塗布装置および環状シームレス成形体の製造方法
【課題】生産性・塗布効率に十分に優れた塗布装置を提供する。
【解決手段】軸方向を回転軸として回転しながら表面に樹脂溶液が塗布される金型;および該金型の塗布面に対して所定の距離を離間させて配設され、樹脂溶液を金型塗布面に供給・塗布する供給ブレードを有する塗布装置であって、ブレードにおける金型塗布面に対向する先端部を金型塗布面側から見たとき、当該先端部が下に凸または上に凸の撓み形状を有し、該凸部におけるブレードと金型塗布面との距離が、ブレードの金型軸方向両端部における金型塗布面との距離よりも狭いことを特徴とする塗布装置。
【解決手段】軸方向を回転軸として回転しながら表面に樹脂溶液が塗布される金型;および該金型の塗布面に対して所定の距離を離間させて配設され、樹脂溶液を金型塗布面に供給・塗布する供給ブレードを有する塗布装置であって、ブレードにおける金型塗布面に対向する先端部を金型塗布面側から見たとき、当該先端部が下に凸または上に凸の撓み形状を有し、該凸部におけるブレードと金型塗布面との距離が、ブレードの金型軸方向両端部における金型塗布面との距離よりも狭いことを特徴とする塗布装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は塗布装置、特に金型表面に樹脂溶液を塗布するための塗布装置に関する。詳しくは、本発明は環状シームレス成形体の製造時において有用な塗布装置に関する。本発明はまた環状シームレス成形体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置において定着ベルト、中間転写ベルト、接触帯電ベルト等には、薄肉の樹脂ベルトがよく用いられる。そのような樹脂ベルトは変形が可能なため、装置の小径化に有用である。樹脂ベルトに継ぎ目(シーム)があると、出力画像に継ぎ目に起因する欠陥が生じるので、継ぎ目がないシームレスベルトが好ましい。
【0003】
シームレスベルトは、例えば、金型の表面に樹脂溶液を塗布し、樹脂塗膜を加熱し、得られた樹脂皮膜を脱型する方法によって製造される。特に、ポリイミド樹脂からなるシームレスベルトは、金型の表面にポリイミド前駆体溶液を塗布し、樹脂塗膜を加熱して乾燥および反応させ、得られた樹脂皮膜を脱型する方法によって製造される。
【0004】
そのような環状シームレス成形体の製造方法において、樹脂溶液を金型表面に塗布する装置として、例えば図13に示す装置が知られている。図13に示す装置は、軸方向を回転軸として回転する金型101および該金型の塗布面に対してその軸方向にわたって略一定の距離を離間させて配設されるブレード102を有するものである。
【0005】
しかしながら、そのような塗布装置においてブレード102の中央部における金型101との間隙に樹脂溶液を塊状で供給すると、樹脂溶液が金型軸方向に広がるのに長時間かかり、塗布装置の生産性・塗布効率に問題があった。一方、上記塗布装置において樹脂溶液供給装置を金型軸方向にわたって連続的に移動させながらブレード102上に樹脂溶液を供給することが考えられるが、樹脂溶液供給装置として連続移動式のものが必要になり、やはり塗布装置の生産性・塗布効率に問題があった。
【0006】
そこで、特許文献1では、ブレードに特殊な形状を付与する試みが為されている。すなわち、ベルト基材にシリコーンゴム層を形成する方法において、ゴムが塗布される基材とそのような第1のブレードとの隙間をブレード長手方向で不均一にすることでゴムを長手方向へすばやく広げることができる。
【特許文献1】特開2001−287280号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、ブレードを特殊な形状に切削加工する必要があるため、やはり塗布装置の生産性・塗布効率に問題があった。
【0008】
本発明は、生産性・塗布効率に十分に優れた塗布装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、
軸方向を回転軸として回転しながら表面に樹脂溶液が塗布される金型;および
該金型の塗布面に対して所定の距離を離間させて配設され、樹脂溶液を金型塗布面に供給・塗布する供給ブレード
を有する塗布装置であって、
ブレードにおける金型塗布面に対向する先端部を金型塗布面側から見たとき、当該先端部が下に凸または上に凸の撓み形状を有し、該凸部におけるブレードと金型塗布面との距離が、ブレードの金型軸方向両端部における金型塗布面との距離よりも狭いことを特徴とする塗布装置に関する。
【0010】
本発明はまた、上記該塗布装置を使用することを特徴とする環状シームレス成形体の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の塗布装置においてブレードは、所定の撓み形状を予め付与されているので、樹脂溶液を金型表面に対して軸方向に速やかに拡散・塗布できる。そのため、ブレードの切削加工なしに、塗布装置の生産性・塗布効率を十分に向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
<塗布装置>
本発明に係る塗布装置は、回転する金型の表面に樹脂溶液を塗布するものであって、特に、環状シームレス成形体の製造に有用である。
【0013】
本発明の塗布装置は、少なくとも金型および該金型に樹脂溶液を供給するための供給ブレードを有するものである。以下、図1を用いて説明する。図1は、金型1と供給ブレード2とを、それらの対向領域における金型回転方向上流側から見たときの概略見取り図である。なお、図1は供給ブレード2上に樹脂溶液3を供給したときの樹脂溶液の挙動を詳しく説明するために、樹脂溶液3を透視して示している。
【0014】
金型1は、軸方向Dを回転軸として回転しながら表面に樹脂溶液が塗布されるものであり、塗布面は外周面であっても、または内周面であってもよい。樹脂溶液が外周面に塗布される場合、金型は円筒形状を有してもよいし、または円柱形状を有してもよい。樹脂溶液が内周面に塗布される場合、金型は円筒形状を有する。塗布面の曲率半径は、本発明の目的が達成される限り特に制限されるものではなく、通常は10〜150mm、特に10〜35mmが本発明の効果を得る上で好ましい。
【0015】
金型の構成材料は特に制限されないが、特に当該塗布装置10を環状シームレス成形体の製造に使用する場合においては、焼成時の加熱によっても変形が起こらないものが使用される。そのような材料として、例えば、アルミニウム、銅、鋼等の金属が好ましく使用される。中でも市場流通性、耐溶剤性、熱伝導性、強度等の観点から、アルミニウムが特に好ましく用いられる。そのような金属を所定形状に加工するに際しては、管材もしくは棒材を切削により所定形状にすればよい。特にアルミニウムを用いる場合は、金属の中でも比較的硬度が低く、切削性に優れるため、加工し易い特徴があり、金型生産効率を上げられる。特に画像形成装置に使用される環状シームレス成形体を製造する場合においては、金型は塗布面に離型層を有することが好ましい。離型層としては、例えば、シリコーン樹脂やフッ素含有樹脂等を被覆することによって得られた樹脂層、シリコーン系、フッ素系離型剤をコーティングすることによって得られた塗布膜等が挙げられる。
【0016】
供給ブレード2(以下、単に「ブレード」ということがある)は、該金型1の塗布面に対して所定の距離を離間させて配設され、金型回転方向上流側の面に供給された樹脂溶液3を金型塗布面に供給・塗布するものである。本明細書中、ブレード2は後述するブレード2a〜2fを包含する概念で用いるものとする。
【0017】
ブレード2は、少なくとも金型塗布面側が下に凸または上に凸の撓み形状を有するものであり、すなわち、例えば図2(A)および図7(A)に示すように、当該ブレード2における金型塗布面に対向する先端部11を金型塗布面側から見たとき、当該先端部が下に凸または上に凸の撓み形状を有するものである。そのようなブレード2は、図1に示すように、凸部におけるブレードと金型塗布面との距離d1が、ブレードの金型軸方向両端部における金型塗布面との距離d2、d3よりも狭くなるように配設される。凸部とは、下に凸の撓み形状の場合は、ブレード先端部における最低部を意味し、上に凸の撓み形状の場合は、ブレード先端部における最高部を意味するものとする。
