説明

塗布組成物、光学フィルム、反射防止フィルム、偏光板およびそれらを用いたディスプレイ装置

【課題】 乾燥ムラや風ムラの低減と、段ムラを悪化させないことを両立できるフルオロ脂肪族基含有重合体を含む塗布組成物、面状均一性が高く十分な反射防止性能を有する反射防止フィルム、そのような反射防止膜を用いた偏光板やディスプレイ装置を提供する。
【解決手段】 フルオロ脂肪族基含有モノマーに相当する繰り返し単位A及び、少なくとも1種のモノマーに相当する繰り返し単位Bを含むフルオロ脂肪族基含有共重合体を含有する塗布組成物において、上記Bを形成する1種以上のモノマーのI/O値がそれぞれ1.0以下である塗布組成物、この塗布組成物から形成される反射防止フィルム、及びこの反射防止フィルムを用いた偏光板、ディスプレイ装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗布組成物、光学フィルム、反射防止フィルム、偏光板およびそれらを用いたディスプレイ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、各種コーティング法を用いた材料の開発が進んでおり、特に数μm〜数百nmレベルの薄層塗布技術は、光学フィルム、印刷、フォトリソグラフィーなどで必要であり、要求される塗布精度も薄膜化、基材の大型化、塗布の高速化などに伴い高くなってきている。特に光学フィルムの製造においては、膜厚の制御が光学性能を左右する非常に重要なポイントであり、精度を高く保ちつつ塗布速度の高速化を実現できる技術への要求は高くなってきている。
【0003】
反射防止膜は、一般に、陰極管表示装置(CRT)、プラズマディスプレイ(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)や液晶表示装置(LCD)のようなディスプレイ装置において、外光の反射によるコントラスト低下や像の映り込みを防止するために、光学干渉の原理を用いて反射率を低減するようディスプレイの最表面に配置される。
【0004】
近年これら表示装置、特に従来のCRTに比べ奥行きが薄く、表示領域の大きな表示装置の普及に従って、より高精細化、より高品質な表示装置が要求されるようになっている。それに伴い反射防止膜の面状均一性が強く求められている。ここで言う面状均一性とは、反射防止性能に代表される光学性能のバラツキ、および耐擦傷性能などの膜物性のバラツキが全表示部内でないことを言う。
反射防止膜の製造方法としては、特許文献1にCVDによる酸化硅素膜を用いたガスバリア性、防眩性、反射防止性に優れる防眩性反射防止膜が記載されているような無機蒸着法が挙げられるが、大量生産性の観点からはオールウェット塗布による反射防止膜の製造方法が有利である。
【0005】
しかしながら、溶剤を用いたオールウェット塗布は生産性の観点からは非常に有利である反面、塗布直後の溶剤乾燥を一定に保つことが非常に困難で、面状ムラが生じやすい。ここで言う面状ムラとは溶剤乾燥速度差に起因する乾燥ムラや乾燥風で引き起こされる厚みムラである風ムラのことである。オールウェット塗布においてより生産性を向上させるために、塗布速度を高くすることは必須の技術である。だが単純に、塗布速度を高くすると相対的に乾燥風の風速も高くなり、また支持体の高速移動に伴う同伴風の影響も受け、風ムラは悪化することになる。こうして従来では光学性能、膜物性のバラツキを抑えた反射防止膜を得るためには、塗布速度をあまり高くすることはできなかった。
【0006】
塗布時のムラを低減させるためにはレベリング性を向上させることが有効であることが知られている。レベリング性を向上させる一つの手段として、塗布組成物中に界面活性剤を添加する方法が提案されている。塗布物に界面活性剤を添加すると表面張力が低下して被塗布物への濡れを改良し、塗膜形成過程での表面張力変化を小さく、または低下させて熱対流を防止して膜の均一性を改良するという機構に基づいている(非特許文献1参照、コーティング用添加剤の最新技術、桐生春雄監修、シーエムシー、2001年)。目的とする塗布組成物中の溶剤、樹脂、各種添加剤との相溶性などにより最適な界面活性種は異なるが、溶剤を用いて塗布する場合には溶剤に可溶で表面張力低下能力が最も高いフッ素系界面活性剤を用いるのが有効である。一般に、フッ素系界面活性剤は表面張力低下機能
を実現するためのパーフルオロアルキル(Rf)基と、例えば該活性剤を添加剤として使用したときに、コーティング用、成形材料用等の各種組成物に対する親和性に寄与する親媒性基とを同一分子内に有する化合物からなるものである。このような化合物は、パーフルオロアルキル基を有するモノマーと親媒性基を有するモノマーとを共重合させて得られる。
パーフルオロアルキル基を有するモノマーと共重合される、親媒性基を有するモノマーの代表的な例としては、ポリ(オキシアルキレン)アクリレート、ポリ(オキシアルキレン)メタクリレート等が挙げられる。
【0007】
しかしながら、従来のフッ素系界面活性剤を用いると乾燥ムラや風ムラは良化するものの、透明支持体の進行方向と垂直に周期的な膜厚ムラ(以下、段ムラと呼ぶ)が発生し、塗布された反射防止フィルムの品位を低下させる問題があった。
【特許文献1】特開平7−333404号公報
【非特許文献1】コーティング用添加剤の最新技術、桐生春雄監修、シーエムシー、2001年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、
(1)乾燥ムラや風ムラの低減と、段ムラを悪化させないことを両立できるフルオロ脂肪族基含有重合体を含む塗布組成物を提供すること、
(2)面状均一性が高く、十分な反射防止性能を達成した反射防止膜を提供すること、及び
(3)そのような反射防止膜を用いた偏光板やディスプレイ装置を提供すること、
にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、フッ素系ポリマー型界面活性剤の構成成分である含フッ素モノマーにおけるフルオロアルキル基の構造やフッ素系ポリマー型界面活性剤における含フッ素モノマー及び非含フッ素モノマーの組成について精査した結果、従来のフッ素系ポリマー型界面活性剤に通常含まれているポリ(オキシアルキレン)アクリレート及び/又はポリ(オキシアルキレン)メタクリレートを含まず、I/O値が1.0以下であるモノマーを含むフッ素系ポリマー型界面活性剤を用いることにより、塗布時に生じる乾燥ムラや風ムラを低減し、かつ段ムラも悪化させない組成物を得ることが出来ることを見出した。
【0010】
すなわち、本発明の目的は以下の構成によって達成された。
1. フルオロ脂肪族基含有モノマーに相当する繰り返し単位A、及び少なくとも1種のモノマーに相当する繰り返し単位Bを含むフルオロ脂肪族基含有共重合体を含有する塗布組成物であって、
上記単位Bを形成する1種以上のモノマーのI/O値がそれぞれ1.0以下であることを特徴とする塗布組成物。
2. 下記(i)のモノマーに相当する繰り返し単位及び下記(ii)のモノマーに相当する繰り返し単位を含むフルオロ脂肪族基含有共重合体を含有することを特徴とする前記1に記載の塗布組成物。
(i)下記一般式[1]で表されるフルオロ脂肪族基含有モノマー
(ii)下記一般式[2]で表されるモノマー
一般式[1]
【0011】
【化1】

【0012】
(一般式[1]においてR1は水素原子またはメチル基を表し、Xは酸素原子、イオウ原子または−N(R2)−を表し、mは1以上6以下の整数、nは1〜3の整数を表す。R2は水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表す。)
一般式[2]
【0013】
【化2】

【0014】
(一般式[2]において、R3は水素原子またはメチル基を表し、Yは2価の連結基を表し、R4は炭素数1以上20以下の直鎖、分岐または環状のアルキル基を表す。)
3. 下記(i)のモノマーに相当する繰り返し単位及び下記(ii)のモノマーに相当する繰り返し単位を含むフルオロ脂肪族基含有共重合体を含有することを特徴とする前記1に記載の塗布組成物。
(i)下記一般式[3]で表されるフルオロ脂肪族基含有モノマー
(ii)下記一般式[2]で表されるモノマー
一般式[3]
【0015】
【化3】

【0016】
(一般式[3]において、R0は水素原子、ハロゲン原子またはメチル基を表し、Lは2価の連結基を表し、nは1以上18以下の整数を表す。)
一般式[2]
【0017】
【化4】

【0018】
(一般式[2]において、R3は水素原子またはメチル基を表し、Yは2価の連結基を表し、R4は炭素数1以上20以下の直鎖、分岐または環状のアルキル基を表す。)
4. 下記(i)のモノマーに相当する繰り返し単位及び、下記(ii)のモノマーに相当する繰り返し単位を含むフルオロ脂肪族基含有共重合体を含有することを特徴とする前記1に記載の塗布組成物。
(i)下記一般式[4]で表されるフルオロ脂肪族基含有モノマー
(ii)下記一般式[2]で表されるモノマー
一般式[4]
【0019】
【化5】

【0020】
(一般式[4]において、R1は水素原子、ハロゲン原子またはメチル基を表し、Xは酸素原子、硫黄原子または−N(R2)−を表し、mは1以上6以下の整数、nは1以上18以下の整数を表す。ここで、R2は水素原子または置換基を有しても良い炭素数1〜8のアルキル基を表す。)
一般式[2]
【0021】
【化6】

【0022】
(一般式[2]において、R3は水素原子またはメチル基を表し、Yは2価の連結基を表し、R4は炭素数1以上20以下の直鎖、分岐または環状のアルキル基を表す。)
5. 下記(i)のモノマーに相当する繰り返し単位及び、下記(ii)のモノマーに相当する繰り返し単位を含むフルオロ脂肪族基含有共重合体を含有することを特徴とする前記1に記載の塗布組成物。
(i)下記一般式[5]で表されるフルオロ脂肪族基含有モノマー
(ii)下記一般式[2]で表されるモノマー
一般式[5]
【0023】
【化7】

【0024】
(一般式[5]において、R2は水素原子、ハロゲン原子またはメチル基を表し、L2は2価の連結基を表し、nは1以上6以下の整数を表す。)
一般式[2]
【0025】
【化8】

【0026】
(一般式[2]において、R3は水素原子またはメチル基を表し、Yは2価の連結基を表し、R4は炭素数1以上20以下の直鎖、分岐または環状のアルキル基を表す。)
6. 透明支持体上に、前記1から5のいずれかに記載の塗布組成物から形成された層を少なくとも一層を有し、該層が25m/min以上の塗布速度で塗布することにより形成されたことを特徴とする光学フィルム。
7. 前記6に記載の光学フィルムが反射防止性能を持っていることを特徴とする反射防止フィルム。
8. 偏光膜の少なくとも1方の側に前記7に記載の反射防止フィルムが用いられている事を特徴とする偏光板。
9. 偏光膜の一方の保護フィルムとして前記7に記載の反射防止フィルムが用いられ、該偏光膜の他方の保護フィルムとして光学異方性のある光学補償フィルムが用いられていることを特徴とする偏光板。
10. 前記7に記載の反射防止フィルム、または、前記8または9に記載の偏光板が配置されていることを特徴とする画像表示装置。
【発明の効果】
【0027】
本発明の塗布組成物は特定構造のフルオロ脂肪族基含有重合体を含むので、乾燥ムラや風ムラの低減と、段ムラを悪化させないことを両立させて、膜(フィルム)を形成することができる。
本発明の反射防止フィルムは、このような塗布組成物から形成されるので、面状均一性が高く、十分な反射防止性能を有する。
このような反射防止膜を用いた偏光板やディスプレイ装置は、表示面内の均一性が確保され、背景の映りこみが極めて少なく、反射光の色味が著しく低減されており、表示品位が高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明に係る、塗布組成物、反射防止フィルム、反射防止フィルムの製造方法、該反射防止フィルムを用いた偏光板、及びこれらを用いた画像表示装置の好ましい実施の形態について詳説する。なお、本明細書において、「(メタ)アクリロイル」との記載は、「アクリロイル及びメタクリロイルの少なくともいずれか」の意味を表す。「(メタ)アクリレート」、「(メタ)アクリル酸」等も同様である。また、数値が物性値、特性値等を表す場合に、「(数値1)〜(数値2)」という記載は「(数値1)以上(数値2)以下」の意味を表す。さらに、本発明でいう「支持体上」には、該支持体等の直接の表面をいう場合と、該支持体等の上に何らかの層(膜)を設けた表面をいう場合の両方を含む趣旨である。
【0029】
[塗布組成物]
本発明の塗布組成物は、フルオロ脂肪族基を有する共重合体(「フッ素系ポリマー」と略記することもある)を含有し、該フッ素系ポリマーは、フルオロ脂肪族基含有モノマーに相当する繰り返し単位A、及び少なくとも1種のモノマーに相当する繰り返し単位Bを
含み、該単位Bを形成する1種以上のモノマーのI/O値がそれぞれ1.0以下であることを特徴とする。
【0030】
フッ素系ポリマーは、例えば、一般式[1]、一般式[3]、一般式[4]または一般式[5]で表されるモノマーの少なくとも一種と、共重合可能な他の種類のモノマーとの共重合体でもよい。すなわち、一般式[1]、一般式[3]、一般式[4]または一般式[5]で表されるモノマーと、一般式[2]で示されるような共重合可能な他の種類のモノマーとの共重合体であっても良い。このような共重合可能な他の種類のモノマーは、繰り返し単位Bを形成することができるモノマーであり、フッ素を含まず、そのI/O値が1.0以下であればよい。
本発明で述べる上記I/O値は、藤田穆“有機化合物概念図と其の応用”化学実験学、第二部 基本操作編、第3巻、p.225〜257(1941)河出書房、甲田善生“有機概念図”三共出版(1984)、”Formulation Design with Organic Conception Diagram”(Nihon Emulsion CO.,LTD.、1998年11月発行、2001年3月26日改定)及び日本エマルジョン株式会社”有機概念図による処方設計(Formulation Design with Organic Conception Diagram)”、[平成17年8月15日検索]、インターネット<URL:http://www.nihon-emulsion.co.jp/pdf/ocdbook_e.pdf>等に記載の方法によって求めた「無機性(I)/有機性(O)」値である。これらのうち、甲田善生“有機概念図”に記載の方法が好ましい。I/O値は有機化合物のいろいろな物理化学的な性状を予測するための1手段として用いられる。有機性は炭素数の大小の比較で、無機性は炭素同数の炭化水素の沸点の比較で大小が得られる。例えば、(−CH2−)(実際はC)一個は有機性値20と決め、無機性は水酸基(−OH)が沸点へ及ぼす影響力から、その無機性値を100と決めたものである。この(−OH)の無機性値100を基準にして他の置換基(無機性基)の値を求めたものが“無機性基表”として示されている。この無機性基表に従い、各分子に対して得られた無機性値(I)と有機性値(O)の比I/Oを“I/O値”と定義している。I/O値が大きくなるにつれて親水性が増し、I/O値が小さくなるにつれて疎水性が強くなることを示している。
【0031】
本発明で使用される、繰り返し単位Bを形成することができるモノマーのI/O値は1.0以下であり、0.8以下であることが好ましい。
該モノマーのI/O値が1.0以上であるフッ素系ポリマーを含む塗布組成物を塗布すると、風ムラや乾燥ムラに対しては良好な面状を示すが、該フッ素系ポリマーを含まない塗布組成物を塗布した場合に比べて段ムラが顕著に悪化する。このようにして得られた反射防止フィルムには周期的な色味ムラが観察されるため、画像表示装置表面に設置される反射防止フィルムとして好ましくない。一方、該モノマーのI/O値が1.0以下であるフッ素系ポリマーを含む塗布組成物を塗布すると、該フッ素系ポリマーを含まない塗布組成物を塗布した場合に比べて段ムラが悪化する事はなく、風ムラや乾燥ムラは良化するため、面内の均一性に優れた反射防止フィルムを得ることができる。このようにして得られた反射防止フィルムを画像表示装置に設置すると、膜厚ムラが視認されず高品位な画像表示装置が得られる。
[フッ素系ポリマー]
【0032】
以下、本発明に好ましく用いることができるフッ素系ポリマーについて詳細に説明する。
【0033】
本発明のフッ素系ポリマーは、下記一般式[1]、一般式[3]、一般式[4]または一般式[5]で表されるフルオロ脂肪族基含有モノマーに相当する繰り返し単位Aの少なくとも1種と、フルオロ脂肪族基を含有しない下記一般式[2]で表されるモノマーに相当する繰り返し単位Bの少なくとも1種とを含むフルオロ脂肪族基含有共重合体であることが好ましい。
【0034】
一般式[2]において、R3は水素原子、メチル基を表し、Yは2価の連結基を表す。2価の連結基としては、酸素原子、イオウ原子、−N(R5)−、等が好ましい。ここでR5は水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が好ましい。R5のより好ましい形態は水素原子及びメチル基である。Yは、酸素原子がより好ましい。R4は炭素数1以上20以下の直鎖、分岐または環状のアルキル基を表す。炭素数4以上20以下の直鎖、分岐または環状のアルキル基としては、直鎖及び分岐してもよいブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、オクタデシル基、エイコサニル基等、また、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等の単環シクロアルキル基及びビシクロヘプチル基、ビシクロデシル基、トリシクロウンデシル基、テトラシクロドデシル基、アダマンチル基、ノルボルニル基、テトラシクロデシル基、等の多環シクロアルキル基が好適に用いられる。
【0035】
一般式[2]で示されるモノマーとしてはより具体的には次に示すモノマーがあげられるがこの限りではない。
【0036】
【化9】

【0037】
【化10】

【0038】
【化11】

【0039】
【化12】

【0040】
【化13】

【0041】
【化14】

【0042】
【化15】

【0043】
【化16】

【0044】
【化17】

【0045】
本発明の一般式[1]においては、R1は水素原子またはメチル基を表し、Xは酸素原子、イオウ原子、または−N(R2)−を表す。ここで、R2は水素原子または炭素数1〜4のアルキル基、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基を表し、好ましくは水素原子またはメチル基である。Xは酸素原子がより好ましい。一般式[1]中のmは1以上6以下の整数が好ましく、1が特に好ましい。一般式[1]中のnは1〜3であって、1〜3の混合物を用いてもよく、3が好ましい。
一般式[5]においてR2は、水素原子、ハロゲン原子またはメチル基を表し、水素原子、メチル基がより好ましい。nは1以上6以下の整数を表し、4〜6がより好ましく6であることが最も好ましい。L2は2価の連結基を表し、具体的には、置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のアリーレン基、内部に連結基(例えば、エーテル、エステル、アミド)を有する置換もしくは無置換のアルキレン基、内部に連結基を有する置換もしくは無置換のアリーレン基が挙げられ、置換もしくは無置換の炭素数2〜10のアルキレン基、置換もしくは無置換の炭素数6〜20のアリーレン基、内部に連結基を有する炭素数3〜10のアルキレン基が好ましく、無置換のアルキレン基、無置換のアリーレン基、内部にエーテルまたはエステル連結基を有するアルキレン基が更に好ましく
、無置換のアルキレン基、内部にエーテルまたはエステル連結基を有するアルキレン基が特に好ましい。置換基は、ハロゲン、水酸基、メルカプト基、カルボキシル基、エポキシ基、アルキル基、アリール基等が挙げられ、これら置換基は更に置換されていても良い。
また、上記フッ素系ポリマー中に一般式[5]で表されるフルオロ脂肪族基含有モノマーの重合単位が2種類以上構成単位として含まれていても良い。
一般式[1]及び一般式[5]で表されるフルオロ脂肪族基含有モノマーのより具体的なモノマーの例を以下にあげるがこの限りではない。
【0046】
【化18】

【0047】
【化19】

【0048】
【化20】

【0049】
【化21】

【0050】
一般式[3]においてR0は、水素原子、ハロゲン原子またはメチル基を表し、水素原子、メチル基がより好ましい。nは1以上18以下の整数を表し、4〜12がより好ましく、6〜8が更に好ましく、6であることが最も好ましい。Lは2価の連結基を表し、具体的には、置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のアリーレン基、内部に連結基(例えば、エーテル、エステル、アミド)を有する置換もしくは無置換のアルキレン基、内部に連結基を有する置換もしくは無置換のアリーレン基が挙げられ、置換もしくは無置換の炭素数2〜10のアルキレン基、置換もしくは無置換の炭素数6〜20のアリーレン基、内部に連結基を有する炭素数3〜10のアルキレン基が好ましく、無置換のアルキレン基、無置換のアリーレン基、内部にエーテルまたはエステル連結基を有するアルキレン基が更に好ましく、無置換のアルキレン基、内部にエーテルまたはエステル連結基を有するアルキレン基が特に好ましい。置換基は、ハロゲン、水酸基、メルカプト基、カルボキシル基、エポキシ基、アルキル基、アリール基等が挙げられ、これら置換基は更に置換されていても良い。
また、上記フッ素系ポリマー中に一般式[3]で表されるフルオロ脂肪族基含有モノマーの重合単位が2種類以上構成単位として含まれていても良い。
【0051】
一般式[4]において、R1は水素原子、ハロゲン原子またはメチル基を表し、水素原子、メチル基がより好ましい。Xは酸素原子、硫黄原子または−N(R2)−を表し、酸素原子または−N(R2)−がより好ましく、酸素原子が更に好ましい。R2は、水素原子または炭素数1〜8のアルキル基を表し、水素原子または炭素数1〜4のアルキル基がより好ましく、水素原子またはメチル基が更に好ましい。mは1〜6の整数を表し、1〜3がより好ましく、1であることが更に好ましい。nは1〜18の整数を表し、4〜12がより好ましく、6〜8が更に好ましく、6であることが最も好ましい。
また、上記フッ素系ポリマー中に一般式[4]で表されるフルオロ脂肪族基含有モノマーの重合単位が2種類以上構成単位として含まれていても良い。
【0052】
以下に一般式[3]又は[4]で表されるフルオロ脂肪族基含有モノマーの具体例を挙げるが、これらに限定されることはない。
【0053】
【化22】

