説明

塗布装置

【課題】異物検出部が異物を検出してからノズルが異物に到るまでの距離を長くする必要がなく、装置の大型化を抑制することができる塗布装置を提供する。
【解決手段】本発明の塗布装置11は、走行機構25によって口金部22を走行させながら、口金部22のノズル44から流出した塗布液をステージ14上の基板12に塗布する。そして、塗布装置11は、ノズル44よりも走行方向の先方側に存在する異物Pを検出する異物検出部45,33と、異物検出部45,33によって異物Pが検出されたときに、口金部22を上方に退避させるように昇降機構24を制御する昇降制御部(退避制御部)32と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上に塗布液を塗布する塗布装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイやプラズマディスプレイ等のフラットパネルディスプレイには、レジスト液が塗布されたガラス基板(以下、塗布基板とも言う)が使用されている。そして、この塗布基板は、ガラス基板上にレジスト液を均一に塗布する塗布装置を用いて作製される。
【0003】
このような塗布装置として、下記特許文献1には、基板を保持する基板保持盤と、基板保持盤に保持された基板の上方に配置され、下端部のノズルからレジスト液を流出する塗布ヘッド(塗布部)と、基板保持盤に対して塗布ヘッドを相対的に水平に移動させる相対移動手段とを備え、基板保持盤に対して塗布ヘッドを相対的に水平に移動させながら塗布ヘッドから塗布液を流出し、基板保持盤上の基板にレジスト液を塗布するものが開示されている。
【0004】
また、基板の上面と塗布ヘッドのノズルとの間は、通常、数十μm〜百数十μmの僅かな隙間しかないので、基板上に異物が存在していたり、基板保持盤上に異物が存在することによって基板が浮き上がっていたりすると、塗布ヘッドのノズルが異物や基板に衝突して、ノズルや基板を損傷してしまうおそれがある。
【0005】
このため、特許文献1の塗布装置は、図6に示すように、塗布ヘッド122のノズル144よりも基板保持盤114に対する相対移動方向X1の先方側において、異物Pに衝突するように設けられた板状部材(衝突部)150と、この板状部材150の振動を検出する振動センサ151と、この振動センサ151によって振動が検出されたときに塗布ヘッド122の相対移動を強制停止させる制御手段とを備えている。そして、この塗布装置は、基板112上の異物Pに板状部材150を衝突させることによって、この衝突による振動を振動センサ151によって検出し、その検出信号に基づいて塗布ヘッド122のX1方向への移動を強制停止することによって、塗布ヘッド122のノズル144が異物Pに衝突するのを未然に防止するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3653688号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の塗布装置では、振動センサ151が振動を検出してから実際に塗布ヘッド122の相対移動が停止するまでに時間がかかるため、この時間の塗布ヘッド122の移動距離(停止距離)の分だけ塗布ヘッド122のノズル144と板状部材150との間隔Lをあけておかなければならない。
一方、近年のレジスト液等の塗布性能の向上に伴い、基板保持盤114に対する塗布ヘッド122の相対移動速度は高速化する傾向にある。そのため、塗布ヘッド122の停止距離も長くなり、塗布ヘッド122のノズル144と板状部材150との間隔Lをより長くする必要が生じている。しかし、塗布ヘッド122と板状部材150との間隔Lを長くすると装置が大型化するという問題がある。また、異物Pとの衝突以外の要因で塗布ヘッド122がその重心位置を中心として振動した場合、この振動による変位は塗布ヘッド122の重心位置から離れるほど大きくなるため、塗布ヘッド122と板状部材150(振動センサ151)との間隔Lを長くすると、異物との衝突以外の振動を誤検出し易くなるという問題もある。
【0008】
