説明

塗布装置及び気流制御板

【課題】複雑な構成を用いることなく、塗布液が基板の裏面側に回り込んで付着することを抑制することができる塗布装置及び気流制御板を提供すること。
【解決手段】気流制御板10の上板11は、保持ヘッド1に保持された基板Wの周縁部から隙間33をあけて配置されている。気流制御板10の下板12に設けられたガイド羽根18の上面に、上板11の下面11bが当接することで、上板11及び下板12が一体的に固定され、これにより気流制御板10が構成される。回転する気流制御ユニット5の気流制御板10では、導入口13からエアが導入され、導入されたエアは、主に辺方向流路16内を流れ、また放射状流路17内も流れる。特に、隙間33を介して上板11の下面11bに周り込んだレジスト液31は、表面張力により下面11bに貼り付きながら、遠心力及び放射状流路17を流れるエアにより排出口15から排出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板を回転させながら遠心力によりフォトレジスト等の塗布液を被処理板に塗布する塗布装置に関する。
【背景技術】
【0002】
基板を回転させながら遠心力によりフォトレジストを基板に塗布する装置として、例えば特許文献1には、矩形のガラス基板の周囲に配置された、4枚の分割板で構成される円板(整流板)を備えるスピンコータが開示されている。
【0003】
特許文献1では、円板と基板の縁部との間には、フレーム状の吸引スリットが設けられ、その吸引スリットの幅が調整されることにより、排気状態が調整されるようになっている。各分割板と、その分割板の下部に配置され基板を支持する支持板との間には、遠心翼が設けられている。基板の回転に伴う遠心翼の回転によって、吸引スリット付近が減圧され、吸引スリットから吸引された空気が、各分割板の外周側へ排出される。これにより、基板の角部に厚く残っていたフォトレジスト膜が、空気の流れに伴って各分割板の外周から排出され、基板上の膜厚が均一になる。
【0004】
一方、ガラス基板の縁部の不要な塗布膜を除去する方法として、特許文献2がある。特許文献2に開示された塗布膜除去装置は、塗布膜除去手段と、溶剤引込部材とを備えている。塗布膜除去手段は、基板の辺の縁部に向けて溶剤を供給する溶剤吐出口、及び供給された溶剤及び溶解物を吸引して除去する吸引口とを含む。溶剤引込部材は、溶剤が供給される基板の辺に近接するとともに当該辺に沿って設けられ、溶剤及び溶解物を、溶剤の表面張力により一旦引込む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−99910号公報
【特許文献2】特開2007−157925号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1では、吸引スリットから吸引された空気が基板の下方側付近まで流れて分割板と支持板との間を流れるので、基板の側面にはもちろんのこと、基板の裏面にも塗布液が回り込んで付着するおそれがある。この場合、塗布処理後、基板の搬送工程、露光工程等において、基板をメカニカルに保持する機構によって、その基板の裏面等に付着した塗布液が剥がれ落ち、それがダストとなって基板表面に付着することがある。これは、露光エラーやエッチング不良を引き起こす原因となり、製品の歩留まり及び品質を低下させる。
【0007】
特許文献2の塗布膜除去装置は、基板の縁部に付着した塗布膜を除去するために溶剤を吐出し、さらに、溶剤及び溶解物を強制的に吸引する構成である。したがって、溶剤を吐出する手段及び強制吸引のための手段が必要になり、構造が複雑で、コストが高くなる。
【0008】
本発明の目的は、複雑な構成を用いることなく、塗布液が基板の裏面側に回り込んで付着することを抑制することができる塗布装置及び気流制御板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る塗布装置は、保持部と、供給機構と、回転駆動部と、気流制御部とを具備する。
前記保持部は、被処理板を保持する。
前記供給機構は、前記保持部に保持された前記被処理板上に塗布液を供給する。
前記気流制御部は、上壁板と、導入口と、外周面と、排出口と、内部流路とを有し、前記被処理板の外周側で前記保持部と一体的に回転可能に配置される。前記上壁板は、前記保持部に保持された前記被処理板の周縁部から隙間をあけて配置される。前記排出口は外周面に設けられる。前記内部流路は、前記導入口及び前記排出口を連通し前記上壁板の下面を流路面として含む。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態に係る概略的な塗布装置の構成を示す断面図である。
