塗布装置及び塗布方法
【課題】基板上に液状体をムラ無く塗布すること。
【解決手段】易酸化性の金属を含む液状体を先端部分から吐出するノズルを有する塗布部と、当該先端部分が基板上を通過するように基板と前記ノズルとを相対移動させる相対駆動部とを備え、ノズルのうち少なくとも先端部分には、液状体との間の親和性が液状体同士の親和性よりも弱くなるように形成された親和性調整部が設けられている。
【解決手段】易酸化性の金属を含む液状体を先端部分から吐出するノズルを有する塗布部と、当該先端部分が基板上を通過するように基板と前記ノズルとを相対移動させる相対駆動部とを備え、ノズルのうち少なくとも先端部分には、液状体との間の親和性が液状体同士の親和性よりも弱くなるように形成された親和性調整部が設けられている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗布装置及び塗布方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
Cu、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi、Ga、In、Ti、Znおよびこれらの組合せなどの金属と、S、Se、Te、およびこれらの組合せなどの元素カルコゲンとを含む半導体材料を用いたCIGS型太陽電池やCZTS型太陽電池は、高い変換効率を有する太陽電池として注目されている(例えば特許文献1〜特許文献3参照)。例えば、CIGS型太陽電池は、光吸収層(光電変換層)として上記、Cu、In、Ga、Seの4種類の半導体材料からなる膜を用いる構成になっている。
【0003】
CIGS型太陽電池やCZTS型太陽電池は、従来型の太陽電池に比べて光吸収層の厚さを薄くすることができるため、曲面への設置や運搬が容易となる。このため、高性能でフレキシブルな太陽電池として、広い分野への応用が期待されている。光吸収層を形成する手法として、従来、例えば蒸着法やスパッタリング法などを用いて形成する手法が知られていた(例えば、特許文献3〜特許文献5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−340482号公報
【特許文献2】特開2005−51224号公報
【特許文献3】特表2009−537997号公報
【特許文献4】特開平1−231313号公報
【特許文献5】特開平11−273783号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これに対して、本発明者は、光吸収層を形成する手法として、上記半導体材料を分散させた液状体をノズルによって基板上に吐出し、当該液状体の膜を基板上に塗布する手法を提案する。光吸収層を液状体の塗布によって形成する場合、基板上に形成される液状体の膜厚が均一になるように基板上に液状体をムラ無く塗布することが求められる。
【0006】
以上のような事情に鑑み、本発明は、基板上に液状体をムラ無く塗布することが可能な塗布装置及び塗布方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第一の態様は、先端部分に設けられた吐出部から易酸化性の金属を含む液状体を吐出するノズルを有する塗布部と、前記先端部分と前記基板とを対向させた状態で前記基板と前記ノズルとを相対移動させる相対駆動部とを備え、前記ノズルのうち少なくとも前記先端部分には、前記液状体との間の親和性が前記液状体同士の親和性よりも弱くなるように形成された親和性調整部が設けられている塗布装置である。
【0008】
本発明の第一の態様によれば、ノズルのうち少なくとも先端部分に、液状体との間の親和性が液状体同士の親和性よりも弱くなるように形成された親和性調整部が設けられているので、ノズルの先端部分から吐出された液状体が当該先端部分に付着するのを抑制することができる。これにより、液状体が基板に定着しやすくなるため、基板上に液状体をムラ無く塗布することが可能となる。
【0009】
上記の塗布装置において、好ましくは、前記親和性調整部は、前記ノズルのうち、前記先端部分と、前記先端部分に隣接する部分と、を含む部分に設けられている。
この場合、親和性調整部がノズルのうち先端部分と、当該先端部分に隣接する部分とを含む部分に設けられているため、液状体がノズルの先端部分から当該先端部分に隣接する部分へ伝ってしまうのを防ぐことができる。
【0010】
上記の塗布装置において、好ましくは、前記液状体は、ヒドラジンを含み、前記親和性調整部は、前記ヒドラジンとの間の親和性が前記ヒドラジン同士の親和性よりも弱くなるように形成されている。
【0011】
この場合、液状体がヒドラジンを含み、親和性調整部がヒドラジンとの間の親和性がヒドラジン同士の親和性よりも弱くなるように形成されているため、ノズルの先端部分から吐出されたヒドラジンを含む液状体が当該先端部分に付着するのを抑制することができる。これにより、ヒドラジンを含む液状体が基板に定着しやすくなるため、基板上に液状体をムラ無く塗布することが可能となる。
【0012】
上記の塗布装置において、好ましくは、前記親和性調整部は、前記ヒドラジンとの間の親和性が前記ヒドラジンと前記基板との間の親和性よりも弱くなるように形成されている。
この場合、ヒドラジンとの間の親和性がヒドラジンと基板との間の親和性よりも弱くなるように親和性調整部が形成されているため、ヒドラジンを含む液状体が先端部分の親和性調整部よりも基板に定着しやすくなる。これにより、基板上に液状体をムラ無く塗布することが可能となる。
【0013】
上記の塗布装置において、好ましくは、前記親和性調整部は、チタン及びチタン合金のうち少なくとも一方を用いて形成されている。
この場合、親和性調整部としてチタン及びチタン合金のうち少なくとも一方を用いて形成されているため、液状体が基板に定着しやすくなる。これにより、基板上に液状体をムラ無く塗布することが可能となる。
【0014】
上記の塗布装置において、好ましくは、前記基板は、モリブデンを用いて形成されている。
この場合、モリブデンを用いて形成された基板に液状体が定着しやすくなるため、基板上に液状体をムラ無く塗布することが可能となる。
【0015】
上記の塗布装置において、好ましくは、前記金属は、銅、インジウム、ガリウム及びセレンのうち少なくとも1つを含む。
この場合、金属として、銅、インジウム、ガリウム及びセレンのうち少なくとも1つを含む液状体が基板に定着しやすくなるため、基板上に液状体をムラ無く塗布することが可能となる。
【0016】
上記の塗布装置において、好ましくは、前記塗布部によって前記液状体の塗布される塗布空間及び前記液状体の塗布された前記基板の塗布後移動空間のうち少なくとも一方の空間を囲むチャンバを更に備える。
この場合、塗布部によって液状体の塗布される塗布空間及び液状体の塗布された基板の塗布後移動空間のうち少なくとも一方の空間を囲むチャンバにより、液状体の配置される空間が囲まれるため、液状体の劣化を防ぐことができる。
【0017】
上記の塗布装置において、好ましくは、前記チャンバで囲まれた前記空間に不活性ガスを供給する不活性ガス供給部を更に備える。
この場合、チャンバで囲まれた空間に不活性ガスが供給されるため、当該チャンバに囲まれた空間において液状体の劣化をより確実に防ぐことができる。
【0018】
上記の塗布装置において、好ましくは、前記塗布部は、前記先端部分に対向する吐出領域に前記液状体を吐出するように形成されており、前記相対駆動部は、前記吐出領域を通過するように前記基板を搬送する基板搬送部を有する。
この場合、塗布部が先端部分に対向する吐出領域に液状体を吐出するように形成されており、相対駆動部が吐出領域を通過するように基板を搬送する基板搬送部を有するため、例えばノズルを駆動させずに基板を搬送することにより、基板上に液状体をムラ無く塗布することが可能となる。
【0019】
上記の塗布装置において、好ましくは、前記塗布部は、前記先端部分に対向する吐出領域に前記液状体を吐出するように形成されており、前記相対駆動部は、前記吐出領域が前記基板上を走査するように前記ノズルを駆動するノズル駆動部を有する。
この場合、塗布部が先端部分に対向する吐出領域に液状体を吐出するように形成されており、相対駆動部が吐出領域が基板上を走査するようにノズルを駆動するノズル駆動部を有するため、例えば基板を駆動させずにノズルを駆動することにより、基板上に液状体をムラ無く塗布することが可能となる。また、相対移動部が基板搬送部及びノズル駆動部の両方を備える構成とすることもできる。この場合、相対移動としては、例えば基板を移動させる、ノズルを移動させる、基板及びノズルの両方を移動させる、といった態様を取りうる。
【0020】
本発明の第二の態様は、易酸化性の金属を含む液状体を基板に塗布する塗布方法であって、前記液状体との間の親和性が前記液状体同士の親和性よりも弱くなるように形成された親和性調整部が設けられる先端部分に形成された吐出部から前記液状体を吐出するノズルを有する塗布部の当該先端部分を前記基板に対向させるステップと、前記先端部分と前記基板との間で前記液状体が挟持されるように、前記吐出部から前記液状体を吐出するステップと、前記先端部分と前記基板との間で前記液状体を挟持した状態で、前記吐出部から前記液状体を吐出しつつ前記先端部分と前記基板とを相対移動させるステップとを含む塗布方法である。
【0021】
本発明の第二の態様によれば、液状体との間の親和性が液状体同士の親和性よりも弱くなるように形成された親和性調整部が先端部分に設けられており、当該先端部分に液状体の吐出部が形成されたノズルの当該先端部分を基板に対向させ、先端部分と基板との間で液状体が挟持されるように吐出部から液状体を吐出することで、液状体は先端部分に付着しにくい状態になると共に、液状体同士で接触しやすい状態となる。この状態で吐出部から液状体を吐出しつつ基板を移動させると、基板上に配置された液状体が基板上で互いに接触しようとするため、液状体は先端部分からノズル表面を伝って流れてしまうことなく、基板に定着しやすくなる。これにより、基板上に液状体をムラ無く塗布することが可能となる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、基板上に液状体をムラ無く塗布することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施の形態に係る塗布装置の構成を示す図。
【図2】(a)(b)本実施形態に係る塗布装置の塗布部の構成を示す図。
【図3】本実施形態に係る塗布装置の動作を示す図。
【図4】本実施形態に係る塗布装置の動作を示す図。
【図5】本実施形態に係る塗布装置の動作を示す図。
【図6】本実施形態に係る塗布装置の動作を示す図。
【図7】本実施形態に係る塗布装置の動作を示す図。
【図8】本実施形態に係る塗布装置の動作を示す図。
【図9】本実施形態に係る塗布装置の他の構成を示す図。
【図10】本実施形態に係る塗布装置の他の構成を示す図。
【図11】本実施形態に係る塗布装置の他の構成を示す図。
【図12】本実施形態に係る塗布装置の他の構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。
以下の各図において、本実施形態に係る塗布装置の構成を説明するにあたり、表記の簡単のため、XYZ座標系を用いて図中の方向を説明する。当該XYZ座標系においては、図中左右方向をX方向と表記し、平面視でX方向に直交する方向をY方向と表記する。X方向軸及びY方向軸を含む平面に垂直な方向はZ方向と表記する。X方向、Y方向及びZ方向のそれぞれは、図中の矢印の方向が+方向であり、矢印の方向とは反対の方向が−方向であるものとして説明する。
【0025】
[塗布装置]
図1は、本実施形態に係る塗布装置CTRの構成を示す概略図である。
図1に示すように、塗布装置CTRは、ロードロック装置LL、第一チャンバ装置CB1、第二チャンバ装置CB2を備えている。ロードロック装置LL、第一チャンバ装置CB1及び第二チャンバ装置CB2は、例えばX方向に直列に接続されている。塗布装置CTRは、基板S上に液状体を塗布する装置である。本実施形態では、基板Sとして、例えばモリブデンなどの金属を用いて形成された板状部材が採用されている。
【0026】
また、本実施形態では、液状体として、例えばヒドラジンなどの溶媒に、銅(Cu)、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、セレン(Se)といった易酸化性の金属材料を含有する液状組成物を用いている。この液状組成物は、CIGS型太陽電池やCZTS型太陽電池の光吸収層(光電変換層)を構成する金属材料を含んでいる。勿論、液状体として、他の易酸化性の金属を分散させた液状体を用いる構成としても構わない。
【0027】
ロードロック装置LLと第一チャンバ装置CB1とは、第一接続室JC1を介して接続されている。第一接続室JC1には、基板Sをロードロック装置LLから第一チャンバ装置CB1へと搬送する第一搬送装置TJ1が配置されている。第一チャンバ装置CB1と第二チャンバ装置CB2とは、第二接続室JC2を介して接続されている。第二接続室JC2には、基板Sを第一チャンバ装置CB1と第二チャンバ装置CB2との間で搬送する第二搬送装置TJ2が配置されている。
【0028】
本実施形態に係る塗布装置CTRは、基板Sがロードロック装置LLから塗布装置CTRに搬入され、第一チャンバ装置CB1を経て第二チャンバ装置CB2から搬出されるようになっている。したがって、塗布装置CTRにおいては、原則として+X方向が基板Sの移動方向となる。
【0029】
(ロードロック装置)
ロードロック装置LLは、収容室RML、基板搬入口ENL及び基板搬出口EXLを有している。基板搬入口ENLは、収容室RMLの−X側の壁部に形成されており、例えば外部に接続されている。基板搬出口EXLは、収容室RMLの+X側の壁部に形成されており、第一接続室JC1に接続されている。基板搬入口ENL及び基板搬出口EXLは、基板Sが通過可能な寸法に形成されている。
【0030】
収容室RMLには、基板Sを載置する基板載置部SPLと、基板Sを駆動する基板駆動機構SALとが設けられている。また、収容室RMLには、例えばポンプ機構などの減圧機構DCLが接続されている。基板駆動機構SALは、収容室RML内で基板Sを搬送する部分である。
【0031】
基板駆動機構SALは、複数のローラー部材50を有している。ローラー部材50は、基板搬入口ENLから基板搬出口EXLにかけてX方向に配列されている。各ローラー部材50は、Y軸方向を中心軸方向としてY軸周りに回転可能に設けられている。複数のローラー部材50は、それぞれ等しい径となるように形成されており、Z方向上の位置が等しくなるように配置されている。複数のローラー部材50は、+Z側の上端において基板Sを支持するようになっている。
