塗布組成物、光学フィルム、反射防止フィルム、偏光板及びそれらを用いたディスプレイ装置
【課題】面状均一性が高く、十分な反射防止性能を達成した反射防止膜及び係る反射防止膜を用いた偏光板やディスプレイ装置に有用である、乾燥ムラや風ムラを低減させ、かつ塗布ムラを悪化させない塗布組成物を提供する。
【解決手段】下記一般式(1)の構造を含むポリマーを含有することを特徴とする塗布組成物。
一般式(1):
【化1】
一般式(1)において、X11及びX12はそれぞれ水素原子又はフッ素原子を表し、X13は水素原子、フッ素原子、塩素原子又はCF3を表す。Rf11及びRf12はそれぞれ炭素数1〜20の含フッ素アルキル基を表し、Rf13は炭素数1〜100の含フッ素アルキレン基を表す。aは0又は1を表す。
【解決手段】下記一般式(1)の構造を含むポリマーを含有することを特徴とする塗布組成物。
一般式(1):
【化1】
一般式(1)において、X11及びX12はそれぞれ水素原子又はフッ素原子を表し、X13は水素原子、フッ素原子、塩素原子又はCF3を表す。Rf11及びRf12はそれぞれ炭素数1〜20の含フッ素アルキル基を表し、Rf13は炭素数1〜100の含フッ素アルキレン基を表す。aは0又は1を表す。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗布組成物、それを用いた光学フィルム及び反射防止フィルム、並びにそのような反射防止フィルムを用いた偏光板、及び反射防止フィルム又は偏光板を用いたディスプレイ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、各種コーティング法を用いた材料の開発が進んでおり、特に数μm〜数10nmレベルの薄層塗布技術は、光学フィルム、印刷、フォトリソグラフィーなどで必要であり、要求される塗布精度も薄膜化、基材の大型化、塗布の高速化などに伴い高くなってきている。特に光学フィルムの製造においては、膜厚の制御が光学性能を左右する非常に重要なポイントであり、精度を高く保ちつつ塗布速度の高速化を実現できる技術への要求は高くなってきている。
【0003】
反射防止フィルムは、一般に、陰極管表示装置(CRT)、プラズマディスプレイ(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)や液晶表示装置(LCD)のようなディスプレイ装置において、外光の反射によるコントラスト低下や像の映り込みを防止するために、光学干渉の原理を用いて反射率を低減するようディスプレイの最表面に配置される。
【0004】
近年これら表示装置、特に従来のCRTに比べ奥行きが薄く、表示領域の大きな表示装置の普及に従って、より高精細化、より高品質な表示装置が要求されるようになっている。それに伴い反射防止膜の面状均一性が強く求められている。ここでいう面状均一性とは、反射防止性能に代表される光学性能のバラツキ、及び耐擦傷性能などの皮膜物性のバラツキが全表示部内でないことをいう。
【0005】
反射防止フィルムの製造方法としては、特許文献1にCVDによる酸化硅素膜を用いたガスバリア性、防眩性、反射防止性に優れる防眩性反射防止フィルムが記載されており、このような無機蒸着法が挙げられるが、大量生産性の観点からはオールウェット塗布による反射防止フィルムの製造方法が有利である。
【0006】
しかしながら、溶媒を用いたオールウェット塗布は生産性の観点からは非常に有利である反面、塗布直後の溶媒乾燥を一定に保つことが非常に困難で、面状ムラが生じやすい。ここでいう面状ムラとは溶媒乾燥速度差に起因する乾燥ムラや乾燥風で引き起こされる厚みムラである風ムラ、塗工部で発生する塗布ムラなどのことである。オールウェット塗布においてより生産性を向上させるために、塗布速度を高くすることは必須の技術である。だが単純に、塗布速度を高くすると相対的に乾燥風の風速も高くなり、また支持体の高速移動に伴う同伴風の影響も受け、風ムラは悪化することになる。また、塗工部もより不安定になり、塗布ムラも悪化することが多い。こうして従来では光学性能、膜物性のバラツキを抑えた反射防止膜を得るためには、塗布速度をあまり高くすることはできなかった。
【0007】
乾燥時のムラを低減させるためにはレベリング性を向上させることが有効であることが知られている。レベリング性を向上させる一つの手段として、塗布組成物中に界面活性剤を添加する方法が提案されている。塗布物に界面活性剤を添加すると表面張力が低下して、支持体などの被塗布物への濡れを改良し、塗膜形成過程での表面張力変化を小さくし、又は低下させて熱対流を防止して皮膜の均一性を改良するという機構に基づいている(非特許文献1参照)。
【0008】
目的とする塗布組成物中の溶媒、樹脂、各種添加剤との相溶性などにより最適な界面活性種は異なるが、溶媒を用いて塗布する場合には溶媒に可溶で表面張力低下能力が最も高いフッ素系界面活性剤を用いるのが有効である。一般に、フッ素系界面活性剤は、表面張力低下機能を実現するためのフルオロ脂肪族基と、例えば該活性剤を添加剤として使用したときに、コーティング用、成形材料用等の各種組成物に対する親和性に寄与する親媒性基とを同一分子内に有する化合物からなるものである。このような化合物は、フルオロ脂肪族基を有するモノマーと親媒性基を有するモノマーとを共重合させて得られる。
【0009】
フルオロ脂肪族基を有するモノマーと共重合される、親媒性基を有するモノマーの代表的な例としては、ポリ(オキシアルキレン)アクリレート、ポリ(オキシアルキレン)メタクリレート等が挙げられる。また、特許文献2に記載のω−H型フッ素系ポリマー界面活性剤により、風ムラの良化と耐擦傷性能の両立した反射防止膜の提案がある。
【特許文献1】特開平7−333404号公報
【特許文献2】特開2004−331812号公報
【非特許文献1】コーティング用添加剤の最新技術、桐生春雄監修、シーエムシー、2001年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、従来のフッ素系界面活性剤を用いると乾燥ムラや風ムラは良化するものの、塗布ムラが発生し、塗布された反射防止フィルムの品位を低下させる問題があった。
【0011】
本発明の目的は、
(1)乾燥ムラや風ムラの低減と、塗布ムラを悪化させないことを両立できるフルオロ脂肪族基含有重合体を含む塗布組成物を提供すること、
(2)面状均一性が高く、十分な反射防止性能を達成した反射防止フィルムを提供すること、及び
(3)そのような反射防止フィルムを用いた偏光板や画像表示装置を提供すること、
にある。
【0012】
本発明者らは、フッ素系界面活性剤の構成成分であるフルオロ脂肪族基含有モノマーにおけるフルオロ脂肪族基の構造や、フッ素系界面活性剤におけるフルオロ脂肪族基含有モノマー及びその他モノマーの組成について精査した結果、特定のヒドロキシル基を有する含フッ素モノマーから誘導される構造を含むポリマーを用いることにより、さらにはフルオロ脂肪族基含有モノマーと特定のヒドロキシル基を有する含フッ素モノマーからなる共重合体を用いることにより、塗布時に生じる乾燥ムラや風ムラを低減し、且つ塗布ムラも悪化させない組成物を得ることができることを見出した。
【課題を解決するための手段】
【0013】
すなわち、本発明は以下の手段によって達成された。
[1] 下記一般式(1)の構造を含むポリマーを含有することを特徴とする塗布組成物。
一般式(1):
【0014】
【化1】
【0015】
一般式(1)において、X11及びX12はそれぞれ水素原子又はフッ素原子を表し、X13は水素原子、フッ素原子、塩素原子又はCF3を表す。Rf11及びRf12はそれぞれ炭素数1〜20の含フッ素アルキル基を表し、Rf13は炭素数1〜100の含フッ素アルキレ
ン基を表す。aは0又は1を表す。
[2] 一般式(1)の構造を含むポリマーが、塗布組成物全固形分に対して0.001〜5.0質量%含まれる前記[1]に記載の塗布組成物。
[3] 一般式(1)の構造を含むポリマーの質量平均分子量が、8,000〜60,000である前記[1]又は[2]に記載の塗布組成物。
[4] 一般式(1)の構造を含むポリマー中のフッ素原子の割合が、塗布組成物全固形分に対して、0.0003〜3.0質量%である前記[1]〜[3]のいずれかに記載の塗布組成物。
[5] 下記一般式(2)の構造を含むポリマーを含有することを特徴とする塗布組成物。
一般式(2):
【0016】
【化2】
【0017】
一般式(2)において、Aは含フッ素エチレン性モノマーから誘導される構造を表し、X11及びX12はそれぞれ水素原子又はフッ素原子を表し、X13は水素原子、フッ素原子、塩素原子又はCF3を表す。Rf11及びRf12はそれぞれ炭素数1〜20の含フッ素アルキル基を表し、Rf13は炭素数1〜100の含フッ素アルキレン基を表す。aは0又は1を表す。m、nは50≦m≦99、1≦n≦50の関係を満たす質量%を表す。
[6] 一般式(2)中のAが下記一般式(3)で表される前記[5]に記載の塗布組成物。
一般式(3):
【0018】
【化3】
【0019】
一般式(3)において、X21、X22及びX23はそれぞれ水素原子又はフッ素原子を表し、X24は水素原子、フッ素原子又はCF3を表す。Rf21は炭素数1〜20の含フッ素アルキル基を表す。pは0、1又は2を表し、qは0又は1を表す。
[7] 透明支持体上に、前記[1]〜[6]のいずれかに記載の塗布組成物を少なくとも一層塗設したことを特徴とする光学フィルム。
[8] 前記[7]に記載の光学フィルムに反射防止性能が有されたものであることを特徴とする反射防止フィルム。
[9] 偏光膜の少なくとも一方の側に、前記[8]に記載の反射防止フィルムを用いたことを特徴とする偏光板。
[10] 偏光膜の一方の保護フィルムとして前記[8]に記載の反射防止フィルムを用い、該偏光膜の他方の保護フィルムとして光学異方性のある光学補償フィルムを用いたことを特徴とする偏光板。
[11] 前記[8]に記載の反射防止フィルム、又は前記[9]もしくは[10]に記載の偏光板が配置されていることを特徴とする画像表示装置。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、乾燥ムラや風ムラを低減させ、かつ塗布ムラを悪化させない塗布組成物が得られる。該塗布組成物により、面状均一性が高く、十分な反射防止性能を達成した反射防止膜が得られ、該反射防止膜は偏光板やディスプレイ装置に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、必要に応じて添付図面をも用い、本発明の塗布組成物、光学フィルム、反射防止フィルム、反射防止フィルムの製造方法、該反射防止フィルムを用いた偏光板、及びこれらを用いた画像表示装置の好ましい実施の形態について詳しく記載する。
【0022】
<塗布組成物>
〔ヒドロキシル基を有する含フッ素ポリマー〕
以下、本発明に係るヒドロキシル基を有する含フッ素ポリマーについて詳細に説明する。
【0023】
[一般式(1)で表される構造]
本発明で使用されるヒドロキシル基を有する含フッ素ポリマーは、一般式(1)で表される構造を含むポリマーである。
一般式(1):
【0024】
【化4】
【0025】
一般式(1)において、X11及びX12はそれぞれ水素原子又はフッ素原子を表す。X13は水素原子、フッ素原子、塩素原子又はCF3を表し、水素原子、フッ素原子又はCF3が好ましく、水素原子又はフッ素原子が特に好ましい。Rf11及びRf12はそれぞれ炭素数1〜20の含フッ素アルキル基を表し、炭素数1〜15の含フッ素アルキル基が好ましく、炭素数1〜10の含フッ素アルキル基が特に好ましい。Rf13は炭素数1〜100の含フッ素アルキレン基を表し、炭素数1〜75の含フッ素アルキル基が好ましく、炭素数1〜50の含フッ素アルキル基が特に好ましい。aは0又は1を表す。
【0026】
一般式(1)で表される具体的な好ましい構造の例を以下に示す。
【0027】
【化5】
【0028】
【化6】
【0029】
【化7】
【0030】
【化8】
【0031】
一般式(1)の構造はビニルモノマーから誘導され、そのモノマーは国際公開第2002/066526号パンフレット等を参考に合成することができる。
【0032】
[一般式(2)で表される構造]
本発明で使用されるヒドロキシル基を有する含フッ素ポリマーは、一般式(2)で表される構造を含むポリマー、すなわち前記一般式(1)の構造を導くビニルモノマーと、含フッ素エチレン性モノマーとの共重合体を含むポリマーであることがより好ましい。
一般式(2):
【0033】
【化9】
【0034】
一般式(2)において、Aは含フッ素エチレン性モノマーから誘導される構造を表す。このような含フッ素エチレン性モノマーとしては、例えばビニリデンフルオリド、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、ペルフルオロビニルエーテル、ペルフルオロアルキル(メタ)アクリレート、ω−H−ペルフルオロアルキル(メタ)アクリレートなどが好ましく、一般式(3)で表される構造がより好ましい。m、nは50≦m≦99、1≦n≦50の関係を満たす質量%が好ましく、55≦m≦98、2≦n≦45の関係を満たす質量%がより好ましく、60≦m≦97、3≦n≦40の関係を満たす質量%が特に好ましい。X11〜X13、Rf11〜Rf13およびaは、前記一般式(2)で定義したとおりである。
一般式(3):
【0035】
【化10】
【0036】
一般式(3)において、X21、X22及びX23はそれぞれ水素原子又はフッ素原子を表す。X24は水素原子、フッ素原子又はCF3が好ましく、水素原子又はフッ素原子がより好ましい。Rf21は炭素数1〜20の含フッ素アルキル基が好ましく、炭素数1〜15の含フッ素アルキル基がより好ましく、炭素数1〜10の含フッ素アルキル基が特に好ましい。pは0、1又は2を表し、qは0又は1を表す。
【0037】
一般式(3)で表される含フッ素エチレン性モノマーの具体例としては、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、ペルフルオロブチルエチレン、ペルフルオロヘキシルエチレン、ペルフルオロオクチルエチレン、ペルフルオロデシルエチレン、ペルフルオロメチルビニルエーテル、ペルフルオロエチルビニルエーテル、ペルフルオロプロピルビニルエーテル、フルオロブチルビニルエーテルなどを挙げることができる。
【0038】
[共重合可能なモノマー]
一般式(1)又は(2)で表される構造を含む本発明におけるポリマーは、下記に示すモノマーを共重合していてもよい。
【0039】
(1)アルケン類
エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン、1−ヘキセン、1−ドデセン、1−オクタデセン、1−エイコセン、塩化ビニル、塩化ビニリデンなど;
【0040】
(2)ジエン類
1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、2−エチル−1,3−ブタジエン、2−n−プロピル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、1−フェニル−1,3−ブタジエン、1−α−ナフチル−1,3−ブタジエン、1−β−ナフチル−1,3−ブタジエン、2−クロロ−1,3−ブタジエン、1−ブロモ−1,3−ブタジエン、1−クロロブタジエン、2−フルオロ−1,3−ブタジエン、2,3−ジクロロ−1,3−ブタジエン、1,1,2−トリクロロ−1,3−ブタジエン及び2−シアノ−1,3−ブタジエン、1,4−ジビニルシクロヘキサンなど;
【0041】
(3)α,β−不飽和カルボン酸の誘導体
(3a)アルキルアクリレート類
メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、i−ブチルアクリレート、s−ブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、アミルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、i−ボルニルアクリレート、2−エチルへキシルアクリレート、n−オクチルアクリレート、t−オクチルアクリレート、ドデシルアクリレート、フェニルアクリレート、ベンジルアクリレート、2−クロロエチルアクリレート、2−ブロモエチルアクリレート、4−クロロブチルアクリレート、2−シアノエチルアクリレート、2−アセトキシエチルアクリレート、メトキシベンジルアクリレート、2−クロロシクロヘキシルアクリレート、フルフリルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、ω−メトキシポリエチレングリコールアクリレート(ポリオキシエチレンの付加モル数:n=2〜100のもの)、3−メトキシブチルアクリレート、2−エトキシエチルアクリレート、2−ブトキシエチルアクリレート、2−(2−ブトキシエトキシ)エチルアクリレート、1−ブロモ−2−メトキシエチルアクリレート、1,1−ジクロロ−2−エトキシエチルアクリレート、グリシジルアクリレートなど);
【0042】
(3b)アルキルメタクリレート類
メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、i−プ
ロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、i−ブチルメタクリレート、s−ブチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、アミルメタクリレート、n−ヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、i−ボルニルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、n−オクチルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、フェニルメタクリレート、アリルメタクリレート、フルフリルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、クレジルメタクリレート、ナフチルメタクリレート、2−メトキシエチルメタクリレート、3−メトキシブチルメタクリレート、ω−メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(ポリオキシエチレンの付加モル数:n=2〜100のもの)、2−アセトキシエチルメタクリレート、2−エトキシエチルメタクリレート、2−ブトキシエチルメタクリレート、2−(2−ブトキシエトキシ)エチルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、3−トリメトキシシリルプロピルメタクリレート、アリルメタクリレート、2−イソシアナトエチルメタクリレートなど;
【0043】
(3c)不飽和多価カルボン酸のジエステル類
マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジブチル、イタコン酸ジメチル、イタコン酸ジブチル、クロトン酸ジブチル、クロトン酸ジヘキシル、フマル酸ジエチル、フマル酸ジメチルなど;
【0044】
(3d)α,β−不飽和カルボン酸のアミド類
N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N−n−プロピルアクリルアミド、N−t−ブチルアクリルアミド、N−t−オクチルメタクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド、N−(2−アセトアセトキシエチル)アクリルアミド、N−ベンジルアクリルアミド、N−アクリロイルモルフォリン、ジアセトンアクリルアミド、N−メチルマレイミドなど;
【0045】
(4)不飽和ニトリル類
アクリロニトリル、メタクリロニトリルなど;
【0046】
(5)スチレン及びその誘導体
スチレン、ビニルトルエン、エチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、p−ビニル安息香酸メチル、α−メチルスチレン、p−クロロメチルスチレン、ビニルナフタレン、p−メトキシスチレン、p−ヒドロキシメチルスチレン、p−アセトキシスチレンなど;
【0047】
(6)ビニルエステル類
酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、安息香酸ビニル、サリチル酸ビニル、クロロ酢酸ビニル、メトキシ酢酸ビニル、フェニル酢酸ビニルなど;
【0048】
(7)ビニルエーテル類
メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、i−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、i−ブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、n−ペンチルビニルエーテル、n−ヘキシルビニルエーテル、n−オクチルビニルエーテル、n−ドデシルビニルエーテル、n−エイコシルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、など;及び
【0049】
(8)その他の重合性単量体
N−ビニルピロリドン、メチルビニルケトン、フェニルビニルケトン、メトキシエチルビニルケトン、2−ビニルオキサゾリン、2−i−プロペニルオキサゾリン、アクリル酸、メタクリル酸など。
【0050】
これらの共重合可能なモノマーは、本発明における含フッ素ポリマー全体の50質量%以下の量で共重合することが好ましく、40質量%以下の量であることがさらに好ましく、30質量%以下の量であることが特に好ましい。
【0051】
[含フッ素ポリマーの重合方法]
一般式(1)又は(2)で表される構造を含む本発明における含フッ素ポリマーは、特に限定されるものではないが、例えば、ビニル基を利用したカチオン重合、ラジカル重合又はアニオン重合等の重合方法を採ることができ、これらの中ではラジカル重合が汎用に利用できる点で特に好ましい。
【0052】
ラジカル重合方法は、特に制限されるものでなく、乳化重合法、懸濁重合法、塊状重合法、溶液重合法等を採ることが可能である。典型的なラジカル重合方法である溶液重合についてさらに具体的に説明する。他の重合方法についても概要は同等であり、その詳細は例えば「高分子科学実験法」高分子学会編(東京化学同人、1981年)等に記載されている。
【0053】
溶液重合を行うためには有機溶媒を使用する。これらの有機溶媒は本発明の目的、効果を損なわない範囲で任意に選択可能である。これらの有機溶媒は通常、大気圧下での沸点が50〜200℃の範囲内の値を有する有機化合物であり、各構成成分を均一に溶解させる有機化合物が好ましい。
【0054】
好ましい有機溶媒の例を示すと、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール類;ジブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル、γ−ブチロラクトン等のエステル類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;が挙げられる。なお、これらの有機溶媒は、1種単独又は2種以上を組み合わせて用いることが可能である。さらに、モノマーや生成するポリマーの溶解性の観点から上記有機溶媒に水を併用した水混合有機溶媒も適用可能である。
【0055】
また、溶液重合条件も特に制限されるものではないが、例えば、50〜200℃の温度範囲内で、10分〜30時間加熱することが好ましい。さらに、発生したラジカルが失活しないように、溶液重合中はもちろんのこと、溶液重合開始前にも、不活性ガスパージを行うことが好ましい。不活性ガスとしては通常窒素ガスが好適に用いられる。
【0056】
本発明のポリマーを好ましい分子量範囲で得るためには、開始剤量の調整や連鎖移動剤の使用が挙げられるが、連鎖移動剤を用いたラジカル重合法が特に有効である。連鎖移動剤としてはメルカプタン類(例えば、オクチルメルカプタン、デシルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、オクタデシルメルカプタン、チオフェノール、p−ノニルチオフェノール等)、ポリハロゲン化アルキル(例えば、四塩化炭素、クロロホルム、1,1,1−トリクロロエタン、1,1,1−トリブロモオクタンなど)、低活性モノマー類(α−メチルスチレン、α−メチルスチレンダイマー等)のいずれも用いることができるが、好ましくは炭素数4〜16のメルカプタン類である。
【0057】
これらの連鎖移動剤の使用量は、連鎖移動剤の活性やモノマーの組み合わせ、重合条件などにより著しく影響され精密な制御が必要であるが、通常は使用するモノマーの全モル数に対して0.01モル%〜50モル%程度であり、好ましくは0.05モル%〜30モル%、特に好ましくは0.08モル%〜25モル%である。これらの連鎖移動剤は、重合過程において重合度を制御するべき対象のモノマーと同時に系内に存在させればよく、その添加方法については特に問わない。モノマーに溶解して添加してもよいし、モノマーと
別途に添加することも可能である。
【0058】
本発明における上記のポリマーは、重合反応溶液をそのまま本発明における塗布組成物に使用することができ、又は再沈殿や分液操作によって精製して使用することもできる。
【0059】
一般式(1)又は(2)で表される構造を含む本発明における含フッ素ポリマーの質量平均分子量は、3000〜100,000が好ましく、より好ましくは6000〜80,000であり、特に好ましくは8,000〜60,000である。上記の分子量の範囲内では、塗布ムラ防止効果が充分に発揮される。ここで、質量平均分子量は、“TSKgel GMHxL”、“TSKgel G4000HxL”、“TSKgel G2000HxL”{何れも東ソー(株)製の商品名}のカラムを使用したGPC分析装置により、溶媒テトラヒドロフラン(THF)、示差屈折計検出によるポリスチレン換算で表した分子量である。
【0060】
[有用な含フッ素ポリマーの具体例]
下記に本発明で有用な含フッ素ポリマーの具体例を示すが、本発明で用いられる含フッ素ポリマーはこれらに限定されるものではない。また、各構成成分の含量は質量%を表し、Mwは質量平均分子量を表す。
【0061】
【化11】
【0062】
【化12】
【0063】
【化13】
【0064】
【化14】
【0065】
本発明の塗布組成物は、上記したようにヒドロキシル基を有する含フッ素ポリマーを含有する。塗布組成物全固形分に対する上記含フッ素ポリマーの添加量は、0.001質量%〜5.0質量%であることが好ましく、より好ましくは0.01質量%〜1.0質量%である。上記の好ましい添加量内では十分な塗布ムラ防止効果を得ることができる。また、塗布組成物全固形分に対する含フッ素ポリマーのフッ素原子の質量の割合は、0.0003質量%〜3.0質量%であることが好ましく、より好ましくは0.003質量%〜0.6質量%である。上記の好ましい添加量内では十分な塗布ムラ防止効果を得ることができる。
【0066】
塗布組成物は、さらなる面状向上の点から、水の含率が30質量%以下であることが好ましく、より好ましくは10質量%以下である。
【0067】
本発明の塗布組成物は、用途に応じて、バインダー、無機フィラー、分散安定剤など、必要な成分を含有することができ、後述の透明支持体上に塗設して光学フィルムとすることができる。一種又は複数種の塗布組成物を支持体上に塗布して機能性層を一層以上形成し、例えば反射防止フィルムや偏光板とすることができる。本発明の塗布組成物は下記の反射防止フィルム中のハードコート層、中屈折率層、高屈折率層、低屈折率層等に利用することが好ましく、ハードコート層及び高屈折率層に利用することが更に好ましい。
【0068】
<光学フィルム>
〔反射防止フィルム〕
[反射防止フィルムの層構成]
図1は、本発明に係る反射防止フィルムの層構成の一例を示す断面模式図である。反射
防止フィルムは、透明支持体(1)、ハードコート層(2)、中屈折率層(3)、高屈折率層(4)、そして低屈折率層(5)の順序の層構成を有する。
【0069】
また、図2及び3に示されるように、透明支持体(1)上、又は透明支持体(1)上にハードコート層(2)を塗布した上に、屈折率層として低屈折率層(5)を積層すると、反射防止フィルムとして好適に用いることができる。
【0070】
さらに図4及び5に示されるように、透明支持体(1)上、又は透明支持体(1)上にハードコート層(2)を塗布した上に、高屈折率層(4)、低屈折率層(5)を積層しても反射防止フィルムとして好適に用いることができる。
【0071】
ハードコート層(2)は防眩性を有していてもよい。防眩性は図6に示されるようなマット粒子の分散によるものでも、図7に示されるようなエンボス加工などの方法による表面の賦形によって形成されてもよい。
【0072】
[基材フィルム(支持体)]
本発明の反射防止フィルムの透明支持体としては、プラスチックフィルムを用いることが好ましい。プラスチックフィルムの材料の例には、セルロースエステル(例えば、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、プロピオニルセルロース、ブチリルセルロース、アセチルプロピオニルセルロース、ニトロセルロースなど)、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ−1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリエチレン−1,2−ジフェノキシエタン−4,4’−ジカルボキシレート、ポリブチレンテレフタレートなど)、ポリスチレン(例えば、シンジオタクチックポリスチレンなど)、ポリオレフィン(例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリメチルペンテンなど)、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、ポリメチルメタクリレート及びポリエーテルケトンが含まれる。
【0073】
特に液晶表示装置や有機EL表示装置等に用いるために、本発明の反射防止フィルムを偏光板の表面保護フィルムの片側として用いる場合には、トリアセチルセルロースが好ましく用いられる。トリアセチルセルロースフィルムとしては、“TAC−TD80U”{富士写真フィルム(株)製}等の公知のもの、公開技報番号2001−1745号にて公開されたものが好ましく用いられる。また、平面CRTやPDP等に用いるためにガラス基板等に張り合わせて用いる場合には、ポリエチレンテレフタレート、又はポリエチレンナフタレートが好ましい。
【0074】
透明支持体の光透過率は、80%以上であることが好ましく、86%以上であることがさらに好ましい。透明支持体のヘイズは、2.0%以下であることが好ましく、1.0%以下であることがさらに好ましい。透明支持体の屈折率は、1.4〜1.7であることが好ましい。本発明の透明支持体の厚みは30〜150μmが好ましく、40〜120μmがより好ましい。
【0075】
[ハードコート層]
本発明のハードコート層について以下に説明する。
ハードコート層はハードコート性を付与するためのバインダー、防眩性を付与するためのマット粒子、及び高屈折率化・架橋収縮防止・高強度化のための無機フィラー、反応を開始させるための開始剤、界面活性剤・チクソトロピー剤・耐電防止剤等の添加剤などから構成される。
【0076】
(ハードコート層用バインダー)
ハードコート層用のバインダーとしては、飽和炭化水素鎖又はポリエーテル鎖を主鎖として有するポリマーであることが好ましく、飽和炭化水素鎖を主鎖として有するポリマーであることがさらに好ましい。また、バインダーポリマーは架橋構造を有することが好ましい。
【0077】
(飽和炭化水素鎖を主鎖として有するバインダーポリマー)
飽和炭化水素鎖を主鎖として有するバインダーポリマーとしては、エチレン性不飽和モノマーの重合体が好ましい。飽和炭化水素鎖を主鎖として有し、且つ架橋構造を有するバインダーポリマーとしては、2個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーの(共)重合体が好ましい。
【0078】
層を高屈折率にするには、このモノマーの構造中に芳香族環や、フッ素以外のハロゲン原子、硫黄原子、リン原子、及び窒素原子から選ばれた少なくとも1種の原子を含むことが好ましい。
【0079】
2個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーとしては、多価アルコールの(メタ)アクリル酸エステル{例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,2,3−シクロヘキサントリオールトリ(メタ)アクリレート、ポリウレタンポリアクリレート、ポリエステルポリアクリレート等}、ビニルベンゼン及びその誘導体{例えば、1,4−ジビニルベンゼン、4−ビニル安息香酸−2−(メタ)アクリロイルエチルエステル、1,4−ジビニルシクロヘキサノン等}、ビニルスルホン(例えばジビニルスルホン)、(メタ)アクリルアミド(例えばメチレンビスアクリルアミド)などが挙げられる。上記モノマーは2種以上併用してもよい。
【0080】
高屈折率モノマーの具体例としては、ビス(4−メタクリロイルチオフェニル)スルフィド、ビニルナフタレン、ビニルフェニルスルフィド、4−メタクリロキシフェニル−4’−メトキシフェニルチオエーテル等が挙げられる。これらのモノマーも2種以上併用してもよい。
【0081】
(重合開始剤)
これらのエチレン性不飽和基を有するモノマーの重合は、光ラジカル開始剤又は熱ラジカル開始剤の存在下、電離放射線の照射又は加熱により行うことができる。従って、エチレン性不飽和基を有するモノマー、光ラジカル開始剤又は熱ラジカル開始剤、マット粒子及び無機フィラーを含有する塗液を調製し、該塗液を透明支持体上に塗布後電離放射線又は熱による重合反応により硬化してハードコート層を形成することができる。
【0082】
光ラジカル重合開始剤としては、アセトフェノン類、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、ホスフィンオキシド類、ケタール類、アントラキノン類、チオキサントン類、アゾ化合物、過酸化物類、2,3−ジアルキルジオン化合物類、ジスルフィド化合物類、フルオロアミン化合物類や芳香族スルホニウム類が挙げられる。
【0083】
アセトフェノン類の例には、2,2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアセトフェノン、1−ヒドロキシジメチルフェニルケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−4−メチルチオ−2−モルフォリノプロピオフェノン及び2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノンが含まれ
る。
【0084】
ベンゾイン類の例には、ベンゾインベンゼンスルホン酸エステル、ベンゾイントルエンスルホン酸エステル、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル及びベンゾインイソプロピルエーテルが含まれる。ベンゾフェノン類の例には、ベンゾフェノン、2,4−ジクロロベンゾフェノン、4,4−ジクロロベンゾフェノン及びp−クロロベンゾフェノンが含まれる。ホスフィンオキシド類の例には、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシドが含まれる。
【0085】
「最新UV硬化技術」{発行人;高薄一弘、発行所;(株)技術情報協会、1991年発行}、p.159にも種々の例が記載されており本発明に有用である。
【0086】
市販の光開裂型の光ラジカル重合開始剤としては、日本チバガイギー(株)製の商品名「イルガキュア(651,184,907)」等が好ましい例として挙げられる。
【0087】
光重合開始剤は、多官能モノマー100質量部に対して、0.1〜15質量部の範囲で使用することが好ましく、より好ましくは1〜10質量部の範囲である。
【0088】
光重合開始剤に加えて、光増感剤を用いてもよい。光増感剤の具体例として、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン、ミヒラーのケトン及びチオキサントンを挙げることができる。
【0089】
熱ラジカル開始剤としては、有機又は無機過酸化物、有機アゾ及びジアゾ化合物等を用いることができる。
【0090】
具体的には、有機過酸化物として過酸化ベンゾイル、過酸化ハロゲンベンゾイル、過酸化ラウロイル、過酸化アセチル、過酸化ジブチル、クメンヒドロぺルオキシド、ブチルヒドロぺルオキシド;無機過酸化物として、過酸化水素、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム等;アゾ化合物として2,2'−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2'−アゾビス(プロピオニトリル)、1,1'−アゾビス(シクロヘキサンジニトリル)等;ジアゾ化合物としてジアゾアミノベンゼン、p−ニトロベンゼンジアゾニウム等を挙げることができる。
【0091】
(ポリエーテルを主鎖として有するバインダーポリマー)
ポリエーテル鎖を主鎖として有するバインダーポリマーは、多官能エポキシ化合物の開環重合体が好ましい。多官能エポキシ化合物の開環重合は、光酸発生剤又は熱酸発生剤の存在下、電離放射線の照射又は加熱により行うことができる。
【0092】
従って、多官能エポキシ化合物、光酸発生剤又は熱酸発生剤、マット粒子及び無機フィラーを含有する塗液を調製し、該塗液を透明支持体上に塗布後電離放射線又は熱による重合反応により硬化してハードコート層を形成することができる。
【0093】
2個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーの代わりに、又はそれに加えて、架橋性官能基を有するモノマーを用いてポリマー中に架橋性官能基を導入し、この架橋性官能基の反応により、架橋構造をバインダーポリマーに導入してもよい。
【0094】
架橋性官能基の例には、イソシアナート基、エポキシ基、アジリジン基、オキサゾリン基、アルデヒド基、カルボニル基、ヒドラジン基、カルボキシル基、メチロール基及び活性メチレン基が含まれる。
【0095】
ビニルスルホン酸、酸無水物、シアノアクリレート誘導体、メラミン、エーテル化メチロール、エステル及びウレタン、テトラメトキシシランのような金属アルコキシドも、架橋構造を導入するためのモノマーとして利用できる。ブロックイソシアナート基のように、分解反応の結果として架橋性を示す官能基を用いてもよい。すなわち、本発明において架橋性官能基は、すぐには反応を示すものではなくとも、分解した結果反応性を示すものであってもよい。
【0096】
これら架橋性官能基を有するバインダーポリマーは塗布後、加熱することによって架橋構造を形成することができる。
【0097】
(マット粒子)
ハードコート層には、防眩性付与の目的で、フィラー粒子より大きな、平均粒径が1.0〜10.0μm、好ましくは1.5〜7.0μmのマット粒子、例えば無機化合物の粒子又は樹脂粒子が含有される。
【0098】
上記マット粒子の具体例としては、例えばシリカ粒子、TiO2粒子等の無機化合物の粒子;架橋アクリル粒子、架橋スチレン粒子、メラミン樹脂粒子、ベンゾグアナミン樹脂粒子等の樹脂粒子が好ましく挙げられる。なかでも架橋ポリメタクリル酸メチルのような架橋アクリル粒子や、架橋スチレン粒子が好ましい。
【0099】
また、粒子径の異なる2種以上のマット粒子を併用して用いてもよい。
より大きな粒子径のマット粒子で防眩性を付与し、より小さな粒子径のマット粒子で別の光学特性を付与することが可能である。例えば、133ppi以上の高精細画像表示装置に反射防止フィルムを貼り付けた場合に、ギラツキと呼ばれる光学性能上の不具合のないことが要求される。これはフィルム表面に微妙に存在する凹凸により、画素が拡大又は縮小され、表示性能の均一性を失うことに由来するが、これは防眩性を付与するマット粒子よりも5〜50%粒子径の小さなマット粒子を併用することにより大きく改善することができる。
【0100】
さらに、上記マット粒子の粒子径分布としては、単分散であることが好ましく、全粒子の粒子径は同一に近ければ近いほどよい。例えば、平均粒子径よりも20%以上粒子径の異なる粒子を粗大粒子と規定した場合には、この粗大粒子の割合は全粒子数の1%以下であることが好ましく、より好ましくは0.1%以下であり、さらに好ましくは0.01%以下である。このような粒子径分布を持つマット粒子は、通常の合成反応後に、分級によって得られ、分級の回数を上げることやその程度を強くすることにより、より好ましい分布のマット粒子を得ることができる。
【0101】
(無機フィラー)
ハードコート層には、層の屈折率を高めるために、上記のマット粒子に加えて、チタン、ジルコニウム、アルミニウム、インジウム、亜鉛、錫、アンチモンのうちより選ばれる少なくとも1種の金属の酸化物からなり、平均粒径が0.5nm〜0.2μm、好ましくは1nm〜0.1μm、より好ましくは1nm〜0.06μmである無機フィラーが含有されることが好ましい。
【0102】
また反対に、マット粒子との屈折率差を大きくする目的で、高屈折率マット粒子を用いたハードコート層では、層の屈折率を低目に保つために、珪素の酸化物を用いることも好ましい。好ましい粒径は上記の無機フィラーと同じである。
【0103】
ハードコート層に用いられる無機フィラーの具体例としては、TiO2、ZrO2、Al2O3、In2O3、ZnO、SnO2、Sb2O3、ITO(インジウム−スズ酸化物)とS
iO2等が挙げられる。TiO2及びZrO2が高屈折率化の点で特に好ましい。
【0104】
これらの無機フィラーは、表面をシランカップリング処理又はチタンカップリング処理されることも好ましく、フィラー表面にバインダー種と反応できる官能基を有する表面処理剤が好ましく用いられる。
【0105】
無機フィラーの添加量は、ハードコート層の全質量の10〜90質量%であることが好ましく、より好ましくは20〜80質量%であり、特に好ましくは30〜75質量%である。
【0106】
なお、このようなフィラーは、粒径が光の波長よりも十分小さいために散乱が生じず、バインダーポリマーに該フィラーが分散した分散体は、光学的に均一な物質として振舞う。
【0107】
本発明の反射防止フィルムにおけるハードコート層には、機能に応じて界面活性剤・チクソトロピー剤・耐電防止剤などの添加剤を含有させることができる。ハードコート層には、界面活性剤として、前記一般式(1)又は(2)の構造を含む含フッ素ポリマーを含有する、本発明の塗布組成物を用いることが好ましい。
【0108】
本発明におけるハードコート層のバインダー及び無機フィラーの混合物の合計の屈折率は、1.4〜2.00であることが好ましく、より好ましくは1.45〜1.80である。屈折率を上記範囲とするには、バインダー及び無機フィラーの種類及び量の割合を選択すればよい。どのように選択するかは、予め実験的に知ることができる。
【0109】
ハードコート層の膜厚は1〜15μmが好ましく、1.2〜8μmがより好ましい。
【0110】
[高屈折率層]
本発明の反射防止フィルムにおける高屈折率層は、典型的には、少なくとも高屈折率の無機化合物微粒子及びマトリックスバインダー(以下、マトリックスと呼称することもある)を含有する硬化性組成物を高屈折率層用組成物として塗布、硬化してなる屈折率1.55〜2.40の硬化膜からなる。
【0111】
界面活性剤として、前記一般式(1)又は(2)の構造を含む含フッ素ポリマーを含有する、本発明の塗布組成物を用いることが好ましい。また上記高屈折率層には、界面活性剤として、前記一般式(1)又は(2)の構造を含む含フッ素ポリマーを含有する、本発明の塗布組成物を用いることが好ましい。
上記屈折率は1.65〜2.30が好ましく、更には1.80〜2.00が特に好ましい。本発明における高屈折率層の屈折率は1.55〜2.40であり、いわゆる高屈折率層又は中屈折率層といわれている層であるが、以下の本明細書では、この層を高屈折率層と総称して呼ぶことがある。
【0112】
(高屈折率粒子)
本発明の高屈折率層に含まれる高屈折率の無機微粒子は、屈折率が1.80〜2.80、一次粒子の平均粒径が3〜150nmであるものが好ましい。屈折率が上記範囲であれば、皮膜の屈折率を高める効果が十分で、粒子の着色もない。また、一次粒子の平均粒径が上記範囲であれば、皮膜のヘイズ値が低く、透明であり、かつ高い屈折率の皮膜が得られる。本発明で、より好ましい無機微粒子は屈折率が1.90〜2.80で、一次粒子の平均粒径が3〜100nmの粒子であり、更に好ましいのは屈折率が1.90〜2.80で、一次粒子の平均粒径が5〜80nmの粒子である。
【0113】
好ましい高屈折率無機微粒子の具体例は、Ti、Zr、Ta、In、Nd、Sn、Sb、Zn,LaW、Ce、Nb、V、Sm、Y等の酸化物又は複合酸化物、硫化物を主成分とする粒子が挙げられる。ここで、主成分とは粒子を構成する成分の中で最も含有量(質量%)が多い成分をさす。本発明で好ましいのはTi、Zr、Ta、In、Snから選ばれる少なくとも1種の金属元素を含む酸化物若しくは複合酸化物を主成分とする粒子である。