【0054】
【化23】

【0055】
【化24】

【0056】
【化25】

【0057】
尚、従来、好んで用いられてきた電解フッ素化法により製造されるフッ素系化学製品の一部は、生分解性が低く、生体蓄積性の高い物質であり、程度は軽微ではあるが、生殖毒性、発育毒性を有する事が懸念されている。本発明によるフルオロ脂肪族基の末端に水素原子があるフッ素系ポリマーはより環境安全性の高い物質であるということも産業上有利な点であるといえる。
【0058】
本発明で用いられるフッ素系ポリマーを構成するこれらの一般式[1]、一般式[3]、一般式[4]または一般式[5]で示されるフルオロ脂肪族基含有モノマーの重合単位の量は、該フッ素系ポリマーを構成する全重合単位に基づいて、50質量%を超えることが好ましく、70〜100質量%であることがより好ましく、80〜100質量%であることが更に好ましい。
本発明で好ましく用いられる一般式[2]で表されるモノマーの重合単位の量は、上記フッ素系ポリマーを構成する全重合単位に基づいて、50質量%より少ないことが好ましく、0〜30質量%であることがより好ましく、0〜20質量%であることが更に好ましい。
【0059】
本発明で用いられるフルオロ脂肪族基含有ポリマーの好ましい質量平均分子量は、風ムラ防止の観点に関しては、3000〜100,000が好ましく、6000〜80,000がより好ましく、8,000〜60,000が更に好ましい。但し、添加する処方によってはハジキなどの面状故障を併発する場合には質量平均分子量は1000〜20000が好ましい。
【0060】
ここで、質量平均分子量及び分子量は、TSKgel GMHxL、TSKgel G4000HxL、TSKgel G2000HxL(何れも東ソー(株)製の商品名)のカラムを使用したGPC分析装置により、溶媒THF、示差屈折計検出によるポリスチレン換算で表した分子量である。
【0061】
本発明のフッ素系ポリマーは公知慣用の方法で製造することができる。例えば先に挙げたフルオロ脂肪族基を有する(メタ)アクリレート、直鎖、分岐または環状のアルキル基を有する(メタ)アクリレート等の単量体を有機溶媒中、汎用のラジカル重合開始剤を添加し、重合させることにより製造できる。もしくは場合によりその他の付加重合性不飽和化合物とを、添加して上記と同じ方法にて製造することができる。各モノマーの重合性に応じ、反応容器にモノマーと開始剤を滴下しながら重合する滴下重合法なども、均一な組成のポリマーを得るために有効である。
【0062】
以下、本発明によるフッ素系ポリマーの具体的な構造の例を示すがこの限りではない。なお式中の数字は各モノマー成分の質量比率を示す。Mwは質量平均分子量を表す。
【0063】
【化26】

【0064】
【化27】

【0065】
【化28】

【0066】
【化29】

【0067】
【化30】

【0068】
【化31】

【0069】
【化32】

【0070】
【化33】

【0071】
【化34】

【0072】
組成物に対する上記フッ素系ポリマーの添加量は、0.001質量%〜5.0質量%であることが好ましく、より好ましくは0.01質量%〜1.0質量%である。
また、組成物に対するフッ素系ポリマーのフッ素原子の質量の割合は、0.0003質量%〜3.0質量%であることが好ましく、より好ましくは0.003質量%〜0.6質量%である。
組成物は、面状向上の点から、水の含率が30質量%以下であることが好ましく、より好ましくは10質量%以下である。
本発明の組成物は、用途に応じて、バインダー、無機フィラー、分散安定剤など、必要な成分を含有することができる。一種あるいは複数種の塗布組成物を支持体上に塗布して機能性層を一層以上形成し、例えば反射防止膜や偏光板とすることができる。
上記フッ素系ポリマーは、反射防止フィルムのいずれの層に添加しても良い。特にフッ素系化合物を含まない層に添加することが好ましい。具体的には、防眩性ハードコート層、ハードコート層、中屈折率層、高屈折率層に添加することが好ましい。
【0073】
[反射防止フィルムの構成]
図1は、本発明に係る反射防止フィルムの基本的な層構成を示す断面模式図である。反射防止フィルムは、透明支持体(1)、ハードコート層(2)、中屈折率層(3)、高屈折率層(4)、そして低屈折率層(5)の順序の層構成を有する。
【0074】
このような5層構成の反射防止フィルムは、中屈折率層(3)、高屈折率層(4)、低屈折率層(5)のそれぞれの層の光学膜厚、すなわち屈折率と膜厚の積が設計波長λに対してnλ/4前後、又はその倍数であることが好ましい。
【0075】
しかし、本発明の低反射率且つ反射光の色味が低減された反射率特性を実現するためには、特に設計波長λ(=400〜680nm)に対して中屈折率層(3)が下記の(式1)を、高屈折率層(4)が下記の(式2)を、低屈折率層(5)が下記の(式3)をそれぞれ満足する必要がある。設計波長λは400〜600nmであることが望ましく、450〜550nmであることがより望ましく、475〜525nmであることが最も望ましい。
【0076】
(式1):λ/4×0.80<n1d1<λ/4×1.00
(式2):λ/2×0.75<n2d2<λ/2×0.95
(式3):λ/4×0.95<n3d3<nλ/4×1.05
【0077】
上記各式において、n1は中屈折率層(3)の屈折率であり、d1は中屈折率層(3)の層厚(nm)であり、n2は高屈折率層(4)の屈折率であり、d2は高屈折率層(4)の層厚(nm)であり、n3は低屈折率層(5)の屈折率であり、d3は低屈折率層(5)の層厚(nm)である。
【0078】
更に、たとえばトリアセチルセルロース(屈折率:1.49)からなるような屈折率が1.45〜1.55の透明支持体に対しては、n1は1.60〜1.65、n2は1.85〜1.95、n3は1.35〜1.45の屈折率である必要があり、たとえばポリエチ
レンテレフタレート(屈折率:1.66)からなるような屈折率が1.55〜1.65の透明支持体に対しては、n1は1.65〜1.75、n2は1.85〜2.05、n3は1.35〜1.45の屈折率である必要がある。
【0079】
上記のような屈折率を有する中屈折率層(3)や高屈折率層(4)の素材が選択できない場合には、設定屈折率よりも高い屈折率を有する層と低い屈折率を有する層とを複数層組み合わせた等価膜の原理を用いて、実質的に設定屈折率の中屈折率層(3)又は高屈折率層(4)と光学的に等価な層を形成できることは公知であり、本発明の反射率特性を実現するためにも用いることができる。
【0080】
本発明において、中屈折率層(3)、高屈折率層(4)および低屈折率層(5)の屈折率を有する3層に替えて、上記のような等価膜を用いた4層、5層の屈折率の異なる層を有する反射防止層を含有する反射防止フィルムを有することも可能である。
【0081】
また、透明支持体(1)上、又は透明支持体(1)上にハードコート層(2)を塗布した上に、屈折率層として低屈折率層(5)を積層すると、反射防止フィルムとして好適に用いることができる。
【0082】
図2〜図7に示されるように、更に、透明支持体(1)上、又は透明支持体(1)上にハードコート層(2)を塗布した上に、高屈折率層(4)、低屈折率層(5)を積層しても反射防止フィルムとして好適に用いることができる。
【0083】
ハードコート層(2)は防眩性を有していてもよい。防眩性は図6に示されるようなマット粒子の分散によるものでも、図7に示されるようなエンボス加工などの方法による表面の賦形によって形成されてもよい。
【0084】
[各層の材料についての説明]
[基材フィルム(支持体)]
本発明の反射防止フィルムに用いる透明支持体としては、プラスチックフィルムを用いることが好ましい。プラスチックフィルムの材料の例には、セルロースエステル(例、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、プロピオニルセルロース、ブチリルセルロース、アセチルプロピオニルセルロース、ニトロセルロース)、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエステル(例、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ−1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリエチレン−1,2−ジフェノキシエタン−4,4’−ジカルボキシレート、ポリブチレンテレフタレート)、ポリスチレン(例、シンジオタクチックポリスチレン)、ポリオレフィン(例、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリメチルペンテン)、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、ポリメチルメタクリレートおよびポリエーテルケトンが含まれる。特に液晶表示装置や有機EL表示装置等に用いるために本発明の反射防止フィルムを偏光板の表面保護フィルムの片側として用いる場合にはトリアセチルセルロースが好ましく用いられる。トリアセチルセルロースフィルムとしては、TAC−TD80U(富士写真フィルム(株)製)等の公知のもの、公開技報番号2001−1745にて公開されたものが好ましく用いられる。また、平面CRTやPDP等に用いるためにガラス基板等に張り合わせて用いる場合にはポリエチレンテレフタレート、あるいははポリエチレンナフタレートが好ましい。透明支持体の光透過率は、80%以上であることが好ましく、86%以上であることがさらに好ましい。透明支持体のヘイズは、2.0%以下であることが好ましく、1.0%以下であることがさらに好ましい。透明支持体の屈折率は、1.4乃至1.7であることが好ましい。本発明の透明支持体の厚みは特に限定されないが、30〜150μmが好ましく、40〜130μmがより好ましく、70〜120μmが更に好ましい。
【0085】
[ハードコート層]
ハードコート層は、反射防止フィルムに物理強度を付与するために、透明支持体の表面に設ける。特に、透明支持体と前記高屈折率層の間に設けることが好ましい。また、要求される性能に応じ、該ハードコート層を防眩性ハードコート層とした反射防止フィルムとすることができる。
ハードコート層は、光の照射および加熱の少なくともいずれかの手段による硬化性化合物の架橋反応、または、重合反応により形成されることが好ましい。例えば、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリウレタン(メタ)アクリレート、多官能モノマーや多官能オリゴマー或いは加水分解性官能基含有の有機金属化合物を含む塗布組成物を透明支持体上に塗布し、硬化性化合物を架橋反応、または、重合反応させることにより形成することができる。
硬化性官能基としては、光重合性官能基が好ましく、また加水分解性官能基含有の有機金属化合物は有機アルコキシシリル化合物が好ましい。具体的には、高屈折率層のマトリックスバインダーと同様の内容のものが挙げられる。
【0086】
更に好ましい態様として、ラジカル重合反応及びカチオン重合反応により硬化する重合性化合物を用いることが挙げられる。重合性化合物は、ラジカル重合性基とカチオン重合性基が同一分子内に含有されていてもよいし、或は異なる分子に含有された化合物であって両者の混合物であっても良い。
【0087】
好ましい具体的なハードコート層を形成するための硬化性組成物の態様として、下記一般式(1)で表される繰り返し単位を含む架橋性ポリマーと、同一分子内に2個以上のエチレン性不飽和基を含む化合物の両方を含有し、架橋性ポリマー中の開環重合性基とエチレン性不飽和基の両方を重合させることにより硬化する硬化性組成物が挙げられる。
一般式(1)
【0088】
【化35】

【0089】
一般式(1)中、a1およびa2は、各々同じでも異なってもよく、水素原子、脂肪族基、−COOR1、または−CH2COOR1を表す。R1は炭化水素基を表す。
Pは、開環重合性基を含む一価の基又はエチレン性不飽和基を表す。
Lは、単結合もしくは二価の連結基を表す。
【0090】
一般式(1)で表される繰り返し単位を含む架橋性ポリマーについて詳細に説明する。一般式(1)中、a1およびa2は、水素原子、脂肪族基、好ましくは炭素原子数1〜4のアルキル基、−COOR1、または−CH2COOR1を表す。R1は、炭化水素基、好ましくは炭素数1〜4のアルキル基、より好ましくは水素原子もしくはメチル基を表す。
Lは単結合または二価の連結基であり、好ましくは単結合、−O−、アルキレン基、アリーレン基、*−COO−、*−CONH−、*−OCO−、または*−NHCO−である(ここで、*は*側で主鎖に連結することを意味する)。
Pは、開環重合性基を含む一価の基又はエチレン性不飽和基を表す。開環重合性基を含む一価の基とは、カチオン、アニオン、ラジカルなどの作用により開環重合が進行する環構造を有する一価の基であり、この中でもヘテロ環状化合物のカチオン開環重合性基が好ましい。好ましい開環重合性基を含む一価の基としては、ビニルオキシ基、或はエポキシ環、オキセタン環、テトラヒドロフラン環、ラクトン環、カーボネート環、オキサゾリン環などのイミノエーテル環などを含む一価の基が挙げられ、この中でも特に好ましくはエポキシ環、オキセタン環、オキサゾリン環を含む一価の基あり、最も好ましくはエポキシ環を含む一価の基である。
Pがエチレン性不飽和基を表す場合、好ましいエチレン性不飽和基としては、アクリロ
イル基、メタクロイル基、スチリル基、およびビニルオキシカルボニル基を挙げることができる。
【0091】
本発明の一般式(1)で表される繰り返し単位を含む架橋性ポリマーは、対応するモノマーを重合させて合成することが簡便で好ましい。この場合の重合反応としてはラジカル重合が最も簡便で好ましい。
以下に一般式(1)で表される繰り返し単位の好ましい具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0092】
【化36】

