説明

塗布物の製造装置および製造方法

【課題】簡易な構造でわずかな乾燥ムラの発生を抑制することができる塗布物の製造装置および製造方法を提供する。
【解決手段】搬送中の帯状の基材3に有機溶剤を含む塗布液を塗布した後、乾燥炉4を通過させて乾燥する装置であって、乾燥炉は塗布膜が搬入する搬入口を有する搬入側乾燥炉4aと、塗布膜を搬出する搬出口を有する搬出側乾燥炉4cと、両者の間の少なくとも1つの中間乾燥炉4bとを備えており、搬入側乾燥炉内外の差圧を−0.1Pa以上0.1Pa以下の範囲となるように制御し、中間乾燥炉内部および搬出側乾燥炉内部の圧力を乾燥炉外部の圧力より1Pa以下の範囲で低くなるように制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗布物の製造装置および製造方法に関する。特に、塗布液に有機溶剤を含み、膜厚精度として誤差1%以下の膜厚ムラが製品上欠陥として認識される光学フィルム等の製造において使用される塗布物の製造装置および製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年ウェットコーティング技術を利用して製造される光学フィルム製品には、膜厚精度として誤差1%以下を要求されるような製品が増えてきている。そのような光学フィルムの製造では、一般的に塗布液の溶媒として有機溶剤を使用することが多いが、有機溶剤は水に比べると蒸発速度が速く、塗布後の乾燥過程において精密に乾燥しなければ風紋のような乾燥ムラが生じてしまい、製品上の欠陥となってしまうことが知られている。
【0003】
特に、乾燥初期は塗膜中に有機溶剤が多く含まれており、塗膜の流動性が高く乾燥ムラが発生しやすいことから、これまでに、乾燥初期における乾燥ムラの発生の源になる外乱を取り除くための手法が提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1には乾燥装置に基材の搬入口とは別に前記搬入口より開口面積が大きい通風用の開口を設けることにより、乾燥装置内外の差圧によって生じる風の多くを前記通風口から通過させ、このことによって塗膜の乾燥ムラを低減することが出来るとしている。
【0005】
しかしながら、乾燥装置内外の差圧によって生じる風のすべてを前記通風口から通過させることはできないため、前記搬入口からも多少の風は進入する。その風の量を制御することができないので、特許文献1の乾燥装置では、わずかな乾燥ムラを抑制することはできない。
【0006】
また、特許文献2では乾燥装置に進入してくる基材の上下にローラを配し、上ローラと基材との間に微小な隙間を形成し、乾燥装置内外の差圧によって生じる風の多くは上側のローラの上に設けられた空気通路を通過するようにすれば、基材上の塗膜が気流によって乱されないとしている。
【0007】
しかしながら、前記空気通路を通過した後の風が乾燥装置内に入ることで乾燥装置内の気流が乱れ、乾燥装置に進入した直後の乾燥初期段階である基材上の塗膜に、不均一な乾燥風が当たる恐れがあり、乾燥ムラが発生してしまう可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−360961号公報
【特許文献2】特開2007−71463号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、簡易な構造でわずかな乾燥ムラの発生を抑制することができる塗布物の製造装置および製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の請求項1に係る発明は、搬送中の帯状の基材に有機溶剤を含む塗布液を塗布し塗布膜を形成する塗布装置と、前記搬送中の帯状基材を通過させることにより前記塗布膜を乾燥させる乾燥装置とを有する塗布物の製造装置において、
前記乾燥装置は、前記基材の前記塗布膜を形成した側に設置された天板と、前記基材の前記塗布膜を形成した側とは反対側に設置された底板と、前記基材の搬送方向に向かって右側に設置された右側板と左側に設置された左側板からなる側板とを有し、各板が隙間なく接合された筒型である乾燥炉を備え、
前記乾燥炉は、前記帯状基材を搬入する搬入口を有する搬入側乾燥炉と、前記帯状基材を搬出する搬出口を有する搬出側乾燥炉と、前記搬入側乾燥炉と前記搬出側乾燥炉との間に設置された少なくとも1つの中間乾燥炉と、これら搬入側乾燥炉、中間乾燥炉および搬出側乾燥炉の間を隙間なく接続する連結部とを備え、
且つ、前記搬入側乾燥炉内外の差圧が−0.1Pa以上0.1Pa以下の範囲、且つ、前記中間乾燥炉内部および前記搬出側乾燥炉内部の圧力が前記乾燥炉外部の圧力より1Pa以下の範囲で低くなるように前記乾燥炉内の圧力を制御する圧力制御手段を備えることを特徴とする塗布物の製造装置である。
【0011】
本発明の請求項2に係る発明は、前記圧力制御手段が、前記乾燥炉内への空気の供給量または前記乾燥炉内からの空気の排出量を制御する給気手段または排気手段、あるいはその両方であることを特徴とする請求項1記載の塗布物の製造装置である。