【0114】
本発明で使用される高屈折率無機微粒子には、粒子の中に種々の元素が含有されていても構わない。例えば、Li、Si、Al、B、Ba、Co、Fe、Hg、Ag、Pt、Au、Cr、Bi、P、Sなどが挙げられる。酸化錫、酸化インジウムにおいては粒子の導電性を高めるために、Sb、Nb、P、B、In、V、ハロゲンなどの元素を含有させることが好ましく、特に、酸化アンチモンを約5〜20質量%含有させたものが最も好ましい。
【0115】
特に好ましくは、Co、Zr、Alから選ばれる少なくとも1つの元素を含有する、二酸化チタンを主成分とする高屈折率無機微粒子(以降、「特定の酸化物」と称することもある)が挙げられる。特に、好ましい元素はCoである。Tiに対する、Co、Al、Zrの総含有量は、Tiに対し0.05〜30質量%であることが好ましく、より好ましくは0.1〜10質量%、さらに好ましくは0.2〜7質量%、特に好ましくは0.3〜5質量%、最も好ましくは0.5〜3質量%である。
【0116】
Co、Al、Zrは、二酸化チタンを主成分とする高屈折率無機微粒子の内部、及び/又は、表面に存在する。これらの原子は、該高屈折率無機微粒子の内部に存在することがより好ましく、内部と表面の両方に存在することが最も好ましい。これらの特定の金属元素は、酸化物として存在してもよい。
【0117】
また、他の好ましい高屈折率無機粒子として、チタン元素と、酸化物が屈折率1.95以上となる金属元素から選ばれる少なくとも1種の金属元素(以下、「Met」とも略称する)との複酸化物の粒子で、かつ該複酸化物はCoイオン、Zrイオン、及びAlイオンから選ばれる金属イオンの少なくとも1種がドープされてなる無機微粒子(「特定の複酸化物」と称することもある)が挙げられる。ここで、該酸化物の屈折率が1.95以上となる金属酸化物の金属元素としては、Ta、Zr、In、Nd、Sb,Sn、及びBiが好ましい。特には、Ta、Zr、Sn、Biが好ましい。複酸化物にドープされる金属イオンの含有量は、複酸化物を構成する全金属[Ti+Met]量に対して、25質量%を越えない範囲で含有することが屈折率維持の観点から好ましい。より好ましくは0.05〜10質量%、さらに好ましくは0.1〜5質量%、最も好ましくは0.3〜3質量%である。
【0118】
ドープされた金属イオンは、金属イオン、金属原子の何れの形態で存在してもよく、複酸化物の表面から内部まで適宜に存在する。表面と内部との両方に存在することが好ましい。
【0119】
本発明で用いられる高屈折率無機微粒子は、結晶構造又はアモルファス構造を有することが好ましい。結晶構造は、ルチル、ルチル/アナターゼの混晶、又はアナターゼが主成分であることが好ましく、特にルチル構造が主成分であることが好ましい。このことにより、本発明で用いられる特定の酸化物又は特定の複酸化物の高屈折率無機微粒子は、1.90〜2.80、好ましくは2.10〜2.80、更に好ましくは2.20〜2.80の屈折率を有することが可能になる。また、二酸化チタンが有する光触媒活性を抑えることができ、本発明の高屈折率層の耐候性を著しく改良することができる。
【0120】
上記した特定の金属元素又は金属イオンをドープする方法は、従来公知の方法を用いることができる。例えば、特開平5−330825号公報、同11−263620号公報、特表平11−512336号公報、欧州特許出願公開第0335773号明細書等に記載の方法、イオン注入法{例えば、権田俊一、石川順三、上条栄治編「イオンビーム応用技術」、(株)シ−エムシー、1989年刊行;青木康、「表面科学」、18巻(5)、p.262、1998年;安保正一等、「表面科学」、20巻(2)、p.60、1999等記載}等に従って行うことがきる。
【0121】
本発明に用いられる高屈折率無機微粒子は、表面処理してもよい。表面処理は、無機化合物及び/又は有機化合物を用いて該粒子表面の改質を実施し、無機粒子表面の濡れ性を調製し有機溶媒中での微粒子化、高屈折率層形成用組成物中での分散性や分散安定性を向上することができる。
【0122】
高屈折率無機微粒子表面に物理化学的な吸着をして粒子表面の改質をすることができる無機化合物としては、例えば珪素を含有する無機化合物(SiO2など)、アルミニウムを含有する無機化合物{Al2O3,Al(OH)3など}、コバルトを含有する無機化合物(CoO2,Co2O3,Co3O4など)、ジルコニウムを含有する無機化合物{ZrO2,Zr(OH)4など}、鉄を含有する無機化合物(Fe2O3など)などが挙げらる。
【0123】
また、表面処理に用いられる有機化合物の例には、従来公知の金属酸化物や無機顔料等の無機フィラー類の表面改質剤を用いることができる。例えば、「顔料分散安定化と表面処理技術・評価」第一章(技術情報協会、2001年刊行)等に記載されている。
【0124】
具体的には、高屈折率無機粒子表面と親和性を有する極性基を有する有機化合物が挙げられる。そのような有機化合物にはカップリング化合物と称される化合物が含まれる。無機粒子表面と親和性を有する極性基としては、カルボキシル基、ホスホノ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、環状酸無水物基、アミノ基等が挙げられ、分子中に少なくとも1種を含有する化合物が好ましい。例えば、長鎖脂肪族カルボン酸(例えばステアリン酸、ラウリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレイン酸等)、ポリオール化合物{例えばペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ECH(エピクロルヒドリン)変性グリセロールトリアクリレート等}、ホスホノ基含有化合物{例えばEO(エチレンオキシド)変性リン酸トリアクリレート等}、アルカノールアミン{エチレンジアミンEO付加体(5モル)等}が挙げれる。
【0125】
カップリング化合物としては、従来公知の有機金属化合物が挙げられ、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、アルミネートカップリング剤等が含まれる。中でも、シランカップリング剤が最も好ましい。具体的には、例えば特開2002−9908号公報、同2001−310423号公報の段落番号「0011」〜「0015」記載の化合物等が挙げられる。
これらの表面処理は、2種類以上を併用することもできる。
【0126】
本発明で使用される高屈折率の金属酸化物微粒子としては、これをコアとして無機化合物からなるシェルを形成するコア/シェル構造の微粒子も好ましい。シェルとしては、Al、Si、Zrから選ばれる少なくとも1種の元素からなる酸化物が好ましい。具体的には、例えば特開2001−166104号公報記載の内容が挙げられる。
【0127】
本発明で使用される高屈折率無機微粒子の形状は、特に限定されないが米粒状、球形状、立方体状、紡錘形状、不定形状が好ましい。該高屈折率無機微粒子は単独で用いてもよいが、2種類以上を併用して用いることもできる。
【0128】
(分散剤)
本発明で使用される高屈折率無機微粒子を、安定した所定の超微粒子として用いるため、分散剤を併用することが好ましい。分散剤としては、該無機微粒子表面と親和性を有する極性基を有する低分子化合物、又は高分子化合物であることが好ましい。
【0129】
上記極性基としては、ヒドロキシ基、メルカプト基、カルボキシル基、スルホ基、ホスホノ基、オキシホスホノ基、−P(=O)(R31)(OH)基、−O−P(=O)(R31)(OH)基、アミド基(−CONHR32、−SO2NHR32)、環状酸無水物含有基、アミノ基、四級アンモニウム基等が挙げられる。ここで、R31は炭素数1〜18の炭化水素基を表す(例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、オクタデシル基、クロロエチル基、メトキシエチル基、シアノエチル基、ベンジル基、メチルベンジル基、フェネチル基、シクロヘキシル基等)。R32は、水素原子又は前記R31と同一の内容を表す。
【0130】
上記極性基において、解離性プロトンを有する基はその塩であってもよい。また、上記アミノ基、四級アンモニウム基は、一級アミノ基、二級アミノ基又は三級アミノ基のいずれでもよく、三級アミノ基又は四級アンモニウム基であることがさらに好ましい。二級アミノ基、三級アミノ基又は四級アンモニウム基の窒素原子に結合する基は、炭素原子数が1〜12の炭化水素基(上記R31の基と同一の内容のもの等)であることが好ましい。また、三級アミノ基は、窒素原子を含有する環形成のアミノ基(例えば、ピペリジン環、モルホリン環、ピペラジン環、ピリジン環等)であってもよく、更に四級アンモニウム基はこれら環状アミノ基の四級アモニウム基であってもよい。特に炭素原子数が1〜6のアルキル基であることがさらに好ましい。
【0131】
本発明に係る分散剤の極性基としては、pKaが7以下のアニオン性基又はこれらの解離基の塩が好ましい。特に、カルボキシル基、スルホ基、ホスホノ基、オキシホスホノ基、又はこれらの解離基の塩が好ましい。
【0132】
分散剤は、さらに架橋性又は重合性官能基を含有することが好ましい。架橋性又は重合性官能基としては、ラジカル種による付加反応・重合反応が可能なエチレン性不飽和基{例えば(メタ)アクリロイル基、アリル基、スチリル基、ビニルオキシ基カルボニル基、ビニルオキシ基等}、カチオン重合性基(エポキシ基、チオエポキシ基、オキセタニル基、ビニルオキシ基、スピロオルトエステル基等)、重縮合反応性基(加水分解性シリル基等、N−メチロール基)等が挙げられ、好ましくはエチレン性不飽和基、エポキシ基、又は加水分解性シリル基である。
【0133】
具体的には、例えば、特開平11−153703号公報、米国特許第6210858号明細書、特開2002−2776069号公報、特開2001−310423号公報の段落番号[0013]〜[0015]記載の化合物等が挙げられる。
【0134】
また、本発明に用いられる分散剤は、高分子分散剤であることも好ましい。特に、アニオン性基、及び架橋性又は重合性官能基を含有する高分子分散剤が挙げられ、これらの官能基が上記した内容と同様のものが挙げられる。
【0135】
分散剤の高屈折率無機微粒子に対する使用量は、1〜100質量%の範囲であることが好ましく、3〜50質量%の範囲であることがより好ましく、5〜40質量%であることが最も好ましい。また、分散剤は2種類以上を併用してもよい。
【0136】
(分散媒体)
本発明において、高屈折率層用組成物における高屈折率無機微粒子の湿式分散に供する分散媒体としては、水及び有機溶媒から適宜選択して用いることができ、沸点が50℃以上の液体であることが好ましく、沸点が60〜180℃の範囲の有機溶媒であることがより好ましい。分散媒体は、無機微粒子及び分散剤を含む全分散組成物の5〜50質量%となる割合で用いることが好ましい。更に好ましくは10〜30質量%の割合である。この範囲において、分散が容易に進行し、得られる分散物は作業性良好な粘度の範囲となる。
【0137】
分散媒体としては、アルコール類、ケトン類、エステル類、アミド類、エーテル類、エーテルエステル類、炭化水素類、ハロゲン化炭化水素類等が挙げられる。具体的には、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ベンジルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、エチレングリコールモノアセテート等)、ケトン(例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン等)、エステル(例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、蟻酸エチル、蟻酸プロピル、蟻酸ブチル、乳酸エチル等)、脂肪族炭化水素(例えば、ヘキサン、シクロヘキサン等)、ハロゲン化炭化水素(例えば、メチルクロロホルム等)、芳香族炭化水素(例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等)、アミド(例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、n−メチルピロリドン等)、エーテル(例えば、ジオキサン、テトラハイドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル等)、エーテルアルコール(例えば、1−メトキシ−2−プロパノール、エチルセルソルブ、メチルカルビノール等)が挙げられる。単独での2種以上を混合して使用してもよい。好ましい分散媒体は、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ブタノールが挙げられる。また、ケトン溶媒(例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等)を主にした塗布溶媒系も好ましく用いられる。
【0138】
(無機微粒子の超微粒子化)
本発明の高屈折率層を形成するための硬化性塗布組成物は、平均粒子径100nm以下の無機超微粒子が分散した組成物とすることにより、該組成物の液の安定性が向上し、この硬化性塗布組成物から形成された硬化膜は、無機微粒子が硬化膜のマトリックス中で超微粒子状態で均一に分散されて存在し、光学特性が均一で透明な高屈折率膜が達成される。硬化膜のマトリックス中で存在する超微粒子の大きさは、平均粒径3〜100nmの範囲が好ましく、5〜100nmがより好ましい。特に10〜80nmが最も好ましい。
【0139】
更には、500nm以上の平均粒子径の大粒子が含まれないことが好ましく、300nm以上の平均粒子径の大粒子が含まれないことが特に好ましい。
【0140】
上記高屈折率無機物粒子を上記の範囲の粗大粒子を含まない超微粒子の大きさに分散するには、例えば、前記の分散剤と共に、平均粒径0.8mm未満のメディアを用いた湿式分散方法で分散する方法で達成される。
【0141】
湿式分散機としては、サンドグラインダーミル(例えば、ピン付きビーズミル等)、ダイノミル、高速インペラーミル、ペッブルミル、ローラーミル、アトライター、コロイドミル等の従来公知のものが挙げられる。特に本発明で用いられる高屈折率酸化物微粒子を超微粒子に分散するには、サンドグラインダーミル、ダイノミル、及び高速インペラーミルが好ましい。
【0142】
上記分散機と共に用いるメディアとしては、その平均粒径が0.8mm未満であり、平均粒径がこの範囲のメディアを用いることで上記の無機微粒子径が100nm以下となり、且つ粒子径の揃った超微粒子を得ることができる。メディアの平均粒径は、好ましくは0.5mm以下であり、より好ましくは0.05〜0.3mmである。
【0143】
また、湿式分散に用いられるメディアとしては、ビーズが好ましい。具体的には、ジルコニアビーズ、ガラスビーズ、セラミックビーズ、スチールビーズ等が挙げられ、分散中におけるビーズの破壊等を生じ難い等の耐久性と超微粒子化の上から0.05〜0.2mmのジルコニアビーズが特に好ましい。
【0144】
分散工程での分散温度は20〜60℃が好ましく、より好ましくは25〜45℃である。この範囲の温度で超微粒子に分散すると分散粒子の再凝集、沈殿等が生じない。これは、無機化合物粒子への分散剤の吸着が適切に行われ、常温下での分散剤の粒子からの脱着等による分散安定不良とならないためと考えられる。
【0145】
上記した内容の分散方法を用いることにより、透明性を損なわない屈折率均一性、膜の強度、隣接層との密着性等に優れた高屈折率膜が好ましく形成される。
また、上記湿式分散の工程の前に、予備分散処理を実施してもよい。予備分散処理に用いる分散機の例には、ボールミル、三本ロールミル、ニーダー及びエクストルーダーが含まれる。
【0146】
更には、分散物中の分散粒子の平均粒径及び粒子径の単分散性が上記した範囲を満足する上で、分散物中の粗大凝集物を除去するため、ビーズとの分離処理に際して精密濾過されるように濾材を配置することも好ましい。精密濾過するための濾材は、濾過粒子サイズ25μm以下が好ましい。精密濾過するための濾材のタイプは、精密濾過性能を有していれば特に限定されないが、例えばフィラメント型、フェルト型、メッシュ型が挙げられる。分散物を精密濾過するための濾材の材質は、精密濾過性能を有しており、且つ得られる塗布組成物に悪影響を及ばさなければ特に限定はされないが例えばステンレス、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン等が挙げられる。
【0147】
(高屈折率層のマトリックス)
高屈折率層は、高屈折率無機超微粒子とマトリックスを少なくとも含有してなる。
【0148】
本発明の好ましい態様によれば、高屈折率層のマトリックスは、(1)有機バインダー、又は(2)加水分解性官能基含有する有機金属化合物の加水分解物及びこの加水分解物の部分縮合物の少なくともいずれかを含有する高屈折率層形成用組成物を塗布後に、硬化して形成される。
【0149】
(1)有機バインダー
有機バインダーとしては、
(イ)従来公知の熱可塑性樹脂、
(ロ)従来公知の反応性硬化性樹脂と硬化剤との組み合わせ、又は
(ハ)バインダー前駆体(後述する硬化性の多官能モノマーや多官能オリゴマーなど)と重合開始剤との組み合わせ、
から形成されるバインダーが挙げられる。
【0150】
上記(イ)、(ロ)又は(ハ)のバインダー形成用成分と、高屈折率複合酸化物微粒子などの高屈折率無機微粒子と分散剤を含有する分散液から、高屈折率層形成用の塗布組成物が調製される。
【0151】
塗布組成物は、透明支持体上に塗布し、塗膜を形成した後、バインダー形成用成分に応じた方法で硬化され、高屈折率層が形成される。硬化方法は、バインダー成分の種類に応じて適宜選択され、例えば加熱及び光照射の少なくともいずれかの手段により、硬化性化合物(例えば、多官能モノマーや多官能オリゴマーなど)の架橋反応又は重合反応を生起
させる方法が挙げられる。中でも、上記(ハ)の組み合わせを用いて光照射することにより硬化性化合物を架橋反応又は重合反応させて硬化したバインダーを形成する方法が好ましい。
【0152】
更に、高屈折率層形成用の塗布組成物を塗布と同時に、又は塗布後に、高屈折率無機微粒子の分散液に含有される分散剤を架橋反応又は重合反応させることが好ましい。
【0153】
このようにして作製した硬化膜中のバインダーは、例えば、前記した分散剤とバインダーの前駆体である硬化性の多官能モノマーや多官能オリゴマーとが、架橋又は重合反応し、バインダーに分散剤のアニオン性基が取りこまれた形となる。さらに、硬化膜中のバインダーは、アニオン性基が無機微粒子の分散状態を維持する機能を有するので、架橋又は重合構造がバインダーに皮膜形成能を付与して、高屈折率無機微粒子を含有する硬化膜中の物理強度、耐薬品性、耐候性を改良することができる。
【0154】
前記(イ)の熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、セルロース樹脂、ポリエーテル樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩ビー酸ビ共重合体樹脂、ポリアクリル樹脂、ポリメタアクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ウレタン樹脂、シリコン樹脂、イミド樹脂等が挙げられる。
【0155】
また、前記(ロ)の反応硬化型樹脂、すなわち、熱硬化型樹脂及び電離放射線硬化型樹脂の少なくともいずれかを使用することが好ましい。
熱硬化型樹脂には、フェノール樹脂、尿素樹脂、ジアリルフタレート樹脂、メラミン樹脂、グアナミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アミノアルキッド樹脂、メラミン−尿素共縮合樹脂、珪素樹脂、ポリシロキサン樹脂等が挙げられる。
【0156】
電離放射線硬化型樹脂は、例えば、ラジカル重合性不飽和基{(メタ)アクリロイルオキシ基、ビニルオキシ基、スチリル基、ビニル基等}及びカチオン重合性基(エポキシ基、チオエポキシ基、ビニルオキシ基、オキセタニル基等)の少なくともいずれかの官能基を有する樹脂で、例えば、比較的低分子量のポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、(メタ)アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂等が挙げられる。
【0157】
これらの反応硬化型樹脂に、必要に応じて、架橋剤(エポキシ化合物、ポリイソシアネート化合物、ポリオール化合物、ポリアミン化合物、メラミン化合物等)、重合開始剤(アゾビス化合物、有機過酸化化合物、有機ハロゲン化合物、オニウム塩化合物、ケトン化合物等のUV光開始剤等)等の硬化剤、重合促進剤(有機金属化合物、酸化合物、塩基性化合物等)などの従来公知の化合物を加えて使用する。具体的には、例えば、山下普三、金子東助「架橋剤ハンドブック」(大成社、1981年刊)記載の化合物が挙げられる。
【0158】
以下、硬化したバインダーの好ましい形成方法である、前記(ハ)の組み合わせを用いて光照射により硬化性化合物を架橋又は重合反応させて硬化したバインダーを形成する方法について、主に説明する。
【0159】
光硬化性の多官能モノマーや多官能オリゴマーの官能基としては、ラジカル重合性又はカチオン重合性のいずれでもよい。
【0160】
(ラジカル重合性多官能モノマー又はオリゴマー)
ラジカル重合性官能基としては、(メタ)アクリロイル基、ビニルオキシ基、スチリル基、アリル基等のエチレン性不飽和基等が挙げられ、中でも、(メタ)アクリロイル基が
好ましい。
【0161】
分子内に2個以上のラジカル重合性基を含有する多官能モノマーを含有することが好ましい。
【0162】
ラジカル重合性多官能モノマーとしては、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも2個有する化合物から選ばれることが好ましい。好ましくは、分子中に2〜6個の末端エチレン性不飽和結合を有する化合物である。このような化合物群はポリマー材料分野において広く知られるものであり、本発明においては、これらを特に限定なく用いることができる。これらは、例えば、モノマー、プレポリマー、すなわち2量体、3量体及びオリゴマー、又はそれらの混合物並びにそれらの共重合体などの化学的形態をもつことができる。
【0163】
ラジカル重合性モノマーの例としては、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸等)や、そのエステル類、アミド類が挙げられ、好ましくは、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アルコール化合物とのエステル、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミド類が挙げられる。また、ヒドロキシル基、アミノ基、メルカプト基等の求核性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル類やアミド類と、単官能又は多官能イソシアネート類、エポキシ類との付加反応物、多官能のカルボン酸との脱水縮合反応物等も好適に使用される。また、イソシアナート基やエポキシ基等の親電子性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル又はアミド類と、単官能又は多官能のアルコール類、アミン類及びチオール類との反応物も好適である。また、別の例として、上記の不飽和カルボン酸の代わりに、不飽和ホスホン酸、スチレン等に置き換えた化合物群を使用することも可能である。
【0164】
脂肪族多価アルコール化合物としては、アルカンジオール、アルカントリオール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサントリオール、イノシットール、シクロヘキサンジメタノール、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、グリセリン、ジグリセリン等が挙げられる。これら脂肪族多価アルコール化合物と、不飽和カルボン酸との重合性エステル化合物(モノエステル又はポリエステル)、例えば、特開2001−139663号公報段落番号[0026]〜[0027]記載の化合物が挙げられる。
【0165】
その他の重合性エステルの例としては、例えば、ビニルメタクリレート、アリルメタクリレート、アリルアクリレート、特公昭46−27926号、特公昭51−47334号及び特開昭57−196231号の各公報に記載の脂肪族アルコール系エステル類や、特開平2−226149号公報等に記載の芳香族系骨格を有するもの、特開平1−165613号公報に記載のアミノ基を有するもの等も好適に用いられる。
【0166】
また、脂肪族多価アミン化合物と不飽和カルボン酸とから形成される重合性アミドの具体例としては、メチレンビス−(メタ)アクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス−(メタ)アクリルアミド、ジエチレントリアミントリス(メタ)アクリルアミド、キシリレンビス(メタ)アクリルアミド、特公昭54−21726号公報記載のシクロヘキシレン構造を有するもの等を挙げることができる。
【0167】
また、1分子中に2個以上の重合性ビニル基を含有するビニルウレタン化合物(特公昭48−41708号公報等)、ウレタンアクリレート類(特公平2−16765号公報等)、エチレンオキサイド系骨格を有するウレタン化合物(特公昭62−39418号公報等)、ポリエステルアクリレート類(特公昭52−30490号公報等)、更に、「日本接着協会誌」、第20巻、第7号、300〜308頁(1984年)に記載の光硬化性モノマー及びオリゴマーも使用することができる。
【0168】
これらラジカル重合性の多官能モノマーは、2種類以上を併用してもよい。
【0169】
(カチオン重合性化合物)
次に、高屈折率層のバインダーの形成に用いることができる、カチオン重合性基含有の化合物(以下、「カチオン重合性化合物」又は「カチオン重合性有機化合物」とも称する)について説明する。
【0170】
本発明に用いられるカチオン重合性化合物は、活性エネルギー線感受性カチオン重合開始剤の存在下、活性エネルギー線を照射したときに、重合反応及び架橋反応の少なくともいずれかを生ずる化合物が使用でき、代表例としては、エポキシ化合物、環状チオエーテル化合物、環状エーテル化合物、スピロオルトエステル化合物、ビニルエーテル化合物などを挙げることができる。本発明では前記したカチオン重合性有機化合物のうちの1種を用いても2種以上を用いてもよい。
【0171】
カチオン重合性基含有化合物としては、1分子中のカチオン重合性基の数は2〜10個が好ましく、特に好ましくは2〜5個である。該化合物の分子量は3000以下であり、好ましくは200〜2000の範囲、特に好ましくは400〜1500の範囲である。分子量が小さすぎると、皮膜形成過程での揮発が問題となり、大きすぎると、高屈折率層形成用組成物との相溶性が悪くなり好ましくない。
【0172】
上記エポキシ化合物としては、脂肪族エポキシ化合物及び芳香族エポキシ化合物が挙げられる。
【0173】
脂肪族エポキシ化合物としては、例えば、脂肪族多価アルコール又はそのアルキレンオキサイド付加物のポリグリシジルエーテル、脂肪族長鎖多塩基酸のポリグリシジルエステル、グリシジルアクリレートやグリシジルメタクリレートのホモポリマー、コポリマーなどを挙げることができる。さらに、前記のエポキシ化合物以外にも、例えば、脂肪族高級アルコールのモノグリシジルエーテル、高級脂肪酸のグリシジルエステル、エポキシ化大豆油、エポキシステアリン酸ブチルエポキシステアリン酸オクチル、エポキシ化アマニ油、エポキシ化ポリブタジエンなどを挙げることができる。また、脂環式エポキシ化合物としては、少なくとも1個の脂環族環を有する多価アルコールのポリグリシジルエーテル、又は不飽和脂環族環(例えば、シクロヘキセン、シクロペンテン、ジシクロオクテン、トリシクロデセン等)含有化合物を過酸化水素、過酸等の適当な酸化剤でエポキシ化して得られるシクロヘキセンオキサイド又はシクロペンテンオキサイド含有化合物などを挙げることができる。
【0174】
さらに、芳香族エポキシ化合物としては、例えば少なくとも1個の芳香核を有する1価又は多価フェノール或いはそのアルキレンオキサイド付加体のモノ又はポリグリシジルエーテルを挙げることができる。これらのエポキシ化合物として、例えば、特開平11−242101号公報中の段落番号[0084]〜[0086]記載の化合物、特開平10−158385号公報中の段落番号[0044]〜[0046]記載の化合物等が挙げられる。
【0175】
これらのエポキシ化合物のうち、速硬化性を考慮すると、芳香族エポキシド及び脂環式エポキシドが好ましく、特に脂環式エポキシドが好ましい。本発明では、上記エポキシ化合物の1種を単独で使用してもよいが、2種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0176】
環状チオエーテル化合物としては、上記のエポキシ環がチオエポキシ環となる化合物が挙げられる。
【0177】
環状エーテルとしてのオキセタニル基を含有する化合物としては、具体的には、例えば特開2000−239309号公報中の段落番号[0024]〜[0025]に記載の化合物等が挙げられる。これらの化合物は、エポキシ基含有化合物と併用することが好ましい。
【0178】
スピロオルソエステル化合物としては、例えば特表2000−506908号公報等記載の化合物を挙げることができる。
【0179】
ビニル炭化水素化合物としては、スチレン化合物、ビニル基置換脂環炭化水素化合物(ビニルシクロヘキサン、ビニルビシクロヘプテン等)、前記ラジカル重合成性モノマーで記載の化合物、プロペニル化合物{“Journal of Polymer Science:PartA:Polymer Chemistry”,32巻,p.2895(1994年)記載等}、アルコキシアレン化合物{“Journal of Polymer Science:PartA:Polymer Chemistry”,33巻,p.2493(1995年)記載等}、ビニル化合物{“Journal of Polymer Science:PartA:Polymer Chemistry”,34巻,p.1015(1996年)、特開2002−29162号公報等記載}、イソプロペニル化合物{“Journal of Polymer Science:PartA:Polymer Chemistry”,34巻,p.2051(1996年)記載等)等を挙げることができる。これらの化合物は2種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0180】
また、本発明に用いられる多官能性化合物は、上記のラジカル重合性基及びカチオン重合性基から選ばれる少なくとも各1種を少なくとも分子内に含有する化合物を用いることが好ましい。例えば、特開平8−277320号公報中の段落番号[0031]〜[0052]記載の化合物、特開2000−191737号公報中の段落番号[0015]記載の化合物等が挙げられる。本発明に供される化合物は、これらの限定されるものではない。
【0181】
上記したラジカル重合性化合物とカチオン重合性化合物とを、ラジカル重合性化合物:カチオン重合性化合物の質量比で、90:10〜20:80の割合で含有していることが好ましく、80:20〜30:70の割合で含有していることがより好ましい。
【0182】
{重合開始剤(L)}
次に、前記(ハ)の組み合わせにおいて、バインダー前駆体と組み合わせて用いられる重合開始剤について詳述する。
【0183】
重合開始剤としては、熱重合開始剤、光重合開始剤などが挙げられる。
本発明で用いられる重合開始剤(L)は、光照射及び加熱の少なくともいずれかの手段により、ラジカル若しくは酸を発生する化合物である。本発明において用いられる光重合開始剤(L)は、極大吸収波長が400nm以下であることが好ましい。このように吸収波長を紫外線領域にすることにより、取り扱いを白灯下で実施することができる。また、近赤外線領域に極大吸収波長を持つ化合物を用いることもできる。
【0184】
{ラジカルを発生する化合物(L1)}
先ず、ラジカルを発生する化合物(L1)について詳述する。
本発明において好適に用いられるラジカルを発生する化合物(L1)は、光及び/又は熱照射によりラジカルを発生し、重合性の不飽和基を有する化合物の重合を、開始、促進させる化合物を指す。
【0185】
公知の重合開始剤や結合解離エネルギーの小さな結合を有する化合物などを、適宜、選択して用いることができる。また、ラジカルを発生する化合物は、単独又は2種以上を併用して用いることができる。
【0186】
ラジカルを発生する化合物としては、例えば、従来公知の有機過酸化化合物、アゾ系重合開始剤等の熱ラジカル重合開始剤、アミン化合物(特公昭44−20189号公報記載)、有機ハロゲン化化合物、カルボニル化合物、メタロセン化合物、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、有機ホウ酸化合物、ジスルホン化合物等の光ラジカル重合開始剤が挙げられる。
【0187】
上記有機ハロゲン化化合物としては、具体的には、若林等の“Bull.Chem.Soc.Japan”42巻、p.2924(1969年)、米国特許第3,905,815号明細書、特開昭63−298339号公報、M.P.Huttの“Jurnal of Heterocyclic Chemistry”,1巻(No.3),(1970年)等に記載の化合物が挙げられ、特に、トリハロメチル基が置換したオキサゾール化合物及びs−トリアジン化合物が挙げられる。より好適には、少なくとも一つのモノ−、ジ−又はトリハロゲン置換メチル基がs−トリアジン環に結合したs−トリアジン誘導体が挙げられる。
【0188】
その他の有機ハロゲン化合物の例として、特開平5−27830号公報中の段落番号[0039]〜[0048]記載のケトン類、スルフィド類、スルホン類、窒素原子含有の複素環類等が挙げられる。
【0189】
上記カルボニル化合物としては、例えば、「最新 UV硬化技術」、p.60〜62{(株)技術情報協会刊、1991年}、特開平8−134404号公報の段落番号[0015]〜[0016]、同11−217518号公報の段落番号[0029]〜[0031]に記載の化合物等が挙げられ、アセトフェノン系、ヒドロキシアセトフェノン系、ベンゾフェノン系、チオキサン系、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン化合物、p−ジメチルアミノ安息香酸エチル、p−ジエチルアミノ安息香酸エチル等の安息香酸エステル誘導体、ベンジルジメチルケタール、アシルホスフィンオキシド等が挙げられる。
【0190】
上記有機過酸化化合物としては、例えば、特開2001−139663号公報の段落番号[0019]に記載の化合物等が挙げられる。
上記メタロセン化合物としては、特開平2−4705号公報、特開平5−83588号公報記載の種々のチタノセン化合物、特開平1−304453号公報、特開平1−152109号公報記載の鉄−アレーン錯体等が挙げられる。
【0191】
上記ヘキサアリールビイミダゾール化合物としては、例えば、特公平6−29285号公報、並びに米国特許第3,479,185号、同第4,311,783号及び同第4,622,286号等の各明細書記載の種々の化合物等が挙げられる。
【0192】
上記有機ホウ酸塩化合物としては、例えば、特許第2764769号、特開2002−116539号等の各公報、及び、Kunz,Martinらの“Rad.Tech'98.Proceeding”,April,p.19〜22,1998年,Chicago等に記載される有機ホウ酸塩化合物が挙げられる。例えば、前記特開2002−116539号公報の段落番号[0022]〜[0027]記載の化合物が挙げられる。その他の有機ホウ素化合物としては、特開平6−348011号公報、特開平7−128785号公報、特開平7−140589号公報、特開平7−306527号公報、特開平7−2
92014号公報等の有機ホウ素遷移金属配位錯体等が具体例として挙げられる。
【0193】
上記スルホン化合物としては、特開平5−239015号公報に記載の化合物等、上記ジスルホン化合物としては、特開昭61−166544号公報に記載の一般式(II)及び一般式(III)で示される化合物等が挙げられる。
【0194】
これらのラジカル発生化合物は、一種のみを添加しても、2種以上を併用してもよい。添加量としては、ラジカル重合性モノマーの全量に対し0.1〜30質量%、好ましくは0.5〜25質量%、特に好ましくは1〜20質量%で添加することができる。この範囲において、高屈折率層用組成物の経時安定性が問題なく高い重合性となる。
【0195】
{光酸発生剤(L2)}
次に、光重合開始剤(L)として用いることができる光酸発生剤(L2)について詳述する。
【0196】
酸発生剤(L2)としては、光カチオン重合の光開始剤、色素類の光消色剤、光変色剤、又はマイクロレジスト等に使用されている公知の酸発生剤等、公知の化合物及びそれらの混合物等が挙げられる。また、酸発生剤(L2)として、例えば、有機ハロゲン化化合物、ジスルホン化合物が挙げられる。有機ハロゲン化合物、ジスルホン化合物のこれらの具体例は、前記ラジカルを発生する化合物の記載と同様のものが挙げられる。
【0197】
オニウム化合物としては、ジアゾニウム塩、アンモニウム塩、イミニウム塩、ホスホニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、アルソニウム塩、セレノニウム塩等が挙げられ、例えば特開2002−29162号公報の段落番号[0058]〜[0059]に記載の化合物等が挙げられる。
【0198】
本発明において、特に好適に用いられる酸発生剤(L2)としては、オニウム塩が挙げられ、中でも、ジアゾニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、イミニウム塩が、光重合開始の光感度、化合物の素材安定性等の点から好ましい。
【0199】
本発明において、好適に用いることのできるオニウム塩の具体例としては、例えば、特開平9−268205号公報の段落番号[0035]に記載のアミル化されたスルホニウム塩、特開2000−71366号公報の段落番号[0010]〜[0011]に記載のジアリールヨードニウム塩又はトリアリールスルホニウム塩、特開2001−288205号公報の段落番号[0017]に記載のチオ安息香酸S−フェニルエステルのスルホニウム塩、特開2001−133696号公報の段落番号[0030]〜[0033]に記載のオニウム塩等が挙げられる。
【0200】
酸発生剤の他の例としては、特開2002−29162号公報の段落番号[0059]〜[0062]に記載の有機金属/有機ハロゲン化物、o−ニトロベンジル型保護基を有する光酸発生剤、光分解してスルホン酸を発生する化合物(イミノスルフォネート等)等の化合物が挙げられる。
【0201】
これらの酸発生剤は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの酸発生剤は、全カチオン重合性モノマーの全質量100質量部に対し0.1〜20質量%、好ましくは0.5〜15質量%、特に好ましくは1〜10質量%の割合で添加することができる。添加量が上記範囲において、高屈折率用組成物の安定性、重合反応性等から好ましい。
【0202】
本発明に用いられる高屈折率用組成物は、ラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化
合物の合計質量に対して、ラジカル重合開始剤を0.5〜10質量%及びカチオン重合開始剤を1〜10質量%の割合で含有していることが好ましい。より好ましくは、ラジカル重合開始剤を1〜5質量%、及びカチオン重合開始剤を2〜6質量%の割合で含有する。
【0203】
本発明に用いられる高屈折率用組成物には、紫外線照射により重合反応を行なう場合には、従来公知の紫外線分光増感剤、化学増感剤を併用してもよい。例えばミヒラーズケトン、アミノ酸(グリシンなど)、有機アミン(ブチルアミン、ジブチルアミンなど)等が挙げられる。
【0204】
また、近赤外線照射により重合反応を行う場合には、近赤外線分光増感剤を併用することが好ましい。併用する近赤外線分光増感剤は、700nm以上の波長域の少なくとも一部に吸収帯を有する光吸収物質であればよく、分子吸光係数が10000以上の値を有する化合物が好ましい。更には、750〜1400nmの領域に吸収を有し、かつ分子吸光係数が20000以上の値が好ましい。また、420nm〜700nmの可視光波長域に吸収の谷があり、光学的に透明であることがより好ましい。近赤外線分光増感剤は、近赤外線吸収顔料及び近赤外線吸収染料として知られる種々の顔料及び染料を用いることができる。その中でも、従来公知の近赤外線吸収剤を用いることが好ましい。
【0205】
市販の染料及び、文献{例えば、「化学工業」1986年5月号p.45〜51の「近赤外吸収色素」、「90年代機能性色素の開発と市場動向」第2章2.3項(1990年)、(株)シーエムシー発行、「特殊機能色素」(池森・柱谷編集、1986年、(株)シーエムシー発行)、J.Fabianの“Chem.Rev.”,92巻、p.1197〜1226(1992年)、日本感光色素研究所が1995年に発行したカタログ、ExcitonInc.が1989年に発行したレーザー色素カタログ又は特許}に記載されている公知の染料が利用できる。
【0206】
(2)加水分解可能な官能基を含有する有機金属化合物
本発明に用いることができる高屈折率層のマトリックスとして、加水分解可能な官能基を含有する有機金属化合物を用いてゾル/ゲル反応により塗布膜形成後に硬化された膜を形成することも好ましい。有機金属化合物としては、Si、Ti、Zr、Al等からなる化合物が挙げられる。
【0207】
加水分解可能な官能基な基としては、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、ハロゲン原子、水酸基が挙げられ、特に、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等のアルコキシ基が好ましい。
【0208】
好ましい有機金属化合物は、下記一般式(4)で表される有機珪素化合物及びその部分加水分解物(部分縮合物)である。なお、一般式(4)で表される有機珪素化合物は、容易に加水分解し、引き続いて脱水縮合反応が生じることはよく知られた事実である。
一般式(4):(R40)s1−Si(Y41)4-s1
【0209】
一般式(4)中、R40は、置換又は無置換の炭素数1〜30脂肪族基又は炭素数6〜14アリール基を表す。Y41は、ハロゲン原子(塩素原子、臭素原子等)、OH基、OR41基、OCOR41基を表す。ここで、R41は置換又は無置換のアルキル基を表す。s1は0〜3の整数を表し、好ましくは0、1又は2である。但し、s1が0の場合は、Y41はOR41基又はOCOR41基を表す。
【0210】
一般式(4)において、R40の脂肪族基としては、好ましくは炭素数1〜18(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、デシル、ドデシル、ヘキサデシル、オクタデシル、ベンジル基、フェネチル基、シクロヘキシル基、シク
ロヘキシルメチル、ヘキセニル基、デセニル基、ドデセニル基等)が挙げられる。より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは1〜8のものである。
【0211】
R40のアリール基としては、フェニル、ナフチル、アントラニル等が挙げられ、好ましくはフェニル基である。
【0212】
置換基としては特に制限はないが、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素等)、水酸基、メルカプト基、カルボキシル基、エポキシ基、アルキル基(メチル、エチル、i−プロピル、プロピル、t−ブチル等)、アリール基(フェニル、ナフチル等)、芳香族ヘテロ環基(フリル、ピラゾリル、ピリジル等)、アルコキシ基(メトキシ、エトキシ、i−プロポキシ、ヘキシルオキシ等)、アリールオキシ(フェノキシ等)、アルキルチオ基(メチルチオ、エチルチオ等)、アリールチオ基(フェニルチオ等)、アルケニル基(ビニル、1−プロペニル等)、アルコキシシリル基(トリメトキシシリル、トリエトキシシリル等)、アシルオキシ基{アセトキシ、(メタ)アクリロイル等}、アルコキシカルボニル基(メトキシカルボニル、エトキシカルボニル等)、アリールオキシカルボニル基(フェノキシカルボニル等)、カルバモイル基(カルバモイル、N−メチルカルバモイル、N,N−ジメチルカルバモイル、N−メチル−N−オクチルカルバモイル等)、アシルアミノ基(アセチルアミノ、ベンゾイルアミノ、アクリルアミノ、メタクリルアミノ等)などが好ましい。
【0213】
