説明

塗布装置及び塗布方法

【課題】塗布ヘッドの吐出面に付着した塗布液の乾燥に起因する吐出異常の発生を抑止する。
【解決手段】塗布装置1において、塗布対象物が載置されるステージ2と、液滴を吐出するための吐出孔が形成された吐出面M1を有しステージ2上の塗布対象物に向けて吐出孔から塗布液を液滴として吐出する塗布ヘッド3と、ステージ2と塗布ヘッド3とをステージ2の面方向に相対移動させる移動機構7と、塗布ヘッド3の吐出面M1に接触する接触面M2を有する吸液性の吸収体11を有し、吸収体11の接触面M2の全面を濡らし、濡れた接触面M2と塗布ヘッド3の吐出面M1とを接触させて塗布ヘッド3の吐出面M1の全面を濡らす吐出安定装置6とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗布対象物に液滴を吐出して塗布する塗布装置及び塗布方法に関する。
【背景技術】
【0002】
塗布装置は、表示装置や半導体装置を製造する場合などに用いられ、カラーフィルタを形成する場合、あるいは、ガラス基板や半導体ウェハなどの基板上に配向膜やレジストなどの機能性薄膜を形成する場合などに用いられている。
【0003】
この塗布装置は、基板などの塗布対象物に向けて塗布液を複数の吐出孔(ノズル)からそれぞれ液滴として吐出(噴射)する塗布ヘッドを備えている。各吐出孔は塗布ヘッドの吐出面(オリフィス面)に直線状に並べられて形成されている。このような塗布装置は、ステージ上の塗布対象物と塗布ヘッドとを相対移動させながら、塗布ヘッドにより塗布対象物の塗布面に複数の液滴を順次着弾させて塗布する(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−230858号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前述の塗布装置では、塗布ヘッドの吐出孔付近に付着した塗布液が乾燥して凝固物となると、その凝固物に起因して吐出曲がりなどの吐出異常が発生してしまう。また、塗布ヘッドの吐出面において吐出孔から離れた位置に塗布液が付着した場合でも、その塗布液が乾燥して凝固物となると、その凝固物がワイピング(拭き動作)により塗布ヘッドの吐出孔付近に移動することがあるため、その凝固物に起因して吐出曲がりなどの吐出異常が発生してしまう。
【0006】
したがって、塗布ヘッドの吐出面における液乾燥を防止することは重要であり、その液乾燥の防止を目的として、塗布ヘッドの吐出面の表面を濡らすことが行われているが、その濡れ状態を吐出面の全面で均一に維持することは難しい。この吐出面の表面の濡れ状態は液の吐出性に大きな影響を与えるため、濡れ状態が均一とならず液乾燥が発生した場合には、吐出異常が発生してしまう。
【0007】
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、その目的は、塗布ヘッドの吐出面に付着した塗布液の乾燥に起因する吐出異常の発生を抑止することができる塗布装置及び塗布方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の実施の形態に係る第1の特徴は、塗布装置において、塗布対象物が載置されるステージと、液滴を吐出するための吐出孔が形成された吐出面を有し、ステージ上の塗布対象物に向けて吐出孔から塗布液を液滴として吐出する塗布ヘッドと、ステージと塗布ヘッドとをステージの面方向に相対移動させる移動機構と、塗布ヘッドの吐出面に接触する接触面を有する吸液性の吸収体を有し、吸収体の接触面の全面を濡らし、濡れた接触面と塗布ヘッドの吐出面とを接触させて塗布ヘッドの吐出面の全面を濡らす吐出安定装置とを備えることである。
【0009】
本発明の実施の形態に係る第2の特徴は、塗布対象物が載置されるステージと、液滴を吐出するための吐出孔が形成された吐出面を有しステージ上の塗布対象物に向けて吐出孔から塗布液を液滴として吐出する塗布ヘッドと、ステージと塗布ヘッドとをステージの面方向に相対移動させる移動機構とを用いて、ステージ上の塗布対象物に塗布液を塗布する塗布方法であって、塗布ヘッドの吐出面に接触する接触面を有する吸液性の吸収体を用いて、吸収体の接触面の全面を濡らし、濡れた接触面と塗布ヘッドの吐出面とを接触させて塗布ヘッドの吐出面の全面を濡らすことである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、塗布ヘッドの吐出面に付着した塗布液の乾燥に起因する吐出異常の発生を抑止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る塗布装置の概略構成を示す模式図である。