【0012】
本発明の請求項3に係る発明は、前記乾燥炉が、給気口及び給気手段と、排気口及び排気手段とを有しており、
前記給気口は、前記乾燥炉の天板、または右側板、または左側板のいずれかに配置されており、前記給気手段はこの給気口を介して乾燥炉内に空気を供給する機能を有しており、
前記排気口は、前記給気口と対向する前記乾燥炉の底板、または左側板、または右側板のいずれかに配置されており、前記排気手段はこの排気口を介して乾燥炉内から空気を排出する機能を有しており、
前記給気手段と前記排気手段のいずれか一方または両方を用いて乾燥炉内に発生させる空気の流れを、前記乾燥炉の天板側間隙と底板側間隙の両方に流すことを特徴とする請求項1または請求項2記載の塗布物の製造装置である。
【0013】
本発明の請求項4に係る発明は、前記天板と前記基材の間隔L11と、前記搬入口における開口の上辺と前記基材の間隔L1とがL1≦L11の関係を満たし、且つ、5mm≦L11≦100mmの範囲であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の塗布物の製造装置である。
【0014】
本発明の請求項5に係る発明は、前記基材の右側の端から前記乾燥炉の右側板までの間隔L12および、前記基材の左側の端から前記乾燥炉の左側板までの間隔L13が、L12=L13の関係を満たし、且つ、5mm≦L12(=L13)≦100mmの範囲であり、且つ、前記基材の右側の端から前記搬入口における開口の右辺までの間隔L2および、前記基材の左側の端から前記搬入口の左辺までの間隔L3が、L2=L3の関係を満たし、且つ、5mm≦L2(=L3)≦L12(=L13)の関係を満たすことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の塗布物の製造装置である。
【0015】
本発明の請求項6に係る発明は、前記搬入側乾燥炉および前記中間乾燥炉および前記搬出側乾燥炉の少なくとも1つの前記天板と前記基材の間に、前記基材を覆うように設置された多孔板を備えることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の塗布物の製造装置である。
【0016】
本発明の請求項7に係る発明は、前記多孔板が、開口部の長径が7mm以下であり、且つ、開口率が50%以上80%以下であるメッシュ板またはパンチング板であることを特徴とする請求項6に記載の塗布物の製造装置である。
【0017】
本発明の請求項8に係る発明は、前記搬入側乾燥炉の、基材搬送方向の長さL5が80cm≦L5の範囲にあることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の塗布物の製造装置である。
【0018】
本発明の請求項9に係る発明は、前記塗布装置の塗布部から前記搬入側乾燥炉の搬入口までの塗布膜搬送距離L6が、L6≦40cmの範囲にあることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の塗布物の製造装置である。
【0019】
本発明の請求項10に係る発明は、請求項1〜9のいずれか1項に記載の塗布物の製造装置を用いて、前記基材に前記塗布液を塗布し乾燥することを特徴とする塗布物の製造方法である。
【発明の効果】
【0020】
本発明の塗布物の製造装置および製造方法によれば、搬入側乾燥炉内外の差圧を−0.1Pa以上0.1Pa以下の範囲とし、且つ、中間乾燥炉内部および搬出側乾燥炉内部の圧力が乾燥炉外部の圧力より1Pa以下の範囲で低くなるように乾燥炉内の圧力を制御することで、わずかな乾燥ムラの発生を抑制することができ、乾燥ムラのない塗布物を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の塗布物の製造装置を側面から見た概略図
【図2】本発明における基材幅方向の乾燥炉の断面概略図
【図3】本発明における搬入側乾燥炉の搬入口を正面から見た概略図
【図4】本発明における乾燥炉の一部の斜視概略図
【図5】本発明における基材幅方向の乾燥炉の断面概略図(多孔板を設けた場合)
【図6】本発明における搬入側乾燥炉の搬入口を正面から見た概略図(多孔板を設けた場合)
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態(以下、本実施形態と記載する)について、図1〜6を参照しながら説明する。
【0023】
本発明は、乾燥炉の一部を構成する搬入側乾燥炉内外の差圧と、搬入側乾燥炉を除くその他の乾燥炉、つまり、中間乾燥炉内部および前記搬出側乾燥炉内部の圧力とを適正に制御する圧力制御手段に特徴を有するものである。
【0024】
そして、本実施例では、この特徴部分を構成する圧力制御手段が、乾燥炉内への空気の供給量を制御する給気手段または乾燥炉内からの空気の排出量を制御する排気手段、あるいはその両方の手段である場合について説明する。
【0025】