【0093】
上記具体例において、a1は−Hまたは−CH3、m1は1〜10の整数、m4は1〜10の整数、r1は−H、−CH3を表す。
【0094】
本発明の一般式(1)で表される繰り返し単位のうち、より好ましい例としては、エポキシ環を有するメタクリレートまたはアクリレートから誘導される繰り返し単位であり、その中でも特に好ましい例としてグリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレートから誘導される繰り返し単位を挙げることができる。
また、本発明の一般式(1)で表される繰り返し単位を含む架橋性ポリマーは一般式(1)で表される複数種の繰り返し単位で構成されたコポリマーであってもよく、その中でも特にグリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレートから誘導される繰り返し単位とのコポリマーとすることでより効果的に硬化収縮を低減できる。
【0095】
本発明の一般式(1)で表される繰り返し単位を含む架橋性ポリマーは一般式(1)以外の繰り返し単位を含んだコポリマーでもよい。特に架橋性ポリマーのTgや親疎水性をコントロールしたい場合や、架橋性ポリマーの開環重合性基の含有量をコントロールする目的で一般式(1)以外の繰り返し単位を含んだコポリマーとすることができる。一般式(1)以外の繰り返し単位の導入方法は、対応するモノマーを共重合させて導入する手法が好ましい。
【0096】
一般式(1)以外の繰り返し単位を、対応するビニルモノマーを共重合することによって導入する場合、好ましく用いられるモノマーとしては、アクリル酸またはα−アルキルアクリル酸(例えばメタクリル酸など)類から誘導されるエステル類もしくはアミド類(例えば、N−i−プロピルアクリルアミド、N−n−ブチルアクリルアミド、N−t−ブチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、アクリルアミド、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、メタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、アクリロイルモルホリン、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、アルキルエステル(メタ)アクリレート(アルキル基として、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基等)、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−メチル−2−ニトロプロピル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、2−メトキシメトキシエチル(メタ)アクリレート、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート、2−イソボルニル(メタ)クリレート、2−ノルボルニルメチル(メタ)クリレート、5−ノルボルネン−2−イルメチル(メタ)クリレート3−メチル−2−ノルボルニルメチル(メタ)クリレート、ベンジル(メタ)アクリ
レート、フェネチル(メタ)アクリレート、ヘプタデカフルオロデシル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)クリレートなど)、アクリル酸またはα−アルキルアクリル酸(アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸など)、ビニルエステル類(例えば酢酸ビニル)、マレイン酸またはフマル酸から誘導されるエステル類(マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジブチル、フマル酸ジエチルなど)、マレイミド類(N−フェニルマレイミドなど)、マレイン酸、フマル酸、p−スチレンスルホン酸のナトリウム塩、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、ジエン類(例えばブタジエン、シクロペンタジエン、イソプレン)、芳香族ビニル化合物(例えばスチレン、p−クロルスチレン、t−ブチルスチレン、α−メチルスチレン、スチレンスルホン酸ナトリウム)、N−ビニルピロリドン、N−ビニルオキサゾリドン、N−ビニルサクシンイミド、N−ビニルホルムアミド、N−ビニル−N−メチルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニル−N−メチルアセトアミド、1−ビニルイミダゾール、4−ビニルピリジン、ビニルスルホン酸、ビニルスルホン酸ナトリウム、アリルスルホン酸ナトリウム、メタリルスルホン酸ナトリウム、ビニリデンクロライド、ビニルアルキルエーテル類(例えばメチルビニルエーテル)、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン等が挙げれる。これらのビニルモノマーは2種類以上組み合わせて使用してもよい。これら以外のビニルモノマーはリサーチディスクロージャーNo.19551(1980年、7月)に記載されているものを使用することができる。
本発明では、アクリル酸またはメタクリル酸から誘導されるエステル類、およびアミド類、および芳香族ビニル化合物が特に好ましく用いられるビニルモノマーである。
【0097】
一般式(1)以外の繰り返し単位として開環重合性基或はエチレン性不飽和基以外の反応性基を有する繰り返し単位も導入することができる。特に、ハードコート層の硬度を高めたい場合や、基材もしくはハードコート上に別の機能層を用いる場合の層間の接着性を改良したい場合、開環重合性基以外の反応性基を含むコポリマーとする手法は好適である。開環重合性基以外の反応性基を有する繰り返し単位の導入方法は対応するビニルモノマー(以下、「反応性モノマー」と称する。)を共重合する手法が簡便で好ましい。
【0098】
以下に反応性モノマーの好ましい具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0099】
<反応性モノマーの好ましい具体例>
ヒドロキシル基含有ビニルモノマー(例えば、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、アリルアルコール、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレートなど)、イソシアネート基含有ビニルモノマー(例えば、イソシアナトエチルアクリレート、イソシアナトエチルメタクリレートなど)、N−メチロール基含有ビニルモノマー(例えば、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミドなど)、カルボキシル基含有ビニルモノマー(例えばアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、カルボキシエチルアクリレート、安息香酸ビニル)、アルキルハライド含有ビニルモノマー(例えばクロロメチルスチレン、2−ヒドロキシ−3−クロロプロピルメタクリレート)、酸無水物含有ビニルモノマー(例えばマレイン酸無水物)、ホルミル基含有ビニルモノマー(例えばアクロレイン、メタクロレイン)、スルフィン酸基含有ビニルモノマー(例えばスチレンスルフィン酸カリウム)、活性メチレン含有ビニルモノマー(例えばアセトアセトキシエチルメタクリレート)、アミノ基含有モノマー(例えばアリルアミン)、アルコキシシリル基含有モノマー(例えばメタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン)などが挙げられる。
【0100】
本発明の一般式(1)で表される繰り返し単位を含む架橋性ポリマー中、一般式(1)で表される繰り返し単位が含まれる割合は、30質量%以上100質量%以下、好ましく
は50質量%以上100質量%以下、特に好ましくは70質量%以上100質量%以下である。一般式(1)以外の繰り返し単位が、架橋反応性基を有さない場合、その含量が多すぎると硬度が低下し、架橋反応性基を有する場合、硬度は維持できることもあるが、硬化収縮が大きくなったり、脆性が悪化する場合がある。特にアルコキシシリル基含有モノマー(例えばメタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン)と一般式(1)で表される繰り返し単位の共重合体を用いる場合などのように架橋反応時に脱水、脱アルコールなどの分子量低下を伴う場合、硬化収縮が大きくなりやすい。このような分子量低下を伴って架橋反応が進行する架橋反応性基を有する繰り返し単位を本発明の一般式(1)で表される繰り返し単位を含む架橋性ポリマーに導入する場合の一般式(1)で表される繰り返し単位が含まれる好ましい割合は、70質量%以上99質量%以下、より好ましくは80質量%以上99質量%以下、特に好ましくは90質量%以上99質量%以下である。
【0101】
一般式(1)で表される繰り返し単位を含む架橋性ポリマーの好ましい分子量範囲は質量平均分子量で1000以上100万以下、さらに好ましくは3000以上20万以下である。最も好ましくは5000以上10万以下である。なお、上記質量平均分子量は、GPC法で測定されポリスチレン換算値である。
【0102】
本発明に用いることのできる同一分子内に2個以上のエチレン性不飽和基を含む化合物について説明する。好ましいエチレン性不飽和基の種類は、アリロイル基、メタクリロイル基、スチリル基、ビニルエーテル基であり、特に好ましくはメタクリロイル基またはアクリロイル基であり、特に好ましくはアクリロイル基である。エチレン性不飽和基を含む化合物はエチレン性不飽和基を分子内に2個以上有していればよいが、より好ましくは3個以上である。そのなかでもアクリロイル基を有する化合物が好ましく、分子内に2〜6個のアクリル酸エステル基を有する多官能アクリレートモノマーと称される化合物やウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレートと称される分子内に数個のアクリル酸エステル基を有する分子量が数百から数千のオリゴマーを好ましく使用できる。具体的には、前記した高屈折率層の多官能性モノマーと同様のものが挙げられる。
これらの重合性化合物は、重合開始剤を併用することが好ましく、具体的には前記の高屈折率層に記載したと同様のものが挙げられる。
【0103】
ハードコート層は、一次粒子の平均粒径が300nm以下の無機微粒子を含有することが好ましい。より好ましくは10〜150nmであり、さらに好ましくは20〜100nmである。ここでいう平均粒径は質量平均径である。一次粒子の平均粒径を200nm以下にすることで透明性を損なわないハードコート層を形成できる。
無機微粒子はハードコート層の硬度を高くすると共に、塗布層の硬化収縮を抑える機能がある。また、ハードコート層の屈折率を制御する目的にも添加される。
ハードコート層の具体的な組成としては、例えば特開2002−144913号公報、同2000−9908号公報、国際公開第00/46617号パンフレット等に記載の内容のもが挙げられる。
【0104】
ハードコート層における無機微粒子の含有量は、ハードコート層の全質量に対し10〜90質量%であることが好ましく、より好ましくは15〜80質量%である。
前記したように、高屈折率層はハードコート層を兼ねることができる。高屈折率層がハードコート層を兼ねる場合、高屈折率層で記載した手法を用いて無機微粒子を微細に分散してハードコート層に含有させて形成することが好ましい。
ハードコート層の膜厚は用途により適切に設計することができる。ハードコート層の膜厚は、0.2〜15μmであることが好ましく、より好ましくは0.5〜12μm、特に好ましくは0.7〜10μmである。
【0105】
ハードコート層の強度は、JIS K 5400に従う鉛筆硬度試験で、H以上であることが好ましく、2H以上であることがさらに好ましく、3H以上であることが最も好ましい。
また、JIS K 5400に従うテーバー試験で、試験前後の試験片の摩耗量が少な
いほど好ましい。
【0106】
[防眩性ハードコート層]
本発明の防眩性ハードコート層について以下に説明する。
防眩性ハードコート層はハードコート性を付与するためのバインダー、防眩性を付与するためのマット粒子、および高屈折率化、架橋収縮防止、高強度化のための無機フィラー、などから構成される。
バインダーとしては、飽和炭化水素鎖またはポリエーテル鎖を主鎖として有するポリマーであることが好ましく、飽和炭化水素鎖を主鎖として有するポリマーであることがさらに好ましい。
また、バインダーポリマーは架橋構造を有することが好ましい。飽和炭化水素鎖を主鎖として有するバインダーポリマーとしては、エチレン性不飽和モノマーの重合体が好ましい。飽和炭化水素鎖を主鎖として有し、かつ架橋構造を有するバインダーポリマーとしては、二個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーの(共)重合体が好ましい。
高屈折率にするには、このモノマーの構造中に芳香族環や、フッ素以外のハロゲン原子、硫黄原子、リン原子、及び窒素原子から選ばれた少なくとも1種の原子を含むことが好ましい。
【0107】
二個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーとしては、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル(例、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-シクロヘキサンジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート)、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,2,3-シクロヘキサンテトラメタクリレート、ポリウレタンポリアクリレート、ポリエステルポリアクリレート)、ビニルベンゼンおよびその誘導体(例、1,4−ジビニルベンゼン、4−ビニル安息香酸−2−アクリロイルエチルエステル、1,4−ジビニルシクロヘキサノン)、ビニルスルホン(例、ジビニルスルホン)、アクリルアミド(例、メチレンビスアクリルアミド)およびメタクリルアミドが挙げられる。上記モノマーは2種以上併用してもよい。
【0108】
高屈折率モノマーの具体例としては、ビス(4−メタクリロイルチオフェニル)スルフィド、ビニルナフタレン、ビニルフェニルスルフィド、4−メタクリロキシフェニル−4'−メトキシフェニルチオエーテル等が挙げられる。これらのモノマーも2種以上併用し
てもよい。
【0109】
これらのエチレン性不飽和基を有するモノマーの重合は、光ラジカル開始剤あるいは熱ラジカル開始剤の存在下、電離放射線の照射または加熱により行うことができる。
従って、エチレン性不飽和基を有するモノマー、光ラジカル開始剤あるいは熱ラジカル開始剤、マット粒子および無機フィラーを含有する塗液を調製し、該塗液を透明支持体上に塗布後電離放射線または熱による重合反応により硬化して反射防止膜を形成することができる。
【0110】
光ラジカル重合開始剤としては、アセトフェノン類、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、ホスフィンオキシド類、ケタール類、アントラキノン類、チオキサントン類、アゾ化合
物、過酸化物類、2,3−ジアルキルジオン化合物類、ジスルフィド化合物類、フルオロアミン化合物類や芳香族スルホニウム類が挙げられる。アセトフェノン類の例には、2,2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアセトフェノン、1−ヒドロキシジメチルフェニルケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−4−メチルチオ−2−モルフォリノプロピオフェノンおよび2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノンが含まれる。ベンゾイン類の例には、ベンゾインベンゼンスルホン酸エステル、ベンゾイントルエンスルホン酸エステル、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテルおよびベンゾインイソプロピルエーテルが含まれる。ベンゾフェノン類の例には、ベンゾフェノン、2,4−ジクロロベンゾフェノン、4,4−ジクロロベンゾフェノンおよびp−クロロベンゾフェノンが含まれる。ホスフィンオキシド類の例には、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシドが含まれる。
最新UV硬化技術(P.159,発行人;高薄一弘,発行所;(株)技術情報協会,1991年発行)にも種々の例が記載されており本発明に有用である。
市販の光開裂型の光ラジカル重合開始剤としては、日本チバガイギー(株)製の商品名イルガキュア(651,184,907)等が好ましい例として挙げられる。
光重合開始剤は、多官能モノマー100質量部に対して、0.1〜15質量部の範囲で使用することが好ましく、より好ましくは1〜10質量部の範囲である。
光重合開始剤に加えて、光増感剤を用いてもよい。光増感剤の具体例として、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン、ミヒラーのケトンおよびチオキサントンを挙げることができる。
【0111】
熱ラジカル開始剤としては、有機あるいは無機過酸化物、有機アゾ及びジアゾ化合物等を用いることができる。
具体的には、有機過酸化物として過酸化ベンゾイル、過酸化ハロゲンベンゾイル、過酸化ラウロイル、過酸化アセチル、過酸化ジブチル、クメンヒドロぺルオキシド、ブチルヒドロぺルオキシド、無機過酸化物として、過酸化水素、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム等、アゾ化合物として2−アゾ−ビス−イソブチロニトリル、2−アゾ−ビス−プロピオニトリル、2−アゾ−ビス−シクロヘキサンジニトリル等、ジアゾ化合物としてジアゾアミノベンゼン、p−ニトロベンゼンジアゾニウム等を挙げることができる。
【0112】
ポリエーテル鎖を主鎖として有するポリマーは、多官能エポシキシ化合物の開環重合体が好ましい。多官能エポシキ化合物の開環重合は、光酸発生剤あるいは熱酸発生剤の存在下、電離放射線の照射または加熱により行うことができる。
従って、多官能エポシキシ化合物、光酸発生剤あるいは熱酸発生剤、マット粒子および無機フィラーを含有する塗液を調製し、該塗液を透明支持体上に塗布後電離放射線または熱による重合反応により硬化して反射防止膜を形成することができる。
【0113】
二個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーの代わりにまたはそれに加えて、架橋性官能基を有するモノマーを用いてポリマー中に架橋性官能基を導入し、この架橋性官能基の反応により、架橋構造をバインダーポリマーに導入してもよい。
架橋性官能基の例には、イソシアナート基、エポキシ基、アジリジン基、オキサゾリン基、アルデヒド基、カルボニル基、ヒドラジン基、カルボキシル基、メチロール基および活性メチレン基が含まれる。ビニルスルホン酸、酸無水物、シアノアクリレート誘導体、メラミン、エーテル化メチロール、エステルおよびウレタン、テトラメトキシシランのような金属アルコキシドも、架橋構造を導入するためのモノマーとして利用できる。ブロックイソシアナート基のように、分解反応の結果として架橋性を示す官能基を用いてもよい。すなわち、本発明において架橋性官能基は、すぐには反応を示すものではなくとも、分解した結果反応性を示すものであってもよい。
これら架橋性官能基を有するバインダーポリマーは塗布後、加熱することによって架橋
構造を形成することができる。
【0114】
防眩性ハードコート層には、防眩性付与の目的で、フィラー粒子より大きな平均粒径が1〜10μm、好ましくは1.5〜7.0μmのマット粒子、例えば無機化合物の粒子または樹脂粒子が含有される。
上記マット粒子の具体例としては、例えばシリカ粒子、TiO2粒子等の無機化合物の粒子;架橋アクリル粒子、架橋スチレン粒子、メラミン樹脂粒子、ベンゾグアナミン樹脂粒子等の樹脂粒子が好ましく挙げられる。なかでも架橋ポリメタクリル酸メチルのような架橋アクリル粒子が好ましい。
【0115】
また、粒子径の異なる2種以上のマット粒子を併用して用いてもよい。より大きな粒子径のマット粒子で防眩性を付与し、より小さな粒子径のマット粒子で別の光学特性を付与することが可能である。例えば、133ppi以上の高精細ディスプレイに反射防止膜を貼り付けた場合にギラツキと呼ばれる光学性能が要求される。これはフィルム表面に微妙に存在する凹凸により、画素が拡大もしくは縮小され、表示性能の均一性を失うことに由来するが、これは防眩性を付与するマット粒子よりも5〜50%粒子径の小さなマット粒子を併用することにより大きく改善することができる。
【0116】
さらに、上記マット粒子の粒子径分布としては単分散であることが好ましく、全粒子の粒子径は同一に近ければ近いほど良い。例えば平均粒子径よりも20%以上粒子径の異なる粒子を粗大粒子と規定した場合には、この粗大粒子の割合は全粒子数の1%以下であることが好ましく、より好ましくは0.1%以下であり、さらに好ましくは0.01%以下である。このような粒子径分布を持つマット粒子は通常の合成反応後に、分級によって得られ、分級の回数を上げることやその程度を強くすることにより、より好ましい分布のマット剤を得ることができる。
【0117】
防眩性ハードコート層には、層の屈折率を高めるために、上記のマット粒子に加えて、チタン、ジルコニウム、アルミニウム、インジウム、亜鉛、錫、アンチモンのうちより選ばれる少なくとも1種の金属の酸化物からなり、平均粒径が0.5nm〜0.2μm、好ましくは1nm〜0.1μm、より好ましくは1nm〜0.06μm以下である無機フィラーが含有されることが好ましい。
また反対に、マット粒子との屈折率差を大きくする目的で高屈折率マット粒子を用いた防眩性ハードコート層では層の屈折率を低目に保つために、ケイ素の酸化物を用いることも好ましい。好ましい粒径は前述の無機フィラーと同じである。
防眩性ハードコート層に用いられる無機フィラーの具体例としては、TiO2、ZrO2、Al23、In23、ZnO、SnO2、Sb23、ITO(インジウム−スズ酸化物)とSiO2等が挙げられる。TiO2およびZrO2が高屈折率化の点で特に好ましい。
該無機フィラーは表面をシランカップリング処理又はチタンカップリング処理されることも好ましく、フィラー表面にバインダー種と反応できる官能基を有する表面処理剤が好ましく用いられる。
これらの無機フィラーの添加量は、防眩性ハードコート層の全質量の10〜90%であることが好ましく、より好ましくは20〜80%であり、特に好ましくは30〜75%である。
なお、このようなフィラーは、粒径が光の波長よりも十分小さいために散乱が生じず、バインダーポリマーに該フィラーが分散した分散体は光学的に均一な物質として振舞う。
【0118】
本発明の防眩性ハードコート層のバインダーおよび無機フィラーの混合物の合計の屈折率は、1.48〜2.00であることが好ましく、より好ましくは1.50〜1.80である。屈折率を上記範囲とするには、バインダー及び無機フィラーの種類及び量の割合を選択すればよい。どのように選択するかは、予め実験的に知ることができる。
【0119】
防眩性ハードコート層の膜厚は1〜10μmが好ましく、1.2〜8μmがより好ましい。
【0120】
[高屈折率層]
本発明の高屈折率層は、典型的には高屈折率の無機化合物微粒子およびマトリックスバインダー(以下、マトリックスと呼称することもある)を少なくとも含有する硬化性組成物(高屈折率層用組成物)を塗布、硬化してなる屈折率1.55〜2.40の硬化膜から成る。上記屈折率は1.65〜2.30が好ましく、更には1.80〜2.00が特に好ましい。本発明の高屈折率層の屈折率は1.55〜2.40であり、いわゆる高屈折率層あるいは中屈折率層といわれている層であるが、以下の本明細書では、この層を高屈折率層と総称して呼ぶことがある。
【0121】
[高屈折率層用組成物]
<高屈折率粒子>
本発明の高屈折率層に含まれる高屈折率の無機微粒子は、屈折率が1.80〜2.80、一次粒子の平均粒径が3〜150nmであるものが好ましい。屈折率が上記範囲であれば、皮膜の屈折率を高める効果が十分で、粒子の着色もない。また、一次粒子の平均粒径が上記範囲であれば、皮膜のヘイズ値が低く、透明であり、かつ高い屈折率の皮膜が得られる。本発明で、より好ましい無機微粒子は屈折率が1.90〜2.80で、一次粒子の平均粒径が3〜100nmの粒子であり、更に好ましいのは屈折率が1.90〜2.80で、一次粒子の平均粒径が5〜80nmの粒子である。
好ましい高屈折率無機微粒子の具体例は、Ti、Zr、Ta、In、Nd、Sn、Sb、Zn,LaW、Ce、Nb、V、Sm、Y等の酸化物或は複合酸化物、硫化物を主成分とする粒子が挙げられる。ここで、主成分とは粒子を構成する成分の中で最も含有量(質量%)が多い成分をさす。本発明で好ましいのはTi、Zr、Ta、In、Snから選ばれる少なくとも1種の金属元素を含む酸化物若しくは複合酸化物を主成分とする粒子である。本発明で使用される無機微粒子には、粒子の中に種々の元素が含有されていても構わない。例えば、Li、Si、Al、B、Ba、Co、Fe、Hg、Ag、Pt、Au、Cr、Bi、P、Sなどが挙げられる。酸化錫、酸化インジウムにおいては粒子の導電性を高めるために、Sb、Nb、P、B、In、V、ハロゲンなどの元素を含有させることが好ましく、特に、酸化アンチモンを約5〜20質量%含有させたものが最も好ましい。
【0122】
特に好ましくは、Co、Zr、Alから選ばれる少なくとも1つの元素を含有する二酸化チタンを主成分とする無機微粒子(以降、「特定の酸化物」と称することもある)が挙げられる。特に、好ましい元素はCoである。Tiに対する、Co、Al、Zrの総含有量は、Tiに対し0.05〜30質量%であることが好ましく、より好ましくは0.1〜10質量%、さらに好ましくは0.2〜7質量%、特に好ましくは0.3〜5質量%、最も好ましくは0.5〜3質量%である。
Co、Al、Zrは、二酸化チタンを主成分とする無機微粒子の内部、あるいはまた、表面に存在する。二酸化チタンを主成分とする無機微粒子の内部に存在することがより好ましく、内部と表面の両方に存在することが最も好ましい。これらの特定の金属元素は、酸化物として存在しても良い。
【0123】
また、他の好ましい無機粒子として、チタン元素と酸化物が屈折率1.95以上となる金属元素から選ばれる少なくとも1種の金属元素(以下、「Met」とも略称する)との複酸化物の粒子で、かつ該複酸化物はCoイオン、Zrイオン、およびAlイオンから選ばれる金属イオンの少なくとも1種がドープされてなる無機微粒子(「特定の複酸化物」と称することもある)が挙げられる。ここで、該酸化物の屈折率が1.95以上となる金属酸化物の金属元素としては、Ta、Zr、In、Nd、Sb,Sn、およびBiが好ま
しい。特には、Ta、Zr、Sn、Biが好ましい。複酸化物にドープされる金属イオンの含有量は、複酸化物を構成する全金属[Ti+Met]量に対して、25質量%を越えない範囲で含有することが屈折率維持の観点から好ましい。より好ましくは0.05〜10質量%、さらに好ましくは0.1〜5質量%、最も好ましくは0.3〜3質量%である。
ドープした金属イオンは、金属イオン、金属原子の何れのもので存在してもよく、複酸化物の表面から内部まで適宜に存在する。表面と内部との両方に存在することが好ましい。
【0124】
