説明

塗布装置

【課題】塗布ユニットが固定されている場合であっても、口金部の交換を容易に行うことができ、また、口金部の交換に伴うコストアップを抑えることができる塗布装置を提供する。
【解決手段】基板を浮上させる浮上ステージと、浮上ステージから基板を浮上させた状態で浮上ステージに沿って基板を搬送する基板搬送部と、塗布液を吐出する口金部が着脱可能に支持されるとともに、口金部が浮上ステージに対向した状態で固定して設置された塗布ユニットと、を備えており、浮上ステージ上に浮上した基板を基板搬送部により塗布ユニットに対して移動させつつ口金部から塗布液を吐出することにより、基板上に塗布膜を形成する塗布装置であって、口金部を載置可能な口金移載ユニットをさらに備え、この口金移載ユニットが口金部と対向する口金受取位置と口金部を交換する口金交換位置とに移動可能である構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上に塗布膜を形成する塗布装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイやプラズマディスプレイ等のフラットパネルディスプレイには、ガラス等の基板上にレジスト液等の塗布液が塗布されたもの(塗布基板という)が使用されている。この塗布基板は、塗布液を均一に塗布する塗布装置によって形成されている。このような塗布装置は、基板を浮上させる浮上ステージと、浮上した基板を搬送する基板搬送部と、塗布液を吐出する塗布ユニットとを有しており、塗布ユニットの口金部から塗布液を吐出させながら、基板と塗布ユニットとを相対的に移動させることにより、基板上に塗布膜が形成されるようになっている。具体的には、特許文献1に示されるように、搬送されてきた基板を浮上ステージ上に停止させ、口金部から塗布液を吐出させつつ塗布ユニットを移動させることにより基板上に塗布膜が形成される。そして、塗布基板が所定枚数に達した場合や種類の異なる塗布液で塗布膜を形成する場合には、塗布ユニットの口金部が交換される。この口金交換時には、作業利便性の点から塗布ユニットを浮上ステージの端部付近に移動させ、作業者により口金部を塗布ユニットから外した後、口金部を専用の移載機で吊り下げて運ぶことにより口金部の交換が行われていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−034309号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の塗布装置では、口金部を搭載する塗布ユニットが移動する構成であるため、塗布ムラが発生する虞があるという問題があった。すなわち、塗布膜を形成する際、塗布ユニットの移動機構が周囲に存在する他の装置の振動の影響を受けて塗布液の供給が不安定になり、塗布ムラが発生する虞がある。このことから、塗布ユニットを浮上ステージに対して固定して設け、浮上ステージ上で基板を移動させつつ口金部から塗布液を吐出して基板上に塗布膜を形成することが考えられる。
【0005】
しかし、塗布ユニットを固定すると、口金部を交換する際、専用の移載機が塗布ユニット固定位置まで届かないため、作業者が塗布ユニットから口金部を外した後、工場に設置されたクレーンで運搬する必要がある。この場合には、口金交換時に常に工場内のクレーンの操作が必要になるため、交換作業が煩わしいという問題がある。また、工場にクレーンがない場合や塗布装置を常にクリーンな状態で使用する場合には、外部のクレーンを使用せず、クリーンブース内に口金交換用のクレーンを設置する必要がある。この場合には、ブース内のクレーン設置費用やクレーン設置のためのブース補強などにより、コストアップに繋がってしまうという問題がある。
【0006】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、塗布ムラを抑えるために塗布ユニットが固定されている場合であっても、口金部の交換を容易に行うことができ、また、口金部の交換に伴うコストアップを抑えることができる塗布装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明の塗布装置は、基板を浮上させる浮上ステージと、前記浮上ステージから基板を浮上させた状態で浮上ステージに沿って基板を搬送する基板搬送部と、塗布液を吐出する口金部が着脱可能に支持されるとともに、前記口金部が前記浮上ステージに対向した状態で固定して設置された塗布ユニットと、を備え、前記浮上ステージ上に浮上した基板を前記基板搬送部により前記塗布ユニットに対して移動させつつ前記口金部から塗布液を吐出することにより、基板上に塗布膜を形成する塗布装置であって、前記口金部を載置可能な口金移載ユニットをさらに備え、この口金移載ユニットが前記口金部と対向する口金受取位置と前記口金部を交換する口金交換位置とに移動可能であることを特徴としている。
