説明

塗布方法及び装置

【課題】 塗布ブース内の被塗物に引火性の塗材を安全かつ衛生的に自動で塗布できる安価な塗布方法と装置を提供する。
【解決手段】 固定した下面開放箱3と、第2の駆動源15又は第2の駆動軸16で移動する上面開放箱4で箱状塗布ブース30を形成し、該塗布ブース上部から吸気又は給気し、下部から排気する構成にして、上面開放箱内に被塗物搭載手段11を設け、塗布ブースの上部より塗布器1を露出させ、被塗物14を塗材で塗布する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は粉液や液体などの塗材を被塗物に塗布する方法と装置に係わり、特に引火性のある液体コーティング剤などの自動塗布方法と装置に係わる。
【背景技術】
【0002】
従来、引火性のある液体や紛体の塗材、特に詳細には有機溶剤を含む材料を被塗物に吐出し線や点のパターンあるいはそれらの集合体を形成したり、面塗布する方法として3軸直交ロボットなどに微粒子発生装置の一種であるスプレイ装置などの塗布器をセットした自動塗布装置が多く製造され業界で使用されている。
【0003】
特許文献1には非磁性の隔壁で作業領域と制御領域が仕切られ作業手段は制御手段からの駆動はマグネットを利用した摺動手段を介して間接的に駆動され作業空間内(塗布室)の被塗物に塗布する装置が提案されている。
【0004】
特許文献2にはワーク収納室内(塗布室)のワークに対してワーク収納室外の第1のモーターと第2のモーターとがワーク収納室の第1第のねじ軸と連結され、XY方向に展開できるように塗布ガンで塗布する装置が提案されている。
【0005】
非特許文献1などに開示されているような簡易版装置としてディスペンサーやスプレイノズル或いは超音波墳霧化装置、インクジェット吐出器などの塗布器をセットした卓上ロボットも数多く製造されエレクトロニクス業界を中心に多くの業界で採用されている。
【0006】
しかし、特許文献1は作業空間(塗布室)に引火や爆発の危険性のある電気部品を設置しないように配慮されているが、マグネットを利用した摺動手段のため作業手段の負荷や摺動抵抗の経時的変化などによりエレクトロニクス業界などで要求されるミクロンオーダーで繰り返し精度よく位置決めしながら駆動させることは不可能であった。
【0007】
特許文献2は同様に塗布室に電気部品を設置しないように配慮されかつ、ねじ軸を利用しているので精度ろく制御はできるが、ワーク収納室(塗布室)内の塗装ガンをXY方向に展開するために移動する複雑な構造体が存在し、塗装粒子が付着し落下する原因をつくっていたばかりか複雑ゆえ高価であった。
【0008】
一方、非特許文献1などの簡易装置を使用して塗装をする場合塗装時発生する粒子や溶媒蒸気が飛散して環境悪化に繋がっていた。それを避けるため塗装室を設けたとしても塗装室に動力源になるモーターや電気部品また電線などが存在し常に使用者側がリスクをかかえていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2005−152811
【特許文献2】特開2010−119945
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】武蔵エンジニアリングカタログ
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
例えば、上記のように被塗物にポリマーなどの塗膜を得たい場合はポリマーなどを引火性のある芳香族系有機溶剤や炭化水素系有機溶剤などで溶解させた溶液などを作成してスプレイノズルなどで被塗物に塗布する。手作業でもできるが、通常再現性を求めるため小型の2軸あるいは3軸駆動軸を備えた卓上ロボットのテーブルに被塗物を搭載し、スプレイ塗布を行う。その後、被塗物に残留した熱硬化樹脂やUV硬化樹脂などのモノマー等の場合は、有機溶剤を揮発させた後、熱や紫外線などで硬化させる必要がある。また有機溶剤を含む接着剤のとふにかんしても同様なことが行われている。しかしながら、たとえば大学の研究室などでは溶液灘の扱い量が少ないため小型装置を給排気設備の整ったドラフトチャンバー内において作業をおこなうので、揮発する有機溶剤が作業者に影響を与えることは無視できる。
