説明

塗布膜形成装置及び塗布膜形成方法

【課題】ノズルのプライミング処理に用いる洗浄液の消費量を低減することができ、且つ、前記基板への塗布膜形成の際に、スリット状のノズル吐出口から塗布液を均一に吐出する。
【解決手段】ノズル16に塗布液を供給する塗布液供給手段20,32,33と、前記ノズルを、その長手方向を軸として回動させ、前記吐出口を上方に臨む状態とするノズル回動手段25と、前記塗布液供給手段と前記ノズル回動手段の駆動制御を行う制御手段50とを備え、前記制御手段は、前記プライミング処理において、前記ノズル回動手段により前記ノズルを回動させて前記吐出口が上方に臨む状態とし、前記塗布液供給手段により前記ノズルに所定量の塗布液を供給し、前記吐出口から前記塗布液を吐出させることにより、前記吐出口上に前記塗布液の隆起部R1を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被処理基板を平流し搬送しながら基板に塗布膜を形成する塗布膜形成装置及び塗布膜形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、FPD(フラットパネルディスプレイ)の製造においては、いわゆるフォトリソグラフィ工程により回路パターンを形成することが行われている。
前記フォトリソグラフィ工程は、具体的には次のように行われる。
先ず、ガラス基板等の被処理基板に所定の膜を成膜した後、塗布液であるフォトレジスト(以下、レジストと呼ぶ)が塗布されレジスト膜が形成される。そして、回路パターンに対応してレジスト膜が露光され、これが現像処理される。
【0003】
このようなフォトリソグラフィ工程において、被処理基板にレジスト液を塗布してレジスト膜を形成する方法として、スリット状のノズル吐出口からレジスト液を帯状に吐出し、レジストを基板上に塗布する方法がある。
この方法を用いた従来のレジスト塗布装置について、図12を用いて簡単に説明する。
図12に示すレジスト塗布装置200は、基板Gを載置するステージ201と、このステージ201の上方に配設されるレジスト供給ノズル202と、このノズル202を移動させるノズル移動手段203とを具備している。
レジスト供給ノズル202には、基板の幅方向に延びる微小隙間を有するスリット状の吐出口202aが設けられ、レジスト液供給源204から供給されたレジスト液Rを吐出口202aから吐出するようになされている。
【0004】
また、スリット状の吐出口202aは、微小な隙間により形成されているため、待機中においてノズル先端のメンテナンス処理を施さなければ、レジスト液の乾燥等により目詰まりが生じる。目詰まりしたノズル202を用いると、図13に示すように不均一に液だれし、吐出口202aから均一にレジスト液を吐出できない虞がある。
このため、ノズル先端に付着したレジスト液Rを均一化する(プライミング処理と呼ぶ)ための回転自在なプライミングローラ207を備えた待機部208がステージ201に隣接して設けられている。
【0005】
この構成において、基板Gへのレジスト塗布時にあっては、ノズル202をノズル移動手段203によって水平移動させながら、スリット状の吐出口202aからレジスト液Rを基板の表面全体に帯状に吐出することにより、レジスト液Rの塗布処理がなされる。
また、ノズル202の待機時にあっては、前記待機部208においてプライミング処理が行われる。このプライミング処理では、先ずノズル202がノズル移動手段203によって待機部208に移動され、回転駆動されるプライミングローラ207の表面に向けて、スリット状の吐出口202aからレジスト液Rの吐出がなされる。
【0006】
このプライミング処理を、基板Gへの塗布を行わない待機時に行うことにより、吐出口202aの乾燥、目詰まりが防止されて、基板Gへの塗布時に、スリット状の吐出口202aから均一にレジスト液Rを吐出することができる。
尚、このようなレジスト液等の塗布膜形成装置の構成については特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−270932号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで前記プライミング処理にあっては、回転駆動されるプライミングローラ207の表面に対し、ノズル202の吐出口202aからレジスト液が吐出される。
