説明

塗布膜の乾燥装置および乾燥方法、それらを用いた塗布物の製造装置および製造方法

【課題】 精密な膜厚制御を必要とする成膜工程において、乾燥ムラの発生しない乾燥装置を提供することを目的とする。
【解決手段】 塗布膜面から蒸発した溶剤ガスを排気ボックスにて吸引すると同時に、隣接する給気ボックスから、溶剤ガスを含まない空気を塗布膜面に対し緩やかに均一に供給でき、塗布膜面に乱れを生じさせずに素早く空気の置換が可能なため、精密な膜厚制御を必要とする成膜工程において、乾燥ムラの発生しない乾燥装置を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗布膜の乾燥装置および乾燥方法、それらを用いた塗布物の製造装置および製造方法に関するものである。例えば、反射防止フィルムにおいては、膜厚の相違が光透過率に敏感に反映されることから、誤差1%の以下の膜厚ムラが製品上欠陥として認識される。本発明は、このように精度の厳しい塗布膜の乾燥装置および乾燥方法、それらを用いた塗布物の製造装置および製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
連続的に搬送される帯状の基材の表面に所望の膜厚で塗布液を塗布した後、乾燥硬化させ塗布膜を形成する技術は、包装材料、産業資材、電子基板材料等の分野においてさまざまな開発が行われてきた。特に、反射防止フィルムや防眩フィルム等の光学機能性フィルムの製造においては、数μm以下の塗布膜を均一に形成する必要があり、塗布後の乾燥工程での膜厚変化が製品品質に大きな影響を与える為、均一に乾燥させるための技術開発が現在でも盛んに行われている。
【0003】
一般的によく知られた乾燥方式としては、熱風をスリットノズルやボックスの細孔から塗布膜面に吹き付けることにより、蒸発する溶剤成分の空気中での境界層を低減させ乾燥速度を促進する方法が用いられている。また、塗布膜面と基材裏面に交互に熱風を当てることにより、基材を浮かせた状態で乾燥を行うフローティング方式は、基材のサポートロールを必要としない上、効率的に熱を塗布膜面に伝えられることから、乾燥効率が良く乾燥装置の長さを短くできるために、多くの分野で用いられている。しかしながら、上記方法においては、塗布膜面に直接的に風を吹き付ける必要があるために、乾燥風による塗布膜面の乱れが微小な膜厚ムラを発生させる問題がしばしば起こることがあった。
【0004】
また、そのような乾燥風による塗布膜面の気流の乱れを起こさないために行う方法として、塗布膜面全体に覆いを被せる事によって外乱風を遮る方法が用いられるが、塗布膜面上の気流の乱れの原因として蒸発溶剤ガスと乾燥用の空気が混ざるときに発生する気流の乱れもある為に、塗布ムラが消えないことがしばしばあった。
【0005】
したがって、蒸発する溶剤成分を取り除きながら、気流の乱れを起こさないために、たとえば特許文献1のような方法が開示されている。特許文献1では、乾燥装置内で基材上に形成された塗布膜に対して平行、かつ、塗布膜の搬送方向に向って熱風を送り、その層流である熱風の速度を基材の搬送速度に対して0.1m/秒〜5m/秒の相対速度になるよう制御している。しかし、この構造では、搬送する基材面上の空気の流れを層流に保つには高い精度で吹き込み風量と角度を設定しなければならず、実用的な搬送速度では困難である。
【0006】
以下に先行技術文献を示す。
【特許文献1】特開2002−340479号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記したように、精密な膜厚制御を必要とする成膜工程において、乾燥ムラの発生を抑制することができる塗布膜の乾燥装置および乾燥方法、それらを用いた塗布物の製造装置および製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、請求項1に係る発明は、搬送中の帯状の基材に溶剤を含む塗布液を塗布し塗布膜を形成する塗布装置と、前記基材に形成した塗布膜を搬送しながら乾燥する乾燥装置とを有する塗布物の製造装置において、
