説明

塗布装置、塗布方法及び記憶媒体

【課題】基板に塗布液を塗布して塗布膜を形成し、さらに前記塗布膜を加熱する処理に要する時間を短くすることができる技術を提供すること。
【解決手段】
基板の保持部と、基板に塗布液を供給するノズルと、基板全体に塗布膜を形成するために、前記ノズルに対して保持部を相対的に移動させる移動機構と、前記保持部に保持された基板に向けて電磁波を照射し、当該塗布膜に含まれる分子が互いに結合する温度に前記塗布膜全体を加熱するための電磁波照射部と、を備えるように塗布装置を構成する。塗布膜の形成後、加熱処理を行うために基板を移動させる必要が無いので、処理に要する時間を短くし、スループットの向上を図ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板に塗布液を供給して塗布膜を形成する塗布装置、塗布方法及び記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造工程の一つであるフォトリソグラフィー工程においては、塗布モジュールを用いて半導体ウエハ(以下、ウエハという)の表面にレジスト液などの各種の塗布液を塗布して塗布膜を形成する工程が含まれる。この塗布膜の形成は、高速回転するウエハの中心部にノズルから塗布液を吐出して、当該塗布液を遠心力により周縁部へ広げる、いわゆるスピンコーティングにより行われる。このように塗布膜が形成されたウエハは、加熱モジュールに搬送されて例えば60〜90秒程度加熱処理を受ける。この熱処理により前記溶剤の揮発がさらに進行すると共に塗布液中の分子同士が化学反応を起こして互いに結合する。
【0003】
しかし、この一連の塗布及び加熱処理ではモジュール間でウエハを搬送する時間を要することになり、スループットの向上を図りにくい。また、塗布モジュールからのウエハの搬出は、塗布膜の流動性が高いと行えないため、塗布モジュールでは塗布液の供給後にウエハを回転させて塗布液中の溶剤を揮発させる処理が行われる。つまり、塗布モジュール及び加熱モジュールの夫々で溶剤の除去処理を行うことになる。このようなことからもスループットの向上を図りにくいという問題がある。また、ウエハが搬送されるモジュール間の雰囲気が乱れると、ウエハに形成された塗布膜に影響を与えてしまい、塗布膜の性質が劣化してしまうおそれがある。
【0004】
特許文献1には光照射によりウエハを加熱して溶剤を蒸発させる塗布装置について記載されている。しかし特許文献1ではこの光照射を行った塗布膜の仕上がりと、当該光照射を行わずに基板の回転により溶剤を揮発させた塗布膜の仕上がりとを比較していることから、この光照射では上記の加熱モジュールで行う処理に相当する比較的高温の加熱処理が行われていない。また、特許文献2ではウエハの径方向に加熱されたガスを供給する塗布装置について記載されている。しかしこの特許文献2の手法では、ガスの吐出によりウエハの周囲の排気流が乱れ、塗布膜の厚さがウエハの各部でばらついてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−322791(段落0016)
【特許文献2】特開昭61−131529(第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はこのような事情の下になされたものであり、その目的は、基板に塗布液を塗布して塗布膜を形成し、さらに前記塗布膜を加熱する処理に要する時間を短くすることができる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の塗布装置は、基板を水平に保持する保持部と、
前記基板の表面に塗布液を供給するノズルと、
基板全体に塗布膜を形成するために、前記ノズルに対して保持部を相対的に移動させる移動機構と、
前記保持部に保持された基板に向けて電磁波を照射し、当該塗布膜に含まれる分子が互いに結合する温度に前記塗布膜全体を加熱するための電磁波照射部と、
を備えたことを特徴とする。
【0008】
以下に本発明の塗布装置の具体的な態様を説明する。
(1)前記移動機構は、基板の中心部に供給された塗布液を基板の周縁部へ遠心力により広げるために前記保持部を鉛直な軸回りに回転させる回転機構である。
(2)前記電磁波照射部は、回転する基板の径方向に異なる位置を加熱するように電磁波を照射する。
(3)前記電磁波照射部は、回転する基板の径方向に異なる位置に互いに独立した強度で電磁波を照射できるように構成され、
塗布液の種類及び基板の回転速度の推移パターンを含む複数の処理レシピと、基板の径方向における照射強度の比率を特定する複数のデータとの対応関係を記憶した記憶部と、
前記処理レシピを設定するための設定部と、
前記設定部により設定された処理レシピと、前記対応関係とに基づいて、前記径方向における電磁波の照射強度の比率を制御するように制御信号を出力する制御部と、
が設けられる。
(4)前記電磁波照射部は、塗布膜の形成後に基板を回転させながら当該基板を第1の温度で加熱するために第1の照射強度で電磁波を照射し、然る後、基板を回転させながら基板を前記第1の温度よりも高い第2の温度で加熱するために第2の照射強度で電磁波を照射することを特徴とする。
(5)前記電磁波照射部は、発光ダイオードである。
【0009】
本発明の塗布方法は、
保持部により基板を水平に保持する工程と、
ノズルにより前記基板の表面に塗布液を供給する工程と、
移動機構により前記ノズルに対して保持部を相対的に移動させて基板全体に塗布膜を形成する工程と、
電磁波照射部により、前記保持部に保持された基板に向けて電磁波を照射し、当該塗布膜に含まれる分子が互いに結合する温度に前記塗布膜全体を加熱する工程と、
を備えたことを特徴とする。
【0010】
基板に対する塗布処理を行う塗布装置に用いられるコンピュータプログラムが記憶された記憶媒体であって、
