説明

塗布方法及び吸収性物品の製造方法

【課題】所定量の塗布液をシートに効率良く安定的に塗布し得る塗布方法を提供すること。
【解決手段】塗布装置として、搬送中の帯状のシートSの一面Saに非接触で塗布液を塗布する塗布手段3と、塗布手段3よりシート搬送方向Vの下流側に位置し、外周面5aをシートSの一面Saに接触させつつ回転するロール5とを備え、且つ搬送中のシートSにおける塗布手段3とロール5との間に位置する特定部分S1、下記状態A〜Cの何れか1つの状態となる塗布装置2を用いる。また、ロール5として、外周面5aが加熱された加熱ロールを用いる。状態A:水平状態。状態B:特定部分S1のロール5側が塗布手段3側より下方に位置する垂直状態。状態C:特定部分S1のロール5側が塗布手段3側の斜め下方に位置する斜行状態。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートに塗布液を塗布する塗布方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、使い捨ておむつや生理用ナプキン等の吸収性物品において、それを構成する基材シート(表面シート等)に、消炎、抗菌、香気発生等の所定の効能を有する薬液を塗布したものが知られている。例えば特許文献1には、特定のスキンケア剤が塗布された吸収性物品を効率良く連続的に製造する方法として、帯状の基材シートにスキンケア剤を塗布した後、該基材シートのスキンケア剤塗布面が該基材シートを搬送する搬送設備(ロール)に接触する前に、該基材シートを該スキンケア剤塗布面側から流体で冷却する冷却工程を具備するものが記載されている。特許文献1によれば、斯かる冷却工程により、基材シートに塗布されたスキンケア剤は、該基材シートの構成繊維内に入り込んで固定化されるため、搬送設備にスキンケア剤を付着させ難いとされている。
【0003】
また特許文献2には、不織布に持続的な湿潤性し得る特定の処理組成物が記載されており、また、該処理組成物を用いた不織布の処理方法の一例として、不織布に処理組成物を塗布した後、オーブン等の乾燥手段により該不織布を乾燥する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−143240号公報
【特許文献2】特表2001−527165号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
スプレーの如き、被塗布面に接触せずに塗布液を塗布する非接触式の塗布手段を用いて、搬送中の帯状のシートの一面に塗布液を塗布する場合、塗布手段からシートに向けて放たれた塗布液の一部が、シートの搬送に起因して塗布手段と該シートとの間に発生する気流等の影響により、シートの搬送方向に流されて飛散し、シートではなく、その周辺の塗布装置の設備、例えばシートを搬送する搬送ロールに付着することがあった。斯かる塗布液の飛散は、特に、塗布液が比較的粘度の低い低粘度液である場合に多く見られる。塗布液の飛散は、所定量の塗布液をシートに塗布できない事態を招き、製品の品質低下に繋がるおそれがある。塗布液の飛散を考慮し、塗布液の飛散が発生しても、所定量の塗布液をシートに効率良く安定的に塗布し得る技術は未だ提供されていない。
【0006】
本発明は、所定量の塗布液をシートに効率良く安定的に塗布し得る塗布方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、20℃で半固体又は固体の成分を含む塗布液を、塗布装置を用いてシートに塗布する塗布方法であって、前記塗布装置として、搬送中の帯状のシートの一面に非接触で塗布液を塗布する塗布手段と、該塗布手段よりシート搬送方向の下流側に位置し、外周面をシートの一面に接触させつつ回転するロールとを備え、且つ搬送中のシートにおける該塗布手段と該ロールとの間に位置する特定部分が、下記状態A〜Cの何れか1つの状態となる塗布装置を用い、前記ロールとして、前記外周面が加熱された加熱ロールを用いる塗布方法を提供するものである。状態A:水平状態。状態B:前記特定部分の前記ロール側が前記塗布手段側より下方に位置する垂直状態。状態C:前記特定部分の前記ロール側が前記塗布手段側の斜め下方に位置する斜行状態。
【0008】
