説明

塗布装置

【課題】インクの流れを安定化させる。
【解決手段】ノズルプレートNpは、押さえリング91によって上から押さえられる。その押さえリング91の上にフィルタ84がセットされ、さらに押さえリング92によってフィルタ84がヘッドシリンダ81内に固定される。ノズルプレートNpは、インク供給側からみて、長方形のノズルNzを有している。ノズルNzが長方形であるため、インクは、その断面が長方形となって吐出され、表面張力により、次第に、断面形状が変化する。この際、インクが旋回してインクの流れが安定化し、液柱Lpが維持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗布装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)は、電場を加えることによって発光する蛍光性の有機化合物によって形成されたものであり、これを用いた有機発光ダイオード(Organic Light Emitting Diode:以下、OLEDと記す)素子を各画素に有してなる表示パネルを備えた表示装置は次世代ディスプレイデバイスとして注目されている。
【0003】
有機EL素子は、アノード電極と、カソード電極と、これらの一対の電極間に形成され、例えば発光層、正孔注入層、等を有する有機EL層と、を備える。有機EL素子では、発光層において正孔と電子とが再結合することによって発生するエネルギーによって発光する。
【0004】
このような有機EL素子の発光層、正孔注入層等は、隔壁によって仕切られた領域に、溶液を塗布し、溶媒を乾燥させることによって形成される。溶液の塗布には、例えばノズルプリンティング方式等の塗布装置が用いられる。
【0005】
この塗布装置は、ヘッド部を備え、ヘッド部の先端には、塗布する溶液を吐出する1つのノズルが設けられている。そして、加圧することによって、吐出する溶液が液柱となって塗布される。
【0006】
例えば、特許文献1には、有機EL材料を塗布すべき所定のパターン形状に応じた溝を基板上に形成しておき、この溝にノズルを沿わせるように基板とノズルとを相対的に移動させて、前記ノズルからの有機EL材料を前記溝内に流し込んで塗布する過程を備えたことを特徴とする有機EL表示装置の製造方法が開示されている。
【0007】
図15に示すように、このノズルプレートNpには、ノズルプレートNp面上で円形のノズルNzが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−75640号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、ノズルNzの形が円形である場合、生産性を向上させるために、ノズルNzを高速で走査すると、溶液の流れが不安定になり、液柱が液滴となってしまう場合がある。
【0010】
本発明は、このような従来の問題点に鑑みてなされたもので、溶液の流れを安定化させることが可能な塗布装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的を達成するため、本発明の第1の観点に係る塗布装置は、
溶液を貯蔵する溶液タンクと、
前記溶液タンクから前記溶液が供給されて前記溶液を基板に塗布するヘッド部と、を備え、
前記ヘッド部は、
前記溶液タンクから供給された前記溶液が充填されるヘッドシリンダと、
前記ヘッドシリンダ下部に配置され、前記ヘッドシリンダに充填された前記溶液を旋回させて吐出するノズルが設けられたノズルプレートと、を備えたことを特徴とする。
【0012】
前記ノズルプレートは、前記溶液を旋回させて吐出する前記ノズルとして、前記ノズルプレートの面上での形を多角形とするノズルが設けられたものであってもよい。
【0013】
前記ノズルプレートは、前記多角形として長方形のノズルが設けられたものであってもよい。
【0014】
前記ノズルプレートは、前記溶液を旋回させて吐出する前記ノズルとして、前記ノズルプレートの面上での形を、角を有する形とするノズルが設けられたものであってもよい。
【0015】
前記ノズルプレートは、前記溶液を旋回させて吐出する前記ノズルとして、前記ノズルプレートの面上での形を楕円形とするノズルが設けられたものであってもよい。
【0016】
前記溶液は、有機EL材料であってもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、溶液の流れを安定化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態1に係る塗布装置を用いて製造された発光装置が組み込まれる電子機器(デジタルカメラ)を示す図である。
