塗布材押出容器
【課題】塗布材が開口部から漏出することを容易且つ確実に抑制できる塗布材押出容器を提供する。
【解決手段】塗布材押出容器では、本体筒及び操作筒が一方向に相対回転されると、螺合部の螺合作用により移動体及びピストンが前進され、充填領域内の塗布材が押し出されて開口部から吐出される。この塗布材押出容器は、本体筒と操作筒とが一方向に一定回転量相対回転される毎に、移動体及びピストンを一定量前進させた後に一定量後退させるカム機構20を備えている。よって、一方向に一定回転量相対回転された際には、カム機構20により塗布材が押し出されて吐出される共に、充填領域が減圧される。すなわち、使用者の操作を別途要することなく、充填領域の減圧を自動的に実現することができる。
【解決手段】塗布材押出容器では、本体筒及び操作筒が一方向に相対回転されると、螺合部の螺合作用により移動体及びピストンが前進され、充填領域内の塗布材が押し出されて開口部から吐出される。この塗布材押出容器は、本体筒と操作筒とが一方向に一定回転量相対回転される毎に、移動体及びピストンを一定量前進させた後に一定量後退させるカム機構20を備えている。よって、一方向に一定回転量相対回転された際には、カム機構20により塗布材が押し出されて吐出される共に、充填領域が減圧される。すなわち、使用者の操作を別途要することなく、充填領域の減圧を自動的に実現することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗布材を押し出して使用する塗布材押出容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の塗布材押出容器としては、例えば特許文献1に記載されているように、容器前部と、容器前部に相対回転可能な容器後部と、を有する容器を具備し、容器前部と容器後部とが一方向に相対回転されると、容器内に配設された移動部が前進し、容器内の充填領域に充填された塗布材を押し出して容器先端の開口部から吐出させるものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−130438号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、上述したような塗布材押出容器おいては、充填領域の内圧が高まって開口部から塗布材が意図せず吐出(漏出)してしまうおそれがある。この場合、当該漏出を抑制するため、例えば使用者が容器前部と容器後部とを一方向の反対方向である他方向に相対回転して移動部を後退させ、充填領域の内圧を減圧することが考えられる。しかし、使用者の操作が別途必要となってしまうことから、確実性及び利便性の点で改善の余地がある。
【0005】
そこで、本発明は、塗布材が開口部から漏出することを容易且つ確実に抑制できる塗布材押出容器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明に係る塗布材押出容器は、容器前部と、容器前部に相対回転可能な容器後部と、を有する容器を具備し、容器前部と容器後部とが一方向に相対回転されると、容器内に配設された移動部が押出機構により前進又は後退し、容器内の充填領域に充填された塗布材を押し出して容器先端の開口部から吐出させる塗布材押出容器であって、容器前部と容器後部とが一方向に一定回転量相対回転される毎に、移動部を一定量進退させるカム機構を備えたことを特徴とする。
【0007】
この塗布材押出容器では、容器前部と容器後部とが一方向に相対回転されると、押出機構により移動部が前進され、充填領域内の塗布材が押し出されて開口部から吐出される。このとき、一方向に一定回転量相対回転された際には、カム機構により移動部が一定量進退されることから、塗布材が押し出されて吐出された後、充填領域が減圧されることとなる。すなわち、使用者の操作を別途要することなく、充填領域の減圧を自動的に実現することができる。よって、開口部からの塗布材の漏出を容易且つ確実に抑制することが可能となる。
【0008】
また、カム機構は、容器前部と容器後部との相対回転の回転力によって、移動部を一定量進退させることが好ましい。このようにカム機構は、バネ等の弾性体の付勢力によらず、相対回転の回転力によって移動部を一定量進退させることができる。
【0009】
また、移動部は、充填領域を画成するピストンを含んで構成され、カム機構は、ピストンを一定量進退させることが好ましい。この場合、充填領域を好適に減圧させることができる。
【0010】
また、上記作用効果を好適に奏する構成として、具体的には、カム機構は、容器前部又は容器後部の何れか一方に同期回転可能に設けられたガイド部と、容器前部又は容器後部の何れか他方に同期回転可能に設けられ、ガイド部によりガイドされる突部と、を有し、ガイド部は、軸線方向と直交する横断面に対し傾斜するガイド面を含み、突部は、ガイド面に対し相対的に摺動する構成が挙げられる。
【0011】
このとき、カム機構は、円筒カム機構であって、ガイド部は、第1筒部材の外周面に設けられ、突部は、第2筒部材の内周面に設けられていてもよい。この場合、カム機構を円筒カム機構により構成することができる。
【0012】
また、ガイド部の前側又は後側は、周方向に並ぶ複数の突起により画成され、複数の突起の間には、突部が軸線方向に挿通可能な隙間が形成されていることが好ましい。この場合、ガイド部における複数の突起間に形成された隙間から、軸線方向に沿って突部をガイド部へ進入させることができ、突部をガイド部へ容易に組み付けることが可能となる。
【0013】
また、容器前部と容器後部とが一定回転量相対回転される毎にクリック感を生じさせるクリック機構を備えたことが好ましい。この場合、容器前部と容器後部との一定回転量の相対回転、つまり、移動部の一定量の進退を、クリック感により感知することができる。
【0014】
また、容器内に設けられ、一方向における容器前部と容器後部との相対回転のみ許容するラチェット機構を備えたことが好ましい。この場合、他方向における容器前部と容器後部との相対回転を規制することができる。
【0015】
また、移動部は、押出機構を構成する螺合部を含んで構成されており、螺合部と螺合する螺子筒をさらに備え、カム機構は、螺子筒を一定量進退させることにより移動部を一定量進退させることが好ましい。この場合、押出機構として螺合部を好適に適用することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、塗布材が開口部から漏出するのを容易且つ確実に抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態に係る塗布材押出容器の初期状態を示す縦断面図である。
【図2】図1の塗布材押出容器において移動体の前進限の状態を示す図1の縦断面位置を90°異なる位置とした縦断面図である。
【図3】図1の塗布材押出容器を一部断面化して示す分解斜視図である。
【図4】図1の塗布材押出容器の操作筒を一部断面化して示す斜視図である。
【図5】図1の塗布材押出容器の操作筒を一部断面化して示す他の斜視図である。
【図6】図1の塗布材押出容器の螺子筒を示す斜視図である。
【図7】図6のVII−VII線に沿った断面図である。
【図8】図1の塗布材押出容器のラチェット部材を示す斜視図である。
【図9】図1の塗布材押出容器のラチェット部材を示す平面図である。
【図10】図1の塗布材押出容器の充填部材を示す分解斜視図である。
【図11】(a)は図1の塗布材押出容器におけるペン先部材を示す正面図、(b)は図1の塗布材押出容器におけるペン先部材を示す底面図である。
【図12】図1の塗布材押出容器における充填部材への塗布材の充填を説明するための断面図である。
【図13】図1の塗布材押出容器における塗布材充填後の組付けを説明するための断面図である。
【図14】図1の塗布材押出容器のカム機構を説明するための一部展開図である。
【図15】図1の塗布材押出容器におけるカム機構の動作を説明するための概略図である。
【図16】図1の塗布材押出容器におけるカム機構の動作を説明するための拡大図である。
【図17】図16の続きを示す拡大図である。
【図18】図17の続きを示す拡大図である。
【図19】図18の続きを示す拡大図である。
【図20】変形例に係るカム機構を説明するための一部展開図である。
【図21】他の変形例に係るカム機構を説明するための一部展開図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明において同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0019】
図1は本発明の一実施形態に係る塗布材押出容器の初期状態を示す縦断側面、図2は塗布材押出容器において移動体の前進限の状態を示す縦断側面図、図3は塗布材押出容器を一部断面化して示す分解斜視図である。なお、図2では、図1の縦断面位置を90°異なる位置とした縦断面図とされている。図1〜3に示すように、本実施形態の塗布材押出容器100は、その内部に充填した塗布材Mを使用者の操作により適宜吐出する(押し出す)ものである。
【0020】
塗布材Mとしては、例えば、アイライナー、アイカラー、アイシャドウ、アイブロー、リップグロス、リップ、リップライナー、チークカラー、美容液、美容スティック、洗浄液、クレンジングオイル、ネールエナメル、ネールケア溶液、ネールリムーバー、マスカラ、アンチエイジング、ヘアーカラー、頭髪用塗布材、オーラルケア、マッサージオイル、角栓ゆるめ液、ファンデーション、コンシーラー、スキンクリーム、筆記用具等のインク、医薬品等を始めとした種々の液状、ゼリー状、ジェル(ゲル)状、ペースト状、軟質状、ムース状、練り状、泥状、半固形状、軟固形状、固形状等のものを用いることが可能である。また、塗布材Mに対し、顔料、油剤、ワックス等に加え、揮発性溶剤(例えば、シクロペンタシロキサン等のシリコン油や、イソドデカン、イソヘキサデカン等の炭化水素油)を配合することにより、その持ちのよさを高めることができる。
【0021】
また、塗布材Mとしては、粘度又は硬度が高くて圧縮性が高いジェル状や半固形状のものを用いるのが好適であり、特に好ましいとして0.1N〜0.2N程度の硬度を有する塗布材Mを用いることが可能である。この塗布材Mの硬度は、化粧品において硬度を計るために使用される一般的な測定方法により求められる。ここでは、例えばFUDOH RHEO METER[RTC-2002D.D](株式会社レオテック社製)を測定器として用い、雰囲気温度25℃条件下にてφ3mmの鋼棒(アダプタ一)を6cm/minの速度で塗布材Mに深さ10mm程度挿入したときに当該塗布材Mに生じるピーク時の力(強度)を硬度(針入度)としている。
【0022】
この塗布材押出容器100は、塗布材Mが充填される充填領域1xを内部に備えた先筒である充填部材1と、その前半部に充填部材1の後半部を内挿して当該充填部材1を軸線方向(前後方向)及び軸線回り回転方向(以下、単に「回転方向」ともいう)に係合し一体となるように連結する本体筒2と、この本体筒2の後端部に相対回転可能にして軸線方向に連結する操作筒(第2筒部材)3と、を外形構成として具備している。なお、充填部材1及び本体筒2が容器前部を構成し、操作筒3が容器後部を構成する。また、「軸線」とは、塗布材押出容器100の前後に延びる中心線を意味し、「軸線方向」とは、軸線に沿った方向を意味する(以下、同じ)。
【0023】
また、この塗布材押出容器100は、その内部に、本体筒2(充填部材1でも可)及び操作筒3の相対回転により軸線方向に移動する移動体(移動部)6と、移動体6の前端(先端)部に装着されて充填領域1xの後端を形成するピストン(移動部)7と、当該相対回転による移動体6の移動を可能にする螺合部材としての螺子筒(第1筒部材)4と、螺子筒4に対し一方向のみ相対回転可能なラチェット部材5と、を概略備えている。
【0024】
特に本実施形態の塗布材押出容器100は、本体筒2及び操作筒3の相対回転を一方向のみ許容するラチェット機構8と、本体筒2及び操作筒3の一定回転量の相対回転毎に移動体6及びピストン7を一定ストローク(一定量)内にて進退(前進及び後退)させるカム機構20と、を備えている。ここでのカム機構20は、突部20a及びガイド部20bを含む円筒カム機構であって、本体筒2と操作筒3との相対回転の回転力によって移動体6及びピストン7を一定ストローク進退させる(詳しくは後述)。
【0025】
本体筒2は、円筒状に構成され、その軸線方向中央部の内周面に、充填部材1及び螺子筒4を回転方向に係合するためのものとして、周方向に多数の凹凸状が並設されて当該凹凸状が軸線方向に所定長延びるローレット2aを有している。また、本体筒2の先端部の内周面には、充填部材1を軸線方向に係合するための環状突部2bが設けられている。本体筒2の後部側の内周面には、操作筒3を軸線方向に係合するためのものとして、周方向に沿って延びる突部2cが形成されている。また、本体筒2の内周面において突部2cより前側には、螺子筒4を軸線方向に係合するためのものとして、周方向に沿って延びる突部2dが形成されている。
【0026】
図4,5は、操作筒の一部を断面化して示す斜視図である。図4,5に示すように、操作筒3は、樹脂による射出成形品とされており、前方に開口する有底円筒状を呈している。操作筒3は、その前端側に外径が小径とされる前端筒部3aを備え、この前端筒部3aの外周面には、本体筒2の突部2cに軸線方向に係合するための環状溝部3bが設けられている。また、操作筒3の底部中央には、軸体3cが立設されている。軸体3cは、円柱体の外周面に軸線方向に延びる突条3dを複数有する横断面(軸線方向と直交する断面)非円形形状とされ、この突条3dは、移動体6の回止め部の一方を構成する。
【0027】
また、操作筒3は、その内周面に、底部から先端側に向かって延びる突条3eを周方向八等配の位置に備えている。突条3eの先端面3fは、軸線方向の直交面である横断面(以下、単に「横断面」という)に対し傾斜している。具体的には、先端面3fは、径方向視において周方向一方側に行くに従い後方へ傾斜している。換言すると、先端面3fは、ラチェット機構8により許容された相対回転方向(以下、「許容回転方向」という)に行くに連れ後方へ傾斜しており、後述の縦リブ5eの後端面5fと略平行とされている。