【0012】
ところが工場などで頻繁に塗布作業を行う場合や、大量に溶液などを塗布する場合は、比較的大型の給排気装置を備えた箱で囲われたブースの中に塗布器、及び塗布器移動装置及び/またはテーブル移動装置から成る塗布装置を設置して塗布作業が行われている。この場合の動力である駆動源として使用される動力モ―ター、たとえばサーボモーターやステッピングモーター等は有機溶媒またはその蒸気にさらされるので耐圧防爆にする必要がある。ところが一般的に耐圧防爆モーターは寸法が大きいばかりか重量も2倍以上と重くなるため、設置には強度を増した大型の構造体が必要で高価であった。さらに直交2軸あるいはロボットにする場合、片方の駆動軸が駆動源を支える軸の可搬重量に制限が生じていた。また通常耐圧防爆モーターは受注生産品のため、納期に4乃至6カ月を要し産業界が求める短納期に対応することは難しかった。
【0013】
この課題に対応するためモーター等の動力源を箱の中に入れ加圧エアを注入して箱内の気圧を高めて、溶媒蒸気の侵入を防ぐ方法が簡易的に採用されている。しかしながら、この方法は一般的には公的機関で実証検査して許可されているわけではないので自己責任としてリスクが高かった。
【0014】
仮にそれらの簡易内圧式の装置が顧客の責任において便宜摘に認められたとしても、動力源などへの配線は溶媒蒸気に暴露されるので配管に収納する必要がある。直交2軸あるいは3軸ロボットの様に動力源であるサーボモーターやステッピングもーたーを移動させる必要が生じた場合それらを適用することはできなかった。
【0015】
防爆配線コネクターを使用して配線する方法が認められるケースもあるが、業界で通常ロボットに使用されるケーブルラックに配線を収納しても摺れや溶剤蒸気成分雰囲気での暴露などによる配線被覆劣化が避けられずスパークの危険性が常にあった。
【0016】
また配線の切断によるスパークや動力源の過負荷による異常発熱による溶媒蒸気への着火を避けるためにブース内の溶媒濃度を爆発下限界の2倍より遥かに多い室内などからの吸気と室外への排気を行う方法が一部採用されている。ところが風量が多いほど溶媒蒸気は希釈され全く着火しないレベルを維持することができるが、ブース内の風速が早くなるので、特にスプレイ塗布などを行う場合粒子が風に乗って飛散し、そのため塗着効率が極めて低くなる。例えば青色発光ダイオードを被覆して白色発光させるLEDの被覆に使用されるフォスファー(蛍光体)などは非常に高価であるため、塗着効率の悪い方法はそれらの業界では受け入れてもらえないのが現状である。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は前途の課題を解決するためになされたもので、本発明の目的は有機溶剤を使用しても安全及び衛生的に優れた安価な塗材の塗布方法および装置を提供することでる。
【0018】
上記課題を解決するために本発明は固定手段により固定した天板又は下面開放箱と少なくとも一つの駆動軸で移動する上面開放箱又は底板とで塗布ブースを形成し、上面開放箱内又は底板に被塗物搭載手段を設け被塗物を搭載し、前記塗布ブースの上部より塗布器より少なくとも吐出部を露出させ、塗布器で塗材を被塗物へ塗布することを特徴とする塗布方法を提供する。
【0019】
上記課題を解決するため本発明は前記固定した天板又は下面開放箱に開口を設け、該開口より第一の駆動源又は第1の駆動軸により移動する少なくとも塗布器の吐出部又はブラケットに装着した塗布器を上記ブース内に露出させ、上記上面開放箱又は底板は上記少なくとも塗布器を装着したブラケットの移動方向と直交して第2駆動源又は第2駆動軸で移動し、上記上面開放箱内又は底板に被塗物掲載手段を設け被塗物を搭載し、前記塗布ブースの上部から吸気又は給気し、下部から排気し、塗布器で塗材を被塗物へ塗布することを特徴とする塗布方法を提供する。
【0020】
上記課題を解決するために本発明は前記第1の駆動軸に前記塗布器を自動的に上下できる第3の駆動源又は駆動軸を連結し、被塗物搭載手段がテーブルであって、底板又は上面開放箱に設置したテーブルに吸着及び加熱手段が設けられることを特徴とする塗布方法が好ましい。
