説明

塗布装置及び塗布方法

【課題】 基板の周辺領域にレジスト等の樹脂膜を効率良く形成することができ、半導体素子製造におけるスループット向上に寄与する。
【解決手段】 素子形成に供される基板10上の周辺部に樹脂膜を塗布する塗布装置であって、基板10が載置され、少なくとも180度回転可能な回転テーブル32と、基板10の中心を通る第1の方向(X方向)軸で2分割された第1の基板周辺領域及び第2の基板周辺領域の一方に相当する円弧に沿って樹脂を吐出するための複数のノズルを配置してなり、該ノズルが基板10の周辺領域に対向するように設置される樹脂膜形成ヘッド部50と、基板10と樹脂膜形成ヘッド部50を相対的に、第1の方向とは直交する第2の方向(Y方向)に移動させる移動機構45とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、半導体などの素子製造工程中に基板の周辺領域に樹脂膜を形成するための塗布装置、及びこの装置を用いた塗布方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造工程の大半はウェハ一括処理であるのに対し、一部の検査工程とリソグラフィー工程は、ウェハ一括処理ではなく一定の領域毎に処理を繰り返す処理である。特に、リソグラフィー工程では、ショット毎に時間がかかり、これを多数回行うために、トータルの処理に多大な時間を要する。
【0003】
半導体ウェハ等の略円形である基板は、最外周のベベル領域や、ベベル部の内側の平坦部であっても積層膜構造が異なる領域がある。最外周から所定の距離(例えば1〜3mm)を除いた平坦領域が素子形成に有効な基板領域である。基板上にリソグラフィー工程を用いて素子回路を転写する場合、素子形成に有効な基板領域の外に回路を転写してもこの部分は素子回路としては動作せず、不完全チップとなる。従って、リソグラフィー工程で、不完全チップのみからなるショットのパターン形成を省くことができれば、スループットが増加すると考えられる。特に、EUVリソグラフィーやインプリントリソグラフィーでは、スループットが遅い問題がある。このため、不完全チップのみから構成されるショット露光を省く効果が、より顕著となる。
【0004】
インクジェット方式のインプリントリソグラフィーでは、インクジェットによるレジスト吐出領域の制御によって、ショット毎に液滴の吐出の有無、即ちパターン形成の有無を制御することが可能である。不完全ショットにおけるパターンの欠損領域近傍において未充填欠陥などが多発し、完全ショットのパターンにも欠陥を発生させる可能性があることから、インクジェット方式のインプリントリソグラフィーでは不完全ショットを形成しないことも可能である。
【0005】
一方で、リソグラフィー工程を省略した不完全チップ領域(基板周辺領域)にレジスト膜がないと、その周囲のチップが、後続のエッチング工程での寸法差やCMP工程におけるディッシング欠陥などを引き起こす。これを避けるために、チップ内と平均的な被覆率を揃えたダミーパターンを形成する、或いは次善の策として、不完全チップ領域にレジスト膜(その代替品)を塗布しておくことが考えられる。しかし、基板周辺領域のみにレジストを選択的に塗布するには多大な時間を要し、このためにスループットの低下を招くことになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−146651号公報
【特許文献2】特開2004−230266号公報
【特許文献3】特開2009−255007号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