【0028】
また、操作筒3の前端筒部3aの外周面における後端には、OリングR1を装着するためのものとして、環状に延在するOリング用溝3gが設けられている。OリングR1は、本体筒2と操作筒3との相対回転の際に適度な回転抵抗を与えるためのものであり、当該相対回転に所定の回転抵抗力を発生させる環状弾性体として機能する。
【0029】
また、操作筒3は、その内周面における前端部に、カム機構20の一方を構成する一対(複数)の突部20aを有している。突部20aは、ガイド部20bと相対的に摺動しながら当該ガイド部20bにガイドされる。これにより、突部20aは、使用者が本体筒2と操作筒3とを相対回転した際の回転力を摺動によってガイド部20bへ伝達する原節として機能する。
【0030】
これら突部20aは、周方向二等配の位置に設けられ、径方向内側に所定長突出している。具体的には、操作筒3の内周面において前端筒部3aの中央から前端に亘る領域が拡径されて大径内周面3iとされ、一定高さの一対の突部20aが大径内周面3iの前端に互いに対向するよう形成されている。また、大径内周面3iにおいて突部20aの後側に連なる領域には、突部20aを成形するためのものとして、径方向に貫通する孔部3hが形成されている。孔部3hは、径方向から見て、突部20aと等しい周方向幅を有する矩形状とされている。
【0031】
図1,4に示すように、この操作筒3は、その前端筒部3aから本体筒2に内挿され、その環状溝部3bが本体筒2の突部2cに係合することで、本体筒2に相対回転可能にして軸線方向に連結され装着されている。このとき、操作筒3のOリング用溝3gにOリングR1が嵌め込まれており、これにより、本体筒2と操作筒3との相対回転に適度な回転抵抗が付与されている。
【0032】
このような操作筒3は、金型及びコアピンを用いて樹脂成形することができる。ここで、操作筒3は孔部3hを有していることから、金型において孔部3hを形成するための凸部分を利用することにより、突部20aを好適に成形することが可能となる。例えば、金型のスライドコア及びコアピンを互いに組み付けた際、スライドコアの凸部分とコアピンとにより、軸線方向と垂直方向に挟みこむようにして突部20aに対応する所定空間を画設することができる。その結果、成形後(つまり、所定空間に溶融樹脂が充填・固化されて突部20aが形成された後)にコアピンを取り外す際、スライドコアの凸部分を軸線と垂直方向にスライドさせることにより、突部20aの後方に形成されたアンダーカット部が開放され、コアピンを軸線方向に容易に引き抜くことが可能となる。
【0033】
図6は螺子筒を示す斜視図であり、図7は図6のVII−VII線に沿った断面図である。図6,7に示すように、螺子筒4は、樹脂による射出成形品とされており、段付き円筒状の外形を呈している。この螺子筒4は、前端筒部4xと、前端筒部4xよりも大径の外形を有する中央筒部4yと、中央筒部4yよりも小径の外形を有する後端筒部4zと、を前方から後方に向かってこの順に有している。一方、螺子筒4の内周面は、段差なく軸線方向に沿って真っ直ぐ延在している。
【0034】
前端筒部4xは、螺子筒4の前端部分を構成し、その内周面には、螺合部(押出機構)9の一方を構成する雌螺子4eが設けられている。ここでの螺合部9のピッチは、細ピッチが採用されており、例えば0.5mmとされている。前端筒部4xの外周面において前端部には、充填部材1(図1参照)に近接して雌螺子4eの内径が拡がるのを阻止するための鍔部4aが設けられている。
【0035】
中央筒部4yは、螺子筒4の中央部分及び中央部分の前端寄りを構成し、その外周面において周方向の複数の位置には、本体筒2のローレット2aに回転方向に係合するための突条4cが形成されている。また、中央筒部4yの後端部の外周面には、本体筒2の突部2dに軸線方向に係合するための環状凸部4dが形成されている。また、前端筒部4xと中央筒部4yの前端部とには、径方向に貫通し且つ軸線方向に所定長延在するスリット4fが対向するように一対形成されている。
【0036】
後端筒部4zは、螺子筒4の後端部分及び中央部分の後端寄りを構成し、その後端面4bには、ラチェット機構8を構成するものとして、ラチェット部材5に係合するラチェット歯8aが周方向に沿って複数設けられている。ここでのラチェット歯8aは、後端面4bにおいて周方向四等配の位置に突設されている。
【0037】
これらラチェット歯8aは、周方向に沿って鋸歯状(楔状)を成して後端面4bから突出している。具体的には、ラチェット歯8aにおける周方向他方側(本体筒2と操作筒3とを一方向に相対回転したときにラチェット歯8aと当接する側)の側面8a1は、周方向に山型になるよう後端面4bに対し傾斜している。一方、ラチェット歯8bにおける周方向一方側(本体筒2と操作筒3とを他方向に相対回転したときにラチェット歯8aと当接する側)の側面8a2は、後端面4bに直交し軸線方向に沿って延在している。
【0038】
また、後端筒部4zは、その外周面に、カム機構20の他方を構成するガイド部20bを有している。ガイド部20bは、操作筒3の突部20aを相対的に摺動させながら当該突部20aの摺動をガイドする。このガイド部20bは、突部20aから摺動によって本体筒2と操作筒3との回転力が前後方向の直進力として伝達される従節として機能する。ガイド部20bの前側は、後端筒部4zの外周面に対し隆起する隆起部20cにより画成され、ガイド部20bの後側は、後端筒部4zの外周面に対し突出する突起としての複数のガイド片20dにより画成されている。
【0039】
隆起部20cは、径方向外側へ所定長隆起するように後端筒部4zの前端部に設けられている。隆起部20cの後面は、周方向に沿って鋸歯状(楔状)を成している。また、この隆起部20cの後面は、突部20aと摺動するものとして、横断面に対し傾斜(交差)するガイド面20eを含んで構成されている。
【0040】
複数のガイド片20dは、径方向外側へ所定長突出するように後端筒部4zの後端部に設けられている。これらガイド片20dは、隆起部20cの後方において、上記一定ストロークに対応する距離だけ離間して配置されている。また、複数のガイド片20dは、突部20aの周方向幅よりも広い隙間Dを空けて、周方向に沿って並置されている(図14参照)。ここでのガイド片20dは、周方向八等配の位置に設けられている。
【0041】
図1,6に示すように、この螺子筒4は、本体筒2に内挿され、その環状凸部4dが本体筒2の突部2dに対し軸線方向に移動可能に係合すると共に、その突条4cが本体筒2のローレット2aに回転方向に係合する。また、螺子筒4は、その後端筒部4zが操作筒3に内挿される。これにより、螺子筒4は、本体筒2に回転方向に係合され、本体筒2に対し同期回転可能となるよう装着されると共に、本体筒2の突部2dと操作筒3の前端面との間で軸線方向に移動可能とされる。このとき、操作筒3の突部20aはガイド部20bにおける複数のガイド片20d間の隙間Dからガイド部20b内へ軸線方向に沿って進入され、これにより、突部20aがガイド部20bへと組み付けられてカム機構20が形成される。
【0042】
このような螺子筒4は、金型のスライドコア及びコアピンを用いて樹脂成形することができる。ここで周方向四分割可能な4方向スライドコア式の金型を用いており、これにより、周方向八等配の位置に設けられたガイド片20dのアンダーカット形状を無理なく形成することができる。
【0043】
図8はラチェット部材を示す斜視図、図9はラチェット部材を示す平面図である。図8,9に示すように、ラチェット部材5は、樹脂による射出成形品とされており、略円筒状に構成されている。ラチェット部材5の前端面には、ラチェット機構8を構成するものとして、螺子筒4のラチェット歯8aに係合するラチェット歯8bが周方向に沿って複数設けられている。ここでのラチェット歯8bは、ラチェット部材5の前端面において周方向八等配の位置に突設されている。
【0044】
これらラチェット歯8bは、周方向に沿って鋸歯状(楔状)を成して前端面から突出している。具体的には、ラチェット歯8bにおける周方向一方側(本体筒2と操作筒3とを一方向に相対回転したときにラチェット歯8aの側面8a1と当接する側)の側面8b1は、周方向に山型になるよう前端面に対し傾斜している。一方、ラチェット歯8bにおける周方向他方側(本体筒2と操作筒3とを他方向に相対回転したときにラチェット歯8aの側面8a2と当接する側)の側面8b2は、前端面に直交し軸線方向に沿って延在している。
【0045】
このラチェット部材5の周壁において中央部から後端に至る部分には、略螺旋状のスリット5aが形成されている。これにより、ラチェット部材5は、ラチェット歯8bをラチェット歯8a側である前方へ向けて付勢するバネ部5bとしての機能を有する。また、ラチェット部材5の外周面の前端部には、操作筒3の突条3eに回転方向に係合するものとして、周方向に所定幅を有して軸線方向に延びる縦リブ5eが設けられている。
【0046】
この縦リブ5eは、ラチェット部材5の外周面の前端部において周方向八等配の位置に設けられている。縦リブ5eの後端面5fは、径方向視において、周方向他方側に行くに従い横断面に対し前方へ傾斜している。換言すると、後端面5fは、ラチェット部材5の許容回転方向に行くに連れて前方へ傾斜しており、上記操作筒3の突条3eの先端面3fと略平行とされている。
【0047】
図1,8に示すように、このラチェット部材5は、その後方から操作筒3に内挿され、その縦リブ5eが操作筒3の突条3e,3e間に進入し、当該縦リブ5eが突条3eに回転方向に係合されている。これと共に、ラチェット部材5は、螺子筒4の後端側に突き当てられ、そのラチェット歯8bが螺子筒4のラチェット歯8aと係合可能とされている。これらにより、ラチェット部材5は、ラチェット歯8a,8bによって螺子筒4に対し許容回転方向のみ相対回転可能となるよう相対回転が規制された状態で、操作筒3に組み付けられる。
【0048】
また、ラチェット部材5は、螺子筒4の後端側と操作筒3の底面とにより軸線方向に挟み付けられ、そのバネ部5bによる付勢力(弾性力)が生じてラチェット歯8bが前方側へ付勢され、これにより、互いに係合したラチェット歯8a,8bがクリック係合の状態とされる。
【0049】
なお、縦リブ5eを突条3eに回転方向に係合させるべく突条3e,3e間に進入させる際において、これらの回転方向位置が互いにずれて縦リブ5eの後端面5f及び突条3eの先端面3fが互いに当接された場合、後端面5f及び先端面3fが上述の傾斜面となっていることから、許容回転方向へのラチェット部材5の相対回転が促される一方、許容回転方向と反対側へのラチェット部材5の相対回転は規制される。よってこの場合、ラチェット部材5が許容回転方向に相対回転され、縦リブ5eが突条3eに対し許容回転方向に移動されながら突条3e,3e間に進入することになる。その結果、縦リブ5eを突条3eに係合させるためにラチェット部材5が許容回転方向と反対側へ無理に相対回転されるのを抑制することができ、ひいては、無理な相対回転のためにラチェット歯8a,8bやその他の回転係合部が破損してしまうのを抑制することが可能なる。
【0050】
図1に戻り、移動体6は、円筒状に構成され、その前端部より後側から後端部に亘る外周面に、螺合部9の他方を構成する雄螺子6bを備えている。また、移動体6の内周面において周方向に六等配の位置には、移動体6の回止め部の他方を構成するものとして、径方向内側に突出し且つ軸線方向に延びる突条6cが設けられている。この移動体6は、操作筒3の軸体3cに外挿されると共に螺子筒4に内挿され、その雄螺子6bが螺子筒4の雌螺子4eと螺合している。これと共に、移動体6は、その突条6cが軸体3cの突条3d、3d(図4参照)間に係合し、操作筒3に軸線方向移動可能にして回転方向に係合し装着されている。
【0051】
ピストン7は、塗布材Mの色調とは異なる色調(例えば、白色)を有するTPEE(ポリエステル系エラストマー)、TPU(ポリウレタン系エラストマー)、PP(ポリプロピレン)、HDPE(高密度ポリエチレン)、LLDPE(直鎖状低密度ポリエチレン)等で成形されている。ピストン7は、その後端面に凹設された凹部を有し、この凹部の内周面には、移動体6に対し軸線方向に所定長移動可能にして係合する環状突部7bが設けられている。このピストン7は、移動体6の前端部に外挿され、その環状突部7bが移動体6に軸線方向に係合することで、移動体6に対し軸線方向移動可能(所定の範囲内を移動可能)にして装着されている。
【0052】
図10は、充填部材を示す分解斜視図である。図1,10に示すように、充填部材1は、例えば、揮発性溶剤の耐透過性に優れたポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート(PCTA)、ポリプロピレン(PP)等の射出成形プラスチックで形成されており、外囲を構成する外側充填筒10と、この外側充填筒10の内側で充填領域1xを画設する内側充填筒11と、充填部材1の先端部を構成し塗布材Mを塗布するためのペン先部材12と、を含んで構成されている。
【0053】
図10に示すように、外側充填筒10は、着色材料(例えば、黒色)で形成されており、円筒状の本体部10aと、当該本体部10aの前側に連続するテーパ部10bと、を有している。本体部10aは、その外周面において軸線方向中央に、本体筒2の環状突部2bに軸線方向に係合する環状凹部10cを有している。また、本体部10aは、その外周面の環状凹部10cの前側に、本体筒2の前端面に当接する円環状の鍔部10dが設けられている。この本体部10aの外周面において後端部には、本体筒2のローレット2aに回転方向に係合するものとして、周方向に多数の凹凸状が並設されて当該凹凸状が軸線方向に所定長延びるローレット10eが設けられている。
【0054】
また、本体部10aは、充填時に塗布材Mの充填位置を確認すると共に内側充填筒11を係合するためのものとして、その後端部の周壁を断面矩形状で貫通する貫通孔から成る窓10fを有している。テーパ部10bは、先細りの錐台筒状を呈し、横断面外形が扁平円形状とされている。テーパ部10bの前端部には、断面扁平円形状の開口10g(図1参照)が形成されている。また、本体部10aの外周面における鍔部10dの前側には、環状に延在するOリング用溝10h(図1参照)が設けられ、このOリング用溝10hには、後述のキャップC1内の気密性及び嵌合安定性を高める環状弾性体として機能するOリングR2が嵌め込まれて装着されている。