前記乾燥装置は、少なくとも
前記基材の塗布膜を形成した側に設置され、かつ、複数の孔を有する整風部材と、前記基材の塗布膜を形成した側とは反対側に設置された底板と、右側板と、左側板と、前記塗布膜を搬入する搬入口と、前記塗布膜を搬出する搬出口と、を有する塗布膜搬送部と、
前記整風部材を挟んで前記塗布膜搬送部と対向する位置に、開口部を整風部材に向けて配置され、かつ、基材の搬送方向に1以上設置された角箱状の乾燥ボックスと、
各乾燥ボックスの前記整風部材と対向する位置に配置された給排気口と、
各乾燥ボックスの各給排気口に接続され、乾燥ボックス内へ空気を強制的に給気する給気手段、または乾燥ボックス内から空気を強制的に排気する排気手段のいずれかから選ばれる気流発生手段と、
を備え、
前記各乾燥ボックスの基材搬送方向の長さが、10mm以上1000mm以下であることを特徴とする塗布物の製造装置である。
【0009】
請求項2に係る発明は、前記整風部材と塗布膜との間隙を1mm以上30mm以下としたことを特徴とする請求項1に記載の塗布物の製造装置である。
【0010】
請求項3に係る発明は、前記整風部材の開孔率を40%以下としたことを特徴とする請求項1または2に記載の塗布物の製造装置である。
【0011】
請求項4に係る発明は、前記基材の塗布膜のない面の側に、加熱手段または冷却手段を設置したことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の塗布物の製造装置である。
【0012】
請求項5に係る発明は、請求項1〜4のいずれかに記載の製造装置を用いて形成したことを特徴とする光学フィルムである。
【0013】
請求項6に係る発明は、搬送中の帯状の基材に溶剤を含む塗布液を塗布し塗布膜を形成する塗布工程と、次に、前記基材に形成した塗布膜を乾燥装置内で搬送しながら乾燥する乾燥工程とを有する塗布物の製造方法において、
前記乾燥装置は、
前記基材の塗布膜を形成した側に設置され、かつ、複数の孔を有する整風部材と、前記基材の塗布膜を形成した側とは反対側に設置された底板と、右側板と、左側板と、前記塗布膜を搬入する搬入口と、前記塗布膜を搬出する搬出口と、を有する塗布膜搬送部と、
前記整風部材を挟んで前記塗布膜搬送部と対向する位置に、開口部を整風部材に向けて配置され、かつ、基材の搬送方向に1以上設置された角箱状の乾燥ボックスと、各乾燥ボックスの前記整風部材と対向する位置に配置された給排気口と、各乾燥ボックスの各給排気口に接続され、乾燥ボックス内へ空気を強制的に給気する給気手段、または乾燥ボックス内から空気を強制的に排気する排気手段のいずれかから選ばれる気流発生手段と、
を有し、
前記搬送中の帯状の基材に溶剤を含む塗布液を塗布し塗布膜を形成する塗布工程と、
次に前記塗布工程の塗布部から塗布膜を前記乾燥装置の搬入口まで塗布膜を搬送する搬送工程と、
次に、前記塗布膜を前記乾燥装置の搬入口へ搬入する搬入工程と、
次に、前記塗布膜を前記乾燥装置の塗布膜搬送部内を搬送しながら乾燥する乾燥工程と、
次に、前記塗布膜を前記乾燥装置の搬出口から搬出する搬出工程と、
を有し、
前記各乾燥ボックスの基材搬送方向の長さが、10mm以上1000mm以下であることを特徴とする塗布物の製造方法である。
【0014】
請求項7に係る発明は、搬送中の帯状の基材に溶剤を含む塗布液を塗布し塗布膜を形成し、前記基材に形成した塗布膜を搬送しながら乾燥する乾燥装置において、
少なくとも
前記基材の塗布膜を形成した側に設置され、かつ、複数の孔を有する整風部材と、前記基材の塗布膜を形成した側とは反対側に設置された底板と、右側板と、左側板と、前記塗布膜を搬入する搬入口と、前記塗布膜を搬出する搬出口と、を有する塗布膜搬送部と、
前記整風部材を挟んで前記塗布膜搬送部と対向する位置に、開口部を整風部材に向けて配置され、かつ、基材の搬送方向に1以上設置された角箱状の乾燥ボックスと、
各乾燥ボックスの前記整風部材と対向する位置に配置された給排気口と、
各乾燥ボックスの各給排気口に接続され、乾燥ボックス内へ空気を強制的に給気する給気手段、または乾燥ボックス内から空気を強制的に排気する排気手段のいずれかから選ばれる気流発生手段と、