【図2】図1のA1−A1線断面図である。
【図3】図2のA2−A2線断面図である。
【図4】図1に示す塗布装置が備える塗布ヘッドの吐出面と吐出安定装置の吸収体との相対サイズを説明するための説明図である。
【図5】図1に示す塗布装置が備える吐出安定装置が行う濡らし動作の流れを説明するための第1工程の模式図である。
【図6】第2工程の模式図である。
【図7】第3工程の模式図である。
【図8】第4工程の模式図である。
【図9】図1に示す塗布装置が行う塗布処理の流れを示すフローチャートである。
【図10】本発明の第2の実施の形態に係る塗布装置が備える吐出安定装置の一部の概略構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1の実施の形態)
本発明の第1の実施の形態について図1ないし図9を参照して説明する。
【0013】
図1ないし図3に示すように、本発明の第1の実施の形態に係る塗布装置1は、塗布対象物である基板Kが水平状態(図1中、X軸方向とそれに直交するY軸方向に沿う状態)で載置されるステージ2と、そのステージ2上の基板Kに向けて塗布液を液滴として吐出する塗布ヘッド3と、その塗布ヘッド3をX軸方向に移動させるX軸移動機構4と、塗布ヘッド3をX軸移動機構4と共に支持する支持部材5と、塗布ヘッド3の吐出を安定させる吐出安定装置6と、ステージ2及び吐出安定装置6をY軸方向に個別に移動させるY軸移動機構7と、支持部材5及びY軸移動機構7を支持する架台8と、各部を制御する制御部9とを備えている。
【0014】
ステージ2は、ガラス基板などの基板Kが載置される移動テーブルであり、Y軸移動機構7を介して架台8の上面に設けられている。このステージ2には、基板Kが自重により載置されるが、これに限るものではなく、例えば、その基板Kを保持するため、静電チャックや吸着チャック等の機構を設けるようにしても良い。
【0015】
塗布ヘッド3は、支持部材5にX軸移動機構4を介してステージ2上に配設されており、インクなどの塗布液を液滴として吐出する吐出ヘッドである。なお、塗布液は、その塗布液を収容する液体タンクからチューブなどの配管を介して供給される。この塗布液は、基板K上に残留物として残留する溶質と、その溶質を溶解(分散)させる溶媒とにより構成された溶液である。例えば、基板K上に配向膜やレジストなどの機能性薄膜を形成する場合には、塗布液としてポリイミド(PI)溶液が用いられる。
【0016】
この塗布ヘッド3は、液滴を吐出するための複数の吐出孔(オリフィス)3aを有し(図4参照)、それらの吐出孔3aにそれぞれ対応する複数の圧電素子を内蔵している。塗布ヘッド3は制御部9に電気的に接続されており、その駆動が制御部9により制御され、各圧電素子に対する駆動電圧の印加に応じて各吐出孔3aから液滴を吐出する。各吐出孔3aは、所定のピッチ(間隔)で直線状に一列や二列に並べられ(図4では、二列)、塗布ヘッド3の吐出面(オリフィス面)M1に形成されている。例えば、吐出孔3aの数は数十個から数百個程度であり、吐出孔3aの直径は数μmから数十μm程度であり、さらに、吐出孔3aのピッチは数十μmから数百μm程度である。
【0017】
X軸移動機構4は、支持部材5に設けられており、塗布ヘッド3をステージ2上の基板Kの塗布面に沿うX軸方向に移動させる移動機構である。このX軸移動機構4は制御部9に電気的に接続されており、その駆動が制御部9により制御される。X軸移動機構4としては、例えば、サーボモータを駆動源とする送りねじ機構やリニアモータを駆動源とする移動機構などが用いられる。
【0018】
支持部材5は、X軸方向に長尺な門型の形状に形成されており、ステージ2及びY軸移動機構7を跨ぐように架台8の上面に設けられている。この支持部材5の梁部はX軸方向に平行にステージ2の載置面に対して水平にされ、支持部材5の脚部は架台8に固定されている。