【0055】
内側充填筒11は、透明材料で形成され、その内部の充填領域1xにおける塗布材Mが透けて見えるような光透過性を有している。この内側充填筒11は、円筒状の本体部11aと、当該本体部11aの前側に連続するテーパ部11bと、当該テーパ部11bの前側に段差を介して連続する前端部11dと、を有している。
【0056】
本体部11aは、組付けの際に充填領域1x内のエアを外部へ排出するためのエア排出孔11eを有している。エア排出孔11eは、本体部11aの後端部の周壁において互いに対向する位置に、断面円形状で貫通するよう一対形成されている。本体部11aの外周面におけるエア排出孔11eの後側には、外側充填筒10の窓10fに軸線方向に係合する凸部11fが設けられている。
【0057】
テーパ部11bは、横断面外形が扁平円形状とされた先細りの錐台筒状を呈している。前端部11dは、横断面外形が扁平円形状とされた筒状を呈している。図1に示すように、この内側充填筒11は、外側充填筒10に対し内挿されて装着されている。このとき、内側充填筒11の前端と外側充填筒10との間には隙間11hが形成されており、当該隙間11hは、後述の栓C2を係合するための係合溝を構成する。
【0058】
図11(a)は図1の塗布材押出容器におけるペン先部材を示す正面図、図11(b)は図1の塗布材押出容器におけるペン先部材を示す底面図である。図11に示すように、ペン先部材12は、塗布材Mを塗布するためのものであり、軟質材で形成されている。軟質材としては、例えば、加硫により加熱し成形する熱硬化性の一般的なゴムや、プラスチックの一種であって熱により可塑化させ金型に流し込んで成形する熱可塑性エラストマーを用いることができる。
【0059】
一般ゴムとしては、ニトリルゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、シリコンゴム(Si)が主として挙げられる。その中でも、特にニトリルゴムは、前述の揮発性溶剤に対する耐油性に優れている。また、熱可塑性エラストマーとしては、ポリエステル系エラストマー(TPEE)、オレフィン系エラストマー(TPO)、ウレタン系エラストマー(TPU)が主として挙げられる。中でも、ウレタン系エラストマーにおいては、ハードセグメントがポリウレタンでソフトセグメントがポリエステルタイプ又はポリエーテルタイプの2種類の何れを用いることができ、塗布材Mに対しては、ソフトセグメントがポリエーテルタイプのものが特に適している。
【0060】
また、ペン先部材12は、好ましいとして、JIS K 6253で規定されているタイプAデュロメータによる硬さが40〜80とされている。このペン先部材12としては、軟質ペン先等あらゆる塗布部を使用することができる。図示するように、ペン先部材12は、先端側に尖形のペン先13と、ペン先13の基端側に段差部14を介して連続する基端部16と、を含んでいる。
【0061】
ペン先13は、横断面外形が扁平円で且つ側方視において刃状に形成されている。ここでの横断面外形の扁平円は、図11(a)の上下方向が長軸方向とされていると共に、図11(b)の上下方向が短軸方向とされている。このペン先13では、その先端面により、使用者の肌等の塗布対象に当接される塗布面Sが構成されている。塗布面Sは、前側に膨み且つ前後に細長の扁平円状曲面とされ、その先端には、頂点Pが形成されている。
【0062】
また、ペン先13の両側面において塗布面Sの外縁から所定長基端側に亘る領域には、塗布面S側に先細りとなるよう傾斜するテーパ面17が形成されている。ペン先13の軸線位置には、軸線方向に沿って延在する断面円形の貫通孔18が形成されている。この貫通孔18における塗布面Sの開口部分は、塗布材Mを吐出するための開口部18aを形成する。
【0063】
基端部16は、その横断面外形がペン先13よりも大径とされた扁平円形状の筒状を呈している。この基端部16の外周面において前端から中央に亘る領域には、上記外側充填筒10のテーパ部10bに係合するものとして、先細りとなるよう傾斜するテーパ面19が形成されている。
【0064】
図1,10,11に示すように、このペン先部材12は、その基端部16が内側充填筒11の前端部11dに外挿され、内側充填筒11に対し回転方向に係合されて密着されている。この状態で、ペン先部材12は、そのペン先13が外側充填筒10の開口10gに内挿され、外側充填筒10に対し回転方向に係合されて装着されている。つまり、ペン先部材12を内側充填筒11に組み付け、これを外側充填筒10に組み付けることで、外側充填筒10、内側充填筒11及びペン先部材12が充填部材1として互いに装着されている。また、このペン先部材12は、その段差部14が外側充填筒10の前端部に軸線方向に係合されていると共に、その基端部16の後端面が内側充填筒11に軸線方向に係合され、これにより、外側充填筒10及び内側充填筒11により軸線方向に挟持され保持されている。
【0065】
そして、塗布材Mが充填された充填部材1にあっては、その後部側から本体筒2に内挿され、その外側充填筒10の環状凹部10cが本体筒2の環状突部2bに係合すると共に、その外側充填筒10のローレット10eが本体筒2のローレット2aに係合することで、本体筒2に対し軸線方向及び回転方向に係合されて装着され、当該本体筒2と一体化されている。これと共に、充填部材1は、その内側充填筒11の後端部に、ピストン7が気密に密着するようにして内挿されて装着されている。このとき、上述したように、内側充填筒11の後端部にエア排出孔11eが設けられていることから、充填領域1x内の塗布材Mとピストン7との間にエアが存在する場合でも、当該エアをエア排出孔11eを介して適度に逃がすことができ、充填領域1xの内圧が高まるのを抑制することができる。
【0066】
また、充填部材1のペン先部材12の開口部18aには、栓C2が嵌挿されて着脱可能に取り付けられ、これにより、充填領域1xが密閉(気密化)される。さらに、この充填部材1の外側充填筒10には、OリングR2を介してキャップC1がネジ嵌合され(着脱可能に取り付けられ)、これにより、キャップC1内が気密状態とされる。なお、充填部材1の外側充填筒10の内面に対し螺子筒4の鍔部4a(図6参照)が近接するように螺子筒4が内挿されており、これにより、雌螺子4eの内径が拡がることが阻止される。
【0067】
図12は充填部材への塗布材の充填を説明するための断面図、図13は塗布材充填後の塗布材押出容器の組付けを説明するための断面図である。図12に示すように、上述の充填部材1において充填領域1xに塗布材Mを充填する場合、まず、先端シール部品としての栓C2を開口部18aから内側充填筒11の先端部に至るまで挿入し、栓C2の係合突起を隙間11hに係合させる。これにより、栓C2と充填部材1とが密着状態又はクリアランスを持った状態にされて開口部18aが塞がれる。
【0068】
続いて、キャップC1を外側充填筒10にネジ嵌合させ、キャップC1内を気密状態とする。そして、ペン先部材12が下方に位置する立姿勢とし、内側充填筒11の後方からノズルNzを挿入し、80℃程度の温度に上昇させて溶解させた塗布材Mを充填領域1xに充填しながらノズルNzを後退させ、定量まで塗布材Mの充填を行う。続いて、所定の冷却時間放置して冷却させた後、図13に示すように、各部材2〜7が組み立てられた本体組立品50を組み付けて完成する。
【0069】
以上のように構成され図1に示す初期状態の塗布材押出容器100にあっては、使用者によりキャップC1及び栓C2が取り外され、本体筒2と操作筒3とが繰出し方向である一方向に相対回転されると、螺子筒4の雌螺子4e及び移動体6の雄螺子6bから成る螺合部9と操作筒3の突条3d及び移動体6の突条6cから成る回止め部との協働により、移動体6及びピストン7が前進し、充填部材1の充填領域1xに満たされた塗布材Mがペン先部材12の開口部18aから吐出される(図2参照)。
【0070】
また、このように本体筒2と操作筒3とが一方向に相対回転されたとき、ラチェット部材5のバネ部5bの弾性力でラチェット歯8bが軸線方向前側に付勢されることから、ラチェット機構8におけるラチェット歯8a,8bの係合及び係合解除(噛合及び噛合解除)が繰り返される。すなわち、ラチェット歯8aの側面8a1(図6参照)がラチェット歯8bの側面8b1(図8参照)に回転方向に係合し、ラチェット歯8aがラチェット歯8bの側面8b1を駆け上がるように摺動する。そして、ラチェット歯8aがラチェット歯8bを乗り越えて当該係合が解除された後、再び側面8a1が側面8b1に回転方向に係合する。その結果、ラチェット歯8a,8bの係合及び係合解除の度に、使用者にクリック感が付与される。ここでは、本体筒2と操作筒3とが一方向に相対的に1/8回転(45°)されたときにクリック感が1度生じるようになっている。
【0071】
他方、本体筒2と操作筒3とが繰戻し方向である他方向に相対回転しようとしても、ラチェット歯8aの側面8a2(図6参照)がラチェット歯8bの側面8b2(図8参照)に当接して回転方向に係止され、螺子筒4とラチェット部材5とが相対回転しないようにこれらの相対回転が規制される。その結果、本体筒2と操作筒3とが他方向に相対回転されないこととなる。
【0072】
ここで、本実施形態の塗布材押出容器100は、上述したようにカム機構20を備えている。そこで、このカム機構20について、以下に詳細に説明する。
【0073】
図14はカム機構を説明するための一部展開図、図15はカム機構の動作を説明するための概略図、図16〜19は、カム機構の動作を説明するための拡大図である。なお、図14は、0°から180°までのカム機構20の展開図を示し、カム機構20における突部20aとガイド部20bとの相対的移動を突部20aの移動として示している。
【0074】
図14に示すように、本実施形態のカム機構20は、一方向における本体筒2及び操作筒3の一定回転量の相対回転により、移動体6及びピストン7を一定ストローク前進させた後に一定ストローク後退させる。ここでは、本体筒2と操作筒3とが1/8回転相対回転される毎に(クリック感が1度生じる毎に)、移動体6及びピストン7を1.2mm進退させる。このカム機構20は、上記のように、突部20aと、隆起部20c及びガイド片20dで構成されたガイド部20bとを備えており、突部20aがガイド部20bにより相対的にガイドされ、図示するようなサインカーブに沿った相対軌跡に沿って突部20aが相対移動する。
【0075】
突部20aは、径方向視において多角形状を成している。ここでの突部20aは、径方向から見て、軸線方向を長手方向とし且つ軸線方向に沿った対辺を有する六角形状とされている。突部20aの前側は、ガイド部20bに相対的に摺動するものとして、横断面に対し傾斜する前側摺動面20a1を有している。つまり、突部20aの前側側面のうち周方向一方側(本体筒2と操作筒3とを一方向に相対回転したときにガイド部20bに当接する側)には、横断面に対し所定角度(例えば45°)で傾斜する前側摺動面20a1が設けられている。また、突部20aの後側は、ガイド部20bに相対的に摺動するものとして、横断面に対し傾斜する後側摺動面20a2を有している。つまり、突部20aの後側側面のうち周方向一方側には、横断面に対し所定角度(例えば45°)で傾斜する後側摺動面20a2が設けられている。
【0076】
ガイド部20bの前側を画成する隆起部20cの後面は、周方向に沿って鋸歯状を成し、径方向視において山型の凸凹が連続する形状とされている。この隆起部20cの後面が有するガイド面20eは、本体筒2と操作筒3とを一方向に相対回転したときに突部20aと当接する面であって、突部20aの前側摺動面20a1と等しい傾斜角度で横断面に対し傾斜している。
【0077】
ガイド部20bの後側を画成する複数のガイド片20dは、径方向視で矩形状を成している。ここでのガイド片20dは、径方向から見て、軸線方向に沿った対辺を有する平行四辺形状とされている。ガイド片20dの前面は、横断面に対し傾斜するガイド面20fを含んで構成されている。ガイド面20fは、本体筒2と操作筒3とを一方向に相対回転したときに突部20aと当接し摺動する面であって、突部20aの後側摺動面20a2と等しい傾斜角度で横断面に対し傾斜している。
【0078】
また、ガイド片20dは、周方向位置が隆起部20cのガイド面20eと重ならないように、換言すると、軸線方向視でガイド面20eと重ならないように並設されている。具体的には、ガイド片20dにおけるガイド面20fの周方向一方側の縁部と、隆起部20cにおけるガイド面20eの周方向他方側の縁部とは、周方向位置が同位置になるように設けられている。また、ガイド面20fの周方向他方側の縁部と、ガイド面20eの周方向一方側の縁部とは、周方向位置が同位置になるように設けられている。
【0079】
また、カム機構20は、クリック感の発生タイミングに応じて移動体6及びピストン7が進退するように構成されており、クリック機構としてのラチェット機構8に対し所定の位置関係を有している。ここでは、ラチェット機構8のラチェット歯8aの側面8a2は、ガイド面20eの周方向一方側の縁部に対し、周方向位置が同位置とされている(図6参照)。これにより、本体筒2と操作筒3とが一方向に相対回転される際、移動体6及びピストン7がカム機構20の後退限に位置したときにクリック感が生じることになる(詳しくは後述)。
【0080】
以上のように構成されたカム機構20は、本体筒2及び操作筒3が一定回転量相対回転される毎に、例えば以下に例示するようにして、相対回転の回転力を軸線方向に沿った直進力へ変換し、移動体6及びピストン7を一定ストローク進退させる。
【0081】
すなわち、図15(a)及び図16に示すように、螺子筒4がカム機構20の前進限に位置する状態において、本体筒2及び操作筒3が一方向に相対回転されると、まず、突部20aが周方向一方側へと相対移動し、図15(b)及び図17に示すように、突部20aの後側摺動面20a2がガイド片20dのガイド面20fと当接して摺動する。
【0082】