前記コンピュータプログラムは、上述の塗布方法を実施するためのものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、塗布液を基板に塗布するための保持部に保持された基板に向けて電磁波を照射する電磁波照射部が設けられ、前記電磁波により前記塗布液に含まれる分子が互いに結合する温度に塗布膜全体が加熱される。従って、基板に塗布液の塗布を行う装置と塗布液が塗布された基板の加熱処理を行う装置との間で前記基板を搬送する必要が無いので、処理に要する時間の短縮化を図ることができ、スループットを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態に係るレジスト塗布装置を示す縦断断面図である。
【図2】前記レジスト塗布装置の平面図である。
【図3】前記レジスト塗布装置の加熱部を示す平面図及び制御系や処理レシピを説明するブロック図である。
【図4】前記加熱部に含まれるLEDの縦断側面図である。
【図5】膜厚分布と各LEDからの照射強度の分布との対応の概略を示す説明図である。
【図6】膜厚分布と各LEDからの照射強度の分布との対応の概略を示す説明図である。
【図7】膜厚分布と各LEDからの照射強度の分布との対応の概略を示す説明図である。
【図8】前記レジスト塗布装置による塗布処理のフロー図である。
【図9】前記塗布処理のフロー図である。
【図10】前記塗布処理のフロー図である。
【図11】前記塗布処理のフロー図である。
【図12】前記塗布処理における基板の回転速度の変化及びLEDからの照射強度の変化を示すグラフ図である。
【図13】LEDの配置の他の例を示す概略平面図である。
【図14】LEDの配置の他の例を示す概略平面図である。
【図15】LEDの配置の他の例を示す概略平面図である。
【図16】LEDの配置の他の例を示す概略平面図である。
【図17】LEDが設けられたアームの斜視図である。
【図18】LEDの配置の他の例を示す概略平面図である。
【図19】LEDの配置の他の例を示す概略平面図である。
【図20】LEDの配置の他の例を示す概略平面図である。
【図21】LEDの配置の他の例を示す概略平面図である。
【図22】LEDの配置の他の例を示す概略平面図である。
【図23】他のLEDの構成を示す縦断側面図である。
【図24】他のLEDの構成を示す縦断側面図である。
【図25】他のLEDの構成を示す縦断側面図である。
【図26】LEDの配置の他の例を示す概略平面図である。
【図27】LEDの配置の他の例を示す概略平面図である。
【図28】LEDの配置を説明するための説明図である。
【図29】他のレジスト塗布装置を示す縦断側面図である。
【図30】上記のレジスト塗布装置を含む塗布、現像装置の平面図である。
【図31】前記塗布、現像装置の斜視図である。
【図32】前記塗布、現像装置の縦断側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の塗布装置に係るレジスト塗布装置1について図1、図2を参照しながら説明する。このレジスト塗布装置1では、ウエハWにレジスト液を塗布した後に加熱処理を行うため、装置を構成する各部はこの加熱処理に対して耐熱性を有するように構成される。図1、図2は夫々レジスト塗布装置1の縦断側面、横断平面を示している。図1中の11は筐体であり、ウエハWの搬入出口12を備えている。搬入出口12は、シャッタ13によりウエハWの搬送時以外は閉じられる。なお、図示内容を分かり易くするために図1における搬入出口12及びシャッタ13の位置は図2における位置と変えて表している。
【0014】
筐体11内の上部には給気ポート14と、ファンフィルタユニット(FFU)15とが設けられ、給気ポート14からファンフィルタユニット15に供給されたエアが清浄化されて下方に供給される。筐体11内の下部には第1の排気ポート16が設けられる。これら給気ポート14と第1の排気ポート16とにより筐体11内に下降気流が形成される。
【0015】
筐体11内には基板の保持部をなすスピンチャック21が設けられている。スピンチャック21は、真空吸着によりウエハWを水平に保持するように構成されており、回転モータなどを含む回転機構である回転駆動部22により鉛直回りに回転できるようになっている。スピンチャック21の外側には排液をガイドするためのガイドリング23が設けられている。このガイドリング23は、スピンチャック21に保持されるウエハWの周縁部の下方から外周側に向かって下がるように傾斜しており、このガイドリング23の外周縁は下方側に屈曲して延びている。前記スピンチャック21の周囲には、当該スピンチャック21及びガイドリング23を囲むカップ24が設けられている。
【0016】
このカップ24は、その側周面と前記ガイドリング23の外周縁との間に排液路25を形成するように設けられている。カップ24の下方側は、ガイドリング23の外周縁部分と共に屈曲路を形成して気液分離部を構成している。また前記カップ24の底部の内側領域には第2の排気ポート26が形成されており、前記第2の排気ポート26によりスピンチャック21に載置されたウエハWの周囲の雰囲気が排気される。これら第2の排気ポート26及び前記第1の排気ポート16からの排気により、ウエハWの加熱時に発生したレジストの気化成分はウエハWの周囲から除去される。前記カップ24の底部の外側領域にはカップ24内の排液を除去するための排液ポート27が形成されている。
【0017】
カップ24内には図示しない3本の昇降ピンが、スピンチャック21を囲む位置に昇降自在に設けられている。筐体11の外には搬入出口12を介してウエハWを筐体11の内外で搬送する図示しない搬送アームが設けられており、この搬送アームとスピンチャック21との間におけるウエハWの受け渡しは、前記昇降ピンを介して行われる。なお、この搬送アームとスピンチャック21とのウエハWの受け渡しは、図示しない昇降機構によりスピンチャック21を昇降させることで行えるようにしてもよい。
【0018】