このため従来は、プライミング処理の間、プライミングローラ207の下部が、ケーシング209内に貯留された洗浄液(シンナー液)に常に浸漬され、レジスト液が付着したローラ面が直ぐさま洗浄され除去される構成となされていた。
【0009】
しかしながら、プライミングローラ207のローラ面に付着したレジスト液Rを完全に除去するためには、洗浄液が大量に必要となり、コストが嵩むという課題があった。
一方、洗浄液の消費を低減するために、ケーシング209内の洗浄液量を少なくすると、プライミングローラ207の洗浄が不十分となり、ノズル吐出口202aからのレジスト吐出が不均一となって、塗布状態が悪化するという課題があった。
【0010】
本発明は、上記のような従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、被処理基板に塗布膜を形成する塗布膜形成装置において、ノズルのプライミング処理に用いる洗浄液の消費量を低減することができ、且つ、前記基板への塗布膜形成の際に、スリット状のノズル吐出口から塗布液を均一に吐出することのできる塗布膜形成装置及び塗布膜形成方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記した課題を解決するために、本発明に係る塗布膜形成装置は、被処理基板の幅方向に長いスリット状の吐出口から前記基板に塗布液を吐出するノズルを具備し、前記ノズルから前記基板に塗布液を吐出し塗布膜を形成すると共に、前記ノズルの先端に付着した塗布液を均一化するプライミング処理を行う塗布膜形成装置であって、前記ノズルに塗布液を供給する塗布液供給手段と、前記ノズルを、その長手方向を軸として回動させ、前記吐出口を上方に臨む状態とするノズル回動手段と、前記塗布液供給手段と前記ノズル回動手段の駆動制御を行う制御手段とを備え、前記制御手段は、前記プライミング処理において、前記ノズル回動手段により前記ノズルを回動させて前記吐出口が上方に臨む状態とし、前記塗布液供給手段により前記ノズルに所定量の塗布液を供給し、前記吐出口から前記塗布液を吐出させることにより、前記吐出口上に前記塗布液の隆起部を形成することに特徴を有する。
【0012】
或いは、前記した課題を解決するために、本発明に係る塗布膜形成装置は、被処理基板の幅方向に長いスリット状の吐出口から前記基板に塗布液を吐出するノズルを具備し、前記ノズルから前記基板に塗布液を吐出し塗布膜を形成すると共に、前記ノズルの先端に付着した塗布液を均一化するプライミング処理を行う塗布膜形成装置であって、前記ノズルを、その長手方向を軸として回動させ、前記吐出口を上方に臨む状態とするノズル回動手段と、前記ノズルの吐出口が上方に臨む状態で、前記吐出口に塗布液を塗布する塗布液補充手段と、前記ノズル回動手段と前記塗布液補充手段の駆動制御を行う制御手段とを備え、前記制御手段は、前記プライミング処理において、前記ノズル回動手段により前記ノズルを回動させて前記吐出口が上方に臨む状態とし、前記塗布液補充手段により前記ノズルに所定量の塗布液を塗布させ、前記吐出口上に前記塗布液の隆起部を形成することに特徴を有する。
【0013】
このような構成によれば、ノズル先端に形成する塗布液の状態を整えるプライミング処理において、ノズル先端の洗浄後、吐出口が上方に臨む状態とされ、吐出口に所定量の塗布液が供給されることにより塗布液の隆起部が形成される。
ここで、前記隆起部は、上方に臨む吐出口上に形成されるため、塗布液の表面張力により、吐出口の長手方向に沿って安定した形状に保持される。これによりプライミング処理が完了し、被処理基板への塗布時において、吐出口から均一に塗布液を吐出することができる。
また、この構成によれば、従来のようにプライミングローラを用いたプライミング処理が必要ないため、洗浄液(シンナー液等)の消費を大幅に低減することができる。
【0014】
