説明

塗布膜形成装置および溶剤供給方法

【課題】 装置構成を大幅に複雑化させることなく、塗布膜形成装置で溶剤を使用する全ての用途において、最適な特性を有する溶剤を供給できる溶剤供給機構を提供する。
【解決手段】 レジスト塗布処理装置100は、レジストに対して高い溶解性を示す高溶解性の溶剤A、高揮発性の溶剤B、低揮発性の溶剤C、低表面張力性の溶剤Dを貯留する溶剤タンク55a〜55dを備えている。2つ以上の溶剤タンク55a〜55dから所定の比率で供給された溶剤は、スタティックミキサー54で十分に混合された状態となって、プリウエットノズル50等の目的の溶剤使用部へ向けて送液される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハ等の被処理基板にレジスト液等を塗布して塗布膜を形成する塗布膜形成装置および該塗布膜形成装置の各部に溶剤を供給する溶剤供給方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造プロセスにおけるフォトリソグラフィー工程においては、半導体ウエハ(以下、「ウエハ」という)の表面にレジスト膜を形成するレジスト塗布処理と、レジスト塗布後のウエハに対して露光処理を行った後に当該ウエハを現像する現像処理とが行われている。このレジスト塗布処理においては、ウエハ表面にレジスト液を均一に塗布するため、例えばスピンコーティング法を利用した塗布膜形成装置が使用されている。
【0003】
このような塗布膜形成装置では、様々な目的のためにシンナー等の溶剤が使用されている。例えば、レジスト液の拡散を促して省レジスト化を図るため、レジスト液塗布前に溶剤をウエハ表面に塗布するプリウエットのほか、ウエハエッジ部のレジスト除去(EBR;エッジ・ビード・リムーブ)、ウエハの裏面洗浄、ウエハベベル部(ウエハ縁端面)のレジスト除去、ソルベントバス内の溶剤雰囲気形成、ソルベントバス内でのノズル先端部の洗浄、定期的に行なわれるカップ洗浄、塗布膜(レジスト)の剥離処理等の目的で溶剤が使用される。上記各用途においては、その目的の相違から、求められる溶剤の特性がそれぞれ相違している。
【0004】
ところが、従来の塗布膜形成装置においては、1種類(あるいは特別な場合には2種類)の溶剤を供給する溶剤供給機構を備えており、そこから各溶剤使用部、例えばプリウエットノズル、EBRノズル、裏面洗浄ノズル、ベベル部洗浄ノズル、ソルベントバス等へ溶剤が供給されるように構成されていた。そして、使用される溶剤としては、前記各用途の中の主要な用途に適合した特性(例えば高溶解性)を持つ溶剤が選定されていた。
【0005】
しかし、上記のように各用途で要求される溶剤の特性は少しずつ異なることから、1種類の溶剤で全ての用途において満足のいくパフォーマンスを得ることは困難であった。例えば上記ウエハ裏面洗浄では、洗浄後のウエハ乾燥時間(スループット)を出来るだけ短くするため、溶剤の特性として高揮発性が要求される。ウエハ裏面洗浄に求められる特性を重視して高揮発性溶剤の酢酸ブチルを選定した場合、難揮発性が要求される上記プリウエット工程におけるパフォーマンスが大幅に低下してしまうという問題があった。
【0006】
また、例えば上記プリウエット工程で、省レジスト性能を高めるために難揮発性溶剤のシクロヘキサノンを採用した場合、塗布膜の種類(ArFレジスト、保護膜など)によっては、溶解力が不十分になり、特に上記EBR処理、ウエハベベル部のレジスト除去処理、ソルベントバス内でのノズル先端部の洗浄処理、カップ洗浄処理および塗布膜の剥離処理の各用途での性能が低下してしまう。
【0007】
また、近年ではArFレジストを用いるようになり、レジストの溶解性が大幅に低下しつつある。このため、上記EBR処理、カップ洗浄処理および塗布膜の剥離処理の用途を重視して溶解性の高い高溶解性溶剤としてγ−ブチロラクトンが選択される傾向にある。しかし、γ−ブチロラクトンは揮発性が極端に低いため、例えば高揮発性が要求される上記ソルベントバス内において十分な溶剤雰囲気を形成することができず、ノズル先端に固化物が生じたり、同様に高揮発性が求められる上記ウエハの裏面洗浄処理後のウエハ乾燥に長時間を要して塗布膜形成のスループットを低下させてしまう。
【0008】
また、近年ではウエハの大径化に伴い、スピン塗布処理装置においてウエハの回転数を上げることが困難になりつつある。このため、溶剤塗布後の乾燥時間を節約し、スループットを維持するためにできるだけ揮発性の高い高揮発性溶剤を選択する必要がある。しかし、前記γ−ブチロラクトンに象徴されるように、高揮発性と高溶解性とはトレードオフの関係にあることが多く、双方の特性を満たす溶剤は未だ得られていない。
【0009】
さらに、従来のように1種類の溶剤により全ての用途をカバーしようとすると、塗布液の種類(例えばレジストの種類)が世代交代する度に溶剤の評価や選定などの煩雑な作業が必要であるという問題もあった。
【0010】
以上のような不都合を解消するため、プリウエット処理において省レジスト効果を向上させるため、塗布液が溶解する溶剤と、その溶剤の揮発を抑制する水などの揮発抑制物質との混合液を供給できるように構成した塗布膜形成装置が提案されている(例えば、特許文献1)。また、ウエハ表面に塗布された塗布膜の乾燥時間を削減するため、EBR処理において、塗布液が溶解する溶剤とその溶剤の溶解度を抑制する純水などの処理液との混合液を塗布膜の周縁部に供給するようにした塗布膜形成装置も提案されている(例えば、特許文献2)。
【特許文献1】特開2003−59825号公報(請求の範囲など)
【特許文献2】特開2003−324052号公報(請求の範囲など)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記特許文献1および特許文献2では、プリウエット工程、EBR工程などの個別の工程において、溶剤に水などの物質を添加してその工程に応じた特性を付与することにより、省レジスト、スループット向上などの効果を得ている。しかし、前記のとおり、塗布膜形成装置において溶剤を使用する場面は多岐に渡るため、各溶剤使用部において個別に水などの物質を混合する方法では装置構成が複雑化し過ぎるという問題があった。また、特許文献1および特許文献2の方法では、ベースとして使用する溶剤は1つであるため、そこに水等を添加しても各溶剤使用部での用途について満足のいく溶剤特性を得ることは困難である。