【0021】
上記課題を解決するために本発明では前記塗布器が微粒子発生装置であって塗材が溶剤を含む溶液又はスラ―リーであることを特徴とする塗布方法が好ましい。
【0022】
前記天板又は下開放箱の開口は、前記塗布器又はブラケットと同時移動するベルトでシールされ、少なくとも天板又は下面開放箱と上面開放箱との隙間から吸気し上面開放箱の被塗物搭載手段付近に設けられた排気部より排気することを特徴とする塗布方法が好ましい。
【0023】
前記上面開放箱又は底板は第2の駆動軸と連結され、前記上面開放箱又は底板下部に設けられた転がり又は滑り手段で移動がサポートされることを特徴とする方法が好ましい。
【0024】
上記課題を解決するために本発明では前記テーブルにLEDチップ又はその集合体を搭載し、有機溶剤とバインダーと蛍光体(Phosphor)とからなるスラ―リー(Slurry)を、前記微粒子発生装置を含むスラ―リー移動回路のなかで移動させて均一に分散し、微粒子発生装置とLEDチップを相対的にピッチ移動させ、微粒子発生装置でLEDのチップの表面にスラ―リーを少なくとも1層塗布し、乾燥させたのち、ピッチ位置をずらしながら複数層塗布と乾燥を繰り返すことを特徴とする塗布方法を提供する。
【0025】
上記課題を解決するために本発明では前記固定した下面開放箱の上面に開口を設け、該開口を第1の駆動源又は第1の駆動軸に連結されて移動する塗布器の移動方法と直交して、第2の駆動源又は第2の駆動軸で移動する底板に被塗物搭載手段を設け、被塗物搭載・取り出しゾーンで被塗物を搭載させ、塗布ブースまで移動し、塗布器と被塗物とを相対的にピッチ移動させながら塗布器で被塗物に液体を少なくとも1層塗布し、被塗物をブース外の乾燥ゾーンまで移動し、乾燥させたのち、塗布ブースまで移動し、ピッチの位置をずらしながら塗布し、塗布と感想を複数層繰り返すことを特徴とする方法を提供する。
【0026】
上記課題を解決するために本発明では構造体に固定した天板又は下面開放箱と移動する上面開放箱と底板とで塗布ブースを形成し、該塗布ブース上部に開口を設け、該開口に第1の駆動源又は第1の駆動軸により移動する少なくとも塗布器吐出部又はブラケットに装着した塗布器を前記塗布ブース内に露出させ、上面開放箱又は底板を、前記塗布器の移動方向と直交して第2の駆動源又は第2の駆動軸で移動し、前記上面開放箱又は底板には被塗物搭載テーブルを設け、被塗物を固定して塗布器で塗材を塗布することを特徴とする装置を提供する。
【発明の効果】
【0027】
本発明の方法又は装置によれば、独自に塗布ブースや駆動源や駆動軸を新たに設計製作しなくとも例えば非特許文献(武蔵エンジニアリング株式会社総合カタログ CAT.No.GC1509-10.J20、28、29ページ)にあるような市販の門型3軸ロボットの門などに固定した上坂又は下面開放箱の一部に開口を設け、X軸(本発明の第1駆動軸)と連動しながら上下に移動するZ軸(第3の駆動軸)に固定したブラケットにスプレイガンを装着し、Y軸(第2の駆動軸)にテーブルを設置した上面開放箱を搭載することにより、安価な装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の第1実施形態にかかる塗布装置の側面からみた概略的断面図である。
【図2】本発明の第1実施形態にかかる塗布装置の側面からみた概略的断面図である。
【図3】本発明の第1実施形態にかかる塗布装置の概略的平面図である。
【図4】本発明の第1実施形態にかかる塗布装置の概略的正面図である。
【図5】本発明の第1実施形態にかかる塗布装置の概略的正面図である。
【図6】本発明の第2実施形態にかかる塗布装置の側面から見た概略的断面図である。
【図7】本発明の第2実施形態にかかる塗布装置の概略的平面図である。
【図8】本発明の第3実施形態にかかる塗布装置の概略的平面図である。
【図9】本発明の第4実施形態にかかる塗布装置の側面からみた概略的断面図である。