発明が解決しようとする課題は、基板の周辺領域にレジスト等の樹脂膜を効率良く形成することができ、半導体素子製造におけるスループット向上に寄与し得る塗布装置及び塗布方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態は、素子形成に供される基板上の周辺部に樹脂膜を塗布する塗布装置であって、前記基板が載置され、少なくとも180度回転可能な回転テーブルと、前記基板の中心を通る第1の方向(X方向)軸で2分割された第1の基板周辺領域及び第2の基板周辺領域の一方に相当する円弧に沿って樹脂を吐出するための複数のノズルを配置してなり、該ノズルが前記基板の周辺領域に対向するように設置される樹脂膜形成ヘッド部と、前記基板と前記樹脂膜形成ヘッド部を相対的に、前記第1の方向とは直交する第2の方向(Y方向)に移動させる移動機構と、を具備している。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】素子領域と基板周辺領域との関係を示す平面図。
【図2】第1の実施形態に係わる塗布装置の概略構成を示す斜視図。
【図3】第1の実施形態の塗布装置の樹脂膜形成ヘッド部の構成を示す平面図。
【図4】第1の実施形態の塗布装置を用いた塗布方法を説明するための平面図。
【図5】第1の実施形態の塗布装置の樹脂膜形成ヘッド部に用いたインクジェットヘッドの一例を示す断面図と平面図。
【図6】第3の実施形態に係わる塗布装置を用いた塗布方法を説明するための平面図。
【図7】第3の実施形態の変形例に係わる塗布装置を用いた塗布方法を説明するための平面図。
【図8】第4の実施形態に係わる塗布装置を用いた塗布方法を説明するための平面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態の塗布装置及び塗布方法を、図面を参照して説明する。
【0011】
(第1の実施形態)
Siウェハ等の基板が一般に円形であるのに対し、チップは一般に矩形形状である。このため、図1に示すように、リソグラフィー工程で基板10上に転写されるチップ領域11の境界は格子状となる。ここでは、X軸方向に2個、Y軸方向に3個の合計6個のチップが単位露光領域(ショット:図中の太線に示す)を形成するとする。また、図1は、インクジェット方式のナノインプリントリソグラフィーを用いて、不完全ショットを全く形成しなかった場合のショット配置の例である。
【0012】
以降の全ての実施形態において、X軸方向の素子領域の境界線方向を第1の方向、Y軸方向の素子領域(チップ領域)11の境界線方向を第2の方向と記載する。
【0013】
素子領域全体が基板10上に形成可能である単位素子領域11の集合体の外形は、第1の方向と第2の方向の一方の線分の連続体からなる。基板10上の素子領域11以外の領域を基板周辺領域20とする。基板周辺領域20を、基板中心付近を通る第1の方向軸で分割し、第1の基板周辺領域21及び第2の基板周辺領域22とする。
【0014】
なお、EUVを含む光リソグラフィーでは、ウェハ全面にレジストが塗布される。ポジレジスト使用時には、露光をしないショット(不完全チップからのみ構成されるショット)にもレジスト膜が存在する。光リソグラフィーにおけるネガレジスト使用時には、露光をしないショットにおいて、現像後にはレジストが存在しない状態が発生する。インクジェット方式のインプリントリソグラフィーにおいては、ショット毎にレジスト液滴の吐出の有無を制御できるために、インプリントを実施しないショットでは、レジストが存在しない状態が発生する。このように、レジストが存在しない領域が基板周辺領域20(21,22)となる。
【0015】
図2は、本実施形態に係わる塗布装置を示す概略構成図である。
【0016】
Y方向に移動可能なステージ31上に回転可能なθテーブル32が設けられ、このθテーブル32上に半導体ウェハ等の基板10が載置されるようになっている。ステージ31を挟んで2本のガイドレール41,42が設けられ、これらのガイドレール41,42にガイドされてY方向に移動可能な第1の移動機構45が設けられている。移動機構45の下面には、X方向に移動可能な第2の移動機構47が設けられている。そして、移動機構47の下面に、基板10の表面上にレジスト等の樹脂を塗布するための樹脂膜形成ヘッド部50が取り付けられている。
【0017】
樹脂膜形成ヘッド部50は、例えば図3に示すように、基板10の表面に対応する面に、X方向に長い直線状のインクジェットヘッド51の複数個を基板10の周辺の円弧に沿って配置することにより構成されている。各々のインクジェットヘッド51はその位置によって長さが異なっている。