これにより、ガイド片20d(螺子筒4)は本体筒2に対し軸線方向に移動可能で回転方向に係合していることから、ガイド片20dが突部20aにより後方へと押しやられ、ガイド片20dが後退する。従って、螺子筒4が後退し、螺子筒4に螺合部9で螺合されている移動体6が後退し、ひいてはピストン7が後退することとなる。その結果、充填領域1xが拡張されて、充填領域1xの内圧が自動的に減圧される。
【0083】
引き続き一方向に相対回転されると、突部20aが周方向一方側へと引き続き相対移動し、螺子筒4、移動体6及びピストン7が引き続き後退し、そして、図15(c)及び図18に示すように、ガイド面20fの周方向一方側の縁部に接する位置まで突部20aが相対移動したとき、突部20aのガイド面20fとの摺動が終了し、螺子筒4、移動体6及びピストン7がカム機構20の後退限に達する。このとき(カム機構20の後退限に達したとき)、ラチェット歯8aがラチェット歯8bを乗り越え、ラチェット歯8a,8bが係合解除及び係合され、クリック感が発生する。
【0084】
また、引き続き一方向に相対回転されると、突部20aが周方向一方側へと相対移動し、図15(d)及び図19に示すように、突部20aの前側摺動面20a1が隆起部20cのガイド面20eと当接して摺動する。これにより、隆起部20cが突部20aにより前方へと押しやられ、隆起部20cが前進する。従って、螺子筒4が前進し、移動体6及びピストン7が前進する。その結果、充填領域1xが収縮され、充填領域1x内の塗布材Mが押し出されて開口部18aから吐出される。
【0085】
さらに引き続き一方向に相対回転されると、突部20aが周方向一方側へと引き続きさらに相対移動し、螺子筒4、移動体6及びピストン7が引き続き前進し、そして、図15(e)に示すように、ガイド面20eの周方向一方側の縁部に接する位置まで突部20aが相対移動したとき、突部20aのガイド面20eとの摺動が終了し、螺子筒4、移動体6及びピストン7がカム機構20の前進限に達する。以上により、移動体6及びピストン7が一定ストローク進退されることになる。
【0086】
以上、本実施形態の塗布材押出容器100によれば、本体筒2及び操作筒3を一方向に一定回転量相対回転し、移動体6及びピストン7をカム機構20によって一定ストローク進退させることで、塗布材Mを吐出させるだけでなく、充填領域1x内を自動的に減圧させることができる。このように充填領域1x内を自動的に減圧させることができるため、塗布材Mの漏出、つまり、例えば時間の経過によって塗布材Mが開口部18aから垂れてしまうことを、容易且つ確実に抑制することができる。また、圧力による塗布材Mの変化を抑制することが可能となる。
【0087】
特に、本実施形態では、上述したように、バネ等の弾性体の付勢力によらず、カム機構20が相対回転の回転力のみによって移動体6及びピストン7を進退させることができる。移動体6及びピストン7を進退させるのに必要な力に対し、弾性体の付勢力は不十分となる場合があるため、このような本実施形態によれば、塗布材Mの漏出を一層確実に抑制することができる。また、充填領域1xを画成するピストン7をカム機構20によって進退できるため、充填領域1xを直接的且つ好適に減圧させることができる。
【0088】
また、本実施形態では、上述したように、ガイド部20bが周方向に並ぶ複数のガイド片20dにより画成され、これら複数のガイド片20dの間には、突部20aが軸線方向に挿通可能な隙間Dが形成されている(図14参照)。よって、かかる隙間Dから、軸線方向に沿って突部20aをガイド部20bへ進入させることができ、突部20aをガイド部20bへ容易に組み付けることが可能となる。
【0089】
また、本実施形態では、上述したように、本体筒2及び操作筒3を相対回転させてクリック感が1度生じるたびに、移動体6及びピストン7が一定ストロークだけ進退する。そのため、クリック感により、相対回転の度合いや塗布材Mの吐出の度合いを使用者に感知させるだけでなく、移動体6及びピストン7の一定ストロークの進退をも感知させることができる。
【0090】
また、本実施形態では、上述したように、ラチェット機構8により、他方向における本体筒2及び操作筒3の相対回転を規制し、一方向における本体筒2及び操作筒3の相対回転のみを許容することが可能となる。
【0091】
また、本実施形態では、上述したように、移動体6が螺合部9を含み、この螺合部9と螺合する螺子筒4を進退させることにより、移動体6ひいてはピストン7を進退させている。この構成によれば、自動的に充填領域1x内を減圧させて塗布材Mの漏出を抑制するという上記作用効果を、好適に発揮できる。
【0092】
また、本実施形態では、上述したように、クリック感が生じたときにおいて、螺子筒4がカム機構20の後退限に位置され、充填領域1x内が最大限に減圧されている。よって、通常、使用者はクリック感を基準に相対回転を停止する(使用を終える)ことから、使用後の塗布材押出容器100は、その充填領域1x内が減圧された状態とされ易いものとなる。この点、使用後の保管時に開口部18aから塗布材Mが特に漏出し易い実情から、使用後の塗布材押出容器100の充填領域1x内を最大限に減圧可能な本実施形態は、有益なものといえる。
【0093】
なお、本実施形態のような塗布材Mは、一般的にジャータイプのガラス容器に充填し、化粧用筆で使用される。しかしこの場合、広口のジャータイプの容器では、例えば塗布材Mの揮発が早くて塗布材Mが変化してしまい易い、及び筆先が固まって使用し難い、という問題がある。この点、本実施形態は、開放部分が少なくバリア性の高い樹脂製素材によって塗布材Mを2重及び3重に密閉し保議できるため、揮発成分を多く含む塗布材Mを使用する場合に有利なものとなる。
【0094】
また、本実施形態では、内側充填筒11を透明にして外側充填筒10の一部(ピストン7が移動体6の前進限である図2に示す位置に在るときに当該ピストン7を視認可能な位置)に窓を形成することで、販売時や使用時にキャップC1を取り外すことにより、充填された塗布材Mの色調や有無を確認することが可能となる。例えば、ピストン7を白色で形成することにより、塗布材Mが最後まで押し出されてピストン7が外側充填筒10に形成された窓の位置まで到達すると、この窓から視認される色が塗布材Mの色から白色に変化するため、残量が無いことを認識可能であり、使い終わりの合図となる。
【0095】
また、本実施形態では、内側充填筒11の後端付近にエア排出孔11eを形成していることから、塗布材Mが充填された充填部材1を本体組立品50に組み付けるに際して、充填部材1内にピストン7を一定量内挿したとき、エアをエア排出孔11eから適度に排出させることができる。また、エア排出孔11eを超えるまで(エア排出孔11eが埋没するように)塗布材Mを充填部材1に充填して当該充填部材1を本体組立品50に組み付けると、ピストン7が内側充填筒11内に挿入されたときに余分な塗布材Mがエア排出孔11eから排出されるため、充填部材1内のエアを完全に除くことが可能となる。なお、エアが充填部材1内に含まれると、温度上昇によってエアが膨張して開口部(吐出口)18aから塗布材Mの漏れが自然に発生したり、塗布材Mの押出し時にエアがクッションとなってタイムラグが発生したりするため、好ましくない。
【0096】
ちなみに、本実施形態では、突部20aが六角形状とされているため、カム機構20における上述した摺動を実現する上で、突部20aの面積を最大化することができる。その結果、突部20aの強度や剛性が最大化されることとなる。
【0097】
また、カム機構20においては、バネ等が用いられず、上述した突部20a及びガイド部20bによって構成されているため、少ない総部品数で組付け容易化が可能となる。また、上述したように、塗布材Mを充填する際、栓C2が密着状態又はクリアランスを持った状態になるように開口部18aを塞ぐため、塗布材Mにエアが含み難いものとなる。
【0098】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲で変形し、又は他のものに適用したものであってもよい。
【0099】
例えば、上記実施形態では、カム機構20の突部20aを操作筒3(容器後部)と同期回転可能に設け、ガイド部20bを本体筒2(容器前部)と同期回転可能に設けたが、これとは逆に、突部20aを容器前部と同期回転可能に設け、ガイド部20bを容器前部と同期回転可能に設けてもよい。また、上記実施形態では、複数のガイド片20dによりガイド部20bの後側を画成したが、これとは逆に、複数のガイド片20dによりガイド部20bの前側を画成してもよい。
【0100】
また、上記実施形態では、カム機構20の突部20aを径方向視において六角形状とし、ガイド部20bの隆起部20cを周方向に沿って鋸歯状とし、ガイド片20dを径方向視において平行四辺形状としたが、これに限定されるものではない。例えば、図20,21に示すように、突部20a、隆起部20c及びガイド片20dは、平面及び曲面の少なくとも一方を有する形状としてもよい。また、ガイド面20e,20fについても同様に、平面及び曲面の少なくとも一方を有する形状としてもよい。
【0101】
具体的には、図20に示す例では、突部20aは、径方向から見て、軸線方向を長手方向とし且つ軸線方向に沿った対辺を有する長円形状とされている。図21に示す例では、突部20aは、径方向から見て円形状とされている。また、図20,21に示す例では、隆起部20cは、周方向に沿って波状とされ、曲面状のガイド面20eを有し、ガイド片20dは、径方向から見て、軸線方向に沿った対辺を有し且つ角部がR形状の平行四辺形状とされている。
【0102】
また、上記実施形態のカム機構20は、クリック感の発生タイミングに応じて移動体6及びピストン7が進退するように構成されているが、これに限定されるものでない。例えば、上記実施形態では、カム機構20により移動体6及びピストン7を一定ストローク進退させる際にクリック感を1度生じさせたが、一定ストローク進退させる際にクリック感を複数生じさせてもよい。さらには、カム機構20がクリック機構に対し独立して作動するものであってもよい。
【0103】
また、上記実施形態のカム機構20は、移動体6及びピストン7を一定量進退させるものであればよく、一定量前進させた後に一定量後退させてもよいし、一定量後退させた後に一定量前進させてもよい。
【0104】
また、上記実施形態では、押出機構として螺合部9による回転式のものを採用しているが、これに限定されず、例えばノック式等の機械的な押出機構や、スクイーズ式の押出機構を採用することも可能である。また、上記実施形態では、カム機構20として円筒カム機構を採用しているが、他のカム機構を採用することも勿論可能である。
【0105】
また、上述した雄螺子及び雌螺子は、螺子山や螺子溝だけでなく、間欠的に配される突起群、又は螺旋状且つ間欠的に配される突起群のように螺子山や螺子溝と同様な働きをするものであってもよい。また、上記実施形態では、バネ部5bがラチェット部材5と一体に設けられているが、このバネ部5bは、ラチェット部材5と別体に設けられていてもよい。なお、上記において、ラチェット機構8がクリック機構を兼用しており、ラチェット歯8a,8bが一対のクリック突起(クリック歯)に対応する。
【符号の説明】
【0106】
1…充填部材(容器前部,容器)、1x…充填領域、2…本体筒(容器前部,容器)、3…操作筒(容器後部,容器,第2筒部材)、4…螺子筒、6…移動体(移動部)、7…ピストン(移動部)、8…ラチェット機構(クリック機構)、9…螺合部(押出機構)、18a…開口部、20…カム機構、20a…突部、20b…ガイド部、20d…ガイド片(突起)、20e,20f…ガイド面、100…塗布材押出容器、D…隙間、M…塗布材。
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗布材を押し出して使用する塗布材押出容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の塗布材押出容器としては、例えば特許文献1に記載されているように、容器前部と、容器前部に相対回転可能な容器後部と、を有する容器を具備し、容器前部と容器後部とが一方向に相対回転されると、容器内に配設された移動部が前進し、容器内の充填領域に充填された塗布材を押し出して容器先端の開口部から吐出させるものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−130438号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、上述したような塗布材押出容器おいては、充填領域の内圧が高まって開口部から塗布材が意図せず吐出(漏出)してしまうおそれがある。この場合、当該漏出を抑制するため、例えば使用者が容器前部と容器後部とを一方向の反対方向である他方向に相対回転して移動部を後退させ、充填領域の内圧を減圧することが考えられる。しかし、使用者の操作が別途必要となってしまうことから、確実性及び利便性の点で改善の余地がある。
【0005】
そこで、本発明は、塗布材が開口部から漏出することを容易且つ確実に抑制できる塗布材押出容器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明に係る塗布材押出容器は、容器前部と、容器前部に相対回転可能な容器後部と、を有する容器を具備し、容器前部と容器後部とが一方向に相対回転されると、容器内に配設された移動部が押出機構により前進又は後退し、容器内の充填領域に充填された塗布材を押し出して容器先端の開口部から吐出させる塗布材押出容器であって、容器前部と容器後部とが一方向に一定回転量相対回転される毎に、移動部を一定量進退させるカム機構を備えたことを特徴とする。
【0007】
この塗布材押出容器では、容器前部と容器後部とが一方向に相対回転されると、押出機構により移動部が前進され、充填領域内の塗布材が押し出されて開口部から吐出される。このとき、一方向に一定回転量相対回転された際には、カム機構により移動部が一定量進退されることから、塗布材が押し出されて吐出された後、充填領域が減圧されることとなる。すなわち、使用者の操作を別途要することなく、充填領域の減圧を自動的に実現することができる。よって、開口部からの塗布材の漏出を容易且つ確実に抑制することが可能となる。