本発明で用いられる無機微粒子は結晶構造またはアモルファス構造を有することが好ましい。結晶構造は、ルチル、ルチル/アナターゼの混晶、またはアナターゼが主成分であることが好ましく、特にルチル構造が主成分であることが好ましい。このことにより、本発明の特定の酸化物或は特定の複酸化物の無機微粒子は、1.90〜2.80、好ましくは2.10〜2.80、更に好ましくは2.20〜2.80の屈折率を有することが可能になる。また、二酸化チタンが有する光触媒活性を抑えることができ、本発明の高屈折率層の耐候性を著しく改良することができる。
【0125】
上記した特定の金属元素或は、金属イオンをドープする方法は、従来公知の方法を用いることができる。例えば、特開平5−330825号公報、同11−263620号公報、特表平11−512336号公報、ヨーロッパ公開特許第0335773号公報等に記載の方法、イオン注入法(例えば、権田俊一、石川順三、上条栄治編「イオンビーム応用技術」((株)シ−エムシー、1989年刊行、青木 康、表面科学、Vol.18,(5)、pp.262、1998、安保正一等、表面科学、Vol.20(2)、pp60、1999等記載)等に従って行うことがきる。
【0126】
本発明に用いられる無機微粒子は、表面処理してもよい。表面処理は、無機化合物および/または有機化合物を用いて該粒子表面の改質を実施し、無機粒子表面の濡れ性を調製し有機溶媒中での微粒子化、高屈折率層形成用組成物中での分散性や分散安定性を向上することができる。粒子表面に物理化学的な吸着をして粒子表面の改質をすることができる無機化合物としては、例えばケイ素を含有する無機化合物(SiO2など)、アルミニウムを含有する無機化合物(Al23,Al(OH)3など)、コバルトを含有する無機化合物(CoO2,Co23,Co34など)、ジルコニウムを含有する無機化合物(ZrO2,Zr(OH)4など)、鉄を含有する無機化合物(Fe23など)などが挙げらる。
【0127】
また、表面処理に用いられる有機化合物の例には、従来公知の金属酸化物や無機顔料等の無機フィラー類の表面改質剤を用いることが出来る。例えば、「顔料分散安定化と表面処理技術・評価」第一章(技術情報協会、2001年刊行)等に記載されている。
具体的には、該無機粒子表面と親和性を有する極性基を有する有機化合物が挙げられる。そのような有機化合物にはカップリング化合物と称される化合物が含まれる。無機粒子表面と親和性を有する極性基としては、カルボキシル基、ホスホノ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、環状酸無水物基、アミノ基等があげられ、分子中に少なくとも1種を含有する化合物が好ましい。例えば、長鎖脂肪族カルボン酸(例えばステアリン酸、ラウリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等)、ポリオール化合物(例えばペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ECH(エピクロルヒドリン)変性グリセロールトリアクリレート等)、ホスホノ基含有化合物(例えばEO(エチレンオキサイド)変性リン酸トリアクリレート等)、アルカノールアミン(エチレンジアミンEO付加体(5モル)等)が挙げれる。
カップリング化合物としては、従来公知の有機金属化合物が挙げられ、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、アルミネートカップリング剤等が含まれる。中でも、シランカップリング剤が最も好ましい。具体的には、例えば特開2002−9908号公報、同2001−310423号公報明細書中の段落番号「0011」〜「0015」記載の化合物等が挙げられる。
これらの表面処理は、2種類以上を併用することもできる。
【0128】
本発明で使用される酸化物微粒子としては、これをコアとして無機化合物からなるシェルを形成するコア/シェル構造の微粒子も好ましい。シェルとしては、Al、Si、Zrから選ばれる少なくとも1種の元素から成る酸化物が好ましい。具体的には、例えば特開2001−166104号公報記載の内容が挙げられる。
【0129】
本発明で使用される無機微粒子の形状は、特に限定されないが米粒状、球形状、立方体状、紡錘形状、不定形状が好ましい。本発明の無機微粒子は単独で用いてもよいが、2種類以上を併用して用いることもできる。
【0130】
(分散剤)
本発明で使用される無機粒子を安定した所定の超微粒子として用いるため分散剤を併用することが好ましい。分散剤としては、該無機微粒子表面と親和性を有する極性基を有する低分子化合物、または高分子化合物であることが好ましい。
上記極性基としては、ヒドロキシ基、メルカプト基、カルボキシル基、スルホ基、ホスホノ基、オキシホスホノ基、−P(=O)(R1)(OH)基、−O−P(=O)(R1)(OH)基、アミド基(−CONHR2、−SO2NHR2)、環状酸無水物含有基、アミ
ノ基、四級アンモニウム基等が挙げられる。
ここで、R1は炭素数1〜18の炭化水素基を表す(例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、オクタデシル基、クロロエチル基、メトキシエチル基、シアノエチル基、ベンジル基、メチルベンジル基、フェネチル基、シクロヘキシル基等)。R2は、水素原子または前記R1と同一の内容を表す。
【0131】
上記極性基において、解離性プロトンを有する基はその塩であってもよい。また、上記アミノ基、四級アンモニウム基は、一級アミノ基、二級アミノ基または三級アミノ基のいずれでもよく、三級アミノ基または四級アンモニウム基であることがさらに好ましい。二級アミノ基、三級アミノ基または四級アンモニウム基の窒素原子に結合する基は、炭素原子数が1〜12の脂肪族基(上記Rの基と同一の内容のもの等)であることが好ましい。また、三級アミノ基は、窒素原子を含有する環形成のアミノ基(例えば、ピペリジン環、モルホリン環、ピペラジン環、ピリジン環等)であってもよく、更に四級アンモニウム基はこれら環状アミノ基の四級アモニウム基であってもよい。特に炭素原子数が1〜6のアルキル基であることがさらに好ましい。
本発明に係る分散剤の極性基としては、pKaが7以下のアニオン性基或はこれらの解離基の塩が好ましい。特に、カルボキシル基、スルホ基、ホスホノ基、オキシホスホノ基、またはこれらの解離基の塩が好ましい。
【0132】
分散剤は、さらに架橋性または重合性官能基を含有することが好ましい。架橋性または重合性官能基としては、ラジカル種による付加反応・重合反応が可能なエチレン性不飽和基(例えば(メタ)アクリロイル基、アリル基、スチリル基、ビニルオキシ基カルボニル基、ビニルオキシ基等)、カチオン重合性基(エポキシ基、チオエポキシ基、オキセタニル基、ビニルオキシ基、スピロオルトエステル基等)、重縮合反応性基(加水分解性シリル基等、N−メチロール基)等が挙げられ、好ましくはエチレン性不飽和基、エポキシ基、または加水分解性シリル基である。
具体的には、例えば、特開平11−153703号公報、特許番号US6210858B1、特開2002−2776069号公報、特開2001−310423号公報明細書中の段落番号[0013]〜[0015]記載の化合物等が挙げられる。
【0133】
また、本発明に用いられる分散剤は、高分子分散剤であることも好ましい。特に、アニオン性基、および架橋性または重合性官能基を含有する高分子分散剤があげられ、これらの官能基が上記した内容と同様のものが挙げられる。
【0134】
分散剤の無機微粒子に対する使用量は、1〜100質量%の範囲であることが好ましく、3〜50質量%の範囲であることがより好ましく、5〜40質量%であることが最も好ましい。また、分散剤は2種類以上を併用してもよい。
【0135】
(分散媒体)
本発明において、無機微粒子の湿式分散に供する分散媒体としては、水、有機溶媒から適宜選択して用いることができ、沸点が50℃以上の液体であることが好ましく、沸点が60℃〜180℃の範囲の有機溶媒であることがより好ましい。
分散媒体は、無機微粒子および分散剤を含む全分散組成物の5〜50質量%となる割合で用いることが好ましい。更に好ましくは10〜30質量%の割合である。この範囲において、分散が容易に進行し、得られる分散物は作業性良好な粘度の範囲となる。
【0136】
分散媒体としては、アルコール類、ケトン類、エステル類アミド類、エーテル類、エーテルエステル類、炭化水素類、ハロゲン化炭化水素類等が挙げられる。具体的には、アルコール(例、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ベンジルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、エチレングリコールモノアセテート等)、ケトン(例、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン等)、エステル(例、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、蟻酸エチル、蟻酸プロピル、蟻酸ブチル、乳酸エチル、等)、脂肪族炭化水素(例、ヘキサン、シクロヘキサン)、ハロゲン化炭化水素(例、メチルクロロホルム等)、芳香族炭化水素(例、ベンゼン、トルエン、キシレン等)、アミド(例、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、n−メチルピロリドン等)、エーテル(例、ジオキサン、テトラハイドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル等)、エーテルアルコール(例、1−メトキシ−2−プロパノール、エチルセルソルブ、メチルカルビノール等)が挙げられる。単独での2種以上を混合して使用してもよい。好ましい分散媒体は、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ブタノールが挙げられる。また、ケトン溶媒(例えばメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等)を主にした塗布溶媒系も好ましく用いられる。
【0137】
(無機微粒子の超微粒子化)
本発明の高屈折率層を形成するための硬化性塗布組成物は、平均粒子径100nm以下の無機超微粒子が分散した組成物とすることにより、該組成物の液の安定性が向上し、この硬化性塗布組成物から形成された硬化膜は、無機微粒子が硬化膜のマトリックス中で超微粒子状態で均一に分散されて存在し、光学特性が均一で透明な高屈折率膜が達成される。硬化膜のマトリックス中で存在する超微粒子の大きさは、平均粒径3〜100nmの範囲が好ましく、5〜100nmがより好ましい。特に10〜80nmが最も好ましい。
更には、500nm以上の平均粒子径の大粒子が含まれないことが好ましく、300nm以上の平均粒子径の大粒子が含まれないことが特に好ましい。これにより、硬化膜表面が上記した特定の凹凸形状を形成できる。
上記高屈折率無機物粒子を上記の範囲の粗大粒子を含まない超微粒子の大きさに分散するには、例えば、前記の分散剤と共に、平均粒径0.8mm未満のメディアを用いた湿式分散方法で分散する方法で達成される。
【0138】
湿式分散機としては、サンドグラインダーミル(例、ピン付きビーズミル)、ダイノミ
ル、高速インペラーミル、ペッブルミル、ローラーミル、アトライター、コロイドミル等の従来公知のものが挙げられる。特に本発明の酸化物微粒子を超微粒子に分散するには、サンドグラインダーミル、ダイノミル、および高速インペラーミルが好ましい。
【0139】
上記分散機と共に用いるメディアとしては、その平均粒径が0.8mm未満であり、平均粒径がこの範囲のメディアを用いることで上記の無機微粒子径が100nm以下となり、かつ粒子径の揃った超微粒子を得ることができる。メディアの平均粒径は、好ましくは0.5mm以下であり、より好ましくは0.05〜0.3mmである。
また、湿式分散に用いられるメディアとしては、ビーズが好ましい。具体的には、ジルコニアビーズ、ガラスビーズ、セラミックビーズ、スチールビーズ等が挙げられ、分散中におけるビーズの破壊等を生じ難い等の耐久性と超微粒子化の上から0.05〜0.2mmのジルコニアビーズが特に好ましい。分散工程での分散温度は20〜60℃が好ましく、より好ましくは25〜45℃である。この範囲の温度で超微粒子に分散すると分散粒子の再凝集、沈殿等が生じない。これは、無機化合物粒子への分散剤の吸着が適切に行われ、常温下での分散剤の粒子からの脱着等による分散安定不良とならないためと考えられる。
【0140】
上記した内容の分散方法を用いることにより、透明性を損なわない屈折率均一性、膜の強度、隣接層との密着性等に優れた高屈折率膜が好ましく形成される。
また、上記湿式分散の工程の前に、予備分散処理を実施してもよい。予備分散処理に用いる分散機の例には、ボールミル、三本ロールミル、ニーダーおよびエクストルーダーが含まれる。
更には、分散物中の分散粒子がその平均粒径、および粒子径の単分散性が上記した範囲を満足する上で、分散物中の粗大凝集物を除去するためにビーズとの分離処理において精密濾過されるように濾材を配置することも好ましい。精密濾過するための濾材は濾過粒子サイズ25μm以下が好ましい。精密濾過するための濾材のタイプは上記性能を有していれば特に限定されないが例えばフィラメント型、フェルト型、メッシュ型が挙げられる。分散物を精密濾過するための濾材の材質は上記性能を有しており、かつ塗布液に悪影響を及ばさなければ特に限定はされないが例えばステンレス、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン等が挙げられる。
【0141】
(高屈折率層のマトリックス)
高屈折率層は、高屈折率無機超微粒子とマトリックスを少なくとも含有してなる。
本発明の好ましい態様によれば、高屈折率層のマトリックスは、(i)有機バインダー、または(ii)加水分解性官能基含有する有機金属化合物の加水分解物およびこの加水分解物の部分縮合物の少なくともいずれかを含有する高屈折率層形成用組成物を塗布後に、硬化して形成される。
(i)有機バインダー
有機バインダーとしては、
(イ)従来公知の熱可塑性樹脂、
(ロ)従来公知の反応性硬化性樹脂と硬化剤との組み合わせ、または
(ハ)バインダー前駆体(後述する硬化性の多官能モノマーや多官能オリゴマーなど)と重合開始剤との組み合わせ、
から形成されるバインダーが挙げられる。
上記(イ)、(ロ)または(ハ)のバインダー形成用成分と、高屈折率複合酸化物微粒子と分散剤を含有する分散液から高屈折率層形成用の塗布組成物が調製される。塗布組成物は、透明支持体上に塗布し、塗膜を形成した後、バインダー形成用成分に応じた方法で硬化され、高屈折率層が形成される。硬化方法は、バインダー成分の種類に応じて適宜選択され、例えば加熱および光照射の少なくともいずれかの手段により、硬化性化合物(例えば、多官能モノマーや多官能オリゴマーなど)の架橋反応または重合反応を生起させる
方法が挙げられる。なかでも、上記(ハ)の組み合わせを用いて光照射することにより硬化性化合物を架橋反応または重合反応させて硬化したバインダーを形成する方法が好ましい。
更に、高屈折率層形成用の塗布組成物を塗布と同時または塗布後に、高屈折率複合酸化物微粒子の分散液に含有される分散剤を架橋反応または重合反応させることが好ましい。
このようにして作製した硬化膜中のバインダーは、例えば、前記した分散剤とバインダーの前駆体である硬化性の多官能モノマーや多官能オリゴマーとが、架橋または重合反応し、バインダーに分散剤のアニオン性基が取りこまれた形となる。さらに、硬化膜中のバインダーは、アニオン性基が無機微粒子の分散状態を維持する機能を有するので、架橋または重合構造がバインダーに皮膜形成能を付与して、高屈折率無機化合物微粒子を含有する硬化膜中の物理強度、耐薬品性、耐候性を改良することができる。
【0142】
上記熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、セルロース樹脂、ポリエーテル樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩ビー酸ビ共重合体樹脂、ポリアクリル樹脂、ポリメタアクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ウレタン樹脂、シリコン樹脂、イミド樹脂等が挙げられる。
また、上記反応硬化型樹脂、即ち、熱硬化型樹脂および電離放射線硬化型樹脂の少なくともいずれかを使用することが好ましい。熱硬化型樹脂には、フェノール樹脂、尿素樹脂、ジアリルフタレート樹脂、メラミン樹脂、グアナミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アミノアルキッド樹脂、メラミン−尿素共縮合樹脂、珪素樹脂、ポリシロキサン樹脂等が挙げられる。電離放射線硬化型樹脂は、例えば、ラジカル重合性不飽和基((メタ)アクリロイルオキシ基、ビニルオキシ基、スチリル基、ビニル基等)およびカチオン重合性基(エポキシ基、チオエポキシ基、ビニルオキシ基、オキセタニル基等)の少なくともいずれかの官能基を有する樹脂で、例えば、比較的低分子量のポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、(メタ)アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂等が挙げられる。
これらの反応硬化型樹脂に必要に応じて、架橋剤(エポキシ化合物、ポリイソシアネート化合物、ポリオール化合物、ポリアミン化合物、メラミン化合物等)、重合開始剤(アゾビス化合物、有機過酸化化合物、有機ハロゲン化合物、オニウム塩化合物、ケトン化合物等のUV光開始剤等)等の硬化剤、重合促進剤(有機金属化合物、酸化合物、塩基性化合物等)等の従来公知の化合物を加えて使用する。具体的には、例えば、山下普三、金子東助「架橋剤ハンドブック」(大成社、1981年刊)記載の化合物が挙げられる。
【0143】
以下、硬化したバインダーの好ましい形成方法である、上記(ハ)の組み合わせを用いて光照射により硬化性化合物を架橋または重合反応させて硬化したバインダーを形成する方法について、主に説明する。
光硬化性の多官能モノマーや多官能オリゴマーの官能基としては、ラジカル重合性またはカチオン重合性のいずれでもよい。
【0144】
ラジカル重合性官能基としては、(メタ)アクリロイル基、ビニルオキシ基、スチリル基、アリル基等のエチレン性不飽和基等が挙げられ、中でも、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
分子内に2個以上のラジカル重合性基を含有する多官能モノマーを含有することが好ましい。
ラジカル重合性多官能モノマーとしては、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも2個有する化合物から選ばれることが好ましい。好ましくは、分子中に2〜6個の末端エチレン性不飽和結合を有する化合物である。このような化合物群はポリマー材料分野において広く知られるものであり、本発明においては、これらを特に限定なく用いることができる。これらは、例えば、モノマー、プレポリマー、すなわち2量体、3量体およびオリゴマー、またはそれらの混合物並びにそれらの共重合体などの化学的形態をもつことができる。
ラジカル重合性モノマー例としては、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸等)や、そのエステル類、アミド類が挙げられ、好ましくは、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アルコール化合物とのエステル、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミド類が挙げられる。また、ヒドロキシル基、アミノ基、メルカプト基等の求核性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル類やアミド類と、単官能もしくは多官能イソシアネート類、エポキシ類との付加反応物、多官能のカルボン酸との脱水縮合反応物等も好適に使用される。また、イソシアナート基やエポキシ基等の親電子性置換基を有する不飽和カルボン酸エステルまたはアミド類と単官能もしくは多官能のアルコール類、アミン類およびチオール類との反応物も好適である。また、別の例として、上記の不飽和カルボン酸の代わりに、不飽和ホスホン酸、スチレン等に置き換えた化合物群を使用することも可能である。
【0145】
脂肪族多価アルコール化合物としては、アルカンジオール、アルカントリオール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサントリオール、イノシットール、シクロヘキサンジメタノール、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、グリセリン、ジグリセリン等が挙げられる。これら脂肪族多価アルコール化合物と、不飽和カルボン酸との重合性エステル化合物(モノエステルまたはポリエステル)、例として、例えば、特開2001−139663号公報明細書段落番号[002
6]〜[0027]記載の化合物が挙げられる。
その他の重合性エステルの例としては、例えば、ビニルメタクリレート、アリルメタクリレート、アリルアクリレート、特公昭46−27926号、特公昭51−47334号、特開昭57−196231号記載の脂肪族アルコール系エステル類や、特開平2−226149号等記載の芳香族系骨格を有するもの、特開平1−165613号記載のアミノ基を有するもの等も好適に用いられる。
【0146】
また、脂肪族多価アミン化合物と不飽和カルボン酸とから形成される重合性アミドの具体例としては、メチレンビス−(メタ)アクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス−(メタ)アクリルアミド、ジエチレントリアミントリス(メタ)アクリルアミド、キシリレンビス(メタ)アクリルアミド、特公昭54−21726号記載のシクロヘキシレン構造を有するもの等を挙げることができる。
【0147】
また、1分子中に2個以上の重合性ビニル基を含有するビニルウレタン化合物(特公昭48−41708号公報等)、ウレタンアクリレート類(特公平2−16765号等)、エチレンオキサイド系骨格を有するウレタン化合物(特公昭62−39418号等)、ポリエステルアクリレート類(特公昭52−30490号等))、更に、日本接着協会誌vol.20、No.7、300〜308頁(1984年)に記載の光硬化性モノマーおよびオリゴマーも使用することができる。
これらラジカル重合性の多官能モノマーは、二種類以上を併用してもよい。
【0148】
次に、高屈折率層のバインダーの形成に用いることができるカチオン重合性基含有の化合物(以下、「カチオン重合性化合物」または「カチオン重合性有機化合物」とも称する)について説明する。
本発明に用いられるカチオン重合性化合物は、活性エネルギー線感受性カチオン重合開始剤の存在下に活性エネルギー線を照射したときに、重合反応および架橋反応の少なくともいずれかを生ずる化合物が使用でき、代表例としては、エポキシ化合物、環状チオエーテル化合物、環状エーテル化合物、スピロオルソエステル化合物、ビニルエーテル化合物などを挙げることができる。本発明では前記したカチオン重合性有機化合物のうちの1種を用いても2種以上を用いてもよい。
【0149】
カチオン重合性基含有化合物としては、1分子中のカチオン重合性基の数は2〜10個が好ましく、特に好ましくは2〜5個である。該化合物の分子量は3000以下であり、好ましくは200〜2000の範囲、特に好ましくは400〜1500の範囲である。分子量が小さすぎると、皮膜形成過程での揮発が問題となり、大きすぎると、高屈折率層形成用組成物との相溶性が悪くなり好ましくない。
上記エポキシ化合物としては脂肪族エポキシ化合物および芳香族エポキシ化合物が挙げられる。
脂肪族エポキシ化合物としては、例えば、脂肪族多価アルコールまたはそのアルキレンオキサイド付加物のポリグリシジルエーテル、脂肪族長鎖多塩基酸のポリグリシジルエステル、グリシジルアクリレートやグリシジルメタクリレートのホモポリマー、コポリマーなどを挙げることができる。さらに、前記のエポキシ化合物以外にも、例えば、脂肪族高級アルコールのモノグリシジルエーテル、高級脂肪酸のグリシジルエステル、エポキシ化大豆油、エポキシステアリン酸ブチルエポキシステアリン酸オクチル、エポキシ化アマニ油、エポキシ化ポリブタジエンなどを挙げることができる。また、脂環式エポキシ化合物としては、少なくとも1個の脂環族環を有する多価アルコールのポリグリシジルエーテル、或いは不飽和脂環族環(例えば、シクロヘキセン、シクロペンテン、ジシクロオクテン、トリシクロデセン等)含有化合物を過酸化水素、過酸等の適当な酸化剤でエポキシ化して得られるシクロヘキセンオキサイドまたはシクロペンテンオキサイド含有化合物などを挙げることができる。
また、芳香族エポキシ化合物としては、例えば少なくとも1個の芳香核を有する1価または多価フェノール或いはそのアルキレンオキサイド付加体のモノまたはポリグリシジルエーテルを挙げることができる。これらのエポキシ化合物として、例えば、特開平11−242101号明細書中の段落番号〔0084〕〜〔0086〕記載の化合物、特開平10−158385号明細書中の段落番号〔0044〕〜〔0046〕記載の化合物等が挙げられる。
これらのエポキシ化合物のうち、速硬化性を考慮すると、芳香族エポキシドおよび脂環式エポキシドが好ましく、特に脂環式エポキシドが好ましい。本発明では、上記エポキシ化合物の1種を単独で使用してもよいが、2種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0150】
環状チオエーテル化合物としては、上記のエポキシ環がチオエポキシ環となる化合物が挙げられる。
環状エーテルとしてのオキセタニル基を含有する化合物としては、具体的には、例えば特開2000−239309号公報中の段落番号〔0024〕〜〔0025〕に記載の化合物等が挙げられる。これらの化合物は、エポキシ基含有化合物と併用することが好ましい。
【0151】
スピロオルソエステル化合物としては、例えば特表2000−506908号公報等記載の化合物を挙げることができる。
ビニル炭化水素化合物としては、スチレン化合物、ビニル基置換脂環炭化水素化合物(ビニルシクロヘキサン、ビニルビシクロヘプテン等)、プロペニル化合物(Journal of Polymer Science:Part A:Polymer Chemistry,Vol.32,2895(1994)記載等)、アルコキシアレン化合物(Journal of Polymer Science:Part A:Polymer Chemistry,Vol.33,2493(1995)記載等)、ビニル化合物(Journal of Polymer Science:Part A:Polymer Chemistry,Vol.34,1015(1996)、特開2002−29162号等記載)、イソプロペニル化合物(Journal of Polymer Science:Part A:Polymer Chemistry,Vol.34,2051
(1996)記載等)等を挙げることができる。
2種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0152】
また、本発明の多官能性化合物は、上記のラジカル重合性基およびカチオン重合性基から選ばれる少なくとも各1種を少なくとも分子内に含有する化合物を用いることが好ましい。例えば、特開平8−277320号公報中の段落番号〔0031〕〜〔0052〕記載の化合物、特開2000−191737号明細書中の段落番号〔0015〕記載の化合物等が挙げられる。本発明に供される化合物は、これらの限定されるものではない。
【0153】
上記したラジカル重合性化合物とカチオン重合性化合物とを、ラジカル重合性化合物:カチオン重合性化合物の質量比で、90:10〜20:80の割合で含有していることが好ましく、80:20〜30:70の割合で含有していることがより好ましい。
【0154】