【0008】
上記塗布装置によれば、口金部を載置可能な口金移載ユニットが口金受取位置と口金交換位置に移動可能であるため、塗布ユニットの口金部の交換を容易に行うことができる。すなわち、口金移載ユニットが口金受取位置に位置させた状態で、作業者により塗布ユニットから口金部が取り外されて口金移載ユニットに載置される。そして、口金部を搭載された口金移載ユニットは、口金交換位置に移動し、この位置で専用の移載機に載せ替えられて運搬される。すなわち、塗布ユニットを固定した場合であっても、口金交換の際、工場内のクレーンやブース内のクレーンが不要になる。したがって、これらクレーンが必要となる場合に比べて、口金部の交換に伴うコストアップを抑えることができるとともに、口金移載ユニットへの載せ替え作業だけでクレーンの操作も必要ないため、口金交換作業を容易に行うことができる。
【0009】
また、前記口金移載ユニットは、前記口金部を支持する口金支持部を有しており、この口金移載ユニットは、前記口金部が前記口金支持部に支持された姿勢で鉛直方向を中心に回転可能である構成としてもよい。
【0010】
この構成によれば、基板搬送方向に口金交換作業のスペースが取れない場合であっても口金部を容易に交換することができる。すなわち、口金交換位置で口金移載ユニットを回転させて口金部が基板搬送方向と平行になる姿勢で停止させて、基板搬送方向と直交する方向から既存の移載機を用いることにより、口金部を交換することができる。
【0011】
また、前記口金移載ユニットは、前記口金部を支持する口金支持部を有しており、この口金支持部は、口金部の載置方向に弾性的に変位する構成としてもよい。
【0012】
この構成によれば、口金部が口金移載ユニットの口金載置部に当接した際、口金部が損傷するのを防止することができる。
【0013】
また、前記口金交換位置は、前記浮上ステージの基板搬送方向端部付近に設けられている構成としてもよい。
【0014】
この構成によれば、口金部を移載して運搬可能な専用の移載機に搭載させやすいため、口金部の交換作業を容易にすることができる。
【0015】
また、前記口金移載ユニットの移動をガイドするレールが前記浮上ステージよりも基板搬送方向に延びており、この基板搬送方向に延びたレール部分に前記口金交換位置が設けられている構成としてもよい。
【0016】
この構成によれば、口金の交換作業が浮上テーブルから外れた位置で行うことができるため、作業中に、浮上テーブルに異物が落下したり、浮上テーブルが損傷を受けたりするのを抑えることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の塗布装置によれば、塗布ムラを抑えるために塗布ユニットが固定されている場合であっても、口金部の交換を容易に行うことができ、また、口金部の交換に伴うコストアップを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態における塗布装置を示す上面図である。
【図2】上記塗布装置の側面図である。
【図3】上記塗布装置の正面図である。
【図4】口金移載ユニットを示す拡大図である。
【図5】口金部の取出作業の状態を示す図であり、(a)は、口金交換位置の口金移載ユニットから口金部を移載機に移す状態を示す図であり、(b)は、移載機で口金部を運搬する状態を示す図である。
【図6】他の実施形態における口金移載ユニットを示す拡大図である。
【図7】他の実施形態における塗布装置の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の塗布装置に係る実施の形態について、図面を用いて説明する。
【0020】
図1は、塗布装置の一実施形態を示す上面図であり、図2は、塗布装置の側面図、図3は、塗布装置の正面図である。
【0021】