本発明はこのような問題を解決するためになされたもので、異物検出部が異物を検出してからノズルが異物等に到るまでの距離を長くしなくてもノズルと異物等との衝突を回避することができ、装置の大型化を抑制することが可能な塗布装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明の塗布装置は、基板を水平に保持する保持台と、前記保持台上の前記基板に塗布液を流出するノズルを有する塗布部と、前記塗布部を前記保持台に相対して水平方向に走行させる走行機構と、前記塗布部を上下方向に昇降させる昇降機構と、前記基板に塗布液を塗布するため前記走行機構により前記塗布部を走行させた際に、前記ノズルよりも走行方向の先方側に存在する異物を検出する異物検出部と、前記異物検出部によって異物が検出されたときに、前記塗布部を上方に退避させるように前記昇降機構を制御する退避制御部と、を備えていることを特徴とする。
【0010】
本発明の塗布装置は、異物検出部によって異物を検出すると、塗布部を上方に退避させるように昇降機構が退避制御部によって制御されるので、塗布部の走行速度の高速化等に対応するために、異物検出部が異物を検出してからノズルが異物に到るまでの距離(異物検出部からノズルまでの間隔)を長くしなくても、ノズルと異物等との衝突を回避することが可能となり、装置の大型化を抑制することができる。
【0011】
(2)前記異物検出部は、前記塗布部のノズルよりも走行方向の先方側に設けられていて、前記基板上の異物又は前記保持台上に異物がある場合には前記基板の表面に衝突可能に設けられた衝突部と、前記異物又は前記基板の表面との衝突に起因する前記衝突部の高さの変化を検出する衝突検出部と、を備えていることが好ましい。
この構成によれば、衝突検出部は、異物や基板表面(以下、異物等ともいう)との衝突に起因する衝突部の高さの変化を検出するので、当該衝突に起因する振動を振動センサによって検出する場合に比べて誤検出を少なくし、検出精度を高めることができる。すなわち、衝突部の振動を振動センサによって検出する場合、衝突部と異物等との衝突以外に起因して発生する振動、例えば、塗布動作の開始時や終了時に、塗布部が加速、減速を行うことに起因する走行方向の振動をも誤って検出してしまうことがあるが、本発明のように衝突部の高さの変化を検出する場合はこのような問題を生じることがほとんどなく、衝突部と異物等との衝突を正確に検出することができる。
【0012】
(3)前記衝突部は、前記塗布部とともに上下昇降可能なように当該塗布部に一体的に設けられているのが好ましい。また、塗布装置が、前記塗布部の高さを検出する高さ検出部と、この高さ検出部の検出結果に基づいて前記塗布部の高さを所定に制御する昇降制御部とをさらに備えている場合には、前記高さ検出部が、前記衝突検出部を兼ねていることが好ましい。
この構成によれば、塗布部の高さ制御のために使用される高さ検出部が、異物等との衝突に起因する衝突部の高さの変化を検出するためにも使用されるので、衝突部の高さの変化を検出するために別途センサを設ける必要がなくなる。したがって、部品点数の削減が可能となり、製造コストを抑制することができる。
【0013】
(4)前記衝突部における走行方向の先方側の下部には、同方向の先方側ほど高位となるように傾斜する傾斜面が形成されていることが好ましい。この構成によれば、基板等に異物が存在すると、傾斜面とされた衝突部の下面が異物等に衝突し、この衝突に伴って衝突部には上向き成分を含む反力が作用する。したがって、衝突部は、異物等との衝突によって高さが変化しやすくなり、異物の検出精度をより高めることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の塗布装置は、基板上や保持台上の異物を検出した場合に、塗布部を上方へ退避させることによって異物検出部が異物を検出してからノズルが異物等に到るまでの距離を長くする必要がなく、装置の大型化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態に係る塗布装置を示す斜視図である。
【図2】同塗布装置における塗布ユニットのユニット支持部付近を拡大して示す正面図である。
【図3】同塗布装置における昇降機構の概略図である。
【図4】同塗布装置における制御装置の構成を示すブロック図である。
【図5】本発明の他の実施形態に係る塗布装置の衝突部を示す拡大概略図である。