図1は、本発明の塗布物の製造装置の一部を側面から見た概略図である。塗布部2において帯状の基材3上に塗布膜7(図2参照)が塗布される。塗布膜7が形成された基材3は、乾燥炉4に搬送される。乾燥炉4は、搬入口5を有する搬入側乾燥炉4a、および搬出口6を有する搬出側乾燥炉4c、および中間乾燥炉4bから成り、隣接する乾燥炉間は連結部20で隙間なく接続されている。なお、図1において、中間乾燥炉4bはただ一つのみ図示されているが、これに限らず、複数の中間乾燥炉4bが直列に配列されているものであってもよい。塗布膜7が形成された帯状の基材3は、搬入口5から乾燥炉4内へ搬入され、搬出口6から乾燥炉4外へ搬出される。
【0026】
図2は、図1に示した乾燥炉4における基材3の幅方向の断面概略図である。なお、図2は搬入側乾燥炉4aおよび中間乾燥炉4bおよび搬出側乾燥炉4cのいずれにも共通の断面概略図である。乾燥炉4は、天板10と底板11と右側板12と左側板13とにより基材3を囲む筒型であり、側面に設置された給気口22と、給気口22と対向する位置に設置された排気口23と、給気口22を介して乾燥炉4内へ空気を供給する給気手段(図示せず)と、排気口23を介して乾燥炉4外へ空気を排出する排気手段(図示せず)で構成されている。給気口22および排気口23の形状は特に限定しないが、乾燥炉4内への給気および排気を十分に行える大きさであることが必要である。また、給排気の気流を制御する目的で、給気口22および排気口23を覆うように多孔板を設けてもよい。
【0027】
図3は搬入口5の基材搬送方向に向かって正面の概略図である。図2における天板10と基材3の間隔L11と、図3における搬入口5の開口の上辺と基材3の間隔L1がL1<L11の関係を満たし、且つ、5mm≦L11≦100mmである。また、基材3の右側の端と、前記乾燥炉の右側板12までの間隔L12および基材3の左側の端と左側板13までの間隔L13がそれぞれ等しく、且つ、5mm≦L12(=L13)≦100mmであり、基材3の右側の端から搬入口5における開口の右辺までの間隔L3および基材3の左側の端から搬入口5における開口の左辺までの間隔L3が5mm≦L2=L3≦L12=L13の関係を満たしている。
【0028】
図4は、乾燥炉4の斜視概略図であり、搬入側乾燥炉4aと中間乾燥炉4bの連結部20を示す。隣接する乾燥炉間は、天板10と底板11と右側版12と左側板13とにより基材3を囲む筒型であって、基材3を支持して搬送するガイドロール21を備えた連結部20で隙間なく接続されている。
【0029】
本発明の乾燥炉4では、搬入側乾燥炉4a内外の差圧が−0.1Pa以上0.1Pa以下の範囲内に維持されていることを第一の特徴とする。本発明の製造装置において、塗布膜7が形成された帯状の基材3は同伴風と共に乾燥炉4の搬入口5へ搬送される。ここで、乾燥炉4内外の差圧が大きい場合は搬入口5から出入りする風が発生し、これが前記同伴風と干渉し合って気流の乱れが生じ、塗膜面にムラを発生させる。しかしながら、本発明のように−0.1Pa以上0.1Pa以下の範囲に搬入側乾燥炉4a内外の差圧を制御すれば、差圧によって発生する風は殆どなく、気流の乱れは発生しない。
【0030】
次に、本発明の乾燥炉4は、中間乾燥炉4b内および搬出側乾燥炉4c内の圧力が乾燥炉4外の圧力より1Pa以下の範囲で低くなるように設定されていることを第二の特徴とする。そのため、中間乾燥炉4b内および搬出側乾燥炉4c内では搬入側乾燥炉4a内に比べて風速が大きくなっており、搬入側乾燥炉4aを通過した塗布膜7が形成された基材3は、中間乾燥炉4b内および搬出側乾燥炉4c内で乾燥が促進される。なお、本発明にあっては、中間乾燥炉4b内および搬出側乾燥炉4c内の圧力が乾燥炉4外の圧力よりも0.1Pa以上の範囲で低くなるように設定されることが好ましく、0.1Pa未満の場合には、中間乾燥炉4b内および搬出側乾燥炉4c内での乾燥の促進効果を十分に得られなくなる場合がある。
【0031】
なお、本発明の乾燥炉4では、搬入口5の開口の上辺と基材3の間隔L1がL1≦L11の関係を満たし、且つ、5mm≦L11≦100mmとすることで、搬入口5から、気流の乱れが生じるほどの空気の出入りがなくなり、乾燥ムラのない塗布物を製造することができる。L11が5mより小さいと、塗布膜7から蒸発する有機溶剤ガスが、塗布膜7と天板10との間に滞留しやすくなるため、乾燥が進まない恐れがあり好ましくない。また、100mmより大きいと搬入口5から入り込む空気の量が増えて乾燥炉4内の気流が乱れることや、乾燥炉4内の空気の給排気量を増加させる必要からエネルギーコストが増加するなどの問題が発生する可能性があり好ましくない。
【0032】