図1〜図3において、塗布装置1は、ガラス等の基板W上にレジスト液等の塗布液を塗布することにより、基板W上に塗布膜を形成するものである。この塗布装置1は、浮上ステージ2と、基板搬送部3と、塗布ユニット4とを備えており、浮上ステージ2上に浮上した基板Wを基板搬送部3により移動させつつ塗布ユニット4から塗布液を吐出することにより、基板W上に塗布膜を形成できるようになっている。
【0022】
なお、以下の説明では、基板Wが搬送される搬送方向をX軸方向とし、これと水平面上で直交する方向をY軸方向、X軸方向及びY軸方向の双方に直交する方向をZ軸方向として説明を進めることとする。
【0023】
浮上ステージ2は、X軸方向に分割して設けられており、上流側から、上流側サブステージ21、メインステージ22、及び下流側サブステージ23を有している。これら各ステージそれぞれは、平板状のステージ本体20を有しており、このステージ本体20に、微細な噴出孔(不図示)が形成されている。そして、噴出孔のそれぞれとコンプレッサー(不図示)とが配管で接続されており、コンプレッサーを作動させることにより噴出孔から圧縮空気を噴射できるようになっている。これにより、噴出孔から圧縮空気が噴射された状態で基板Wがステージ本体20に載置されると、基板Wとステージ本体20の表面に空気層が形成され、ステージ本体20の表面から基板Wが浮上できるようになっている。
【0024】
また、ステージ本体20には、空気を吸引する吸引孔(不図示)が適所に形成されており、この吸引孔と真空ポンプ(不図示)とが配管で接続されている。そして、真空ポンプを作動させると、吸引孔に吸引力が発生し、噴出孔から噴射された空気が吸引されるようになっている。すなわち、コンプレッサーと真空ポンプを制御することにより、この噴出孔から噴出される圧縮空気と、吸引孔に発生する吸引力とがバランスするため、基板Wがステージ本体20の表面から一定高さに水平の姿勢で浮上させることができるようになっている。
【0025】
なお、メインステージ22と上下サブステージ21,23とは、浮上高さ精度が異なっている。すなわち、メインステージ22では、噴出孔における圧縮空気の噴射量のバラツキが、上下サブステージ22,23よりも小さくなっている。これにより、メインステージ22上に浮上する基板Wの浮上高さは、サブステージ21,23に比べて、基板W全体に亘って均一高さに維持できるようになっている。
【0026】
また、浮上ステージ2のステージ本体20は、そのY軸方向寸法が基板WのY軸方向寸法よりも小さく形成されており、浮上ステージ2上に基板Wを載置すると、浮上ステージ2から基板WのY軸方向端部がはみ出した状態となる。このはみ出した部分を後述の基板搬送部3で把持することにより、基板Wを搬送できるようになっている。
【0027】
基板搬送部3は、基板Wを浮上ステージ2に沿って搬送するものであり、搬送本体部31と基板把持部32とを有している。搬送本体部31は、浮上ステージ2に沿って移動できるように構成されている。具体的には、浮上ステージ2のY軸方向両側には、ステージ本体20の配列方向(X軸方向)に沿って基台33が配置されており、この基台33上を搬送本体部31がX軸方向に沿って移動できるようになっている。すなわち、基台33上には、X軸方向に延びるレール34が配置されており、搬送本体部31がレール34上をスライド自在に取付けられている。そして、搬送本体部31にはリニアモータ35が取り付けられており、このリニアモータ35を駆動制御することにより、搬送本体部31がX軸方向に移動し、任意の位置で停止することができる。なお、搬送本体部31は、Y軸方向両側に2台設けられており、リニアモータ35の駆動時には、これら2台の位置関係が保たれたまま移動できるように設定されている。
【0028】
また、基板把持部32は、基板Wを把持するものであり、搬送本体部31に取付けられている。すなわち、基板把持部32は、搬送本体部31から浮上ステージ2側に突出して取付けられており、その突出量は、基板把持部32の上面が浮上ステージ2に載置された基板Wの裏面と対面する寸法に設定されている。そして、基板把持部32の上面には、吸引穴(不図示)が形成されており、この吸引穴が真空ポンプに接続されている。これにより、真空ポンプを作動させると、吸引穴に吸引力が発生し、浮上ステージ2に載置された基板Wのはみ出し部分が基板把持部32の上面に吸着される。したがって、この状態でリニアモータ35を駆動制御して搬送本体部31を移動させることにより、基板Wが浮上ステージ2に沿って搬送され、任意の位置で停止させることができる。すなわち、上流から基板Wが供給される際には、基板把持部32が上流側サブステージ21に待機しており、基板Wが浮上ステージ2に載置されると、吸引穴に吸引力を発生させて基板把持部32に基板Wを吸着させることにより基板Wが把持される。そして、塗布動作時には、基板Wをメインステージ22まで搬送し、基板W排出時には、基板Wを下流側サブステージ23まで搬送し、排出動作完了までその位置で停止できるようになっている。