【0032】
各ローラー部材50は、例えば不図示のローラー回転制御部によって回転が制御されるようになっている。基板駆動機構SALとしては、図1に示すように例えばコロ搬送機構を用いても構わないし、基板を浮上させて搬送する不図示の浮上搬送機構を用いても構わない。
【0033】
基板搬入口ENL及び基板搬出口EXLには、それぞれシャッタ部材SHLが設けられている。シャッタ部材SHLを例えばZ方向にスライドさせることにより、基板搬入口ENL及び基板搬出口EXLが開閉するように構成されている。シャッタ部材SHLを閉じることにより、収容室RMLが密閉されるようになっている。
【0034】
(第一チャンバ装置)
第一チャンバ装置CB1は、収容室RM1、基板搬入口EN1及び基板搬出口EX1を有している。収容室RM1は、内部に基板Sを収容可能に設けられている。基板搬入口EN1及び基板搬出口EX1は、収容室RM1に形成された開口部である。基板搬入口EN1は、例えば収容室RM1の−X側端部に形成されており、第一接続室JC1に接続されている。基板搬出口EX1は、例えば収容室RM1の+X側端部に形成されており、第二接続室JC2に接続されている。基板搬入口EN1及び基板搬出口EX1は、基板Sが通過可能な寸法に形成されている。
【0035】
基板搬入口EN1及び基板搬出口EX1には、それぞれシャッタ部材SH1が設けられている。シャッタ部材SH1を例えばZ方向にスライドさせることにより、基板搬入口EN1及び基板搬出口EX1が開閉するように構成されている。シャッタ部材SH1を閉じることにより、収容室RM1が密閉されるようになっている。
【0036】
収容室RM1には、基板駆動機構SA1、塗布部CT、ダミー吐出機構DDが設けられている。また、収容室RM1には、例えば当該収容室RM1の環境を調整する環境調整部ACが接続されている。基板駆動機構SA1は、収容室RM1内で基板Sを搬送する部分である。
【0037】
基板駆動機構SA1は、複数のローラー部材51を有している。ローラー部材51は、基板搬入口EN1から基板搬出口EX1にかけてX方向に配列されている。各ローラー部材51は、不図示のローラー回転制御部によって回転が制御されるようになっている。基板駆動機構SA1としては、上記の基板駆動機構SALと同様に、例えばコロ搬送機構を用いても構わないし、基板を浮上させて搬送する浮上搬送機構を用いても構わない。
【0038】
塗布部CTは、第一チャンバ装置CB1の収容室RM1に収容されている。塗布部CTは、長尺状に形成されたスリットノズルNZを有している。スリットノズルNZは、収容室RM1の例えば基板搬入口EN1の近傍に設けられている。スリットノズルNZは、例えばY方向に長手になるように形成されている。スリットノズルNZは、例えば収容室RM1のX方向のほぼ中央部に配置されている。スリットノズルNZの+X側及び−X側は、それぞれ基板Sが配置可能なスペースが確保されている。
【0039】
図2は、スリットノズルNZの構成を示す図である。図2(a)は、スリットノズルNZを+Z方向に見たときの構成を示している。図2(b)は、スリットノズルNZを+Y方向に見たときの構成を示している。
【0040】
図2(a)及び図2(b)に示すように、スリットノズルNZは、例えばY方向が長手の長尺状に構成されている。スリットノズルNZのうち−Z方向に向けられた先端部分NZaには、当該スリットノズルNZの長手方向に沿って形成されたスリット状のノズル開口部21が設けられている。スリットノズルNZは、Z方向のほぼ中央部から当該先端部分NZaにかけてX方向の寸法が当該X方向の中央部へ向けて徐々に小さくなるように先細りに形成されている。
【0041】
スリットノズルNZの先端部分NZaのほぼ中央部には、ノズル開口部21が形成されている。ノズル開口部21は、例えばスリットノズルNZの長手方向に沿ってY方向に形成されている。図2(a)に示すように、ノズル開口部21は、例えば長手方向が基板SのY方向の寸法とほぼ同一となるように形成されている。
【0042】
スリットノズルNZは、ノズル開口部21から、例えば上記のCu、In、Ga、Seの4種類の金属が所定の組成比で混合された液状体Q(図3参照)を吐出する。スリットノズルNZは、接続配管(不図示)などを介して、それぞれ液状体の供給源(不図示)に接続されている。スリットノズルNZは、内部に液状体を保持する保持部を有している。スリットノズルNZは、保持部に保持された液状体の温度を調整する温調機構(不図示)を有している。
【0043】
スリットノズルNZは、例えばチタン又はチタン合金を含んだ材料を用いて形成されている。このような材料として、例えば、以下の表1に示す(1)〜(8)に示す材料のうち少なくとも1種類の材料が用いられる。勿論、(1)〜(8)の材料を複数組み合わせても構わない。
【0044】
【表1】
【0045】
上記(1)〜(8)に示す材料は、いずれも上記組成の液状体Qとの間の親和性が液状体Q同士の親和性よりも弱い、という性質を有している。より具体的には、上記(1)〜(8)に示す材料は、いずれも液状体Qに含まれるヒドラジンとの間の親和性がヒドラジン同士の親和性よりも弱い、という性質を有している。このため、上記(1)〜(8)に示す材料を用いて形成されたスリットノズルNZには、液状体Qが付着しにくくなる。
【0046】
本実施形態では、例えばスリットノズルNZの全体が、上記材料(1)〜(8)の少なくとも1種類を用いて形成されている。このため、スリットノズルNZの表面全体において、液状体Qとの間の親和性が液状体Q同士の親和性よりも弱い部分(親和性調整部)AFが形成されることになる。
【0047】
このスリットノズルNZの表面全体には、例えば先端部分NZaや、当該先端部分NZaに隣接する隣接部分が含まれている。当該隣接部分としては、例えば図2(a)及び図2(b)に示すように、スリットノズルNZの先端部分NZaの+X側端辺及び−X側端辺にそれぞれ接続された傾斜部分NZb及びNZcが挙げられる。また、隣接部分として、当該傾斜部分NZb及びNZcの+Z側にそれぞれ接続された壁部分NZd及びNZeを含めても構わない。
【0048】
このように、本実施形態のスリットノズルNZは、上記材料(1)〜(8)の少なくとも1種類を用いて形成されていることにより、親和性調整部AF(例えば先端部分NZa、傾斜部分NZb及びNZc、壁部分NZd及びNZeなど)を含む表面全体において、液状体Qが付着しにくくなるように構成されている。
【0049】
また、上記(1)〜(8)に示す材料とヒドラジンとの間の親和性は、モリブデンとヒドラジンとの間の親和性よりも弱い、という性質がある。本実施形態では、基板Sがモリブデンを用いて形成されているため、上記(1)〜(8)に示す材料とヒドラジンとの間の親和性は、当該基板Sとヒドラジンとの間の親和性よりも弱い、という性質を有することになる。
【0050】
換言すると、液状体Qは、上記(1)〜(8)に示す材料を用いて形成されたスリットノズルNZに比べて、モリブデンを用いて形成された基板Sに対して、より付着しやすくなる。このように、スリットノズルNZは、ノズル開口部21から吐出された液状体Qが、スリットノズルNZに付着しにくくなり、かつ、基板Sに対して付着しやすくなるように形成されている。
【0051】
スリットノズルNZには、ノズル駆動機構NA(図1参照)が設けられている。ノズル駆動機構NAは、スリットノズルNZをX方向、Y方向及びZ方向に駆動する構成を有している。例えば、ノズル駆動機構NAは、収容室RM1の待機位置と塗布位置(図1に示す位置)との間でスリットノズルNZを移動可能な構成を有している。
【0052】
ダミー吐出機構DDは、スリットノズルNZの上記待機位置に設けられている。ダミー吐出機構DDは、例えば液状体をダミー吐出する。ダミー吐出機構には、例えば液状体の気泡を検出する不図示の気泡センサが設けられている。
【0053】
収容室RM1のうち、スリットノズルNZの−Z側は、基板Sに液状体の塗布が行われる塗布空間R1となる。収容室RM1のうち、スリットノズルNZの+X側の空間は、基板Sの塗布後移動空間R2の一部となる。
【0054】
(第二チャンバ装置)
図1に戻って、第二チャンバ装置CB2は、収容室RM2、基板搬入口EN2及び基板搬出口EX2を有している。収容室RM2は、内部に基板Sを収容可能に設けられている。なお、収容室RM2は、基板Sの塗布後移動空間R2の一部となる。基板搬入口EN2及び基板搬出口EX2は、収容室RM2に形成された開口部である。基板搬入口EN2は、例えば収容室RM2の−X側端部に形成されており、第一接続室JC2に接続されている。基板搬出口EX2は、例えば収容室RM2の+X側端部に形成されており、外部に接続されている。基板搬入口EN2及び基板搬出口EX2は、基板Sが通過可能な寸法に形成されている。
【0055】
基板搬入口EN2及び基板搬出口EX2には、それぞれシャッタ部材SH2が設けられている。シャッタ部材SH2を例えばZ方向にスライドさせることにより、基板搬入口EN2及び基板搬出口EX2が開閉するように構成されている。シャッタ部材SH2を閉じることにより、収容室RM2が密閉されるようになっている。
【0056】
収容室RM2には、基板駆動機構SA2、加熱部HTが設けられている。また、収容室RM2には、例えば当該収容室RM2の環境を調整する環境調整部ACが接続されている。基板駆動機構SA2は、基板駆動機構SAL、SA1と同様、収容室RM2内で基板Sを搬送する部分である。
【0057】
基板駆動機構SA2は、複数のローラー部材52を有している。ローラー部材52は、基板搬入口EN2から基板搬出口EX2にかけてX方向に配列されている。各ローラー部材52は、不図示のローラー回転制御部によって回転が制御されるようになっている。基板駆動機構SA2としては、上記の基板駆動機構SAL、SA1と同様に、例えばコロ搬送機構を用いても構わないし、基板を浮上させて搬送する浮上搬送機構を用いても構わない。
【0058】
加熱部HTは、基板S上に塗布された液状体を加熱する部分である。加熱部HTは、内部に赤外線装置やホットプレート、オーブン機構などの加熱機構を有している。加熱部HTでは、当該加熱機構を用いることにより、例えば液状体の乾燥や、液状体の焼成などが行われるようになっている。
【0059】
(環境調整部)
環境調整部ACは、酸素濃度センサ31、圧力センサ32、不活性ガス供給部33、排気部34を有している。
酸素濃度センサ31及び圧力センサ32は、第一チャンバ装置CB1の収容室RM1及び第二チャンバ装置CB2の収容室RM2にそれぞれ1つずつ設けられている。酸素濃度センサ31は、収容室RM1及び収容室RM2の酸素濃度を検出し、検出結果を制御装置CONTに送信する。圧力センサ32は、収容室RM1及び収容室RM2の圧力を検出し、検出結果を制御装置CONTに送信する。図1においては、酸素濃度センサ31及び圧力センサ32は、収容室RM1及び収容室RM2の天井部分に取り付けられた構成が示されているが、他の部分に設けられている構成であっても構わない。
【0060】
不活性ガス供給部33は、収容室RM1及び収容室RM2内に例えば窒素ガスやアルゴンガス、ヘリウムガスなどの不活性ガスを供給する。不活性ガス供給部33は、ガス供給源33a、配管33b及び供給量調整部33cを有している。ガス供給源33aは、例えばガスボンベなどを用いることができる。
【0061】
配管33bは、一端がガス供給源33aに接続されており、他端が収容室RM1及び収容室RM2に分岐されて接続されている。配管33bのうち収容室RM1及び収容室RM2に接続された端部が、それぞれ収容室RM1及び収容室RM2における不活性ガス供給口となる。当該不活性ガス供給口は、例えば収容室RM1の−X側の壁部であって天井付近に配置されている。また、当該不活性ガス供給口は、例えば収容室RM2の+X側の壁部であって天井付近に配置されている。
【0062】
供給量調整部33cは、収容室RM1及び収容室RM2に供給する不活性ガスの供給量を調整する部分である。供給量調整部33cとしては、例えば電磁弁や手動で開閉させるバルブなどを用いることができる。供給量調整部33cは、例えば配管33bに設けられている。供給量調整部33cについては、配管33bに配置する構成の他、例えばガス供給源33aに直接設置する構成としても構わない。
【0063】
排気部34は、収容室RM1及び収容室RM2の気体を外部に排出する。また、排気部34は、収容室RM1及び収容室RM2の気体を排気して当該収容室RM1及び収容室RM2を減圧させる場合にも用いられる。排気部34は、排気駆動源34a、配管34b、配管34c及び除去部材34dを有している。排気駆動源34aは、配管34bを介して収容室RM1及び収容室RM2の内部にそれぞれ分岐されて接続されている。排気駆動源34aとしては、例えばポンプなどが用いられている。配管34bは、収容室RM1及び収容室RM2の内部に設けられる端部に排気口を有している。この排気口は、例えば収容室RM1及び収容室RM2のそれぞれの底部(−Z側の面)に配置されている。
【0064】
このように、不活性ガス供給口が収容室RM1及び収容室RM2の+Z側に配置され、排気口が収容室RM1及び収容室RM2の−Z側に配置されていることにより、収容室RM1及び収容室RM2において気体が−Z方向に流通するようになっている。このため、収容室RM1及び収容室RM2では、それぞれ気体の巻き上げの発生が抑えられた状態になっている。
【0065】
配管34cは、一端が排気駆動源34aに接続されており、他端が不活性ガス供給部33の配管33bに接続されている。配管34cは、排気駆動源34aによって排気された収容室RM1及び収容室RM2の気体を供給経路に循環させる循環経路となる。このように、排気部34は、収容室RM1及び収容室RM2の気体を循環させる循環機構を兼ねている。配管34cの接続先としては、不活性ガス供給部33の配管33bに限られず、例えば直接収容室RM1及び収容室RM2内にそれぞれ接続されている構成であっても構わない。配管34cには、例えば除去部材34dの上流側及び下流側にそれぞれバルブが設けられている。
【0066】
除去部材34dは、配管34c内に設けられている。除去部材34dとしては、例えば配管34c内を流通する気体のうち酸素成分及び水分を吸着させる吸着剤が用いられている。このため、循環させる気体を清浄化させることができるようになっている。除去部材34dは、配管34c内の一箇所に配置させる構成であっても構わないし、配管34cの全体に亘って配置された構成であっても構わない。