【0018】
樹脂溶液は間隙を通過するとき、より広い間隙を通るように移動・拡散する性質を有する。そのため、ブレードが上記撓み形状を有し、かつ金型塗布面と上記所定の距離を確保するように配設されると、そのような性質に基づいて樹脂溶液3は軸方向Dの端部方向に向かって移動・拡散する。その結果、樹脂溶液を金型塗布面に対して軸方向に速やかに拡散・塗布できるようになるので、ブレードの切削加工なしに、塗布装置の生産性・塗布効率を十分に向上させることができる。
【0019】
図1に示す撓み形状ついて、ブレード2は金型軸方向の略中央部において凸部を有し、当該中央部と金型塗布面との距離が最も狭くなっているが、これに制限されるものではなく、金型軸方向の両端部間における任意の部分において凸部を有し、当該距離が最も狭くなっていればよい。金型軸方向の両端部間における任意の部分とは、金型軸方向の両端部(ベルト成形範囲外)を除く、その間の任意の部分である。塗布効率の観点から、ブレードにおいて金型塗布面との距離が最も狭くなる部位は金型軸方向の略中央部であることが好ましい。
【0020】
図1、図2(A)および図7(A)中、ブレード2における凸部から金型軸方向の両端部にかけての撓み勾配は連続的であればよく、直線的であっても、曲線的であってもよい。
【0021】
ブレード2は、長方形形状を有する平面ブレードを強制的に撓ませることによって上記撓み形状を付与可能である。例えば、平面ブレードが可撓性および弾性を有する場合、当該平面ブレードを弾性変形させ、得られた変形形状を支持部材等によって維持させることによって、所定の撓み形状を継続的に付与できる。また例えば、平面ブレードが可撓性および可塑性を有する場合、当該平面ブレードを塑性変形させることによって、所定の撓み形状を継続的に付与できる。そのようなブレードを構成する材料としては、特に制限されず、例えば、ステンレス、アルミ、ポリプロピレン、ポリエチレン、フッ素樹脂等が挙げられる。上記材料は常温では通常、可撓性および弾性を有するものであるが、熱を付与することによって塑性変形可能である。ブレード厚みは通常、500〜3000μmであり、撓み形状付与の観点から500〜1500μmが好ましい。本発明においてブレードは単なる長方形形状を有する平面状薄板部材をそのまま変形させて使用できるので、特殊な切削加工を要しない。
【0022】
樹脂溶液は公知の樹脂を有機溶剤に溶解してなるものであってよい。本発明において樹脂溶液の粘度は本発明の目的が達成される限り特に制限されるものではないが、例えば5〜1000パスカル秒、特に10〜50パスカル秒の比較的高粘度の粘稠体が好ましく使用される。樹脂溶液を構成する公知の樹脂は、熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂等であってよい。特に画像形成装置に使用される環状シームレス成形体を製造する場合においては、熱硬化性樹脂、特にポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂等を使用することが好ましい。有機溶剤は樹脂を溶解可能なものであれば特に制限されない。
本明細書中、粘度はDV−II+Proビスコメーター(ブルックフィールド社製)によって測定された値を用いている。
【0023】
以下、第1実施形態および第2実施形態を具体例に挙げて、本発明の塗布装置10をさらに詳しく説明する。
【0024】
(第1実施形態)
第1実施形態の塗布装置の概略断面模式図を図2に示す。
図2(A)に示す塗布装置10Aは、詳しくは、ブレード2aが金型塗布面側で下に凸の撓み形状を有し、ブレード2aにおける金型塗布面に対向する先端部11を金型塗布面側から見たとき、当該先端部が下に凸の撓み形状を有するものである。そのようなブレード2aは当該凸部における金型塗布面との距離が、ブレードの金型軸方向両端部における金型塗布面との距離よりも狭くなるように配設される。ブレード2aは金型軸方向の両端部で支持部材12、13によって支持されている。両端部の支持部材は、図2(A)に示すように、ブレード2aの長手方向に対して略垂直方向に配設されている。ブレード2aは支持部材によってそのように支持されなければならないというわけではなく、ブレード2aの撓み形状を継続して維持できる限り、いかなる支持部材によっていかなる方法で支持されてもよい。
【0025】
図2(A)に示す塗布装置10Aの概略垂直断面見取り図を図3に示す。図3は、金型軸方向Dに対して垂直な断面(以下、単に「垂直断面」という)を示すものである。図3において金型軸方向両端部でのブレード断面を破線で示し、凸部を有する部位でのブレード断面を実線で示す。ブレード2aは、凸部におけるブレードと金型塗布面との距離x1が、ブレードの金型軸方向両端部における金型塗布面との距離x2よりも狭くなるように配設されている。
【0026】
本実施形態の図2(A)に示す塗布装置10Aにおいて樹脂溶液3が供給されたところを図2(B)に示す。樹脂溶液3が、図2(B)に示すように、ブレード2aの凸部における金型塗布面との間隙周辺に塊状で供給されると、樹脂溶液3は円滑に金型軸方向に拡散しながら金型1の塗布面に供給される。このときの凸部における概略断面模式図を図4に示す。ブレード2a上の樹脂溶液3が金型塗布面に拡散・供給されて消費されると、図2(C)に示すように塗布が完了し、金型塗布面に塗膜5が形成される。塗布装置10Aに規制ブレードを別途設けることによって、膜厚規制を行うことができる。規制ブレードは、金型1の塗布面に対してその軸方向にわたって略一定の距離を離間させて配設される。
【0027】
図2(A)において、ブレード2aは金型塗布面側のみで下に凸の撓み形状を有するが、図5に示すようにその逆側においても下に凸の撓み形状を有し、すなわちブレード2b全体として下に凸の撓み形状を有してもよい。
【0028】
図2(A)および図5において、ブレード2a、2bは凸部を金型軸方向の略中央部に有しているが、これに制限されるものではなく、金型軸方向の両端部間における任意の部分に有してよい。塗布効率の観点からは凸部は略中央部に供給されることが好ましい。
【0029】
本実施形態において、塗布装置10Aは樹脂溶液が金型外周面に塗布される場合について説明されているが、これに制限されるものではなく、樹脂溶液は金型内周面に塗布されてもよい。樹脂溶液が金型内周面に塗布される場合における、第1実施形態の塗布装置10Cの概略断面模式図を図6に示す。図6は、樹脂溶液が金型内周面に塗布されること以外、図3と同様であるため、図6の説明を省略する。
【0030】
(第2実施形態)
第2実施形態の塗布装置の概略断面模式図を図7に示す。
図7(A)に示す塗布装置10Dは、詳しくは、ブレード2dが金型塗布面側で上に凸の撓み形状を有し、ブレード2dにおける金型塗布面に対向する先端部11を金型塗布面側から見たとき、当該先端部が上に凸の撓み形状を有するものである。そのようなブレード2bは当該凸部における金型塗布面との距離が、ブレードの金型軸方向両端部における金型塗布面との距離よりも狭くなるように配設される。ブレード2dは金型軸方向の略中央部で支持部材12によって支持されている。略中央部の支持部材は、図7(A)に示すように、ブレード2dの長手方向に対して略垂直方向に配設されている。ブレード2dは支持部材によってそのように支持されなければならないというわけではなく、ブレード2dの撓み形状を継続して維持できる限り、いかなる支持部材によっていかなる方法で支持されてもよい。
【0031】
図7(A)に示す塗布装置10Dの概略垂直断面見取り図を図8に示す。図8は、金型軸方向Dに対して垂直な断面(以下、単に「垂直断面」という)を示すものである。図8において金型軸方向両端部でのブレード断面を破線で示し、凸部を有する部位でのブレード断面を実線で示す。ブレード2dは、凸部におけるブレードと金型塗布面との距離y2が、ブレードの金型軸方向両端部における金型塗布面との距離y1よりも狭くなるように配設されている。