これらの置換基うちで、更に好ましくは水酸基、メルカプト基、カルボキシル基、エポキシ基、アルキル基、アルコキシシリル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基であり、特に好ましくはエポキシ基、重合性のアシルオキシ基((メタ)アクリロイル)、重合性のアシルアミノ基(アクリルアミノ、メタクリルアミノ)である。またこれら置換基は更に置換されていてもよい。
【0214】
R41は置換又は無置換のアルキルを表す。アルキル基中の置換基の説明はR40と同じである。
【0215】
一般式(4)の化合物の含有量は、高屈折率層の全固形分の10〜80質量%が好ましく、より好ましくは20〜70質量%、特に好ましくは30〜50質量%である。
【0216】
一般式(4)の化合物の具体例としては、例えば特開2001−166104号公報段落番号[0054]〜[0056]記載の化合物が挙げられる。
【0217】
高屈折率層において、有機バインダーは、シラノール基を有することが好ましい。バインダーがシラノール基を有することで、高屈折率層の物理強度、耐薬品性、耐候性がさらに改良される。
【0218】
シラノール基は、例えば、高屈折率層形成用の塗布組成物を構成するバインダー形成成分として、バインダー前駆体(硬化性の多官能モノマーや多官能オリゴマーなど)や重合開始剤、高屈折率無機微粒子の分散液に含有される分散剤と共に、架橋又は重合性官能基を有する一般式(4)で表される有機珪素化合物を該塗布組成物に配合し、この塗布組成物を透明支持体上に塗布して、上記の分散剤、多官能モノマーや多官能オリゴマー、一般式(4)で表される有機珪素化合物を架橋反応又は重合反応させることにより、バインダーに導入することができる。
【0219】
上記の有機金属化合物を硬化させるための加水分解・縮合反応は、触媒存在下で行われることが好ましい。触媒としては、塩酸、硫酸、硝酸などの無機酸類、蓚酸、酢酸、ギ酸、トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸、トルエンスルホン酸などの有機酸類、水酸化ナ
トリウム、水酸化カリウム、アンモニアなどの無機塩基類、トリエチルアミン、ピリジンなどの有機塩基類、トリイソプロポキシアルミニウム、テトラブトキシジルコニウム、テトラブトキシチタネートなどの金属アルコキシド類、β−ジケトン類又はβ−ケトエステル類の金属キレート化合物類等が挙げられる。具体的には、例えば特開2000−275403号公報中の段落番号[0071]〜[0083]記載の化合物等が挙げられる。
【0220】
これらの触媒化合物の組成物中での割合は、有機金属化合物に対し、0.01〜50質量%、好ましくは0.1〜50質量%、さらに好ましくは0.5〜10質量%である。反応条件は有機金属化合物の反応性により適宜調節されることが好ましい。
【0221】
高屈折率層においてマトリックスは、特定の極性基を有することも好ましい。
特定の極性基としては、アニオン性基、アミノ基、及び四級アンモニウム基が挙げられる。アニオン性基、アミノ基及び四級アンモニウム基の具体例としては、前記分散剤について述べたものと同様のものが挙げられる。
【0222】
特定の極性基を有する高屈折率層のマトリックスは、例えば、高屈折率層形成用の塗布組成物に、高屈折率無機微粒子と分散剤を含む分散液を配合し、硬化膜形成成分として、特定の極性基を有するバインダー前駆体(特定の極性基を有する硬化性の多官能モノマーや多官能オリゴマーなど)と重合開始剤の組み合わせ及び特定の極性基を有し、且つ架橋又は重合性官能基を有する一般式(4)で表される有機珪素化合物の少なくともいずれかを配合し、さらに所望により特定の極性基と架橋又は重合性官能基とを有する単官能性モノマーを配合し、該塗布組成物を透明支持体上に塗布して、上記の分散剤、単官能性モノマー、多官能モノマー、多官能オリゴマー及び一般式(4)で表される有機珪素化合物の少なくともいずれかを架橋又は重合反応させることにより得られる。
【0223】
特定の極性基を有する単官能性モノマーは、塗布組成物の中で無機微粒子の分散助剤として機能する。さらに、塗布後、分散剤、多官能モノマーや多官能オリオリゴマーと架橋反応、又は、重合反応させてバインダーとすることで高屈折率層における無機微粒子の良好な均一な分散性を維持し、物理強度、耐薬品性、耐候性に優れた高屈折率層を作製することができる。
【0224】
アミノ基又は四級アンモニウム基を有する単官能性モノマーの分散剤に対する使用量は、0.5〜50質量%であることが好ましく、さらに好ましくは1〜30質量%である。高屈折率層の塗布と同時又は塗布後に、架橋又は重合反応によってバインダーを形成すれば、高屈折率層の塗布前に単官能性モノマーを有効に機能させることができる。
【0225】
また、本発明に用いられる高屈折率層のマトリックスとして、前記した有機バインダーの(イ)に相当し、従来公知の架橋又は重合性官能基を含有する有機ポリマーから硬化・形成されたものが挙げられる。高屈折率層形成後のポリマーが、さらに架橋又は重合している構造を有することが好ましい。ポリマーの例には、ポリオレフィン(飽和炭化水素から成る)、ポリエーテル、ポリウレア、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミン、ポリアミド及びメラミン樹脂が含まれる。なかでも、ポリオレフィン、ポリエーテル及びポリウレアが好ましく、ポリオレフィン及びポリエーテルがさらに好ましい。硬化前の有機ポリマーとしての質量平均分子量は1×103〜1×106が好ましく、より好ましくは3×103〜1×105である。
【0226】
硬化前の有機ポリマーは、前記の内容と同様の特定の極性基を有する繰り返し単位と、架橋又は重合構造を有する繰り返し単位とを有する共重合体であることが好ましい。ポリマー中のアニオン性基を有する繰り返し単位の割合は、全繰り返し単位中の0.5〜99質量%であることが好ましく3〜95質量%であることがさらに好ましく、6〜90質量
%であることが最も好ましい。繰り返し単位は、二つ以上の同じでも異なってもよいアニオン性基を有していてもよい。
【0227】
シラノール基を有する繰り返し単位を含む場合、その割合は、2〜98モル%であることが好ましく、4〜96モル%であることがさらに好ましく、6〜94モル%であることが最も好ましい。
【0228】
アミノ基又は四級アンモニウム基を有する繰り返し単位を含む場合、その割合は、0.1〜50質量%であることが好ましく、更には0.5〜30質量%が好ましい。
【0229】
なお、シラノール基、アミノ基、及び四級アンモニウム基は、アニオン性基を有する繰り返し単位又は、架橋もしくは重合構造を有する繰り返し単位に含まれていても、同様の効果が得られる。
【0230】
ポリマー中の架橋又は重合構造を有する繰り返し単位の割合は、1〜90質量%であることが好ましく、5〜80質量%であることがさらに好ましく、8〜60質量%であることが最も好ましい。
【0231】
バインダーが架橋又は重合してなるマトリックスは、高屈折率層形成用の塗布組成物を透明支持体上に塗布して、塗布と同時又は塗布後に、架橋又は重合反応によって形成することが好ましい。
【0232】
本発明の高屈折率層は、更に用途・目的によって適宜他の化合物を添加することができる。例えば、高屈折率層の上に低屈折率層を有する場合、高屈折率層の屈折率は透明支持体の屈折率より高いことが好ましく、高屈折率層に、芳香環、フッ素以外のハロゲン化元素(例えば、Br,I,Cl等)、硫黄、窒素、リン等の原子を含有すると有機化合物の屈折率が高くなることから、これらを含有する硬化性化合物などの架橋又は重合反応で得られるバインダーも好ましく用いることができる。
【0233】
(高屈折率層のその他の添加剤)
本発明の高屈折率層は、更に用途・目的によって適宜他の化合物を添加することができる。例えば、高屈折率層の屈折率は透明支持体の屈折率より高いことが好ましく、高屈折率層に、芳香環、フッ素以外のハロゲン化元素(例えば、Br,I,Cl等)、硫黄、窒素、リン等の原子を含む硬化性化合物などの架橋又は重合反応で得られるバインダーも好ましく用いることができる。
【0234】
高屈折率層には、前記の成分(無機微粒子、重合開始剤、増感剤など)以外に、樹脂、帯電防止剤、カップリング剤、増粘剤、着色防止剤、着色剤(顔料、染料)、消泡剤、難燃剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、接着付与剤、重合禁止剤、酸化防止剤、表面改質剤、導電性の金属微粒子等を添加することもできる。膜厚は30〜500nmが好ましく、更に好ましくは、50〜300nmの膜厚である。
【0235】
[中屈折率層]
本発明の反射防止フィルムは、高屈折率層が異なる屈折率からなる2層の積層構成であることが好ましい。すなわち、上記の方法で組成物を塗設して形成された低屈折率層が、それよりも高い屈折率を有する高屈折率層の上に形成され、高屈折率層に隣接し、低屈折率層の反対側に支持体の屈折率と高屈折率層の屈折率の中間の屈折率を有する中屈折率層が形成された3層積層構造が好ましい。上記したように、各屈折率層の屈折率は相対的なものである。
【0236】
本発明の中屈折率層を構成する材料は、従来公知の材料の何れでもよいが、上記高屈折率層と同様のものが好ましい。屈折率は無機微粒子の種類、使用量で容易に調整され、上記高屈折率層に記載の内容と同様にして、膜厚30〜500nmの薄層を形成する。更に好ましくは、50〜300nmの膜厚である。
【0237】
[低屈折率層]
次に、本発明の反射防止フィルムにおける低屈折率層について以下に説明する。
【0238】
本発明における低屈折率層は、バインダー及び無機微粒子を含有する塗布液を硬化することにより形成される。
【0239】
本発明の反射防止フィルムの低屈折率層の屈折率は、1.20〜1.49であり、好ましくは1.30〜1.44の範囲にある。
【0240】
(中空シリカ粒子)
本発明における低屈折率層は、その屈折率を低下させるために、中空構造を持つ無機微粒子を含んでもよい。該中空無機微粒子は中空構造のシリカであることが好ましい。中空のシリカ微粒子は屈折率が1.17〜1.40が好ましく、更に好ましくは1.17〜1.35、最もに好ましくは1.17〜1.30である。ここでの屈折率は粒子全体として屈折率を表し、中空シリカ粒子を形成している外殻のシリカのみの屈折率を表すものではない。この時、粒子内の空腔の半径をri、粒子外殻の半径をroとすると、空隙率xは下記数式(1)から算出される。中空シリカ粒子の空隙率xは、好ましくは10〜60%、さらに好ましくは20〜60%、最も好ましくは30〜60%である。
数式(1):x=(4πri3/3)/(4πro3/3)×100
【0241】
中空のシリカ粒子をより低屈折率に、より空隙率を大きくしようとすると、外殻の厚みが薄くなり、粒子の強度としては弱くなるため、耐擦傷性の観点から1.17以上の低屈折率の粒子を用いることが好ましい。
【0242】
なお、これら中空シリカ粒子の屈折率はアッベ屈折率計{アタゴ(株)製}にて測定を行った。
【0243】
また中空シリカの製造方法は、例えば特開2001−233611号公報や特開2002−79616号公報に記載されている。
【0244】
中空シリカの配合量は、1〜100mg/m2が好ましく、より好ましくは5〜80mg/m2、更に好ましくは10〜60mg/m2である。配合量が上記範囲であることにより、耐擦傷性に優れ、低屈折率層表面に微細な凹凸が減少し、黒の締まりなどの外観や積分球反射率が良化する。
【0245】
中空シリカの平均粒径は、低屈折率層の厚みの30%以上150%以下が好ましく、より好ましくは35%以上80%以下、更に好ましくは40%以上60%以下である。即ち、低屈折率層の厚みが100nmであれば、中空シリカの粒径は30nm以上150nm以下が好ましく、より好ましくは35nm以上80nm以下、更に好ましくは、40nm以上60nm以下である。シリカ微粒子の粒径が上記範囲であることにより屈折率が低下し、低屈折率層表面に微細な凹凸が減少し、黒の締まりなどの外観、積分球反射率が良化する。
【0246】
シリカ微粒子は、結晶質でも、アモルファスのいずれでもよい。また単分散粒子が好ましい。形状は、球径が最も好ましいが、不定形であっても問題ない。
ここで、中空シリカの平均粒径は電子顕微鏡写真から求めることができる。
【0247】
本発明においては、中空シリカと併用して空腔のないシリカ粒子を用いることができる。空腔のないシリカの好ましい粒子サイズは、30nm以上150nm以下、更に好ましくは35nm以上80nm以下、最も好ましくは40nm以上60nm以下である。
【0248】
また、平均粒径が低屈折率層の厚みの25%未満であるシリカ微粒子(「小サイズ粒径のシリカ微粒子」と称す)の少なくとも1種を上記の粒径のシリカ微粒子(「大サイズ粒径のシリカ微粒子」と称す)と併用することが好ましい。
【0249】
小サイズ粒径のシリカ微粒子は、大サイズ粒径のシリカ微粒子同士の隙間に存在することができるため、大サイズ粒径のシリカ微粒子の保持剤として寄与することができる。
【0250】
小サイズ粒径のシリカ微粒子の平均粒径は、1nm以上20nm以下が好ましく、5nm以上15nm以下が更に好ましく、10nm以上15nm以下が特に好ましい。このようなシリカ微粒子を用いると、原料コスト及び保持剤効果の点で好ましい。
【0251】
(表面処理)
シリカ微粒子や中空シリカ微粒子は、分散液中又は塗布液中で、分散安定化を図るために、あるいはバインダー成分との親和性、結合性を高めるために、プラズマ放電処理やコロナ放電処理のような物理的表面処理、界面活性剤やカップリング剤等による化学的表面処理がなされていてもよい。カップリング剤の使用が特に好ましい。カップリング剤としては、アルコキシメタル化合物(例えば、チタンカップリング剤、シランカップリング剤)が好ましく用いられる。なかでも、アクリロイル基又はメタクリロイル基を有するシランカップリング剤による処理が特に有効である。
【0252】
上記カップリング剤は、低屈折率層の無機フィラーの表面処理剤として、該層塗布液調製以前に予め表面処理を施すために用いられるが、該層塗布液調製時にさらに添加剤として添加して該層に含有させることが好ましい。
【0253】
シリカ微粒子は、表面処理前に、媒体中に予め分散されていることが、表面処理の負荷軽減のために好ましい。
【0254】
(低屈折率層用バインダー)
本発明の低屈折率層を形成するバインダーは、前述のハードコート層に用いるバインダーと同様のものが使用できるが、更に低屈折率バインダーとして、含フッ素系ポリマーを用いることもできる。フッ素系ポリマーとしては動摩擦係数0.03〜0.15、水に対する接触角90〜120°の熱又は電離放射線により架橋する含フッ素系ポリマーが好ましい。
【0255】
低屈折率層に用いられる含フッ素系ポリマーとしては、ペルフルオロアルキル基含有シラン化合物{例えば(ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシル)トリエトキシシラン}の加水分解、脱水縮合物の他、含フッ素モノマー単位と架橋反応性付与のための構成単位を構成成分とする含フッ素系ポリマーが挙げられる。
【0256】
含フッ素モノマー単位の具体例としては、例えばフルオロオレフィン類(例えばフルオロエチレン、ビニリデンフルオリド、テトラフルオロエチレン、ペルフルオロオクチルエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、ペルフルオロ−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール等)、(メタ)アクリル酸の部分又は完全フッ素化アルキルエステル誘導体類[例えば「ビスコート6FM」{大阪有機化学(株)製}や、“M−2020”{ダイキン工
業(株)製}等]、完全又は部分フッ素化ビニルエーテル類等が挙げられるが、好ましくはペルフルオロオレフィン類であり、屈折率、溶解性、透明性、入手性等の観点から特に好ましくはヘキサフルオロプロピレンである。
【0257】
架橋反応性付与のための構成単位としては、グリシジル(メタ)アクリレート、グリシジルビニルエーテルのように、分子内に予め自己架橋性官能基を有するモノマーの重合によって得られる構成単位、カルボキシル基やヒドロキシ基、アミノ基、スルホ基等を有するモノマー{例えば(メタ)アクリル酸、メチロール(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、アリルアクリレート、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、マレイン酸、クロトン酸等}の重合によって得られる構成単位、これらの構成単位に高分子反応によって(メタ)アクリルロイル基等の架橋反応性基を導入した構成単位(例えばヒドロキシ基に対してアクリル酸クロリドを作用させる等の手法で導入できる)が挙げられる。
【0258】
また上記含フッ素モノマー単位、架橋反応性付与のための構成単位以外に溶媒への溶解性、皮膜の透明性等の観点から適宜フッ素原子を含有しないモノマーを共重合することもできる。併用可能なモノマー単位には特に限定はなく、例えばオレフィン類(エチレン、プロピレン、イソプレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン等)、アクリル酸エステル類(アクリル酸メチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル)、メタクリル酸エステル類(メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、エチレングリコールジメタクリレート等)、スチレン誘導体(スチレン、ジビニルベンゼン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等)、ビニルエーテル類(メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル等)、ビニルエステル類(酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、桂皮酸ビニル等)、アクリルアミド類(N−t−ブチルアクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリルアミド等)、メタクリルアミド類、アクリロニトリル誘導体等を挙げることができる。
【0259】
上記のポリマーに対しては特開平10−25388号及び特開平10−147739号各公報に記載のごとく適宜硬化剤を併用してもよい。
【0260】
本発明で特に有用な含フッ素系ポリマーは、ペルフルオロオレフィンとビニルエーテル類又はビニルエステル類のランダム共重合体である。特に単独で架橋反応可能な基{(メタ)アクリロイル基等のラジカル反応性基、エポキシ基、オキセタニル基等の開環重合性基等}を有していることが好ましい。これらの架橋反応性基含有重合単位はポリマーの全重合単位の5〜70モル%を占めていることが好ましく、特に好ましくは30〜60モル%を占めていることである。
【0261】
本発明に用いられる含フッ素系ポリマーの好ましい形態として、下記一般式(5)のものが挙げられる。
一般式(5):
【0262】
【化15】
【0263】
一般式(5)中、L51は炭素数1〜10の連結基を表し、より好ましくは炭素数1〜6の連結基であり、特に好ましくは2〜4の連結基であり、直鎖であっても分岐構造を有していてもよく、環構造を有していてもよく、酸素、窒素、硫黄から選ばれるヘテロ原子を有していてもよい。
【0264】
好ましい例としては、*−(CH2)2−O−**、*−(CH2)2−NH−**、*−(CH2)4−O−**、*−(CH2)6−O−**、*−(CH2)2−O−(CH2)2−
O−**、*−CONH−(CH2)3−O−**、*−CH2CH(OH)CH2−O−**、*−CH2CH2OCONH(CH2)3−O−**{*はポリマー主鎖側の連結部位を表し、**は(メタ)アクリロイル基側の連結部位を表す}等が挙げられる。bは0又は1を表わす。
【0265】
一般式(5)中、X51は水素原子又はメチル基を表す。硬化反応性の観点から、より好ましくは水素原子である。
【0266】
一般式(5)中、B1は任意のビニルモノマーから導かれる繰返し単位を表わし、ヘキサフルオロプロピレンと共重合可能な単量体の構成成分であれば特に制限はなく、基材への密着性、ポリマーのTg(皮膜硬度に寄与する)、溶媒への溶解性、透明性、滑り性、防塵・防汚性等種々の観点から適宜選択することができ、目的に応じて単一又は複数のビニルモノマーによって構成されていてもよい。
【0267】
好ましい例としては、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、シクロへキシルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、グリシジルビニルエーテル、アリルビニルエーテル等のビニルエーテル類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル等のビニルエステル類、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジルメタアクリレート、アリル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン等の(メタ)アクリレート類、スチレン、p−ヒドロキシメチルスチレン等のスチレン誘導体、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸及びその誘導体等を挙げることができるが、より好ましくはビニルエーテル誘導体、ビニルエステル誘導体であり、特に好ましくはビニルエーテル誘導体である。
【0268】
x、y、zはそれぞれの構成成分のモル%を表わし、30≦x≦60、5≦y≦70、0≦z≦65を満たす値を表す。好ましくは、35≦x≦55、30≦y≦60、0≦z≦20の場合であり、特に好ましくは40≦x≦55、40≦y≦55、0≦z≦10の場合である。
【0269】
上記含フッ素系ポリマーの特に好ましい形態として、一般式(5−1)が挙げられる。
一般式(5−1):
【0270】
【化16】
【0271】
一般式(5−1)において、X51、x、yは一般式(5)と同じ意味を表し、好ましい範囲も同じである。cは2≦c≦10の整数を表し、2≦c≦6であることが好ましく、2≦c≦4であることが特に好ましい。B2は任意のビニルモノマーから導かれる繰返し単位を表わし、単一組成であっても複数の組成によって構成されていてもよい。例としては、前記一般式(5)におけるB1の例として説明したものが当てはまる。z1及びz2はそれぞれの繰返し単位のモル%を表わし、0≦z1≦65、0≦z2≦65を満たす値を表す。それぞれ0≦z1≦30、0≦z2≦10であることが好ましく、0≦z1≦10、0≦z2≦5であることが特に好ましい。
【0272】
一般式(5)又は(5−1)で表される含フッ素系ポリマーは、例えば、ヘキサフルオロプロピレン成分とヒドロキシアルキルビニルエーテル成分とを含んでなる共重合体に前記のいずれかの手法により(メタ)アクリロイル基を導入することにより合成できる。
【0273】
(含フッ素系ポリマーの好ましい例)
以下に有用な含フッ素系ポリマーの好ましい例を示すが、これらに限定されるものではない。
【0274】
【化17】
【0275】
【表1】
【0276】
【化18】
【0277】
【表2】
【0278】
【化19】
【0279】
【表3】
【0280】
【化20】
【0281】
【表4】
【0282】
【化21】
【0283】
【表5】
【0284】
【化22】
【0285】
【表6】
【0286】
上記の含フッ素系ポリマーの重合は、光酸発生剤又は熱酸発生剤の存在下、電離放射線の照射又は加熱により行うことができる。
【0287】
本発明の反射防止フィルムにおける低屈折率層の、反応性架橋基を有するバインダーとしては、反応性架橋基として(メタ)アクリロイル基、エポキシ基、イソシアナート基のいずれかを有するバインダーであることが好ましく、反応性架橋基として(メタ)アクリロイル基を有するバインダーであることがより好ましい。
【0288】
上記含フッ素系ポリマーの合成は、種々の重合方法、例えば溶液重合、沈澱重合、懸濁重合、沈殿重合、塊状重合、乳化重合によって水酸基含有重合体等の前駆体を合成した後、前記高分子反応によって(メタ)アクリロイル基を導入することにより行なうことができる。重合反応は回分式、半連続式、連続式等の公知の操作で行うことができる。
【0289】
重合の開始方法は、ラジカル開始剤を用いる方法、光又は放射線を照射する方法等がある。これらの重合方法、重合の開始方法は、例えば鶴田禎二「高分子合成方法」改定版(日刊工業新聞社刊、1971年)や大津隆行、木下雅悦共著「高分子合成の実験法」化学同人、昭和47年刊、124〜154頁に記載されている。
【0290】
上記重合方法のうち、特にラジカル開始剤を用いた溶液重合法が好ましい。溶液重合法で用いられる溶媒は、例えば酢酸エチル、酢酸ブチル、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ベンゼン、トルエン、アセトニトリル、塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタン、メタノール、エタノール、1
−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノールのような種々の有機溶媒の単独あるいは2種以上の混合物でもよいし、水との混合溶媒としてもよい。
【0291】
重合温度は、生成する含フッ素系ポリマーの分子量、開始剤の種類などと関連して設定する必要があり、0℃以下から100℃以上まで可能であるが、50〜100℃の範囲で重合を行うことが好ましい。
【0292】
反応圧力は適宜選定可能であるが、通常は1〜100kg/cm2、特に1〜30kg/cm2程度が望ましい。反応時間は、5〜30時間程度である。
【0293】
得られた含フッ素系ポリマーの再沈殿溶媒としては、イソプロパノール、ヘキサン、メタノール等が好ましい。
【0294】
(その他の添加剤)
本発明において、無機フィラーの凝集、沈降を抑制する目的で、各層を形成するための塗布液に、分散安定化剤を併用することも好ましい。分散安定化剤としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、セルロース誘導体、ポリアミド、リン酸エステル、ポリエーテル、界面活性剤及び、シランカップリング剤、チタンカップリング剤等を使用することができる。特に前述のシランカップリング剤が硬化後の皮膜が強いため好ましい。
【0295】
低屈折率層形成組成物は液の形態をとり、前記バインダー及び無機微粒子を必須構成成分とし、必要に応じて各種添加剤及びラジカル重合開始剤を適当な溶媒に溶解して作製される。この際固形分の濃度は、用途に応じて適宜選択されるが一般的には0.01〜60質量%程度であり、好ましくは0.5〜50質量%、特に好ましくは1%〜20質量%程度である。
【0296】
また低屈折率層の皮膜硬度の観点からは、硬化剤等の添加剤を添加することは必ずしも有利ではないが、高屈折率層との界面密着性等の観点から、多官能(メタ)アクリレート化合物、多官能エポキシ化合物、ポリイソシアネート化合物、アミノプラスト、多塩基酸又はその無水物等の硬化剤を少量添加することもできる。これらを添加する場合には低屈折率層皮膜の全固形分に対して0〜30質量%の範囲であることが好ましく、0〜20質量%の範囲であることがより好ましく、0〜10質量%の範囲であることが特に好ましい。
【0297】
防汚性、耐水性、耐薬品性、滑り性等の特性を付与する目的で、公知のシリコーン系又はフッ素系の防汚剤、滑り剤等を適宜添加することもできる。これらの添加剤を添加する場合には低屈折率層全固形分の0.01〜20質量%の範囲で添加されることが好ましく、より好ましくは0.05〜10質量%の範囲で添加される場合であり、特に好ましくは0.1〜5質量%の場合である。
【0298】
(シリコーン系化合物)
シリコーン系化合物の好ましい例としては、ジメチルシリルオキシ単位を繰り返し単位として複数個含む化合物鎖の末端及び/又は側鎖に置換基を有するものが挙げられる。ジメチルシリルオキシを繰り返し単位として含む化合物鎖中にはジメチルシリルオキシ以外の構造単位を含んでもよい。置換基は同一であっても異なっていてもよく、複数個あることが好ましい。好ましい置換基の例としてはアクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、アリール基、シンナモイル基、エポキシ基、オキセタニル基、水酸基、フルオロアルキル基、ポリオキシアルキレン基、カルボキシル基、アミノ基などを含む基が挙げられる。
【0299】
シリコーン系化合物の分子量には特に制限はないが、10万以下であることが好ましく、5万以下であることがより好ましく、3000〜30000であることが特に好ましく、10000〜20000であることが最も好ましい。
【0300】
シリコーン系化合物の珪素原子含有量には特に制限はないが、18.0質量%以上であることが好ましく、25.0〜37.8質量%であることが特に好ましく、30.0〜37.0質量%であることが最も好ましい。
【0301】
好ましいシリコーン系化合物の例としては、信越化学工業(株)製の“X−22−174DX”、“X−22−2426”、“X−22−164B”、“X−22−164C”、“X−22−170DX”、“X−22−176D”、“X−22−1821”(以上商品名);チッソ(株)製の“FM−0725”、“FM−7725”、“FM−4421”、“FM−5521”、“FM−6621”、“FM−1121”;Gelest社製の“DMS−U22”、“RMS−033”、“RMS−083”、“UMS−182”、“DMS−H21”、“DMS−H31”、“HMS−301”、“FMS121”、“FMS123”、“FMS131”、“FMS141”、“FMS221”(以上商品名)などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0302】
(フッ素系化合物)
フッ素系化合物としては、フルオロアルキル基を有する化合物が好ましい。該フルオロアルキル基は炭素数1〜20であることが好ましく、より好ましくは1〜10であり、直鎖{例えば−CF2CF3、−CH2(CF2)4H、−CH2(CF2)8CF3、−CH2CH2(CF2)4H等}であっても、分岐構造{例えば−CH(CF3)2、−CH2CF(CF3)2、−CH(CH3)CF2CF3、−CH(CH3)(CF2)5CF2H等}であっても、脂環式構造(好ましくは5員環又は6員環、例えばペルフルオロシクロへキシル基、ペルフルオロシクロペンチル基又はこれらで置換されたアルキル基等)であってもよく、エーテル結合を有していてもよい(例えば−CH2OCH2CF2CF3、−CH2CH2OCH2C4F8H、−CH2CH2OCH2CH2C8F17、−CH2CH2OCF2CF2OCF2CF2H等)。該フルオロアルキル基は同一分子中に複数含まれていてもよい。
【0303】
フッ素系化合物は、さらに低屈折率層皮膜との結合形成又は相溶性に寄与する置換基を有していることが好ましい。該置換基は同一であっても異なっていてもよく、複数個あることが好ましい。好ましい置換基の例としてはアクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、アリール基、シンナモイル基、エポキシ基、オキセタニル基、ヒドロキシル基、ポリオキシアルキレン基、カルボキシル基、アミノ基などが挙げられる。フッ素系化合物はフッ素原子を含まない化合物とのポリマーであってもオリゴマーであってもよく、分子量に特に制限はない。
【0304】
フッ素系化合物中のフッ素原子含有量には特に制限はないが、20質量%以上であることが好ましく、30〜70質量%であることが特に好ましく、40〜70質量%であることが最も好ましい。好ましいフッ素系化合物の例としてはダイキン工業(株)製の“R−2020”、“M−2020”、“R−3833”、“M−3833”(以上商品名);大日本インキ化学工業(株)製の「メガファックF−171」、「メガファックF−172」、「メガファックF−179A」、「ディフェンサMCF−300」(以上商品名)などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0305】
低屈折率層形成用組成物には、防塵性、帯電防止等の特性を付与する目的で、さらに公知のカチオン系界面活性剤又はポリオキシアルキレン系化合物のような防塵剤、帯電防止剤等を適宜添加することもできる。これら防塵剤、帯電防止剤は、上記のシリコーン系化合物やフッ素系化合物に、その構造単位が機能の一部として含まれていてもよい。これら
を添加剤として添加する場合には、低屈折率層形成用組成物全固形分の0.01〜20質量%の範囲で添加されることが好ましく、より好ましくは0.05〜10質量%の範囲で添加される場合であり、特に好ましくは0.1〜5質量%の場合である。
【0306】
好ましい化合物の例としては、大日本インキ化学工業(株)製「メガファックF−150」(商品名)、東レ・ダウコーニング(株)製“SH−3748”(商品名)などが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0307】
[溶媒]
本発明の反射防止フィルムにおいて、各層(ハードコート層、高屈折率層、中屈折率層、低屈折率層等)を形成するための塗布液に用いる溶媒について以下に説明する。
【0308】
塗布溶媒は、例えば、沸点が100℃以下の溶媒としては、ヘキサン(沸点68.7℃、以下「℃」を省略する)、ヘプタン(98.4)、シクロヘキサン(80.7)、ベンゼン(80.1)などの炭化水素類;ジクロロメタン(39.8)、クロロホルム(61.2)、四塩化炭素(76.8)、1,2−ジクロロエタン(83.5)、トリクロロエチレン(87.2)などのハロゲン化炭化水素類;ジエチルエーテル(34.6)、ジイソプロピルエーテル(68.5)、ジプロピルエーテル(90.5)、テトラヒドロフラン(66)などのエーテル類;ギ酸エチル(54.2)、酢酸メチル(57.8)、酢酸エチル(77.1)、酢酸イソプロピル(89)などのエステル類;アセトン(56.1)、2−タノン(=メチルエチルケトン、79.6)などのケトン類;メタノール(64.5)、エタノール(78.3)、2−プロパノール(82.4)、1−プロパノール(97.2)などのアルコール類;アセトニトリル(81.6)、プロピオニトリル(97.4)などのシアノ化合物類;二硫化炭素(46.2)などがある。
【0309】
沸点が100℃を越える溶媒としては、例えば、オクタン(125.7)、トルエン(110.6)、キシレン(138)、テトラクロロエチレン(121.2)、クロロベンゼン(131.7)、ジオキサン(101.3)、ジブチルエーテル(142.4)、酢酸イソブチル(118)、シクロヘキサノン(155.7)、2−メチル−4−ペンタノン{=メチルイソブチルケトン(MIBK)、115.9)、1−タノール(117.7)、N,N−メチルホルムアミド(153)、N,N−メチルアセトアミド(166)、ジメチルスルホキシド(189)などがある。好ましくは、トルエン、シクロヘキサノン、2−チル−4−ペンタノンである。
【0310】
これらのうち、ケトン類、芳香族炭化水素類、エステル類が好ましく、特に好ましくはケトン類である。ケトン類の中では2−ブタノンが特に好ましい。
【0311】
ケトン系溶媒を用いる場合、それぞれ単独で又は、ケトン系溶媒を2種以上もしくは、ケトン系溶媒1種以上とその他の上記溶媒と混合して用いることができ、ケトン系溶媒以外の溶媒と混合して用いるときは、ケトン系溶媒の含有量が塗布組成物に含まれる全溶媒の10質量%以上であることが好ましい。好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは60質量%以上である。
【0312】
本発明の反射防止フィルムにおいて、機能層及び低屈折率層成分を前述の組成の溶媒で希釈することにより、それらの層用塗布液が調製される。塗布液濃度は、塗布液の粘度、層素材の比重などを考慮して適宜調節されることが好ましいが、0.1〜80質量%が好ましく、より好ましくは1〜60質量%である。
また各層の溶媒は同一組成であってもよいし、異なっていてもよい。
【0313】
[塗布方式]
本発明の反射防止フィルムは、以下の方法で形成することができるが、この方法に制限されない。
【0314】
まず、各層を形成するための成分を含有した塗布液が調製される。次に、各層を形成するための塗布液を、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、ダイコート法などにより透明支持体上に塗布し、加熱・乾燥するが、グラビアコート法、ワイヤーバーコート法、ダイコート法がより好ましく、ダイコート法が特に好ましい。更に、構成を後述のように工夫したダイを使用して塗布することが最も好ましい。
【0315】
その後、乾燥工程に於いて溶媒を取り除かれる。乾燥工程としては、塗布直後に乾燥ゾーンを設け、乾燥ゾーン内の環境を制御することで乾燥速度を制御する乾燥工程を設置することが好ましく、特開2003−106767号公報に記載されているような、塗布直後の走行位置にほぼ並行に板状部材である凝縮板を設置し、凝縮板と塗布膜の距離や凝縮板の温度を制御して、塗布液中の溶媒を凝縮、回収させる乾燥装置を配置する乾燥工程を設置することがより好ましい。
【0316】
その後、光照射又は加熱して、各層を形成するためのモノマーを重合して硬化する。これにより各層が形成される。
【0317】
[ダイコーターの構成]
図8は、本発明の実施の際に使用した、スロットダイを用いたコーターの断面図である。
コーター10は、バックアップローラ11に支持されて連続走行するウェブ12に対して、スロットダイ13から塗布液14をビード14aにして塗布することにより、ウェブ12上に塗膜14bを形成する。
【0318】
スロットダイ13の内部にはポケット15、スロット16が形成されている。ポケット15は、その断面が曲線及び直線で構成されており、たとえば、図8に示されるような略円形でもよいし、又は半円形でもよい。ポケット15は、スロットダイ13の幅方向にその断面形状をもって延長された塗布液の液溜め空間で、その有効延長の長さは、塗布幅と同等か若干長めにするのが一般的である。
【0319】
ポケット15への塗布液14の供給は、スロットダイ13の側面から、又はスロット開口部16aとは反対側の面の中央から行う。また、ポケット15には塗布液14が漏れ出ることを防止する栓が設けられている。
【0320】
スロット16は、ポケット15からウェブ12への塗布液14の流路であり、ポケット15と同様にスロットダイ13の幅方向にその断面形状をもち、ウェブ側に位置する開口部16aは、一般に、図示しない幅規制板のようなものを用いて、概ね塗布幅と同じ長さの幅になるように調整する。このスロット16のスロット先端における、バックアップローラ11のウェブ走行方向の接線とのなす角は、30°以上90°以下が好ましい。
【0321】
スロット16の開口部16aが位置するスロットダイ13の先端リップ17は、先細り状に形成されており、その先端はランドと呼ばれる平坦部18とされている。このランド18であって、スロット16に対してウェブ12の走行方向の上流側を上流側リップランド18a、下流側を下流側リップランド18bと称する。
【0322】
図9は、スロットダイ13の断面形状を従来のものと比較して示すもので、(A)は、本発明に好適なスロットダイ13を示し、(B)は、従来から用いられている一般的なス
ロットダイ30を示している。従来のスロットダイ30では、上流側リップランド31aと下流側リップランド31bのウェブ12との距離は等しい。なお、(B)において、符号32はポケット、33はスロットを示している。これに対して、本発明のスロットダイ13では、下流側リップランド長さILOが短くされており、これによって、湿潤膜厚が20μm以下の塗布を精度よく行うことができる。
【0323】
上流側リップランド18aのランド長さIUPは特に限定はされないが、100μm〜1mmの範囲が好ましく採用される。下流側リップランド18bのランド長さILOは30μm以上100μm以下であり、好ましくは30μm以上80μm以下、更に好ましくは30μm以上60μm以下である。
【0324】
下流側リップのランド長さILOが30μmよりも短い場合は、先端リップ17のエッジ又はランドが欠けやすく、塗膜にスジが発生しやすくなり、結果的には塗布が不可能になる。また、下流側の濡れ線位置の設定が困難になり、塗布液が下流側で広がりやすくなるという問題も発生する。この下流側での塗布液の濡れ広がりは、濡れ線の不均一化を意味し、塗布面上にスジなどの不良形状を招くという問題につながることが従来より知られている。
【0325】
一方、下流側リップのランド長さILOが100μmよりも長い場合は、ビードそのものを形成することができないために、薄層塗布を行うことは不可能である。
【0326】
更に、下流側リップランド18bは、上流側リップランド18aよりもウェブ12に近接したオーバーバイト形状であり、このため減圧度を下げることができて、薄膜塗布に適したビード形成が可能となる。下流側リップランド18bと上流側リップランド18aのウェブ12との距離の差(以下、オーバーバイト長さLOと称する)は30μm以上120μm以下が好ましく、更に好ましくは30μm以上100μm以下、最も好ましくは30μm以上80μm以下である。
【0327】
スロットダイ13がオーバーバイト形状のとき、先端リップ17とウェブ12の隙間GLとは、下流側リップランド18bとウェブ12の隙間を示す。
【0328】
図10は、本発明の実施に使用された塗布工程のスロットダイ及びその周辺を示す斜視図である。ウェブ12の走行方向側とは反対側に、ビード14aに対して充分な減圧調整を行えるよう、接触しない位置に減圧チャンバー40を設置する。減圧チャンバー40は、その作動効率を保持するためのバックプレート40aとサイドプレート40bを備えており、バックプレート40aとウェブ12の間、サイドプレート40bとウェブ12の間にはそれぞれ隙間GB、GSが存在する。
【0329】
図11及び図12は、近接している減圧チャンバー40とウェブWを示す断面図である。サイドプレート40bとバックプレート40aは、図11のようにチャンバー本体と一体のものであってもよいし、図12のように適宜隙間を変えられるように、チャンバーにネジ40cなどで留められている構造でもよい。
【0330】
いかなる構造であっても、バックプレート40aとウェブWの間、サイドプレート40bとウェブWの間に実際にあいている部分を、それぞれ隙間GB、GSと定義する。減圧チャンバー40のバックプレート40aとウェブWとの隙間GBとは、減圧チャンバー40を図10のようにウェブW及びスロットダイ13の下方に設置した場合、バックプレート40aの最上端からウェブWまでの隙間を示す。
【0331】
バックプレート40aとウェブWとの隙間GBを、スロットダイ13の先端リップ17
とウェブWとの隙間GLよりも大きくして設置するのが好ましい。これにより、バックアップローラ11の偏心に起因するビード近傍の減圧度変化を抑制することができる。
【0332】
例えば、スロットダイ13の先端リップ17とウェブWとの隙間GLが30μm以上100μm以下のとき、バックプレート40aとウェブWの間の隙間GBは100μm以上500μm以下とするのが好ましい。
【0333】
(材質、精度)
ウェブWの走行方向側の先端リップ17のウェブ走行方向における長さは、長いほどビード形成に不利であり、この長さがスロットダイ幅方向における任意の個所間でばらつくと、かすかな外乱によりビードが不安定になる。したがって、この長さをスロットダイ幅方向における変動幅が20μm以内とすることが好ましい。
【0334】
また、スロットダイの先端リップ17の材質については、ステンレス鋼などのような材質を用いるとダイ加工の段階でだれてしまい、前記のようにスロットダイ先端リップ17のウェブ走行方向における長さを30〜100μmの範囲にしても、先端リップ17の精度を満足できない。
【0335】
従って、高い加工精度を維持するためには、特許第2817053号公報に記載されているような超硬材質のものを用いることが重要である。具体的には、スロットダイの少なくとも先端リップ17を、平均粒径5μm以下の炭化物結晶を結合してなる超硬合金にすることが好ましい。
【0336】
超硬合金としては、タングステンカーバイド(以下、WCと称す)などの炭化物結晶粒子をコバルトなどの結合金属によって結合したものなどがあり、結合金属としては他にチタン、タンタル、ニオブ及びこれらの混合金属を用いることもできる。WC結晶の平均粒径としては、粒径3μm以下が更に好ましい。
【0337】
高精度な塗布を実現するためには、先端リップ17のウェブ走行方向側のランドの前記長さ及び、ウェブとの隙間のスロットダイ幅方向のばらつきも重要な因子となる。この2つの因子の組み合わせ、すなわち、隙間の変動幅をある程度抑えられる範囲内の真直度を達成することが望ましい。好ましくは、前記隙間のスロットダイ幅方向における変動幅が5μm以下になるように先端リップ17とバックアップローラ11との真直度を出す。
【0338】
<反射防止フィルムの用途>
〔偏光板〕