【0019】
吐出安定装置6は、吐出安定槽6aと、その吐出安定槽6aをZ軸方向に移動させる槽移動機構6bとを備えている。この吐出安定装置6はY軸移動機構7を介して架台8の上面に設けられており、Y軸方向に移動可能に形成されている。
【0020】
吐出安定槽6aは、図3に示すように、塗布ヘッド3のダミー吐出動作(フラッシング動作)により吐出された液滴を受け取る受け皿として機能する第1容器H1と、塗布液に対する吸液性を有する吸収体11を収容する第2容器H2とを有している。この吐出安定槽6aは、塗布ヘッド3の移動方向であるX軸方向に長く(図2参照)、上方が開口する箱形状に形成されており、その吐出安定槽6aがX軸方向に伸びる仕切板により仕切られることにより、第1容器H1及び第2容器H2が形成されている。
【0021】
第2容器H2には、吸収体11を保持する保持部材12がX軸方向に沿わされて回転軸13により回転可能に設けられている。保持部材12は角柱状に形成されており、この保持部材12には回転軸13が固定されている。回転軸13には、駆動源となるモータなどの回転駆動部が接続されている。この回転駆動部は制御部9に電気的に接続されており、その駆動が制御部9により制御される。
【0022】
槽移動機構6bは、Y軸方向に移動可能にY軸移動機構7上に設けられている。この槽移動機構6bは、吐出安定槽6aをZ軸方向に移動可能に支持し、塗布ヘッド3に対して吐出安定槽6aをZ軸方向に接離させるZ軸移動機構であり、言い換えると、塗布ヘッド3の吐出面M1に対して吐出安定槽6a内の吸収体11をZ軸方向に接離させる吸収体移動機構である。この槽移動機構6bは制御部9に電気的に接続されており、その駆動が制御部9により制御される。槽移動機構6bとしては、例えば、シリンダやサーボモータを駆動源とする送りねじ機構などが用いられる。
【0023】
Y軸移動機構7は、ステージ2及び吐出安定装置6をY軸方向に案内して個別に移動させる移動機構であり、架台8の上面に固定されて設けられている。このY軸移動機構7は制御部9に電気的に接続されており、その駆動が制御部9により制御される。Y軸移動機構7としては、例えば、サーボモータを駆動源とする送りねじ機構やリニアモータを駆動源とする移動機構などが用いられる。
【0024】
架台8は、床面上に設置され、支持部材5やY軸移動機構7などを床面から所定の高さ位置に支持する支持台である。架台8の上面は平面に形成されており、この架台8の上面に支持部材5やY軸移動機構7などが載置されている。また、架台8の内部には、制御部9が設けられている。
【0025】
制御部9は、各部を集中的に制御するマイクロコンピュータと、塗布に関する塗布情報や各種のプログラムなどを記憶する記憶部と、操作者からの操作を受け付ける操作部とを備えている。塗布情報は、ドットパターンなどの所定の塗布パターン、塗布ヘッド3の吐出周波数及び基板Kの移動速度に関する情報などを含んでいる。この塗布情報は、操作部に対する入力操作やデータ通信、あるいは携帯可能な記憶装置の媒介により記憶部に予め記憶されている。なお、記憶部としては、メモリやハードディスクドライブ(HDD)などが用いられる。
【0026】
この制御部9は、塗布動作を行う場合、塗布情報に基づいて塗布ヘッド3及びY軸移動機構7を制御し、また、吐出安定動作を行う場合、吐出安定装置6及びY軸移動機構7を制御する。ここで、塗布動作は基板Kに液滴を塗布する動作であり、吐出安定動作はダミー吐出動作(フラッシング動作)やワイピング動作(拭き動作)などである。
【0027】
次いで、前述の吸収体11について詳しく説明する。
【0028】
図4に示すように、吸収体11の接触面M2は、塗布ヘッド3の吐出面M1とほぼ同じ大きさに形成されている。接触面M2のX軸方向の幅と吐出面M1のX軸方向の幅はほぼ同じ長さL1であり、接触面M2のY軸方向の幅と吐出面M1のY軸方向の幅はほぼ同じ長さL2である。なお、接触面M2とは、吸収体11が槽移動機構6bにより上昇した場合に、塗布ヘッド3の吐出面M1に接触する面(吸収体11の表面)である。
【0029】