【図10】本発明の第4実施形態にかかる塗布装置の正面からみた概略的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態について説明する。なお、以下の実施形態は発明の理解を容易にするための一例にすぎず本発明の技術的思想を逸脱しない範囲において当業者により実施可能な付加、置換、変形等を施すことを排除するものではない。
【0030】
図面は本発明の好適な実施の形態を概略的に示している。
【0031】
(第1実施の形態)
図1から図5は、本発明の第1実施の形態のかかわる塗布装置を示しており、図1は該塗布装置の側面からみた断面図、図2は側面からみた断面図、図3は平面図、図4は正面図、図5は正面からみた概略図である。
【0032】
図1において固定された下面開放箱3と移動する上面開放箱4とでブース30を形成し、下面開放箱3の一部には開口21が設けられている。開口は塗布器1を装着したブラケット6と連動して移動する密封用ベルト28でシールすることができる。下面開放箱は浅底の下面開放箱が好ましく、幅方向は若干広ければよいが移動方向は上面開放箱の移動距離を考慮して長くする必要がある。密着用ベルトの構造は本発明者が出願した特願2010−003319で詳細説明がなされているので説明を省略する。塗布器1は上面開放箱の移動する第1の駆動軸16と塗布器を上下させる第3の駆動軸18及びブランケットで連結されている。上面開放箱には被塗布物搭載手段である加熱素子13などで加熱できるテーブル11と吸着機構12とが設けられ、被塗物14は真空ポンプやエジェクター効果を利用して吸着させ、動かないように固定して加熱され第2の駆動軸で上面開放箱と一緒に移動する。
一つのテーブルで吸着と加熱ができる構造にしてもよい。又加熱や吸着は限定するものでなく加熱手段を設けないテーブルにすることもできるし、冷却装置を使用して冷却することもできる。本装置ではテーブル或いはテーブル用加熱素子などの設置場所はブース外に設けることができるので、塗材が引火性のあるものであっても本装置は安全である。又加熱は加熱素子だけでなく熱媒を循環して加熱してもよく、誘導加熱、高周波加熱などを使用でき機器や方法を限定するものではない。又吸着テーブルの代わりに被塗物に、比較的重いマスキング基材などをのせて被塗物を固定することもできる。塗布器とテーブル上の被塗物は直交し相対移動するので別設置の制御機構からの指令で被塗物全体をあるいは所望する箇所だけを塗布器で効果的に塗材を塗布できる。
【0033】
図2において固定した天板2と移動する上面開放箱3とで隙間7を介してブースを形成している。天板と上面開放箱間の隙間からブース内に吸気することができる。隙間を設けず摺動移動させたい場合は天板の一部にHEPA等のフィルターを設け外気をブース内に吸入できる。天板は広義のプレートを意味し、単なる板だけでなく加工あるいは補強された構造体でもよく、他の機器などが組み込まれた複合体でもよい。テーブル11が設置された上面開放箱は転がり又は滑り手段の一つであるロール19とガイド20でサポートされスムーズに移動できる。天板には開口が設けられ塗布器の一部(先端)がブース内に露出されているのみでブース内は被塗物だけのシンプルな構成になっている。特に塗布器がスプレイなどの微粒子発生装置であるときは飛散した粒子が付着する箇所がほとんどないので理想的な塗布装置といえる。塗布器は移動させず固定して、上面開放箱だけを移動させて被塗物へ塗布をすることもできるし、塗布器を被塗物移動方向と直交して移動する第1の駆動軸16に取り付けて塗布器移動方向の開口を長くして、広範囲の面積に塗布することもできる。被塗物は上面開放箱と共に第2駆動源で所望するピッチで間欠送りし、停止している間に塗布器が塗布しながら移動する。塗布と被塗物の間欠移動が繰り返され1層をコーティングできる。2層目以降をコーティングする時は、別設置制御装置のプログラムで自動的にピッチ位置(塗布スタート位置)をずらしながら(オフセットしながら)行うことにより均一なコーティングができる。又塗布器と連動する第1の駆動軸を間欠的のピッチ送りし、停止時に第2の駆動軸と連動する上面開放箱を連動移動させながら塗布することもできる。2層目以降は同じ方法を採用すると良い。またこれらを交互に行う事もできる。尚、それぞれの駆動軸の代わりに駆動源で作動できるロープ、ベルトなどとガイドレールなどを用いてもよい。