また、前記した課題を解決するために、本発明に係る塗布膜形成方法は、被処理基板の幅方向に長いスリット状の吐出口を有するノズルから塗布液を吐出し、前記基板上に塗布膜を形成する工程と、前記ノズルの先端に付着した塗布液を均一化するプライミング工程とを含む塗布膜形成方法であって、前記プライミング工程において、前記ノズルを、その長手方向を軸として回動させ、前記吐出口を上方に臨む状態とするステップと、前記ノズルの吐出口から所定量の塗布液を吐出し、前記吐出口上に前記塗布液の隆起部を形成するステップとを実行することに特徴を有する。
【0015】
或いは、前記した課題を解決するために、本発明に係る塗布膜形成方法は、被処理基板の幅方向に長いスリット状の吐出口を有するノズルから塗布液を吐出し、前記基板上に塗布膜を形成する工程と、前記ノズルの先端に付着した塗布液を均一化するプライミング工程とを含む塗布膜形成方法であって、前記プライミング工程において、前記ノズルを、その長手方向を軸として回動させ、前記吐出口を上方に臨む状態とするステップと、前記ノズルの吐出口に所定量の塗布液を塗布し、前記吐出口上に前記塗布液の隆起部を形成するステップとを実行することに特徴を有する。
【0016】
このような方法によれば、ノズル先端に形成する塗布液の状態を整えるプライミング処理において、ノズル先端の洗浄後、吐出口が上方に臨む状態とされ、吐出口に所定量の塗布液が供給されることにより塗布液の隆起部が形成される。
ここで、前記隆起部は、上方に臨む吐出口上に形成されるため、塗布液の表面張力により、吐出口の長手方向に沿って安定した形状に保持される。これによりプライミング処理が完了し、被処理基板への塗布時において、吐出口から均一に塗布液を吐出することができる。
また、この方法によれば、従来のようにプライミングローラを用いたプライミング処理が必要ないため、洗浄液(シンナー液等)の消費を大幅に低減することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、被処理基板に塗布膜を形成する塗布膜形成装置において、ノズルのプライミング処理に用いる洗浄液の消費量を低減することができ、且つ、前記基板への塗布膜形成の際に、スリット状のノズル吐出口から塗布液を均一に吐出することのできる塗布膜形成装置及び塗布膜形成方法を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、本発明にかかる一実施形態の全体概略構成を示す平面図である。
【図2】図2は、本発明にかかる一実施形態の全体概略構成を示す側面図である。
【図3】図3は、図1の塗布膜形成装置を上流側から見た正面図である。
【図4】図4は、図1のA−A矢視断面図である。
【図5】図5は、本発明にかかる塗布膜形成装置の動作の流れを示すフロー図である。
【図6】図6は、本発明にかかる一実施形態の動作を説明するための断面図である。
【図7】図7は、本発明にかかる一実施形態の動作を説明するための断面図である。
【図8】図8(a),(b)は、ノズル吐出口に形成されたビード(隆起部)の形状例を示す平面図及び側面図である。
【図9】図9(a),(b)は、ノズル吐出口に形成されたビード(隆起部)の他の形状例を示す平面図及び側面図である。
【図10】図10は、本発明にかかる一実施形態の動作を説明するための断面図である。
【図11】図11は、本発明にかかる一実施形態の動作を説明するための断面図である。
【図12】図12は、従来の塗布処理ユニットの概略構成を説明するための斜視図である。
【図13】図13は、ノズル先端に不均一に付着したレジスト液の状態を説明するための斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の塗布膜形成装置にかかる一実施形態を、図1乃至図11に基づき説明する。尚、この実施形態にあっては、塗布膜形成装置を、被処理基板であるガラス基板を浮上搬送しながら、前記基板に対し塗布液であるレジスト液の塗布膜形成を行うレジスト塗布処理ユニットに適用した場合を例にとって説明する。
【0020】
図1、図2に示すように、この塗布膜形成装置1は、ガラス基板Gを枚様式に一枚ずつ浮上搬送するための浮上搬送部2Aと、前記浮上搬送部2Aから基板Gを受け取り、コロ搬送するコロ搬送部2Bとを備え、基板Gが所謂平流し搬送されるように構成されている。前記浮上搬送部2Aにおいては、基板搬送方向であるX方向に延長された浮上ステージ3が設けられている。浮上ステージ3の上面には、図示するように多数のガス噴出口3aとガス吸気口3bとがX方向とY方向に一定間隔で交互に設けられ、ガス噴出口3aからの不活性ガスの噴出量と、ガス吸気口3bからの吸気量との圧力負荷を一定とすることによって、ガラス基板Gを浮上させている。