を備え、
前記各乾燥ボックスの基材搬送方向の長さが、10mm以上1000mm以下であることを特徴とする塗布膜の乾燥装置である。
【0015】
請求項8に係る発明は、搬送中の帯状の基材に溶剤を含む塗布液を塗布し塗布膜を形成する塗布工程と、次に、前記基材に形成した塗布膜を乾燥装置内で搬送しながら乾燥する乾燥工程とを有する塗布膜の乾燥方法において、
前記乾燥装置は、 前記基材の塗布膜を形成した側に設置され、かつ、複数の孔を有する整風部材と、前記基材の塗布膜を形成した側とは反対側に設置された底板と、右側板と、左側板と、前記塗布膜を搬入する搬入口と、前記塗布膜を搬出する搬出口と、を有する塗布膜搬送部と、
前記整風部材を挟んで前記塗布膜搬送部と対向する位置に、開口部を整風部材に向けて配置され、かつ、基材の搬送方向に1以上設置された角箱状の乾燥ボックスと、各乾燥ボックスの前記整風部材と対向する位置に配置された給排気口と、各乾燥ボックスの各給排気口に接続され、乾燥ボックス内へ空気を強制的に給気する給気手段、または乾燥ボックス内から空気を強制的に排気する排気手段のいずれかから選ばれる気流発生手段と、を有し、
前記搬送中の帯状の基材に溶剤を含む塗布液を塗布し塗布膜を形成する塗布工程と、
次に前記塗布工程の塗布部から塗布膜を前記乾燥装置の搬入口まで塗布膜を搬送する搬送工程と、
次に、前記塗布膜を前記乾燥装置の最初の乾燥ボックスの下へ搬入する搬入工程と、
次に、前記塗布膜を前記乾燥装置の底板および整風部材の間の基材搬送部内を搬送しながら乾燥する乾燥工程と、
次に、前記塗布膜を前記乾燥装置の最後の乾燥ボックスの下から搬出する搬出工程と、
を有し、
前記各乾燥ボックスの基材搬送方向の長さが、10mm以上1000mm以下であることを特徴とする塗布膜の乾燥方法である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、塗布膜面から蒸発した溶剤ガスを、排気を行っている乾燥ボックス(以下、排気ボックスと呼ぶ。)にて吸引すると同時に、隣接する給気を行っている乾燥ボックス(以下、給気ボックスと呼ぶ。)から、溶剤ガスを含まない空気を塗布膜面に対し緩やかに均一に供給できる。これにより、塗布膜面に乱れを生じさせずに素早く空気の置換が可能なため、精密な膜厚制御を必要とする成膜工程において、乾燥ムラの発生を抑制することができる。
【0017】
また本発明によれば、排気ボックスおよび給気ボックスの基材搬送方向の長さが10mm〜1000mmであることにより、塗布膜面に乱れを生じさせずに素早く空気の置換が可能なため、精密な膜厚制御を必要とする成膜工程において、乾燥ムラの発生を抑制することができる。
【0018】
また本発明によれば、整風部材と塗布膜面との間隙が1mm〜30mmであるため、空気の流れが層流となり、空気の流れが乱れを生じることが無いため、精密な膜厚制御を必要とする成膜工程において、乾燥ムラが発生しない。
【0019】
また、本発明によれば、開孔率40%以下の整風部材により、空気の流れをある程度阻害して乱流を生じにくくできるため、精密な膜厚制御を必要とする成膜工程において、乾燥ムラが発生しない。なお、ここで整風部材の開孔率とは、(孔の開孔部の面積/整風部材の面積)×100(%)で表される値である。
【0020】
本発明によれば、加熱手段を設置したことにより、塗布膜の乾燥速度を早める事が可能で効率の良い乾燥が出来るのと同時に、溶剤蒸発時の潜熱による塗膜面の低温化による白化等の問題を防ぐことが可能なである。
【0021】
本発明によれば、冷却手段を設置したことにより塗布膜の乾燥速度を抑えることができ、乾燥速度が速すぎるときに起こりやすい塗布膜内部の流動を防ぐことが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の一実施形態について、図面を用いて説明する。図1は本発明における塗布膜の乾燥装置の、側面からの概略断面図である。
【0023】
