説明

塗布装置及び塗布方法

【課題】ノズル流路の残圧を素早く減少させてエッジ部の膜厚形状を制御することが可能な塗布装置及び塗布方法の提供。
【解決手段】実施形態の塗布装置は、塗布対象物が載置される載置面を有するステージと、前記ステージを前記載置面に沿う回転方向に回転させる回転機構と、前記ステージ上の前記塗布対象物に材料を吐出して塗布する塗布ノズルと、前記ステージと前記塗布ノズルとを前記回転方向に交わる交差方向に前記載置面に沿って相対移動させる移動機構と、前記塗布ノズルに材料を供給する供給部と、前記材料を排出する排出部と、前記供給部、前記塗布ノズル、及び前記排出部を連通する連通管と、前記連通管における前記材料の流れを切り替える切替機構と、前記連通管の排出側の高さを調整する排出高さ調整機構と、を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗布装置及び塗布方法に関し、例えば、塗布対象物上に材料を塗布して塗布膜を形成する塗布装置及び塗布方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体などの分野において基板に円形状の膜を形成する方法としてスパイラル塗布方法がある。このスパイラル塗布方法は、円形状の回転ステージ上に円盤状の基板を固定し、塗布ノズルの吐出面と基板表面の距離(ギャップ)を所定の値に保ち、その回転ステージを回転させ、流量を制御可能な定量ポンプで塗布ノズルから材料を吐出させながら、その塗布ノズルを基板中央から基板外周に向かって直線状に移動させ、らせん状(渦巻き状)の塗布軌跡を描くことで基板全面に膜形成を行う方法である(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このようなスパイラル塗布による塗布装置及び塗布方法では、エッジ部の膜厚形状を制御するために、エッジ周辺に達する直前にノズル流路の残圧を素早く減少させることが求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−279932号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
発明の実施形態は、ノズル流路の残圧を素早く減少させてエッジ部の膜厚形状を制御することを可能とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の塗布装置は、塗布対象物が載置される載置面を有するステージと、前記ステージを前記載置面に沿う回転方向に回転させる回転機構と、前記ステージ上の前記塗布対象物に材料を吐出して塗布する塗布ノズルと、前記ステージと前記塗布ノズルとを前記回転方向に交わる交差方向に前記載置面に沿って相対移動させる移動機構と、前記塗布ノズルに材料を供給する供給部と、前記材料を排出する排出部と、前記供給部、前記塗布ノズル、及び前記排出部を連通する連通管と、前記連通管における前記材料の流れを切り替える切替機構と、前記連通管の排出側の高さを調整する排出高さ調整機構と、を備えることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】一実施形態にかかる塗布装置の構成を示す概略説明図。
【図2】同塗布装置の制御手順を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の一実施形態かかる塗布装置及び塗布方法について、図1及び図2を参照して説明する。各図中矢印X,Y,Zはそれぞれ互いに直交する3方向を示す。また、各図において説明のため、適宜構成を拡大、縮小または省略して示している。
【0009】
塗布装置1は、塗布対象物としてのウエハWが載置されるステージ2と、そのステージ2を水平面内で回転させる回転機構3と、ステージ2上のウエハWに先端から材料を吐出して塗布する塗布ノズル4と、その塗布ノズル4とステージ2とを水平面方向に相対移動させる移動機構5と、塗布ノズル4へ塗布材料を供給する供給部7と、塗布材料を排出する排出部8と、これらを連通する流路を形成する連通管9と、ウエハW上の塗布膜Mの膜面を観察する観察装置10と、各部を制御する制御部11とを備えている。
【0010】
ステージ2は、例えば円形状に形成されており、回転機構3により水平面内で回転可能に構成されている。このステージ2は、載置されたウエハWを吸着する吸着機構を備えており、その吸着機構によりステージ2の載置面2a上にウエハWを固定して保持する。この吸着機構としては、例えばエアー吸着機構などが用いられる。