【図2】塗布装置を用いて製造された発光装置が組み込まれる電子機器(コンピュータ)を示す図である。
【図3】塗布装置を用いて製造された発光装置が組み込まれる電子機器(携帯電話)を示す図である。
【図4】発光装置の構成を示す図である。
【図5】図4に示す各画素回路の構成を示す回路図である。
【図6】図5に示す画素回路の断面図である。
【図7】発光装置の製造方法を示す図である。
【図8】ノズルプリント法を示す図である。
【図9】塗布装置の構成を示す図である。
【図10】図9に示すヘッド部の構成を示す図である。
【図11】図9に示すヘッド部の断面図である。
【図12】旋回させた液柱を示す図である。
【図13】長方形のノズルが設けられたノズルプレートの図である。
【図14】応用例として、ノズルの種々の形状を示す図である。
【図15】従来のノズルプレートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態に係る電子機器、発光装置、発光装置の製造方法、そして、この発光装置の製造に用いられる塗布装置を図面を参照して説明する。
本実施形態では、ボトムエミッション型の有機EL(electroluminescence)素子を用いたアクティブ駆動方式の発光装置を例に挙げて説明する。ボトムエミッション型の有機EL素子は、有機EL素子の光を有機EL素子が形成された基板を介して外部に出射する構造を有するものである。尚、本実施形態の発光装置は表示装置としても用いられる。
【0020】
発光装置10は、図1に示すようなデジタルカメラ200、図2に示すようなコンピュータ210、図3に示すような携帯電話220等の電子機器に組み込まれる。
【0021】
デジタルカメラ200は、図1(a)及び(b)に示すように、レンズ部201と操作部202と表示部203とファインダー204とを備える。この表示部203に発光装置10が用いられる。
【0022】
図2に示すコンピュータ210は、表示部211と操作部212とを備え、この表示部211に発光装置10が用いられる。
【0023】
図3に示す携帯電話220は、表示部221と、操作部222と受話部223と送話部224とを備え、この表示部221に発光装置10が用いられる。
【0024】
このような発光装置10は、図4に示すように、TFTパネル11と、表示信号生成回路12と、システムコントローラ13と、セレクトドライバ14と、電源ドライバ15と、データドライバ16と、によって構成される。
【0025】
TFTパネル11は、複数の画素回路11(i,j)(i=1〜m、j=1〜n、m、n;自然数)を備えたものである。
【0026】
各画素回路11(i,j)は、それぞれ、画像の1画素に対応する表示画素であり、行列配置される。各画素回路11(i,j)は、図5に示すように、有機EL素子Eと、トランジスタT1,T2と、キャパシタCsと、を備える。ここで、トランジスタT1,T2と、キャパシタCsと、は画素駆動回路DCをなす。
【0027】
有機EL素子Eは、有機化合物に注入された電子と正孔との再結合によって生じた励起子によって発光する現象を利用して発光する電流制御型の発光素子(表示素子)であり、供給された電流の電流値に対応する輝度で発光する。
【0028】
画素駆動回路DCにおけるトランジスタT1,T2は、nチャンネル型のFET(Field Effect Transistor;電界効果トランジスタ)によって構成されたTFT(Thin Film Transistor)である。
【0029】
トランジスタT1は、有機EL素子Eの駆動用トランジスタであり、そのドレインは、アノードラインLa(j)に接続され、ソースは、有機EL素子Eのアノード電極に接続される。
【0030】
トランジスタT2は、有機EL素子Eを選択するスイッチとして機能するトランジスタであり、そのドレインはデータラインLd(i)に接続され、ソースがトランジスタT1のゲートに接続され、ゲートがセレクトラインLs(j)に接続される。
【0031】
キャパシタCsは、トランジスタT1のゲート−ソース間電圧を保持するためのものであり、トランジスタT1のゲート−ソース間に接続される。
【0032】
尚、赤(R)、青(B)、緑(G)、の3色の場合、発光装置10は、このような画素回路11(i,j)を各色毎に備える。
また、画素回路11(i,j)は3つのトランジスタを備えたものであってもよい。
【0033】