また本発明は、20℃で半固体又は固体の薬剤を加熱して溶融させ、その溶融状態の該薬剤を、前記塗布方法を用いて、吸収性物品を構成する基材シートに塗布する工程を具備する吸収性物品の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の塗布方法によれば、塗布手段からシートに向けて放たれた塗布液が、気流等の影響により飛散してシートに直接付着しなかった場合でも、所定量の塗布液をシートに効率良く安定的に塗布することができる。また、本発明の吸収性物品の製造方法によれば、基材シートに低粘度液が塗布された吸収性物品を効率良く連続的に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本発明の塗布方法の第1実施態様によりシートに塗布液を塗布する概略工程図である。
【図2】図2は、本発明の塗布方法の第2実施態様によりシートに塗布液を塗布する概略工程図である。
【図3】図3は、本発明の塗布方法の第3実施態様によりシートに塗布液を塗布する概略工程図である。
【図4】図4は、本発明の塗布方法の第4実施態様によりシートに塗布液を塗布する概略工程図である。
【図5】図5は、本発明の塗布方法の第5実施態様によりシートに塗布液を塗布する概略工程図である。
【図6】図6は、本発明の塗布方法の第6実施態様によりシートに塗布液を塗布する概略工程図である。
【図7】図7は、本発明の吸収性物品の製造方法により得られる使い捨ておむつを一部破断して示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の塗布方法を、その好ましい一実施態様に基づき図面を参照しながら説明する。図1には、第1実施態様の概略工程が示されている。第1実施態様は、塗布装置2を用いて、帯状のシートSに塗布液を塗布する塗布方法である。シートSとしては、塗布液を塗布可能なシート状物が用いられ、例えば、紙、不織布、フィルム等が挙げられる。
【0012】
第1実施態様の塗布装置2は、図1に示すように、搬送中の帯状のシートSの一面Saに非接触で塗布液を塗布する塗布手段3と、塗布手段3よりシート搬送方向(V方向)の下流側に位置し、外周面5aをシートSの一面Saに接触させつつ回転するロール5とを備えている。塗布装置2は、更に、塗布手段3よりシート搬送方向の上流側に位置し、外周面4aをシートSの一面Saとは反対側の面(他面Sb)に接触させつつ回転するロール4を備えている。
【0013】
塗布手段3は、被塗布面に接触せずに塗布液を塗布する非接触式の塗布手段であり、より具体的には、圧縮空気及び塗布液を混合することにより該塗布液を微細液滴化して噴射口31から霧状に噴出させるものである。塗布手段3の内部には、圧縮空気及び塗布液それぞれを供給する供給路(図示せず)が設けられており、また、塗布手段3は、塗布液を収容するタンクと配管で接続されている。
【0014】
塗布手段3で扱う塗布液は、20℃で半固体又は固体の成分(薬剤等)を含むものである。ここで、半固体とは、外力や熱が加わることによって可塑性(流動性)が出現するものや、外力が加わらなくても可塑性(流動性)を有し、該流動性の低いものから高いものまで含まれる。従って、塗布手段3で扱う塗布液は、通常塗布が実施される常温(20℃前後)では、流動性が低く塗布適性に乏しい場合がある。そこで、第1実施態様においては、塗布手段3による塗布が可能な程度に塗布液の流動性を高める観点から、ヒーター等の公知の加熱手段(図示せず)を用いて、塗布手段3及びこれに接続されたタンクや配管等の、使用前の塗布液と接触する設備全体を、所定温度(塗布液の流動状態が維持され得る温度)以上に加熱している。
【0015】
シートSと塗布手段3(噴射口31)との間隔Tは、シートSの一面Saに塗布液を均一に塗布する観点から、好ましくは10〜70mm、更に好ましくは30〜50mmである。また、噴射口31の幅は、通常、シートSの塗布量域の幅と同じである。例えば、シートSの幅が70〜200mmの場合、噴射口31及びシートSの塗布量域の幅は、それぞれ、30〜150mmとすることができる。尚、ここでいう「幅」とは、当該物体(シート、噴射口等)のシート搬送方向Vと直交する方向の長さを意味する。
【0016】
塗布手段3によりシートSに塗布される塗布液の塗布量は、塗布液やシートSの種類等に応じて適宜設定され、通常、好ましくは0.1〜5.0g/m2、更に好ましくは0.1〜1.0g/m2である。ここでいう塗布量は、塗布液塗布前のシートSの重量と塗布液塗布後(ロール5を通過した後)のシートSとの重量との差から求めることができる。