尚、この実施形態では、ガスの噴出及び吸気により基板Gを浮上させるようにしたが、それに限定されず、ガス噴出のみの構成によって基板浮上させるようにしてもよい。
【0021】
また、前記浮上ステージ3の幅方向(Y方向)の左右側方には、X方向に平行に延びる一対のガイドレール5が設けられている。この一対のガイドレール5には、ガラス基板Gの四隅の縁部を下方から吸着保持してガイドレール5上を移動する4つの基板キャリア6が設けられている。これら基板キャリア6により浮上ステージ3上に浮上したガラス基板Gを搬送方向(X方向)に沿って移動される。
尚、浮上搬送部2Aからコロ搬送部2Bへの基板引き渡しを円滑に行うために、ガイドレール5は、浮上ステージ3の左右側方だけでなく、コロ搬送部2Bの側方にまで延設されている。
【0022】
各基板キャリア6は、図3に示すように、ガイドレール5に沿って移動可能に設けられたスライド部材6aと、基板Gの下面に対し吸引・開放動作により吸着可能な吸着部材6bと、吸着部材6bを昇降移動させるシリンダ駆動部6cとを有する。
尚、吸着部材6bには、吸引ポンプ(図示せず)が接続され、基板Gとの接触領域の空気を吸引して真空状態に近づけることにより、基板Gに吸着するようになされている。
また、前記スライド部材6aと、シリンダ駆動部6cと、前記吸引ポンプは、それぞれコンピュータからなる制御部50(制御手段)によって、その駆動が制御される。
【0023】
また、図1、図2に示すように、塗布膜形成装置1の浮上ステージ3上には、ガラス基板Gにレジスト液を吐出するノズル16が設けられている。ノズル16は、Y方向に向けて例えば長い略直方体形状に形成され、ガラス基板GのY方向の幅よりも長く形成されている。図2に示すようにノズル16の下端部には、浮上ステージ3の幅方向に長いスリット状の吐出口16aが形成され、このノズル16には、レジスト液供給源20から送出ポンプ30及び流量調整バルブ31を介してレジスト液が供給されるようになされている。尚、前記レジスト供給源20、送出ポンプ30、流量調整バルブ31により塗布液供給手段が構成される。
【0024】
図1に示すようにノズル16の両側には、X方向に延びる一対のガイドレール10が設けられている。また、図4(図1のA−A矢視断面図)に示すように、このガイドレール10に沿ってスライド移動可能な一対のスライド部材17が設けられ、各スライド部材17の上に垂直にシャフト18が立設されている。前記シャフト18には、このシャフト18に沿って昇降移動可能な昇降駆動部19が設けられ、Y方向に対向する一対の昇降駆動部19の間にノズル16を保持する直棒状のノズルアーム11が架設されている。
かかる構成によりノズル16は、昇降移動可能、且つガイドレール10に沿ってX方向に移動可能となされている。
【0025】
更に、前記ノズルアーム11は、その両端に設けられた回転駆動部25(ノズル回動手段)によって軸周りに回転可能とされ、これによりノズル16が回動するようになされている。具体的には、ノズル16の回動によって、図2に示すように吐出口16aが垂直下方に臨む状態から垂直上方に臨む状態とすることができる。このように吐出口16aが上方に臨む状態は、基板Gへのレジスト吐出が行われない待機時におけるプライミング処理において実行される。
【0026】
尚、前記プライミング処理では、制御部50により送出ポンプ30及び流量調整バルブ31が駆動制御され、レジスト供給源20からノズル16に少量のレジスト液が供給される。これにより図9(a)、(b)に示すように、上方を臨む状態の吐出口16aにレジスト液のビードR1(隆起部)が形成されるようになされている。
ここでビードR1は、上方に臨む吐出口16aの上に形成されるため、レジスト液の表面張力により、吐出口16aの長手方向に沿って安定した状態に保持される。また、吐出口16aの乾燥が防止される。したがって、このビードR1の形成をもって、ノズル先端のレジスト液を均一な状態とするプライミング処理とすることができる。