【0011】
回転機構3は、ステージ2を水平面内で回転可能に支持しており、ステージ中心を回転中心としてステージ2をモータなどの駆動源により水平面内で回転させる機構である。これにより、ステージ2上に載置されたウエハWは水平面内で回転することになる。
【0012】
塗布ノズル4は、塗布膜Mとなる材料を吐出するノズルであり先端4aを有している。この塗布ノズル4は、圧力によりその先端4aから材料を連続的に吐出し、その材料をステージ2上のウエハWに塗布する。
【0013】
この塗布ノズル4には、材料を供給する供給部7がチューブやパイプなどの連通管9の供給側流路9aを介して接続されている。供給部7は、材料を貯留する供給タンク7aや供給用ポンプ7b、流量調整弁などを有している。この供給部7が制御部11により制御され、塗布ノズル4からの材料吐出量が調整される。
【0014】
さらに塗布ノズル4には、材料を排出する排出部8がチューブやパイプなどの連通管9の排出側流路9bを介して排出部8が接続されている。排出部8は、材料を貯留する排出タンク8aや連通管9の排出側口9eの高さを調節する高さ調整機構8bなどを有している。この排出部8が制御部11により制御され、塗布ノズル4からの材料排出が行われる。
【0015】
高さ調整機構8bはたとえば排出タンク8a及びこれに接続された連通管9の排出側口9eをZ軸方向に移動させる。このZ方向の位置調整により連通管9内に形成された流路の負圧が調整される。
【0016】
連通管9はたとえばチューブやパイプから構成され、塗布ノズル4と、供給部7の供給タンク7a内と、排出部8の排出タンク8a内とを連通している。連通管9は供給側流路9a、排出側流路9b、塗布ノズル4の上方の共通流路9dを有して構成され、供給側と排出側の流路が分岐部9fで分岐している。連通管9の排出側流路9bにはダイヤフラム式のバルブ9cが設けられている。このバルブ9cの動作によって排出側流路9bが開閉され、塗布ノズル4への材料供給及び塗布ノズル4からの材料排出の切り替えが行われる。排出側の端部は排出タンク8a内に開口する排出側口9eを有している。連通管9の排出側口9eは塗布ノズル4の先端4aよりも低い位置に配置されている。高さ調整機構8bによってこの排出側口9eの高さが調整される。塗布処理の際には材料が供給用ポンプ7bの作動により供給タンク7aから供給側流路9a、及び共通流路9dを通って塗布ノズル4に供給される。塗布終了の際には連通管9内の負圧により材料が共通流路9d及び排出側流路9bを通って排出タンク8aに排出される。
【0017】
移動機構5は、塗布ノズル4を支持してZ軸方向に移動させるZ軸移動機構5aと、そのZ軸移動機構5aを介して塗布ノズル4を支持しX軸方向に移動させるX軸移動機構5bとを備えている。この移動機構5は塗布ノズル4をステージ2の上方に位置付け、その塗布ノズル4をステージ2に対して相対移動させる。Z軸移動機構5a及びX軸移動機構5bとしては、例えば、リニアモータを駆動源とするリニアモータ移動機構やモータを駆動源とする送りネジ移動機構などが用いられる。
【0018】
Z軸移動機構5aには、反射型レーザセンサなどの距離測定部Lが設けられている。この距離測定部Lは、Z軸移動機構5aと共にX軸移動機構5bによりX軸方向に移動し、ステージ2上のウエハWとの離間距離を測定する。これにより、ウエハWの塗布面の表面粗さ、すなわち、その塗布面の高さプロファイルを取得することが可能である。
【0019】
この塗布装置1でスパイラル塗布を行う際、塗布ノズル4はX軸方向、すなわちウエハWの中心から外周に向かって移動しながら、回転しているステージ2上のウエハWに向けて材料を吐出し、その材料をウエハWの表面上に渦巻状に塗布する。
【0020】
観察装置10は、ステージ2に載置されたウエハWの塗布膜Mの画像を取得する観察画像取得部10aと、その観察画像取得部10aにより取得された画像を処理する画像処理部10bと、画像処理された画像などを表示する表示部10cとを備えている。
【0021】
観察画像取得部10aは、ステージ2上のウエハWの全面を観察可能にステージ2の上方に設けられており、そのウエハW上の塗布膜Mの全面の画像を取得する。この観察画像取得部10aとしては、例えば、CCD(Charge Coupled Device)カメラなどの撮像部や、材料に光を当ててその反射光を検出するセンサなどが用いられる。なお、表示部10cとしては、例えば、液晶ディスプレイ(LCD)やブラウン管(CRT)などが用いられる。