【0029】
また、塗布ユニット4は、基板W上に塗布液を吐出するものであり、本実施形態では、浮上ステージ2のX軸方向ほぼ中央位置に配置されている。塗布ユニット4は、門型形状のフレーム部41と、このフレーム部41に取付けられた口金部42とを有しており、口金部42がメインステージ22に対向する状態でフレーム部41が固定して設けられている。
【0030】
フレーム部41は、口金部42を支持するものであり、門型形状に形成されている。すなわち、フレーム部41は、床面に固定される2本の支柱41aと、これら支柱41aに架設されるビーム部材41bとを有しており、メインステージ22の両側に支柱41aが固定されることにより、ビーム部材41bがメインステージ22を跨ぐ状態で設けられている。そして、ビーム部材41bには口金部42が設けられており、口金部42がメインステージ22をY軸方向に横切る状態で取付けられている。
【0031】
ビーム部材41bは、一方向に延びる棒状部材であり、サーボモータで駆動されるボールねじ機構により支柱41aに対して昇降動作可能に取付けられている。このビーム部材41bの昇降動作により、口金部42がビーム部材41bと共に昇降動作でき、浮上ステージ2に対して接離可能に動作できるようになっている。本実施形態では、口金部42の高さ位置が、塗布動作を行う塗布動作位置と、口金部42の取外し作業を行う取外し位置とに調節できるようになっている。
【0032】
口金部42は、塗布液を基板W上に吐出するものである。すなわち、口金部42は、一方向に延びる略直方体形状を有しており、供給される塗布液を溜めるチャンバーと一方向に延びる形状に形成されたスリットノズル42aとを有している。このチャンバーには、塗布液を供給するポンプが配管を通じて接続されており、ポンプを作動させることによりチャンバーに塗布液が供給されると共にチャンバー内の塗布液がスリットノズル42aを通じて吐出されるようになっている。また、口金部42は、スリットノズル42aが浮上ステージ2側に対向する状態でビーム部材41bに取付けられている。これにより、メインステージ22に基板Wが供給された状態でポンプを作動させると、チャンバー内の塗布液がスリットノズル42aを通じて基板Wに吐出される。そして、ポンプを作動させつつ、基板搬送部3により基板Wを下流側に搬送させることにより、基板W上に均一厚さの塗布膜が形成されるようになっている。
【0033】
また、口金部42は、ビーム部材41bに着脱自在に取付けられている。本実施形態では、口金部42の上面部分とビーム部材41bとが複数のボルトで締結されることによって取付けられている。したがって、口金部42の脱着は、作業者がボルトを外すことによりビーム部材41bから口金部42を取外すことができ、清掃後の口金部42をボルトで締結させることによりビーム部材41bに口金部42を装着することができる。
【0034】
また、本塗布装置1は、口金移載ユニット5をさらに備えている。口金移載ユニット5は、口金部42の脱着作業を行う際、口金部42を載置して適当な位置に移動させるためのものである。口金移載ユニット5は、門型形状を有しており、2本の脚部51とこれらの脚部51を連結する口金載置部52とを有している。これらの脚部51は、浮上ステージ2の両側に配置された基台33上に取付けられている。具体的には、基台33上には、基板搬送部3のレール34の外側にX軸方向に延びるレール53が配置されており、脚部51がレール53上をスライド自在に取付けられている。そして、脚部51にはリニアモータ(不図示)が取り付けられており、このリニアモータを駆動制御することにより、口金移載ユニット5がX軸方向に移動し、任意の位置で停止することができる。そして、口金載置部52の高さ位置が浮上ステージ2と塗布ユニット4の口金部42との間に位置するように設定されているため、口金移載ユニット5がX軸方向に移動する際、口金載置部52が浮上ステージ2や口金部42に衝突することなくレール53上を自由に移動することができる。