まずロール状に巻かれた状態の基材8を、巻き出し軸3より、一定の速度および一定の張力で巻き出して連続的に供給する。基材8は、コーティングギャップを保つために配置されたコーティングロール2上で、塗布装置1より吐出された塗布液を塗布される。その後、基材8が乾燥装置25内に搬入されて基材8上の塗布膜は乾燥硬化され、図示していない巻き取り装置に巻き取られる。
【0024】
本発明の乾燥装置では、基材8の塗布膜のある面に対向するようにして、平滑で均一に孔の開いた整風部材5が配置されている。このときの基材8の塗布膜のある面と整風部材5の間隙は1mm以上30mm以下の範囲にあることが望ましく、更に精密に乾燥を制御するには1mm以上20mm以下の範囲にあることが望ましい。さらに整風部材5を介して、角箱状の乾燥ボックス10〜20がその開口部を整風部材5に向けて配設されている。各乾燥ボックスは、角箱状で、その箱の整風部材と対向する位置に給排気口を有する構造となっている。
【0025】
各乾燥ボックス10〜20の給排気口には、図示しない排気手段または給気手段のいずれかが接続され、各乾燥ボックス内部の空気を強制的に排気または給気することが行われる。各乾燥ボックスは基材搬送方向に沿って配置されており、排気量あるいは給気量は乾燥ボックスそれぞれで独立してコントロール出来るようになっている。以下では、各乾燥ボックスのうち排気を行っているものを排気ボックス、給気を行っているものを給気ボックスと呼ぶことにする。
【0026】
図1では、乾燥ボックスが11個並んでいる場合を示しているが、乾燥ボックスの個数、これに限定されるものではない。また排気ボックスと給気ボックスの並び方は、図1に示したように、排気ボックスと給気ボックスを交互に配置することが望ましい。
【0027】
給気手段により給気ボックスへ供給された空気は、整風部材5を介して基材8が搬送されている搬送部9に流入する。また塗布膜から蒸発した溶剤成分は整風部材5を介して排気ボックスに流入し、排気口を通して排気手段により外部に排出される。
【0028】
このとき、ひとつの乾燥ボックスの基材搬送方向の長さは、排気と給気のバランスの関係から10mm以上1000mm以下が好ましく、更に精密に乾燥を制御するには10mm以上500mm以下の範囲にあることが望ましい。また、乾燥の初期段階では塗布膜の流動性が高く、微小な空気の流れでも塗布膜に影響を与える可能性がある。したがって塗布直後の塗布膜に乾燥風を当てないようにするためと、塗布装置1の塗布部付近に乾燥風を流入させないようにするために、塗布直後には排気ボックスを設置することが好ましい。
【0029】
また、本発明の乾燥装置25の搬送部9は、前記の整風部材5、基材の塗布膜を形成した側とは反対側に設置された底板29、右側板27と、左側板28によって取り囲まれた構造となっている。これにより外気が塗布膜の表面付近に流れ込むのを防ぎ、その影響を受けにくくすることができる。また、搬送される基材8に対し、重力方向の上面側と下面側のどちらに塗布膜が形成されているかは関係ない。
【0030】
基材8の塗布膜のない面の側のガイドロール6の間に、加熱用あるいは冷却用の板6を設置しても良く、この熱源により乾燥速度をコントロールすることが可能となる。
【0031】
本発明で使用される整風部材5は、金網、パンチングメタルなど、複数の孔を有する板状の部材であり、塗布膜面上の蒸発溶剤を均一に排気するため、つまり、整風部材5を通過する塗布膜面鉛直方向(塗布膜面から整風部材5へ向う方向)の気流の流速を均一にする機能を有するものである。空気の整流作用を考えると、その開孔率は40%以下が好ましい。また孔の径は、塗布膜に影響を与えないφ1mm〜φ3mmの範囲が好ましく、孔の間隔(以下ピッチと呼ぶ。)は孔の径の1.5倍〜3倍であるのが好ましい。
【0032】
本発明における乾燥装置25は、塗布装置1の塗布部から塗布膜搬送距離で0.2m以上0.8m以下の範囲に設置されている。ここで塗布膜搬送距離とは、基材8表面に塗布液がされる塗布部と乾燥ボックス10の搬入口との直線距離ではなく、搬送される基材8に沿った長さのことを指している。塗布膜搬送距離が0.8mより離れると自然に乾燥していく領域が無視できなくなり、自然乾燥によるムラが生じるため好ましくない。また、0.2m未満であると基材8を搬入する搬入口において外気を遮断しすぎてしまうため好ましくない。また、不均一な風を防止するために、塗布装置1と乾燥装置25との間を段差なく滑らかに連結することが好ましい。