【図6】従来技術に係る塗布装置の塗布部を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に本発明を実施するための形態について図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る塗布装置11を示す斜視図、図2は、同塗布装置11における塗布ユニット15のユニット支持部23付近を拡大して示す正面図である。図1および図2に示すように、塗布装置11は、供給される薄板状の基板12に薬液やレジスト等の液状物(以下、塗布液ともいう)を塗布するものである。この塗布装置11は、基台13と、基板12を載置するためのステージ(保持台)14と、このステージ14に対し特定方向に移動可能に構成される塗布ユニット15とを備えている。
なお、以下の説明では、塗布ユニット15が移動する方向をX軸方向、これと水平面上で直交する方向をY軸方向、X軸方向およびY軸方向の双方に直交する上下方向をZ軸方向とする。
【0017】
基台13には、ステージ14が載置され、このステージ14のY軸方向の両側にはスライドレール17が設けられている。そして、このスライドレール17に塗布ユニット15が載置されている。
ステージ14は、搬入された基板12をその上面に載置して保持するものである。ステージ14の表面には複数の吸引孔(図示略)が形成され、これらの吸引孔には真空ポンプ(図示略)が接続されている。そして、真空ポンプを作動させると、負圧によって基板12がステージ14の表面に吸引され、当該表面上に保持される。また、ステージ14には、基板12を昇降動作させる基板昇降機構(図示略)が設けられている。
【0018】
スライドレール17は、塗布ユニット15の走行をガイドするものであり、X軸方向に延伸して設けられている。スライドレール17は、Z軸方向に垂直な方向とY軸方向に垂直な方向とに、平坦かつ平滑なガイド面19を有している。このガイド面19は、後述する塗布ユニット15のエアベアリング20と対向している。
【0019】
塗布ユニット15は、ステージ14に載置された基板12に塗布液を塗布するためのものであり、Y軸方向に沿って延び塗布液を流出する口金部(塗布部)22と、この口金部22の両端部分に設けられたユニット支持部23とを有している。
ユニット支持部23は、口金部22をZ軸方向に昇降させるとともに、この口金部22をX軸方向に走行させるためのものである。すなわち、このユニット支持部23は、口金部22をZ軸方向に昇降させる昇降機構24と、口金部22をX軸方向に走行させる走行機構25とを有している。また、昇降機構24および走行機構25は、制御装置26(図4参照)によって動作制御される。なお、制御装置26は、CPUからなる演算手段、プログラムやデータを記憶するROM、RAM、HDD等の記憶手段、外部に対する信号を入出力するための入出力インターフェース等を含むコンピュータからなり、記憶手段に記憶された各種プログラムを演算手段が実行するように構成されている。
【0020】
図1および図2に示すように、昇降機構24は、Z軸方向に延びるガイドレール28と、口金部22と連結されるスライダ29とを有している。このガイドレール28には、スライダ29がガイドレール28に沿ってスライド自在に取り付けられている。図3は、昇降機構24の概略図であり、昇降機構24は、駆動体としてのサーボモータ30と、このサーボモータ30により駆動されるボールねじ機構31とを有しており、このボールねじ機構31にスライダ29又は口金部22が連結されている。制御装置26は、サーボモータ30を駆動制御する昇降制御部32を一機能部として備えており(図4も参照)、昇降制御部32は、サーボモータ30を制御して口金部22をZ軸方向に昇降させるとともに、任意の位置で停止させるように構成されている。
【0021】
また、昇降機構24は、口金部22の上下方向の変位を検出する高さ検出部33を備えている。この高さ検出部33は、光学式又は磁気式等のリニアスケールからなっており、口金部22に並設された第1スケール34と、この第1スケール34に対向する位置に設けられ、口金部22とともに上下方向に昇降する第1読取部35とを備えている。そして、高さ検出部33は、第1読取部35によって第1スケール34を読み取ることで口金部22の高さを検出するように構成されている。第1読取部35によって検出された信号は制御装置26の昇降制御部32に入力され、この入力された信号に応じてサーボモータ30が昇降制御部32によって制御される。
【0022】
図1および図2に示すように、走行機構25は、口金部22をX軸方向に走行させるためのものであり、スライド支持部36とリニアモータ37とを有している。
