説明

塗布装置

【課題】連続走行している帯状の基材に塗液を塗工するロールコーターにおいて、塗液中の粒子の沈降や凝集または分散不良などによって、塗液の初期組成が塗工途中に変化して、物性や品質が変化する課題を解決できる塗布装置を提供する。
【解決手段】塗液を貯留するマニホールドブロック1と、塗液を基材に転移させるマイクログラビア版4と、マニホールドブロック1の底壁および塗液供給配管9に設けられたスタティックミキサー8と、塗液排出配管から排出された塗液を循環させるための、脱泡・脱気装置、塗液タンク、送液用ポンプ、フィルター、質量流量計を備えている塗布装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グラビアコーター、マイクログラビアコーター、バーコーターなどのロールを使用する塗布装置に関し、さらに詳しくは、塗液を貯留するインキパンなどにおいて塗液の沈降や凝集を防ぎ、さらに塗液に含まれる樹脂や溶媒なども分散させる塗布装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、連続走行している帯状の基材に塗液を塗布する方法として、特にロールを用いるアプリケーターには、ロールコーター、グラビアコーターなどが用いられている。このようなコーターは、インキパンからロールで塗液を汲み上げて基材に転写させる方式であるが、塗液中にアルミナやシリカなどの微粒子を含んでいたり、顔料を含んでいたりすると、これらは塗液中の樹脂や溶剤に比べて比重が高いことにより、また凝集するということもあり、インキパン内の滞留しやすい部分、例えばエッジ部やインキパン底に沈降してしまう。
【0003】
さらに送液系においても、塗液タンクの底や配管底、デットスペースなどに沈降してしまう。このようなことが起きると塗液の組成が変化し、さらに経時で物性も変化してしまう。例えば光学フィルムであるAG(アンチグレア)フィルムにおいては、光学特性へイズや光沢度が経時で変化することで、光学特性や外観が初期と異なるという問題が生じる。
【0004】
そこで、上記のような問題の解決方法としては、特許文献1に、分散混合した塗液を底壁に漏斗部および収集部を有する第1沈降槽に供給し静置して第1沈降槽で凝集物および沈降物を除去するステップと、塗液を底壁に漏斗部および収集部を有する第2沈降槽に供給し静置してグラビア印刷前に、第2沈降槽で凝集物および沈降物を除去するステップを踏むことにより、予め凝集物や沈降物が除去された塗液をグラビアロールの回転で攪拌し、時間の経過とともに発生するフィラーの再凝集を防止する技術が開示されている。
【0005】
しかしながら、上記のような2つの沈降槽で除去を繰り返すことにより、初期組成が変化し、諸特性に変化が生じてしまう。特に、沈降しやすいあるいは凝集しやすい塗液においては、顕著になり特性管理が困難になってくる。また、上記の除去ステップを繰り返すことによる工程数の増加でコストアップにもつながってくる問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−16313号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、従来技術の上記のような2つの沈降槽で除去を繰り返すことにより、初期組成が変化し、諸特性に変化が生じてしまう問題を解決するためになされたもので、マニホールド内、塗液供給配管内での塗液の滞留を低減させるとともに、塗液に含まれる微粒子や顔料の沈降及び凝集をなくし、塗液に含まれる樹脂や溶媒なども分散させることができる塗布装置であり、さらに気泡起因の欠陥をなくし、塗液管理が可能な塗布装置の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するための本発明の塗布装置は、塗液を貯留するマニホールドブロックと、前記塗液を基材に転写するマイクログラビア版と、前記マニホールドブロック底面に設置したスタティックミキサーと前記マニホールドブロック底面に設けた塗液供給配管と、前記マニホールドブロック底面に設けた塗液排出配管と、前記マニホールドブロック内の塗液を前記塗液排出配管から前記マニホールドブロック外に排出して前記塗液供給配管から供給することで塗液を循環させる塗液循環手段とを備えることを特徴とする。
【0009】
請求項1の発明は、連続走行している帯状の基材に塗液を塗工する塗布装置であって、塗液を貯留するマニホールドブロックと、前記塗液を基材に転移させるマイクログラビア版と、前記マニホールドブロック底面に設置したスタティックミキサーと前記マニホールドブロック底面に設けた塗液供給配管と、前記マニホールドブロック底面に設けた塗液排出配管と、前記マニホールドブロック内の塗液を前記塗液排出配管から前記マニホールドブロック外に排出して前記塗液供給配管から供給することで塗液を循環させる塗液循環手段とを備えていることを特徴とするものである。