また、スピンチャック21に保持されるウエハWの下方には、裏面側からウエハWを加熱する裏面側加熱部31が設けられている。この裏面側加熱部31は、スピンチャック21の外側且つガイドリング23の内側の領域に設けられている。図3には裏面側加熱部31と、後述する表面側加熱部41との平面図を示している。裏面側加熱部31は、スピンチャック21の回転軸を中心として同心円状に配列された多数のLED(発光ダイオード)32を備えている。
【0019】
前記回転軸から同じ距離に設けられた各LED32を同じ列に属するLEDとする。そして、説明の便宜上、LED32の各列に内側から外側に向けて符号を付し、夫々列P1、P2、P3・・・P(m−1)、Pm(mは整数)と記載する。列Pmは最も外側の列であり、ウエハWの周縁部下方に位置している。図3では各LED32について属する列の符号を記載しているが、すべてのLED32について前記列の符号を示すと、図が煩雑化するため一部のLED32についてのみ属する列の符号を示している。この例ではウエハWの径方向に見て、隣り合う各列Pは等間隔に配置されている。また、各列P内の隣り合う各LED32は等間隔に配置されている。
【0020】
図4はLED32の縦断側面図を示している。LED32は上方に向かって開口した筒状体321と、筒状体321内に設けられた光源322と、筒状体321の開口部を塞ぐシールド部材323と、を備えている。光源322は、ウエハWの材料であるシリコンの吸収波長帯域である赤外線を発する。シールド部材323は、光源322にレジスト液が付着することを防ぐために設けられており、前記赤外線は、このシールド部材323を透過してウエハWの裏面に照射される。そして、ウエハWの赤外線を照射された領域が加熱される。
【0021】
図3に戻って、各LED32は点灯コントローラ30に接続されている。後述の制御部6から出力される制御信号に基づいて、点灯コントローラ30は列PごとにLED32に供給する電流値を調整し、各LED32はこの供給電流に応じた強度で赤外線を照射する。つまり、同じ列Pに属するLED32は互いに同じ強度で赤外線を照射し、異なる列に属するLED32間では互いに同じ強度または異なる強度でウエハWに赤外線を照射することができる。各LED32は直上に赤外線を照射するため、LED32の各列Pの位置と、ウエハWの加熱される領域とは互いに対応する。
【0022】
LED32は冷却ジャケット33上に設けられており、この冷却ジャケット33には図1に示すように温調水の流路34が設けられている。この温調水により冷却ジャケット33を介して下側LED32が温調される。それによって、LED32が使用により過度に発熱して、後述するウエハWの温度制御の精度が低下することが防がれる。
【0023】
スピンチャック21に載置されたウエハWの上方には表面側加熱部41が設けられている。この表面側加熱部41は裏面側加熱部31と略同様に構成されており、以下この裏面側加熱部31との差異点を中心に説明する。表面側加熱部41は多数のLED42を備え、各LED42はスピンチャック21の回転軸を中心として同心円状に配列されている。ただし、図3に示した例では最も回転軸に近い位置にあるLED42は2個のみ、つまり回転軸を挟むように設けられている。
【0024】
上記のLED32と同様に前記回転軸から同じ距離に設けられた各LED42を同じ列に属するLEDとする。そして、説明の便宜上、LED42の各列に内側から外側に向けて符号を付し、図3に示したように夫々列Q1、Q2、Q3・・・Q(n−1)、Qn(nは整数)と記載する。列Q1は上記の回転軸を挟む2個のLED42からなり、スピンチャック21上に設けられている。また列Qnは最も外側の列であり、ウエハWの周縁部上方に位置している。裏面側加熱部31の列Pと同様に、ウエハWの径方向に見て隣り合う各列Qは等間隔に設定されており、各列Qにおける隣り合う各LED42は等間隔に設定されている。
【0025】
LED42は、筒状体321が下方に向けて開口することにより下方に赤外線を照射することを除いてLED32と同じ構成である。図4ではLED42の各部にLED32の各部と同じ符号を付し、説明を省略する。また、前記光源322から照射される赤外線について補足すると、この赤外線はウエハWに供給されたレジスト液を透過し、ウエハWに吸収されて、当該ウエハWを加熱する波長域を備える。ただし、前記赤外線は、レジスト液に吸収されて当該レジスト液を直接加熱する波長域を備えていてもよい。
【0026】
図3に戻って、各LED42は前記点灯コントローラ30に接続されている。裏面側加熱部31と同様に点灯コントローラ30は、列Qごとに各LED42への電流値の供給を調整し、各LED42はこの供給電流に応じた強度でウエハWの表面に赤外線を照射する。各LED42は直上に赤外線を照射するため、LED42の列Qの位置と、ウエハWの加熱される領域とは互いに対応する。各LED42は、冷却ジャケット43上に設けられている。この冷却ジャケット43は冷却ジャケット33と同様に温調水の流路44を備え、LED42を冷却し、ウエハWの温度制御の精度が低下することを防ぐ
【0027】
レジスト塗布装置1は、ウエハW表面にレジスト液を供給するレジスト液ノズル51Aを備えている。このレジスト液ノズル51Aは、レジスト液供給管52A及び図示しないバルブや流量調整部等を含む供給機器群を介してレジスト液供給源53Aに接続されている。レジスト液ノズル51Aは、図2に示すように水平方向に伸びたアーム54Aを介して移動機構55Aに接続されている。前記アーム54Aは移動機構55Aにより横方向に沿って設けられたガイドレール50に沿って、カップ24の外側に設けられた待機位置56AからウエハW上に移動できると共に上下方向に移動できるように構成されている。
【0028】