【0018】
次に、本装置を用いたレジストの塗布プロセスについて、図4(a)(b)を参照して説明する。
【0019】
まず、基板10をθテーブル32上に載置した後、ステージ31,θテーブル32及び移動機構45,47を調整することにより、図3に示すインクジェットヘッド51を、図4(a)に示すように、基板10の第1の基板周辺領域21に対向させる。より具体的には、インクジェットヘッド51を単位素子領域11の集合形状と基板周辺領域21との境界に合わせる。そして、移動機構45により樹脂膜形成ヘッド部50を移動させることによりインクジェットヘッド51を基板中心から遠ざける第2の方向に移動すると共に、インクジェットヘッド51からレジスト液を吐出させる。これにより、図4(b)に示すように、第1の基板周辺領域21にレジスト膜が塗布形成される。
【0020】
次いで、θテーブル32により基板10を180度、平面内で回転させる。基板回転後に、移動機構45により樹脂膜形成ヘッド部50を移動させることによりインクジェットヘッド51を第2の方向と逆方向に移動すると共に、インクジェットヘッド51からレジスト液を吐出させる。これにより、第2の基板周辺領域22にレジスト膜が塗布形成される。
【0021】
このように本実施形態では、インクジェットヘッド51の2回の移動とθテーブル32の1回の回転により、基板周辺領域21,22にレジスト膜を効率良く塗布することができる。そしてこの場合、インクジェットヘッド51を円弧状に配置していることから、インクジェットヘッド51の移動量はインクジェットヘッド51を直線状に配置した場合に比して格段に少なくて済む。
【0022】
前記樹脂膜形成ヘッド部50は、複数のノズル群からなることが望ましい。図4から明らかなように、基板周辺領域20と単位素子領域11の集合形状との境界の各点において、第2の方向に沿って樹脂膜を吐出すべき距離が異なる。特に、基板周辺領域20と単位素子領域11との境界において、第1の方向に関する位置が異なる場合には、樹脂膜の吐出すべき距離が不連続に変化する。このため、前記複数のノズルは、個別に樹脂膜の吐出制御ができることが必要である。
【0023】
ノズル形状が本実施形態に示すように、基板周辺領域20と単位素子領域11の集合形状との境界に相当する形状である場合、第2の方向に沿って樹脂膜を吐出すべき距離は、第1の方向の基板端部付近で決まる。第1の基板周辺領域21と第2の基板周辺領域22とに分けて塗布するにおいて、その合計は単に素子領域で7個分である。
【0024】
第1の方向に平行な1本の直線状ノズル群を用いて同様の塗布を実行する場合には、ノズルは基板外形分の距離を移動する必要がある。図4に示す単位露光領域の配置を例にとれば、素子領域のY方向の距離の27個強の距離を移動する必要がある。これに対して、本実施形態では図4に示す単位露光領域の配置を例にとれば約1/4の駆動距離で良い。これは、駆動距離が塗布処理時間に直結することから、処理時間の低減となる。
【0025】
本実施形態に記載した方法で基板周辺領域20に樹脂膜を形成するには、基板10の外形方向を検出し、適切な位置に基板10を配置する機構が必要となる。樹脂膜塗布装置へ基板10を導入する搬送アーム上における基板位置及び搬送アームの駆動距離の精度確保が必要であり、更に搬送アームの前或いは当該塗布装置中における基板位置の検出及び回転方向の調整機構が必要である。基板位置の検出手段として最も一般的な方法は、光学式によるノッチ検出である。これ以外に、基板10上の合わせ検査マークを検出する方法も考えられ、高い検出精度が期待できるが、装置コストが上昇すると点は望ましくない。
【0026】
なお、本実施形態では、ノズル駆動方向を第2の方向として記載したが、第1の方向に沿った駆動であってもよい。ノズル駆動方向が変わった場合には、第1及び第2の方向を入れ替えて理解すればよい。
【0027】