偏光板は、偏光膜を両面から挟む2枚の保護フィルムで主に構成される。本発明の反射防止フィルムは、偏光膜を両面から挟む2枚の保護フィルムのうち少なくとも1枚に用いることが好ましい。本発明の反射防止フィルムが保護フィルムを兼ねることで、偏光板の製造コストを低減できる。また、本発明の反射防止フィルムを最表層に使用することにより、外光の映り込み等が防止され、耐擦傷性、防汚性等も優れた偏光板とすることができる。
【0339】
[偏光膜]
偏光膜としては、公知の偏光膜や、偏光膜の吸収軸が長手方向に平行でも垂直でもない長尺の偏光膜から切り出された偏光膜を用いてもよい。偏光膜の吸収軸が長手方向に平行でも垂直でもない長尺の偏光膜は、以下の方法により作製される。
【0340】
すなわち、連続的に供給されるポリマーフィルムの両端を、保持手段により保持しつつ張力を付与して延伸した偏光膜で、少なくともフィルム幅方向に1.1〜20.0倍に延
伸し、フィルム両端の保持装置の長手方向進行速度差が3%以内であり、フィルム両端を保持する工程の出口におけるフィルムの進行方向と、フィルムの実質延伸方向のなす角が、20〜70゜傾斜するようにフィルム進行方向を、フィルム両端を保持させた状態で屈曲させてなる延伸方法によって製造することができる。特に45°傾斜させたものが生産性の観点から好ましく用いられる。
【0341】
ポリマーフィルムの延伸方法については、特開2002−86554号公報の段落[0020]〜[0030]に詳しい記載がある。
【0342】
偏光膜の2枚の保護フィルムのうち、反射防止フィルム以外のフィルムが、光学異方性層を含んでなる光学補償フィルムであることも好ましい。光学補償フィルム(位相差フィルム)は、液晶表示画面の視野角特性を改良することができる。光学補償フィルムとしては、公知のものを用いることができるが、視野角を広げるという点では、特開2001−100042号公報に記載されているディスコティック構造単位を有する化合物からなる光学異方性層を有し、該ディスコティック化合物と支持体とのなす角度が層の深さ方向において変化している光学補償フィルムが好ましい。該角度は光学異方性層の支持体面側からの距離の増加とともに増加していることが好ましい。
【0343】
〔画像表示装置〕
本発明の反射防止フィルムは、液晶表示装置(LCD)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)や陰極管表示装置(CRT)のような画像表示装置に適用することができる。本発明の反射防止フィルムは透明支持体を有しているので、透明支持体側を画像表示装置の画像表示面に接着して用いられる。
【0344】
[液晶表示装置]
本発明の反射防止フィルムは、偏光膜の表面保護フィルムの片側として用いた場合、ツイステットネマチック(TN)、スーパーツイステットネマチック(STN)、バーティカルアライメント(VA)、インプレインスイッチング(IPS)、オプティカリーコンペンセイテットベンドセル(OCB)等のモードの透過型、反射型、又は半透過型の液晶表示装置に好ましく用いることができる。
【0345】
(VAモード)
VAモードの液晶セルには、
(1)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直に配向させ、電圧印加時に実質的に水平に配向させる狭義のVAモードの液晶セル(特開平2−176625号公報記載)に加えて、
(2)視野角拡大のため、VAモードをマルチドメイン化した(MVAモードの)液晶セル{“SID97,Digest of tech.Papers”(予稿集)、28集(1997年)、p.845記載}、
(3)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直配向させ、電圧印加時にねじれマルチドメイン配向させるモード(n−ASMモード)の液晶セル{日本液晶討論会の予稿集p.58〜59(1998年)記載}及び、
(4)SURVAIVALモードの液晶セル(「LCDインターナショナル98」で発表)が含まれる。
【0346】
(OCBモード)
OCBモードの液晶セルは、棒状液晶性分子を液晶セルの上部と下部とで実質的に逆の方向に(対称的に)配向させるベンド配向モードの液晶セルであり、米国特許第4,583,825号、同第5,410,422号の各明細書に開示されている。棒状液晶性分子
が液晶セルの上部と下部とで対称的に配向しているため、ベンド配向モードの液晶セルは、自己光学補償機能を有する。そのため、この液晶モードは、OCB(Optically Compensatory Bend)液晶モードとも呼ばれる。ベンド配向モードの液晶表示装置は、応答速度が速いとの利点がある。
【0347】
(ECBモード)
ECBモードの液晶セルでは、電圧無印加時に棒状液晶性分子が実質的に水平配向しており、カラーTFT液晶表示装置として最も多く利用されており、多数の文献に記載がある。例えば「EL、PDP、LCDディスプレイ」東レリサーチセンター発行(2001)などに記載されている。
【0348】
特にTNモードやIPSモードの液晶表示装置に対しては、特開2001-100043号公報等に記載されているように、視野角拡大効果を有する光学補償フィルムを偏光膜の裏表2枚の保護フィルムの内の本発明の反射防止フィルムとは反対側の面に用いることにより、1枚の偏光板の厚みで反射防止効果と視野角拡大効果を有する偏光板を得ることができ、特に好ましい。
【実施例】
【0349】
以下、本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、下記の実施例、合成例中、特に断らない限り%は質量%を表す。
【0350】
<反射防止フィルムの作製>
〔塗布組成物の調製〕
[含フッ素ポリマーの合成]
合成例:含フッ素ポリマー(PP−1)の合成
攪拌機、還流冷却器を備えた反応器に、9,9−ジヒドロ−1,1−ビスペンタフルオロエチル−2、5−ビストリフルオロメチル−3、6−ジオキサ−8−ノネン−1−オール6.0g、ペルフルオロブチルビニルエーテル34.0g、ジメチル2,2’−アゾビスイソブチレート1.1g、2−ブタノン30gを加え、窒素雰囲気下で6時間78℃に加熱して反応を完結させ、含フッ素ポリマー(PP−1)を得た。質量平均分子量は11000であった。
【0351】
その他の含フッ素ポリマーについても(PP−1)と同様な方法で合成した。
【0352】
[防眩性ハードコート層用塗布液の調製]
実施例1−1:防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−1)の調製
市販ジルコニア含有UV硬化型ハードコート液「デソライトZ7404」{JSR(株)製、固形分濃度約61%、固形分中ZrO2含率約70%、重合性モノマー、光硬化開始剤含有}284部、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物“DPHA”{日本化薬(株)製}86部を混合し、更に、メチルイソブチルケトン(MIBK)60g、メチルエチルケトン(MEK)17部で希釈した。更に、シランカップリング剤“KBM−5103”{信越化学(株)製}28.5部を混合攪拌した。さらにこの溶液に、上記合成例1で作製した含フッ素ポリマー(PP−1、40質量%MEK溶液)を0.26部加えて混合撹拌した。さらに、この溶液に平均粒径3.0μmの分級強化架橋ポリメチルメタクリレート(PMMA)粒子“MXS−300”{屈折率1.49、綜研化学(株)製}の30%MIBK分散液をポリトロン分散機にて10000rpmで20分分散した分散液を30部加え、次いで、平均粒径1.5μmのシリカ粒子「シーホスタKE−P150」{屈折率1.46、日本触媒(株)製}の30%MEK分散液をポリトロン分散機にて10000rpmで30分分散した分散液を95部加えて混合攪拌し、完成液とした。上記混合液を孔径30μmのポリプ
ロピレン製フィルターで濾過して防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−1)を調製した。
【0353】
実施例1−2:防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−2)の調製
実施例1−1の防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−1)の調製において、含フッ素ポリマー(PP−1)を0.26部用いる代わりに、含フッ素ポリマー(PP−1)と同様に合成した前記の含フッ素ポリマー(PP−2、40%MEK溶液)を0.26部用いた以外は、実施例1−1と全く同様にして防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−2)を調製した。
【0354】
実施例1−3:防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−3)の調製
実施例1−1の防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−1)の調製において、含フッ素ポリマー(PP−1)を0.26部用いる代わりに、含フッ素ポリマー(PP−1)と同様に合成した前記の含フッ素ポリマー(PP−11、40%MEK溶液)を0.26部用いた以外は、実施例1−1と全く同様にして防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−3)を調製した。
【0355】
実施例1−4:防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−4)の調製
実施例1−1の防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−1)の調製において、含フッ素ポリマー(PP−1)を0.26部用いる代わりに、含フッ素ポリマー(PP−1)と同様に合成した前記の含フッ素ポリマー(PP−21、40%MEK溶液)を0.26部用いた以外は、実施例1−1と全く同様にして防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−4)を調製した。
【0356】
実施例1−5:防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−5)の調製
実施例1−1の防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−1)の調製において、含フッ素ポリマー(PP−1)を0.26部用いる代わりに、含フッ素ポリマー(PP−1)と同様に合成した前記の含フッ素ポリマー(PP−24、40%MEK溶液)を0.26部用いた以外は、実施例1−1と全く同様にして防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−5)を調製した。
【0357】
実施例1−6:防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−6)の調製
実施例1−1の防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−1)の調製において、含フッ素ポリマー(PP−1)を0.26部用いる代わりに、含フッ素ポリマー(PP−1)と同様に合成した前記の含フッ素ポリマー(PP−29、40%MEK溶液)を0.26部用いた以外は、実施例1−1と全く同様にして防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−6)を調製した。
【0358】
実施例1−7:防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−7)の調製
紫外線硬化型樹脂“PETA”{商品名、ペンタエリスリトールトリアクリレートとペンタエリスリトールテトラアクリレートの混合物、日本化薬(株)製}300質量部、光硬化開始剤「イルガキュア184」{チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製}13.2部、第1の透光性微粒子としての架橋アクリル−スチレン粒子{綜研化学(株)製、平均粒径3.5μm、屈折率1.55、30%トルエン分散液}52.3部、第2の透光性微粒子としての架橋ポリスチレン粒子{綜研化学(株)製、粒径3.5μm、屈折率1.60、30%トルエン分散液。ポリトロン分散機にて10000rpmで20分分散後使用}155.0部、上記合成例1で作製した含フッ素ポリマー(PP−1、40%シクロヘキサノン溶液)1.13部、オルガノシラン化合物“KBM−5103”{商品名、信越化学工業(株)製}60.0部、シクロヘキサノン143.0部、及びトルエン240.0部を十分混合して塗布液として調整した。
【0359】
実施例1−8:防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−8)の調製
実施例1−7の防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−7)の調製において、含フッ素ポリマー(PP−1)を1.13部用いる代わりに、含フッ素ポリマー(PP−1)と同様に合成した前記の含フッ素ポリマー(PP−8、40%シクロヘキサノン溶液)を1.13部用いた以外は、実施例1−7と全く同様にして防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−8)を調製した。
【0360】
実施例1−9:防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−9)の調製
実施例1−7の防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−7)の調製において、含フッ素ポリマー(PP−1)を1.13部用いる代わりに、含フッ素ポリマー(PP−1)と同様に合成した前記の含フッ素ポリマー(PP−9、40%シクロヘキサノン溶液)を1.13部用いた以外は、実施例1−7と全く同様にして防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−9)を調製した。
【0361】
実施例1−10:防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−10)の調製
実施例1−7の防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−7)の調製において、含フッ素ポリマー(PP−1)を1.13部用いる代わりに、含フッ素ポリマー(PP−1)と同様に合成した前記の含フッ素ポリマー(PP−18、40%シクロヘキサノン溶液)を1.13部用いた以外は、実施例1−7と全く同様にして防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−10)を調製した。
【0362】
実施例1−11:防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−11)の調製
実施例1−7の防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−7)の調製において、含フッ素ポリマー(PP−1)を1.13部用いる代わりに、含フッ素ポリマー(PP−1)と同様に合成した前記の含フッ素ポリマー(PP−22、40%シクロヘキサノン溶液)を1.13部用いた以外は、実施例1−7と全く同様にして防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−11)を調製した。
【0363】
実施例1−12:防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−12)の調製
実施例1−7の防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−7)の調製において、含フッ素ポリマー(PP−1)を1.13部用いる代わりに、含フッ素ポリマー(PP−1)と同様に合成した前記の含フッ素ポリマー(PP−26、40%シクロヘキサノン溶液)を1.13部用いた以外は、実施例1−7と全く同様にして防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−12)を調製した。
【0364】
実施例1−13:防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−13)の調製
紫外線硬化型樹脂“PETA”{商品名、ペンタエリスリトールトリアクリレートとペンタエリスリトールテトラアクリレートの混合物、日本化薬(株)製}310部、光硬化開始剤「イルガキュア184」{チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製}15.0部、第1の透光性微粒子としての架橋アクリル−スチレン粒子{綜研化学(株)製、平均粒径3.5μm、屈折率1.55、30%トルエン分散液}50.0部、第2の透光性微粒子としての架橋ポリスチレン粒子{綜研化学(株)製、粒径3.5μm、屈折率1.60、30%トルエン分散液。ポリトロン分散機にて10000rpmで20分分散後使用}を150.0部、上記合成例1で作製した含フッ素ポリマー(PP−1、40%シクロヘキサノン溶液)を1.13部、オルガノシラン化合物“KBM−5103”{商品名、信越化学工業(株)製}を60.0部、シクロヘキサノン20.0部、及びメチルイソブチルケトン400.0部を十分混合して防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−13)として調整した。
【0365】
実施例1−14:防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−14)の調製
実施例1−13の防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−13)の調製において、含フッ素ポリマー(PP−1)を1.13部用いる代わりに、含フッ素ポリマー(PP−1)と同様に合成した前記の含フッ素ポリマー(PP−3、40%シクロヘキサノン溶液)を1.13部用いた以外は、実施例1−13と全く同様にして防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−14)を調製した。
【0366】
実施例1−15:防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−15)の調製
実施例1−13の防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−13)の調製において、含フッ素ポリマー(PP−1)を1.13部用いる代わりに、含フッ素ポリマー(PP−1)と同様に合成した前記の含フッ素ポリマー(PP−10、40%シクロヘキサノン溶液)を1.13部用いた以外は、実施例1−13と全く同様にして防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−15)を調製した。
【0367】
実施例1−16:防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−16)の調製
実施例1−13の防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−13)の調製において、含フッ素ポリマー(PP−1)を1.13部用いる代わりに、含フッ素ポリマー(PP−1)と同様に合成した前記の含フッ素ポリマー(PP−15、40%シクロヘキサノン溶液)を1.13部用いた以外は、実施例1−13と全く同様にして防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−16)を調製した。
【0368】
実施例1−17:防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−17)の調製
実施例1−13の防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−13)の調製において、含フッ素ポリマー(PP−1)を1.13部用いる代わりに、含フッ素ポリマー(PP−1)と同様に合成した前記の含フッ素ポリマー(PP−17、40%シクロヘキサノン溶液)を1.13部用いた以外は、実施例1−13と全く同様にして防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−17)を調製した。
【0369】
実施例1−18:防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−18)の調製
実施例1−13の防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−13)の調製において、含フッ素ポリマー(PP−1)を1.13部用いる代わりに、含フッ素ポリマー(PP−1)と同様に合成した前記の含フッ素ポリマー(PP−30、40%シクロヘキサノン溶液)を1.13部用いた以外は、実施例1−13と全く同様にして防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−18)を調製した。
【0370】
実施例1−19:防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−19)の調製
紫外線硬化型樹脂“PETA”{商品名、ペンタエリスリトールトリアクリレートとペンタエリスリトールテトラアクリレートの混合物、日本化薬(株)製}310部、光硬化開始剤「イルガキュア184」{チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製}15.0部、上記合成例1で作製した含フッ素ポリマー(PP−1、40%シクロヘキサノン溶液)を1.13部、オルガノシラン化合物“KBM−5103”{商品名、信越化学工業(株)製}60.0部、シクロヘキサノン20.0部、及びメチルイソブチルケトン400.0部を十分混合して防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−19)として調整した。
【0371】
実施例1−20:防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−20)の調製
実施例1−19の防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−19)の調製において、含フッ素ポリマー(PP−1)を1.13部用いる代わりに、含フッ素ポリマー(PP−1)と同様に合成した前記の含フッ素ポリマー(PP−7、40%シクロヘキサノン溶液)を1.13部用いた以外は、実施例1−19と全く同様にして防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−20)を調製した。
【0372】
実施例1−21:防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−21)の調製
実施例1−19の防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−19)の調製において、含フッ素ポリマー(PP−1)を1.13部用いる代わりに、含フッ素ポリマー(PP−1)と同様に合成した前記の含フッ素ポリマー(PP−14、40%シクロヘキサノン溶液)を1.13部用いた以外は、実施例1−19と全く同様にして防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−21)を調製した。
【0373】
実施例1−22:防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−22)の調製
実施例1−19の防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−19)の調製において、含フッ素ポリマー(PP−1)を1.13部用いる代わりに、含フッ素ポリマー(PP−1)と同様に合成した前記の含フッ素ポリマー(PP−19、40%シクロヘキサノン溶液)を1.13部用いた以外は、実施例1−19と全く同様にして防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−22)を調製した。
【0374】
実施例1−23:防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−23)の調製
実施例1−19の防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−19)の調製において、含フッ素ポリマー(PP−1)を1.13部用いる代わりに、含フッ素ポリマー(PP−1)と同様に合成した前記の含フッ素ポリマー(PP−20、40%シクロヘキサノン溶液)を1.13部用いた以外は、実施例1−19と全く同様にして防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−23)を調製した。
【0375】
実施例1−24:防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−24)の調製
実施例1−19の防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−19)の調製において、含フッ素ポリマー(PP−1)を1.13部用いる代わりに、含フッ素ポリマー(PP−1)と同様に合成した前記の含フッ素ポリマー(PP−31、40%シクロヘキサノン溶液)を1.13部用いた以外は、実施例1−19と全く同様にして防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−24)を調製した。
【0376】
比較例1−1:防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−25)の調製
実施例1−1の防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−1)の調製において、含フッ素ポリマー(PP−1)を1.13部用いない以外は、実施例1−1と全く同様にして防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−25)を調製した。
【0377】
比較例1−2:防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−26)の調製
実施例1−1の防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−1)の調製において、含フッ素ポリマー(PP−1)を0.26部用いる代わりに、下記構造式で表されるフッ素系ポリマー(R−1)(40%MEK溶液)を0.26部用いた以外は、実施例1−1と全く同様にして防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−26)を調製した。
【0378】
【化23】
【0379】
比較例1−3:防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−27)の調製
実施例1−1の防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−1)の調製において、含フッ素ポリマー(PP−1)を0.26部用いる代わりに、下記構造式で表されるフッ素系ポリマー(R−2)(40%MEK溶液)を0.26部用いた以外は、実施例1−1と全く同様にして防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−27)を調製した。
【0380】
【化24】
【0381】
比較例1−4:防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−28)の調製
実施例1−1の防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−1)の調製において、含フッ素ポリマー(PP−1)を0.26部用いる代わりに、下記構造式で表されるフッ素系ポリマー(R−3)(40%MEK溶液)を0.26部用いた以外は、実施例1−1と全く同様にして防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−28)を調製した。
【0382】
【化25】
【0383】
調製された防眩性ハードコート層用塗布液の配合組成について、以下の表7にまとめる。なお、表7に用いた略号は、以下のとおりである。
Z7404:「デソライトZ7404」、ジルコニア含有UV硬化型ハードコート液、固形分濃度約61%、固形分中ZrO2含率約70%、重合性モノマー、光硬化開始剤含有、JSR(株)製、
DPHA:“DPHA”、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物、日本化薬(株)製、
PETA:“PETA”、ペンタエリスリトールトリアクリレートとペンタエリスリトールテトラアクリレートの混合物、日本化薬(株)製、
IC184:「イルガキュア184」、光硬化開始剤、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製、
KBM−5103:“KBM−5103”、シランカップリング剤、信越化学(株)製、
MXS−300:“MXS−300”{分級強化架橋ポリメチルメタクリレート(PMMA)粒子、平均粒径3.0μm、屈折率1.49、綜研化学(株)製}の30%MIBK分散液をポリトロン分散機にて10000rpmで20分分散した分散液、
Ac−St:架橋アクリル−スチレン透光性微粒子、平均粒径3.5μm、屈折率1.55、30%トルエン分散液、綜研化学(株)製、
St:架橋ポリスチレン透光性微粒子{粒径3.5μm、屈折率1.60、30%トルエン分散液、綜研化学(株)製}をポリトロン分散機にて10000rpmで20分分散後使用、
KE−P150:「シーホスタKE−P150」{平均粒径1.5μmのシリカ粒子、屈折率1.46、日本触媒(株)製}の30%MEK分散液をポリトロン分散機にて10000rpmで30分分散した分散液。
【0384】
【表7】
【0385】
〔反射防止フィルムの作製〕
[低屈折率層用塗布液の調製]
(ゾル液aの調製)
攪拌機、還流冷却器を備えた反応器内において、MEK119部、アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン“KBM5103”{信越化学工業(株)製}101部、ジイソプロポキシアルミニウムエチルアセトアセテート3部を加え混合したのち、イオン交換水30部を加え、60℃で4時間反応させたのち、室温まで冷却し、ゾル液aを得た。
【0386】
ゾル液aの質量平均分子量は1600であり、オリゴマー成分以上の成分のうち、分子量が1000〜20000の成分は100%であった。また、ガスクロマトグラフィー分析から、原料のアクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランは全く残存していなかった。
【0387】
{低屈折率層用塗布液(LL−1)の調製}
“JTA113”{商品名、屈折率1.44、固形分濃度6%、MEK溶液、JSR(
株)製}13.1g、コロイダルシリカ分散液“MEK−ST−L”{商品名、平均粒径45nm、固形分濃度30%、日産化学工業(株)製}1.31g、前記ゾル液a0.59g、及びMEK5.1g、シクロヘキサノン0.6gを添加、攪拌の後、孔径1μmのポリプロピレン製フィルターで濾過して、低屈折率層用塗布液(LL−1)を調製した。
【0388】
[ダイコーターの構成]
図9に示されるスロットダイ13は、上流側リップランド長IUPが0.5mm、下流側リップランド長ILOが50μmで、スロット16の開口部のウェブ走行方向における長さが150μm、スロット16の長さが50mmのものを使用した。
【0389】
上流側リップランド18aとウェブ12の隙間を、下流側リップランド18bとウェブ12の隙間よりも50μm長くし(以下、オーバーバイト長さ50μmと称する)、下流側リップランド18bとウェブ12との隙間GLを50μmに設定した。
【0390】
また、減圧チャンバー40のサイドプレート40bとウェブWとの隙間GS、及びバックプレート40aとウェブWとの隙間GBはともに200μmとした。
【0391】
[反射防止フィルムの作製]
実施例2−1
超音波除塵器で、膜厚80μmのトリアセチルセルロースフィルム“TD−80UF”{富士写真フイルム(株)製}の塗布側表面を除電処理した上に、防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−1)を、上記ダイコーターを用いて35m/分の塗布速度で塗布した。減圧チャンバーの減圧度は0.8kPaとした。防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−1)の塗布においては、下流側リップランド18bとウェブWとの隙間GLを80μmにして塗布を行った。塗布されたウェブは、直後にドライヤを使用して初期乾燥を行った。ドライヤの全長は5mとした。ドライヤ中の凝縮板は、走行方向の下流側が塗布膜から離れるような所定の傾斜角度をもって配した。ドライヤで初期乾燥されたウェブは、その後85℃で乾燥した後、酸素濃度が0.1体積%以下の雰囲気になるように窒素パージしながら、160W/cmの「空冷メタルハライドランプ」{アイグラフィックス(株)製}を用いて、照度400mW/cm2、照射量500mJ/cm2の紫外線を照射して塗布層を硬化させ、厚さ7μmのハードコート層を形成した。
【0392】
次に上記のハードコート層の上に、低屈折率層用塗布液(LL−1)を、上記ダイコーターを用いて30m/分で塗布した。減圧チャンバーの減圧度は0.8kPaとした。塗布されたウェブは塗布直後にドライヤを使用して初期乾燥を行った。ドライヤ中の凝縮板は、走行方向の下流側が塗布膜から離れるような所定の傾斜角度をもって配した。ドライヤで初期乾燥されたウェブは、その後90℃で30秒間乾燥した後、酸素濃度が0.1体積%以下の雰囲気になるように窒素パージしながら、240W/cmの「空冷メタルハライドランプ」{アイグラフィックス(株)製}を用いて、照度600mW/cm2、照射量400mJ/cm2の紫外線を照射し、低屈折率層(屈折率1.45、膜厚83nm)を形成した。このようにして、反射防止フィルム(HB−1)を作製した。
【0393】
上記工程において、塗布、乾燥工程は、0.5μm以上の粒子として30個/(立方メートル)以下の空気清浄度の空気雰囲気下で行われ、塗布直前に特開平10−309553号公報に記載の清浄度の高い空気を高速で吹き付けて付着物をフィルム表面から剥離させ、近接した吸い込み口で吸引する方法で除塵を行いながら塗布を行った。除塵前のベースの帯電圧は、200V以下であった。上記の塗布は1層毎に、送り出し−除塵−塗布−乾燥−(UV又は熱)硬化−巻き取りの各工程で行った。
【0394】
実施例2−2〜2−24
実施例2−1において、防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−1)を用いる代わりに、防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−2)〜(HCL−24)のいずれかを用いる以外は、実施例2−1と同様にして反射防止フィルム(HB−2)〜(HB−24)を作製した。
【0395】
比較例2−1〜2−4
実施例2−1において、防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−1)を用いる代わりに、防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−25)〜(HCL−28)のいずれかを用いる以外は、実施例2−1と同様にして反射防止フィルム(HB−25)〜(HB−28)を作製した。
【0396】
得られた反射防止フィルム(HB−1)〜(HB−28)のそれぞれについて、その裏面を黒く塗りつぶし、反射防止フィルム表面の状態を目視観察した。また次の方法に従って、その耐擦傷性の評価を行った。得られた結果を表8に示す。
【0397】
[反射防止フィルムの評価]
(1)スチールウール耐傷性評価
ラビングテスターを用いて、以下の条件でこすりテストをおこなった。
試料調湿条件:25℃、60%RH、2時間以上。
擦り材:試料と接触するテスターの擦り先端部(1cm×1cm)にスチールウール{日本スチールウール(株)製、グレードNo.0000}を巻いて、動かないようバンド固定した。
移動距離(片道):13cm、
擦り速度:13cm/秒、
荷重:200g/cm2、
先端部接触面積:1cm×1cm、
擦り回数:20往復。
擦り終えた試料の裏側に油性黒インキを塗り、反射光で目視観察して、擦り部分の傷を、以下の基準で評価した。
全く傷が見えない。 :○
中程度の傷が見える。 :△
一目見ただけで強い傷が見える。 :×
【0398】
(2)水綿棒擦り耐性評価
ラビングテスターの擦り先端部に綿棒を固定し、平滑皿中で試料の上下をクリップで固定し、室温25℃で、試料と綿棒を25℃の水に浸し、綿棒に500gの荷重をかけて、こすり回数を変えて擦りテストを行った。擦り条件は以下のとおり。
擦り距離(片道):1cm、
擦り速度:約2往復/秒
擦り終えた試料を観察して、膜剥がれが起こった回数で、擦り耐性を以下のように評価した。
0〜30往復で膜剥がれ :×
30〜150往復で膜剥がれ :△
150往復でも膜剥がれなし :○
【0399】
【表8】
【0400】
本発明で得られた組成物を含む塗布液を塗設した反射防止フィルム(HB−1)〜(HB−24)はいずれも、耐擦傷性評価及び風ムラと塗布ムラがいずれも良好であった。ここで、風ムラとは乾燥条件を変更した際に変化する面状故障、塗布ムラとは塗布条件を変
更した際に変化する面状故障とし、面状故障が目視で確認できるときに×と判断した。
【0401】
一方、含フッ素ポリマーを含まない防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−25)を塗布した比較例2−1では、風ムラが発生し、面内の均一性が低く反射防止フィルムとして好ましくない。防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−26)を塗布した比較例2−2では耐擦傷性(スチールウール及び綿棒擦り)が不十分であった。防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−27)を塗布した比較例2−3では、耐擦傷性は良好であったが塗布ムラが発生し、面内の均一性が低く、反射防止フィルムとして好ましくない。また、防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−28)を塗布した比較例2−4では、塗布面にハジキ状の模様が発生し、面内の均一性が低く反射防止フィルムとして好ましくない。更に比較例2−1〜2−4で得られた反射防止フィルムを上記の方法により液晶表示装置の視認側に設置したところ、表示面内の均一性が低く表示品位の低い表示装置となり、好ましくない。
【0402】
〔偏光板の作製〕
実施例3−1〜3−24
実施例2−1〜2−24で作製された反射防止フィルム(HB−1)〜(HB−24)をそれぞれ、2.0mol/L、55℃のNaOH水溶液中に2分間浸漬してフィルムの裏面のトリアセチルセルロース面を鹸化処理し、80μmの厚さのトリアセチルセルロースフィルム“TAC−TD80U”{富士写真フイルム(株)製}を同条件で鹸化処理したフィルムとを用いて、ポリビニルアルコールにヨウ素を吸着させ、延伸して作製した偏光膜の両面に接着、保護して偏光板を作製した。このようにして作製した偏光板を、反射防止膜側が最表面となるように透過型TN液晶表示装置搭載のノートパソコンの液晶表示装置{偏光選択層を有する偏光分離フィルムである住友3M(株)製の“D−BEF”をバックライトと液晶セルとの間に有する}の視認側の偏光板と貼り代えたところ、背景の映りこみが極めて少なく、反射光の色味が著しく低減され、更に表示面内の均一性が確保された表示品位の非常に高い表示装置が得られた。
【0403】
比較例3−1〜3−4
実施例3−1〜3−24と同様に、比較例2−1〜2−4で作製された反射防止フィルム(HB−25)〜(HB−28)をそれぞれ用いて、偏光板を作製した。このようにして作製した偏光板を、同様に液晶表示装置の視認側に設置したところ、表示面内の均一性が低く表示品位の低い表示装置となり、好ましくなかった。
【図面の簡単な説明】
【0404】
【図1】図1は、本発明に係る反射防止フィルムの層構成の1例を示す断面模式図である。
【図2】図2は、本発明に係る反射防止フィルムの層構成の1例を示す断面模式図である。
【図3】図3は、本発明に係る反射防止フィルムの層構成の1例を示す断面模式図である。
【図4】図4は、本発明に係る反射防止フィルムの層構成の1例を示す断面模式図である。
【図5】図5は、本発明に係る反射防止フィルムの層構成の1例を示す断面模式図である。
【図6】図6は、本発明に係る反射防止フィルムの層構成の1例を示し、防眩性の様相を強調した断面模式図である。
【図7】図7は、本発明に係る反射防止フィルムの層構成の1例を示し、防眩性の様相を強調した断面模式図である。
【図8】図8は、本発明の実施の際に使用したスロットダイを用いたコーターの断面図である。
【図9】図9は、スロットダイ13の断面形状を従来のものと比較して示した断面図である。
【図10】図10は、本発明の実施に使用された塗布工程のスロットダイ及びその周辺を示す斜視図である。
【図11】図11は、近接している減圧チャンバー40とウェブWを示す断面図である。
【図12】図12は、近接している減圧チャンバー40とウェブWを示す断面図である。
【符号の説明】
【0405】
(1):透明支持体
(2):ハードコート層
(3):中屈折率層
(4):高屈折率層
(5):低屈折率層
【0406】
11:バックアップロール
14a:ビード
14b:塗膜
15:ポケット
16:スロット
16a:スロット開口部
18:平坦部
【0407】
13、30:スロットダイ
31a:上流側リップランド
31b:下流側リップランド
32:ポケット
33:スロット
【0408】
40:減圧チャンバー
40a:バックプレート
40b:サイドプレート
40c:ネジ
GB:バックプレート40aとウェブWの間の隙間
GS:サイドプレート40bとウェブWの間の隙間
12、W:ウェブ
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗布組成物、それを用いた光学フィルム及び反射防止フィルム、並びにそのような反射防止フィルムを用いた偏光板、及び反射防止フィルム又は偏光板を用いたディスプレイ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、各種コーティング法を用いた材料の開発が進んでおり、特に数μm〜数10nmレベルの薄層塗布技術は、光学フィルム、印刷、フォトリソグラフィーなどで必要であり、要求される塗布精度も薄膜化、基材の大型化、塗布の高速化などに伴い高くなってきている。特に光学フィルムの製造においては、膜厚の制御が光学性能を左右する非常に重要なポイントであり、精度を高く保ちつつ塗布速度の高速化を実現できる技術への要求は高くなってきている。
【0003】
反射防止フィルムは、一般に、陰極管表示装置(CRT)、プラズマディスプレイ(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)や液晶表示装置(LCD)のようなディスプレイ装置において、外光の反射によるコントラスト低下や像の映り込みを防止するために、光学干渉の原理を用いて反射率を低減するようディスプレイの最表面に配置される。
【0004】
近年これら表示装置、特に従来のCRTに比べ奥行きが薄く、表示領域の大きな表示装置の普及に従って、より高精細化、より高品質な表示装置が要求されるようになっている。それに伴い反射防止膜の面状均一性が強く求められている。ここでいう面状均一性とは、反射防止性能に代表される光学性能のバラツキ、及び耐擦傷性能などの皮膜物性のバラツキが全表示部内でないことをいう。
【0005】
反射防止フィルムの製造方法としては、特許文献1にCVDによる酸化硅素膜を用いたガスバリア性、防眩性、反射防止性に優れる防眩性反射防止フィルムが記載されており、このような無機蒸着法が挙げられるが、大量生産性の観点からはオールウェット塗布による反射防止フィルムの製造方法が有利である。
【0006】