基材3の右側の端から右側板12までの間隔L12および、基材3の左側の端から左側板13までの間隔L13が、L12=L13の関係を満たし、且つ、5mm≦L12(=L13)≦100mmの範囲であるため、乾燥炉4内の気流は基材3の幅方向で均一になり、塗布膜7から蒸発する有機溶剤ガスを乾燥炉4内に停滞させることなく排気できる。さらに、基材3の右側の端から搬入口5の右辺までの間隔L2および基材3の左側の端から搬入口5の左辺までの間隔L3が5mm≦L2=L3≦L12=L13の関係を満たすことで、搬入口5からの空気の出入りを抑制している。L12(=L13)が5mmより小さいと、基材3と右側板12または左側板13が接触する恐れがあり、また、100mmより大きいと搬入口5から入り込む空気の量が増えて乾燥炉4内の気流が乱れることや、乾燥炉4内の空気の給排気量を増加させる必要からエネルギーコストが増加するなどの問題が発生する可能性があり好ましくない。
【0033】
本発明における乾燥炉4は、わずかな乾燥ムラの発生を抑制することが目的であるため、その効果が最も現れるのは乾燥初期である。塗布物の製造装置における乾燥炉のすべてが本発明の乾燥炉4によるものではなく、乾燥初期段階のみに本発明の乾燥炉4を導入することも可能である。その場合、前半部に第一乾燥装置として本発明の乾燥炉4を導入し、後半部に第二乾燥炉として公知の乾燥装置を導入してもよい。
【0034】
本発明の搬入側乾燥炉4aは、基材搬送方向の長さL5が80cm≦L5の範囲である。塗布物において乾燥ムラが最も発生しやすい乾燥初期段階に、風が殆ど発生しない空間である搬入側乾燥炉4aに一定時間滞在させることにより乾燥ムラの発生を抑制できる。L5が200cmを超えるような場合は、装置が大型化し、基材3の搬送が不安定になるなどの問題が起こる可能性があるため、200cm以下が好ましい。
【0035】
さらに、本発明では塗布部2から搬入側乾燥炉4aの搬入口5までの塗布膜搬送距離L6が、L6≦40cmの範囲である。ここで、塗布膜搬送距離L6とは、塗布部2と搬入口5との直線距離ではなく、搬送される基材3に沿った長さのことを指している。基材3の搬送速度は制約事項ではないが、20m/min以上100m/min以下程度の一般的な速度を有する塗布物の製造装置を用いている。塗布膜搬送距離L6が40cmより長いと、塗布膜7が、塗布物の製造装置の設置してある室内の空気に晒されることで自然に乾燥していく領域が無視できなくなり、自然乾燥による乾燥ムラが生じる可能性があり好ましくない。塗布部2から搬入側乾燥炉4aの搬入口5までの塗布膜搬送距離L6は、自然乾燥による乾燥ムラを考慮するとできるだけ短いほうが好ましい。ただし、装置構成を考慮すると下限は5cm以上である。
【0036】
本発明における乾燥炉4内の圧力制御手段としての給気手段と排気手段は、一般的にブロアが用いられるが、給気量および排気量を調節できるものであればブロアに限定されるものではない。なお、図4における搬入側乾燥炉4aおよび中間乾燥炉4bには、給気口22と、給気口22と対向する位置に設置された排気口23が2つずつ設置されているが、これは本発明の一実施形態を表したものであり、これに限定されるものではない。
【0037】
また、本発明における乾燥炉4内外の差圧は、塗布開始前の乾燥炉4内と乾燥炉4外の圧力差であり、差圧計(図示せず)によって測定する。差圧の測定結果から、差圧を所望の範囲内に収まるよう乾燥炉4内の給気量および排気量を調整する。この場合、給気量および排気量の調整は手動で行う方式の給気手段および排気手段でもよく、設定した通りに自動的に制御する方式の給気手段および排気手段でもよい。
【0038】
また、本発明における塗布部2は、グラビア、ワイヤーバー、ダイ等を用いることができるが、これらに限定されるものではない。
【0039】
また、本発明の乾燥炉4には、搬入側乾燥炉4aおよび中間乾燥炉4bおよび搬出側乾燥炉4cの少なくとも1つの天板10と基材3の間に、基材3を覆うように多孔板30が設置されていることが好ましい。
図5に、本発明における多孔板を設けた場合の基材幅方向の乾燥炉の断面概略図を示した。図6に本発明における多孔板を設けた場合の搬入側乾燥炉の搬入口を正面から見た概略図を示した。
【0040】
図5は、図2記載の本発明における基材幅方向の乾燥炉の断面概略図に多孔板30をさらに設けたものであり、図6は、図3記載の本発明における搬入側乾燥炉の搬入口を正面から見た概略図にさらに多孔板30を設けたものである。乾燥炉4内の気流は、多孔板30の開口部を通過することで制御された均一な流れとすることができ、乾燥ムラの無い塗布物とすることができる。特に、多孔板を設けることにより搬送速度を向上させた場合であっても乾燥ムラの発生を効率的に抑制することができる。
【0041】
多孔板30は長径が7mm以下の開口部を有し、開口率が50%以上80%以下のメッシュ板またはパンチング板であり、乾燥炉4内の給排気によって生じる気流は、多孔板30の開口部を通過することで制御された均一な流れとなる。基材3上に塗布された塗布膜7の表面に当たる風は、多孔板30を通過した均一な気流であるため、塗布膜7の表面を乱すことはなく、乾燥ムラの発生を抑制することができる。多孔板30の開口率が50%より低いと、乾燥炉4内の気流に対する抵抗が大きく、塗布膜7から蒸発した有機溶剤ガスを排気するために必要十分な気流が得られなくなる恐れがある。また、開口部の長径が7mmより大きい場合や開口率が80%より高い場合では、乾燥炉4内の気流に対する抵抗が小さく、気流を均一に制御することが難しくなるため、乾燥ムラが発生する恐れがある。気流を均一なものとするためには、多孔板の開口部の長径は小さければ小さいほど好ましい。しかしながら、開口率等を考慮すると多孔板の開口部の長径は2mm以上であることが好ましい。