【0012】
もちろん、各溶剤使用部において最適な溶剤特性を得るためには、溶剤使用部毎に異なる特性の溶剤を供給できるように、個別の溶剤タンクと溶剤供給経路を設ければよいことは言うまでもない。しかし、これでは、溶剤タンクや配管が複雑化し、装置の簡素化を図ることができず、フットプリントを増大させてしまう。
【0013】
従って、本発明は、装置構成を大幅に複雑化させることなく、塗布膜形成装置で溶剤を使用する全ての用途において、最適な特性を有する溶剤を供給できる溶剤供給機構を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するため、本発明の第1の観点は、被処理基板に塗布液を供給して塗布膜を形成する塗布膜形成装置において前記塗布液を溶解させ得る溶剤を使用して処理を行なう複数の溶剤使用部に対し、前記溶剤を供給する溶剤供給機構であって、
塗布液に対する溶解性、揮発性および表面張力から選ばれる二つ以上の特性に基づき区分された二種以上の溶剤(ただし、一つの溶剤が二つ以上の特性を併有する場合も含む)をそれぞれ貯留する複数の溶剤貯留部と、
前記溶剤貯留部と前記溶剤使用部とを接続し、各溶剤使用部へ向けて前記溶剤を所定の比率で混合して供給する溶剤供給路と、
を備えた、溶剤供給機構を提供する。
【0015】
上記第1の観点において、前記溶剤供給路に、異なる種類の溶剤を混合する混合装置を備えることが好ましい。
また、高溶解性溶剤、高揮発性溶剤、低揮発性溶剤および低表面張力性溶剤から二種以上を選定し、前記溶剤貯留部に貯留することが好ましい。この場合、前記高溶解性溶剤は、溶解度パラメータが22(J/cm1/2以上の溶剤であることが好ましい。また、前記高揮発性溶剤は、沸点が160℃以下の溶剤であることが好ましい。また、前記低揮発性溶剤は、沸点が180℃以上の溶剤であることが好ましい。また、前記低表面張力性溶剤は、表面張力が30dyn/cm以下の溶剤であることが好ましい。
【0016】
また、任意の溶剤を基準溶剤として、該基準溶剤との比較において、前記高溶解性溶剤、前記高揮発性溶剤、前記低揮発性溶剤または前記低表面張力性溶剤を選定してもよい。
また、前記高溶解性溶剤がγ−ブチロラクトンであり、前記高揮発性溶剤がアニソール、シクロヘキサノンまたはEL(乳酸エチル)であり、前記低揮発性溶剤がγ−ブチロラクトンまたはNMP(N−メチルピロリドン)であり、前記低表面張力性溶剤がPGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)、酢酸ブチル、PGME(プロピレングリコールモノメチルエーテル)またはIPA(イソプロピルアルコール)であることが好ましい。
【0017】
また、前記溶剤使用部として、プリウエット装置、EBR装置、裏面洗浄装置、ベベル部洗浄装置、ソルベントバス、ソルベントバス内のノズル洗浄装置、カップ洗浄装置および塗布膜の剥離装置から選ばれる二つ以上を備えることが好ましい。
【0018】
また、本発明の第2の観点は、被処理基板を略水平に保持する基板保持部材と、
前記基板保持部材に保持された被処理基板に対し、塗布液を溶解させ得る溶剤を供給する溶剤供給手段と、
前記基板保持部材に保持された被処理基板に塗布液を供給する塗布液供給手段と、
上記第1の観点の溶剤供給機構と
を具備した、塗布膜形成装置を提供する。
【0019】
上記第2の観点において、さらに、予め作製されたレシピに基づき、前記溶剤貯留部から前記溶剤使用部へ供給される溶剤の混合比率を制御する制御部を備えることが好ましい。
【0020】
本発明の第3の観点は、被処理基板に塗布液を供給して塗布膜を形成する塗布膜形成装置において前記塗布液を溶解させ得る溶剤を使用して処理を行なう複数の溶剤使用部に対し、前記溶剤を供給する溶剤供給方法であって、
塗布液に対する溶解性、揮発性および表面張力から選ばれる二つ以上の特性に基づき区分された二種以上の溶剤(ただし、一つの溶剤が二つ以上の特性を併有する場合も含む)をそれぞれ貯留する複数の溶剤貯留部から、各溶剤使用部へ向けて前記溶剤を所定の比率で混合して供給する、溶剤供給方法を提供する。
【0021】
上記第3の観点において、高溶解性溶剤、高揮発性溶剤、低揮発性溶剤および低表面張力性溶剤から二種以上を選定して用いることが好ましい。この場合、前記高溶解性溶剤は、溶解度パラメータが22(J/cm1/2以上の溶剤であることが好ましい。また、前記高揮発性溶剤は、沸点が160℃以下の溶剤であることが好ましい。また、前記低揮発性溶剤は、沸点が180℃以上の溶剤であることが好ましい。また、前記低表面張力性溶剤は、表面張力が30dyn/cm以下の溶剤であることが好ましい。
【0022】
また、任意の溶剤を基準溶剤として、該基準溶剤との比較において、前記高溶解性溶剤、前記高揮発性溶剤、前記低揮発性溶剤または前記低表面張力性溶剤を選定してもよい。
また、前記高溶解性溶剤がγ−ブチロラクトンであり、前記高揮発性溶剤がアニソール、シクロヘキサノンまたはEL(乳酸エチル)であり、前記低揮発性溶剤がγ−ブチロラクトンまたはNMP(N−メチルピロリドン)であり、前記低表面張力性溶剤がPGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)、酢酸ブチル、PGME(プロピレングリコールモノメチルエーテル)またはIPA(イソプロピルアルコール)であることが好ましい。
【0023】
また、プリウエット装置、EBR装置、裏面洗浄装置、ベベル部洗浄装置、ソルベントバス、ソルベントバス内のノズル洗浄装置、カップ洗浄装置および塗布膜の剥離装置から選ばれる二つ以上の前記溶剤使用部へ溶剤を供給することが好ましい。この場合において、前記プリウエット装置に供給される前記高溶解性溶剤と前記高揮発性溶剤と前記低揮発性溶剤と前記低表面張力性溶剤との混合比率が0:0:6:4であることが好ましい。また、前記EBR装置に供給される前記高溶解性溶剤と前記高揮発性溶剤と前記低揮発性溶剤と前記低表面張力性溶剤との混合比率が5:3:0:2であることが好ましい。また、前記裏面洗浄装置に供給される前記高溶解性溶剤と前記高揮発性溶剤と前記低揮発性溶剤と前記低表面張力性溶剤との混合比率が2:6:0:2であることが好ましい。また、前記ベベル部洗浄装置に供給される前記高溶解性溶剤と前記高揮発性溶剤と前記低揮発性溶剤と前記低表面張力性溶剤との混合比率が5:3:0:2であることが好ましい。また、前記ソルベントバスに供給される前記高溶解性溶剤と前記高揮発性溶剤と前記低揮発性溶剤と前記低表面張力性溶剤との混合比率が0:5:5:0であることが好ましい。また、前記ノズル洗浄装置に供給される前記高溶解性溶剤と前記高揮発性溶剤と前記低揮発性溶剤と前記低表面張力性溶剤との混合比率が5:3:0:2であることが好ましい。また、前記カップ洗浄装置に供給される前記高溶解性溶剤と前記高揮発性溶剤と前記低揮発性溶剤と前記低表面張力性溶剤との混合比率が5:3:0:2であることが好ましい。また、前記塗布膜の剥離装置に供給される前記高溶解性溶剤と前記高揮発性溶剤と前記低揮発性溶剤と前記低表面張力性溶剤との混合比率が5:3:0:2であることが好ましい。