表示信号生成回路12は、例えば、コンポジット映像信号、コンポーネント映像信号のような映像信号Imageが外部から供給され、供給された映像信号Imageから輝度信号のような表示データPic、同期信号Syncを取得するものである。表示信号生成回路12は、取得した表示データPic、同期信号Syncをシステムコントローラ13に供給する。
【0034】
システムコントローラ13は、表示信号生成回路12から供給された表示データPic、同期信号Syncに基づいて、表示データPicの補正処理、書き込み動作、発光動作を制御するものである。
【0035】
表示データPicの補正処理は、表示信号生成回路12から供給された表示データPicを各画素回路11(i,j)の駆動トランジスタ(トランジスタT1)の閾値電圧Vthや電流増幅率βの値に基づいて補正した階調信号を生成する処理である。
【0036】
また、書き込み動作は、各画素回路11(i,j)のキャパシタCsに生成された階調信号に応じた電圧を書き込む動作であり、発光動作は、キャパシタCsに保持された電圧に応じた電流を有機EL素子Eに供給して、有機EL素子Eを発光させる動作である。
【0037】
システムコントローラ13は、このような制御を行うため、各種制御信号を生成してセレクトドライバ14、電源ドライバ15、データドライバ16に供給するとともに、データドライバ16に、生成した階調信号を供給する。
【0038】
セレクトドライバ14は、TFTパネル11の行を、順次、選択するドライバであり、例えば、シフトレジスタによって構成される。セレクトドライバ14は、それぞれ、セレクトラインLs(j)(j=1〜n)を介して各画素回路11(i,j)のトランジスタT1,T2のゲートに接続される。
【0039】
セレクトドライバ14は、システムコントローラ13から供給された制御信号に基づいて、順次、第1行目の画素回路11(1,1)〜11(m,1)、・・・、第n行目の画素回路11(1,n)〜11(m,n)に、Hiレベルのセレクト信号Vselect(j)を出力することにより、TFTパネル11の行を、順次、選択する。
【0040】
電源ドライバ15は、アノードラインLa(1)〜La(n)に、それぞれ、電圧VL又はVHの信号Vsource(1)〜Vsource(n)を出力するドライバである。電源ドライバ15は、それぞれ、アノードラインLa(j)(j=1〜n)を介して、各画素回路11(i,j)のトランジスタT1のドレインに接続される。
【0041】
データドライバ16は、システムコントローラ13から供給された階調信号に基づいて、各データラインLd(1)〜Ld(m)に電圧信号Sv(1)〜Sv(m)を印加するドライバである。
【0042】
なお、発光装置10では、偶数個の発光素子を一組の画素として固定して用いる構成に限らず、1つの発光素子を複数の論理画素間で共有する構成を採ることも可能である。
【0043】
例えば、1つの発光素子は、5種類の論理画素を構成するのに用いられる。具体的には、1つの発光素子は、論理画素の中心として用いられ、残りは周辺にある画素を中心とする論理画素の一部として用いられる。このように1つの発光素子を複数回用いることにより、一組の画素を固定して発光させる構成以上に、解像度を高めることができる。
【0044】
図6(a)は、この発光装置10の画素回路11(i,j)の断面図であり、この画素回路11(i,j)は、この図6(a)に示すように、画素電極(アノード電極)42と、発光層45Rと、対向電極(カソード電極)46と、を備える。
【0045】
尚、30Rは、赤色の発光素子(有機EL素子E)を示し、45G1,45G2は、緑色の発光層を示す。本実施形態では、発光に寄与する有機EL層(有機層)として発光層45のみを備える構成を例に挙げているが、これに限られず、有機EL層は、正孔注入層と発光層とを備えてもよく、正孔注入層とインターレイヤと発光層とを備えてもよい。
【0046】
各発光画素の基板31上には、ゲート導電層をパターニングしてなるトランジスタT1、トランジスタT1のゲート電極T1gが形成されている。各発光画素に隣接した基板31上には、ゲート導電層をパターニングしてなり、列方向に沿って延びるデータラインLd(i)が形成されている。
【0047】
画素電極42は、透光性を備える導電材料、例えばITO(Indium Tin Oxide)、ZnO等から構成される。各画素電極42は隣接する他の発光画素の画素電極42と層間絶縁膜47によって絶縁されている。
【0048】