また、レジスト塗布装置1はウエハW表面に溶剤例えばシンナーを供給するための溶剤ノズル51Bを備えている。シンナーは、ウエハW上でのレジスト液の濡れ広がりを向上させるプリウエット処理を行うために用いられる。溶剤ノズル51Bは、溶剤供給管52B及び図示しないバルブや流量調整部等を含む供給機器群を介して溶剤供給源53Bに接続されている。このような違いを除いて、溶剤ノズル51Bは、レジスト液ノズル51Aと同様に構成されており、アーム54Aに相当するアーム54Bを介して移動機構55Bに接続される。移動機構55Bは、移動機構55Aと同様に溶剤ノズル51Bを上下方向及び横方向に移動させる。
【0029】
また、レジスト塗布装置1は、後述する当該装置の一連の動作を制御する例えばコンピュータからなる制御部6を備えている。この制御部6は、図3に示すようにCPU61、処理レシピ格納部62及び設定部63が接続されるバス64により構成される。また、制御部6はプログラム65を備えている。プログラム65は前記回転駆動部22、供給機器群及び各LED32、42の点灯等の動作を制御するためのステップ群が含まれる。当該プログラム65及び処理レシピ格納部62に含まれる処理レシピは、例えばフレキシブルディスク(FD)、メモリーカード、コンパクトディスク(CD)、マグネットオプティカルデスク(MO)、ハードディスク等の記憶媒体に格納されて、制御部6にインストールされる。制御部6は、処理レシピ格納部62にインストールされた処理レシピに基づいて、プログラム61に則り、当該レジスト塗布装置1の動作を制御する。
【0030】
処理レシピは、レジスト塗布装置1における処理を行うために必要なパラメータを設定するための情報が書き込まれたデータであり、塗布処理ごとに処理レシピが存在する。図3では模式的にk個(kは整数)の処理レシピ1〜kが記憶部であるレシピ格納部62に格納されている状態を示している。パラメータとしてはレジストの種類、回転速度の推移パターン(プロファイル)、レジストの吐出量、レジスト吐出のタイミング、カップ内の排気量、プリウエットのための溶剤の吐出量、溶剤の吐出のタイミングなどである。これら塗布処理を行うためのパラメータを塗布処理パラメータと記載する。なお、回転速度の推移パターンとは基準となる時点例えばウエハWがスピンチャック21に保持された時点を基準にして各時刻と基板の回転速度との関係、つまりウエハWの回転速度の時間的推移を示すデータ(例えば後述の図12を参照)である。
【0031】
そして、前記処理レシピは、各塗布処理パラメータに対応付けられて夫々記憶された加熱処理パラメータを含んでいる。この加熱処理パラメータは、具体的には、裏面側加熱部31の各列Pの照射強度の比率及び表面側加熱部41の各列Qの照射強度の比率である。
【0032】
つまり、塗布処理パラメータが異なると、各列P1〜Pm及び各列Q1〜Qnの照射強度の比率が異なるように処理が行われる。一例として、図3中の処理レシピ1ではP1:P2:Pm:Q1:Q2:Qn=85:82:71:80:78:71の強度比率で照射が行われるものとする。そして、処理レシピ1とは異なる塗布処理パラメータを含むレジスト及び回転速度の推移パターンで処理を行う処理レシピkでは、P1:P2:Pm:Q1:Q2:Qn=90:88:74:82:80:74の強度比率で照射が行われるものとしている。
【0033】
このように処理レシピごとに照射強度の比率を変える理由について説明する。図5は、スピンコーティング法により形成されたレジスト膜Rの膜厚分布を模式的に示しており、この図5に示すようにウエハWの中心部から周縁部に向かって径方向に見て、順に凸状領域L1、凹状領域L2、凸状領域L3が形成される。このような膜厚分布になる理由は推測ではあるが、以下のように考えられる。スピンコーティング法の場合、ウエハWの中央部にあるレジスト液に作用する遠心力は小さいため、膜厚は大きめになると考えられるが、ウエハWの周縁部に向かうとレジスト液に作用する遠心力が大きく、膜厚が小さめになる。さらにウエハWの周縁部に向かうと遠心力はさらに大きくなるが、その一方で、レジスト液が中央部から周縁部に拡散する過程において溶剤の揮発によりレジスト液が高濃度化し、膜厚が大きくなる。
【0034】
そして、このようなレジスト液の挙動は、塗布処理パラメータが異なると若干変化する。つまり、各領域L1、L2、L3の径方向の幅及び各領域におけるレジストの膜厚の大きさは処理レシピごとに変化する。そこで、この実施形態では、膜厚分布に応じて膜厚が大きい領域ほど赤外線の照射強度を大きくし、高温で加熱する。高温で加熱される領域は、低温で加熱される領域よりもレジスト液中に含まれる成分の気化が促進され、加熱処理前に比べて加熱処理後の膜厚の低下量が大きくなる。図5及び後述の図7では、矢印の線の種類でLEDの各列の照射強度を示しており、実線の矢印>鎖線の矢印>点線の矢印の順で照射強度が大きい。それによって、図6に示すように処理後のレジスト膜Rを平坦化させる。なお、この例では裏面側加熱部31からスピンチャック21に保持されるウエハWの中央部へ赤外線の照射が行われないので、表面側加熱部41の前記中央部に赤外線を照射するLED42の出力は、他のLED42、32の出力に比べて大きく設定されている。
【0035】
処理レシピとLEDの照射強度の分布との関係の一例について述べる。例えばレジスト液の粘度が高いと、周方向に拡散し難いことから前記図5に示すように凹状領域L2ウエハWの中央部側に寄りがちである。逆に、レジスト液R1の粘度が低いと、図7に示すように膜厚分布の凹状領域L2はウエハWの周縁側に寄りがちになる。処理レシピにおけるその他の項目である、例えばウエハWの回転速度やレジスト液の吐出時間についても、ウエハWの回転速度が低いほどあるいはレジスト液の吐出時間が短いほど、図7に示すように凹状領域L2はウエハWの中心寄りになり、逆に前記回転速度が高いほどあるいは前記吐出時間が長いほど、図5に示すように凹状領域L2が周縁部よりになる。
【0036】