【0024】
なお、以上の各溶剤使用部へ供給される溶剤の混合比率の数値は±10%の幅を有していてもよい。例えば、高溶解性溶剤と高揮発性溶剤と低揮発性溶剤と低表面張力性溶剤との混合比率が「5:3:0:2」である場合には、高溶解性溶剤については5±10%(4.5〜5.5の範囲)、高揮発性溶剤については3±10%(2.7〜3.3の範囲)、低表面張力性溶剤については2±10%(1.8〜2.2の範囲)であってもよい。
【0025】
また、本発明の第4の観点は、コンピュータ上で動作し、実行時に、上記第3の観点の溶剤供給方法が行なわれるように前記塗布膜形成装置を制御する、制御プログラムを提供する。
【0026】
また、本発明の第5の観点は、コンピュータ上で動作する制御プログラムが記憶されたコンピュータ読取り可能な記憶媒体であって、前記制御プログラムは、実行時に、上記第3の観点の溶剤供給方法が行なわれるように前記塗布膜形成装置を制御する、コンピュータ読取り可能な記憶媒体を提供する。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、塗布膜形成装置の各溶剤使用部に対し、異なる特性を持つ二種以上の溶剤をそれぞれ貯留する複数の溶剤タンクから前記溶剤を所定の比率で混合して供給する構成としたので、各溶剤使用部において要求される特性に応じて最適な特性を持つ溶剤を供給することができる。これにより、単一の溶剤を使用していた従来の塗布膜形成装置では実現困難であった個々の溶剤使用部における要求特性を満足させることができる。
従って、従来の塗布膜形成装置における課題であった省レジスト化、基板大型化への対応、スループット向上、難溶解性レジストへの対応なども可能になる。また、各溶剤使用部に対し、異なる種類の溶剤を個別に供給する場合に比べて、装置構成を大幅に簡略化することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、図面を参照して、本発明の好ましい実施の形態について詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るレジスト塗布処理装置100の概略構成を示す図面であり、図2はレジスト塗布処理装置100の平面図である。このレジスト塗布処理装置は、図示しないウエハ搬送機構の保持部材が進入するための開口10aが形成されたケーシング10を有している。ケーシング10の中には、ウエハWを収容する収容容器であるカップCPが設けられ、そのカップ内にウエハWを真空吸着によって水平に保持するスピンチャック11が設けられている。このスピンチャック11は、カップCPの下方に設けられたパルスモーターなどの駆動モータ12によって回転可能となっており、その回転速度も任意に制御可能となっている。カップCPの底部の中央寄りの部分には排気管13が接続され、また外側よりの部分には排液管14が接続されている。そして、排気管13からカップCP内の気体が排気されるとともに、排液管14からは、塗布処理にともなって飛散したレジスト液や溶剤が排出される。なお、スピンチャック11は、図示しないエアシリンダー等の昇降機構により昇降可能となっている。
【0029】
スピンチャック11の上方には、スピンチャック11の直上位置と退避位置との間で移動可能に噴頭20が設けられており、この噴頭20はアーム21を介して駆動機構30に連結され、駆動機構30により図1および図2に示したX方向、Y方向およびZ方向に移動されるようになっている。なお、噴頭20はアーム21に対して着脱自在となっている。
【0030】
噴頭20は、ベース部材22を有し、塗布液であるレジスト液を供給するレジスト液供給ノズル40と、塗布液を溶解させ得る溶剤を供給するプリウエットノズル50とが互いに近接した状態でベース部材22に取り付けられている。
【0031】
噴頭20には、レジスト液供給ノズル40から吐出されるレジスト液の温度が一定になるように温度調節するために温度調節流体を循環するチューブ25a,25b、および、プリウエットノズル50から吐出される溶剤の温度が一定になるように温度調節するために温度調節流体を循環するチューブ26a,26bが設けられている。チューブ25aはレジスト液供給ノズル40に連続する配管の周囲に設けられて往路を構成し、チューブ25bは復路を構成している。また、チューブ26aはプリウエットノズル50に連続する配管の周囲に設けられて往路を構成し、チューブ26bは復路を構成している。
【0032】
図2に示すように、ケーシング10内のカップCPの外側部分には、基本的に同一の構造を有する4つの噴頭20を保持可能な保持部15が設けられている。保持部15には各ノズルのノズル口を乾燥固化させないように、各ノズルのノズル口を溶剤雰囲気に置くための挿入部(図示せず)が設けられている。この挿入部を介してレジスト液供給ノズル40が溶剤雰囲気のソルベントバス80(図3参照)内に挿入され、その中で溶剤雰囲気に曝されることでノズル先端のレジスト液が固化または劣化しないように構成されている。
【0033】
各噴頭20は、取り付け部23によりアーム21の先端部に取り付け可能となっており、それぞれ異なる種類のレジスト液を供給するようになっている。そして、これらのうち選択された一つがアーム21に取り付けられて保持部15から取り出される。上述したように、アーム21は駆動機構30により三次元移動、すなわちX、Y、Z方向への移動が可能であり、保持部15から取り出されてアーム21に装着された噴頭20が、処理に際してウエハWの直上の所定位置まで移動される。なお、ここでは、レジスト液供給ノズル40とプリウエットノズル50とを噴頭20に取り付け、この噴頭20を4つ準備して保持部15に設けているが、1つまたはそれ以上のプリウエットノズル50をアーム21に直接固定し、噴頭20にはレジスト液供給ノズル40のみを設けるようにしてもよい。