樹脂膜形成ヘッド部50としては、複数の方式が考えられる。樹脂膜形成ヘッド部50の第1の例は、多数のインクジェットヘッド51の集合からなるものである。各インクジェットヘッド51は、図5(a)に断面図を、図5(b)に平面図を示すように、直線状に配列された複数個のノズル53、各々のノズル53の内部に設けられたピエゾ素子等からなるジェット噴射部54、及び各々のノズル53につながる吐出口55等を備えている。形成される塗膜の膜厚を均一にする目的から、全てのインクジェットヘッド51において、吐出口55は等しい間隔で配置される。
【0028】
インクジェットヘッド51には、レジスト液供給管52からレジスト液が供給される。そして、ジェット噴射部54を収縮動作させ、その収縮圧力によりノズル53内のレジスト液を加圧し、液滴として吐出口55から吐出するようになっている。このとき、吐出された液滴が基板上で必要以上に広がらないためには、インクの液滴の温度をウェハ温度よりも高くするのが望ましい。
【0029】
なお、上記説明では、樹脂膜形成ヘッド部50を複数のインクジェットヘッド51の組み合わせで構成したが、樹脂膜形成ヘッド部50を、ノズルが前記図3に示すように配置された1つのインクジェットヘッドで構成することも可能である。あるいは、個々のインクジェットヘッド51が、さらに複数のヘッドの集合体であっても良い。
【0030】
インクジェット方式の場合には、当該位置のインクジェットノズルからの吐出を実施しないことで、第1の方向の吐出範囲を変えることが容易である。ノズル駆動方向に沿って移動し、基板外周部にかかる領域においては、基板外形に応じて、吐出ノズルの制御を行う。
【0031】
また、製造する素子サイズや単位露光領域の配置が変更し、形成すべき基板外周部形状が変化した際にも、インクジェット方式の場合には、液滴を吐出するノズル53を個別に制御することで対応が容易である。素子サイズが変化することに備えて、第1の方向の位置が異なる個々のインクジェットヘッド51は、製造可能性のある素子サイズに合わせて、第1の方向の外側に対して広めに配置することが望ましい。この場合、第1の方向で外側に位置するインクジェットヘッド51ほど、広いノズル幅が必要となり、ノズルのコストが高くなる可能性がある。従って、樹脂膜形成ヘッド部50中の個々のインクジェットヘッド51の相対位置を、第1の方向に対して変更できる機構があることが、さらに望ましい。Y方向の素子サイズが変った場合の塗布時間を最少化するために、個々のインクジェットヘッド51の相対位置を、第2の方向に対しても変更できる機構を具備することが、さらに望ましい。
【0032】
インクジェット方式の場合においては、基板の内と外の何れの方向からの動作であっても、樹脂膜形成の精度には差が少ない。このため、インクジェットヘッドの移動距離を減らす観点において、基板の外側に位置するインクジェットヘッドの退避位置或いは初期位置を開始位置とした場合、第1の基板周辺領域21は基板10の外から内に移動して樹脂膜を形成する。そして、基板10を180度回転した後、第2の基板周辺領域22に対しては基板10の内から外にインクジェットヘッドを移動して樹脂膜を形成することが望ましい。
【0033】
樹脂膜形成ヘッド部50の第2の例は、線状の吐出口を有するスリットノズルである。スリットノズルにおいても、更に樹脂膜の薬液自体の供給量をポンプなどで制御する方式と、樹脂膜の薬液自身の表面張力で制御する方式のノズルがある。何れのスリットノズル方式においても、ノズル先端或いはノズル内部に薬液吐出の遮蔽部を設けることで、素子サイズ、特に第1の方向の距離の変化に対応できることが望ましい。
【0034】
スリット方式のノズルにおいては、樹脂膜の吐出の始点と終点で膜厚の均一性が変わる可能性がある。また、基板外周は円であることから、樹脂膜の膜厚の変化が生じやすい。このため、ノズルの動作は、ノズルの退避位置或いは初期位置から、樹脂膜の吐出を行わずに基板10の内側へノズルを移動し、内から外に向けてノズルを移動して第1の基板周辺領域21に樹脂膜を塗布する。そして、基板10を180度回転すると同時に、再び樹脂膜の吐出を行わずに基板の内側へノズルを移動し、内から外に向けてノズルを移動して第2の基板周辺領域22に樹脂膜を塗布する、ことが望ましい。外から内側へのノズルの移動であっても樹脂膜厚の均一性が十分である場合には、ノズル移動時間を短縮する観点から、インクジェット方式のノズル同様に、第1の基板周辺領域21は外から内へのノズル移動による樹脂膜塗布、基板10の180度回転、第2の基板周辺領域22へは内から外へのノズル移動による樹脂膜塗布、であっても良い。