層間絶縁膜47は、絶縁性材料、例えばシリコン窒化膜から形成され、2つの画素電極42間に形成され、トランジスタT1、T2やセレクトラインLs(j)、アノードラインLa(j)を絶縁保護する。層間絶縁膜47には略方形の開口部47aが形成されており、この開口部47aによって発光画素の発光領域が画される。更に層間絶縁膜47上の隔壁48には主走査方向Xに延びる溝状の開口部48aが複数の発光画素にわたって形成されている。
【0049】
隔壁48は、絶縁材料、例えばポリイミド等の感光性樹脂を硬化してなり、層間絶縁膜47上に形成される。隔壁48は、主走査方向Xに沿った複数の発光画素の画素電極42をまとめて開口するようにストライプ状に形成されている。隔壁48の開口部48aは、開口部47aに対して広く形成されたり、狭く形成されたりする。
【0050】
図6(b),(c)は、それぞれ、隔壁48の開口部48aを開口部47aに対して広く形成した例、狭く形成した例を示し、隔壁48、開口部48a、層間絶縁膜47、開口部47aのみを示す。なお、隔壁48の平面形状は、これに限られず各画素電極42毎に開口部をもった格子状であってもよい。
【0051】
なお、隔壁48の表面、層間絶縁膜47の表面に撥液処理を施してもよい。ここで撥液とは、水系の溶媒、有機系溶媒のいずれをも弾く性質を示す。
【0052】
発光層45は、画素電極42上に形成されている。発光層45は、アノード電極42とカソード電極46との間に電圧を印加することにより光を発生する機能を有する。
【0053】
発光層45は、蛍光あるいは燐光を発光することが可能な公知の高分子発光材料、例えばポリパラフェニレンビニレン系やポリフルオレン系等の共役二重結合ポリマーを含む発光材料から構成される。また、これらの発光材料は、適宜水系溶媒あるいはテトラリン、テトラメチルベンゼン、メシチレン、キシレン等の有機溶媒に溶解(又は分散)した溶液(分散液)をノズルコート法やインクジェット法等により塗布し、溶媒を揮発させることによって形成する。
【0054】
ここで、有機EL層として、正孔注入層を設ける場合、正孔注入層は、画素電極42と発光層45との間に設ける。正孔注入層は発光層45に正孔を供給する機能を有する。正孔注入層は正孔(ホール)注入・輸送が可能な有機高分子系の材料、例えば導電性ポリマーであるポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)とドーパントであるポリスチレンスルホン酸(PSS)から構成される。
【0055】
更に、インターレイヤを設ける場合、インターレイヤは正孔注入層と発光層45との間に設ける。インターレイヤは、発光層から正孔注入層への電子正孔を抑制して発光層45内において電子と正孔とを再結合させやすくする機能を有し、発光層45の発光効率を高める。
【0056】
また、対向電極46は、ボトムエミッション型の場合、発光層45側に設けられ、導電材料、例えばLi、Mg、Ca、Ba等の仕事関数の低い材料からなる電子注入性の下層と、Al等の反射率の高い金属からなる上層を有する積層構造である。
【0057】
本実施形態では、対向電極46は複数の発光画素に跨って形成される単一の電極層から構成され、例えば接地電位である共通電圧Vssが印加されている。なお、有機EL素子Eをトップエミッション型とする場合、対向電極46は、発光層45側に設けられ、10nm程度の膜厚の極薄い例えばLi、Mg、Ca、Ba等の仕事関数の低い材料からなる光透過性低仕事関数層と、100nm〜200nm程度の膜厚のITO等の光透過性導電層を有する透明積層構造とする。
【0058】
次に、本実施形態に係る発光装置10の製造方法を図7を用いて説明する。ここでは、図5に示すトランジスタT2はトランジスタT1と同一工程によって形成されるので、トランジスタT2の形成の説明を一部省略する。
【0059】
まず、ガラス基板等からなる基板31を用意する。次に、この基板31上に、スパッタ法、真空蒸着法等により例えば、Mo膜、Cr膜、Al膜、Cr/Al積層膜、AlTi合金膜又はAlNdTi合金膜、MoNb合金膜等からなるゲート導電膜を形成し、これを図7(a)に示すようにトランジスタT1のゲート電極T1gの形状にパターニングする。
【0060】
この際、図示はしていないが、トランジスタT2のゲート電極T2g、及びデータラインLd(i)も形成する。続いて、CVD(Chemical Vapor Deposition)法等によりゲート電極T1g及びデータラインLd(i)上に絶縁膜32を形成する。
【0061】
次に、絶縁膜32上に、CVD法等により、アモルファスシリコン等からなる半導体層を形成する。次に、半導体層上に、CVD法等により、例えばSiN等からなる絶縁膜を形成する。