【0027】
また、浮上ステージ3を挟んで対向する前記一対のシャフト18の上端間には、ノズル16の長手方向に沿って1本のレール26が架設され、このレール26に沿ってCCDカメラ27(撮像手段)と、レジスト補充部28(塗布液補充手段)と、レジスト吸引部29(塗布液吸引手段)とがそれぞれ電動モータ等の駆動手段を有することにより移動可能となされている。
【0028】
前記CCDカメラ27は、ノズル待機時において、上方に回動したノズル16の吐出口16aに形成されたビードR1を撮像し、撮像画像を制御部50の画像処理部51(画像処理手段)に出力するようになされている。
撮像時には、吐出口16aが上方に臨む状態で、CCDカメラ27がレール26に沿って(Y方向に)移動しながら撮像を行う。即ち、CCDカメラ27の視野内(一画像内)に、吐出口16a(ビードR1)の全体が入りきらなくても、連続的に複数の静止画像を撮像することにより、ビードR1の一端から他端までの撮像画像を得ることができる。
【0029】
前記画像処理部51は、所定のコンピュータプログラムに従い動作し、このプログラムの実行により、入力された撮像画像と予め記憶している均一形状(正常な形状)のビードR1の画像とを比較し、その差分を出力するようになされている。この差分とは、例えば一撮像画像を複数のブロックに分割し、各ブロック内に占めるレジスト液の面積を比較したものであり、ブロック単位で出力されるものである。
制御部50においては、画像処理部51から出力された前記差分が所定範囲内であれば、撮像されたビードR1は均一形状(正常な形状)であると判定し、前記差分が所定範囲より大きければ、撮像されたビードR1は不均一な形状であると判定するようになされている。
【0030】
前記レジスト補充部28は、前記のように吐出口16aに形成されたビードR1の形状が不均一であると判定された場合、レジスト液の不足部分に新たにレジスト液を補充する。このレジスト補充部28は針状(例えば直径0.1mm)のノズル28aを有し、ノズル28aには、レジスト供給源20から送出ポンプ32及び流量調整バルブ33を介してレジスト液が供給されるようになされている。
【0031】
また、前記ビードR1においてレジスト液が過多の部分は、前記レジスト吸引部29によって所定量のレジスト液が吸引され、レジスト回収部34に回収されるようになされている。このレジスト吸引部29は、レジスト液を吸引するための針状(例えば直径0.1mm)のノズル29aを有し、吸引ポンプ35によって吸引されるレジスト液Rの吸引量は流量調整バルブ36によって調整されるようになされている。
【0032】
また、ステージ3の上方において、ノズル16よりも上流側には待機部14が設けられている。この待機部14は、図1に示すようにノズル16の吐出口16aに付着した余分なレジスト液を洗浄し除去するノズル洗浄部14aと、いわゆるダミー吐出を行うダミーディスペンス部14bとを有している。
ノズル16は、ガイドレール10に沿って、ガラス基板Gにレジスト液を吐出する吐出位置と、それより上流側にある待機部14との間を移動可能とされ、待機時には、待機部14の上方で待機するようになされている。
【0033】
また、前記のように前記浮上搬送部2Aの後段には、コロ搬送部2Bが設けられている。このコロ搬送部2Bにおいては、ステージ3の後段に、コロ駆動部40によって回転駆動される複数本のコロ軸41が並列に設けられている。各コロ軸41には、複数の搬送コロ42が取り付けられ、これら搬送コロ42の回転によって基板Gを搬送する構成となされている。
【0034】
続いて、このように構成された塗布膜形成装置1において、基板Gへのレジスト液の塗布から待機時におけるノズルのプライミング処理までの一連の流れについて説明する。
塗布膜形成装置1においては、浮上ステージ3に新たにガラス基板Gが搬入されると、基板Gはステージ3上に形成された不活性ガスの気流によって下方から支持され、基板キャリア6により保持される(図5のステップS1)。
そして、制御部50の制御により基板キャリア6が駆動され、基板搬送方向に搬送開始される(図5のステップS2)。
【0035】