【0010】
請求項2の発明は、前記スタティックミキサーの全部あるいは一部が、マニホールドブロック入口、および、前記塗液供給配管内に設置されていることを特徴とする請求項1の発明に記載の塗布装置である。
【0011】
請求項3の発明は、前記塗液循環手段が、前記塗液排出口に配管を介して接続され、
前記塗液排出配管から排出される塗液を貯留し脱泡・脱気するための脱泡・脱気装置と、前記脱泡・脱気装置から排出された塗液を貯留する塗液タンクと、前記塗液タンクで貯留した塗液を吸引して前記塗液供給配管から前記マニホールドブロックに送液する送液用ポンプと、前記塗液供給配管に接続する流路に設けられたフィルターと、および、質量流量計とを備えていることを特徴とする請求項1、請求項2の発明のいずれに記載の塗布装置である。
【0012】
請求項4の発明は、請求項1、請求項2、請求項3の発明のいずれかに記載の塗布装置を用いて、連続走行する基材上に塗液を塗布し、塗膜を形成することを特徴とする塗布物の製造方法である。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、前記塗液循環手段を備えることで、マニホールド内での塗液の滞留を低減し、塗液に含まれる微粒子や顔料の沈降及び凝集をなくし、塗液に含まれる樹脂や溶媒なども分散させることができ、さらに気泡起因の欠陥をなくし、塗液管理が可能となり、前記効果を連続的に発揮することによって、塗液の初期組成が、塗工途中に変化して、物性や品質が変化してしまうのを防ぐことができるという効果を有するものである。
【0014】
本発明は、塗布装置において、スタティックミキサーを塗液供給配管内およびマニホールド内に備えることで、塗液に含まれる微粒子や顔料の沈降及び凝集をなくし、加えて塗液に含まれる樹脂や溶媒なども分散させることが可能になるという効果を有するものである。
【0015】
本発明は、塗布装置において、脱泡・脱気装置を備えることで塗液排出配管から排出された塗液の脱泡・脱気が可能となり、気泡起因の欠陥を低減させることができるという効果を有するものである。
【0016】
本発明は、塗布装置において、質量流量計を備えることで、塗液の比重、液温、流量を管理することができるという効果を有するものである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明にかかる塗布装置の一実施の形態を示す概略平面図である。
【図2】図1のA−A線に沿う概略断面図である。
【図3】図1のB−B線に沿う概略断面図である。
【図4】本発明の塗布装置を備える塗布物の製造装置の一実施例の形態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施の形態について、図1〜図3を参照して説明する。図1は本発明にかかる塗布装置をマイクログラビアコーターに適用した場合の一例を示す概略平面図、図2は図1のA−A線に沿う概略断面図、図3は図1のB−B線に沿う概略断面図、図4は本発明の塗布装置を備える塗布物の製造装置の一実施例の形態を示す概略図である。本実施の形態に示す塗布装置は、図1〜図3のように、マニホールドブロック1、マニホールド2、マイクログラビア版4、ドクター5、ニアロール7、スタティックミキサー8、塗液循環系などを含んで構成される。
【0019】
マニホールドブロック1は、沈降し易いまたは凝集し易い粒子や顔料を含む塗液3を貯留するマニホールド2を有し、図1〜図3に示すように、マイクログラビア版4の軸方向の長さより大きい長さと、マイクログラビア版4よりも大きい幅を有し、上面が開放された長方形の形状をしている。
【0020】
また、このマニホールドブロック1の底壁の中央部にはマニホールド2へ塗液3を供給する塗液供給配管9が設けられ、塗液供給配管9内にはスタティックミキサー8が設置されている。さらに、マニホールドブロック1はマニホールド2から溢れた塗液3が塗液排出配管10へ流れるようにBからB’にかけて傾斜のついた形状を有し、複数の塗液排出配管10が設けられている。
【0021】
スタティックミキサー8は、図2〜図3に示すように塗液供給配管9内に設置されており、沈降し易いまたは凝集し易い微粒子や顔料を含む塗液3を分散して粒子や顔料、加えて樹脂や溶媒も分散させるようになっている。加えて、洗浄時においては塗液供給配管9内の汚れや沈降物の除去できる。
【0022】
マイクログラビア版4は、図1〜図3に示すように、マニホールドブロック1の上面からマニホールドブロック1内に臨むように、かつマイクログラビア版4の外周面の一部がマニホールドブロック1内の塗液3中に浸漬されるようにして、マニホールドブロック1の長手方向に沿い配置され、図示省略した支持ブランケットにより回転可能に支持されている。