【0032】
本実施形態の図7(A)に示す塗布装置10Dにおいて樹脂溶液3が供給されたところを図7(B)に示す。樹脂溶液3が、図7(B)に示すように、ブレード2dの凸部における金型塗布面との間隙周辺に塊状で供給されると、樹脂溶液3は円滑に金型軸方向に拡散しながら金型1の塗布面に供給される。このときの凸部における概略断面模式図を図9に示す。ブレード2d上の樹脂溶液3が金型塗布面に拡散・供給されて消費されると、図7(C)に示すように塗布が完了し、金型塗布面に塗膜5が形成される。塗布装置10Dに規制ブレードを別途設けることによって、膜厚規制を行うことができる。規制ブレードとは、第1実施形態においってと同様のものである。
【0033】
図7(A)において、ブレード2dは金型塗布面側のみで上に凸の撓み形状を有するが、図10に示すようにその逆側においても上に凸の撓み形状を有し、すなわちブレード2e全体として上に凸の撓み形状を有してもよい。
【0034】
図7(A)および図10において、ブレード2d、2eは凸部を金型軸方向の略中央部に有しているが、これに制限されるものではなく、金型軸方向の両端部間における任意の部分に有してよい。塗布効率の観点からは凸部は略中央部に供給されることが好ましい。
【0035】
本実施形態において、塗布装置10Dは樹脂溶液が金型外周面に塗布される場合について説明されているが、これに制限されるものではなく、樹脂溶液は金型内周面に塗布されてもよい。樹脂溶液が金型内周面に塗布される場合における、第2実施形態の塗布装置10Fの概略断面模式図を図11に示す。図11は、樹脂溶液が金型内周面に塗布されること以外、図8と同様であるため、図11の説明を省略する。
【0036】
いずれの実施形態においてもブレード2a〜2fの少なくとも先端部はフッ素樹脂処理、耐腐食処理を施されていることが好ましい。フッ素樹脂処理によって、清掃メンテナンス性を向上させることができる。耐腐食処理によって、樹脂溶液によるブレード腐食を防止できる。耐腐食処理として、例えば、金メッキ処理が挙げられる。
【0037】
塗布装置10A〜10Fは、ブレードの金型軸方向端部から垂下する樹脂溶液を収容するための受け部材をさらに有することが好ましい。例えば図12には、受け部材17は手前側のみに設けられているが、奥側に設けられても良い。図12の塗布装置は受け部材17を有すること以外、図2(B)の塗布装置と同様である。
【0038】
いずれの実施形態においても樹脂溶液3は、例えば図2(B)および図7(B)に示すように、塊状でブレード上の凸部に供給されるので、供給口移動式の供給装置は要しない。樹脂溶液3は、金型表面を所定の塗膜厚で被覆するのに必要な量を1回で供給されてもよいし、2回以上に分割されて供給されてもよいし、または固定式の供給ノズル等で連続的に供給されてもよい。
【0039】
<環状シームレス成形体の製造方法>
本発明の環状シームレス成形体の製造方法は、上記した塗布装置を使用することを特徴とし、通常は以下の工程を含むものである;
上記塗布装置を用いて、金型表面に樹脂溶液を塗布し、樹脂塗膜を形成する樹脂塗膜形成工程;
樹脂塗膜を加熱し、樹脂皮膜を形成する樹脂皮膜形成工程;および
樹脂皮膜を金型から剥離する脱型工程。
【0040】
本方法においてポリイミド樹脂製の環状シームレス成形体を製造する場合、樹脂溶液としてポリイミド前駆体溶液が使用される。ポリイミド前駆体として、いわゆるポリアミック酸、例えば、3,3',4,4'−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)とp−フェニレンジアミン(PDA)からなる前駆体、ピロメリット酸二無水物(PMDA)と4,4'−ジアミノフェニルエーテル(ODA)からなる前駆体等が使用される。
【0041】
ポリアミドイミド樹脂製の環状シームレス成形体を製造する場合、樹脂溶液としてポリアミドイミド前駆体溶液が使用される。ポリアミドイミド前駆体として、例えば、アミド基含有芳香族ジアミンとPMDAからなる前駆体や、芳香族ジアミンまたはその誘導体と無水トリメリット酸(TMA)からなる前駆体等が使用される。
以下、特に好ましい態様として、ポリイミド樹脂製の環状シームレス成形体の製造方法について詳細に説明する。
【0042】
(樹脂塗膜形成工程)
本工程では、まず、ポリイミド前駆体を有機溶剤に溶解させて樹脂溶液を調製する。
ポリイミド前駆体は上記したものが使用可能であり、2種以上を混合して用いてもよい。
【0043】
有機溶剤は、ポリイミド前駆体を溶解可能なものであれば、特に制限されず、例えば、非プロトン系極性溶剤等が使用される。非プロトン系極性溶剤の具体例としては、例えば、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、アセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等が挙げられる。樹脂溶液におけるポリイミド前駆体の濃度、粘度等は、成形体の所望厚み、樹脂溶液の流動性等に応じて適宜選択される。
【0044】
次いで、前記した塗布装置を用いて、樹脂溶液を金型の表面に塗布して、例えば、図2(C)および図7(C)に示すように、樹脂塗膜5を形成する。その後は所望により、金型の塗布面に対してその軸方向にわたって略一定の距離を離間させて配設される規制ブレードによって、膜厚規制を行う。
【0045】
(樹脂皮膜形成工程)
本工程では、樹脂塗膜を加熱し、樹脂皮膜を形成する。詳しくは、樹脂塗膜を加熱乾燥させてから、加熱反応(焼成)させてポリイミド樹脂皮膜を形成する。
【0046】
まず、樹脂塗膜中に過度に残留する溶剤を除去する目的で、静置しても塗膜が変形しない程度まで加熱乾燥を行う。乾燥条件は、80〜200℃の温度で30〜60分間であることが好ましい。その際、温度が高いほど、加熱時間は短くてよい。また、加熱することに加え、風を当てることも有効である。また、遠赤外線加熱を用いれば、溶剤除去をさらに効率よく行うことができる。加熱は、時間内において、段階的に上昇させたり、一定速度で上昇させてもよい。なお、樹脂塗膜から溶剤を除去させすぎると、塗膜はまだ成形体としての強度を保持していないので、割れを生じる虞がある。そのため溶剤を適度に残留させておくことが好ましい。具体的には樹脂塗膜中に15〜50質量%、特に35〜50質量%の割合で溶剤を残留させることが好ましい。
【0047】
次いで、300〜450℃、好ましくは350℃前後で、20〜60分間、樹脂塗膜を加熱反応させることで、ポリイミド樹脂皮膜を形成できる。加熱反応の際、塗膜中に有機溶剤が残留していると、ポリイミド樹脂皮膜に膨れが生じることがあるため、加熱の最終温度に達する前に、完全に残留溶剤を除去することが好ましく、具体的には、加熱前に、200〜250℃の温度で、10〜30分間加熱乾燥して残留溶剤を除去し、続けて、温度を段階的、又は一定速度で徐々に上昇させて加熱し、ポリイミド樹脂皮膜を形成することが好ましい。この際、遠赤外線加熱を併用すれば、残留溶剤の除去とイミド化反応を効率的に行える。
【0048】
(脱型工程)
本工程では、ポリイミド樹脂皮膜を金型から剥離し、脱型する。
金型からの樹脂皮膜の剥離方法は特に制限されるものではなく、例えば、金型と皮膜との隙間に、加圧空気を注入することで、皮膜を膨張させて剥離する。加圧空気の圧力は、一般的な空気圧縮機で得られる数気圧程度でよい。注入された加圧空気は、ある程度は皮膜端部から漏れるが、全部が漏れるわけではないので、皮膜は空気圧により、多少、膨れることになる。そのため、形成された樹脂皮膜を金型から容易に抜き取ることができる。
【0049】
抜き取られた樹脂皮膜が所定の幅を有している場合はそのままポリイミド樹脂環状シームレス成形体として使用できる。樹脂皮膜が所定幅より大きい場合は、不要部分を切断して、ポリイミド樹脂環状シームレス成形体を得ることができる。樹脂皮膜が所定幅の整数倍の長さを有している場合は、所定幅に切断するだけで、そのまま使用可能なポリイミド樹脂環状シームレス成形体を複数個得ることができる。
【0050】