【0017】
ロール4及び5は、何れも、シート搬送方向を転換するロールであり、駆動源無しで回転中心軸周りに回転する、いわゆるフリーロールである。また、塗布装置2は、これらフリーロール4及び5に加えて更に、シートSを搬送方向に搬送する搬送ロール(図示せず)を具備している。搬送ロールは駆動ロールであり、その回転中心軸には、駆動源が設けられており、該駆動源からの駆動力が伝達されることによって回転中心軸周りに回転する。搬送ロール(駆動ロール)としては、一般的な、ニップタイプのフィードロール、オメガ状に各ロールを配置したオメガタイプのフィードロールやロールの表面摩擦を高めたフィードロール等を利用することができる。ロール4及び5並びに前記搬送ロールは、何れも円筒状(回転中心軸と直交する方向の断面視において真円状)のロールであり、アルミニウム合金やステンレス鋼等の金属製の剛体や、ゴム系のコーティングやライニングされたものを含んで構成されている。シートSの搬送速度は、特に制限されないが、好ましくは50〜500m/分、更に好ましくは100〜400m/分である。
【0018】
第1実施態様の塗布装置2においては、図1に示すように、搬送中のシートSにおける塗布手段3とロール5との間に位置する特定部分S1が、該特定部分S1のロール5側(特定部分S1におけるロール5寄りの部分)が塗布手段3側(特定部分S1における塗布手段3寄りの部分)より下方に位置する垂直状態(前記状態B)となっており、第1実施態様においては、シートSは、塗布手段3からロール5に向けて垂直方向(重力が作用する方向)の下方に搬送され、ロール5に巻き掛けられることによって、その搬送方向(V方向)が垂直方向から水平方向(垂直方向と直交する方向)に90°転換される。従って、第1実施態様においては、塗布手段3により塗布液が塗布されるシートSの一面Saは垂直面となっており、この垂直面である一面Saに対向配置された塗布手段3の噴出口31から一面Saに向けて所定量の塗布液が霧状に噴出されることにより、塗布手段3によるシートSの一面Saへの塗布液の塗布がなされる。尚、図1中、符合Wは、噴出口31からシートSに向けて噴出された塗布液を示しており、また、シートSを示す線が相対的に太くなっている部位(シートSにおける、噴出口31との対向部位よりシート搬送方向の下流側に位置する部位)は、シートSにおける塗布液が塗布された部位である。
【0019】
特定部分S1は、搬送中のシートSの一部であり、シートSにおける、塗布手段3の噴出口31に最も接近する箇所からロール5との接触箇所に亘る部位である。シートSの特定部分S1の長さは、特に制限されないが、好ましくは10〜5000mm、更に好ましくは100〜1000mmである。
【0020】
このような構成の塗布装置2を用いてシートSの一面Saに塗布液を塗布する場合、図1に示すように、塗布手段3から一面Saに向けて噴出された塗布液Wの一部W’が、シートSの搬送に起因して塗布手段3とシートSとの間に自然発生する気流As、あるいは微細液滴化された塗布液の自重等の影響により、シート搬送方向(塗布手段3の下方、V方向)に流されて飛散し、本来付着すべきシートSではなく、その周辺の塗布装置の設備、具体的には、塗布手段3よりシート搬送方向の下流側で一面Saと外周面5aで接触するように配置されたロール5の該外周面5aに付着することがある。こうしてロール5の外周面5aに直接付着した塗布液W’は、温度低下等に起因する塗布液W’の流動性の低下により、ロール5の回転により塗布液W’がシートSの一面Saと接触するよりも早く外周面5aに固着しやすいため、塗布液W’付着後のロール5の回転により一面Saと接触しても、一面Saに転写されずに外周面5aに残留したままになりやすい。従って、塗布手段3からシートSの一面Saに向けて所定量の塗布液Wを噴出しても、その一部W’はロール5に固着してしまって一面Saには付与されず、一面Saに所定量の塗布液Wを塗布できないことになる。塗布液は、シートSに所定の効能を付与する目的で使用されるものであり、その効能は、塗布液が所定量塗布されて初めて発現するものであるから、塗布液を設計通りの所定量塗布できないことは、製品の品質低下を招くおそれがある。
【0021】