ここで、通常、塗布ヘッド3の構造上、吐出孔3aがX軸方向あるいはY軸方向に並ぶ幅、すなわちX軸方向の吐出幅は吐出面M1のX軸方向の幅L1より小さい長さL1aとなり、Y軸方向の吐出幅は吐出面M1のY軸方向の幅L2より小さい長さL2aとなる。このため、塗布ヘッド3のX軸方向及びY幅方向における両端には、吐出孔3aがない領域が存在することになり、特に、その領域はY軸方向の両端に比べX軸方向の両端で大きくなる。
【0030】
この吸収体11は、塗布液により濡れた状態で、槽移動機構6bによりZ軸方向に移動して塗布ヘッド3の吐出面M1に接触し、その吐出面M1に接触しながらY軸移動機構7によりY軸方向に移動することにより、塗布ヘッド3の吐出面M1を適度に濡らす。このとき、吸収体11の接触面M2は、全面にわたって塗布液を吸収している状態である。吸収体11としては、用いる塗布液に対する吸液性が考慮され、例えば、繊維部材や多孔質部材などが用いられる。
【0031】
なお、塗布液は、塗布ヘッド3により吸収体11の接触面M2の全面に供給される。すなわち、塗布ヘッド3は吸収体11から所定距離だけ離間し、その状態で吸収体11の接触面M2に向けて各吐出孔3aから液滴を吐出し、吸収体11の接触面M2に着弾させる。その着弾した液滴である塗布液がその接触面M2から吸収体11により吸い込まれて蓄えられる。
【0032】
この吸収体11に対する塗布ヘッド3の吐出動作(濡らし動作)においては、吸収体11のX軸方向の幅L1と塗布ヘッド3のX軸方向の吐出幅L1aとの関係、さらに、吸収体11のY軸方向の幅L2と塗布ヘッド3のY軸方向の吐出幅L2aとの関係から、塗布ヘッド3と吸収体11とを相対移動すると良い。
【0033】
例えば、図5に示すように、塗布ヘッド3は、その吐出面M1が四分の一程度吸収体11の接触面M2に対向した状態(吐出孔3aの半分程度が吸収体11に対向した状態、すなわち、上列の吐出孔3aが接触面M2の上端部に対向し吐出孔3aの列の右端部が接触面の中央部に位置する状態)から、X軸移動機構4によりX軸方向の図中矢印の右方向に移動しつつ、各吐出孔3aから液滴を順次吐出し、図中の二点鎖線の位置(吐出孔3aの列の左端部が接触面の中央部に達する位置)まで移動する。
【0034】
次に、図6に示すように、吸収体11は、その接触面M2が四分の一程度塗布ヘッド3の吐出面M1に対向した状態で(吐出孔3aの半分程度が吸収体11に対向した状態すなわち、上列の吐出孔3aが接触面M2の上端部に対向し吐出孔3aの列の左端部が接触面の中央部に位置する状態)から、Y軸移動機構7による吐出安定装置6の移動によりY軸方向の図中矢印の上方向に移動し、図中の二点鎖線の位置(下列の吐出孔3aが接触面の下端部に対向する位置)まで移動する。このとき、塗布ヘッド3は、各吐出孔3aから液滴を順次吐出する。
【0035】
次いで、図7に示すように、塗布ヘッド3は、その吐出面M1が四分の一程度吸収体11の接触面M2に対向した状態で(吐出孔3aの半分程度が吸収体11に対向した状態、すなわち、下列の吐出孔3aが接触面M2の下端部に対向し吐出孔3aの列の左端部が接触面の中央部に位置する状態)から、X軸移動機構4によりX軸方向の図中矢印の左方向に移動しつつ、各吐出孔3aから液滴を順次吐出し、図中の二点鎖線の位置(吐出孔3aの列の右端部が接触面の中央部に達する位置)まで移動する。
【0036】
最後に、図8に示すように、吸収体11は、その接触面M2が四分の一程度塗布ヘッド3の吐出面M1に対向した状態で(吐出孔3aの半分程度が吸収体11に対向した状態、すなわち、下列の吐出孔3aが接触面M2の下端部に対向し吐出孔3aの列の右端部が接触面の中央部に位置する状態)から、Y軸移動機構7による吐出安定装置6の移動によりY軸方向の図中矢印の下方向に移動し、図中の二点鎖線の位置(上列の吐出孔3aが接触面の上端部に対向する位置)まで移動する。このとき、塗布ヘッド3は、各吐出孔3aから液滴を順次吐出する。
【0037】
上述の図5ないし図8の動作における塗布ヘッド3と吸収体11との相対移動中、塗布ヘッド3の各吐出孔3aからは、吸収体11の接触面M2に所望の濡れ状態を得るために予め設定された1滴当たりの吐出量と単位時間当たりの吐出回数で、液滴が吐出される。なお、塗布ヘッド3と吸収体11との相対移動方向を切り換えるとき、両者の相対移動が一時的に停止するので、この停止期間中は各吐出孔3aからの塗布液の吐出を停止させても良いし、相対移動中よりも少ない吐出量や吐出回数としても良い。