【0062】
続いて、絶縁膜をフォトリソグラフィ等によりパターニングし、ストッパ膜115を形成する。更に、半導体層及びストッパ膜115上に、CVD法等により、n型不純物が含まれたアモルファスシリコン等からなる膜を形成し、この膜と半導体層とをフォトリソグラフィ等によりパターニングすることで、図7(b)に示すように、半導体層114とオーミックコンタクト層116,117とを形成する。
【0063】
次に、スパッタ法、真空蒸着法等により絶縁膜32上に、ITO等の透明導電膜を成膜後、フォトリソグラフィによってパターニングして画素電極42を形成する。
【0064】
続いて、絶縁膜32に、図示していないが貫通孔であるコンタクトホールを形成し、その後、例えば、Mo膜、Cr膜、Al膜、Cr/Al積層膜、AlTi合金膜又はAlNdTi合金膜、MoNb合金膜等からなるソース−ドレイン導電膜をスパッタ法、真空蒸着法等により成膜して、フォトリソグラフィによってパターニングして図7(b)に示すようにドレイン電極T1d及びソース電極T1sを形成する。これと同時に、アノードラインLa(j)を形成する。このとき、トランジスタT1のソース電極T1sはそれぞれ画素電極42の一部と重なるように形成される。
【0065】
続いて、トランジスタT1等を覆うようにシリコン窒化膜からなる層間絶縁膜47をCVD法等により形成後、フォトリソグラフィにより、図7(c)に示すように開口部47aを形成する。
【0066】
次に、感光性ポリイミドを層間絶縁膜47を覆うように塗布し、隔壁48の形状に対応するマスクを介して露光、現像することによってパターニングし、図7(c)に示すように開口部48aを有する隔壁48を形成する。
【0067】
次に、発光ポリマー材料(R,G,B)を含有する有機化合物含有液を、塗布装置を用いて画素電極42上に塗布する。塗布は、隔壁48に沿って主走査方向Xに行われる。
【0068】
塗布装置には、ノズルプリンタが用いられる。ノズルプリンタは版が不要なオンデマンドプリンタである。この塗布装置は、図8(a),(b)に示すように、概略、有機化合物含有液からなる溶液51を連続して吐出するノズルを有するヘッド部78を備え、ヘッド部78を基板31上の塗布領域に沿って移動させることによって、基板31上の塗布領域に溶液51を塗布するものである。
【0069】
また、図8(a)は、ヘッド部78を1つだけ有する場合の構成を示し、図8(b)はヘッド部78を2つ有する場合の構成を示す。ここで、図8(b)においては塗布装置がヘッド部78を2つ有する場合について示したが、これに限らず、ヘッド部78を3つ以上の複数個有するものであってもよい。
【0070】
発光層45を形成するための溶液には、前述の高分子発光材料が含まれている。この溶液の溶媒には、水系溶媒あるいはテトラリン、テトラメチルベンゼン、メシチレン、キシレン等の有機溶媒が用いられ、溶液(分散液)には、高分子発光材料がこの有機溶媒に溶解(又は分散)している。
【0071】
図8(a)、(b)に示すように、溶液51はヘッド部78のノズルから吐出され、基板31上に塗布される。ヘッド部78は隔壁48間に溶液51を吐出しながら、隔壁48が形成された主走査方向X(図8(a)、(b)では左右方向)に沿って移動する。なお、各列への塗布を連続して行う場合は、図8(a)、(b)に示すように、ヘッド部78が基板31外にある間に、基板31を隔壁48が形成された方向と直交する副走査方向Y(図8(a)、(b)では上下方向)に、所定の距離だけ移動させる。
【0072】
これを繰り返すことで、溶液51が所定の列に塗布される。なお、ヘッド部78が基板31外にある間、溶液51は吐出させたままであってもよいし、吐出を一旦停止させてもよい。
【0073】
ここで、図8(a)に示すように、塗布装置がヘッド部78を1つだけ有する場合には、1列毎に、ヘッド部78の移動方向を交互に変えて塗布する。
【0074】
また、図8(b)に示すように、塗布装置がヘッド部78を2つ有する場合には、2列毎に、ヘッド部78の移動方向を交互に変えて塗布する。なお、基板31を移動させる代わりに、ヘッド部78を隔壁48が形成された方向と直交する方向に所定の距離だけ移動させてもよい。
【0075】
このようにして、隔壁48の間に有機化合物含有液が流し込まれ、溶媒が揮発することにより発光層45が形成される。発光層45が形成されると、その上に対向電極46が形成される。
【0076】