また、レジストノズル16の吐出口16aからレジスト液が吐出され、ノズル16の下方を通過する基板Gに対し塗布処理が施される(図5のステップS3)。
基板G上へのレジスト液の塗布処理が終了すると、ノズル16からのレジスト液の吐出が停止され、塗布処理が完了した基板Gは、浮上搬送部2Aからコロ搬送部2Bに引き渡され、コロ搬送によって後段の処理部へ搬出される(図5のステップS4)。
【0036】
待機期間になると、制御部50は、ノズル16をレール10に沿って待機部14の上方へと移動させる(図5のステップS5)。
そして、先ずノズル16の先端部に対し、待機部14のノズル洗浄部14aにより洗浄が行われ、ダミーディスペンス部14bにおいて所定量のレジスト液を予備的に吐出するダミー吐出が行われる(図5のステップS6)。
【0037】
ノズル先端が洗浄されたノズル16は、回転駆動部25によって軸周りに例えば180°回動し、吐出口16aが垂直上方に臨む状態となされる(図5のステップS7)。
次いで、送出ポンプ30及び流量調整バルブ31が駆動制御され、レジスト供給源20からノズル16に少量のレジスト液が供給され、図6に示すように、吐出口16aに液だれしない程度にレジスト液のビードR1(隆起部)が形成される(図5のステップS8)。
【0038】
上方に臨む吐出口16aにビードR1が形成されると、図7に示すようにレール26に沿ってCCDカメラ27が移動しながら、ビードR1の一端から他端まで撮像を行う(図5のステップS9)。具体的には、吐出口16aの長手方向(Y方向)に沿って、例えば10cm単位に区切った静止画像を複数枚撮像する。尚、このように吐出口16aの撮像画像が複数枚に分割されても、ビードR1(吐出口16a)の一端から他端まで時系列に撮像されたものであるから、各画像における画素の位置に基づき撮像部分の位置を特定することができる。
CCDカメラ27によって撮像された複数の画像は、制御部50の画像処理部51に供給され、それぞれ予め記憶している正常なビード画像と比較され、その差分が画素単位で求められる(図5のステップS10)。
【0039】
その結果、図9(a),(b)に示すようにレジスト液のビードR1が乱れることなく均一(正常)と判定された場合(図5のステップS11)、ノズル16はレール10に沿って待機位置から塗布位置へと移動される(図5のステップS12)。
そして、ノズル16は回転駆動部25によって軸周りに回動し、吐出口16aが垂直下方に臨む状態とされ、次の基板Gへの塗布に備えることとなる。
【0040】
一方、図8(a),(b)に示すようにレジスト液のビードR1が不均一であった場合(図5のステップS11)、画像処理部51によって、不均一部分の特定がなされる。
そして、制御部50の制御により、図10に示すようにレジスト補充部28とレジスト吸引部29とがレール26に沿って移動し、ビードR1におけるレジスト不足部分にはレジスト補充部28により所定量のレジスト液の供給がなされ、レジスト過多部分にはレジスト吸引部29により所定量のレジスト液の吸引がなされる。これによりビードR1の形状補正がなされる(図5のステップS13)。
【0041】
尚、レジスト補充部28によるレジスト液の補充量と、レジスト吸引部29によるレジスト液の吸引量は、画像処理部51における画像解析(撮像画像と予め記憶している正常画像との差分)に基づき決定することができる。したがって、その解析結果に基づき送出ポンプ32、流量調整バルブ33、並びに吸引ポンプ35、流量調整バルブ36の制御がなされる。
【0042】
この形状補正がなされると、再びCCDカメラ27がレール26に沿って移動しながら、吐出口16aに形成されたビードR1の一端から他端まで撮像する(図5のステップS9)。
そして、撮像画像が制御部50の画像処理部51において比較解析され、形状補正したビードR1が均一な状態であれば(図5のステップS11)、ノズル16はレール10に沿って待機位置から塗布位置へと移動され、次の基板Gの塗布処理を行うこととなる(図5のステップS12)。
【0043】
また、前記のように、前記ステップS11での判定において、ビードR1の形状が不均一であった場合、ステップS13による形状補正(レジスト補充部28、及びレジスト吸引部29による補正)を行うようにしたが、それに限定されず、図5に破線で示すようにステップS6に戻るようにしてもよい。