【0035】
さらに、スリット方式の塗布の場合には、ウェハベベル部及び裏面への樹脂膜が回り込み、ダスト源や後工程の加工における加工不良の原因となり、歩留まりを低下させる可能性がある。このような場合、同一ユニット中或いは同一装置内の別のユニットにおいて、薬液によるエッジバックリンス或いは、酸素等によるウェハベベル及び裏面への選択的な樹脂膜除去工程を実施する機能があってもよい。
【0036】
このように本実施形態によれば、基板10の周辺形状に沿ってノズルを配置することにより、短時間で基板周辺領域20にレジストを塗布することができる。即ち、基板10の周辺領域に20レジスト等の膜を効率良く形成することができ、半導体素子製造におけるスループット向上に寄与することが可能となる。
【0037】
(第2の実施形態)
本実施形態は、第1及び第2の基板周辺領域21,22が対称性を有しない場合の例である。第1の実施形態と相違する部分のみを記載する。
【0038】
第1の実施形態では、素子領域の集合領域が180度の点対称性を有し、かつ対称中心が基板中心と一致する場合として記載した。しかし、素子サイズによっては基板10上の素子数を最大化すると、有効な素子領域11の集合領域が点対称を有しない。この場合、素子領域11と基板周辺領域20の境界の形状、即ち第1の基板周辺領域21への樹脂膜形成に必要なノズル形状と、第2の基板周辺領域22に必要なノズル形状が異なる。
【0039】
本実施形態ではこのような場合に備えて、樹脂膜形成ヘッド部50におけるインクジェットヘッド51を、第1の方向に樹脂膜形成領域を変更できるように、基板10の外側方向に向かって長い構造にした。さらに、第1の実施形態に記載した樹脂膜の吐出範囲を変更できる機構を備えるようにした。
【0040】
ノズル群を構成するインクジェットヘッドは、インクジェットヘッドの退避位置或いは初期位置から第1の基板周辺領域21へのインクジェットヘッドの移動までの期間、第1の基板周辺領域21への樹脂膜形成終了後から基板10の回転処理から第2の基板周辺領域22への樹脂膜形成開始までの期間に、それぞれ第1の基板周辺領域21及び第2の基板周辺領域22に相当するようにインクジェットヘッドの樹脂膜吐出範囲を調整する。
【0041】
このように本実施形態では、樹脂膜形成ヘッド部50におけるインクジェットヘッド51を第1の方向により長く形成し、樹脂の吐出幅を変更できるようにしているため、素子領域11の集合領域が、基板中心に対して点対称でなくても、基板周辺領域20に対して樹脂膜を選択的に形成することが可能となる。従って、素子領域11の集合領域が、基板中心に対して点対称でないものに対しても、基板10の周辺領域に20レジスト等の膜を効率良く形成することができ、先の第1の実施形態と同様の効果が得られる。
【0042】
(第3の実施形態)
本実施形態は、基板表面上に樹脂を吐出するための樹脂膜形成ヘッド部を複数個有する場合の例である。第1の実施形態と相違する部分のみを記載する。
【0043】
第1の実施形態では、基板周辺領域を二分割し、基板10の回転と組み合わせることで、一つのノズル群(第1のノズル群)で樹脂膜形成を基板周辺領域20の全体に実施するものある。これに対し本実施形態は、第1の実施形態における第1の基板周辺領域21の塗布と並行して、第2の基板周辺領域22の塗布を第2のノズル群を使用して実施するものである。即ち、第1のインクジェットヘッド51を有する樹脂膜形成ヘッド部とは別に第2のインクジェットヘッド61を有する樹脂膜形成ヘッド部を用意し、第1の基板周辺領域21及び第2の基板周辺領域22に対し、それぞれ別のインクジェットヘッド51,61で膜形成する。