従って、処理レシピを設定する際には、例えば予め加熱処理パラメータを含まない処理レシピを用いてレジスト液をウエハWに塗布し、得られたレジスト膜Rについて膜厚計によりウエハWの面内の膜厚分布を求め、この膜厚分布に基づいて加熱処理パラメータを設定することになる。
【0037】
次に、上述の実施形態における作用について、図8〜図12を参照しながら説明する。図8〜図11は本実施形態の作用フローを説明する概要図である。図12はウエハWの回転速度の時間的推移パターンを示すグラフであり、以下に述べる動作が実行される前に、例えばオペレータにより設定部63から処理レシピが選択されており、プログラムがその処理レシピの内容を読み込んで当該内容に対応するステップが順次実行されることになる。
【0038】
先ず、図示しない搬送アームによりウエハWが筐体11内に搬入され、図示しない昇降ピンを介してその裏面側の中心部がスピンチャック21に吸着保持される。次に、待機位置56Bにあった溶剤ノズル51BをウエハWの中心部上に移動させた後、溶剤ノズル51BによりウエハWにシンナーTを供給する。
【0039】
その後、スピンチャック21によりウエハWを例えば500rpmの回転速度で回転させ、ウエハW上のシンナーTをウエハWの表面全体に拡散させる。この間に、溶剤ノズル51Bは待機位置53Bに戻り、待機位置56Aにあったレジスト液ノズル51AをウエハWの中心部上に移動させる(図8)。ウエハWの回転速度を一旦低下させた後、レジスト液ノズル51AからウエハWの中心部にレジスト液R1の吐出が開始され(図9)、このとき、ウエハWの回転速度を例えば2000rpmのV1まで上昇させる。ウエハWの中央部に供給されたレジスト液R1は遠心力によりウエハWの表面全体に拡散され、レジスト膜Rが形成される(図12中レジスト液塗布工程S1)。
【0040】
レジスト液R1の吐出を終えた後、レジスト液R1の吐出開始から例えば1〜3秒経過すると、回転速度がV1から低速の例えば100rpmのV2に減速され、ウエハW上に拡散したレジスト膜Rは大まかに均され平坦化される(図10及び図12中平坦化工程S2)。なお、回転速度をV1からV2に減速し始める時点とレジスト液R1の吐出停止とのタイミングが同時であってもよい。この平坦化工程S2は例えば1〜2秒間実行され、レジスト膜Rの流動性が低下する。この平坦化工程S2の終了時点では、ウエハW上のレジスト膜Rは大まかには平坦化されているが、図5及び図7でも説明したように凹凸の分布が形成されている。図10には矢印の先の円内にこの平坦化工程終了時のレジスト膜Rの状態を示しており、当該レジスト膜Rには溶剤R0が比較的多く含まれ、その溶剤R0中にはポリマーR2が分散して存在する。
【0041】
次に、ウエハWは中速の例えば1500rpm程度の回転速度V4に加速されると共に表面側加熱部41の各列QのLED42及び裏面側加熱部31の各列PのLED32から、図11に矢印で示すように赤外線が照射される。(図12中加熱工程S3)。これら各列PQからの赤外線の照射は、既に選択された処理レシピに設定されている強度比で行われる。そして、図12の下側のグラフに示すようにこの強度比を保ったまま各LED32、42の出力レベルが次第に上昇する。ウエハWの回転により形成される気流の作用と赤外線の照射によるウエハWの加熱とにより、レジスト膜R中において溶剤R0の揮発が進行する。
【0042】
各LED32、42の出力が所定のレベルになると、出力レベルの上昇が停止し、ウエハWは所定の温度例えば100℃〜120℃で加熱される。それによって、溶剤がR0の揮発がさらに進行し、図11の円内に示すようにポリマーR2同士の結合が形成される。また、レジスト膜Rの膜厚の大きい領域は小さい領域に比べて高い温度で加熱されることで、前記溶剤を含む各種の成分の揮発量が大きくなることにより、当該レジスト膜Rが平坦化される。赤外線の照射開始から例えば20秒〜30秒経過後、前記赤外線の照射が停止すると共にウエハWの回転が停止され、スピンチャック21上から図示しない昇降ピン及び搬送アームを介して筐体11の外に搬出される。
【0043】
上述のレジスト塗布装置1では、既述のように、レジスト液がウエハW全体に供給された後、ウエハWがスピンチャック21に保持された状態のままLED32、42によりレジスト膜Rの分子同士の結合反応が起こる温度にレジスト膜Rを加熱している。従って、レジスト液の塗布後、前記加熱を行うための装置にウエハWを搬送して処理を行う必要が無いのでスループットの低下を抑えることができる。また、そのように装置間の搬送工程を行わないようにすることで、装置間の雰囲気の影響によりレジスト膜の膜質の低下を抑えることができる。また、この例では、ウエハWの表面及び裏面に、当該ウエハWの径方向及び周方向に沿って多数のLED32、42を配置しているので、より確実に処理時間の短縮化を図ることができる。また、レジスト塗布装置1では処理レシピ毎に各LEDの照射強度の分布を設定し、ウエハWの面内で均一性高くレジスト膜の膜厚を制御できるため有利である。
【0044】
上記の加熱工程S3において、ウエハWを回転速度V3で回転させてレジスト膜R中の溶剤R0を除去し、その後に各LEDにより加熱処理を行ってもよい。このようにしても装置間におけるウエハWの搬送が必要ないためスループットの向上を図ることができるが、上記のように回転により生じる気流による乾燥と、LEDの加熱とを並行して行うことでスループットをより高くすることができるので好ましい。なお、このレジスト塗布装置1では多数のLEDにより、ウエハWの周方向及び径方向に照射領域が配列されることから、LEDによる加熱処理時にウエハWを回転させなくてもよい。この場合、赤外線が照射されないLEDの照射領域と照射領域との間はウエハWの伝熱により加熱される。
【0045】
また、回転速度をV2からV3に変更した初期では、レジスト膜Rには溶剤R0が多く含まれるため流動性が比較的高く、この段階においても回転の遠心力の作用によりウエハWの面内でレジスト膜Rの厚さが若干均される。急激にレジスト膜Rを加熱して溶剤を揮発させると、この回転による均しが起こりにくくなり、膜厚分布の均一性が低下してしまうので上記の加熱工程S3では、徐々に各LED32、42の照射強度を大きくしている。なお、照射強度は段階的に上昇させてもよい。