【0038】
このようにして、塗布ヘッド3及び吸収体11は相対移動しつつ、塗布ヘッド3は各吐出孔3aから液滴を順次吐出し続けることによって、塗布液が吸収体11の接触面M2の全面に供給される。これにより、吸収体11の接触面M2は均一に塗布液により濡れた状態となる。その後、均一な濡れ状態の吸収体11により塗布ヘッド3の吐出面M1がワイピングされる。
【0039】
次に、前述の塗布装置1が行う塗布動作(吐出安定動作を含む)について説明する。なお、塗布装置1の制御部9が各種のプログラムに基づいて塗布処理(吐出安定処理を含む)を実行する。
【0040】
図9に示すように、まず、プリウエット処理(ステップS0)が実行され、上述の動作によって吸収体11が均一な濡れ状態とされる。次いで、基板Kがステージ2上に搬入されたか否かが判断され(ステップS1)、基板Kがステージ2上に搬入されていないと判断した場合には(ステップS1のNO)、所定のダミー運転吐出時間が経過したか否かが判断され(ステップS2)、所定のダミー運転吐出時間が経過していないと判断された場合には(ステップS2のNO)、処理がステップS1に戻される。
【0041】
所定のダミー運転吐出時間が経過したと判断された場合には(ステップS2のYES)、追加プリウエット時間が経過したか否かが判断される(ステップS3)。追加プリウエット時間が経過したと判断された場合には(ステップS3のYES)、吸収体11を濡らす追加プリウエットが行われ(ステップS4)、追加プリウエット時間が経過していないと判断された場合には(ステップS3のNO)、ダミー吐出が行われる(ステップS5)。その後、塗布ヘッド3の吐出面M1を濡らすワイピングが行われ(ステップS6)、処理がステップS1に戻される。なお、ダミー運転吐出時間及び追加プリウエット時間は予め記憶部に記憶されており、例えば、ダミー運転吐出時間は1分程度であり、追加プリウエット時間は10分程度である。
【0042】
ここで、追加プリウエットを行う場合には、まず、吐出安定装置6がY軸移動機構7により第2容器H2内の吸収体11が塗布ヘッド3に対向するプリウエット位置まで移動し、その後、プリウエット位置に存在する吸収体11に向けて塗布ヘッド3が各吐出孔3aから液滴を吐出する。このとき、前述で説明したように(図5ないし図8参照)、塗布ヘッド3及び吸収体11は相対移動し、塗布ヘッド3は各吐出孔3aから液滴を順次吐出し続け、塗布液を吸収体11の接触面M2の全面に供給する。これにより、吸収体11の接触面M2は均一に塗布液により濡れた状態となる。なお、ステージ2はY軸移動機構7により追加プリウエットを妨げない退避位置まで移動して待機している。
【0043】
この追加プリウエット時における、各吐出孔3aから吐出させる液滴の1滴当たりの吐出量と単位時間当たりの吐出回数は、ステップS0におけるプリウエットと同じでも良いが、吸収体11が濡れた状態であることを考慮して、ステップS0におけるプリウエットよりも1滴あたりの吐出量や単位時間当たりの吐出回数を少なく設定しても良い。
【0044】
一方、ダミー吐出を行う場合には、まず、吐出安定装置6がY軸移動機構7により第1容器H1が塗布ヘッド3に対向するダミー吐出位置まで移動し、その後、ダミー吐出位置に存在する第1容器H1に向けて塗布ヘッド3が各吐出孔3aから液滴を吐出する。これにより、吐出孔3a内で変質した塗布液や吐出孔3aに付着した付着物(凝固物や異物など)が取り除かれるので、吐出異常の発生が防止される。なお、ステージ2はY軸移動機構7によりダミー吐出を妨げない退避位置まで移動して待機している。
【0045】
また、ワイピングを行う場合には、まず、吐出安定装置6がY軸移動機構7により第2容器H2内の吸収体11が塗布ヘッド3に対向するワイピング位置まで移動し、その後、槽移動機構6bにより第2容器H2内の吸収体11が塗布ヘッド3の吐出面M1に接触する接触位置までZ軸方向に移動し、吸収体11の接触面M2が塗布ヘッド3の吐出面M1に接触する。このとき、吸収体11は前述のプリウエットや追加プリウエットによりその接触面M2の全面が良好に濡れた状態になっている。その後、吐出安定装置6は、吸収体11の接触面M2を塗布ヘッド3の吐出面M1に接触させつつ、Y軸移動機構7によりY軸方向に移動し、吸収体11により塗布ヘッド3の吐出面M1の全面を払拭すると共に均一に濡らす。