【0042】
多孔板30を設置する位置は特に限定しないが、多孔板30と基材3の間隔が15mm以上であると、多孔板30で制御した気流が多孔板30と塗布膜7との間で乱れてしまう恐れがある。また、多孔板30と基材3の間隔が5mm未満だと、基材搬送時に塗布膜7の表面が多孔板30に接触する恐れがあるため、5mm以上15mm未満が望ましい。
【0043】
本発明の塗布物の製造装置および製造方法は、様々な製品に対して用いることができるが、特に有機溶剤を溶媒とする分散物の塗布に対して効果がある。その中でも近年需要が伸びている光学フィルムのようなこれまで以上に乾燥ムラに対する許容余地の少ない製品に効果的である。ここで、光学フィルムとは主に液晶ディスプレイやプラズマディスプレイなどの表示装置の最表面またはその内側に使用されるフィルムであり、ハードコートフィルム、反射防止フィルム、防眩性フィルム、光学補償フィルム、光拡散フィルム、帯電防止フィルムなどが挙げられる。
【0044】
本発明の塗布物は、帯状の基材に、塗布液を塗布、乾燥した塗布膜を備える。乾燥後の塗布膜の厚みとしては2μm以上20μm以下であることが好ましい。本発明の塗布物の製造装置及び製造方法にあっては乾燥後の厚みが2μm以上20μm以下の範囲の塗布膜を基材上に形成する際に好適に用いることができる。また、本発明の塗布物としては、基材上に、粒子を含む塗布液を塗布する際に好適に用いることができる。粒子を含む塗布液にあっては、粒子の凝集により乾燥ムラが目立ちやすく高いレベルで乾燥ムラが無いことが要求される。本発明の塗布物の製造方法および製造方法を用いることにより、高いレベルで乾燥ムラが無いことが要求される粒子を含む塗布液を用いた際にも、乾燥ムラを抑制することができる。本発明の製造装置および製造方法にあっては、特に基材上に、粒子を含んだ塗布液を塗布、乾燥した防眩層を備える防眩性フィルムに好適に用いることができる。
【0045】
本発明に用いられる帯状の基材3としては、用途によって様々なものを使用することができる。基材3を構成する成分としては、例えば、アセチルセルロース、トリアセチルセルロース等のセルロース系フィルム、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系フルイム、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系フィルム等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、基材3は、単層からなっていても複数層からなっていてもよい。なお、基材3の厚さは10〜100μmのものが用いられる。
【0046】
また、本発明の塗布物の製造装置および製造方法にあっては、ここで示した塗布部や乾燥炉以外の装置を備えていても良い。例えば、塗布液に紫外線硬化性樹脂や電子線硬化性樹脂をバインダーとして用いた場合には、それぞれ、紫外線照射装置、電子線照射装置が設けられる。また、熱硬化性樹脂をバインダーとして塗布液に用いた場合には、加熱装置を設けることもできる。
【実施例】
【0047】
本発明の一実施例について、図を参照しながら説明する。
【0048】
(実施例1)
平均粒子径3.0μmのシリカ粒子を4.2wt%、バインダーとしてペンタエリスリトールトリアクリレート(共栄社化学株式会社製)36.0wt%、光重合開始剤としてイルガキュア184(チバスペシャリティケミカルズ社製)1.8wt%、溶媒としてトルエン34.8wt%、ジオキソラン23.2wt%を混合させたものを塗布液として調製した。調製した塗布液の粘度は3.0mPasであった。
【0049】
次に、連続的に搬送される帯状の基材3として、幅1340mm、厚さ80μmのトリアセチルセルロース(TAC)基材を用い、塗布工程、乾燥工程、第二乾燥工程、紫外線照射工程により防眩性フィルムを作製した。なお、このときの搬送速度は、40m/minである。
【0050】
塗布工程においては、エクストルージョン方式のダイヘッドを備える塗布装置を用い、塗布液を塗布した。乾燥後の膜厚が5μmになるように、塗布膜7の厚さは15μmとした。
【0051】
次に、乾燥工程においては、中間乾燥炉4bを8個有し、各乾燥炉間にガイドロール21を備えた連結部20を有する全長10mの乾燥炉4を用いた。各乾燥炉の右側板12、左側板13にはそれぞれ給気口22、排気口23が1個ずつ設けられている。また、天板10と基材3との間隔L1が20mm、搬入口5の開口上辺と基材3との間隔L11が6mm、基材3の右側の端と右側板12との間隔L12および基材3の左側の端と左側板13との間隔L13が50mm、基材3の右側の端と搬入口5の開口右辺との間隔L2および基材3の左側の端と搬入口5の開口左辺との間隔L3が20mmである。搬入側乾燥炉4aの長さL5は100cmであり、塗布膜搬送距離L6は25cmである。