即ち、不均一なビードR1が形成された吐出口16aに対し、ノズル洗浄部14aによる洗浄、及びダミーディスペンス部14bにおけるダミー吐出を行い、ノズル16の吐出口16aが再び上方を臨む状態として、改めてステップ8のビード形成を行ってもよい。
【0044】
また、ステップS13での形状補正の処理にあっては、ビードR1の不均一な部分のみを補正(部分的補正)するものとしたが、補正方法は、それに限定されるものではない。
例えば、ビードR1の形状が不均一な場合、レジスト吸引部29によりビードR1の一端から他端までを吸引して除去し、レジスト補充部28により吐出口16aの一端から他端まで、ビードR1を再形成するようにしてもよい。
【0045】
以上のように、本発明に係る実施の形態によれば、ノズル先端に形成するレジスト液の状態を整えるプライミング処理において、ノズル先端の洗浄後、吐出口16aが上方を臨む状態とされ、吐出口16aから液だれしない程度に少量の吐出制御がなされることによりレジスト液のビードR1(隆起部)が形成される。
ここで、このビードR1は、上方に臨む吐出口16a上に形成されるため、レジスト液の表面張力により、吐出口16aの長手方向に沿って安定した形状に保持される。これによりプライミング処理が完了し、基板Gへのレジスト塗布時において、吐出口16aから均一にレジスト液を吐出することができる。
また、この構成によれば、従来のようにプライミングローラを用いたプライミング処理が必要ないため、洗浄液(シンナー液等)の消費を大幅に低減することができる。
また、形成したビードR1の形状を検査し、形状補正する手段を有するため、ビードR1の形成に失敗した場合にはビードR1を容易に再形成することができる。
【0046】
尚、前記実施の形態においては、前記ビードR1を、吐出口16aから液だれしない程度に少量の吐出制御を行い形成するものとしたが、本発明にあっては、ビードR1の形成方法は、それに限定されるものではない。
例えば、待機部14においてノズル先端を洗浄後、ノズル16を回動させて吐出口16aが上方に臨む状態とし、図11に示すようにレジスト補充部28をレール26に沿って移動させ、そのノズル28aから吐出口16aにレジスト液を盛るように塗布し、ビードR1を形成してもよい。
【0047】
また、前記実施の形態においては、待機時にノズル16の吐出口16aが上方に臨む状態として、吐出口16aが垂直上方に臨む状態を例に用いて説明したが、吐出口16aが上方に臨むとは、垂直上方に限定されるものではない。例えば、吐出口16aの形成面の臨む方向が、垂直上方に対して所定角度(例えば0°〜50°)傾斜し、斜め上方を臨む状態も含まれる。
【符号の説明】
【0048】
1 塗布膜形成装置
16 ノズル
16a 吐出口
20 レジスト供給源(塗布液供給手段)
25 回転駆動部(ノズル回動手段)
30 送出ポンプ(塗布液供給手段)
31 流量調整バルブ(塗布液供給手段)
32 送出ポンプ
33 流量調整バルブ
50 制御部(制御手段)
G ガラス基板(被処理基板)
R1 ビード(隆起部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理基板の幅方向に長いスリット状の吐出口から前記基板に塗布液を吐出するノズルを具備し、前記ノズルから前記基板に塗布液を吐出し塗布膜を形成すると共に、前記ノズルの先端に付着した塗布液を均一化するプライミング処理を行う塗布膜形成装置であって、
前記ノズルに塗布液を供給する塗布液供給手段と、前記ノズルを、その長手方向を軸として回動させ、前記吐出口を上方に臨む状態とするノズル回動手段と、前記塗布液供給手段と前記ノズル回動手段の駆動制御を行う制御手段とを備え、
前記制御手段は、前記プライミング処理において、
前記ノズル回動手段により前記ノズルを回動させて前記吐出口が上方に臨む状態とし、前記塗布液供給手段により前記ノズルに所定量の塗布液を供給し、前記吐出口から前記塗布液を吐出させることにより、前記吐出口上に前記塗布液の隆起部を形成することを特徴とする塗布膜形成装置。
【請求項2】
被処理基板の幅方向に長いスリット状の吐出口から前記基板に塗布液を吐出するノズルを具備し、前記ノズルから前記基板に塗布液を吐出し塗布膜を形成すると共に、前記ノズルの先端に付着した塗布液を均一化するプライミング処理を行う塗布膜形成装置であって、