このスライド支持部36は、スライドレール17との間に設けられるエアベアリング20によってスライドレール17上に支持されている。そして、リニアモータ37を制御装置26が駆動制御することにより、スライド支持部36がX軸方向に移動する。具体的には、スライド支持部36に設けられたエアベアリング20には管路を通じてコンプレッサ(図示略)が接続されており、このコンプレッサの作動でエアベアリング20からガイド面19にエアが供給される。そして、エアベアリング20とガイド面19との間にエアが供給されることにより、スライド支持部36がガイド面19から浮上し、この状態でリニアモータ37を駆動させることにより、スライド支持部36がX軸方向に移動する。
【0023】
図4に示すように、制御装置26は、リニアモータ37を制御する走行制御部39を一機能部として備えており、この走行制御部39は、リニアモータ37を制御して口金部22をX軸方向に走行させるとともに、任意の位置で停止させるように構成されている。
また、スライド支持部36には、塗布ユニット15のX軸方向における位置を検出する走行位置検出部40が設けられている。この走行位置検出部40は、図1および図2に示すように、スライドレール17上にガイド面19に沿って設けられた第2スケール41と、この第2スケール41と対向する位置に設けられた第2読取部42とを備え、この第2読取部42によって第2スケール41を読み取ることにより、塗布ユニット15の走行位置が検出される。第2読取部42によって検出された信号は、走行制御部39に入力され、走行制御部39は、入力された信号に基づいてリニアモータ37を制御する。また走行制御部39は、入力された信号を元に塗布ユニット15の走行速度を演算する機能を有している。
【0024】
図1および図2に示すように、口金部22は、ステージ14上に保持された基板12の上面に塗布液を塗布するものである。この口金部22は、Y軸方向に延びる形状を有する柱状部材であり、ステージ14の表面と対向する側に塗布液を流出するノズル44を備えている。このノズル44は、ステージ14の表面側へ向けて突出し、この突出した部分にはY軸方向に延びる形状のスリットが形成され、このスリットを通じて口金部22に供給された塗布液が基板12の表面に流出される。
【0025】
口金部22は、走行制御部39によってリニアモータ37を制御することにより、ステージ14のX軸方向の端部側に配置された状態から矢印X1方向に走行しながら基板12の表面に塗布液を塗布する。
また、基板12の表面に塗布液を塗布する際、口金部22の高さは、ノズル44と基板12の表面との隙間が約数十μm〜百数十μmの間の所定値となるように設定される。具体的には、塗布液を塗布している間、口金部22の高さは高さ検出部33(図3参照)によって常時検出され、その検出信号は制御装置26の昇降制御部32に入力される。そして、口金部22が所定の高さに維持されるように、サーボモータ30が昇降制御部32によってフィードバック制御されるようになっている。
【0026】
図3に示すように、口金部22の下面には衝突部45が設けられている。この衝突部45は、口金部22と同様にY軸方向に延び、このY軸方向に直交する断面形状が略L字形状に形成されている。そして、衝突部45は、口金部22の走行方向X1の先方側であって、ノズル44に対して同方向に所定の間隔Lをあけた位置に配置されている。また、衝突部45は口金部22に一体的に固定されており、口金部22とともに上下昇降および水平移動するように構成されている。衝突部45の下端位置は、ノズル44の先端と略同じかやや低い高さに設定されている。
【0027】
塗布液を塗布している間、基板12上に異物Pが存在すると、矢印X1方向に走行している口金部22の衝突部45がこの異物Pに衝突する。また、ステージ14上に異物Pが存在すると、その上に載せられた基板12が部分的に浮き上がり、衝突部45が基板12の表面に衝突する。そして、これらの衝突が発生すると、口金部22は上方(Z軸方向)に持ち上げられるように急激に変位する。この変位は、高さ検出部33の第1読取部35が第1スケール34を読み取ることによって検出され、その検出信号は制御装置26に入力される。
【0028】
このように衝突部45が異物P等に衝突することによって生じる口金部22の変位は、口金部22の通常の走行によって生じる微小な上下動より大きく、両者は明らかに区別することができる。したがって、制御装置26は、第1読取部35によって検出された変位が所定の閾値以上である場合には、その変位を異物P等との衝突に起因するものであると判別する。