【0067】
(制御装置)
制御装置CONTは、塗布装置CTRを統括的に制御する部分である。具体的には、制御装置CONTは、ロードロック装置LL、第一チャンバ装置CB1、第二チャンバ装置CB2及び環境調整部ACのそれぞれの動作を制御する。例えば、シャッタ部材SHL、SH1及びSH2の開閉動作、基板駆動機構SAL、SA1及びSA2の動作、塗布部CTによる塗布動作、加熱部HTによる加熱動作、環境調整部ACによる調整動作などを制御する。
【0068】
調整動作の一例として、制御装置CONTは、酸素濃度センサ31及び圧力センサ32による検出結果に基づいて、不活性ガス供給部33の供給量調整部33cの開度を調整する。制御装置CONTは、例えば処理時間の計測等に用いる不図示のタイマーなどを有している。
【0069】
[塗布動作]
次に、本実施形態に係る塗布動作を説明する。本実施形態では、上記のように構成された塗布装置CTRを用いて基板S上に塗布膜を形成する。塗布装置CTRの各部で行われる動作は、制御装置CONTによって制御される。
【0070】
制御装置CONTは、塗布装置CTRに設けられるシャッタ部材SHL、SH1及びSH2を閉じた状態にしておく。この状態で、外部から塗布装置CTRに基板Sが搬送されてきたら、制御装置CONTは、ロードロック装置LLの基板搬入口ENLに設けられるシャッタ部材SHLを開いた状態として、当該基板搬入口ENLから基板Sを収容室RMLに搬入させる。
【0071】
図3に示すように、基板Sを収容室RMLに搬入させた後、制御装置CONTは、基板搬入口ENLのシャッタ部材SHLを閉じた状態とし、収容室RMLを密閉状態とする。制御装置CONTは、収容室RMLを密閉状態とした後、減圧機構DCLを用いて収容室RMLを減圧状態とする。
【0072】
制御装置CONTは、第一チャンバ装置CB1の収容室RM1及び第二チャンバ装置CB2の収容室RM2が密閉状態になっていることを確認した後、当該収容室RM1及びRM2の雰囲気を不活性ガス雰囲気に調整させる。具体的には、不活性ガス供給部33を用いて収容室RM1及び収容室RM2に不活性ガスを供給させる。この場合、制御装置CONTは、適宜排気部34を作動させることによって収容室RM1及びRM2の圧力を調整させるようにしても構わない。
【0073】
加えて、制御装置CONTは、スリットノズルNZの保持部に液状体を保持させる。制御装置CONTは、スリットノズルNZ内の温調機構を用いて、保持部に保持された液状体の温度を調整させる。このように、制御装置CONTは、基板Sに液状体を吐出させる状態を整えておく。
【0074】
塗布装置CTRの状態が整ったら、制御装置CONTは、図4に示すように、ロードロック装置LLの基板搬出口EXL及び第一チャンバ装置CB1の基板搬入口EN1を開いた状態とし、ロードロック装置LLから第一接続室JC1を介して第一チャンバ装置CB1の収容室RM1に基板Sを搬入させる。
【0075】
基板Sの搬入後、制御装置CONTは、基板駆動機構SA1のローラー部材51を回転させ、基板Sを+X方向に移動させる。基板Sの+X側の端辺がZ方向視でスリットノズルNZのノズル開口部21に重なる位置に到達したら、図5に示すように、制御装置CONTはスリットノズルNZを用いて基板Sに液状体Qを塗布させる。
【0076】
この場合、制御装置CONTは、スリットノズルNZと基板Sとを相対移動させて(本実施形態では基板Sを+X方向に移動させて)スリットノズルNZの先端部分NZaを基板Sに対向させる。先端部分NZaと基板Sとを対向させた後、制御装置CONTは、図5に示すように、先端部分NZaと基板との間で液状体が挟持されるようにノズル開口部21から液状体Qを吐出させる。
【0077】
ここで、先端部分NZaにおける液状体Qとの親和性が、液状体Q同士の親和性よりも強い場合、液状体Qは、液状体Q同士で接触するよりも先端部分NZaに接触しようとする。このため、液状体Qが先端部分NZaに付着した状態となってしまい、基板Sに対する定着性が低下してしまう。また、先端部分NZaのみならず、隣接部分である傾斜部分NZb、NZcにおける液状体Qとの親和性が、液状体Q同士の親和性よりも強い場合、液状体Qは先端部分NZaから傾斜部分NZb、NZcへと伝わってしまい、さらに基板Sへの定着性が低下してしまう。更に、先端部分NZa(及び隣接部分)における液状体Qとの親和性が液状体Qと基板Sとの親和性よりも強い場合、液状体Qは基板Sよりも先端部分NZa(及び隣接部分)に付着しようとするため、この場合も基板Sへの定着性が低下してしまう。
【0078】
これに対して、本実施形態においては、スリットノズルNZは、全体が上記の表1の(1)〜(8)に示す材料のうち少なくとも1種類を用いて形成されているため、例えばスリットノズルNZの先端部分NZa(親和性調整部AF)における液状体Qとの親和性は、液状体Q同士の親和性よりも弱くなっている。また、当該先端部分NZaにおける液状体Qとの親和性は、基板Sと液状体Qとの間の親和性よりも弱くなっている。
【0079】
したがって、上記のようにスリットノズルNZの先端部分NZaと基板Sとで液状体Qを挟むことにより、液状体Qが先端部分NZaに付着しにくい状態になると共に、液状体Q同士で接触しやすい状態となる。また、液状体Qは先端部分NZaよりも基板Sに付着しやすい状態になる。
【0080】
制御装置CONTは、このような状態において、ノズル開口部21から液状体Qを吐出させつつ基板Sを移動させる。この動作により、液状体Qは先端部分NZaから傾斜部分NZbや傾斜部分NZcなどに流れてしまうことなく、基板S上に配置されて定着することになる。
【0081】
また、基板Sに配置された液状体Q同士の親和性により、基板Sがノズル開口部21から遠ざかると、基板S上に塗布された液状体Qが先端部分NZaの液状体Qを引っ張るように作用する。このような結果、図6に示すように、基板Sの所定領域上に当該液状体の塗布膜Lがほぼ均一の膜厚で形成される。塗布膜Lの形成後、制御装置CONTは、ノズル開口部21からの液状体の吐出動作を停止させる。
【0082】
吐出動作を停止後、制御装置CONTは、塗布膜Lが形成された基板Sを第二チャンバ装置CB2の収容室RM2に収容させる。具体的には、図7に示すように、制御装置CONTは、収容室RM1の基板搬出口EX1及び収容室RM2の基板搬入口EN2を開いた状態とし、基板搬出口EX1、第二接続室JC2及び基板搬入口EN2を介して当該基板Sを収容室RM2へと搬入させる。
【0083】
制御装置CONTは、基板Sを収容室RM2に搬入した後、図8に示すように、当該基板Sが加熱部HTの−Z側に位置するように移動させ、その後排出部34を作動させることにより収容室RM2を減圧させる。収容室RM2を減圧させた後、制御装置CONTは、加熱部HTを作動させて基板S上の塗布膜Lを加熱させる。減圧下で液状体を加熱することにより、塗布膜Lは短時間で効率的に乾燥する。
【0084】
なお、この乾燥動作においては、収容室RM2を減圧させない状態で加熱処理だけで行っても構わない。また、この乾燥動作においては、加熱させない状態で収容室RM2の減圧処理のみで行っても構わない。さらに減圧処理を行った後に加熱処理を行っても構わない。
【0085】
加熱ステップでの加熱温度は、例えば300℃以下となるようにする。加熱温度を300℃以下とすることにより、基板Sの構成材料が樹脂材料であっても、基板Sに変形させること無く加熱処理が行われることとなる。このため、基板Sの材料の選択の幅が広がることとなる。
【0086】
制御装置CONTは、例えばローラー部材52の回転動作を停止させ、基板Sの移動を停止させた状態で加熱部HTを作動させるようにする。例えば基板S上の塗布膜Lが乾燥するまでの時間や加熱温度などを予め記憶させておくようにし、制御装置CONTが当該記憶させた値を用いて加熱時間及び加熱温度などを調整することで塗布膜Lの加熱動作を行わせる。
【0087】
また、ローラー部材52の回転動作をさせたまま加熱部HT下を基板Sが通過してもよい。その際、加熱部HTはそのXマイナス方向からXプラス方向へと温度勾配を持つようにしてもよい。その場合基板Sは徐々に加熱され、所望の温度で設定時間加熱処理された後、徐々に除冷されるため、基板Sや基板上に塗布された易酸化性の金属を含有する膜にストレスを与えずに乾燥させることができる。
【0088】
上記易酸化性の金属を含有する液状体Qを基板S上に塗布して光吸収層の一部を形成する場合、例えばCuやInなどは酸化しやすい性質を有する(易酸化性)金属であるため、収容室RM1、収容室RM2における酸素濃度が高いと、易酸化性の金属が酸化してしまう。これらの金属が酸化してしまうと、基板S上に形成される塗布膜の膜質が低下してしまう虞がある。
【0089】
そこで、制御装置CONTは、環境調整部ACを用いて収容室RM1及び収容室RM2が不活性ガス雰囲気下となるように調整させるようにしている。具体的には、制御装置CONTは、不活性ガス供給部33を用いることにより、収容室RM1及び収容室RM2に窒素ガスやアルゴンガスなどの不活性ガスを供給する。
【0090】
供給ステップでは、制御装置CONTは、まず酸素濃度センサ31によって収容室RM1及び収容室RM2の酸素濃度を検出させる。制御装置CONTは、検出ステップでの検出結果に基づき、供給量調整部33cを用いて不活性ガスの供給量を調整させつつ、収容室RM1及び収容室RM2に不活性ガスを供給させる。例えば、検出された酸素濃度が予め設定された閾値を超えた場合に収容室RM1及び収容室RM2に不活性ガスを供給させることができる。当該閾値については、予め実験やシミュレーションなどによって求めておき、制御装置CONTに記憶させておくことができる。また、例えば、塗布動作及び乾燥動作の間、常時一定量の不活性ガスを収容室RM1及び収容室RM2に供給させた状態にしておき、酸素濃度センサ31の検出結果に基づいて、供給量を多くしたり少なくしたりさせることもできる。
【0091】
供給ステップでは、制御装置CONTは、酸素濃度センサ31を用いると同時に、圧力センサ32によって収容室RM1及び収容室RM2の気圧を検出させる。制御装置CONTは、圧力センサ32の検出結果に基づき、供給量調整部33cを用いて不活性ガスの供給量を調整しつつ、収容室RM1及び収容室RM2に不活性ガスを供給させる。例えば、収容室RM1及び収容室RM2の気圧が予め設定された閾値を超えた場合に、排気部34を用いて収容室RM1及び収容室RM2を排気させる。この閾値についても、予め実験やシミュレーションなどによって求めておき、制御装置CONTに記憶させておくことができる。また、例えば、塗布動作及び乾燥動作の間、収容室RM1及び収容室RM2を常時一定量排気させた状態にしておき、圧力センサ32の検出結果に基づいて、排気量を多くしたり少なくしたりさせることもできる。このようにして、収容室RM1及び収容室RM2が減圧下に保持されることになる。
【0092】
排気部34から排気された気体は、配管34b及び配管34cを流通して不活性ガス供給部33の配管33bに循環される。配管34cを流通する際、この気体は除去部材34dを通過する。気体が除去部材34dを通過する際、気体中の酸素成分が除去部材34dに吸着されて除去される。このため、酸素濃度が低い状態の不活性ガスが配管33bに循環されることになる。収容室RM1及び収容室RM2の気体を循環させることにより、温度などが安定化された状態で不活性ガスが供給されることになる。
【0093】
以上のように、本実施形態によれば、スリットノズルNZのうち少なくとも先端部分NZaには、液状体Qとの間の親和性が液状体Q同士の親和性よりも弱くなるように形成された親和性調整部AFが設けられているため、スリットノズルNZの先端部分NZaから吐出された液状体Qが当該先端部分NZaに付着するのを抑制することができる。これにより、液状体Qが基板Sに定着しやすくなるため、基板Sに液状体Qをムラ無く塗布することが可能となる。
【0094】
本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることができる。
例えば、上記実施形態では、スリットノズルNZの全体が表1に示す(1)〜(8)の少なくとも1種類の材料を用いて構成された例を示したが、これに限られることは無い。
【0095】
例えば図9に示すように、スリットノズルNZの先端部分NZa、傾斜部分NZb及びNZc、壁部分NZd及びNZeをそれぞれ覆うように形成された被覆部NZfを有する構成であっても構わない。当該被覆部NZfは、上記(1)〜(8)の少なくとも1種類の材料を用いて形成されている。例えばスリットノズルNZの表面をコーティング処理したり、蒸着処理したりすることにより、上記構成の被覆部NZfを形成することができる。なお、スリットノズルNZの表面に被覆部NZfが設けられた場合であっても、当該被覆部NZfが設けられた部分に親和性調整部AFが形成されることになる。なお、この場合、スリットノズルNZのうち被覆部NZf以外の部分は、上記(1)〜(8)の材料とは異なる材料であっても構わない。
【0096】
また、上記実施形態では、塗布部CTと加熱部HTとを別々のチャンバ装置(第一チャンバ装置CB1及び第二チャンバ装置CB2)に配置させた構成としたが、これに限られることは無く、1つのチャンバ装置CBに配置させる構成であっても構わない。例えば図10に示すように、1つのチャンバ装置CB内の同一の空間に塗布部CTと加熱部HTとを配置させるようにしても構わない。この場合、塗布部CTの−Z側の空間が塗布空間R1となり、当該塗布空間の+X側の空間が塗布後移動空間R2となる。
【0097】
また、図11に示すように、スリットノズルNZと加熱部HTとが異なる空間に配置されるようにチャンバCB内の空間が2つに仕切られた構成としても構わない。チャンバCB内には、仕切り部材110が設けられている。仕切り部材110は、基板Sの搬送方向上に配置されている。基板Sは、仕切り部材110を超えて搬送されることになる。
【0098】
仕切り部材110のうち基板Sの高さ位置(Z方向上の位置)に対応する領域には、開口部111が形成されている。開口部111には、蓋部111aが設けられており、開口部111が開閉可能になっている。基板Sを搬送する場合、基板Sが仕切り部材110を通過する際には蓋部111aをそれぞれ開状態として当該基板Sを通過させる。基板Sが通過しないときや、各空間内で処理を行う場合には蓋部111aを閉状態とする。
【0099】