【0035】
また、口金移載ユニット5は、口金受取位置と口金交換位置とに移動することができる。口金受取位置とは、塗布ユニット4の口金部42を受け取る位置であって、塗布ユニット4から取り外された口金部42が、口金移載ユニット5に載置できる位置である。本実施形態では、塗布ユニット4が固定されている位置であり、塗布ユニット4の口金部42と口金移載ユニット5の口金載置部52とが互いに対向する位置に設定されている。これにより、口金部42を受け取る際、作業者がボルトを弛めることにより塗布ユニット4から口金部42を取り外されると、そのまま口金部42を口金載置部52に載置することができる。
【0036】
また、口金交換位置は、口金移載ユニット5に載置された口金部42を新たな口金部42に交換するための位置である。本実施形態では、基板搬送方向端部(X軸方向端部)付近に設けられている。具体的には、口金移載ユニット5のレール53が浮上ステージ2のX軸方向端部よりも延びて形成されており、このレール53が延びた位置が口金交換位置に設定されている(図1、図2参照)。口金交換位置がこの位置に設定されていることにより、口金移載ユニット5に載置された口金部42を既存の移載機6(塗布装置1とは別体)を使って容易に交換することができる。すなわち、口金部42が取付られた塗布ユニット4は、浮上ステージ2の基板搬送方向ほぼ中央位置に固定されているため、別体の移載機6では口金部42のある位置まで届かず、口金部42を移載機6に受け渡すことができない。しかし、口金部42を載せた口金移載ユニット5が基板搬送方向端部まで移動することにより、別体の移載機6が届く範囲に口金部42を運ぶことができるため、この口金交換位置で口金部42を受渡すことができる。したがって、塗布ユニット4が固定されている場合であっても口金部42の交換作業を容易にすることができる。
【0037】
また、口金移載ユニット5の口金載置部52は、口金部42を保持する口金支持部54を有している。本実施形態では、図1、3、4に示すように、平板部材上に2つの口金支持部54を有しており、これら2つの口金支持部54により口金部42の両端部分に当接して口金部42を水平状態で保持できるようになっている。これらの口金支持部54は、口金部42の底面を受ける口金受け部541と、口金部42の側面を押さえる口金挟持部542とを有している。口金受け部541は、口金部42の底面に当接することにより、載置される口金部42を下側から受けるものである。この口金受け部541は、口金部42の底面、すなわち、口金部42のスリットノズル42aが形成される面に当接する当接部541aを有しており、この当接部541aには、切欠溝541bが形成されている。すなわち、口金受け部541に口金部42を載置して口金部42の底面が当接部541aに当接した場合に、スリットノズル42aの位置と切欠溝541bの位置とを一致させることにより、スリットノズル42aが切欠溝541bに逃げ、スリットノズル42aが当接部541aに当接して損傷するのを防止できるようになっている。
【0038】
また、口金受け部541には平板部材側にバネ機構55を有しており、口金受け部541は、このバネ機構55により弾性的にZ方向に変位することができる。これにより、仮に口金受け部541に口金部42が勢いよく当接した場合でも、その衝撃を吸収することができ、口金部42の底面に当接部541aが当接したことにより損傷を受けるのを防止できるようになっている。なお、口金支持部54にはセンサが設けられており、口金受け部541の下降位置が一定値を超えると反応するようになっている。これにより、口金支持部54に口金部42が載置されたか否かを判断できるようになっている。
【0039】
また、口金挟持部542は、X軸方向両側にパッド部542aを有しており、このパッド部542aが平板部材の中央部分に向かって突出する把持位置と、中央部分から退避する退避位置とに進退可能に構成されている。すなわち、口金受け部541に口金部42が載置されていない状態では、パッド部542aが退避位置に位置して待機しており、口金受け部541に口金部42が載置されると、パッド部542aが把持位置に突出することにより、口金部42の側面に当接して口金部42を挟持する。これにより、塗布ユニット4から取り外された口金部42が口金支持部54によって保持される。
【0040】