【0029】
そして、図4に示すように、制御装置26の昇降制御部32は、異物P等との衝突に起因する変位の検出信号(衝突信号)に基づき、口金部22を上昇させるようにサーボモータ30を制御する。そして、この口金部22の上昇によって、異物Pに対するノズル44の衝突が回避される。
また、制御装置26の走行制御部39は、入力された衝突信号に基づき、口金部22の走行を停止させるようにリニアモータ37を制御する。そして、この口金部22の停止によっても異物Pに対するノズル44の衝突が回避されるようになっている。
【0030】
ここに、衝突部45および高さ検出部33は、基板12上またはステージ14上に存在する異物Pを検出する異物検出部を構成し、制御装置26の昇降制御部32は、異物Pから口金部22を上方に退避させる退避制御部として機能し、走行制御部39は、異物Pにノズル44が衝突しないように口金部22を停止させる停止制御部として機能している。
【0031】
本実施形態の塗布装置11は、異物検出部によって基板12上の異物Pを検出すると、口金部22を停止させるだけでなく上方に退避させているので、従来(図6参照)ほどノズル44の先端と衝突部45との間隔Lを長くする必要がなく、装置の大型化を抑制することができる。
すなわち、従来は、単に口金部22の走行を停止させていただけであるので、異物Pを検出してからリニアモータ37が停止動作を開始して実際に口金部22が停止するまでの間に口金部22が移動する距離(停止距離)よりも、ノズル44と衝突部45との間隔Lを長くしなければならず、この停止距離は、口金部22の走行速度が速くなるほど長くなることから間隔Lもより長くする必要があったが、本実施形態では、異物Pの高さよりも若干高く口金部22を上昇させれば異物Pとの衝突を回避することができ、しかもこの上昇量は上記停止距離よりも十分に小さいので、ノズル44と衝突部45との間隔Lを従来ほど長くする必要がない。
【0032】
また、ノズル44と衝突部45(第1読取部35)との間隔Lが長いと、口金部22の重心位置を中心として振動が発生した場合に、第1読取部35の位置における振動(上下動)が大きくなり、異物Pとの衝突に起因する高さ変化として誤検出される可能性が生じるが、本実施形態の場合は、ノズル44と衝突部45(第1読取部35)との間隔Lをそれほど長くする必要がないので、このような問題も生じ難くなる。
【0033】
さらに、本実施形態では、口金部22の高さ制御に使用する高さ検出部33によって衝突部45と異物P等との衝突を検出しているので、当該衝突を検出するための専用のセンサを別途設ける必要がなく、部品点数の削減による製造コストの抑制が可能となる。
【0034】
図5は、本発明の他の実施形態に係る塗布装置の衝突部を示す拡大概略図である。本実施形態の衝突部45の下部には傾斜面45aが形成されている。具体的に、この傾斜面45aは、衝突部45における走行方向X1の先方側の角部を、同方向X1に関する幅aと高さbで面取りすることによって形成されている。この幅aと高さbとはb<aの関係にあり、したがって、水平面に対する傾斜面45aの傾斜角度θは、0<θ<45°とされている。
【0035】
本実施形態の場合、基板12上に存在する異物Pに対して衝突部45の傾斜面45aが衝突すると、衝突部45は、傾斜面45aの傾斜角度θに基づいた上向きの成分を含む反力を受ける。そのため、本実施形態では、異物Pとの衝突によって衝突部45を上方に変位させやすく、この変位に基づいて異物の検出精度を高めることが可能となっている。また、傾斜面45aの傾斜角度θを0<θ<45°とすることによって、衝突部45に作用する反力の上向き成分を大きくすることができ、衝突部45をより上方に変位させやすくすることができる。また、衝突部45が異物Pに衝突した後、走行方向X1へ走行することによって、傾斜面45aに沿って口金部22が上昇しやすくなり、異物Pとノズル44との衝突をより確実に回避することが可能となる。
【0036】
本発明は、上記実施形態に限定されることなく適宜設計変更可能である。
例えば、衝突部45の高さの変化を検出する衝突検出部は、サーボモータ30への供給電流を検出する電流計であってもよい。衝突部45が異物P等に衝突することによって口金部22が上昇すると、サーボモータ30のトルクが変化して供給電流も変化する。したがって、この供給電流の値の変化を検出すれば衝突部45が異物に衝突したことを検出することができる。