【図2】保持ヘッド及び気流制御ユニットを示す平面図である。
【図3】気流制御板の回転方向における一端部を手前に表した斜視図である。
【図4】気流制御板の、一端部とは反対側の他端部を手前に表した斜視図である。
【図5】気流制御板を示す平面図である。
【図6】気流制御板を分解した斜視図である。
【図7】図5におけるA−A線断面図である。
【図8】図7において、辺方向流路及び放射状流路の連通部分を拡大して示す断面図である。
【図9】気流制御板の他の実施形態を示す断面図である。
【図10】気流制御板のさらに別の実施形態を示す断面図である。
【図11】気流制御板が長方形の基板に適用された実施形態に係る気流制御板を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一形態に係る塗布装置は、保持部と、供給機構と、回転駆動部と、気流制御部とを具備する。
前記保持部は、被処理板を保持する。
前記供給機構は、前記保持部に保持された前記被処理板上に塗布液を供給する。
前記気流制御部は、上壁板と、導入口と、外周面と、排出口と、内部流路とを有し、前記被処理板の外周側で前記保持部と一体的に回転可能に配置される。前記上壁板は、前記保持部に保持された前記被処理板の周縁部から隙間をあけて配置される。前記排出口は外周面に設けられる。前記内部流路は、前記導入口及び前記排出口を連通し前記上壁板の下面を流路面として含む。
【0012】
被処理板が回転駆動部により回転すると、被処理板上で拡散された塗布液が、被処理板の周縁部まで達する。また、保持部の回転による気流制御部の回転により、回転方向に向いた導入口から気体が導入され、導入された気体は、内部流路を通り、気流制御部の外周面に設けられた排出口を介して気流制御部の外周側へ排出される。被処理板の周縁部まで達した塗布液は、遠心力及び表面張力により隙間を越え、気流制御部の上壁板の上面を外周側へ流れる。また、塗布液は、隙間を通って上壁板の下面である流路面へ回り込み、表面張力によりその流路面に貼り付きながら、遠心力及び気流制御部により制御された気流により、その気流とともに排出口から排出される。
【0013】
このように、主に導入口から導入され経路が制御された気流により塗布液が気流制御部の外周側へ排出されるので、従来のような複雑な構成を用いることなく、塗布液が被処理板の裏面側に回り込んで付着することを抑制することができる。
【0014】
前記気流制御部は、第1の開口面積を有する前記導入口と、前記第1の開口面積より小さい第2の開口面積を有し、前記回転方向で前記導入口と対向するように配置された排出穴とを有してもよい。その場合、前記内部流路は、前記導入口、前記排出穴及び前記排出口を連通する。
【0015】
排出穴の第2の開口面積が、導入口の第1の開口面積より小さいことにより、内部流路において導入口及び排出穴を連通する流路における気体の圧力損失を小さくすることができ、導入口から導入された気体の一部を排出穴から排出させ、気体の残りを外周面の排出口から排出させることができる。すなわち、排出口から排出される気流量を調整することが可能となる。
【0016】
前記内部流路は、前記導入口及び排出穴を連通する第1の流路と、前記第1の流路及び前記排出口を連通する第2の流路とを有してもよい。これにより、第1の流路を主に回転方向に向くように形成することができ、第2の流路を回転径方向に向くように形成することができる。この場合、第1の流路には主に気体が流れ、第2の流路には気体及び塗布液が流れる。
【0017】
前記内部流路は、複数の前記第2の流路を有してもよい。その場合、前記気流制御部は、前記複数の第2の流路を形成するための、前記気流制御部の外周側へ向けて延びる複数のガイド羽根を有する。複数のガイド羽根が設けられることにより、外周面の排出口から均等に気体及び塗布液を排出することができる。
【0018】
前記第2の流路は、前記第2の流路の流路断面積が前記気流制御部の外周側へ向かうにしたがって増えるように形成されていてもよい。これにより、第2の流路に気体の圧力損失が効果的に作用し、気体及び塗布液を排出口から排出しやすくすることができる。
【0019】
前記第2の流路の、前記第1の流路に面する入口の下辺の高さは、前記第1の流路の、前記第2の流路に面する出口の下辺の高さより高く設けられている。これにより、第1の流路における気体の圧力損失の低下を抑制することができ、気流を主に第1の流路で流通させることができる。
【0020】