しかしながら、溶媒を用いたオールウェット塗布は生産性の観点からは非常に有利である反面、塗布直後の溶媒乾燥を一定に保つことが非常に困難で、面状ムラが生じやすい。ここでいう面状ムラとは溶媒乾燥速度差に起因する乾燥ムラや乾燥風で引き起こされる厚みムラである風ムラ、塗工部で発生する塗布ムラなどのことである。オールウェット塗布においてより生産性を向上させるために、塗布速度を高くすることは必須の技術である。だが単純に、塗布速度を高くすると相対的に乾燥風の風速も高くなり、また支持体の高速移動に伴う同伴風の影響も受け、風ムラは悪化することになる。また、塗工部もより不安定になり、塗布ムラも悪化することが多い。こうして従来では光学性能、膜物性のバラツキを抑えた反射防止膜を得るためには、塗布速度をあまり高くすることはできなかった。
【0007】
乾燥時のムラを低減させるためにはレベリング性を向上させることが有効であることが知られている。レベリング性を向上させる一つの手段として、塗布組成物中に界面活性剤を添加する方法が提案されている。塗布物に界面活性剤を添加すると表面張力が低下して、支持体などの被塗布物への濡れを改良し、塗膜形成過程での表面張力変化を小さくし、又は低下させて熱対流を防止して皮膜の均一性を改良するという機構に基づいている(非特許文献1参照)。
【0008】
目的とする塗布組成物中の溶媒、樹脂、各種添加剤との相溶性などにより最適な界面活性種は異なるが、溶媒を用いて塗布する場合には溶媒に可溶で表面張力低下能力が最も高いフッ素系界面活性剤を用いるのが有効である。一般に、フッ素系界面活性剤は、表面張力低下機能を実現するためのフルオロ脂肪族基と、例えば該活性剤を添加剤として使用したときに、コーティング用、成形材料用等の各種組成物に対する親和性に寄与する親媒性基とを同一分子内に有する化合物からなるものである。このような化合物は、フルオロ脂肪族基を有するモノマーと親媒性基を有するモノマーとを共重合させて得られる。
【0009】
フルオロ脂肪族基を有するモノマーと共重合される、親媒性基を有するモノマーの代表的な例としては、ポリ(オキシアルキレン)アクリレート、ポリ(オキシアルキレン)メタクリレート等が挙げられる。また、特許文献2に記載のω−H型フッ素系ポリマー界面活性剤により、風ムラの良化と耐擦傷性能の両立した反射防止膜の提案がある。
【特許文献1】特開平7−333404号公報
【特許文献2】特開2004−331812号公報
【非特許文献1】コーティング用添加剤の最新技術、桐生春雄監修、シーエムシー、2001年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、従来のフッ素系界面活性剤を用いると乾燥ムラや風ムラは良化するものの、塗布ムラが発生し、塗布された反射防止フィルムの品位を低下させる問題があった。
【0011】
本発明の目的は、
(1)乾燥ムラや風ムラの低減と、塗布ムラを悪化させないことを両立できるフルオロ脂肪族基含有重合体を含む塗布組成物を提供すること、
(2)面状均一性が高く、十分な反射防止性能を達成した反射防止フィルムを提供すること、及び
(3)そのような反射防止フィルムを用いた偏光板や画像表示装置を提供すること、
にある。
【0012】
本発明者らは、フッ素系界面活性剤の構成成分であるフルオロ脂肪族基含有モノマーにおけるフルオロ脂肪族基の構造や、フッ素系界面活性剤におけるフルオロ脂肪族基含有モノマー及びその他モノマーの組成について精査した結果、特定のヒドロキシル基を有する含フッ素モノマーから誘導される構造を含むポリマーを用いることにより、さらにはフルオロ脂肪族基含有モノマーと特定のヒドロキシル基を有する含フッ素モノマーからなる共重合体を用いることにより、塗布時に生じる乾燥ムラや風ムラを低減し、且つ塗布ムラも悪化させない組成物を得ることができることを見出した。
【課題を解決するための手段】
【0013】
すなわち、本発明は以下の手段によって達成された。
[1] 下記一般式(1)の構造を含むポリマーを含有することを特徴とする塗布組成物。
一般式(1):
【0014】
【化1】
【0015】
一般式(1)において、X11及びX12はそれぞれ水素原子又はフッ素原子を表し、X13は水素原子、フッ素原子、塩素原子又はCF3を表す。Rf11及びRf12はそれぞれ炭素数1〜20の含フッ素アルキル基を表し、Rf13は炭素数1〜100の含フッ素アルキレ
ン基を表す。aは0又は1を表す。
[2] 一般式(1)の構造を含むポリマーが、塗布組成物全固形分に対して0.001〜5.0質量%含まれる前記[1]に記載の塗布組成物。
[3] 一般式(1)の構造を含むポリマーの質量平均分子量が、8,000〜60,000である前記[1]又は[2]に記載の塗布組成物。
[4] 一般式(1)の構造を含むポリマー中のフッ素原子の割合が、塗布組成物全固形分に対して、0.0003〜3.0質量%である前記[1]〜[3]のいずれかに記載の塗布組成物。
[5] 下記一般式(2)の構造を含むポリマーを含有することを特徴とする塗布組成物。
一般式(2):
【0016】
【化2】
【0017】
一般式(2)において、Aは含フッ素エチレン性モノマーから誘導される構造を表し、X11及びX12はそれぞれ水素原子又はフッ素原子を表し、X13は水素原子、フッ素原子、塩素原子又はCF3を表す。Rf11及びRf12はそれぞれ炭素数1〜20の含フッ素アルキル基を表し、Rf13は炭素数1〜100の含フッ素アルキレン基を表す。aは0又は1を表す。m、nは50≦m≦99、1≦n≦50の関係を満たす質量%を表す。
[6] 一般式(2)中のAが下記一般式(3)で表される前記[5]に記載の塗布組成物。
一般式(3):
【0018】
【化3】
【0019】
一般式(3)において、X21、X22及びX23はそれぞれ水素原子又はフッ素原子を表し、X24は水素原子、フッ素原子又はCF3を表す。Rf21は炭素数1〜20の含フッ素アルキル基を表す。pは0、1又は2を表し、qは0又は1を表す。
[7] 透明支持体上に、前記[1]〜[6]のいずれかに記載の塗布組成物を少なくとも一層塗設したことを特徴とする光学フィルム。
[8] 前記[7]に記載の光学フィルムに反射防止性能が有されたものであることを特徴とする反射防止フィルム。
[9] 偏光膜の少なくとも一方の側に、前記[8]に記載の反射防止フィルムを用いたことを特徴とする偏光板。
[10] 偏光膜の一方の保護フィルムとして前記[8]に記載の反射防止フィルムを用い、該偏光膜の他方の保護フィルムとして光学異方性のある光学補償フィルムを用いたことを特徴とする偏光板。
[11] 前記[8]に記載の反射防止フィルム、又は前記[9]もしくは[10]に記載の偏光板が配置されていることを特徴とする画像表示装置。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、乾燥ムラや風ムラを低減させ、かつ塗布ムラを悪化させない塗布組成物が得られる。該塗布組成物により、面状均一性が高く、十分な反射防止性能を達成した反射防止膜が得られ、該反射防止膜は偏光板やディスプレイ装置に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、必要に応じて添付図面をも用い、本発明の塗布組成物、光学フィルム、反射防止フィルム、反射防止フィルムの製造方法、該反射防止フィルムを用いた偏光板、及びこれらを用いた画像表示装置の好ましい実施の形態について詳しく記載する。
【0022】
<塗布組成物>
〔ヒドロキシル基を有する含フッ素ポリマー〕
以下、本発明に係るヒドロキシル基を有する含フッ素ポリマーについて詳細に説明する。
【0023】
[一般式(1)で表される構造]
本発明で使用されるヒドロキシル基を有する含フッ素ポリマーは、一般式(1)で表される構造を含むポリマーである。
一般式(1):
【0024】
【化4】
【0025】
一般式(1)において、X11及びX12はそれぞれ水素原子又はフッ素原子を表す。X13は水素原子、フッ素原子、塩素原子又はCF3を表し、水素原子、フッ素原子又はCF3が好ましく、水素原子又はフッ素原子が特に好ましい。Rf11及びRf12はそれぞれ炭素数1〜20の含フッ素アルキル基を表し、炭素数1〜15の含フッ素アルキル基が好ましく、炭素数1〜10の含フッ素アルキル基が特に好ましい。Rf13は炭素数1〜100の含フッ素アルキレン基を表し、炭素数1〜75の含フッ素アルキル基が好ましく、炭素数1〜50の含フッ素アルキル基が特に好ましい。aは0又は1を表す。
【0026】
一般式(1)で表される具体的な好ましい構造の例を以下に示す。
【0027】
【化5】
【0028】
【化6】
【0029】
【化7】
【0030】
【化8】
【0031】
一般式(1)の構造はビニルモノマーから誘導され、そのモノマーは国際公開第2002/066526号パンフレット等を参考に合成することができる。
【0032】
[一般式(2)で表される構造]
本発明で使用されるヒドロキシル基を有する含フッ素ポリマーは、一般式(2)で表される構造を含むポリマー、すなわち前記一般式(1)の構造を導くビニルモノマーと、含フッ素エチレン性モノマーとの共重合体を含むポリマーであることがより好ましい。
一般式(2):
【0033】
【化9】
【0034】
一般式(2)において、Aは含フッ素エチレン性モノマーから誘導される構造を表す。このような含フッ素エチレン性モノマーとしては、例えばビニリデンフルオリド、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、ペルフルオロビニルエーテル、ペルフルオロアルキル(メタ)アクリレート、ω−H−ペルフルオロアルキル(メタ)アクリレートなどが好ましく、一般式(3)で表される構造がより好ましい。m、nは50≦m≦99、1≦n≦50の関係を満たす質量%が好ましく、55≦m≦98、2≦n≦45の関係を満たす質量%がより好ましく、60≦m≦97、3≦n≦40の関係を満たす質量%が特に好ましい。X11〜X13、Rf11〜Rf13およびaは、前記一般式(2)で定義したとおりである。
一般式(3):
【0035】
【化10】
【0036】
一般式(3)において、X21、X22及びX23はそれぞれ水素原子又はフッ素原子を表す。X24は水素原子、フッ素原子又はCF3が好ましく、水素原子又はフッ素原子がより好ましい。Rf21は炭素数1〜20の含フッ素アルキル基が好ましく、炭素数1〜15の含フッ素アルキル基がより好ましく、炭素数1〜10の含フッ素アルキル基が特に好ましい。pは0、1又は2を表し、qは0又は1を表す。
【0037】
一般式(3)で表される含フッ素エチレン性モノマーの具体例としては、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、ペルフルオロブチルエチレン、ペルフルオロヘキシルエチレン、ペルフルオロオクチルエチレン、ペルフルオロデシルエチレン、ペルフルオロメチルビニルエーテル、ペルフルオロエチルビニルエーテル、ペルフルオロプロピルビニルエーテル、フルオロブチルビニルエーテルなどを挙げることができる。
【0038】
[共重合可能なモノマー]
一般式(1)又は(2)で表される構造を含む本発明におけるポリマーは、下記に示すモノマーを共重合していてもよい。
【0039】
(1)アルケン類
エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン、1−ヘキセン、1−ドデセン、1−オクタデセン、1−エイコセン、塩化ビニル、塩化ビニリデンなど;
【0040】
(2)ジエン類
1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、2−エチル−1,3−ブタジエン、2−n−プロピル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、1−フェニル−1,3−ブタジエン、1−α−ナフチル−1,3−ブタジエン、1−β−ナフチル−1,3−ブタジエン、2−クロロ−1,3−ブタジエン、1−ブロモ−1,3−ブタジエン、1−クロロブタジエン、2−フルオロ−1,3−ブタジエン、2,3−ジクロロ−1,3−ブタジエン、1,1,2−トリクロロ−1,3−ブタジエン及び2−シアノ−1,3−ブタジエン、1,4−ジビニルシクロヘキサンなど;
【0041】
(3)α,β−不飽和カルボン酸の誘導体
(3a)アルキルアクリレート類
メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、i−ブチルアクリレート、s−ブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、アミルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、i−ボルニルアクリレート、2−エチルへキシルアクリレート、n−オクチルアクリレート、t−オクチルアクリレート、ドデシルアクリレート、フェニルアクリレート、ベンジルアクリレート、2−クロロエチルアクリレート、2−ブロモエチルアクリレート、4−クロロブチルアクリレート、2−シアノエチルアクリレート、2−アセトキシエチルアクリレート、メトキシベンジルアクリレート、2−クロロシクロヘキシルアクリレート、フルフリルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、ω−メトキシポリエチレングリコールアクリレート(ポリオキシエチレンの付加モル数:n=2〜100のもの)、3−メトキシブチルアクリレート、2−エトキシエチルアクリレート、2−ブトキシエチルアクリレート、2−(2−ブトキシエトキシ)エチルアクリレート、1−ブロモ−2−メトキシエチルアクリレート、1,1−ジクロロ−2−エトキシエチルアクリレート、グリシジルアクリレートなど);
【0042】
(3b)アルキルメタクリレート類
メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、i−プ
ロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、i−ブチルメタクリレート、s−ブチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、アミルメタクリレート、n−ヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、i−ボルニルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、n−オクチルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、フェニルメタクリレート、アリルメタクリレート、フルフリルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、クレジルメタクリレート、ナフチルメタクリレート、2−メトキシエチルメタクリレート、3−メトキシブチルメタクリレート、ω−メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(ポリオキシエチレンの付加モル数:n=2〜100のもの)、2−アセトキシエチルメタクリレート、2−エトキシエチルメタクリレート、2−ブトキシエチルメタクリレート、2−(2−ブトキシエトキシ)エチルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、3−トリメトキシシリルプロピルメタクリレート、アリルメタクリレート、2−イソシアナトエチルメタクリレートなど;
【0043】
(3c)不飽和多価カルボン酸のジエステル類
マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジブチル、イタコン酸ジメチル、イタコン酸ジブチル、クロトン酸ジブチル、クロトン酸ジヘキシル、フマル酸ジエチル、フマル酸ジメチルなど;
【0044】
(3d)α,β−不飽和カルボン酸のアミド類
N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N−n−プロピルアクリルアミド、N−t−ブチルアクリルアミド、N−t−オクチルメタクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド、N−(2−アセトアセトキシエチル)アクリルアミド、N−ベンジルアクリルアミド、N−アクリロイルモルフォリン、ジアセトンアクリルアミド、N−メチルマレイミドなど;
【0045】
(4)不飽和ニトリル類
アクリロニトリル、メタクリロニトリルなど;
【0046】
(5)スチレン及びその誘導体
スチレン、ビニルトルエン、エチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、p−ビニル安息香酸メチル、α−メチルスチレン、p−クロロメチルスチレン、ビニルナフタレン、p−メトキシスチレン、p−ヒドロキシメチルスチレン、p−アセトキシスチレンなど;
【0047】
(6)ビニルエステル類
酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、安息香酸ビニル、サリチル酸ビニル、クロロ酢酸ビニル、メトキシ酢酸ビニル、フェニル酢酸ビニルなど;
【0048】
(7)ビニルエーテル類
メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、i−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、i−ブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、n−ペンチルビニルエーテル、n−ヘキシルビニルエーテル、n−オクチルビニルエーテル、n−ドデシルビニルエーテル、n−エイコシルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、など;及び
【0049】
(8)その他の重合性単量体
N−ビニルピロリドン、メチルビニルケトン、フェニルビニルケトン、メトキシエチルビニルケトン、2−ビニルオキサゾリン、2−i−プロペニルオキサゾリン、アクリル酸、メタクリル酸など。
【0050】
これらの共重合可能なモノマーは、本発明における含フッ素ポリマー全体の50質量%以下の量で共重合することが好ましく、40質量%以下の量であることがさらに好ましく、30質量%以下の量であることが特に好ましい。
【0051】
[含フッ素ポリマーの重合方法]
一般式(1)又は(2)で表される構造を含む本発明における含フッ素ポリマーは、特に限定されるものではないが、例えば、ビニル基を利用したカチオン重合、ラジカル重合又はアニオン重合等の重合方法を採ることができ、これらの中ではラジカル重合が汎用に利用できる点で特に好ましい。
【0052】
ラジカル重合方法は、特に制限されるものでなく、乳化重合法、懸濁重合法、塊状重合法、溶液重合法等を採ることが可能である。典型的なラジカル重合方法である溶液重合についてさらに具体的に説明する。他の重合方法についても概要は同等であり、その詳細は例えば「高分子科学実験法」高分子学会編(東京化学同人、1981年)等に記載されている。
【0053】
溶液重合を行うためには有機溶媒を使用する。これらの有機溶媒は本発明の目的、効果を損なわない範囲で任意に選択可能である。これらの有機溶媒は通常、大気圧下での沸点が50〜200℃の範囲内の値を有する有機化合物であり、各構成成分を均一に溶解させる有機化合物が好ましい。
【0054】
好ましい有機溶媒の例を示すと、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール類;ジブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル、γ−ブチロラクトン等のエステル類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;が挙げられる。なお、これらの有機溶媒は、1種単独又は2種以上を組み合わせて用いることが可能である。さらに、モノマーや生成するポリマーの溶解性の観点から上記有機溶媒に水を併用した水混合有機溶媒も適用可能である。
【0055】
また、溶液重合条件も特に制限されるものではないが、例えば、50〜200℃の温度範囲内で、10分〜30時間加熱することが好ましい。さらに、発生したラジカルが失活しないように、溶液重合中はもちろんのこと、溶液重合開始前にも、不活性ガスパージを行うことが好ましい。不活性ガスとしては通常窒素ガスが好適に用いられる。
【0056】
本発明のポリマーを好ましい分子量範囲で得るためには、開始剤量の調整や連鎖移動剤の使用が挙げられるが、連鎖移動剤を用いたラジカル重合法が特に有効である。連鎖移動剤としてはメルカプタン類(例えば、オクチルメルカプタン、デシルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、オクタデシルメルカプタン、チオフェノール、p−ノニルチオフェノール等)、ポリハロゲン化アルキル(例えば、四塩化炭素、クロロホルム、1,1,1−トリクロロエタン、1,1,1−トリブロモオクタンなど)、低活性モノマー類(α−メチルスチレン、α−メチルスチレンダイマー等)のいずれも用いることができるが、好ましくは炭素数4〜16のメルカプタン類である。
【0057】
これらの連鎖移動剤の使用量は、連鎖移動剤の活性やモノマーの組み合わせ、重合条件などにより著しく影響され精密な制御が必要であるが、通常は使用するモノマーの全モル数に対して0.01モル%〜50モル%程度であり、好ましくは0.05モル%〜30モル%、特に好ましくは0.08モル%〜25モル%である。これらの連鎖移動剤は、重合過程において重合度を制御するべき対象のモノマーと同時に系内に存在させればよく、その添加方法については特に問わない。モノマーに溶解して添加してもよいし、モノマーと
別途に添加することも可能である。
【0058】
本発明における上記のポリマーは、重合反応溶液をそのまま本発明における塗布組成物に使用することができ、又は再沈殿や分液操作によって精製して使用することもできる。
【0059】
一般式(1)又は(2)で表される構造を含む本発明における含フッ素ポリマーの質量平均分子量は、3000〜100,000が好ましく、より好ましくは6000〜80,000であり、特に好ましくは8,000〜60,000である。上記の分子量の範囲内では、塗布ムラ防止効果が充分に発揮される。ここで、質量平均分子量は、“TSKgel GMHxL”、“TSKgel G4000HxL”、“TSKgel G2000HxL”{何れも東ソー(株)製の商品名}のカラムを使用したGPC分析装置により、溶媒テトラヒドロフラン(THF)、示差屈折計検出によるポリスチレン換算で表した分子量である。
【0060】
[有用な含フッ素ポリマーの具体例]
下記に本発明で有用な含フッ素ポリマーの具体例を示すが、本発明で用いられる含フッ素ポリマーはこれらに限定されるものではない。また、各構成成分の含量は質量%を表し、Mwは質量平均分子量を表す。
【0061】
【化11】
【0062】
【化12】
【0063】
【化13】
【0064】
【化14】
【0065】
本発明の塗布組成物は、上記したようにヒドロキシル基を有する含フッ素ポリマーを含有する。塗布組成物全固形分に対する上記含フッ素ポリマーの添加量は、0.001質量%〜5.0質量%であることが好ましく、より好ましくは0.01質量%〜1.0質量%である。上記の好ましい添加量内では十分な塗布ムラ防止効果を得ることができる。また、塗布組成物全固形分に対する含フッ素ポリマーのフッ素原子の質量の割合は、0.0003質量%〜3.0質量%であることが好ましく、より好ましくは0.003質量%〜0.6質量%である。上記の好ましい添加量内では十分な塗布ムラ防止効果を得ることができる。
【0066】
塗布組成物は、さらなる面状向上の点から、水の含率が30質量%以下であることが好ましく、より好ましくは10質量%以下である。
【0067】
本発明の塗布組成物は、用途に応じて、バインダー、無機フィラー、分散安定剤など、必要な成分を含有することができ、後述の透明支持体上に塗設して光学フィルムとすることができる。一種又は複数種の塗布組成物を支持体上に塗布して機能性層を一層以上形成し、例えば反射防止フィルムや偏光板とすることができる。本発明の塗布組成物は下記の反射防止フィルム中のハードコート層、中屈折率層、高屈折率層、低屈折率層等に利用することが好ましく、ハードコート層及び高屈折率層に利用することが更に好ましい。
【0068】
<光学フィルム>
〔反射防止フィルム〕
[反射防止フィルムの層構成]
図1は、本発明に係る反射防止フィルムの層構成の一例を示す断面模式図である。反射
防止フィルムは、透明支持体(1)、ハードコート層(2)、中屈折率層(3)、高屈折率層(4)、そして低屈折率層(5)の順序の層構成を有する。
【0069】
また、図2及び3に示されるように、透明支持体(1)上、又は透明支持体(1)上にハードコート層(2)を塗布した上に、屈折率層として低屈折率層(5)を積層すると、反射防止フィルムとして好適に用いることができる。
【0070】
さらに図4及び5に示されるように、透明支持体(1)上、又は透明支持体(1)上にハードコート層(2)を塗布した上に、高屈折率層(4)、低屈折率層(5)を積層しても反射防止フィルムとして好適に用いることができる。
【0071】
ハードコート層(2)は防眩性を有していてもよい。防眩性は図6に示されるようなマット粒子の分散によるものでも、図7に示されるようなエンボス加工などの方法による表面の賦形によって形成されてもよい。
【0072】
[基材フィルム(支持体)]
本発明の反射防止フィルムの透明支持体としては、プラスチックフィルムを用いることが好ましい。プラスチックフィルムの材料の例には、セルロースエステル(例えば、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、プロピオニルセルロース、ブチリルセルロース、アセチルプロピオニルセルロース、ニトロセルロースなど)、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ−1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリエチレン−1,2−ジフェノキシエタン−4,4’−ジカルボキシレート、ポリブチレンテレフタレートなど)、ポリスチレン(例えば、シンジオタクチックポリスチレンなど)、ポリオレフィン(例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリメチルペンテンなど)、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、ポリメチルメタクリレート及びポリエーテルケトンが含まれる。
【0073】
特に液晶表示装置や有機EL表示装置等に用いるために、本発明の反射防止フィルムを偏光板の表面保護フィルムの片側として用いる場合には、トリアセチルセルロースが好ましく用いられる。トリアセチルセルロースフィルムとしては、“TAC−TD80U”{富士写真フィルム(株)製}等の公知のもの、公開技報番号2001−1745号にて公開されたものが好ましく用いられる。また、平面CRTやPDP等に用いるためにガラス基板等に張り合わせて用いる場合には、ポリエチレンテレフタレート、又はポリエチレンナフタレートが好ましい。
【0074】
透明支持体の光透過率は、80%以上であることが好ましく、86%以上であることがさらに好ましい。透明支持体のヘイズは、2.0%以下であることが好ましく、1.0%以下であることがさらに好ましい。透明支持体の屈折率は、1.4〜1.7であることが好ましい。本発明の透明支持体の厚みは30〜150μmが好ましく、40〜120μmがより好ましい。
【0075】
[ハードコート層]
本発明のハードコート層について以下に説明する。
ハードコート層はハードコート性を付与するためのバインダー、防眩性を付与するためのマット粒子、及び高屈折率化・架橋収縮防止・高強度化のための無機フィラー、反応を開始させるための開始剤、界面活性剤・チクソトロピー剤・耐電防止剤等の添加剤などから構成される。
【0076】
(ハードコート層用バインダー)
ハードコート層用のバインダーとしては、飽和炭化水素鎖又はポリエーテル鎖を主鎖として有するポリマーであることが好ましく、飽和炭化水素鎖を主鎖として有するポリマーであることがさらに好ましい。また、バインダーポリマーは架橋構造を有することが好ましい。
【0077】
(飽和炭化水素鎖を主鎖として有するバインダーポリマー)
飽和炭化水素鎖を主鎖として有するバインダーポリマーとしては、エチレン性不飽和モノマーの重合体が好ましい。飽和炭化水素鎖を主鎖として有し、且つ架橋構造を有するバインダーポリマーとしては、2個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーの(共)重合体が好ましい。
【0078】
層を高屈折率にするには、このモノマーの構造中に芳香族環や、フッ素以外のハロゲン原子、硫黄原子、リン原子、及び窒素原子から選ばれた少なくとも1種の原子を含むことが好ましい。
【0079】
2個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーとしては、多価アルコールの(メタ)アクリル酸エステル{例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,2,3−シクロヘキサントリオールトリ(メタ)アクリレート、ポリウレタンポリアクリレート、ポリエステルポリアクリレート等}、ビニルベンゼン及びその誘導体{例えば、1,4−ジビニルベンゼン、4−ビニル安息香酸−2−(メタ)アクリロイルエチルエステル、1,4−ジビニルシクロヘキサノン等}、ビニルスルホン(例えばジビニルスルホン)、(メタ)アクリルアミド(例えばメチレンビスアクリルアミド)などが挙げられる。上記モノマーは2種以上併用してもよい。
【0080】
高屈折率モノマーの具体例としては、ビス(4−メタクリロイルチオフェニル)スルフィド、ビニルナフタレン、ビニルフェニルスルフィド、4−メタクリロキシフェニル−4’−メトキシフェニルチオエーテル等が挙げられる。これらのモノマーも2種以上併用してもよい。
【0081】
(重合開始剤)
これらのエチレン性不飽和基を有するモノマーの重合は、光ラジカル開始剤又は熱ラジカル開始剤の存在下、電離放射線の照射又は加熱により行うことができる。従って、エチレン性不飽和基を有するモノマー、光ラジカル開始剤又は熱ラジカル開始剤、マット粒子及び無機フィラーを含有する塗液を調製し、該塗液を透明支持体上に塗布後電離放射線又は熱による重合反応により硬化してハードコート層を形成することができる。
【0082】
光ラジカル重合開始剤としては、アセトフェノン類、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、ホスフィンオキシド類、ケタール類、アントラキノン類、チオキサントン類、アゾ化合物、過酸化物類、2,3−ジアルキルジオン化合物類、ジスルフィド化合物類、フルオロアミン化合物類や芳香族スルホニウム類が挙げられる。
【0083】
アセトフェノン類の例には、2,2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアセトフェノン、1−ヒドロキシジメチルフェニルケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−4−メチルチオ−2−モルフォリノプロピオフェノン及び2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノンが含まれ
る。
【0084】
ベンゾイン類の例には、ベンゾインベンゼンスルホン酸エステル、ベンゾイントルエンスルホン酸エステル、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル及びベンゾインイソプロピルエーテルが含まれる。ベンゾフェノン類の例には、ベンゾフェノン、2,4−ジクロロベンゾフェノン、4,4−ジクロロベンゾフェノン及びp−クロロベンゾフェノンが含まれる。ホスフィンオキシド類の例には、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシドが含まれる。
【0085】
「最新UV硬化技術」{発行人;高薄一弘、発行所;(株)技術情報協会、1991年発行}、p.159にも種々の例が記載されており本発明に有用である。
【0086】
市販の光開裂型の光ラジカル重合開始剤としては、日本チバガイギー(株)製の商品名「イルガキュア(651,184,907)」等が好ましい例として挙げられる。
【0087】
光重合開始剤は、多官能モノマー100質量部に対して、0.1〜15質量部の範囲で使用することが好ましく、より好ましくは1〜10質量部の範囲である。
【0088】
光重合開始剤に加えて、光増感剤を用いてもよい。光増感剤の具体例として、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン、ミヒラーのケトン及びチオキサントンを挙げることができる。
【0089】
熱ラジカル開始剤としては、有機又は無機過酸化物、有機アゾ及びジアゾ化合物等を用いることができる。
【0090】
具体的には、有機過酸化物として過酸化ベンゾイル、過酸化ハロゲンベンゾイル、過酸化ラウロイル、過酸化アセチル、過酸化ジブチル、クメンヒドロぺルオキシド、ブチルヒドロぺルオキシド;無機過酸化物として、過酸化水素、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム等;アゾ化合物として2,2'−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2'−アゾビス(プロピオニトリル)、1,1'−アゾビス(シクロヘキサンジニトリル)等;ジアゾ化合物としてジアゾアミノベンゼン、p−ニトロベンゼンジアゾニウム等を挙げることができる。
【0091】
(ポリエーテルを主鎖として有するバインダーポリマー)
ポリエーテル鎖を主鎖として有するバインダーポリマーは、多官能エポキシ化合物の開環重合体が好ましい。多官能エポキシ化合物の開環重合は、光酸発生剤又は熱酸発生剤の存在下、電離放射線の照射又は加熱により行うことができる。
【0092】
従って、多官能エポキシ化合物、光酸発生剤又は熱酸発生剤、マット粒子及び無機フィラーを含有する塗液を調製し、該塗液を透明支持体上に塗布後電離放射線又は熱による重合反応により硬化してハードコート層を形成することができる。
【0093】
2個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーの代わりに、又はそれに加えて、架橋性官能基を有するモノマーを用いてポリマー中に架橋性官能基を導入し、この架橋性官能基の反応により、架橋構造をバインダーポリマーに導入してもよい。
【0094】
架橋性官能基の例には、イソシアナート基、エポキシ基、アジリジン基、オキサゾリン基、アルデヒド基、カルボニル基、ヒドラジン基、カルボキシル基、メチロール基及び活性メチレン基が含まれる。
【0095】
ビニルスルホン酸、酸無水物、シアノアクリレート誘導体、メラミン、エーテル化メチロール、エステル及びウレタン、テトラメトキシシランのような金属アルコキシドも、架橋構造を導入するためのモノマーとして利用できる。ブロックイソシアナート基のように、分解反応の結果として架橋性を示す官能基を用いてもよい。すなわち、本発明において架橋性官能基は、すぐには反応を示すものではなくとも、分解した結果反応性を示すものであってもよい。
【0096】
これら架橋性官能基を有するバインダーポリマーは塗布後、加熱することによって架橋構造を形成することができる。
【0097】
(マット粒子)
ハードコート層には、防眩性付与の目的で、フィラー粒子より大きな、平均粒径が1.0〜10.0μm、好ましくは1.5〜7.0μmのマット粒子、例えば無機化合物の粒子又は樹脂粒子が含有される。
【0098】
上記マット粒子の具体例としては、例えばシリカ粒子、TiO2粒子等の無機化合物の粒子;架橋アクリル粒子、架橋スチレン粒子、メラミン樹脂粒子、ベンゾグアナミン樹脂粒子等の樹脂粒子が好ましく挙げられる。なかでも架橋ポリメタクリル酸メチルのような架橋アクリル粒子や、架橋スチレン粒子が好ましい。
【0099】
また、粒子径の異なる2種以上のマット粒子を併用して用いてもよい。
より大きな粒子径のマット粒子で防眩性を付与し、より小さな粒子径のマット粒子で別の光学特性を付与することが可能である。例えば、133ppi以上の高精細画像表示装置に反射防止フィルムを貼り付けた場合に、ギラツキと呼ばれる光学性能上の不具合のないことが要求される。これはフィルム表面に微妙に存在する凹凸により、画素が拡大又は縮小され、表示性能の均一性を失うことに由来するが、これは防眩性を付与するマット粒子よりも5〜50%粒子径の小さなマット粒子を併用することにより大きく改善することができる。
【0100】
さらに、上記マット粒子の粒子径分布としては、単分散であることが好ましく、全粒子の粒子径は同一に近ければ近いほどよい。例えば、平均粒子径よりも20%以上粒子径の異なる粒子を粗大粒子と規定した場合には、この粗大粒子の割合は全粒子数の1%以下であることが好ましく、より好ましくは0.1%以下であり、さらに好ましくは0.01%以下である。このような粒子径分布を持つマット粒子は、通常の合成反応後に、分級によって得られ、分級の回数を上げることやその程度を強くすることにより、より好ましい分布のマット粒子を得ることができる。
【0101】
(無機フィラー)
ハードコート層には、層の屈折率を高めるために、上記のマット粒子に加えて、チタン、ジルコニウム、アルミニウム、インジウム、亜鉛、錫、アンチモンのうちより選ばれる少なくとも1種の金属の酸化物からなり、平均粒径が0.5nm〜0.2μm、好ましくは1nm〜0.1μm、より好ましくは1nm〜0.06μmである無機フィラーが含有されることが好ましい。
【0102】
また反対に、マット粒子との屈折率差を大きくする目的で、高屈折率マット粒子を用いたハードコート層では、層の屈折率を低目に保つために、珪素の酸化物を用いることも好ましい。好ましい粒径は上記の無機フィラーと同じである。
【0103】
ハードコート層に用いられる無機フィラーの具体例としては、TiO2、ZrO2、Al2O3、In2O3、ZnO、SnO2、Sb2O3、ITO(インジウム−スズ酸化物)とS
iO2等が挙げられる。TiO2及びZrO2が高屈折率化の点で特に好ましい。
【0104】
これらの無機フィラーは、表面をシランカップリング処理又はチタンカップリング処理されることも好ましく、フィラー表面にバインダー種と反応できる官能基を有する表面処理剤が好ましく用いられる。
【0105】
無機フィラーの添加量は、ハードコート層の全質量の10〜90質量%であることが好ましく、より好ましくは20〜80質量%であり、特に好ましくは30〜75質量%である。
【0106】
なお、このようなフィラーは、粒径が光の波長よりも十分小さいために散乱が生じず、バインダーポリマーに該フィラーが分散した分散体は、光学的に均一な物質として振舞う。
【0107】
本発明の反射防止フィルムにおけるハードコート層には、機能に応じて界面活性剤・チクソトロピー剤・耐電防止剤などの添加剤を含有させることができる。ハードコート層には、界面活性剤として、前記一般式(1)又は(2)の構造を含む含フッ素ポリマーを含有する、本発明の塗布組成物を用いることが好ましい。
【0108】
本発明におけるハードコート層のバインダー及び無機フィラーの混合物の合計の屈折率は、1.4〜2.00であることが好ましく、より好ましくは1.45〜1.80である。屈折率を上記範囲とするには、バインダー及び無機フィラーの種類及び量の割合を選択すればよい。どのように選択するかは、予め実験的に知ることができる。
【0109】
ハードコート層の膜厚は1〜15μmが好ましく、1.2〜8μmがより好ましい。
【0110】
[高屈折率層]
本発明の反射防止フィルムにおける高屈折率層は、典型的には、少なくとも高屈折率の無機化合物微粒子及びマトリックスバインダー(以下、マトリックスと呼称することもある)を含有する硬化性組成物を高屈折率層用組成物として塗布、硬化してなる屈折率1.55〜2.40の硬化膜からなる。
【0111】
界面活性剤として、前記一般式(1)又は(2)の構造を含む含フッ素ポリマーを含有する、本発明の塗布組成物を用いることが好ましい。また上記高屈折率層には、界面活性剤として、前記一般式(1)又は(2)の構造を含む含フッ素ポリマーを含有する、本発明の塗布組成物を用いることが好ましい。
上記屈折率は1.65〜2.30が好ましく、更には1.80〜2.00が特に好ましい。本発明における高屈折率層の屈折率は1.55〜2.40であり、いわゆる高屈折率層又は中屈折率層といわれている層であるが、以下の本明細書では、この層を高屈折率層と総称して呼ぶことがある。
【0112】
(高屈折率粒子)
本発明の高屈折率層に含まれる高屈折率の無機微粒子は、屈折率が1.80〜2.80、一次粒子の平均粒径が3〜150nmであるものが好ましい。屈折率が上記範囲であれば、皮膜の屈折率を高める効果が十分で、粒子の着色もない。また、一次粒子の平均粒径が上記範囲であれば、皮膜のヘイズ値が低く、透明であり、かつ高い屈折率の皮膜が得られる。本発明で、より好ましい無機微粒子は屈折率が1.90〜2.80で、一次粒子の平均粒径が3〜100nmの粒子であり、更に好ましいのは屈折率が1.90〜2.80で、一次粒子の平均粒径が5〜80nmの粒子である。
【0113】
好ましい高屈折率無機微粒子の具体例は、Ti、Zr、Ta、In、Nd、Sn、Sb、Zn,LaW、Ce、Nb、V、Sm、Y等の酸化物又は複合酸化物、硫化物を主成分とする粒子が挙げられる。ここで、主成分とは粒子を構成する成分の中で最も含有量(質量%)が多い成分をさす。本発明で好ましいのはTi、Zr、Ta、In、Snから選ばれる少なくとも1種の金属元素を含む酸化物若しくは複合酸化物を主成分とする粒子である。
【0114】
本発明で使用される高屈折率無機微粒子には、粒子の中に種々の元素が含有されていても構わない。例えば、Li、Si、Al、B、Ba、Co、Fe、Hg、Ag、Pt、Au、Cr、Bi、P、Sなどが挙げられる。酸化錫、酸化インジウムにおいては粒子の導電性を高めるために、Sb、Nb、P、B、In、V、ハロゲンなどの元素を含有させることが好ましく、特に、酸化アンチモンを約5〜20質量%含有させたものが最も好ましい。
【0115】
特に好ましくは、Co、Zr、Alから選ばれる少なくとも1つの元素を含有する、二酸化チタンを主成分とする高屈折率無機微粒子(以降、「特定の酸化物」と称することもある)が挙げられる。特に、好ましい元素はCoである。Tiに対する、Co、Al、Zrの総含有量は、Tiに対し0.05〜30質量%であることが好ましく、より好ましくは0.1〜10質量%、さらに好ましくは0.2〜7質量%、特に好ましくは0.3〜5質量%、最も好ましくは0.5〜3質量%である。
【0116】
Co、Al、Zrは、二酸化チタンを主成分とする高屈折率無機微粒子の内部、及び/又は、表面に存在する。これらの原子は、該高屈折率無機微粒子の内部に存在することがより好ましく、内部と表面の両方に存在することが最も好ましい。これらの特定の金属元素は、酸化物として存在してもよい。
【0117】
また、他の好ましい高屈折率無機粒子として、チタン元素と、酸化物が屈折率1.95以上となる金属元素から選ばれる少なくとも1種の金属元素(以下、「Met」とも略称する)との複酸化物の粒子で、かつ該複酸化物はCoイオン、Zrイオン、及びAlイオンから選ばれる金属イオンの少なくとも1種がドープされてなる無機微粒子(「特定の複酸化物」と称することもある)が挙げられる。ここで、該酸化物の屈折率が1.95以上となる金属酸化物の金属元素としては、Ta、Zr、In、Nd、Sb,Sn、及びBiが好ましい。特には、Ta、Zr、Sn、Biが好ましい。複酸化物にドープされる金属イオンの含有量は、複酸化物を構成する全金属[Ti+Met]量に対して、25質量%を越えない範囲で含有することが屈折率維持の観点から好ましい。より好ましくは0.05〜10質量%、さらに好ましくは0.1〜5質量%、最も好ましくは0.3〜3質量%である。
【0118】
ドープされた金属イオンは、金属イオン、金属原子の何れの形態で存在してもよく、複酸化物の表面から内部まで適宜に存在する。表面と内部との両方に存在することが好ましい。
【0119】
本発明で用いられる高屈折率無機微粒子は、結晶構造又はアモルファス構造を有することが好ましい。結晶構造は、ルチル、ルチル/アナターゼの混晶、又はアナターゼが主成分であることが好ましく、特にルチル構造が主成分であることが好ましい。このことにより、本発明で用いられる特定の酸化物又は特定の複酸化物の高屈折率無機微粒子は、1.90〜2.80、好ましくは2.10〜2.80、更に好ましくは2.20〜2.80の屈折率を有することが可能になる。また、二酸化チタンが有する光触媒活性を抑えることができ、本発明の高屈折率層の耐候性を著しく改良することができる。
【0120】
上記した特定の金属元素又は金属イオンをドープする方法は、従来公知の方法を用いることができる。例えば、特開平5−330825号公報、同11−263620号公報、特表平11−512336号公報、欧州特許出願公開第0335773号明細書等に記載の方法、イオン注入法{例えば、権田俊一、石川順三、上条栄治編「イオンビーム応用技術」、(株)シ−エムシー、1989年刊行;青木康、「表面科学」、18巻(5)、p.262、1998年;安保正一等、「表面科学」、20巻(2)、p.60、1999等記載}等に従って行うことがきる。