前記ノズルを、その長手方向を軸として回動させ、前記吐出口を上方に臨む状態とするノズル回動手段と、前記ノズルの吐出口が上方に臨む状態で、前記吐出口に塗布液を塗布する塗布液補充手段と、前記ノズル回動手段と前記塗布液補充手段の駆動制御を行う制御手段とを備え、
前記制御手段は、前記プライミング処理において、
前記ノズル回動手段により前記ノズルを回動させて前記吐出口が上方に臨む状態とし、前記塗布液補充手段により前記ノズルに所定量の塗布液を塗布させ、前記吐出口上に前記塗布液の隆起部を形成することを特徴とする塗布膜形成装置。
【請求項3】
前記ノズルの吐出口が上方に臨み、前記吐出口上に前記塗布液の隆起部が形成された状態で、前記隆起部を撮像する撮像手段と、
前記撮像手段により撮像された画像と予め記憶した画像とを比較し、その差分を出力する画像処理手段とを備え、
前記制御手段は、前記画像処理手段の出力に基づき前記隆起部が正常な形状か否かを判定することを特徴とする請求項1または請求項2に記載された塗布膜形成装置。
【請求項4】
前記ノズルの吐出口が上方に臨み、前記吐出口上に前記塗布液の隆起部が形成された状態で、前記隆起部に対し新たに所定量の塗布液を供給可能な塗布液補充手段と、前記隆起部から所定量の塗布液を吸引可能な塗布液吸引手段とを備え、
前記塗布液補充手段と前記塗布液吸引手段とは、前記制御手段によって駆動制御され、
前記制御手段は、前記画像処理手段の出力に基づき、前記隆起部が正常な形状ではないと判定した場合に、前記塗布液補充手段と前記塗布液吸引手段とにより前記隆起部の形状補正を行わせることを特徴とする請求項3に記載された塗布膜形成装置。
【請求項5】
被処理基板の幅方向に長いスリット状の吐出口を有するノズルから塗布液を吐出し、前記基板上に塗布膜を形成する工程と、前記ノズルの先端に付着した塗布液を均一化するプライミング工程とを含む塗布膜形成方法であって、
前記プライミング工程において、
前記ノズルを、その長手方向を軸として回動させ、前記吐出口を上方に臨む状態とするステップと、
前記ノズルの吐出口から所定量の塗布液を吐出し、前記吐出口上に前記塗布液の隆起部を形成するステップとを実行することを特徴とする塗布膜形成方法。
【請求項6】
被処理基板の幅方向に長いスリット状の吐出口を有するノズルから塗布液を吐出し、前記基板上に塗布膜を形成する工程と、前記ノズルの先端に付着した塗布液を均一化するプライミング工程とを含む塗布膜形成方法であって、
前記プライミング工程において、
前記ノズルを、その長手方向を軸として回動させ、前記吐出口を上方に臨む状態とするステップと、
前記ノズルの吐出口に所定量の塗布液を塗布し、前記吐出口上に前記塗布液の隆起部を形成するステップとを実行することを特徴とする塗布膜形成方法。
【請求項7】
前記プライミング工程において、
前記ノズルの吐出口が上方に臨み、前記吐出口上に前記塗布液の隆起部が形成された状態で、前記隆起部を撮像するステップと、
前記撮像された画像と予め記憶した画像とを比較し、その差分を出力するステップと、
前記差分に基づき前記隆起部が正常な形状か否かを判定するステップとを実行することを特徴とする請求項5または請求項6に記載された塗布膜形成方法。
【請求項8】
前記差分に基づき前記隆起部が正常な形状か否かを判定するステップにおいて、前記隆起部が正常な形状ではないと判定された場合に、
前記ノズルの吐出口が上方に臨む状態で、前記差分に基づき、前記隆起部における塗布液の不足部分に所定量の塗布液を供給し、前記隆起部における塗布液の過多部分から所定量の塗布液を吸引して、前記隆起部の形状補正を行うことを特徴とする請求項7に記載された塗布膜形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−173090(P2011−173090A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−40484(P2010−40484)
【出願日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】