【0046】
上記のLED32、42による加熱処理開始のタイミングとしては、処理時間を短縮化する観点から早く行う程有効であるが、レジスト液塗布工程S1、平坦化工程S2中に加熱処理が行われると、レジスト膜Rの周縁への広がり及び平坦化を妨げるおそれがあるので、上記のように平坦化工程S2の終了と同時に行うか、あるいはウエハWの回転速度をV3に上昇させた後に行うことが好ましい。
【0047】
なお、上述の実施形態で、加熱処理パラメータについては、塗布処理パラメータを格納している記憶領域とは別の記憶領域に塗布処理パラメータと対応付けて書き込んでおき、処理レシピを選択し、塗布処理パラメータが決定されたときにその記憶領域から加熱処理パラメータを読み出すようにしてもよい。
【0048】
LED32の配置の例としては上記の例に限られない。図13〜図16は、LED配置の他の例を示した模式図である。例えば図13に示すように平面で見てスピンチャック21を挟んで左右両側に、ウエハWの径方向に沿って直線状に配置してもよいし、図14に示すように左右のいずれか一方に前記径方向に直線状に配置してもよい。また、図15に示すように平面視十字状に配置してもよいし、図16に示すようにスピンチャック21から放射状広がるように配置してもよい。
【0049】
LED42は図17に示すようにアーム54Aに設けられていてもよく、この例ではアーム54Aの下方に当該アーム54Aの長さ方向に沿って配列されている。このようにアーム54AにLED42を設けた場合、レジスト液をウエハWに供給した後、図18に概略的に示すようにアーム54AはLED42がウエハWの半径上に位置するように移動し、赤外線の照射が行われる。
【0050】
図19〜図21ではLED42の更に他の配置例を示している。図19に示した例ではLED42を回転するウエハWの直径に沿って配列している。図20に示した例ではLED42を前記ウエハWの半径上に配列している。図21ではアーム54A及び冷却ジャケット43に夫々LED42を設け、ウエハWの直径方向に沿った領域が加熱されるように構成している。既述の各図で説明したLED32、42の配置は互いに組み合わせて構成することができる。例えばLED32は図15に示したように十字状に配置し、LED42は図18に示したようにウエハWの半径上に直線状に配置してもよい。
【0051】
図13〜図21に示したLED32、42の配置では、既述の実施形態の作用で説明したようにウエハWの回転中に赤外線の照射を行い、前記回転によりウエハWの周方向に赤外線が照射される領域が移動することでウエハW全体を加熱する。このようにスピンチャック21の回転を利用することで、装置に搭載するLEDの数を抑え、装置の低コスト化を図ることができる。このようにウエハW全体を加熱することができればよいため、LED32、42の配置としては、直線状に配置することに限られず、図22に示すように周方向にずれた位置に配置してもよい。図22中の点線は、各LED42が夫々ウエハWの中心から離れていることを明確にするための仮想線である。また、ウエハW表面側から照射される赤外線はスピンチャック21に遮られないため、裏面側のLED32を用いず、ウエハW表面側のLED42のみを用いてウエハWの加熱処理を行ってもよい。なお、図13〜図22の各図はLED32、42の配列方向を概略的に示したものであるため、LED32、42の数はこの例に限られない。
【0052】
LED32及びLED42の照射口の形状としては既述の例には限られない。例えば、前記照射口は図23に示すように光源322から遠ざかるに従って拡径されるように構成してもよいし、逆に図24に示すように縮径されるように構成してもよい。また、図25に示すように段部324を備え、この段部324により基部側(光源322側)では口径が小さく、開口端側では口径が大きくなるように構成してもよい。
【0053】
上記の第1の実施形態では、隣接するLED32の間隔及び隣接するLED42の間隔を互いに等間隔に設定したが、このように等間隔に設定することには限られない。図26、図27は、LED32、LED42が等間隔に設定されていない配置の一例である。図28は、図26のLED32と図27のLED42とを重ね合わせて見た図である。このように重ね合わせると、各LEDはウエハWに対して互いに等間隔に配置され、各LEDの出力を均一に設定することでウエハWの面内を均一性高く加熱することができる。これら図26、図27に示すようにLEDを配置した場合にも既述の実施形態と同様、各LEDの照射強度が夫々異なるように設定してもよい。
【0054】
レジスト膜を形成する塗布装置について説明したが塗布液についてはレジスト液に限られず、反射防止膜形成用の薬液であってもよい。そのように反射防止膜形成用の薬液を塗布する場合には、赤外線の照射により前記薬液中の溶剤が除去されると共に、薬液中の反射防止膜を構成する分子同士が化学反応を起こし、架橋されて互いに結合する温度に加熱される。さらに、上記の各例ではスピンコーティングによりレジスト膜Rを形成しているが、このような成膜手法に限られない。例えばレジスト液ノズル51Aを駆動機構に接続し、レジスト液を吐出させながらウエハWに対して水平方向に移動させて、ウエハW全体にレジスト液を塗布してレジスト膜を形成してもよい。
【0055】
ウエハW及び塗布液の加熱源としては例えばハロゲンランプであってもよいが、LEDは発熱量がハロゲンランプよりも小さいため、加熱時にウエハWの温度を精度高く制御することができ、上記のように膜厚の均一性を高くすることができる。また、この装置において加熱源としては、ウエハWまたは塗布液が吸収する波長を有し、前記塗布液を加熱するか、あるいはウエハWを介して塗布液を加熱することができる電磁波を照射するものが用いられる。従って、前記加熱源は、LEDやハロゲンランプのように赤外線を照射するものには限られず、例えばマイクロ波を照射するように構成してもよい。
