヘッド51を退避位置から処理位置に回転移動させ、処理位置でインクジェットヘッド51を静止させる。続いて、制御部41は、基板Wを第1速度で回転させるとともに、各ノズル12を制御して各ノズル12からレジストの液滴を基板Wに吐出させる。
【0091】
インクジェットヘッド51は基板Wに対して相対的に周方向に等速で回転移動する。インクジェットヘッド51と対向した基板Wの範囲には、ノズル12から吐出されたレジストの液滴が着弾し、塗膜F(具体的にはレジスト膜)が形成される。
【0092】
図10を参照する。図10は基板Wに塗膜を形成している様子を模式的に示す図である。図10から明らかなように、基板Wを1回転させるだけで、基板Wの全面に塗膜Fを形成することができる。
【0093】
また、この際、制御部41は、処理レシピに基づいて、基板Wの周縁部から中央部に向かって塗膜Fの膜厚が徐々に増大するように、各ノズル12のレジストの吐出量を調整する。言い換えれば、制御部41は、基板Wの周縁部から中央部に向かって単位面積当たりのレジストの吐出量を徐々に大きくさせる。
【0094】
基板Wが1回転すると、制御部41は、ノズル12による液滴の吐出を停止させ、インクジェットヘッド51を退避位置に移動させ、基板Wの回転を停止させる。
【0095】
図11を参照する。図11は、本ステップT2の終了時における基板W上の塗膜Fを模式的に示す断面図である。図示するように、塗膜Fは、基板Wの周縁部から中央部までの範囲にわたって膜厚が徐々に厚くなっている。
【0096】
<ステップT3> 基板Wの静止(基板を静止させた状態に保つ工程)
制御部41は、所定時間の間、基板Wを回転させずに静止した状態に保つ。時間の経過に伴って着弾後の液滴同士がなじむ(各液滴がそれぞれ拡散する)。すなわち、ステップT2の終了時に塗膜Fの表面に凹凸が存在していても、ステップT3の期間中にそれら凹凸はゆっくりと均されていく。
【0097】
<ステップT4> 基板Wの回転(塗膜内の塗布液を移動させる工程)
制御部41は、第1速度よりも大きな第2速度で基板Wを回転させる。塗膜Fには遠心力が作用し、塗膜Fを形成している基板W上のレジストが径方向DR外方に移動する。これにより、基板Wの中央部における塗膜Fの膜厚は減少する一方、基板Wの周縁部における塗膜Fの膜厚は増加する。ステップT2で説明したとおり、予め、基板Wの周縁部から中央部にかけて膜厚が徐々に厚くなるような塗膜Fを形成しているので、塗膜F内のレジストの移動によって塗膜Fの膜厚のばらつきが緩和されていく。
【0098】
所定時間が経過すると、制御部41は基板Wの回転を停止する。この結果、ステップT4の終了時には、膜厚が略均一になった塗膜Fが得られる。また、塗膜F内のレジストが移動したことによって、塗膜Fの表面は滑らかに整えられている。
【0099】
このように、実施例2に係る塗布装置によっても、実施例1と同様に、塗膜Fの表面の平滑化および塗膜Fの膜厚の均一化を一挙に達成することができる。
【0100】
また、実施例2に係る塗布装置によれば、インクジェットヘッド51は、少なくとも基板Wの半径と同程度の長さを有するので、基板Wの中央部と周縁部との間にわたってインクジェットヘッド51を配置することができる。よって、ステップT2(塗膜の形成)では、基板Wを1回転させるだけで、塗膜Fの形成を完了することができる。
【0101】
また、ステップT2(塗膜の形成)の後であってステップT4(基板Wの回転)の前に行われるステップT3(基板Wを静止)を有しているので、基板W上で隣接する着弾後の液滴同士が一層なじみ、一層滑らかに連なることが期待できる。よって、ステップT4を実行したときに、塗膜Fの表面を容易に平滑にさせることができる。
【0102】
この発明は、上記実施形態に限られることはなく、下記のように変形実施することができる。
【0103】
(1)上述した実施例1では、ステップS2において、図6(c)に示すように基板Wの周縁部から中央部にかけて膜厚が段階的に厚くなっている塗膜Fを形成した。また、実施例2では、ステップT2において、図11に示すように基板Wの周縁部から中央部までの範囲にわたって膜厚が徐々に厚くなっている塗膜Fを形成した。しかしながら、塗膜Fはこれらに限られない。たとえば、基板Wの周縁部から中央部に向かって膜厚が増大する割合が一定の塗膜であってもよいし、基板Wの周縁部から中央部に向かって膜厚が増大する割合が変化する塗膜であってもよい。
【0104】
また、基板Wの中央部の膜厚が周縁部の膜厚に比べて大きい塗膜であれば、中央部から周縁部にわたる範囲において膜厚が変化していなくてもよい(膜厚が一定であってもよい)。図12を参照する。図12は、変形実施例に係る塗膜Fの断面図の一例を示す。図示するように、塗膜Fは、基板Wの中央部の膜厚のみが大きく、中央部以外の範囲(周縁部を含む)では膜厚が一定である(変化していない)。このような塗膜Fであっても、基板Wの中央部の膜厚が周縁部の膜厚に比べて大きいので、実施例1、2と同様に、ステップS3(T4)の終了時に略均一な膜厚の塗膜Fを得ることができる。
【0105】
また、図12に示す塗膜Fとは反対に、基板Wの周縁部の膜厚のみが小さく、周縁部以外の範囲(中央部を含む)では膜厚が一定である(変化していない)ような塗膜Fであってもよい。
【0106】