このような塗布液の飛散に起因する塗布量の低下の問題に鑑み、本発明では、ロール5(塗布手段3よりシート搬送方向の下流側に位置し、外周面5aをシートSの一面Saに接触させつつ回転するロール)として、外周面5aが加熱された加熱ロールを用いている。第1実施態様におけるロール5は、外周面5aを加熱可能なヒーター(図示せず)を内蔵しており、該ヒーターを作動させることにより、外周面5aを所望の温度に加熱し、その加熱状態を所定時間維持することができる。該ヒーターの作動は、図示しない制御手段により制御される。
【0022】
前記ヒーターによりロール5の外周面5aを加熱して、外周面5aの温度を、塗布液の流動性が低下しないような温度、換言すれば、塗布液が外周面5aに固着しないような温度に設定することにより、前述した塗布液の飛散により外周面5aに塗布液が直接付与することがあっても、加熱された外周面5a上では塗布液は本来の流動性を失わず該外周面5aに固着しないため、塗布液付着後のロール5の回転により外周面5a上の塗布液がシートSの一面Saと接触すると、該塗布液は一面Saに速やかに転写され、外周面5aには残留しない。従って、ロール5として加熱ロールを用いる第1実施態様の塗布方法によれば、塗布手段3からシートSに向けて放たれた塗布液が、気流等の影響により飛散してシートSに直接付着しなかった場合でも、所定量の塗布液をシートSに効率良く安定的に塗布することができる。
【0023】
ロール5(加熱ロール)の外周面5aの具体的な加熱温度は、塗布液の種類に応じて適宜調整されるものであり、特に制限されないが、好ましくは30〜100℃、更に好ましくは35〜80℃である。ロール5の外周面5aに付着した塗布液のシートSへの転写を容易にする観点から、外周面5aの加熱温度は、塗布手段3による塗布液のシートSへの塗布直前における、塗布液の温度〔流動状態(溶融状態)にある塗布液の温度〕よりも高いことが好ましい。
【0024】
円筒状(回転中心軸と直交する方向の断面視において真円状)のロール5の直径は、ロール5に付着した塗布液のシートSへの転写を容易にする、シートSとの接触面積を一定以上確保する等の観点から、好ましくは15〜200mm、更に好ましくは60〜100mmである。
【0025】
また、ロール5の外周面5aに付着した塗布液のシートSへの転写を一層容易にする観点から、外周面5aは剥離処理されていることが好ましい。剥離処理としては、具体的には、外周面5aに剥離処理剤を塗布する方法が挙げられ、該剥離処理剤としては、例えば、フッ素系、シリコン系、シロキサン系、エンジニアリングプラスチックス、スーパーエンジニアリングプラスチックス等が挙げられる。
【0026】
塗布液としては、20℃で半固体又は固体の成分を含み且つ非接触式の塗布手段により塗布可能なものであれば良く、水性でも油性でも良く、特に制限されない。20℃で半固体又は固体の成分(薬剤等)そのものを加熱して溶融状態(流動状態)としたものも、本発明で取り扱い可能な塗布液となり得る。第1実施態様の塗布方法によれば、使用する塗布液が、塗布手段3から噴出させた後に気流等の影響により飛散し易く所定の塗布量が得られにくい、低粘度液であっても、前述した効果を奏することができる。このような低粘度の塗布液の粘度は、好ましくは1〜500mPa・s、更に好ましくは1〜250mPa・sである。ここでいう塗布液の粘度は、シートSに塗布する直前の流動状態の塗布液の粘度であり、例えば、20℃で半固体又は固体の物質(薬剤等)を加熱して溶融状態としたものを塗布液として用いる場合は、その溶融状態の塗布液の粘度である。塗布液の粘度は、測定対象の塗布液を所定の容器に入れ、該塗布液の温度を、塗布手段あるいはこれに接続されたタンクや配管等の設備の温度と同じにした状態で、回転式粘度計や振動式粘度計等を用いて測定することができる。振動式粘度計としては、例えば、山一電機社製のVM−1A−Mを用いることができる。
【0027】
以下、本発明の塗布方法の他の実施態様について図2〜図6を参照して説明する。後述する他の実施態様については、前述した第1実施態様と異なる構成部分を主として説明し、同様の構成部分は同一の符号を付して説明を省略する。特に説明しない構成部分は、第1実施態様についての説明が適宜適用される。
【0028】
第2実施態様の塗布装置2Aにおいては、図2に示すように、搬送中のシートSにおける塗布手段3とロール5(加熱ロール)との間に位置する特定部分S1が水平状態(前記状態A)となっており、第2実施態様においては、シートSは、塗布手段3からロール5に向けて水平方向に搬送され、ロール5に巻き掛けられることによって、その搬送方向(V方向)が水平方向から垂直方向に90°転換され、上方に向けて搬送される。第2実施態様によっても、第1実施態様と同様の効果が奏される。