【0044】
図6(a)に示すように、各々のインクジェットヘッド51,61と基板10の周辺領域とのアライメントを行う。この状態から、インクジェットヘッド51,61を第1の方向に移動すると共にレジスト液を吐出させることにより、図6(b)に示すように、基板周辺領域21,22にレジスト膜を塗布形成することができる。
【0045】
ここで、第2の方向の外周部における第1の基板周辺領域21と第2の基板周辺領域22との境界付近への樹脂膜形成において、第1及び第2のノズル群の衝突を防ぐ必要がある。このためには、第1と第2のノズル群の移動開始に時間差を設ける、或いは第1と第2のノズル群の移動距離に差を設けることが有効である。また、本実施形態に係わる塗布装置においては、ノズル等の駆動制御の指定値から、ノズルの衝突を判定し、衝突可能性がある場合には警告や当該設定の使用禁止などの安全措置を作動させる機構を設けるのが望ましい。
【0046】
また、インクジェットヘッドは必ずしも円弧状に配置するに限らず直線状に配置しても良い。例えば、基板10の直径よりも長い直線状の複数本のインクジェットヘッド71,72,73を第2の方向に離間して配置する。
【0047】
図7(a)に示すように、インクジェットヘッド71を基板10の一端に合わせ、インクジェットヘッド71,72,73を第2の方向に移動すると共に樹脂を吐出する。図7(b)に示すように、インクジェットヘッド73が基板10の端部に達した時点で基板周辺領域20の全体への樹脂の塗布が完了する。
【0048】
この場合、1本のインクジェットヘッドで塗布する場合に比して、約1/3の移動により基板周辺領域20に樹脂を塗布することができる。
【0049】
このように本実施形態では、複数の樹脂膜形成ヘッド部を用いることにより、図6の場合は第1の実施形態の場合の第1の基板周辺領域21への樹脂膜形成相当の時間において、基板周辺領域20全体への樹脂膜形成が可能である。また、図7の場合は、1本の直線状インクジェットヘッドを用いた場合の1/3の時間で樹脂膜形成が可能である。従って、基板周辺領域21,22にレジスト膜を効率良く塗布することができ、第1の実施形態と同様の効果が得られる。
【0050】
(第4の実施形態)
本実施形態は、移動方向の異なる複数の樹脂膜形成ヘッド部を有する場合の例である。第1の実施形態と相違する部分のみを記載する。
【0051】
第1の実施形態では、基板周辺領域20への塗膜形成を、第1(或いは第2)の方向で二分割して形成するものである。これに対し本実施形態は、基板周辺領域を第1(或いは第2の)方向の2本の線で四分割して形成するものである。さらに、四分割した領域21,22,23,24は、基板に対してほぼ対称である二対からなるものである。
【0052】
本実施形態におけるノズルの形状及び配置例を、図8(a)に示す。第1の方向に対して駆動される第1のノズル群81と、第2の方向に対して駆動される第2のノズル群82を用いる。各々のノズル群81は、基板周辺領域に沿って配置された複数のインクジェットヘッド51の集合体である。
【0053】
まず、第1のノズル群81によって第1の基板周辺領域21、第2のノズル群82によって第2の基板周辺領域22、に対して樹脂膜を吐出した後、基板10を180度回転させる。次いで、第1のノズル群81によって基板中心に対して第1の基板周辺領域21と対向する位置にある第3の基板周辺領域23、第2のノズル群82によって基板中心に対して第2の基板周辺領域22と対向する位置にある第4の基板周辺領域24に対して樹脂膜を吐出する。
【0054】
ここで、第1及び第2のノズル群81,82が複数のノズルからなることは、第1の実施形態のノズルが複数のノズルからなることと同様である。
【0055】
本実施形態においては、図8(a)(b)に示すように、ノズル群81,82が樹脂膜吐出のために駆動する距離は、第1のノズル群81では単位露光領域11の第1の方向の長さの2倍超であり、第2のノズル群82では単位露光領域11の第2の方向の長さの2倍超である。
【0056】