なお、口金載置部52は、Y軸方向に延びるLMガイド521に搭載されており、Y軸方向に変位できるようになっている。これにより、2つの口金支持部54が口金部42の両端部分に位置するように調節できるようになっている。
【0041】
次に、本実施形態の塗布装置1における口金部42の交換動作について説明する。
【0042】
基板搬送部3により基板Wが搬送されつつ、塗布ユニット4の口金部42から塗布液が吐出されることにより、基板W上に塗布膜が形成される。このような塗布動作は、基板Wが所定枚数に足した場合や、種類の異なる塗布液で塗布膜を形成する場合に一時的に停止され、口金部42の交換動作が開始される。
【0043】
まず、塗布ユニット4の口金部42の取外し動作が行われる。具体的には、リニアモータを駆動制御し、口金移載ユニット5を塗布ユニット4の位置、すなわち口金受取位置に移動させる。これにより、口金部42と口金載置部52とが対向する状態になる。
【0044】
次に、口金部42を口金載置部52に仮載置させる。具体的には、口金部42を下降させて口金部42の高さ位置を口金取外し位置に設定する。そして、口金部42を口金支持部54に当接させる。すなわち、口金部42を下降させることにより、口金部42のスリットノズル42aが切欠溝541bに位置した状態で口金受け部541の当接部541aに口金部42の底面が当接する。当接した後、さらに口金部42を下降させることにより、バネ機構55が収縮して口金受け部541が下降する。ここで、口金部42の下降が一定高さ位置を越えると口金支持部54のセンサが反応することにより口金部42が口金支持部54に当接したことが判断され、口金部42の下降が停止される。
【0045】
口金部42の下降が停止されると、作業者により口金部42の取外しが行われる。具体的には、ボルトを弛めることによりビーム部材41bから口金部42を取り外す。このとき、口金部42は、口金載置部52に仮載置されているため、ボルトを弛めても口金部42が落下することを防止することができる。
【0046】
次に、口金部42の取外しが完了すると、塗布ユニット4のビーム部材41bを上昇させ、一方で、口金挟持部542で口金部42の側面を挟持させることにより、口金部42を口金載置部52上で完全に保持させる。そして、口金移載ユニット5を移動させて口金交換位置に停止させる。
【0047】
次に、口金部42の交換作業が行われる。具体的には、図5に示すように、塗布装置1とは別体の移載機6を口金交換位置に位置させて、口金移載ユニット5に載置された口金部42を移載機6のアーム61に連結する(図5(a))。そして、アーム61を上昇させることにより口金部42を吊り下げて、移載機6を所定の場所まで運搬することにより、口金部42の交換作業が完了する(図5(b))。
【0048】
このように、上記実施形態における塗布装置1によれば、口金部42を載置可能な口金移載ユニット5が口金受取位置と口金交換位置に移動可能であるため、塗布ユニット4の口金部42の交換を容易に行うことができる。これにより、塗布ムラ防止のために塗布ユニット4を固定した場合であっても、口金交換の際、工場内のクレーンやブース内のクレーンが不要になる。したがって、これらクレーンが必要となる場合に比べて、口金部42の交換に伴うコストアップを抑えることができるとともに、口金移載ユニット5への載せ替え作業だけでクレーンの操作も必要ないため、口金交換作業を容易に行うことができる。
【0049】
また、上記実施形態では、口金移載ユニット5の移動をリニアモータで行う場合について説明したが、ボールネジやタイミングベルトとモータとの組合わせによる駆動制御であってもよい。なお、塗布装置1のコストを押さえるために、モータなどの動力源を使用せず、手動により口金移載ユニット5を移動させる構成であってもよい。
【0050】
また、上記実施形態では、口金交換位置を浮上ステージ2の基板搬送方向端部付近に設ける例について説明したが、口金交換位置を浮上ステージ2の基板搬送方向途中に設ける構成であってもよい。この場合には、別体の移載機6のアーム61が届かないことを考慮し、口金移載ユニット5の口金載置部52をクロスローラベアリング522などを使用して鉛直方向(Z軸方向)に回転可能な構成とすることにより、既存の移載機6のアーム61で口金部42を吊り下げ可能な構成としてもよい。
【0051】