成形体の厚みは樹脂塗膜の厚みを調整することによって制御可能で、例えば、20〜1000μm、特に30〜100μmとすることができる。
【0051】
特に樹脂塗膜形成工程で金型内周面に樹脂溶液が塗布される場合は、以下の順序で工程処理を行うことが好ましい。樹脂塗膜形成工程後、樹脂皮膜形成工程の加熱乾燥処理、および脱型工程を行う。次いで、脱型して得られた未反応の樹脂皮膜を別の金型外周面に嵌める型嵌工程、および樹脂皮膜形成工程の加熱反応処理を行い、再度、脱型工程を行う。
【0052】
成形体表面には、テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルコキシエチレン共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)等のフッ素樹脂層が形成されてもよい。その場合には、樹脂皮膜形成工程の加熱反応処理後であって、脱型工程前に、樹脂皮膜を外周面に有した金型に対して、所定のポリマーからなるチューブを被せ、加熱溶着処理を行った後、脱型工程を行うことが好ましい。
【実施例】
【0053】
<実施例1>
(金型Aの製造)
内径26mm、外径30mmおよび長さ320mmのアルミニウム製円筒状金型を切削法により製造した。
金型の外周面にシリコーン系離型剤(商品名;KS700、(株)信越化学社製)を塗布することによって離型層としてシリコーン樹脂膜(膜厚約1μm)を形成し、金型Aとして用いた。
【0054】
(樹脂塗膜形成工程)
3,3',4,4'−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)と、p−フェニレンジアミン(PDA)とを、N,N−ジメチルアセトアミド中で反応させて、22質量%濃度ポリイミド前駆体溶液Aを調製した。この前駆体溶液Aに、カーボンブラック(商品名:スペシャルブラック4、デグザヒュルス社製)を固形分質量比で23%混合し、次いでジェットミルにより分散し、樹脂溶液Aを得た。粘度は50パスカル秒であった。
【0055】
図2(A)に示す塗布装置において、金型回転方向についてブレード2aの金型半周分だけ下流側に規制ブレードを設けた塗布装置を用いた。規制ブレードは金型1の塗布面に対してその軸方向にわたって一定の距離を離間させて配設した。
金型Aを30rpmで回転させながら、樹脂溶液Aを25gにて塊状で、図2(B)に示すようにブレードにおける金型軸方向の略中央部にある凸部上に供給したところ、5分後に金型外周面への塗布が完了した。塗膜の厚みは約500μmであった。塗布装置の金型軸方向に対する垂直断面において、ブレードの金型に対する配置は図3と同様であった。撓み形状について、ブレードにおける凸部と金型との距離x1は0.5mmであり、両端部と金型との距離x2は0.8mmであった。ブレードはステンレスからなる薄板(寸法;30mm×20mm×800μm(厚み))に対して加熱によって上記撓み形状を付与し、支持部材によって支持したものである。
【0056】
(樹脂皮膜形成工程)
次に、金型Aを水平にして、20rpmにて回転させながら、室温で5分間の乾燥後、80℃で20分間、100℃で1時間、加熱乾燥させた。これにより、厚さ約150μmの樹脂塗膜を得た。次に、金型Aを一旦、室温まで冷却した。その後、金型Aを垂直に立てて、200℃で30分、300℃で30分加熱反応させ、樹脂皮膜を形成した。
【0057】
(脱型工程)
室温に冷えた後、金型と皮膜との隙間に圧力0.5MPaの加圧空気を注入したところ、ポリイミド樹脂皮膜が膨張し、容易に抜き取ることができた。得られたポリイミド樹脂シームレス成形体を所定長の幅230mmでカットすることによって、電子写真用定着ベルトとして使用できる寸法を有していた。
【0058】
<実施例2>
樹脂塗膜形成工程における塗布を以下に示す方法で行ったこと以外、実施例1と同様の方法により、成形体を得た。
【0059】
図7(A)に示す塗布装置において、金型回転方向についてブレード2dの金型半周分だけ下流側に規制ブレードを設けた塗布装置を用いた。規制ブレードは金型1の塗布面に対してその軸方向にわたって一定の距離を離間させて配設した。
金型Aを30rpmで回転させながら、樹脂溶液Aを25gにて塊状で、図7(B)に示すようにブレードにおける金型軸方向の略中央部にある凸部上に供給したところ、14分後に金型外周面への塗布が完了した。塗膜の厚みは約500μmであった。塗布装置の金型軸方向に対する垂直断面において、ブレードの金型に対する配置は図8と同様であった。撓み形状について、ブレードにおける凸部と金型との距離y2は0.5mmであり、両端部と金型との距離y1は0.8mmであった。ブレードはステンレスからなる薄板(寸法;300mm×20mm×1600μm(厚み))に対して加熱によって上記撓み形状を付与し、支持部材によって支持したものである。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明の塗布装置は、画像形成装置の定着ベルト、中間転写ベルト、接触帯電ベルト等として使用可能な環状シームレス成形体の製造に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の塗布装置においてブレードが有する撓み形状を説明するための概略模式図である。
【図2】(A)〜(C)は本発明の第1実施形態に係る塗布装置の一例を用いて塗布するときの概略説明図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る塗布装置の一例を示す概略断面見取り図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係る塗布装置の一例を用いて塗布するときの概略断面模式図である。
【図5】本発明の第1実施形態に係る塗布装置の別の一例を示す概略説明図である。
【図6】本発明の第1実施形態に係る塗布装置のまた別の一例を示す概略模式図である。
【図7】(A)〜(C)は本発明の第2実施形態に係る塗布装置の一例を用いて塗布するときの概略説明図である。
【図8】本発明の第2実施形態に係る塗布装置の一例を示す概略断面見取り図である。
【図9】本発明の第2実施形態に係る塗布装置の一例を用いて塗布するときの概略断面模式図である。
【図10】本発明の第2実施形態に係る塗布装置の別の一例を示す概略説明図である。
【図11】本発明の第2実施形態に係る塗布装置のまた別の一例を示す概略模式図である。
【図12】本発明の第1実施形態および第2実施形態に係る塗布装置の変形例を示す。
【図13】従来の塗布装置を示す概略模式図である。
【符号の説明】
【0062】
1:金型、2:2a〜2f:ブレード、3:樹脂溶液、4:間隙、5:塗膜、10:10A〜10F:塗布装置、11:先端部、12:13:支持部材、17:受け部材。
【技術分野】
【0001】
本発明は塗布装置、特に金型表面に樹脂溶液を塗布するための塗布装置に関する。詳しくは、本発明は環状シームレス成形体の製造時において有用な塗布装置に関する。本発明はまた環状シームレス成形体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置において定着ベルト、中間転写ベルト、接触帯電ベルト等には、薄肉の樹脂ベルトがよく用いられる。そのような樹脂ベルトは変形が可能なため、装置の小径化に有用である。樹脂ベルトに継ぎ目(シーム)があると、出力画像に継ぎ目に起因する欠陥が生じるので、継ぎ目がないシームレスベルトが好ましい。
【0003】
シームレスベルトは、例えば、金型の表面に樹脂溶液を塗布し、樹脂塗膜を加熱し、得られた樹脂皮膜を脱型する方法によって製造される。特に、ポリイミド樹脂からなるシームレスベルトは、金型の表面にポリイミド前駆体溶液を塗布し、樹脂塗膜を加熱して乾燥および反応させ、得られた樹脂皮膜を脱型する方法によって製造される。
【0004】
そのような環状シームレス成形体の製造方法において、樹脂溶液を金型表面に塗布する装置として、例えば図13に示す装置が知られている。図13に示す装置は、軸方向を回転軸として回転する金型101および該金型の塗布面に対してその軸方向にわたって略一定の距離を離間させて配設されるブレード102を有するものである。