【0023】
また、マイクログラビア版4の上部には、帯状の基材6をマイクログラビア版4外周面に押し付ける二アロール7がマイクログラビア版4と平行に配置されている。またマニホールド2内の塗液3を貯留しておくためのサイドプレート16が設けられている。
【0024】
なお、図1及び図2において、マイクログラビア版4の外周面に付着した余分な塗液3を掻き落とすためのドクター5が設置されている。
【0025】
塗液循環系は、マニホールドブロック1内の塗液3を塗液供給配管9及び塗液排出配管10を通して循環させるためのもので、塗液供給口と塗液排出口との間に設けられている。この塗液循環手段は、図1に示すように、塗液供給口がマニホールドブロック1に接続され、マニホールドブロック1から排出される塗液3を受けるインラインの脱泡・脱気装置11と、脱泡・脱気装置11から脱泡・脱気された塗液3を受ける塗液タンク12と、塗液ランク12で受けた塗液3を吸引して塗液供給配管9からマニホールド2に供給する送液用ポンプ13と、送液用ポンプ13に吐出側と塗液供給配管9とを接続する流路に設けられたフィルター14と、質量流量計15とから構成される。
【0026】
上記のように構成された塗布装置において、図2に示すようなマイクログラビア方式でマニホールド2内でマイクログラビア版4の表面のセル内に満たされた塗液3以外の余分な塗液をドクター5で掻き落し、マイクログラビア版4を図2に示す矢印方向に回転させること、リバース回転させることで、基材6とマイクログラビア版4の間にビード(液溜まり)を形成させ、基材6に転移させる塗工方式で、塗液供給配管9を通して塗液循環系から供給された塗液3は、マニホールド2内を満たしていく。
【0027】
また、図3に示すように、塗液供給配管9からマニホールド2に供給された塗液3は、マニホールド2内を満たしてき、一部はマイクログラビア版4により掻き上げられ、ドクター5で余分な塗液3が掻き落され、基材6へ転移される。またマニホールド2内の余剰の塗液3は、傾斜のあるマニホールドブロック1に設けられた塗液排出配管10から脱泡・脱気装置11に排出され、脱泡・脱気され、塗液タンク12へ貯留される。
【0028】
本実施の形態において、粒子を含有し沈降しやすい塗液3を使用するため、送液用ポンプ13には摺動部の無いダイアフラムポンプを用いる。送液用ポンプ13により供給された塗液3は塗液供給配管7を通り、フィルター11でろ過された後、質量流量計15を通り、スタティックミキサー8を内蔵している塗液供給配管9を通り、さらにマニホールド内のスタティックミキサー8を通り、マニホールド2へ供給され続けることで、マニホールド2内の液面が徐々に上昇していき、均一に分散された粒子や樹脂や溶媒を含んだ塗液3はマニホールド2内を満たしていく。均一に分散された塗液3の一部は、マイクログラビア版4、ドクター5により基材6へ塗布される。
【0029】
また、塗液排出配管10から排出された塗液3は配管を通して脱泡・脱気装置11へ戻され、脱泡・脱気後、塗液タンク12内へ送られ、再び送液用ポンプ13により、マニホールド2内へ供給される。
【0030】
本実施の形態におけるスタティックミキサー8は、マニホールド2内に全部あるいは一部を含むものとし、サイズおよびエレメント数は配管径、使用する塗液3の特性、供給流量により変更するもので、スタティックミキサー8の材質も金属や樹脂など塗液3の性質により変更するものである。
【0031】
また塗工方式としては、マイクログラビア方式に限らず、インキパンのように塗液3を蓄えることが可能なグラビア方式、ロールコーターなど種々のロールアプリケーターに適応できる。さらに基材6への塗布量が多いとき、あるいは高粘度やチキソ性のある塗液3など塗液特性によっては、塗液3が排出する必要がない、あるいは排出が困難な塗液3においては、塗液排出配管10を使用しないで、塗布される量だけ供給するという方式にも適応可能である。
【0032】
本実施の形態に用いられる脱泡・脱気装置11は、高速回転による遠心作用や超音波などを利用し連続脱泡・脱気できる脱泡・脱気装置11だけに限られるものではなく、脱泡・脱気、塗液3の特性によって変更できるものとする。また、流量計にあっては、流量だけでなく、密度や温度の測定機能を有するコリオリ式質量流量計15を用いることができ、温度による液物性の変化や、密度により微粒子を含有する塗液3や凝縮、沈降しやすい塗液3の物性変化を連続で読み取ることができるように設置してある。
【0033】
このような本実施の形態に示す塗布装置によれば、塗液供給配管9やマニホールド2内