【0121】
本発明に用いられる高屈折率無機微粒子は、表面処理してもよい。表面処理は、無機化合物及び/又は有機化合物を用いて該粒子表面の改質を実施し、無機粒子表面の濡れ性を調製し有機溶媒中での微粒子化、高屈折率層形成用組成物中での分散性や分散安定性を向上することができる。
【0122】
高屈折率無機微粒子表面に物理化学的な吸着をして粒子表面の改質をすることができる無機化合物としては、例えば珪素を含有する無機化合物(SiO2など)、アルミニウムを含有する無機化合物{Al2O3,Al(OH)3など}、コバルトを含有する無機化合物(CoO2,Co2O3,Co3O4など)、ジルコニウムを含有する無機化合物{ZrO2,Zr(OH)4など}、鉄を含有する無機化合物(Fe2O3など)などが挙げらる。
【0123】
また、表面処理に用いられる有機化合物の例には、従来公知の金属酸化物や無機顔料等の無機フィラー類の表面改質剤を用いることができる。例えば、「顔料分散安定化と表面処理技術・評価」第一章(技術情報協会、2001年刊行)等に記載されている。
【0124】
具体的には、高屈折率無機粒子表面と親和性を有する極性基を有する有機化合物が挙げられる。そのような有機化合物にはカップリング化合物と称される化合物が含まれる。無機粒子表面と親和性を有する極性基としては、カルボキシル基、ホスホノ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、環状酸無水物基、アミノ基等が挙げられ、分子中に少なくとも1種を含有する化合物が好ましい。例えば、長鎖脂肪族カルボン酸(例えばステアリン酸、ラウリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレイン酸等)、ポリオール化合物{例えばペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ECH(エピクロルヒドリン)変性グリセロールトリアクリレート等}、ホスホノ基含有化合物{例えばEO(エチレンオキシド)変性リン酸トリアクリレート等}、アルカノールアミン{エチレンジアミンEO付加体(5モル)等}が挙げれる。
【0125】
カップリング化合物としては、従来公知の有機金属化合物が挙げられ、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、アルミネートカップリング剤等が含まれる。中でも、シランカップリング剤が最も好ましい。具体的には、例えば特開2002−9908号公報、同2001−310423号公報の段落番号「0011」〜「0015」記載の化合物等が挙げられる。
これらの表面処理は、2種類以上を併用することもできる。
【0126】
本発明で使用される高屈折率の金属酸化物微粒子としては、これをコアとして無機化合物からなるシェルを形成するコア/シェル構造の微粒子も好ましい。シェルとしては、Al、Si、Zrから選ばれる少なくとも1種の元素からなる酸化物が好ましい。具体的には、例えば特開2001−166104号公報記載の内容が挙げられる。
【0127】
本発明で使用される高屈折率無機微粒子の形状は、特に限定されないが米粒状、球形状、立方体状、紡錘形状、不定形状が好ましい。該高屈折率無機微粒子は単独で用いてもよいが、2種類以上を併用して用いることもできる。
【0128】
(分散剤)
本発明で使用される高屈折率無機微粒子を、安定した所定の超微粒子として用いるため、分散剤を併用することが好ましい。分散剤としては、該無機微粒子表面と親和性を有する極性基を有する低分子化合物、又は高分子化合物であることが好ましい。
【0129】
上記極性基としては、ヒドロキシ基、メルカプト基、カルボキシル基、スルホ基、ホスホノ基、オキシホスホノ基、−P(=O)(R31)(OH)基、−O−P(=O)(R31)(OH)基、アミド基(−CONHR32、−SO2NHR32)、環状酸無水物含有基、アミノ基、四級アンモニウム基等が挙げられる。ここで、R31は炭素数1〜18の炭化水素基を表す(例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、オクタデシル基、クロロエチル基、メトキシエチル基、シアノエチル基、ベンジル基、メチルベンジル基、フェネチル基、シクロヘキシル基等)。R32は、水素原子又は前記R31と同一の内容を表す。
【0130】
上記極性基において、解離性プロトンを有する基はその塩であってもよい。また、上記アミノ基、四級アンモニウム基は、一級アミノ基、二級アミノ基又は三級アミノ基のいずれでもよく、三級アミノ基又は四級アンモニウム基であることがさらに好ましい。二級アミノ基、三級アミノ基又は四級アンモニウム基の窒素原子に結合する基は、炭素原子数が1〜12の炭化水素基(上記R31の基と同一の内容のもの等)であることが好ましい。また、三級アミノ基は、窒素原子を含有する環形成のアミノ基(例えば、ピペリジン環、モルホリン環、ピペラジン環、ピリジン環等)であってもよく、更に四級アンモニウム基はこれら環状アミノ基の四級アモニウム基であってもよい。特に炭素原子数が1〜6のアルキル基であることがさらに好ましい。
【0131】
本発明に係る分散剤の極性基としては、pKaが7以下のアニオン性基又はこれらの解離基の塩が好ましい。特に、カルボキシル基、スルホ基、ホスホノ基、オキシホスホノ基、又はこれらの解離基の塩が好ましい。
【0132】
分散剤は、さらに架橋性又は重合性官能基を含有することが好ましい。架橋性又は重合性官能基としては、ラジカル種による付加反応・重合反応が可能なエチレン性不飽和基{例えば(メタ)アクリロイル基、アリル基、スチリル基、ビニルオキシ基カルボニル基、ビニルオキシ基等}、カチオン重合性基(エポキシ基、チオエポキシ基、オキセタニル基、ビニルオキシ基、スピロオルトエステル基等)、重縮合反応性基(加水分解性シリル基等、N−メチロール基)等が挙げられ、好ましくはエチレン性不飽和基、エポキシ基、又は加水分解性シリル基である。
【0133】
具体的には、例えば、特開平11−153703号公報、米国特許第6210858号明細書、特開2002−2776069号公報、特開2001−310423号公報の段落番号[0013]〜[0015]記載の化合物等が挙げられる。
【0134】
また、本発明に用いられる分散剤は、高分子分散剤であることも好ましい。特に、アニオン性基、及び架橋性又は重合性官能基を含有する高分子分散剤が挙げられ、これらの官能基が上記した内容と同様のものが挙げられる。
【0135】
分散剤の高屈折率無機微粒子に対する使用量は、1〜100質量%の範囲であることが好ましく、3〜50質量%の範囲であることがより好ましく、5〜40質量%であることが最も好ましい。また、分散剤は2種類以上を併用してもよい。
【0136】
(分散媒体)
本発明において、高屈折率層用組成物における高屈折率無機微粒子の湿式分散に供する分散媒体としては、水及び有機溶媒から適宜選択して用いることができ、沸点が50℃以上の液体であることが好ましく、沸点が60〜180℃の範囲の有機溶媒であることがより好ましい。分散媒体は、無機微粒子及び分散剤を含む全分散組成物の5〜50質量%となる割合で用いることが好ましい。更に好ましくは10〜30質量%の割合である。この範囲において、分散が容易に進行し、得られる分散物は作業性良好な粘度の範囲となる。
【0137】
分散媒体としては、アルコール類、ケトン類、エステル類、アミド類、エーテル類、エーテルエステル類、炭化水素類、ハロゲン化炭化水素類等が挙げられる。具体的には、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ベンジルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、エチレングリコールモノアセテート等)、ケトン(例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン等)、エステル(例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、蟻酸エチル、蟻酸プロピル、蟻酸ブチル、乳酸エチル等)、脂肪族炭化水素(例えば、ヘキサン、シクロヘキサン等)、ハロゲン化炭化水素(例えば、メチルクロロホルム等)、芳香族炭化水素(例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等)、アミド(例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、n−メチルピロリドン等)、エーテル(例えば、ジオキサン、テトラハイドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル等)、エーテルアルコール(例えば、1−メトキシ−2−プロパノール、エチルセルソルブ、メチルカルビノール等)が挙げられる。単独での2種以上を混合して使用してもよい。好ましい分散媒体は、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ブタノールが挙げられる。また、ケトン溶媒(例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等)を主にした塗布溶媒系も好ましく用いられる。
【0138】
(無機微粒子の超微粒子化)
本発明の高屈折率層を形成するための硬化性塗布組成物は、平均粒子径100nm以下の無機超微粒子が分散した組成物とすることにより、該組成物の液の安定性が向上し、この硬化性塗布組成物から形成された硬化膜は、無機微粒子が硬化膜のマトリックス中で超微粒子状態で均一に分散されて存在し、光学特性が均一で透明な高屈折率膜が達成される。硬化膜のマトリックス中で存在する超微粒子の大きさは、平均粒径3〜100nmの範囲が好ましく、5〜100nmがより好ましい。特に10〜80nmが最も好ましい。
【0139】
更には、500nm以上の平均粒子径の大粒子が含まれないことが好ましく、300nm以上の平均粒子径の大粒子が含まれないことが特に好ましい。
【0140】
上記高屈折率無機物粒子を上記の範囲の粗大粒子を含まない超微粒子の大きさに分散するには、例えば、前記の分散剤と共に、平均粒径0.8mm未満のメディアを用いた湿式分散方法で分散する方法で達成される。
【0141】
湿式分散機としては、サンドグラインダーミル(例えば、ピン付きビーズミル等)、ダイノミル、高速インペラーミル、ペッブルミル、ローラーミル、アトライター、コロイドミル等の従来公知のものが挙げられる。特に本発明で用いられる高屈折率酸化物微粒子を超微粒子に分散するには、サンドグラインダーミル、ダイノミル、及び高速インペラーミルが好ましい。
【0142】
上記分散機と共に用いるメディアとしては、その平均粒径が0.8mm未満であり、平均粒径がこの範囲のメディアを用いることで上記の無機微粒子径が100nm以下となり、且つ粒子径の揃った超微粒子を得ることができる。メディアの平均粒径は、好ましくは0.5mm以下であり、より好ましくは0.05〜0.3mmである。
【0143】
また、湿式分散に用いられるメディアとしては、ビーズが好ましい。具体的には、ジルコニアビーズ、ガラスビーズ、セラミックビーズ、スチールビーズ等が挙げられ、分散中におけるビーズの破壊等を生じ難い等の耐久性と超微粒子化の上から0.05〜0.2mmのジルコニアビーズが特に好ましい。
【0144】
分散工程での分散温度は20〜60℃が好ましく、より好ましくは25〜45℃である。この範囲の温度で超微粒子に分散すると分散粒子の再凝集、沈殿等が生じない。これは、無機化合物粒子への分散剤の吸着が適切に行われ、常温下での分散剤の粒子からの脱着等による分散安定不良とならないためと考えられる。
【0145】
上記した内容の分散方法を用いることにより、透明性を損なわない屈折率均一性、膜の強度、隣接層との密着性等に優れた高屈折率膜が好ましく形成される。
また、上記湿式分散の工程の前に、予備分散処理を実施してもよい。予備分散処理に用いる分散機の例には、ボールミル、三本ロールミル、ニーダー及びエクストルーダーが含まれる。
【0146】
更には、分散物中の分散粒子の平均粒径及び粒子径の単分散性が上記した範囲を満足する上で、分散物中の粗大凝集物を除去するため、ビーズとの分離処理に際して精密濾過されるように濾材を配置することも好ましい。精密濾過するための濾材は、濾過粒子サイズ25μm以下が好ましい。精密濾過するための濾材のタイプは、精密濾過性能を有していれば特に限定されないが、例えばフィラメント型、フェルト型、メッシュ型が挙げられる。分散物を精密濾過するための濾材の材質は、精密濾過性能を有しており、且つ得られる塗布組成物に悪影響を及ばさなければ特に限定はされないが例えばステンレス、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン等が挙げられる。
【0147】
(高屈折率層のマトリックス)
高屈折率層は、高屈折率無機超微粒子とマトリックスを少なくとも含有してなる。
【0148】
本発明の好ましい態様によれば、高屈折率層のマトリックスは、(1)有機バインダー、又は(2)加水分解性官能基含有する有機金属化合物の加水分解物及びこの加水分解物の部分縮合物の少なくともいずれかを含有する高屈折率層形成用組成物を塗布後に、硬化して形成される。
【0149】
(1)有機バインダー
有機バインダーとしては、
(イ)従来公知の熱可塑性樹脂、
(ロ)従来公知の反応性硬化性樹脂と硬化剤との組み合わせ、又は
(ハ)バインダー前駆体(後述する硬化性の多官能モノマーや多官能オリゴマーなど)と重合開始剤との組み合わせ、
から形成されるバインダーが挙げられる。
【0150】
上記(イ)、(ロ)又は(ハ)のバインダー形成用成分と、高屈折率複合酸化物微粒子などの高屈折率無機微粒子と分散剤を含有する分散液から、高屈折率層形成用の塗布組成物が調製される。
【0151】
塗布組成物は、透明支持体上に塗布し、塗膜を形成した後、バインダー形成用成分に応じた方法で硬化され、高屈折率層が形成される。硬化方法は、バインダー成分の種類に応じて適宜選択され、例えば加熱及び光照射の少なくともいずれかの手段により、硬化性化合物(例えば、多官能モノマーや多官能オリゴマーなど)の架橋反応又は重合反応を生起
させる方法が挙げられる。中でも、上記(ハ)の組み合わせを用いて光照射することにより硬化性化合物を架橋反応又は重合反応させて硬化したバインダーを形成する方法が好ましい。
【0152】
更に、高屈折率層形成用の塗布組成物を塗布と同時に、又は塗布後に、高屈折率無機微粒子の分散液に含有される分散剤を架橋反応又は重合反応させることが好ましい。
【0153】
このようにして作製した硬化膜中のバインダーは、例えば、前記した分散剤とバインダーの前駆体である硬化性の多官能モノマーや多官能オリゴマーとが、架橋又は重合反応し、バインダーに分散剤のアニオン性基が取りこまれた形となる。さらに、硬化膜中のバインダーは、アニオン性基が無機微粒子の分散状態を維持する機能を有するので、架橋又は重合構造がバインダーに皮膜形成能を付与して、高屈折率無機微粒子を含有する硬化膜中の物理強度、耐薬品性、耐候性を改良することができる。
【0154】
前記(イ)の熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、セルロース樹脂、ポリエーテル樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩ビー酸ビ共重合体樹脂、ポリアクリル樹脂、ポリメタアクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ウレタン樹脂、シリコン樹脂、イミド樹脂等が挙げられる。
【0155】
また、前記(ロ)の反応硬化型樹脂、すなわち、熱硬化型樹脂及び電離放射線硬化型樹脂の少なくともいずれかを使用することが好ましい。
熱硬化型樹脂には、フェノール樹脂、尿素樹脂、ジアリルフタレート樹脂、メラミン樹脂、グアナミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アミノアルキッド樹脂、メラミン−尿素共縮合樹脂、珪素樹脂、ポリシロキサン樹脂等が挙げられる。
【0156】
電離放射線硬化型樹脂は、例えば、ラジカル重合性不飽和基{(メタ)アクリロイルオキシ基、ビニルオキシ基、スチリル基、ビニル基等}及びカチオン重合性基(エポキシ基、チオエポキシ基、ビニルオキシ基、オキセタニル基等)の少なくともいずれかの官能基を有する樹脂で、例えば、比較的低分子量のポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、(メタ)アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂等が挙げられる。
【0157】
これらの反応硬化型樹脂に、必要に応じて、架橋剤(エポキシ化合物、ポリイソシアネート化合物、ポリオール化合物、ポリアミン化合物、メラミン化合物等)、重合開始剤(アゾビス化合物、有機過酸化化合物、有機ハロゲン化合物、オニウム塩化合物、ケトン化合物等のUV光開始剤等)等の硬化剤、重合促進剤(有機金属化合物、酸化合物、塩基性化合物等)などの従来公知の化合物を加えて使用する。具体的には、例えば、山下普三、金子東助「架橋剤ハンドブック」(大成社、1981年刊)記載の化合物が挙げられる。
【0158】
以下、硬化したバインダーの好ましい形成方法である、前記(ハ)の組み合わせを用いて光照射により硬化性化合物を架橋又は重合反応させて硬化したバインダーを形成する方法について、主に説明する。
【0159】
光硬化性の多官能モノマーや多官能オリゴマーの官能基としては、ラジカル重合性又はカチオン重合性のいずれでもよい。
【0160】
(ラジカル重合性多官能モノマー又はオリゴマー)
ラジカル重合性官能基としては、(メタ)アクリロイル基、ビニルオキシ基、スチリル基、アリル基等のエチレン性不飽和基等が挙げられ、中でも、(メタ)アクリロイル基が
好ましい。
【0161】
分子内に2個以上のラジカル重合性基を含有する多官能モノマーを含有することが好ましい。
【0162】
ラジカル重合性多官能モノマーとしては、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも2個有する化合物から選ばれることが好ましい。好ましくは、分子中に2〜6個の末端エチレン性不飽和結合を有する化合物である。このような化合物群はポリマー材料分野において広く知られるものであり、本発明においては、これらを特に限定なく用いることができる。これらは、例えば、モノマー、プレポリマー、すなわち2量体、3量体及びオリゴマー、又はそれらの混合物並びにそれらの共重合体などの化学的形態をもつことができる。
【0163】
ラジカル重合性モノマーの例としては、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸等)や、そのエステル類、アミド類が挙げられ、好ましくは、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アルコール化合物とのエステル、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミド類が挙げられる。また、ヒドロキシル基、アミノ基、メルカプト基等の求核性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル類やアミド類と、単官能又は多官能イソシアネート類、エポキシ類との付加反応物、多官能のカルボン酸との脱水縮合反応物等も好適に使用される。また、イソシアナート基やエポキシ基等の親電子性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル又はアミド類と、単官能又は多官能のアルコール類、アミン類及びチオール類との反応物も好適である。また、別の例として、上記の不飽和カルボン酸の代わりに、不飽和ホスホン酸、スチレン等に置き換えた化合物群を使用することも可能である。
【0164】
脂肪族多価アルコール化合物としては、アルカンジオール、アルカントリオール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサントリオール、イノシットール、シクロヘキサンジメタノール、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、グリセリン、ジグリセリン等が挙げられる。これら脂肪族多価アルコール化合物と、不飽和カルボン酸との重合性エステル化合物(モノエステル又はポリエステル)、例えば、特開2001−139663号公報段落番号[0026]〜[0027]記載の化合物が挙げられる。
【0165】
その他の重合性エステルの例としては、例えば、ビニルメタクリレート、アリルメタクリレート、アリルアクリレート、特公昭46−27926号、特公昭51−47334号及び特開昭57−196231号の各公報に記載の脂肪族アルコール系エステル類や、特開平2−226149号公報等に記載の芳香族系骨格を有するもの、特開平1−165613号公報に記載のアミノ基を有するもの等も好適に用いられる。
【0166】
また、脂肪族多価アミン化合物と不飽和カルボン酸とから形成される重合性アミドの具体例としては、メチレンビス−(メタ)アクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス−(メタ)アクリルアミド、ジエチレントリアミントリス(メタ)アクリルアミド、キシリレンビス(メタ)アクリルアミド、特公昭54−21726号公報記載のシクロヘキシレン構造を有するもの等を挙げることができる。
【0167】
また、1分子中に2個以上の重合性ビニル基を含有するビニルウレタン化合物(特公昭48−41708号公報等)、ウレタンアクリレート類(特公平2−16765号公報等)、エチレンオキサイド系骨格を有するウレタン化合物(特公昭62−39418号公報等)、ポリエステルアクリレート類(特公昭52−30490号公報等)、更に、「日本接着協会誌」、第20巻、第7号、300〜308頁(1984年)に記載の光硬化性モノマー及びオリゴマーも使用することができる。
【0168】
これらラジカル重合性の多官能モノマーは、2種類以上を併用してもよい。
【0169】
(カチオン重合性化合物)
次に、高屈折率層のバインダーの形成に用いることができる、カチオン重合性基含有の化合物(以下、「カチオン重合性化合物」又は「カチオン重合性有機化合物」とも称する)について説明する。
【0170】
本発明に用いられるカチオン重合性化合物は、活性エネルギー線感受性カチオン重合開始剤の存在下、活性エネルギー線を照射したときに、重合反応及び架橋反応の少なくともいずれかを生ずる化合物が使用でき、代表例としては、エポキシ化合物、環状チオエーテル化合物、環状エーテル化合物、スピロオルトエステル化合物、ビニルエーテル化合物などを挙げることができる。本発明では前記したカチオン重合性有機化合物のうちの1種を用いても2種以上を用いてもよい。
【0171】
カチオン重合性基含有化合物としては、1分子中のカチオン重合性基の数は2〜10個が好ましく、特に好ましくは2〜5個である。該化合物の分子量は3000以下であり、好ましくは200〜2000の範囲、特に好ましくは400〜1500の範囲である。分子量が小さすぎると、皮膜形成過程での揮発が問題となり、大きすぎると、高屈折率層形成用組成物との相溶性が悪くなり好ましくない。
【0172】
上記エポキシ化合物としては、脂肪族エポキシ化合物及び芳香族エポキシ化合物が挙げられる。
【0173】
脂肪族エポキシ化合物としては、例えば、脂肪族多価アルコール又はそのアルキレンオキサイド付加物のポリグリシジルエーテル、脂肪族長鎖多塩基酸のポリグリシジルエステル、グリシジルアクリレートやグリシジルメタクリレートのホモポリマー、コポリマーなどを挙げることができる。さらに、前記のエポキシ化合物以外にも、例えば、脂肪族高級アルコールのモノグリシジルエーテル、高級脂肪酸のグリシジルエステル、エポキシ化大豆油、エポキシステアリン酸ブチルエポキシステアリン酸オクチル、エポキシ化アマニ油、エポキシ化ポリブタジエンなどを挙げることができる。また、脂環式エポキシ化合物としては、少なくとも1個の脂環族環を有する多価アルコールのポリグリシジルエーテル、又は不飽和脂環族環(例えば、シクロヘキセン、シクロペンテン、ジシクロオクテン、トリシクロデセン等)含有化合物を過酸化水素、過酸等の適当な酸化剤でエポキシ化して得られるシクロヘキセンオキサイド又はシクロペンテンオキサイド含有化合物などを挙げることができる。
【0174】
さらに、芳香族エポキシ化合物としては、例えば少なくとも1個の芳香核を有する1価又は多価フェノール或いはそのアルキレンオキサイド付加体のモノ又はポリグリシジルエーテルを挙げることができる。これらのエポキシ化合物として、例えば、特開平11−242101号公報中の段落番号[0084]〜[0086]記載の化合物、特開平10−158385号公報中の段落番号[0044]〜[0046]記載の化合物等が挙げられる。
【0175】
これらのエポキシ化合物のうち、速硬化性を考慮すると、芳香族エポキシド及び脂環式エポキシドが好ましく、特に脂環式エポキシドが好ましい。本発明では、上記エポキシ化合物の1種を単独で使用してもよいが、2種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0176】
環状チオエーテル化合物としては、上記のエポキシ環がチオエポキシ環となる化合物が挙げられる。
【0177】
環状エーテルとしてのオキセタニル基を含有する化合物としては、具体的には、例えば特開2000−239309号公報中の段落番号[0024]〜[0025]に記載の化合物等が挙げられる。これらの化合物は、エポキシ基含有化合物と併用することが好ましい。
【0178】
スピロオルソエステル化合物としては、例えば特表2000−506908号公報等記載の化合物を挙げることができる。
【0179】
ビニル炭化水素化合物としては、スチレン化合物、ビニル基置換脂環炭化水素化合物(ビニルシクロヘキサン、ビニルビシクロヘプテン等)、前記ラジカル重合成性モノマーで記載の化合物、プロペニル化合物{“Journal of Polymer Science:PartA:Polymer Chemistry”,32巻,p.2895(1994年)記載等}、アルコキシアレン化合物{“Journal of Polymer Science:PartA:Polymer Chemistry”,33巻,p.2493(1995年)記載等}、ビニル化合物{“Journal of Polymer Science:PartA:Polymer Chemistry”,34巻,p.1015(1996年)、特開2002−29162号公報等記載}、イソプロペニル化合物{“Journal of Polymer Science:PartA:Polymer Chemistry”,34巻,p.2051(1996年)記載等)等を挙げることができる。これらの化合物は2種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0180】
また、本発明に用いられる多官能性化合物は、上記のラジカル重合性基及びカチオン重合性基から選ばれる少なくとも各1種を少なくとも分子内に含有する化合物を用いることが好ましい。例えば、特開平8−277320号公報中の段落番号[0031]〜[0052]記載の化合物、特開2000−191737号公報中の段落番号[0015]記載の化合物等が挙げられる。本発明に供される化合物は、これらの限定されるものではない。
【0181】
上記したラジカル重合性化合物とカチオン重合性化合物とを、ラジカル重合性化合物:カチオン重合性化合物の質量比で、90:10〜20:80の割合で含有していることが好ましく、80:20〜30:70の割合で含有していることがより好ましい。
【0182】
{重合開始剤(L)}
次に、前記(ハ)の組み合わせにおいて、バインダー前駆体と組み合わせて用いられる重合開始剤について詳述する。
【0183】
重合開始剤としては、熱重合開始剤、光重合開始剤などが挙げられる。
本発明で用いられる重合開始剤(L)は、光照射及び加熱の少なくともいずれかの手段により、ラジカル若しくは酸を発生する化合物である。本発明において用いられる光重合開始剤(L)は、極大吸収波長が400nm以下であることが好ましい。このように吸収波長を紫外線領域にすることにより、取り扱いを白灯下で実施することができる。また、近赤外線領域に極大吸収波長を持つ化合物を用いることもできる。
【0184】
{ラジカルを発生する化合物(L1)}
先ず、ラジカルを発生する化合物(L1)について詳述する。
本発明において好適に用いられるラジカルを発生する化合物(L1)は、光及び/又は熱照射によりラジカルを発生し、重合性の不飽和基を有する化合物の重合を、開始、促進させる化合物を指す。
【0185】
公知の重合開始剤や結合解離エネルギーの小さな結合を有する化合物などを、適宜、選択して用いることができる。また、ラジカルを発生する化合物は、単独又は2種以上を併用して用いることができる。
【0186】
ラジカルを発生する化合物としては、例えば、従来公知の有機過酸化化合物、アゾ系重合開始剤等の熱ラジカル重合開始剤、アミン化合物(特公昭44−20189号公報記載)、有機ハロゲン化化合物、カルボニル化合物、メタロセン化合物、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、有機ホウ酸化合物、ジスルホン化合物等の光ラジカル重合開始剤が挙げられる。
【0187】
上記有機ハロゲン化化合物としては、具体的には、若林等の“Bull.Chem.Soc.Japan”42巻、p.2924(1969年)、米国特許第3,905,815号明細書、特開昭63−298339号公報、M.P.Huttの“Jurnal of Heterocyclic Chemistry”,1巻(No.3),(1970年)等に記載の化合物が挙げられ、特に、トリハロメチル基が置換したオキサゾール化合物及びs−トリアジン化合物が挙げられる。より好適には、少なくとも一つのモノ−、ジ−又はトリハロゲン置換メチル基がs−トリアジン環に結合したs−トリアジン誘導体が挙げられる。
【0188】
その他の有機ハロゲン化合物の例として、特開平5−27830号公報中の段落番号[0039]〜[0048]記載のケトン類、スルフィド類、スルホン類、窒素原子含有の複素環類等が挙げられる。
【0189】
上記カルボニル化合物としては、例えば、「最新 UV硬化技術」、p.60〜62{(株)技術情報協会刊、1991年}、特開平8−134404号公報の段落番号[0015]〜[0016]、同11−217518号公報の段落番号[0029]〜[0031]に記載の化合物等が挙げられ、アセトフェノン系、ヒドロキシアセトフェノン系、ベンゾフェノン系、チオキサン系、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン化合物、p−ジメチルアミノ安息香酸エチル、p−ジエチルアミノ安息香酸エチル等の安息香酸エステル誘導体、ベンジルジメチルケタール、アシルホスフィンオキシド等が挙げられる。
【0190】
上記有機過酸化化合物としては、例えば、特開2001−139663号公報の段落番号[0019]に記載の化合物等が挙げられる。
上記メタロセン化合物としては、特開平2−4705号公報、特開平5−83588号公報記載の種々のチタノセン化合物、特開平1−304453号公報、特開平1−152109号公報記載の鉄−アレーン錯体等が挙げられる。
【0191】
上記ヘキサアリールビイミダゾール化合物としては、例えば、特公平6−29285号公報、並びに米国特許第3,479,185号、同第4,311,783号及び同第4,622,286号等の各明細書記載の種々の化合物等が挙げられる。
【0192】
上記有機ホウ酸塩化合物としては、例えば、特許第2764769号、特開2002−116539号等の各公報、及び、Kunz,Martinらの“Rad.Tech'98.Proceeding”,April,p.19〜22,1998年,Chicago等に記載される有機ホウ酸塩化合物が挙げられる。例えば、前記特開2002−116539号公報の段落番号[0022]〜[0027]記載の化合物が挙げられる。その他の有機ホウ素化合物としては、特開平6−348011号公報、特開平7−128785号公報、特開平7−140589号公報、特開平7−306527号公報、特開平7−2
92014号公報等の有機ホウ素遷移金属配位錯体等が具体例として挙げられる。
【0193】
上記スルホン化合物としては、特開平5−239015号公報に記載の化合物等、上記ジスルホン化合物としては、特開昭61−166544号公報に記載の一般式(II)及び一般式(III)で示される化合物等が挙げられる。
【0194】
これらのラジカル発生化合物は、一種のみを添加しても、2種以上を併用してもよい。添加量としては、ラジカル重合性モノマーの全量に対し0.1〜30質量%、好ましくは0.5〜25質量%、特に好ましくは1〜20質量%で添加することができる。この範囲において、高屈折率層用組成物の経時安定性が問題なく高い重合性となる。
【0195】
{光酸発生剤(L2)}
次に、光重合開始剤(L)として用いることができる光酸発生剤(L2)について詳述する。
【0196】
酸発生剤(L2)としては、光カチオン重合の光開始剤、色素類の光消色剤、光変色剤、又はマイクロレジスト等に使用されている公知の酸発生剤等、公知の化合物及びそれらの混合物等が挙げられる。また、酸発生剤(L2)として、例えば、有機ハロゲン化化合物、ジスルホン化合物が挙げられる。有機ハロゲン化合物、ジスルホン化合物のこれらの具体例は、前記ラジカルを発生する化合物の記載と同様のものが挙げられる。
【0197】
オニウム化合物としては、ジアゾニウム塩、アンモニウム塩、イミニウム塩、ホスホニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、アルソニウム塩、セレノニウム塩等が挙げられ、例えば特開2002−29162号公報の段落番号[0058]〜[0059]に記載の化合物等が挙げられる。
【0198】
本発明において、特に好適に用いられる酸発生剤(L2)としては、オニウム塩が挙げられ、中でも、ジアゾニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、イミニウム塩が、光重合開始の光感度、化合物の素材安定性等の点から好ましい。
【0199】
本発明において、好適に用いることのできるオニウム塩の具体例としては、例えば、特開平9−268205号公報の段落番号[0035]に記載のアミル化されたスルホニウム塩、特開2000−71366号公報の段落番号[0010]〜[0011]に記載のジアリールヨードニウム塩又はトリアリールスルホニウム塩、特開2001−288205号公報の段落番号[0017]に記載のチオ安息香酸S−フェニルエステルのスルホニウム塩、特開2001−133696号公報の段落番号[0030]〜[0033]に記載のオニウム塩等が挙げられる。
【0200】
酸発生剤の他の例としては、特開2002−29162号公報の段落番号[0059]〜[0062]に記載の有機金属/有機ハロゲン化物、o−ニトロベンジル型保護基を有する光酸発生剤、光分解してスルホン酸を発生する化合物(イミノスルフォネート等)等の化合物が挙げられる。
【0201】
これらの酸発生剤は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの酸発生剤は、全カチオン重合性モノマーの全質量100質量部に対し0.1〜20質量%、好ましくは0.5〜15質量%、特に好ましくは1〜10質量%の割合で添加することができる。添加量が上記範囲において、高屈折率用組成物の安定性、重合反応性等から好ましい。
【0202】
本発明に用いられる高屈折率用組成物は、ラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化
合物の合計質量に対して、ラジカル重合開始剤を0.5〜10質量%及びカチオン重合開始剤を1〜10質量%の割合で含有していることが好ましい。より好ましくは、ラジカル重合開始剤を1〜5質量%、及びカチオン重合開始剤を2〜6質量%の割合で含有する。
【0203】
本発明に用いられる高屈折率用組成物には、紫外線照射により重合反応を行なう場合には、従来公知の紫外線分光増感剤、化学増感剤を併用してもよい。例えばミヒラーズケトン、アミノ酸(グリシンなど)、有機アミン(ブチルアミン、ジブチルアミンなど)等が挙げられる。
【0204】
また、近赤外線照射により重合反応を行う場合には、近赤外線分光増感剤を併用することが好ましい。併用する近赤外線分光増感剤は、700nm以上の波長域の少なくとも一部に吸収帯を有する光吸収物質であればよく、分子吸光係数が10000以上の値を有する化合物が好ましい。更には、750〜1400nmの領域に吸収を有し、かつ分子吸光係数が20000以上の値が好ましい。また、420nm〜700nmの可視光波長域に吸収の谷があり、光学的に透明であることがより好ましい。近赤外線分光増感剤は、近赤外線吸収顔料及び近赤外線吸収染料として知られる種々の顔料及び染料を用いることができる。その中でも、従来公知の近赤外線吸収剤を用いることが好ましい。
【0205】
市販の染料及び、文献{例えば、「化学工業」1986年5月号p.45〜51の「近赤外吸収色素」、「90年代機能性色素の開発と市場動向」第2章2.3項(1990年)、(株)シーエムシー発行、「特殊機能色素」(池森・柱谷編集、1986年、(株)シーエムシー発行)、J.Fabianの“Chem.Rev.”,92巻、p.1197〜1226(1992年)、日本感光色素研究所が1995年に発行したカタログ、ExcitonInc.が1989年に発行したレーザー色素カタログ又は特許}に記載されている公知の染料が利用できる。
【0206】
(2)加水分解可能な官能基を含有する有機金属化合物
本発明に用いることができる高屈折率層のマトリックスとして、加水分解可能な官能基を含有する有機金属化合物を用いてゾル/ゲル反応により塗布膜形成後に硬化された膜を形成することも好ましい。有機金属化合物としては、Si、Ti、Zr、Al等からなる化合物が挙げられる。
【0207】
加水分解可能な官能基な基としては、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、ハロゲン原子、水酸基が挙げられ、特に、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等のアルコキシ基が好ましい。
【0208】
好ましい有機金属化合物は、下記一般式(4)で表される有機珪素化合物及びその部分加水分解物(部分縮合物)である。なお、一般式(4)で表される有機珪素化合物は、容易に加水分解し、引き続いて脱水縮合反応が生じることはよく知られた事実である。
一般式(4):(R40)s1−Si(Y41)4-s1
【0209】
一般式(4)中、R40は、置換又は無置換の炭素数1〜30脂肪族基又は炭素数6〜14アリール基を表す。Y41は、ハロゲン原子(塩素原子、臭素原子等)、OH基、OR41基、OCOR41基を表す。ここで、R41は置換又は無置換のアルキル基を表す。s1は0〜3の整数を表し、好ましくは0、1又は2である。但し、s1が0の場合は、Y41はOR41基又はOCOR41基を表す。
【0210】
一般式(4)において、R40の脂肪族基としては、好ましくは炭素数1〜18(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、デシル、ドデシル、ヘキサデシル、オクタデシル、ベンジル基、フェネチル基、シクロヘキシル基、シク
ロヘキシルメチル、ヘキセニル基、デセニル基、ドデセニル基等)が挙げられる。より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは1〜8のものである。
【0211】
R40のアリール基としては、フェニル、ナフチル、アントラニル等が挙げられ、好ましくはフェニル基である。
【0212】
置換基としては特に制限はないが、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素等)、水酸基、メルカプト基、カルボキシル基、エポキシ基、アルキル基(メチル、エチル、i−プロピル、プロピル、t−ブチル等)、アリール基(フェニル、ナフチル等)、芳香族ヘテロ環基(フリル、ピラゾリル、ピリジル等)、アルコキシ基(メトキシ、エトキシ、i−プロポキシ、ヘキシルオキシ等)、アリールオキシ(フェノキシ等)、アルキルチオ基(メチルチオ、エチルチオ等)、アリールチオ基(フェニルチオ等)、アルケニル基(ビニル、1−プロペニル等)、アルコキシシリル基(トリメトキシシリル、トリエトキシシリル等)、アシルオキシ基{アセトキシ、(メタ)アクリロイル等}、アルコキシカルボニル基(メトキシカルボニル、エトキシカルボニル等)、アリールオキシカルボニル基(フェノキシカルボニル等)、カルバモイル基(カルバモイル、N−メチルカルバモイル、N,N−ジメチルカルバモイル、N−メチル−N−オクチルカルバモイル等)、アシルアミノ基(アセチルアミノ、ベンゾイルアミノ、アクリルアミノ、メタクリルアミノ等)などが好ましい。
【0213】
これらの置換基うちで、更に好ましくは水酸基、メルカプト基、カルボキシル基、エポキシ基、アルキル基、アルコキシシリル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基であり、特に好ましくはエポキシ基、重合性のアシルオキシ基((メタ)アクリロイル)、重合性のアシルアミノ基(アクリルアミノ、メタクリルアミノ)である。またこれら置換基は更に置換されていてもよい。
【0214】
R41は置換又は無置換のアルキルを表す。アルキル基中の置換基の説明はR40と同じである。
【0215】
一般式(4)の化合物の含有量は、高屈折率層の全固形分の10〜80質量%が好ましく、より好ましくは20〜70質量%、特に好ましくは30〜50質量%である。
【0216】
一般式(4)の化合物の具体例としては、例えば特開2001−166104号公報段落番号[0054]〜[0056]記載の化合物が挙げられる。
【0217】
高屈折率層において、有機バインダーは、シラノール基を有することが好ましい。バインダーがシラノール基を有することで、高屈折率層の物理強度、耐薬品性、耐候性がさらに改良される。
【0218】
シラノール基は、例えば、高屈折率層形成用の塗布組成物を構成するバインダー形成成分として、バインダー前駆体(硬化性の多官能モノマーや多官能オリゴマーなど)や重合開始剤、高屈折率無機微粒子の分散液に含有される分散剤と共に、架橋又は重合性官能基を有する一般式(4)で表される有機珪素化合物を該塗布組成物に配合し、この塗布組成物を透明支持体上に塗布して、上記の分散剤、多官能モノマーや多官能オリゴマー、一般式(4)で表される有機珪素化合物を架橋反応又は重合反応させることにより、バインダーに導入することができる。
【0219】
上記の有機金属化合物を硬化させるための加水分解・縮合反応は、触媒存在下で行われることが好ましい。触媒としては、塩酸、硫酸、硝酸などの無機酸類、蓚酸、酢酸、ギ酸、トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸、トルエンスルホン酸などの有機酸類、水酸化ナ
トリウム、水酸化カリウム、アンモニアなどの無機塩基類、トリエチルアミン、ピリジンなどの有機塩基類、トリイソプロポキシアルミニウム、テトラブトキシジルコニウム、テトラブトキシチタネートなどの金属アルコキシド類、β−ジケトン類又はβ−ケトエステル類の金属キレート化合物類等が挙げられる。具体的には、例えば特開2000−275403号公報中の段落番号[0071]〜[0083]記載の化合物等が挙げられる。
【0220】
これらの触媒化合物の組成物中での割合は、有機金属化合物に対し、0.01〜50質量%、好ましくは0.1〜50質量%、さらに好ましくは0.5〜10質量%である。反応条件は有機金属化合物の反応性により適宜調節されることが好ましい。
【0221】
高屈折率層においてマトリックスは、特定の極性基を有することも好ましい。
特定の極性基としては、アニオン性基、アミノ基、及び四級アンモニウム基が挙げられる。アニオン性基、アミノ基及び四級アンモニウム基の具体例としては、前記分散剤について述べたものと同様のものが挙げられる。
【0222】
特定の極性基を有する高屈折率層のマトリックスは、例えば、高屈折率層形成用の塗布組成物に、高屈折率無機微粒子と分散剤を含む分散液を配合し、硬化膜形成成分として、特定の極性基を有するバインダー前駆体(特定の極性基を有する硬化性の多官能モノマーや多官能オリゴマーなど)と重合開始剤の組み合わせ及び特定の極性基を有し、且つ架橋又は重合性官能基を有する一般式(4)で表される有機珪素化合物の少なくともいずれかを配合し、さらに所望により特定の極性基と架橋又は重合性官能基とを有する単官能性モノマーを配合し、該塗布組成物を透明支持体上に塗布して、上記の分散剤、単官能性モノマー、多官能モノマー、多官能オリゴマー及び一般式(4)で表される有機珪素化合物の少なくともいずれかを架橋又は重合反応させることにより得られる。