【0005】
しかしながら、そのような塗布装置においてブレード102の中央部における金型101との間隙に樹脂溶液を塊状で供給すると、樹脂溶液が金型軸方向に広がるのに長時間かかり、塗布装置の生産性・塗布効率に問題があった。一方、上記塗布装置において樹脂溶液供給装置を金型軸方向にわたって連続的に移動させながらブレード102上に樹脂溶液を供給することが考えられるが、樹脂溶液供給装置として連続移動式のものが必要になり、やはり塗布装置の生産性・塗布効率に問題があった。
【0006】
そこで、特許文献1では、ブレードに特殊な形状を付与する試みが為されている。すなわち、ベルト基材にシリコーンゴム層を形成する方法において、ゴムが塗布される基材とそのような第1のブレードとの隙間をブレード長手方向で不均一にすることでゴムを長手方向へすばやく広げることができる。
【特許文献1】特開2001−287280号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、ブレードを特殊な形状に切削加工する必要があるため、やはり塗布装置の生産性・塗布効率に問題があった。
【0008】
本発明は、生産性・塗布効率に十分に優れた塗布装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、
軸方向を回転軸として回転しながら表面に樹脂溶液が塗布される金型;および
該金型の塗布面に対して所定の距離を離間させて配設され、樹脂溶液を金型塗布面に供給・塗布する供給ブレード
を有する塗布装置であって、
ブレードにおける金型塗布面に対向する先端部を金型塗布面側から見たとき、当該先端部が下に凸または上に凸の撓み形状を有し、該凸部におけるブレードと金型塗布面との距離が、ブレードの金型軸方向両端部における金型塗布面との距離よりも狭いことを特徴とする塗布装置に関する。
【0010】
本発明はまた、上記該塗布装置を使用することを特徴とする環状シームレス成形体の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の塗布装置においてブレードは、所定の撓み形状を予め付与されているので、樹脂溶液を金型表面に対して軸方向に速やかに拡散・塗布できる。そのため、ブレードの切削加工なしに、塗布装置の生産性・塗布効率を十分に向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
<塗布装置>
本発明に係る塗布装置は、回転する金型の表面に樹脂溶液を塗布するものであって、特に、環状シームレス成形体の製造に有用である。
【0013】
本発明の塗布装置は、少なくとも金型および該金型に樹脂溶液を供給するための供給ブレードを有するものである。以下、図1を用いて説明する。図1は、金型1と供給ブレード2とを、それらの対向領域における金型回転方向上流側から見たときの概略見取り図である。なお、図1は供給ブレード2上に樹脂溶液3を供給したときの樹脂溶液の挙動を詳しく説明するために、樹脂溶液3を透視して示している。
【0014】
金型1は、軸方向Dを回転軸として回転しながら表面に樹脂溶液が塗布されるものであり、塗布面は外周面であっても、または内周面であってもよい。樹脂溶液が外周面に塗布される場合、金型は円筒形状を有してもよいし、または円柱形状を有してもよい。樹脂溶液が内周面に塗布される場合、金型は円筒形状を有する。塗布面の曲率半径は、本発明の目的が達成される限り特に制限されるものではなく、通常は10〜150mm、特に10〜35mmが本発明の効果を得る上で好ましい。
【0015】
金型の構成材料は特に制限されないが、特に当該塗布装置10を環状シームレス成形体の製造に使用する場合においては、焼成時の加熱によっても変形が起こらないものが使用される。そのような材料として、例えば、アルミニウム、銅、鋼等の金属が好ましく使用される。中でも市場流通性、耐溶剤性、熱伝導性、強度等の観点から、アルミニウムが特に好ましく用いられる。そのような金属を所定形状に加工するに際しては、管材もしくは棒材を切削により所定形状にすればよい。特にアルミニウムを用いる場合は、金属の中でも比較的硬度が低く、切削性に優れるため、加工し易い特徴があり、金型生産効率を上げられる。特に画像形成装置に使用される環状シームレス成形体を製造する場合においては、金型は塗布面に離型層を有することが好ましい。離型層としては、例えば、シリコーン樹脂やフッ素含有樹脂等を被覆することによって得られた樹脂層、シリコーン系、フッ素系離型剤をコーティングすることによって得られた塗布膜等が挙げられる。
【0016】
供給ブレード2(以下、単に「ブレード」ということがある)は、該金型1の塗布面に対して所定の距離を離間させて配設され、金型回転方向上流側の面に供給された樹脂溶液3を金型塗布面に供給・塗布するものである。本明細書中、ブレード2は後述するブレード2a〜2fを包含する概念で用いるものとする。
【0017】
ブレード2は、少なくとも金型塗布面側が下に凸または上に凸の撓み形状を有するものであり、すなわち、例えば図2(A)および図7(A)に示すように、当該ブレード2における金型塗布面に対向する先端部11を金型塗布面側から見たとき、当該先端部が下に凸または上に凸の撓み形状を有するものである。そのようなブレード2は、図1に示すように、凸部におけるブレードと金型塗布面との距離d1が、ブレードの金型軸方向両端部における金型塗布面との距離d2、d3よりも狭くなるように配設される。凸部とは、下に凸の撓み形状の場合は、ブレード先端部における最低部を意味し、上に凸の撓み形状の場合は、ブレード先端部における最高部を意味するものとする。
【0018】
樹脂溶液は間隙を通過するとき、より広い間隙を通るように移動・拡散する性質を有する。そのため、ブレードが上記撓み形状を有し、かつ金型塗布面と上記所定の距離を確保するように配設されると、そのような性質に基づいて樹脂溶液3は軸方向Dの端部方向に向かって移動・拡散する。その結果、樹脂溶液を金型塗布面に対して軸方向に速やかに拡散・塗布できるようになるので、ブレードの切削加工なしに、塗布装置の生産性・塗布効率を十分に向上させることができる。
【0019】
図1に示す撓み形状ついて、ブレード2は金型軸方向の略中央部において凸部を有し、当該中央部と金型塗布面との距離が最も狭くなっているが、これに制限されるものではなく、金型軸方向の両端部間における任意の部分において凸部を有し、当該距離が最も狭くなっていればよい。金型軸方向の両端部間における任意の部分とは、金型軸方向の両端部(ベルト成形範囲外)を除く、その間の任意の部分である。塗布効率の観点から、ブレードにおいて金型塗布面との距離が最も狭くなる部位は金型軸方向の略中央部であることが好ましい。
【0020】
図1、図2(A)および図7(A)中、ブレード2における凸部から金型軸方向の両端部にかけての撓み勾配は連続的であればよく、直線的であっても、曲線的であってもよい。
【0021】
ブレード2は、長方形形状を有する平面ブレードを強制的に撓ませることによって上記撓み形状を付与可能である。例えば、平面ブレードが可撓性および弾性を有する場合、当該平面ブレードを弾性変形させ、得られた変形形状を支持部材等によって維持させることによって、所定の撓み形状を継続的に付与できる。また例えば、平面ブレードが可撓性および可塑性を有する場合、当該平面ブレードを塑性変形させることによって、所定の撓み形状を継続的に付与できる。そのようなブレードを構成する材料としては、特に制限されず、例えば、ステンレス、アルミ、ポリプロピレン、ポリエチレン、フッ素樹脂等が挙げられる。上記材料は常温では通常、可撓性および弾性を有するものであるが、熱を付与することによって塑性変形可能である。ブレード厚みは通常、500〜3000μmであり、撓み形状付与の観点から500〜1500μmが好ましい。本発明においてブレードは単なる長方形形状を有する平面状薄板部材をそのまま変形させて使用できるので、特殊な切削加工を要しない。
【0022】