前記上板の少なくとも表面の材料は、樹脂でなる。上板が金属である場合に比べ、樹脂である場合の方が、塗布液が上板の上面上及び下面上をきれいに流れ、効率良く外周側へ塗布液を排出することができる。
【0021】
本発明に係る気流制御板は、上壁板と、端部と、外周面と、内部流路とを有する。
前記上壁板は、回転可能な保持部に保持された被処理板の周縁部から隙間をあけて配置される。
前記端部は、回転方向の端部であり、導入口を有する。前記導入口は、前記被処理板の回転方向に向けて開口し、前記被処理板上に供給された塗布液を、遠心力を利用して前記被処理板上で拡散させるように前記保持部が回転するときに気体を導入する導入する。
前記外周面は、前記導入口から導入された前記気体及び前記被処理板から拡散した前記塗布液を排出する排出口を有する。
前記内部流路は、前記導入口及び前記排出口を連通し、前記上壁板の下面を流路面として含む。
【0022】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
【0023】
[塗布装置の構成]
図1は、本発明の一実施形態に係る概略的な塗布装置の構成を示す断面図である。
【0024】
この塗布装置100は、被処理板としての基板Wを回転させながら遠心力によりフォトレジスト等の塗布液を基板Wに塗布する塗布装置である。
【0025】
塗布装置100は、例えば基板Wを保持する保持ヘッド1と、保持ヘッド1により保持された基板Wの周囲に設けられた気流制御ユニット5と、基板W上にレジスト液を供給するためのディスペンサー6とを備えている。保持ヘッド1は、基板Wを機械的または真空吸引により基板Wを保持し、図示しない回転駆動部としてのモータにより回転可能になっている。また、塗布装置100への基板Wの搬入及び塗布装置100からの基板Wの搬出の際の、基板Wの受け渡しを行うために、保持ヘッド1は、図示しない昇降機構により昇降可能となっている。ディスペンサー6は、図示しないレジスト液のタンク及びレジスト液を圧送するためのポンプに接続された配管2と、配管2の先端に取り付けられたノズル4とを有する。
【0026】
基板Wは、典型的には、微細な回路パターンを形成するためのフォトリソグラフィ用のマスク基板であり、例えば正方形のガラス基板が用いられる。
【0027】
図2は、保持ヘッド1及び気流制御ユニット5を示す平面図である。
【0028】
気流制御ユニット5は、例えば4つに分割された気流制御板10でなり、4つの気流制御板10は、どれも実質的に同じ構成である。4つの気流制御板10は、正方形の基板Wの4辺に対応してそれぞれ配置され、保持ヘッド1上に固定されている。これにより、保持ヘッド1の回転により、基板W及び気流制御ユニット5が一体的に回転する。平面で見た各気流制御板10の周縁部の形状は、すべて同じ曲率の円形の一部の形状となっており、4つの気流制御板10を合わせた外形は実質的に円形とされている。
【0029】
図3及び図4は、1つの気流制御板10を示す斜視図である。図3は、気流制御板10の回転方向における一端部を手前に表した図であり、図4は、その一端部とは反対側の他端部を手前に表した図である。図5は、気流制御板10を示す平面図である。
【0030】
これらの図に示すように、この気流制御板10の回転方向R(図5参照)の一端部には、基板Wの回転方向に向けて開口したエアの導入口13が設けられている。また、気流制御板10の他端部には、この導入口13と回転方向で対向する、主に導入口13からこの気流制御板10の内部に導入されたエアを排出する機能を有する排出穴14が設けられている。気流制御板10の外周面19には、エア及びレジスト液を排出する排出口15が回転方向で複数設けられている。
【0031】
気流制御板10の内部には、これら導入口13、排出口15及び排出穴14を連通する内部流路20が形成されている。内部流路20は、辺方向流路16及び複数の放射状流路17を含む。辺方向流路16は、保持ヘッド1に保持された基板Wの一辺に沿って実質的に平行になるように設けられている。一方、放射状流路17は、辺方向流路16に連通し、辺方向流路16から外周側に向かって延設されている。例えば、放射状流路17は、保持ヘッド1に保持された基板Wの中心、つまり回転中心から径方向に延設されている。
【0032】
図3〜図5に示すように、排出口15の開口面積は、導入口13の開口面積より小さく形成されている。これにより、基板W及び気流制御ユニット5の回転時において、エアが導入口13を介して内部流路20内に導入されたときに、主に辺方向流路16におけるエアの圧力損失を小さくすることができる。その結果、導入口13から導入されたエアの一部を排出穴14から排出させ、エアの残りを外周面19の各排出口15から排出させることができる。すなわち、排出口15から排出される気流量を調整することが可能となる。