【0056】
図29は、マイクロ波によりウエハW表面のレジスト液及びウエハWを構成するシリコンを加熱するレジスト塗布装置の一例である。このレジスト塗布装置7の筐体71にはマグネトロン72が設けられる。筐体11の内壁は例えば金属により構成され、マグネトロン72から放射されたマイクロ波を反射する。これによってマイクロ波がカップ24内のスピンチャック21上のウエハW全体に供給される。なお、カップ24内の排気ポート及び排液ポートの図示は省略している
【0057】
筐体71にはノズル搬送口73が設けられ、当該ノズル搬送口73はマイクロ波が筐体71外への放射されることを防ぐシャッタ74により開閉自在に構成される。筐体71外にはアーム54Aの基端側に接続され、当該アーム54Aを回動させる回動機構75が設けられている。そして、レジスト液ノズル51Aは、回動機構75によりノズル搬送口73を介して筐体71の内外を移動自在に構成される。ウエハWにレジスト塗布後、ノズル及び配管中のレジスト液が加熱されないようにレジスト液ノズル51Aは筐体71外に退避し、ウエハWの加熱処理が行われる。均一性高く加熱を行うために、加熱処理中ウエハWは例えばスピンチャック21により回転される。
【0058】
次に塗布、現像装置に上述したレジスト塗布装置1を適用した一例について簡単に説明する。図30は塗布、現像装置101に露光装置C4が接続されたシステムの平面図であり、図31は同システムの斜視図である。また図32は同システムの縦断面図である。この装置にはキャリアブロックC1が設けられており、その載置台102上に載置された密閉型のキャリアCから受け渡しアーム103がウエハWを取り出して処理ブロックS2に受け渡し、処理ブロックS2から受け渡しアーム103が処理済みのウエハWを受け取ってキャリアCに戻すように構成されている。
【0059】
前記処理ブロックS2は、図31に示すようにこの例では現像処理を行うための第1のブロック(DEV層)B1、レジスト膜の下層側に形成される反射防止膜の形成処理を行うための第2のブロック(BCT層)B2、レジスト膜の塗布を行うための第3のブロック(COT層)B3、レジスト膜の上層側に形成される保護膜の形成を行うための第4のブロック(ITC層)B4を、下から順に積層して構成されている。
【0060】
第3のブロック(COT層)B3は、塗布ユニット104を備えている。塗布ユニット104は、ウエハWを処理するレジスト塗布モジュール105が3箇所設けられ、各レジスト塗布モジュール105はウエハWに独立して処理を行う。このレジスト塗布モジュール105が上記のレジスト塗布装置1に相当する。また、第3のブロックB3にはレジスト塗布後に周縁露光を行う周縁露光モジュール106と、各モジュールでウエハWを受け渡す搬送アームA3が設けられる。図中107は、搬送アームA3のガイドである。
【0061】
第2のブロック(BCT層)B2及び第4のブロック(ITC層)B4は、塗布ユニット104の塗布モジュール105において各々反射防止膜を形成するための薬液及び露光装置C4における液浸露光時にレジスト膜を保護する保護膜形成用の薬液を供給することを除いて第3のブロック(COT層)B3と同様に構成される。また、第2のブロックB2及び第4のブロックB4は、搬送アームA3に相当する搬送アームA2、A4を備えている。
【0062】
一方、第1のブロック(DEV層)B1については図32に示すように一つのDEV層B1内に塗布ユニット104に対応する現像ユニットが2段に積層されている。そして当該DEV層B1内には、上記の搬送アームA2〜A4に対応する搬送アームA1が設けられ、これら2段の現像ユニットにウエハWを搬送する。つまり2段の現像ユニットに対して搬送アームA1が共通化されている構成となっている。また、搬送アームA1のガイド107に沿って露光後のウエハWを加熱する加熱モジュールが設けられている。
【0063】
更に処理ブロックC2には、図30及び図32に示すように棚ユニットU5が設けられ、キャリアブロックC1からのウエハWは前記棚ユニットU5の一つの受け渡しモジュール、例えば第2のブロック(BCT層)B2の対応する受け渡しモジュールCPL2に、前記棚ユニットU5の近傍に設けられた昇降自在な第1の受け渡しアームD1によって順次搬送される。第2のブロック(BCT層)B2内の搬送アームA2は、この受け渡しモジュールCPL2からウエハWを受け取って塗布モジュール105に搬送し、ウエハWに反射防止膜が形成される。
【0064】
その後、ウエハWは棚ユニットU5の受け渡しモジュールBF2、受け渡しアームD1、棚ユニットU5の受け渡しモジュールCPL3及び搬送アームA3を介して第3のブロック(COT層)B3に搬入され、レジスト膜が形成される。然る後ウエハWは、搬送アームA3により周縁露光モジュール106に搬送され、周縁露光処理を受ける。更にウエハWは、搬送アームA3→棚ユニットU5の受け渡しモジュールBF3→受け渡しアームD1を経て棚ユニットU5における受渡しユニットBF3に受け渡される。さらに、ウエハWは受け渡しモジュールCPL4を介して搬送アームA4により第4のブロック(ITC層)B4に搬入されて保護膜が形成された後、搬送アームA4により受け渡しモジュールTRS4に受け渡される。
【0065】
一方DEV層B1内の上部には、棚ユニットU5に設けられた受け渡しモジュールCPL11から棚ユニットU6に設けられた受け渡しモジュールCPL12にウエハWを直接搬送するためのシャトル109が設けられている。保護膜が形成されたウエハWは、受け渡しアームD1を介して棚ユニットU5の受け渡し部111にてシャトル109に受け渡され、棚ユニットU6の受け渡し部112に搬送され、インターフェイスブロックC3に取り込まれる。なお図32中のCPLが付されている受け渡しモジュールは温調用の冷却ユニットを兼ねており、BFが付されている受け渡しモジュールは複数枚のウエハWを載置可能なバッファユニットを兼ねている。