【0037】
上記実施形態では、衝突部45が口金部22とは別の部材で形成され、口金部22に固定されることによって一体化されているが、口金部22自身を加工することによって衝突部45を一体形成してもよい。
また、衝突部45は、口金部22とは別に単独で上下に昇降する構造であってもよい。この場合、高さ検出部33とは別に、衝突部45の高さを検出する衝突検出部を備えればよい。
【0038】
本発明の塗布装置は、衝突部45と異物Pとの衝突を検出するために、高さ検出部33とは別のセンサを備えていてもよい。例えば、従来(図6参照)と同様に、口金部22の振動を検出する振動センサを設け、この振動センサの検出信号により、口金部22を上昇動作および停止動作させるように構成してもよい。
但し、振動センサをZ軸方向に検知感度が最大となるように設置しても、塗布装置のようなXYZ方向に駆動部をもつ装置は、検知感度が最大となる方向以外の振動をも検知してしまうため、例えば、塗布動作の開始時や終了時に口金部22の加速や減速に伴って発生する振動をも誤検出してしまうおそれがある。この点において、上記実施形態では、衝突部45が異物P等に衝突した場合に、当該衝突部45の高さの変化(Z軸方向の変位)を高さ検出部33によって検出しているので、塗布動作の開始終了時等に誤検出が生じることもほとんどない。
また、別のセンサとして、レーザー光等を利用した光学的センサを用いてもよい。
【0039】
上記実施形態では、塗布ユニット15をスライドレール17上で移動させることによって、口金部22をステージ14に対してX軸方向に走行させているが、塗布ユニット15を固定とし、ステージ14をX軸方向に移動させることによって、相対的に口金部22をステージ14に対してX軸方向に走行させてもよい。
【符号の説明】
【0040】
11 塗布装置
12 基板
14 ステージ(保持台)
15 塗布ユニット
22 口金部(塗布部)
24 昇降機構
25 走行機構
26 制御装置
32 昇降制御部(退避制御部)
33 高さ検出部(異物検出部)
39 走行制御部(停止制御部)
44 ノズル
45 衝突部(異物検出部)
45a 傾斜面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を水平に保持する保持台と、
前記保持台上の前記基板に塗布液を流出するノズルを備えた塗布部と、
前記塗布部を前記保持台に相対して水平方向に走行させる走行機構と、
前記塗布部を上下方向に昇降させる昇降機構と、
前記基板に塗布液を塗布するため前記走行機構により前記塗布部を走行させた際に、前記ノズルよりも走行方向の先方側に存在する異物を検出する異物検出部と、
前記異物検出部によって異物が検出された場合に、前記塗布部を上方に退避させるように前記昇降機構を制御する退避制御部と、
を備えていることを特徴とする塗布装置。
【請求項2】
前記異物検出部は、前記塗布部のノズルよりも走行方向の先方側に設けられていて、前記基板上の異物又は前記保持台上に異物がある場合には前記基板の表面に衝突可能に設けられた衝突部と、前記異物又は前記基板表面との衝突に起因する前記衝突部の高さの変化を検出する衝突検出部と、を備えている請求項1に記載の塗布装置。
【請求項3】
前記衝突部が前記塗布部とともに昇降可能なように当該塗布部に一体的に設けられ、
前記塗布部の高さを検出する高さ検出部と、この高さ検出部の検出結果に基づいて前記塗布部の高さを所定に制御する昇降制御部とをさらに備え、
前記高さ検出部が、前記衝突検出部を兼ねている請求項2に記載の塗布装置。
【請求項4】
前記衝突部における走行方向の先方側の下部に、同方向の先方側ほど高位となるように傾斜する傾斜面が形成されている請求項2又は3に記載の塗布装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−232326(P2010−232326A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−76902(P2009−76902)
【出願日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(000219314)東レエンジニアリング株式会社 (505)
【Fターム(参考)】