チャンバCB内の酸素濃度を検出する酸素濃度センサ31や圧力を検出する圧力センサ32は、仕切り部材110で区切られた各空間にそれぞれ設けられている。また、環境調整部についても、2つの空間にそれぞれ接続されている。スリットノズルNZが配置される空間には、環境調整部AC1が接続されている。環境調整部AC1の構成は、第1実施形態における環境調整部ACの構成と同一構成となっている。
【0100】
加熱部HTが設けられる空間には、環境調整部AC2が接続されている。環境調整部AC2には、環境調整部AC1(又は第1実施形態に記載の環境調整部AC)の構成に加えて、配管34cから分岐する分岐配管125が設けられている。したがって、配管34cと同様、分岐配管125にも排気駆動源34aによって排気された気体が流通するようになっている。
【0101】
分岐配管125は、例えば蓄熱機構120に接続されている。分岐配管125上には、当該分岐配管125を流通する気体を加熱する加熱機構121が設けられている。また、分岐配管125には酸素を除去する除去部材(例えば第1実施形態の除去部材34dと同一の部材)が設けられた構成であっても構わない。
【0102】
加熱部HTは、蓄熱機構120とホットプレート130とを有している。蓄熱機構120は基板Sの搬送領域に対してチャンバCBの天井側に配置されており、ホットプレート130は基板Sの搬送領域に対してチャンバCBの底部側に配置されている。ホットプレート130には、第1実施形態の加熱部HTと同様に不図示の加熱機構が設けられている。
【0103】
蓄熱機構120は、チャンバCB内の気体の熱を蓄熱できるようになっている。また、蓄熱機構120には、分岐配管125を流通する気体が供給されるようになっている。このため、蓄熱機構120では、供給された気体の熱がチャンバCB内の温度とほぼ同一の温度に温調されるようになっている。蓄熱機構120は、−Z側に開口部を有しており、分岐配管125からの気体が開口部を介してチャンバCB内に流入されるようになっている。
【0104】
上記構成においては、スリットノズルNZと加熱部HTとが異なる空間に設けられていることになるため、塗布ステップ及び加熱ステップは1つのチャンバCBの異なる空間で行われることになる。この場合、制御装置CONTは、まずスリットノズルNZが配置された空間において基板Sに塗布ステップを行わせる。塗布ステップが完了した後、制御装置CONTは、蓋部111aを開状態として基板Sを加熱部HTが配置された空間に搬送させる。
【0105】
基板Sの搬送後、制御装置CONTは、蓋部111aを閉状態として当該加熱部HTが配置された空間を減圧させる。減圧後、制御装置CONTは、加熱部HTを作動させて基板S上の液状体に加熱ステップを行う。加熱ステップでは、基板Sは蓄熱機構120とホットプレート130とによって表裏の両側から加熱されることになる。加熱ステップにおいて、当該空間から排気された気体(例えば不活性ガス)は分岐配管125を介して蓄熱機構120に供給される。蓄熱機構120に供給された気体は、蓄熱された熱によって加熱され、空間内とほぼ同一の温度に温調されることになる(気体加熱ステップ)。この気体は、蓄熱機構120の開口部から空間内に供給され、再利用されることとなる。なお、気体加熱ステップでは、分岐配管125に設けられた加熱機構121を用いて気体を加熱しても構わない。
【0106】
加熱ステップの終了後、制御装置CONTは、加熱部HTの動作を停止させると共にチャンバCB内(空間内)の圧力を大気圧に戻させる。その後、制御装置CONTは、蓋部111aを閉状態としたまま蓋部12aを開状態とし、基板Sを+X方向に搬送させて当該基板Sを搬出させる。
【0107】
また、上記実施形態では、塗布動作を行う際、スリットノズルNZを固定させた状態で基板Sを移動させることで液状体Qを基板S上に塗布する例を挙げて説明したが、これに限られることは無く、基板Sを固定させた状態でスリットノズルNZを移動させることで液状体Qを基板S上に塗布するようにしても構わない。また、基板SとスリットノズルNZとを両方移動させるようにしても構わない。
【0108】
また、上記実施形態では、基板S上に易酸化性の金属を含む塗布膜を形成する例を挙げて説明したが、これに限られることは無い。例えば、図12に示すように、帯状の連続したフィルム上に液状体Qを塗布するようにしても構わない。図12は、塗布装置CTRの他の構成を示す図である。図12に示すように、塗布装置CTRは、基板搬入チャンバSLC、基板処理チャンバSPC、基板搬出チャンバSUC及びこれらを制御する制御装置CONTを有している。
【0109】
基板搬入チャンバSLCは、帯状に形成されたフィルム基板Fを収容する収容室RMAを有している。収容室RMAには、フィルム基板Fが巻きつけられる軸部SF1が設けられている。軸部SF1は、Y方向に延在するように配置されており、θY方向に回転可能に設けられている。収容室RMAは、不活性ガス供給部133及び排気部134に接続されている。収容室RMAには、フィルム基板Fを搬送する基板搬送機構FALが設けられている。基板搬送機構FALとしては、例えばローラー機構などを用いることができる。
【0110】
基板処理チャンバSPCは、収容室RMBを有している。収容室RMBは、開口部OP1を介して基板搬入チャンバSLCの収容室RMAに接続されている。収容室RMBには、塗布部CT、基板搬送部FAP、加熱部HT、ノズル先端管理部MN、搬入側シャッタ部SH1及び搬出側シャッタ部SH2が設けられている。収容室RMBは、不活性ガス供給部133及び排気部134に接続されている。
【0111】
塗布部CTは、ノズルNZ及びノズル駆動機構NAを有している。ノズルNZは、例えば−Z側の端部が先細りに形成されている。ノズルNZは、−Z側の端部(先端)から液状体を吐出可能に設けられている。ノズル駆動機構NAは、必要に応じてノズルNZをX方向、Y方向及びZ方向などに駆動する。
【0112】
基板搬送部FAPは、ノズルNZの−Z側にフィルム基板Fを搬送するように構成されている。基板搬送部FAPは、複数のローラー部を有している。当該ローラー部の配置を組み合わせることにより、ノズルNZの−Z側を通過するようにフィルム基板Fの搬送経路が設定されている。
【0113】
加熱部HTは、フィルム基板FをZ方向に挟むように、当該フィルム基板Fの搬送経路の+Z側及び−Z側に1つずつ配置されている。加熱部HTとしては、例えば上記実施形態の構成と同一の加熱部HTが用いられる。加熱部HTをフィルム基板Fの+Z側及び−Z側に配置させることにより、乾燥工程及び加熱工程を効率的に行うことができるようになっている。
【0114】
ノズル先端管理部MNは、ノズルNZの先端をメンテナンスする。ノズル先端管理部MNは、例えばノズルNZの移動可能な範囲内に配置されており、ノズルNZの先端の洗浄を行う部分、ノズルNZの予備吐出を行う部分、ノズルNZの先端を乾燥させる部分、などが設けられている。
【0115】
搬入側シャッタ部SH1は、基板搬入チャンバSLCの収容室RMAと、基板処理チャンバSPCの収容室RMBとの間を開閉させる開閉機構である。搬入側シャッタ部SH1は、不図示の駆動機構などによってZ方向に移動可能に設けられている。図12には、搬入側シャッタ部SH1が開状態になっている様子が示されている。
【0116】
搬出側シャッタ部SH2は、収容室RMBと基板搬出チャンバSUCの収容室RMCとの間を開閉させる開閉機構である。搬出側シャッタ部SH2は、不図示の駆動機構などによってZ方向に移動可能に設けられている。図12には、搬出側シャッタ部SH2が開状態になっている様子が示されている。
【0117】
基板搬出チャンバSUCは、フィルム基板Fを収容する収容室RMCを有している。収容室RMCは、開口部OP2を介して基板処理チャンバSPCの収容室RMBに接続されている。収容室RMCには、フィルム基板Fを巻き取る軸部SF2が設けられている。軸部SF2は、Y方向に延在するように配置されており、θY方向に回転可能に設けられている。収容室RMCは、不活性ガス供給部133及び排気部134に接続されている。収容室RMCには、フィルム基板Fを搬送する基板搬送機構FAUが設けられている。基板搬送機構FAUとしては、例えばローラー機構などを用いることができる。
【0118】
次に、上記構成の塗布装置CTRの動作を説明する。
初期状態では、軸部SF1にフィルム基板Fが巻きつけられている。制御装置CONTは、搬入側シャッタ部SH1及び搬出側シャッタ部SH2を開いた状態とした後、不活性ガス供給部133による供給量及び排気部134による排気量を適宜調整し、収容室RMA、収容室RMB及び収容室RMCの環境を調整する。
【0119】
制御装置CONTは、その後、軸部SF1を+θY方向に回転させてフィルム基板Fを+X側へ搬送する。フィルム基板Fは開口部OP1を介して収容室RMAから収容室RMBへと搬送される。制御装置CONTは、収容室RMB内の基板搬送機構FAPを構成するローラー部を回転させることにより、フィルム基板Fを+X側へ搬送させる。
【0120】
フィルム基板FがノズルNZの−Z側へ搬送された場合には、制御装置CONTはノズルNZから液状体を一定時間フィルム基板Fへ向けて吐出させる。この動作により、フィルム基板Fの所定領域に液状体Qが塗布される。この動作を繰り返し行うことにより、ノズルNZの−Z側を連続的に通過するフィルム基板Fに対して所定領域毎に液状体Qの塗布膜を形成することができる。
【0121】
フィルム基板Fを搬送させることにより、液状体Qが塗布された部分が2つの加熱部HTに挟まれた空間に到達する。このとき、制御装置CONTは、2つの加熱部HTのうち少なくとも一方を作動させることにより、フィルム基板F上に塗布された液状体Qに対して乾燥処理あるいは加熱処理が施されることになる。
【0122】
制御装置CONTは、フィルム基板Fのうち乾燥処理あるいは加熱処理が終了した部分を、開口部OP2を介して基板搬出チャンバSUCの収容室RMCに搬出する。フィルム基板Fの先端が収容室RMCの軸部SF2に到達した場合、制御装置CONTは、軸部SF2を回転させ、当該軸部SF2にフィルム基板Fを巻き取らせる。全てのフィルム基板Fが軸部SF2に巻き取られた後、制御装置CONTは、搬入側シャッタ部SH1及び搬出側シャッタ部SH2を閉じた状態とする。
【0123】
搬入側シャッタ部SH1及び搬出側シャッタ部SH2が閉状態となった場合、収容室RMAと収容室RMBとの間、収容室RMBと収容室RMCとの間は、それぞれ遮断されることになる。このため、例えば収容室RMAに収容されるフィルム基板Fが全て基板処理チャンバSPCへ搬入された後、搬入側シャッタ部SH1を閉状態として軸部SF1を交換する。同様に、例えば収容室RMCにフィルム基板Fが全て巻き取られた後、搬出側シャッタ部SH2を閉状態として軸部SH2を交換する。以上のように、帯状の連続したフィルム上に液状体Qを塗布する場合であっても、本発明の適用は可能である。
【符号の説明】
【0124】
CTR…塗布装置 LL…ロードロック装置 CB1…第一チャンバ装置 CB2…第二チャンバ装置 RML、RM1、RM2…収容室 SAL、SA1、SA2…基板駆動機構 CT…塗布部 NZ…スリットノズル NZa…先端部分 Q…液状体 AF…親和性調整部 NA…ノズル駆動機構 R1…塗布空間 R2…塗布後移動空間 HT…加熱部 CONT…制御装置 21…ノズル開口部 S…基板
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗布装置及び塗布方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
Cu、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi、Ga、In、Ti、Znおよびこれらの組合せなどの金属と、S、Se、Te、およびこれらの組合せなどの元素カルコゲンとを含む半導体材料を用いたCIGS型太陽電池やCZTS型太陽電池は、高い変換効率を有する太陽電池として注目されている(例えば特許文献1〜特許文献3参照)。例えば、CIGS型太陽電池は、光吸収層(光電変換層)として上記、Cu、In、Ga、Seの4種類の半導体材料からなる膜を用いる構成になっている。
【0003】
CIGS型太陽電池やCZTS型太陽電池は、従来型の太陽電池に比べて光吸収層の厚さを薄くすることができるため、曲面への設置や運搬が容易となる。このため、高性能でフレキシブルな太陽電池として、広い分野への応用が期待されている。光吸収層を形成する手法として、従来、例えば蒸着法やスパッタリング法などを用いて形成する手法が知られていた(例えば、特許文献3〜特許文献5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−340482号公報
【特許文献2】特開2005−51224号公報
【特許文献3】特表2009−537997号公報
【特許文献4】特開平1−231313号公報
【特許文献5】特開平11−273783号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これに対して、本発明者は、光吸収層を形成する手法として、上記半導体材料を分散させた液状体をノズルによって基板上に吐出し、当該液状体の膜を基板上に塗布する手法を提案する。光吸収層を液状体の塗布によって形成する場合、基板上に形成される液状体の膜厚が均一になるように基板上に液状体をムラ無く塗布することが求められる。
【0006】
以上のような事情に鑑み、本発明は、基板上に液状体をムラ無く塗布することが可能な塗布装置及び塗布方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第一の態様は、先端部分に設けられた吐出部から易酸化性の金属を含む液状体を吐出するノズルを有する塗布部と、前記先端部分と前記基板とを対向させた状態で前記基板と前記ノズルとを相対移動させる相対駆動部とを備え、前記ノズルのうち少なくとも前記先端部分には、前記液状体との間の親和性が前記液状体同士の親和性よりも弱くなるように形成された親和性調整部が設けられている塗布装置である。
【0008】
本発明の第一の態様によれば、ノズルのうち少なくとも先端部分に、液状体との間の親和性が液状体同士の親和性よりも弱くなるように形成された親和性調整部が設けられているので、ノズルの先端部分から吐出された液状体が当該先端部分に付着するのを抑制することができる。これにより、液状体が基板に定着しやすくなるため、基板上に液状体をムラ無く塗布することが可能となる。
【0009】