【0008】
また、カム機構は、容器前部と容器後部との相対回転の回転力によって、移動部を一定量進退させることが好ましい。このようにカム機構は、バネ等の弾性体の付勢力によらず、相対回転の回転力によって移動部を一定量進退させることができる。
【0009】
また、移動部は、充填領域を画成するピストンを含んで構成され、カム機構は、ピストンを一定量進退させることが好ましい。この場合、充填領域を好適に減圧させることができる。
【0010】
また、上記作用効果を好適に奏する構成として、具体的には、カム機構は、容器前部又は容器後部の何れか一方に同期回転可能に設けられたガイド部と、容器前部又は容器後部の何れか他方に同期回転可能に設けられ、ガイド部によりガイドされる突部と、を有し、ガイド部は、軸線方向と直交する横断面に対し傾斜するガイド面を含み、突部は、ガイド面に対し相対的に摺動する構成が挙げられる。
【0011】
このとき、カム機構は、円筒カム機構であって、ガイド部は、第1筒部材の外周面に設けられ、突部は、第2筒部材の内周面に設けられていてもよい。この場合、カム機構を円筒カム機構により構成することができる。
【0012】
また、ガイド部の前側又は後側は、周方向に並ぶ複数の突起により画成され、複数の突起の間には、突部が軸線方向に挿通可能な隙間が形成されていることが好ましい。この場合、ガイド部における複数の突起間に形成された隙間から、軸線方向に沿って突部をガイド部へ進入させることができ、突部をガイド部へ容易に組み付けることが可能となる。
【0013】
また、容器前部と容器後部とが一定回転量相対回転される毎にクリック感を生じさせるクリック機構を備えたことが好ましい。この場合、容器前部と容器後部との一定回転量の相対回転、つまり、移動部の一定量の進退を、クリック感により感知することができる。
【0014】
また、容器内に設けられ、一方向における容器前部と容器後部との相対回転のみ許容するラチェット機構を備えたことが好ましい。この場合、他方向における容器前部と容器後部との相対回転を規制することができる。
【0015】
また、移動部は、押出機構を構成する螺合部を含んで構成されており、螺合部と螺合する螺子筒をさらに備え、カム機構は、螺子筒を一定量進退させることにより移動部を一定量進退させることが好ましい。この場合、押出機構として螺合部を好適に適用することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、塗布材が開口部から漏出するのを容易且つ確実に抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態に係る塗布材押出容器の初期状態を示す縦断面図である。
【図2】図1の塗布材押出容器において移動体の前進限の状態を示す図1の縦断面位置を90°異なる位置とした縦断面図である。
【図3】図1の塗布材押出容器を一部断面化して示す分解斜視図である。
【図4】図1の塗布材押出容器の操作筒を一部断面化して示す斜視図である。
【図5】図1の塗布材押出容器の操作筒を一部断面化して示す他の斜視図である。
【図6】図1の塗布材押出容器の螺子筒を示す斜視図である。
【図7】図6のVII−VII線に沿った断面図である。
【図8】図1の塗布材押出容器のラチェット部材を示す斜視図である。
【図9】図1の塗布材押出容器のラチェット部材を示す平面図である。
【図10】図1の塗布材押出容器の充填部材を示す分解斜視図である。
【図11】(a)は図1の塗布材押出容器におけるペン先部材を示す正面図、(b)は図1の塗布材押出容器におけるペン先部材を示す底面図である。
【図12】図1の塗布材押出容器における充填部材への塗布材の充填を説明するための断面図である。
【図13】図1の塗布材押出容器における塗布材充填後の組付けを説明するための断面図である。
【図14】図1の塗布材押出容器のカム機構を説明するための一部展開図である。
【図15】図1の塗布材押出容器におけるカム機構の動作を説明するための概略図である。
【図16】図1の塗布材押出容器におけるカム機構の動作を説明するための拡大図である。
【図17】図16の続きを示す拡大図である。
【図18】図17の続きを示す拡大図である。
【図19】図18の続きを示す拡大図である。
【図20】変形例に係るカム機構を説明するための一部展開図である。
【図21】他の変形例に係るカム機構を説明するための一部展開図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明において同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0019】
図1は本発明の一実施形態に係る塗布材押出容器の初期状態を示す縦断側面、図2は塗布材押出容器において移動体の前進限の状態を示す縦断側面図、図3は塗布材押出容器を一部断面化して示す分解斜視図である。なお、図2では、図1の縦断面位置を90°異なる位置とした縦断面図とされている。図1〜3に示すように、本実施形態の塗布材押出容器100は、その内部に充填した塗布材Mを使用者の操作により適宜吐出する(押し出す)ものである。
【0020】
塗布材Mとしては、例えば、アイライナー、アイカラー、アイシャドウ、アイブロー、リップグロス、リップ、リップライナー、チークカラー、美容液、美容スティック、洗浄液、クレンジングオイル、ネールエナメル、ネールケア溶液、ネールリムーバー、マスカラ、アンチエイジング、ヘアーカラー、頭髪用塗布材、オーラルケア、マッサージオイル、角栓ゆるめ液、ファンデーション、コンシーラー、スキンクリーム、筆記用具等のインク、医薬品等を始めとした種々の液状、ゼリー状、ジェル(ゲル)状、ペースト状、軟質状、ムース状、練り状、泥状、半固形状、軟固形状、固形状等のものを用いることが可能である。また、塗布材Mに対し、顔料、油剤、ワックス等に加え、揮発性溶剤(例えば、シクロペンタシロキサン等のシリコン油や、イソドデカン、イソヘキサデカン等の炭化水素油)を配合することにより、その持ちのよさを高めることができる。
【0021】
また、塗布材Mとしては、粘度又は硬度が高くて圧縮性が高いジェル状や半固形状のものを用いるのが好適であり、特に好ましいとして0.1N〜0.2N程度の硬度を有する塗布材Mを用いることが可能である。この塗布材Mの硬度は、化粧品において硬度を計るために使用される一般的な測定方法により求められる。ここでは、例えばFUDOH RHEO METER[RTC-2002D.D](株式会社レオテック社製)を測定器として用い、雰囲気温度25℃条件下にてφ3mmの鋼棒(アダプタ一)を6cm/minの速度で塗布材Mに深さ10mm程度挿入したときに当該塗布材Mに生じるピーク時の力(強度)を硬度(針入度)としている。
【0022】
この塗布材押出容器100は、塗布材Mが充填される充填領域1xを内部に備えた先筒である充填部材1と、その前半部に充填部材1の後半部を内挿して当該充填部材1を軸線方向(前後方向)及び軸線回り回転方向(以下、単に「回転方向」ともいう)に係合し一体となるように連結する本体筒2と、この本体筒2の後端部に相対回転可能にして軸線方向に連結する操作筒(第2筒部材)3と、を外形構成として具備している。なお、充填部材1及び本体筒2が容器前部を構成し、操作筒3が容器後部を構成する。また、「軸線」とは、塗布材押出容器100の前後に延びる中心線を意味し、「軸線方向」とは、軸線に沿った方向を意味する(以下、同じ)。
【0023】
また、この塗布材押出容器100は、その内部に、本体筒2(充填部材1でも可)及び操作筒3の相対回転により軸線方向に移動する移動体(移動部)6と、移動体6の前端(先端)部に装着されて充填領域1xの後端を形成するピストン(移動部)7と、当該相対回転による移動体6の移動を可能にする螺合部材としての螺子筒(第1筒部材)4と、螺子筒4に対し一方向のみ相対回転可能なラチェット部材5と、を概略備えている。
【0024】
特に本実施形態の塗布材押出容器100は、本体筒2及び操作筒3の相対回転を一方向のみ許容するラチェット機構8と、本体筒2及び操作筒3の一定回転量の相対回転毎に移動体6及びピストン7を一定ストローク(一定量)内にて進退(前進及び後退)させるカム機構20と、を備えている。ここでのカム機構20は、突部20a及びガイド部20bを含む円筒カム機構であって、本体筒2と操作筒3との相対回転の回転力によって移動体6及びピストン7を一定ストローク進退させる(詳しくは後述)。
【0025】
本体筒2は、円筒状に構成され、その軸線方向中央部の内周面に、充填部材1及び螺子筒4を回転方向に係合するためのものとして、周方向に多数の凹凸状が並設されて当該凹凸状が軸線方向に所定長延びるローレット2aを有している。また、本体筒2の先端部の内周面には、充填部材1を軸線方向に係合するための環状突部2bが設けられている。本体筒2の後部側の内周面には、操作筒3を軸線方向に係合するためのものとして、周方向に沿って延びる突部2cが形成されている。また、本体筒2の内周面において突部2cより前側には、螺子筒4を軸線方向に係合するためのものとして、周方向に沿って延びる突部2dが形成されている。
【0026】
図4,5は、操作筒の一部を断面化して示す斜視図である。図4,5に示すように、操作筒3は、樹脂による射出成形品とされており、前方に開口する有底円筒状を呈している。操作筒3は、その前端側に外径が小径とされる前端筒部3aを備え、この前端筒部3aの外周面には、本体筒2の突部2cに軸線方向に係合するための環状溝部3bが設けられている。また、操作筒3の底部中央には、軸体3cが立設されている。軸体3cは、円柱体の外周面に軸線方向に延びる突条3dを複数有する横断面(軸線方向と直交する断面)非円形形状とされ、この突条3dは、移動体6の回止め部の一方を構成する。
【0027】
また、操作筒3は、その内周面に、底部から先端側に向かって延びる突条3eを周方向八等配の位置に備えている。突条3eの先端面3fは、軸線方向の直交面である横断面(以下、単に「横断面」という)に対し傾斜している。具体的には、先端面3fは、径方向視において周方向一方側に行くに従い後方へ傾斜している。換言すると、先端面3fは、ラチェット機構8により許容された相対回転方向(以下、「許容回転方向」という)に行くに連れ後方へ傾斜しており、後述の縦リブ5eの後端面5fと略平行とされている。
【0028】
また、操作筒3の前端筒部3aの外周面における後端には、OリングR1を装着するためのものとして、環状に延在するOリング用溝3gが設けられている。OリングR1は、本体筒2と操作筒3との相対回転の際に適度な回転抵抗を与えるためのものであり、当該相対回転に所定の回転抵抗力を発生させる環状弾性体として機能する。
【0029】
また、操作筒3は、その内周面における前端部に、カム機構20の一方を構成する一対(複数)の突部20aを有している。突部20aは、ガイド部20bと相対的に摺動しながら当該ガイド部20bにガイドされる。これにより、突部20aは、使用者が本体筒2と操作筒3とを相対回転した際の回転力を摺動によってガイド部20bへ伝達する原節として機能する。
【0030】
これら突部20aは、周方向二等配の位置に設けられ、径方向内側に所定長突出している。具体的には、操作筒3の内周面において前端筒部3aの中央から前端に亘る領域が拡径されて大径内周面3iとされ、一定高さの一対の突部20aが大径内周面3iの前端に互いに対向するよう形成されている。また、大径内周面3iにおいて突部20aの後側に連なる領域には、突部20aを成形するためのものとして、径方向に貫通する孔部3hが形成されている。孔部3hは、径方向から見て、突部20aと等しい周方向幅を有する矩形状とされている。
【0031】
図1,4に示すように、この操作筒3は、その前端筒部3aから本体筒2に内挿され、その環状溝部3bが本体筒2の突部2cに係合することで、本体筒2に相対回転可能にして軸線方向に連結され装着されている。このとき、操作筒3のOリング用溝3gにOリングR1が嵌め込まれており、これにより、本体筒2と操作筒3との相対回転に適度な回転抵抗が付与されている。
【0032】
このような操作筒3は、金型及びコアピンを用いて樹脂成形することができる。ここで、操作筒3は孔部3hを有していることから、金型において孔部3hを形成するための凸部分を利用することにより、突部20aを好適に成形することが可能となる。例えば、金型のスライドコア及びコアピンを互いに組み付けた際、スライドコアの凸部分とコアピンとにより、軸線方向と垂直方向に挟みこむようにして突部20aに対応する所定空間を画設することができる。その結果、成形後(つまり、所定空間に溶融樹脂が充填・固化されて突部20aが形成された後)にコアピンを取り外す際、スライドコアの凸部分を軸線と垂直方向にスライドさせることにより、突部20aの後方に形成されたアンダーカット部が開放され、コアピンを軸線方向に容易に引き抜くことが可能となる。
【0033】
図6は螺子筒を示す斜視図であり、図7は図6のVII−VII線に沿った断面図である。図6,7に示すように、螺子筒4は、樹脂による射出成形品とされており、段付き円筒状の外形を呈している。この螺子筒4は、前端筒部4xと、前端筒部4xよりも大径の外形を有する中央筒部4yと、中央筒部4yよりも小径の外形を有する後端筒部4zと、を前方から後方に向かってこの順に有している。一方、螺子筒4の内周面は、段差なく軸線方向に沿って真っ直ぐ延在している。
【0034】
前端筒部4xは、螺子筒4の前端部分を構成し、その内周面には、螺合部(押出機構)9の一方を構成する雌螺子4eが設けられている。ここでの螺合部9のピッチは、細ピッチが採用されており、例えば0.5mmとされている。前端筒部4xの外周面において前端部には、充填部材1(図1参照)に近接して雌螺子4eの内径が拡がるのを阻止するための鍔部4aが設けられている。
【0035】
中央筒部4yは、螺子筒4の中央部分及び中央部分の前端寄りを構成し、その外周面において周方向の複数の位置には、本体筒2のローレット2aに回転方向に係合するための突条4cが形成されている。また、中央筒部4yの後端部の外周面には、本体筒2の突部2dに軸線方向に係合するための環状凸部4dが形成されている。また、前端筒部4xと中央筒部4yの前端部とには、径方向に貫通し且つ軸線方向に所定長延在するスリット4fが対向するように一対形成されている。