樹脂溶液は公知の樹脂を有機溶剤に溶解してなるものであってよい。本発明において樹脂溶液の粘度は本発明の目的が達成される限り特に制限されるものではないが、例えば5〜1000パスカル秒、特に10〜50パスカル秒の比較的高粘度の粘稠体が好ましく使用される。樹脂溶液を構成する公知の樹脂は、熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂等であってよい。特に画像形成装置に使用される環状シームレス成形体を製造する場合においては、熱硬化性樹脂、特にポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂等を使用することが好ましい。有機溶剤は樹脂を溶解可能なものであれば特に制限されない。
本明細書中、粘度はDV−II+Proビスコメーター(ブルックフィールド社製)によって測定された値を用いている。
【0023】
以下、第1実施形態および第2実施形態を具体例に挙げて、本発明の塗布装置10をさらに詳しく説明する。
【0024】
(第1実施形態)
第1実施形態の塗布装置の概略断面模式図を図2に示す。
図2(A)に示す塗布装置10Aは、詳しくは、ブレード2aが金型塗布面側で下に凸の撓み形状を有し、ブレード2aにおける金型塗布面に対向する先端部11を金型塗布面側から見たとき、当該先端部が下に凸の撓み形状を有するものである。そのようなブレード2aは当該凸部における金型塗布面との距離が、ブレードの金型軸方向両端部における金型塗布面との距離よりも狭くなるように配設される。ブレード2aは金型軸方向の両端部で支持部材12、13によって支持されている。両端部の支持部材は、図2(A)に示すように、ブレード2aの長手方向に対して略垂直方向に配設されている。ブレード2aは支持部材によってそのように支持されなければならないというわけではなく、ブレード2aの撓み形状を継続して維持できる限り、いかなる支持部材によっていかなる方法で支持されてもよい。
【0025】
図2(A)に示す塗布装置10Aの概略垂直断面見取り図を図3に示す。図3は、金型軸方向Dに対して垂直な断面(以下、単に「垂直断面」という)を示すものである。図3において金型軸方向両端部でのブレード断面を破線で示し、凸部を有する部位でのブレード断面を実線で示す。ブレード2aは、凸部におけるブレードと金型塗布面との距離x1が、ブレードの金型軸方向両端部における金型塗布面との距離x2よりも狭くなるように配設されている。
【0026】
本実施形態の図2(A)に示す塗布装置10Aにおいて樹脂溶液3が供給されたところを図2(B)に示す。樹脂溶液3が、図2(B)に示すように、ブレード2aの凸部における金型塗布面との間隙周辺に塊状で供給されると、樹脂溶液3は円滑に金型軸方向に拡散しながら金型1の塗布面に供給される。このときの凸部における概略断面模式図を図4に示す。ブレード2a上の樹脂溶液3が金型塗布面に拡散・供給されて消費されると、図2(C)に示すように塗布が完了し、金型塗布面に塗膜5が形成される。塗布装置10Aに規制ブレードを別途設けることによって、膜厚規制を行うことができる。規制ブレードは、金型1の塗布面に対してその軸方向にわたって略一定の距離を離間させて配設される。
【0027】
図2(A)において、ブレード2aは金型塗布面側のみで下に凸の撓み形状を有するが、図5に示すようにその逆側においても下に凸の撓み形状を有し、すなわちブレード2b全体として下に凸の撓み形状を有してもよい。
【0028】
図2(A)および図5において、ブレード2a、2bは凸部を金型軸方向の略中央部に有しているが、これに制限されるものではなく、金型軸方向の両端部間における任意の部分に有してよい。塗布効率の観点からは凸部は略中央部に供給されることが好ましい。
【0029】
本実施形態において、塗布装置10Aは樹脂溶液が金型外周面に塗布される場合について説明されているが、これに制限されるものではなく、樹脂溶液は金型内周面に塗布されてもよい。樹脂溶液が金型内周面に塗布される場合における、第1実施形態の塗布装置10Cの概略断面模式図を図6に示す。図6は、樹脂溶液が金型内周面に塗布されること以外、図3と同様であるため、図6の説明を省略する。
【0030】
(第2実施形態)
第2実施形態の塗布装置の概略断面模式図を図7に示す。
図7(A)に示す塗布装置10Dは、詳しくは、ブレード2dが金型塗布面側で上に凸の撓み形状を有し、ブレード2dにおける金型塗布面に対向する先端部11を金型塗布面側から見たとき、当該先端部が上に凸の撓み形状を有するものである。そのようなブレード2bは当該凸部における金型塗布面との距離が、ブレードの金型軸方向両端部における金型塗布面との距離よりも狭くなるように配設される。ブレード2dは金型軸方向の略中央部で支持部材12によって支持されている。略中央部の支持部材は、図7(A)に示すように、ブレード2dの長手方向に対して略垂直方向に配設されている。ブレード2dは支持部材によってそのように支持されなければならないというわけではなく、ブレード2dの撓み形状を継続して維持できる限り、いかなる支持部材によっていかなる方法で支持されてもよい。
【0031】
図7(A)に示す塗布装置10Dの概略垂直断面見取り図を図8に示す。図8は、金型軸方向Dに対して垂直な断面(以下、単に「垂直断面」という)を示すものである。図8において金型軸方向両端部でのブレード断面を破線で示し、凸部を有する部位でのブレード断面を実線で示す。ブレード2dは、凸部におけるブレードと金型塗布面との距離y2が、ブレードの金型軸方向両端部における金型塗布面との距離y1よりも狭くなるように配設されている。
【0032】
本実施形態の図7(A)に示す塗布装置10Dにおいて樹脂溶液3が供給されたところを図7(B)に示す。樹脂溶液3が、図7(B)に示すように、ブレード2dの凸部における金型塗布面との間隙周辺に塊状で供給されると、樹脂溶液3は円滑に金型軸方向に拡散しながら金型1の塗布面に供給される。このときの凸部における概略断面模式図を図9に示す。ブレード2d上の樹脂溶液3が金型塗布面に拡散・供給されて消費されると、図7(C)に示すように塗布が完了し、金型塗布面に塗膜5が形成される。塗布装置10Dに規制ブレードを別途設けることによって、膜厚規制を行うことができる。規制ブレードとは、第1実施形態においってと同様のものである。
【0033】
図7(A)において、ブレード2dは金型塗布面側のみで上に凸の撓み形状を有するが、図10に示すようにその逆側においても上に凸の撓み形状を有し、すなわちブレード2e全体として上に凸の撓み形状を有してもよい。
【0034】
図7(A)および図10において、ブレード2d、2eは凸部を金型軸方向の略中央部に有しているが、これに制限されるものではなく、金型軸方向の両端部間における任意の部分に有してよい。塗布効率の観点からは凸部は略中央部に供給されることが好ましい。
【0035】
本実施形態において、塗布装置10Dは樹脂溶液が金型外周面に塗布される場合について説明されているが、これに制限されるものではなく、樹脂溶液は金型内周面に塗布されてもよい。樹脂溶液が金型内周面に塗布される場合における、第2実施形態の塗布装置10Fの概略断面模式図を図11に示す。図11は、樹脂溶液が金型内周面に塗布されること以外、図8と同様であるため、図11の説明を省略する。
【0036】
いずれの実施形態においてもブレード2a〜2fの少なくとも先端部はフッ素樹脂処理、耐腐食処理を施されていることが好ましい。フッ素樹脂処理によって、清掃メンテナンス性を向上させることができる。耐腐食処理によって、樹脂溶液によるブレード腐食を防止できる。耐腐食処理として、例えば、金メッキ処理が挙げられる。
【0037】
塗布装置10A〜10Fは、ブレードの金型軸方向端部から垂下する樹脂溶液を収容するための受け部材をさらに有することが好ましい。例えば図12には、受け部材17は手前側のみに設けられているが、奥側に設けられても良い。図12の塗布装置は受け部材17を有すること以外、図2(B)の塗布装置と同様である。
【0038】