【0046】
前述のステップS1において、基板Kがステージ2上に搬入されたと判断した場合には(ステップS1のYES)、塗布ヘッド3の吐出面M1を濡らす前述と同様のワイピングが行われ(ステップS7)、吐出異常の発生などを確認する吐出確認(吐出検査)があるか否か(吐出確認を行う否か)が判断される(ステップS8)。吐出確認があると判断された場合には(ステップS8のYES)、吐出確認が行われ(ステップS9)、吐出確認がないと判断された場合には(ステップS8のNO)、例えば1分程度のダミー吐出が行われる(ステップS10)。なお、吐出確認の有り無しは操作部に対する操作者の入力操作により予め設定されている。
【0047】
その後、塗布が行われる(ステップS11)。所定の基板枚数分の塗布が完了したか否かが判断され(ステップS12)、所定の基板枚数分の塗布が完了していないと判断された場合には(ステップS12のNO)、処理がステップS1に戻され、所定の基板枚数分の塗布が完了したと判断された場合には(ステップS12のYES)、処理が終了する。
【0048】
ここで、塗布を行う場合、制御部9は、塗布情報に基づいてX軸移動機構4及びY軸移動機構7を制御し、塗布ヘッド3を基板Kの塗布面に対向する塗布開始位置に移動させる。なお、吐出安定装置6はY軸移動機構7により塗布を妨げない退避位置まで移動して待機している。その後、制御部9は、塗布情報に基づいて、X軸移動機構4及びY軸移動機構7に加え、塗布ヘッド3を制御し、ステージ2上の基板Kと塗布ヘッド3とを相対移動させ、塗布ヘッド3の各吐出孔3aから液滴を吐出させてステージ2上の基板Kに塗布液を塗布する。
【0049】
以上説明したように、本発明の第1の実施の形態によれば、吸液性を有する吸収体11の接触面M2の全面を濡らし、この吸収体11で塗布ヘッド3の吐出面M1をワイピングするので、吐出面11に付着した余分な塗布液を除去することができ、しかも、濡れた接触面M2を塗布ヘッド3の吐出面M1に接触させて塗布ヘッド3の吐出面M1の全面を濡らすことによって、その塗布ヘッド3の吐出面M1の全面を容易に均一な濡れ状態にすることが可能になる。これにより、塗布ヘッド3の吐出面M1では、余分な塗布液が除去されるとともに、その全域には溶媒雰囲気が形成されることから、塗布ヘッド3の吐出孔3a付近に付着した塗布液が乾燥して凝固物となることや、塗布ヘッド3の吐出面M1において吐出孔3aから離れた位置に付着した塗布液などが乾燥して凝固物となることなどが防止されるので、吐出面M1に付着した塗布液の乾燥に起因して吐出曲がりなどの吐出異常が発生することを抑止することができる。
【0050】
特に、塗布ヘッド3及び吸収体11を相対移動させながら、塗布ヘッド3の各吐出孔3aから液滴を順次吐出し続け、吸収体11の接触面M2の全面に塗布液を供給することによって、吸収体11の接触面M2を均一に塗布液により濡れた状態とすることが可能になるので、その吸収体11を用いて塗布ヘッド3の吐出面M1の全面を均一に確実に濡らすことができる。
【0051】
(第2の実施の形態)
本発明の第2の実施の形態について図10を参照して説明する。
【0052】
本発明の第2の実施の形態は第1の実施の形態と基本的に同じである。したがって、第2の実施の形態では、第1の実施の形態と異なる部分について説明し、第2の実施の形態で説明した部分と同じ部分の説明を省略する。
【0053】
図10に示すように、保持部材12は、吸収体11に供給する液体を流すための液体流路21を内蔵している。この液体流路21は、チューブやパイプなどの配管22を介して供給部23に接続されている。
【0054】
液体流路21は保持部材12の内部で四本の流路に分岐している。四本の流路は、吸収体11の接触面M2を四分割し、各接触面M2に対応する四つの領域の中央に個別に接続されている。これにより、吸収体11の全体に均一に液体が供給されるので、その接触面M2の全面が均一に濡れることになる。また、配管22は、保持部材12の液体流路21と供給部23とを接続する接続経路として機能する。