具体的には、図6に示すように、LMガイド521と口金載置部52との間に回転機構を配置する。この回転機構は、クロスローラベアリング522が平板部材523で挟まれることによって構成されており、クロスローラベアリング522が口金載置部52の長手方向中央位置に位置するように配置される。これにより、口金載置部52がクロスローラベアリング522を中心に回転することができる。すなわち、口金移載ユニット5に口金部42が載置された状態、すなわち、口金部42が口金支持部54に載置された状態で口金載置部52を回転させることにより、口金部42の長手方向が基板搬送方向に直交する姿勢から、基板搬送方向と平行になる姿勢に変化させることができる。
【0052】
この回転機構を有する口金移載ユニット5によれば、図7に示すように、塗布ユニット4から口金部42を口金移載ユニット5に載せた後、口金交換位置まで移動させ(図7において破線で示す)、その位置で90°回転させて口金部42の長手方向が基板搬送方向と平行になる状態で停止させる(図7において2点鎖線で示す)。そして、LMガイド521を駆動させてY軸方向端部の基板搬送部3上に口金部42を位置させる(図7において実線で示す)。この位置で、移載機6をY軸方向から近づけて移載機6のアーム61に口金部42を吊り下げる。その後、移載機6で運搬することにより、口金部42の交換を行うことができる。この構成であれば、基板搬送方向に口金交換作作業に必要なスペースを取れない場合に有効になる。
【0053】
また、上記実施形態では、口金移載ユニット5のレール53と基板搬送部3のレール34とを別々に設ける場合の例について説明したが、共通のレールに口金移載ユニット5と基板搬送部3とを走行させる構成であってもよい。この構成であれば、レール53を省略できるため、塗布装置1のコストを下げることができるとともに、口金移載ユニット5のレール53を省ける分、塗布装置1をY軸方向にコンパクト化することができる。
【符号の説明】
【0054】
1 塗布装置
2 浮上ステージ
3 基板搬送部
4 塗布ユニット
5 口金移載ユニット
42 口金部
52 口金載置部
53 レール
54 口金支持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を浮上させる浮上ステージと、
前記浮上ステージから基板を浮上させた状態で浮上ステージに沿って基板を搬送する基板搬送部と、
塗布液を吐出する口金部が着脱可能に支持されるとともに、前記口金部が前記浮上ステージに対向した状態で固定して設置された塗布ユニットと、
を備えており、
前記浮上ステージ上に浮上した基板を前記基板搬送部により前記塗布ユニットに対して移動させつつ前記口金部から塗布液を吐出することにより、基板上に塗布膜を形成する塗布装置であって、
前記口金部を載置可能な口金移載ユニットをさらに備え、この口金移載ユニットが前記口金部と対向する口金受取位置と前記口金部を交換する口金交換位置とに移動可能であることを特徴とする塗布装置。
【請求項2】
前記口金移載ユニットは、前記口金部を支持する口金支持部を有しており、この口金移載ユニットは、前記口金部が前記口金支持部に支持された姿勢で鉛直方向を中心に回転可能であることを特徴とする請求項1に記載の塗布装置。
【請求項3】
前記口金移載ユニットは、前記口金部を支持する口金支持部を有しており、この口金支持部は、口金部の載置方向に弾性的に変位することを特徴とする請求項1又は2に記載の塗布装置。
【請求項4】
前記口金交換位置は、前記浮上ステージの基板搬送方向端部付近に設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の塗布装置。
【請求項5】
前記口金移載ユニットの移動をガイドするレールが前記浮上ステージよりも基板搬送方向に延びており、この基板搬送方向に延びたレール部分に前記口金交換位置が設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の塗布装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−143688(P2012−143688A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−2801(P2011−2801)
【出願日】平成23年1月11日(2011.1.11)
【出願人】(000219314)東レエンジニアリング株式会社 (505)
【Fターム(参考)】