【0029】
第3実施態様の塗布装置2Bにおいては、図3に示すように、搬送中のシートSにおける塗布手段3とロール5(加熱ロール)との間に位置する特定部分S1が、該特定部分S1のロール5側が塗布手段3側の斜め下方に位置する斜行状態(前記状態C)となっており、第3実施態様においては、シートSは、塗布手段3からロール5に向けて斜め下方に搬送され、ロール5に巻き掛けられることによって、その搬送方向(V方向)が、水平方向及び垂直方向それぞれと交差する方向から水平方向に転換される。また、第3実施態様においては、シートSにおける、ロール5への導入直前の部分とロール5を通過直後の部分とのなす角度〔ロール5の外周面5aとの接触面(一面Sa)側の角度〕αが、90°を超えるようになされている。第3実施態様によっても、第1実施態様と同様の効果が奏される。
【0030】
第4実施態様の塗布装置2Cにおいては、図4に示すように、ロール5(加熱ロール)及びこれに接触するシートSが、他の部分と区画するケース6で囲われている。このように、外周面5aが加熱されているロール5及びその近傍のシートSがケース6で囲われ、他の部分と区画されていることにより、ケース6内の温度は外周面5aからの熱により他の部分に比して上昇し、それによりケース6内のシートS、即ち、外周面5aと接触中あるいは接触前後のシートSの一面(被塗布面)Saの温度も上昇するため、前述した外周面5aから一面Saの塗布液の転写が、より一層促進される。
【0031】
ケース6の形状は、図4に示す如き立方体あるいは直方体に制限されず、任意の形状を選択できる。ケース6は、シートSがケース6内に搬送される搬入口(図示せず)及びシートSがケース6外に搬送される搬出口(図示せず)をそれぞれ有しており、ケース6内は外部と連通していて密閉されていない。また、塗布手段3側(シートSの搬入側)から飛散してくる塗布液がケース6内に入り易くなるようにする観点から、図4に示すように、ケース6のシート搬入側(塗布手段3と対向する面側)全体が開口していることが好ましい。また、同様の観点から、ケース6のシート搬入側の幅(シート搬送方向と直交する方向の長さ)は、シートSと塗布手段3(噴射口31)との間隔(図1の間隔T)よりも長いことが好ましい。
【0032】
第5実施態様の塗布装置2Dは、図5に示すように、塗布手段3よりシート搬送方向の上流側に、シートSを冷却する冷却手段7を備えており、第5実施態様においては、塗布手段3によりシートSに塗布液を塗布する前に、冷却手段7によりシートSを冷却する。冷却手段7は、シートSを基準として塗布手段3とは反対側に配置されており、シートSの一面(被塗布面)Saとは反対側の他面Sb側からシートSを冷却する。このように、シートSがロール5に到達する前、即ち、ロール5の外周面5aに付着した塗布液がシートSの一面(被塗布面)Saに転写される前に、予めシートSを冷却しておくことにより、一面Saに転写された塗布液は、冷却された一面Saに触れることによって速やかに流動性を失って一面Saに固着し易くなり、それにより塗布液の所定の塗布量の確保がより一層確実になる。
【0033】
冷却手段7としては、図5に示すように、噴射口71から流体を噴射する流体噴射ガンを用いることができる。冷却手段7の内部には、流体を供給する供給路(図示せず)が設けられている。流体としては、空気、ガス、水等が挙げられ、コストやメンテナンスの観点から、空気を好適に用いることができる。噴射する流体の温度は、塗布液の溶解温度(塗布液の流動状態が維持される温度)より低いことが好ましく、10〜200℃以上低いことが更に好ましく、50〜100℃以上低いことが特に好ましい。
【0034】
シートSと冷却手段7(噴射口71)との間隔は、好ましくは1〜300mmである。また、噴出口71から吐出される流体の圧力は、好ましくは0.01〜1.0MPaである。また、ノズル61から吐出される流体の流量は、好ましくは10〜1000l/分である。
【0035】