【0055】
なお、ここでは、液体流路21を保持部材12内で四本に分岐させているが、これに限るものではなく、例えば、六本に分岐させるようにしても良く、その数は制限されない。また、配管22を一本としているが、これに限るものではなく、例えば、四本設けるようにしても良い。この場合には、各接触面M2に対応する四つの領域に個別に連通する四本の液体流路を設け、それらの液体流路に四本の配管を接続する。
【0056】
供給部23は、液体を貯留する貯留部やポンプ、流量調整弁などを備えている。貯留部は着脱可能に形成されており、その貯留部を変更することによって液体の種類を変更することが可能となる。この供給部23は制御部9に電気的に接続されており、その駆動が制御部9により制御され、吸収体11に配管22及び液体流路21を介して液体を供給する。液体としては、例えば、塗布ヘッド3が用いる塗布液と同じ液体として、PI(ポリイミド)液やNMP(N−メチル−2−ピロリドン)液などが用いられ、あるいは、その塗布液に応じた溶媒などが用いられる。
【0057】
制御部9は、吸収体11の接触面M2の全面が濡れるための所定時間だけ吸収体11に液体を供給するようにポンプや流量調整弁などを制御する。これ以外の制御としては、例えば、吸収体11の接触面M2の全面が濡れた状態を維持するようにポンプや流量調整弁などを制御したり、吸収体11の接触面M2の濡れ状態を検出する濡れ検出部を設け、検出した濡れ状態に応じて、吸収体11の接触面M2の全面が濡れた状態を維持するようにポンプや流量調整弁などを制御したりする。
【0058】
ここで、濡れ検出部としては、例えば、反射型のレーザセンサなどが用いられる。すなわち、吸収体11の接触面は、濡れ具合(吸水量)に応じてレーザ光の反射率が変化する(吸水量が多いほど液体によるレーザ光の反射量が多くなるので反射率が高くなる)から、吸収体11の良好な濡れ状態におけるレーザセンサの出力値を予め測定して設定しておき、レーザセンサによる出力値が設定した出力値の許容値内となるようにプリウエットや追加プリウエットを実行するようにすれば良い。
【0059】
以上説明したように、本発明の第2の実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。さらに、吸収体11に液体を供給する供給部23を吐出安定装置6に設け、その供給部23により吸収体11の接触面M2の全面に液体を供給することによって、吸収体11の接触面M2を均一に液体により濡れた状態とすることが可能になるので、その吸収体11を用いて塗布ヘッド3の吐出面M1の全面を均一に確実に濡らすことができる。
【0060】
なお、第2の実施の形態において、吸収体11の接触面M2を濡れた状態に維持する追加プレウエットの実行の要否を、レーザセンサを用いて判定するものとして説明したが、第1の実施の形態と同様に、経過時間に基づいて判定するようにしても良い。また、上述の第1の実施の形態において、追加プレウエットの実行の要否を、レーザセンサを用いて判定するようにしても良い。
【0061】
(他の実施の形態)
なお、本発明は、前述の実施の形態に限るものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能である。例えば、前述の実施の形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除しても良い。さらに、異なる実施の形態に亘る構成要素を適宜組み合わせても良い。また、前述の実施の形態においては、各種の数値を挙げているが、それらの数値は例示であり、限定されるものではない。
【0062】
前述の実施の形態においては、一つの塗布ヘッド3を設けているが、これに限るものではなく、例えば、基板Kの移動方向に直交するX軸方向に基板Kの幅全体を網羅するように複数の塗布ヘッド3を並べて設けるようにしても良く、あるいは、X軸方向に基板Kの幅全体より短く複数の塗布ヘッド3を並べて設けるようにしても良い。塗布ヘッド3を複数設けた場合には、塗布ヘッド3の台数分だけ吸収体11をX軸方向に並べて回転軸13に設けても良いし、あるいは、塗布ヘッド3と吸収体11とをX軸方向に相対移動させて一つの吸収体11を複数の塗布ヘッド3で共用するようにしても良い。