には塗液3に含まれる微粒子や顔料を分散させ、沈降や凝集を防ぐためのスタティックミキサー8を設けたことにより、塗液供給配管9から供給された塗液3はマニホールド2内を満たしていき、上昇していった塗液3は傾斜を設けたマニホールドブロック1に設置してある塗液排出配管10により排出され、脱泡・脱気装置11へ戻される構成になっているので、塗液3は常に流動状態におかれ、その結果、マニホールド2、塗液供給配管9内での塗液3の滞留を低減することができるとともに、塗液3に含まれる粒子や顔料の沈降及び凝集をなくし、塗液3に含まれる樹脂や溶媒なども分散させることができる。
【0034】
また、脱泡・脱気装置11を備えることで塗液排出配管10から排出された塗液3の脱泡・脱気が可能となり、気泡起因の欠陥を低減させることができる。さらに質量流量計15を備え、塗液3の密度、液温、流量を管理することで、液物性の変化を捉え易くなる。よって、本発明によれば、塗液3に含まれる粒子や顔料の沈降及び凝集をなくし、塗液3に含まれる樹脂や溶媒なども分散させることができ、さらに脱泡・脱気させることで気泡起因の欠陥を低減させることが可能となる。
【0035】
なお、本発明の塗布装置にあっては、図1〜4に示したマイクログラビア版を用いたマイクログラビアコーターに限定されるものではなく、ロールを使用する塗布装置であればよい。例えば、グラビアコーター、バーコーターなどのロールを使用する塗布装置にも適用することができる。
【0036】
以上の、本発明の塗布装置を用いることにより、連続走行するウェブ状の基材6に対し塗液3を塗布し、基材6上に塗膜を備える塗布物を製造することができる。特に、粒子又は顔料を含む塗液3を用いて塗膜を形成し、塗布物を製造する際に用いることができる。粒子としては、光拡散粒子、AG粒子等を挙げることができる。
【0037】
塗布物としては、例えば、基材6上にバインダマトリックス形成材料と粒子と溶媒を含む塗液3を用い、粒子により表面に凹凸を備えるAG層を形成したAGフィルムを挙げることができる。AGフィルムは液晶表示装置といったディスプレイの観察者側の最表面に設けられ、ディスプレイ表面に入射する外光の映りこみを防ぐものである。
【0038】
粒子を含む塗液3を用いウェブ状の基材6上に表面に凹凸を有するAG層を基材6上に形成しAGフィルムを製造するに際しては、AG層中の粒子の単位体積当たりの量や粒子の分散状態によってヘイズや光沢度といった光学性能が大きく変化する。
【0039】
本発明の塗布装置を用いることにより、連続走行する基材6上にAG層を形成するに際に塗液3中に含まれる粒子の沈降や凝集により塗液3の経時変化を抑制することができ、安定的にAGフィルムを製造することができる。
【0040】
以下、塗布物としてAGフィルムを製造する場合について説明する。AGフィルムを形成するに際しては、基材6上に、例えば、バインダマトリックス形成材料、粒子を含む塗液3を塗布し、UVを照射することにより形成される。AG層は、バインダマトリックス中に粒子が分散した構造をとり、粒子により表面に凹凸が形成される。
【0041】
図4に本発明の塗布装置を備える塗布物(AGフィルム)の製造装置の一実施例の形態を示す概略図を示した。図4に示した製造装置は、ウェブ状の基材6がロール状に巻き取られた基材6を連続走行させるための基材巻出し部17、基材6を連続走行可能に支持する複数のバックアップロール18、マニホールドブロック1、マイクログラビア版4、ドクター5、ニアロール7を備える塗布装置、基材6に塗布された塗液3を乾燥する乾燥装置19、乾燥後の塗膜を硬化する硬化装置20、及び塗液3を乾燥・硬化した後の基材6をロール状に巻き取る巻取り部21を備える。
【0042】
連続走行される基材6は塗布装置を通過後、乾燥装置19、紫外線照射装置20を通過することにより、塗布物(AGフィルム)が製造される。
【0043】
また、本発明の塗布物にあっては、塗膜として反射防止層を機能層として備える反射防止フィルムをあげることができる。反射防止層を形成するに際しては、バインダマトリックス形成材料と低屈折粒子を含む塗液3を用いて形成することができる。
【0044】
また、本発明の塗布装置にあっては、塗布膜として帯電防止層を備える帯電防止フィルムをあげることができる。帯電防止層を形成する際には、バインダマトリックス形成材料と導電性粒子を含む塗液3を用いて形成することができる。
【0045】
また、本発明の塗布物にあっては、塗膜として例えばAG層と反射防止層、反射防止層とAG層を備えるといったように複数の機能層を備えていてもよく、このとき、少なくとも1層が本発明の塗布方法により形成されていれば良い。また、帯電防止性能を備えるAG層といったように、1層で複数の機能を有していても良い。
【0046】
次に、本発明の実施例について説明する。
【実施例】
【0047】