上記の塗布装置において、好ましくは、前記親和性調整部は、前記ノズルのうち、前記先端部分と、前記先端部分に隣接する部分と、を含む部分に設けられている。
この場合、親和性調整部がノズルのうち先端部分と、当該先端部分に隣接する部分とを含む部分に設けられているため、液状体がノズルの先端部分から当該先端部分に隣接する部分へ伝ってしまうのを防ぐことができる。
【0010】
上記の塗布装置において、好ましくは、前記液状体は、ヒドラジンを含み、前記親和性調整部は、前記ヒドラジンとの間の親和性が前記ヒドラジン同士の親和性よりも弱くなるように形成されている。
【0011】
この場合、液状体がヒドラジンを含み、親和性調整部がヒドラジンとの間の親和性がヒドラジン同士の親和性よりも弱くなるように形成されているため、ノズルの先端部分から吐出されたヒドラジンを含む液状体が当該先端部分に付着するのを抑制することができる。これにより、ヒドラジンを含む液状体が基板に定着しやすくなるため、基板上に液状体をムラ無く塗布することが可能となる。
【0012】
上記の塗布装置において、好ましくは、前記親和性調整部は、前記ヒドラジンとの間の親和性が前記ヒドラジンと前記基板との間の親和性よりも弱くなるように形成されている。
この場合、ヒドラジンとの間の親和性がヒドラジンと基板との間の親和性よりも弱くなるように親和性調整部が形成されているため、ヒドラジンを含む液状体が先端部分の親和性調整部よりも基板に定着しやすくなる。これにより、基板上に液状体をムラ無く塗布することが可能となる。
【0013】
上記の塗布装置において、好ましくは、前記親和性調整部は、チタン及びチタン合金のうち少なくとも一方を用いて形成されている。
この場合、親和性調整部としてチタン及びチタン合金のうち少なくとも一方を用いて形成されているため、液状体が基板に定着しやすくなる。これにより、基板上に液状体をムラ無く塗布することが可能となる。
【0014】
上記の塗布装置において、好ましくは、前記基板は、モリブデンを用いて形成されている。
この場合、モリブデンを用いて形成された基板に液状体が定着しやすくなるため、基板上に液状体をムラ無く塗布することが可能となる。
【0015】
上記の塗布装置において、好ましくは、前記金属は、銅、インジウム、ガリウム及びセレンのうち少なくとも1つを含む。
この場合、金属として、銅、インジウム、ガリウム及びセレンのうち少なくとも1つを含む液状体が基板に定着しやすくなるため、基板上に液状体をムラ無く塗布することが可能となる。
【0016】
上記の塗布装置において、好ましくは、前記塗布部によって前記液状体の塗布される塗布空間及び前記液状体の塗布された前記基板の塗布後移動空間のうち少なくとも一方の空間を囲むチャンバを更に備える。
この場合、塗布部によって液状体の塗布される塗布空間及び液状体の塗布された基板の塗布後移動空間のうち少なくとも一方の空間を囲むチャンバにより、液状体の配置される空間が囲まれるため、液状体の劣化を防ぐことができる。
【0017】
上記の塗布装置において、好ましくは、前記チャンバで囲まれた前記空間に不活性ガスを供給する不活性ガス供給部を更に備える。
この場合、チャンバで囲まれた空間に不活性ガスが供給されるため、当該チャンバに囲まれた空間において液状体の劣化をより確実に防ぐことができる。
【0018】
上記の塗布装置において、好ましくは、前記塗布部は、前記先端部分に対向する吐出領域に前記液状体を吐出するように形成されており、前記相対駆動部は、前記吐出領域を通過するように前記基板を搬送する基板搬送部を有する。
この場合、塗布部が先端部分に対向する吐出領域に液状体を吐出するように形成されており、相対駆動部が吐出領域を通過するように基板を搬送する基板搬送部を有するため、例えばノズルを駆動させずに基板を搬送することにより、基板上に液状体をムラ無く塗布することが可能となる。
【0019】
上記の塗布装置において、好ましくは、前記塗布部は、前記先端部分に対向する吐出領域に前記液状体を吐出するように形成されており、前記相対駆動部は、前記吐出領域が前記基板上を走査するように前記ノズルを駆動するノズル駆動部を有する。
この場合、塗布部が先端部分に対向する吐出領域に液状体を吐出するように形成されており、相対駆動部が吐出領域が基板上を走査するようにノズルを駆動するノズル駆動部を有するため、例えば基板を駆動させずにノズルを駆動することにより、基板上に液状体をムラ無く塗布することが可能となる。また、相対移動部が基板搬送部及びノズル駆動部の両方を備える構成とすることもできる。この場合、相対移動としては、例えば基板を移動させる、ノズルを移動させる、基板及びノズルの両方を移動させる、といった態様を取りうる。
【0020】
本発明の第二の態様は、易酸化性の金属を含む液状体を基板に塗布する塗布方法であって、前記液状体との間の親和性が前記液状体同士の親和性よりも弱くなるように形成された親和性調整部が設けられる先端部分に形成された吐出部から前記液状体を吐出するノズルを有する塗布部の当該先端部分を前記基板に対向させるステップと、前記先端部分と前記基板との間で前記液状体が挟持されるように、前記吐出部から前記液状体を吐出するステップと、前記先端部分と前記基板との間で前記液状体を挟持した状態で、前記吐出部から前記液状体を吐出しつつ前記先端部分と前記基板とを相対移動させるステップとを含む塗布方法である。
【0021】
本発明の第二の態様によれば、液状体との間の親和性が液状体同士の親和性よりも弱くなるように形成された親和性調整部が先端部分に設けられており、当該先端部分に液状体の吐出部が形成されたノズルの当該先端部分を基板に対向させ、先端部分と基板との間で液状体が挟持されるように吐出部から液状体を吐出することで、液状体は先端部分に付着しにくい状態になると共に、液状体同士で接触しやすい状態となる。この状態で吐出部から液状体を吐出しつつ基板を移動させると、基板上に配置された液状体が基板上で互いに接触しようとするため、液状体は先端部分からノズル表面を伝って流れてしまうことなく、基板に定着しやすくなる。これにより、基板上に液状体をムラ無く塗布することが可能となる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、基板上に液状体をムラ無く塗布することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施の形態に係る塗布装置の構成を示す図。
【図2】(a)(b)本実施形態に係る塗布装置の塗布部の構成を示す図。
【図3】本実施形態に係る塗布装置の動作を示す図。
【図4】本実施形態に係る塗布装置の動作を示す図。
【図5】本実施形態に係る塗布装置の動作を示す図。
【図6】本実施形態に係る塗布装置の動作を示す図。
【図7】本実施形態に係る塗布装置の動作を示す図。
【図8】本実施形態に係る塗布装置の動作を示す図。
【図9】本実施形態に係る塗布装置の他の構成を示す図。
【図10】本実施形態に係る塗布装置の他の構成を示す図。
【図11】本実施形態に係る塗布装置の他の構成を示す図。
【図12】本実施形態に係る塗布装置の他の構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。
以下の各図において、本実施形態に係る塗布装置の構成を説明するにあたり、表記の簡単のため、XYZ座標系を用いて図中の方向を説明する。当該XYZ座標系においては、図中左右方向をX方向と表記し、平面視でX方向に直交する方向をY方向と表記する。X方向軸及びY方向軸を含む平面に垂直な方向はZ方向と表記する。X方向、Y方向及びZ方向のそれぞれは、図中の矢印の方向が+方向であり、矢印の方向とは反対の方向が−方向であるものとして説明する。
【0025】
[塗布装置]
図1は、本実施形態に係る塗布装置CTRの構成を示す概略図である。
図1に示すように、塗布装置CTRは、ロードロック装置LL、第一チャンバ装置CB1、第二チャンバ装置CB2を備えている。ロードロック装置LL、第一チャンバ装置CB1及び第二チャンバ装置CB2は、例えばX方向に直列に接続されている。塗布装置CTRは、基板S上に液状体を塗布する装置である。本実施形態では、基板Sとして、例えばモリブデンなどの金属を用いて形成された板状部材が採用されている。
【0026】
また、本実施形態では、液状体として、例えばヒドラジンなどの溶媒に、銅(Cu)、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、セレン(Se)といった易酸化性の金属材料を含有する液状組成物を用いている。この液状組成物は、CIGS型太陽電池やCZTS型太陽電池の光吸収層(光電変換層)を構成する金属材料を含んでいる。勿論、液状体として、他の易酸化性の金属を分散させた液状体を用いる構成としても構わない。
【0027】
ロードロック装置LLと第一チャンバ装置CB1とは、第一接続室JC1を介して接続されている。第一接続室JC1には、基板Sをロードロック装置LLから第一チャンバ装置CB1へと搬送する第一搬送装置TJ1が配置されている。第一チャンバ装置CB1と第二チャンバ装置CB2とは、第二接続室JC2を介して接続されている。第二接続室JC2には、基板Sを第一チャンバ装置CB1と第二チャンバ装置CB2との間で搬送する第二搬送装置TJ2が配置されている。
【0028】
本実施形態に係る塗布装置CTRは、基板Sがロードロック装置LLから塗布装置CTRに搬入され、第一チャンバ装置CB1を経て第二チャンバ装置CB2から搬出されるようになっている。したがって、塗布装置CTRにおいては、原則として+X方向が基板Sの移動方向となる。
【0029】
(ロードロック装置)
ロードロック装置LLは、収容室RML、基板搬入口ENL及び基板搬出口EXLを有している。基板搬入口ENLは、収容室RMLの−X側の壁部に形成されており、例えば外部に接続されている。基板搬出口EXLは、収容室RMLの+X側の壁部に形成されており、第一接続室JC1に接続されている。基板搬入口ENL及び基板搬出口EXLは、基板Sが通過可能な寸法に形成されている。
【0030】
収容室RMLには、基板Sを載置する基板載置部SPLと、基板Sを駆動する基板駆動機構SALとが設けられている。また、収容室RMLには、例えばポンプ機構などの減圧機構DCLが接続されている。基板駆動機構SALは、収容室RML内で基板Sを搬送する部分である。
【0031】
基板駆動機構SALは、複数のローラー部材50を有している。ローラー部材50は、基板搬入口ENLから基板搬出口EXLにかけてX方向に配列されている。各ローラー部材50は、Y軸方向を中心軸方向としてY軸周りに回転可能に設けられている。複数のローラー部材50は、それぞれ等しい径となるように形成されており、Z方向上の位置が等しくなるように配置されている。複数のローラー部材50は、+Z側の上端において基板Sを支持するようになっている。
【0032】
各ローラー部材50は、例えば不図示のローラー回転制御部によって回転が制御されるようになっている。基板駆動機構SALとしては、図1に示すように例えばコロ搬送機構を用いても構わないし、基板を浮上させて搬送する不図示の浮上搬送機構を用いても構わない。
【0033】
基板搬入口ENL及び基板搬出口EXLには、それぞれシャッタ部材SHLが設けられている。シャッタ部材SHLを例えばZ方向にスライドさせることにより、基板搬入口ENL及び基板搬出口EXLが開閉するように構成されている。シャッタ部材SHLを閉じることにより、収容室RMLが密閉されるようになっている。
【0034】
(第一チャンバ装置)
第一チャンバ装置CB1は、収容室RM1、基板搬入口EN1及び基板搬出口EX1を有している。収容室RM1は、内部に基板Sを収容可能に設けられている。基板搬入口EN1及び基板搬出口EX1は、収容室RM1に形成された開口部である。基板搬入口EN1は、例えば収容室RM1の−X側端部に形成されており、第一接続室JC1に接続されている。基板搬出口EX1は、例えば収容室RM1の+X側端部に形成されており、第二接続室JC2に接続されている。基板搬入口EN1及び基板搬出口EX1は、基板Sが通過可能な寸法に形成されている。
【0035】
基板搬入口EN1及び基板搬出口EX1には、それぞれシャッタ部材SH1が設けられている。シャッタ部材SH1を例えばZ方向にスライドさせることにより、基板搬入口EN1及び基板搬出口EX1が開閉するように構成されている。シャッタ部材SH1を閉じることにより、収容室RM1が密閉されるようになっている。
【0036】
収容室RM1には、基板駆動機構SA1、塗布部CT、ダミー吐出機構DDが設けられている。また、収容室RM1には、例えば当該収容室RM1の環境を調整する環境調整部ACが接続されている。基板駆動機構SA1は、収容室RM1内で基板Sを搬送する部分である。
【0037】
基板駆動機構SA1は、複数のローラー部材51を有している。ローラー部材51は、基板搬入口EN1から基板搬出口EX1にかけてX方向に配列されている。各ローラー部材51は、不図示のローラー回転制御部によって回転が制御されるようになっている。基板駆動機構SA1としては、上記の基板駆動機構SALと同様に、例えばコロ搬送機構を用いても構わないし、基板を浮上させて搬送する浮上搬送機構を用いても構わない。
【0038】
塗布部CTは、第一チャンバ装置CB1の収容室RM1に収容されている。塗布部CTは、長尺状に形成されたスリットノズルNZを有している。スリットノズルNZは、収容室RM1の例えば基板搬入口EN1の近傍に設けられている。スリットノズルNZは、例えばY方向に長手になるように形成されている。スリットノズルNZは、例えば収容室RM1のX方向のほぼ中央部に配置されている。スリットノズルNZの+X側及び−X側は、それぞれ基板Sが配置可能なスペースが確保されている。
【0039】
図2は、スリットノズルNZの構成を示す図である。図2(a)は、スリットノズルNZを+Z方向に見たときの構成を示している。図2(b)は、スリットノズルNZを+Y方向に見たときの構成を示している。
【0040】
図2(a)及び図2(b)に示すように、スリットノズルNZは、例えばY方向が長手の長尺状に構成されている。スリットノズルNZのうち−Z方向に向けられた先端部分NZaには、当該スリットノズルNZの長手方向に沿って形成されたスリット状のノズル開口部21が設けられている。スリットノズルNZは、Z方向のほぼ中央部から当該先端部分NZaにかけてX方向の寸法が当該X方向の中央部へ向けて徐々に小さくなるように先細りに形成されている。
【0041】