【0034】
図4において下面開放箱3は構造体24に取り付けられ固定されている。上面開放箱の正面にはドア25が設けており、ブース内部にアクセスが可能になっている。ブースの両下部には排気部(フィルター)26が設けられその下に転がり又は滑り手段の一つであるロール19とガイド20が設けられている。ロールやガイド等の取り付け位置は限定するものでなくテーブルの下でもその他の個所でもよい。
【0035】
図5において塗布装置22の周りにアウターブース31がもうけられその上部に吸気フィルター27が設けられている。上面開放箱は第2の駆動源、第2の駆動軸により移動するので安全面からアウターブースを取り付けることが好ましい。図示されていないアウターブースの開閉ドアにはセーフティースイッチを設置しドア開閉に伴い瞬時に塗布装置が停止できるようにすることが好ましい。アウターブースのHEPAなどの吸気フィルターは天板などと下面開放箱の隙間を形成させたときの塗布ブース内環境維持に都合がよい。
【0036】
(第2実施の形態)
次に図6及び図7を参照して、本発明の第2実施の形態について説明する。
【0037】
第2実施の形態において図6は側面から見た断面図、図7は平面図である。
【0038】
図6において固定した下面開放箱103と接触しながらあるいは若干の隙間をあけて第2駆動源115または第2駆動軸116で移動する底板105とで、塗布ブース103を形成し、下面開放箱の移動方向前後下部には排気部が形成されている。排気部はダクトを経由して排気ファン135に接続されている。排気部はフィルターを内蔵した方が好ましく下面開放箱周囲全体から排気するようにしても良い。又排気部は底板の被塗布物搭載手段のテーブル111や吸着テーブル112の周囲の少なくとも前後に形成させ底板の下部からフレキシブルダクトを接続して排気してもよい。塗布器はブラケット106に装着され開口121から塗布ブース内に露出される。塗布器を上下にさせない場合は開口は下面開放箱の天面だけでなく、底板の移動方向前後側面上部に設けてL型のフ゛ラケットを用いてもよい。また、塗布器を底板と直交して移動させない場合はブラケットを用いてもよい。また、塗布器を底板と直交して移動させない場合はブラケットと開口の隙間をパッキンなどの密封具等でシールしても良い。塗布器を第1の駆動軸110等を用いて移動させる場合、開口は図1と同様なブラケットと同調する密封用ベルトでシールしても良い。ブースの上部に吸気部127好ましくはHEPAなどのフィルターを内蔵した吸気部を設けることができる。パッキンや密閉用ベルトを使用する場合吸気部は特に効果的である。又被塗物114及び被塗物搭載手段の固定具などのレベルは底板上面より低くなるようにし、底板上面はフラットにした方が隙間107を狭くできるし下面開放箱と底板とを接触移動させるうえで都合がよい。又、被塗物への塗布作業は第1実施の形態と同様に行う事ができる。
【0039】
図7において底板105は下面開放箱より前後に長く幅方向も排気部より広幅に構成されている。
【0040】
(第3実施の形態)
次に図8を参照して、本発明亥の第3実施の形態について説明する。
【0041】
図8において中心付近には下面開放箱203と第2の駆動源215又は第2の駆動軸216で移動する底板205とから塗布ブース130が形成される。塗布作業は第1又は第2実施例と同様な方法で行う事ができる。
塗布ブースの上流には被塗物114の搭載と取り出しのための開閉ドア240が設けてある。又塗布ブースの下流には被塗物の塗膜の硬化を少なくとも開始させ塗膜の流動を防ぐための乾燥、あるいは完全硬化させることができる乾燥手段250がもうけてある。つまり被塗物搭載・取り出しゾーン、塗布ゾーン、塗布膜乾燥ゾーンから成り、別設置の制御装置からの指令で自動的に塗布と乾燥作業を行う事ができる。又例えば図示されない自動機やロボットを使用することにより被塗物の搬入搬出も自動で行う事ができる。
【0042】