バインダマトリクス形成材料として紫外線硬化型樹脂であるアクリルモノマー(ペンタエリスリトールトリアクリレート)85重量部、光重合開始剤であるイルガキュア184(チバスペシャリティケミカルズ製)5重量部、溶媒であるトルエン100重量部を混合した中に、平均粒子径5μmのシリカ粒子10重量部を分散させた塗液3を用意した。
【0048】
また、塗布を行うウェブ状の基材6としてはフィルム厚80μmのトリアセチルセルロース(以下、TAC)フィルムを用意した。図1に示す塗布装置を備える図4に示す製造装置を用い、連続走行するTACフィルム上に塗液3を塗布し、塗布後、TACフィルムを乾燥装置19及び紫外線照射装置20を通過させることにより、TACフィルム上に約5μmのAG層を形成し、AGフィルムを製造した。このとき、TACフィルムは全長1000mのものを用い連続走行させ、AGフィルムを連続製造した。
【0049】
次に、本発明の比較例について説明する。
【0050】
<比較例>
実施例と同一の塗液3を用意した。図1に示す塗布装置からスタティックミキサー8、脱泡・脱気装置11を外した図4に示す製造装置を用い、連続走行するTACフィルム上に塗液3を塗布し、塗布後、TACフィルムを乾燥炉19及び紫外線照射装置20を通過させることにより、TACフィルム上に約5μmのAG層を形成し、AGフィルムを製造した。このとき、TACフィルムは全長1000mのものを用い連続走行させ、AGフィルムを連続製造した。
【0051】
実施例及び比較例で得られたそれぞれのAGフィルムについて、製造直後のものと製造終了直前のものを抜き取った。得られた製造直後のAGフィルムと製造終了直前のAGフィルムについて、蛍光灯の照明がある部屋で蛍光灯の像をAGフィルムに映りこませることにより防眩性能の確認をおこなったところ、実施例では製造直後のAGフィルムと製造終了直前のAGフィルムの間で防眩性能の差は確認されなかった。
【0052】
一方、比較例では製造直後のAGフィルムと製造終了直前のAGフィルムの間で防眩性能に差が確認され、質量流量計の密度も低下し、AGフィルムを製造中に塗液の状態が変
化しているものと推測される。また気泡起因と考えられる長手方向に斜めに走る濃いスジも確認された。
【符号の説明】
【0053】
1…マニホールドブロック
2…マニホールド
3…塗液
4…マイクログラビア版
5…ドクター
6…基材
7…二アロール
8…スタティックミキサー
9…塗液供給配管
10…塗液排出配管
11…脱泡・脱気装置
12…塗液タンク
13…ポンプ
14…フィルター
15…質量流量計
16…サイドプレート
17…基材巻出し部
18…バックアップロール
19…乾燥装置
20…電離放射線照射装置
21…巻取り部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続走行している帯状の基材に塗液を塗工する塗布装置であって、
塗液を貯留するマニホールドブロックと、
前記塗液を基材に転移させるマイクログラビア版と、
前記マニホールドブロック底面に設置したスタティックミキサーと
前記マニホールドブロック底面に設けた塗液供給配管と、
前記マニホールドブロック底面に設けた塗液排出配管と、
前記マニホールドブロック内の塗液を前記塗液排出配管から前記マニホールドブロック外に排出して前記塗液供給配管から供給することで塗液を循環させる塗液循環手段と
を備えていることを特徴とする塗布装置。
【請求項2】
前記スタティックミキサーの全部あるいは一部が、マニホールドブロック入口、および、前記塗液供給配管内に設置されていることを特徴とする請求項1に記載の塗布装置。
【請求項3】
前記塗液循環手段は、
前記塗液排出配管から排出される塗液を貯留し脱泡・脱気するための脱泡・脱気装置と、前記脱泡・脱気装置から排出された塗液を貯留する塗液タンクと、
前記塗液タンクで貯留した塗液を吸引して前記塗液供給配管から前記マニホールドブロックに送液する送液用ポンプと、
前記塗液供給配管に接続する流路に設けられたフィルターと、
および、質量流量計と
を備えていることを特徴とする請求項1、請求項2のいずれに記載の塗布装置。
【請求項4】
請求項1、請求項2、請求項3のいずれかに記載の塗布装置を用いて、連続走行する基材上に塗液を塗布し、塗膜を形成することを特徴とする塗布物の製造方法。

【図1】
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【図4】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−170939(P2012−170939A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−38208(P2011−38208)
【出願日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】