なお、正孔注入層を形成する場合は、発光層45を形成する前に、正孔注入材料を含む有機化合物含有液を、連続して流す塗布装置あるいは個々に独立した複数の液滴として吐出するインクジェット装置によって開口部47aで囲まれた画素電極42上に選択的に塗布する。続いて、基板31を大気雰囲気下で加熱し有機化合物含有液の溶媒を揮発させて、正孔注入層を形成する。有機化合物含有液は加熱雰囲気で塗布されてもよい。
【0077】
また、更にインターレイヤを形成する場合は、塗布装置を用いてインターレイヤとなる材料を含有する有機化合物含有液を正孔注入層上に塗布する。窒素雰囲気中の加熱乾燥、或いは真空中での加熱乾燥を行い、残留溶媒の除去を行ってインターレイヤを形成する。有機化合物含有液は加熱雰囲気で塗布されてもよい。
【0078】
続いて、発光層45まで形成した基板31に真空蒸着やスパッタリングで、Li,Mg,Ca,Ba等の仕事関数の低い材料からなる層と、Al等の高光反射率の金属層からなる2層構造の対向電極46を形成する。
【0079】
次に、複数の発光画素が形成された発光領域の外側において、基板31上に紫外線硬化樹脂、又は熱硬化樹脂からなる封止樹脂を塗布し、図示しない封止基板と基板31と貼り合わせる。次に紫外線もしくは熱によって封止樹脂を硬化させて、基板31と封止基板とを接合する。封止樹脂は封止基板に塗布して基板31と貼り合せてもよい。また、封止基板に一定深さのザグリ部を設け、乾燥剤を貼り付けてもよい。
【0080】
次に図8に示すこの塗布装置について説明する。尚、ここでは、有機EL素子Eの各層の溶液をインクと記す。
【0081】
この塗布装置は、図9に示すように、インクタンク71と、インク供給管72と、加圧部73と、流量検知・制御部74と、リニア駆動部75と、ステージ76と、制御部77と、ヘッド部78と、を備える。
【0082】
インクタンク71は、インクを溜めるためのものである。
インク供給管72は、インクをヘッド部78へと導くものであり、フレキシブルな材料で形成される。
【0083】
加圧部73は、インクに圧力を加えるためのものである。
流量検知・制御部74は、ヘッド部78から定量のインクが吐出されるようにインクの圧力及び流量を制御するものであり、インク供給管72の周囲に取り付けられる。
【0084】
リニア駆動部75は、このヘッド部78を主走査方向Xに走査するためのものである。
ステージ76は、基板31を固定するものであり、副走査方向Yに移動可能なものである。
【0085】
制御部77は、塗布装置全体を制御して基板31にインクを塗布するものである。制御部77は、リニア駆動部75を基板31に対して主走査方向Xに稼動させ、インクを主走査方向Xに1ライン塗布した後、ステージ76を副走査方向Yにステップ動作させる。制御部77は、このような制御を順次行い、基板31のすべてのラインにインクを塗布する。
【0086】
ヘッド部78は、インクを吐出する機構部であり、リニア駆動部75に取り付けられる。ヘッド部78は、図10,図11に示すように、ヘッドシリンダ81と、シリンダフランジ82と、連結ユニット83と、フィルタ84と、ノズルプレートNpと、ノズルキャップNcと、によって構成される。
【0087】
ヘッドシリンダ81は、ヘッド部78の本体部であり、インク供給管72によって導かれたインクが内部に充填される。
【0088】
シリンダフランジ82は、フランジ形状を有したものであり、ヘッドシリンダ81の外周部に設けられたものである。シリンダフランジ82は、ヘッドシリンダ81と一体加工されるか、あるいはヘッドシリンダ81に接合される。
【0089】
ベースユニット75aは、塗布装置本体のリニア駆動部75の走査部を構成する部品であり、ヘッド部78を取り付けるための開口部(図示せず)が設けられている。ヘッドシリンダ81は、この開口部に挿入され、シリンダフランジ82がベースユニット75aにネジ止めされる。
【0090】
連結ユニット83は、インク供給管72の先端とヘッドシリンダ81とを連結するものである。
【0091】
フィルタ84は、ヘッド部78には供給されたインクをろ過するためのものであり、ヘッドシリンダ81の内部の中間部に配置されて固定される。
【0092】
ノズルキャップNcは、ノズルプレートNpをヘッドシリンダ81に固定配置するためのものである。
【0093】
ノズルプレートNpは、インクを吐出するものであり、ヘッドシリンダ81の下部に配置される。ノズルプレートNpには、インクを吐出するノズルが設けられ、加圧部73が配管内に圧力を加えることにより、ノズルプレートNpのノズルから吐出されたインクは液柱Lpとなる。
【0094】