例えばハイパワー照明用セラミック基板やウェハーレベルのLEDチップの表面へ蛍光体を塗布する場合、他のLED用途で多用されているディスペンサーを使用し、シリコーンなどのバインダーと蛍光体を混合したスラ―リーを塗布すると表面張力・界面張力の関係もあって例えば約1mm角のLEDチップ表面のディスペンス中央部膜厚がもり上がり、端部に近づくに従ってヒケの影響もあって薄くなり均一に塗布することが不可能であった。そればかりか約0.1mmの高さがあるのでエッジ部が薄くなりすぎて、又、側壁への付着が極めて不安定で、色温度のバラツキが大きすぎ照明用ハイパワーLEDとしては品質的に不向きであった。
【0043】
そのため例えばUS2009/10179213A1ではチップにバインダーを塗布し、その膜の上にバインダーと蛍光体と溶剤からなるスラ―リーをエアスプレイ方式で塗布し、必要によりそれらを複層塗布する技術が紹介されている。LEDチップは前述のように立体構造であり、ワイヤーなども存在するので、チップ上面の膜厚を均一にするにはエアスプレイなどの微粒子発生装置を用いた方法で蛍光体の比率を重量化でバインダーより可能な限り多くし、溶媒で希釈して流動性を持たせたスラ―リーを作成し、可能な限り薄く可能な限り何層も塗り重ねることが肝要である。又、スプレイ法を用いても溶剤で希釈しない限り比較的薄くコーティングすることは不可能であった。薄膜1層の好ましい範囲はドライになった時の単位面積当たり重量換算膜厚で3乃至15マイクロメートル程度である。
【0044】
しかし溶剤を含むスラ―リーで薄く複層のコーティングを行う場合であっても、溶剤が残留していたり硬化が開始されていない塗膜の上に塗布するとバインダーが溶剤で再溶解したり膨潤してしまい、厚く塗布した塗膜の品質と似たような傾向になる。そこで被塗物を加温して瞬時に溶剤を揮発させることが又重要である。仮に加温しても塗膜が厚いと瞬時に溶剤が揮発しないので表面張力、界面張力の関係もあって端部に近づくほどヒケの影響も手伝って均一な塗膜を得ることは難しい。さりとて被塗物の温度を90℃乃至150℃とたかくするとスプレイ粒子に含まれるバインダーがチップ表面でフローする前にセットされるので、突沸、泡のかみ込、不安定ゲルなどで塗膜表面がスムーズでなくなり品質的な欠陥が発生する。被塗物の加温は溶剤の種類にもよるが35℃乃至90℃の範囲が好ましく、より理想的には50℃乃至70℃である。
【0045】
一方スプレイ法などで塗布を行う場合、溶剤の揮発による気化熱で急激にLEDチップの表面が冷やされるので、温度低下を防ぎ昇温追従をよくするために平方センチメートル当たり1.5W乃至4.5Wの熱量が必要である。テーブルサイズは225乃至2500平方センチメートルにして複数のセラミック基板や、ウェハーを搭載すると生産性の面でよい。又塗布が禁じられる例えば後から半田結合しなければいけないエリアなどにはマスクをする必要がある。
【0046】
被塗物搭載ゾーンで加熱されたテーブルに搭載されたセラミック基板やウェハーは第二駆動源又は第2の駆動軸により塗布ゾーンまで進み第1の駆動源又は第1の駆動軸で被塗物移動方向と直交してトラバースする塗布器の手前でピッチ的に間欠移動を開始する。塗布器が片方に必要な距離をストロークしながら塗布する間、テーブルは移動を停止する。塗布が終了したら、あるいはストロークが終了したらテーブルは1ピッチだけ間欠移動する。この作業を繰り返すことにより1層の塗布(コーティング)ができる。塗布器がエアスプレイあるいはエアアシストスプレイの場合の被塗物表面でのパターン幅は1乃至20mm程度になるようなスプレイ角度を持ったスプレイノズルが好ましく、チップの形状や種類によりチップ全体の所望するそれぞれの部位の膜厚を考慮してパターン幅は選択すべきである。又スプレイの形態は連続スプレイでもよいがLEDチップのエッジや側壁を所望する膜厚にするには幣出願人が権利を持つPCT出願番号:PTC/JP2011/050168で説明されているエアスプレイによるパルススプレイ方法を使用するとより効果的である。更にシリコーンなどの漏れにくいバインダーかなるスラ―リーにはインパクトを与えながらLED表面に衝突させなければとくに側壁やエッジ付近をカバーするのは難しい。