【0033】
本発明における乾燥装置25は、塗布膜面に悪影響を与えず蒸発溶剤を取り除き、わずかな乾燥ムラの発生を抑制することができるため、その効果が最も現れるのは乾燥初期である。したがって、乾燥装置の全長すべてが本発明の乾燥装置25によるものではなく、基材8への塗布直後の乾燥初期段階のみに本発明の乾燥装置25を導入することも可能である。その場合、本発明の乾燥装置25の後に、公知の第二乾燥装置を導入してもよい。
【0034】
第二乾燥装置としては、スリットノズルやパンチングメタルから基材に形成された塗布膜に温度を上昇させた噴流を当てるような方式を導入しても良いし、クイックリターン方式のノズルや基材の搬送方向に平行流を流す方式のノズルから熱風を噴出する方式でも良い。また、片面だけでなく両面から加熱手段を設けても良い。市販されているいかなる乾燥装置を使用しても本発明の効果をさまたげるものではない。
【0035】
本発明で使用される塗布装置1としては、ダイコーター、バーコーター、カーテンコーター、エクストルージョンコーター、ロールコーター、ディップコーター、スピンコーター、グラビアコーターなどの装置を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0036】
本発明で使用される基材8は、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6ナフタレート、セルロースダイアセテート、セルローストリアセテート(トリアセチルセルロース)、セルロースアセテートプロピオネート、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリアミド等のプラスチックフイルムなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、紙および紙にポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンブテン共重合体等の炭素数が2〜10のα−ポリオレフィン類を塗布又はラミネートしたもの、さらに、アルミニウム、銅、錫等の金属箔も挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0037】
本発明で使用される塗布液は、溶剤を含むものであり、基材上に塗膜を形成するものであれば、公知のいずれの塗布液を用いることができる。
【0038】
本発明で使用される溶剤としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、2−メトキシエタノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチル等のケトン類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、ジイソプロピルエーテル等のエーテル類、エチレングリコール、プロピレングリコール、ヘキシレングリコール等のグリコール類、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、エチルカルビトール・ブチルカルビトール等のグリコールエーテル類、ヘキサン、ヘプタン・オクタン等の脂肪族炭化水素類、ハロゲン化炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド等が挙げられ、1種、または、2種類以上の混合物として用いてよいが、これらに限定されるものではない。
【0039】
本発明の乾燥装置は、高精度な品質を要求する、光学膜、電子基板、食品用包装材、医療用包装材等の、乾燥工程を必要とするウェットコーティング方式を利用した大量生産分野において、安定した生産品質を確保し、低コスト化、高精度化に寄与できる。