【0052】
乾燥炉4内の圧力制御手段としては、ブロアを用いた給気手段および排気手段とし、搬入側乾燥炉4a内外の差圧が−0.1Pa以上0.1Pa以下の範囲で、且つ、中間乾燥炉4b内および搬出側乾燥炉4b内の圧力が、乾燥炉4外部の圧力より0.6Pa低くなるようにブロアの回転数を手動で制御した。
【0053】
第二乾燥炉(図示せず)として、スリットノズルから熱風を噴出する、長さ5mの乾燥装置を用い、最後に、紫外線照射工程として、超高圧水銀ランプの紫外線照射装置(図示せず)を用いた。
【0054】
搬送速度が40m/minで、塗布膜搬送距離L6が25cmであるため、塗布部2で基材3に塗布された塗布膜7が搬入口5に到達するまでに要する時間は約0.4秒と短く、その間に塗布膜7が自然乾燥してしまい乾燥ムラが発生するということはなかった。
【0055】
搬入側乾燥炉4a内は殆ど風がないため、塗布膜7は急速に乾燥することなく中間乾燥炉4bに搬送される。中間乾燥炉4b内は乾燥炉4外部より圧力が0.6Pa低く、排気手段によって乾燥炉4内の空気が排気されているので、塗布膜7から蒸発した有機溶剤ガスは排気口23から排出され、乾燥が促進される。しかし、塗布膜7は中間乾燥炉4bおよび搬出側乾燥炉4cを通過するだけでは完全に乾燥しないため、第二乾燥炉の熱風によって乾燥を完了させた。
【0056】
以上により、基材上に塗布膜として防眩層を備える防眩性フィルム(塗布物)を得た。得られた防眩性フィルムを幅方向に切り出し、蛍光灯が点灯している部屋において防眩層表面に蛍光灯を幅方向に順に写りこませながら乾燥ムラの有無を判断した。(実施例1)においては、塗布膜7は乾燥初期段階を中間乾燥炉4bおよび搬出側乾燥炉4cにて、穏やか且つ精密に乾燥され、塗布膜7中の有機溶剤成分が減少し、流動性が低下した状態、すなわち乾燥ムラが発生しにくい状態になっている。この状態で第二乾燥炉に到達するため、塗布膜7に対して熱風による急速な乾燥を施しても乾燥ムラは発生していないことが確認された。
【0057】
(実施例2)
(実施例1)記載の塗布液と同一の塗布液を調製した。
【0058】
次に、連続的に搬送される帯状の基材3として、(実施例1)と同じ幅1340mm、厚さ80μmのトリアセチルセルロース(TAC)基材を用い、塗布工程、乾燥工程、第二乾燥工程、紫外線照射工程により防眩性フィルムを作製した。なお、このときの搬送速度は、50m/minである。
【0059】
塗布工程においては、エクストルージョン方式のダイヘッドを備える塗布装置を用い、塗布液を塗布した。乾燥後の膜厚が5μmになるように、塗布膜7の厚さは15μmとした。
【0060】
次に、乾燥工程においては、中間乾燥炉4bを8個有し、各乾燥炉間にガイドロール21を備えた連結部20を有する全長10mの乾燥炉4を用いた。各乾燥炉の右側板12、左側板13にはそれぞれ給気口22、排気口23が1個ずつ設けられている。給気口22および排気口23は、直径5mmの円形の孔が開口率60%で加工されたパンチング板(図示せず)で覆われている。また、天板10と基材3との間隔L11が20mm、搬入口5の開口上辺と基材3との間隔L1が6mm、基材3の右側の端と右側板12との間隔L12および基材3の左側の端と左側板13との間隔L13が50mm、基材3の右側の端と搬入口5の開口右辺との間隔L2および基材3の左側の端と搬入口5の開口左辺との間隔L3が20mmである。搬入側乾燥炉4aの長さL5は100cmであり、塗布膜搬送距離L6は25cmである。
【0061】
さらに、搬入側乾燥炉4aおよび中間乾燥炉4bおよび搬出側乾燥炉4cのすべての乾燥炉内の天板10と基材3の間に多孔板30を設置した。多孔板30の材質は2mm厚のステンレスであり、直径5mmの円形の孔が開口率60%で加工されている。多孔板30と基材3の間隔は10mmとした。
【0062】
乾燥炉4内の圧力制御手段としては、ブロアを用いた給気手段および排気手段とし、搬入側乾燥炉4a内外の差圧が−0.1Pa以上0.1Pa以下の範囲で、且つ、中間乾燥炉4b内および搬出側乾燥炉4b内の圧力が、乾燥炉4外部の圧力より0.6Pa低くなるようにブロアの回転数を手動で制御した。
【0063】
第二乾燥炉(図示せず)として、スリットノズルから熱風を噴出する、長さ5mの乾燥装置を用い、最後に、紫外線照射工程として、超高圧水銀ランプの紫外線照射装置(図示せず)を用いた。また、塗布膜搬送距離L6は25cmとした。
【0064】
搬入側乾燥炉4a内は殆ど風がないため、塗布膜7は急速に乾燥することなく中間乾燥炉4bに搬送される。中間乾燥炉4b内は乾燥炉4外部より圧力が0.6Pa低く、排気手段によって乾燥炉4内の空気が排気されているので、塗布膜7から蒸発した有機溶剤ガスは排気口23から排出され、乾燥が促進される。ここで、乾燥炉4内には多孔板30が設置されているため、給気および排気による気流は、多孔板30を通って整流される。このため、塗布膜7の表面で乱流は発生せず、塗布膜7の表面で乾燥ムラが発生することはない。