【0223】
特定の極性基を有する単官能性モノマーは、塗布組成物の中で無機微粒子の分散助剤として機能する。さらに、塗布後、分散剤、多官能モノマーや多官能オリオリゴマーと架橋反応、又は、重合反応させてバインダーとすることで高屈折率層における無機微粒子の良好な均一な分散性を維持し、物理強度、耐薬品性、耐候性に優れた高屈折率層を作製することができる。
【0224】
アミノ基又は四級アンモニウム基を有する単官能性モノマーの分散剤に対する使用量は、0.5〜50質量%であることが好ましく、さらに好ましくは1〜30質量%である。高屈折率層の塗布と同時又は塗布後に、架橋又は重合反応によってバインダーを形成すれば、高屈折率層の塗布前に単官能性モノマーを有効に機能させることができる。
【0225】
また、本発明に用いられる高屈折率層のマトリックスとして、前記した有機バインダーの(イ)に相当し、従来公知の架橋又は重合性官能基を含有する有機ポリマーから硬化・形成されたものが挙げられる。高屈折率層形成後のポリマーが、さらに架橋又は重合している構造を有することが好ましい。ポリマーの例には、ポリオレフィン(飽和炭化水素から成る)、ポリエーテル、ポリウレア、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミン、ポリアミド及びメラミン樹脂が含まれる。なかでも、ポリオレフィン、ポリエーテル及びポリウレアが好ましく、ポリオレフィン及びポリエーテルがさらに好ましい。硬化前の有機ポリマーとしての質量平均分子量は1×103〜1×106が好ましく、より好ましくは3×103〜1×105である。
【0226】
硬化前の有機ポリマーは、前記の内容と同様の特定の極性基を有する繰り返し単位と、架橋又は重合構造を有する繰り返し単位とを有する共重合体であることが好ましい。ポリマー中のアニオン性基を有する繰り返し単位の割合は、全繰り返し単位中の0.5〜99質量%であることが好ましく3〜95質量%であることがさらに好ましく、6〜90質量
%であることが最も好ましい。繰り返し単位は、二つ以上の同じでも異なってもよいアニオン性基を有していてもよい。
【0227】
シラノール基を有する繰り返し単位を含む場合、その割合は、2〜98モル%であることが好ましく、4〜96モル%であることがさらに好ましく、6〜94モル%であることが最も好ましい。
【0228】
アミノ基又は四級アンモニウム基を有する繰り返し単位を含む場合、その割合は、0.1〜50質量%であることが好ましく、更には0.5〜30質量%が好ましい。
【0229】
なお、シラノール基、アミノ基、及び四級アンモニウム基は、アニオン性基を有する繰り返し単位又は、架橋もしくは重合構造を有する繰り返し単位に含まれていても、同様の効果が得られる。
【0230】
ポリマー中の架橋又は重合構造を有する繰り返し単位の割合は、1〜90質量%であることが好ましく、5〜80質量%であることがさらに好ましく、8〜60質量%であることが最も好ましい。
【0231】
バインダーが架橋又は重合してなるマトリックスは、高屈折率層形成用の塗布組成物を透明支持体上に塗布して、塗布と同時又は塗布後に、架橋又は重合反応によって形成することが好ましい。
【0232】
本発明の高屈折率層は、更に用途・目的によって適宜他の化合物を添加することができる。例えば、高屈折率層の上に低屈折率層を有する場合、高屈折率層の屈折率は透明支持体の屈折率より高いことが好ましく、高屈折率層に、芳香環、フッ素以外のハロゲン化元素(例えば、Br,I,Cl等)、硫黄、窒素、リン等の原子を含有すると有機化合物の屈折率が高くなることから、これらを含有する硬化性化合物などの架橋又は重合反応で得られるバインダーも好ましく用いることができる。
【0233】
(高屈折率層のその他の添加剤)
本発明の高屈折率層は、更に用途・目的によって適宜他の化合物を添加することができる。例えば、高屈折率層の屈折率は透明支持体の屈折率より高いことが好ましく、高屈折率層に、芳香環、フッ素以外のハロゲン化元素(例えば、Br,I,Cl等)、硫黄、窒素、リン等の原子を含む硬化性化合物などの架橋又は重合反応で得られるバインダーも好ましく用いることができる。
【0234】
高屈折率層には、前記の成分(無機微粒子、重合開始剤、増感剤など)以外に、樹脂、帯電防止剤、カップリング剤、増粘剤、着色防止剤、着色剤(顔料、染料)、消泡剤、難燃剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、接着付与剤、重合禁止剤、酸化防止剤、表面改質剤、導電性の金属微粒子等を添加することもできる。膜厚は30〜500nmが好ましく、更に好ましくは、50〜300nmの膜厚である。
【0235】
[中屈折率層]
本発明の反射防止フィルムは、高屈折率層が異なる屈折率からなる2層の積層構成であることが好ましい。すなわち、上記の方法で組成物を塗設して形成された低屈折率層が、それよりも高い屈折率を有する高屈折率層の上に形成され、高屈折率層に隣接し、低屈折率層の反対側に支持体の屈折率と高屈折率層の屈折率の中間の屈折率を有する中屈折率層が形成された3層積層構造が好ましい。上記したように、各屈折率層の屈折率は相対的なものである。
【0236】
本発明の中屈折率層を構成する材料は、従来公知の材料の何れでもよいが、上記高屈折率層と同様のものが好ましい。屈折率は無機微粒子の種類、使用量で容易に調整され、上記高屈折率層に記載の内容と同様にして、膜厚30〜500nmの薄層を形成する。更に好ましくは、50〜300nmの膜厚である。
【0237】
[低屈折率層]
次に、本発明の反射防止フィルムにおける低屈折率層について以下に説明する。
【0238】
本発明における低屈折率層は、バインダー及び無機微粒子を含有する塗布液を硬化することにより形成される。
【0239】
本発明の反射防止フィルムの低屈折率層の屈折率は、1.20〜1.49であり、好ましくは1.30〜1.44の範囲にある。
【0240】
(中空シリカ粒子)
本発明における低屈折率層は、その屈折率を低下させるために、中空構造を持つ無機微粒子を含んでもよい。該中空無機微粒子は中空構造のシリカであることが好ましい。中空のシリカ微粒子は屈折率が1.17〜1.40が好ましく、更に好ましくは1.17〜1.35、最もに好ましくは1.17〜1.30である。ここでの屈折率は粒子全体として屈折率を表し、中空シリカ粒子を形成している外殻のシリカのみの屈折率を表すものではない。この時、粒子内の空腔の半径をri、粒子外殻の半径をroとすると、空隙率xは下記数式(1)から算出される。中空シリカ粒子の空隙率xは、好ましくは10〜60%、さらに好ましくは20〜60%、最も好ましくは30〜60%である。
数式(1):x=(4πri3/3)/(4πro3/3)×100
【0241】
中空のシリカ粒子をより低屈折率に、より空隙率を大きくしようとすると、外殻の厚みが薄くなり、粒子の強度としては弱くなるため、耐擦傷性の観点から1.17以上の低屈折率の粒子を用いることが好ましい。
【0242】
なお、これら中空シリカ粒子の屈折率はアッベ屈折率計{アタゴ(株)製}にて測定を行った。
【0243】
また中空シリカの製造方法は、例えば特開2001−233611号公報や特開2002−79616号公報に記載されている。
【0244】
中空シリカの配合量は、1〜100mg/m2が好ましく、より好ましくは5〜80mg/m2、更に好ましくは10〜60mg/m2である。配合量が上記範囲であることにより、耐擦傷性に優れ、低屈折率層表面に微細な凹凸が減少し、黒の締まりなどの外観や積分球反射率が良化する。
【0245】
中空シリカの平均粒径は、低屈折率層の厚みの30%以上150%以下が好ましく、より好ましくは35%以上80%以下、更に好ましくは40%以上60%以下である。即ち、低屈折率層の厚みが100nmであれば、中空シリカの粒径は30nm以上150nm以下が好ましく、より好ましくは35nm以上80nm以下、更に好ましくは、40nm以上60nm以下である。シリカ微粒子の粒径が上記範囲であることにより屈折率が低下し、低屈折率層表面に微細な凹凸が減少し、黒の締まりなどの外観、積分球反射率が良化する。
【0246】
シリカ微粒子は、結晶質でも、アモルファスのいずれでもよい。また単分散粒子が好ましい。形状は、球径が最も好ましいが、不定形であっても問題ない。
ここで、中空シリカの平均粒径は電子顕微鏡写真から求めることができる。
【0247】
本発明においては、中空シリカと併用して空腔のないシリカ粒子を用いることができる。空腔のないシリカの好ましい粒子サイズは、30nm以上150nm以下、更に好ましくは35nm以上80nm以下、最も好ましくは40nm以上60nm以下である。
【0248】
また、平均粒径が低屈折率層の厚みの25%未満であるシリカ微粒子(「小サイズ粒径のシリカ微粒子」と称す)の少なくとも1種を上記の粒径のシリカ微粒子(「大サイズ粒径のシリカ微粒子」と称す)と併用することが好ましい。
【0249】
小サイズ粒径のシリカ微粒子は、大サイズ粒径のシリカ微粒子同士の隙間に存在することができるため、大サイズ粒径のシリカ微粒子の保持剤として寄与することができる。
【0250】
小サイズ粒径のシリカ微粒子の平均粒径は、1nm以上20nm以下が好ましく、5nm以上15nm以下が更に好ましく、10nm以上15nm以下が特に好ましい。このようなシリカ微粒子を用いると、原料コスト及び保持剤効果の点で好ましい。
【0251】
(表面処理)
シリカ微粒子や中空シリカ微粒子は、分散液中又は塗布液中で、分散安定化を図るために、あるいはバインダー成分との親和性、結合性を高めるために、プラズマ放電処理やコロナ放電処理のような物理的表面処理、界面活性剤やカップリング剤等による化学的表面処理がなされていてもよい。カップリング剤の使用が特に好ましい。カップリング剤としては、アルコキシメタル化合物(例えば、チタンカップリング剤、シランカップリング剤)が好ましく用いられる。なかでも、アクリロイル基又はメタクリロイル基を有するシランカップリング剤による処理が特に有効である。
【0252】
上記カップリング剤は、低屈折率層の無機フィラーの表面処理剤として、該層塗布液調製以前に予め表面処理を施すために用いられるが、該層塗布液調製時にさらに添加剤として添加して該層に含有させることが好ましい。
【0253】
シリカ微粒子は、表面処理前に、媒体中に予め分散されていることが、表面処理の負荷軽減のために好ましい。
【0254】
(低屈折率層用バインダー)
本発明の低屈折率層を形成するバインダーは、前述のハードコート層に用いるバインダーと同様のものが使用できるが、更に低屈折率バインダーとして、含フッ素系ポリマーを用いることもできる。フッ素系ポリマーとしては動摩擦係数0.03〜0.15、水に対する接触角90〜120°の熱又は電離放射線により架橋する含フッ素系ポリマーが好ましい。
【0255】
低屈折率層に用いられる含フッ素系ポリマーとしては、ペルフルオロアルキル基含有シラン化合物{例えば(ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシル)トリエトキシシラン}の加水分解、脱水縮合物の他、含フッ素モノマー単位と架橋反応性付与のための構成単位を構成成分とする含フッ素系ポリマーが挙げられる。
【0256】
含フッ素モノマー単位の具体例としては、例えばフルオロオレフィン類(例えばフルオロエチレン、ビニリデンフルオリド、テトラフルオロエチレン、ペルフルオロオクチルエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、ペルフルオロ−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール等)、(メタ)アクリル酸の部分又は完全フッ素化アルキルエステル誘導体類[例えば「ビスコート6FM」{大阪有機化学(株)製}や、“M−2020”{ダイキン工
業(株)製}等]、完全又は部分フッ素化ビニルエーテル類等が挙げられるが、好ましくはペルフルオロオレフィン類であり、屈折率、溶解性、透明性、入手性等の観点から特に好ましくはヘキサフルオロプロピレンである。
【0257】
架橋反応性付与のための構成単位としては、グリシジル(メタ)アクリレート、グリシジルビニルエーテルのように、分子内に予め自己架橋性官能基を有するモノマーの重合によって得られる構成単位、カルボキシル基やヒドロキシ基、アミノ基、スルホ基等を有するモノマー{例えば(メタ)アクリル酸、メチロール(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、アリルアクリレート、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、マレイン酸、クロトン酸等}の重合によって得られる構成単位、これらの構成単位に高分子反応によって(メタ)アクリルロイル基等の架橋反応性基を導入した構成単位(例えばヒドロキシ基に対してアクリル酸クロリドを作用させる等の手法で導入できる)が挙げられる。
【0258】
また上記含フッ素モノマー単位、架橋反応性付与のための構成単位以外に溶媒への溶解性、皮膜の透明性等の観点から適宜フッ素原子を含有しないモノマーを共重合することもできる。併用可能なモノマー単位には特に限定はなく、例えばオレフィン類(エチレン、プロピレン、イソプレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン等)、アクリル酸エステル類(アクリル酸メチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル)、メタクリル酸エステル類(メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、エチレングリコールジメタクリレート等)、スチレン誘導体(スチレン、ジビニルベンゼン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等)、ビニルエーテル類(メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル等)、ビニルエステル類(酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、桂皮酸ビニル等)、アクリルアミド類(N−t−ブチルアクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリルアミド等)、メタクリルアミド類、アクリロニトリル誘導体等を挙げることができる。
【0259】
上記のポリマーに対しては特開平10−25388号及び特開平10−147739号各公報に記載のごとく適宜硬化剤を併用してもよい。
【0260】
本発明で特に有用な含フッ素系ポリマーは、ペルフルオロオレフィンとビニルエーテル類又はビニルエステル類のランダム共重合体である。特に単独で架橋反応可能な基{(メタ)アクリロイル基等のラジカル反応性基、エポキシ基、オキセタニル基等の開環重合性基等}を有していることが好ましい。これらの架橋反応性基含有重合単位はポリマーの全重合単位の5〜70モル%を占めていることが好ましく、特に好ましくは30〜60モル%を占めていることである。
【0261】
本発明に用いられる含フッ素系ポリマーの好ましい形態として、下記一般式(5)のものが挙げられる。
一般式(5):
【0262】
【化15】
【0263】
一般式(5)中、L51は炭素数1〜10の連結基を表し、より好ましくは炭素数1〜6の連結基であり、特に好ましくは2〜4の連結基であり、直鎖であっても分岐構造を有していてもよく、環構造を有していてもよく、酸素、窒素、硫黄から選ばれるヘテロ原子を有していてもよい。
【0264】
好ましい例としては、*−(CH2)2−O−**、*−(CH2)2−NH−**、*−(CH2)4−O−**、*−(CH2)6−O−**、*−(CH2)2−O−(CH2)2−
O−**、*−CONH−(CH2)3−O−**、*−CH2CH(OH)CH2−O−**、*−CH2CH2OCONH(CH2)3−O−**{*はポリマー主鎖側の連結部位を表し、**は(メタ)アクリロイル基側の連結部位を表す}等が挙げられる。bは0又は1を表わす。
【0265】
一般式(5)中、X51は水素原子又はメチル基を表す。硬化反応性の観点から、より好ましくは水素原子である。
【0266】
一般式(5)中、B1は任意のビニルモノマーから導かれる繰返し単位を表わし、ヘキサフルオロプロピレンと共重合可能な単量体の構成成分であれば特に制限はなく、基材への密着性、ポリマーのTg(皮膜硬度に寄与する)、溶媒への溶解性、透明性、滑り性、防塵・防汚性等種々の観点から適宜選択することができ、目的に応じて単一又は複数のビニルモノマーによって構成されていてもよい。
【0267】
好ましい例としては、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、シクロへキシルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、グリシジルビニルエーテル、アリルビニルエーテル等のビニルエーテル類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル等のビニルエステル類、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジルメタアクリレート、アリル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン等の(メタ)アクリレート類、スチレン、p−ヒドロキシメチルスチレン等のスチレン誘導体、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸及びその誘導体等を挙げることができるが、より好ましくはビニルエーテル誘導体、ビニルエステル誘導体であり、特に好ましくはビニルエーテル誘導体である。
【0268】
x、y、zはそれぞれの構成成分のモル%を表わし、30≦x≦60、5≦y≦70、0≦z≦65を満たす値を表す。好ましくは、35≦x≦55、30≦y≦60、0≦z≦20の場合であり、特に好ましくは40≦x≦55、40≦y≦55、0≦z≦10の場合である。
【0269】
上記含フッ素系ポリマーの特に好ましい形態として、一般式(5−1)が挙げられる。
一般式(5−1):
【0270】
【化16】
【0271】
一般式(5−1)において、X51、x、yは一般式(5)と同じ意味を表し、好ましい範囲も同じである。cは2≦c≦10の整数を表し、2≦c≦6であることが好ましく、2≦c≦4であることが特に好ましい。B2は任意のビニルモノマーから導かれる繰返し単位を表わし、単一組成であっても複数の組成によって構成されていてもよい。例としては、前記一般式(5)におけるB1の例として説明したものが当てはまる。z1及びz2はそれぞれの繰返し単位のモル%を表わし、0≦z1≦65、0≦z2≦65を満たす値を表す。それぞれ0≦z1≦30、0≦z2≦10であることが好ましく、0≦z1≦10、0≦z2≦5であることが特に好ましい。
【0272】
一般式(5)又は(5−1)で表される含フッ素系ポリマーは、例えば、ヘキサフルオロプロピレン成分とヒドロキシアルキルビニルエーテル成分とを含んでなる共重合体に前記のいずれかの手法により(メタ)アクリロイル基を導入することにより合成できる。
【0273】
(含フッ素系ポリマーの好ましい例)
以下に有用な含フッ素系ポリマーの好ましい例を示すが、これらに限定されるものではない。
【0274】
【化17】
【0275】
【表1】
【0276】
【化18】
【0277】
【表2】
【0278】
【化19】
【0279】
【表3】
【0280】
【化20】
【0281】
【表4】
【0282】
【化21】
【0283】
【表5】
【0284】
【化22】
【0285】
【表6】
【0286】
上記の含フッ素系ポリマーの重合は、光酸発生剤又は熱酸発生剤の存在下、電離放射線の照射又は加熱により行うことができる。
【0287】
本発明の反射防止フィルムにおける低屈折率層の、反応性架橋基を有するバインダーとしては、反応性架橋基として(メタ)アクリロイル基、エポキシ基、イソシアナート基のいずれかを有するバインダーであることが好ましく、反応性架橋基として(メタ)アクリロイル基を有するバインダーであることがより好ましい。
【0288】
上記含フッ素系ポリマーの合成は、種々の重合方法、例えば溶液重合、沈澱重合、懸濁重合、沈殿重合、塊状重合、乳化重合によって水酸基含有重合体等の前駆体を合成した後、前記高分子反応によって(メタ)アクリロイル基を導入することにより行なうことができる。重合反応は回分式、半連続式、連続式等の公知の操作で行うことができる。
【0289】
重合の開始方法は、ラジカル開始剤を用いる方法、光又は放射線を照射する方法等がある。これらの重合方法、重合の開始方法は、例えば鶴田禎二「高分子合成方法」改定版(日刊工業新聞社刊、1971年)や大津隆行、木下雅悦共著「高分子合成の実験法」化学同人、昭和47年刊、124〜154頁に記載されている。
【0290】
上記重合方法のうち、特にラジカル開始剤を用いた溶液重合法が好ましい。溶液重合法で用いられる溶媒は、例えば酢酸エチル、酢酸ブチル、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ベンゼン、トルエン、アセトニトリル、塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタン、メタノール、エタノール、1
−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノールのような種々の有機溶媒の単独あるいは2種以上の混合物でもよいし、水との混合溶媒としてもよい。
【0291】
重合温度は、生成する含フッ素系ポリマーの分子量、開始剤の種類などと関連して設定する必要があり、0℃以下から100℃以上まで可能であるが、50〜100℃の範囲で重合を行うことが好ましい。
【0292】
反応圧力は適宜選定可能であるが、通常は1〜100kg/cm2、特に1〜30kg/cm2程度が望ましい。反応時間は、5〜30時間程度である。
【0293】
得られた含フッ素系ポリマーの再沈殿溶媒としては、イソプロパノール、ヘキサン、メタノール等が好ましい。
【0294】
(その他の添加剤)
本発明において、無機フィラーの凝集、沈降を抑制する目的で、各層を形成するための塗布液に、分散安定化剤を併用することも好ましい。分散安定化剤としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、セルロース誘導体、ポリアミド、リン酸エステル、ポリエーテル、界面活性剤及び、シランカップリング剤、チタンカップリング剤等を使用することができる。特に前述のシランカップリング剤が硬化後の皮膜が強いため好ましい。
【0295】
低屈折率層形成組成物は液の形態をとり、前記バインダー及び無機微粒子を必須構成成分とし、必要に応じて各種添加剤及びラジカル重合開始剤を適当な溶媒に溶解して作製される。この際固形分の濃度は、用途に応じて適宜選択されるが一般的には0.01〜60質量%程度であり、好ましくは0.5〜50質量%、特に好ましくは1%〜20質量%程度である。
【0296】
また低屈折率層の皮膜硬度の観点からは、硬化剤等の添加剤を添加することは必ずしも有利ではないが、高屈折率層との界面密着性等の観点から、多官能(メタ)アクリレート化合物、多官能エポキシ化合物、ポリイソシアネート化合物、アミノプラスト、多塩基酸又はその無水物等の硬化剤を少量添加することもできる。これらを添加する場合には低屈折率層皮膜の全固形分に対して0〜30質量%の範囲であることが好ましく、0〜20質量%の範囲であることがより好ましく、0〜10質量%の範囲であることが特に好ましい。
【0297】
防汚性、耐水性、耐薬品性、滑り性等の特性を付与する目的で、公知のシリコーン系又はフッ素系の防汚剤、滑り剤等を適宜添加することもできる。これらの添加剤を添加する場合には低屈折率層全固形分の0.01〜20質量%の範囲で添加されることが好ましく、より好ましくは0.05〜10質量%の範囲で添加される場合であり、特に好ましくは0.1〜5質量%の場合である。
【0298】
(シリコーン系化合物)
シリコーン系化合物の好ましい例としては、ジメチルシリルオキシ単位を繰り返し単位として複数個含む化合物鎖の末端及び/又は側鎖に置換基を有するものが挙げられる。ジメチルシリルオキシを繰り返し単位として含む化合物鎖中にはジメチルシリルオキシ以外の構造単位を含んでもよい。置換基は同一であっても異なっていてもよく、複数個あることが好ましい。好ましい置換基の例としてはアクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、アリール基、シンナモイル基、エポキシ基、オキセタニル基、水酸基、フルオロアルキル基、ポリオキシアルキレン基、カルボキシル基、アミノ基などを含む基が挙げられる。
【0299】
シリコーン系化合物の分子量には特に制限はないが、10万以下であることが好ましく、5万以下であることがより好ましく、3000〜30000であることが特に好ましく、10000〜20000であることが最も好ましい。
【0300】
シリコーン系化合物の珪素原子含有量には特に制限はないが、18.0質量%以上であることが好ましく、25.0〜37.8質量%であることが特に好ましく、30.0〜37.0質量%であることが最も好ましい。
【0301】
好ましいシリコーン系化合物の例としては、信越化学工業(株)製の“X−22−174DX”、“X−22−2426”、“X−22−164B”、“X−22−164C”、“X−22−170DX”、“X−22−176D”、“X−22−1821”(以上商品名);チッソ(株)製の“FM−0725”、“FM−7725”、“FM−4421”、“FM−5521”、“FM−6621”、“FM−1121”;Gelest社製の“DMS−U22”、“RMS−033”、“RMS−083”、“UMS−182”、“DMS−H21”、“DMS−H31”、“HMS−301”、“FMS121”、“FMS123”、“FMS131”、“FMS141”、“FMS221”(以上商品名)などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0302】
(フッ素系化合物)
フッ素系化合物としては、フルオロアルキル基を有する化合物が好ましい。該フルオロアルキル基は炭素数1〜20であることが好ましく、より好ましくは1〜10であり、直鎖{例えば−CF2CF3、−CH2(CF2)4H、−CH2(CF2)8CF3、−CH2CH2(CF2)4H等}であっても、分岐構造{例えば−CH(CF3)2、−CH2CF(CF3)2、−CH(CH3)CF2CF3、−CH(CH3)(CF2)5CF2H等}であっても、脂環式構造(好ましくは5員環又は6員環、例えばペルフルオロシクロへキシル基、ペルフルオロシクロペンチル基又はこれらで置換されたアルキル基等)であってもよく、エーテル結合を有していてもよい(例えば−CH2OCH2CF2CF3、−CH2CH2OCH2C4F8H、−CH2CH2OCH2CH2C8F17、−CH2CH2OCF2CF2OCF2CF2H等)。該フルオロアルキル基は同一分子中に複数含まれていてもよい。
【0303】
フッ素系化合物は、さらに低屈折率層皮膜との結合形成又は相溶性に寄与する置換基を有していることが好ましい。該置換基は同一であっても異なっていてもよく、複数個あることが好ましい。好ましい置換基の例としてはアクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、アリール基、シンナモイル基、エポキシ基、オキセタニル基、ヒドロキシル基、ポリオキシアルキレン基、カルボキシル基、アミノ基などが挙げられる。フッ素系化合物はフッ素原子を含まない化合物とのポリマーであってもオリゴマーであってもよく、分子量に特に制限はない。
【0304】
フッ素系化合物中のフッ素原子含有量には特に制限はないが、20質量%以上であることが好ましく、30〜70質量%であることが特に好ましく、40〜70質量%であることが最も好ましい。好ましいフッ素系化合物の例としてはダイキン工業(株)製の“R−2020”、“M−2020”、“R−3833”、“M−3833”(以上商品名);大日本インキ化学工業(株)製の「メガファックF−171」、「メガファックF−172」、「メガファックF−179A」、「ディフェンサMCF−300」(以上商品名)などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0305】
低屈折率層形成用組成物には、防塵性、帯電防止等の特性を付与する目的で、さらに公知のカチオン系界面活性剤又はポリオキシアルキレン系化合物のような防塵剤、帯電防止剤等を適宜添加することもできる。これら防塵剤、帯電防止剤は、上記のシリコーン系化合物やフッ素系化合物に、その構造単位が機能の一部として含まれていてもよい。これら
を添加剤として添加する場合には、低屈折率層形成用組成物全固形分の0.01〜20質量%の範囲で添加されることが好ましく、より好ましくは0.05〜10質量%の範囲で添加される場合であり、特に好ましくは0.1〜5質量%の場合である。
【0306】
好ましい化合物の例としては、大日本インキ化学工業(株)製「メガファックF−150」(商品名)、東レ・ダウコーニング(株)製“SH−3748”(商品名)などが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0307】
[溶媒]
本発明の反射防止フィルムにおいて、各層(ハードコート層、高屈折率層、中屈折率層、低屈折率層等)を形成するための塗布液に用いる溶媒について以下に説明する。
【0308】
塗布溶媒は、例えば、沸点が100℃以下の溶媒としては、ヘキサン(沸点68.7℃、以下「℃」を省略する)、ヘプタン(98.4)、シクロヘキサン(80.7)、ベンゼン(80.1)などの炭化水素類;ジクロロメタン(39.8)、クロロホルム(61.2)、四塩化炭素(76.8)、1,2−ジクロロエタン(83.5)、トリクロロエチレン(87.2)などのハロゲン化炭化水素類;ジエチルエーテル(34.6)、ジイソプロピルエーテル(68.5)、ジプロピルエーテル(90.5)、テトラヒドロフラン(66)などのエーテル類;ギ酸エチル(54.2)、酢酸メチル(57.8)、酢酸エチル(77.1)、酢酸イソプロピル(89)などのエステル類;アセトン(56.1)、2−タノン(=メチルエチルケトン、79.6)などのケトン類;メタノール(64.5)、エタノール(78.3)、2−プロパノール(82.4)、1−プロパノール(97.2)などのアルコール類;アセトニトリル(81.6)、プロピオニトリル(97.4)などのシアノ化合物類;二硫化炭素(46.2)などがある。
【0309】
沸点が100℃を越える溶媒としては、例えば、オクタン(125.7)、トルエン(110.6)、キシレン(138)、テトラクロロエチレン(121.2)、クロロベンゼン(131.7)、ジオキサン(101.3)、ジブチルエーテル(142.4)、酢酸イソブチル(118)、シクロヘキサノン(155.7)、2−メチル−4−ペンタノン{=メチルイソブチルケトン(MIBK)、115.9)、1−タノール(117.7)、N,N−メチルホルムアミド(153)、N,N−メチルアセトアミド(166)、ジメチルスルホキシド(189)などがある。好ましくは、トルエン、シクロヘキサノン、2−チル−4−ペンタノンである。
【0310】
これらのうち、ケトン類、芳香族炭化水素類、エステル類が好ましく、特に好ましくはケトン類である。ケトン類の中では2−ブタノンが特に好ましい。
【0311】
ケトン系溶媒を用いる場合、それぞれ単独で又は、ケトン系溶媒を2種以上もしくは、ケトン系溶媒1種以上とその他の上記溶媒と混合して用いることができ、ケトン系溶媒以外の溶媒と混合して用いるときは、ケトン系溶媒の含有量が塗布組成物に含まれる全溶媒の10質量%以上であることが好ましい。好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは60質量%以上である。
【0312】
本発明の反射防止フィルムにおいて、機能層及び低屈折率層成分を前述の組成の溶媒で希釈することにより、それらの層用塗布液が調製される。塗布液濃度は、塗布液の粘度、層素材の比重などを考慮して適宜調節されることが好ましいが、0.1〜80質量%が好ましく、より好ましくは1〜60質量%である。
また各層の溶媒は同一組成であってもよいし、異なっていてもよい。
【0313】
[塗布方式]
本発明の反射防止フィルムは、以下の方法で形成することができるが、この方法に制限されない。
【0314】
まず、各層を形成するための成分を含有した塗布液が調製される。次に、各層を形成するための塗布液を、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、ダイコート法などにより透明支持体上に塗布し、加熱・乾燥するが、グラビアコート法、ワイヤーバーコート法、ダイコート法がより好ましく、ダイコート法が特に好ましい。更に、構成を後述のように工夫したダイを使用して塗布することが最も好ましい。
【0315】
その後、乾燥工程に於いて溶媒を取り除かれる。乾燥工程としては、塗布直後に乾燥ゾーンを設け、乾燥ゾーン内の環境を制御することで乾燥速度を制御する乾燥工程を設置することが好ましく、特開2003−106767号公報に記載されているような、塗布直後の走行位置にほぼ並行に板状部材である凝縮板を設置し、凝縮板と塗布膜の距離や凝縮板の温度を制御して、塗布液中の溶媒を凝縮、回収させる乾燥装置を配置する乾燥工程を設置することがより好ましい。
【0316】
その後、光照射又は加熱して、各層を形成するためのモノマーを重合して硬化する。これにより各層が形成される。
【0317】
[ダイコーターの構成]
図8は、本発明の実施の際に使用した、スロットダイを用いたコーターの断面図である。
コーター10は、バックアップローラ11に支持されて連続走行するウェブ12に対して、スロットダイ13から塗布液14をビード14aにして塗布することにより、ウェブ12上に塗膜14bを形成する。
【0318】
スロットダイ13の内部にはポケット15、スロット16が形成されている。ポケット15は、その断面が曲線及び直線で構成されており、たとえば、図8に示されるような略円形でもよいし、又は半円形でもよい。ポケット15は、スロットダイ13の幅方向にその断面形状をもって延長された塗布液の液溜め空間で、その有効延長の長さは、塗布幅と同等か若干長めにするのが一般的である。
【0319】
ポケット15への塗布液14の供給は、スロットダイ13の側面から、又はスロット開口部16aとは反対側の面の中央から行う。また、ポケット15には塗布液14が漏れ出ることを防止する栓が設けられている。
【0320】
スロット16は、ポケット15からウェブ12への塗布液14の流路であり、ポケット15と同様にスロットダイ13の幅方向にその断面形状をもち、ウェブ側に位置する開口部16aは、一般に、図示しない幅規制板のようなものを用いて、概ね塗布幅と同じ長さの幅になるように調整する。このスロット16のスロット先端における、バックアップローラ11のウェブ走行方向の接線とのなす角は、30°以上90°以下が好ましい。
【0321】
スロット16の開口部16aが位置するスロットダイ13の先端リップ17は、先細り状に形成されており、その先端はランドと呼ばれる平坦部18とされている。このランド18であって、スロット16に対してウェブ12の走行方向の上流側を上流側リップランド18a、下流側を下流側リップランド18bと称する。
【0322】
図9は、スロットダイ13の断面形状を従来のものと比較して示すもので、(A)は、本発明に好適なスロットダイ13を示し、(B)は、従来から用いられている一般的なス
ロットダイ30を示している。従来のスロットダイ30では、上流側リップランド31aと下流側リップランド31bのウェブ12との距離は等しい。なお、(B)において、符号32はポケット、33はスロットを示している。これに対して、本発明のスロットダイ13では、下流側リップランド長さILOが短くされており、これによって、湿潤膜厚が20μm以下の塗布を精度よく行うことができる。
【0323】
上流側リップランド18aのランド長さIUPは特に限定はされないが、100μm〜1mmの範囲が好ましく採用される。下流側リップランド18bのランド長さILOは30μm以上100μm以下であり、好ましくは30μm以上80μm以下、更に好ましくは30μm以上60μm以下である。
【0324】
下流側リップのランド長さILOが30μmよりも短い場合は、先端リップ17のエッジ又はランドが欠けやすく、塗膜にスジが発生しやすくなり、結果的には塗布が不可能になる。また、下流側の濡れ線位置の設定が困難になり、塗布液が下流側で広がりやすくなるという問題も発生する。この下流側での塗布液の濡れ広がりは、濡れ線の不均一化を意味し、塗布面上にスジなどの不良形状を招くという問題につながることが従来より知られている。
【0325】
一方、下流側リップのランド長さILOが100μmよりも長い場合は、ビードそのものを形成することができないために、薄層塗布を行うことは不可能である。
【0326】
更に、下流側リップランド18bは、上流側リップランド18aよりもウェブ12に近接したオーバーバイト形状であり、このため減圧度を下げることができて、薄膜塗布に適したビード形成が可能となる。下流側リップランド18bと上流側リップランド18aのウェブ12との距離の差(以下、オーバーバイト長さLOと称する)は30μm以上120μm以下が好ましく、更に好ましくは30μm以上100μm以下、最も好ましくは30μm以上80μm以下である。
【0327】
スロットダイ13がオーバーバイト形状のとき、先端リップ17とウェブ12の隙間GLとは、下流側リップランド18bとウェブ12の隙間を示す。
【0328】
図10は、本発明の実施に使用された塗布工程のスロットダイ及びその周辺を示す斜視図である。ウェブ12の走行方向側とは反対側に、ビード14aに対して充分な減圧調整を行えるよう、接触しない位置に減圧チャンバー40を設置する。減圧チャンバー40は、その作動効率を保持するためのバックプレート40aとサイドプレート40bを備えており、バックプレート40aとウェブ12の間、サイドプレート40bとウェブ12の間にはそれぞれ隙間GB、GSが存在する。
【0329】
図11及び図12は、近接している減圧チャンバー40とウェブWを示す断面図である。サイドプレート40bとバックプレート40aは、図11のようにチャンバー本体と一体のものであってもよいし、図12のように適宜隙間を変えられるように、チャンバーにネジ40cなどで留められている構造でもよい。
【0330】
いかなる構造であっても、バックプレート40aとウェブWの間、サイドプレート40bとウェブWの間に実際にあいている部分を、それぞれ隙間GB、GSと定義する。減圧チャンバー40のバックプレート40aとウェブWとの隙間GBとは、減圧チャンバー40を図10のようにウェブW及びスロットダイ13の下方に設置した場合、バックプレート40aの最上端からウェブWまでの隙間を示す。
【0331】
バックプレート40aとウェブWとの隙間GBを、スロットダイ13の先端リップ17
とウェブWとの隙間GLよりも大きくして設置するのが好ましい。これにより、バックアップローラ11の偏心に起因するビード近傍の減圧度変化を抑制することができる。
【0332】
例えば、スロットダイ13の先端リップ17とウェブWとの隙間GLが30μm以上100μm以下のとき、バックプレート40aとウェブWの間の隙間GBは100μm以上500μm以下とするのが好ましい。
【0333】
(材質、精度)
ウェブWの走行方向側の先端リップ17のウェブ走行方向における長さは、長いほどビード形成に不利であり、この長さがスロットダイ幅方向における任意の個所間でばらつくと、かすかな外乱によりビードが不安定になる。したがって、この長さをスロットダイ幅方向における変動幅が20μm以内とすることが好ましい。
【0334】
また、スロットダイの先端リップ17の材質については、ステンレス鋼などのような材質を用いるとダイ加工の段階でだれてしまい、前記のようにスロットダイ先端リップ17のウェブ走行方向における長さを30〜100μmの範囲にしても、先端リップ17の精度を満足できない。
【0335】
従って、高い加工精度を維持するためには、特許第2817053号公報に記載されているような超硬材質のものを用いることが重要である。具体的には、スロットダイの少なくとも先端リップ17を、平均粒径5μm以下の炭化物結晶を結合してなる超硬合金にすることが好ましい。
【0336】
超硬合金としては、タングステンカーバイド(以下、WCと称す)などの炭化物結晶粒子をコバルトなどの結合金属によって結合したものなどがあり、結合金属としては他にチタン、タンタル、ニオブ及びこれらの混合金属を用いることもできる。WC結晶の平均粒径としては、粒径3μm以下が更に好ましい。
【0337】
高精度な塗布を実現するためには、先端リップ17のウェブ走行方向側のランドの前記長さ及び、ウェブとの隙間のスロットダイ幅方向のばらつきも重要な因子となる。この2つの因子の組み合わせ、すなわち、隙間の変動幅をある程度抑えられる範囲内の真直度を達成することが望ましい。好ましくは、前記隙間のスロットダイ幅方向における変動幅が5μm以下になるように先端リップ17とバックアップローラ11との真直度を出す。
【0338】
<反射防止フィルムの用途>
〔偏光板〕
偏光板は、偏光膜を両面から挟む2枚の保護フィルムで主に構成される。本発明の反射防止フィルムは、偏光膜を両面から挟む2枚の保護フィルムのうち少なくとも1枚に用いることが好ましい。本発明の反射防止フィルムが保護フィルムを兼ねることで、偏光板の製造コストを低減できる。また、本発明の反射防止フィルムを最表層に使用することにより、外光の映り込み等が防止され、耐擦傷性、防汚性等も優れた偏光板とすることができる。
【0339】
[偏光膜]
偏光膜としては、公知の偏光膜や、偏光膜の吸収軸が長手方向に平行でも垂直でもない長尺の偏光膜から切り出された偏光膜を用いてもよい。偏光膜の吸収軸が長手方向に平行でも垂直でもない長尺の偏光膜は、以下の方法により作製される。
【0340】
すなわち、連続的に供給されるポリマーフィルムの両端を、保持手段により保持しつつ張力を付与して延伸した偏光膜で、少なくともフィルム幅方向に1.1〜20.0倍に延
伸し、フィルム両端の保持装置の長手方向進行速度差が3%以内であり、フィルム両端を保持する工程の出口におけるフィルムの進行方向と、フィルムの実質延伸方向のなす角が、20〜70゜傾斜するようにフィルム進行方向を、フィルム両端を保持させた状態で屈曲させてなる延伸方法によって製造することができる。特に45°傾斜させたものが生産性の観点から好ましく用いられる。
【0341】
ポリマーフィルムの延伸方法については、特開2002−86554号公報の段落[0020]〜[0030]に詳しい記載がある。
【0342】
偏光膜の2枚の保護フィルムのうち、反射防止フィルム以外のフィルムが、光学異方性層を含んでなる光学補償フィルムであることも好ましい。光学補償フィルム(位相差フィルム)は、液晶表示画面の視野角特性を改良することができる。光学補償フィルムとしては、公知のものを用いることができるが、視野角を広げるという点では、特開2001−100042号公報に記載されているディスコティック構造単位を有する化合物からなる光学異方性層を有し、該ディスコティック化合物と支持体とのなす角度が層の深さ方向において変化している光学補償フィルムが好ましい。該角度は光学異方性層の支持体面側からの距離の増加とともに増加していることが好ましい。
【0343】
〔画像表示装置〕
本発明の反射防止フィルムは、液晶表示装置(LCD)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)や陰極管表示装置(CRT)のような画像表示装置に適用することができる。本発明の反射防止フィルムは透明支持体を有しているので、透明支持体側を画像表示装置の画像表示面に接着して用いられる。
【0344】
[液晶表示装置]
本発明の反射防止フィルムは、偏光膜の表面保護フィルムの片側として用いた場合、ツイステットネマチック(TN)、スーパーツイステットネマチック(STN)、バーティカルアライメント(VA)、インプレインスイッチング(IPS)、オプティカリーコンペンセイテットベンドセル(OCB)等のモードの透過型、反射型、又は半透過型の液晶表示装置に好ましく用いることができる。
【0345】
(VAモード)
VAモードの液晶セルには、
(1)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直に配向させ、電圧印加時に実質的に水平に配向させる狭義のVAモードの液晶セル(特開平2−176625号公報記載)に加えて、
(2)視野角拡大のため、VAモードをマルチドメイン化した(MVAモードの)液晶セル{“SID97,Digest of tech.Papers”(予稿集)、28集(1997年)、p.845記載}、