【0022】
画像処理部10bは制御部11と相互に通信を行い、画像処理後の画像を制御部11に送信する。制御部11は、画像処理部10bから送信された画像と、記憶部に記憶された膜厚と濃淡(画像濃度)との関係情報から、抜けや異物の発生、膜厚のばらつき度合、塗布膜Mの形状を判断する。なお、ここでは、画像処理部10bを観察装置10に設けているが、これに限るものではなく、例えば、制御部11に設けるようにしてもよく、また、制御部11が画像処理部10bにかわって画像処理を行うようにしてもよい。
【0023】
制御部11は、各部を集中的に制御するマイクロコンピュータと、各種プログラムや各種情報などを記憶する記憶部とを備えている。記憶部としては、メモリやハードディスクドライブ(HDD)などが用いられる。この制御部11は、各種プログラムや各種情報(塗布条件情報など)に基づいて、回転機構3や移動機構5などを制御し、ウエハWが載置されたステージ2を回転させ、塗布ノズル4の先端4aから材料を吐出させながら、その塗布ノズル4を基板中央(あるいは基板外周)から基板外周(あるいは基板中央)に向かって直線状に移動させ、渦巻き状の塗布軌跡を描くことで基板全面に膜形成を行う(スパイラル塗布)。
【0024】
以下、塗布装置1が行う成膜処理(塗布方法)について図2を参照して説明する。塗布装置1の制御部11は各種プログラムや各種情報(塗布条件情報など)に基づいて成膜処理を実行する。
【0025】
図2に示すように、まず原点復帰や負圧制御などの初期動作が行われる(ステップS1)。負圧制御として制御部11は排出部8の高さ調整機構8bを動作させ、排出側口9eを適正な高さに設定することにより、連通管9内の負圧を適正値とする。このとき、たとえば塗布材料の粘性等に基づいて、適正な負圧となるように排出部8を駆動する。
【0026】
次に、基板であるウエハWがロボットハンドリングなどの搬送機構によりステージ2上に搬入される(ステップS2)。ウエハWはステージ2上に吸着機構により固定される。その後、例えば塗布前に取得された高さプロファイルを用いて、塗布ノズル4とウエハWの塗布面との垂直方向の距離(ギャップ)が設定値となるように補正量が算出され、その補正量だけ塗布ノズル4がZ軸移動機構5aによりZ軸方向に移動する。このようにして、塗布ノズル4とウエハWの塗布面とのギャップが所望のギャップに調整される(ステップS3)。
【0027】
ついで、塗布処理が行われる(ステップS4)。塗布処理においてはステージ2が回転機構3により回転し、そのステージ2上のウエハWが回転している状態で、塗布ノズル4がウエハWの中央である原点位置からZ軸移動機構5aと共にX軸移動機構5bによりX軸方向に、すなわちウエハWの中心から外周に向かって等速で移動する。
【0028】
このとき、排出側流路9bを閉じるとともに、供給用ポンプ7bを作動させて塗布材料を供給することにより塗布ノズル4は移動しながら先端4aから材料を連続してウエハWの塗布面に吐出し、その塗布面上に渦巻状に材料を塗布する(スパイラル塗布)。これにより、ウエハWの塗布面上に塗布膜Mが形成される。
【0029】
次に、あらかじめ設定された塗布完了直前の所定位置または所定時間に達したか否かが判断され(ステップS5)、塗布完了直前の所定位置または所定時間でないと判断された場合には(ステップS5のNO)、塗布処理が続行される。
【0030】
一方、塗布完了直前であると判断された場合には(ステップS5のYES)、制御部11によりダイヤフラムバルブ9cの開閉状態が切り替えられるとともに供給用ポンプ7bによる供給が停止され、塗布が停止される(ステップS7)。塗布完了直前の位置または時間は、たとえば材料の粘性や連通管9の条件などに基づいて決定され、塗布完了の数秒程度前あるいは塗布完了位置の1〜2mm手前に設定される。
【0031】
このとき、排出側流路9bを開けるとともに、供給用ポンプ7bを停止することで材料の供給が停止され、塗布が停止される。ここで、流路を形成する連通管9は、その排出側口9eが塗布ノズル4の先端4aよりも低く設定されているため、この水頭差Δhにより流路内には負圧が発生することになる。このため、供給側流路の塗布材料の残圧がすばやく減少し、所望の塗布膜Mのエッジを形成することが可能となる。