(2)上述した各実施例1、2では、ステップS2(T2)において、基板Wを回転させることによって基板Wとインクジェットヘッド11、51を相対的に移動させていたが、これに限られない。例えば、基板Wを回転させずに(静止させつつ)、インクジェットヘッド11、51を移動させることに、基板Wとインクジェットヘッド11、51を相対的に移動してもよい。
【0107】
図13を参照する。図13は、変形実施例に係る塗布装置(方法)において、基板Wに塗膜を形成している様子を模式的に示す図である。この変形例では、インクジェットヘッド71は、図示省略のヘッド移動機構によって、水平な2軸方向にそれぞれ移動可能である。図13では、水平な2軸方向をそれぞれ「X」軸および「Y」軸で示す。そして、インクジェットヘッド71を基板Wの全面にわたって平行移動させつつ、ノズル12から基板Wにレジストの液滴を吐出させることによって、基板Wに塗膜Fを形成してもよい。なお、この変形例では、不図示のヘッド移動機構が、この発明における相対移動機構に相当する。
【0108】
このような変形実施例によれば、実施例1、2のようにインクジェットヘッド11、51を基板Wに対して相対的に回転移動させる場合に比べて、基板Wに対する各ノズル12の移動量(変位量)を一様にすることができる。よって、単位面積当たりのレジストの吐出量を容易に調整することができ、塗膜Fの膜厚を容易に調整することができる。
【0109】
(3)上述した実施例2では、単一のインクジェットヘッド51を処理位置に配置してステップT2を実行したが、これに限られない。例えば、複数のインクジェットヘッドを基板Wの中央部と周縁部との間にわたって配置した状態で、ステップT2を実行するように構成してもよい。装置構成としては、長尺のインクジェットヘッド51の代えて、長手方向の長さLが基板Wの半径より短い複数個のインクジェットヘッドを備えるように変更してもよい。
【0110】
(4)上述した実施例1では、領域A、B、Cに塗膜Fをそれぞれ形成するとき(ステップS2)、基板Wの回転速度は一律に第1速度であったが、これに限られない。領域A乃至Cに塗膜Fを形成するときに、それぞれ異なる回転速度で基板Wを回転させてもよい。
【0111】
(5)上述した実施例1では、領域A、B、Cの順番で塗膜Fを形成したが、これに限られない。すなわち、塗膜Fを形成する各領域A乃至Cの順番は、任意に変更してもよい。
【0112】
(6)上述した各実施例では、塗布液としてレジストを例示したが、これに限られない。例えば、SOG液、低誘電膜材料、ポリイミド樹脂などの塗布液に変更してもよい。
【0113】
(7)上述した各実施例および各変形実施例の各構成を適宜に組み合わせるように変更してもよい。
【符号の説明】
【0114】
1 …回転保持部
11、51、71 …インクジェットヘッド
12 …ノズル
21、61 …ヘッド移動機構
31 …溶媒ノズル
41 …制御部
A、B、C …領域
F(Fa、Fb、Fc) …塗膜
Ra …回転軸
DR …径方向
L …インクジェットヘッドの長手方向の長さ
W …基板
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェットヘッドに設けられる複数のノズルから塗布液の液滴を基板に吐出させ、基板の周縁部における膜厚に比べて基板の中央部における膜厚が厚い塗布液の塗膜を形成する工程と、
基板を回転させて基板の中央部から周縁部に向けて塗膜内の塗布液を移動させる工程と、
を備える塗布方法。
【請求項2】
請求項1に記載の塗布方法において、
塗膜を形成する工程は、基板の周縁部から中央部に向かって膜厚が増大している塗膜を形成する塗布方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の塗布方法において、
塗膜を形成する工程は、基板を区画する複数の同心円状の領域の間で膜厚が異なり、かつ、外周側の領域から内周側の領域にかけて段階的に膜厚が厚くなっている塗膜を形成する塗布方法。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の塗布方法において、
塗膜を形成する工程は、少なくとも基板を回転させることによってインクジェットヘッドと基板を相対的に移動させつつノズルから基板に液滴を吐出させ、
塗膜を形成する工程における基板の回転速度は、塗膜内の塗布液を移動させる工程における基板の回転速度に比べて小さい塗布方法。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載の塗布方法において、
塗膜を形成する工程は、
インクジェットヘッドを静止させるとともに基板を回転させつつ各ノズルから液滴を吐出させる工程と、
インクジェットヘッドを基板の径方向に移動させる工程と、
を有し、
液滴を吐出させる工程およびインクジェットヘッドを移動させる工程を交互に繰り返すことによって塗膜を形成する塗布方法。
【請求項6】
請求項1から請求項4のいずれかに記載の塗布方法において、
塗膜を形成する工程は、
基板の中央部と周縁部との間にわたってインクジェットヘッドを配置し、基板を回転させつつノズルから基板に液滴を吐出させる塗布方法。
【請求項7】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の塗布方法において、
塗膜を形成する工程は、基板を回転させずにインクジェットヘッドを平行移動させつつノズルから基板に液滴を吐出させる塗布方法。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれかに記載の塗布方法において、