【0034】
レジスト液供給ノズル40は、レジスト液供給配管41を介してレジスト液を収容するレジスト液タンク42に連通されている。このレジスト液供給配管41には、サックバックバルブ43、エアーオペレーションバルブ44、レジスト液中の気泡を分離除去するための気泡除去機構45、フィルタ46およびベローズポンプ47が下流側からその順に設けられている。このベローズポンプ47は伸縮可能に構成され、この伸縮が制御されることにより所定量のレジスト液がレジスト液供給ノズル40を介してウエハWの表面に供給される。このベローズポンプ47により極めて少量のレジスト液の供給量制御が可能となる。この駆動部は、一端がベローズポンプの一端に取り付けられたネジ48aと、このネジに螺合されるナット48bとからなるボールネジ機構48と、このナット48bを回転させることによりネジ48aを直線動させるステッピングモータ49とにより構成されている。
【0035】
上記レジスト液供給系に設けられたサックバックバルブ43は、レジスト液供給ノズル40からのレジスト液吐出後、レジスト液供給ノズル40の先端内壁部に表面張力によって残留しているレジスト液をレジスト液供給ノズル40内に引き戻し、これによって残留レジスト液の固化を阻止するためのものである。
【0036】
プリウエットノズル50は、分岐管51aおよび溶剤供給管52を介して複数種類の溶剤を個別に貯留する溶剤タンク(図4参照)を備えた溶剤供給源53に接続されている。溶剤供給管52の途中には二種以上の溶剤を混合する混合装置としてのスタティックミキサー54が介在配備されている。なお、図1では代表的に溶剤供給源53とプリウエットノズル50との接続のみを図示しているが、本実施形態に係る溶剤供給機構では、溶剤供給源53は、レジスト塗布処理装置100において溶剤を使用する各溶剤使用部に接続されている。この溶剤供給機構の構成については、後で詳述する。
【0037】
図1に示すように、レジスト塗布処理装置100の各構成部は、制御部60に接続されて制御される構成となっている。制御部60は、CPUを備えたコントローラ61を有しており、このコントローラ61には、工程管理者がレジスト塗布処理装置100を管理するためにコマンドの入力操作等を行うキーボードや、レジスト塗布処理装置100の稼働状況を可視化して表示するディスプレイ等からなるユーザーインタフェース62が接続されている。また、コントローラ61には、レジスト塗布処理装置100で実行される各種処理をコントローラ61の制御にて実現するための制御プログラムや処理条件データ等が記録されたレシピが格納された記憶部63が接続されている。
【0038】
そして、必要に応じて、ユーザーインタフェース62からの指示等によって任意のレシピを記憶部63から呼び出してコントローラ61に実行させることで、コントローラ61の制御下で、レジスト塗布処理装置100において所望の処理が行われる。また、前記レシピは、例えば、CD−ROM、ハードディスク、フレキシブルディスク、フラッシュメモリなどのコンピュータ読み取り可能な記憶媒体に格納された状態のものを利用したり、あるいは、他の装置から、例えば専用回線を介して随時伝送させて利用したりすることも可能である。
【0039】
次に、このように構成されるレジスト塗布処理装置における処理の概要について説明する。
まず、図示しないウエハ搬送装置によってケーシング10の開口10aを通ってレジスト塗布処理装置内のカップCPの真上までウエハWが搬送される。その状態でウエハWは、図示しない昇降機構によって上昇してきたスピンチャック11によって真空吸着される。次いで、スピンチャック11はウエハWがカップCP内の定位置になるまで下降される。そして、駆動モータ12によってスピンチャック11を所定の回転速度で回転させ、ウエハWの温度を均一にする。
【0040】
その後、スピンチャック11の回転を停止させ、駆動機構30によって噴頭20をY方向に沿ってウエハWの直上位置まで移動させる。そして、プリウエットノズル50の吐出口がスピンチャック11の中心(ウエハWの中心)上方に到達したところで、プリウエットノズル50からレジストに対して溶解性を有する所定の溶剤を静止しているウエハW表面の略中心に供給する。この際に、後述するように、溶剤供給源53から所望の比率で複数種類の溶剤が供給され、スタティックミキサー54により混合された後、分岐管51aを介してプリウエットノズル50に供給される。
【0041】
このようにして溶剤を供給した後、所定の回転速度でウエハWを回転させる。これにより、ウエハW表面に供給された溶剤は遠心力によってウエハWの中心からその周囲に拡散し、ウエハWの全面にむらなく広がる。なお、ウエハWを回転させながら溶剤をウエハW上に供給するようにしてもよい。また、例えばスプレーを用いてウエハ全面に溶剤を塗布することもできる。この場合に、スプレーはウエハWを回転しながら行ってもよいしウエハWを停止した状態で行ってもよい。
【0042】
続いて、駆動機構30によりレジスト液供給ノズル40の吐出口がスピンチャック11の中心(ウエハWの中心)上に到達するまで噴頭20をY方向に移動し、ウエハWの回転速度を所定値まで上昇させて、レジスト液供給ノズル40の吐出口からレジスト液を回転するウエハW表面の略中心に供給し、遠心力によりレジスト液を外方に拡散させ、ウエハW表面へのレジスト塗布を行う。このようにしてウエハWを回転させながらレジスト液を供給した後、レジスト液の供給を停止し、ウエハWの回転速度を減速する。これにより、膜厚調整機能が発揮され、ウエハW面内の膜厚が均一化される。その後、ウエハWの回転速度を上昇させて、残余のレジスト液を振り切る。その後、さらにウエハWの回転を継続させ、レジスト膜を乾燥させる。この乾燥工程を所定時間行った後、レジスト塗布工程が終了する。
【0043】
以上のように、レジスト液の塗布に先だって、レジストが溶解する溶剤をウエハWの全面に塗布することにより、その後のレジスト液塗布の際に十分にレジスト液を拡散させる効果を発揮させることができる。この際、使用する溶剤として、例えばレジストに対する溶解性の高い溶剤と、揮発性の低い溶剤とを混合したものを用いることにより、その揮発が抑制され、省レジスト化を図ることができる。
【0044】