【0065】
塗布膜7は中間乾燥炉4bおよび搬出側乾燥炉4cを通過するだけでは完全に乾燥しなかったため、第二乾燥炉の熱風によって乾燥を完了させた。以上により、基材上に塗布膜として防眩層を備える防眩性フィルム(塗布物)を得た。得られた防眩性フィルムを幅方向に切り出し、蛍光灯が点灯している部屋において防眩層表面に蛍光灯を順に写りこませながら乾燥ムラの有無を判断した。(実施例2)においては、塗布膜7は乾燥初期段階を中間乾燥炉4bおよび搬出側乾燥炉4cにて、穏やか且つ精密に乾燥され、塗布膜7中の有機溶剤成分が減少し、流動性が低下した状態、すなわち乾燥ムラが発生しにくい状態になっている。この状態で第二乾燥炉に到達するため、塗布膜7に対して熱風による急速な乾燥を施しても乾燥ムラは発生していないことが確認された。また、(実施例2)においては、多孔板を用いたため(実施例1)よりも搬送速度を上げても乾燥ムラの無い防眩性フィルム(塗布物)を得ることができた。
【0066】
(比較例)
(実施例1)記載の塗布液と同一の塗布液を調製した。
【0067】
次に、連続的に搬送される帯状の基材3として、(実施例1)と同じ幅1340mm、厚さ80μmのトリアセチルセルロース(TAC)基材を用い、塗布工程、乾燥工程、第二乾燥工程、紫外線照射工程により防眩性フィルムを作製した。なお、このときの搬送速度は、40m/minである。
【0068】
塗布工程においては、エクストルージョン方式のダイヘッドを備える塗布装置を用い、塗布液を塗布した。乾燥後の膜厚が5μmになるように、塗布膜7の厚さは15μmとした。
【0069】
次に、乾燥工程においては、中間乾燥炉4bを8個有し、各乾燥炉間にガイドロール21を備えた連結部20を有する全長10mの乾燥炉4を用いた。各乾燥炉の右側板12、左側板13にはそれぞれ給気口22、排気口23が1個ずつ設けられている。給気口22および排気口23は、直径5mmの円形の孔が開口率60%で加工されたパンチング板(図示せず)で覆われている。また、天板10と基材3との間隔L11が20mm、搬入口5の開口上辺と基材3との間隔L1が6mm、基材3の右側の端と右側板12との間隔L12および基材3の左側の端と左側板13との間隔L13が50mm、基材3の右側の端と搬入口5の開口右辺との間隔L2および基材3の左側の端と搬入口5の開口左辺との間隔L3が20mmである。搬入側乾燥炉4aの長さL5は100cmであり、塗布膜搬送距離L6は25cmである。なお、(比較例1)においては、乾燥炉4内の圧力制御手段を動作させなかった。
【0070】
第二乾燥炉(図示せず)として、スリットノズルから熱風を噴出する、長さ5mの乾燥装置を用い、最後に、紫外線照射工程として、超高圧水銀ランプの紫外線照射装置(図示せず)を用いた。また、塗布膜搬送距離L6は25cmとした。
【0071】
塗布膜7は中間乾燥炉4bおよび搬出側乾燥炉4cを通過するだけでは完全に乾燥しなかったため、第二乾燥炉の熱風によって乾燥を完了させた。以上により、基材上に塗布膜として防眩層を備える防眩性フィルム(塗布物)を得た。得られた防眩性フィルムを幅方向に切り出し、蛍光灯が点灯している部屋において防眩層表面に蛍光灯を順に写りこませながら乾燥ムラの有無を判断した。(比較例1)の防眩性フィルムにおいては、幅方向において蛍光灯の映りこみ具合が異なり、基材に映し出される蛍光灯の反射像が幅方向で異なる様子が確認された。(比較例1)の防眩性フィルムでは基材の搬送方向(幅方向と垂直方向)に伸びているスジ状の乾燥ムラが確認された。
【0072】
したがって、(実施例1)、(実施例2)における塗布物の製造装置および製造方法では、わずかな乾燥ムラを発生させることなく、防眩性フィルムを作製することができた。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明の塗布物の製造装置および製造方法は、有機溶剤を溶媒とする分散物の塗布に対して広く利用でき、その中でも近年需要が伸びている光学フィルムのような、これまで以上に乾燥ムラに対する許容余地の小さい製品に効果的である。
【符号の説明】
【0074】
1 塗布物の製造装置
2 塗布部
3 基材
4 乾燥炉
4a 搬入側乾燥炉
4b 中間乾燥炉
4c 搬出側乾燥炉
5 搬入口
6 搬出口
7 塗布膜
10 天板
11 底板
12 右側板
13 左側板
20 連結部
21 ガイドロール
22 給気口
23 排気口
30 多孔板
L1 基材と搬入口の開口上辺の間隔天板と基材の間隔
L11 基材と天板の間隔
L2 基材端と搬入口の開口右辺の間隔
L3 基材端と搬入口の開口左辺の間隔
L12 基材端と右側板の間隔
L13 基材端と左側板の間隔
L5 搬入側乾燥炉長
L6 塗布膜搬送距離