塗膜を形成する工程の前に、基板に塗布液の溶剤を供給する工程を備えている塗布方法。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれかに記載の塗布方法において、
塗膜を形成する工程の後であって、塗膜内の塗布液を移動させる工程の前に、基板を静止させた状態に保つ工程を備えている塗布方法。
【請求項10】
基板に塗布液を塗布する塗布装置であって、
基板を回転可能に保持する回転保持部と、
塗布液の液滴を吐出可能な複数のノズルを有するインクジェットヘッドと、
前記インクジェットヘッドと基板を相対的に移動させる相対移動機構と、
前記相対移動機構を制御して基板と前記インクジェットヘッドを相対的に移動させつつ、前記ノズルを制御して前記ノズルから液滴を基板に吐出させて、基板の周縁部における膜厚に比べて基板の中央部における膜厚が厚い塗布液の塗膜を形成し、その後、前記回転保持部を制御して基板を回転させて、基板の中央部から周縁部に向けて塗膜内の塗布液を移動させる制御部と、
を備えている塗布装置。
【請求項1】
インクジェットヘッドに設けられる複数のノズルから塗布液の液滴を基板に吐出させ、基板の周縁部における膜厚に比べて基板の中央部における膜厚が厚い塗布液の塗膜を形成する工程と、
基板を回転させて基板の中央部から周縁部に向けて塗膜内の塗布液を移動させる工程と、
を備える塗布方法。
【請求項2】
請求項1に記載の塗布方法において、
塗膜を形成する工程は、基板の周縁部から中央部に向かって膜厚が増大している塗膜を形成する塗布方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の塗布方法において、
塗膜を形成する工程は、基板を区画する複数の同心円状の領域の間で膜厚が異なり、かつ、外周側の領域から内周側の領域にかけて段階的に膜厚が厚くなっている塗膜を形成する塗布方法。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の塗布方法において、
塗膜を形成する工程は、少なくとも基板を回転させることによってインクジェットヘッドと基板を相対的に移動させつつノズルから基板に液滴を吐出させ、
塗膜を形成する工程における基板の回転速度は、塗膜内の塗布液を移動させる工程における基板の回転速度に比べて小さい塗布方法。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載の塗布方法において、
塗膜を形成する工程は、
インクジェットヘッドを静止させるとともに基板を回転させつつ各ノズルから液滴を吐出させる工程と、
インクジェットヘッドを基板の径方向に移動させる工程と、
を有し、
液滴を吐出させる工程およびインクジェットヘッドを移動させる工程を交互に繰り返すことによって塗膜を形成する塗布方法。
【請求項6】
請求項1から請求項4のいずれかに記載の塗布方法において、
塗膜を形成する工程は、
基板の中央部と周縁部との間にわたってインクジェットヘッドを配置し、基板を回転させつつノズルから基板に液滴を吐出させる塗布方法。
【請求項7】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の塗布方法において、
塗膜を形成する工程は、基板を回転させずにインクジェットヘッドを平行移動させつつノズルから基板に液滴を吐出させる塗布方法。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれかに記載の塗布方法において、
塗膜を形成する工程の前に、基板に塗布液の溶剤を供給する工程を備えている塗布方法。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれかに記載の塗布方法において、
塗膜を形成する工程の後であって、塗膜内の塗布液を移動させる工程の前に、基板を静止させた状態に保つ工程を備えている塗布方法。
【請求項10】
基板に塗布液を塗布する塗布装置であって、
基板を回転可能に保持する回転保持部と、
塗布液の液滴を吐出可能な複数のノズルを有するインクジェットヘッドと、
前記インクジェットヘッドと基板を相対的に移動させる相対移動機構と、
前記相対移動機構を制御して基板と前記インクジェットヘッドを相対的に移動させつつ、前記ノズルを制御して前記ノズルから液滴を基板に吐出させて、基板の周縁部における膜厚に比べて基板の中央部における膜厚が厚い塗布液の塗膜を形成し、その後、前記回転保持部を制御して基板を回転させて、基板の中央部から周縁部に向けて塗膜内の塗布液を移動させる制御部と、
を備えている塗布装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2013−78749(P2013−78749A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−221101(P2011−221101)
【出願日】平成23年10月5日(2011.10.5)
【出願人】(506322684)株式会社SOKUDO (158)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月5日(2011.10.5)
【出願人】(506322684)株式会社SOKUDO (158)
【Fターム(参考)】
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