【0033】
図6は、気流制御板10を分解した斜視図である。気流制御板10は、気流制御板10の上壁を構成する上板11と、下壁を構成する下板12とを有する。上板11は平板状でなる。上板11及び下板12の外形はそれぞれ実質的に同じである。下板12には、上記放射状流路17を形成するためのガイド羽根18が上板11に向けて突起するように設けられている。
【0034】
図7は、図5におけるA−A線断面図である。図7に示すように、気流制御板10は、基板Wの厚さと実質的に同じ厚さを有している。上板11は、保持ヘッド1に保持された基板Wの周縁部から隙間33をあけて配置されており、上板11の上面11aは、基板Wの上面とほぼ同じ高さで水平になるように設けられている。下板12に設けられた各ガイド羽根18の高さは、ほぼ同じ高さに形成され、上板11の下面11bが、各ガイド羽根18の上面に当接することで、上板11及び下板12が一体的に固定され、これにより気流制御板10が構成される。上板11及び下板12のそれぞれの外周面で構成される、気流制御板10の外周面19は、例えば保持ヘッド1の外周面1aと水平方向で同じ位置とされているが、それらは必ずしも同じ位置でなくてもよい。
【0035】
上板11と上板11との固定方法は、ネジ止め、接着剤、超音波接合等、何でもよい。上板11及び下板12が固定されることにより、内部流路20が形成される。内部流路20の放射状流路17が設けられる位置において、上板11の下面11bは、主にレジスト液が流れる流路面として構成される。
【0036】
なお、下板12は、基板Wの側面Wsに接触してもよいし、下板12と基板Wの側面Wsとに所定の隙間が設けられていてもよい。
【0037】
上板11及び下板12の両方は、典型的には樹脂でなる。樹脂材料としては、PEEK、PP、PVDF等が用いられる。下板12は、金属であってもよい。金属材料としては、アルミニウム、ステンレス等が用いられる。上板11の材料として金属が用いられるより、樹脂が用いられる場合の方が、レジスト液31が上板11の上面11a上、及び下面11bである流路面をきれいに流れ、効率良く外周側へレジスト液を排出することができる。
【0038】
上板11が必ずしも樹脂でなくてもよく、例えば金属材料が用いられ、その金属の表面にフッ素等の樹脂加工が施されてもよい。
【0039】
上板11と基板Wの周縁部との隙間33の距離aは、例えば0.3mm以下である。基板Wの厚さは、例えば5mm以上であり、上板11の厚さは、1mmより大きく設定されている。後でも述べるように、基板Wの回転時、基板W上に供給されたレジスト液31が基板Wの周縁部から遠心力により拡散し、隙間33を通って上板11の上面11aを外周側に向けて流れ、また、隙間33を通って上板11の下面11bを外周側に向けて流れる。
【0040】
隙間33の距離aは、上記したように0.3mm以下であるが、基板Wの加工精度の公差が考慮されるので、例えば0.2mmとされる。しかし、隙間33が非常に狭くても、レジスト液は毛細管現象により上板11の下面11bに周り込むことが可能であるので、隙間33の距離aは、0.2mmより小さくてもよい。隙間33の距離aが0.3mmより大きいと、基板Wの周縁部から伸展したレジスト液31が上板11の上面11aに到達しなくなるおそれがある。また、上板11の厚さが1mmより薄いと、上板11の剛性が低くなり回転時に上板11が不要な振動を起こすおそれがある。
【0041】
図7に示すように、放射状流路17の底面17aは、外周側へ向かうにしたがって傾斜する斜面となっている。これにより、放射状流路17は、その放射状流路17の流路断面積が気流制御板10の外周側へ向かうにしたがって増えるように形成されることになる。これにより、例えば底面17aが仮に斜面でなく水平で、かつ、図5に示すように、放射状流路17の回転方向での幅bが外周側へ向かうにしたがって単に増えていく場合に比べ、放射状流路17の流路断面積の外周側への増加率を大きくすることができる。これにより、基板W及び気流制御ユニット5の回転時、放射状流路17に気体の圧力損失が効果的に作用し、エア及びレジスト液31を排出口15から排出しやすくすることができる。
【0042】
また、図8に示すように、放射状流路17の、辺方向流路16に面する入口171の下辺171aの高さcは、辺方向流路16の、放射状流路17に面する出口161の下辺161aの高さdより、高く設けられている。なお、放射状流路17及び辺方向流路16の上面の高さは一致し、上板11の下面11bに相当する。説明の便宜上、高さの基準位置は、気流制御板10の下板12の下面としている。