次に、前記(ハ)の組み合わせにおいて、バインダー前駆体と組み合わせて用いられる重合開始剤について詳述する。
重合開始剤としては、熱重合開始剤、光重合開始剤などが挙げられる。
本発明の重合開始剤(L)は、光照射および加熱の少なくともいずれかの手段により、ラジカル若しくは酸を発生する化合物である。本発明において用いられる光重合開始剤(L)は、極大吸収波長が400nm以下であることが好ましい。このように吸収波長を紫外線領域にすることにより、取り扱いを白灯下で実施することができる。また、近赤外線領域に極大吸収波長を持つ化合物を用いることもできる。
【0155】
まず、ラジカルを発生する化合物(L1)について詳述する。
本発明において好適に用いられるラジカルを発生する化合物(L1)は、光および/または熱照射によりラジカルを発生し、重合性の不飽和基を有する化合物の重合を、開始、促進させる化合物を指す。
公知の重合開始剤や結合解離エネルギーの小さな結合を有する化合物などを、適宜、選択して用いることとができる。また、ラジカルを発生する化合物は、単独または2種以上を併用して用いることができる。
ラジカルを発生する化合物としては、例えば、従来公知の有機過酸化化合物、アゾ系重合開始剤等の熱ラジカル重合開始剤、アミン化合物(特公昭44−20189号公報記載)、有機ハロゲン化化合物、カルボニル化合物、メタロセン化合物、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、有機ホウ酸化合物、ジスルホン化合物等の光ラジカル重合開始剤が挙げられる。
【0156】
上記有機ハロゲン化化合物としては、具体的には、若林 等、「Bull Chem.Soc Japan」42、2924(1969)、米国特許第3,905,815号明細書、特開昭63−298339号、M.P.Hutt"Jurnal of Heterocyclic Chemistry"1(No3),(1970)」等に記載の化合物が挙げられ、特に、トリハロメチル基が置換したオキサゾール化合物:S−トリアジン化合物が挙げられる。
より好適には、少なくとも一つのモノ、ジ、またはトリハロゲン置換メチル基がs−トリアジン環に結合したs−トリアジン誘導体が挙げられる。
【0157】
他の有機ハロゲン化合物の例として、特開平5−27830号公報中の段落番号〔0039〕〜〔0048〕記載のケトン類、スルフィド類、スルホン類、窒素原子含有の複素環類等が挙げられる。
【0158】
上記カルボニル化合物としては、例えば、「最新 UV硬化技術」60〜62ページ((株)技術情報協会刊、1991年)、特開平8−134404号明細書の段落番号〔0015〕〜〔0016〕、同11−217518号明細書の段落番号〔0029〕〜〔0031〕に記載の化合物等が挙げられ、アセトフェノン系、ヒドロキシアセトフェノン系、ベンゾフェノン系、チオキサン系、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン化合物、p−ジメチルアミノ安息香酸エチル、p−ジエチルアミノ安息香酸エチル等の安息香酸エステル誘導体、ベンジルジメチルケタール、アシルフォスフィンオキサイド等が挙げられる。
【0159】
上記有機過酸化化合物としては、例えば、特開2001−139663号明細書の段落番号〔0019〕に記載の化合物等が挙げられる。
上記メタロセン化合物としては、特開平2−4705号公報、特開平5−83588号公報記載の種々のチタノセン化合物、特開平1−304453号公報、特開平1−152109号公報記載の鉄−アレーン錯体等が挙げられる。
【0160】
上記ヘキサアリールビイミダゾール化合物としては、例えば、特公平6−29285号、米国特許第3,479,185号、同第4,311,783号、同第4,622,286号等の各公報記載の種々の化合物等が挙げられる。
【0161】
上記有機ホウ酸塩化合物としては、例えば、特許第2764769号、特開2002−116539号等の各公報、および、Kunz,Martin"Rad Tech'98.Proceeding April 19−22,1998,Chicago"等に記載される有機ホウ酸塩記載される化合物があげられる。例えば、前記特開2002−116539号明細書の段落番号〔0022〕〜〔0027〕記載の化合物が挙げられる。
他の有機ホウ素化合物として、特開平6−348011号公報、特開平7−128785号公報、特開平7−140589号公報、特開平7−306527号公報、特開平7−292014号公報等の有機ホウ素遷移金属配位錯体等が具体例として挙げられる。
【0162】
上記スルホン化合物としては、特開平5−239015号に記載の化合物等、上記ジスルホン化合物としては、特開昭61−166544号明細書に記載の一般式(II)および一般式(III)で示される化合物等が挙げられる。
これらのラジカル発生化合物は、一種のみを添加しても、二種以上を併用してもよい。添加量としては、ラジカル重合性モノマーの全量に対し0.1〜30質量%、好ましくは0.5〜25質量%、特に好ましくは1〜20質量%で添加することができる。この範囲において、高屈折率層用組成物の経時安定性が問題なく高い重合性となる。
【0163】
次に、光重合開始剤(L)として用いることができる光酸発生剤(L2)について詳述する。
酸発生剤(L2)としては、光カチオン重合の光開始剤、色素類の光消色剤、光変色剤、或いは、マイクロレジスト等に使用されている公知の酸発生剤等、公知の化合物およびそれらの混合物等が挙げられる。
また、酸発生剤(L2)として、例えば、有機ハロゲン化化合物、ジスルホン化合物が挙げられる。有機ハロゲン化合物、ジスルホン化合物のこれらの具体例は、前記ラジカルを発生する化合物の記載と同様のものが挙げられる。
オニウム化合物としては、ジアゾニウム塩、アンモニウム塩、イミニウム塩、ホスホニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、アルソニウム塩、セレノニウム塩等が挙げられ、例えば特開2002−29162号公報の段落番号〔0058〕〜〔0059〕に記載の化合物等が挙げられる。
【0164】
本発明において、特に好適に用いられる酸発生剤(L2)としては、オニウム塩が挙げられ、中でも、ジアゾニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、イミニウム塩が、光重合開始の光感度、化合物の素材安定性等の点から好ましい。
【0165】
本発明において、好適に用いることのできるオニウム塩の具体例としては、例えば、特開平9−268205号公報の段落番号〔0035〕に記載のアミル化されたスルホニウム塩、特開2000−71366号明細書の段落番号〔0010〕〜〔0011〕に記載のジアリールヨードニウム塩またはトリアリールスルホニウム塩、特開2001−288205号公報の段落番号〔0017〕に記載のチオ安息香酸S−フェニルエステルのスルホニウム塩、特開2001−133696号公報の段落番号〔0030〕〜〔0033〕に記載のオニウム塩等が挙げられる。
【0166】
酸発生剤の他の例としては、特開2002−29162号公報の段落番号〔0059〕〜〔0062〕に記載の有機金属/有機ハロゲン化物、o−ニトロベンジル型保護基を有する光酸発生剤、光分解してスルホン酸を発生する化合物(イミノスルフォネート等)等の化合物が挙げられる。
これらの酸発生剤は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの酸発生剤は、全カチオン重合性モノマーの全質量に対し0.1〜20質量%、好ましくは0.5〜15質量%、特に好ましくは1〜10質量%の割合で添加することができる。添加量が上記範囲において、高屈折率用組成物の安定性、重合反応性等から好ましい。
【0167】
本発明の高屈折率率用組成物は、ラジカル重合性化合物およびカチオン重合性化合物の合計質量に対して、ラジカル重合開始剤を0.5〜10質量%およびカチオン重合開始剤を1〜10質量%の割合で含有していることが好ましい。より好ましくは、ラジカル重合開始剤を1〜5質量%、およびカチオン重合開始剤を2〜6質量%の割合で含有する。
本発明の高屈折率率用組成物には、紫外線照射により重合反応を行なう場合には、従来公知の紫外線分光増感剤、化学増感剤を併用してもよい。例えばミヒラーズケトン、アミノ酸(グリシンなど)、有機アミン(ブチルアミン、ジブチルアミンなど)等が挙げられる。
【0168】
また、近赤外線照射により重合反応を行なう場合には、近赤外線分光増感剤を併用することが好ましい。
併用する近赤外線分光増感剤は、700nm以上の波長域の少なくとも一部に吸収帯を有する光吸収物質であればよく、分子吸光係数が10000以上の値を有する化合物が好ましい。更には、750〜1400nmの領域に吸収を有し、かつ分子吸光係数が20000以上の値が好ましい。また、420nm〜700nmの可視光波長域に吸収の谷があり、光学的に透明であることがより好ましい。近赤外線分光増感剤は、近赤外線吸収顔料および近赤外線吸収染料として知られる種々の顔料および染料を用いることができる。その中でも、従来公知の近赤外線吸収剤を用いることが好ましい。
市販の染料および文献(例えば、「化学工業」1986年5月号P.45〜51の「近赤外吸収色素」、「90年代機能性色素の開発と市場動向」第2章2.3項(1990)シーエムシー)、「特殊機能色素」(池森・柱谷編集、1986年、(株)シーエムシー発行)、J.FABIAN、Chem.Rev.、92、pp1197〜1226(1992)、日本感光色素研究所が1995年に発行したカタログ、Exciton Inc.が1989年に発行したレーザー色素カタログあるいは特許に記載されている公知の染料が利用できる。
【0169】
(ii)加水分解可能な官能基を含有する有機金属化合物
本発明に用いる高屈折率層のマトッリクスとして、加水分解可能な官能基を含有する有機金属化合物を用いてゾルゲル反応により塗布膜形成後に硬化された膜を形成することも好ましい。有機金属化合物としては、Si、Ti、Zr、Al等からなる化合物が挙げられる。加水分解可能な官能基な基としては、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、ハロゲン原子、水酸基が挙げられ、特に、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキ
シ基等のアルコキシ基が好ましい。
好ましい有機金属化合物は、下記一般式(1’)で表される有機ケイ素化合物およびその部分加水分解物(部分縮合物)である。なお、一般式(1’)で表される有機ケイ素化合物は、容易に加水分解し、引き続いて脱水縮合反応が生じることは良く知られた事実である。
【0170】
一般式(1’):(Ra)m−Si(X)n
一般式(1’)中、Raは、置換もしくは無置換の炭素数1〜30脂肪族基若しくは炭素数6〜14アリール基を表す。Xは、ハロゲン原子(塩素原子、臭素原子等)、OH基、OR2基、OCOR2基を表す。ここで、R2は置換もしくは無置換のアルキル基を表す。mは0〜3の整数を表す。nは1〜4の整数を表す。mとnの合計は4である。但し、mが0の場合は、XはOR2基またはOCOR2基を表す。
一般式(1’)において、Raの脂肪族基としては、好ましくは炭素数1〜18(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、デシル、ドデシル、ヘキサデシル、オクタデシル、ベンジル基、フェネチル基、シクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル、ヘキセニル基、デセニル基、ドデセニル基等)が挙げられる。より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは1〜8のものである。
aのアリール基としては、フェニル、ナフチル、アントラニル等が挙げられ、好ましくはフェニル基である。
【0171】
置換基としては特に制限はないが、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素等)、水酸基、メルカプト基、カルボキシル基、エポキシ基、アルキル基(メチル、エチル、i−プロピル、プロピル、t−ブチル等)、アリール基(フェニル、ナフチル等)、芳香族ヘテロ環基(フリル、ピラゾリル、ピリジル等)、アルコキシ基(メトキシ、エトキシ、i−プロポキシ、ヘキシルオキシ等)、アリールオキシ(フェノキシ等)、アルキルチオ基(メチルチオ、エチルチオ等)、アリールチオ基(フェニルチオ等)、アルケニル基(ビニル、1−プロペニル等)、アルコキシシリル基(トリメトキシシリル、トリエトキシシリル等)、アシルオキシ基(アセトキシ、(メタ)アクリロイル等)、アルコキシカルボニル基(メトキシカルボニル、エトキシカルボニル等)、アリールオキシカルボニル基(フェノキシカルボニル等)、カルバモイル基(カルバモイル、N−メチルカルバモイル、N,N−ジメチルカルバモイル、N−メチル−N−オクチルカルバモイル等)、アシルアミノ基(アセチルアミノ、ベンゾイルアミノ、アクリルアミノ、メタクリルアミノ等)等が好ましい。
【0172】
これらの置換基うちで、更に好ましくは水酸基、メルカプト基、カルボキシル基、エポキシ基、アルキル基、アルコキシシリル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基であり、特に好ましくはエポキシ基、重合性のアシルオキシ基((メタ)アクリロイル)、重合性のアシルアミノ基(アクリルアミノ、メタクリルアミノ)である。またこれら置換基は更に置換されていても良い。
【0173】
2は置換もしくは無置換のアルキルを表す。アルキル基中の置換基の説明はR1と同じである。
mは0〜3の整数を表す。nは1〜4の整数を表す。mとnの合計は4である。mとして好ましくは0、1、2であり、特に好ましくは1である。mが0の場合は、XはOR2基またはOCOR2基を表す。
一般式(1’)の化合物の含有量は、高屈折率層の全固形分の10〜80質量%が好ましく、より好ましくは20〜70質量%、特に好ましくは30〜50質量%である。
【0174】
一般式(1’)の化合物の具体例として、例えば特開2001−166104号公報段落番号[0054]〜[0056]記載の化合物が挙げられる。
【0175】
高屈折率層において、有機バインダーは、シラノール基を有することが好ましい。バインダーがシラノール基を有することで、高屈折率層の物理強度、耐薬品性、耐候性がさらに改良される。
シラノール基は、例えば、高屈折率層形成用の塗布組成物を構成するバインダー形成成分として、バインダー前駆体(硬化性の多官能モノマーや多官能オリゴマーなど)や重合開始剤、高屈折率無機微粒子の分散液に含有される分散剤と共に、架橋または重合性官能基を有する一般式(1’)で表される有機ケイ素化合物を該塗布組成物に配合し、この塗布組成物を透明支持体上に塗布して上記の分散剤、多官能モノマーや多官能オリゴマー、一般式(1’)で表される有機ケイ素化合物を架橋反応または重合反応させることによりバインダーに導入することができる。
【0176】
上記の有機金属化合物を硬化させるための加水分解・縮合反応は、触媒存在下で行われることが好ましい。触媒としては、塩酸、硫酸、硝酸などの無機酸類、シュウ酸、酢酸、ギ酸、トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸、トルエンスルホン酸などの有機酸類、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニアなどの無機塩基類、トリエチルアミン、ピリジンなどの有機塩基類、トリイソプロポキシアルミニウム、テトラブトキシジルコニウム、テトラブトキシチタネートなどの金属アルコキシド類、β−ジケトン類或いはβ−ケトエステル類の金属キレート化合物類等が挙げられる。具体的には、例えば特開2000−275403号公報中の段落番号[0071]〜[0083]記載の化合物等が挙げられる。
【0177】
これらの触媒化合物の組成物中での割合は、有機金属化合物に対し、0.01〜50質量%、好ましくは0.1〜50質量%、さらに好ましくは0.5〜10質量%である。反応条件は有機金属化合物の反応性により適宜調節されることが好ましい。
【0178】
高屈折率層においてマトリックスは、特定の極性基を有することも好ましい。
特定の極性基としては、アニオン性基、アミノ基、および四級アンモニウム基が挙げられる。アニオン性基、アミノ基および四級アンモニウム基の具体例としては、前記分散剤について述べたものと同様のものが挙げられる。
【0179】
特定の極性基を有する高屈折率層のマトリックスは、例えば、高屈折率層形成用の塗布組成物に、高屈折率無機微粒子と分散剤を含む分散液を配合し、硬化膜形成成分として、特定の極性基を有するバインダー前駆体(特定の極性基を有する硬化性の多官能モノマーや多官能オリゴマーなど)と重合開始剤の組み合わせおよび特定の極性基を有し、かつ架橋または重合性官能基を有する一般式(1’)で表される有機ケイ素化合物の少なくともいずれかを配合し、さらに所望により特定の極性基と架橋または重合性官能基とを有する単官能性モノマーを配合し、該塗布組成物を透明支持体上に塗布して、上記の分散剤、単官能性モノマー、多官能モノマー、多官能オリゴマーおよび一般式(1’)で表される有機ケイ素化合物の少なくともいずれかを架橋または重合反応させることにより得られる。
【0180】
特定の極性基を有する単官能性モノマーは、塗布組成物の中で無機微粒子の分散助剤として機能する。さらに、塗布後、分散剤、多官能モノマーや多官能オリオリゴマーと架橋反応、または、重合反応させてバインダーとすることで高屈折率層における無機微粒子の良好な均一な分散性を維持し、物理強度、耐薬品性、耐候性に優れた高屈折率層を作製することができる。
アミノ基または四級アンモニウム基を有する単官能性モノマーの分散剤に対する使用量は、0.5〜50質量%であることが好ましく、さらに好ましくは1〜30質量%である。高屈折率層の塗布と同時または塗布後に、架橋または重合反応によってバインダーを形成すれば、高屈折率層の塗布前に単官能性モノマーを有効に機能させることができる。
【0181】
また、本発明の高屈折率層のマトリックスとして、前記した有機バインダーの(イ)に相当し、従来公知の架橋または重合性官能基を含有する有機ポリマーから硬化・形成されたものが挙げられる。高屈折率層形成後のポリマーが、さらに架橋または重合している構造を有することが好ましい。ポリマーの例には、ポリオレフィン(飽和炭化水素から成る)、ポリエーテル、ポリウレア、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミン、ポリアミドおよびメラミン樹脂が含まれる。なかでも、ポリオレフィン、ポリエーテルおよびポリウレアが好ましく、ポリオレフィンおよびポリエーテルがさらに好ましい。硬化前の有機ポリマーとしての質量平均分子量は1×103〜1×106が好ましく、より好ましくは3×103〜1×105である。
【0182】
硬化前の有機ポリマーは、前記の内容と同様の特定の極性基を有する繰り返し単位と、架橋または重合構造を有する繰り返し単位とを有する共重合体であることが好ましい。ポリマー中のアニオン性基を有する繰り返し単位の割合は、全繰り返し単位中の0.5〜99質量%であることが好ましく3〜95質量%であることがさらに好ましく、6〜90質量%であることが最も好ましい。繰り返し単位は、二つ以上の同じでも異なってもよいアニオン性基を有していてもよい。
シラノール基を有する繰り返し単位を含む場合、その割合は、2〜98mol%であることが好ましく、4〜96mol%であることがさらに好ましく、6〜94mol%であることが最も好ましい。
アミノ基または四級アンモニウム基を有する繰り返し単位を含む場合、その割合は、0.1〜50質量%であることが好ましく、更には0.5〜30質量%が好ましい。
【0183】
なお、シラノール基、アミノ基、および四級アンモニウム基は、アニオン性基を有する繰り返し単位あるいは架橋または重合構造を有する繰り返し単位に含まれていても、同様の効果が得られる。
ポリマー中の架橋または重合構造を有する繰り返し単位の割合は、1〜90質量%であることが好ましく、5〜80質量%であることがさらに好ましく、8〜60質量%であることが最も好ましい。
【0184】
バインダーが架橋または重合してなるマトリックスは、高屈折率層形成用の塗布組成物を透明支持体上に塗布して、塗布と同時または塗布後に、架橋または重合反応によって形成することが好ましい。
本発明の高屈折率層は、更に用途・目的によって適宜他の化合物を添加することが出来る。例えば、高屈折率層の上に低屈折率層を有する場合、高屈折率層の屈折率は透明支持体の屈折率より高いことが好ましく、高屈折率層に、芳香環、フッ素以外のハロゲン化元素(例えば、Br,I,Cl等)、S,N,P等の原子を含有すると有機化合物の屈折率が高くなることから、これらを含有する硬化性化合物などの架橋または重合反応で得られるバインダーも好ましく用いることができる。
【0185】
(高屈折率層の他の組成物)
本発明の高屈折率層は、更に用途・目的によって適宜他の化合物を添加することが出来る。例えば、高屈折率層の屈折率は透明支持体の屈折率より高いことが好ましく、高屈折率層に、芳香環、フッ素以外のハロゲン化元素(例えば、Br,I,Cl等)、S,N,P等の原子を含む硬化性化合物などの架橋または重合反応で得られるバインダーも好ましく用いることができる。
【0186】
高屈折率層には、前記の成分(無機微粒子、重合開始剤、増感剤など)以外に、樹脂、界面活性剤、帯電防止剤、カップリング剤、増粘剤、着色防止剤、着色剤(顔料、染料)、消泡剤、レベリング剤、難燃剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、接着付与剤、重合禁止剤、酸化防止剤、表面改質剤、導電性の金属微粒子等を添加することもできる。
【0187】
[中屈折率層]
本発明の反射防止膜は、高屈折率層が異なる屈折率からなら成る2層の積層構成が好ましい。即ち、上記の方法で組成物を塗設して形成された低屈折率層がそれよりも高い屈折率を有する高屈折率層の上に形成され、高屈折率層に隣接し、低屈折率層の反対側に支持体の屈折率と高屈折率層の屈折率の中間の屈折率を有する中屈折率層が形成された3層積層構造が好ましい。上記したように、各屈折率層の屈折率は相対的なものである。
本発明の中屈折率層を構成する材料は、従来公知の材料の何れでもよいが、上記高屈折率層と同様のものが好ましい。屈折率は無機微粒子の種類、使用量で容易に調整され、上記高屈折率層に記載の内容と同様にして、膜厚30〜500nmの薄層を形成する。更に好ましくは、50〜300nmの膜厚である。
【0188】
[低屈折率層]
低屈折率層は、含フッ素ビニルモノマーから導かれる繰返し単位および側鎖に(メタ)アクリロイル基を有する繰返し単位を必須の構成成分とする共重合体の硬化皮膜によって形成されるのが好ましい。また、前記共重合体と共に低屈折率化と皮膜硬度の両立の観点から多官能(メタ)アクリレート等の硬化剤や、無機微粒子や有機微粒子の充填剤も好ましく用いられる。
【0189】
低屈折率層の屈折率は、1.20〜1.49であることが好ましく、1.25〜1.48であることがより好ましく、1.30〜1.46であることが特に好ましい。
低屈折率層の厚さは、50〜200nmであることが好ましく、70〜100nmであることがさらに好ましい。低屈折率層のヘイズは、3%以下であることが好ましく、2%以下であることがさらに好ましく、1%以下であることが最も好ましい。具体的な低屈折率層の強度は、500g荷重の鉛筆硬度試験でH以上であることが好ましく、2H以上であることがさらに好ましく、3H以上であることが最も好ましい。
また、反射防止フィルムの防汚性能を改良するために、表面の水に対する接触角が90゜以上であることが好ましい。更に好ましくは95゜以上であり、特に好ましくは100゜以上である。
【0190】
以下に本発明の低屈折率層に用いられる上記共重合体について説明する。
含フッ素モノマー単位の具体例としては、例えばフルオロオレフィン類(例えばフルオロエチレン、ビニリデンフルオライド、テトラフルオロエチレン、パーフルオロオクチルエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロ−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール等)、(メタ)アクリル酸の部分または完全フッ素化アルキルエステル誘導体類(例えばビスコート6FM(大阪有機化製)やM−2020(ダイキン製)等)、完全または部分フッ素化ビニルエーテル類等が挙げられるが、好ましくはパーフルオロオレフィン類であり、屈折率、溶解性、透明性、入手性等の観点から特に好ましくはヘキサフルオロプロピレンである。
【0191】
架橋反応性付与のための構成単位としてはグリシジル(メタ)アクリレート、グリシジルビニルエーテルのように分子内にあらかじめ自己架橋性官能基を有するモノマーの重合によって得られる構成単位、カルボキシル基やヒドロキシ基、アミノ基、スルホ基等を有するモノマー(例えば(メタ)アクリル酸、メチロール(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、アリルアクリレート、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、マレイン酸、クロトン酸等)の重合によって得られる構成単位、これらの構成単位に高分子反応によって(メタ)アクリルロイル基等の架橋反応性基を導入した構成単位(例えばヒドロキシ基に対してアクリル酸クロリドを作用させる等の手法で導入できる)が挙げられる。
【0192】
また上記含フッ素モノマー単位、架橋反応性付与のための構成単位以外に溶剤への溶解性、皮膜の透明性等の観点から適宜フッ素原子を含有しないモノマーを共重合することもできる。併用可能なモノマー単位には特に限定はなく、例えばオレフィン類(エチレン、プロピレン、イソプレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン等)、アクリル酸エステル類(アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸2−エチルヘキシル)、メタクリル酸エステル類(メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、エチレングリコールジメタクリレート等)、スチレン誘導体(スチレン、ジビニルベンゼン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等)、ビニルエーテル類(メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル等)、ビニルエステル類(酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、桂皮酸ビニル等)、アクリルアミド類(N−tert−ブチルアクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリルアミド等)、メタクリルアミド類、アクリロニトリル誘導体等を挙げることができる。
【0193】
上記のポリマーに対しては特開平10−25388号および特開平10−147739号各公報に記載のごとく適宜硬化剤を併用しても良い。
【0194】
本発明で特に有用な含フッ素ポリマーは、パーフルオロオレフィンとビニルエーテル類またはビニルエステル類のランダム共重合体である。特に単独で架橋反応可能な基((メタ)アクリロイル基等のラジカル反応性基、エポキシ基、オキセタニル基等の開環重合性基等)を有していることが好ましい。これらの架橋反応性基含有重合単位はポリマーの全重合単位の5〜70mol%を占めていることが好ましく、特に好ましくは30〜60mol%を占めていることである。
本発明に用いられる共重合体の好ましい態様として下記一般式1で表される化合物が挙げられる。
【0195】
【化37】