【実施例】
【0040】
図1に示すような乾燥装置により、基材に塗布液を塗布した直後の塗布膜を乾燥させて、乾燥ムラが発生するかどうかを確認した。
【0041】
塗布直後には排気ボックスを配置し、各乾燥ボックスの基材搬送方向の幅を50mmとし、乾燥装置の全長は2mとした。また、基材と整流部材との間隙は5mmとし、整流部材には孔径φ1mm、ピッチ2mm、開孔率約20%の物を用いた。また、排気および給気の全体流量としては5m/minとした。
【0042】
塗布液としては、トルエン溶剤50%、アクリル系樹脂50%の塗布液を用い、基材には厚さ100μmのポリエチレンテレフタレートフイルムを用いた。塗布条件としては、塗布速度30m/minでダイコーティングにより塗布を行った。
【0043】
上記条件にて塗布を行ったところ、問題となるようなムラは確認できなかった。
【0044】
<比較例>
本発明の乾燥装置を全く設置していない状態にて、上記実施例と同じ条件にて塗布を行ったところ、塗布膜にモヤモヤとしたムラが確認でき、製品としては良品を得ることが出来なかった。

【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の乾燥装置の概略を示す断面図である。
【符号の説明】
【0046】
1 塗布装置
2 コーティングロール
3 巻き出し軸
5 整風部材
6 ガイドロール
7 加熱板(冷却板)
8 基材
9 搬送部
10〜20 乾燥ボックス(排気ボックス、給気ボックス)
25 乾燥装置
27、28 搬送部の右側板、搬送部の左側板
29 底板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送中の帯状の基材に溶剤を含む塗布液を塗布し塗布膜を形成する塗布装置と、前記基材に形成した塗布膜を搬送しながら乾燥する乾燥装置とを有する塗布物の製造装置において、
前記乾燥装置は、少なくとも
前記基材の塗布膜を形成した側に設置され、かつ、複数の孔を有する整風部材と、前記基材の塗布膜を形成した側とは反対側に設置された底板と、右側板と、左側板と、前記塗布膜を搬入する搬入口と、前記塗布膜を搬出する搬出口と、を有する塗布膜搬送部と、
前記整風部材を挟んで前記塗布膜搬送部と対向する位置に、開口部を整風部材に向けて配置され、かつ、基材の搬送方向に1以上設置された角箱状の乾燥ボックスと、
各乾燥ボックスの前記整風部材と対向する位置に配置された給排気口と、
各乾燥ボックスの各給排気口に接続され、乾燥ボックス内へ空気を強制的に給気する給気手段、または乾燥ボックス内から空気を強制的に排気する排気手段のいずれかから選ばれる気流発生手段と、
を備え、
前記各乾燥ボックスの基材搬送方向の長さが、10mm以上1000mm以下であることを特徴とする塗布物の製造装置。
【請求項2】
前記整風部材と塗布膜との間隙を1mm以上30mm以下としたことを特徴とする請求項1に記載の塗布物の製造装置。
【請求項3】
前記整風部材の開孔率を40%以下としたことを特徴とする請求項1または2に記載の塗布物の製造装置。
【請求項4】
前記基材の塗布膜のない面の側に、加熱手段または冷却手段を設置したことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の塗布物の製造装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の製造装置を用いて形成したことを特徴とする光学フィルム。
【請求項6】
搬送中の帯状の基材に溶剤を含む塗布液を塗布し塗布膜を形成する塗布工程と、次に、前記基材に形成した塗布膜を乾燥装置内で搬送しながら乾燥する乾燥工程とを有する塗布物の製造方法において、
前記乾燥装置は、
前記基材の塗布膜を形成した側に設置され、かつ、複数の孔を有する整風部材と、前記基材の塗布膜を形成した側とは反対側に設置された底板と、右側板と、左側板と、前記塗布膜を搬入する搬入口と、前記塗布膜を搬出する搬出口と、を有する塗布膜搬送部と、