スリットノズルNZの先端部分NZaのほぼ中央部には、ノズル開口部21が形成されている。ノズル開口部21は、例えばスリットノズルNZの長手方向に沿ってY方向に形成されている。図2(a)に示すように、ノズル開口部21は、例えば長手方向が基板SのY方向の寸法とほぼ同一となるように形成されている。
【0042】
スリットノズルNZは、ノズル開口部21から、例えば上記のCu、In、Ga、Seの4種類の金属が所定の組成比で混合された液状体Q(図3参照)を吐出する。スリットノズルNZは、接続配管(不図示)などを介して、それぞれ液状体の供給源(不図示)に接続されている。スリットノズルNZは、内部に液状体を保持する保持部を有している。スリットノズルNZは、保持部に保持された液状体の温度を調整する温調機構(不図示)を有している。
【0043】
スリットノズルNZは、例えばチタン又はチタン合金を含んだ材料を用いて形成されている。このような材料として、例えば、以下の表1に示す(1)〜(8)に示す材料のうち少なくとも1種類の材料が用いられる。勿論、(1)〜(8)の材料を複数組み合わせても構わない。
【0044】
【表1】
【0045】
上記(1)〜(8)に示す材料は、いずれも上記組成の液状体Qとの間の親和性が液状体Q同士の親和性よりも弱い、という性質を有している。より具体的には、上記(1)〜(8)に示す材料は、いずれも液状体Qに含まれるヒドラジンとの間の親和性がヒドラジン同士の親和性よりも弱い、という性質を有している。このため、上記(1)〜(8)に示す材料を用いて形成されたスリットノズルNZには、液状体Qが付着しにくくなる。
【0046】
本実施形態では、例えばスリットノズルNZの全体が、上記材料(1)〜(8)の少なくとも1種類を用いて形成されている。このため、スリットノズルNZの表面全体において、液状体Qとの間の親和性が液状体Q同士の親和性よりも弱い部分(親和性調整部)AFが形成されることになる。
【0047】
このスリットノズルNZの表面全体には、例えば先端部分NZaや、当該先端部分NZaに隣接する隣接部分が含まれている。当該隣接部分としては、例えば図2(a)及び図2(b)に示すように、スリットノズルNZの先端部分NZaの+X側端辺及び−X側端辺にそれぞれ接続された傾斜部分NZb及びNZcが挙げられる。また、隣接部分として、当該傾斜部分NZb及びNZcの+Z側にそれぞれ接続された壁部分NZd及びNZeを含めても構わない。
【0048】
このように、本実施形態のスリットノズルNZは、上記材料(1)〜(8)の少なくとも1種類を用いて形成されていることにより、親和性調整部AF(例えば先端部分NZa、傾斜部分NZb及びNZc、壁部分NZd及びNZeなど)を含む表面全体において、液状体Qが付着しにくくなるように構成されている。
【0049】
また、上記(1)〜(8)に示す材料とヒドラジンとの間の親和性は、モリブデンとヒドラジンとの間の親和性よりも弱い、という性質がある。本実施形態では、基板Sがモリブデンを用いて形成されているため、上記(1)〜(8)に示す材料とヒドラジンとの間の親和性は、当該基板Sとヒドラジンとの間の親和性よりも弱い、という性質を有することになる。
【0050】
換言すると、液状体Qは、上記(1)〜(8)に示す材料を用いて形成されたスリットノズルNZに比べて、モリブデンを用いて形成された基板Sに対して、より付着しやすくなる。このように、スリットノズルNZは、ノズル開口部21から吐出された液状体Qが、スリットノズルNZに付着しにくくなり、かつ、基板Sに対して付着しやすくなるように形成されている。
【0051】
スリットノズルNZには、ノズル駆動機構NA(図1参照)が設けられている。ノズル駆動機構NAは、スリットノズルNZをX方向、Y方向及びZ方向に駆動する構成を有している。例えば、ノズル駆動機構NAは、収容室RM1の待機位置と塗布位置(図1に示す位置)との間でスリットノズルNZを移動可能な構成を有している。
【0052】
ダミー吐出機構DDは、スリットノズルNZの上記待機位置に設けられている。ダミー吐出機構DDは、例えば液状体をダミー吐出する。ダミー吐出機構には、例えば液状体の気泡を検出する不図示の気泡センサが設けられている。
【0053】
収容室RM1のうち、スリットノズルNZの−Z側は、基板Sに液状体の塗布が行われる塗布空間R1となる。収容室RM1のうち、スリットノズルNZの+X側の空間は、基板Sの塗布後移動空間R2の一部となる。
【0054】
(第二チャンバ装置)
図1に戻って、第二チャンバ装置CB2は、収容室RM2、基板搬入口EN2及び基板搬出口EX2を有している。収容室RM2は、内部に基板Sを収容可能に設けられている。なお、収容室RM2は、基板Sの塗布後移動空間R2の一部となる。基板搬入口EN2及び基板搬出口EX2は、収容室RM2に形成された開口部である。基板搬入口EN2は、例えば収容室RM2の−X側端部に形成されており、第一接続室JC2に接続されている。基板搬出口EX2は、例えば収容室RM2の+X側端部に形成されており、外部に接続されている。基板搬入口EN2及び基板搬出口EX2は、基板Sが通過可能な寸法に形成されている。
【0055】
基板搬入口EN2及び基板搬出口EX2には、それぞれシャッタ部材SH2が設けられている。シャッタ部材SH2を例えばZ方向にスライドさせることにより、基板搬入口EN2及び基板搬出口EX2が開閉するように構成されている。シャッタ部材SH2を閉じることにより、収容室RM2が密閉されるようになっている。
【0056】
収容室RM2には、基板駆動機構SA2、加熱部HTが設けられている。また、収容室RM2には、例えば当該収容室RM2の環境を調整する環境調整部ACが接続されている。基板駆動機構SA2は、基板駆動機構SAL、SA1と同様、収容室RM2内で基板Sを搬送する部分である。
【0057】
基板駆動機構SA2は、複数のローラー部材52を有している。ローラー部材52は、基板搬入口EN2から基板搬出口EX2にかけてX方向に配列されている。各ローラー部材52は、不図示のローラー回転制御部によって回転が制御されるようになっている。基板駆動機構SA2としては、上記の基板駆動機構SAL、SA1と同様に、例えばコロ搬送機構を用いても構わないし、基板を浮上させて搬送する浮上搬送機構を用いても構わない。
【0058】
加熱部HTは、基板S上に塗布された液状体を加熱する部分である。加熱部HTは、内部に赤外線装置やホットプレート、オーブン機構などの加熱機構を有している。加熱部HTでは、当該加熱機構を用いることにより、例えば液状体の乾燥や、液状体の焼成などが行われるようになっている。
【0059】
(環境調整部)
環境調整部ACは、酸素濃度センサ31、圧力センサ32、不活性ガス供給部33、排気部34を有している。
酸素濃度センサ31及び圧力センサ32は、第一チャンバ装置CB1の収容室RM1及び第二チャンバ装置CB2の収容室RM2にそれぞれ1つずつ設けられている。酸素濃度センサ31は、収容室RM1及び収容室RM2の酸素濃度を検出し、検出結果を制御装置CONTに送信する。圧力センサ32は、収容室RM1及び収容室RM2の圧力を検出し、検出結果を制御装置CONTに送信する。図1においては、酸素濃度センサ31及び圧力センサ32は、収容室RM1及び収容室RM2の天井部分に取り付けられた構成が示されているが、他の部分に設けられている構成であっても構わない。
【0060】
不活性ガス供給部33は、収容室RM1及び収容室RM2内に例えば窒素ガスやアルゴンガス、ヘリウムガスなどの不活性ガスを供給する。不活性ガス供給部33は、ガス供給源33a、配管33b及び供給量調整部33cを有している。ガス供給源33aは、例えばガスボンベなどを用いることができる。
【0061】
配管33bは、一端がガス供給源33aに接続されており、他端が収容室RM1及び収容室RM2に分岐されて接続されている。配管33bのうち収容室RM1及び収容室RM2に接続された端部が、それぞれ収容室RM1及び収容室RM2における不活性ガス供給口となる。当該不活性ガス供給口は、例えば収容室RM1の−X側の壁部であって天井付近に配置されている。また、当該不活性ガス供給口は、例えば収容室RM2の+X側の壁部であって天井付近に配置されている。
【0062】
供給量調整部33cは、収容室RM1及び収容室RM2に供給する不活性ガスの供給量を調整する部分である。供給量調整部33cとしては、例えば電磁弁や手動で開閉させるバルブなどを用いることができる。供給量調整部33cは、例えば配管33bに設けられている。供給量調整部33cについては、配管33bに配置する構成の他、例えばガス供給源33aに直接設置する構成としても構わない。
【0063】
排気部34は、収容室RM1及び収容室RM2の気体を外部に排出する。また、排気部34は、収容室RM1及び収容室RM2の気体を排気して当該収容室RM1及び収容室RM2を減圧させる場合にも用いられる。排気部34は、排気駆動源34a、配管34b、配管34c及び除去部材34dを有している。排気駆動源34aは、配管34bを介して収容室RM1及び収容室RM2の内部にそれぞれ分岐されて接続されている。排気駆動源34aとしては、例えばポンプなどが用いられている。配管34bは、収容室RM1及び収容室RM2の内部に設けられる端部に排気口を有している。この排気口は、例えば収容室RM1及び収容室RM2のそれぞれの底部(−Z側の面)に配置されている。
【0064】
このように、不活性ガス供給口が収容室RM1及び収容室RM2の+Z側に配置され、排気口が収容室RM1及び収容室RM2の−Z側に配置されていることにより、収容室RM1及び収容室RM2において気体が−Z方向に流通するようになっている。このため、収容室RM1及び収容室RM2では、それぞれ気体の巻き上げの発生が抑えられた状態になっている。
【0065】
配管34cは、一端が排気駆動源34aに接続されており、他端が不活性ガス供給部33の配管33bに接続されている。配管34cは、排気駆動源34aによって排気された収容室RM1及び収容室RM2の気体を供給経路に循環させる循環経路となる。このように、排気部34は、収容室RM1及び収容室RM2の気体を循環させる循環機構を兼ねている。配管34cの接続先としては、不活性ガス供給部33の配管33bに限られず、例えば直接収容室RM1及び収容室RM2内にそれぞれ接続されている構成であっても構わない。配管34cには、例えば除去部材34dの上流側及び下流側にそれぞれバルブが設けられている。
【0066】
除去部材34dは、配管34c内に設けられている。除去部材34dとしては、例えば配管34c内を流通する気体のうち酸素成分及び水分を吸着させる吸着剤が用いられている。このため、循環させる気体を清浄化させることができるようになっている。除去部材34dは、配管34c内の一箇所に配置させる構成であっても構わないし、配管34cの全体に亘って配置された構成であっても構わない。
【0067】
(制御装置)
制御装置CONTは、塗布装置CTRを統括的に制御する部分である。具体的には、制御装置CONTは、ロードロック装置LL、第一チャンバ装置CB1、第二チャンバ装置CB2及び環境調整部ACのそれぞれの動作を制御する。例えば、シャッタ部材SHL、SH1及びSH2の開閉動作、基板駆動機構SAL、SA1及びSA2の動作、塗布部CTによる塗布動作、加熱部HTによる加熱動作、環境調整部ACによる調整動作などを制御する。
【0068】
調整動作の一例として、制御装置CONTは、酸素濃度センサ31及び圧力センサ32による検出結果に基づいて、不活性ガス供給部33の供給量調整部33cの開度を調整する。制御装置CONTは、例えば処理時間の計測等に用いる不図示のタイマーなどを有している。
【0069】
[塗布動作]
次に、本実施形態に係る塗布動作を説明する。本実施形態では、上記のように構成された塗布装置CTRを用いて基板S上に塗布膜を形成する。塗布装置CTRの各部で行われる動作は、制御装置CONTによって制御される。
【0070】
制御装置CONTは、塗布装置CTRに設けられるシャッタ部材SHL、SH1及びSH2を閉じた状態にしておく。この状態で、外部から塗布装置CTRに基板Sが搬送されてきたら、制御装置CONTは、ロードロック装置LLの基板搬入口ENLに設けられるシャッタ部材SHLを開いた状態として、当該基板搬入口ENLから基板Sを収容室RMLに搬入させる。
【0071】
図3に示すように、基板Sを収容室RMLに搬入させた後、制御装置CONTは、基板搬入口ENLのシャッタ部材SHLを閉じた状態とし、収容室RMLを密閉状態とする。制御装置CONTは、収容室RMLを密閉状態とした後、減圧機構DCLを用いて収容室RMLを減圧状態とする。
【0072】
制御装置CONTは、第一チャンバ装置CB1の収容室RM1及び第二チャンバ装置CB2の収容室RM2が密閉状態になっていることを確認した後、当該収容室RM1及びRM2の雰囲気を不活性ガス雰囲気に調整させる。具体的には、不活性ガス供給部33を用いて収容室RM1及び収容室RM2に不活性ガスを供給させる。この場合、制御装置CONTは、適宜排気部34を作動させることによって収容室RM1及びRM2の圧力を調整させるようにしても構わない。
【0073】
加えて、制御装置CONTは、スリットノズルNZの保持部に液状体を保持させる。制御装置CONTは、スリットノズルNZ内の温調機構を用いて、保持部に保持された液状体の温度を調整させる。このように、制御装置CONTは、基板Sに液状体を吐出させる状態を整えておく。
【0074】
塗布装置CTRの状態が整ったら、制御装置CONTは、図4に示すように、ロードロック装置LLの基板搬出口EXL及び第一チャンバ装置CB1の基板搬入口EN1を開いた状態とし、ロードロック装置LLから第一接続室JC1を介して第一チャンバ装置CB1の収容室RM1に基板Sを搬入させる。
【0075】
基板Sの搬入後、制御装置CONTは、基板駆動機構SA1のローラー部材51を回転させ、基板Sを+X方向に移動させる。基板Sの+X側の端辺がZ方向視でスリットノズルNZのノズル開口部21に重なる位置に到達したら、図5に示すように、制御装置CONTはスリットノズルNZを用いて基板Sに液状体Qを塗布させる。
【0076】
この場合、制御装置CONTは、スリットノズルNZと基板Sとを相対移動させて(本実施形態では基板Sを+X方向に移動させて)スリットノズルNZの先端部分NZaを基板Sに対向させる。先端部分NZaと基板Sとを対向させた後、制御装置CONTは、図5に示すように、先端部分NZaと基板との間で液状体が挟持されるようにノズル開口部21から液状体Qを吐出させる。
【0077】