レジスト膜を乾燥させた後は、ウエハエッジ部のレジスト除去(EBR;エッジ・ビード・リムーブ)処理、ウエハWの裏面洗浄処理、ウエハベベル部のレジスト除去処理が行なわれる。これらの処理を含め、レジスト塗布処理装置100において溶剤を使用する処理と、各処理が行なわれる各溶剤使用部へ溶剤を供給する溶剤供給機構について、図3および図4を参照しつつ説明する。
【0045】
レジスト塗布処理装置100で溶剤を使用する処理としては、例えば(1)プリウエット処理、(2)EBR処理、(3)ウエハの裏面洗浄処理、(4)ウエハベベル部のレジスト除去処理、(5)ソルベントバス内での溶剤雰囲気曝露、(6)ソルベントバス内でのレジスト液供給ノズル40の先端部の洗浄処理、(7)定期的に実施されるカップ洗浄処理、(8)塗布膜(レジスト)の剥離処理等を挙げることができる。
【0046】
上記(1)のプリウエット処理は、前記のとおり、溶剤使用部としてプリウエットノズル50を用いて行なうことができる。また、プリウエットノズル50は、上記(8)の塗布膜(レジスト)の剥離処理の際の溶剤吐出にも使用できる。なお、上記(1)のプリウエット処理と上記(8)の剥離処理は別々のノズルによって行なってもよい。
【0047】
上記(2)のEBR処理は、図3に示すように、ウエハWの周縁部に対して斜め上方から溶剤を吐出できるように配置されたEBRノズル70により行なうことができる。このEBRノズル70は、分岐管51bおよび溶剤供給管52を介して溶剤供給源53に接続されている。
【0048】
上記(3)のウエハの裏面洗浄処理は、図3に示すようにウエハWの下方からウエハ裏面へ向けて溶剤を吐出できるように配置された裏面洗浄ノズル71により行なうことができる。この裏面洗浄ノズル71は、分岐管51cおよび溶剤供給管52を介して溶剤供給源53に接続されている。
また、上記(4)のウエハベベル部のレジスト除去処理についても、裏面洗浄ノズル71を用いて行なうことができる。つまり、裏面洗浄ノズル71による溶剤吐出角度を変化させることにより裏面洗浄とベベル部洗浄を切替えることができる。さらに、裏面洗浄ノズル71は、上記(7)のカップ洗浄処理の際にも使用できる。このカップ洗浄処理の際には、ウエハWに代えて円盤状の洗浄用器具(図示せず)をスピンチャック11に装着した状態で、スピンチャック11を高速回転させながら、裏面洗浄ノズル71から洗浄用器具内に溶剤を吐出する。そして、洗浄用器具の回転の遠心力を利用し、洗浄用器具の周部に形成された吐出孔から溶剤をカップCPの内壁面に吐出することにより、カップCPの内壁面に付着したレジスト等を洗い流す。なお、裏面洗浄ノズル71とは別に、ベベル部洗浄用およびカップ洗浄用にそれぞれ溶剤吐出ノズルを設け、ベベル部洗浄およびカップ洗浄を行なうようにしてもよい。
【0049】
上記(5)のソルベントバス内での溶剤雰囲気曝露は、図3に示すように、保持部15に設けられたソルベントバス80内に溶剤を入れて内部を高濃度の溶剤雰囲気にしておき、そこにレジスト液供給ノズル40を挿入することにより行なわれる。このソルベントバス80は、分岐管51dおよび溶剤供給管52を介して溶剤供給源53に接続されている。
【0050】
また、上記(6)のソルベントバス80内でのレジスト液供給ノズル40の先端部の洗浄処理は、ソルベントバス80に配備された洗浄用ノズル81から、レジスト液供給ノズル40の先端部へ向けて溶剤を吐出することによって行なうことができる。この洗浄用ノズル81は、分岐管51eおよび溶剤供給管52を介して溶剤供給源53に接続されている。
【0051】
そして、各溶剤使用部(本実施形態では、プリウエットノズル50、EBRノズル70、裏面洗浄ノズル71、ソルベントバス80および洗浄用ノズル81)に接続された各分岐管51a〜51eは、溶剤供給源53に接続された一本の溶剤供給管52から分岐した枝分かれ構造をなしており、この溶剤供給管52には混合装置であるスタティックミキサー54が配備されている。
【0052】
図4は、本実施形態に係る溶剤供給機構の概略構成を示すブロック図である。前記のとおり、溶剤供給源53は、複数種、例えば4種類の溶剤を別々に貯留できるよう溶剤タンク55a〜55dを備えている。各溶剤タンク55a〜55dには、それぞれ溶剤供給管52a〜52dが接続されている。各溶剤供給管52a〜54dの途中には、それぞれ流量制御弁56a〜56dが設けられており、供給される溶剤の流量を調節できるように構成されている。なお、溶剤供給管52a〜52dにマスフローコントローラなどの流量調節手段やマスフローメータなどの流量計測器を設けてもよい。
【0053】
各溶剤タンク55a〜55dに接続された溶剤供給管52a〜52dは、途中で1本の溶剤供給管52に統合された後、スタティックミキサー54の後段で再び分岐管51a〜51eに分岐し、前記各溶剤使用部に接続している。各分岐管51a〜51eには、それぞれ開閉弁57a〜57eが設けられ、各溶剤使用部への溶剤供給の切替えができるように構成されている。これにより、図示しない送液ポンプ等により2つ以上の溶剤タンク55a〜55dから供給された溶剤は、スタティックミキサー54で十分に混合された状態となって目的の溶剤使用部へ向けて送液される構成となっている。
【0054】
本実施形態においては、各溶剤使用部において求められる特性に応じて、レジストの溶解性、揮発性および表面張力の3つの観点から溶剤のグループ分けをしている。各溶剤使用部での処理において、溶剤に求められる特性はそれぞれ以下に示す通りである。
【0055】
(1)プリウエット:難揮発性(省レジスト効果を高めるため)
(2)EBR:高溶解性
(3)ウエハの裏面洗浄:高揮発性(乾燥工程の短縮化のため)
(4)ウエハベベル部のレジスト除去:高溶解性
(5)ソルベントバス内の溶剤雰囲気形成:高揮発性
(6)ソルベントバス内でのレジスト液供給ノズル40の先端部の洗浄:高溶解性
(7)カップ洗浄:高溶解性
(8)塗布膜の剥離処理:高溶解性
また、上記特性に加え、例えば上記(1)〜(4)の処理の場合には、溶剤の表面張力も重要な要素となる。
【0056】
以上のように溶剤使用部において求められる溶剤特性は相違することから、本実施形態に係る溶剤タンク55a〜55dでは、高溶解性溶剤、高揮発性溶剤、低揮発性溶剤および低表面張力性溶剤を準備している。そして、これらの溶剤を目的に応じて所定の比率で混合して上記(1)〜(8)の処理に用いる各溶剤使用部へ供給することにより、各溶剤使用部における溶剤の特性を最適化している。