前記整風部材を挟んで前記塗布膜搬送部と対向する位置に、開口部を整風部材に向けて配置され、かつ、基材の搬送方向に1以上設置された角箱状の乾燥ボックスと、各乾燥ボックスの前記整風部材と対向する位置に配置された給排気口と、各乾燥ボックスの各給排気口に接続され、乾燥ボックス内へ空気を強制的に給気する給気手段、または乾燥ボックス内から空気を強制的に排気する排気手段のいずれかから選ばれる気流発生手段と、
を有し、
前記搬送中の帯状の基材に溶剤を含む塗布液を塗布し塗布膜を形成する塗布工程と、
次に前記塗布工程の塗布部から塗布膜を前記乾燥装置の搬入口まで塗布膜を搬送する搬送工程と、
次に、前記塗布膜を前記乾燥装置の搬入口へ搬入する搬入工程と、
次に、前記塗布膜を前記乾燥装置の塗布膜搬送部内を搬送しながら乾燥する乾燥工程と、
次に、前記塗布膜を前記乾燥装置の搬出口から搬出する搬出工程と、
を有し、
前記各乾燥ボックスの基材搬送方向の長さが、10mm以上1000mm以下であることを特徴とする塗布物の製造方法。
【請求項7】
搬送中の帯状の基材に溶剤を含む塗布液を塗布し塗布膜を形成し、前記基材に形成した塗布膜を搬送しながら乾燥する乾燥装置において、
少なくとも
前記基材の塗布膜を形成した側に設置され、かつ、複数の孔を有する整風部材と、前記基材の塗布膜を形成した側とは反対側に設置された底板と、右側板と、左側板と、前記塗布膜を搬入する搬入口と、前記塗布膜を搬出する搬出口と、を有する塗布膜搬送部と、
前記整風部材を挟んで前記塗布膜搬送部と対向する位置に、開口部を整風部材に向けて配置され、かつ、基材の搬送方向に1以上設置された角箱状の乾燥ボックスと、
各乾燥ボックスの前記整風部材と対向する位置に配置された給排気口と、
各乾燥ボックスの各給排気口に接続され、乾燥ボックス内へ空気を強制的に給気する給気手段、または乾燥ボックス内から空気を強制的に排気する排気手段のいずれかから選ばれる気流発生手段と、
を備え、
前記各乾燥ボックスの基材搬送方向の長さが、10mm以上1000mm以下であることを特徴とする塗布膜の乾燥装置。
【請求項8】
搬送中の帯状の基材に溶剤を含む塗布液を塗布し塗布膜を形成する塗布工程と、次に、前記基材に形成した塗布膜を乾燥装置内で搬送しながら乾燥する乾燥工程とを有する塗布膜の乾燥方法において、
前記乾燥装置は、 前記基材の塗布膜を形成した側に設置され、かつ、複数の孔を有する整風部材と、前記基材の塗布膜を形成した側とは反対側に設置された底板と、右側板と、左側板と、前記塗布膜を搬入する搬入口と、前記塗布膜を搬出する搬出口と、を有する塗布膜搬送部と、
前記整風部材を挟んで前記塗布膜搬送部と対向する位置に、開口部を整風部材に向けて配置され、かつ、基材の搬送方向に1以上設置された角箱状の乾燥ボックスと、各乾燥ボックスの前記整風部材と対向する位置に配置された給排気口と、各乾燥ボックスの各給排気口に接続され、乾燥ボックス内へ空気を強制的に給気する給気手段、または乾燥ボックス内から空気を強制的に排気する排気手段のいずれかから選ばれる気流発生手段と、を有し、
前記搬送中の帯状の基材に溶剤を含む塗布液を塗布し塗布膜を形成する塗布工程と、
次に前記塗布工程の塗布部から塗布膜を前記乾燥装置の搬入口まで塗布膜を搬送する搬送工程と、
次に、前記塗布膜を前記乾燥装置の最初の乾燥ボックスの下へ搬入する搬入工程と、
次に、前記塗布膜を前記乾燥装置の底板および整風部材の間の基材搬送部内を搬送しながら乾燥する乾燥工程と、
次に、前記塗布膜を前記乾燥装置の最後の乾燥ボックスの下から搬出する搬出工程と、
を有し、
前記各乾燥ボックスの基材搬送方向の長さが、10mm以上1000mm以下であることを特徴とする塗布膜の乾燥方法。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2008−302303(P2008−302303A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−151512(P2007−151512)
【出願日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】