【0196】
一般式1中、Lは炭素数1〜10の連結基を表し、より好ましくは炭素数1〜6の連結基であり、特に好ましくは2〜4の連結基であり、直鎖であっても分岐構造を有していてもよく、環構造を有していてもよく、O、N、Sから選ばれるヘテロ原子を有していても良い。
好ましい例としては、*−(CH22−O−**、*−(CH22−NH−**、*−(CH24−O−**、*−(CH26−O−**、*−(CH22−O−(CH22−O−**、*−CONH−(CH23−O−**、*−CH2CH(OH)CH2−O−**、*−CH2CH2OCONH(CH23−O−**(*はポリマー主鎖側の連結部位を表し、**は(メタ)アクリロイル基側の連結部位を表す)等が挙げられる。mは0または1を表す。
【0197】
一般式1中、Xは水素原子またはメチル基を表す。硬化反応性の観点から、より好ましくは水素原子である。
【0198】
一般式1中、Aは任意のビニルモノマーから導かれる繰返し単位を表し、ヘキサフルオロプロピレンと共重合可能な単量体の構成成分であれば特に制限はなく、基材への密着性、ポリマーのTg(皮膜硬度に寄与する)、溶剤への溶解性、透明性、滑り性、防塵・防汚性等種々の観点から適宜選択することができ、目的に応じて単一あるいは複数のビニルモノマーによって構成されていても良い。
好ましい例としては、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、シクロへキシルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、グリシジルビニルエーテル、
アリルビニルエーテル等のビニルエーテル類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル等のビニルエステル類、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジルメタアクリレート、アリル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン等の(メタ)アクリレート類、スチレン、p−ヒドロキシメチルスチレン等のスチレン誘導体、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸およびその誘導体等を挙げることができるが、より好ましくはビニルエーテル誘導体、ビニルエステル誘導体であり、特に好ましくはビニルエーテル誘導体である。
【0199】
x、y、zはそれぞれの構成成分のモル%を表し、30≦x≦60、5≦y≦70、0≦z≦65を満たす値を表す。好ましくは、35≦x≦55、30≦y≦60、0≦z≦20の場合であり、特に好ましくは40≦x≦55、40≦y≦55、0≦z≦10の場合である。
【0200】
本発明に用いられる共重合体の特に好ましい態様として下記一般式2で表される化合物が挙げられる。
【0201】
【化38】