【0036】
後端筒部4zは、螺子筒4の後端部分及び中央部分の後端寄りを構成し、その後端面4bには、ラチェット機構8を構成するものとして、ラチェット部材5に係合するラチェット歯8aが周方向に沿って複数設けられている。ここでのラチェット歯8aは、後端面4bにおいて周方向四等配の位置に突設されている。
【0037】
これらラチェット歯8aは、周方向に沿って鋸歯状(楔状)を成して後端面4bから突出している。具体的には、ラチェット歯8aにおける周方向他方側(本体筒2と操作筒3とを一方向に相対回転したときにラチェット歯8aと当接する側)の側面8a1は、周方向に山型になるよう後端面4bに対し傾斜している。一方、ラチェット歯8bにおける周方向一方側(本体筒2と操作筒3とを他方向に相対回転したときにラチェット歯8aと当接する側)の側面8a2は、後端面4bに直交し軸線方向に沿って延在している。
【0038】
また、後端筒部4zは、その外周面に、カム機構20の他方を構成するガイド部20bを有している。ガイド部20bは、操作筒3の突部20aを相対的に摺動させながら当該突部20aの摺動をガイドする。このガイド部20bは、突部20aから摺動によって本体筒2と操作筒3との回転力が前後方向の直進力として伝達される従節として機能する。ガイド部20bの前側は、後端筒部4zの外周面に対し隆起する隆起部20cにより画成され、ガイド部20bの後側は、後端筒部4zの外周面に対し突出する突起としての複数のガイド片20dにより画成されている。
【0039】
隆起部20cは、径方向外側へ所定長隆起するように後端筒部4zの前端部に設けられている。隆起部20cの後面は、周方向に沿って鋸歯状(楔状)を成している。また、この隆起部20cの後面は、突部20aと摺動するものとして、横断面に対し傾斜(交差)するガイド面20eを含んで構成されている。
【0040】
複数のガイド片20dは、径方向外側へ所定長突出するように後端筒部4zの後端部に設けられている。これらガイド片20dは、隆起部20cの後方において、上記一定ストロークに対応する距離だけ離間して配置されている。また、複数のガイド片20dは、突部20aの周方向幅よりも広い隙間Dを空けて、周方向に沿って並置されている(図14参照)。ここでのガイド片20dは、周方向八等配の位置に設けられている。
【0041】
図1,6に示すように、この螺子筒4は、本体筒2に内挿され、その環状凸部4dが本体筒2の突部2dに対し軸線方向に移動可能に係合すると共に、その突条4cが本体筒2のローレット2aに回転方向に係合する。また、螺子筒4は、その後端筒部4zが操作筒3に内挿される。これにより、螺子筒4は、本体筒2に回転方向に係合され、本体筒2に対し同期回転可能となるよう装着されると共に、本体筒2の突部2dと操作筒3の前端面との間で軸線方向に移動可能とされる。このとき、操作筒3の突部20aはガイド部20bにおける複数のガイド片20d間の隙間Dからガイド部20b内へ軸線方向に沿って進入され、これにより、突部20aがガイド部20bへと組み付けられてカム機構20が形成される。
【0042】
このような螺子筒4は、金型のスライドコア及びコアピンを用いて樹脂成形することができる。ここで周方向四分割可能な4方向スライドコア式の金型を用いており、これにより、周方向八等配の位置に設けられたガイド片20dのアンダーカット形状を無理なく形成することができる。
【0043】
図8はラチェット部材を示す斜視図、図9はラチェット部材を示す平面図である。図8,9に示すように、ラチェット部材5は、樹脂による射出成形品とされており、略円筒状に構成されている。ラチェット部材5の前端面には、ラチェット機構8を構成するものとして、螺子筒4のラチェット歯8aに係合するラチェット歯8bが周方向に沿って複数設けられている。ここでのラチェット歯8bは、ラチェット部材5の前端面において周方向八等配の位置に突設されている。
【0044】
これらラチェット歯8bは、周方向に沿って鋸歯状(楔状)を成して前端面から突出している。具体的には、ラチェット歯8bにおける周方向一方側(本体筒2と操作筒3とを一方向に相対回転したときにラチェット歯8aの側面8a1と当接する側)の側面8b1は、周方向に山型になるよう前端面に対し傾斜している。一方、ラチェット歯8bにおける周方向他方側(本体筒2と操作筒3とを他方向に相対回転したときにラチェット歯8aの側面8a2と当接する側)の側面8b2は、前端面に直交し軸線方向に沿って延在している。
【0045】
このラチェット部材5の周壁において中央部から後端に至る部分には、略螺旋状のスリット5aが形成されている。これにより、ラチェット部材5は、ラチェット歯8bをラチェット歯8a側である前方へ向けて付勢するバネ部5bとしての機能を有する。また、ラチェット部材5の外周面の前端部には、操作筒3の突条3eに回転方向に係合するものとして、周方向に所定幅を有して軸線方向に延びる縦リブ5eが設けられている。
【0046】
この縦リブ5eは、ラチェット部材5の外周面の前端部において周方向八等配の位置に設けられている。縦リブ5eの後端面5fは、径方向視において、周方向他方側に行くに従い横断面に対し前方へ傾斜している。換言すると、後端面5fは、ラチェット部材5の許容回転方向に行くに連れて前方へ傾斜しており、上記操作筒3の突条3eの先端面3fと略平行とされている。
【0047】
図1,8に示すように、このラチェット部材5は、その後方から操作筒3に内挿され、その縦リブ5eが操作筒3の突条3e,3e間に進入し、当該縦リブ5eが突条3eに回転方向に係合されている。これと共に、ラチェット部材5は、螺子筒4の後端側に突き当てられ、そのラチェット歯8bが螺子筒4のラチェット歯8aと係合可能とされている。これらにより、ラチェット部材5は、ラチェット歯8a,8bによって螺子筒4に対し許容回転方向のみ相対回転可能となるよう相対回転が規制された状態で、操作筒3に組み付けられる。
【0048】
また、ラチェット部材5は、螺子筒4の後端側と操作筒3の底面とにより軸線方向に挟み付けられ、そのバネ部5bによる付勢力(弾性力)が生じてラチェット歯8bが前方側へ付勢され、これにより、互いに係合したラチェット歯8a,8bがクリック係合の状態とされる。
【0049】
なお、縦リブ5eを突条3eに回転方向に係合させるべく突条3e,3e間に進入させる際において、これらの回転方向位置が互いにずれて縦リブ5eの後端面5f及び突条3eの先端面3fが互いに当接された場合、後端面5f及び先端面3fが上述の傾斜面となっていることから、許容回転方向へのラチェット部材5の相対回転が促される一方、許容回転方向と反対側へのラチェット部材5の相対回転は規制される。よってこの場合、ラチェット部材5が許容回転方向に相対回転され、縦リブ5eが突条3eに対し許容回転方向に移動されながら突条3e,3e間に進入することになる。その結果、縦リブ5eを突条3eに係合させるためにラチェット部材5が許容回転方向と反対側へ無理に相対回転されるのを抑制することができ、ひいては、無理な相対回転のためにラチェット歯8a,8bやその他の回転係合部が破損してしまうのを抑制することが可能なる。
【0050】
図1に戻り、移動体6は、円筒状に構成され、その前端部より後側から後端部に亘る外周面に、螺合部9の他方を構成する雄螺子6bを備えている。また、移動体6の内周面において周方向に六等配の位置には、移動体6の回止め部の他方を構成するものとして、径方向内側に突出し且つ軸線方向に延びる突条6cが設けられている。この移動体6は、操作筒3の軸体3cに外挿されると共に螺子筒4に内挿され、その雄螺子6bが螺子筒4の雌螺子4eと螺合している。これと共に、移動体6は、その突条6cが軸体3cの突条3d、3d(図4参照)間に係合し、操作筒3に軸線方向移動可能にして回転方向に係合し装着されている。
【0051】
ピストン7は、塗布材Mの色調とは異なる色調(例えば、白色)を有するTPEE(ポリエステル系エラストマー)、TPU(ポリウレタン系エラストマー)、PP(ポリプロピレン)、HDPE(高密度ポリエチレン)、LLDPE(直鎖状低密度ポリエチレン)等で成形されている。ピストン7は、その後端面に凹設された凹部を有し、この凹部の内周面には、移動体6に対し軸線方向に所定長移動可能にして係合する環状突部7bが設けられている。このピストン7は、移動体6の前端部に外挿され、その環状突部7bが移動体6に軸線方向に係合することで、移動体6に対し軸線方向移動可能(所定の範囲内を移動可能)にして装着されている。
【0052】
図10は、充填部材を示す分解斜視図である。図1,10に示すように、充填部材1は、例えば、揮発性溶剤の耐透過性に優れたポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート(PCTA)、ポリプロピレン(PP)等の射出成形プラスチックで形成されており、外囲を構成する外側充填筒10と、この外側充填筒10の内側で充填領域1xを画設する内側充填筒11と、充填部材1の先端部を構成し塗布材Mを塗布するためのペン先部材12と、を含んで構成されている。
【0053】
図10に示すように、外側充填筒10は、着色材料(例えば、黒色)で形成されており、円筒状の本体部10aと、当該本体部10aの前側に連続するテーパ部10bと、を有している。本体部10aは、その外周面において軸線方向中央に、本体筒2の環状突部2bに軸線方向に係合する環状凹部10cを有している。また、本体部10aは、その外周面の環状凹部10cの前側に、本体筒2の前端面に当接する円環状の鍔部10dが設けられている。この本体部10aの外周面において後端部には、本体筒2のローレット2aに回転方向に係合するものとして、周方向に多数の凹凸状が並設されて当該凹凸状が軸線方向に所定長延びるローレット10eが設けられている。
【0054】
また、本体部10aは、充填時に塗布材Mの充填位置を確認すると共に内側充填筒11を係合するためのものとして、その後端部の周壁を断面矩形状で貫通する貫通孔から成る窓10fを有している。テーパ部10bは、先細りの錐台筒状を呈し、横断面外形が扁平円形状とされている。テーパ部10bの前端部には、断面扁平円形状の開口10g(図1参照)が形成されている。また、本体部10aの外周面における鍔部10dの前側には、環状に延在するOリング用溝10h(図1参照)が設けられ、このOリング用溝10hには、後述のキャップC1内の気密性及び嵌合安定性を高める環状弾性体として機能するOリングR2が嵌め込まれて装着されている。
【0055】
内側充填筒11は、透明材料で形成され、その内部の充填領域1xにおける塗布材Mが透けて見えるような光透過性を有している。この内側充填筒11は、円筒状の本体部11aと、当該本体部11aの前側に連続するテーパ部11bと、当該テーパ部11bの前側に段差を介して連続する前端部11dと、を有している。
【0056】
本体部11aは、組付けの際に充填領域1x内のエアを外部へ排出するためのエア排出孔11eを有している。エア排出孔11eは、本体部11aの後端部の周壁において互いに対向する位置に、断面円形状で貫通するよう一対形成されている。本体部11aの外周面におけるエア排出孔11eの後側には、外側充填筒10の窓10fに軸線方向に係合する凸部11fが設けられている。
【0057】
テーパ部11bは、横断面外形が扁平円形状とされた先細りの錐台筒状を呈している。前端部11dは、横断面外形が扁平円形状とされた筒状を呈している。図1に示すように、この内側充填筒11は、外側充填筒10に対し内挿されて装着されている。このとき、内側充填筒11の前端と外側充填筒10との間には隙間11hが形成されており、当該隙間11hは、後述の栓C2を係合するための係合溝を構成する。
【0058】
図11(a)は図1の塗布材押出容器におけるペン先部材を示す正面図、図11(b)は図1の塗布材押出容器におけるペン先部材を示す底面図である。図11に示すように、ペン先部材12は、塗布材Mを塗布するためのものであり、軟質材で形成されている。軟質材としては、例えば、加硫により加熱し成形する熱硬化性の一般的なゴムや、プラスチックの一種であって熱により可塑化させ金型に流し込んで成形する熱可塑性エラストマーを用いることができる。
【0059】
一般ゴムとしては、ニトリルゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、シリコンゴム(Si)が主として挙げられる。その中でも、特にニトリルゴムは、前述の揮発性溶剤に対する耐油性に優れている。また、熱可塑性エラストマーとしては、ポリエステル系エラストマー(TPEE)、オレフィン系エラストマー(TPO)、ウレタン系エラストマー(TPU)が主として挙げられる。中でも、ウレタン系エラストマーにおいては、ハードセグメントがポリウレタンでソフトセグメントがポリエステルタイプ又はポリエーテルタイプの2種類の何れを用いることができ、塗布材Mに対しては、ソフトセグメントがポリエーテルタイプのものが特に適している。
【0060】
また、ペン先部材12は、好ましいとして、JIS K 6253で規定されているタイプAデュロメータによる硬さが40〜80とされている。このペン先部材12としては、軟質ペン先等あらゆる塗布部を使用することができる。図示するように、ペン先部材12は、先端側に尖形のペン先13と、ペン先13の基端側に段差部14を介して連続する基端部16と、を含んでいる。
【0061】
ペン先13は、横断面外形が扁平円で且つ側方視において刃状に形成されている。ここでの横断面外形の扁平円は、図11(a)の上下方向が長軸方向とされていると共に、図11(b)の上下方向が短軸方向とされている。このペン先13では、その先端面により、使用者の肌等の塗布対象に当接される塗布面Sが構成されている。塗布面Sは、前側に膨み且つ前後に細長の扁平円状曲面とされ、その先端には、頂点Pが形成されている。
【0062】
また、ペン先13の両側面において塗布面Sの外縁から所定長基端側に亘る領域には、塗布面S側に先細りとなるよう傾斜するテーパ面17が形成されている。ペン先13の軸線位置には、軸線方向に沿って延在する断面円形の貫通孔18が形成されている。この貫通孔18における塗布面Sの開口部分は、塗布材Mを吐出するための開口部18aを形成する。