又、薄膜を所望してもスラ―リーの性格からノズル口径を小さくしたり、ニードルバルブなどの開度を絞って流量を低く抑えると、それらに詰りが生じでて塗布品質が不安定になる。そのような意味からもインパクトパルススプレイ方式が最も効果的である。インパクトパルススプレイはノズル先端と被塗物との距離を70mm以下にすることと、スプレイエアを0.15乃至0.35MPaにすることによって得ることができる。5乃至30mmの至近距離からスプレイする場合はインパクトが強すぎるのでスプレイエアを0.05乃至0.15の範囲で調整することが好ましい。前述間欠送りピッチは1mm乃至15mmが好ましく、1層の平均ドライ膜厚がドライ重量換算で7マイクロメートル程度以下の時は複数回コーティングしてから乾燥ゾーンへ移動させて乾燥させた方が生産性の面で優れる。
【0047】
一方乾燥手段での温度は90乃至200℃にすることが好ましく、乾燥手段は熱風、遠赤外線、高周波、誘導加熱、UV、マイクロ波によるキュアなど限定するものでないが、短時間で硬化できる装置を選定することが生産性の面から肝要である。
何層目で乾燥させるかにかかわらず、2層目の塗布開始位置は1層目のスタートより所望する長さ自動的にずらす(オフセット)事が理想である。10層コーティングする場合ピッチが12mmの時、ずらし量を1.2mmにすることによって10層目の結果は1.2mmにすることによって10層目の結果は1.2mmのピッチ送りでコーティングしたことと同じになる。しかしピッチを密にしてコーティングするより、粗で塗り重ねながら行うので1層当たりの単価面積当たりの塗布重量を少なくでき前述の問題を解決できるメリットがある。オフセット値は送りピッチを層の数で割ることにより求めるのが好ましく、0.1mm乃至5mmに通常設定される。1層を塗布回数1とすると塗布回数は多いほどよいが生産性の面からと蛍光体の平均粒子の大きさ(3乃至30マイクロメートルを中心にした粒度分布)からおのずと限界がある。品質性能と生産性の関係で2乃至30回(層)程度から選択することが好ましい。このように所望する塗布回数を終了した被塗物は取り出しゾーンに移動され手動又は自動で完全硬化させるために高温乾燥器などへ投入される。
【0048】
(第4実施の形態)
次に図9及び図10を参照して、第4実施の形態について説明する。
【0049】
図9は図6の底板の代わりにベルトコンベア360を用いている。テーブルは第2駆動源315又は第2駆動軸316に連結されて移動し、ベルトも同時に移動する。ロール370をフリーロールにするとベルトの移動はスムーズになる。又、底板を最小限の長さにしてベルトと連結しても良い。この方法を採用すると、すべて平面の底板にする場合より装置長さを短くできるメリットがあり乾燥ゾーンや被塗物搭載、取り出しゾーンを設ける場合特に効果的である。尚駆動源をロールに取り付けてベルトコンベアをタイミングベルトやチェーンなどスリップ防止機構を併用してベルトコンベヤ方式でテーブルを移動させても良い。
【0050】
図10には塗布器301を装着したブラケットと連動する開口用密着用ベルト328が循環移動できるように装着され密着ベルトはスムーズな移動ができる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明によれば引火性のある液体や紛体あるいは膜形成用原料ガスなどでの塗膜形成が安価な装置により可能になる。
【符号の説明】
【0052】
1 塗布器
2 天板
3 下面開放箱
4 上面開放箱
5 底板
6 ブラケット
7 隙間
8 塗布器吐出部
9 第1の駆動源
10 第1の駆動軸
11 テーブル
12 吸着機構
13 加熱素子
14 被塗物
15 第2の駆動源
16 第2の駆動軸
17 第3の駆動源
18 第3の駆動軸
19 ロール
20 ロールガイド
20 ロールガイド
21 開口
22 塗布装置
23 ベース
24 構造体
25 ドア
26 排気部(排気フィルター)
27 吸気部(吸気フィルター)
28 密封用ベルト
30 塗布ブース