前述した第1のノズル群81と第2のノズル群82との駆動時の衝突を回避するために双方のノズルの駆動タイミングをずらしたとしても、単位露光領域11の外形方向の長さの3〜4倍程度の移動距離相当の時間に過ぎない。第1の実施形態にも記載した直線形状のインクジェットヘッドによる駆動と比較した場合には、1/10〜1/7の移動距離であり、処理速度において優れる。
【0057】
このように本実施形態によれば、移動方向の2つのノズル群81,82を設けることにより、1本の直線状インクジェットヘッドを用いた場合の1/10〜1/7の時間で樹脂膜形成が可能である。従って、基板周辺領域21,22,23,24にレジスト膜を効率良く塗布することができ、第1の実施形態と同様の効果が得られる。
【0058】
(変形例)
なお、本発明は上述した各実施形態に限定されるものではない。樹脂膜形成ヘッド部の移動機構や基板の移動機構などは、前記図2に何ら限定されるものではなく、仕様に応じて適宜変更可能である。実施形態では、樹脂膜形成時には樹脂膜形成ヘッド部を移動したが、この代わりに基板を移動するようにしても良い。
【0059】
また、基板周辺領域に塗布する材料は必ずしもレジストに限るものではなく、ノズルからの吐出により塗布できる液体状態の樹脂であればよい。チップ領域にインプリント又はリソグラフィで形成されたマスク材料を用いたエッチング等の加工を考慮すると、マスク材料に近いものであれば望ましい。
【0060】
本発明の幾つかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0061】
10…基板
11…素子領域
21,22,23,24…基板周辺領域
31,32…ステージ
41,42…ガイドレール
45,47…移動機構
50…樹脂膜形成ヘッド部
51,61,71,72,73,81,82…インクジェットヘッド(ノズル群)
52…レジスト液供給管
53…ノズル
54…ジェット噴射部
55…吐出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
素子形成に供される基板上の周辺部に樹脂膜を塗布する塗布装置であって、
前記基板が載置され、少なくとも180度回転可能な回転テーブルと、
前記基板の中心を通る第1の方向(X方向)軸で2分割された第1の基板周辺領域及び第2の基板周辺領域の一方に相当する円弧に沿って樹脂を吐出するための複数のノズルを配置してなり、該ノズルが前記基板の周辺領域に対向するように設置される樹脂膜形成ヘッド部と、
前記基板と前記樹脂膜形成ヘッド部を相対的に、前記第1の方向とは直交する第2の方向(Y方向)に移動させる移動機構と、
を具備したことを特徴とする塗布装置。
【請求項2】
前記樹脂膜形成ヘッド部は、前記第1の方向に沿って直線状にノズルを配置した複数のインクジェットヘッドを前記円弧に沿って離間配置したものであり、
前記各ノズルは、樹脂の吐出及び停止を個別に制御する機構を有することを特徴とする、請求項1記載の塗布装置。
【請求項3】
前記樹脂膜形成ヘッド部は、前記第1の方向に沿って直線状にノズルを配置した複数のインクジェットヘッドを前記円弧に沿って離間配置したものであり、
前記各ノズルは、樹脂の吐出幅を個別に制御する機構を有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の塗布装置。
【請求項4】
素子形成に供される基板上の周辺部に樹脂膜を塗布する塗布装置であって、
前記基板の中心を通る第1の方向(X方向)軸で2分割された第1の基板周辺領域及び第2の基板周辺領域の一方に相当する円弧に沿って樹脂を吐出するための複数のノズルを配置してなり、該ノズルが前記基板の周辺領域に対向するように設置される第1の樹脂膜形成ヘッド部と、
前記第1の基板周辺領域及び第2の基板周辺領域の他方に相当する円弧に沿って樹脂を吐出するための複数のノズルを配置してなり、該ノズルが前記基板の周辺領域に対向するように設置される第2の樹脂膜形成ヘッド部と、
前記基板と前記第1及び第2の樹脂膜形成ヘッド部を相対的に、前記第1の方向とは直交する第2の方向(Y方向)に移動させる移動機構と、