このノズルプレートNpは、図12に示すように、押さえリング91によって押さえられ、その押さえリング91の上にフィルタ84がセットされ、さらに押さえリング92によってフィルタ84がヘッドシリンダ81内に固定される。
【0095】
ノズルプレートNpには、図13に示すように、ノズルプレートNpの面上での形を長方形(矩形)とするノズルNzが設けられている。このノズルNzの大きさは、10×5μm程度である。
【0096】
ノズルNzがこのような長方形の形状を有することにより、ノズルNz近傍では、インクは、図12に示すように、その断面が長方形となって吐出され、表面張力により、次第に、断面形状が変化する。この際、インクは、旋回する。
【0097】
旋回することにより、インクの流れは安定化し、図8に示す主走査方向Xに、スキャンスピードを上げて走査してもインクは液滴にはならず、液柱Lpが維持される。また、液柱Lpが維持されれば、高速に走査したときのインクの飛び散りも抑えられる。
【0098】
以上説明したように、本実施形態によれば、ノズルプレートNpに設けられたノズルNzの形を、ノズルプレートNpの面上で長方形とした。
【0099】
このため、インクが旋回し、インクの流れを安定化させることができる。インクの流れが安定化すれば、ヘッド部78を主走査方向Xに高速で走査しても液柱Lpは維持され、生産性が向上する。
【0100】
また、高速に走査したときのインクの飛び散りを抑えることもでき、表示パネルの表示品位の低下を防止することができる。
【0101】
尚、本発明を実施するにあたっては、種々の形態が考えられ、上記実施形態に限られるものではない。
例えば、上記実施形態では、ノズルNzのノズルプレートNpの面上での形を、図13に示すように長方形とした。しかし、この形は、長方形に限られるものではなく、例えば、図14(a)〜(d)に示すような多角形であってもよい。
【0102】
図14(a)に示す形は、三角形、(b)に示す形は正方形、(c)に示す形は五角形、(d)に示す形は六角形である。
【0103】
また、この形は、多角形に限らず、図14(f)に示すような十字形、(g)に示すような星形、あるいは、(h)に示すような角を有する形であってもよい。
【0104】
さらに、形は、角を有さなくても、図14(i)に示すように、楕円形のような非真円形であってもよい。但し、インクを良好に旋回させるためには、図13に示すような長方形が望ましい。
【符号の説明】
【0105】
Np・・・ノズルプレート、Nz・・・ノズル、10・・・発光装置、78・・・ヘッド部、81・・・ヘッドシリンダ、82・・・シリンダフランジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶液を貯蔵する溶液タンクと、
前記溶液タンクから前記溶液が供給されて前記溶液を基板に塗布するヘッド部と、を備え、
前記ヘッド部は、
前記溶液タンクから供給された前記溶液が充填されるヘッドシリンダと、
前記ヘッドシリンダ下部に配置され、前記ヘッドシリンダに充填された前記溶液を旋回させて吐出するノズルが設けられたノズルプレートと、を備えた、
ことを特徴とする塗布装置。
【請求項2】
前記ノズルプレートは、前記溶液を旋回させて吐出する前記ノズルとして、前記ノズルプレートの面上での形を多角形とするノズルが設けられたものである、
ことを特徴とする請求項1に記載の塗布装置。
【請求項3】
前記ノズルプレートは、前記多角形として長方形のノズルが設けられたものである、
ことを特徴とする請求項2に記載の塗布装置。
【請求項4】
前記ノズルプレートは、前記溶液を旋回させて吐出する前記ノズルとして、前記ノズルプレートの面上での形を、角を有する形とするノズルが設けられたものである、
ことを特徴とする請求項1に記載の塗布装置。
【請求項5】
前記ノズルプレートは、前記溶液を旋回させて吐出する前記ノズルとして、前記ノズルプレートの面上での形を楕円形とするノズルが設けられたものである、
ことを特徴とする請求項1に記載の塗布装置。
【請求項6】
前記溶液は、有機EL材料であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の塗布装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−34737(P2011−34737A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−178472(P2009−178472)
【出願日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】