(3)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直配向させ、電圧印加時にねじれマルチドメイン配向させるモード(n−ASMモード)の液晶セル{日本液晶討論会の予稿集p.58〜59(1998年)記載}及び、
(4)SURVAIVALモードの液晶セル(「LCDインターナショナル98」で発表)が含まれる。
【0346】
(OCBモード)
OCBモードの液晶セルは、棒状液晶性分子を液晶セルの上部と下部とで実質的に逆の方向に(対称的に)配向させるベンド配向モードの液晶セルであり、米国特許第4,583,825号、同第5,410,422号の各明細書に開示されている。棒状液晶性分子
が液晶セルの上部と下部とで対称的に配向しているため、ベンド配向モードの液晶セルは、自己光学補償機能を有する。そのため、この液晶モードは、OCB(Optically Compensatory Bend)液晶モードとも呼ばれる。ベンド配向モードの液晶表示装置は、応答速度が速いとの利点がある。
【0347】
(ECBモード)
ECBモードの液晶セルでは、電圧無印加時に棒状液晶性分子が実質的に水平配向しており、カラーTFT液晶表示装置として最も多く利用されており、多数の文献に記載がある。例えば「EL、PDP、LCDディスプレイ」東レリサーチセンター発行(2001)などに記載されている。
【0348】
特にTNモードやIPSモードの液晶表示装置に対しては、特開2001-100043号公報等に記載されているように、視野角拡大効果を有する光学補償フィルムを偏光膜の裏表2枚の保護フィルムの内の本発明の反射防止フィルムとは反対側の面に用いることにより、1枚の偏光板の厚みで反射防止効果と視野角拡大効果を有する偏光板を得ることができ、特に好ましい。
【実施例】
【0349】
以下、本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、下記の実施例、合成例中、特に断らない限り%は質量%を表す。
【0350】
<反射防止フィルムの作製>
〔塗布組成物の調製〕
[含フッ素ポリマーの合成]
合成例:含フッ素ポリマー(PP−1)の合成
攪拌機、還流冷却器を備えた反応器に、9,9−ジヒドロ−1,1−ビスペンタフルオロエチル−2、5−ビストリフルオロメチル−3、6−ジオキサ−8−ノネン−1−オール6.0g、ペルフルオロブチルビニルエーテル34.0g、ジメチル2,2’−アゾビスイソブチレート1.1g、2−ブタノン30gを加え、窒素雰囲気下で6時間78℃に加熱して反応を完結させ、含フッ素ポリマー(PP−1)を得た。質量平均分子量は11000であった。
【0351】
その他の含フッ素ポリマーについても(PP−1)と同様な方法で合成した。
【0352】
[防眩性ハードコート層用塗布液の調製]
実施例1−1:防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−1)の調製
市販ジルコニア含有UV硬化型ハードコート液「デソライトZ7404」{JSR(株)製、固形分濃度約61%、固形分中ZrO2含率約70%、重合性モノマー、光硬化開始剤含有}284部、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物“DPHA”{日本化薬(株)製}86部を混合し、更に、メチルイソブチルケトン(MIBK)60g、メチルエチルケトン(MEK)17部で希釈した。更に、シランカップリング剤“KBM−5103”{信越化学(株)製}28.5部を混合攪拌した。さらにこの溶液に、上記合成例1で作製した含フッ素ポリマー(PP−1、40質量%MEK溶液)を0.26部加えて混合撹拌した。さらに、この溶液に平均粒径3.0μmの分級強化架橋ポリメチルメタクリレート(PMMA)粒子“MXS−300”{屈折率1.49、綜研化学(株)製}の30%MIBK分散液をポリトロン分散機にて10000rpmで20分分散した分散液を30部加え、次いで、平均粒径1.5μmのシリカ粒子「シーホスタKE−P150」{屈折率1.46、日本触媒(株)製}の30%MEK分散液をポリトロン分散機にて10000rpmで30分分散した分散液を95部加えて混合攪拌し、完成液とした。上記混合液を孔径30μmのポリプ
ロピレン製フィルターで濾過して防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−1)を調製した。
【0353】
実施例1−2:防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−2)の調製
実施例1−1の防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−1)の調製において、含フッ素ポリマー(PP−1)を0.26部用いる代わりに、含フッ素ポリマー(PP−1)と同様に合成した前記の含フッ素ポリマー(PP−2、40%MEK溶液)を0.26部用いた以外は、実施例1−1と全く同様にして防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−2)を調製した。
【0354】
実施例1−3:防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−3)の調製
実施例1−1の防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−1)の調製において、含フッ素ポリマー(PP−1)を0.26部用いる代わりに、含フッ素ポリマー(PP−1)と同様に合成した前記の含フッ素ポリマー(PP−11、40%MEK溶液)を0.26部用いた以外は、実施例1−1と全く同様にして防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−3)を調製した。
【0355】
実施例1−4:防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−4)の調製
実施例1−1の防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−1)の調製において、含フッ素ポリマー(PP−1)を0.26部用いる代わりに、含フッ素ポリマー(PP−1)と同様に合成した前記の含フッ素ポリマー(PP−21、40%MEK溶液)を0.26部用いた以外は、実施例1−1と全く同様にして防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−4)を調製した。
【0356】
実施例1−5:防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−5)の調製
実施例1−1の防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−1)の調製において、含フッ素ポリマー(PP−1)を0.26部用いる代わりに、含フッ素ポリマー(PP−1)と同様に合成した前記の含フッ素ポリマー(PP−24、40%MEK溶液)を0.26部用いた以外は、実施例1−1と全く同様にして防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−5)を調製した。
【0357】
実施例1−6:防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−6)の調製
実施例1−1の防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−1)の調製において、含フッ素ポリマー(PP−1)を0.26部用いる代わりに、含フッ素ポリマー(PP−1)と同様に合成した前記の含フッ素ポリマー(PP−29、40%MEK溶液)を0.26部用いた以外は、実施例1−1と全く同様にして防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−6)を調製した。
【0358】
実施例1−7:防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−7)の調製
紫外線硬化型樹脂“PETA”{商品名、ペンタエリスリトールトリアクリレートとペンタエリスリトールテトラアクリレートの混合物、日本化薬(株)製}300質量部、光硬化開始剤「イルガキュア184」{チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製}13.2部、第1の透光性微粒子としての架橋アクリル−スチレン粒子{綜研化学(株)製、平均粒径3.5μm、屈折率1.55、30%トルエン分散液}52.3部、第2の透光性微粒子としての架橋ポリスチレン粒子{綜研化学(株)製、粒径3.5μm、屈折率1.60、30%トルエン分散液。ポリトロン分散機にて10000rpmで20分分散後使用}155.0部、上記合成例1で作製した含フッ素ポリマー(PP−1、40%シクロヘキサノン溶液)1.13部、オルガノシラン化合物“KBM−5103”{商品名、信越化学工業(株)製}60.0部、シクロヘキサノン143.0部、及びトルエン240.0部を十分混合して塗布液として調整した。
【0359】
実施例1−8:防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−8)の調製
実施例1−7の防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−7)の調製において、含フッ素ポリマー(PP−1)を1.13部用いる代わりに、含フッ素ポリマー(PP−1)と同様に合成した前記の含フッ素ポリマー(PP−8、40%シクロヘキサノン溶液)を1.13部用いた以外は、実施例1−7と全く同様にして防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−8)を調製した。
【0360】
実施例1−9:防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−9)の調製
実施例1−7の防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−7)の調製において、含フッ素ポリマー(PP−1)を1.13部用いる代わりに、含フッ素ポリマー(PP−1)と同様に合成した前記の含フッ素ポリマー(PP−9、40%シクロヘキサノン溶液)を1.13部用いた以外は、実施例1−7と全く同様にして防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−9)を調製した。
【0361】
実施例1−10:防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−10)の調製
実施例1−7の防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−7)の調製において、含フッ素ポリマー(PP−1)を1.13部用いる代わりに、含フッ素ポリマー(PP−1)と同様に合成した前記の含フッ素ポリマー(PP−18、40%シクロヘキサノン溶液)を1.13部用いた以外は、実施例1−7と全く同様にして防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−10)を調製した。
【0362】
実施例1−11:防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−11)の調製
実施例1−7の防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−7)の調製において、含フッ素ポリマー(PP−1)を1.13部用いる代わりに、含フッ素ポリマー(PP−1)と同様に合成した前記の含フッ素ポリマー(PP−22、40%シクロヘキサノン溶液)を1.13部用いた以外は、実施例1−7と全く同様にして防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−11)を調製した。
【0363】
実施例1−12:防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−12)の調製
実施例1−7の防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−7)の調製において、含フッ素ポリマー(PP−1)を1.13部用いる代わりに、含フッ素ポリマー(PP−1)と同様に合成した前記の含フッ素ポリマー(PP−26、40%シクロヘキサノン溶液)を1.13部用いた以外は、実施例1−7と全く同様にして防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−12)を調製した。
【0364】
実施例1−13:防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−13)の調製
紫外線硬化型樹脂“PETA”{商品名、ペンタエリスリトールトリアクリレートとペンタエリスリトールテトラアクリレートの混合物、日本化薬(株)製}310部、光硬化開始剤「イルガキュア184」{チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製}15.0部、第1の透光性微粒子としての架橋アクリル−スチレン粒子{綜研化学(株)製、平均粒径3.5μm、屈折率1.55、30%トルエン分散液}50.0部、第2の透光性微粒子としての架橋ポリスチレン粒子{綜研化学(株)製、粒径3.5μm、屈折率1.60、30%トルエン分散液。ポリトロン分散機にて10000rpmで20分分散後使用}を150.0部、上記合成例1で作製した含フッ素ポリマー(PP−1、40%シクロヘキサノン溶液)を1.13部、オルガノシラン化合物“KBM−5103”{商品名、信越化学工業(株)製}を60.0部、シクロヘキサノン20.0部、及びメチルイソブチルケトン400.0部を十分混合して防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−13)として調整した。
【0365】
実施例1−14:防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−14)の調製
実施例1−13の防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−13)の調製において、含フッ素ポリマー(PP−1)を1.13部用いる代わりに、含フッ素ポリマー(PP−1)と同様に合成した前記の含フッ素ポリマー(PP−3、40%シクロヘキサノン溶液)を1.13部用いた以外は、実施例1−13と全く同様にして防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−14)を調製した。
【0366】
実施例1−15:防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−15)の調製
実施例1−13の防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−13)の調製において、含フッ素ポリマー(PP−1)を1.13部用いる代わりに、含フッ素ポリマー(PP−1)と同様に合成した前記の含フッ素ポリマー(PP−10、40%シクロヘキサノン溶液)を1.13部用いた以外は、実施例1−13と全く同様にして防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−15)を調製した。
【0367】
実施例1−16:防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−16)の調製
実施例1−13の防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−13)の調製において、含フッ素ポリマー(PP−1)を1.13部用いる代わりに、含フッ素ポリマー(PP−1)と同様に合成した前記の含フッ素ポリマー(PP−15、40%シクロヘキサノン溶液)を1.13部用いた以外は、実施例1−13と全く同様にして防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−16)を調製した。
【0368】
実施例1−17:防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−17)の調製
実施例1−13の防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−13)の調製において、含フッ素ポリマー(PP−1)を1.13部用いる代わりに、含フッ素ポリマー(PP−1)と同様に合成した前記の含フッ素ポリマー(PP−17、40%シクロヘキサノン溶液)を1.13部用いた以外は、実施例1−13と全く同様にして防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−17)を調製した。
【0369】
実施例1−18:防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−18)の調製
実施例1−13の防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−13)の調製において、含フッ素ポリマー(PP−1)を1.13部用いる代わりに、含フッ素ポリマー(PP−1)と同様に合成した前記の含フッ素ポリマー(PP−30、40%シクロヘキサノン溶液)を1.13部用いた以外は、実施例1−13と全く同様にして防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−18)を調製した。
【0370】
実施例1−19:防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−19)の調製
紫外線硬化型樹脂“PETA”{商品名、ペンタエリスリトールトリアクリレートとペンタエリスリトールテトラアクリレートの混合物、日本化薬(株)製}310部、光硬化開始剤「イルガキュア184」{チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製}15.0部、上記合成例1で作製した含フッ素ポリマー(PP−1、40%シクロヘキサノン溶液)を1.13部、オルガノシラン化合物“KBM−5103”{商品名、信越化学工業(株)製}60.0部、シクロヘキサノン20.0部、及びメチルイソブチルケトン400.0部を十分混合して防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−19)として調整した。
【0371】
実施例1−20:防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−20)の調製
実施例1−19の防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−19)の調製において、含フッ素ポリマー(PP−1)を1.13部用いる代わりに、含フッ素ポリマー(PP−1)と同様に合成した前記の含フッ素ポリマー(PP−7、40%シクロヘキサノン溶液)を1.13部用いた以外は、実施例1−19と全く同様にして防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−20)を調製した。
【0372】
実施例1−21:防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−21)の調製
実施例1−19の防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−19)の調製において、含フッ素ポリマー(PP−1)を1.13部用いる代わりに、含フッ素ポリマー(PP−1)と同様に合成した前記の含フッ素ポリマー(PP−14、40%シクロヘキサノン溶液)を1.13部用いた以外は、実施例1−19と全く同様にして防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−21)を調製した。
【0373】
実施例1−22:防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−22)の調製
実施例1−19の防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−19)の調製において、含フッ素ポリマー(PP−1)を1.13部用いる代わりに、含フッ素ポリマー(PP−1)と同様に合成した前記の含フッ素ポリマー(PP−19、40%シクロヘキサノン溶液)を1.13部用いた以外は、実施例1−19と全く同様にして防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−22)を調製した。
【0374】
実施例1−23:防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−23)の調製
実施例1−19の防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−19)の調製において、含フッ素ポリマー(PP−1)を1.13部用いる代わりに、含フッ素ポリマー(PP−1)と同様に合成した前記の含フッ素ポリマー(PP−20、40%シクロヘキサノン溶液)を1.13部用いた以外は、実施例1−19と全く同様にして防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−23)を調製した。
【0375】
実施例1−24:防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−24)の調製
実施例1−19の防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−19)の調製において、含フッ素ポリマー(PP−1)を1.13部用いる代わりに、含フッ素ポリマー(PP−1)と同様に合成した前記の含フッ素ポリマー(PP−31、40%シクロヘキサノン溶液)を1.13部用いた以外は、実施例1−19と全く同様にして防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−24)を調製した。
【0376】
比較例1−1:防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−25)の調製
実施例1−1の防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−1)の調製において、含フッ素ポリマー(PP−1)を1.13部用いない以外は、実施例1−1と全く同様にして防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−25)を調製した。
【0377】
比較例1−2:防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−26)の調製
実施例1−1の防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−1)の調製において、含フッ素ポリマー(PP−1)を0.26部用いる代わりに、下記構造式で表されるフッ素系ポリマー(R−1)(40%MEK溶液)を0.26部用いた以外は、実施例1−1と全く同様にして防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−26)を調製した。
【0378】
【化23】
【0379】
比較例1−3:防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−27)の調製
実施例1−1の防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−1)の調製において、含フッ素ポリマー(PP−1)を0.26部用いる代わりに、下記構造式で表されるフッ素系ポリマー(R−2)(40%MEK溶液)を0.26部用いた以外は、実施例1−1と全く同様にして防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−27)を調製した。
【0380】
【化24】
【0381】
比較例1−4:防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−28)の調製
実施例1−1の防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−1)の調製において、含フッ素ポリマー(PP−1)を0.26部用いる代わりに、下記構造式で表されるフッ素系ポリマー(R−3)(40%MEK溶液)を0.26部用いた以外は、実施例1−1と全く同様にして防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−28)を調製した。
【0382】
【化25】
【0383】
調製された防眩性ハードコート層用塗布液の配合組成について、以下の表7にまとめる。なお、表7に用いた略号は、以下のとおりである。
Z7404:「デソライトZ7404」、ジルコニア含有UV硬化型ハードコート液、固形分濃度約61%、固形分中ZrO2含率約70%、重合性モノマー、光硬化開始剤含有、JSR(株)製、
DPHA:“DPHA”、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物、日本化薬(株)製、
PETA:“PETA”、ペンタエリスリトールトリアクリレートとペンタエリスリトールテトラアクリレートの混合物、日本化薬(株)製、
IC184:「イルガキュア184」、光硬化開始剤、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製、
KBM−5103:“KBM−5103”、シランカップリング剤、信越化学(株)製、
MXS−300:“MXS−300”{分級強化架橋ポリメチルメタクリレート(PMMA)粒子、平均粒径3.0μm、屈折率1.49、綜研化学(株)製}の30%MIBK分散液をポリトロン分散機にて10000rpmで20分分散した分散液、
Ac−St:架橋アクリル−スチレン透光性微粒子、平均粒径3.5μm、屈折率1.55、30%トルエン分散液、綜研化学(株)製、
St:架橋ポリスチレン透光性微粒子{粒径3.5μm、屈折率1.60、30%トルエン分散液、綜研化学(株)製}をポリトロン分散機にて10000rpmで20分分散後使用、
KE−P150:「シーホスタKE−P150」{平均粒径1.5μmのシリカ粒子、屈折率1.46、日本触媒(株)製}の30%MEK分散液をポリトロン分散機にて10000rpmで30分分散した分散液。
【0384】
【表7】
【0385】
〔反射防止フィルムの作製〕
[低屈折率層用塗布液の調製]
(ゾル液aの調製)
攪拌機、還流冷却器を備えた反応器内において、MEK119部、アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン“KBM5103”{信越化学工業(株)製}101部、ジイソプロポキシアルミニウムエチルアセトアセテート3部を加え混合したのち、イオン交換水30部を加え、60℃で4時間反応させたのち、室温まで冷却し、ゾル液aを得た。
【0386】
ゾル液aの質量平均分子量は1600であり、オリゴマー成分以上の成分のうち、分子量が1000〜20000の成分は100%であった。また、ガスクロマトグラフィー分析から、原料のアクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランは全く残存していなかった。
【0387】
{低屈折率層用塗布液(LL−1)の調製}
“JTA113”{商品名、屈折率1.44、固形分濃度6%、MEK溶液、JSR(
株)製}13.1g、コロイダルシリカ分散液“MEK−ST−L”{商品名、平均粒径45nm、固形分濃度30%、日産化学工業(株)製}1.31g、前記ゾル液a0.59g、及びMEK5.1g、シクロヘキサノン0.6gを添加、攪拌の後、孔径1μmのポリプロピレン製フィルターで濾過して、低屈折率層用塗布液(LL−1)を調製した。
【0388】
[ダイコーターの構成]
図9に示されるスロットダイ13は、上流側リップランド長IUPが0.5mm、下流側リップランド長ILOが50μmで、スロット16の開口部のウェブ走行方向における長さが150μm、スロット16の長さが50mmのものを使用した。
【0389】
上流側リップランド18aとウェブ12の隙間を、下流側リップランド18bとウェブ12の隙間よりも50μm長くし(以下、オーバーバイト長さ50μmと称する)、下流側リップランド18bとウェブ12との隙間GLを50μmに設定した。
【0390】
また、減圧チャンバー40のサイドプレート40bとウェブWとの隙間GS、及びバックプレート40aとウェブWとの隙間GBはともに200μmとした。
【0391】
[反射防止フィルムの作製]
実施例2−1
超音波除塵器で、膜厚80μmのトリアセチルセルロースフィルム“TD−80UF”{富士写真フイルム(株)製}の塗布側表面を除電処理した上に、防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−1)を、上記ダイコーターを用いて35m/分の塗布速度で塗布した。減圧チャンバーの減圧度は0.8kPaとした。防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−1)の塗布においては、下流側リップランド18bとウェブWとの隙間GLを80μmにして塗布を行った。塗布されたウェブは、直後にドライヤを使用して初期乾燥を行った。ドライヤの全長は5mとした。ドライヤ中の凝縮板は、走行方向の下流側が塗布膜から離れるような所定の傾斜角度をもって配した。ドライヤで初期乾燥されたウェブは、その後85℃で乾燥した後、酸素濃度が0.1体積%以下の雰囲気になるように窒素パージしながら、160W/cmの「空冷メタルハライドランプ」{アイグラフィックス(株)製}を用いて、照度400mW/cm2、照射量500mJ/cm2の紫外線を照射して塗布層を硬化させ、厚さ7μmのハードコート層を形成した。
【0392】
次に上記のハードコート層の上に、低屈折率層用塗布液(LL−1)を、上記ダイコーターを用いて30m/分で塗布した。減圧チャンバーの減圧度は0.8kPaとした。塗布されたウェブは塗布直後にドライヤを使用して初期乾燥を行った。ドライヤ中の凝縮板は、走行方向の下流側が塗布膜から離れるような所定の傾斜角度をもって配した。ドライヤで初期乾燥されたウェブは、その後90℃で30秒間乾燥した後、酸素濃度が0.1体積%以下の雰囲気になるように窒素パージしながら、240W/cmの「空冷メタルハライドランプ」{アイグラフィックス(株)製}を用いて、照度600mW/cm2、照射量400mJ/cm2の紫外線を照射し、低屈折率層(屈折率1.45、膜厚83nm)を形成した。このようにして、反射防止フィルム(HB−1)を作製した。
【0393】
上記工程において、塗布、乾燥工程は、0.5μm以上の粒子として30個/(立方メートル)以下の空気清浄度の空気雰囲気下で行われ、塗布直前に特開平10−309553号公報に記載の清浄度の高い空気を高速で吹き付けて付着物をフィルム表面から剥離させ、近接した吸い込み口で吸引する方法で除塵を行いながら塗布を行った。除塵前のベースの帯電圧は、200V以下であった。上記の塗布は1層毎に、送り出し−除塵−塗布−乾燥−(UV又は熱)硬化−巻き取りの各工程で行った。
【0394】
実施例2−2〜2−24
実施例2−1において、防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−1)を用いる代わりに、防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−2)〜(HCL−24)のいずれかを用いる以外は、実施例2−1と同様にして反射防止フィルム(HB−2)〜(HB−24)を作製した。
【0395】
比較例2−1〜2−4
実施例2−1において、防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−1)を用いる代わりに、防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−25)〜(HCL−28)のいずれかを用いる以外は、実施例2−1と同様にして反射防止フィルム(HB−25)〜(HB−28)を作製した。
【0396】
得られた反射防止フィルム(HB−1)〜(HB−28)のそれぞれについて、その裏面を黒く塗りつぶし、反射防止フィルム表面の状態を目視観察した。また次の方法に従って、その耐擦傷性の評価を行った。得られた結果を表8に示す。
【0397】
[反射防止フィルムの評価]
(1)スチールウール耐傷性評価
ラビングテスターを用いて、以下の条件でこすりテストをおこなった。
試料調湿条件:25℃、60%RH、2時間以上。
擦り材:試料と接触するテスターの擦り先端部(1cm×1cm)にスチールウール{日本スチールウール(株)製、グレードNo.0000}を巻いて、動かないようバンド固定した。
移動距離(片道):13cm、
擦り速度:13cm/秒、
荷重:200g/cm2、
先端部接触面積:1cm×1cm、
擦り回数:20往復。
擦り終えた試料の裏側に油性黒インキを塗り、反射光で目視観察して、擦り部分の傷を、以下の基準で評価した。
全く傷が見えない。 :○
中程度の傷が見える。 :△
一目見ただけで強い傷が見える。 :×
【0398】
(2)水綿棒擦り耐性評価
ラビングテスターの擦り先端部に綿棒を固定し、平滑皿中で試料の上下をクリップで固定し、室温25℃で、試料と綿棒を25℃の水に浸し、綿棒に500gの荷重をかけて、こすり回数を変えて擦りテストを行った。擦り条件は以下のとおり。
擦り距離(片道):1cm、
擦り速度:約2往復/秒
擦り終えた試料を観察して、膜剥がれが起こった回数で、擦り耐性を以下のように評価した。
0〜30往復で膜剥がれ :×
30〜150往復で膜剥がれ :△
150往復でも膜剥がれなし :○
【0399】
【表8】
【0400】
本発明で得られた組成物を含む塗布液を塗設した反射防止フィルム(HB−1)〜(HB−24)はいずれも、耐擦傷性評価及び風ムラと塗布ムラがいずれも良好であった。ここで、風ムラとは乾燥条件を変更した際に変化する面状故障、塗布ムラとは塗布条件を変
更した際に変化する面状故障とし、面状故障が目視で確認できるときに×と判断した。
【0401】
一方、含フッ素ポリマーを含まない防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−25)を塗布した比較例2−1では、風ムラが発生し、面内の均一性が低く反射防止フィルムとして好ましくない。防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−26)を塗布した比較例2−2では耐擦傷性(スチールウール及び綿棒擦り)が不十分であった。防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−27)を塗布した比較例2−3では、耐擦傷性は良好であったが塗布ムラが発生し、面内の均一性が低く、反射防止フィルムとして好ましくない。また、防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−28)を塗布した比較例2−4では、塗布面にハジキ状の模様が発生し、面内の均一性が低く反射防止フィルムとして好ましくない。更に比較例2−1〜2−4で得られた反射防止フィルムを上記の方法により液晶表示装置の視認側に設置したところ、表示面内の均一性が低く表示品位の低い表示装置となり、好ましくない。
【0402】
〔偏光板の作製〕
実施例3−1〜3−24
実施例2−1〜2−24で作製された反射防止フィルム(HB−1)〜(HB−24)をそれぞれ、2.0mol/L、55℃のNaOH水溶液中に2分間浸漬してフィルムの裏面のトリアセチルセルロース面を鹸化処理し、80μmの厚さのトリアセチルセルロースフィルム“TAC−TD80U”{富士写真フイルム(株)製}を同条件で鹸化処理したフィルムとを用いて、ポリビニルアルコールにヨウ素を吸着させ、延伸して作製した偏光膜の両面に接着、保護して偏光板を作製した。このようにして作製した偏光板を、反射防止膜側が最表面となるように透過型TN液晶表示装置搭載のノートパソコンの液晶表示装置{偏光選択層を有する偏光分離フィルムである住友3M(株)製の“D−BEF”をバックライトと液晶セルとの間に有する}の視認側の偏光板と貼り代えたところ、背景の映りこみが極めて少なく、反射光の色味が著しく低減され、更に表示面内の均一性が確保された表示品位の非常に高い表示装置が得られた。
【0403】
比較例3−1〜3−4
実施例3−1〜3−24と同様に、比較例2−1〜2−4で作製された反射防止フィルム(HB−25)〜(HB−28)をそれぞれ用いて、偏光板を作製した。このようにして作製した偏光板を、同様に液晶表示装置の視認側に設置したところ、表示面内の均一性が低く表示品位の低い表示装置となり、好ましくなかった。
【図面の簡単な説明】
【0404】
【図1】図1は、本発明に係る反射防止フィルムの層構成の1例を示す断面模式図である。
【図2】図2は、本発明に係る反射防止フィルムの層構成の1例を示す断面模式図である。
【図3】図3は、本発明に係る反射防止フィルムの層構成の1例を示す断面模式図である。
【図4】図4は、本発明に係る反射防止フィルムの層構成の1例を示す断面模式図である。
【図5】図5は、本発明に係る反射防止フィルムの層構成の1例を示す断面模式図である。
【図6】図6は、本発明に係る反射防止フィルムの層構成の1例を示し、防眩性の様相を強調した断面模式図である。
【図7】図7は、本発明に係る反射防止フィルムの層構成の1例を示し、防眩性の様相を強調した断面模式図である。
【図8】図8は、本発明の実施の際に使用したスロットダイを用いたコーターの断面図である。
【図9】図9は、スロットダイ13の断面形状を従来のものと比較して示した断面図である。
【図10】図10は、本発明の実施に使用された塗布工程のスロットダイ及びその周辺を示す斜視図である。
【図11】図11は、近接している減圧チャンバー40とウェブWを示す断面図である。
【図12】図12は、近接している減圧チャンバー40とウェブWを示す断面図である。
【符号の説明】
【0405】
(1):透明支持体
(2):ハードコート層
(3):中屈折率層
(4):高屈折率層
(5):低屈折率層
【0406】
11:バックアップロール
14a:ビード
14b:塗膜
15:ポケット
16:スロット
16a:スロット開口部
18:平坦部
【0407】
13、30:スロットダイ
31a:上流側リップランド
31b:下流側リップランド
32:ポケット
33:スロット
【0408】
40:減圧チャンバー
40a:バックプレート
40b:サイドプレート
40c:ネジ
GB:バックプレート40aとウェブWの間の隙間
GS:サイドプレート40bとウェブWの間の隙間
12、W:ウェブ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)の構造を含むポリマーを含有することを特徴とする塗布組成物。
一般式(1):
【化1】
一般式(1)において、X11及びX12はそれぞれ水素原子又はフッ素原子を表し、X13は水素原子、フッ素原子、塩素原子又はCF3を表す。Rf11及びRf12はそれぞれ炭素数1〜20の含フッ素アルキル基を表し、Rf13は炭素数1〜100の含フッ素アルキレン基を表す。aは0又は1を表す。
【請求項2】
一般式(1)の構造を含むポリマーが、塗布組成物全固形分に対して0.001〜5.0質量%含まれる請求項1に記載の塗布組成物。
【請求項3】
一般式(1)の構造を含むポリマーの質量平均分子量が、8,000〜60,000である請求項1又は2に記載の塗布組成物。
【請求項4】
一般式(1)の構造を含むポリマー中のフッ素原子の割合が、塗布組成物全固形分に対して、0.0003〜3.0質量%である請求項1〜3のいずれかに記載の塗布組成物。
【請求項5】
下記一般式(2)の構造を含むポリマーを含有することを特徴とする塗布組成物。
一般式(2):
【化2】
一般式(2)において、Aは含フッ素エチレン性モノマーから誘導される構造を表し、X11及びX12はそれぞれ水素原子又はフッ素原子を表し、X13は水素原子、フッ素原子、塩素原子又はCF3を表す。Rf11及びRf12はそれぞれ炭素数1〜20の含フッ素アルキル基を表し、Rf13は炭素数1〜100の含フッ素アルキレン基を表す。aは0又は1を表す。m、nは50≦m≦99、1≦n≦50の関係を満たす質量%を表す。
【請求項6】
一般式(2)中のAが下記一般式(3)で表される請求項5に記載の塗布組成物。
一般式(3):
【化3】
一般式(3)において、X21、X22及びX23はそれぞれ水素原子又はフッ素原子を表し、X24は水素原子、フッ素原子又はCF3を表す。Rf21は炭素数1〜20の含フッ素アルキル基を表す。pは0、1又は2を表し、qは0又は1を表す。
【請求項7】
透明支持体上に、請求項1〜6のいずれかに記載の塗布組成物を少なくとも一層塗設したことを特徴とする光学フィルム。
【請求項8】
請求項7に記載の光学フィルムに反射防止性能が有されたものであることを特徴とする反射防止フィルム。
【請求項9】
偏光膜の少なくとも一方の側に、請求項8に記載の反射防止フィルムを用いたことを特徴とする偏光板。
【請求項10】
偏光膜の一方の保護フィルムとして請求項8に記載の反射防止フィルムを用い、該偏光膜の他方の保護フィルムとして光学異方性のある光学補償フィルムを用いたことを特徴とする偏光板。
【請求項11】
請求項8に記載の反射防止フィルム、又は請求項9もしくは10に記載の偏光板が配置されていることを特徴とする画像表示装置。
【請求項1】
下記一般式(1)の構造を含むポリマーを含有することを特徴とする塗布組成物。
一般式(1):
【化1】
一般式(1)において、X11及びX12はそれぞれ水素原子又はフッ素原子を表し、X13は水素原子、フッ素原子、塩素原子又はCF3を表す。Rf11及びRf12はそれぞれ炭素数1〜20の含フッ素アルキル基を表し、Rf13は炭素数1〜100の含フッ素アルキレン基を表す。aは0又は1を表す。
【請求項2】
一般式(1)の構造を含むポリマーが、塗布組成物全固形分に対して0.001〜5.0質量%含まれる請求項1に記載の塗布組成物。
【請求項3】
一般式(1)の構造を含むポリマーの質量平均分子量が、8,000〜60,000である請求項1又は2に記載の塗布組成物。
【請求項4】
一般式(1)の構造を含むポリマー中のフッ素原子の割合が、塗布組成物全固形分に対して、0.0003〜3.0質量%である請求項1〜3のいずれかに記載の塗布組成物。
【請求項5】
下記一般式(2)の構造を含むポリマーを含有することを特徴とする塗布組成物。
一般式(2):
【化2】
一般式(2)において、Aは含フッ素エチレン性モノマーから誘導される構造を表し、X11及びX12はそれぞれ水素原子又はフッ素原子を表し、X13は水素原子、フッ素原子、塩素原子又はCF3を表す。Rf11及びRf12はそれぞれ炭素数1〜20の含フッ素アルキル基を表し、Rf13は炭素数1〜100の含フッ素アルキレン基を表す。aは0又は1を表す。m、nは50≦m≦99、1≦n≦50の関係を満たす質量%を表す。
【請求項6】
一般式(2)中のAが下記一般式(3)で表される請求項5に記載の塗布組成物。
一般式(3):
【化3】
一般式(3)において、X21、X22及びX23はそれぞれ水素原子又はフッ素原子を表し、X24は水素原子、フッ素原子又はCF3を表す。Rf21は炭素数1〜20の含フッ素アルキル基を表す。pは0、1又は2を表し、qは0又は1を表す。
【請求項7】
透明支持体上に、請求項1〜6のいずれかに記載の塗布組成物を少なくとも一層塗設したことを特徴とする光学フィルム。
【請求項8】
請求項7に記載の光学フィルムに反射防止性能が有されたものであることを特徴とする反射防止フィルム。
【請求項9】
偏光膜の少なくとも一方の側に、請求項8に記載の反射防止フィルムを用いたことを特徴とする偏光板。
【請求項10】
偏光膜の一方の保護フィルムとして請求項8に記載の反射防止フィルムを用い、該偏光膜の他方の保護フィルムとして光学異方性のある光学補償フィルムを用いたことを特徴とする偏光板。
【請求項11】
請求項8に記載の反射防止フィルム、又は請求項9もしくは10に記載の偏光板が配置されていることを特徴とする画像表示装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2007−246715(P2007−246715A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−72967(P2006−72967)
【出願日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
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