【0066】
次いで、ウエハWはインターフェイスアーム113により露光装置C4に搬送され、ここで液浸露光処理が行われた後、棚ユニットU6の受け渡しモジュールTRS6に載置されて処理ブロックC2に戻される。戻されたウエハWは、第1のブロック(DEV層)B1の搬送アームA1により加熱モジュール→現像モジュールの順に搬送されて現像処理を受け、棚ユニットU5の受け渡しモジュールTRS1に受け渡される。その後、ウエハWは受け渡しアーム103を介してキャリアCに戻される。このようにウエハWは、第2〜第4の単位ブロックB2〜B4における各塗布モジュールで処理された後、加熱モジュールへ搬送されることなく、後段のモジュールへ搬送される。従って、スループットの向上を図ることができる。ただし、本発明では、塗布モジュールで処理後、加熱モジュールへの搬送及び当該加熱モジュールでの加熱処理を禁止するものではない。
【符号の説明】
【0067】
W ウエハ
1 レジスト塗布装置
21 スピンチャック
31 裏面側加熱部
32 LED
41 裏面側加熱部
42 LED
51A レジスト液ノズル
6 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を水平に保持する保持部と、
前記基板の表面に塗布液を供給するノズルと、
基板全体に塗布膜を形成するために、前記ノズルに対して保持部を相対的に移動させる移動機構と、
前記保持部に保持された基板に向けて電磁波を照射し、当該塗布膜に含まれる分子が互いに結合する温度に前記塗布膜全体を加熱するための電磁波照射部と、
を備えたことを特徴とする塗布装置。
【請求項2】
前記移動機構は、基板の中心部に供給された塗布液を基板の周縁部へ遠心力により広げるために、前記保持部を鉛直な軸回りに回転させる回転機構であることを特徴とする請求項1記載の塗布装置。
【請求項3】
前記電磁波照射部は、回転する基板の径方向に異なる位置を加熱するように電磁波を照射することを特徴とする請求項2記載の塗布装置。
【請求項4】
前記電磁波照射部は、回転する基板の径方向に異なる位置に互いに独立した強度で電磁波を照射できるように構成され、
塗布液の種類及び基板の回転速度の推移パターンを含む複数の処理レシピと、基板の径方向における照射強度の比率を特定する複数のデータとの対応関係を記憶した記憶部と、
前記処理レシピを設定するための設定部と、
前記設定部により設定された処理レシピと、前記対応関係とに基づいて、前記径方向における電磁波の照射強度の比率を制御するように制御信号を出力する制御部と、
が設けられることを特徴とする請求項3記載の塗布装置。
【請求項5】
前記電磁波照射部は、塗布膜の形成後に基板を回転させながら当該基板を第1の温度で加熱するために第1の照射強度で電磁波を照射し、然る後、基板を回転させながら基板を前記第1の温度よりも高い第2の温度で加熱するために第2の照射強度で電磁波を照射することを特徴とする請求項2ないし4のいずれか一つに記載の塗布装置。
【請求項6】
前記電磁波照射部は、発光ダイオードであることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一つに記載の塗布装置。
【請求項7】
保持部により基板を水平に保持する工程と、
ノズルにより前記基板の表面に塗布液を供給する工程と、
移動機構により前記ノズルに対して保持部を相対的に移動させて基板全体に塗布膜を形成する工程と、
電磁波照射部により、前記保持部に保持された基板に向けて電磁波を照射し、当該塗布膜に含まれる分子が互いに結合する温度に前記塗布膜全体を加熱する工程と、
を備えたことを特徴とする塗布方法。
【請求項8】
前記塗布膜を形成する工程は、
基板の中心部に供給された塗布液を基板の周縁部へ遠心力により広げるために前記保持部を鉛直な軸回りに回転させる工程を含むことを特徴とする請求項7記載の塗布方法。
【請求項9】
前記塗布膜全体を加熱する工程は、
回転する基板の径方向に異なる領域に電磁波を照射する工程を含むことを特徴とする請求項8記載の塗布方法。
【請求項10】
前記塗布膜全体を加熱する工程は、
塗布液の種類及び基板の回転速度の推移パターンを含む処理レシピを設定する工程と、
予め記憶部に記憶された塗布液の種類及び基板の回転速度の推移パターンを含む複数の処理レシピと、基板の径方向における照射強度の比率を特定する複数のデータとの対応関係とに基づいて、設定した処理レシピに対応する前記照射強度の比率を決定する工程と、
決定した照射強度の比率で基板の径方向に異なる位置に各々電磁波を照射する工程と、
を含むことを特徴とする請求項9記載の塗布方法。
【請求項11】
前記塗布膜全体を加熱する工程は、
塗布膜の形成後に基板を回転させながら当該基板を第1の温度で加熱する工程と、
次いで、基板を回転させながら、基板を第1の温度よりも高い第2の温度で加熱する工程と、
を含むことを特徴とする請求項8ないし10のいずれか一つに記載の塗布方法。
【請求項12】
基板に対する塗布処理を行う塗布装置に用いられるコンピュータプログラムが記憶された記憶媒体であって、
前記コンピュータプログラムは、請求項7ないし11のいずれか一つに記載の塗布方法を実施するためのものであることを特徴とする記憶媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【公開番号】特開2012−227461(P2012−227461A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−95837(P2011−95837)
【出願日】平成23年4月22日(2011.4.22)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】