第6実施態様の塗布装置2Eは、図6に示すように、冷却手段7に加えて、空気を吸引する吸引手段8を備えており、第6実施態様においては、ロール5(加熱ロール)を通過中及び通過後のシートSを、シートSの他面Sb側から吸引手段8により吸引する。吸引手段8は、一対のロール81,81と、両ロール81,81間を架け渡された無端ベルト82と、両ロール81,81間(相対向する無端ベルト82,82間)に配置された吸引装置(図示せず)を備えている。両ロール81,81の少なくとも一方は、駆動源が接続された駆動ロールであり、また、無端ベルト82には、前記吸引装置の吸引動作により発生した空気流(バキュームエアー)が通過可能な微細な吸引孔が多数形成されている。このように、ロール5を起点として所定方向(V方向)に搬送されるシートS、即ち、ロール5の外周面5aに付着した塗布液が一面(被塗布面)Saに転写されたシートSを吸引手段8で吸引することにより、シートSが冷却され、それにより一面Sa上の塗布液の固定化がより一層促進される。特に、第6実施態様は、冷却手段7及び吸引手段8を併用することにより、両手段7,8の一方のみを使用する場合に比して、塗布液のシート6への固定化が特に促進される。また、吸引手段8の吸引により生じる空気流(バキュームエアー)は、塗布手段3から一面Saに向けて噴出された塗布液Wの一部W’を、ロール5や吸引手段8(無端ベルト82)上のシートSに誘導する効果がある。
【0036】
前述した本発明の塗布方法は、吸収性物品を構成する基材シートに20℃で半固体又は固体の薬剤が塗布された吸収性物品を連続的に製造する、吸収性物品の製造方法に適用することができる。本発明の吸収性物品の製造方法は、20℃で半固体又は固体の薬剤を加熱して溶融させ、その溶融状態の該薬剤を、前述した本発明の塗布方法を用いて、基材シートに塗布する工程を具備する。溶融状態の薬剤を基材シートに塗布する工程は、具体的には、前記各実施態様において、シートSとして、吸収性物品を構成する基材シート(表面シート等)を用い、塗布液として、溶融状態(流動状態)の薬剤を用いることで実施可能である。
【0037】
図7には、本発明の吸収性物品の製造方法により得られる吸収性物品の一例として、使い捨ておむつ1が示されている。使い捨ておむつ1は、図7に示すように、液透過性の表面シート10、液不透過性又は撥水性の裏面シート11及びこれら両シート10,11間に配置された液保持性の吸収体12を備えている。また、使い捨ておむつ1は、図7に示すように、その長手方向(図7中のY方向)に、着用時に着用者の背中側に配される背側部A、股間部に配される股下部C及び腹側に配される腹側部Bを有している。図7に示すように、使い捨ておむつ1の長手方向(Y方向)の両側それぞれには、撥水性不織布からなるサイドシート13が、表面シート10の両側部を覆うように配されている。表面シート10及び各サイドシート13は、吸収体12の周縁より外方において、裏面シート11に接合されている。吸収体12の幅方向(図7中のX方向)外方のレッグフラップ部には、レッグギャザー形成用の弾性部材14が配されており、サイドシート13のおむつ幅方向(X方向)中央側の側縁には、立体ギャザー形成用の弾性部材15が配されている。
【0038】
図7に示すように、使い捨ておむつ1は、いわゆる展開型のおむつであり、背側部Aの長手方向(Y方向)の両側縁部それぞれに設けられたファスニングテープ16,16を、腹側部Bの外面に設けられたランディングテープ17に止着することにより、身体に装着して使用する。尚、表面シート10、裏面シート11、吸収体12、サイドシート13、ファスニングテープ16、ランディングテープ17、弾性部材14,15としては、それぞれ、この種の物品に使用されているものを特に制限なく使用することができる。吸収体12としては、パルプ繊維等の繊維材料からなる繊維集合体又はこれに吸水性ポリマーの粒子等を保持させたものを、ティッシュペーパや透水性の不織布等の被覆シート(図示せず)で被覆してなるもの等を用いることができる。
【0039】
使い捨ておむつ1において、薬剤が塗布される基材シートとしては、例えば、表面シート10、裏面シート11、サイドシート13、前記被覆シート等が挙げられるが、これらに制限されるものではない。また、基材シートに塗布される薬剤としては、例えば、スキンケア剤(例えば、本出願人の先の出願に係る特願2010−263404に記載のスキンケア剤)やアルコール等が挙げられる。
【0040】