を具備したことを特徴とする塗布装置。
【請求項5】
素子形成に供される基板上の周辺部に樹脂膜を塗布する塗布装置であって、
前記基板の中心を通る第1の方向に沿って直線状にノズルを配置し、且つ第1の方向と直交する第2の方向(Y方向)に所定距離離して配置された複数の樹脂膜形成ヘッド部と、
前記基板と前記樹脂膜形成ヘッド部を相対的に、前記第2の方向に移動させる移動機構と、
を具備したことを特徴とする塗布装置。
【請求項6】
素子形成に供される基板上の周辺部に樹脂膜を塗布する塗布装置であって、
前記基板が載置され、少なくとも180度回転可能な回転テーブルと、
前記基板の周辺領域を4分割して得られる4つの基板周辺領域のうち、前記基板の中心を通る第1の方向(X方向)に対向する2つの基板周辺領域の一方に相当する円弧に沿って設けられ、前記基板の周辺領域に樹脂を吐出するための複数のノズルを配置してなり、該ノズルが前記基板の周辺領域に対向するように設置される第1の樹脂膜形成ヘッド部と、
前記基板第1の方向と直交する第2の方向(Y方向)に対向する2つの基板周辺領域の一方に相当する円弧に沿って設けられ、前記基板の周辺領域に樹脂を吐出するための複数のノズルを配置してなり、該ノズルが前記基板の周辺領域に対向するように設置される第2の樹脂膜形成ヘッド部と、
前記第1の樹脂膜形成ヘッド部を前記第1の方向に移動させる第1の移動機構と、
前記第2の樹脂膜形成ヘッド部を前記第2の方向に移動させる第2の移動機構と、
を具備したことを特徴とする塗布装置。
【請求項7】
前記第1の樹脂膜形成ヘッド部は、前記第2の方向に沿って直線状にノズルを配置した複数のインクジェットヘッドを前記円弧に沿って離間配置したものであり、
前記第2の樹脂膜形成ヘッド部は、前記第1の方向に沿って直線状にノズルを配置した複数のインクジェットヘッドを前記円弧に沿って離間配置したものであり、
前記各ノズルは、樹脂の吐出及び停止を個別に制御する機構を有することを特徴とする、請求項6記載の塗布装置。
【請求項8】
前記第1の樹脂膜形成ヘッド部は、前記第2の方向に沿って直線状にノズルを配置した複数のインクジェットヘッドを前記円弧に沿って離間配置したものであり、
前記第2の樹脂膜形成ヘッド部は、前記第1の方向に沿って直線状にノズルを配置した複数のインクジェットヘッドを前記円弧に沿って離間配置したものであり、
前記各ノズルは、樹脂の吐出幅を個別に制御する機構を有することを特徴とする、請求項6又は7に記載の塗布装置。
【請求項9】
請求項1記載の塗布装置を用い、
前記移動機構により前記樹脂膜形成ヘッド部を前記第2の方向に移動しながら前記ノズルにより前記第1の基板周辺領域に樹脂を塗布した後に、前記基板を180度回転させ、次いで前記移動機構により前記樹脂膜形成ヘッド部を前記第2の方向と逆方向に移動しながら前記ノズルにより前記第2の基板周辺領域に樹脂を塗布することを特徴とする塗布方法。
【請求項10】
請求項6記載の塗布装置を用い、
前記第1の移動機構により前記第1の樹脂膜形成ヘッド部を前記第1の方向に移動しながら前記ノズルにより前記基板周辺領域に樹脂を塗布し、前記第2の移動機構により前記第2の樹脂膜形成ヘッド部を第2の方向に移動しながら前記ノズルにより前記基板周辺領域に樹脂を塗布し、
次いで前記基板を180度回転させ、
次いで前記第1の移動機構により前記第1の樹脂膜形成ヘッド部を前記第1の方向と逆方向に移動しながら前記ノズルにより前記基板周辺領域に樹脂を塗布し、前記第2の移動機構により前記第2の樹脂膜形成ヘッド部を前記第2の方向と逆方向に移動しながら前記ノズルにより前記基板周辺領域に樹脂を塗布することを特徴とする塗布方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−54128(P2013−54128A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−191007(P2011−191007)
【出願日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】