【0057】
溶剤タンク55aは、レジストに対して高い溶解性を示す高溶解性の溶剤Aを貯留している。溶剤タンク55bは、高い揮発性を示す高揮発性の溶剤Bを貯留している。溶剤タンク55cは、揮発性の低い低揮発性の溶剤Cを貯留している。溶剤タンク55dは、表面張力の低い低表面張力性の溶剤Dを貯留している。ここで、一つの溶剤は必ず複数の特性を有していることから、溶解性、揮発性および表面張力の高低は、任意の溶剤を基準として、その溶剤との比較において相対的に決定することができる。例えば、レジスト塗布処理装置100で使用されるレジストの種類(例えばArFレジストなど)に応じ、溶解性を重視して高溶解性のγ−ブチロラクトン(溶剤A)を基準溶剤として選択した場合には、このγ−ブチロラクトンとの比較において、揮発性、表面張力の相対的な大小関係から、高揮発性の溶剤B、低揮発性の溶剤Cおよび低表面張力性の溶剤Dをそれぞれ選定することができる。なお、上記の例ではγ−ブチロラクトンが基準溶剤であり、かつ選定対象の一つ(高溶解性溶剤)でもあるが、基準溶剤は選定対象の溶剤とは全く別の溶剤であってもよい。
また、溶解性、揮発性および表面張力の高低は、各特性を示す溶剤の物性に応じて決定することも可能である。この場合、例えば溶解度パラメータが22(J/cm1/2以上のものを高溶解性溶剤、沸点が160℃以下のものを高揮発性溶剤、沸点が180℃以上のものを低揮発性溶剤、表面張力が30dyn/cm以下のものを低表面張力性溶剤とすることができる。
【0058】
溶剤としては、レジストが溶解するもの典型的にはシンナーなどの有機溶剤が用いられる。溶剤は、単一の化学物質により構成されるものだけでなく、ある溶剤特性を持つように配合された複数の化学物質により構成されるものも含まれる。
レジスト溶解性の高い高溶解性シンナーとしては、例えばγ−ブチロラクトン、NMP(n−メチルピロリドン)等の溶剤を用いることができる。
【0059】
揮発性の高い高揮発性シンナーとしては、例えば、アニソール(沸点約155℃)、シクロヘキサノン(沸点155℃)、EL(乳酸エチル;沸点約154℃)等の溶剤を用いることができる。
【0060】
揮発性が低い低揮発性シンナーとしては、例えば、γ−ブチロラクトン(沸点約200℃)、NMP(沸点約202℃)等の溶剤を用いることができる。
【0061】
表面張力が低い低表面張力性シンナーとしては、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA;沸点約145℃、表面張力27.4dyn/cm)、酢酸ブチル(沸点125℃;表面張力24.8dyn/cm)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME;沸点約118℃;表面張力約27.1dyn/cm)、IPA(沸点約83℃;21.0dyn/cm)等の溶剤を用いることができる。
【0062】
溶剤の選定において、レジスト等の塗布液を溶解させる性質(溶解性)は不可欠の要素である。様々な膜(BARC、レジスト、保護膜、下層膜等)を形成するための塗布液成分に対する溶解力を考えた場合、上記溶剤の中でもγ−ブチロラクトンが最も有効な溶剤である。γ−ブチロラクトンは高い溶解性を有する反面、難揮発性(沸点200℃強)という性質も有している。このため、γ−ブチロラクトンを単独で使用する場合には、揮発に時間を要するためスループット低下への影響が大きい。従って、γ−ブチロラクトンと揮発性が高い溶剤例えばアニソール、シクロヘキサノンなどを組み合わせて使用することが好ましい。さらに、高揮発性・低表面張力性を併有する溶剤として、PGMEA、酢酸ブチル等を組み合わせて使用することが好ましい。
【0063】
ここで、各溶剤使用部に供給される高溶解性の溶剤A、高揮発性の溶剤B、低揮発性の溶剤Cおよび低表面張力性の溶剤Dの好適な混合比率A:B:C:Dの一例を示す。
(1)プリウエット:
上記混合比率A:B:C:Dにおいて、A=0、B=0、C=5.4〜6.6、D=3.6〜4.4とすることが好ましく、A=0、B=0、C=6、D=4とすることがより好ましい。
(2)EBR:
上記混合比率A:B:C:Dにおいて、A=4.5〜5.5、B=2.7〜3.3、C=0、D=1.8〜2.2とすることが好ましく、A=5、B=3、C=0、D=2とすることがより好ましい。
(3)ウエハの裏面洗浄:
上記混合比率A:B:C:Dにおいて、A=1.8〜2.2、B=5.4〜6.6、C=0、D=1.8〜2.2とすることが好ましく、A=2、B=6、C=0、D=2とすることがより好ましい。
(4)ウエハベベル部のレジスト除去:
上記混合比率A:B:C:Dにおいて、A=4.5〜5.5、B=2.7〜3.3、C=0、D=1.8〜2.2とすることが好ましく、A=5、B=3、C=0、D=2とすることがより好ましい。
(5)ソルベントバス内の溶剤雰囲気形成:
上記混合比率A:B:C:Dにおいて、A=0、B=4.5〜5.5、C=4.5〜5.5、D=0とすることが好ましく、A=0、B=5、C=5、D=0とすることがより好ましい。
(6)ソルベントバス内でのノズル先端部の洗浄:
上記混合比率A:B:C:Dにおいて、A=4.5〜5.5、B=2.7〜3.3、C=0、D=1.8〜2.2とすることが好ましく、A=5、B=3、C=0、D=2とすることがより好ましい。
(7)カップ洗浄:
上記混合比率A:B:C:Dにおいて、A=4.5〜5.5、B=2.7〜3.3、C=0、D=1.8〜2.2とすることが好ましく、A=5、B=3、C=0、D=2とすることがより好ましい。
(8)塗布膜の剥離処理:
上記混合比率A:B:C:Dにおいて、A=4.5〜5.5、B=2.7〜3.3、C=0、D=1.8〜2.2とすることが好ましく、A=5、B=3、C=0、D=2とすることがより好ましい。
【0064】
流量制御弁56a〜56dにおける流量制御および開閉弁57a〜57eによる溶剤供給の切替えは、上記(1)〜(8)の各処理工程を行なう際に手動で行なってもよいが、各溶剤使用部に対応した溶剤の混合比率を予め規定したレシピに基づき、制御部60の制御の下で自動化することも可能である。図5に、前記レシピが記録されたテーブルTの一例を示す。このテーブルTは、例えばレジスト塗布処理装置100で使用されるレジストの種類、ウエハWの径、工程時間などの基本条件毎に個別に作成されており、各溶剤使用部における溶剤A〜溶剤Dの最適な混合比率を規定しているものである。なお、テーブルTには、溶剤の混合比率だけでなく流量、設定温度などの他の情報も含めることができる。