以上、本発明をその好ましい実施態様に基づき説明したが、本発明は前記実施態様に制限されない。例えば、塗布手段3は、被塗布面に接触せずに塗布液を塗布する非接触式の塗布手段であれば良く、前記実施態様における圧縮空気を用いるタイプに制限されない。また、前記実施態様では、ロール5(加熱ロール)は駆動源に接続されていないフリーロールであったが、駆動源に接続された駆動ロールであっても良い。
【0041】
また、塗布液のロール5(加熱ロール)の外周面5aへの付着を促進させる観点から、塗布液の飛散の原因となる気流を意図的に発生させても良い。より具体的には、例えば送風機等の送風手段を用いて、塗布手段3とシートSとの間をロール5に向かって流れる気流を人工的に発生させることができる。このような意図的に発生させた人工気流は、シートの搬送に起因して自然発生する気流に比して風量が大きいため、この人工気流を用いることによって、塗布手段3から噴出された塗布液の一部あるいは全部をより確実にロール5の外周面5aに直接付着させることが可能となり、それによって、前述したロール5からシートSへの塗布液の転写がより一層促進され、延いては所定量の塗布液をシートSに効率良く安定的に塗布することが可能となる。このような人工気流の使用は、シートSにおける塗布手段3とロール5との間に位置する特定部分S1が、水平状態(第2実施態様)あるいは斜行状態(第3実施態様)となっていて、シートSの搬送に起因して自然発生する気流のみでは、塗布手段3により微細液滴化された塗布液をロール5に直接付着し難い場合に特に有効である。
【0042】
また、本発明の吸収性物品の製造方法は、図7に示す如き展開型の使い捨ておむつの製造方法のみならず、パンツ型の使い捨ておむつ、生理用ナプキン、失禁パッド、パンティライナー等の製造方法にも適用できる。
【符号の説明】
【0043】
1 使い捨ておむつ(吸収性物品)
2,2A,2B,2C,2D,2E 塗布装置
3 塗布手段
31 塗布手段の噴出口
4 ロール
5 ロール(加熱ロール)
4a,5a ロールの外周面
6 ケース
7 冷却手段
8 吸引手段
S シート
Sa シートの一面(被塗布面)
Sb シートの他面
S1 特定部分〔シートにおける塗布手段とロール(加熱ロール)との間に位置する部分〕
V シート搬送方向
W,W’ 塗布液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
20℃で半固体又は固体の成分を含む塗布液を、塗布装置を用いてシートに塗布する塗布方法であって、
前記塗布装置として、搬送中の帯状のシートの一面に非接触で塗布液を塗布する塗布手段と、該塗布手段よりシート搬送方向の下流側に位置し、外周面をシートの一面に接触させつつ回転するロールとを備え、且つ搬送中のシートにおける該塗布手段と該ロールとの間に位置する特定部分が、下記状態A〜Cの何れか1つの状態となる塗布装置を用い、
前記ロールとして、前記外周面が加熱された加熱ロールを用いる塗布方法。
状態A:水平状態。
状態B:前記特定部分の前記ロール側が前記塗布手段側より下方に位置する垂直状態。
状態C:前記特定部分の前記ロール側が前記塗布手段側の斜め下方に位置する斜行状態。
【請求項2】
前記加熱ロールの外周面が剥離処理されている請求項1記載の塗布方法。
【請求項3】
前記加熱ロールは、前記シート搬送方向を転換するロールである請求項1又は2記載の塗布方法。
【請求項4】
前記加熱ロール及びこれに接触する前記シートが、他の部分と区画するケースで囲われている請求項1〜3の何れか一項に記載の塗布方法。
【請求項5】
前記シートに前記塗布液を塗布する前に、該シートを冷却する請求項1〜4の何れか一項に記載の塗布方法。
【請求項6】
空気を吸引する吸引手段を用い、前記加熱ロールを通過後の前記シートを、該シートの他面側から吸引する請求項1〜5の何れか一項に記載の塗布方法。
【請求項7】
20℃で半固体又は固体の薬剤を加熱して溶融させ、その溶融状態の該薬剤を、請求項1〜6の何れか一項に記載の塗布方法を用いて、吸収性物品を構成する基材シートに塗布する工程を具備する吸収性物品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−63385(P2013−63385A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−203110(P2011−203110)
【出願日】平成23年9月16日(2011.9.16)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】