このような構造により、辺方向流路16におけるエアの圧力損失の低下を抑制することができ、気流を主に辺方向流路16で流通させることができる。なお、上記のように放射状流路17の流路断面積は外周側に向かうにしたがって徐々に大きくなるので、一旦、辺方向流路16から放射状流路17へエアが流入すれば、スムーズに排出口から排出される。
【0043】
[塗布装置の動作]
次に、以上のように構成された塗布装置100の動作を説明する。
【0044】
ディスペンサー6から、保持ヘッド1に保持された基板W上にレジスト液31が供給される。保持ヘッド1が基板Wを回転させながら、ディスペンサー6がレジスト液31を基板W上に吐出してもよいし、ディスペンサー6が基板W上にレジスト液31を吐出し終えた後、基板Wが回転を開始してもよい。
【0045】
基板Wの回転数は、1000〜3000rpm、典型的には1500rpmである。保持ヘッド1が基板Wを回転させることで、遠心力によりレジスト液が基板W上で拡散する。レジスト液は、遠心力及び表面張力により、基板Wの周縁部から隙間33を介して各気流制御板10の上板11の上面11a及び下面11bを伝って拡散し、外周側へ向かう。
【0046】
一方、回転する気流制御ユニット5の気流制御板10では、導入口13からエアが導入され、導入されたエアは、主に辺方向流路16内を流れ、排出穴14から排出される。排出穴14の開口面積の方が導入口13のそれより小さいので、導入口13から導入されたエアは、辺方向流路16ではエアの圧力損失が抑制される。これにより、辺方向流路16から放射状流路17へもエアが流れる。図7に示すように、特に、隙間33を介して上板11の下面11bに周り込んだレジスト液31は、表面張力により下面11bである流路面に貼り付きながら、遠心力及び放射状流路17を流れるエアにより排出口15から排出される。
【0047】
このように、主に導入口13から導入され、内部流路20でその経路が制御された気流により、レジスト液31が外周側へ排出される。その結果、従来のような溶剤の吐出機構や真空吸引機構等の複雑な構成を用いることなく、レジスト液31が基板Wの裏面側に回り込んで付着することを抑制することができる。また、本実施形態では、レジスト液31が基板Wの側面Wsにも付着することを抑制することができる。
【0048】
また、本実施形態では、複数の放射状流路17を形成するために、複数のガイド羽根18が設けられているので、気流制御板10の外周面19の排出口15から回転方向で均等にエア及びレジスト液31を排出することができる。
【0049】
本実施形態では、上記でも説明したが、放射状流路17の流路断面積が気流制御板10の外周側へ向かうにしたがって増えるように形成されている。これにより放射状流路17での圧力損失を促進させ、エア及びレジスト液31を排出口15から排出しやすくすることができる。
【0050】
本発明に係る実施形態は、以上説明した実施形態に限定されず、他の種々の実施形態が考えられる。
【0051】
例えば、気流制御板10において、放射状流路17の底面17aは必ずしも斜面でなくてもよい。図9に示すように、放射状流路17の底面27aは水平面であってもよい。あるいは、放射状流路17の流路断面積を外周側へ向かうにしたがって大きくするために、図10に示すように、上板21の下面21bが斜面(外周側に向かうにしたがって上昇する斜面)になっていてもよい。
【0052】
辺方向流路16から放射状流路17への段差は必ずしもなくてもよい。
【0053】
図5に示した、放射状流路17の幅bは一定でもよい。
【0054】
上記気流制御板10では、各放射状流路17は、径方向で延びるように設けられた。しかし、これら各放射状流路17に代えて、平面で見て、径方向から所定の角度だけずれた方向に延びる流路が設けられていてもよい。辺方向流路16も上記実施形態に限られず、例えば回転方向の円形に沿って曲線状に形成されていてもよい。
【0055】
上記実施形態では、被処理板として矩形のガラス基板が用いられたが、半導体ウェハ等の円形に近い形状の基板が用いられてもよい。その場合、気流制御板10の内周側は、基板Wの形状に沿って円形に近い形状を有する。また、その場合、1つの気流制御ユニットの気流制御板は、少なくとも2つ、典型的には3つ以上設けられればよい。あるいは、基板Wとしては、マスク基板に限られず、例えば図11に示すように、ディスプレイ装置に搭載される長方形のガラス基板Wgを処理する塗布装置100に、気流制御ユニット35が設けられてもよい。ただし、気流制御ユニット35の全体外形が円形に形成される場合、基板Wgの長辺及び短辺にそれぞれ対応する気流制御板30a及び30bの大きさが異なる。