【0065】
そして、例えば作業者がユーザーインタフェース62を介して前記基本条件に関する情報(例えば塗布液の種類)を入力しておくことにより、上記(1)〜(8)の各処理を実行する際にコントローラ61が記憶部63に保存されたテーブルTを読み出す。コントローラ61は、テーブルTを参照することにより、入力された情報に応じて各処理工程における各溶剤の供給量および混合比率を最適配分する。すなわち、コントローラ61は、各溶剤タンク55a〜55dに対応して設けられた流量制御弁56a〜56dにおける流量の制御、および各溶剤使用部に対応して設けられた開閉弁57a〜57eによる溶剤供給の切替えを行なうように制御信号を送出する。このようにして、レジストの種類などの処理条件を入力するだけで、基本条件に応じて各溶剤使用部へ向けて最適な比率で溶剤を自動供給することが可能になる。
【0066】
以下、実施例を挙げ、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれによって制約されるものではない。
実施例1
図1のレジスト塗布処理装置100において、高溶解性溶剤且つ低揮発性溶剤としてγ−ブチロラクトン(a)、高揮発性溶剤としてアニソール(b)、低表面張力性溶剤としてPGME(c)を用い、これらの溶剤a〜cを各溶剤使用部へ以下の比率で供給することにより、各溶剤使用部において所定の処理を行なった。レジストとしてはArFレジストを用い、ウエハWは300mm径のものを使用した。
【0067】
(1)プリウエット:
a:b:c=6:0:4
(2)EBR:
a:b:c=5:3:2
(3)ウエハの裏面洗浄:
a:b:c=2:6:2
(4)ウエハベベル部のレジスト除去:
a:b:c=5:3:2
(5)ソルベントバス内の溶剤雰囲気形成:
a:b:c=5:5:0
(6)ソルベントバス内でのノズル先端部の洗浄:
a:b:c=5:3:2
(7)カップ洗浄:
a:b:c=5:3:2
(8)塗布膜の剥離処理:
a:b:c=5:3:2
【0068】
なお、各溶剤使用部へ供給される溶剤の混合比率における各数値は±10%の幅を有していてもよい。例えば、高溶解性溶剤(かつ低揮発性溶剤)と高揮発性溶剤と低表面張力性溶剤との混合比率が「5:3:2」である場合には、高溶解性溶剤については5±10%(4.5〜5.5の範囲)、高揮発性溶剤については3±10%(2.7〜3.3の範囲)、低表面張力性溶剤については2±10%(1.8〜2.2の範囲)であってもよい。
【0069】
本実施例では、上記混合比率により高溶解性溶剤(かつ低揮発性溶剤)と高揮発性溶剤と低表面張力性溶剤を適宜混合して各溶剤使用部へ供給した結果、各溶剤使用部における要求特性を満足させることができた。
【0070】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されず、種々の変形が可能である。例えば、上記実施の形態では、半導体ウエハにレジスト液を塗布する塗布膜形成装置について説明したが、半導体ウエハ以外の他の被処理基板、例えばLCD基板にレジスト液を塗布する場合にも本発明を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】レジスト塗布処理装置の全体構成を示す図面。
【図2】図1に示したレジスト塗布処理装置の平面図。
【図3】レジスト塗布ユニットにおける各溶剤使用部への溶剤供給経路を示す図面。
【図4】溶剤供給機構の全体構成を示すブロック図。
【図5】レシピが記録されたテーブルの一例を示す図面。
【符号の説明】
【0072】
11;スピンチャック(基板保持部材)
12;駆動モータ(回転手段)
20;噴頭
30;駆動機構
40;レジスト液供給ノズル
50;プリウエットノズル
51a,51b,51c,51d,51e;分岐管
52;溶剤供給管
52a,52b,52c,52d;溶剤供給管
54;スタティックミキサー
55a,55b,55c,55d;溶剤タンク
60;制御部
70;EBRノズル
71;裏面洗浄ノズル
80;ソルベントバス
81;洗浄用ノズル
100;レジスト塗布処理装置
W;半導体ウエハ(被処理基板)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理基板に塗布液を供給して塗布膜を形成する塗布膜形成装置において前記塗布液を溶解させ得る溶剤を使用して処理を行なう複数の溶剤使用部に対し、前記溶剤を供給する溶剤供給機構であって、
塗布液に対する溶解性、揮発性および表面張力から選ばれる二つ以上の特性に基づき区分された二種以上の溶剤(ただし、一つの溶剤が二つ以上の特性を併有する場合も含む)をそれぞれ貯留する複数の溶剤貯留部と、
前記溶剤貯留部と前記溶剤使用部とを接続し、各溶剤使用部へ向けて前記溶剤を所定の比率で混合して供給する溶剤供給路と、
を備えた、溶剤供給機構。
【請求項2】
前記溶剤供給路に、異なる種類の溶剤を混合する混合装置を備えた、請求項1に記載の溶剤供給機構。
【請求項3】
高溶解性溶剤、高揮発性溶剤、低揮発性溶剤および低表面張力性溶剤から二種以上を選定し、前記溶剤貯留部に貯留した請求項1または請求項2に記載の溶剤供給機構。
【請求項4】
前記高溶解性溶剤は、溶解度パラメータが22(J/cm1/2以上の溶剤である、請求項3に記載の溶剤供給機構。
【請求項5】
前記高揮発性溶剤は、沸点が160℃以下の溶剤である、請求項3または請求項4に記載の溶剤供給機構。
【請求項6】
前記低揮発性溶剤は、沸点が180℃以上の溶剤である、請求項3から請求項5のいずれか1項に記載の溶剤供給機構。
【請求項7】
前記低表面張力性溶剤は、表面張力が30dyn/cm以下の溶剤である、請求項3から請求項6のいずれか1項に記載の溶剤供給機構。
【請求項8】
任意の溶剤を基準溶剤として、該基準溶剤との比較において、前記高溶解性溶剤、前記高揮発性溶剤、前記低揮発性溶剤または前記低表面張力性溶剤を選定した、請求項3に記載の溶剤供給機構。
【請求項9】
前記高溶解性溶剤がγ−ブチロラクトンであり、前記高揮発性溶剤がアニソール、シクロヘキサノンまたはEL(乳酸エチル)であり、前記低揮発性溶剤がγ−ブチロラクトンまたはNMP(N−メチルピロリドン)であり、前記低表面張力性溶剤がPGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)、酢酸ブチル、PGME(プロピレングリコールモノメチルエーテル)またはIPA(イソプロピルアルコール)である、請求項3に記載の溶剤供給機構。