【0032】
その後、塗布ノズル4がZ軸移動機構5aにより上昇する(ステップS7)。そして、ウエハW上の塗布膜Mが観察装置10により観察、すなわち検査され(ステップS8)、塗布膜Mに抜けが発生したか否か、塗布膜Mの異物の有無、膜厚異常の有無、塗布膜Mのエッジ部Meの形状等が監視され、必要な場合には部分塗布を行うリペア処理が成され、処理が終了する。
【0033】
本発明によれば、排出側口9eの高さをノズル4の先端4aより低く配置して連通管9内に負圧を生じさせることにより、供給流路の残圧を素早く減少させることができる。このため容易にエッジ形状制御が可能となる。また、高さ調整機構8bで排出側口9eの高さを調整することによって種々の条件に適した負圧を設定でき、残圧の減少スピードを最適化することができる。
【0034】
また切り替え機構としてダイヤフラム式のバルブを用いることとしたため、たとえばボールバルブに比べてエア混入やダスト発生等の不都合を回避できる。
【0035】
本発明の実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0036】
W…ウエハ、M…塗布膜、L…距離測定部、Δh…水頭差、Me…エッジ部、
1…塗布装置、2…ステージ、2a…載置面、3…回転機構、4…塗布ノズル、
4a…先端、5…移動機構、7…供給部、7a…供給タンク、7b…供給用ポンプ、
8…排出部、8a…排出タンク、8b…高さ調整機構、9…連通管、9a…供給側流路、9b…排出側流路、9e…排出側口、9d…共通流路、9f…分岐部、9c…バルブ、10…観察装置、11…制御部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗布対象物が載置される載置面を有するステージと、
前記ステージを前記載置面に沿う回転方向に回転させる回転機構と、
前記ステージ上の前記塗布対象物に材料を吐出して塗布する塗布ノズルと、
前記ステージと前記塗布ノズルとを前記回転方向に交わる交差方向に前記載置面に沿って相対移動させる移動機構と、
前記塗布ノズルに材料を供給する供給部と、
前記材料を排出する排出部と、
前記供給部、前記塗布ノズル及び前記排出部を連通する連通管と、
前記連通管における材料の流れを切り替える切替機構と、
前記連通管の排出側の高さを調整する排出高さ調整機構と、
を備えることを特徴とする塗布装置。
【請求項2】
前記塗布対象物が載置された前記ステージを前記回転機構により回転させながら、前記移動機構により前記ステージと前記塗布ノズルとを前記交差方向に前記載置面に沿って相対移動させ、前記塗布ノズルにより前記ステージ上の塗布対象物に前記材料を塗布する制御を行うとともに、前記切換機構を制御して前記材料の流れを制御する制御部を備えることを特徴とする請求項1記載の塗布装置。
【請求項3】
前記連通管の排出側口は、前記ノズルの先端よりも低い位置に配置されるとともに、
前記切換機構は前記連通管の排出側の流路に設けられるダイヤフラム式のバルブであって、
前記流路を開閉することにより、供給状態及び排出状態を切り替えることを特徴とする請求項1または2記載の塗布装置。
【請求項4】
前記制御部は前記排出高さ調製機構を制御して前記ノズルの高さと前記連通管の排出側の開口の高さの差により生じる負圧を調整することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか記載の塗布装置。
【請求項5】
塗布対象物が載置されたステージを回転させながら、前記ステージと対向配置された塗布ノズルとを交差方向に載置面に沿って相対移動させ、前記塗布ノズルにより前記ステージ上の塗布対象物に前記材料を塗布するとともに、
前記塗布ノズルに塗布材料を供給する供給部と前記塗布材料を排出する排出部と前記塗布ノズルとを連通する流路の排出側の高さを調整することにより前記流路の負圧を調整することを特徴とする塗布方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−196613(P2012−196613A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−61560(P2011−61560)
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】