【0202】
一般式2においてX、x、yは一般式1と同じ意味を表し、好ましい範囲も同じである。
nは2≦n≦10の整数を表し、2≦n≦6であることが好ましく、2≦n≦4であることが特に好ましい。
Bは任意のビニルモノマーから導かれる繰返し単位を単位を表し、単一組成であっても複数の組成によって構成されていても良い。例としては、前記一般式1におけるAの例として説明したものが挙げられる。
z1およびz2はそれぞれの繰返し単位のmol%を表し、0≦z1≦65、0≦z2≦65を満たす値を表す。それぞれ0≦z1≦30、0≦z2≦10であることが好ましく、0≦z1≦10、0≦z2≦5であることが特に好ましい。
【0203】
一般式1又は2で表される共重合体は、例えば、ヘキサフルオロプロピレン成分とヒドロキシアルキルビニルエーテル成分とを含んでなる共重合体に前記のいずれかの手法により(メタ)アクリロイル基を導入することにより合成できる。
以下に本発明で有用な共重合体の好ましい具体例を示すが本発明はこれらに限定されるものではない。
【0204】
【化39】

【0205】
【化40】

【0206】
【化41】

【0207】
【化42】

【0208】
【化43】

【0209】
本発明に好ましく用いられる共重合体の合成は、種々の重合方法、例えば溶液重合、沈澱重合、懸濁重合、塊状重合、乳化重合によって水酸基含有重合体等の前駆体を合成した後、前記高分子反応によって(メタ)アクリロイル基を導入することにより行なうことができる。重合反応は回分式、半連続式、連続式等の公知の操作で行なうことができる。
【0210】
前記したとおり、低屈折率層の皮膜硬度の観点からは硬化剤等の添加剤を添加することは必ずしも有利ではないが、高屈折率層との界面密着性等の観点から、多官能(メタ)アクリレート化合物、多官能エポキシ化合物、ポリイソシアネート化合物、アミノプラスト、多塩基酸またはその無水物等の硬化剤を添加することもできる。これらを添加する場合には低屈折率層皮膜の全固形分に対して0〜30質量%の範囲であることが好ましく、0〜20質量%の範囲であることがより好ましく、0〜10質量%の範囲であることが特に好ましい。
【0211】
また、防汚性、耐水性、耐薬品性、滑り性等の特性を付与する目的で、公知のシリコーン系あるいはフッ素系の防汚剤、滑り剤等を適宜添加することもできる。これらの添加剤を添加する場合には低屈折率層全固形分の0〜20質量%の範囲で添加されることが好ましく、より好ましくは0〜10質量%の範囲で添加される場合であり、特に好ましくは0〜5質量%の場合である。
【0212】
ラジカル重合開始剤としては熱の作用によりラジカルを発生するもの、あるいは光の作用によりラジカルを発生するもののいずれの形態も可能である。
【0213】
熱の作用によりラジカル重合を開始する化合物としては、有機あるいは無機過酸化物、有機アゾ及びジアゾ化合物等を用いることができる。
具体的には、有機過酸化物として過酸化ベンゾイル、過酸化ハロゲンベンゾイル、過酸化ラウロイル、過酸化アセチル、過酸化ジブチル、クメンヒドロぺルオキシド、ブチルヒドロぺルオキシド、無機過酸化物として、過酸化水素、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム等、アゾ化合物として2−アゾ−ビス−イソブチロニトリル、2−アゾ−ビス−プロピオニトリル、2−アゾ−ビス−シクロヘキサンジニトリル等、ジアゾ化合物としてジアゾアミノベンゼン、p−ニトロベンゼンジアゾニウム等を挙げることができる。
【0214】
光の作用によりラジカル重合を開始する化合物を使用する場合は、活性エネルギー線の照射によって皮膜の硬化が行われる。
このような光ラジカル重合開始剤の例としては、アセトフェノン類、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、ホスフィンオキシド類、ケタール類、アントラキノン類、チオキサントン類、アゾ化合物、過酸化物類、2,3−ジアルキルジオン化合物類、ジスルフィド化合物類、フルオロアミン化合物類や芳香族スルホニウム類がある。アセトフェノン類の例には、2,2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアセトフェノン、1−ヒドロキシジメチルフェニルケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−4−メチルチオ−2−モルフォリノプロピオフェノンおよび2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノンが含まれる。ベンゾイン類の例には、ベンゾインベンゼンスルホン酸エステル、ベンゾイントルエンスルホン酸エステル、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテルおよびベンゾインイソプロピルエーテルが含まれる。ベンゾフェノン類の例には、ベンゾフェノン、2,4−ジクロロベンゾフェノン、4,4−ジクロロベンゾフェノンおよびp−クロロベンゾフェノンが含まれる。ホスフィンオキシド類の例には、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシドが含まれる。これらの光ラジカル重合開始剤と併用して増感色素も好ましく用いることができる。
【0215】
熱または光の作用によってラジカル重合を開始する化合物の添加量としては、炭素−炭素二重結合の重合を開始できる量であれば良いが、一般的には低屈折率層形成組成物中の全固形分に対して0.1〜15質量%が好ましく、より好ましくは0.5〜10質量%であり、特に好ましくは2〜5質量%の場合である。
【0216】
低屈折率層塗布液組成物に含まれる溶剤としては、含フッ素共重合体を含む組成物が沈殿を生じることなく、均一に溶解または分散されるものであれば特に制限はなく2種類以上の溶剤を併用することもできる。好ましい例としては、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等)、エステル類(酢酸エチル、酢酸ブチル等)、エーテル類(テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等)、アルコール類(メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、エチレングリコール、等)、芳香族炭化水素類(トルエン、キシレン等)、水などを挙げることができる。
【0217】
低屈折率層は、含フッ素化合物以外に充填剤(例えば、無機微粒子や有機微粒子等)、シランカップリング剤、滑り剤(ジメチルシリコーンなどのシリコーン化合物等)、界面活性剤等を含有することができる。特に、無機微粒子、シランカップリング剤、滑り剤を含有することが好ましい。
【0218】
次に本発明の低屈折率層中に、含有することのできる無機微粒子について、以下に記載する。
無機微粒子の塗設量は、1mg/m2〜100mg/m2が好ましく、より好ましくは5mg/m2〜80mg/m2、更に好ましくは10mg/m2〜60mg/m2である。無機微粒子の塗設量が上記範囲であると、耐擦傷性の改良効果が発揮され、しかも低屈折率層表面に微細な凹凸ができることなく、この微細な凹凸に基づく黒の締まりなどの外観や積分反射率が悪化する現象も起こらない。
該無機微粒子は、低屈折率層に含有させることから、低屈折率であることが望ましい。例えば、フッ化マグネシウムやシリカの微粒子が挙げられる。特に、屈折率、分散安定性、コストの点で、シリカ微粒子が好ましい。シリカ微粒子の平均粒径は、低屈折率層の厚みの30%以上150%以下が好ましく、より好ましくは35%以上80%以下、更に好ましくは40%以上60%以下である。即ち、低屈折率層の厚みが100nmであれば、シリカ微粒子の粒径は30nm以上150nm以下が好ましく、より好ましくは35nm以上80nm以下、更に好ましくは、40nm以上60nm以下である。
シリカ微粒子の粒径が上記範囲であると、耐擦傷性の改良効果が発揮され、しかも低屈折率層表面に微細な凹凸ができることなく、この微細な凹凸に基づく黒の締まりなどの外観や積分反射率が悪化する現象も起こらない。
シリカ微粒子は、結晶質でも、アモルファスのいずれでも良く、また単分散粒子でも、所定の粒径を満たすならば凝集粒子でも構わない。形状は、球状が最も好ましいが、不定形であっても問題無い。
ここで、無機微粒子の平均粒径はコールターカウンターにより測定される。
【0219】
低屈折率層の屈折率上昇をより一層少なくするために、中空のシリカ微粒子を用いることが好ましく、該中空シリカ微粒子は屈折率が1.17〜1.40、より好ましくは1.17〜1.35、さらに好ましくは1.17〜1.30である。ここでの屈折率は粒子全体として屈折率を表し、中空シリカ粒子を形成している外殻のシリカのみの屈折率を表すものではない。この時、粒子内の空腔の半径をa、粒子外殻の半径をbとすると、下記数式(VIII)で表される空隙率xは、好ましくは10〜60%、さらに好ましくは20〜60%、最も好ましくは30〜60%である。
数式(VIII):x=(4πa3/3)/(4πb3/3)×100
中空のシリカ粒子をより低屈折率に、より空隙率を大きくしようとすると、外殻の厚みが薄くなり、粒子の強度としては弱くなるため、耐擦傷性の観点から1.17未満の低屈折率の粒子は成り立たない。
なお、これら中空シリカ粒子の屈折率はアッベ屈折率計(アタゴ(株)製)にて測定をおこなった。
【0220】
また、平均粒径が低屈折率層の厚みの25%未満であるシリカ微粒子(「小サイズ粒径
のシリカ微粒子」と称す)の少なくとも1種を上記の粒径のシリカ微粒子(「大サイズ粒径のシリカ微粒子」と称す)と併用することが好ましい。
小サイズ粒径のシリカ微粒子は、大サイズ粒径のシリカ微粒子同士の隙間に存在することができるため、大サイズ粒径のシリカ微粒子の保持剤として寄与することができる。
小サイズ粒径のシリカ微粒子の平均粒径は、低屈折率層が100nmの場合、1nm以上20nm以下が好ましく、5nm以上15nm以下が更に好ましく、10nm以上15nm以下が特に好ましい。このようなシリカ微粒子を用いると、原料コストおよび保持剤効果の点で好ましい。
【0221】
シリカ微粒子は、分散液中あるいは塗布液中で、分散安定化を図るために、あるいはバインダー成分との親和性、結合性を高めるために、プラズマ放電処理やコロナ放電処理のような物理的表面処理、界面活性剤やカップリング剤等による化学的表面処理がなされていても良い。カップリング剤の使用が特に好ましい。カップリング剤としては、アルコキシメタル化合物(例、チタンカップリング剤、シランカップリング剤)が好ましく用いられる。なかでも、シランカップリング処理が特に有効である。
上記カップリング剤は、低屈折率層の無機フィラーの表面処理剤として該層塗布液調製以前にあらかじめ表面処理を施すために用いられるが、該層塗布液調製時にさらに添加剤として添加して該層に含有させることが好ましい。
シリカ微粒子は、表面処理前に、媒体中に予め分散されていることが、表面処理の負荷軽減のために好ましい。
以上シリカ微粒子について述べたことは、他の無機粒子についても適用される。
【0222】
シランカップリング剤としては、下記一般式Aで表される化合物及びその誘導体化合物の少なくともいずれかを用いることができる。
一般式A:X−Si−(OR)3
一般式A中、Xは有機官能基、Rはアルキル基を示す。好ましいのは、Xに水酸基、メルカプト基、カルボキシル基、エポキシ基、アルキル基、アルコキシシリル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基を含有するシランカップリング剤であり、特に好ましいのはエポキシ基、重合性のアシルオキシ基((メタ)アクリロイル)、重合性のアシルアミノ基(アクリルアミノ、メタクリルアミノ)を含有するシランカップリング剤である。
【0223】
一般式Aで表される化合物で特に好ましいのは、Xに架橋又は重合性官能基として(メタ)アクリロイル基を有する化合物であり、例えば、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。
滑り剤としては、ジメチルシリコーン、及びポリシロキサンセグメントが導入された含フッ素化合物が好ましい。
【0224】
[その他の層]
積層型反射防止膜には、さらに、防湿層、帯電防止層、プライマー層、下塗り層や保護層、シールド層、滑り層を設けてもよい。シールド層は、電磁波や赤外線を遮蔽するために設けられる。
【0225】
[反射防止膜の形成]
多層構成の反射防止膜の各層は、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ダイコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法やエクストルージョンコート法(米国特許2681294号明細書記載)により、塗布により形成することができるが、エクストルージョンコート法、マイクログラビアコート法あるいはワイヤーバーコート法で塗布することが好ましく、更には特開2003−211052号公報に記載されるダイコーターを用いて塗布を行うことがより好ましい。二層以上を同時に塗布してもよい。同時塗布の方法については、米国特許2761791号、同
2941898号、同3508947号、同3526528号の各明細書および原崎勇次著、コーティング工学、253頁、朝倉書店(1973)に記載がある。
反射防止膜の形成の際の塗布速度は速いほうが生産性が高く、コスト削減に繋がるため好ましい。具体的には25m/min以上で塗布することが好ましく、更に好ましくは35m/min以上、更に好ましくは45m/min以上である。本発明においては特に本発明の前記塗布組成物を上記塗布速度で塗布することが好ましい。
本発明の反射防止フィルムにおいては、少なくとも高屈折率層と低屈折率層を積層するので、ゴミ、ほこり等の異物が存在したとき、輝点欠陥が目立ちやすい。本発明における輝点欠陥とは、目視により、塗膜上の反射で見える欠陥のことで、塗布後の反射防止フィルムの裏面を黒塗りする等の操作により目視で検出できる。目視により見える輝点欠陥は、一般的に50μm以上である。輝点欠陥が多いと製造時の得率が低下し、大面積の反射防止フィルムを製造することができない。
本発明の反射防止フィルムでは、輝点欠陥の数を1平方メートル当たり20個以下、好ましくは10個以下、さらに好ましくは5個以下、特に好ましくは1個以下とする。
【0226】
本発明の反射防止フィルムを連続的に製造するために、ロール状の支持体フィルムを連続的に送り出す工程、塗布液を塗布・乾燥する工程、塗膜を硬化する工程、硬化した層を有する支持体フィルムを巻き取る工程が行われる。
ロール状のフィルム支持体からフィルム支持体がクリーン室に連続的に送り出され、クリーン室内で、フィルム支持体に帯電している静電気を静電除電装置により除電し、引き続きフィルム支持体上に付着している異物を、除塵装置により除去する。引き続きクリーン室内に設置されている塗布部で塗布液がフィルム支持体上に塗布され、塗布されたフィルム支持体は乾燥室に送られて乾燥される。
乾燥した塗布層を有するフィルム支持体は乾燥室から放射線硬化室へ送り出され、放射線が照射されて塗布層に含有されるモノマーが重合して硬化する。さらに、放射線により硬化した層を有するフィルム支持体は熱硬化部へ送られ、加熱されて硬化を完結させ、硬化が完結した層を有するフィルム支持体は巻き取られてロール状となる。
上記工程は、各層の形成毎に行ってもよいし、塗布部−乾燥室−放射線硬化部−熱硬化室を複数設けて、各層の形成を連続的に行うことも可能である。
【0227】
本発明における、輝点欠陥の少ない反射防止フィルムを作成するためには、前記したように高屈折率層用塗布物中の高屈折率超微粒子分散度を精密に制御すること、および塗布液の精密濾過操作が挙げられる。と同時に、反射防止層を形成する各層は上記の塗布部における塗布工程および乾燥室で行われる乾燥工程が高い清浄度の空気雰囲気下で行われ、かつ塗布が行われる前に、フィルム上のゴミ、ほこりが充分に除かれていることが好ましい。塗布工程および乾燥工程の空気清浄度は、米国連邦規格209Eにおける空気清浄度の規格に基づき、クラス10(0.5μm以上の粒子が353個/(立方メートル)以下)以上であることが望ましく、更に好ましくはクラス1(0.5μm以上の粒子が35.5個/(立方メートル)以下)以上であることが望ましい。また、空気清浄度は、塗布−乾燥工程以外の送り出し、巻き取り部等においても高いことがより好ましい。
【0228】
塗布が行われる前工程としての除塵工程に用いられる除塵方法として、特開昭59−150571号公報に記載のフィルム表面に不織布や、ブレード等を押しつける方法、特開平10−309553号公報に記載の清浄度の高い空気を高速で吹き付けて付着物をフィルム表面から剥離させ、近接した吸い込み口で吸引する方法、特開平7−333613号公報に記載される超音波振動する圧縮空気を吹き付けて付着物を剥離させ、吸引する方法(伸興社製、ニューウルトラクリーナー等)等の乾式除塵法が挙げられる。
また、洗浄槽中にフィルムを導入し、超音波振動子により付着物を剥離させる方法、特公昭49−13020号公報に記載されているフィルムに洗浄液を供給したあと、高速空気の吹き付け、吸い込みを行なう方法、特開2001−38306号に記載のように、ウ
ェブを液体でぬらしたロールで連続的に擦った後、擦った面に液体を噴射して洗浄する方法等の湿式除塵法を用いることができる。このような除塵方法の内、超音波除塵による方法もしくは湿式除塵による方法が、除塵効果の点で特に好ましい。
【0229】
また、このような除塵工程を行う前に、フィルム支持体上の静電気を除電しておくことは、除塵効率を上げ、ゴミの付着を抑える点で特に好ましい。このような除電方法としては、コロナ放電式のイオナイザ、UV、軟X線等の光照射式のイオナイザ等を用いることができる。除塵、塗布前後のフィルム支持体の帯電圧は、1000V以下が望ましく、好ましくは300V以下、特に好ましくは、100V以下である。
【0230】
[塗布用分散媒]
塗布用分散媒としては、特に限定されない。単独でも2種以上を混合して使用してもよい。好ましい分散媒体は、トルエン、キシレン、スチレン等の芳香族炭化水素類、クロルベンゼン、オルトージクロルベンゼン等の塩化芳香族炭化水素類、モノクロルメタン等のメタン誘導体、モノクロルエタン等のエタン誘導体等を含む塩化脂肪族炭化水素類、メタノール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール等のアルコール類、酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類、エチルエーテル、1,4−ジオキサン等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、エチレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類、シクロヘキサン等の脂環式炭化水素類、ノルマルヘキサン等の脂肪族炭化水素類、脂肪族または芳香族炭化水素の混合物等が該当する。これら溶媒の中でもケトン類の単独あるいは2種以上の混合により作成される塗布用分散媒が特に好ましい。
【0231】
[濾過]
塗布に用いる塗布液は、塗布前に濾過することが好ましい。濾過のフィルターは、塗布液中の成分が除去されない範囲でできるだけ孔径の小さいものを使うことが好ましい。濾過には絶対濾過精度が0.1〜10μmのフィルターが用いられ、さらには絶対濾過精度が0.1〜5μmであるフィルタを用いることが好ましく用いられる。フィルターの厚さは、0.1〜10mmが好ましく、更には0.2〜2mmが好ましい。その場合、ろ過圧力は15kgf/cm2 以下、より好ましくは10kgf/cm2 以下、更には2kgf/cm2 以下で濾過することが好ましい。
ろ過フィルター部材は、塗布液に影響を及ぼさなければ特に限定されない。具体的には、前記した無機化合物の湿式分散物のろ過部材と同様のものが挙げられる。
また、濾過した塗布液を、塗布直前に超音波分散して、脱泡、分散物の分散保持を補助することも好ましい。
【0232】
本発明において、反射防止フィルム各層の硬化方法については、塗布組成物を塗布と同時、または塗布後に光照射、電子線ビーム照射や加熱することによる架橋反応、又は、重合反応により形成することが好ましい。
反射防止フィルムの各層が電離放射線硬化性の化合物の架橋反応、又は、重合反応により形成される場合、架橋反応、又は、重合反応は酸素濃度が10体積%以下の雰囲気で実施することが好ましい。酸素濃度が10体積%以下の雰囲気で形成することにより、物理強度、耐薬品性に優れた最外層を得ることができる。
好ましくは酸素濃度が5体積%以下であり、更に好ましくは酸素濃度が1体積%以下、特に好ましくは酸素濃度が0.5体積%以下、最も好ましくは0.1体積%以下である。
【0233】
酸素濃度を10体積%以下にする手法としては、大気(窒素濃度約79体積%、酸素濃度約21体積%)を別の気体で置換することが好ましく、特に好ましくは窒素で置換(窒素パージ)することである。
【0234】
光照射の光源は、紫外線光域或いは近赤外線光のものであればいずれでもよく、紫外線光の光源として、超高圧、高圧、中圧、低圧の各水銀灯、ケミカルランプ、カーボンアーク灯、メタルハライド灯、キセノン灯、太陽光等が挙げられる。波長350〜420nmの入手可能な各種レーザー光源をマルチビーム化して照射してもよい。また、近赤外光光源としてはハロゲンランプ、キセノンランプ、高圧ナトリウムランプが挙げられ、波長750〜1400nmの入手可能な各種レーザー光源をマルチビーム化して照射してもよい。
近赤外光光源を用いる場合、紫外線光源と組み合わせて用いても良いし、或は塗布面側と反対の基材面側より光照射しても良い。塗膜層内の深さ方向での膜硬化が表面近傍と遅滞無く進行し均一な硬化状態の硬化膜が得られる。
照射する紫外線の照射強度は、0.1〜1000mW/cm2程度が好ましく、塗布膜表面上での光照射量は10〜1000mJ/cm2が好ましい。また、光照射工程での塗布膜の温度分布は、均一なほど好ましく、±3℃以内が好ましく、更には±1.5℃以内に制御されることが好ましい。この範囲において、塗布膜の面内および層内深さ方向での重合反応が均一に進行するので好ましい。
【0235】
[偏光板]
本発明の反射防止フィルムを偏光子の表面保護フィルムの片側として用いる場合には、透明支持体の反射防止層が形成される面とは反対側の面をアルカリによって鹸化処理することが必要である。アルカリ鹸化処理の具体的手段としては、以下の2つから選択することができる。汎用のトリアセチルセルロースフィルムと同一の工程で処理できる点で(1)が優れているが、反射防止膜面まで鹸化処理されるため、表面がアルカリ加水分解されて膜が劣化する点、鹸化処理液が残ると汚れになる点が問題になり得る。その場合には、特別な工程となるが、(2)が優れる。
(1)透明支持体上に反射防止層を形成後に、アルカリ液中に少なくとも1回浸漬することで、該フィルムの裏面を鹸化処理する。
(2)透明支持体上に反射防止層を形成する前または後に、アルカリ液を該反射防止フィルムの反射防止フィルムを形成する面とは反対側の面に塗布し、加熱、水洗および/または中和することで、該フィルムの裏面だけを鹸化処理する。
【0236】
偏光板は、偏光膜を両面から挟む2枚の保護フィルムで主に構成される。本発明の反射防止膜は、偏光膜を両面から挟む2枚の保護フィルムのうち少なくとも1枚に用いることが好ましい。本発明の反射防止膜が保護フィルムを兼ねることで、偏光板の製造コストを低減できる。また、本発明の反射防止膜を最表層に使用することにより、外光の映り込み等が防止され、耐傷性、防汚性等も優れた偏光板とすることができる。
【0237】
偏光膜としては公知の偏光膜や、偏光膜の吸収軸が長手方向に平行でも垂直でもない長尺の偏光膜から切り出された偏光膜を用いてもよい。偏光膜の吸収軸が長手方向に平行でも垂直でもない長尺の偏光膜は以下の方法により作成される。
即ち、連続的に供給されるポリマーフィルムの両端を保持手段により保持しつつ張力を付与して延伸した偏光膜で、少なくともフィルム幅方向に1.1〜20.0倍に延伸し、フィルム両端の保持装置の長手方向進行速度差が3%以内であり、フィルム両端を保持する工程の出口におけるフィルムの進行方向と、フィルムの実質延伸方向のなす角が、20〜70゜傾斜するようにフィルム進行方向を、フィルム両端を保持させた状態で屈曲させてなる延伸方法によって製造することができる。特に45°傾斜させたものが生産性の観点から好ましく用いられる。
偏光膜の延伸方法は特開2002−86554号公報に記載の方法に従うことができる。
【0238】
本発明の反射防止膜およびこの反射防止膜を低屈折率層が最表面になるように配置して
用いた前記本発明の偏光板は、ディスプレイ装置、例えば液晶表示装置(LCD)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)や陰極管表示装置(CRT)のような画像表示装置に適用することができる。本発明の反射防止膜は透明支持体を有しているので、透明支持体側を画像表示装置の画像表示面に接着して用いられる。本発明の偏光板の場合は、低屈折率層がディスプレイ装置の最表面になるようにディスプレイ装置の表示面に接着して用いられる。
【0239】
本発明の反射防止膜は、偏光膜の表面保護フィルムの片側として用いた場合、ツイステットネマチック(TN)、スーパーツイステットネマチック(STN)、バーティカルアライメント(VA)、インプレインスイッチング(IPS)、オプティカリーコンペンセイテットベンドセル(OCB)、電界制御複屈折(Electrically Controlled Birefigence(ECB))等のモードの透過型、反射型、または半透過型の液晶表示装置に好ましく用いることができる。
【0240】
VAモードの液晶セルには、(1)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直に配向させ、電圧印加時に実質的に水平に配向させる狭義のVAモードの液晶セル(特開平2−176625号公報記載)に加えて、(2)視野角拡大のため、VAモードをマルチドメイン化した(MVAモードの)液晶セル(SID97、Digest of tech. Papers(予稿集)28(1997)845記載)、(3)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直配向させ、電圧印加時にねじれマルチドメイン配向させるモード(n−ASMモード)の液晶セル(日本液晶討論会の予稿集58〜59(1998)記載)および(4)SURVAIVALモードの液晶セル(LCDインターナショナル98で発表)が含まれる。
【0241】
OCBモードの液晶セルは、棒状液晶性分子を液晶セルの上部と下部とで実質的に逆の方向に(対称的に)配向させるベンド配向モードの液晶セルを用いた液晶表示装置であり、米国特許4583825号、同5410422号の各明細書に開示されている。棒状液晶性分子が液晶セルの上部と下部とで対称的に配向しているため、ベンド配向モードの液晶セルは、自己光学補償機能を有する。そのため、この液晶モードは、OCB(Optically Compensatory Bend)液晶モードとも呼ばれる。ベンド配向モードの液晶表示装置は、応答速度が速いとの利点がある。
【0242】
ECBモードの液晶セルでは、電圧無印加時に棒状液晶性分子が実質的に水平配向しており、カラーTFT液晶表示装置として最も多く利用されており、多数の文献に記載がある。例えば「EL、PDP、LCDディスプレイ」東レリサーチセンター発行(2001)などに記載されている。
【0243】
特にTNモードやIPSモードの液晶表示装置に対しては、特開2001−100043号公報等に記載されているように、視野角拡大効果を有する光学補償フィルムを偏光膜の裏表2枚の保護フィルムの内の本発明の反射防止膜とは反対側の面に用いることにより、1枚の偏光板の厚みで反射防止効果と視野角拡大効果を有する偏光板を得ることができ、特に好ましい。
【実施例】
【0244】
本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。尚、「部」「%」は特に断らない限り、質量換算に基づくものとする。
【0245】
(ハードコート層用塗布液(HCL−1)の調製)
トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA、日本化薬(株)製)742.0質量部に、質量平均分子量15000のポリ(グリシジルメタクリレート)277質量部、メチルエチルケトン728.0質量部、シクロヘキサノン503.0質量部及び光重合開始剤(イルガキュア184、日本チバガイギー(株)製)51.0質量部をミキシングタンクに投入して攪拌した。孔径30μmのポリプロピレン製フィルターで濾過してハードコート層用の塗布液(HCL−1)を調製した。
【0246】
(防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−2)の調製)
市販ジルコニア含有UV硬化型ハードコート液(デソライトZ7404、JSR(株)製、固形分濃度約61%、固形分中ZrO2含率約70%、重合性モノマー、重合開始剤含有)284g、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(DPHA、日本化薬(株)製)86gを混合し、更に、メチルイソブチルケトン60g、メチルエチルケトン17gで希釈した。更に、シランカップリング剤(KBM−5103、信越化学(株)製)28.5gを混合攪拌した。さらにこの溶液に平均粒径3.0μmの分級強化架橋PMMA粒子(屈折率1.49、MXS−300、綜研化学(株)製)の30%メチルイソブチルケトン分散液をポリトロン分散機にて10000rpmで20分分散した分散液を30g加え、次いで、平均粒径1.5μmのシリカ粒子(屈折率1.46、シーホスタKE−P150、日本触媒(株)製)の30%メチルエチルケトン分散液をポリトロン分散機にて10000rpmで30分分散した分散液を95g加えて混合攪拌し、完成液とした。上記混合液を孔径30μmのポリプロピレン製フィルターでろ過して防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−2)を調製した。
【0247】
(防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−3)の調製)
市販ジルコニア含有UV硬化型ハードコート液(デソライトZ7404、JSR(株)製、固形分濃度約61%、固形分中ZrO2含率約70%、重合性モノマー、重合開始剤含有)284g、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(DPHA、日本化薬(株)製)86gを混合し、更に、メチルイソブチルケトン60g、メチルエチルケトン17gで希釈した。更に、シランカップリング剤(KBM−5103、信越化学(株)製)28.5gを混合攪拌した。さらに、この溶液にフッ素系ポリマー(P−3、40質量% MEK溶液)を0.26g加えて混合撹拌した。さらに、この溶液に平均粒径3.0μmの分級強化架橋PMMA粒子(屈折率1.49、MXS−300、綜研化学(株)製)の30%メチルイソブチルケトン分散液をポリトロン分散機にて10000rpmで20分分散した分散液を30g加え、次いで、平均粒径1.5μmのシリカ粒子(屈折率1.46、シーホスタKE−P150、日本触媒(株)製)の30%メチルエチルケトン分散液をポリトロン分散機にて10000rpmで30分分散した分散液を95g加えて混合攪拌し、完成液とした。上記混合液を孔径30μmのポリプロピレン製フィルターでろ過して防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−3)を調製した。
【0248】
(防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−4)の調製)
上記、防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−3)に、フッ素系ポリマー(P−3)の代わりにフッ素系ポリマー(P−25、40wt% MEK溶液)0.26g添加した以外は、添加量も含め上記塗布液(HCL−3)と全く同様にして防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−4)を調製した。
【0249】
(防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−5)の調製)
上記防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−3)に、フッ素系ポリマー(P−3)の代わりにフッ素系ポリマー(P−91、40質量% MEK溶液)0.26g添加した以外は、添加量も含め上記塗布液(HCL−3)と全く同様にして防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−5)を調製した。
【0250】
(防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−6)の調製)
上記防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−3)に、フッ素系ポリマー(P−3)の代わりにフッ素系ポリマー(P−62、40質量% MEK溶液)0.26g添加した以外は、添加量も含め上記塗布液(HCL−3)と全く同様にして防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−6)を調製した。
【0251】
(防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−7)の調製)
上記防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−3)に、フッ素系ポリマー(P−3)の代わりにフッ素系ポリマー(P−45、40質量% MEK溶液)0.26g添加した以外は、添加量も含め上記塗布液(HCL−3)と全く同様にして防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−7)を調製した。
【0252】
(防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−8)の調製)
上記防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−3)に、フッ素系ポリマー(P−3)の代わりに下記のフッ素ポリマー(R−2、40質量% MEK溶液)0.26g添加した以外は、添加量も含め上記塗布液(HCL−3)と全く同様にして防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−8)を調製した。
R−2
【0253】
【化44】

【0254】
(防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−9)の調製)
ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(DPHA、日本化薬(株)製)279.4質量部、光重合開始剤(イルガキュア184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)を13.7質量部、架橋アクリルスチレン粒子(平均粒径3.5μm、屈折率1.55、綜研化学(株)製、30質量%MiBK分散液。ポリトロン分散機にて10000rpmで20分分散後使用)を239.9質量部、フッ素系レベリング剤(P−108、40質量% MEK溶液)を1.14質量部、シランカップリング剤(KBM−5103、信越化学工業(株)製)を60.5質量部、MiBKを210.0質量部、MEKを112.5質量部、プロピレングリコールを28.1質量部、CAB−531−1(セルロースアセテートブチレート、分子量40,000、イーストマンケミカル(株)製、20質量%MiBK溶液)を55.0質量部加えて混合撹拌し、完成液とした。上記混合液を孔径30μmのポリプロピレン製フィルターでろ過して防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−9)を調製した。
【0255】
(防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−10)の調製)
上記防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−3)に、フッ素系ポリマー(P−143)の代わりにフッ素系ポリマー(P−97、40質量% MEK溶液)1.14質量部添加した以外は、添加量も含め上記塗布液(HCL−9)と全く同様にして防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−10)を調製した。
【0256】
(二酸化チタン微粒子分散液Aの調製)
二酸化チタン微粒子としては、コバルトを含有し、かつ水酸化アルミニウムと水酸化ジルコニウムを用いて表面処理を施した二酸化チタン微粒子(MPT−129C、石原産業(株)製、TiO2:Co34:Al23:ZrO2=90.5:3.0:4.0:0.5質量比)を使用した。
この粒子256質量部に、下記分散剤42質量部、およびシクロヘキサノン702質量部を添加してダイノミルにより分散し、質量平均径70nmの二酸化チタン分散液Aを調製した。
分散剤
【0257】
【化45】