いずれの実施形態においても樹脂溶液3は、例えば図2(B)および図7(B)に示すように、塊状でブレード上の凸部に供給されるので、供給口移動式の供給装置は要しない。樹脂溶液3は、金型表面を所定の塗膜厚で被覆するのに必要な量を1回で供給されてもよいし、2回以上に分割されて供給されてもよいし、または固定式の供給ノズル等で連続的に供給されてもよい。
【0039】
<環状シームレス成形体の製造方法>
本発明の環状シームレス成形体の製造方法は、上記した塗布装置を使用することを特徴とし、通常は以下の工程を含むものである;
上記塗布装置を用いて、金型表面に樹脂溶液を塗布し、樹脂塗膜を形成する樹脂塗膜形成工程;
樹脂塗膜を加熱し、樹脂皮膜を形成する樹脂皮膜形成工程;および
樹脂皮膜を金型から剥離する脱型工程。
【0040】
本方法においてポリイミド樹脂製の環状シームレス成形体を製造する場合、樹脂溶液としてポリイミド前駆体溶液が使用される。ポリイミド前駆体として、いわゆるポリアミック酸、例えば、3,3',4,4'−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)とp−フェニレンジアミン(PDA)からなる前駆体、ピロメリット酸二無水物(PMDA)と4,4'−ジアミノフェニルエーテル(ODA)からなる前駆体等が使用される。
【0041】
ポリアミドイミド樹脂製の環状シームレス成形体を製造する場合、樹脂溶液としてポリアミドイミド前駆体溶液が使用される。ポリアミドイミド前駆体として、例えば、アミド基含有芳香族ジアミンとPMDAからなる前駆体や、芳香族ジアミンまたはその誘導体と無水トリメリット酸(TMA)からなる前駆体等が使用される。
以下、特に好ましい態様として、ポリイミド樹脂製の環状シームレス成形体の製造方法について詳細に説明する。
【0042】
(樹脂塗膜形成工程)
本工程では、まず、ポリイミド前駆体を有機溶剤に溶解させて樹脂溶液を調製する。
ポリイミド前駆体は上記したものが使用可能であり、2種以上を混合して用いてもよい。
【0043】
有機溶剤は、ポリイミド前駆体を溶解可能なものであれば、特に制限されず、例えば、非プロトン系極性溶剤等が使用される。非プロトン系極性溶剤の具体例としては、例えば、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、アセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等が挙げられる。樹脂溶液におけるポリイミド前駆体の濃度、粘度等は、成形体の所望厚み、樹脂溶液の流動性等に応じて適宜選択される。
【0044】
次いで、前記した塗布装置を用いて、樹脂溶液を金型の表面に塗布して、例えば、図2(C)および図7(C)に示すように、樹脂塗膜5を形成する。その後は所望により、金型の塗布面に対してその軸方向にわたって略一定の距離を離間させて配設される規制ブレードによって、膜厚規制を行う。
【0045】
(樹脂皮膜形成工程)
本工程では、樹脂塗膜を加熱し、樹脂皮膜を形成する。詳しくは、樹脂塗膜を加熱乾燥させてから、加熱反応(焼成)させてポリイミド樹脂皮膜を形成する。
【0046】
まず、樹脂塗膜中に過度に残留する溶剤を除去する目的で、静置しても塗膜が変形しない程度まで加熱乾燥を行う。乾燥条件は、80〜200℃の温度で30〜60分間であることが好ましい。その際、温度が高いほど、加熱時間は短くてよい。また、加熱することに加え、風を当てることも有効である。また、遠赤外線加熱を用いれば、溶剤除去をさらに効率よく行うことができる。加熱は、時間内において、段階的に上昇させたり、一定速度で上昇させてもよい。なお、樹脂塗膜から溶剤を除去させすぎると、塗膜はまだ成形体としての強度を保持していないので、割れを生じる虞がある。そのため溶剤を適度に残留させておくことが好ましい。具体的には樹脂塗膜中に15〜50質量%、特に35〜50質量%の割合で溶剤を残留させることが好ましい。
【0047】
次いで、300〜450℃、好ましくは350℃前後で、20〜60分間、樹脂塗膜を加熱反応させることで、ポリイミド樹脂皮膜を形成できる。加熱反応の際、塗膜中に有機溶剤が残留していると、ポリイミド樹脂皮膜に膨れが生じることがあるため、加熱の最終温度に達する前に、完全に残留溶剤を除去することが好ましく、具体的には、加熱前に、200〜250℃の温度で、10〜30分間加熱乾燥して残留溶剤を除去し、続けて、温度を段階的、又は一定速度で徐々に上昇させて加熱し、ポリイミド樹脂皮膜を形成することが好ましい。この際、遠赤外線加熱を併用すれば、残留溶剤の除去とイミド化反応を効率的に行える。
【0048】
(脱型工程)
本工程では、ポリイミド樹脂皮膜を金型から剥離し、脱型する。
金型からの樹脂皮膜の剥離方法は特に制限されるものではなく、例えば、金型と皮膜との隙間に、加圧空気を注入することで、皮膜を膨張させて剥離する。加圧空気の圧力は、一般的な空気圧縮機で得られる数気圧程度でよい。注入された加圧空気は、ある程度は皮膜端部から漏れるが、全部が漏れるわけではないので、皮膜は空気圧により、多少、膨れることになる。そのため、形成された樹脂皮膜を金型から容易に抜き取ることができる。
【0049】
抜き取られた樹脂皮膜が所定の幅を有している場合はそのままポリイミド樹脂環状シームレス成形体として使用できる。樹脂皮膜が所定幅より大きい場合は、不要部分を切断して、ポリイミド樹脂環状シームレス成形体を得ることができる。樹脂皮膜が所定幅の整数倍の長さを有している場合は、所定幅に切断するだけで、そのまま使用可能なポリイミド樹脂環状シームレス成形体を複数個得ることができる。
【0050】
成形体の厚みは樹脂塗膜の厚みを調整することによって制御可能で、例えば、20〜1000μm、特に30〜100μmとすることができる。
【0051】
特に樹脂塗膜形成工程で金型内周面に樹脂溶液が塗布される場合は、以下の順序で工程処理を行うことが好ましい。樹脂塗膜形成工程後、樹脂皮膜形成工程の加熱乾燥処理、および脱型工程を行う。次いで、脱型して得られた未反応の樹脂皮膜を別の金型外周面に嵌める型嵌工程、および樹脂皮膜形成工程の加熱反応処理を行い、再度、脱型工程を行う。
【0052】
成形体表面には、テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルコキシエチレン共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)等のフッ素樹脂層が形成されてもよい。その場合には、樹脂皮膜形成工程の加熱反応処理後であって、脱型工程前に、樹脂皮膜を外周面に有した金型に対して、所定のポリマーからなるチューブを被せ、加熱溶着処理を行った後、脱型工程を行うことが好ましい。
【実施例】
【0053】
<実施例1>
(金型Aの製造)
内径26mm、外径30mmおよび長さ320mmのアルミニウム製円筒状金型を切削法により製造した。
金型の外周面にシリコーン系離型剤(商品名;KS700、(株)信越化学社製)を塗布することによって離型層としてシリコーン樹脂膜(膜厚約1μm)を形成し、金型Aとして用いた。
【0054】
(樹脂塗膜形成工程)
3,3',4,4'−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)と、p−フェニレンジアミン(PDA)とを、N,N−ジメチルアセトアミド中で反応させて、22質量%濃度ポリイミド前駆体溶液Aを調製した。この前駆体溶液Aに、カーボンブラック(商品名:スペシャルブラック4、デグザヒュルス社製)を固形分質量比で23%混合し、次いでジェットミルにより分散し、樹脂溶液Aを得た。粘度は50パスカル秒であった。
【0055】
図2(A)に示す塗布装置において、金型回転方向についてブレード2aの金型半周分だけ下流側に規制ブレードを設けた塗布装置を用いた。規制ブレードは金型1の塗布面に対してその軸方向にわたって一定の距離を離間させて配設した。