【請求項10】
前記溶剤使用部として、プリウエット装置、EBR装置、裏面洗浄装置、ベベル部洗浄装置、ソルベントバス、ソルベントバス内のノズル洗浄装置、カップ洗浄装置および塗布膜の剥離装置から選ばれる二つ以上を備えた、請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の溶剤供給機構。
【請求項11】
被処理基板を略水平に保持する基板保持部材と、
前記基板保持部材に保持された被処理基板に対し、塗布液を溶解させ得る溶剤を供給する溶剤供給手段と、
前記基板保持部材に保持された被処理基板に塗布液を供給する塗布液供給手段と、
請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の溶剤供給機構と
を具備した、塗布膜形成装置。
【請求項12】
さらに、予め作製されたレシピに基づき、前記溶剤貯留部から前記溶剤使用部へ供給される溶剤の混合比率を制御する制御部を備えた、請求項11に記載の塗布膜形成装置。
【請求項13】
被処理基板に塗布液を供給して塗布膜を形成する塗布膜形成装置において前記塗布液を溶解させ得る溶剤を使用して処理を行なう複数の溶剤使用部に対し、前記溶剤を供給する溶剤供給方法であって、
塗布液に対する溶解性、揮発性および表面張力から選ばれる二つ以上の特性に基づき区分された二種以上の溶剤(ただし、一つの溶剤が二つ以上の特性を併有する場合も含む)をそれぞれ貯留する複数の溶剤貯留部から、各溶剤使用部へ向けて前記溶剤を所定の比率で混合して供給する、溶剤供給方法。
【請求項14】
高溶解性溶剤、高揮発性溶剤、低揮発性溶剤および低表面張力性溶剤から二種以上を選定して用いる、請求項13に記載の溶剤供給方法。
【請求項15】
前記高溶解性溶剤は、溶解度パラメータが22(J/cm1/2以上の溶剤である、請求項14に記載の溶剤供給方法。
【請求項16】
前記高揮発性溶剤は、沸点が160℃以下の溶剤である、請求項14または請求項15に記載の溶剤供給方法。
【請求項17】
前記低揮発性溶剤は、沸点が180℃以上の溶剤である、請求項14から請求項16のいずれか1項に記載の溶剤供給方法。
【請求項18】
前記低表面張力性溶剤は、表面張力が30dyn/cm以下の溶剤である、請求項14から請求項17のいずれか1項に記載の溶剤供給方法。
【請求項19】
任意の溶剤を基準溶剤として、該基準溶剤との比較において、前記高溶解性溶剤、前記高揮発性溶剤、前記低揮発性溶剤または前記低表面張力性溶剤を選定して用いる、請求項14に記載の溶剤供給方法。
【請求項20】
前記高溶解性溶剤がγ−ブチロラクトンであり、前記高揮発性溶剤がアニソール、シクロヘキサノンまたはEL(乳酸エチル)であり、前記低揮発性溶剤がγ−ブチロラクトンまたはNMP(N−メチルピロリドン)であり、前記低表面張力性溶剤がPGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)、酢酸ブチル、PGME(プロピレングリコールモノメチルエーテル)またはIPA(イソプロピルアルコール)である、請求項14に記載の溶剤供給方法。
【請求項21】
プリウエット装置、EBR装置、裏面洗浄装置、ベベル部洗浄装置、ソルベントバス、ソルベントバス内のノズル洗浄装置、カップ洗浄装置および塗布膜の剥離装置から選ばれる二つ以上の前記溶剤使用部へ溶剤を供給する、請求項13から請求項20のいずれか1項に記載の溶剤供給方法。
【請求項22】
前記プリウエット装置に供給される前記高溶解性溶剤と前記高揮発性溶剤と前記低揮発性溶剤と前記低表面張力性溶剤との混合比率が0:0:6:4である、請求項21に記載の溶剤供給方法。
【請求項23】
前記EBR装置に供給される前記高溶解性溶剤と前記高揮発性溶剤と前記低揮発性溶剤と前記低表面張力性溶剤との混合比率が5:3:0:2である、請求項21に記載の溶剤供給方法。
【請求項24】
前記裏面洗浄装置に供給される前記高溶解性溶剤と前記高揮発性溶剤と前記低揮発性溶剤と前記低表面張力性溶剤との混合比率が2:6:0:2である、請求項21に記載の溶剤供給方法。
【請求項25】
前記ベベル部洗浄装置に供給される前記高溶解性溶剤と前記高揮発性溶剤と前記低揮発性溶剤と前記低表面張力性溶剤との混合比率が5:3:0:2である、請求項21に記載の溶剤供給方法。
【請求項26】
前記ソルベントバスに供給される前記高溶解性溶剤と前記高揮発性溶剤と前記低揮発性溶剤と前記低表面張力性溶剤との混合比率が0:5:5:0である、請求項21に記載の溶剤供給方法。
【請求項27】
前記ノズル洗浄装置に供給される前記高溶解性溶剤と前記高揮発性溶剤と前記低揮発性溶剤と前記低表面張力性溶剤との混合比率が5:3:0:2である、請求項21に記載の溶剤供給方法。
【請求項28】
前記カップ洗浄装置に供給される前記高溶解性溶剤と前記高揮発性溶剤と前記低揮発性溶剤と前記低表面張力性溶剤との混合比率が5:3:0:2である、請求項21に記載の溶剤供給方法。
【請求項29】
前記塗布膜の剥離装置に供給される前記高溶解性溶剤と前記高揮発性溶剤と前記低揮発性溶剤と前記低表面張力性溶剤との混合比率が5:3:0:2である、請求項21に記載の溶剤供給方法。
【請求項30】
コンピュータ上で動作し、実行時に、請求項13から請求項29のいずれか1項に記載された溶剤供給方法が行なわれるように前記塗布膜形成装置を制御する、制御プログラム。
【請求項31】
コンピュータ上で動作する制御プログラムが記憶されたコンピュータ読取り可能な記憶媒体であって、前記制御プログラムは、実行時に、請求項13から請求項29のいずれか1項に記載された溶剤供給方法が行なわれるように前記塗布膜形成装置を制御する、コンピュータ読取り可能な記憶媒体。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−324393(P2007−324393A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−153413(P2006−153413)
【出願日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】