【0258】
(中屈折率層用塗布液(ML−1)の調製)
上記の二酸化チタン分散液59.6質量部に、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(DPHA)40.7質量部、光重合開始剤(イルガキュア907)2.19質量部、光増感剤(カヤキュアーDETX、日本化薬(株)製)0.8質量部、メチルエチルケトン280質量部およびシクロヘキサノン1049.0質量部を添加して攪拌した。十分に攪拌ののち、孔径0.4μmのポリプロピレン製フィルターで濾過して中屈折率層用塗布液(ML−1)を調製した。
【0259】
(高屈折率層用塗布液(HL−1)の調製)
上記二酸化チタン分散液A 430.7質量部に、ジペンタエリスリトールペンタアク
リレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(DPHA、日本化薬(株)製)36.6質量部、光重合開始剤(イルガキュア907、日本チバガイギー(株)製)3.0質量部、光増感剤(カヤキュア−DETX、日本化薬(株)製)1.0質量部、メチルエチルケトン535.0質量部、およびシクロヘキサノン495質量部を添加して攪拌した。孔径0.4μmのポリプロピレン製フィルターで濾過して高屈折率層用の塗布液(HL−1)を調製した。
【0260】
(高屈折率層用塗布液(HL−2)の調製)
上記の二酸化チタン分散液A 430.7質量部に、ジペンタエリスリトールペンタア
クリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(DPHA、日本化薬(株)製)36.6質量部、光重合開始剤(イルガキュア907、日本チバガイギー(株)製)3.0質量部、光増感剤(カヤキュア−DETX、日本化薬(株)製)1.0質量部、フッ素系ポリマー(P−3、40質量% MEK溶液)0.26質量部、メチルエチルケトン535.0質量部、およびシクロヘキサノン495質量部を添加して攪拌した。孔径0.4μmのポリプロピレン製フィルターで濾過して高屈折率層用の塗布液(HL−1)を調製した。
【0261】
(高屈折率層用塗布液(HL−3)の調製)
上記、高屈折率層用塗布液(HL−2)に、フッ素系ポリマー(P−3)の代わりに下記のフッ素ポリマー(R−2、40質量% MEK溶液)0.26g添加した以外は、添加量も含め上記塗布液(HL−2)と全く同様にして高屈折率層用塗布液(HL−3)を調製した。
R−2
【0262】
【化46】

【0263】
(低屈折率層用塗布液(LL−1)の調製)
下記共重合体をメチルエチルケトンに23.7質量%の濃度になるように溶解した溶液203.2質量部、末端メタクリレート基含有シリコーン樹脂X−22−164C(信越化学(株)製)1.4質量部、光ラジカル発生剤イルガキュア907(商品名)2.4質量部、メチルエチルケトン764.6質量部、およびシクロヘキサノン28.4質量部を添加して攪拌した。孔径0.45μmのPTFE製フィルターで濾過して低屈折率層用塗布液(LL−1)を調製した。
共重合体
【0264】
【化47】

【0265】
(ゾル液aの調製)
攪拌機、還流冷却器を備えた反応器、メチルエチルケトン119部、アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン(KBM5103、信越化学工業(株)製)101部、ジイソプロポキシアルミニウムエチルアセトアセテート3部を加え混合したのち、イオン交換水30部を加え、60℃で4時間反応させたのち、室温まで冷却し、ゾル液aを得た。質量平均分子量は1600であり、オリゴマー成分以上の成分のうち、分子量が1000〜20000の成分は100%であった。また、ガスクロマトグラフィー分析から、原料のアクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランは全く残存していなかった。
【0266】
(低屈折率層用塗布液(LL−2)の調製)
ポリシロキサン及び水酸基含有フッ素ポリマーを含有するJN−7228A(屈折率1.42、固形分濃度6%、JSR(株)製)14.9g、シリカゾル(シリカ、MEK−ST、平均粒径15nm、固形分濃度30%、日産化学社製)0.61g、シリカゾル(シリカ、MEK−STの粒子サイズ違い、平均粒径45nm、固形分濃度30%、日産化学(株)製)0.79g、ゾル液a 0.41gおよびメチルエチルケトン3.1g、シクロヘキサノン0.6gを添加、攪拌の後、孔径1μmのポリプロピレン製フィルターでろ過して、低屈折率層用塗布液(LL−2)を調製した。
【0267】
(分散液A−1の調製)
中空シリカ微粒子ゾル(イソプロピルアルコールシリカゾル、平均粒子径60nm、シェル厚み10nm、シリカ濃度20質量%、シリカ粒子の屈折率1.31、特開2002−79616の調製例4に準じサイズを変更して作成)500部に、アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製)30部、およびジイソプロポキシアルミニウムエチルアセテート1.5部加え混合した後に、イオン交換水を9部を加えた。60℃で8時間反応させた後に室温まで冷却し、アセチルアセトン1.8部を添加した。この分散液500gにほぼシリカの含量一定となるようにシクロヘキサノンを添加しながら、圧力20kPaで減圧蒸留による溶媒置換を行った。分散液に異物の発生はなく、固形分濃度をシクロヘキサノンで調整し20質量%にしたときの粘度は25℃で5mPa・sであった。得られた分散液A−1のイソプロピルアルコールの残存量をガスクロマトグラフィーで分析したところ、1.5%であった。
【0268】
(低屈折率層用塗布液(LL−3)の調製)
オプスターJTA113(熱架橋性含フッ素含シリコーンポリマー組成液(固形分6%):JSR(株)製)783.3質量部(固形分として47.0質量部)に対して、分散液A−1を195質量部(シリカ+表面処理剤固形分として39.0質量部)、コロイダルシリカ分散物(シリカ、MEK−STの粒子径違い品、平均粒径45nm、固形分濃度30%、日産化学(株)製)30.0質量部(固形分として9.0質量部)、ゾル液a17.2質量部(固形分として5.0質量部)を添加した。塗布液全体の固形分濃度が6質量%になり、シクロヘキサンとメチルエチルケトンの比率が10対90になるようにシクロヘキサン、メチルエチルケトンで希釈して塗布液(LL−3)を調製した。
【0269】
(低屈折率層用塗布液(LL−4)の調製)
オプスターJTA113(熱架橋性含フッ素含シリコーンポリマー組成液(固形分6%):JSR(株)製)941.7質量部(固形分として56.5質量部)に対して、コロイダルシリカ分散物(シリカ、MEK−STの粒子径違い品、平均粒径45nm、固形分濃度30%、日産化学(株)製)100.0質量部(固形分として30.0質量部)、ゾル液a46.6質量部(固形分として13.5質量部)を添加した。塗布液全体の固形分濃度が6質量%になり、シクロヘキサンとメチルエチルケトンの比率が3対97になるようにシクロヘキサン、メチルエチルケトンで希釈して塗布液(LL−4)を調製した。
【0270】
[実施例1]
防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−2〜10)、低屈折率層用塗布液(LL−2)をそれぞれを以下のようにして塗布し、反射防止膜試料を得た。各試料に用いた防眩性ハードコート層用塗布液は、表1に記載のとおりである。
【0271】
【表1】

【0272】
(1)防眩性ハードコート層の塗設(試料No.101)
80μmの厚さのトリアセチルセルロースフィルム(TAC−TD80U、商品名、富士写真フイルム(株)製)をロール形態で巻き出して、上記の防眩性ハードコート層用塗布液(HCL2〜10)を線数140本/インチのグラビアパターンを有する直径50mmのマイクログラビアロールとドクターブレードを用いて、グラビアロール回転数90rpm、搬送速度30m/分の条件で塗布し、120℃で4分乾燥の後、窒素パージ下で160W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度400mW/cm2、照射量300mJ/cm2の紫外線を照射して塗布層を硬化させ、厚さ6μmの防眩性ハードコート層を形成し、巻き取った。
更に試料102〜112は、グラビアロールの回転数を変えて表1の搬送速度とする以外は試料101と同様な操作を施して試料を作成した。
【0273】
(2)低屈折率層の塗設
上記防眩性ハードコート層を塗設したトリアセチルセルロースフィルムを再び巻き出して、上記低屈折率層用塗布液(LL−2)を線数230本/インチのグラビアパターンを有する直径50mmのマイクログラビアロールとドクターブレードを用いて、グラビアロール回転数100rpm、搬送速度30m/分の条件で塗布し、80℃で2分乾燥の後、さらに窒素パージ下で240W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度400mW/cm2、照射量600mJ/cm2の紫外線を照射し、120℃で2.5分乾燥の後、さらに140℃で8〜20分乾燥させて、厚さ0.095μmの低屈折率層を形成し、巻き取った。
【0274】
[実施例2]
ハードコート層用塗布液(HCL−1)、中屈折率層用塗布液(ML−1)、高屈折率層用塗布液(HL−1〜3)、低屈折率層用塗布液(LL−1)をそれぞれを以下のようにして塗布し、反射防止膜試料を得た。各試料に用いた高屈折率層用塗布液は、表2に記載のとおりである。
【0275】
【表2】

【0276】
(反射防止フィルムの作製)
膜厚80μmのトリアセチルセルロースフィルム(TD−80UF、富士写真フイルム(株)製)の上に、ハードコート層用塗布液(HCL−1)を線数100本/インチのグラビアパターンを有する直径50mmのマイクログラビアロールとドクターブレードを用いて、グラビアロール回転数90rpm、搬送速度30m/分の条件で塗布した。
【0277】
その後80°Cで乾燥した後、酸素濃度が1.0体積%以下の雰囲気になるように窒素パージしながら160W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度400mW/cm2 、照射量500mJ/cm2 の紫外線を照射して塗布層を硬化させ、厚さ8μmのハードコート層を形成した。
【0278】
上記のハードコート層の上に、中屈折率層用塗布液(ML−1)を線数230本/イン
チのグラビアパターンを有する直径50mmのマイクログラビアロールとドクターブレードを用いて、グラビアロール回転数100rpm、搬送速度30m/分の条件で塗布した。
【0279】
その後100°Cで30秒間乾燥した後、酸素濃度が0.1体積%以下の雰囲気になるように窒素パージしながら240W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度550mW/cm2 、照射量550mJ/cm2 の紫外線を照射して塗布層を硬化させ、中屈折率層(屈折率1.63、膜厚64nm)を形成した。
【0280】
中屈折率層の上に、高屈折率層用塗布液(HL−1〜3)を線数230本/インチのグラビアパターンを有する直径50mmのマイクログラビアロールとドクターブレードを用いて、グラビアロール回転数100rpm、搬送速度30m/分の条件で塗布した。
その後100°Cで30秒間乾燥した後、酸素濃度が0.1体積%以下の雰囲気になるように窒素パージしながら、240W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度550mW/cm2 、照射量550mJ/cm2 の紫外線を照射し、高屈折率層(屈折率1.90、膜厚103nm)を形成した。
【0281】
高屈折率層の上に、低屈折率層用塗布液(LL−1)を線数230本/インチのグラビアパターンを有する直径50mmのマイクログラビアロールとドクターブレードを用いて、グラビアロール回転数100rpm、搬送速度30m/分の条件で塗布した。減圧チャンバーの減圧度は0.8kPaとした。その後90°Cで30秒間乾燥した後、酸素濃度が0.1体積%以下の雰囲気になるように窒素パージしながら、240W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度600mW/cm2、照射量400mJ/cm2 の紫外線を照射し、低屈折率層(屈折率1.45、膜厚83nm)を形成した。このようにして、反射防止フィルムを作製した。
【0282】
実施例1及び実施例2の製造工程において、塗布、乾燥工程は0.5μm以上の粒子として30個/(立方メートル)以下の空気清浄度の空気雰囲気下で行われ、塗布直前に特開平10−309553号公報に記載の清浄度の高い空気を高速で吹き付けて付着物をウェブWの表面から剥離させ、近接した吸い込み口で吸引する方法で除塵を行いながら塗布を行った。除塵前のベースの帯電圧は、200V以下であった。上記の塗布は1層毎に、送り出し−除塵−塗布−乾燥−(UV又は熱)硬化−巻き取りの各工程で行った。
〔面状評価〕
【0283】
実施例1及び実施例2で得られた試料101〜112、201〜203の未塗布面を黒く塗り、塗布面をルーバーありの蛍光灯拡散光下で観察して面状の評価を行った。ここで風ムラとは、透明支持体の進行方向と略平行な方向にスジ状の模様のことであり、段ムラとは、透明支持体の進行方向と略垂直な、周期的な模様のことである。上記の条件下で観察した際にこれらの模様が視認されない場合は○、視認される場合は×と判断した。
結果は表1及び表2に示した。フッ素系ポリマーの添加されていない試料101、201では高速塗布時に風ムラが発生していた。本発明で規定されるI/O値1.0以下のモノマーを含む塗布液を塗布して得られた試料102〜106、108、109および202では段ムラ、風ムラともに発生せず、良好な面状を示した。モノマーのI/O値が1.0を越えるフッ素ポリマーを添加した塗布液を塗布して得られた試料107、試料203では、風ムラは発生しないものの、段ムラが発生していた。試料111では良好な面状が得られる。但し、生産性のためには塗布速度の更なるアップが望まれる。試料110では風ムラが発生した。また、試料112では段ムラが発生した。
【0284】
偏光板の作成
試料102〜106及び試料202で作成された反射防止フィルムを、2.0mol/L、55°CのNaOH水溶液中に2分間浸漬してフィルムの裏面のトリアセチルセルロース面を鹸化処理し、80μmの厚さのトリアセチルセルロースフィルム(TACーTD80U、富士写真フィルム(株)製)を同条件で鹸化処理したフィルムとでポリビニルアルコールにヨウ素を吸着させ、延伸して作成した偏光子の両面を接着、保護して偏光板を作成した。
【0285】
表示装置の作成
このようにして作成した上記偏光板を、反射防止膜側が最表面となるように透過型TN液晶表示装置搭載のノートパソコンの液晶表示装置(偏光選択層を有する偏光分離フィルムである住友3M(株)製のD−BEFをバックライトと液晶セルとの間に有する)の視認側の偏光板と貼り代えたところ、背景の映りこみが極めて少なく、反射光の色味が著しく低減され、更に、表示面内の均一性が確保された表示品位の非常に高い表示装置が得られた。
【0286】
なお上記試料はいずれも特開平9−73081号公報の実施例に記載のワイヤーバーコート法、また特開2003−211052号公報に記載のエクストルージョンコート法によっても製造することができ、上記マイクログラビア法で製造したフィルムと同等の性能を示すフィムルを得ることができた。
【0287】
また、低屈折率用の塗布液をLL−3及びLL−4に変更する以外は実施例1の試料No.108と同様の方法で反射防止フィルムを作成して面状評価を行ったところ、実施例1の試料No.108と同様に段ムラ、風ムラともに発生せず、良好な面状を示した。更に、LL−3を使用した反射防止フィルムにおいてはLL−1よりも背景の写りこみが更に少なく、良好な面状を示した。
【図面の簡単な説明】
【0288】
【図1】本発明に係る反射防止フィルムの基本的な層構成を示す断面模式図である。
【図2】本発明に係る反射防止フィルムの層構成を示す断面模式図である。
【図3】本発明に係る反射防止フィルムの層構成を示す断面模式図である。
【図4】本発明に係る反射防止フィルムの層構成を示す断面模式図である。
【図5】本発明に係る反射防止フィルムの層構成を示す断面模式図である。
【図6】本発明に係る反射防止フィルムの層構成を示す断面模式図である。
【図7】本発明に係る反射防止フィルムの層構成を示す断面模式図である。
【符号の説明】
【0289】
(1) 透明支持体
(2) ハードコート層
(3) 中屈折率層
(4) 高屈折率層
(5) 低屈折率層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フルオロ脂肪族基含有モノマーに相当する繰り返し単位A、及び少なくとも1種のモノマーに相当する繰り返し単位Bを含むフルオロ脂肪族基含有共重合体を含有する塗布組成物であって、
上記単位Bを形成する1種以上のモノマーのI/O値がそれぞれ1.0以下であることを特徴とする塗布組成物。
【請求項2】
下記(i)のモノマーに相当する繰り返し単位及び下記(ii)のモノマーに相当する繰り返し単位を含むフルオロ脂肪族基含有共重合体を含有することを特徴とする請求項1に記載の塗布組成物。
(i)下記一般式[1]で表されるフルオロ脂肪族基含有モノマー
(ii)下記一般式[2]で表されるモノマー
一般式[1]
【化1】

(一般式[1]においてR1は水素原子またはメチル基を表し、Xは酸素原子、イオウ原子または−N(R2)−を表し、mは1以上6以下の整数、nは1〜3の整数を表す。R2は水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表す。)
一般式[2]
【化2】

(一般式[2]において、R3は水素原子またはメチル基を表し、Yは2価の連結基を表し、R4は炭素数1以上20以下の直鎖、分岐または環状のアルキル基を表す。)
【請求項3】
下記(i)のモノマーに相当する繰り返し単位及び下記(ii)のモノマーに相当する繰り返し単位を含むフルオロ脂肪族基含有共重合体を含有することを特徴とする請求項1に記載の塗布組成物。
(i)下記一般式[3]で表されるフルオロ脂肪族基含有モノマー
(ii)下記一般式[2]で表されるモノマー
一般式[3]
【化3】

(一般式[3]において、R0は水素原子、ハロゲン原子またはメチル基を表し、Lは2価の連結基を表し、nは1以上18以下の整数を表す。)
一般式[2]
【化4】

(一般式[2]において、R3は水素原子またはメチル基を表し、Yは2価の連結基を表し、R4は炭素数1以上20以下の直鎖、分岐または環状のアルキル基を表す。)
【請求項4】
下記(i)のモノマーに相当する繰り返し単位及び、下記(ii)のモノマーに相当する繰り返し単位を含むフルオロ脂肪族基含有共重合体を含有することを特徴とする請求項1に記載の塗布組成物。
(i)下記一般式[4]で表されるフルオロ脂肪族基含有モノマー
(ii)下記一般式[2]で表されるモノマー
一般式[4]
【化5】

(一般式[4]において、R1は水素原子、ハロゲン原子またはメチル基を表し、Xは酸素原子、硫黄原子または−N(R2)−を表し、mは1以上6以下の整数、nは1以上18以下の整数を表す。ここで、R2は水素原子または置換基を有しても良い炭素数1〜8のアルキル基を表す。)
一般式[2]
【化6】

(一般式[2]において、R3は水素原子またはメチル基を表し、Yは2価の連結基を表し、R4は炭素数1以上20以下の直鎖、分岐または環状のアルキル基を表す。)
【請求項5】
下記(i)のモノマーに相当する繰り返し単位及び、下記(ii)のモノマーに相当する繰り返し単位を含むフルオロ脂肪族基含有共重合体を含有することを特徴とする請求項1に記載の塗布組成物。
(i)下記一般式[5]で表されるフルオロ脂肪族基含有モノマー
(ii)下記一般式[2]で表されるモノマー
一般式[5]
【化7】

(一般式[5]において、R2は水素原子、ハロゲン原子またはメチル基を表し、L2は2価の連結基を表し、nは1以上6以下の整数を表す。)
一般式[2]
【化8】

(一般式[2]において、R3は水素原子またはメチル基を表し、Yは2価の連結基を表し、R4は炭素数1以上20以下の直鎖、分岐または環状のアルキル基を表す。)
【請求項6】
透明支持体上に、請求項1から5のいずれかに記載の塗布組成物から形成された層を少なくとも一層を有し、該層が25m/min以上の塗布速度で塗布することにより形成されたことを特徴とする光学フィルム。
【請求項7】
請求項6に記載の光学フィルムが反射防止性能を持っていることを特徴とする反射防止フィルム。
【請求項8】
偏光膜の少なくとも1方の側に請求項7に記載の反射防止フィルムが用いられている事を特徴とする偏光板。
【請求項9】
偏光膜の一方の保護フィルムとして請求項7に記載の反射防止フィルムが用いられ、該偏光膜の他方の保護フィルムとして光学異方性のある光学補償フィルムが用いられていることを特徴とする偏光板。
【請求項10】
請求項7に記載の反射防止フィルム、または、請求項8または9に記載の偏光板が配置されていることを特徴とする画像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−117915(P2006−117915A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−257948(P2005−257948)
【出願日】平成17年9月6日(2005.9.6)
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】