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送中の帯状の基材に有機溶剤を含む塗布液を塗布し塗布膜を形成する塗布装置と、前記搬送中の帯状基材を通過させることにより前記塗布膜を乾燥させる乾燥装置とを有する塗布物の製造装置において、
前記乾燥装置は、前記基材の前記塗布膜を形成した側に設置された天板と、前記基材の前記塗布膜を形成した側とは反対側に設置された底板と、前記基材の搬送方向に向かって右側に設置された右側板と左側に設置された左側板からなる側板とを有し、各板が隙間なく接合された筒状である乾燥炉を備え、
前記乾燥炉は、前記帯状基材を搬入する搬入口を有する搬入側乾燥炉と、前記帯状基材を搬出する搬出口を有する搬出側乾燥炉と、前記搬入側乾燥炉と前記搬出側乾燥炉との間に設置された少なくとも1つの中間乾燥炉と、これら搬入側乾燥炉、中間乾燥炉および搬出側乾燥炉の間を隙間なく接続する連結部とを備え、かつ、
前記搬入側乾燥炉内外の差圧が−0.1Pa以上0.1Pa以下の範囲、且つ、前記中間乾燥炉内部および前記搬出側乾燥炉内部の圧力が前記乾燥炉外部の圧力より1Pa以下の範囲で低くなるように前記乾燥炉内の圧力を制御する圧力制御手段を備えることを特徴とする塗布物の製造装置。
【請求項2】
前記圧力制御手段が、前記乾燥炉内への空気の供給量または前記乾燥炉内からの空気の排出量を制御する給気手段または排気手段、あるいはその両方であることを特徴とする請求項1記載の塗布物の製造装置。
【請求項3】
前記乾燥炉が、給気口及び給気手段と、排気口及び排気手段とを有しており、
前記給気口は、前記乾燥炉の天板、または右側板、または左側板のいずれかに配置されており、前記給気手段はこの給気口を介して乾燥炉内に空気を供給する機能を有しており、
前記排気口は、前記給気口と対向する前記乾燥炉の底板、または左側板、または右側板のいずれかに配置されており、前記排気手段はこの排気口を介して乾燥炉内から空気を排出する機能を有しており、
前記給気手段と前記排気手段のいずれか一方または両方を用いて乾燥炉内に発生させる空気の流れを、前記乾燥炉の天板側間隙と底板側間隙の両方に流すことを特徴とする請求項1または請求項2記載の塗布物の製造装置。
【請求項4】
前記天板と前記基材の間隔L11と、前記搬入口における開口の上辺と前記基材の間隔L1とがL1≦L11の関係を満たし、且つ、5mm≦L11≦100mmの範囲であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の塗布物の製造装置。
【請求項5】
前記基材の右側の端から前記乾燥炉の右側板までの間隔L12および、前記基材の左側の端から前記乾燥炉の左側板までの間隔L13が、L12=L13の関係を満たし、且つ、5mm≦L12(=L13)≦100mmの範囲であり、且つ、前記基材の右側の端から前記搬入口における開口の右辺までの間隔L2および、前記基材の左側の端から前記搬入口の左辺までの間隔L3が、L2=L3の関係を満たし、且つ、5mm≦L2(=L3)≦L12(=L13)の関係を満たすことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の塗布物の製造装置。
【請求項6】
前記搬入側乾燥炉および前記中間乾燥炉および前記搬出側乾燥炉の少なくとも1つの前記天板と前記基材の間に、前記基材を覆うように設置された多孔板を備えることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の塗布物の製造装置。
【請求項7】
前記多孔板が、開口部の長径が7mm以下であり、且つ、開口率が50%以上80%以下であるメッシュ板またはパンチング板であることを特徴とする請求項6に記載の塗布物の製造装置。
【請求項8】
前記搬入側乾燥炉の、基材搬送方向の長さL5が、80cm≦L5の範囲にあることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の塗布物の製造装置。
【請求項9】
前記塗布装置の塗布部から前記搬入側乾燥炉の搬入口までの塗布膜搬送距離L6が、L6≦40cmの範囲にあることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の塗布物の製造装置。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の塗布物の製造装置を用いて、前記基材に前記塗布液を塗布し乾燥することを特徴とする塗布物の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−68404(P2013−68404A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−35020(P2012−35020)
【出願日】平成24年2月21日(2012.2.21)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】