ここで、先端部分NZaにおける液状体Qとの親和性が、液状体Q同士の親和性よりも強い場合、液状体Qは、液状体Q同士で接触するよりも先端部分NZaに接触しようとする。このため、液状体Qが先端部分NZaに付着した状態となってしまい、基板Sに対する定着性が低下してしまう。また、先端部分NZaのみならず、隣接部分である傾斜部分NZb、NZcにおける液状体Qとの親和性が、液状体Q同士の親和性よりも強い場合、液状体Qは先端部分NZaから傾斜部分NZb、NZcへと伝わってしまい、さらに基板Sへの定着性が低下してしまう。更に、先端部分NZa(及び隣接部分)における液状体Qとの親和性が液状体Qと基板Sとの親和性よりも強い場合、液状体Qは基板Sよりも先端部分NZa(及び隣接部分)に付着しようとするため、この場合も基板Sへの定着性が低下してしまう。
【0078】
これに対して、本実施形態においては、スリットノズルNZは、全体が上記の表1の(1)〜(8)に示す材料のうち少なくとも1種類を用いて形成されているため、例えばスリットノズルNZの先端部分NZa(親和性調整部AF)における液状体Qとの親和性は、液状体Q同士の親和性よりも弱くなっている。また、当該先端部分NZaにおける液状体Qとの親和性は、基板Sと液状体Qとの間の親和性よりも弱くなっている。
【0079】
したがって、上記のようにスリットノズルNZの先端部分NZaと基板Sとで液状体Qを挟むことにより、液状体Qが先端部分NZaに付着しにくい状態になると共に、液状体Q同士で接触しやすい状態となる。また、液状体Qは先端部分NZaよりも基板Sに付着しやすい状態になる。
【0080】
制御装置CONTは、このような状態において、ノズル開口部21から液状体Qを吐出させつつ基板Sを移動させる。この動作により、液状体Qは先端部分NZaから傾斜部分NZbや傾斜部分NZcなどに流れてしまうことなく、基板S上に配置されて定着することになる。
【0081】
また、基板Sに配置された液状体Q同士の親和性により、基板Sがノズル開口部21から遠ざかると、基板S上に塗布された液状体Qが先端部分NZaの液状体Qを引っ張るように作用する。このような結果、図6に示すように、基板Sの所定領域上に当該液状体の塗布膜Lがほぼ均一の膜厚で形成される。塗布膜Lの形成後、制御装置CONTは、ノズル開口部21からの液状体の吐出動作を停止させる。
【0082】
吐出動作を停止後、制御装置CONTは、塗布膜Lが形成された基板Sを第二チャンバ装置CB2の収容室RM2に収容させる。具体的には、図7に示すように、制御装置CONTは、収容室RM1の基板搬出口EX1及び収容室RM2の基板搬入口EN2を開いた状態とし、基板搬出口EX1、第二接続室JC2及び基板搬入口EN2を介して当該基板Sを収容室RM2へと搬入させる。
【0083】
制御装置CONTは、基板Sを収容室RM2に搬入した後、図8に示すように、当該基板Sが加熱部HTの−Z側に位置するように移動させ、その後排出部34を作動させることにより収容室RM2を減圧させる。収容室RM2を減圧させた後、制御装置CONTは、加熱部HTを作動させて基板S上の塗布膜Lを加熱させる。減圧下で液状体を加熱することにより、塗布膜Lは短時間で効率的に乾燥する。
【0084】
なお、この乾燥動作においては、収容室RM2を減圧させない状態で加熱処理だけで行っても構わない。また、この乾燥動作においては、加熱させない状態で収容室RM2の減圧処理のみで行っても構わない。さらに減圧処理を行った後に加熱処理を行っても構わない。
【0085】
加熱ステップでの加熱温度は、例えば300℃以下となるようにする。加熱温度を300℃以下とすることにより、基板Sの構成材料が樹脂材料であっても、基板Sに変形させること無く加熱処理が行われることとなる。このため、基板Sの材料の選択の幅が広がることとなる。
【0086】
制御装置CONTは、例えばローラー部材52の回転動作を停止させ、基板Sの移動を停止させた状態で加熱部HTを作動させるようにする。例えば基板S上の塗布膜Lが乾燥するまでの時間や加熱温度などを予め記憶させておくようにし、制御装置CONTが当該記憶させた値を用いて加熱時間及び加熱温度などを調整することで塗布膜Lの加熱動作を行わせる。
【0087】
また、ローラー部材52の回転動作をさせたまま加熱部HT下を基板Sが通過してもよい。その際、加熱部HTはそのXマイナス方向からXプラス方向へと温度勾配を持つようにしてもよい。その場合基板Sは徐々に加熱され、所望の温度で設定時間加熱処理された後、徐々に除冷されるため、基板Sや基板上に塗布された易酸化性の金属を含有する膜にストレスを与えずに乾燥させることができる。
【0088】
上記易酸化性の金属を含有する液状体Qを基板S上に塗布して光吸収層の一部を形成する場合、例えばCuやInなどは酸化しやすい性質を有する(易酸化性)金属であるため、収容室RM1、収容室RM2における酸素濃度が高いと、易酸化性の金属が酸化してしまう。これらの金属が酸化してしまうと、基板S上に形成される塗布膜の膜質が低下してしまう虞がある。
【0089】
そこで、制御装置CONTは、環境調整部ACを用いて収容室RM1及び収容室RM2が不活性ガス雰囲気下となるように調整させるようにしている。具体的には、制御装置CONTは、不活性ガス供給部33を用いることにより、収容室RM1及び収容室RM2に窒素ガスやアルゴンガスなどの不活性ガスを供給する。
【0090】
供給ステップでは、制御装置CONTは、まず酸素濃度センサ31によって収容室RM1及び収容室RM2の酸素濃度を検出させる。制御装置CONTは、検出ステップでの検出結果に基づき、供給量調整部33cを用いて不活性ガスの供給量を調整させつつ、収容室RM1及び収容室RM2に不活性ガスを供給させる。例えば、検出された酸素濃度が予め設定された閾値を超えた場合に収容室RM1及び収容室RM2に不活性ガスを供給させることができる。当該閾値については、予め実験やシミュレーションなどによって求めておき、制御装置CONTに記憶させておくことができる。また、例えば、塗布動作及び乾燥動作の間、常時一定量の不活性ガスを収容室RM1及び収容室RM2に供給させた状態にしておき、酸素濃度センサ31の検出結果に基づいて、供給量を多くしたり少なくしたりさせることもできる。
【0091】
供給ステップでは、制御装置CONTは、酸素濃度センサ31を用いると同時に、圧力センサ32によって収容室RM1及び収容室RM2の気圧を検出させる。制御装置CONTは、圧力センサ32の検出結果に基づき、供給量調整部33cを用いて不活性ガスの供給量を調整しつつ、収容室RM1及び収容室RM2に不活性ガスを供給させる。例えば、収容室RM1及び収容室RM2の気圧が予め設定された閾値を超えた場合に、排気部34を用いて収容室RM1及び収容室RM2を排気させる。この閾値についても、予め実験やシミュレーションなどによって求めておき、制御装置CONTに記憶させておくことができる。また、例えば、塗布動作及び乾燥動作の間、収容室RM1及び収容室RM2を常時一定量排気させた状態にしておき、圧力センサ32の検出結果に基づいて、排気量を多くしたり少なくしたりさせることもできる。このようにして、収容室RM1及び収容室RM2が減圧下に保持されることになる。
【0092】
排気部34から排気された気体は、配管34b及び配管34cを流通して不活性ガス供給部33の配管33bに循環される。配管34cを流通する際、この気体は除去部材34dを通過する。気体が除去部材34dを通過する際、気体中の酸素成分が除去部材34dに吸着されて除去される。このため、酸素濃度が低い状態の不活性ガスが配管33bに循環されることになる。収容室RM1及び収容室RM2の気体を循環させることにより、温度などが安定化された状態で不活性ガスが供給されることになる。
【0093】
以上のように、本実施形態によれば、スリットノズルNZのうち少なくとも先端部分NZaには、液状体Qとの間の親和性が液状体Q同士の親和性よりも弱くなるように形成された親和性調整部AFが設けられているため、スリットノズルNZの先端部分NZaから吐出された液状体Qが当該先端部分NZaに付着するのを抑制することができる。これにより、液状体Qが基板Sに定着しやすくなるため、基板Sに液状体Qをムラ無く塗布することが可能となる。
【0094】
本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることができる。
例えば、上記実施形態では、スリットノズルNZの全体が表1に示す(1)〜(8)の少なくとも1種類の材料を用いて構成された例を示したが、これに限られることは無い。
【0095】
例えば図9に示すように、スリットノズルNZの先端部分NZa、傾斜部分NZb及びNZc、壁部分NZd及びNZeをそれぞれ覆うように形成された被覆部NZfを有する構成であっても構わない。当該被覆部NZfは、上記(1)〜(8)の少なくとも1種類の材料を用いて形成されている。例えばスリットノズルNZの表面をコーティング処理したり、蒸着処理したりすることにより、上記構成の被覆部NZfを形成することができる。なお、スリットノズルNZの表面に被覆部NZfが設けられた場合であっても、当該被覆部NZfが設けられた部分に親和性調整部AFが形成されることになる。なお、この場合、スリットノズルNZのうち被覆部NZf以外の部分は、上記(1)〜(8)の材料とは異なる材料であっても構わない。
【0096】
また、上記実施形態では、塗布部CTと加熱部HTとを別々のチャンバ装置(第一チャンバ装置CB1及び第二チャンバ装置CB2)に配置させた構成としたが、これに限られることは無く、1つのチャンバ装置CBに配置させる構成であっても構わない。例えば図10に示すように、1つのチャンバ装置CB内の同一の空間に塗布部CTと加熱部HTとを配置させるようにしても構わない。この場合、塗布部CTの−Z側の空間が塗布空間R1となり、当該塗布空間の+X側の空間が塗布後移動空間R2となる。
【0097】
また、図11に示すように、スリットノズルNZと加熱部HTとが異なる空間に配置されるようにチャンバCB内の空間が2つに仕切られた構成としても構わない。チャンバCB内には、仕切り部材110が設けられている。仕切り部材110は、基板Sの搬送方向上に配置されている。基板Sは、仕切り部材110を超えて搬送されることになる。
【0098】
仕切り部材110のうち基板Sの高さ位置(Z方向上の位置)に対応する領域には、開口部111が形成されている。開口部111には、蓋部111aが設けられており、開口部111が開閉可能になっている。基板Sを搬送する場合、基板Sが仕切り部材110を通過する際には蓋部111aをそれぞれ開状態として当該基板Sを通過させる。基板Sが通過しないときや、各空間内で処理を行う場合には蓋部111aを閉状態とする。
【0099】
チャンバCB内の酸素濃度を検出する酸素濃度センサ31や圧力を検出する圧力センサ32は、仕切り部材110で区切られた各空間にそれぞれ設けられている。また、環境調整部についても、2つの空間にそれぞれ接続されている。スリットノズルNZが配置される空間には、環境調整部AC1が接続されている。環境調整部AC1の構成は、第1実施形態における環境調整部ACの構成と同一構成となっている。
【0100】
加熱部HTが設けられる空間には、環境調整部AC2が接続されている。環境調整部AC2には、環境調整部AC1(又は第1実施形態に記載の環境調整部AC)の構成に加えて、配管34cから分岐する分岐配管125が設けられている。したがって、配管34cと同様、分岐配管125にも排気駆動源34aによって排気された気体が流通するようになっている。
【0101】
分岐配管125は、例えば蓄熱機構120に接続されている。分岐配管125上には、当該分岐配管125を流通する気体を加熱する加熱機構121が設けられている。また、分岐配管125には酸素を除去する除去部材(例えば第1実施形態の除去部材34dと同一の部材)が設けられた構成であっても構わない。
【0102】
加熱部HTは、蓄熱機構120とホットプレート130とを有している。蓄熱機構120は基板Sの搬送領域に対してチャンバCBの天井側に配置されており、ホットプレート130は基板Sの搬送領域に対してチャンバCBの底部側に配置されている。ホットプレート130には、第1実施形態の加熱部HTと同様に不図示の加熱機構が設けられている。
【0103】
蓄熱機構120は、チャンバCB内の気体の熱を蓄熱できるようになっている。また、蓄熱機構120には、分岐配管125を流通する気体が供給されるようになっている。このため、蓄熱機構120では、供給された気体の熱がチャンバCB内の温度とほぼ同一の温度に温調されるようになっている。蓄熱機構120は、−Z側に開口部を有しており、分岐配管125からの気体が開口部を介してチャンバCB内に流入されるようになっている。
【0104】
上記構成においては、スリットノズルNZと加熱部HTとが異なる空間に設けられていることになるため、塗布ステップ及び加熱ステップは1つのチャンバCBの異なる空間で行われることになる。この場合、制御装置CONTは、まずスリットノズルNZが配置された空間において基板Sに塗布ステップを行わせる。塗布ステップが完了した後、制御装置CONTは、蓋部111aを開状態として基板Sを加熱部HTが配置された空間に搬送させる。
【0105】
基板Sの搬送後、制御装置CONTは、蓋部111aを閉状態として当該加熱部HTが配置された空間を減圧させる。減圧後、制御装置CONTは、加熱部HTを作動させて基板S上の液状体に加熱ステップを行う。加熱ステップでは、基板Sは蓄熱機構120とホットプレート130とによって表裏の両側から加熱されることになる。加熱ステップにおいて、当該空間から排気された気体(例えば不活性ガス)は分岐配管125を介して蓄熱機構120に供給される。蓄熱機構120に供給された気体は、蓄熱された熱によって加熱され、空間内とほぼ同一の温度に温調されることになる(気体加熱ステップ)。この気体は、蓄熱機構120の開口部から空間内に供給され、再利用されることとなる。なお、気体加熱ステップでは、分岐配管125に設けられた加熱機構121を用いて気体を加熱しても構わない。
【0106】
加熱ステップの終了後、制御装置CONTは、加熱部HTの動作を停止させると共にチャンバCB内(空間内)の圧力を大気圧に戻させる。その後、制御装置CONTは、蓋部111aを閉状態としたまま蓋部12aを開状態とし、基板Sを+X方向に搬送させて当該基板Sを搬出させる。
【0107】
また、上記実施形態では、塗布動作を行う際、スリットノズルNZを固定させた状態で基板Sを移動させることで液状体Qを基板S上に塗布する例を挙げて説明したが、これに限られることは無く、基板Sを固定させた状態でスリットノズルNZを移動させることで液状体Qを基板S上に塗布するようにしても構わない。また、基板SとスリットノズルNZとを両方移動させるようにしても構わない。