【0063】
基端部16は、その横断面外形がペン先13よりも大径とされた扁平円形状の筒状を呈している。この基端部16の外周面において前端から中央に亘る領域には、上記外側充填筒10のテーパ部10bに係合するものとして、先細りとなるよう傾斜するテーパ面19が形成されている。
【0064】
図1,10,11に示すように、このペン先部材12は、その基端部16が内側充填筒11の前端部11dに外挿され、内側充填筒11に対し回転方向に係合されて密着されている。この状態で、ペン先部材12は、そのペン先13が外側充填筒10の開口10gに内挿され、外側充填筒10に対し回転方向に係合されて装着されている。つまり、ペン先部材12を内側充填筒11に組み付け、これを外側充填筒10に組み付けることで、外側充填筒10、内側充填筒11及びペン先部材12が充填部材1として互いに装着されている。また、このペン先部材12は、その段差部14が外側充填筒10の前端部に軸線方向に係合されていると共に、その基端部16の後端面が内側充填筒11に軸線方向に係合され、これにより、外側充填筒10及び内側充填筒11により軸線方向に挟持され保持されている。
【0065】
そして、塗布材Mが充填された充填部材1にあっては、その後部側から本体筒2に内挿され、その外側充填筒10の環状凹部10cが本体筒2の環状突部2bに係合すると共に、その外側充填筒10のローレット10eが本体筒2のローレット2aに係合することで、本体筒2に対し軸線方向及び回転方向に係合されて装着され、当該本体筒2と一体化されている。これと共に、充填部材1は、その内側充填筒11の後端部に、ピストン7が気密に密着するようにして内挿されて装着されている。このとき、上述したように、内側充填筒11の後端部にエア排出孔11eが設けられていることから、充填領域1x内の塗布材Mとピストン7との間にエアが存在する場合でも、当該エアをエア排出孔11eを介して適度に逃がすことができ、充填領域1xの内圧が高まるのを抑制することができる。
【0066】
また、充填部材1のペン先部材12の開口部18aには、栓C2が嵌挿されて着脱可能に取り付けられ、これにより、充填領域1xが密閉(気密化)される。さらに、この充填部材1の外側充填筒10には、OリングR2を介してキャップC1がネジ嵌合され(着脱可能に取り付けられ)、これにより、キャップC1内が気密状態とされる。なお、充填部材1の外側充填筒10の内面に対し螺子筒4の鍔部4a(図6参照)が近接するように螺子筒4が内挿されており、これにより、雌螺子4eの内径が拡がることが阻止される。
【0067】
図12は充填部材への塗布材の充填を説明するための断面図、図13は塗布材充填後の塗布材押出容器の組付けを説明するための断面図である。図12に示すように、上述の充填部材1において充填領域1xに塗布材Mを充填する場合、まず、先端シール部品としての栓C2を開口部18aから内側充填筒11の先端部に至るまで挿入し、栓C2の係合突起を隙間11hに係合させる。これにより、栓C2と充填部材1とが密着状態又はクリアランスを持った状態にされて開口部18aが塞がれる。
【0068】
続いて、キャップC1を外側充填筒10にネジ嵌合させ、キャップC1内を気密状態とする。そして、ペン先部材12が下方に位置する立姿勢とし、内側充填筒11の後方からノズルNzを挿入し、80℃程度の温度に上昇させて溶解させた塗布材Mを充填領域1xに充填しながらノズルNzを後退させ、定量まで塗布材Mの充填を行う。続いて、所定の冷却時間放置して冷却させた後、図13に示すように、各部材2〜7が組み立てられた本体組立品50を組み付けて完成する。
【0069】
以上のように構成され図1に示す初期状態の塗布材押出容器100にあっては、使用者によりキャップC1及び栓C2が取り外され、本体筒2と操作筒3とが繰出し方向である一方向に相対回転されると、螺子筒4の雌螺子4e及び移動体6の雄螺子6bから成る螺合部9と操作筒3の突条3d及び移動体6の突条6cから成る回止め部との協働により、移動体6及びピストン7が前進し、充填部材1の充填領域1xに満たされた塗布材Mがペン先部材12の開口部18aから吐出される(図2参照)。
【0070】
また、このように本体筒2と操作筒3とが一方向に相対回転されたとき、ラチェット部材5のバネ部5bの弾性力でラチェット歯8bが軸線方向前側に付勢されることから、ラチェット機構8におけるラチェット歯8a,8bの係合及び係合解除(噛合及び噛合解除)が繰り返される。すなわち、ラチェット歯8aの側面8a1(図6参照)がラチェット歯8bの側面8b1(図8参照)に回転方向に係合し、ラチェット歯8aがラチェット歯8bの側面8b1を駆け上がるように摺動する。そして、ラチェット歯8aがラチェット歯8bを乗り越えて当該係合が解除された後、再び側面8a1が側面8b1に回転方向に係合する。その結果、ラチェット歯8a,8bの係合及び係合解除の度に、使用者にクリック感が付与される。ここでは、本体筒2と操作筒3とが一方向に相対的に1/8回転(45°)されたときにクリック感が1度生じるようになっている。
【0071】
他方、本体筒2と操作筒3とが繰戻し方向である他方向に相対回転しようとしても、ラチェット歯8aの側面8a2(図6参照)がラチェット歯8bの側面8b2(図8参照)に当接して回転方向に係止され、螺子筒4とラチェット部材5とが相対回転しないようにこれらの相対回転が規制される。その結果、本体筒2と操作筒3とが他方向に相対回転されないこととなる。
【0072】
ここで、本実施形態の塗布材押出容器100は、上述したようにカム機構20を備えている。そこで、このカム機構20について、以下に詳細に説明する。
【0073】
図14はカム機構を説明するための一部展開図、図15はカム機構の動作を説明するための概略図、図16〜19は、カム機構の動作を説明するための拡大図である。なお、図14は、0°から180°までのカム機構20の展開図を示し、カム機構20における突部20aとガイド部20bとの相対的移動を突部20aの移動として示している。
【0074】
図14に示すように、本実施形態のカム機構20は、一方向における本体筒2及び操作筒3の一定回転量の相対回転により、移動体6及びピストン7を一定ストローク前進させた後に一定ストローク後退させる。ここでは、本体筒2と操作筒3とが1/8回転相対回転される毎に(クリック感が1度生じる毎に)、移動体6及びピストン7を1.2mm進退させる。このカム機構20は、上記のように、突部20aと、隆起部20c及びガイド片20dで構成されたガイド部20bとを備えており、突部20aがガイド部20bにより相対的にガイドされ、図示するようなサインカーブに沿った相対軌跡に沿って突部20aが相対移動する。
【0075】
突部20aは、径方向視において多角形状を成している。ここでの突部20aは、径方向から見て、軸線方向を長手方向とし且つ軸線方向に沿った対辺を有する六角形状とされている。突部20aの前側は、ガイド部20bに相対的に摺動するものとして、横断面に対し傾斜する前側摺動面20a1を有している。つまり、突部20aの前側側面のうち周方向一方側(本体筒2と操作筒3とを一方向に相対回転したときにガイド部20bに当接する側)には、横断面に対し所定角度(例えば45°)で傾斜する前側摺動面20a1が設けられている。また、突部20aの後側は、ガイド部20bに相対的に摺動するものとして、横断面に対し傾斜する後側摺動面20a2を有している。つまり、突部20aの後側側面のうち周方向一方側には、横断面に対し所定角度(例えば45°)で傾斜する後側摺動面20a2が設けられている。
【0076】
ガイド部20bの前側を画成する隆起部20cの後面は、周方向に沿って鋸歯状を成し、径方向視において山型の凸凹が連続する形状とされている。この隆起部20cの後面が有するガイド面20eは、本体筒2と操作筒3とを一方向に相対回転したときに突部20aと当接する面であって、突部20aの前側摺動面20a1と等しい傾斜角度で横断面に対し傾斜している。
【0077】
ガイド部20bの後側を画成する複数のガイド片20dは、径方向視で矩形状を成している。ここでのガイド片20dは、径方向から見て、軸線方向に沿った対辺を有する平行四辺形状とされている。ガイド片20dの前面は、横断面に対し傾斜するガイド面20fを含んで構成されている。ガイド面20fは、本体筒2と操作筒3とを一方向に相対回転したときに突部20aと当接し摺動する面であって、突部20aの後側摺動面20a2と等しい傾斜角度で横断面に対し傾斜している。
【0078】
また、ガイド片20dは、周方向位置が隆起部20cのガイド面20eと重ならないように、換言すると、軸線方向視でガイド面20eと重ならないように並設されている。具体的には、ガイド片20dにおけるガイド面20fの周方向一方側の縁部と、隆起部20cにおけるガイド面20eの周方向他方側の縁部とは、周方向位置が同位置になるように設けられている。また、ガイド面20fの周方向他方側の縁部と、ガイド面20eの周方向一方側の縁部とは、周方向位置が同位置になるように設けられている。
【0079】
また、カム機構20は、クリック感の発生タイミングに応じて移動体6及びピストン7が進退するように構成されており、クリック機構としてのラチェット機構8に対し所定の位置関係を有している。ここでは、ラチェット機構8のラチェット歯8aの側面8a2は、ガイド面20eの周方向一方側の縁部に対し、周方向位置が同位置とされている(図6参照)。これにより、本体筒2と操作筒3とが一方向に相対回転される際、移動体6及びピストン7がカム機構20の後退限に位置したときにクリック感が生じることになる(詳しくは後述)。
【0080】
以上のように構成されたカム機構20は、本体筒2及び操作筒3が一定回転量相対回転される毎に、例えば以下に例示するようにして、相対回転の回転力を軸線方向に沿った直進力へ変換し、移動体6及びピストン7を一定ストローク進退させる。
【0081】
すなわち、図15(a)及び図16に示すように、螺子筒4がカム機構20の前進限に位置する状態において、本体筒2及び操作筒3が一方向に相対回転されると、まず、突部20aが周方向一方側へと相対移動し、図15(b)及び図17に示すように、突部20aの後側摺動面20a2がガイド片20dのガイド面20fと当接して摺動する。
【0082】
これにより、ガイド片20d(螺子筒4)は本体筒2に対し軸線方向に移動可能で回転方向に係合していることから、ガイド片20dが突部20aにより後方へと押しやられ、ガイド片20dが後退する。従って、螺子筒4が後退し、螺子筒4に螺合部9で螺合されている移動体6が後退し、ひいてはピストン7が後退することとなる。その結果、充填領域1xが拡張されて、充填領域1xの内圧が自動的に減圧される。
【0083】
引き続き一方向に相対回転されると、突部20aが周方向一方側へと引き続き相対移動し、螺子筒4、移動体6及びピストン7が引き続き後退し、そして、図15(c)及び図18に示すように、ガイド面20fの周方向一方側の縁部に接する位置まで突部20aが相対移動したとき、突部20aのガイド面20fとの摺動が終了し、螺子筒4、移動体6及びピストン7がカム機構20の後退限に達する。このとき(カム機構20の後退限に達したとき)、ラチェット歯8aがラチェット歯8bを乗り越え、ラチェット歯8a,8bが係合解除及び係合され、クリック感が発生する。
【0084】
また、引き続き一方向に相対回転されると、突部20aが周方向一方側へと相対移動し、図15(d)及び図19に示すように、突部20aの前側摺動面20a1が隆起部20cのガイド面20eと当接して摺動する。これにより、隆起部20cが突部20aにより前方へと押しやられ、隆起部20cが前進する。従って、螺子筒4が前進し、移動体6及びピストン7が前進する。その結果、充填領域1xが収縮され、充填領域1x内の塗布材Mが押し出されて開口部18aから吐出される。
【0085】
さらに引き続き一方向に相対回転されると、突部20aが周方向一方側へと引き続きさらに相対移動し、螺子筒4、移動体6及びピストン7が引き続き前進し、そして、図15(e)に示すように、ガイド面20eの周方向一方側の縁部に接する位置まで突部20aが相対移動したとき、突部20aのガイド面20eとの摺動が終了し、螺子筒4、移動体6及びピストン7がカム機構20の前進限に達する。以上により、移動体6及びピストン7が一定ストローク進退されることになる。
【0086】
以上、本実施形態の塗布材押出容器100によれば、本体筒2及び操作筒3を一方向に一定回転量相対回転し、移動体6及びピストン7をカム機構20によって一定ストローク進退させることで、塗布材Mを吐出させるだけでなく、充填領域1x内を自動的に減圧させることができる。このように充填領域1x内を自動的に減圧させることができるため、塗布材Mの漏出、つまり、例えば時間の経過によって塗布材Mが開口部18aから垂れてしまうことを、容易且つ確実に抑制することができる。また、圧力による塗布材Mの変化を抑制することが可能となる。
【0087】
特に、本実施形態では、上述したように、バネ等の弾性体の付勢力によらず、カム機構20が相対回転の回転力のみによって移動体6及びピストン7を進退させることができる。移動体6及びピストン7を進退させるのに必要な力に対し、弾性体の付勢力は不十分となる場合があるため、このような本実施形態によれば、塗布材Mの漏出を一層確実に抑制することができる。また、充填領域1xを画成するピストン7をカム機構20によって進退できるため、充填領域1xを直接的且つ好適に減圧させることができる。
【0088】
また、本実施形態では、上述したように、ガイド部20bが周方向に並ぶ複数のガイド片20dにより画成され、これら複数のガイド片20dの間には、突部20aが軸線方向に挿通可能な隙間Dが形成されている(図14参照)。よって、かかる隙間Dから、軸線方向に沿って突部20aをガイド部20bへ進入させることができ、突部20aをガイド部20bへ容易に組み付けることが可能となる。
【0089】
また、本実施形態では、上述したように、本体筒2及び操作筒3を相対回転させてクリック感が1度生じるたびに、移動体6及びピストン7が一定ストロークだけ進退する。そのため、クリック感により、相対回転の度合いや塗布材Mの吐出の度合いを使用者に感知させるだけでなく、移動体6及びピストン7の一定ストロークの進退をも感知させることができる。