金型Aを30rpmで回転させながら、樹脂溶液Aを25gにて塊状で、図2(B)に示すようにブレードにおける金型軸方向の略中央部にある凸部上に供給したところ、5分後に金型外周面への塗布が完了した。塗膜の厚みは約500μmであった。塗布装置の金型軸方向に対する垂直断面において、ブレードの金型に対する配置は図3と同様であった。撓み形状について、ブレードにおける凸部と金型との距離x1は0.5mmであり、両端部と金型との距離x2は0.8mmであった。ブレードはステンレスからなる薄板(寸法;30mm×20mm×800μm(厚み))に対して加熱によって上記撓み形状を付与し、支持部材によって支持したものである。
【0056】
(樹脂皮膜形成工程)
次に、金型Aを水平にして、20rpmにて回転させながら、室温で5分間の乾燥後、80℃で20分間、100℃で1時間、加熱乾燥させた。これにより、厚さ約150μmの樹脂塗膜を得た。次に、金型Aを一旦、室温まで冷却した。その後、金型Aを垂直に立てて、200℃で30分、300℃で30分加熱反応させ、樹脂皮膜を形成した。
【0057】
(脱型工程)
室温に冷えた後、金型と皮膜との隙間に圧力0.5MPaの加圧空気を注入したところ、ポリイミド樹脂皮膜が膨張し、容易に抜き取ることができた。得られたポリイミド樹脂シームレス成形体を所定長の幅230mmでカットすることによって、電子写真用定着ベルトとして使用できる寸法を有していた。
【0058】
<実施例2>
樹脂塗膜形成工程における塗布を以下に示す方法で行ったこと以外、実施例1と同様の方法により、成形体を得た。
【0059】
図7(A)に示す塗布装置において、金型回転方向についてブレード2dの金型半周分だけ下流側に規制ブレードを設けた塗布装置を用いた。規制ブレードは金型1の塗布面に対してその軸方向にわたって一定の距離を離間させて配設した。
金型Aを30rpmで回転させながら、樹脂溶液Aを25gにて塊状で、図7(B)に示すようにブレードにおける金型軸方向の略中央部にある凸部上に供給したところ、14分後に金型外周面への塗布が完了した。塗膜の厚みは約500μmであった。塗布装置の金型軸方向に対する垂直断面において、ブレードの金型に対する配置は図8と同様であった。撓み形状について、ブレードにおける凸部と金型との距離y2は0.5mmであり、両端部と金型との距離y1は0.8mmであった。ブレードはステンレスからなる薄板(寸法;300mm×20mm×1600μm(厚み))に対して加熱によって上記撓み形状を付与し、支持部材によって支持したものである。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明の塗布装置は、画像形成装置の定着ベルト、中間転写ベルト、接触帯電ベルト等として使用可能な環状シームレス成形体の製造に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の塗布装置においてブレードが有する撓み形状を説明するための概略模式図である。
【図2】(A)〜(C)は本発明の第1実施形態に係る塗布装置の一例を用いて塗布するときの概略説明図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る塗布装置の一例を示す概略断面見取り図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係る塗布装置の一例を用いて塗布するときの概略断面模式図である。
【図5】本発明の第1実施形態に係る塗布装置の別の一例を示す概略説明図である。
【図6】本発明の第1実施形態に係る塗布装置のまた別の一例を示す概略模式図である。
【図7】(A)〜(C)は本発明の第2実施形態に係る塗布装置の一例を用いて塗布するときの概略説明図である。
【図8】本発明の第2実施形態に係る塗布装置の一例を示す概略断面見取り図である。
【図9】本発明の第2実施形態に係る塗布装置の一例を用いて塗布するときの概略断面模式図である。
【図10】本発明の第2実施形態に係る塗布装置の別の一例を示す概略説明図である。
【図11】本発明の第2実施形態に係る塗布装置のまた別の一例を示す概略模式図である。
【図12】本発明の第1実施形態および第2実施形態に係る塗布装置の変形例を示す。
【図13】従来の塗布装置を示す概略模式図である。
【符号の説明】
【0062】
1:金型、2:2a〜2f:ブレード、3:樹脂溶液、4:間隙、5:塗膜、10:10A〜10F:塗布装置、11:先端部、12:13:支持部材、17:受け部材。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向を回転軸として回転しながら表面に樹脂溶液が塗布される金型;および
該金型の塗布面に対して所定の距離を離間させて配設され、樹脂溶液を金型塗布面に供給・塗布する供給ブレード
を有する塗布装置であって、
ブレードにおける金型塗布面に対向する先端部を金型塗布面側から見たとき、当該先端部が下に凸または上に凸の撓み形状を有し、該凸部におけるブレードと金型塗布面との距離が、ブレードの金型軸方向両端部における金型塗布面との距離よりも狭いことを特徴とする塗布装置。
【請求項2】
ブレードは、長方形形状を有する平面ブレードを強制的に撓ませることによって撓み形状を付与されている請求項1に記載の塗布装置。
【請求項3】
ブレードの凸部における金型塗布面との間隙周辺に樹脂溶液が塊状で供給される請求項1または2に記載の塗布装置。
【請求項4】
樹脂溶液が所定量を2回以上に分割されて供給される請求項1〜3のいずれかに記載の塗布装置。
【請求項5】
ブレードにおける金型塗布面に対向する少なくとも先端部がフッ素樹脂処理、耐磨耗処理または耐腐食処理を施されている請求項1〜4のいずれかに記載の塗布装置。
【請求項6】
ブレードの金型軸方向端部から垂下する樹脂溶液を収容するための受け部材をさらに有する請求項1〜5のいずれかに記載の塗布装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の塗布装置を使用することを特徴とする環状シームレス成形体の製造方法。
【請求項1】
軸方向を回転軸として回転しながら表面に樹脂溶液が塗布される金型;および
該金型の塗布面に対して所定の距離を離間させて配設され、樹脂溶液を金型塗布面に供給・塗布する供給ブレード
を有する塗布装置であって、
ブレードにおける金型塗布面に対向する先端部を金型塗布面側から見たとき、当該先端部が下に凸または上に凸の撓み形状を有し、該凸部におけるブレードと金型塗布面との距離が、ブレードの金型軸方向両端部における金型塗布面との距離よりも狭いことを特徴とする塗布装置。
【請求項2】
ブレードは、長方形形状を有する平面ブレードを強制的に撓ませることによって撓み形状を付与されている請求項1に記載の塗布装置。
【請求項3】
ブレードの凸部における金型塗布面との間隙周辺に樹脂溶液が塊状で供給される請求項1または2に記載の塗布装置。
【請求項4】
樹脂溶液が所定量を2回以上に分割されて供給される請求項1〜3のいずれかに記載の塗布装置。
【請求項5】
ブレードにおける金型塗布面に対向する少なくとも先端部がフッ素樹脂処理、耐磨耗処理または耐腐食処理を施されている請求項1〜4のいずれかに記載の塗布装置。
【請求項6】
ブレードの金型軸方向端部から垂下する樹脂溶液を収容するための受け部材をさらに有する請求項1〜5のいずれかに記載の塗布装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の塗布装置を使用することを特徴とする環状シームレス成形体の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2009−142756(P2009−142756A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−322988(P2007−322988)
【出願日】平成19年12月14日(2007.12.14)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年12月14日(2007.12.14)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】
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