【0108】
また、上記実施形態では、基板S上に易酸化性の金属を含む塗布膜を形成する例を挙げて説明したが、これに限られることは無い。例えば、図12に示すように、帯状の連続したフィルム上に液状体Qを塗布するようにしても構わない。図12は、塗布装置CTRの他の構成を示す図である。図12に示すように、塗布装置CTRは、基板搬入チャンバSLC、基板処理チャンバSPC、基板搬出チャンバSUC及びこれらを制御する制御装置CONTを有している。
【0109】
基板搬入チャンバSLCは、帯状に形成されたフィルム基板Fを収容する収容室RMAを有している。収容室RMAには、フィルム基板Fが巻きつけられる軸部SF1が設けられている。軸部SF1は、Y方向に延在するように配置されており、θY方向に回転可能に設けられている。収容室RMAは、不活性ガス供給部133及び排気部134に接続されている。収容室RMAには、フィルム基板Fを搬送する基板搬送機構FALが設けられている。基板搬送機構FALとしては、例えばローラー機構などを用いることができる。
【0110】
基板処理チャンバSPCは、収容室RMBを有している。収容室RMBは、開口部OP1を介して基板搬入チャンバSLCの収容室RMAに接続されている。収容室RMBには、塗布部CT、基板搬送部FAP、加熱部HT、ノズル先端管理部MN、搬入側シャッタ部SH1及び搬出側シャッタ部SH2が設けられている。収容室RMBは、不活性ガス供給部133及び排気部134に接続されている。
【0111】
塗布部CTは、ノズルNZ及びノズル駆動機構NAを有している。ノズルNZは、例えば−Z側の端部が先細りに形成されている。ノズルNZは、−Z側の端部(先端)から液状体を吐出可能に設けられている。ノズル駆動機構NAは、必要に応じてノズルNZをX方向、Y方向及びZ方向などに駆動する。
【0112】
基板搬送部FAPは、ノズルNZの−Z側にフィルム基板Fを搬送するように構成されている。基板搬送部FAPは、複数のローラー部を有している。当該ローラー部の配置を組み合わせることにより、ノズルNZの−Z側を通過するようにフィルム基板Fの搬送経路が設定されている。
【0113】
加熱部HTは、フィルム基板FをZ方向に挟むように、当該フィルム基板Fの搬送経路の+Z側及び−Z側に1つずつ配置されている。加熱部HTとしては、例えば上記実施形態の構成と同一の加熱部HTが用いられる。加熱部HTをフィルム基板Fの+Z側及び−Z側に配置させることにより、乾燥工程及び加熱工程を効率的に行うことができるようになっている。
【0114】
ノズル先端管理部MNは、ノズルNZの先端をメンテナンスする。ノズル先端管理部MNは、例えばノズルNZの移動可能な範囲内に配置されており、ノズルNZの先端の洗浄を行う部分、ノズルNZの予備吐出を行う部分、ノズルNZの先端を乾燥させる部分、などが設けられている。
【0115】
搬入側シャッタ部SH1は、基板搬入チャンバSLCの収容室RMAと、基板処理チャンバSPCの収容室RMBとの間を開閉させる開閉機構である。搬入側シャッタ部SH1は、不図示の駆動機構などによってZ方向に移動可能に設けられている。図12には、搬入側シャッタ部SH1が開状態になっている様子が示されている。
【0116】
搬出側シャッタ部SH2は、収容室RMBと基板搬出チャンバSUCの収容室RMCとの間を開閉させる開閉機構である。搬出側シャッタ部SH2は、不図示の駆動機構などによってZ方向に移動可能に設けられている。図12には、搬出側シャッタ部SH2が開状態になっている様子が示されている。
【0117】
基板搬出チャンバSUCは、フィルム基板Fを収容する収容室RMCを有している。収容室RMCは、開口部OP2を介して基板処理チャンバSPCの収容室RMBに接続されている。収容室RMCには、フィルム基板Fを巻き取る軸部SF2が設けられている。軸部SF2は、Y方向に延在するように配置されており、θY方向に回転可能に設けられている。収容室RMCは、不活性ガス供給部133及び排気部134に接続されている。収容室RMCには、フィルム基板Fを搬送する基板搬送機構FAUが設けられている。基板搬送機構FAUとしては、例えばローラー機構などを用いることができる。
【0118】
次に、上記構成の塗布装置CTRの動作を説明する。
初期状態では、軸部SF1にフィルム基板Fが巻きつけられている。制御装置CONTは、搬入側シャッタ部SH1及び搬出側シャッタ部SH2を開いた状態とした後、不活性ガス供給部133による供給量及び排気部134による排気量を適宜調整し、収容室RMA、収容室RMB及び収容室RMCの環境を調整する。
【0119】
制御装置CONTは、その後、軸部SF1を+θY方向に回転させてフィルム基板Fを+X側へ搬送する。フィルム基板Fは開口部OP1を介して収容室RMAから収容室RMBへと搬送される。制御装置CONTは、収容室RMB内の基板搬送機構FAPを構成するローラー部を回転させることにより、フィルム基板Fを+X側へ搬送させる。
【0120】
フィルム基板FがノズルNZの−Z側へ搬送された場合には、制御装置CONTはノズルNZから液状体を一定時間フィルム基板Fへ向けて吐出させる。この動作により、フィルム基板Fの所定領域に液状体Qが塗布される。この動作を繰り返し行うことにより、ノズルNZの−Z側を連続的に通過するフィルム基板Fに対して所定領域毎に液状体Qの塗布膜を形成することができる。
【0121】
フィルム基板Fを搬送させることにより、液状体Qが塗布された部分が2つの加熱部HTに挟まれた空間に到達する。このとき、制御装置CONTは、2つの加熱部HTのうち少なくとも一方を作動させることにより、フィルム基板F上に塗布された液状体Qに対して乾燥処理あるいは加熱処理が施されることになる。
【0122】
制御装置CONTは、フィルム基板Fのうち乾燥処理あるいは加熱処理が終了した部分を、開口部OP2を介して基板搬出チャンバSUCの収容室RMCに搬出する。フィルム基板Fの先端が収容室RMCの軸部SF2に到達した場合、制御装置CONTは、軸部SF2を回転させ、当該軸部SF2にフィルム基板Fを巻き取らせる。全てのフィルム基板Fが軸部SF2に巻き取られた後、制御装置CONTは、搬入側シャッタ部SH1及び搬出側シャッタ部SH2を閉じた状態とする。
【0123】
搬入側シャッタ部SH1及び搬出側シャッタ部SH2が閉状態となった場合、収容室RMAと収容室RMBとの間、収容室RMBと収容室RMCとの間は、それぞれ遮断されることになる。このため、例えば収容室RMAに収容されるフィルム基板Fが全て基板処理チャンバSPCへ搬入された後、搬入側シャッタ部SH1を閉状態として軸部SF1を交換する。同様に、例えば収容室RMCにフィルム基板Fが全て巻き取られた後、搬出側シャッタ部SH2を閉状態として軸部SH2を交換する。以上のように、帯状の連続したフィルム上に液状体Qを塗布する場合であっても、本発明の適用は可能である。
【符号の説明】
【0124】
CTR…塗布装置 LL…ロードロック装置 CB1…第一チャンバ装置 CB2…第二チャンバ装置 RML、RM1、RM2…収容室 SAL、SA1、SA2…基板駆動機構 CT…塗布部 NZ…スリットノズル NZa…先端部分 Q…液状体 AF…親和性調整部 NA…ノズル駆動機構 R1…塗布空間 R2…塗布後移動空間 HT…加熱部 CONT…制御装置 21…ノズル開口部 S…基板
【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端部分に設けられた吐出部から易酸化性の金属を含む液状体を吐出するノズルを有する塗布部と、
前記先端部分と基板とを対向させた状態で前記基板と前記ノズルとを相対移動させる相対駆動部と
を備え、
前記ノズルのうち少なくとも前記先端部分には、前記液状体との間の親和性が前記液状体同士の親和性よりも弱くなるように形成された親和性調整部が設けられている
塗布装置。
【請求項2】
前記親和性調整部は、前記ノズルのうち、前記先端部分と、前記先端部分に隣接する部分と、を含む部分に設けられている
請求項1に記載の塗布装置。
【請求項3】
前記液状体は、ヒドラジンを含み、
前記親和性調整部は、前記ヒドラジンとの間の親和性が前記ヒドラジン同士の親和性よりも弱くなるように形成されている
請求項1又は請求項2に記載の塗布装置。
【請求項4】
前記親和性調整部は、前記ヒドラジンとの間の親和性が前記ヒドラジンと前記基板との間の親和性よりも弱くなるように形成されている
請求項3に記載の塗布装置。
【請求項5】
前記親和性調整部は、チタン及びチタン合金のうち少なくとも一方を用いて形成されている
請求項1から請求項4のうちいずれか一項に記載の塗布装置。
【請求項6】
前記基板は、モリブデンを用いて形成されている
請求項1から請求項5のうちいずれか一項に記載の塗布装置。
【請求項7】
前記金属は、銅、インジウム、ガリウム及びセレンのうち少なくとも1つを含む
ことを特徴とする請求項1から請求項6のうちいずれか一項に記載の塗布装置。
【請求項8】
前記塗布部によって前記液状体の塗布される塗布空間及び前記液状体の塗布された前記基板の塗布後移動空間のうち少なくとも一方の空間を囲むチャンバ
を更に備える請求項1から請求項7のうちいずれか一項に記載の塗布装置。
【請求項9】
前記チャンバで囲まれた前記空間に不活性ガスを供給する不活性ガス供給部を更に備える
請求項8に記載の塗布装置。
【請求項10】
前記吐出部は、前記先端部分に対向する吐出領域に前記液状体を吐出するように形成されており、
前記相対駆動部は、前記吐出領域を通過するように前記基板を駆動する基板駆動部を有する
請求項1から請求項9のうちいずれか一項に記載の塗布装置。
【請求項11】
前記吐出部は、前記先端部分に対向する吐出領域に前記液状体を吐出するように形成されており、
前記相対駆動部は、前記吐出領域が前記基板上を走査するように前記ノズルを駆動するノズル駆動部を有する
請求項1から請求項10のうちいずれか一項に記載の塗布装置。
【請求項12】
易酸化性の金属を含む液状体を基板に塗布する塗布方法であって、
前記液状体との間の親和性が前記液状体同士の親和性よりも弱くなるように形成された親和性調整部が設けられる先端部分に形成された吐出部から前記液状体を吐出するノズルを有する塗布部の当該先端部分を前記基板に対向させるステップと、
前記先端部分と前記基板との間で前記液状体が挟持されるように、前記吐出部から前記液状体を吐出するステップと、
前記先端部分と前記基板との間で前記液状体を挟持した状態で、前記吐出部から前記液状体を吐出しつつ前記先端部分と前記基板とを相対移動させるステップと
を含む塗布方法。
【請求項1】
先端部分に設けられた吐出部から易酸化性の金属を含む液状体を吐出するノズルを有する塗布部と、
前記先端部分と基板とを対向させた状態で前記基板と前記ノズルとを相対移動させる相対駆動部と
を備え、
前記ノズルのうち少なくとも前記先端部分には、前記液状体との間の親和性が前記液状体同士の親和性よりも弱くなるように形成された親和性調整部が設けられている
塗布装置。
【請求項2】
前記親和性調整部は、前記ノズルのうち、前記先端部分と、前記先端部分に隣接する部分と、を含む部分に設けられている
請求項1に記載の塗布装置。
【請求項3】
前記液状体は、ヒドラジンを含み、
前記親和性調整部は、前記ヒドラジンとの間の親和性が前記ヒドラジン同士の親和性よりも弱くなるように形成されている
請求項1又は請求項2に記載の塗布装置。
【請求項4】
前記親和性調整部は、前記ヒドラジンとの間の親和性が前記ヒドラジンと前記基板との間の親和性よりも弱くなるように形成されている
請求項3に記載の塗布装置。
【請求項5】
前記親和性調整部は、チタン及びチタン合金のうち少なくとも一方を用いて形成されている
請求項1から請求項4のうちいずれか一項に記載の塗布装置。
【請求項6】
前記基板は、モリブデンを用いて形成されている
請求項1から請求項5のうちいずれか一項に記載の塗布装置。
【請求項7】
前記金属は、銅、インジウム、ガリウム及びセレンのうち少なくとも1つを含む
ことを特徴とする請求項1から請求項6のうちいずれか一項に記載の塗布装置。
【請求項8】
前記塗布部によって前記液状体の塗布される塗布空間及び前記液状体の塗布された前記基板の塗布後移動空間のうち少なくとも一方の空間を囲むチャンバ
を更に備える請求項1から請求項7のうちいずれか一項に記載の塗布装置。
【請求項9】
前記チャンバで囲まれた前記空間に不活性ガスを供給する不活性ガス供給部を更に備える
請求項8に記載の塗布装置。
【請求項10】
前記吐出部は、前記先端部分に対向する吐出領域に前記液状体を吐出するように形成されており、
前記相対駆動部は、前記吐出領域を通過するように前記基板を駆動する基板駆動部を有する
請求項1から請求項9のうちいずれか一項に記載の塗布装置。
【請求項11】
前記吐出部は、前記先端部分に対向する吐出領域に前記液状体を吐出するように形成されており、
前記相対駆動部は、前記吐出領域が前記基板上を走査するように前記ノズルを駆動するノズル駆動部を有する
請求項1から請求項10のうちいずれか一項に記載の塗布装置。
【請求項12】
易酸化性の金属を含む液状体を基板に塗布する塗布方法であって、
前記液状体との間の親和性が前記液状体同士の親和性よりも弱くなるように形成された親和性調整部が設けられる先端部分に形成された吐出部から前記液状体を吐出するノズルを有する塗布部の当該先端部分を前記基板に対向させるステップと、
前記先端部分と前記基板との間で前記液状体が挟持されるように、前記吐出部から前記液状体を吐出するステップと、
前記先端部分と前記基板との間で前記液状体を挟持した状態で、前記吐出部から前記液状体を吐出しつつ前記先端部分と前記基板とを相対移動させるステップと
を含む塗布方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−81428(P2012−81428A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−230573(P2010−230573)
【出願日】平成22年10月13日(2010.10.13)
【出願人】(000220239)東京応化工業株式会社 (1,407)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月13日(2010.10.13)
【出願人】(000220239)東京応化工業株式会社 (1,407)
【Fターム(参考)】
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