【0063】
また、前述の実施の形態においては、ステージ2及び吐出安定装置6を個別にY軸方向に移動させる一つのY軸移動機構7を設けているが、これに限るものではなく、二つのY軸移動機構を設け、ステージ2及び吐出安定装置6を個別にY軸方向に移動させるようにしても良い。
【0064】
また、前述の実施の形態においては、保持部材12の一面に吸収体11を設けているが、これに限るものではなく、例えば、保持部材12における回転軸13の回転方向に並ぶ全面に吸収体11を設けるようにしても良く、あるいは、保持部材12を吸収材料により形成して吸収体11として用いるようにしても良い。これらの場合には、一面の吸収体11が汚れたり、破損したりした場合など、回転軸13を回転させることによって新たな吸収体11を用いることが可能となる。
【符号の説明】
【0065】
1 塗布装置
2 ステージ
3 塗布ヘッド
3a 吐出孔
6 吐出安定装置
7 移動機構
11 吸収体
23 供給部
K 塗布対象物(基板)
M1 吐出面
M2 接触面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗布対象物が載置されるステージと、
液滴を吐出するための吐出孔が形成された吐出面を有し、前記ステージ上の前記塗布対象物に向けて前記吐出孔から塗布液を液滴として吐出する塗布ヘッドと、
前記ステージと前記塗布ヘッドとを前記ステージの面方向に相対移動させる移動機構と、
前記塗布ヘッドの前記吐出面に接触する接触面を有する吸液性の吸収体を有し、前記吸収体の前記接触面の全面を濡らし、濡れた前記接触面と前記塗布ヘッドの前記吐出面とを接触させて前記塗布ヘッドの前記吐出面の全面を濡らす吐出安定装置と、
を備えることを特徴とする塗布装置。
【請求項2】
前記吐出安定装置は、前記塗布ヘッドにより前記吸収体の前記接触面の全面に前記塗布液を供給することを特徴とする請求項1記載の塗布装置。
【請求項3】
前記吐出安定装置は、前記吸収体に液体を供給する供給部を有し、前記供給部により前記吸収体の前記接触面の全面に前記液体を供給することを特徴とする請求項1記載の塗布装置。
【請求項4】
前記吐出安定装置は、前記塗布ヘッド及び前記吸収体を前記吐出面の面方向に相対移動させつつ、前記塗布ヘッドにより前記吸収体の前記接触面の全面に前記塗布液を供給することを特徴とする請求項2記載の塗布装置。
【請求項5】
塗布対象物が載置されるステージと、液滴を吐出するための吐出孔が形成された吐出面を有し前記ステージ上の前記塗布対象物に向けて前記吐出孔から塗布液を液滴として吐出する塗布ヘッドと、前記ステージと前記塗布ヘッドとを前記ステージの面方向に相対移動させる移動機構とを用いて、前記ステージ上の前記塗布対象物に前記塗布液を塗布する塗布方法であって、
前記塗布ヘッドの前記吐出面に接触する接触面を有する吸液性の吸収体を用いて、前記吸収体の前記接触面の全面を濡らし、濡れた前記接触面と前記塗布ヘッドの前記吐出面とを接触させて前記塗布ヘッドの前記吐出面の全面を濡らすことを特徴とする塗布方法。
【請求項6】
前記塗布ヘッドにより前記吸収体の前記接触面の全面に前記塗布液を供給することを特徴とする請求項5記載の塗布方法。
【請求項7】
前記吸収体に液体を供給する供給部により前記吸収体の前記接触面の全面に前記液体を供給することを特徴とする請求項5記載の塗布方法。
【請求項8】
前記塗布ヘッド及び前記吸収体を前記吐出面の面方向に相対移動させつつ、前記塗布ヘッドにより前記吸収体の前記接触面の全面に前記塗布液を供給することを特徴とする請求項6記載の塗布方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−50892(P2011−50892A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−203576(P2009−203576)
【出願日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【出願人】(000002428)芝浦メカトロニクス株式会社 (907)
【Fターム(参考)】