【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定手段により固定した天板又は下面開放箱と少なくとも一つの駆動源又は駆動軸で移動する上面開放箱又は底板とで箱状塗布ブースを形成し、前記上面開放箱内又は底板に被塗物搭載手段を設け被塗物を搭載し、前記塗布ブースの上部に設けた開口より塗布器の少なくとも吐出部を露出させ、塗布器で被塗物へ塗材を塗布することを特徴とする塗布方法。
【請求項2】
前記固定した天板又は下面開放箱に開口を設け、該開口より第1の駆動源又は第1の駆動軸により移動する少なくとも塗布器の一部又はブラケットに装着した塗布器を前記塗布ブース内に露出させ、前記上面開放箱又は底板は、塗布器の移動方向と直交して第2の駆動源又は第2の駆動軸で移動し、前記上面開放箱内又は底板には被塗物搭載手段を設け、前記塗布ブース上部から吸気又は給気し下部より排気し、塗布器で被塗物へ塗材を塗布することを特徴とする請求項1の塗布方法。
【請求項3】
前記第1の駆動軸に、前記塗布器を自動的に上下できる第3の駆動源又は第3の駆動軸を連結し、被塗物搭載手段がテーブルであって、上記上面開放箱又は底板に設置したテーブルに被塗物の吸着及び加熱手段が設けられることを特徴とする請求項1及び2の塗布方法。
【請求項4】
前記塗布器が微粒子発生装置であって、塗材が溶剤を含む溶液又はスラーリーであることを特徴とする請求項1乃至3の塗布方法。
【請求項5】
前記開口は前記塗布器又はブラケットと同時移動する密封用ベルトでシールされ、少なくとも前記天板又は下面開放箱と前記上面開放箱との隙間から吸気し、上面開放箱の被塗物搭載手段付近に設けられた排気部より排気することを特徴とする請求項1乃至4の塗布方法。
【請求項6】
前記上面開放箱又は底板は第2の駆動軸と連結され、上面開放箱又は底板下部に設けられた転がり又は滑り手段で移動がサポートされることを特徴とする請求項1乃至5の塗布方法。
【請求項7】
前記テーブルにLEDチップ又はその集合体を搭載し加熱し、有機溶剤とバインダーと蛍光体(Phosphor)からなるスラーリー(Slurry)を、前記微粒子発生装置を含むスラーリー移動回路のなかで移動させて均一に分散し、微粒子発生装置とLEDチップを相対的にピッチ移動させ、微粒子発生装置でLEDチップの表面にスラーリーを少なくとも1層塗布し、乾燥させたのち、ピッチの位置をずらしながら複数層塗布と乾燥を繰り返すことを特徴とする請求項1乃至6の塗布方法。
【請求項8】
前記固定した下面開放箱の上部に開口を設け、該開口を第1駆動源又は第1駆動軸に連結させて移動する塗布器の移動方向と直交して、第2駆動源又は第2駆動軸で移動する底板に被塗物搭載手段を設け、被塗物搭載・取り出しゾーンで被塗物を搭載し、前記塗布ブースまで移動させ、塗布器と被塗物とを相対的にピッチ移動させながら塗布器で被塗物へ溶液又はスラーリーを少なくとも1層塗布し、被塗物を塗布ブース外の乾燥ゾーンまで移動し、乾燥させたのち、ピッチ位置をずらしながら塗布し、塗布と乾燥を複数回繰り返したのち、被塗物搭載・取り出しゾーンまで移動し、被塗物を取り出すことを特徴とする請求項1乃至7の塗布方法。
【請求項9】
構造体に固定した天板又は下面開放箱と移動する上面開放解放箱又は底板で箱状塗布ブースを形成し、前記天板又は下面開放箱に開口を設け、該開口より第1の駆動源又は第1の駆動軸により移動する少なくとも塗布器の吐出部又はブラケットに装着した塗布器を上記塗布ブース内に露出させ、上面開放箱又は底板を、前記塗布器の移動方向と直交して第2の駆動源又は第2の駆動軸で移動させ、前記上面開放箱又は底板には被塗物搭載テーブルを設け、被塗物を固定し、塗布器で塗材を被塗物へ塗布することを特徴とする塗布装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−170928(P2012−170928A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−37423(P2011−37423)
【出願日】平成23年2月23日(2011.2.23)
【出願人】(510009832)エムテックスマート株式会社 (1)
【Fターム(参考)】