【0090】
また、本実施形態では、上述したように、ラチェット機構8により、他方向における本体筒2及び操作筒3の相対回転を規制し、一方向における本体筒2及び操作筒3の相対回転のみを許容することが可能となる。
【0091】
また、本実施形態では、上述したように、移動体6が螺合部9を含み、この螺合部9と螺合する螺子筒4を進退させることにより、移動体6ひいてはピストン7を進退させている。この構成によれば、自動的に充填領域1x内を減圧させて塗布材Mの漏出を抑制するという上記作用効果を、好適に発揮できる。
【0092】
また、本実施形態では、上述したように、クリック感が生じたときにおいて、螺子筒4がカム機構20の後退限に位置され、充填領域1x内が最大限に減圧されている。よって、通常、使用者はクリック感を基準に相対回転を停止する(使用を終える)ことから、使用後の塗布材押出容器100は、その充填領域1x内が減圧された状態とされ易いものとなる。この点、使用後の保管時に開口部18aから塗布材Mが特に漏出し易い実情から、使用後の塗布材押出容器100の充填領域1x内を最大限に減圧可能な本実施形態は、有益なものといえる。
【0093】
なお、本実施形態のような塗布材Mは、一般的にジャータイプのガラス容器に充填し、化粧用筆で使用される。しかしこの場合、広口のジャータイプの容器では、例えば塗布材Mの揮発が早くて塗布材Mが変化してしまい易い、及び筆先が固まって使用し難い、という問題がある。この点、本実施形態は、開放部分が少なくバリア性の高い樹脂製素材によって塗布材Mを2重及び3重に密閉し保議できるため、揮発成分を多く含む塗布材Mを使用する場合に有利なものとなる。
【0094】
また、本実施形態では、内側充填筒11を透明にして外側充填筒10の一部(ピストン7が移動体6の前進限である図2に示す位置に在るときに当該ピストン7を視認可能な位置)に窓を形成することで、販売時や使用時にキャップC1を取り外すことにより、充填された塗布材Mの色調や有無を確認することが可能となる。例えば、ピストン7を白色で形成することにより、塗布材Mが最後まで押し出されてピストン7が外側充填筒10に形成された窓の位置まで到達すると、この窓から視認される色が塗布材Mの色から白色に変化するため、残量が無いことを認識可能であり、使い終わりの合図となる。
【0095】
また、本実施形態では、内側充填筒11の後端付近にエア排出孔11eを形成していることから、塗布材Mが充填された充填部材1を本体組立品50に組み付けるに際して、充填部材1内にピストン7を一定量内挿したとき、エアをエア排出孔11eから適度に排出させることができる。また、エア排出孔11eを超えるまで(エア排出孔11eが埋没するように)塗布材Mを充填部材1に充填して当該充填部材1を本体組立品50に組み付けると、ピストン7が内側充填筒11内に挿入されたときに余分な塗布材Mがエア排出孔11eから排出されるため、充填部材1内のエアを完全に除くことが可能となる。なお、エアが充填部材1内に含まれると、温度上昇によってエアが膨張して開口部(吐出口)18aから塗布材Mの漏れが自然に発生したり、塗布材Mの押出し時にエアがクッションとなってタイムラグが発生したりするため、好ましくない。
【0096】
ちなみに、本実施形態では、突部20aが六角形状とされているため、カム機構20における上述した摺動を実現する上で、突部20aの面積を最大化することができる。その結果、突部20aの強度や剛性が最大化されることとなる。
【0097】
また、カム機構20においては、バネ等が用いられず、上述した突部20a及びガイド部20bによって構成されているため、少ない総部品数で組付け容易化が可能となる。また、上述したように、塗布材Mを充填する際、栓C2が密着状態又はクリアランスを持った状態になるように開口部18aを塞ぐため、塗布材Mにエアが含み難いものとなる。
【0098】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲で変形し、又は他のものに適用したものであってもよい。
【0099】
例えば、上記実施形態では、カム機構20の突部20aを操作筒3(容器後部)と同期回転可能に設け、ガイド部20bを本体筒2(容器前部)と同期回転可能に設けたが、これとは逆に、突部20aを容器前部と同期回転可能に設け、ガイド部20bを容器前部と同期回転可能に設けてもよい。また、上記実施形態では、複数のガイド片20dによりガイド部20bの後側を画成したが、これとは逆に、複数のガイド片20dによりガイド部20bの前側を画成してもよい。
【0100】
また、上記実施形態では、カム機構20の突部20aを径方向視において六角形状とし、ガイド部20bの隆起部20cを周方向に沿って鋸歯状とし、ガイド片20dを径方向視において平行四辺形状としたが、これに限定されるものではない。例えば、図20,21に示すように、突部20a、隆起部20c及びガイド片20dは、平面及び曲面の少なくとも一方を有する形状としてもよい。また、ガイド面20e,20fについても同様に、平面及び曲面の少なくとも一方を有する形状としてもよい。
【0101】
具体的には、図20に示す例では、突部20aは、径方向から見て、軸線方向を長手方向とし且つ軸線方向に沿った対辺を有する長円形状とされている。図21に示す例では、突部20aは、径方向から見て円形状とされている。また、図20,21に示す例では、隆起部20cは、周方向に沿って波状とされ、曲面状のガイド面20eを有し、ガイド片20dは、径方向から見て、軸線方向に沿った対辺を有し且つ角部がR形状の平行四辺形状とされている。
【0102】
また、上記実施形態のカム機構20は、クリック感の発生タイミングに応じて移動体6及びピストン7が進退するように構成されているが、これに限定されるものでない。例えば、上記実施形態では、カム機構20により移動体6及びピストン7を一定ストローク進退させる際にクリック感を1度生じさせたが、一定ストローク進退させる際にクリック感を複数生じさせてもよい。さらには、カム機構20がクリック機構に対し独立して作動するものであってもよい。
【0103】
また、上記実施形態のカム機構20は、移動体6及びピストン7を一定量進退させるものであればよく、一定量前進させた後に一定量後退させてもよいし、一定量後退させた後に一定量前進させてもよい。
【0104】
また、上記実施形態では、押出機構として螺合部9による回転式のものを採用しているが、これに限定されず、例えばノック式等の機械的な押出機構や、スクイーズ式の押出機構を採用することも可能である。また、上記実施形態では、カム機構20として円筒カム機構を採用しているが、他のカム機構を採用することも勿論可能である。
【0105】
また、上述した雄螺子及び雌螺子は、螺子山や螺子溝だけでなく、間欠的に配される突起群、又は螺旋状且つ間欠的に配される突起群のように螺子山や螺子溝と同様な働きをするものであってもよい。また、上記実施形態では、バネ部5bがラチェット部材5と一体に設けられているが、このバネ部5bは、ラチェット部材5と別体に設けられていてもよい。なお、上記において、ラチェット機構8がクリック機構を兼用しており、ラチェット歯8a,8bが一対のクリック突起(クリック歯)に対応する。
【符号の説明】
【0106】
1…充填部材(容器前部,容器)、1x…充填領域、2…本体筒(容器前部,容器)、3…操作筒(容器後部,容器,第2筒部材)、4…螺子筒、6…移動体(移動部)、7…ピストン(移動部)、8…ラチェット機構(クリック機構)、9…螺合部(押出機構)、18a…開口部、20…カム機構、20a…突部、20b…ガイド部、20d…ガイド片(突起)、20e,20f…ガイド面、100…塗布材押出容器、D…隙間、M…塗布材。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器前部と、前記容器前部に相対回転可能な容器後部と、を有する容器を具備し、
前記容器前部と前記容器後部とが一方向に相対回転されると、前記容器内に配設された移動部が押出機構により前進又は後退し、前記容器内の充填領域に充填された塗布材を押し出して前記容器先端の開口部から吐出させる塗布材押出容器であって、
前記容器前部と前記容器後部とが前記一方向に一定回転量相対回転される毎に、前記移動部を一定量進退させるカム機構を備えたこと、を特徴とする塗布材押出容器。
【請求項2】
前記カム機構は、前記容器前部と前記容器後部との相対回転の回転力によって、前記移動部を一定量進退させること、を特徴とする請求項1記載の塗布材押出容器。
【請求項3】
前記移動部は、前記充填領域を画成するピストンを含んで構成され、
前記カム機構は、前記ピストンを一定量進退させること、を特徴とする請求項1又は2記載の塗布材押出容器。
【請求項4】
前記カム機構は、
前記容器前部又は前記容器後部の何れか一方に同期回転可能に設けられたガイド部と、
前記容器前部又は前記容器後部の何れか他方に同期回転可能に設けられ、前記ガイド部によりガイドされる突部と、を有し、
前記ガイド部は、軸線方向と直交する横断面に対し傾斜するガイド面を含み、
前記突部は、前記ガイド面に対し相対的に摺動すること、を特徴とする請求項1〜3の何れか一項記載の塗布材押出容器。
【請求項5】
前記カム機構は、円筒カム機構であって、
前記ガイド部は、第1筒部材の外周面に設けられ、
前記突部は、第2筒部材の内周面に設けられていること、を特徴とする請求項4記載の塗布材押出容器。
【請求項6】
前記ガイド部の前側又は後側は、周方向に並ぶ複数の突起により画成され、
複数の前記突起の間には、前記突部が軸線方向に挿通可能な隙間が形成されていること、を特徴とする請求項4又は5記載の塗布材押出容器。
【請求項7】
前記容器前部と前記容器後部とが前記一定回転量相対回転される毎にクリック感を生じさせるクリック機構を備えたことを特徴とする請求項1〜6の何れか一項記載の塗布材押出容器。
【請求項8】
前記容器内に設けられ、前記一方向における前記容器前部と前記容器後部との相対回転のみ許容するラチェット機構を備えたこと、を特徴とする請求項1〜7の何れか一項記載の塗布材押出容器。
【請求項9】
前記移動部は、前記押出機構を構成する螺合部を含んで構成されており、
前記螺合部と螺合する螺子筒をさらに備え、
前記カム機構は、前記螺子筒を一定量進退させることにより前記移動部を一定量進退させること、を特徴とする請求項1〜8の何れか一項記載の塗布材押出容器。
【請求項1】
容器前部と、前記容器前部に相対回転可能な容器後部と、を有する容器を具備し、
前記容器前部と前記容器後部とが一方向に相対回転されると、前記容器内に配設された移動部が押出機構により前進又は後退し、前記容器内の充填領域に充填された塗布材を押し出して前記容器先端の開口部から吐出させる塗布材押出容器であって、
前記容器前部と前記容器後部とが前記一方向に一定回転量相対回転される毎に、前記移動部を一定量進退させるカム機構を備えたこと、を特徴とする塗布材押出容器。
【請求項2】
前記カム機構は、前記容器前部と前記容器後部との相対回転の回転力によって、前記移動部を一定量進退させること、を特徴とする請求項1記載の塗布材押出容器。
【請求項3】
前記移動部は、前記充填領域を画成するピストンを含んで構成され、
前記カム機構は、前記ピストンを一定量進退させること、を特徴とする請求項1又は2記載の塗布材押出容器。
【請求項4】
前記カム機構は、
前記容器前部又は前記容器後部の何れか一方に同期回転可能に設けられたガイド部と、
前記容器前部又は前記容器後部の何れか他方に同期回転可能に設けられ、前記ガイド部によりガイドされる突部と、を有し、
前記ガイド部は、軸線方向と直交する横断面に対し傾斜するガイド面を含み、
前記突部は、前記ガイド面に対し相対的に摺動すること、を特徴とする請求項1〜3の何れか一項記載の塗布材押出容器。
【請求項5】
前記カム機構は、円筒カム機構であって、
前記ガイド部は、第1筒部材の外周面に設けられ、
前記突部は、第2筒部材の内周面に設けられていること、を特徴とする請求項4記載の塗布材押出容器。
【請求項6】
前記ガイド部の前側又は後側は、周方向に並ぶ複数の突起により画成され、
複数の前記突起の間には、前記突部が軸線方向に挿通可能な隙間が形成されていること、を特徴とする請求項4又は5記載の塗布材押出容器。
【請求項7】
前記容器前部と前記容器後部とが前記一定回転量相対回転される毎にクリック感を生じさせるクリック機構を備えたことを特徴とする請求項1〜6の何れか一項記載の塗布材押出容器。
【請求項8】
前記容器内に設けられ、前記一方向における前記容器前部と前記容器後部との相対回転のみ許容するラチェット機構を備えたこと、を特徴とする請求項1〜7の何れか一項記載の塗布材押出容器。
【請求項9】
前記移動部は、前記押出機構を構成する螺合部を含んで構成されており、
前記螺合部と螺合する螺子筒をさらに備え、
前記カム機構は、前記螺子筒を一定量進退させることにより前記移動部を一定量進退させること、を特徴とする請求項1〜8の何れか一項記載の塗布材押出容器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図20】
【図21】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図20】
【図21】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2013−102963(P2013−102963A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−248885(P2011−248885)
【出願日】平成23年11月14日(2011.11.14)
【出願人】(591147339)株式会社トキワ (141)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月14日(2011.11.14)
【出願人】(591147339)株式会社トキワ (141)
【Fターム(参考)】
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