【0056】
上記実施形態では、平面で見た各気流制御板10の外周側の縁部の形状は、すべて同じ曲率の円形の一部の形状となっていたが、必ずしも円形でなくてもよい。
【0057】
塗布液としては、例えばレジスト液に限られず、現像液、またはその他の薬液が用いられてもよい。すなわち、回転の遠心力により塗布液を被処理板上で拡散させることが可能なすべての装置に本発明を適用可能である。
【0058】
気流制御板10が制御する対象となる気体としてエアに限られず、窒素、アルゴン等の不活性気体であってもよいし、エアとこの不活性気体との混合気体であってもよい。あるいは、別の気体であってもよい。
【符号の説明】
【0059】
W…基板
R…回転方向
1…保持ヘッド
5、35…気流制御ユニット
6…ディスペンサー
10、30a、30b…気流制御板
11、21…上板
11a…上面
11b、21b…下面
13…導入口
14…排出穴
15…排出口
16…辺方向流路
17、27…放射状流路
18…ガイド羽根
19…外周面
20…内部流路
31…レジスト液
33…隙間
100…塗布装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理板を保持する保持部と、
前記保持部に保持された前記被処理板上に塗布液を供給する供給機構と、
前記供給機構により供給された前記塗布液を、遠心力を利用して前記被処理板上で拡散させるように、前記保持部を回転させる回転駆動部と、
前記保持部に保持された前記被処理板の周縁部から隙間をあけて配置された上壁板と、前記被処理板の回転方向に向けて開口した気体の導入口と、外周面と、前記外周面に設けられた排出口と、前記導入口及び前記排出口を連通し前記上壁板の下面を流路面として含む内部流路とを有し、前記被処理板の外周側で前記保持部と一体的に回転可能に配置された気流制御部と
を具備する塗布装置。
【請求項2】
請求項1に記載の塗布装置であって、
前記気流制御部は、
第1の開口面積を有する前記導入口と、
前記第1の開口面積より小さい第2の開口面積を有し、前記回転方向で前記導入口と対向するように配置された排出穴とを有し、
前記内部流路は、前記導入口、前記排出穴及び前記排出口を連通する塗布装置。
【請求項3】
請求項2に記載の塗布装置であって、
前記内部流路は、
前記導入口及び排出穴を連通する第1の流路と、
前記第1の流路及び前記排出口を連通する第2の流路と
を有する塗布装置。
【請求項4】
請求項3に記載の塗布装置であって、
前記内部流路は、複数の前記第2の流路を有し、
前記気流制御部は、前記複数の第2の流路を形成するための、前記気流制御部の外周側へ向けて延びる複数のガイド羽根を有する塗布装置。
【請求項5】
請求項3または4に記載の塗布装置であって、
前記第2の流路は、前記第2の流路の流路断面積が前記気流制御部の外周側へ向かうにしたがって増えるように形成されている塗布装置。
【請求項6】
請求項3から5のうちいずれか1項に記載の塗布装置であって、
前記第2の流路の、前記第1の流路に面する入口の下辺の高さは、前記第1の流路の、前記第2の流路に面する出口の下辺の高さより高く設けられている塗布装置。
【請求項7】
請求項1から6のうちいずれか1項に記載の塗布装置であって、
前記上板の少なくとも表面の材料は、樹脂でなる塗布装置。
【請求項8】
回転可能な保持部に保持された被処理板の周縁部から隙間をあけて配置可能な上壁板と、
前記被処理板の回転方向に向けて開口し、前記被処理板上に供給された塗布液を、遠心力を利用して前記被処理板上で拡散させるように前記保持部が回転するときに気体を導入する導入する導入口を有する、前記回転方向の端部と、
前記導入口から導入された前記気体及び前記被処理板から拡散した前記塗布液を排出する排出口を有する外周面と、
前記導入口及び前記排出口を連通し、前記上壁板の下面を流路面として含む内部流路と
を具備する気流制御板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−14588(P2011−14588A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−155105(P2009−155105)
【出願日】平成21年6月30日(2009.6.30)
【出願人】(000101710)アルバック成膜株式会社 (39)
【Fターム(参考)】